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特許7569809先見的な車両コントロールをする方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】先見的な車両コントロールをする方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20241010BHJP
   B60W 40/12 20120101ALI20241010BHJP
   B60W 30/18 20120101ALI20241010BHJP
【FI】
G01M17/007 B
B60W40/12
B60W30/18
G01M17/007 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021573825
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 AT2020060241
(87)【国際公開番号】W WO2020247999
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】A50532/2019
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】521542948
【氏名又は名称】エーブイエル リスト ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギゲル、ハンス ピーター
(72)【発明者】
【氏名】レンメラー、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ジャニー-ルイジ、ヨハンネス
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/130507(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/095242(WO,A1)
【文献】特開2015-129644(JP,A)
【文献】特開昭62-242835(JP,A)
【文献】特開2017-053768(JP,A)
【文献】特開平09-113418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00- 17/10
B60W 10/00- 60/00
F02D 29/00- 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両をコントロールするための運転者モデルを作動させる方法において、前記方法は次の各ステップ:
a)車両についての所定の目標出力推移曲線(213,311)が確定されることと、
b)前記目標出力推移曲線(213,311)についての許容幅(211)が決定されることとを含み、前記許容幅(211)は上側の限界曲線(109,215)と下側の限界曲線(111,217)によって制限され、前記上側の限界曲線(109,215))は前記目標出力推移曲線(213,311)の推移(225)に所定の上側の許容値(307)を加えたものを参照して決定され、前記下側の限界曲線(111,217)は前記目標出力推移曲線(213,311)の推移(225)から所定の下側の許容値(309)を差し引いたものを参照して決定され、
c)現在の時点(t0)に対して過去の車両の出力データの履歴に基づき予想される予想特性曲線(305)であって、将来に予想される車両の出力についての予想特性曲線(305)が、車両の現在の調整のもとでの車両の出力動向の外挿(303)によって、所定の時間的な長さを有する予測ウィンドウ(229)について決定されることと、
d)前記予想特性曲線(305)が、時間的な前記予測ウィンドウ(229)の内部で、前記許容幅(211)の前記上側の限界曲線(109,215)と前記下側の限界曲線(111,217)のうちの少なくとも1つと交わるケースについて、車両の調整を変更するためのコントロールコマンド(315,319)が前記運転者モデルによりリリースされることとを含む、方法。
【請求項2】
車両の調整の変更は、前記予想特性曲線(305)が前記上側の限界曲線(109,215)と交わっているケースについては、車両の出力放出の低減を惹起する第1のコントロールコマンド(315)がリリースされることを含み、
車両の調整の変更は、前記予想特性曲線(305)が前記下側の限界曲線(111,217)と交わっているケースについては、車両の出力放出の上昇を惹起する第2のコントロールコマンド(319)がリリースされることを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のコントロールコマンド(315)は車両のブレーキシステムを作動化させ、および/または駆動部の出力放出の低減を惹起し、前記第2のコントロールコマンド(319)は、現在の出力放出に対してさらに高い出力放出を提供するように車両の駆動部をコンフィグレーションすることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のコントロールコマンド(315)と前記第2のコントロールコマンド(319)との間の転換のために車両のアクセルペダルとブレーキペダルがゼロ位置でなければならないことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記予想特性曲線(305)が前記上側の限界曲線(109,215)と前記下側の限界曲線(111,217)のうち少なくとも1つと交わるケースについては、前記予想特性曲線(305)と前記上側の限界曲線(109,215)または前記下側の限界曲線(111,217)との複数の交点(221)から現在の時点(t0)までの時間的間隔に依存して変化する複数の加重係数が各々、決定され、
前記複数の加重係数を用いて前記コントロールコマンド(315,319)のリリースに適用されるべきそのつどの交点(221)が決定されることを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
記予想特性曲線(305)が、出力放出および/または車両の加速の値が予測ウィンドウ内で一定に保たれるという想定のもとで決定されることを特徴とする、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記予測ウィンドウ(229)が連続的に更新され、
前記予測ウィンドウ(229)の内部で、第1の検査ステップ(313)で前記予想特性曲線(305)が前記上側の限界曲線(109,215)と交わるかどうかが連続的に検査され、第2の検査ステップ(317)で前記予想特性曲線(209,305)が前記下側の限界曲線(111,217)と交わるかどうかが連続的に検査されることを特徴とする、請求項1~6のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の検査ステップ(313)で、前記目標出力推移曲線(213,311)によって設定される将来の出力要求が前記予測ウィンドウ(229)の内部で連続的にゼロ値へと近づいていくかどうかが追加的に検査され、前記目標出力推移曲線(213,311)によって設定される将来の出力要求が前記予測ウィンドウ(229)の内部で連続的にゼロ値へと近づいていくケースについては、車両を所定の手順に従って停止させるコントロールコマンド(315,319)がリリースされることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記予測ウィンドウが現在の時点に応じて時間軸に沿って動く所定の時間的長さまたは前記車両の状態に応じて選択される可変的な時間的長さを有することを特徴とする、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
車両のためのコントロール装置(400)において、
前記コントロール装置(400)は少なくとも1つの計算ユニット(401)を含み、少なくとも1つの前記計算ユニット(401)は少なくとも、
車両についての所定の目標出力推移曲線(213,311)を確定するための少なくとも1つの確定モジュール(405)と、
前記目標出力推移曲線(213,311)についての許容幅(211)を決定するための第1の決定モジュール(407)であって、前記許容幅(211)が上側の限界曲線(109,215)および下側の限界曲線(111,217)によって区切られるものと、
前記目標出力推移曲線(213,311)の推移に所定の上側の許容値(307)を加えたものを参照して前記上側の限界曲線(109,215)を確定するための第2の確定モジュール(409)と、
前記目標出力推移曲線(213,311)の推移から所定の下側の許容値(309)を差し引いたものを参照して前記下側の限界曲線を確定するための第3の確定モジュール(411)と、
現在の時点(t0)に対して過去の車両の出力データの履歴に基づき予想される予想特性曲線(305)であって、将来に予想される車両の出力についての予想特性曲線(305)を、車両の現在の調整のもとでの車両の出力動向の外挿(303)によって、所定の時間的な予測ウィンドウ(229)について決定するための第2の決定モジュール(413)と、
前記予想特性曲線(219,305)が、時間的な前記予測ウィンドウ(229)の内部で、前記許容幅(211)の前記上側の限界曲線(109,215)と前記下側の限界曲線(111,217)のうちの少なくとも1つと交わるケースについて、車両の調整を変更するために運転者モデルにより提供されるコントロールコマンド(315,319)をリリースするためのリリースモジュール(415)とを含む、コントロール装置(400)。
【請求項11】
車両のテスト走行を実施するための、請求項10に記載のコントロール装置400の利用法。
【請求項12】
プログラムがコンピュータで実行されたときに請求項1~9に記載のすべてのステップを実行するためのプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両をコントロールするための運転者モデルを作動させる方法、車両をコントロールするための運転者モデルを作動させるためのコントロール装置、車両のテスト走行を実施するためのコントロール装置の利用法、およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特に車両テスト走行を実施するために、所定の車両速度要求に従って車両が作動する。このとき車両速度要求は独立変数としての役目を果たし、これを参照して、たとえば有害物質エミッションなどの車両の挙動が評価される。
【0003】
従来技術では、現在の車両速度要求と現在の車両速度との間の差異を計算する運転者モデルが記述され、すなわち、車両を操縦するときの運転者の挙動をシミュレーションするための数学モデルが記述される。このような運転者モデルは、たとえばPI制御器を利用したうえで、現在の車両速度要求と現在の車両速度との間の計算された差異を最小化しようと試みる。このような種類の運転者モデルは、一方では、車両を操縦するときの人間の運転者の挙動を限定的にのみ反映する、現在の車両速度要求だけを指向したそのつどの車両の動作につながる。
【0004】
特に、現在の車両速度要求に合わせてのみ最適化された運転者モデルによる車両のコントロールは、頻繁な加速プロセスと減速プロセスにつながり、それがひいては人間の運転者による動作に比べていっそう高い燃料消費につながり、および、それに起因していっそう高い有害物質排出につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上に説明した問題を少なくとも部分的に斟酌することにある。特に本発明の課題は、最大の燃料消費効率もしくは有害物質効率を可能にする、運転者モデルを利用した車両の動作を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題は特許請求の範囲によって解決される。特に、上記の課題は、独立請求項のそれぞれの主題による方法、制御装置、およびコンピュータプログラム製品によって解決される。
【0007】
本発明のその他の利点は、従属請求項、発明の詳細な説明、および図面から明らかとなる。このとき、方法との関連で記述されている構成要件や詳細は、当然ながら本発明によるコントロール装置との関連でも該当し、およびその逆も成り立つので、個々の発明態様についての開示に関しては常に相互の参照がなされ、ないしは参照をすることができる。
【0008】
本発明の第1の態様では、車両をコントロールするための運転者モデルを作動させる方法が提案される。本発明による方法は、車両についての所定の目標出力推移曲線が判定されることと、目標出力推移曲線についての許容幅が決定されることとを含み、許容幅は上側の限界曲線と下側の限界曲線によって制限され、上側の限界曲線は目標出力推移曲線の推移に所定の上側の許容値を加えたものを参照して決定され、下側の限界曲線は目標出力推移曲線の推移から所定の下側の許容値を差し引いたものを参照して決定される。さらに本発明による方法は、将来に予想される車両の出力についての予想特性曲線が、車両の現在の調整のもとでの車両の出力動向の外挿によって、所定の時間的な長さを有する予測ウィンドウについて決定されることと、予想特性曲線が、時間的な予測ウィンドウの内部で、許容幅の上側の限界曲線と下側の限界曲線のうちの少なくとも1つと交わるケースについて、車両の調整を変更するためのコントロールコマンドが運転者モデルによりリリースされることとを含む。
【0009】
本発明の意味における運転者モデルが試験台および/または車両で適用されるときには、特に車両の速度が着目される。そのために、走行されるべきテストサイクルに応じて、時間的に変化する、およびそれに伴って目標速度推移または目標出力推移曲線と表現することもできる目標速度の設定が行われる。テストサイクルを完了するために、車両の速度のコントロールがそのアクセルペダルとブレーキペダルを用いて行われる。このときテスト動作のときのように、アクセルペダルの操作は実際速度を定量的に上昇させる役目を果たし、ブレーキペダルの操作は実際速度を相応に定量的に低下させる役目を果たす。このような速度コントロールが実行されるときには、速度曲線の形態における実際速度の推移が、目標速度の推移にできる限り正確に追随するのがよい。特に、たとえば下側の限界曲線と、目標速度からの超えてはならない最大の誤差を表す上側の限界曲線という形態で、限界誤差が設定される。したがって目標速度の推移と実際速度の推移は合同なのではなく、互いに相違する。コントロール機能および/または運転者モデルの品質に応じて、これら両方の推移の間の相違がさまざまに異なる大きさになる。
【0010】
「コントロールする」という概念は、本件開示の文脈においては、制御プロセスもしくは調節プロセスであると理解される。
【0011】
「コントロールコマンドのリリース」とは、本件開示の文脈においては、提供されるコントロールコマンドによる車両の調整の変更が許可され、たとえばブレーキペダルの操作が許可され、相応に実行されるプロセスであると理解される。特に「コントロールコマンドのリリース」とは、運転者による実行のための、たとえばインジケータおよび/またはスピーカなどの出力ユニットでのコントロールコマンドの出力であると理解される。
【0012】
「目標出力推移曲線」とは、本件開示の文脈においては、たとえば車両速度、エンジン出力、ブレーキ出力、加速出力、および/または減速出力などの、車両によって提供されるべき走行出力の所定のシーケンスであると理解される。目標出力推移曲線は、特に、時間を表す第1の軸と、走行出力を表す第2の軸とで作成されたグラフで提供される。
【0013】
「許容幅」とは、本件開示の文脈においては、それぞれの目標出力推移曲線に比例して変化し、上方に向かっては上側の限界曲線によって区切られ、下方に向かっては下側の限界曲線によって区切られる値範囲であると理解される。このとき上側の限界曲線と下側の限界曲線は、特に目標出力推移曲線に対して、定義された時間的な誤差ないし「オフセット」と、速度依存的な誤差ないし「オフセット」との中で延びている。許容値は、たとえばそれぞれの車両の利用者によって設定することができる。特に、上側の限界曲線についての第1の許容値と、下側の限界曲線についての第2の限界値とを設定することができる。当然ながら、第1の許容値と第2の許容値が数値的に同一であることも考えられる。
【0014】
「予想特性曲線」とは、本件開示の文脈においては、将来に予想されるそのつどの車両の出力ないし「先見的な挙動」のことであると理解される。予想特性曲線は、車両の現在の調整のもとでの車両の出力動向の外挿によって、所定の時間的な長さを有する予測ウィンドウについて決定される。それが意味するのは、所定の予測ウィンドウの内部で、すなわち、たとえば2秒から20秒の間の、好ましくは2秒から10秒の間の、さらに好ましくは2秒から5秒の間の、特に好ましくは4秒の、所定の長さを有するタイムスロットの内部で、車両の出力動向が予測され、もしくは少なくとも1つの現在の出力値から、および場合により過去に判定された車両の出力値の履歴から決定されることである。車両の出力動向は目標出力推移曲線の推移に実質的に対応するので、予想特性曲線の原点は通常は許容幅の内部に位置し、すなわち、下側の限界曲線と上側の限界曲線との間に位置する。特に、車両の出力動向が目標出力推移曲線に重なり合う。
【0015】
「車両の調整」とは、本件開示の文脈においては、たとえば所定のペダル位置での車両の動作などの、車両のコンフィグレーションのことであると理解される。
【0016】
提案される方法は、運転者により車両のコントロールのために選択されるコントロールコマンドが運転者モデルによって選択的にリリースもしくは設定される、車両のテスト走行の半自動式の実施のために利用される。
【0017】
特に提案される方法は、車両コントロール装置により車両のコントロールのために選択されるコントロールコマンドが運転者モデルによって選択的にリリースされる、車両のテスト走行の完全自動式の実施のために利用される。
【0018】
提案される方法は許容幅に依拠するものであり、これによって将来の車両挙動および将来に提供されるべき車両出力が、車両をコントロールするためのプロセスに取り込まれる。それに応じて、本発明に基づいて意図される許容幅は、たとえば1秒以内などの短い時間的な間隔で調整されるべき、たとえば加速と制動などの逆向きのコントロールコマンドの発生が低減される、車両の「先見的な」コントロールを可能にする。それに応じて、提案される方法は、燃料消費と有害物質排出の観点から特別に均等な、かつそれに起因して効率的な、車両の動作を可能にする。
【0019】
特にテストサイクルでは、たとえば試験台走行や、現実的な動作でのエミッションを判定するためのテストでは、目標出力推移曲線が、すなわち車両によって印加されるべき車両出力の推移が、所定のタイムスロットにわたって設定されるので、現在の時点を基準として、このタイムスロットの内部では将来に印加されるべきそのつどの走行出力が常に既知となる。
【0020】
それぞれの目標出力推移曲線のごくわずかな変化に反応してコントロールコマンドが提供されることによる頻繁な適合化プロセスを回避するために、提案される方法は、車両の予想特性曲線が目標出力推移曲線の許容幅と交わるときにだけ、たとえばその上側の限界曲線および/または下側の限界曲線と交わるときにだけ、そのつどの車両の現在の走行出力を変更するためのコントロールコマンドがリリースされることを意図する。このとき、所定の時間ないし所定の時間的な長さを有する予側タイムスロットを参照して「予測ホライズン」が利用され、その内部で、予想特性曲線と許容幅の交点の発生がコントロールコマンドのリリースにつながる。このことは特に、予想特性曲線と許容幅が予測ウィンドウの内部で交わらないときには、車両の現在の調整が維持されることを意味する。
【0021】
当然ながら、本発明に基づいて意図される予測ウィンドウの時間ないし長さは、所定の数学的な関係に従って、車両により現在提供されている、もしくは提供されるべき走行出力に依存して変化し得る。
【0022】
本発明に基づいて意図される予測ウィンドウはダイナミックに、すなわち特に時間の進行に伴って連続的に、もしくは「オンライン」で、更新することができる。それが意味するのは、そのつどの目標出力推移曲線が始まったときに予測ウィンドウが、時間軸に沿って現在の時点に伴って動くことである。それに応じて予測ウィンドウは、常に現在の時点から、もしくは所定の時間にわたる過去の時点から、将来の相応の時点にまで及ぶ。
【0023】
さらに、予測ウィンドウは可変の時間もしくは時間的な長さを有することが意図されていてよい。このとき予測ウィンドウの時間的な長さは、たとえば車両の状態に依存して、特に車両の現在の速度に依存して、選択することができる。
【0024】
さらに、そのつどの車両の調整の変更は、予想特性曲線が上側の限界曲線と交わっているケースについては、車両の出力放出の低減を惹起する第1のコントロールコマンドがリリースされることを含み、車両の調整の変更は、予想特性曲線が下側の限界曲線と交わっているケースについては、車両の出力放出の上昇を惹起する第2のコントロールコマンドがリリースされることを含むことが意図されていてよい。
【0025】
現在の予想特性曲線がそれぞれの予測ウィンドウの内部でそのつどの下側の限界曲線と交わるケースについて、そのつどの車両の出力放出を上昇させることで、または、予想特性曲線が予測ウィンドウの内部でそのつどの下側の限界曲線と交わるケースについて、車両の出力放出を低減させることで、車両の出力放出が常に本発明に基づく許容幅の内部に保たれる。
【0026】
さらに、それぞれの第1のコントロールコマンドはそれぞれの車両のブレーキシステムを作動化させ、および/または駆動部の出力放出の低減を惹起し、それぞれの第2のコントロールコマンドは、現在の出力放出に対してさらに高い出力放出を提供するように車両の駆動部をコンフィグレーションすることが意図されていてよい。
【0027】
たとえば車両のブレーキシステムを作動化させるために、および/またはたとえばアクセルペダルを「持ち上げる」ことで駆動部の出力放出を低減させるために、または車両の駆動部の出力放出を上昇させるために、そのつどのコントロールコマンドがリリースされることで、提案される方法に基づいて車両を特別に効率的に作動させる車両の調整の変更が、運転者もしくは車両コントロール装置にとって可能となる。それが意味するのは、特に、提案される方法に基づいて必要であるコントロールコマンドだけがリリースされることである。特に、提案される方法に基づいて必要とされないコントロールコマンドがブロックされ、ないしはリリースされないことが意図されていてよい。
【0028】
コントロールコマンドをリリースするために、ペダルコントロールデバイスを、ブロックされた動作ないしはリリースされていない動作から、リリースされた動作へと切り換えることができる。
【0029】
さらに、そのつどの車両のブレーキシステムを作動化させる第1のコントロールコマンドと、現在の出力放出に対してさらに高い出力放出を提供するように車両の駆動部をコンフィグレーションする第2のコントロールコマンドとの間の転換のために、車両のアクセルペダルとブレーキペダルがゼロ位置でなければならないことが意図されていてよい。
【0030】
たとえば加速と減速のような反対の効果がある2つのコントロールコマンドの間で意図される、それぞれのペダルの、すなわち車両の入力手段の、ゼロ位置についての設定により、車両の調整の不必要に頻繁な変更を回避することができる。そのために、たとえばブレーキペダルが第1のコントロールコマンドに従って最後に作動化されて以来ゼロ位置に戻っていないときには、出力放出を上昇させるためのそれぞれの第2のコントロールコマンドをブロックすることができる。
【0031】
さらに、本発明に基づいて意図される予想特性曲線が、上側の限界曲線と下側の限界曲線のうち少なくとも1つと交わるケースについては、予想特性曲線と上側の限界曲線または下側の限界曲線との交点から現在の時点までの時間的間隔に依存して変化する加重係数が判定されることが意図されていてよい。
【0032】
予想特性曲線と上側の限界曲線または下側の限界曲線との交点から現在の時点までの時間的間隔に依存して変化する加重係数により、それぞれの予測ウィンドウの内部で複数の交点が生じているケースについて、そのつど優先的に適用されるべき交点を判定することができる。そのために、たとえば現在の時点のもっとも近くで生じている交点が高い優先順位につながり、現在の時点から特別に遠く離れている交点が低い優先順位につながることが意図されていてよく、それにより、高い優先順位の交点が最初に、もしくは低い優先順位の交点よりも前に、提案される方法に基づくコントロールコマンドのリリースのために採用される。
【0033】
さらに、それぞれの予想特性曲線が、現在の時点を起点とする所定のタイムスロット内での車両の出力データ履歴を参照したうえで決定され、予想特性曲線が、出力放出および/または車両の加速の値が予測ウィンドウ内で一定に保たれるという想定のもとで決定されることが意図されていてよい。
【0034】
たとえば現在の時点の数秒前、好ましくは5秒前、さらに好ましくは4秒前、特に好ましくは0.2秒前から、現在の時点までの範囲に及ぶ決定ウィンドウ内で判定される出力データ履歴を利用して、車両の挙動を高い信頼度で外挿することができる。このとき車両の、すなわち車両の駆動部の出力放出、車両の正または負の加速度、車両の、すなわち車両の駆動部のトルク放出、および/またはその他の技術的に好適なあらゆるパラメータを、車両の運動パターンの決定のために利用して、予想特性曲線を外挿することができる。
【0035】
さらに、予測ウィンドウが連続的に更新されることが意図されていてよく、予測ウィンドウの内部で、第1の検査ステップで予想特性曲線が上側の限界曲線と交わるかどうかが連続的に検査され、第2の検査ステップで予想特性曲線が下側の限界曲線と交わるかどうかが連続的に検査される。
【0036】
予想特性曲線が上側の限界曲線と交わるかどうかが連続的に検査される第1の検査ステップにより、および、予想特性曲線が下側の限界曲線と交わるかどうかが連続的に検査される第2の検査ステップにより、車両を減速させるための第1のコントロールコマンドをリリースするプロセスを、または、出力放出を上昇させるための第2のコントロールコマンドをリリースするためのプロセスを、互いに独立して実行することができる。したがって、たとえばアクセルペダルやブレーキペダルなどの相応のアクチュエータを互いに独立して、すなわち場合によっては同時に、操作することができる。
【0037】
特に、車両を減速させるための第1のコントロールコマンドをリリースするプロセスが優先して実行されることが意図されていてよく、それにより、たとえば車両を減速させるための第1のコントロールコマンドと、車両の駆動部の出力放出を上昇させるための第2のコントロールコマンドとがリリースされるべき場合に、実際には第1のコントロールコマンドがリリースされる。
【0038】
さらに、それぞれの第1の検査ステップで、目標出力推移曲線によって設定される将来の出力要求が予測ウィンドウの内部で連続的にゼロ値へと近づいていくかどうかが追加的に検査され、目標出力推移曲線によって設定される将来の出力要求が予測ウィンドウの内部で連続的にゼロ値へと近づいていくケースについては、所定の手順に従って車両を停止させるコントロールコマンドがリリースされることが意図されていてよい。
【0039】
不必要な出力放出を回避するために、車両を停止させる所定の手順が意図されていてよい。そのために、たとえばブレーキアクティビティおよび/または回生からなるシーケンスが意図されていてよい。そのような手順を開始するのに適した走行状況を認識するために、特に、本発明に基づいて意図される目標出力推移曲線の推移を評価することができ、それにより、現在の時点以降に所定の時間のあいだ、特に本発明に基づいて意図される予測ウィンドウの時間のあいだ、目標出力推移曲線のそれぞれの値が連続的に減少しているときに手順が作動化される。第2の態様では、本発明は、少なくとも1つの計算ユニットを有するコントロール装置に関する。計算ユニットは、車両についての所定の目標出力推移曲線を判定するための少なくとも1つの判定モジュールと、目標出力推移曲線についての許容幅を決定するための第1の決定モジュールであって、許容幅が上側の限界曲線および下側の限界曲線によって区切られるものと、目標出力推移曲線の推移に所定の上側の許容値を加えたものを参照して上側の限界曲線を判定するための第2の判定モジュールと、目標出力推移曲線の推移から所定の下側の許容値を差し引いたものを参照して下側の限界曲線を判定するための第3の判定モジュールと、将来に予想される車両の出力についての予想特性曲線を、車両の現在の調整のもとでの車両の出力動向の外挿によって、所定の時間的な予測ウィンドウについて決定するための第2の決定モジュールと、予想特性曲線が時間的な予測ウィンドウの内部で許容幅の上側の限界曲線と下側の限界曲線のうちの少なくとも1つと交わるケースについて、車両の調整を変更するために運転者モデルにより提供されるコントロールコマンドをリリースするためのリリースモジュールとを含む。
【0040】
それに伴って本発明のコントロール装置は、本発明による方法に関連して詳細に説明したのと同じ利点をもたらす。
【0041】
第3の態様では、本発明は、車両のテスト走行を実施するための、提案されるコントロール装置の利用法に関する。
【0042】
第4の態様では、提案される発明は、プログラムがコンピュータで実行されたときに提案される方法のすべてのステップを実行するためのプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品に関する。
【0043】
コンピュータプログラム製品はコンピュータ可読の命令コードとして、たとえばJAVA(登録商標)やC++などのあらゆる適当なプログラミング言語でインプリメントされていてよい。コンピュータプログラム製品は、データディスク、リムーバブルハードディスク、揮発性メモリもしくは不揮発性メモリ、またはビルトインメモリ/プロセッサなどのコンピュータ可読の記憶媒体に格納されていてよい。命令コードは、所望の機能が実行されるように、コンピュータまたはコントロールデバイスなどその他のプログラミング可能なデバイスをプログラミングすることができる。さらにコンピュータプログラム製品は、たとえばインターネットなどのネットワークで提供することができ、もしくは提供されていてよく、そこから必要に応じて利用者によってダウンロードすることができる。コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムすなわちソフトウェアによってだけでなく、1つまたは複数の専用の電子回路によっても、すなわちハードウェアでも、あるいは任意のハイブリッド形態でも、すなわちソフトウェアコンポーネントとハードウェアコンポーネントによっても、具体化することができ、もしくは具体化されていてよい。
【0044】
本発明を改良するさらなる方策は、図面に模式的に示されている本発明のさまざまな実施例に関する以下の説明から明らかとなる。特許請求の範囲、発明の詳細な説明、または図面から明らかとなる一切の構成要件および/または利点は、設計上の具体的事項や空間的な配置も含めて、それ自体として単独でもさまざまに異なる組合せでも、発明の要部となり得る。
【0045】
図面はそれぞれ模式的に次のものを示す:
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明による方法の1つの考えられる実施形態の進行である。
図2】本発明による方法の1つの考えられる実施形態に基づく、予測ウィンドウの中での目標出力推移曲線についての許容幅を予想特性曲線とともに視覚化した図である。
図3】本発明による方法の1つの考えられる実施形態に基づくリリース手順の進行である。
図4】本発明によるコントロール装置の1つの考えられる実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1には、車両の調整されるべき出力としての車両速度113を調整するための本発明による方法の1つの考えられる実施形態の進行100が模式的に示されている。
【0048】
第1のステップ101で、入力変数である現在の目標速度設定103、許容時間105、および許容値もしくは許容速度107を参照して、目標速度設定103の推移についての許容幅の上側の限界曲線109と下側の限界曲線111が決定される。
【0049】
特に、目標速度設定103の各々の時点”t”について許容幅が決定されることが意図されていてよく、このとき次式が成り立つ:
【数1】

【数2】
【0050】
ここで「Δt」および「Δv」は所定のパラメータである。パラメータ“v”は、たとえば車両の現在の速度113などの走行出力に相当し、“t”は特に単位[秒]での時間に相当し、
【数3】

は、“t”の個所での下側の限界曲線111の値に相当し、
【数4】

は、“t”の個所での上側の限界曲線109の値に相当する。
【0051】
特に許容幅は、“t”、“t+1”,“t+2”,“t+3”および“t+4”の個所における
【数5】

および
【数6】

についての値をそれぞれ含む5次元のベクトルを用いて判定することができ、その入力量は、個所“t”、“t+1”,“t+2”,“t+3”,“t+4”および”t+6”における目標出力推移と、パラメータ“Δt”および“Δv”とを含む。ここで”Δt”は、”2”の最大値に制限されていてよい。特に、“t+4”の個所における
【数7】

および
【数8】

についてのそれぞれの値は、“t+6”の個所における、たとえば目標速度推移値などの目標出力推移値を参照して計算することができる。
【0052】
第2のステップ115で、ステップ101で決定された下側の限界曲線111の推移217を参照して、および、ステップ101で決定された上側の限界曲線109の推移215を参照して、ならびに、現在の車両速度113と目標速度設定103を加味したうえで、許容時間105の内部で、もしくは許容時間105に相当する予測ウィンドウの内部で、予想特性曲線が下側の限界曲線111または上側の限界曲線109と交わるかどうかが判断される。
【0053】
現在の車両速度113を参照して判定された予想特性曲線が許容時間105の内部で下側の限界曲線111と交わるケースについては、車両を加速させるための第1のコントロールコマンド315がリリースされる。
【0054】
現在の車両速度113を参照して判定された予想特性曲線が許容時間105の内部で下側の限界曲線111と交わるケースについては、車両を減速させるための第2のコントロールコマンド319がリリースされる。
【0055】
ブレーキング中にブレーキペダル値が所定のタイムスロット内で将来的に値”0”に向かっており、すなわちブレーキペダルが緩められており、ブレーキング後に加速が意図されるケースについては、意図されるブレーキペダル推移に関してブレーキペダルを早期に緩めることが意図されていてよい。このとき、車両の現在の速度が加速前の上側の限界曲線109の値よりも低くなるとただちに、ブレーキペダルもしくはこれに対応するブレーキを緩めることができる。それに応じて加速のためのコントロールコマンドを早期に、すなわち所定の走行推移に基づいて意図される加速時点よりも前に、提供することができ、それによっていわゆる「アンダーシュート」が回避される。
【0056】
図2では、時間[秒]を表す横軸201と、車両速度[Km/h]を表す第1の縦軸203とで作成されたグラフ200が作成されている。
【0057】
さらに図2には、横軸201に対して、ブレーキペダル位置[%]を表す第3の縦軸207と、アクセルペダル位置[%]を表す第3の縦軸209とで作成されたグラフ205が示されている。
【0058】
グラフ200には、たとえば目標速度推移曲線であってよい目標出力推移曲線213に対して近似的に平行に延び、上側の限界曲線215と下側の限界曲線217とによって区切られる許容幅211が示されている。
【0059】
目標出力推移曲線213はたとえばテストによって、特に車両エミッションを測定するためのテストによって、設定される。それに応じて、現在の時点t0の前と後における目標出力推移曲線213のそれぞれの値が既知である。
【0060】
46秒のところの現在の時点t0を起点として、下側の限界曲線217と交点221で交わる予想特性曲線219が示されている。過去における車両の速度の実際の値をベースとする予想特性曲線219の履歴値が、現在の時点t0の前に速度線223によって示されている。
【0061】
これらはコントロール精度に応じて、程度の差こそあれ目標出力推移曲線213と相違する。グラフ200に示すとおり、速度曲線223は34.5秒から42.7秒の時間帯では目標出力推移曲線213よりも下方またはその線上に位置し、42.7秒から47.8秒の時間帯では目標出力推移曲線213よりも上方に位置する。
【0062】
グラフ205には、ブレーキペダル位置の推移225とアクセルペダル位置227の推移が示されている。ブレーキペダルは、図示している31秒から35.4秒までの時間帯の開始時にはそれぞれ異なる強さで操作されている。その後、ブレーキペダルは操作されなくなる。アクセルペダル位置227は、図示している31秒から46秒までの時間帯では0%に位置しており、46秒のところに位置するt0の時点で操作される。本例では、目標出力推移曲線213が34.5秒の時点まで低下していき、速度曲線223が目標出力推移曲線213よりも上方に位置しているので、車両の運転者によってこの時間帯でブレーキペダルが7%を上回る値をもって操作されている。34.5秒の時点で速度曲線223が目標出力推移曲線213に一致し、運転者はブレーキペダルの操作を35.4秒の時点まで弱めていき、ブレーキペダルが完全に緩められている。この時点では、ブレーキペダルもアクセルペダルも操作されておらず、速度曲線223が現在の時点t0(46秒)まで均一に低下している。
【0063】
さらに、速度線223によって示すように、予想特性曲線219の履歴値が時点t0まで下側の限界曲線217と交差していないので、アクセルペダル位置227を変更するためのコントロールコマンドはリリースされておらず、それにより、アクセルペダル位置227は時点t0まで変化していない。
【0064】
時点t0(46秒)から将来へと4秒のあいだ時点50まで延びる予測タイムスロット229の内部で、本例では車両の現在の調整を維持したうえで、交点221によって示唆するように、予想特性曲線219が下側の限界曲線217と交わる。交点221の発生に基づき、アクセルペダル位置227を変更するためのコントロールコマンドがリリースされ、それにより、アクセルペダルを操作するようにとの相応の指示がインジケータで運転者に出力され、運転者は車両を許容幅の内部に保つために車両を加速させる。
【0065】
当然ながら、アクセルペダルを相応に操作する、もしくはアクセルペダルの操作をシミュレートする車両制御装置にコントロールコマンドが伝送されるように、コントロールコマンドをリリースすることもできる。
【0066】
図3には、たとえば図2に示すアクセルペダルを操作するためのコントロールコマンドなどの、コントロールコマンドをリリースするための手順の詳細な進行300が示されている。
【0067】
現在の車両速度301のパラメータを前提としたうえで、外挿ステップ303で将来の車両速度301の予想特性曲線305が判定される。そのために、現在の時点t0を起点としてたとえば過去0.2秒の所定の値までのタイムスロットにわたって、予想特性曲線305を外挿することができる。その代替として、予想特性曲線を計算するために車両モデルを利用することができる。
【0068】
第1の検査ステップ313で、下側の許容値307と目標出力推移曲線311とを参照して、目標出力推移曲線311の許容幅の下側の限界曲線が決定される。外挿ステップ303で判定された予想特性曲線305を参照して、これが予測ウィンドウの内部で下側の限界曲線と交わるかどうかがチェックされる。予想特性曲線305が下側の限界曲線と交わるケースについては、車両を加速させるための第1のコントロールコマンド315がリリースされる。
【0069】
第2の検査ステップ317で、上側の許容値307と目標出力推移曲線311とを参照して、目標出力推移曲線311の許容幅の上側の限界曲線が決定される。外挿ステップ303で判定された予想特性曲線305を参照して、これが予測ウィンドウの内部で上側の限界曲線と交わるかどうかがチェックされる。予想特性曲線305が上側の限界曲線と交わるケースについては、車両を減速させるための第2のコントロールコマンド319がリリースされる。このとき通常は1つのコントロールコマンドだけがリリースされるので、両方の交点のいずれが早期に生じるかがチェックされて、早期に生じるほうの交点に対応するコントロールコマンドがリリースされる。
【0070】
図4には、本発明によるコントロール装置400の1つの考えられる実施形態が示されている。
【0071】
コントロール装置400は、運転者モデルを用いたテスト走行中に車両を制御ないし調節するための役目を果たす。
【0072】
コントロール装置400は、計算ユニット401と、本発明による方法のすべてのステップを実施するためのコンピュータプログラムが保存されたメモリ403とを含んでいる。
【0073】
コンピュータプログラムは、第1の判定モジュール405によって車両についての所定の目標出力推移曲線を判定するように、すなわち、たとえば目標出力推移曲線をメモリ403から、たとえばクラウドサーバからロードし、第1の決定モジュール407によって目標出力推移曲線についての許容幅を決定するように、計算ユニット401をコンフィグレーションする。許容幅は、上側の限界曲線と下側の限界曲線とによって区切られる。上側の限界曲線は、計算ユニット401により第2の判定モジュール409によって、目標出力推移曲線の推移に所定の上側の許容値を加えたものを参照して判定され、下側の限界曲線は第3の判定モジュール411により計算ユニット401によって、目標出力推移曲線の推移から所定の下側の許容値を差し引いたものを参照して判定される。
【0074】
さらに、計算ユニット401により第2の決定モジュール413によって、将来に予想される車両の出力についての予想特性曲線が、現在の車両の調整のもとでの車両の出力動向の外挿により、所定の時間的な予測ウィンドウについて決定される。
【0075】
計算ユニット401のリリースモジュール415は、運転者モデルにより車両の調整の変更のために提供されるコントロールコマンドを、予想特性曲線が上側の限界曲線と下側の限界曲線のうちの少なくとも1つと時間的な予測ウィンドウの内部で交わるケースについてリリースする。
【0076】
本発明は、図示している実施形態に加えてさらなる構成原理を可能にする。このことは、各図面を援用して説明した実施例に本発明が限定されるとみなされるべきでないことを意味する。
【符号の説明】
【0077】
100 進行
101 第1のステップ
103 目標速度設定
105 許容時間
107 許容速度
109 上側の限界曲線
111 下側の限界曲線
113 車両速度
200 グラフ
201 横軸
203 第1の縦軸
205 グラフ
207 第2の縦軸
209 第3の縦軸
211 許容幅
213 目標出力推移曲線
215 上側の限界曲線
217 下側の限界曲線
219 予想特性曲線
221 交点
223 速度曲線
225 ブレーキペダル推移
227 アクセルペダル位置
229 予測タイムスロット
300 進行
301 車両速度
303 外挿ステップ
305 予想特性曲線
307 上側の許容値
309 下側の許容値
311 目標出力推移曲線
313 第1の検査ステップ
315 第1のコントロールコマンド
317 第2の検査ステップ
319 第2のコントロールコマンド
400 コントロール装置
401 計算ユニット
403 メモリ
405 第1の判定モジュール
407 第1の決定モジュール
409 第2の判定モジュール
411 第3の判定モジュール
413 第2の決定モジュール
415 リリースモジュール
図1
図2
図3
図4