(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】振動応答信号を使用して試験片を分析するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 3/30 20060101AFI20241010BHJP
G01N 29/04 20060101ALI20241010BHJP
G01N 29/12 20060101ALI20241010BHJP
G01N 29/46 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
G01N3/30 S
G01N29/04
G01N29/12
G01N29/46
(21)【出願番号】P 2021575422
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(86)【国際出願番号】 EP2020067389
(87)【国際公開番号】W WO2020254698
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-06-20
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520030800
【氏名又は名称】グラインドソニック・ベスローテン・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】GRINDOSONIC BV
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デン・ボッシェ,アレックス
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/020825(WO,A1)
【文献】特開平05-332908(JP,A)
【文献】G. Roebben et al,Impulse excitation apparatus to measure resonant frequencies, elastic moduli, and internal friction at room and high temperature,Review of Scientific Instruments,1997年12月,Volume 68, Issue 12,4511-4515
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/30
G01N 29/04
G01N 29/12
G01N 29/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温における試験片の材料特性を音響的に測定するための方法であって、
a.前記試験片を試験温度範囲内に加熱するステップと、
b.較正期間中に前記試験片からの振動信号を捕捉することによって前記試験温度範囲内でバックグラウンド測定を実行し、それによりノイズ信号を取得するステップと、
c.前記試験温度範囲内および試験期間中に前記試験片に対して音響測定を実施するステップであって、
c1.前記試験片に振動励起を付与するステップ、および
c2.前記試験期間中に前記試験片の振動信号を捕捉し、それにより前記振動励起に対する振動応答信号を取得するステップ、によって実施するステップと、
d.
前記ノイズ信号が考慮された前記振動応答信号を分析することによって前記試験片の前記材料特性を取得
するステップと、を備え、
ステップc1の前記振動励起は、前記試験片に機械的に誘導され、
弾道インパクタとインパクタアクチュエータとを備える衝撃システムが使用され、前記インパク
タアクチュエータはインパルスを前記弾道インパクタに与えるように構成され、前記試験片に振動励起を付与するために前記弾道インパクタを使用し、
前記音響測定ステップcにおいて、前記試験片に振動励起を付与する測定インパルスがステップc1において前記弾道インパクタに提供され、
前記バックグラウンド測定ステップbにおいて、前記試験片に振動励起を付与しないバックグラウンドインパルスが前記弾道インパクタに提供され、
前記ノイズ信号は、前記インパクタアクチュエータおよび前記弾道インパクタから生じるノイズを含む、方法。
【請求項2】
前記弾道インパクタは、垂直方向に沿って下方から前記試験片に接近するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記弾道インパクタに提供される前記測定インパルスは、前記試験片に機械的に接触するように構成され、前記弾道インパクタに提供される前記バックグラウンドインパルスは、前記試験片に到達しないように構成されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップa~dは、複数回、同じ温度、異なる温度または異なる温度範囲内で実行される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記試験片は連続的に加熱され、それにより前記ステップa~dは後続の温度範囲内で実行される、請求項
1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップdにおいて、前記材料特性の温度依存性が決定される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップdにおいて、ヤング率(E)、剪断弾性率(G)および/またはポアソン弾性率(ν)が決定される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップdにおいて、前記材料特性の減衰定数が決定され、前記減衰定数は、時間変化する前記振動応答信号を構成する正弦波の減衰定数である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
高温における試験片の材料特性を音響的に測定するためのシステムであって、
-前記試験片を試験温度範囲内にするための加熱要素を備える加熱チャンバと、
-期間中に前記試験片からの振動信号を捕捉するように構成されたセンサと、
-前記加熱チャンバ内に配置された試験片に振動励起を付与するための、インパクタおよびインパクタアクチュエータを備える衝撃システムと、
-前記加熱チャンバ、前記センサ、および前記インパクタに関連する制御システムであって、
●前記試験片を試験温度範囲内にするように前記加熱チャンバに指示し、
●試験期間中に、前記加熱チャンバ内に配置された試験片に前記インパクタによって振動励起が機械的に付与されるように前記インパクタアクチュエータを用いて前記インパクタを作動させ、前記振動励起に対する振動応答信号を前記センサから取得するように前記衝撃システムに命令し、
●較正期間中に、前記加熱チャンバ内に配置された前記試験片に前記インパクタが振動励起を機械的に付与しないように前記インパクタアクチュエータを用いて前記インパクタを作動させ、前記センサからノイズ信号を取得するように前記衝撃システムに命令し、
●
前記ノイズ信号が考慮された前記振動応答信号を分析することによって前記試験片の前記材料特性を取得
するように構成された制御システムと、を備え、
前記ノイズ信号は、前記インパクタアクチュエータおよび前記インパクタから生じるノイズを含み、
前記衝撃システムは弾道インパクタを備え、
前記インパクタアクチュエータは、前記弾道インパクタにインパルスを与えるように構成され、
前記インパクタアクチュエータは、音響測定ステップにおいて前記試験片に振動励起を付与するために前記弾道インパクタに測定インパルスを与えるように構成され、
それにより、
前記インパクタアクチュエータは、バックグラウンド測定ステップにおいて前記試験片への衝撃を回避するために、前記弾道インパクタにバックグラウンドインパルスを与えるように構成されて
おり、前記バックグラウンド測定ステップにおいて、前記試験片に振動励起を付与しないバックグラウンドインパルスが前記弾道インパクタに提供され、前記ノイズ信号は、前記バックグラウンド測定ステップにおいて、前記インパクタアクチュエータおよび前記弾道インパクタから生じるノイズを含む、
システム。
【請求項10】
前記制御システムは、時間領域もしくは周波数領域、または前記時間領域と前記周波数領域との組み合わせにおいて前記振動応答信号から前記ノイズ信号を減算することによって前記振動応答信号を分析するように構成された処理手段を備える、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、音波または超音波を使用して試験片を分析する方法およびシステムに関する。これは、固体中の欠陥および異常を検出し、E弾性率、G弾性率およびポアソン定数を特徴付けるのに特に有用である。
【0002】
本発明はまた、試験片の熱膨張パラメータを取得するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
固体の試験は、いくつかの方法で行うことができる。第1の試験は、通常、固体が正しいサイズおよび形状を有するかどうかを確認し、表面欠陥をチェックする目視検査からなる。しかしながら、多くの場合、固体の特性は、目に見えない可能性がある内部構造に大きく依存する。例えば、金属および合金の強度は、バルク欠陥の特定の種類および量に大きく依存する。これらの欠陥は、小さいまたは大きい可能性があり、自然要因、製造方法、摩耗、事故などのために発生する可能性がある。
【0004】
欠陥がどのように発生するかとは無関係に、場合によっては、その欠陥に対する固体の状態を知ることが重要である。欠陥について固体を分析するために、固体の試験片に対して侵襲的方法または非侵襲的方法を使用することができる。これにより、非侵襲的な方法により、試験片を破壊または改変することなく分析が可能になる。したがって、非侵襲的方法は、典型的には、後にまだ使用する必要があるか、またはさらなる試験(それ自体が侵襲的または非侵襲的であり得る)を実施する必要がある試験片に使用される。
【0005】
固体に対する非侵襲試験方法の1つのタイプは、試験片を分析するために振動を使用する。これにより、試験片は、固体を通って伝播することができ、これにより透過、反射または吸収される制御された振動を受ける。制御された振動は、衝撃励起技術(IET)で誘導することができ、それにより試験片は、衝撃を受けたときに実質的に妨げられることなく振動することができるように配置される。インパルス励起技術では、次いで、サンプルに専用の工具または発射体を衝突させ、圧電センサ、マイクロフォン、レーザ振動計または加速度計などの振動信号測定センサで捕捉されるときに得られる振動を分析することによって、試験片の材料特性が決定される。固体を介した振動は、音または音波とも呼ばれ、測定値は音響測定値とも呼ばれる。したがって、振動信号測定センサは、本出願の文脈では「音響センサ」とも呼ばれる。
【0006】
音を使用して固体を試験するための装置は、国際出願公開第2019/020825号明細書に記載されている。この文献は、固体材料サンプルの機械的振動応答を分析するための装置を開示し、装置は、前記固体材料サンプルの表面上のそれぞれの明確な点に衝撃を与えるように構成されたインパクタのアレイと、前記少なくとも1つのインパクタの衝撃に続いて、前記機械的振動応答を時変信号として捕捉するように構成されたセンサと、前記時変信号を分析して、前記時変信号を構成する正弦波の周波数および減衰定数を決定するように構成された処理手段と、を備える。本発明はまた、固体材料サンプルを特徴付ける対応する方法に関する。
【0007】
振動励起に対する固体試験片の応答の分析は、典型的には、以下のパラメータの1つまたは複数の抽出、好ましくはすべてを含む。
-試験片の引張弾性を示すヤング率(E)、
-剪断応力に対する試験片の応答を示す剪断弾性率(G)、
-印加された一軸応力に直交する方向の試験片の変形を示すポアソン比(ν)、
これらの特性は、典型的には、振動励起の周波数または周波数範囲に依存する。これにより、試験片は、試験片の異なる振動モードに依存するいくつかの共振周波数を有することができる。ここで重要なモードは、曲げモードおよびねじりモードである。これらの共振周波数におけるパラメータ値は、試験片の状態を説明するための重要な数値である。
【0008】
多くの用途において、例えば機械における固体部品は、異なる温度で使用される。これにより、動作温度は、急速におよび/または広い温度範囲にわたって変動し得る。例えば、車両のブレーキディスクは、動作中に(基本的にはわずか数秒で環境温度から500℃超まで)かなり急速に熱くなる可能性がある。別の例は、航空機のジェット用のケロシンの噴射ノズルであり、これは動作中に1500℃を超えて熱くなる可能性がある。高温範囲は、成分の材料特性、特に上述のヤング率、せん断弾性率、およびポアソン比などの弾性特性に大きく影響する可能性がある。例えば、一般に、固体は、概して内部結合の弱化に起因してより高い温度でより柔軟になると予想することができ、これは基本的に、EおよびGが温度の上昇と共に徐々に減少すると予想されることを意味する。
【0009】
異なる温度では、固体成分は異なる材料特性を有し得る。これは、成分の機能に影響を及ぼす可能性がある。成分の通常のまたは意図された機能妨害温度または温度範囲を見出すことが重要である。これは、材料のバルク特性、温度変化によって誘導され得る欠陥、より高い温度でより重要になり得る欠陥、成分の異なる部分の膨張の変動性などに起因し得る。成分の材料特性の温度依存性の具体例は、以下の通りである。
-弾性特性の一般的な変化であって、これにより成分の剛性が低下し、それによりその適切な機能を妨げる、例えばブレーキディスクの適切な制動のためには高温で弾性になりすぎる可能性がある
-特定の温度または特定の温度範囲内での相転移は、成分の材料特性を著しく変化させる可能性がある
-化学反応は、成分の材料特性を等しく変化させる可能性がある
-例えば、合金中の化学量論的な異なる相の析出は、例えば、誤った製造方法のために材料中に存在し、異なる温度依存性膨張を有する材料間の内部材料境界をもたらす可能性がある。明らかに、これは深刻な問題につながる可能性がある。
-積層体または他の層状成分であり、それにより、ある層の次の層への接着性が、温度の上昇で低下する可能性がある。
【0010】
異なる温度で、および/または意図した動作の全温度範囲にわたって固体成分の適切な機能を試験するために、試験片の材料特性を異なる温度で測定する必要がある。これにより、試験片は、例えば、完全な成分、成分の一部、または成分と同じ材料の片であり得る。試験は、好ましくは、少なくとも温度の制御を可能にする制御された環境で行われる。次いで、異なる温度で材料特性を測定する。
【0011】
本発明者らは、-50℃未満から2000℃超に及ぶ可能性がある広い温度範囲にわたって試験片の材料特性を測定することが、実際には非常に困難であり得ることを見出した。そのような温度範囲のための温度制御された環境を作り出すには、通常、振動を発生させる成分を有するオーブンがいくつか必要である。明らかに、オーブンによって生成されるバックグラウンド振動は、測定プロセスを妨げる可能性がある。これらのバックグラウンド振動は、通常、より高い温度で悪化する。さらに、いくつかの材料特性(例えば、EおよびG)が温度の上昇と共に減少すると予想され得るので、信号も減少する。両方の影響で、高温でより低い信号対ノイズ(STN)比がもたらされる。
【0012】
本発明は、高温における試験片の音響測定におけるSTN比の悪化という問題を解決することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明はまた、音響測定技術によって材料の1つまたは複数の熱膨張パラメータを決定する比較的安価で正確な方法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
第1の態様において、本発明は、高温における試験片の材料特性を音響的に測定するための方法に関し、方法は、
a.試験片を試験温度範囲内に加熱するステップと、
b.較正期間中に試験片からの振動信号を捕捉することによって前記試験温度範囲内でバックグラウンド測定を実行し、それによりノイズ信号を取得するステップと、
c.前記試験温度範囲内および試験期間中に前記試験片に対して音響測定を実施するステップであって、
c1.試験片に振動励起を付与するステップ、および
c2.試験期間中に試験片の振動信号を捕捉し、それにより前記振動励起に対する振動応答信号を取得するステップ、によって実施するステップと、
d.振動応答信号を分析することによって試験片の材料特性を取得し、それによりノイズ信号を考慮するステップと、を備える。
【0015】
第一に、振動応答の分析を実行するときに環境のバックグラウンドノイズを考慮すると、材料特性のより良い決定につながる。第二に、音響測定と同じ試験温度範囲でバックグラウンドノイズを考慮に入れることによって、本発明者らは、振動応答のはるかに良好な分析を実行できることを見出した。これは、例えば、測定を実行するために使用される加熱要素、換気装置、または任意の他の機器もしくは機器成分に起因して、ノイズが温度範囲に大きく依存する可能性があり、それらの各々が異なる温度範囲で異なる挙動をする可能性があるためである。
【0016】
本発明者らはさらに、試験片に振動励起を付与することを除いて、音響測定のすべてのステップを行うことによってバックグラウンド測定が行われる場合に最良の結果が達成されることを見出した。したがって、好ましい実施形態では、バックグラウンド測定を実行するステップbは、試験片に振動励起を付与するステップc1を除いて、音響測定を実行するステップcのすべてのステップを実行することを備える。これは、上記の方法、ならびに本明細書および特許請求の範囲で後述する方法のすべての実施形態に適用される。
【0017】
方法に加えて、本発明はまた、高温における試験片の材料特性を音響的に測定するためのシステムに関し、システムは、
-試験片を試験温度範囲内にするための加熱要素を備える加熱チャンバと、
-期間中に試験片からの振動信号を取り込むセンサと、
-加熱チャンバ内に配置された試験片に振動励起を付与するための、インパクタおよびインパクタアクチュエータを備える衝撃システムと、
-加熱チャンバ、センサ、およびインパクタに関連する制御システムであって、
●試験片を試験温度範囲内にするように加熱チャンバに指示し、
●試験期間中に、加熱チャンバ内に配置された試験片にインパクタによって振動励起が機械的に付与されるようにインパクタアクチュエータを用いてインパクタを作動させ、前記振動励起に対する振動応答信号をセンサから取得するように衝撃システムに命令し、
●較正期間中に、加熱チャンバ内に配置された試験片にインパクタが振動励起を機械的に付与しないようにインパクタアクチュエータを用いてインパクタを作動させ、センサからノイズ信号を取得するように衝撃システムに命令し、
●振動応答信号を分析することによって試験片の材料特性を取得し、それによりノイズ信号を考慮に入れる、ように構成された制御システムと、を備える。
【0018】
第2の態様において、本発明は、試験片の熱膨張パラメータを得るための熱膨張測定方法に関する。この熱膨張測定方法は、
-第1の温度における実験データから少なくとも2つの共振周波数を抽出するステップと、
-前記第1の温度における前記少なくとも2つの共振周波数から第1の寸法パラメータの第1の値を取得するステップと、
-前記第1の測定温度における前記第1の寸法パラメータの前記第1の値を第2の温度における前記第1の寸法パラメータの第2の値と比較するステップと、
-前記比較から熱膨張パラメータを計算するステップと、を備える。
【0019】
これにより、第1の温度における少なくとも2つの共振周波数は試験片の材料特性であり、これは好ましくは、上述しさらに本明細書で説明する音響測定方法によって得ることができる。上述し、さらに本明細書で説明する高温における試験片の材料特性を音響的に測定するためのシステムは、好ましくは、少なくとも2つの共振周波数を得るために使用することができる。
【0020】
図面の簡単な説明
本発明の実施形態のこれらおよび他の特徴および利点は、添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】屈曲モードでの励起時に梁状試験片に誘導される振動を概略的に示す。
【
図2】ねじりモードでの励起時に梁状試験片に誘導される振動を概略的に示す。
【
図3】本発明による測定システムの一実施形態を概略的に示す。
【
図4】本発明による測定方法の一実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
既知の衝撃励起技術(IET)手順では、試験片は、衝撃を受けたときに実質的に妨げられることなく振動することができるように配置される。これは、試料を軽量発泡体片上に配置するか、励起される振動モードのゼロ(ノード)の下に慎重に配置された線形支持体(例えば、ワイヤまたはナローバー)上に置くことによって達成することができる。励起は、アンチノード、すなわち誘導運動の局所振幅が対象のモードに対して最大である点でサンプルに衝撃を与えることによって実行される。
【0023】
図1は、屈曲(特に、面外振動)モードでの励起時に梁状試験片に誘導される振動を概略的に示す。この振動モードの固有周波数f
fは、サンプルの動的ヤング率Eを示す。質量m、長さL、幅b、および厚さtを有する図示のビームの場合、以下の関係を使用することができる。
【0024】
【0025】
補正係数Tは、L/t≧20の場合、以下のように定義される。
【0026】
【0027】
図2は、ねじりモードの励起時に試験中の梁状サンプルに誘導される振動を概略的に示す。この振動モードの固有周波数f
tは、サンプルの剪断弾性係数を示す。質量m、長さL、幅b、および厚さtを有する図示のビームの場合、以下の関係を使用することができる。
【0028】
【0029】
補正係数Rは、以下のように定義される。
【0030】
【0031】
EおよびGを決定するこれらの既知の方法は、サンプルの応答のスペクトルにおけるピーク周波数のみに依存する。本発明者は、予想値に対するEおよび/またはGのシフトがそれ自体で試料の欠陥を示し得るが、特定の周波数成分の異常に速い減衰がそのような欠陥のより信頼できる予測因子であることを見出した。
【0032】
本発明者は、衝撃励起に対する固体試験片の応答が、指数関数的に減衰する正弦波の和に物理的に近いことを見出した。励起応答のこの特定の数学的形式を仮定することにより、現象の基礎となる物理学に基づいて、(高速)フーリエ変換におけるピークを単に抽出するよりも良好な精度を得ることができる。減衰定数は、試験片の共振周波数の単なる特定よりも欠陥の存在をよりよく洞察する。これにより、減衰定数の同定は、既知の数学的方法によって解くことができる高調波反転問題を構成する。
【0033】
さらに、本発明者は、材料特性EおよびGが、試験片の温度に依存して変化し得ることを見出した。これは音響測定で観察することができ、そこでは、共振周波数のシフトが温度変化と共に生じるように、試験片の材料構造は温度と共に変化し得る。例えば、内部境界のゆっくりとした弱化またはバルク欠陥および表面欠陥のゆっくりとした増加に起因して、温度による共振周波数のゆっくりした変動が予想され得、これらはEおよびGの減少をもたらす傾向がある。しかしながら、特定の温度範囲内の材料特性の突然のまたは予想以上の変化は、その温度範囲で発生する新しいタイプの欠陥を示す傾向がある。また、材料特性がゆっくりと変化する場合でも、本方法およびシステムは、試験片または試験片と同じ材料からまたは同じ製造プロセスで作製された任意の成分が所望の仕様に適合しない程度に材料特性がどの時点で変化したかを決定することを可能にする。
【0034】
好ましい実施形態では、ステップc1の振動励起は、好ましくは、ステップc1で試験片に接触するように構成され、ステップbで試験片に接触しないように構成されたインパクタを使用することによって、試験片に機械的に誘導される。
【0035】
本発明の一実施形態では、衝撃システムは、弾道インパクタを備え、衝撃アクチュエータは、前記弾道インパクタにインパルスを与えるように構成される。好ましくは、本発明の方法は、前記衝撃システムを使用して実行され、音響測定ステップにおいて、試験片に振動励起を付与する測定インパルスが弾道インパクタに提供され、バックグラウンド測定ステップにおいて、試験片に振動励起を付与しないバックグラウンドインパルスが弾道インパクタに提供される。この実施形態では、バックグラウンドインパルスは、可能な限り測定インパルスに近いことが好ましい。一実施形態では、測定インパルスおよびバックグラウンドインパルスは、最大でも2倍、より好ましくは最大でも1.8倍、さらにより好ましくは最大でも1.6倍、さらにより好ましくは最大でも1.4倍、さらにより好ましくは最大でも1.2倍、最も好ましくは最大でも1.1倍の大きさで異なる。代替的または追加的に、測定インパルスおよびバックグラウンドインパルスは方向に関して異なり、好ましくは最大でも60°、より好ましくは最大でも45°、さらにより好ましくは最大でも35°、さらにより好ましくは最大でも25°、さらにより好ましくは最大でも15°、最も好ましくは最大でも5°の角度だけ異なる。
【0036】
より好ましい実施形態では、弾道インパクタは、垂直方向に沿って下方から試験片に接近するように構成される。これにより、好ましくは、弾道インパクタに提供される測定インパルスは試験片に機械的に接触するように構成され、弾道インパクタに提供されるバックグラウンドインパルスは試験片に到達しないように構成され、これにより、好ましい実施形態では、バックグラウンドインパルスは、測定インパルスの少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%である。バックグラウンドインパルスが測定インパルスに近いほど、得られるノイズ信号が良好であり、得られる材料特性がより正確であることに留意しなければならない。
【0037】
垂直方向に沿って下方から試験片に接近するように構成された弾道インパクタを含む実施形態を
図3に示す。
【0038】
図3は、加熱チャンバおよび/または試験片を所望の温度または所望の温度範囲にすることができる一組の加熱要素(302,303,304,305,306)を備える加熱チャンバ(301)を示す。加熱要素(302,303)は、加熱チャンバ壁に取り付けられ、例えば高温の高圧流体との熱交換、電気抵抗加熱、磁気誘導などによって加熱チャンバ壁に熱を供給することができる。これらの壁加熱要素の熱は、例えば換気装置(304,305)によって加熱チャンバ内に分配することができる。換気装置(304,305)はまた、加熱された空気または蒸気などの温かい流体を加熱チャンバに供給するように構成されてもよい。加熱要素はまた、マイクロ波要素(306)などの放射加熱要素を備えてもよい。加熱チャンバは、好ましくは、加熱チャンバ内および/または試験片の実際の温度を測定するための1つまたは複数の温度計も備え、好ましくは、試験片および/または加熱チャンバの温度を制御するように構成された制御回路も備える。
【0039】
試験片(307)は、例えば試験片の振動ノードの位置で支持することによって、試験片が可能な限り自由に振動することを可能にする支持構造(308,309)によって吊り下げられている。マイクロフォンまたはレーザ干渉計を備えることができる音響センサ(310)または複数の音響センサは、好ましくは明確に画定された位置で試験片と接触(311)させることができ、または導波管を使用して音響センサに対する音響応答を導くことができ、好ましくは導波管の一端は加熱チャンバ内で試験片の近くにまたは直接接触させられ、他端は好ましくは加熱チャンバの外側に位置する。後者の実施形態は、センサを加熱チャンバの外側に配置することを可能にする。
【0040】
好ましい実施形態では、音響センサはレーザ干渉計を備える。レーザ干渉計は、真空中での測定に特に有用であり、非接触測定を可能にする。代替的または追加的に、音響センサは、例えば以下に記載されるように、超音波測定センサおよび/または飛行時間センサおよび/またはドップラー式センサを備えてもよい。
-S-R.Huang、R.M.Lerner、K.J.Parker、「振動するターゲットの振幅の時間領域ドップラー推定器」、米国音響学会誌、91(2)、965~974(1992年)、
-J.Tapson、「共振モードロックによる高精度の短距離超音波検知」、Ultrasonics、33、6、441~444(1995))、および
-R.Kazys、R.Sliteris、L.Mazeika、「振動測定のための超音波技術」、非破壊検査についての第15回世界会議議事録、2000年10月15日~21日、ローマ、
https://www.ndt.net/article/wcndt00/papers/idn246/idn246.htm.
また、これらのタイプのセンサは、非接触測定に使用されてもよい。
【0041】
一実施形態では、加熱チャンバが大気圧よりも低い圧力、好ましくは0.5バール以下、より好ましくは0.2バール以下、最も好ましくは本質的に真空圧力を含む、本発明の方法が実施される。これにより、好ましくは、レーザ干渉計を使用して、低圧力からゼロ圧力で非接触振動測定が可能になる。ゼロまで低下した圧力での測定値は、周囲のノイズを減衰させ、それにより信号対ノイズ比を増加させる。
【0042】
衝撃システムは、インパクタアクチュエータ(313)によってインパルスが与えられ得る弾道インパクタ(312)を備える。弾道インパクタ(312)は、高温に耐えることができ、その特性が温度によって大きく変化しないセラミックロッドである。これは、インパクタアクチュエータ(313)を使用して試験片に向かって上方(314)に発射することができ、インパクタアクチュエータは、
-好ましくは垂直方向に沿って弾道インパクタを案内するための、加熱チャンバの底部を通る案内チューブ(315)と、
-好ましくは垂直なインパルス(317)をインパクタ(312)に与えるように構成された電気機械的に作動されるハンマー(316)と、を備える。ハンマー(316)は、電気コイル(318)と、コイル(318)を通って流れる電流に応じて移動することができる可動ロッドまたは弾丸(319)とを備えることができる。そのようなシステムの一例が米国特許第6,782,970号明細書に提示されており、それにより、本発明では、インパクタアクチュエータの弾丸は、試験片に直接ではなくセラミックインパクタ(312)に衝撃を与える。あるいは、インパクタにインパルスを与えるための、圧力駆動インパクタまたは圧力駆動衝撃アクチュエータ(380)が使用されてもよい。
【0043】
ステップbを実行するとき、インパクタアクチュエータは、試験片に接触することなく、試験片の下2cm以内まで弾道インパクタを運ぶインパルスを弾道インパクタに提供するように構成される。ステップc、特にステップc1を実行するとき、インパクタアクチュエータは、試験片と接触させ、それにより試験片に振動励起を機械的に誘導するインパルスを弾道インパクタに提供するように構成される。ステップbの間に、バックグラウンドノイズを測定することができる。このノイズは、例えば加熱要素から生じる可能性があるが、センサによって拾い上げられる可能性があるノイズを同様に作るインパクタアクチュエータおよびインパクタからも、そしておそらくそこから主に生じる可能性がある。
【0044】
本発明の一実施形態では、ステップa~dは、複数回、好ましくは同じ温度、異なる温度または異なる温度範囲内で繰り返し実行される。好ましい実施形態では、試験片は連続的に加熱され、それによりステップa~dは後続の温度範囲内で実行される。
【0045】
例えば、試験片は、室温(20℃)から1℃/秒の速度で連続的に加熱することができる。次いで、ステップa~dは20秒ごとに定期的に実行することができ、これは、ステップa~dの第1のセットが20から40℃の温度範囲で実行され、ステップa~dの第2のセットが40から60℃の温度範囲で実行され、さらに例えば1780から1800℃の最高温度範囲まで実行されることを意味する。しかしながら、温度範囲は、等しく大きい必要はなく、例えば、対象の温度範囲に対してより小さくてもよいことに留意されたい。例えば、試験片または試験片と同じ材料から作製された成分が主に700から800℃の温度で使用されることが分かっている場合、例えば5℃に及ぶより小さい温度範囲をとることによって、これらの温度間の材料特性をより正確に測定することを決定することができる。
【0046】
さらに、ステップbおよび/またはcで実行される測定は、より正確なノイズ信号および/または振動応答信号を得るために、他の温度でステップbおよび/またはcで実行される測定と組み合わせることができることにも留意されたい。例えば、80℃~100℃の温度範囲および100℃~120℃の温度範囲でステップa~dを実行すると仮定する。これにより、ステップbは、82~87℃の部分温度範囲で1回目、102~107℃の部分温度範囲で2回目を実行することができ、一方、ステップcは、92~97℃の部分範囲で1回目を実行することができた。そのような場合、ステップdの分析は、2回のステップbで得られた2つのノイズ信号を考慮して実行することができる。したがって、好ましい実施形態では、ステップa、b、cおよび/またはdは、温度範囲内で2回以上行われる。代替的または追加的に、ステップa、b、cおよび/またはdは、重複し得る異なる温度範囲で複数回実行されてもよい。
【0047】
一実施形態では、制御システムは、ノイズ信号を考慮して振動応答信号を分析して試験片の材料特性を決定するように構成された処理手段を備える。
【0048】
これにより、処理手段は、好ましくは、捕捉された信号に対するフーリエ変換または高速フーリエ変換または高調波分解を使用することによって、時間領域において、またはより好ましくは周波数領域において振動応答信号からノイズ信号を減算するように構成されてもよい。減算はまた、時間領域と周波数領域との組み合わせで実行されてもよい。処理手段は、好ましくは、時変信号を分析して、時変信号を構成する正弦波の周波数および減衰定数を決定するように構成される、すなわち、高調波反転問題を解決する。高調波反転の問題は、より一般的には、所与の帯域幅における有限数のそのような正弦波の和からなる離散時間有限長信号を構成する正弦波の周波数、減衰定数、振幅、および位相を決定することからなり、文献では周知であるが、今日までIETと関連付けられていない。Vladimir A.MandelshtamおよびHoward S.Taylorは、彼らの影響力の大きい論文「Harmonic inversion of time signals and its applications」、The Journal of Chemical Physics 107,6756(1997年)において、高調波反転問題を小さい行列対角化の1つとして再評価することによってこの問題を解決するために、WallおよびNeuhauserの一般的なフィルタ対角化方法の使用を説明している。マサチューセッツ工科大学のSteven G.Johnsonによる「Harminv」プログラムを含む、この技術のコンピュータベースの実装は当技術分野で公知である。分析の結果は、画面140に、または他の機器による記憶もしくはさらなる処理のための任意の他の適切なインターフェースに出力することができる。
【0049】
処理手段は、1つまたは複数の専用ハードウェア成分(例えば、ASIC)、適切に構成された構成可能ハードウェア成分(例えばFPGA)、適切なソフトウェアを備えたマイクロプロセッサ、または上記の組み合わせから構成されてもよい。同じ成分が他の機能を実行してもよい。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、試験片は、ワークピース、装置または装置の成分である。本発明の別の好ましい実施形態では、試験片は、明確な形状、好ましくは梁状を備え、ワークピース、装置、または装置の成分と同じ材料から、または同じ製造技術を使用して作製される。
【0051】
図4は、本発明による方法の一実施形態を示す。第1のステップaでは、温度を第1の温度範囲内にする(1021)。次いで、ステップbが実行され(1002)、それにより試験片に衝撃が与えられないように注意が払われ(1001)、それにより好ましくは衝撃システムが作動されるが、衝撃が回避されるようになっている。次いで、ステップcが実行され、それにより試験片に衝撃が与えられ(ステップc1、1010)、振動応答信号が取り込まれる(ステップc2、1020)。次いで、信号が分析され(ステップd、1030)、それによりE、G、νおよび/または他の特性(特に減衰定数も)がステップaの温度範囲内で得られる。衝撃回避作動ステップ(1001)、ノイズ捕捉ステップ(1002)、衝撃ステップ(1010)、および応答捕捉ステップ(1020)は、信号が分析される(1030)前に(図示されているように、例えば、装置が連続的に動作する複数のインパクタを有する場合)繰り返し実行されてもよく、あるいは、捕捉された各信号は別々に分析されてもよい。これにより、異なる温度または温度範囲におけるノイズ信号および/または振動応答信号をステップdの分析で組み合わせて、材料特性のより正確な値を取得し、および/またはこれらの材料特性の温度依存性を決定することができる。
【0052】
選択された励起モードに応じて、分析ステップ1030は、特にピーク周波数を特定し、上記のような式を適用することによって、応答のスペクトルの周波数から動的ヤング率(E)または剪断弾性率(G)を決定するステップをさらに含むことができる。
【0053】
好ましくは、分析ステップは、減衰定数を基準値と比較するステップ1040をさらに含む。このステップは、本発明による方法を品質管理目的で使用することを可能にする。実際、製造品の品質を制御する方法は、上述の方法を使用して製造品の少なくとも一部を前記固体材料サンプルとして特徴付けるステップと、減衰定数が前記基準値の所定のマージン内にある場合、「合格」条件1040/はいをシグナリングし、減衰定数が前記基準値の前記所定のマージン外にある場合、「不合格」条件1040/いいえを宣言するステップとを含む。したがって、本発明の一態様によれば、製造品の品質を制御する方法が提供され、方法は、上述の方法を使用して前記製造品の少なくとも一部を前記試験片として特徴付けるステップと、前記減衰定数が前記基準値の所定のマージン内にある場合、「合格」条件をシグナリングし、前記減衰定数が前記基準値の前記所定のマージン外にある場合、「不合格」条件を宣言するステップとを含む。
【0054】
本発明はまた、上述の方法の計算ステップをプロセッサに実行させるように構成された符号化手段を備えるコンピュータプログラム製品に関する。
【0055】
前述のように、第2の態様では、本発明は、試験片の熱膨張パラメータを得るための熱膨張測定方法に関し、方法は、
-第1の温度における実験データから少なくとも2つの共振周波数を抽出するステップと、
-前記第1の温度における前記少なくとも2つの共振周波数から第1の寸法パラメータの第1の値を取得するステップと、
-前記第1の測定温度における前記第1の寸法パラメータの前記第1の値を第2の温度における前記第1の寸法パラメータの第2の値と比較するステップと、
-前記比較から熱膨張パラメータを計算するステップと、を含む。
【0056】
これにより、第1の温度における少なくとも2つの共振周波数は試験片の材料特性であり、これは好ましくは、上述しさらに本明細書で説明する音響測定方法によって得ることができる。上述し、さらに本明細書で説明する高温における試験片の材料特性を音響的に測定するためのシステムは、好ましくは、少なくとも2つの共振周波数を得るために使用することができる。
【0057】
熱膨張測定方法では、第2の温度における第1の寸法パラメータの第2の値は、既知の基準値、例えば、室温または0℃または別の所定の温度における試験片の既知の寸法であってもよく、または第2の温度における実験データからの2つの共振周波数の抽出によって得られてもよく、好ましくは、第2の温度における前記2つの共振周波数は、本明細書に記載の試験片の材料特性を音響的に測定するための方法および/またはシステムを使用して試験片の材料特性として得られる。
【0058】
熱膨張パラメータは、好ましくは以下であり得る。
-例えば長さ、幅、厚さ、表面、体積といったサイズ寸法であって、このような場合、熱膨張パラメータは、好ましくは、第1の温度におけるサイズ寸法と第2の温度におけるサイズ寸法との間の値の差である
-好ましくは、第1の温度におけるサイズと第2の温度におけるサイズとの比をとることによって得られる、線膨張比などの絶対膨張比
-好ましくは、第1の温度および第2の温度におけるサイズ寸法との間の値の差と、サイズ寸法の基準値との比をとることによって得られる、相対膨張比。この基準値は、任意の明確な基準値であってもよく、好ましくは、第1の温度または第2の温度または所定の基準温度におけるサイズ寸法の値である
-好ましくは、第1の温度と第2の温度との間の相対膨張比と温度差との比をとることによって得られる、熱膨張係数または平均熱膨張係数
-好ましくは、第1の温度において第1の寸法と第1の寸法とは異なる第2の寸法との比をとり、その値を第2の温度において同じ比と比較することによって得られる異方性比。これは、例えば、熱膨張係数の異方性比、すなわち、第1の方向に沿った熱膨張係数と第2の方向に沿った熱膨張係数との比、または第1の温度と第2の温度との間の間隔におけるそれらの平均をもたらすことができる。
【0059】
熱膨張パラメータはまた、上記パラメータの任意の組み合わせおよび/または導出された量であってもよい。
【0060】
熱膨張パラメータは、好ましい実施形態では、分析的に計算することができる。分析計算の好ましい方法は以下の通りであり、コンクリート試験片のインパルス励起に基づいてE弾性率を計算するための規格ASTM C 215-02を使用することによって示される。
-第1の温度における曲げモード共振周波数が得られる
-長手方向圧縮モード共振周波数が第1の温度において得られる
-曲げモード共振周波数ff1は、質量m、長さL、厚さtおよび幅bを有する梁状試験片の場合、例えば、
【0061】
【0062】
に関し、L/t≧20の場合、補正係数Tは
【0063】
【0064】
と定義される
-長手方向圧縮モードの共振周波数ff2は、質量m、長さL、厚さtおよび幅bを有する梁状試験片の場合、例えば、
【0065】
【0066】
に関する
-E弾性率の値を等しくすることにより、第1の温度T1におけるサイズ寸法を以下のように得ることができる
【0067】
【0068】
-第2の温度T2におけるサイズ寸法の値との比較により、例えば、第1の温度と第2の温度との間で平均化された熱膨張係数の異方性比
【0069】
【0070】
の計算が以下のように可能になる
【0071】
【0072】
ここで
【0073】
【0074】
ここで、
【0075】
【0076】
は温度間隔[T1,T2]内で平均化された長手方向の熱膨張係数であり、
【0077】
【0078】
は同じ温度間隔[T1,T2]内で平均化された厚さ方向の熱膨張係数である。この比は、それ自体、特定の種類の材料について知るために、特に材料の異方性を決定および定量化するために重要であり得、特定の温度間隔におけるこの比の変化は、試験片の相変態または破壊を示し得る。
【0079】
これにより、試験片は、例えば、室温(20℃)で(10cm×2cm×5mm)の寸法を有することができ、したがって、この値は第2の温度におけるサイズ寸法の値として役立ち得る。
【0080】
ここで、第1の温度における共振周波数の値は、好ましくは、第1の温度における単一の音響測定で取得されてもよく、任意選択的に、第2の温度における共振周波数の値も、好ましくは、第2の温度における単一の音響測定で取得されてもよい。好ましくは、これらは、本発明の音響測定方法および/またはシステムを使用して得られる。これにより、周波数領域における音響応答のピークを特定することにより、異なるモードの共振周波数を容易に測定することができる。場合によっては、どの共振周波数がどのモードに属するかを識別するときに不確実性が生じることがある。そのような場合、モードに対する共振周波数の識別は、モデリングおよび/またはシミュレーション計算を介して、または追加の音響測定値のセットを介して取得することができ、好ましくはそれにより試験片は特定のモードを励起するように衝撃を受ける。
【0081】
上記のように、比較は、分析的方法、例えば方程式に基づく方法を使用して行うことができ、それにより寸法パラメータの値が分析的に抽出される。代替的または追加的に、比較は、シミュレーション方法を使用して行うことができ、例えば、シミュレーション方法は、寸法パラメータに関連するモデルパラメータのセットを使用して試験片をモデリングするステップを備え、シミュレーション方法は、少なくとも2つの共振周波数を取得するための共振計算アルゴリズムを備え、モデルパラメータは、少なくとも2つの共振周波数を最適に再現するように変更され、それにより最適なモデルパラメータのセットを取得し、寸法パラメータの値は、最適なモデルパラメータのセットから計算される。シミュレーション方法は、好ましくは有限要素法を含むことができる。
【0082】
2つの測定された共振周波数から、式を使用して、例えばE弾性率およびサイズ寸法の値を導出することができる。
【0083】
例えば以下のように、より多くの共振周波数を使用することができる。
-ねじり共振周波数
-曲げモードの第1の高調波
-曲げモードの第2の高調波
-長手方向圧縮モードの第1の高調波
-長手方向圧縮モードの第2の高調波
またはそれらの任意の組み合わせもしくは派生量。
【0084】
高調波は試験片の割合に依存する可能性があり、そのため、非等方性膨張の場合、高調波共振周波数は必ずしもグラウンドモード共振周波数の倍数ではないことに留意されたい。これにより、2つ以上のサイズ寸法パラメータの値を得ることができ、これは非等方性膨張の場合に有用である。さらに、3つ以上の共振周波数を使用することによって、得られるシステムが過剰判定される場合があり、その場合、所望のサイズ寸法について、例えば分析方法および/またはシミュレーション方法によって最良適合解を得ることができる。
【0085】
本発明はまた、上述の熱膨張測定方法の計算ステップをプロセッサに実行させるように構成された符号化手段を備えるコンピュータプログラム製品に関する。