(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】眼内生理学的センサ
(51)【国際特許分類】
A61B 3/16 20060101AFI20241010BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20241010BHJP
A61F 9/007 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61B3/16
A61B5/00 101L
A61F9/007 170
(21)【出願番号】P 2021557639
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 US2020025365
(87)【国際公開番号】W WO2020198639
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-06
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502373503
【氏名又は名称】グローコス コーポレーション
【住所又は居所原語表記】229 Avenida Fabricante,San Clemente,California 92672 United States
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス グン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド エス.ハフナー
(72)【発明者】
【氏名】シーザリオ ドス サントス
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0090534(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0325373(US,A1)
【文献】特表2017-527329(JP,A)
【文献】特表2017-517363(JP,A)
【文献】特表2016-511107(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0303752(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0171777(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0116122(US,A1)
【文献】特開2008-218811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
A61B 5/00 - 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的センサと、
フェースプレートおよびカバーを備えるハウジングであって、前記生理学的センサは、前記フェースプレートと一体化さ
れ、前記ハウジングは、前記ハウジングの周りの房水の流れを促進する1つ以上の突起または溝を備える、ハウジングと、
小柱網に進入するように構成された少なくとも1つの突き出ているアンカーと、
を含む眼内インプラントであって、
前記少なくとも1つの突き出ているアンカーは、内部流路を備える、
眼内インプラント。
【請求項2】
前記生理学的センサは、眼内圧センサを含む、請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項3】
前記眼内圧センサは、静電容量型圧力センサを含む、請求項2に記載の眼内インプラント。
【請求項4】
前記静電容量型圧力センサは、対向電極から離間した可撓性ダイヤフラム電極を含む、請求項3に記載の眼内インプラント。
【請求項5】
前記フェースプレートは、第2の基板に結合された第1の基板を含み、
前記可撓性ダイヤフラム電極は、前記第1の基板の少なくとも一部を含み、前記対向電極は、前記第2の基板の少なくとも一部を含む、
請求項4に記載の眼内インプラント。
【請求項6】
前記可撓性ダイヤフラム電極に接続され、前記フェースプレートを通って延在する第1の導電性バイアと、
前記対向電極と接続された第2の導電性バイアと、
前記第1の導電性バイアおよび前記第2の導電性バイアに接続された電気相互配線回路と、
をさらに含む、請求項5に記載の眼内インプラント。
【請求項7】
前記フェースプレートの内表面に埋め込まれたコイルをさらに含む、請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項8】
前記コイルは、前記フェースプレートの前記内表面に形成されたチャンネル中に提供された導体を含み、チャンネルは、複数のループを形成するようにレイアウトされる、請求項7に記載の眼内インプラント。
【請求項9】
前記生理学的センサの周りの前記フェースプレートに形成された応力除去用切除部をさらに含む、請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項10】
前記応力除去用切除部は、部分的に前記フェースプレートを通って延在するチャンネルを含む、請求項9に記載の眼内インプラント。
【請求項11】
前記フェースプレートおよび前記生理学的センサは、両方がシリコンから形成される、請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項12】
前記ハウジングの内部に提供される湿度センサをさらに含む、請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項13】
前記湿度センサは、複数の電極と感湿誘電体とを有するキャパシタを含む、請求項12に記載の眼内インプラント。
【請求項14】
前記感湿誘電体は、ゲッター材料を含む、請求項13に記載の眼内インプラント。
【請求項15】
前記湿度センサの静電容量を読み取る静電容量からディジタルへのコンバータをさらに含む、請求項13に記載の眼内インプラント。
【請求項16】
前記生理学的センサは、静電容量型センサを含み、
前記生理学的センサの静電容量を読み取るために、静電容量からディジタルへのコンバータが前記生理学的センサに接続されている、
請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項17】
前記生理学的センサは、グルコースセンサを含む、請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項18】
前記ハウジングは、第1の方向の第1の曲率半径と前記第1の方向と直交する第2の方向の第2の曲率半径とを有する凸状曲面を含む、請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項19】
前記第1の曲率半径は、正常なヒトの眼の、前記眼の光軸に直交する面における虹彩角膜角の曲率半径に対応し、前記第2の曲率半径は、前記眼の前記光軸を含む面における虹彩角膜角の曲率半径に対応する、請求項18に記載の眼内インプラント。
【請求項20】
前記ハウジングの外側は、薄膜原子層堆積(ALD)コーティングの中に被覆される、請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項21】
前記薄膜ALDコーティングは、前記生理学的センサの表面を覆う、請求項20に記載の眼内インプラント。
【請求項22】
前記薄膜ALDコーティングは、気密シールをさらに覆う、請求項21に記載の眼内インプラント。
【請求項23】
前記薄膜ALDコーティングは、少なくとも2種類の異なる材料の多層スタックを含む、請求項20に記載の眼内インプラント。
【請求項24】
前記生理学的センサは、前記フェースプレートの外表面に形成される凹部の中に配置される、請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項25】
前記ハウジングは、前記少なくとも1つの突き出ているアンカーを保持する少なくとも1つの留置用タブを含む、請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項26】
前記留置用タブは、スルーホールを含み、
前記少なくとも1つの突き出ているアンカーは、第1の端における進入用ヘッドおよび細長い本体であって、前記留置用タブの前記スルーホールを通って延在し、前記スルーホールの直径より小さな直径を有する細長い本体と、前記スルーホールの直径より大きな直径を有する進入用ヘッドと、を備え、前記突き出ているアンカーの第2の端は、変形可能である、
請求項
25に記載の眼内インプラント。
【請求項27】
前記生理学的センサを用いて生理的特性の測定値を取得するように構成されたコントローラをさらに含む、請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項28】
バッテリーと1つ以上の他の電気構成要素との間に接続された制御可能な開閉装置であって、故障すると開くように構成される制御可能な開閉装置をさらに含む、請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項29】
外部装置に測定データを無線送信するように構成された送受信機をさらに含む、請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項30】
前記フェースプレートと前記カバーとの間の気密シールであって、共晶ハンダを含む気密シールをさらに含む、請求項1に記載の眼内インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<優先権の主張>
【0002】
本出願は、2019年3月27日出願の「眼内生理学的センサ」という名称の米国特許仮出願第62/824,707号の優先権を主張し、ここにその内容全体を参照により援用し、依拠する。
【背景技術】
【0003】
本発明の分野は、全体として、移植可能な生理学的センサに関する。詳しくは、本発明の実施形態は、全体として、眼内圧および/またはグルコース濃度などの生理学的特性を測定するための移植可能な眼内センサに関する。
【0004】
緑内障、糖尿病およびその他を含むいくつかの疾患は、早期に診断し、および/または効果的に監視すれば、より効果的に治療することができる。例えば、緑内障は、失明の主因である。この疾患は、眼内圧上昇が原因となって眼の中の視神経を損傷し、治療しない場合は視力を完全に失うことがある。しかし、眼内圧上昇を早期に検知し、適切に管理すれば、失明のリスクを低くすることができる。同様に、糖尿病は、血中グルコース濃度上昇の早期段階検知および適切な管理があれば、より効果的に治療することができる重篤な病態である。これらの病態のどちらについても、監視の強化を用いて適切な管理を改善することができる。
【0005】
従って、眼内圧およびグルコース濃度などの生理学的特性を監視するために、人体内への移植のための診断用生理学的センサが開発されている。そのような移植可能なセンサは、特定の生理学的病態を効果的に診断し、治療するために用いられることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、眼内環境への移植および関連する眼内特性の測定のための新しい生理学的センサを提供する。本明細書に開示される新しいセンサ、および検出の方法は、生理学的現象、例えば眼内圧およびグルコース濃度の連続監視を有利に提供する。本明細書に開示されるセンサは、測定されたデータを追加の処理および解析のために外部装置に無線送信し得る。同様に、本明細書において開示されるセンサは、使いやすさ改善および全体的な寿命のために、外部装置を介して無線充電され得る。センサは、さらに、内部流路による流れを提供し、従って前房内の眼内圧を低くし得る。
【0007】
本明細書の開示を参照し、かついかなる形でも本発明の範囲を限定することなく、特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第1の態様において、眼内インプラントは、生理学的センサ、ハウジングおよび少なくとも1つの突き出ているアンカーを備える。ハウジングは、フェースプレートおよびカバーを備える。生理学的センサは、フェースプレートと一体化している。少なくとも1つの突き出ているアンカーは、小柱網に進入するように構成される。少なくとも1つの突き出ているアンカーは、内部流路を備える。
【0008】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第2の態様において、生理学的センサは、眼内圧センサを含む。
【0009】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第3の態様において、眼内圧センサは、静電容量型圧力センサを含む。
【0010】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第4の態様において、静電容量型圧力センサは、対向電極から離間した可撓性ダイヤフラム電極を含む。
【0011】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第5の態様において、フェースプレートは、第2の基板に結合された第1の基板を含む。可撓性ダイヤフラム電極は、第1の基板の少なくとも一部を含み、対向電極は、第2の基板の少なくとも一部を含む。
【0012】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第6の態様において、インプラントは、可撓性ダイヤフラム電極に接続され、フェースプレートを通って延在する第1の導電性バイアと、対向電極に接続された第2の導電性バイアと、第1の導電性バイアおよび第2の導電性バイアに接続された電気相互配線回路をさらに備える。
【0013】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第7の態様において、インプラントは、フェースプレートの内表面に埋め込まれたコイルをさらに備える。
【0014】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第8の態様において、コイルは、フェースプレートの内表面に形成されたチャンネル中に提供された導体を含み、チャンネルは、複数のループを形成するようにレイアウトされる。
【0015】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第9の態様において、インプラントは、生理学的センサの周りのフェースプレートに形成された応力除去用切除部をさらに備える。
【0016】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第10の態様において、応力除去用切除部は、部分的にフェースプレートを通って延在するチャンネルを含む。
【0017】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第11の態様において、フェースプレートおよび生理学的センサは、両方がシリコンから形成される。
【0018】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第12の態様において、インプラントは、ハウジングの内部に提供される湿度センサをさらに備える。
【0019】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第13の態様において、湿度センサは、複数の電極および感湿誘電体を有するキャパシタを含む。
【0020】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第14の態様において、感湿誘電体は、ゲッター材料を含む。
【0021】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第15の態様において、インプラントは、湿度センサの静電容量を読み取る静電容量からディジタルへのコンバータをさらに備える。
【0022】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第16の態様において、生理学的センサは、静電容量型センサを含み、生理学的センサの静電容量を読み取るために、静電容量からディジタルへのコンバータが生理学的センサに接続される。
【0023】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第17の態様において、生理学的センサは、グルコースセンサを含む。
【0024】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第18の態様において、ハウジングは、第1の方向の第1の曲率半径と第1の方向と直交する第2の方向の第2の曲率半径とを有する凸状曲面を含む。
【0025】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第19の態様において、第1の曲率半径は、正常なヒトの眼の、眼の光軸と直交する面における虹彩角膜角の曲率半径に対応し、第2の曲率半径は、眼の光軸を含む面における虹彩角膜角の曲率半径に対応する。
【0026】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第20の態様において、ハウジングの外側は、薄膜原子層堆積(ALD)コーティングの中に被覆される。
【0027】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第21の態様において、薄膜ALDコーティングは、生理学的センサの表面を覆う。
【0028】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第22の態様において、薄膜ALDコーティングは、気密シールをさらに覆う。
【0029】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第23の態様において、薄膜ALDコーティングは、少なくとも2種類の異なる材料の多層スタックを含む。
【0030】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第24の態様において、生理学的センサは、フェースプレートの外表面に形成される凹部の中に配置される。
【0031】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第25の態様において、ハウジングは、ハウジングの周りの房水の流れを促進する1つ以上の突起または溝を備える。
【0032】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第26の態様において、ハウジングは、少なくとも1つの突き出ているアンカーを保持する少なくとも1つの留置用タブを含む。
【0033】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第27の態様において、留置用タブは、スルーホールを含み、少なくとも1つの突き出ているアンカーは、第1の端における進入用ヘッドおよび細長い本体であって、留置用タブのスルーホールを通って延在し、スルーホールの直径より小さな直径を有する細長い本体およびスルーホールの直径より大きな直径を有する進入用ヘッドを備え、突き出ているアンカーの第2の端は、変形可能である。
【0034】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第28の態様において、インプラントは、生理学的センサを用いて生理学的特性の測定値を取得するように構成されたコントローラをさらに備える。
【0035】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第29の態様において、インプラントは、バッテリーと1つ以上の他の電気的構成要素との間に接続された制御可能な開閉装置であって、故障すると開くように構成されている制御可能な開閉装置をさらに備える。
【0036】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第30の態様において、インプラントは、外部装置に測定データを無線送信するように構成された送受信機をさらに備える。
【0037】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第31の態様において、インプラントは、フェースプレートとカバーとの間の気密シールであって、共晶ハンダを含む気密シールをさらに備える。
【0038】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第32の態様において、眼内圧を監視する方法は、眼内インプラントを用いて眼内圧測定値を得るステップであって、眼内インプラントは、生理学的センサを備え、これによって、生理学的センサを用いて眼内圧が測定されるステップを含む。この方法は、眼内圧測定値を眼内インプラントのメモリに記憶するステップを含む。この方法は、眼内インプラントの内表面に埋め込まれたコイルによって外部装置に眼内圧測定値を送信するステップを含む。外部装置は、眼内インプラントからのRF送信によって眼内圧測定値を無線受信する。
【0039】
特に指定のない限り本明細書に挙げる他のいずれの態様とも組み合わされ得る本開示の第33の態様において、この方法は、眼内インプラント中に配置されたキャパシタに電力を供給するステップをさらに含み、電力を供給するステップは、外部充電装置から眼内インプラントの内表面に埋め込まれたコイルに電力を無線送信するステップを含む。
【0040】
開示される装置、システムおよび方法の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図に記載され、それらから明らかとなる。本明細書に記載される特徴および利点は、すべてを包含するわけではなく、特に、これらの図および記載を考慮すれば、多くの追加の特徴および利点が当業者に明らかとなる。また、いずれか特定の実施形態が、必ずしも本明細書に挙げる利点のすべてを有するわけではない。さらに、本明細書において用いる文言は、読みやすさおよび説明目的で選ばれ、本発明の主題の範囲を限定するものではない点に留意するべきである。
【0041】
以下の図面を参照して本明細書に開示される装置、システムおよび方法のさまざまな実施形態および特徴が記載される。図面、関連する記載および特定の実体化は、本発明の実施形態を例示するために提供され、開示の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1A】人間の眼の中に配置された眼内生理学的センサインプラントの概略図を例示する。
【
図1B】虹彩角膜角において線維網組織を通って強膜組織に埋め込まれているアンカーによって固定された眼内生理学的センサインプラントの概略図を例示する。
【
図2A】眼内生理学的センサインプラントの例実施形態のブロック図を例示する。
【
図2B】眼内生理学的センサインプラントの別の例実施形態のブロック図を例示する。
【
図3A】眼内生理学的センサインプラント用ハウジングの例実施形態の底部斜視図を例示する。
【
図3B】
図3Aに示した眼内生理学的センサインプラント用ハウジングの例実施形態の上部斜視図を例示する。
【
図4A】眼内生理学的センサインプラント用ハウジングの別の例実施形態の上面図を例示する。
【
図4B】眼内生理学的センサインプラント用ハウジングの別の例実施形態の上部斜視図を例示する。
【
図4C】眼内生理学的センサインプラント用ハウジングの別の例実施形態の底部斜視図を例示する。
【
図4D】眼内生理学的センサインプラント用ハウジングの別の例実施形態の側面図および上面図を例示する。
【
図4E】眼内生理学的センサインプラント用ハウジングおよび関連アンカーの別の例実施形態の上部斜視図を例示する。
【
図4F】眼内生理学的センサインプラント用ハウジングおよび関連アンカーの別の例実施形態の上部斜視図を例示する。
【
図4G】眼内生理学的センサインプラント用ハウジングおよび関連アンカーの別の例実施形態の上部斜視図を例示する。
【
図4H】アンカー挿入の例実施形態の上面斜視図を例示する。
【
図4I】アンカー挿入の例実施形態の上部斜視図を例示する。
【
図4J】アンカー挿入の例実施形態の上部斜視図を例示する。
【
図4K】アンカー挿入の例実施形態の上部斜視図を例示する。
【
図4L】アンカー挿入の例実施形態の断面側面図を例示する。
【
図4M】アンカー挿入の例実施形態の断面側面図を例示する。
【
図4N】流体流路を備えるアンカーの例実施形態の側面および上部斜視図を例示する。
【
図4O】流体流路を備えるアンカーの例実施形態の側面および上部斜視図を例示する。
【
図4P】流体流路を備えるアンカーの例実施形態の側面および上部斜視図を例示する。
【
図4Q】流体流路を備えるアンカーの例実施形態の側面および上部斜視図を例示する。
【
図4R】流体流路を備えるアンカーの例実施形態の側面および上部斜視図を例示する。
【
図5A】クロッキング(clocking)特徴物および流体流路を備えるアンカーの例実施形態の斜視図を例示する。
【
図5B】クロッキング特徴物および流体流路を備えるアンカーの例実施形態の正面図を例示する。
【
図5C】クロッキング特徴物および流体流路を備えるアンカーの例実施形態の断面側面図を例示する。
【
図5D】クロッキング特徴物および流体流路を備えるアンカーを有する眼内生理学的センサインプラントの斜視図を例示する。
【
図5E】クロッキング特徴物および流体流路を備えるアンカーを有する眼内生理学的センサインプラントの斜視図を例示する。
【
図5F】クロッキング特徴物および流体流路を備えるアンカーを有する眼内生理学的センサインプラントの正面図を例示する。
【
図5G】クロッキング特徴物および流体流路を備えるアンカーを有する眼内生理学的センサインプラントの斜視図を例示する。
【
図5H】眼内生理学的センサインプラントの例実施形態の分解図を例示する。
【
図5I】
図5Hに示した眼内生理学的センサインプラントの例実施形態の層毎の斜視図を例示する。
【
図5J】
図5Hに示した眼内生理学的センサインプラントの例実施形態の層毎の斜視図を例示する。
【
図5K】
図5Hに示した眼内生理学的センサインプラントの例実施形態の層毎の斜視図を例示する。
【
図5L】
図5Hに示した眼内生理学的センサインプラントの例実施形態の層毎の斜視図を例示する。
【
図6A】
図5Hに示した眼内生理学的センサインプラントの例実施形態の層毎の上面図を例示する。
【
図6B】
図5Hに示した眼内生理学的センサインプラントの例実施形態の層毎の上面図を例示する。
【
図6C】
図5Hに示した眼内生理学的センサインプラントの例実施形態の層毎の上面図を例示する。
【
図6D】
図5Hに示した眼内生理学的センサインプラントの例実施形態の層毎の上面図を例示する。
【
図7A】眼内生理学的センサインプラントのハウジング用の例フェースプレートの一部分の断面図を例示する。
【
図7B】生理学的センサがフェースプレートの中に凹んでいる眼内生理学的センサインプラントの実施形態の斜視図を例示する。
【
図7C】
図7Aに示した眼内生理学的センサインプラントのハウジング用の例フェースプレートの一部分の断面の斜視図を例示する。
【
図7D】コイル誘導子が眼内生理学的センサインプラントの電気相互配線回路にどのように接続されるかの例実施形態を例示する。
【
図7E】コイル誘導子が眼内生理学的センサインプラントの電気相互配線回路にどのように接続されるかの例実施形態を例示する。
【
図8A】埋め込まれたコイルループと生理学的センサとの間の応力除去用切除部を備える眼内生理学的センサインプラントフェースプレートの例実施形態の上面斜視図を例示する。
【
図8B】
図8Aに示したフェースプレートの断面の斜視図を例示する。
【
図9A】眼内生理学的センサインプラント用のフェースプレートおよび回路基板の実施形態を例示する。
【
図9B】折り畳まれていない構成および折り畳まれた構成の回路基板の例実施形態の上面図および斜視図を例示する。
【
図9C】折り畳まれていない構成および折り畳まれた構成の回路基板の例実施形態の上面図および斜視図を例示する。
【
図9D】回路基板の複数の区画にどのようにコイルを形成することができるかの例実施形態を例示する。
【
図9E】積層された回路基板の上部斜視図を例示する。
【
図9F】積層された回路基板の上部斜視図を例示する。
【
図9G】積層された回路基板の上部斜視図を例示する。
【
図10A】眼内生理学的センサインプラントのハウジングを作り上げる構成要素の間の気密シールの例実施形態の上面図を例示する。
【
図10B】眼内生理学的センサインプラント用ハウジングのフェースプレートと上部カバーとの間の気密シールの例実施形態の断面図を例示する。
【
図10C】金-スズ封止用リングによる気密シール法を例示する。
【
図10D】金-スズ封止用リングによる気密シール法を例示する。
【
図11】眼内生理学的センサインプラント用ハウジングのフェースプレートと上部カバーとの例実施形態を例示する。
【
図12A】使用者が着用するバロメータによって測定した大気圧のグラフを例示する。
【
図12B】
図12Aに示した信号のうち時間60~時間80の期間の拡大した部分を例示する。
【
図12C】ゲージIOP値を計算するために用いた絶対IOP測定値と大気圧測定値との間の時間のずれの原因となる0.1%のタイマー不正確さの効果のシミュレーションを例示する。
【
図12D】ゲージIOP値を計算するために用いた絶対IOP測定値と大気圧測定値との間の時間のずれの原因となる1%のタイマー不正確さの効果のシミュレーションを例示する。
【
図13A】外部装置からの1つ以上の大気圧測定値と患者の眼の中のセンサインプラントからの1つ以上の絶対IOP測定値とを用いてゲージIOP値を計算するための方法の例を例示する。
【
図13B】ゲージIOP値を決定する目的で外部装置からの大気圧測定値とセンサインプラントからの絶対IOP測定値との相関を求めるための方法の例を例示する。
【
図14A】IOP検出用インプラント例の電力使用量を、インプラントがバッテリーによって電力を供給される場合と、これとは別にインプラントがスーパーキャパシタによって電力を供給される場合について示すグラフを例示する。
【
図14B】バッテリーとスーパーキャパシタとの組み合わせによって電力を供給されるIOP検出用インプラント例の電力使用量を示すグラフであって、スーパーキャパシタの容量が充電相互作用時の間のインプラントの電力使用量より少ないグラフを例示する。
【
図14C】バッテリーとスーパーキャパシタとの組み合わせによって電力を供給されるIOP検出用インプラント例の電力使用量を示すグラフであって、スーパーキャパシタの容量が充電相互作用時の間のインプラントの電力使用量より大きいグラフを例示する。
【
図15】IOP検出用インプラントに動作電力を供給するための方法を例示するフローチャートを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
緑内障の進行を検知するかまたは監視するために、患者の眼内の眼内圧を効果的に監視する必要がある。眼内圧は、例えばトノメータを用いて非侵襲的に測定することができる。トノメータには非侵襲的であるという利点があるが、一般的に高価であり、携行できず、熟練した操作を要する専用装置であるという不都合がある。従って、実際問題としては、2、3日毎または2、3週間毎に1回の測定より大きな時間分解能で患者の眼の中の眼内圧を効果的に監視するためにトノメータを用いることは難しい。しかし、眼内圧は比較的短い期間で顕著に変化し得るので、そのような比較的間隔を置いた眼内圧測定は、患者の、緑内障に関するリスクまたは緑内障の進行の十分なまたは正確な姿を提供しないかもしれない。従って、もっと頻繁に、またはいっそ連続的に、眼内圧を測定することができれば有利であろう。
【0044】
図1Aは、人間の眼100の中に配置された眼内生理学的センサインプラント200の概略図である。参照のために、
図1Aにおいて眼100のさまざまな解剖学的特徴物に番号を付けている。例えば、
図1Aは、硝子体液102、虹彩104、水晶体106、瞳孔108、前房110(前房を満たす房水を含む)、角膜112、網膜114および視神経116を示す。
図1Aは、眼の前房内に配置されている眼内生理学的センサインプラント200も例示する(必ずしも一定の縮尺または形状で描かれていない)。センサインプラント200は、1種類以上の生理学的特性、例えば眼内の眼内圧を連続的に測定することができる。
【0045】
センサインプラント200は、眼100内のいくつかの異なる位置に配置することができる。例えば、センサインプラント200は、特定の用途に応じて強膜または虹彩を含むがこれに限定されるものではない眼のいずれの適当な解剖学的特徴物にも固定的に付着させるかまたは係留することができる。センサインプラント200は、生理的房水流出路に対して、または生理的房水流出路内で、固定的に付着させるかまたは留置することもできる。生理的房水流出路は、小柱網およびシュレム管を含む「通常」路と、毛様体、強膜および毛様体/脈絡膜上腔を含む「ぶどう膜強膜」路と、を含む。
図1Bは、虹彩角膜角119において線維網組織117を通って挿通され、強膜組織118に埋め込まれたアンカー201によって固定されセンサインプラント200の配置を例示する。あるいは、センサインプラント200は、強膜、強膜棘突起、硝子体腔など他のなんらかの解剖学的特徴物に、またはいっそ別の眼内インプラント、例えば眼内レンズに装着してもよいだろう。
【0046】
センサインプラント200のいくつかの実施形態は眼内圧を測定するが、いくつかの実施形態は、さらにまたはあるいは、房水中のグルコース濃度を測定することがある。詳しくは、糖尿病由来の合併症を治療または予防する手段として人体内のグルコース濃度を測定する必要がある。グルコースは、典型的には血液または採尿から測定される。間質液からグルコースを測定するいくつかの移植可能なグルコースセンサが開発されている。しかし、体は、そのようなインプラントに対して、時間の経過とともにセンサの性能を劣化させ得る負の免疫応答を有することがある。眼100、特に眼の前房110は、体内の免疫学的特権部位である。従って、眼内のグルコースを測定するための眼内センサインプラントは、体の非免疫学的特権部分においてグルコースを測定するようにできている他の移植可能センサに対して利点を有することができる。さらに、房水内のグルコース濃度は血中グルコース濃度と同一でないかもしれないが、これら2つは、房水中のグルコース濃度の測定が血中グルコース濃度を予測するものであり得るように相関することがある。
【0047】
実施形態において、センサ200は、電流を流し、グルコースセンサ上の反応性集積物(buildup)の分解初速度を測定する。測定したこの分解初速度から、センサ200は、すべての集積物が分解した時点におけるグルコースレベルを近似するアルゴリズムを実体化する。こうして、センサ200は、反応性集積物全体の燃焼除去に伴う不必要な電力消費を有利に回避する。
【0048】
眼内圧と房水中のグルコース濃度との両方を測定すると、糖尿病を診断および/または治療するためにグルコース濃度測定値を用いることができるため有利なことがある。一方、糖尿病患者は、緑内障も発症するリスクが高くなる。従って、眼内圧とグルコース濃度との測定値が貴重であるような患者層はかなり重複している可能性がある。
【0049】
さらに、さまざまな実施形態において、本明細書に開示されるセンサ、例えばセンサインプラント200が眼以外の人体内の別の位置に移植および配置され得るだろうことが理解されるはずである。例えば、センサインプラント200は、他の器官、例えば脳または心臓、あるいは他の位置、例えば胸腔、外肢などの圧力を測定することができるだろう。同じように、センサインプラント200は、これら別の位置で他の値、例えばグルコース濃度を測定することができるだろう。別の位置の移植は、本明細書に開示されるセンサインプラント200への、あるとしても限られた設計変更で行うことができる。従って、特定の実施形態において、センサインプラント200は、位置を選ばない。
【0050】
図2Aは、眼内生理学的センサインプラント200の例実施形態のブロック図である。例示したセンサインプラント200の実施形態は、生理学的センサ210、コントローラ220、バッテリー230、測定値メモリ240、送受信機/受信機250、誘導コイル260およびインプラント200のさまざまな部品の間で電力および/またはデータを通信するための電気相互配線回路270を備える。例示した構成要素の1つ以上は、1つ以上の集積回路として実体化することができる。センサインプラント200のいくつかの実施形態は、
図2Aに例示した構成要素の1つ以上を省くか、または特定的に例示したもの以外に追加のまたは代わりの構成要素を備えることがある。センサインプラント200の構成要素のそれぞれは、本明細書においてさらに詳しく記載される生物適合性ハウジング280の中に全部または一部が収容されることがある。
【0051】
生理学的センサ210は、対象となる1種類以上の生理学的特性の測定を行う構成要素である。生理学的センサ210は、測定される生理学的特性を定量的に表す信号、例えば電気信号を出力することができる。いくつかの実施形態において、生理学的センサ210は、眼内圧、眼内グルコース濃度、および/または眼内で検出することができる、対象となるいずれかの他の生理学的特性を測定するように設計することができる。センサインプラント200は、生理学的センサ210の複数の事例も含むことがある。異なる生理学的特性を測定するためにセンサ210の各事例が用いられ得る。例えば、センサインプラント200は、眼内圧とグルコース濃度とを測定するために生理学的センサ210の2つの事例を備えることができる。
【0052】
生理学的センサ210を用いて取得した測定値は、測定値メモリ240に記憶することができる。測定値メモリ240は、例えば、ソリッドステート電子メモリ装置のことがある。測定値メモリ240は、生理学的センサ210からの測定値を、センサインプラント200に通信的に結合されている外部装置により送受信機/受信機250を介して取り出すことができるまで内部的に記録するために用いることができる。
【0053】
送受信機/受信機250、例えば双方向ラジオは、コイル260と通信的に結合することができ、外部装置からデータ、例えば命令を無線受信するために、および/またはセンサインプラント200からの生理学的測定値を含むデータを外部装置に無線送信するために用いることができる。送受信機/受信機250は、例えばコントローラ220によって測定値をオンデマンドで、設定した予定に従って、および/または規則的間隔もしくは不規則的間隔で、例えば毎日送信するように制御され得る。いくつかの実施形態において、外部装置は、臨床医によってダウンロードすることができるまで測定値を記憶するために患者が着用するデータロガーのことがある。他の実施形態において、外部装置は、測定値メモリ240によって内部的に記憶されている測定値データを定期的にダウンロードするために臨床医によって用いられるハンドヘルドリーダー装置のことがある。リーダー装置は、次に、ダウンロードした測定値をインターネットまたはいくつかの他の通信ネットワークを介して臨床医による処理および/または解析のためにコンピュータに送信することができる。リーダー装置は、ダウンロードした測定値をユーザインタフェース経由で患者に提供することもできる。
【0054】
コントローラ220は、例えば、センサインプラント200の他の構成要素のための制御操作を行うために用いることができる。いくつかの実施形態において、コントローラ220は、生理学的センサ210を用いて測定値を取得させる命令を提供することがある。いくつかの実施形態において、コントローラ220は、規則的な間隔で測定値を取得させる。例えば、測定値は、例えば外部装置からの入力に基づいてオンデマンドで、設定した予定に従って、および/または特定の用途に応じて規則的間隔もしくは不規則的間隔、例えば少なくとも毎時、少なくとも15分毎、少なくとも1分毎などで取得され得る。いくつかの実施形態において、コントローラ220は、感知可能な生理学的特性の変化が起こり得る典型的な間隔より短い時間間隔で測定値を取得させる。こうすると、対象となる生理学的特性に関する傾向データを収集して、生理学的特性が時間の関数としてどのように変化するかのより有用なまたは十分な姿を提供することができる。いくつかの実施形態において、コントローラ220は、高周波数IOP揺らぎ、例えば心脈動に起因するものを確認および記録することができるように、測定値をさらに速く、例えば20Hz以上の速度で取得させる。あるいは、いくつかの実施形態において、測定値は、バッテリー寿命を含めてエネルギーを節約するために、1日を通して低頻度で取得することができるだろう。
【0055】
コントローラ220は、測定値メモリ240への測定データの書き込みおよび読み取りも制御することがある。コントローラ220は、送受信機/受信機250を用いるデータの送信および受信も制御することがある。さらに、コントローラ220は、バッテリー230の電力設定および/または電源エレクトロニクスを制御することがある。
【0056】
コントローラ220は、他の機能も実行することがある。例えば、いくつかの実施形態において、コントローラ220は、生理学的センサ210を用いて収集した測定値に対するデータ処理作業を行うことができる。しかし、他の実施形態において、オンボード処理の電力要求を避けるために、外部装置によって測定値をダウンロードした後にいずれの必要なデータ処理作業も行うことができる。さらに、コントローラ220は、収集した測定値を監視し、監視している生理学的特性がある種の閾値に達するか、または他の場合に即時通知が必要と考えられる場合に、送受信機/受信機250を介して例えば外部装置にアラーム信号を出力し得る。例えば、センサインプラント200が潜在的に危険な低血糖レベルを検知した場合、アラーム信号を起動することができる。コントローラ220は、測定値メモリ240により多くの測定値を記憶することを可能にするために測定値データ圧縮も行うことができる。コントローラ220は、送受信機/受信機250によって送信されるかまたは受信されるデータまたは情報に対して暗号化を行うこともできる。コントローラ220は、センサインプラント200の他の構成要素、例えば送受信機/受信機250、測定値メモリ240、生理学的センサ210などに、不使用時には停止するかまたは電力節約状態に入る命令を発することもできる。
【0057】
例示した実施形態において、センサインプラント200は、センサインプラント200の他の構成要素のいずれかまたはすべての電力需要を全部または一部満たすためにバッテリー230を用いる。バッテリー230は、繰り返し充電可能であってよい。例えば、センサインプラント200は、誘導または高周波(RF)結合によって外部装置から電力を受け取るためにコイル260を用いることができる。この電力は、バッテリー230を再充電するために用いることができる。いくつかの実施形態において、バッテリー230は、薄膜リチウムイオンバッテリーまたはリチウム-金属バッテリーであってよい。センサインプラント200は、センサインプラント200内の他の電気構成要素によって十分に用いられることができるように、バッテリー230による電力出力の条件を整えるために望ましい電源エレクトロニクス、例えば電圧調節器、電圧変換器、および/または他のいずれかの電気構成要素も備えることができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、バッテリー230は、コントローラ220によって制御することができるスイッチまたは他の開閉用構成要素によってセンサインプラント200の他の構成要素に接続することができる。スイッチを閉じると、センサインプラント200は、バッテリー230からの電力を消費する。スイッチを開くと、センサインプラント200は、外部装置から無線伝送された電力を消費することができるオンデマンドモードになる。スイッチは、バッテリー電力がコントローラ220によって指示されたときだけ消費されることを確実にする上で有利になり得る。スイッチは、バッテリー230が放電し、コントローラ220への電力が失われたとき不調時開放となるように設計することができる。これによって、バッテリー230が放電するかまたは操作不能の場合にセンサインプラント200がオンデマンドモードで動作できることが確実になる。
【0059】
図2Bは、眼内生理学的センサインプラント200の別の例実施形態のブロック図である。この実施形態において、センサインプラント200は、眼内圧センサである。例示したセンサインプラント200の実施形態は、圧力センサ210、コントローラ220、バッテリー230、測定値メモリ240、送受信機/受信機250、コイル260およびインプラント200のさまざまな構成要素の間で電力および/またはデータを通信するための相互配線270を備える。センサインプラント200の構成要素のそれぞれは、全部または一部が
図3Aおよび
図3Bに例示する生物適合性ハウジング280の中に収容され得る。
【0060】
例示した構成要素のうちのさまざまなものをチップ上の特定用途向け集積回路(ASIC)290(
図2Bにおいて鎖線のボックスとして例示する)として一緒に実体化することができるが、いくつかの構成要素を、例えば集積回路290への電気接続を有する別個の構成要素として提供することもできる。
【0061】
眼内圧を測定するためにいくつかの異なるタイプの眼内圧測定装置があり、そのいずれも圧力センサ210として用いることができる。いくつかの実施形態において、圧力センサ210は、センサインプラント200が配置されている媒質の圧力に応答して静電容量が変化するキャパシタを備える。キャパシタは、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)を備えることができる。例えば、圧力センサ210は、可撓性ダイヤフラムまたは膜電極に近接した固定型キャパシタプレート電極を備えることができる。可撓性ダイヤフラム電極と固定型プレート電極との間の距離は、センサインプラント200が眼100内に移植されたとき房水によって加えられる圧力に応答して変化する。これは、キャパシタの静電容量の変化として検出される。他の実施形態において、圧力センサ210は、さらにまたはあるいは、圧力を測定するための他の手段、例えば抵抗歪みゲージ、圧電抵抗歪みゲージ、圧電歪みゲージ、光学測定、または圧力を測定するための関連するいずれか他の手段を使用する。
【0062】
いくつかの実施形態において、圧力センサ210は、センサインプラント200のシステムの残りと組み合わされると、眼100内の約0mmHg~約50mmHgのゲージ圧の眼内圧を±約0.5mmHgの分解能で測定することができる。いくつかの実施形態において、可撓性ダイヤフラムの下の空洞は、真空下で封止され、圧力センサ210は、大体500~1000mmHg絶対圧の範囲にわたり、出力が可変アナログ静電容量信号であるためほぼ基本的に無限の分解能で応答する。大気圧は、体外で独立に測定し、眼内圧を得るために圧力センサ210によって測定した絶対圧から減じることができる。いくつかの実施形態において、静電容量は、眼内圧に対して大体線形に変化する。いくつかの実施形態において、静電容量は、500~900mmHgの絶対圧の範囲にわたり大体1ピコファラド(pF)~大体4pFまで大体線形に増加する。他の実施形態において、絶対圧範囲は、小さくなるかまたは大きくなり、あるいは、センサの感度は、高くなるかまたは低くなる。いくつかの実施形態において、静電容量は、眼内圧に対して非線形に変化する。
【0063】
圧力センサ210は、圧力センサ210の静電容量、従って検出された圧力の指標となる値を出力する、静電容量からディジタルへのコンバータ212に電気的に接続することができる。この値は、コントローラ220に提供することができる。いくつかの実施形態において、眼内圧センサ210は、1つ以上の基準キャパシタ214も備える。
【0064】
すなわち、圧力センサ210は、1つ以上の基準キャパシタ214、例えば圧力センサ210に隣接して配置された埋め込み空洞基準MEMSキャパシタを備え得る。基準キャパシタ214は、静電容量からディジタルへのコンバータ212にも接続することができ、較正および/または温度補償のための基準値を提供するために用いることができる。基準キャパシタ214の構造は、検出用ポートが存在しないことを除けば、圧力センサ210に関して上記に記載したものと同様である。従って、基準キャパシタ214の上のフェースプレート282は、基準キャパシタ214が眼の前房内の圧力変化に検知可能に応答することを妨げる。この実施形態において、基準キャパシタ214に接続するためにシリコン貫通バイアが用いられる。基準キャパシタ214によって発生した容量信号は、圧力の変化に関連しない効果、例えば固有応力、機械的応力、温度変化などをフィルターで除外し、それによって、システムの正確さを全体として改善するために用いることができる。基準キャパシタ214からの信号は、例えばASICの動作内での圧力センサ210の静電容量からのその静電容量の直接アナログ減算または同じもののディジタル減算によって直接的に、あるいは基準キャパシタ214および圧力センサ210の静電容量を読むのと実質的に同時にその値を読み、下流のデータ処理/較正時に両方の測定値を用いることによって間接的に、用いることができる。この好ましい実施形態において、基準キャパシタ214は、圧力センサ210と同じ寸法を有するが、異なるサイズおよび形状であってもよく、依然として同様な有用性を提供することができる。
【0065】
実施形態において、相互配線回路270に温度センサが組み込まれ、温度補償および/または較正を目的として用いることができる。一実施形態において温度センサを相互配線回路270と一体化する別の利点は、相互配線回路、およびその上のさまざまな構成要素が、センサ測定値の整合性および信頼性に影響を及ぼす予測不能な熱膨張を生む結果となり得る加熱および冷却に付されるとき、熱ドリフトを補償することである。
【0066】
圧力センサ210からの圧力測定値は、測定値メモリ240中に記憶することができる。いくつかの実施形態において、測定値メモリ240は、集積回路290の一部として提供されるソリッドステートメモリである。例えば、測定値メモリ240は、8kBスタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)であってよいが、他のタイプのメモリおよび/または容量も用いることができる。いくつかの実施形態において、コントローラ220は、圧力測定値に対して、測定値メモリ240に記憶する前にデータ圧縮を行う。データ圧縮を行うことによって、測定値メモリ240は、より多くの測定値を保持することができる。これによってより高頻度の測定および/またはより低頻度のデータダウンロードイベントを可能にすることができる。いくつかの実施形態において、比較的簡単な圧縮技法を用いて計算機資源を節約すると有利になり得る。1つのデータ圧縮アルゴリズム例は、測定値自体ではなく順次の測定値の間の差分を記憶することだろう。この技法によって測定値メモリ240によって用いられる測定値あたりビットを減らすことが可能になるだろう。
【0067】
コントローラ220は、他の箇所で本明細書に記載した機能のいずれも行うことができる。例えば、いくつかの実施形態において、コントローラ220は、圧力センサ210を用いて、予め定められた時刻に、オンデマンドで、および/または例えばMSTRクロック221によって定められた規則的な間隔で測定値が取得されるようにプログラムすることができる。しかし、記録/報告された各測定値は、圧力センサ210を用いて取得された複数の測定値から計算することができる。例えば、コントローラ220は、比較的短い間隔、例えば30秒、またはもっと短い間隔、例えば0.5秒で複数の測定値、例えば3つの測定値を得るようにプログラムすることができる。これらは、次に平均され、測定値メモリ240において1個の測定値として記録/報告することができる。次に、このプロセスは、もっと長い間隔で、例えば毎時繰り返すことができる。
【0068】
図2Bに例示したセンサインプラント200は、コントローラ220、圧力センサ210、送受信機/受信機250などの構成要素に電力を供給するバッテリー230を備える。バッテリーは、大体5μAh以上の電力定格を有することができる。そのような電力定格は、再充電の間に少なくとも大体7日間十分な電力を提供すると見積もられる。いくつかの実施形態において、センサインプラント200の休眠電力消費は、ピコワットまたはナノワットのオーダーであるが、活動電力消費は、ナノワットまたはマイクロワットのオーダーである。しかし、バッテリー230のサイズおよび電力定格は、センサインプラント200の電力消費がそうであるように、上に挙げた数字と異なることがあり得るだろう。
【0069】
いくつかの実施形態において、バッテリー230は、本明細書において他の箇所で考察したように、外部装置によって繰り返し充電可能である。例えば、バッテリー230は、外部装置からの誘導結合またはRFエネルギーによって無線で再充電することができる。他の実施形態において、バッテリー230は、太陽電力によるかまたは赤外線レーザによって(その場合、センサインプラント200は、太陽光または赤外レーザ光を電力に変換する適当な光起電力電池を備えることができる)、あるいは房水中に存在するグルコースによって駆動される燃料電池によって充電することができる。
【0070】
送受信機/受信機250およびコイル260は、測定値メモリ240に記憶された圧力測定値を外部リーダー装置に無線送信するために用いることができる。外部リーダー装置は、センサインプラント200から圧力測定値をダウンロードするために患者によって着用される眼鏡に一体化することができる。コイル260も、例えば記憶された測定値がダウンロードされている間に、バッテリー230を充電するために誘導結合によって電力を無線受信する二重の目的に使用することができる。センサインプラント200からデータをダウンロードするための外部リーダー装置を備える同じ眼鏡の中に無線充電装置を一体化することができる。コイル260は、同時にかまたは一度に一方かのどちらかで(どちらかの順で)、測定値データを送信することと、バッテリー230を繰り返し充電するための電力を受信することと、ができる。いくつかの実施形態において、コイル260は、軸が全体として眼の光軸と並ぶように配向する複数の導電ループを備える。この配向によって、眼の前に配置された外部装置から、例えば眼鏡のフレームに一体化された外部装置から比較的大きな量の電磁束が送信された後に導電ループを通ることが可能になる。
【0071】
図3Aは、眼内生理学的センサインプラント200用ハウジング280の例実施形態の底部斜視図である。例示した実施形態において、ハウジング280は、組み合わされてハウジングを形成する2つの部分を備える。例えば、ハウジング280は、底部フェースプレート282および上部カバー284を備えてよい。いくつかの実施形態において、フェースプレート282は、一般に平らであるが、上部カバー284は、ドーム形である。フェースプレート282およびカバー284は、両方とも不透性、生物適合性材料でできていてよいが、必ずしも同じ材料でできている必要はない。ハウジング280のために選ばれる材料は、セラミック、ガラスまたはシリカのように、高周波(RF)電磁放射に対して少なくとも部分的に透過性、好ましくは実質的に透明であってよい。房水または水分がハウジング280に浸み込むことを防ぎ、および/またはハウジング280の内部の金属または他の材料の原子または分子が患者の眼に導入されることを防ぐために、フェースプレート282とカバー284との間に気密シールを提供することができる。
【0072】
例示した実施形態において、生理学的センサ210は、フェースプレート282に一体化される。この例において、生理学的センサ210は、既に上記で考察した可撓性ダイヤフラム216を備える静電容量型眼内圧センサである。いくつかの実施形態において、可撓性ダイヤフラム216とフェースプレート282とは、全部または一部が同じ材料、例えばシリコンでできていてよい。フェースプレート282と可撓性ダイヤフラム216とは、本明細書においてさらに示され、記載されるように、例えばシリコンのような選ばれた材料の1つ以上の隣接する基板から一体として形成されてよい。このタイプの設計は、生理学的センサおよびフェースプレートが別々の構成要素として構築され、その後で結合された場合には必要であるかもしれない、生理学的センサ210とフェースプレート282との間の気密シールを取り除くことができるため、有利になり得る。生理学的センサ210とフェースプレート282との間のそのような気密シールの必要がないことは、その場合、房水がハウジング280に浸み込むことができる場所が少なくなるため、また、可撓性ダイヤフラム216の周りまたは近くの気密シールは、可撓性ダイヤフラムの性能に影響を及ぼすかもしれない機械的応力または歪みを誘導することがあり得るため、有利である。
【0073】
図3Bは、
図3Aに示した眼内生理学的センサインプラント200用ハウジング280の例実施形態の上面斜視図である。この図は、上部カバー284を示している。フェースプレート282と同じように、上部カバー284は、生物適合性材料でできていてよいが、具体的な材料は、フェースプレートのために用いたものと異なっていてよい。いくつかの実施形態において、上部カバー284は、セラミックまたはガラスである。例えば、上部カバー284は、射出成形したジルコニア強靭化アルミナ(ZTA)セラミック、射出成形したイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、サファイヤまたはガラスでできていてよい。他の材料ならびに他の製造技術、例えば機械加工または切削加工も用いてよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、センサインプラント200は、人間の眼の虹彩角膜角の中に配置されるようなサイズおよび形状であり得る。センサインプラント200の寸法は、例えば長さ2~6mm、幅0.5~2mmおよび高さ0.3~1mmであり得る。例示したように、いくつかの実施形態において、上部カバー284および/またはフェースプレート282は、1つ以上の立体的な(contoured)表面または面取りを有することがある。例えば、ハウジング280の1つの側面は、立体的であり、人間の眼の虹彩角膜角の、一般に眼の光軸に垂直な面における正常な曲率半径に対応する凸の曲率半径R1を有し得る(図示したx-y面において)。曲率半径R1は、例えば5~7mmの範囲であってよい。ハウジング280の同じ側面は、同じく立体的であり、人間の眼の虹彩角膜角の、一般に眼の光学軸の面における正常な曲率半径に対応する凸の曲率半径R2を有し得る(図示したy-z面において)。曲率半径R2は、例えば0.1~0.4mmの範囲であってよい。
【0075】
例示したハウジング280の実施形態の立体的な形状は、眼内生理学的センサインプラント200が効果的に患者の眼の虹彩角膜角中に深く配置されることを可能にする。このことが、今度は、眼の外側におけるセンサインプラント200の外部可視性を制限する。いくつかの実施形態において、センサインプラント200に、患者の眼の上部において虹彩角膜角中にセンサインプラントを配置するよう外科医に指示する文書を提供することができる。この位置は、上眼瞼が典型的に下眼瞼より遠くに延在し、従ってセンサインプラント200をより効果的に隠すことができるという事実を利用することができる。
【0076】
虹彩角膜角中で同様な配置を有し、ハウジングと虹彩角膜角の湾曲面との間に隙間が残るまっすぐな側面のハウジングと比較すると、ハウジング280の立体的な形状は、追加の囲まれた体積を提供する。ハウジング280の内部のこの追加の囲まれた体積は、追加のもしくはより大きな構成要素を適合させるために、および/またはハウジングの他の寸法を縮小するために用いることができる。例えば、本明細書においてさらに考察するように、立体的なハウジング280によって提供される空間のより効率的な使用は、より大きなコイル260を可能にすることができ、このことが今度はセンサインプラント200と外部装置との間の通信および/または電力移動を改善することができるか、あるいはより大きなバッテリー230を可能にすることができ、このことが充電の間の時間を増加させることができる。
【0077】
センサインプラント200のハウジング280は、虹彩角膜角内に深く適合するように少なくとも1つの立体的な表面を有して設計されるので、配置されている虹彩角膜角の部分からの房水の流出(小柱網およびシュレム管を含む「通常」流出路または毛様体、強膜および毛様体/脈絡膜上腔を含む「ぶどう膜強膜」流出路のどちらかを通る流出)を制限する潜在性を有し得る。虹彩角膜角においてセンサインプラント200によって占有されている部分が比較的小さいことから、房水の流出のなんらかの減少は、些細であると考えられる。しかし、いくつかの実施形態において、ハウジング280は、流れを可能にする1つ以上の特徴物、例えば突き出ているリブまたは凹んだ溝/チャンネルを備え得る。これらのような流れを可能にする特徴物は、ハウジング280と虹彩角膜角との間に分離の区域を作り出し、従って、センサインプラント200のハウジングが虹彩角膜角の表面と接触して配置されているときでも房水が生理的流出経路を経て前房から出ることを可能にすることができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、流れを可能にする特徴物は、多孔質材料、例えばガラスフリット、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの多孔質プラスチック、ポリエチレン、ポリエステルなどの多孔質結合ポリマー繊維、または好ましくは親水性であり、連続気泡型多孔質構造体として形成することができる他の材料から作ることができるか、または含むことができる。そのような多孔質材料は、材料それ自体のバルク構造を通る流体移動を可能にする複数の流体操作毛管または擬毛管構造体を提供する。例えば、実質的にハウジング280の外表面全体に、ハウジング上のリブまたはストリップ中に、ハウジングの外部に形成した溝/チャンネル中などに多孔質材料を提供し得る。実施形態において、流れを可能にするこれらの特徴物、例えばセラミック中のリブまたは溝は、たとえセラミックそれ自体が単一のモノリス形構成要素のままであっても、ハウジング280上に直接形成することができる。
【0079】
図4A~
図4Cは、眼内生理学的センサインプラント200用ハウジング280の別の例実施形態の上面図、上部斜視図および底部斜視図をそれぞれ含む。これらの図に示すように、ハウジング280は、1つ以上のアンカー286を備えてよい。アンカー286は、例えば、虹彩角膜角の表面に隣接して配置されるように設計されているハウジング280の立体的な表面から突き出てよい。アンカー286は、上部カバー284からの突起物として例示されているが、代わりにフェースプレート282からの突起物であってもよいだろう。
図4A~
図4Cに示したハウジング280の実施形態は、
図3A~
図3Bに関して記載した実施形態と他の部分は同一であってよい。
【0080】
アンカー286は、眼球組織、例えば強膜、小柱網などに進入するように設計されている進入用先端と、挿入された後に組織中に留置されたままになるように棘または他の保持用特徴物を備えてよい。いくつかの実施形態において、アンカー286は、参照によって内容全体が本明細書に組み込まれる2015年5月28日出願の「制御された薬物伝達機能を備えるインプラント及びそれを使用する方法」という名称の米国特許出願公開第2015/0342875号の
図18に例示されているものと同様な薬物溶出用アンカーであってよい。いくつかの実施形態において、アンカー286は、参照によって内容全体が本明細書に組み込まれる2013年3月14日出願の「複数の眼インプラントを送達するためのシステム及び方法」という名称の米国特許第9,554,940号の
図18に例示されているものと同様な眼からの房水の流出を促進する排液ステントであってよい。排液ステントアンカーは、本明細書において
図4N~
図4Rを参照してさらに詳しく考察される。
【0081】
図4A~
図4Cに示すように、ハウジング280の長さに沿った幅は、ハウジングの中心部において最大であってよい。一方、ハウジング280は、ハウジングの端に向かって幅が次第に小さくなってよい。いくつかの実施形態において、アンカー286は、ハウジング284の端の方に、例えばハウジングの中央3分の1より外側に配置されてよい。アンカー286のこの配置は、ハウジング284の中央部分にアンカーを配置した代替実施形態と比較して、センサインプラント200の全体の幅を小さくすることができる。この小さくなったセンサインプラント200の全体の幅は、装置を患者の眼の中に挿入しやすくかつ操作しやすくすることができる。
【0082】
図4Dは、眼内生理学的センサインプラント200用ハウジング480の別の例実施形態を例示する。
図4Dによって例示する実施形態において、ハウジング480は、移植位置に配置され、次にアンカーが先の尖っていないツールによって留置用タブ482を通って押されて組織に進入し、インプラントを所定の場所に確保する。詳しくは、
図4Dの上の部分は、ハウジング480の側面図を示し、一方、
図4Dの下の部分は、ハウジングの上面図を示す。例示した実施形態において、ハウジング480は、ハウジングの両側から延在する2つの留置用タブ482を備える。2つの留置用タブ482を例示しているが、他の実施形態は、これより多いかまたは少ない留置用タブを備えることがある。留置用タブのそれぞれは、アンカー486を保持するように構成され、かつ寸法を有するスルーホールを備える。アンカー486のそれぞれは、進入用先端、細長い本体および保持用ヘッドを有する進入用ヘッドを備える。各アンカー486の細長い本体は、対応する留置用タブ482中のスルーホールの直径より小さい直径を有し、一方、アンカーの進入用ヘッドおよび保持用ヘッドは、スルーホールの直径より大きい直径を有する。その結果、各アンカー486は、対応する留置用タブのスルーホール内で自由に滑ることができるが、アンカーの進入用ヘッドおよび保持用ヘッドは、留置用タブの中に捕捉されるようにアンカーを保持する。いくつかの実施形態において、各アンカー486の細長い本体の長さは、少なくとも対応する留置用タブ482の厚さと眼球組織中の進入用先端の所望の挿入深さとを足した長さである。
【0083】
外科医がハウジング480を患者の眼内の所望の位置に配置したら、彼または彼女は、各アンカー486の保持用ヘッドにその本体の軸に沿って縦方向の力を加える。アンカー486の進入用ヘッドは、これによってハウジング480を眼球組織中に延在させて所定の場所に保持する。検出用インプラント200の他の実施形態において同様な留置用タブ482および捕捉されるアンカー486を用いることができる。例えば、
図3A、
図3Bに示した検出用インプラント200のハウジング280は、ハウジングの両側に留置用タブ482を備えるように改変することができるだろう。
【0084】
詳しくは、例えば、
図4E~
図4Gは、ハウジング280内に配置され、アンカー486を受け入れるように構成された、いくつかの留置用タブ482をさらに備えるハウジング280を例示する。
図4Dと比較すると
図4E~
図4Gは、眼の中の移植の前にアンカーをインプラントに堅く固定する実施形態を例示する。言い換えると、インプラントを確保するためにアンカーの別個の「押すステップ」は必要ない。
図4E、
図4Fは、インプラントを組み立てない実施形態を例示する。
図4Gは、インプラントを組み立てる実施形態を例示する。
【0085】
これらの実施形態において、インプラントを移植位置に配置することによって、アンカーは、組織に進入し、インプラントを所定の場所に確保する。
図4Eを参照すると、アンカー486を受け入れるためのハウジング280中の孔482は、同じサイズでもよく、または、種々の特徴物を受け入れるために異なるサイズであってもよい。例えば、1つの孔は、アンカー486を受け入れるが、別の孔は、脱着可能な用量キャニスター、永続的流通装置、流通用アンカーなどを受け入れることができるだろう。実施形態において、アンカー486は、チタンまたは他の関連材料で構築される。好ましい実施形態において、アンカー486は、長さが約1.5mmおよび幅が約0.17mmである。
【0086】
図4H、
図4Iは、組み立てを目的としたハウジング280の留置用タブ482へのアンカー486の物理的な挿通を例示する。手術前、またはあるいは手術時に、アンカー486をハウジング280の留置用タブ482に挿通することができると理解されるはずである。一般的に、各アンカー486の細長い本体488は、対応する留置用タブ482のスルーホールの直径より小さい直径を有するが、アンカー486の進入用ヘッド490および保持用ヘッド492の最大直径は、スルーホールの直径より大きい。その結果、各アンカー486は、対応する留置用タブのスルーホール内で自由に滑ることができるが、アンカー486の進入用ヘッド490および保持用ヘッド492は、留置用タブ482中に捕捉されるように保持される。いくつかの実施形態において、細長い本体488の長さと各アンカー486の進入用ヘッド490の長さとを足すと、少なくとも対応する留置用タブ482の厚さと眼球組織中の進入用先端の所望の挿入深さとを足した長さとなる。他の実施形態において、アンカー486の一部分、例えば細長い本体488および保持用ヘッド492の一部は、空間または隙間を備え、そのため、使用者および/または組み立てる者は、留置用482への挿通のためにつまむことによってこれらの構成要素の直径を小さくすることができる。いくつかの実施形態において、保持用ヘッド492は、その空間または隙間ともども、所望する場合には移植後しばらくしたら留置用タブ482から切り離すことができるような寸法にする。
【0087】
関連する実施形態において、ハウジング280は、アンカー486を確保するための代わりのまたは追加の特徴物を備える。例えば、ハウジング280は、剛直な孔の代わりに8の字形のループワイヤを備えることがある。8の字形のループワイヤは、ハウジングに取り付けられ、移植されるときは外科医によって締められてループの端にアンカー486を確実に留めることができるだろう。あるいは、ハウジング280は、位置決めとその後の留めのために剛直な孔と8の字形ループワイヤとの両方を備えることができるだろう。
【0088】
別の実施形態において、アンカー494は、代わりの手段によってハウジング280に取り付けられる。例えば、
図4J~
図4Mは、保持用ヘッド492を備えていないアンカー494を例示する。好ましい実施形態において、アンカー494は、長さが約1.6mmおよび幅が約0.2mmである。詳しくは、アンカー494は、例えば本明細書において前に考察した留置用タブ482によってハウジング内に配置される。この特定の実施例において、アンカー494は、手術の前にハウジング280の留置用タブ482に挿通される。一般に、各アンカー494の細長い本体は、対応する留置用タブ482のスルーホールの直径より小さい直径を有するが、進入用ヘッド496の最大直径は、スルーホールの直径より大きい。その結果、各アンカー494は、対応する留置用タブ482のスルーホール内で自由に滑ることができるが、アンカー494の進入用ヘッド496は、留置用タブ482中に捕捉されるようにアンカーを保持する。アンカー494は、変形可能な端498をさらに備え、この端は、部分的な窪み、変形または孔をさらに備えることがある。アンカー494が対応する留置用タブ482のスルーホール内に十分に挿通されたら、ハウジング280およびアンカー494をワークピースに固定的に確保する。次に、炭化物先端、または他の同様な機械工具をアンカー494の変形可能な端498に押し込み、これによって、変形可能な端498を機械的に変形させ、新しい、より大きな直径を得る結果を生む。このようにして、変形可能な端498においてアンカー494を変形させることによって、アンカー494は、永続的にハウジング280に固定される。永続的に固定されたら、アンカー494およびハウジング280は、本明細書に記載されるように実体化することができる。
【0089】
さまざまな実施形態において、
図4N~
図4Rによって例示するように、アンカー、例えばアンカー486またはアンカー494は、薬物溶出用アンカーであり、および/または眼からの房水の流出を促進する1つ以上の流体流路を有することがある。例えば、アンカーは、1つ以上の流入口、1つ以上の流出口および流入口と流出口とを繋ぐ1つ以上の流体路を備えることがある。実施形態において、アンカーが小柱網を通って挿通され、強膜に留置されると、流入口は、眼の前房の中にあり、流出口は、シュレム管の中にあり、これによって、アンカーは、流体流路を通して前房からシュレム管へ流体を導く。いくつかの実施形態において、流体流路は、開いたチャンネル流路、例えば開かれたチャンネル流路を有する
図4N~
図4Pによって例示されるものであり、流入口、流出口および流体流路は、1つの単一の開いた通路である。他の実施形態において、流体流路は、囲まれた通路、例えば
図4Q、
図4Rによって例示されるものである。
【0090】
アンカーが薬物溶出用アンカーである実施形態において、それは、(1)ハウジング280(およびセンサインプラント200全体)を眼球組織に確保することと、(2)連続投薬を必要とするあらゆる眼の医学的状態を援護する、例えば房水流出を改善し、緑内障を治療するために前房への徐放薬溶出を眼に提供することと、の少なくとも2つの機能に使用される。参照によって本明細書に組み込まれる「制御された薬物送達機能を備えるインプラント及びそれを使用する方法」という名称の米国特許出願公開第2015/0342875号に1つのそのようなスタンドアローンの薬物溶出用アンカーが記載されている。米国特許出願公開第2015/0342875号においてスタンドアローンの薬物溶出用インプラントとして考察されているだけであるが、薬物溶出用インプラントのアンカー部分は、本明細書において考察する眼内センサあるいは眼の前房(または他のいずれかの解剖学的部分)内に静止して残ることを意図するあらゆる他の望ましい眼内インプラントを眼の組織に固定するという追加の目的に使用できるだろうと理解されるはずである。
【0091】
好ましい実施形態において、アンカーは、上記で考察した特徴物のいくつかを備える。例えば、アンカーは、1つ以上の流体流路を備えることがあり、機械的に変形可能な端を備えることがある。この好ましい実施形態において、アンカーは、クロッキング特徴物をさらに備える。例えば、
図5A~
図5Cは、流体流路および機械的に変形可能な端とともにクロッキング特徴物を備えるアンカー500の斜視図、正面図および断面側面図を例示する。
図5D~
図5Gは、本明細書において考察するクロッキング特徴物および流体流路を備えるアンカー500を備える眼内生理学的センサインプラントの追加の斜視図および正面図をさらに例示する。詳しくは、アンカー500は、細長い本体502、保持用ヘッド504および進入用ヘッド506(上記で前に考察した)を備える。さらに、アンカー500は、流入口508および流出口510を有する少なくとも1つの流体流路を備える。実施形態において、流入口508と流出口510との間の流体流路は、保持用ヘッド504を通過するとき角度をなす。アンカー500が小柱網を通って挿通され、強膜に留置されると、流入口508は、眼の前房の中にあり、流出口510は、シュレム管の中にあり、これによって、アンカー500は、流体を前房から流体流路経由でシュレム管へ導く。
【0092】
この好ましい実施形態において、アンカー500は、杭打ち用(staking)特徴物512をさらに備える。例えば、杭打ち用特徴物512は、変形可能な端であり、端は、部分的な窪み、変形または孔をさらに備えることがある。アンカー500をハウジング280に十分に挿入すると、杭打ち用特徴物512は、変形してアンカー500をハウジング280(またはハウジング480)に付着させる(上記で変形可能な端498に関してより詳しく考察したように)。
【0093】
さらに、この好ましい実施形態において、アンカー500は、クロッキング特徴物514をさらに含む。例えば、クロッキング特徴物514は、アンカー500の保持用ヘッド504の表面の特定の幾何学的プロフィール、例えば斜角、面取り、フィレットまたは他の丸められた縁のことがある。ハウジング280は、同じように、同様な幾何学的プロフィールを含むことがあり、これによって保持用ヘッド504上のクロッキング特徴物514は、ハウジング280と適合する。クロッキング特徴物514は、アンカー500がハウジング280に挿通された後に不注意でねじれることを防ぐ。アンカー500のねじれを防止することによって、クロッキング特徴物514は、流入口508および流出口510がハウジング280および眼球内環境中の関連する解剖学的特徴物に対して適正に配置されることを保証し、従って流体流路を横切る適切な流れおよび排液を保証する。
【0094】
図5Hは、眼内生理学的センサインプラント200の例実施形態の分解図を示す。前に記載した特定の構造、例えばアンカー286、486は、残りの図のいくつかにおいて例示していないが含まれると理解されるはずである。例示した実施形態において、フェースプレート282は、電気相互配線回路270(下記にさらに詳細に記載される)を備える。電気相互配線回路270上に導電性ポスト272および表面装着キャパシタ271が提供される。次に、フェースプレート282上に集積回路290およびバッテリー230が積層構成で提供される。次に、上部カバー284がフェースプレート282と一緒に接合されて封止されたハウジング280を形成する。
【0095】
図5I~
図5Lは、
図5Hに示した眼内生理学的センサインプラント200の例実施形態の層毎の斜視図である。
図5Iにおいて、バッテリー230、集積回路290およびセンサインプラント200の他の構成要素を囲むために一緒に接合されたフェースプレート282および上部カバー284を有する完全なハウジング280を示す。
図5Jにおいて、ハウジング280の上部284を取り除いて示している。例示した実施形態において、バッテリー230は、センサインプラント200用の電気構成要素の積層体の上に提供される。いくつかの実施形態において、バッテリー230は、薄膜の繰り返し充電可能なリチウム-イオンまたはリチウム-金属バッテリーである。例示したバッテリー230の実施形態は、バッテリー接続ポスト272と接続する電気コンタクトを底面に備え、バッテリー接続ポスト272は、今度は、例えば導電性エポキシを介して電気相互配線回路270に接続される。組み立て時に、バッテリー接続ポスト272は、システム完全性の試験および追加のバッテリー230較正、例えば臨界電圧閾値試験のためにアクセスされることがある。例えば、接続ポスト272の一部は、特に電力を目的として実体化され、カソードおよびアノードとして使用されることがあり、他の接続用ポスト272は、試験用または較正用ポストのことがある。さまざまな実施形態において、ポスト272の1つ以上によって可能にされるプログラミングおよび較正は、装置の連続番号をマークすることを含む。ポスト272は、バッテリーが取り付けられる水平表面も提供すると理解されるはずである。水平表面を有することは、例えば、いくつかの電気パッドを一度に探測するため、および/または備品を試験するためにプローブカードで調べるとき有利である。
【0096】
図5Kにおいて、集積回路290が見えるようにバッテリー230を取り除いている。既に考察したように、集積回路290は、例えばコントローラ220、測定値メモリ240、送受信機/受信機250、静電容量からディジタルへのコンバータ212および関連する他の構成要素を備えることができる。
図5Lにおいて、実施形態を下記にさらに詳細に記載する電気相互配線回路270が見えるように、集積回路290を取り除いている。
図5Lは、コイル260も示す。例示した実施形態において、コイル260は、下記のようにフェースプレート282に埋め込まれている。
【0097】
図6A~
図6Dは、
図5Hに示した眼内生理学的センサインプラント200の例実施形態の層毎の上面図である。
図6Aは、フェースプレート282の内表面を示す上面図である。本明細書においてさらに考察するように、フェースプレート282の内表面の周縁部の周りに気密シール288を形成することができる。フェースプレート282の内表面の中または上に電気相互配線回路270を形成することができる。電気相互配線回路270は、センサインプラント200のさまざまな電気構成要素の間の電気接続を行うためのさまざまな導電パッド274およびトレースを備えることができる。これらの導電パッドおよびトレースは、コイル260の埋め込まれた銅ループの上のフェースプレート282の内表面に提供することができる。埋め込まれたコイル260の銅コイル上に、コイルを電気相互配線回路270から電気的に絶縁するために、絶縁層を設けることができる。この絶縁層は、例えばポリイミド、パリレンなどのポリマーか、フォトレジストまたはSU-8、BCBを含む他の光パターン化可能なポリマーか、あるいは光パターン化可能なポリイミドであってよい。絶縁層は、例えば、物理的気相堆積(PVD)によって堆積した酸化シリコンなどの酸化物または窒化物層であってよい。他の絶縁層が可能である。例示した実施形態において、電気相互配線回路270は、フェースプレート282を通り、生理学的センサ210の電極と接続する導電性バイアに接続された2つの電気パッド273を備える。
【0098】
図6Aは、例示する実施形態において、フェースプレート282の内表面に埋め込まれた導電性ループ、例えば銅、銀、金、白金、タングステン、低抵抗率シリコン、例えばホウ素またはリンなどの不純物でドープしたシリコンからなるコイル260を示す。好ましい実施形態において、コイル260は、上部表面がフェースプレート282の表面と同じ高さになるようにフェースプレート282に全体が埋め込まれている。好ましい実施形態において、コイル260は、構造体がスパッタリング、メッキ、または他の堆積方法によって導電材料(例えば銅、銀、または他の関連材料)で満たされる前にシリコン上に堆積される裏張り酸化物、窒化物、または他の絶縁材、例えばポリマー材料によってフェースプレート282のバルク材料から電気的に絶縁される。この裏張り材料は、コイル260をフェースプレート282から電気的に分離する。いくつかの実施形態において、コイル260のフェースプレート282からの電気的分離を改善する目的でさらなる設計要素が含まれる。例えば、絶縁性裏張り材料は、特にこの理由でわざと厚くされることがある。例えば、フェースプレート282のシリコン表面に数ミクロンの厚い酸化物の絶縁層を成長させるかまたは堆積することがあり、あるいはコイル導体の堆積の前に熱的変換によってシリコン構造体を全体として二酸化シリコン構造体に変換することがある。コイル260の近傍のシリコン材料中の寄生静電容量または渦電流効果を最小にするさらなる手法として、フェースプレート282は、製造プロセス時のフェースプレート282のシリコンの選択除去によりその最終配置においてコイルの下および/または上に空気または真空の隙間があるように設計されることがある。いくつかの実施形態において、埋め込まれたコイル260は、他の実施形態において剛性および強度などの構造的懸念を考慮した場合より必ずしもフェースプレート282を厚くする必要はない。従って、コイルループをフェースプレート282の内表面に埋め込むことによって、コイルをフェースプレート282とは別個の構成要素として提供した場合に必要とされるコイル260のための追加の空間がハウジングの内部にほとんどまたはまったく必要ないため、ハウジング280をより小さくすることができる。代わりの実施形態において、
図9A~
図9Dに関連して下記で考察する可撓性回路としてコイル260および相互配線回路270を別個の構成要素として提供する。さらに別の実施形態において、コイル260および相互配線回路270は、剛直である別個の構成要素、例えば薄い自立シリコン片、またはガラスなどの他の剛直材料、またはエポキシ、BCB、またはSU-8などの剛直ポリマーに埋め込まれたコイルとして提供される。可撓性回路900または他のいずれかの個別の構成要素は、本明細書にさらに詳しく記載する特定の熱膨張特性を有利に回避することがある。可撓性回路900は、本明細書にさらに詳しく記載する特定の熱膨張特性を有利に回避することがある。例えば、1つの単一片の可撓性回路900は、有利である。さらに、またはあるいは、コイル260をフェースプレート282に埋め込むことによって、コイルループを作り上げる導電性材料は、厚くすることができる。なぜならば、そうしてもフェースプレートによって既に占められただろう空間を超えて追加の空間を必ずしも占有するわけではないからである。導電性の材料の厚さならびにアスペクト比(埋め込まれた導電性材料の厚さ対幅)も、コイルをフェースプレート282に埋め込むことによって、フェースプレートの上にコイルを製造する足し算的なプロセスを用いる他の方法で実現できるよりも大きくし得る。導電性材料の厚さの増加は、コイル260の電気抵抗を低くし、そのことが、その品質因子または効率を改善する。さらに、巻き数増大がコイル260のインダクタンスを改善し、効率も改善する。コイル260を作り上げる導体の端は、コイルをセンサインプラント200の他の構成要素、特に集積回路290と接続するように電気相互配線回路270の一部として提供された導電性パッド274に接続することができる。
【0099】
図6Aは、フェースプレート282の内表面に提供された湿度センサ610も示す。湿度センサ610は、ハウジング280の内部の水分を検出するために用いることができる。これは、気密シールまたはハウジング280の破損または不良に起因するセンサインプラント200の不良または間近に迫る不良を検出する目的で有用であり得る。なぜならば、バッテリー230のようなその構成要素のいくつかは、あまりに多い水分に曝露された場合、動作寿命の低下、性能の低下、極端には故障に見舞われるからである。ハウジング280の内部の非常に遅い水分の漏れの場合、湿度センサ610は、他の場合に可能になるものより顕著に早い漏れの通知を提供し得る。
【0100】
いくつかの実施形態において、湿度センサ610は、離間した櫛状電極、例えば
図6Aに示す交差指電極612、614を備えるキャパシタであってよい。電極612、614の間に、上に、または周りに感湿誘電体を配置してよい。湿度センサ610の静電容量は、感湿誘電体の誘電率に依存する。従って、湿気に曝露されると誘電率が変化する材料を用いると、湿度センサ610の静電容量の変化を検出することによってハウジング280の内部の水分を検出することができる。一実施形態において、交差指電極の上に誘電体は施用されていないが、空気中の水分含有量が増加するときインプラントの内部の空気それ自体の誘電率の変化を検出する。櫛状の交差指電極612、614の指または枝の数、ならびに指または枝の間の間隔は、集積回路の静電容量感度に基づいて特定の範囲の静電容量を発生させるように調節および設計し得る。いくつかの実施形態において、湿度センサ610は、その両側のそれぞれに10本または20本またはさらに多くの指または枝を備える。指または枝の数を増加することによって、湿度センサ610は、増加した感度を有し、集積回路によって記録されるのに十分に高い静電容量信号を出力する。
【0101】
いくつかの実施形態において、ハウジング280の内部にゲッター材料を提供することができる。ゲッター材料、例えば乾燥材は、水分、気体などを吸収するか、吸着するかまたは化学的に結合してハウジング280の内部の敏感な構成要素からそれらの汚染物質を遠ざけ、適当な操作環境を維持するために用いることができる。そのようなゲッター材料は、水分不浸透性材料、例えばセラミックでさえ長期間、例えば数年または何十年にわたって水分に曝露された場合、ある程度の水分が通り抜ける(厚さに依存して)ことを許すため、湿度センサ610がない場合であっても有用だろう。そのようなゲッター材料は、ハウジングへのフェースプレートの気密操作時にインプラント内に捕捉された残留ガスまたは水分を除去するか、吸収するか、吸着するかまたは化学的に結合するためにも有用である。例えば、インプラント組み立ておよび封止プロセスが真空下あるいはヘリウム、アルゴン、または窒素などの不活性ガス環境下で行われる場合であっても、それでも残留する他のガスおよび水蒸気が不用意に捕捉される。そのような捕捉された化学種は、何もしなければバッテリーと反応し、その性能を劣化させるか、または集積回路と反応し、その性能が時間とともにふらつく原因となることがある。さらに、時間とともにさまざまな構成要素からまたは内部インプラント体積中のさまざまな構成要素の表面から気体および/または湿気が脱気される。これらの構成要素は、フェースプレートそれ自体、集積回路、可撓性コイル回路および相互接続のために用いられる導電性エポキシを含む。しかし、湿度センサ610を含む実施形態において、ゲッター材料を湿度センサのための感湿誘電体として用い、それによって、ハウジング280の内部の水分を除去または分離するだけでなくそのような水分を検出することも可能にする相乗効果を実現する。ゲッター材料は、例えば、交差指電極の上に施与または堆積することができるキャリア材料中に懸濁した収着用化学種であってよい。例えば、窒素、酸素、水蒸気などと反応する金属または金属合金で作られたものなどの収着用粒子、あるいはガスまたは水蒸気を吸収するミクロ多孔質またはナノ多孔質粒子、例えばゼオライト鉱物を交差指電極上に施与した液体接着剤中に懸濁することができる。ゲッター材料は、湿度センサ610のための感湿誘電体として用いられてよいが、このことは、必ずしも必要ない。ゲッター材料は、他の場所、またはハウジング280全体に配置することができる。ゲッターは、例えば、ペーストまたは表面コーティングまたはプリフォームとして知られる予め形成された固体構成要素としてハウジング280中に提供することができる。
【0102】
湿度センサ610の静電容量は、静電容量からディジタルへのコンバータを用いて決定することができる。いくつかの実施形態において、静電容量型圧力センサ210を読み取るために用いた同じ静電容量からディジタルへのコンバータ212を湿度センサ610にも接続し、その静電容量を読み取るためにも用いる。このようにして、追加の静電容量からディジタルへのコンバータのスペース、コスト、および/または複雑さを回避することができる。
【0103】
湿度センサ610の静電容量は、設定された予定に従って、および/またはオンデマンドで、例えば、外部装置によってセンサインプラント200から眼内圧測定値がダウンロードされるときはいつでも、コントローラ220によって定期的に読み取ることができ、あるいは外部装置によってバッテリー230を再充電するときも湿度センサ610の静電容量も読み取ることができるだろう。時間とともに湿度センサ610の静電容量を追跡することによって、ハウジング280の内部の水分を検出することができる。例えば、コントローラ220および/または外部装置は、湿度センサ610の静電容量が時間とともに閾値を超える量の変化をするか決定することができる。湿度センサ610からの測定値に基づいて、センサインプラント200の不良または間近の不良を特定することができる。
【0104】
湿度センサ610からの測定値は、気密シール288の完全性を保証するためにも製造時に用いることができる。製造時に、フェースプレート282と上部カバー284とを乾燥した環境中で一緒に封止することができる。次に、湿度センサ610を用いて封止したハウジングの内部のあらゆる外来水分を観測することができる。ハウジング280を封止した後に湿度センサ610から静電容量初期値を読み取ることができる。次に、その後の静電容量値を後に湿度センサ610から読み取り、静電容量初期値と比較することができる。任意選択として、欠陥のある気密シール288を通るあらゆる水分の入り込みを加速するために、ハウジング280を外部の高湿度環境、および同じく任意選択として増加した圧力に曝露することができる。湿度センサ610の静電容量に閾値を超える変化があれば、外科的にセンサインプラント200を患者の眼の中に移植する前に、気密シール288の不良を有利に検出することができる。
【0105】
図6Bは、フェースプレート282の上の位置に積層された集積回路290(半透明な影付きで図示)を示す上面図である。例示するように、集積回路290の底面は、集積回路と下にある電気相互配線回路270との間を電気接続するために複数の電気コンタクト、例えばパッド、コネクタなどを備えてよい。
【0106】
図6Bは、電気相互配線回路270のパッドのいくつかの上に配置された導電性ポスト272を示す。導電性ポスト272は、センサインプラント200のハウジング280の内部の構成要素の積層構成において上の方にある構成要素、例えばバッテリー230との接続を行うために用いることができる。バッテリー230は、導電性エポキシで相互配線回路270および導電性ポスト272に接続される。導電性ピラーは、組み立て時に集積回路とのインターフェースとするために使用される探測用位置を提供することがある。
図6Bは、所定の場所に配置された表面装着キャパシタ271も示す。実施形態において、表面装着コンデンサ271は、周波数スパイク、例えばディジタルロジックスイッチングに応答するデカップリングと関連するものを吸収するように構成される。
【0107】
図6Cは、集積回路290の上の所定の場所に積層されたバッテリー230を示す上面図である。
図6Dは、バッテリーの下においてその底面で行われる電気接続を見えるようにするために半透明の影を付けてバッテリー230を示すことを除いて
図6Cと同じ図である。導電性ポスト272aをバッテリー230のアノードコンタクトに接続し、一方、導電性ポスト272bをカソードコンタクトに接続する。これらの接続は、例えば導電性エポキシを用いて行うことができる。アノードコンタクトトレーシング272aは、相互配線回路270の背面がより信頼できるシステムへの接地を有することを保証するために用いることができるように、カソードトレーシングコンタクト272bと比較して大きくすることがあることが理解されるはずである。バッテリー230と接続しない追加の導電性ピラーが含まれることがある。例えば、これらの追加の導電性ピラーは、センサインプラント200のプログラミング、例えば組み立て時のASICのプログラミング、バッテリー230および関連構成要素の電圧のチューニング、電流および電圧のトリミング時などに用いることができる。
【0108】
図7Aは、眼内生理学的センサインプラント200のハウジング280用フェースプレート282の例の一部分の断面図である。いくつかの実施形態において、フェースプレート282は、シリコン基板710、720、730またはさらに多くの積層された基板の積層構成を備えることができる。例示した実施形態においてフェースプレート282の全厚は、200μmであるが、他の実施形態においてフェースプレートの厚さは、例えば50μm~300μmであってよい。シリコン基板710、720、730のそれぞれは、バルクシリコン層あるいは、例えばバルクシリコンに適当なドーパントを加え、および/または多結晶シリコンを用いることによって形成することができる高導電率シリコン層であってよい。例示した実施形態において、下の基板710は、厚さ65μmであるバルクシリコン層であり、中のシリコン基板720は、厚さ10μmである高導電率シリコン層であり、上の基板730は、厚さ120μmであるバルクシリコン層であるが、他の厚さも用いることができる。
【0109】
コイル260を形成する導電性ループは、上部基板720のバルクシリコン層の上表面(フェースプレート282の内表面に対応する)に埋め込むことができる。例示した実施形態において、コイル260のループは、上の基板720のバルクシリコン層の中に形成されたチャンネルの中に25μmの深さで埋め込まれ、8μmの幅とコイル260のループの間の4μmの隙間とを有する。しかし、他の深さおよび関連寸法も用いることができる。
【0110】
図示するように、上および下のシリコン基板710、720は、高導電率シリコン層を向かい合わせて一緒に積層し、結合することができる。下の基板710のバルクシリコン層は、静電容量型圧力センサ210の領域においてエッチング除去または他の方法で除去し、それによって、その領域における下の基板の高導電率シリコン層を露出させることができる。いくつかの実施形態において、高導電率シリコン層は、1μm~20μmの厚さを有することができる。これら2つの層の厚さは、同じかまたは異なる厚さのことがある。
【0111】
高導電率シリコン層は、静電容量型圧力センサ210用の2つの電極216、217として使用することができる。例示した実施形態において、下の基板710の高導電率シリコン層は、可撓性ダイヤフラム電極216として使用され、一方、上の基板720の高導電率シリコン層は、静電容量型圧力センサ210用の対向電極217として使用される。2つの電極216、217は、
図7Aにおいて互いに接触しているように見えるが、少なくとも圧力センサ210の領域においてそれらの間に隙間がある。2つの電極216、217の間の隙間は、例えば0.05μm~2μmであってよい。この隙間は、可撓性ダイヤフラム電極216の上の領域において対向電極217として使用される高導電率シリコン層の厚さの一部をエッチング除去するかまたは他の方法で除去しておくことによって形成することができる。隙間は、可撓性ダイヤフラム電極216の厚さの一部を同様な方法で除去しておくことによっても形成することができる。可撓性ダイヤフラム電極216と対向電極217との間の隙間は、真空封止してもよく、あるいは、隙間は、空気または別のガスで所望の圧力まで満たしてもよい。
【0112】
対向電極217の周りには、それを可撓性ダイヤフラム電極216から電気的に分離するために分離トレンチ218を形成することができる。静電容量型圧力センサ210の電極216、217を電気相互配線回路270の導電性パッド273に電気的に接続するために、上部基板720のバルクシリコン層を通して導電性バイアを形成することができる。
【0113】
実施形態において、フェースプレート282は、静電容量型圧力センサ210と同じように2つの電極216、217との間の隙間との第2の組を備える追加の静電容量型センサを備える。追加の静電容量型センサは、追加の静電容量型センサを静電容量型圧力センサ210と同じように集積回路290に接続するために用いることができる、別の導電性バイア219の対と導電性パッド273の対とにさらに接続される。しかし、圧力が可撓性ダイヤフラム電極216に作用し、圧力変化に応答して変形させることができるように下の基板710に開口部を備える静電容量型圧力センサ210と異なり、追加の静電容量型センサは、下の基板710に開口部を備えない。むしろ、下の基板710は、センサ位置にわたって連続的であり、(追加の静電容量型センサの)電極216が外部圧力の変化に応答して動くことを妨げる。
【0114】
追加の静電容量型センサは、外部圧力変化に応答しないが、フェースプレート282内の歪み、例えば封止されたハウジング280を作り出すハウジング284へのフェースプレート282の付着時に生じる結合応力、フェースプレート282とハウジング284との間の熱膨張率(CTE)不適合によって生じる応力、あるいは温度変化の結果であり得るフェースプレート282に作用する他の応力などによって引き起こされる歪みを検出するために用いることができる。そのような応力は、静電容量型圧力センサ210の出力に影響を及ぼし、その圧力測定値に誤りを生じさせることがある、フェースプレート282中の歪みの原因となり得る。追加の静電容量センサを備えると、フェースプレート282中の歪みを測定することが可能になり、静電容量型圧力センサ210の出力を補償または補正してより正確な圧力測定値を得るためにこの情報を用いることができる。特定の実施形態において、上記の効果を測定し、温度の変化に帰属させることによって追加の静電容量型センサを温度センサとして用いることができる。そのように用いるときその出力を較正することができる。
【0115】
図7Bは、生理学的センサ210がフェースプレート282の中に埋め込まれている眼内生理学的センサインプラント200の実施形態を例示する。
図7Aに関して上記で考察したように、下の基板710のバルクシリコン層を静電容量型圧力センサ210の領域において除去し、それによって、可撓性ダイヤフラム電極216として使用される下の基板の高導電率シリコン層を露出させることができる。
図7Bに示すように、これは、静電容量型圧力センサ210がフェースプレート282の外表面(すなわち下の基板710のバルクシリコン層の底面)から埋め込まれる結果となる。フェースプレート282中の凹部は、高さが下の基板710の除去されたバルクシリコン層の厚さに対応する側壁を有する。可撓性ダイヤフラム電極216は、繊細であり得るので、フェースプレート282中のこの凹部におけるその配置は、外科移植前および外科移植時にインプラントを取り扱うかまたは操作するとき損傷に対する保護の手段を提供する。
【0116】
埋め込まれた可撓性ダイヤフラム電極216の配置は、その保護特性にとって有利であり得るが、眼内で動作する静電容量型圧力センサ210の能力に影響を及ぼすだろういくつかの複雑化も引き起こし得る。例えば、フェースプレート282中の凹部は、センサインプラント200が患者の眼に挿入されるとき可撓性ダイヤフラム電極216に隣接してエアーポケットを捕捉する傾向を有することがある。エアーポケットが房水から可撓性ダイヤフラム電極216へ少なくとも部分的に圧力を伝達することがあるが、フェースプレート282中の凹部を満たすかまたは部分的に満たすエアーポケットが、エアーポケットと房水および/または可撓性ダイヤフラム電極216との界面における表面張力によって発生する力に起因するか、または静電容量型圧力センサ210に作用する寄生静電容量に影響を及ぼすことなどの他の効果に起因して、IOP測定値の正確さに悪影響を及ぼすことも可能である。
【0117】
この潜在的な課題は、凹部の内側に親水性コーティングを提供することによって少なくとも部分的に改善されることがある。例えば、フェースプレート282中の凹部の周壁を親水性材料で被覆することがある。同様に、凹部の内部に配置された可撓性ダイヤフラム電極216を同じように親水性材料で被覆することがある。凹部内の親水性材料の存在は、房水による凹部の濡らしを容易にすることがある。適当な親水性材料の例は、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタルを含むさまざまな酸化物、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタルを含むさまざまな窒化物、炭化ケイ素、炭化チタンを含むさまざまな炭化物、あるいは他の関連材料を含む。そのような材料は、とりわけ、原子層堆積(ALD)、スパッタリングまたは蒸発などの物理的気相堆積(PVD)法、または化学的気相堆積(CVD)を用いて薄層として堆積されることがある。ヘパリン、ポリ-L-リジン、または他の材料などのバイオ材料を含む親水性表面を作り出す薄膜として他の材料を施用することがある。あるいはおよび/またはさらに、乾式または湿式化学エッチングまたはイオン爆撃などの物理エッチングなどのさまざまな手段を用いて表面粗さを増加させることによって凹部および/または可撓性ダイヤフラム216の周壁の親水性表面の親水性を増加させることがある。そのような粗面化は、親水性材料によるコーティングの前、後、または代わりに行われることがある。より一般的に、生理学的センサ210の漏れを減らし、摩耗を減らし、耐久性を増加させためにコーティングを提供することがある。
【0118】
いくつかの実施形態において、可撓性ダイヤフラム電極216が配置されるフェースプレート282の凹部は、眼への挿入の前に非圧縮性、圧力伝達性ゲルまたは他の物質で満たすことができる。ゲルは、凹部から空気を追い出すことがある。さらに、検出用インプラント200を外科的に移植したら、ゲルは、眼の中の房水によって静電容量型圧力センサ210(フェースプレート282の凹部の中に配置される)に圧力が及ぶことを可能にできる圧力伝達性媒質として作用し得る。非圧縮性、圧力伝達性ジェル用の適当な材料の例は、シリコーンゲル、フルオロシリコーンゲル、または他の関連材料を含む。
【0119】
図7Cは、
図7Aに示した眼内生理学的センサインプラント200のハウジング280用フェースプレート282の例の一部分の断面の斜視図である。
図7Cの斜視図は、静電容量型圧力センサ210の可撓性ダイヤフラム電極216および対向電極217をもう一度示す。この斜視図は、対向電極217の周りにそれを可撓性ダイヤフラム電極216から電気的に分離するために形成された分離用トレンチ218も示す。さらに、
図7Cにおける図は、静電容量型圧力センサ210の対向電極217を電気相互配線回路270の導電性パッド273(
図6A参照)の1つに電気的に接続するために上部基板720のバルクシリコン層を通して形成されている導電性バイアを示す。例示した断面には図示しないが、可撓性ダイヤフラム電極216を他方の導電性パッド273に電気的に接続するために、上部基板720のバルクシリコン層を通して第2の導電性バイアを形成することができる。あるいは、上部基板720などの基板は、バイアを形成するための他のいずれの金属またはシリカであってもよい。これらの導電性バイアは、静電容量型圧力センサ210からセンサインプラント200の他の構成要素に静電容量信号を送るために用いられる。
【0120】
図7D、
図7Eは、コイル260が眼内生理学的センサインプラント200の電気相互配線回路270にどのようにして電気的に接続されるかの例実施形態を例示する。既に考察したように、コイル260は、上部基板720のバルクシリコン層の上部中に形成されたチャンネルに埋め込まれた導電性材料262で形成されてよい。チャンネルは、フェースプレート282の周縁の周りに螺旋を描いてループの螺旋を形成する単一の連続チャンネルであってよい。チャンネルの中に導電性材料262が堆積されたら、埋め込まれた導電材料262の上に絶縁層722を形成することができる。絶縁層は、例えば酸化物層またはポリマー層であってよい。コイル260の各端の上の絶縁層722の中に孔を残すことができる。次に、絶縁層722を通して電気相互配線回路270の一部である導電性パッド274(
図6A参照)をコイル260のそれぞれの端に接続することができる。
【0121】
図8Aは、埋め込まれたコイル260のループと生理学的センサ210との間に応力除去用切除部810を備える眼内生理学的センサインプラントフェースプレート282の例実施形態の上面斜視図である。応力除去用切除部810に加えて、
図8Aは、コイル260の埋め込まれたループと、静電容量型圧力センサ210の2つの電極216、217から上部基板720のバルクシリコン層を通る導電性バイア219と、を示す。
【0122】
コイル260がフェースプレート282の表面に埋め込まれる実施形態において、埋め込まれたコイルがフェースプレートの中に一体化されている静電容量型圧力センサ210の機械的性質に影響を及ぼす可能性がある。例えば、コイル260を作り上げる導電材料、例えば銅は、フェースプレート282および静電容量型圧力センサ210を作り上げる材料、例えばシリコンと同じ熱膨張係数を有することはありそうもない。従って、フェースプレート282中にコイル材料が堆積された後にセンサインプラント200の温度が変化する場合(例えば、患者の眼の中に外科的に移植された後にセンサインプラントが体温に上昇するとき)には、2種類の材料の異なる熱膨張係数がフェースプレート中に機械的応力および歪みをもたらす原因となることがある。それらの機械的応力および歪みは、静電容量型圧力センサ210の可撓性ダイヤフラムの挙動を変える潜在能力を有する。このことが、今度は、静電容量型圧力センサ210を用いて取得される眼内圧測定値の正確さを低下させることがある。
【0123】
温度によって誘導されるフェースプレート282中の機械的応力および歪みは、温度が正常な人体温度にまたは正常な人体温度の近くに保持される製造環境においてフェースプレート中にコイル材料を堆積することによって低下することがある。フェースプレート282は、温度によるかまたは他の手段によるかのどちらかで埋め込まれたコイル260のループによって誘導されるあらゆる機械的応力および歪みの効果を軽減する応力除去切除部810も備えてよい。応力除去切除部810は、静電容量型圧力センサ210を囲んでよく、コイル260のループと静電容量型圧力センサ210との間に配置されてよい。
【0124】
図8Bは、応力除去用切除部810を通るフェースプレート282の断面の斜視図である。
図8Bは、フェースプレート282の下の基板710および上の基板720を示す。コイル260のループは、上の基板720のバルクシリコン層に埋め込まれて示される。
図8Bは、静電容量型圧力センサ210の可撓性ダイヤフラム電極216および対向電極217も示す。対向電極217から上の基板720を通って第1の導電性バイア219aが通り、一方、それぞれ対向電極217および可撓性ダイヤフラム電極216の延長であるかまたは対向電極217および可撓性ダイヤフラム電極216に隣接する基板710、720の高導電性シリコン層から上部基板を通って第2の導電性バイア219bが通る。
【0125】
例示した実施形態において、応力除去用切除部810は、フェースプレート282の上部基板720のバルクシリコン層を通るチャンネルである。例示した実施形態において、このチャンネルは、静電容量型圧力センサ210の可撓性ダイヤフラム電極216の機械的に能動的な部分を完全に囲み、一方、コイル260のループは、応力除去用切除部810を完全に囲む。従って、応力除去用切除部810は、コイル260のループと可撓性ダイヤフラム電極216の機械的に能動的な部分との間に配置される。応力除去用切除部810は、機械的に可撓性ダイヤフラム電極216の機械的に能動的な部分をフェースプレート282の残りから切り離すことを助ける。従って、コイル216の埋め込まれたループからの結果として生じる機械的応力は、温度変化によって誘導されたとしても他の手段によって誘導されたとしても可撓性ダイヤフラム電極216の機械的性質に及ぼす影響は低下する。
【0126】
応力除去用切除部810は、上の基板720のバルクシリコン層の厚さ全体を通り抜けて示されるが、他の実施形態において応力除去用切除部は、上の基板720のバルクシリコン層を部分的にしか通らないことがある。あるいは、応力除去用切除部810は、上の基板720を完全に通り抜け、下の基板710を部分的に通ることがある。応力除去用切除部810は、円形ループまたは卵形ループとして例示されるが、応力除去用切除部810のための他の形も可能である。さらに、いくつかの実施形態において、可撓性ダイヤフラム電極216の周りの種々の角度の位置に複数の別々の応力除去用切除部810があり得る。これらの応力除去用切除部のいくつかまたはすべては、必ずしも完全に静電容量型圧力センサ210を囲まないことがある。
【0127】
図9Aは、眼内生理学的センサインプラント200用のフェースプレート282および回路基板900の実施形態を例示する。コイル260および/または電気相互配線回路270は、
図5H~
図6Dに示すようにフェースプレート282の内表面に埋め込まれるか、または内表面に形成することができるが、すべての実施形態においてこれを当てはめる必要はない。例えば、
図9Aに示すように、コイル260および/または電気相互配線回路270は、フェースプレート282とは別個である1つ以上の構成要素として形成することができる。例示した実施形態において、コイル260および電気相互配線回路270は、回路基板900上に設けられる。回路基板900は、フェースプレート282の上に回路基板を配置すると導電性バイア219で静電容量型圧力センサ210の電極216、217に接続する2つの電気パッド273を備える。一般に、回路基板900は、シリコンから、ポリイミドなどのポリマーから、あるいはガラスまたは他のポリマーなど他の材料から構築され得る。回路基板900は、例えば、一緒に積層することができる1巻き以上のコイルをそれぞれ有する複数のピースである、多層コイルを作り出すために製造時に一緒に積層された、いくつかの層のことがある。例えば、2層のコイルをそれぞれ有する3つの層を積層して6層コイルを作り出すことがある。上層は、その上側に回路トレースを有するだろう。複数のピースを積層するとき、各層の間の相互配線が必要である。
【0128】
図9B、
図9Cは、折り畳まれていない構成と折り畳まれた構成とでの、回路基板900に似た回路基板の例実施形態の上面図および斜視図を示す。例えば、
図9Bは、折り畳み可能な回路基板902を例示する。例示した回路基板902の実施形態は、回路基板が配置されるように設計されるフェースプレート282の表面より好ましくは大きい表面積を有する。より大きな回路基板902の表面積は、折り畳まない設計において利用可能であるより追加の面積をコイル260のために提供する。例えば、回路基板902の2つの2層コイル区分905を互いの上に折り畳むことによって4層コイルと等価な構成を構築することができる。そのような構成は、例えば、4層モノリスコイルを実現することが不可能であるかまたはコスト的に無理である製造上の制限を克服するために有用だろう。回路基板902は、回路基板902のさまざまな区分905がフェースプレート282によって提供される所定面積(footprint)に納まるように折り畳まれることを可能にする複数の可撓性連結領域910も備える。いくつかの実施形態において、連結領域910によって繋がれている回路基板902の区分905も、回路基板全体が可撓性となるように可撓性である。しかし、他の実施形態において、連結領域910によって繋がれている区分905は、剛直であるかまたは比較的剛直なことがある。例えば、
図9Bは、折り畳み可能な回路基板902が、3つの区分905を2つの可撓性連結領域910とともに備えることを例示する。同様に、例えば、
図9Cは、折り畳み可能な回路基板904が2つの区分905を1つの可撓性連結領域910とともに備えることを例示する。本明細書において、もっと多い(またはもっと少ない)区分および/または可撓性連結領域が想定されることが理解されるはずである。
【0129】
図9Dは、回路基板、例えば
図9Bに例示した回路基板902、の複数の区分905にどのようにしてコイル260を形成することができるかの例実施形態を例示する。いくつかの実施形態において、コイル260は、回路基板902の単一区分905に形成される導電性トレースである。コイル260を作り上げる導電性トレースは、回路基板902の選ばれた区分905に導電材料をパターン形成することによって作ることができる。導電材料は、回路基板902の1つ以上の層にパターン形成することができる。導電性トレースの幅および高さは、コイル260の電気抵抗を許容される量に減らすように指定することができる。
【0130】
導電性トレースは、複数のループを螺旋ループとして形成するように回路基板902の区分905にレイアウトすることができる。ループの数を増加することによって、コイル260のインダクタンスを増加することができ、そのことによってコイルの感度も増加することができる。しかし、回路基板902の所定の区分905において利用可能な空間は、形成することができるループの数を制限することがある。形成することができる導電性トレースの高さという点で導電性材料を堆積するために用いる製造プロセスに制約があり、それによって、トレースの電気抵抗が十分低くなるように導電性トレースを広くする必要がある場合、コイルループを形成するための空間の不足が深刻化し得る。しかし、この空間の制約は、導電性トレースを回路基板902の複数の別々の区分905に、回路基板が折り畳まれた構成のとき別々の区分905に形成したコイルループが互いに整列するようにパターン形成することによって克服することができる。回路基板902の別々の区間905に形成したコイルループは、回路基板が折り畳まれた構成のとき、導電性トレースを通る電流が回路基板の別々の区分にパターン形成されたコイルループに弱め合うのではなく強め合う磁場を誘導するように配置することもできる。
【0131】
図9Dは、回路基板902の第1の区分905aの一部および第2の区分905bの一部を示す。これら2つの区間905a、905bは、連結領域910によって繋がれている。コイル260を形成する導電性トレースは、回路基板902の区間905a、905bの両方ならびに連結領域910に形成される。回路基板902の第1の区分905a中に導電性トレースの第1の端264aを示す。導電性トレースは、第1の端264aから半径方向外向きで反時計回りに回路基板902の第1の区分905aの周りに螺旋を描いて第1のコイルループの組260aを形成する。回路基板902の第2の区分905b中に導電性トレースの第2の端264bを示す。導電性トレースは、連結領域910から第2の端264bへ半径方向内向きで時計回りに回路基板902の第2の区分905bの周りに螺旋を描いて第2のコイルループの組260bを形成する。従って、第1の端264aから第2の端264bへの経路に従うとき電流が流れる回転方向は、2つの区分905a、905bにおいて反対である。導電性トレースの高さおよび幅は、回路基板902の第1の区分905aと第2の区分905bとの両方において同様であってよい。
【0132】
例示した実施形態において、導電性トレースの中央部分260cは、回路基板902の連結領域910に配置される。いくつかの実施形態において、導電性トレースの中央部分260cは、連結領域910の外の導電性トレースの高さより低い高さで形成して回路基板902の連結領域における導電性トレースの可撓性を改善することができる。導電性トレースの幅が一定のままだったら、高さのこの低下は、導電性トレースの中央部分260cの電気抵抗率の増加を招く結果となるだろう。電気抵抗率のこの増加を回避するかまたは減少するために、導電性トレースの中央部分260cは、
図9Dに例示するように、連結領域910の外における導電性トレースの幅より大きい幅で形成してもよい。
【0133】
コイル260の第1の端264aから導電性トレースを通って伝搬する電流は、回路基板902の第1の区分905aの周りに螺旋を描く第1のコイルループの組260aを通って反時計回りに進むだろう。電流は、次に、導電性トレースの中央部分260cを通り、連結領域910を横断して回路基板902の第2の区分905bに至るだろう。回路基板902の第2の区分905bにおいて、電流は、第2のコイルループの組260bを通って導電性トレースの第2の端264bの方へ時計回りに伝搬するだろう。言い換えると、例示した導電性トレースのレイアウトに起因して、第2のコイルループの組260bを通る電流の伝搬の方向は、回路基板902が折り畳まれていない構成のときの第1のコイルループの組260aを通るその伝搬の方向と反対である。両方のコイルループの組260a、260bは、導電性トレースのそれぞれの端264a、264bから半径方向外向きに同じ方向、例えば反時計回りに螺旋を描くが、導電性トレースを通る電流は、対応する端264aから一方のコイルループの組260aを通って中央部分260cへ、中央部分260cから第2のコイルループの組260bを通って対応する端264bの方へ伝搬する。
【0134】
図9Dを参照して、回路基板902が折り畳まれてない構成のとき、導電性トレースの第1の端264aから第1のコイルループの組260aを通って伝搬する電流は、紙面から出る方向の磁場(規約に従う電流および右手の法則を考慮したとき)を誘導するだろう。対照的に、第2のコイルループの組260bを通って導電性トレースの第2の端264bの方へ伝搬する同じ電流は、紙面に入る方向の磁場を誘導するだろう。しかし、第1および第2の区分264a、264bを、一方が他方の上に直接積層される構成に配置するように回路基板902を連結領域910で折り畳むと、この電流によって第1のコイルループの組260aおよび第2のコイルループの組260bにおいて誘導される磁場は、互いに整合する向きに整列する。従って、回路基板902が折り畳まれた構成のとき、第1のコイルループの組260aおよび第2のコイルループの組260bを通る電流によって誘導される磁場は、弱め合うのではなく強め合う。
【0135】
図9Dに示したコイル構成によって例示した技法は、回路基板902の個々の区分905に形成することができるよりも大きな数のループを可能にすることによって、コイル260の感度を増加するために用いることができる。
【0136】
上記で
図9B、
図9Cによって例示した折り畳まれた回路基板902、904の代替として、回路基板900は、代替的に積層されることがある。詳しくは、
図9E~
図9Gは、上のレベル、中のレベル、および下のレベルを備える積層回路基板の上面斜視図を、分解構成(
図9E)および積層構成(
図9F)で例示する。上のレベル、中のレベル、および下のレベルのそれぞれは、
図9Gによって例示するように個別パッド912において一緒に結合される。実施形態において、これら個別のパッド912は、導電性エポキシビーズによって互いに接続される。
【0137】
図10Aは、眼内生理学的センサインプラント200のハウジング280を構成する構成要素の間の気密シール288の例実施形態の上面図である。既に考察したように、ハウジング280は、底部フェースプレート282および上部カバー284からなってよい。気密シール288は、これらのハウジング部品の周縁の周りの対合面において提供されてよい。
【0138】
いくつかの実施形態において、気密シール288は、フェースプレート282と上部カバー284とを対合面において一緒に溶接するか、ハンダ付けするか、またはロウ付けすることによって形成される。これは、例えば、対合面において1層以上のハンダ付け材料を提供し、熱源を用いてハンダ付け材料を融解させることによって実現することができる。ハンダ材料は、スズまたはインジウムなどの低い融点を有する金属のことがあり、あるいは、金またはアルミニウムなどのより高い融点を有する金属のことがある。あるいは、ハンダは、2種類以上の金属の混合物または合金のことがあり、金-スズハンダ、インジウム-スズハンダ、インジウム-銀ハンダ、スズ-銀-銅ハンダ、または他の関連材料など、それらの純粋な形における個々の金属のいずれよりも低い融点を有することがある。ハンダは、その組成における2つ以上の金属の比が、80~20パーセント重量比における金-スズのように、その系での周りの金属の比と比較してハンダの融点が局所的な融点の極小値を有するようなものである共晶系のことがある。いくつかの実施形態において、ハンダ付け材料は、フェースプレート282または上部カバー284あるいは両方の構成要素の上にその構成要素と一体となるように提供されることがあり、あるいは、組み立て時に2つのピースの間に配置される別個のプリフォーム構成要素として提供されることもあり、あるいは、組み立て時にペーストとして封止位置に施与されることもある。
【0139】
ハウジング280を封止する際にセンサインプラント200の内部構成要素への熱損傷を回避するようにハンダ付け材料を融解させるために、局所化された熱源を用いると有利なことがある。いくつかの実施形態において、反応性結合と呼ばれるプロセスにおいて反応性ナノスケール多層スタックを局所熱源として用いることができる。いくつかの実施形態において、レーザ溶接またはレーザ支援拡散プロセスを用いて、メタル化されていないガラスハウジングをメタル化されていないシリコンフェースプレートに直接結合させる。さらに、シリコンフェースプレートとハウジングとの間のハンダまたは他のメタル化中間層とともにレーザプロセスを使用することができる。
【0140】
図10Bは、眼内生理学的センサインプラント200用ハウジング280のフェースプレート282と上部カバー284との間の気密シール288の例実施形態の断面図である。気密シール288は、例えば、ハンダ付け材料1014の上および/または下の層を備えることができる。ハンダ付け材料1014の上の層は、上部カバー284の対合面に施用または結合することができ、一方、ハンダ付け材料1014の下の層は、フェースプレート282の対合面に施用または結合することができる。上部カバー284またはフェースプレート282のどちらかのハンダ付け材料1014の上の層に隣接して、それらの2つのハウジング部品が連結されたときハンダ付け材料1014の層の間にナノスケールの反応性多層スタック(RMS)が提供されるように、反応性ナノスケール多層スタックを形成することができる。あるいは、RMSは、上部カバー284またはフェースプレート282のどちらかの上にハンダ付け材料なしで直接提供されることがある。あるいは、組み立て時に上部カバー284とフェースプレート282との間に配置される別個のプリフォーム構成要素としてRMSおよび/またはハンダ付け材料1014を提供することがある。反応性ナノスケール多層スタックは、第1の材料1010、例えばアルミニウムと、第2の材料1012、例えばニッケルとの交互層を備えることができる。Ti/Al、Pd/Al、Zr/Si、Pd/Sn/Pd/Alなどの種々の金属の組み合わせ、または他の関連金属の組み合わせを有する多数の他のRMS系が可能である。層の数は、2、3個~数ダース個~数百個の範囲のことがあり、各層は、厚さ数ナノメートルのオーダーのことがある。例えば、レーザからのエネルギーが反応性ナノスケール多層スタックに加えられると、自己伝搬的、発熱的化学反応が続いて起こる。この化学反応は、第1の材料1010と第2の材料1012との交互層の間の相互混合を生じる結果となる。反応によって発生した熱は、ハンダ付け材料を融解させ、それが反応したナノスケール多層スタックに結合して局所化した金属結合を形成する原因となる。この反応は、反応性ナノスケール多層スタックを通ってハウジング280の周縁全体を横切るまで前方へ伝搬する。反応性ナノスケール多層スタックを実体化することによって、発生した熱は、局所化し、持続時間が非常に短くなり、従って、バッテリーまたは他の温度に敏感な構成要素への好ましくない温度曝露を回避し、また、結合プロセス時に結合の周りの直接隣接する材料だけが加熱されるため、上部カバー284とフェースプレート282との間のCTE不整合に起因する結合応力も低くなる。
【0141】
バッテリー230が温度に敏感であるため、ならびに上部カバー284とフェースプレート282との間のCTE不整合が原因となる内因性応力に起因して、好ましい結合技法は、センサ280の内部構成要素への過度の熱曝露および/または最終組み立てにおける内因性応力を避ける低温結合および/または局所化加熱を含む。低温結合を可能にする1つの好ましい実施形態は、金、または金およびスズ、または別の金属を用いる上部カバー284の周辺におけるメタル化、および同じように金、または金およびスズ、または別の金属によるフェースプレート282におけるメタル化を含む。例として、金およびスズは、低いクリープおよび高い剛性に起因して有益である。さまざまな代わりの実施形態において、局所化熱送達の方法を用いてハンダ付けを実現し、例えば、ホットエアガンまたは熱伝導定着を用いて熱を急速に提供し、層を融解させ、高濃度の電気または熱を用いて内部構成要素を損傷することなく上部カバー284とフェースプレート282との間の気密シールを実行する。別の実施形態において、
図10C、
図10Dによって例示されるように、抵抗性材料を通して電流を流して層を溶かすのに十分な熱を発生させる。例えば、シールそれ自体を通って電流が流れることがあり、これによって、シールは、自生的抵抗性ヒーターとして作用し、ハンダを融解させる。シールリングの各端においてコンタクトが製作され、両側でシールを通って電流が流れるように電圧を加える。加熱が両側で一様であるように、シールリングのそれぞれの側における電流経路が抵抗的に対称であることを確実とするために、シールリングへの電流の入口位置および出口位置の配置を定める際に特別な注意を払うことができる。シール材料は、発熱し、ハンダは、融解する。特定の例において、フェースプレートおよび/またはハウジングの上にAuSnハンダが付着し、両方の構成要素、例えばハウジングおよびフェースプレートにAuが付着し、それによって、Auは、AuSnハンダのどちらかの側でバリアとして作用する。追加の金属層、例えばTi、Ta、Pt、W、または他を追加のバリア層として含むことができる。電流は、どちらかの構成要素を通って、例えば
図10Dにおいて例示した接続用金パッドを通って流れることができる。これらのさまざまな実施形態において、局所化された熱を提供することは、システムにおける全熱を制限し、従って全域的加熱方法を用いることによってバッテリー230などの敏感な構成要素を損傷することに関連するリスクを回避する。他の局所化された低温結合がこの目的を実現することができることが理解されるはずである。
【0142】
図11は、眼内生理的センサインプラント200用ハウジング280のフェースプレート282および上部カバー284の例実施形態を例示する。例示した実施形態において、上部カバー284は、気密シール288に隣接して突き出ているリップ289を備える。フェースプレート282も突き出ているリップ289を備えることができる。フェースプレート282の突き出ているリップは、気密シール288に隣接するかまたはどこか他の位置、例えば例示されるその底面の近くであってよい。いくつかの実施形態において、突き出ているリップ289は、外向きに少なくとも5μm延在する。突き出ているリップ289は、外科的移植の前または外科的移植時にセンサインプラント200のハウジング280を取り扱うとき、気密シール289がピンセットまたは他の道具によって損傷されないように保護することを支援することができるため、有利なことがある。例えば、ハウジング280の側面を把持するためにピンセットを用いると、ピンセットは、気密シール288ではなくリップ289と接触する。実施形態において、フェースプレート282の底部は、より鋭い縁部特徴物と関連することがある傷害のリスクを有利に低くし得る面取りまたは丸められた縁を備える。Siは、脆く、多くの場合、面取りのような丸められた特徴とともに製造することが難しいので、これは、独特である。
【0143】
いくつかの実施形態において、フェースプレート282および上部カバー284を一緒に封止した後、眼内生理学的センサインプラント200のハウジング280全体に薄膜コーティングを施用することができる。薄膜は、例えば二酸化チタンであってよい。薄膜コーティングは、原子層堆積(ALD)技法を用いて施用されることがある。例えば、代替法として、ハウジング280を種々の気相前駆体化学種に曝露することができる。実施形態において、薄膜ALDコーティングは、種々の材料の多層スタックを含む。例えば、多層スタック中のさまざまな層は、酸化チタン、二酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、または他の関連酸化物のいずれかを含むことができるだろう。実施形態において、多層スタックは、最大50層を含む。しかし、本明細書において開示されるALDコーティングによってもっと多くの層、もっと少ない層、および異なる材料が想定されることが理解されるはずである。別々の前駆体化学種のそれぞれは、表面上のすべての反応性部位が満たされたら反応が終結するようにハウジング280の表面と自己律速的に反応することができる。各前駆体化学種の反応は、ハウジング280の表面に単原子層を堆積させることができる。ハウジング280を異なる前駆体化学属に順次曝露することによって、逐次層によって完全な結晶構造を構築することができる。
【0144】
薄膜ALDコーティングは、ピンホールのない二酸化チタン結晶の共形層のことがある。このようなALDコーティングは、いくつかの利点を提供することができる。それは、房水がハウジング280に侵入することを防止する助けとなる追加の気密シールとして作用することができる。気密シール288のあらゆる露出した縁を被覆することによって、ALDコーティングは、房水が金属シール由来の金属と反応し、それらを溶解させるかまたはそれらと反応して腐食を生み出すことを防止することならびに気密シール中の金属が患者の眼に浸出することを防止することを支援することができる。
【0145】
さらに、ALDコーティングは、ハウジングを作るために用いられる材料がいかなる方法であれ水溶性である場合、ハウジング280を時間の経過による房水中の溶解から保護することができる。既に考察したように、静電容量型圧力センサ210のフェースプレート282および可撓性ダイヤフラム216のいくつかの実施形態は、シリコンで形成される。シリコンから微視的な構造を作り出すための多くの公知の製造プロセスがあるため、これは、有利であることができる。しかし、被覆されていないシリコンは、センサインプラント200の寿命の間に評価可能な厚さ減少を生じる結果となり得る速度、例えば10年あたり1~2ミクロンで体の中に溶解する。いくつかの実施形態において、可撓性ダイヤフラム216は、製造時点で厚さ大体5μmでしかないことがある。従って、可撓性ダイヤフラム216の溶解は、可撓性ダイヤフラム216の、その機械的性能を著しく変え得る長期厚さ減少を生じる結果となるだろう。このため、静電容量型圧力センサ210を定期的に再較正することが必要になる。しかし、可撓性ダイヤフラム216上のALDコーティングは、溶解の速度を劇的に低下させるかまたは溶解をすべて防止し、それによって、静電容量型圧力センサ210の定期的な再較正の必要を回避する助けとすることができるだろう。ALDコーティングそれ自体は、低応力の方法で施用することができるので、その存在は、可撓性ダイヤフラム216の機械的性能にあまり影響を及ぼさない。
【0146】
ALDコーティングは、比較的柔らかなことがあり、従って、センサインプラント200の外科移植時に損傷しやすいことがある。従って、
図11に示した保護リップ289は、気密シール288の上のコーティングを有利に保護することができる。さらに、可撓性ダイヤフラム216がフェースプレート282中の凹部の中に配置される(
図7Bに関して考察したように)という事実は、可撓性ダイヤフラムの上のコーティングを有利に保護することができる。
【0147】
<ウェアラブル機器およびデータ取得>
好ましい実施形態において、センサインプラント200は、生理学的センサ210によって測定したすべてのデータを自律的に記録し、このデータを測定値メモリ240に記憶する。データは、規則的な間隔、例えば15分毎に記録し、記憶してバッテリー230からの電力消費を最適化することがある。記録したデータは、測定値メモリ240に記憶するが、記録されたこのデータは、その後の処理および解析のために時折、外部読み取り装置に送信される。例えば、前記のように、送受信機/受信機250およびコイル260は、測定値メモリ240に記憶した圧力測定値を患者によって着用される眼鏡などの外部読み取り装置に無線送信することがある。眼鏡は、圧力測定値を受信するための外部読み取り装置、例えば眼鏡上のアンテナおよび/またはコイルがセンサインプラント200の近くに配置されることを有利に保証することがある。実施形態において、眼鏡は、誘導結合によってセンサインプラント200と通信する。
【0148】
さらに、眼鏡において圧力測定値を受信したら、眼鏡は、次にこれらの圧力測定値を追加の外部読み取り装置、例えばウェアラブルな腕時計と通信することがある。さまざまな実施形態において、眼鏡は、ブルートゥース(登録商標)、WiFi、Zigbee(登録商標)、または他の関連する無線通信によってウェアラブルな腕時計と通信する。ウェアラブルな腕時計は、センサインプラント200からの圧力測定値ならびにバッテリー電圧、温度測定値等などの他のデータを眼鏡によって受信する以外に、センサインプラント200と直接、または他の生理学的センサと通信し、および/または生理学的測定値を直接取得することがある。ウェアラブルな腕時計は、患者の生理学的パラメータ、例えば心拍数、血圧、脈酸素飽和度測定値などを測定することがある。ウェアラブルな腕時計は、気圧、気温などのような環境要因をさらに測定することがある。ウェアラブルな腕時計は、センサ較正を目的とするかまたはデータ外れ値を特定するために、これらの環境要因を特定の圧力測定値と関連付けることがある。本明細書において開示される追加の外部読み取り装置は、一実施形態においてウェアラブルな腕時計であるが、眼鏡またはセンサインプラント200と直接通信するために他の装置、例えばブレスレット、他のいずれかのウェアラブルな電子装置、携帯電話、タブレット、e-リーダー、ラップトップなどが想定されることが理解されるはずである。代替実施形態において、ハンドヘルド読み取り装置も眼鏡の代わりに通信のために用いることができるだろう。一般に、眼鏡(またはハンドヘルド読み取り装置)は、誘導リンクを介してインプラントと直接通信し、ウェアラブル装置、例えばリストバンドは、ブルートゥースを介して眼鏡と通信する。しかし、患者の観点から、リストバンドは、インプラントと直接通信しているように見える。従って、すべての患者相互作用は、スクリーン、UI機能などを備えることがあるリストバンドを通して行われる。この構成は、リストバンド上のブルートゥース機能しか必要としないため有利である。例えば、リストバンドは、高出力の高周波通信、コイルなどを必要としない。これらの特徴物は、眼鏡とともに備わっている。
【0149】
データ送信以外に、眼鏡は、生理学的センサ200を充電するようにさらに構成される。例えば、コイル260は、記憶された測定値が眼鏡にダウンロードされる間にバッテリー230を充電するために誘導結合によって眼鏡から無線電力を受信することがある。眼鏡の中に無線充電装置を一体化することができる。コイル260は、測定値データの送信と、バッテリー230を繰り返し充電するための電力の受信を、同時にまたは一方ずつ(どちらの順でも)行うことができる。いくつかの実施形態において、コイル260は、軸が眼の光軸と概ね揃うように配向した複数の導電性ループを備える。この配向は、眼鏡から送信された後に比較的により大きな量の電磁束が導電性ループを通ることを可能にすることがある。
【0150】
理想的には、生理学的センサ200の充電は、大体30分を要し、週に1回行われる。さまざまな実施形態において、眼鏡は、充電およびデータ送信以外に追加の機能を実行するように構成される。例えば、眼鏡は、例えば眼鏡の縁に沿って、または充電時に眼鏡に一時的に装着することができるクリップオンもしくはスナップインのモジュールとして、患者の視神経の写真を撮る眼底カメラを備えてよいだろう。生理学的センサ200の毎週の充電時など、規則的な間隔で撮影されるこれらの写真は、臨床医にとって視野減少を特定するために有用である。緑内障は、視神経に影響し、緑内障の進行を監視する上で最も重要なのは網膜のこの特定の領域であり、網膜全体ではないため、必ずしも眼の瞳孔を拡大することなくこの目的に適切な眼底像を実現することが可能である。あるいはまたはさらに、眼鏡は、眼鏡の縁に沿って、または眼鏡に一時的に装着することができるクリップオンまたはスナップインのモジュールとして、患者のために周縁部視覚試験を行うことができる照明を備えることができるだろう。周縁部視覚試験は、一般に、患者の視野の中のさまざまな位置に配置される一連の閃光を含む。この試験は、さまざまな位置にある一体化されたLED、または患者が見ることができるが眼鏡のフレーム中のどこか他の位置にあるLEDから供給される光の点を多くの配置で作り出す光ファイバーパイプを有するような眼鏡で行うことができるだろう。眼底イメージングと同様に、毎週の充電時などの規則的な間隔で行われる周縁部視覚試験は、周縁部視覚低下の速度を特定するために臨床医にとって有用である。眼底イメージングおよび周縁部視覚試験は、緑内障患者のためにまれにルーチンとして行われ、従って、記載される家庭用試験システムは、現在提供されているより何桁も多いデータを医療専門家に提供するだろう。このことは、IOP測定値のように、典型的な患者データにおいて極端な量の変動、またはノイズを示す視野試験にとって特に重要である。より多くのデータ、特に現行の看護の基準によって提供されるよりはるかに多くのデータの収集と、その後の平均化および傾向分析とは、本質的に大きな変動性を有するデータセットの解析において信頼性を改善するための効果的な方策である。
【0151】
前記のように、規則的な間隔でデータを記録し、測定値メモリ240に記憶することがある。しかし、バッテリー230から電力がなくなるかまたは機能しなくなった場合、生理学的センサ200は、オンデマンドモードに移行することができる。オンデマンドモードにおいて、生理学的センサ200は、間隔をおいて測定値を記録することを停止する。しかし、センサ200は、いつでも、例えば上記で説明した眼鏡充電によって電源を入れることができ、それによって、ライブ圧力測定値を記録し、オンデマンド様式で送信することができる。詳しくは、例えば、使用者は、眼鏡を介して生理学的センサ200の電源を入れ、眼鏡は、続いて生理学的センサ200からライブ圧力測定値を直接受信する。このライブ圧力測定値は、次に、上記で開示されたように眼鏡からウェアラブルな腕時計に通信される。
【0152】
<圧力較正>
図12Aは、使用者によって着用されるバロメータによって測定した大気圧のグラフ1200である。信号1202は、約140時間の期間にわたる大気圧の変動を示す。
図12Bは、信号1202の60時間~80時間までの期間の拡大部分1204を示す。この期間に、信号1202は、大気圧が、最も高い可能性として気象状況における正常な変化に起因して通常は時間の経過とともに比較的ゆっくり変化したことを示す。69時間~73時間の信号1202によって、時間の経過に伴うこの種の比較的遅い天気に誘導される変動の例が示される。しかし、信号1202は、同じく起こった突然の、比較的大きな量の変化があったことも示す。大体時間63(すなわちグラフ上で62~63の間)、時間68(すなわちグラフ上で67~68の間)、時間75(すなわち、グラフ上で74~75の間)および時間77(すなわち、グラフ上で76~77の間)の信号1202において測定された大気圧におけるこれらのタイプの突然の大きな変化の例が見られる。これらの突然の大きな大気圧の変化は、使用者によって、彼または彼女が上り坂または下り坂を運転している間、建物の異なる階の間を移動している間などに経験した高度の変化の結果であったかもしれない。
【0153】
これらのような比較的大きな大気圧の変化が比較的短い期間に起こり得るため、ゲージIOP値を計算するために大気圧測定値を絶対IOP測定値と相関させるとき注意を払うべきである。外部圧力測定値と内部圧力測定値とが時刻において互いにあまりにも大きくずれていたら、これら2つの測定値から導いたゲージIOP値は、これらの突然の、大きな量の大気圧の変化の1つによって顕著に影響を受け、従ってゲージIOP値の正確さが低下している可能性がある。
【0154】
内部絶対IOP測定値を外部大気圧測定値と相関させる上でのこの困難は、外部圧力測定装置および移植された圧力測定装置によって用いられるそれぞれの時刻管理装置の正確さに時間の経過に伴うなんらかの量のふらつきがある場合、悪化し得る。例えば、
図2Bに示したように、IOPセンサインプラントは、圧力測定値を取得するべき時刻を示すために用いられる時刻管理装置、例えばタイマーまたはクロックを備えることがある。設計上の制約は、比較的簡単なタイマーまたはクロック回路の使用を有利にするかまたは必要とすることがある。例えば、コスト、電力消費および/または回路サイズの制約が進歩の遅れたタイマーおよび/またはクロック、例えば移植可能なセンサ装置の中に圧電共振器を含まないものの使用を有利にするかまたは必要とすることがある。これらのタイマーおよび/またはクロックは、例えば移植可能なセンサ装置中により多い回路要素、より大きな量の空間および/またはより多くの電力を必要とする、より進歩したバージョンより正確さが低いことがある。その結果、本明細書に記載される種類の移植可能な装置の中に用いられるタイマーおよび/またはクロックの時刻管理の正確さは、時間の経過とともにふらつくことがある。さらに、これらの時刻管理装置は、温度変動の影響をより多く受けることがある。
【0155】
例えば、わずか0.1%の時刻管理のふらつきでも、何日か、何週かまたは何箇月などの期間にわたれば比較的大きな誤りを生じる結果となり得る。その結果、2つの装置が用いたそれぞれの時刻管理要素が2つの測定値は同時に取得されたことを示していたとしても、外部装置によって取得した大気圧測定値と患者の眼の中のインプラントによって取得した内部絶対IOP測定値との間に時刻のずれがあり得る。そして、もちろん、その時刻のずれの間に大気圧または絶対IOPのどちらかに顕著な変化が起こり得るだろう。そうであれば、ゲージIOP値の不正確な計算を生む結果となるだろう。
【0156】
図12Cおよび
図12Dは、絶対IOP測定値と大気圧測定値との間の時刻のずれの結果として生じ得る不正確なゲージIOP計算値の例をそれぞれ例示するグラフ1210、1220である。
図12Cは、シミュレーションした0.1%のタイマー不正確さの効果を例示し、一方、
図12Dは、シミュレーションした1%のタイマー不正確さの効果を例示する。両方のグラフ1210、1220において、プロットしたゲージIOP値は、規則的な間隔、例えば毎時における絶対IOP値から大気圧値を減算することによって計算した。シミュレーションしたこれらの例において、絶対IOP信号および大気圧信号は、16mmHgの一定ゲージIOP信号を生じる結果となるように設計した。すなわち、絶対IOP信号と大気圧信号とは、両方が
図12Aおよび
図12Bに示したのと同様に時間変化したが、これらの信号(ゲージIOP)の間の差異が一定であるように設計した。ゲージIOP値が完璧に時刻同期した絶対IOP値と大気圧値とを用いて計算したのであったら、プロットしたゲージIOP値は、16mmHgで一定のままだったろう。しかし、これらのシミュレーションにおいて、大気圧値とゲージIOP値とを計算するために用いたそれぞれの絶対IOP値との間に時刻のふらつきが持ち込まれた。グラフ1210、1220に示したように、わずか2、3日以内に、シミュレーションしたタイマー不正確さは、それぞれの絶対IOP値と大気圧値との間で同期が失われる結果を生み、そのことが今度はゲージIOP計算値における大きな、誤った変化の原因となった。
図13Aおよび
図13Bは、これらのタイプの不正確な値を回避するための方法例を例示する。
【0157】
図13Aは、外部装置からの1つ以上の大気圧測定値と患者の眼の中のセンサインプラントからの1つ以上の絶対IOP測定値とを用いてゲージIOP値を計算するための方法の例1300aを例示する。この方法は、患者の眼の中のセンサインプラントを用いて絶対IOP測定値、外部装置を用いて大気圧測定値を取得するために指定した時刻および/または間隔が設定されるブロック1310aから開始される。例えば、外部装置と移植されたセンサ装置との両方を、時刻T
1、T
2、T
3、…などにおいてまたは時刻T
1、T
2、T
3、…頃に、測定値を取得するように設定する(例えば内蔵ソフトウェア、ファームウェア、および/またはハードウェアを用いて)ことができる。これらの時刻は、外部装置およびセンサインプラントによって、例えばそれぞれの内蔵時刻管理装置を用いて独立に測定され得る。
【0158】
既に考察したように、外部装置とセンサインプラントとが用いるそれぞれの時刻管理装置を最初に同期させても、それらは、時刻管理のふらつきによって互いに対して進むかまたは遅れ、従って同期を失わされることがある。その結果、センサインプラントは、実際には時刻T1±Δ1、T2±Δ2、T3±Δ3などにおいて絶対IOP測定値を取得することがある。同様に、外部装置は、実際には時刻T1±δ1、T2±δ2、T3±δ3などにおいて大気圧測定値を取得することがある。ここでΔnとδnとは、異なり、未知のことがある。さらに、またはあるいは、外部装置とセンサインプラントとの両方を間隔I1、I2、I3…の時刻またはその頃において測定値を取得するように設定することができる。しかし、ここでも、外部大気圧測定値および絶対IOP測定値が実際に取得される時刻における瞬間の間に未知のずれがあり得る。
【0159】
ブロック1320aにおいて、センサインプラントは、指定された時刻/間隔(例えばT
1、I
1)で患者の眼内の絶対IOP測定値を取得する。この測定値は、内蔵メモリに記憶されるかまたは外部読み取り装置に送信される。少なくとも部分的に同時に、ブロック1330aにおいて、外部装置は、指定された時刻/間隔(例えばT
1、I
1)より前および/または後に延びることがある時間の窓の間に複数の測定値を取得する。大気圧測定窓の長さは、例えば、センサインプラント計時装置および/または大気圧を測定する外部装置によって用いられる時刻管理装置中に存在する時刻管理のふらつきに基づいて決定することができる。時刻管理のふらつきの量によって測定を行い得る指定された各測定時刻頃の不確定さの窓を特定することができる。いくつかの実施形態において、大気圧測定窓は、少なくともこの時刻管理不確定性窓と同じ大きさに設定することができる。例えば、いくつかの実施形態において、外部装置は、指定された時刻/間隔を中心とする20分の時間窓の間に複数の測定値を取得する。これらの大気圧測定窓は、
図12Bにおいて各正時の時刻を中心とする横棒1206によって示される。各大気圧測定窓の間に取得する大気圧測定値の数は、例えば、時間窓の長さ、所望のサンプリングレート、利用可能なメモリ、または他の選択手段に基づいて選択することができる。時間窓の間に、大気圧測定値は、例えば、毎秒、10秒毎、毎分、または他の時間頻度で取得され得る。
【0160】
ブロック1340aにおいて、測定値中に存在する変動の量を決定するために、大気圧測定時間窓の間に取得した測定値を分析することがある。例えば、指定した測定時刻/間隔の頃の窓の間に大気圧測定値の間の偏差が選択した範囲内に納まるかどうか決定するために、大気圧測定値を分析することができる(例えば、偏差≦10mmHg、≦5mmHg、≦1mmHg、≦10%、≦1%)。大気圧信号中の変動の計算は、1つ以上の差分の計算、分散もしくは標準偏差の計算、または他の関連技法を含む、いずれかの適切な数学的技法に従って実行することができる。この分析は、例えば、外部測定装置によって行うことができる。あるいは、分析は、大気圧測定値がアップロードされる別個の処理装置によって行うことができる。
図12Bにおいて、陰のないバー1206aは、大気圧測定窓の間に取得した測定値の変動の量が選ばれた許容範囲内にあったものの例であり、一方、影付きのバー1206bは、変動の量が選ばれた許容範囲外にあることが見いだされたものの例である。
【0161】
ブロック1350aにおいて、時間窓の間に取得した大気圧測定値の変動が許容可能なら、窓中の大気圧測定値の1つ以上を受け入れ、指定した時刻/間隔でセンサインプラントを用いて取得した絶対IOP測定値と共に使用してゲージIOP値を計算することができる。例えば、時刻が指定した時刻/間隔に最も近い大気圧測定値をゲージIOP値の計算における使用のために選択することがある。または、大気圧測定窓の間のすべての測定値の平均を使用することがある。または、大気圧測定窓の中のすべての測定値からなんらかの方法で代表大気圧値を計算するかまたは選択することができる。しかし、これらの実施形態において、大気圧測定値は、大気圧測定窓の経過に伴って大気圧データが比較的安定である(用途または所望の正確さに基づいて設定することができる定められた限度内で)場合にだけゲージIOP値を計算するために受け入れられる。この方法において、計算した値が大気圧測定窓の間に使用者が経験する大気圧の変動によってあまり悪影響を受けないことが比較的確実である時刻についてだけ、ゲージIOP値を計算する。あるいは、すべての場合にゲージIOP値を計算し、次に、上記基準を満たす場合にだけ記憶し、および/または使用者に提示することができるだろう。または、疑わしいゲージIOP値(例えば、設定したなんらかの閾値を大気圧の変動が超えた期間に取得したデータを用いて計算したもの)は、フラグまたはそれが疑わしい値であるという通知とともに使用者に提示することができる。ブロック1350aによるゲージIOP値の計算は、例えば、大気圧測定値とIOP測定値との両方がアップロードされる外部装置によって実行することができる。
【0162】
図13Bは、ゲージIOP値を決定することを目的として外部装置からの大気圧測定値をセンサインプラントからの絶対IOP測定値と相関させるための方法の例1300bを例示する。方法1300bは、大気圧測定値を取得するために用いる外部装置またはシステムが患者の眼の中のセンサインプラントに同期情報を無線送信することによって同期操作を開始するブロック1310bにおいて開始する。同期情報は、例えば、大気圧測定値をいつ取得するかを決定するために外部装置によって用いられる時刻管理装置が示す特定の時刻(例えば同期信号が送信される現在時刻)と関連付けられている値、例えばタイムスタンプまたは一意な相関ID番号であってよい。いくつかの実施形態において、同期情報は、インプラントに無線電力を送るためにおよび/またはインプラントからデータをダウンロードするために用いられるものとは異なる周波数で無線送信されることがある。同期情報は、外部装置によって、その内蔵クロックまたはタイマーによって示される同期動作の時刻と関連付けて記憶することができる。同期情報は、大気圧の測定値と共に記憶することができ、大気圧の測定値も内蔵クロックまたはタイマーによって示される取得した時刻と関連付けて記憶することがある。
【0163】
いくつかの実施形態において、同期情報は、外部装置によって予め定められた時刻および/または間隔で送信される。場合によっては、使用者は、外部装置と相互作用して同期操作を開始するように促されることがある。いくつかの実施形態において、大気圧測定値を取得するために用いられる外部装置は、腕時計のように手首に着用されるように設計された物品のことがある。外部装置は、使用者に同期操作を行うことを思い出させるために警報音または他のプロンプトを出力することがある。同期操作は、使用者が外部装置を彼または彼女の眼に近付けてセンサインプラントがより容易に同期情報を受信できるようにすることが必要になることがある。いくつかの実施形態において、外部装置は、使用者が外部装置を彼または彼女の眼に近づける必要がないように、十分に高い送信電力を用いて同期情報を送信することがある。そのような実施形態において、外部装置は、患者の身体に、例えば使用者の手首に配置されるかまたは使用者の首に掛けられるか、あるいはいっそ同じ部屋の中など使用者の近くにあり、使用者が外部装置を彼または彼女の眼に非常に近づける必要がないことがある。
【0164】
ブロック1320bにおいて、センサインプラントは、同期情報を受け取り、内蔵時間管理装置(例えばクロックまたはタイマー)によって示される現在時刻と関連付ける。センサインプラントは、次に、関連付けた同期操作の時刻とともに同期情報を記憶することができる。同期情報は、絶対IOPの測定値とともに記憶することができ、絶対IOPの測定値もセンサインプラントの内蔵時間管理装置によって示される取得された時刻と関連付けられて記憶される。
【0165】
次に、ブロック1330bにおいて、センサインプラントは、指定された測定時刻/間隔で患者の眼内の絶対IOP測定値を取得する。ブロック1340bにおいて少なくとも部分的には同時に、外部装置は、指定された測定時刻におよび/または指定された測定時刻の頃に(例えば
図13Aに関して考察したように)、1つ以上の大気圧測定値を取得する。
【0166】
絶対IOP測定値および大気圧測定値を取得した後に、それらの両方を、2つの装置がそれぞれ記憶している同期情報とともに処理装置にアップロードすることができる。処理装置は、次に、ブロック1350bにおいて、同期情報に基づいて1つ以上の絶対IOP測定値を1つ以上の大気圧測定値と相関させることができる。既述のように、大気圧測定値装置から受け取った同期情報は、同期操作を行ったときその時間管理装置が示した時刻と関連付けられている。同様に、センサインプラントから受け取った同期情報は、同期操作を行ったときその時間管理装置が示した時刻と関連付けられている。従って、同期情報は、センサインプラントからの絶対IOP測定値と同じ時刻または大体同じ時刻に(例えば互いに何分か以内またはより好ましくは何秒か以内に)取得した1つ以上の大気圧測定値を特定するために用いることができる。次に、ブロック1360bにおいて、処理装置は、相関する絶対IOP測定値と大気圧測定値とを用いてゲージIOP値を計算することができる。他の実施形態において、インプラントは、必ずしも時間管理装置を備える必要はなく、代わりに外部装置からIOP測定を開始する無線信号を受信することに頼ることがある。外部装置は、この無線信号を送信する時刻または時刻近く(例えば1秒以内、または10秒以内、または60秒以内)に大気圧測定を行うことができるだろう。
【0167】
いくつかの実施形態において、信号処理技法、例えばパターン相関を用いることによって、絶対IOP測定値をそれぞれの同時の大気圧測定値と相関させることができる。例えば、時間の経過とともに取得した絶対IOP測定値で構成される信号と、少なくとも部分的に重なり合う期間に取得した大気圧測定値で構成される信号とは、信号特徴、例えばピーク、パターンなどを特定するために公知の信号処理技法(例えば自己相関、特徴抽出アルゴリズムまたは他の処理技法)に従って分析することができる。両方の信号中で合致する特徴を特定したら、これらの信号のうち一方の時刻を他方に対して移動(例えば合致する特徴の間の時刻のずれ分)して同時に取得した絶対IOP測定値と大気圧測定値とを相関させることができる。次にこれらの同時の測定値を用いてゲージIOP値を計算することができる。この方法は、他の同期方法(例えば
図13Aおよび
図13Bに関して考察したもの)に加えて適用することができるだろう。
【0168】
いくつかの実施形態において、外部装置、例えば大気圧を測定するために用いるもの、は、IOP検出用インプラントに、インプラントが絶対IOP測定値を取得する原因となる制御信号を発することができる。外部装置は、絶対IOP測定値と大気圧測定値とを十分に同時に取得してゲージIOP値の計算における相当な誤りを避けるように、制御信号と実質的に同時に大気圧測定値を取得することができる。いくつかのそのような実施形態において、外部装置は、使用者が指定された時刻に絶対IOP測定および大気圧測定を開始するよう促すことができる。例えば、外部装置は、指定された時刻に測定を開始することを使用者に思い出させる警報などの表示を提供することがある。測定を開始するために、使用者は、例えば、外部装置上のボタン、スイッチまたは他の特徴物を作動させることがある。この動作は、1)大気圧測定を開始することと、2)移植されたIOP検出用インプラントへの外部装置からの制御信号を開始することがある。考察したばかりのように、この制御信号は、IOP検出用インプラントに絶対IOP測定値を取得させるために用いられることがある。そのような実施形態において、制御信号は、制御信号がIOP検出用インプラントによって適正に受け取られなかった場合でもIOP検出用インプラントと外部装置との測定値が正しく相関することを可能にする一意な相関ID番号、または本明細書において前に記載した他の一意の識別特性を含むか、またはそれらからなることがある。外部装置は、この操作を行うときIOP検出用インプラントへの制御信号の通信を改善するために使用者が外部装置を彼または彼女の眼に近付けるべきであることを示す情報とともにキット中に提供されることがある。
【0169】
いくつかの実施形態において、IOP検出用インプラントは、インプラントが外部装置から信号を受け取ることができる準備完了状態を開始するために、低電力クロック(比較的不正確であってよい)を備えることがある。例えば、低電力クロックは、本明細書に記載されるもの(例えば同期信号、制御信号など)のような信号を外部装置から受け取ることが予測される時間窓の間、インプラントをこの準備完了状態に入らせることがある。この期間は、例えば、外部装置から信号が予測される時刻の周りの1分、5分、10分、30分または60分の窓のことがある。この方式は、誘導結合によって送られる信号ではなく無線信号の使用を可能にすることがあるため有益な場合がある。無線信号はより遠くへ飛ぶが、インプラントを休眠状態から目覚めさせるために必要な電力を欠くことがある。無線信号を用いるために、典型的には、IOP検出用インプラントは、電源が入り、信号を受信する準備完了となる無線回路を有する必要がある。外部装置から信号が予測される準備完了期間を除いて無線回路を停止するために低電力クロックを用いると有利なことがある。いくつかの実施形態において、低電力クロックは、外部装置によってさまざまな合間(例えば充電またはデータダウンロード相互作用時)に正確な時刻と同期させることができる。
【0170】
<電源>
本明細書に記載するさまざまなIOP検出用インプラントは、IOP検出用インプラントのさまざまな構成要素用の動作電力を提供する1つ以上の電源を備えることができる。いくつかの実施形態において、IOP検出用インプラントは、異なるタイプの2つの別々の電源装置を備えてよい。第1の電源装置は、例えばバッテリーであってよく、第2の電源装置は、例えばキャパシタまたはスーパーキャパシタであってよい。これらの別々の電源装置は、集合的にIOP検出用インプラントのための動作電力を供給することができる。
【0171】
バッテリーは、キャパシタよりはるかに大量のエネルギーを保持することができるが、キャパシタは、非常に速く、例えばほんの何秒か以内に再充電することができるという利点を提供する。この特性は、他のタイプのキャパシタと比較して比較的大きなエネルギー貯蔵能力を持つスーパーキャパシタにとって特に有利である。スーパーキャパシタは、例えば電解キャパシタより1~2桁以上多い単位体積または質量あたりのエネルギーを貯蔵することができる。他のキャパシタによって用いられる固体誘導体と異なり、スーパーキャパシタは、エネルギーを貯蔵するために、例えば静電気二重層静電容量および/または電気化学的擬静電容量も使用することがある。いくつかのエネルギー貯蔵装置は、バッテリー、キャパシタまたはスーパーキャパシタとしての分類を幾分かあやふやにする物理的特性、化学的特性または挙動的特性の組み合わせを有することがある。いくつかの実施形態において、スーパーキャパシタは、バッテリーより1~2桁少ない単位体積または単位質量あたりの貯蔵容量ならびに適切な電圧を加えることによって比較的短い時間、例えば1~10秒以内に完全に充電される能力を有するとみなされることがある。
【0172】
IOP検出用インプラントは、バッテリーおよびスーパーキャパシタへの別々の物理的接続、例えば各電源用の1対のパッドを有する回路を備えることがある。回路は、誘導コイル用の第3の、別個の1対のパッドも備えることがある。外部誘導電磁場が存在するとき、回路は、スーパーキャパシタとバッテリーとの両方に電圧を加えさせ、両者を充電するソース電流を生じることがある。電圧は、外部誘導電磁場が存在する間加えられたままのことがある(スーパーキャパシタは、比較的速くその電圧まで充電され、バッテリーは、がより長期間電流を引き込み続ける)。スーパーキャパシタとバッテリーとは、同じ充電回路に並列に接続し、同じ充電電圧を加えることができる。この構成は、複雑な充電用回路を必要としないため、有利な場合がある。しかし、他の実施形態において、2つの異なる充電回路(1つがスーパーキャパシタを充電し、別のものがバッテリーを充電する(おそらく異なる電圧および/または電流で))もあり得るだろう。
【0173】
放電のために、いくつかの実施形態において、スーパーキャパシタとバッテリーとは、並列に接続されない。代わりに、IOP検出用インプラントは、スーパーキャパシタからその電荷がなくなるまで電力を受けることがあり、それからインプラントは、バッテリーを用いることに切り替わることがある。あるいは、スーパーキャパシタは、バッテリーを充電するために用いられることがある(一方、バッテリーはインプラントに電力を供給する)。この手法は、バッテリーの充電時にエネルギー損失をもたらし得るだろうが、例えばスーパーキャパシタの自己放電速度が高い場合は有利な手法になり得るだろう。
【0174】
図14Aは、例示的なIOP検出用インプラントの電力使用量を、インプラントがバッテリーによって電力を供給される場合(すなわち信号1402)に、および別個にインプラントがスーパーキャパシタによって電力を供給される場合(すなわち信号1404)について示すグラフ1400aである。信号1402は、IOP検出用インプラントがバッテリーだけによって電力を供給される第1の場合を例示する。この例において、IOP検出用インプラントは、1時間当たり1nAhの電気エネルギーを用いると仮定され、バッテリーは、1μAhの使用可能貯蔵容量を有すると仮定される。信号1402によって示すように、プロットした残存電力容量は、1μAhで始まり、大体41日後にバッテリー中に貯蔵されたエネルギーのすべてが尽きるまで1時間当たり1nAhの割合で線形に減少する。
【0175】
一方、信号1404は、IOP検出用インプラントがスーパーキャパシタだけによって電力を供給される第2の場合を例示する。IOP検出用インプラントが少なくとも部分的にスーパーキャパシタによって電力を供給される場合、IOP検出用インプラントは、充電相互作用を行うか、またはより頻繁に充電相互作用を行うようIOP検出用インプラントで患者に促すように設計されているシステムの一部のことがある。そのような実施形態において、IOP検出用インプラントを無線充電するために外部充電装置を提供することができる。外部装置からIOP検出用インプラントへの無線電力伝送は、電磁エネルギー、例えば高周波(RF)エネルギー、赤外(IR)エネルギーなどを用いて行うことができる。電磁エネルギーは、例えば誘導結合、伝搬波などによって伝送することができる。外部充電装置は、例えば充電用電源、送信機、およびコイルまたは誘導結合素子を備えることができる。IOP検出用インプラントは、同じように、外部充電装置から電力を受け取るためにコイルまたは誘導結合素子を備えることができる。
【0176】
さらに、外部充電装置は、出力装置、例えばスピーカー、ディスプレイ、触覚トランスジューサまたは他の関連構成要素も備えることができる。出力装置は、IOP検出用インプラントとの充電相互作用を行うことを患者に促すために外部充電装置によって用いられてよい。そのようなプロンプトは規則的な間隔で、例えば毎日、12時間毎、毎週など、で提供されてよい。または、プロンプトは、なんらかの基準、例えばスーパーキャパシタが予め定めた百分率の残存電力容量を有する時、に基づいて不規則的な間隔で提供されることがある。プロンプトは、例えば、警報のような聞き取れる合図の形をとることがある。他の実施形態において、プロンプトは、目に見える合図、例えばディスプレイ上の特定のシンボルまたは文のことがある。さらに別の実施形態においては、プロンプトは、なんらかの他の形、例えば触覚的な合図になることがある。
【0177】
充電相互作用のプロンプトは、タイマー同期プロンプトおよび/またはデータダウンロードのプロンプトと同時であってよい。そのような実施形態において、スーパーキャパシタ電源を使用すると、本明細書において考察したIOP検出用インプラント内蔵の時間管理のドリフトに起因して通常のタイマー同期相互作用、および/または、例えば誘導結合を用いる記憶容量の制約に起因してデータダウンロードを行うように使用者が既に要求されていることがあるため、相乗的な効果を有することがある。これらの相互作用は、スーパーキャパシタを充電するためにも利用することができる。よって、プロンプトがなければ特別な充電用装置を着用する30~45分が必要になり得るバッテリー再充電の頻度および関連する不便さをなくすかまたは減らすことが可能なことがある。
【0178】
充電相互作用それ自体は、様々な形態であってよい。例えば、患者は、外部充電装置のコントロール、例えばボタン、スイッチまたは他の関連特徴物を操作するように求められることがある。このコントロールを操作すると、外部充電装置からIOP検出用インプラントへの電力の無線伝送を外部充電装置に開始させることができる。コントロールは、本明細書において他の箇所で考察した時間管理装置の同期、IOP検出用インプラントからのデータのダウンロードなども開始することができる。
【0179】
いくつかの実施形態において、外部充電装置は、使用者に彼もしくは彼女は、充電相互作用の一部として外部充電装置を彼または彼女の眼に近付けるべきであることを知らせる使用説明を備えるか、または添付することがある。外部電力充電用装置とIOP検出用インプラントとの間の物理的な近さが増すほど一般にインプラントへの電力伝送が向上する。いくつかの実施形態において、外部充電装置は、使用者が充電相互作用を実行したことを検知するまで繰り返しまたは絶えずプロンプトを提供することがある。電源はスーパーキャパシタなので充電相互作用には何秒以下しか要さず、従って頻繁な充電相互作用を行うことが実際的になる。
【0180】
いくつかの実施形態において、外部充電装置は、時間の間隔を、その間隔の間に予測されるIOP検出用インプラントのエネルギー使用量がスーパーキャパシタの貯蔵容量未満であるようにして、充電のプロンプトを提供するように設定されることがある。例えば、信号1404によって例示される場合には、IOP検出用インプラントは1時間当たり1nAhの電気エネルギーを使用すると考えられ、スーパーキャパシタは0.2μAhの使用可能貯蔵容量を有すると考えられる。従って、スーパーキャパシタは、IOP検出用インプラントに数日間電力を供給するのに十分なエネルギーを提供することができる。外部充電装置がこの予測される動作時間より短い間隔でIOP検出用インプラントとの充電相互作用を行うことを使用者に促す(かつ促された充電相互作用を使用者が実際に行うと仮定する)限り、IOP検出用インプラントは、連続的に動作することができる。例えば、信号1404は、充電相互作用が毎日促される(および概ね実行される)ことを示す。しかし、患者が充電相互作用のプロンプトを一度に2、3日間無視する場合(鋸歯状信号波形1404におけるより大きな歯によって示される)であっても、IOP検出用インプラントは、スーパーキャパシタがこの装置に2、3日間電力を供給するのに十分なエネルギーを一度に貯蔵することができるため、依然として連続的に動作させることができる。IOP検出用インプラントの予測されるエネルギー使用量は、典型的な使用量状況時に実験的に、または検出用インプラントのさまざまな構成要素の定格電力使用量を基準として解析的に、を含むさまざまな方法で決定することができる。
【0181】
図14Bは、バッテリーとスーパーキャパシタとの組合せによって電力を供給され、スーパーキャパシタの容量が充電相互作用時刻の間のインプラントの電力使用量より小さい例示的なIOP検出用インプラントの電力使用量を示すグラフ1400bである。信号1408によって例示される例において、IOP検出用インプラントは、1時間あたり1nAhの電力を消費するが、バッテリーは0.5μAhの貯蔵容量を有し、スーパーキャパシタは、0.02μAhの貯蔵容量を有する。
図14Aに関して記載したばかりのように、IOP検出用インプラントは、充電相互作用を行ってスーパーキャパシタを充電するように時折患者に促す外部充電装置を備えるシステムの一部であってよい。(上述のように、充電相互作用のプロンプトは、タイマー同期のプロンプトおよび/またはデータダウンロードのプロンプトとして使用されるかまたは同時であってよい。)信号1408によって例示される例において、外部充電装置は、充電相互作用のプロンプトを毎日出力し、従って、スーパーキャパシタは、患者がこのプロンプトに従う限り毎日再充電される。このことは、信号1408において明らかであるスーパーキャパシタが充電され、次にもう一度再充電されるまで残存容量が低下する0.02μAh鋸歯パターンから明らかである。スーパーキャパシタのこの例における0.02μAh貯蔵容量は、IOP検出用インプラントによる毎日の充電相互作用時刻の間に予測される0.024μAhのエネルギー使用量よりわずかに少ない。
【0182】
比較を目的として、
図14Bは、IOP検出用インプラントが1μAh(信号1408によって表したバッテリーの貯蔵容量の2倍)の貯蔵容量を有するバッテリーだけによって電力を供給される場合を例示する信号1406も含む。信号1406によって示すように、このバッテリー容量は、IOP検出用インプラントに大体41日間電力を供給するのに十分である。しかし、信号1406に対応するバッテリーは、信号1408に対応するバッテリーの2倍の容量を有するという事実にもかかわらず、信号1408に対応するIOP検出用インプラントは、信号1406に対応するIOP検出用インプラントより大体3倍長く動作することができる。このことは、規則的なまたは毎日の充電相互作用と組み合わせたスーパーキャパシタの存在に起因する。この例は、いっそ比較的小さな容量のスーパーキャパシタをバッテリーとともに用いてIOP検出用インプラントに動作電力を供給することによって実現することができる相乗効果を例示する。
【0183】
図14Cは、スーパーキャパシタの容量が充電相互作用時刻の間のインプラントの電力使用量より大きい、バッテリーとスーパーキャパシタとの組合せによって電力を供給される例示的なIOP検出用インプラントの電力使用量を示すグラフ1400cである。信号1412によって例示される例において、IOP検出用インプラントは、もう一度、1時間あたり1nAhの電力を消費するが、バッテリーは、0.3μAhしかない貯蔵容量を有し、スーパーキャパシタは、0.1μAhの貯蔵容量を有する。もう一度、IOP検出用インプラントは、充電相互作用を行ってスーパーキャパシタを充電するように時折患者に促す外部充電装置を備えるシステムの一部であってよい。信号1412によって例示される例において、外部充電装置は、充電相互作用のプロンプトを毎日出力し、従って、スーパーキャパシタは、これらの充電相互作用が時折飛ばされることが許容されるものの、概ね毎日再充電される。
【0184】
比較を目的として、
図14Cは、IOP検出用インプラントが1μAh(信号1412によって表したバッテリーの貯蔵容量の3倍より多い)の貯蔵容量を有するバッテリーだけによって電力を供給される場合を例示する信号1410も含む。信号1410によって示すように、このバッテリー容量は、IOP検出用インプラントに大体41日間電力を供給するのに十分である。対照的に、信号1412に対応するIOP検出用インプラントは、予定された充電相互作用のプロンプトの間の期間全体のための必要な動作電力のすべてをスーパーキャパシタが供給することができるため、はるかに長い期間動作することができる。患者がこれらのプロンプトに従い、充電相互作用を行う限り、バッテリーパワーは必要ない。しかし、患者が1つ以上の充電相互作用のプロンプトに従うことができない場合、予備電力を供給するためにバッテリーが利用可能である。
【0185】
図15は、IOP検出用インプラントに動作用電力を供給するための方法1500を例示するフローチャートである。方法1500は、インプラント用の動作用電力を提供するためにIOP検出用インプラントに内蔵されてバッテリーとスーパーキャパシタとが提供されるブロック1510で開始する。ブロック1520において、外部充電装置が提供される。ブロック1530において、外部充電装置は、外部充電装置とIOP検出用インプラントとの間で充電相互作用を開始することを患者に促すように設定される。最後に、ブロック1540において、外部充電装置は、充電相互作用が開始されると例えばIOP検出用インプラントに内蔵のスーパーキャパシタへ電力を無線で伝送する。既に考察したように、充電相互作用は、例えば規則的な間隔でまたはなんらかの基準の充足を基準として外部充電装置により促すことができる。
【0186】
移植可能な生理学的センサおよび関連する方法のさまざまな実施形態をさまざまな特徴とともに本明細書に記載した。すべての実施形態をすべての特徴とともに例示したわけではないが、本明細書に記載する特徴は、記載し、例示するさまざまな実施形態と自由に組み合わせることができることが理解されるはずである。本明細書に記載したさまざまな生理学的センサは、ここにそれぞれが参照によって全体として組み込まれる次の米国特許文献、米国特許第6,981,958号、米国特許第7,678,065号、米国特許出願公開第2010/0056979号、および米国特許出願公開第2010/0106073号中に記載されているセンサ装置と関連して開示されているあらゆる特徴、特性、要素などを有することができる。さらに、本明細書に記載したさまざまな生理学的センサは、例えば、上記の特許文献中記載されているあらゆる方法または用途において使用することができる。
【0187】
本明細書に開示した実施形態と関連して記載したさまざまな例示的な装置、論理ブロック、モジュール、回路およびアルゴリズムステップは、例えばアナログおよび/またはディジタル回路、コンピュータソフトウェアまたは両者の組み合わせのような電子ハードウェアとして実体化することができる。ハードウェアとソフトウェアとのこの互換性を明確に例示するために、さまざまな例示的構成要素、ブロック、モジュール、回路およびステップを概ねそれらの機能という観点で上記に記載した。そのような機能がハードウェアまたはソフトウェアとして実体化されるかどうかは、特定の用途とシステム全体に課される設計上の制約とに依存する。記載した機能は、それぞれの特定用途のためにさまざまな方法で実体化することができるが、そのような実体化決定は、本開示の範囲からの逸脱の原因となると解釈するべきでない。
【0188】
本明細書に開示した実施形態と関連して記載したさまざまな例示的論理ブロック、モジュールおよび回路のいくつかは、本明細書に記載した機能を実行するために設計された汎用プロセッサ、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のプログラマブルロジック装置、ディスクリートゲートまたはトランジスタロジック、ディスクリートハードウェアコンポーネントまたはそれらのあらゆる組み合わせを用いて実体化するかまたは実施することができる。
【0189】
添付図面と関連して実施形態を記載した。しかし、図は、必ずしも一定の比率で描かれていないと理解するべきである。距離、角度および他の寸法は、単に例示的であり、例示される装置の実際の寸法およびレイアウトと必ずしも正確な関係があるわけではない。さらに、上記実施形態は、当業者が本明細書に記載した装置、システムおよび方法を製作し使用することが可能になる詳しさのレベルで記載されている。多種多様な変化が可能である。構成要素、要素および/またはステップは、変更、追加、削除または再構成することができる。特定の実施形態を明示的に記載したが、他の実施形態は、この開示に基づいて当業者に自明になる。本明細書に開示される特定の発明の範囲は、上記記載によってではなく添付の請求項によって示される。請求項の均等物の意味内および範囲内にあるすべての変化形は、均等物の範囲内に含まれる。