IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社鷺宮製作所の特許一覧

特許7569815スライド式切換弁及び冷凍サイクルシステム
<>
  • 特許-スライド式切換弁及び冷凍サイクルシステム 図1
  • 特許-スライド式切換弁及び冷凍サイクルシステム 図2
  • 特許-スライド式切換弁及び冷凍サイクルシステム 図3
  • 特許-スライド式切換弁及び冷凍サイクルシステム 図4
  • 特許-スライド式切換弁及び冷凍サイクルシステム 図5
  • 特許-スライド式切換弁及び冷凍サイクルシステム 図6
  • 特許-スライド式切換弁及び冷凍サイクルシステム 図7
  • 特許-スライド式切換弁及び冷凍サイクルシステム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】スライド式切換弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/065 20060101AFI20241010BHJP
   F25B 41/26 20210101ALI20241010BHJP
【FI】
F16K11/065 Z
F25B41/26 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022009523
(22)【出願日】2022-01-25
(65)【公開番号】P2023108409
(43)【公開日】2023-08-04
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 聡
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 秀剛
(72)【発明者】
【氏名】村田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】三留 陵
(72)【発明者】
【氏名】剱持 大一郎
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-121131(JP,A)
【文献】特開2021-025758(JP,A)
【文献】特開2014-029211(JP,A)
【文献】特開2014-178003(JP,A)
【文献】中国実用新案第210423806(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/065
F25B 41/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が閉塞された筒状の弁ハウジングと、
前記弁ハウジングの周壁に当該弁ハウジングの内部と連通するように連結された複数の継手管と、
前記弁ハウジングの内部に設置されて前記複数の継手管を連通するとともに、前記弁ハウジングの軸方向にスライド移動することで連通状態を切換えるスライド弁体と、
前記弁ハウジングの内部において前記軸方向に前記スライド弁を挟む一対の空間のうちの少なくとも一方の空間に駆動流体を流通させて、前記スライド弁体を前記軸方向にスライド移動させるパイロット弁と、
前記パイロット弁と前記弁ハウジングを繋いで駆動流体を流通させるステンレス鋼製のハウジング用細管と、
前記パイロット弁と前記複数の継手管のうちの少なくとも一つの継手管を繋いで駆動流体を流通させるステンレス鋼製の継手用細管と、
を備え
前記継手用細管と前記パイロット弁との接続箇所には、仮止め溶接した痕跡としての仮止め溶接跡と、ろう付けによって本固定した痕跡としてのろう付け固定跡と、が形成され、
前記仮止め溶接跡は、前記継手用細管の前記パイロット弁への挿入部における隅部に、前記継手用細管の内壁面まで貫通しない溶接深さで形成されていることを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項2】
前記弁ハウジングがステンレス鋼製であり、
前記ハウジング用細管が前記弁ハウジングに直接接続されていることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項3】
前記弁ハウジングが、筒状でステンレス鋼製の弁本体と、当該弁本体の両端開口を閉塞する、各々がステンレス鋼製の一対のキャップ部と、を備え、
前記ハウジング用細管が、前記一対のキャップ部の少なくとも一方に接続され、その接続が直接接続によってなされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスライド式切換弁。
【請求項4】
前記複数の継手管のうち少なくとも一つの継手管がステンレス鋼製であり、
前記継手用細管が、ステンレス鋼製の継手管に直接接続されていることを特徴とする請求項1~3のうち何れか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項5】
前記パイロット弁がステンレス鋼製のパイロット弁ハウジングを備え、
前記ハウジング用細管及び前記継手用細管が前記パイロット弁ハウジングに直接接続されていることを特徴とする請求項1~4のうち何れか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項6】
前記ハウジング用細管と前記弁ハウジングの接続箇所、及び、前記継手用細管と前記複数の継手管のうち少なくとも一つの細管の接続箇所には、仮止め溶接した痕跡としての仮止め溶接跡と、ろう付けによって本固定した痕跡としてのろう付け固定跡と、が形成され
前記ハウジング用細管の接続箇所及び前記少なくとも一つの細管の接続箇所における仮止め溶接跡は、前記ハウジング用細管及び前記少なくとも一つの細管それぞれの接続先への挿入部における隅部に、前記ハウジング用細管及び前記少なくとも一つの細管それぞれの内壁面まで貫通しない溶接深さで形成されていることを特徴とする請求項1~5のうち何れか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項7】
前記ハウジング用細管と前記パイロット弁との接続箇所には、仮止め溶接した痕跡としての仮止め溶接跡と、ろう付けによって本固定した痕跡としてのろう付け固定跡と、が形成され
前記ハウジング用細管の接続箇所における仮止め溶接跡は、前記ハウジング用細管の前記パイロット弁への挿入部における隅部に、前記ハウジング用細管の内壁面まで貫通しない溶接深さで形成されていることを特徴とする請求項1~6のうち何れか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項8】
前記弁ハウジングの内部には、前記スライド弁体によって、前記軸方向に当該スライド弁を挟む一対の端部室が区画され、
前記複数の継手管が、高圧配管、低圧配管、及び一対の導管を有し、
前記スライド弁体が、前記高圧配管を前記一対の導管のうちの一方に連通させるとともに前記低圧配管を他方に連通させ、スライド移動によって前記高圧配管及び前記低圧配管の連通先を切換えるものであり、
前記パイロット弁が、前記一対の端部室の一方に前記高圧配管の流体を流通させるとともに他方に前記低圧配管の流体を流通させることで前記スライド弁体をスライド移動させるものであり、
前記ハウジング用細管が、前記パイロット弁と前記一対の端部室を繋ぐように一対設けられており、
前記継手用細管が、前記パイロット弁と前記高圧配管及び前記低圧配管を繋ぐように一対設けられていることを特徴とする請求項1~7のうち何れか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項9】
流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、請求項8に記載のスライド式切換弁と、を備えたことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等の冷凍サイクルシステムに用いられ、冷媒の流路を切り換えるスライド式切換弁及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の継手管のうちの少なくとも一対の継手管を連通するとともに連通対象の継手管が切換え可能な切換弁としてスライド式切換弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のスライド式切換弁は、筒状の弁ハウジングの周壁に複数の継手管が連結され、内部に設置されたスライド弁体を軸方向にスライド移動させて、継手管どうしを切換え可能に連通する。スライド弁体のスライド移動は、弁ハウジングの内部においてスライド弁体を軸方向に挟む一対の空間に駆動流体を流通させることで行われる。このスライド式切換弁は、ステンレス鋼製の弁ハウジングの内部に駆動流体を流通させるための複数の細管を備えており、これらの細管が銅で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-121131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のスライド式切換弁では、銅製の細管がろう付け時の熱等でなまされ柔らかくなると変形しやすく、振動環境下で長期に亘って使用されるような場合、細管の強度が金属疲労によって低下しやすいという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、振動環境下での長期使用時における細管の強度低下を抑制することができるスライド式切換弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスライド式切換弁は、両端が閉塞された筒状の弁ハウジングと、前記弁ハウジングの周壁に当該弁ハウジングの内部と連通するように連結された複数の継手管と、前記弁ハウジングの内部に設置されて前記複数の継手管を連通するとともに、前記弁ハウジングの軸方向にスライド移動することで連通状態を切換えるスライド弁体と、前記弁ハウジングの内部において前記軸方向に前記スライド弁を挟む一対の空間のうちの少なくとも一方の空間に駆動流体を流通させて、前記スライド弁体を前記軸方向にスライド移動させるパイロット弁と、前記パイロット弁と前記弁ハウジングを繋いで駆動流体を流通させるステンレス鋼製のハウジング用細管と、前記パイロット弁と前記複数の継手管のうちの少なくとも一つの継手管を繋いで駆動流体を流通させるステンレス鋼製の継手用細管と、を備え、前記継手用細管と前記パイロット弁との接続箇所には、仮止め溶接した痕跡としての仮止め溶接跡と、ろう付けによって本固定した痕跡としてのろう付け固定跡と、が形成され、前記仮止め溶接跡は、前記継手用細管の前記パイロット弁への挿入部における隅部に、前記継手用細管の内壁面まで貫通しない溶接深さで形成されていることを特徴とする。
【0007】
このスライド式切換弁によれば、ハウジング用細管及び継手用細管がステンレス鋼により作製されているので、各細管について高い剛性が得られて耐振動性が向上しており、振動環境下での長期使用時における各細管の強度低下を抑制することができる。
【0008】
ここで、前記弁ハウジングがステンレス鋼製であり、前記ハウジング用細管が前記弁ハウジングに直接接続されていることが好適である。
【0009】
この構成によれば、ハウジング用細管と弁ハウジングの接続に中間部材を介さずに両者が直接接続されるので、部品点数が削減されてスライド式切換弁についての製品コストを低減させることができる。
【0010】
また、前記弁ハウジングが、筒状でステンレス鋼製の弁本体と、当該弁本体の両端開口を閉塞する、各々がステンレス鋼製の一対のキャップ部と、を備え、前記ハウジング用細管が、前記一対のキャップ部の少なくとも一方に接続され、その接続が直接接続によってなされていることが好適である。
【0011】
この構成によれば、弁本体とキャップ部がステンレス鋼製となっているので、例えば黄銅で作製されたもの等に比べると、各部品の薄肉化が可能となり、スライド式切換弁の小型化を図ることができる。更に、ハウジング用細管とキャップ部との接続が同種金属どうしでの接続となるので、ろう付け等による接続を容易に行うことができる。
【0012】
また、前記複数の継手管のうち少なくとも一つの継手管がステンレス鋼製であり、前記継手用細管が、ステンレス鋼製の継手管に直接接続されていることが好適である。
【0013】
この構成によれば、継手用細管と接続対象の継手管がステンレス鋼製となっているので、例えば銅で作製されたもの等に比べると、各部品の薄肉化が可能となり、スライド式切換弁の小型化を図ることができる。更に、継手用細管と継手管との接続が同種金属どうしでの接続となるので、ろう付け等による接続を容易に行うことができる。
【0014】
また、前記パイロット弁がステンレス鋼製のパイロット弁ハウジングを備え、前記ハウジング用細管及び前記継手用細管が前記パイロット弁ハウジングに直接接続されていることが好適である。
【0015】
この構成によれば、パイロット弁ハウジングがステンレス鋼製となっているので、例えば黄銅で作製されたもの等に比べると、部品の薄肉化が可能となり、スライド式切換弁の小型化を図ることができる。更に、ハウジング用細管及び継手用細管とパイロット弁ハウジングとの接続が同種金属どうしでの接続となるので、ろう付け等による接続を容易に行うことができる。
【0016】
また、前記ハウジング用細管と前記弁ハウジングの接続箇所、及び、前記継手用細管と前記複数の継手管のうち少なくとも一つの細管の接続箇所には、仮止め溶接した痕跡としての仮止め溶接跡と、ろう付けによって本固定した痕跡としてのろう付け固定跡と、が形成され、前記ハウジング用細管の接続箇所及び前記少なくとも一つの細管の接続箇所における仮止め溶接跡は、前記ハウジング用細管及び前記少なくとも一つの細管それぞれの接続先への挿入部における隅部に、前記ハウジング用細管及び前記少なくとも一つの細管それぞれの内壁面まで貫通しない溶接深さで形成されていることが好適である。
【0017】
この構成によれば、ハウジング用細管と弁ハウジングの接続、及び継手用細管と継手管の接続について、ろう付けの前にステンレス鋼どうしによる溶接にて仮止めされるので、ろう付け時の各細管の位置決めが不要となり、ろう付けの工数を削減することができる。
【0018】
また、前記ハウジング用細管と前記パイロット弁との接続箇所には、仮止め溶接した痕跡としての仮止め溶接跡と、ろう付けによって本固定した痕跡としてのろう付け固定跡と、が形成され、前記ハウジング用細管の接続箇所における仮止め溶接跡は、前記ハウジング用細管の前記パイロット弁への挿入部における隅部に、前記ハウジング用細管の内壁面まで貫通しない溶接深さで形成されていることが好適である。
【0019】
この構成によれば、ハウジング用細管及び継手用細管とパイロット弁との接続について、ろう付けの前にステンレス鋼どうしによる溶接にて仮止めされるので、ろう付け時の各細管の位置決めが不要となり、ろう付けの工数を削減することができる。
【0020】
また、前記弁ハウジングの内部には、前記スライド弁体によって、前記軸方向に当該スライド弁を挟む一対の端部室が区画され、前記複数の継手管が、高圧配管、低圧配管、及び一対の導管を有し、前記スライド弁体が、前記高圧配管を前記一対の導管のうちの一方に連通させるとともに前記低圧配管を他方に連通させ、スライド移動によって前記高圧配管及び前記低圧配管の連通先を切換えるものであり、前記パイロット弁が、前記一対の端部室の一方に前記高圧配管の流体を流通させるとともに他方に前記低圧配管の流体を流通させることで前記スライド弁体をスライド移動させるものであり、前記ハウジング用細管が、前記パイロット弁と前記一対の端部室を繋ぐように一対設けられており、前記継手用細管が、前記パイロット弁と前記高圧配管及び前記低圧配管を繋ぐように一対設けられていることが好適である。
【0021】
この構成を有するスライド式切換弁は、高圧配管、低圧配管、及び一対の導管という4本の継手管の連通状態を切換える四方切換弁となっている。四方切換弁は、例えば空気調和装置等に取り付けられ圧縮機等の振動による振動環境下で長期に亘って使用されることが多い。上記の構成によれば、このような四方切換弁について、各細管の強度低下を抑制することができる。
【0022】
本発明の冷凍サイクルシステムは、流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、上述した四方切換弁としてのスライド式切換弁と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
この冷凍サイクルシステムによれば、上述した四方切換弁としてのスライド式切換弁を備えているので、振動環境下での長期使用時における各細管の強度低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のスライド式切換弁及び冷凍サイクルシステムによれば、振動環境下での長期使用時における細管の強度低下を抑制することができるスライド式切換弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態のスライド式切換弁をパイロット弁側から見た平面である。
図2図1に示されているスライド式切換弁を、図1中の矢印V11方向から見た側面図である。
図3図2に示されているスライド式切換弁の、図2中のV12-V12線に沿った断面を示す断面図である。
図4図2に示されているパイロット弁の、図2中のV13-V13線に沿った断面を示す断面図である。
図5図1~4に示されているスライド式切換弁を備える冷凍サイクルシステムを示す模式図である。
図6】第2ハウジング用細管と弁ハウジングの接続について、図3中の領域A11を模式的に拡大して示す模式図である。
図7】低圧継手用細管とS継手管の接続について、図2中の領域A12を模式的に拡大して示す模式図である。
図8】本発明の第2実施形態のスライド式切換弁を、図3と同等の断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の第1実施形態に係るスライド式切換弁を図1図7に基づいて説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1実施形態のスライド式切換弁をパイロット弁側から見た平面であり、図2は、図1に示されているスライド式切換弁を、図1中の矢印V11方向から見た側面図である。また、図3は、図2に示されているスライド式切換弁の、図2中のV12-V12線に沿った断面を示す断面図であり、図4は、図2に示されているパイロット弁の、図2中のV13-V13線に沿った断面を示す断面図である。また、図5は、図1~4に示されているスライド式切換弁を備える冷凍サイクルシステムを示す模式図である。
【0028】
図1図5に示すように、本実施形態のスライド式切換弁10は、4つの継手管の連通状態を切換える四方切換弁であり、弁ハウジング1内に、一対のピストン2L,2R、連結板3、弁座4、弁体5を備えた構造を有している。
【0029】
弁ハウジング1は、両端が閉塞された筒状の部材であって、円筒形状でステンレス鋼製の円筒部(弁本体)11とステンレス鋼製の2つのキャップ部12L,12Rとで構成されている。キャップ部12L,12Rは、円筒部11の両端開口を閉塞するように円筒部11に取り付けられている。また、円筒部11およびキャップ部12L,12Rの中心軸が弁ハウジング1の軸線Xとなっている。この弁ハウジング1の周壁には、詳細については後述するD継手管13d、E継手管13e、S継手管13s、C継手管13cという複数の継手管が、弁ハウジング1の内部と連通するように連結されている。
【0030】
一対のピストン2L,2R、連結板3、弁体5は、弁ハウジング1の内部において軸方向D11にスライド移動するスライド弁体6を構成している。このスライド弁体6は、弁ハウジング1の内部に設置されて上記の複数の継手管のうちの二対の継手管を連通するとともに、スライド移動することで連通対象の継手管を切換える。
【0031】
一対のピストン2L,2Rは互いに対向配置され、パッキン21を円筒部11の内周面に押圧しながら往復移動可能となっている。これにより、弁ハウジング1の内部は、2つのピストン2L,2Rにより、中央部の高圧室11Aと、高圧室11Aの両側の2つの第1作動室12Aと第2作動室12Bとに仕切られている。第1作動室12Aと第2作動室12Bは、弁ハウジング1の内部において、スライド弁体6によって、軸方向D11にスライド弁体6を挟むように区画される一対の端部室となっている。
【0032】
連結板3は金属板からなり、この連結板3は、弁ハウジング1の軸線X上に配置されるようにピストン2L,2Rの間に架設されるとともに、その中央に弁体5を保持している。また、連結板3には透孔3aが形成されている。そして、弁体5はピストン2L,2Rが移動すると連結板3に連動して弁座4上を摺動し、ピストン2L,2Rが備える後述のストッパ板24がキャップ部12L,12Rに当接した左右の位置で停止する。
【0033】
弁座4は円筒部11内の中間部に配設され、円筒部11の中間部の弁座4と対向する位置には、円筒部11内に開口する高圧配管としてのD継手管13dが取り付けられている。また、弁座4には、弁ハウジング1の軸線X方向に一直線上に並んで、一対の導管としてのE継手管13e及びC継手管13cと、低圧配管としてのS継手管13sが取り付けられている。弁体5にはその内側に椀状凹部5Aが形成されている。そして、弁体5は、図3の左側の端部位置において、S継手管13sとE継手管13eとを椀状凹部5Aにより連通する。このとき、C継手管13cは高圧室11A内で主に連結板3の透孔3aを介してD継手管13dに連通する。また、弁体5は、図3においてスライド弁体6が右側に移動した右側の端部位置において、S継手管13sとC継手管13cとを椀状凹部5Aにより連通する。このとき、E継手管13eは高圧室11A内で主に透孔3aを介してD継手管13dに連通する。
【0034】
図5に示されている冷凍サイクルシステム30において、D継手管13dは圧縮機31の吐出口に接続される高圧配管となっており、S継手管13sは圧縮機31の吸入口に接続される低圧配管となっている。C継手管13cは室外熱交換機32(第一熱交換器)に接続される導管であり、E継手管13eは室内熱交換機33(第二熱交換器)に接続される導管である。室外熱交換機32と室内熱交換機33は絞り装置34(膨張手段)を介して接続される。このC継手管13cから室外熱交換機32、絞り装置34、室内熱交換機33およびE継手管13eからなる経路と、S継手管13sから圧縮機31およびD継手管13dからなる経路とにより、冷凍サイクルシステムが構成される。なお、冷凍サイクルシステムにおける冷媒中には、圧縮機31およびその他機器の保護のため、微量の冷凍機油が含まれている。
【0035】
パイロット弁7は一対のブラケット71を介して弁ハウジング1に接続されている。パイロット弁7は、弁ハウジング1の内部において軸方向D11にスライド弁体6を挟む一対の空間、即ち、第1作動室12A及び第2作動室12Bの両方に駆動流体を流通させて、スライド弁体6を軸方向D11にスライド移動させる。本実施形態では、このパイロット弁7が、第1作動室12A及び第2作動室12Bの一方に高圧配管としてのD継手管13dの流体を流通させるとともに他方に低圧配管としてのS継手管13sの流体を流通させることでスライド弁体6をスライド移動させる。
【0036】
図4に示すように、パイロット弁7は、スライド式切換弁10と同様な構造であり、電磁コイル731(図1参照)とプランジャ732と吸引子733より構成される電磁アクチュエータ73を備える。そして、電磁コイル731への通電により電磁アクチュエータ73を作動させ、筒状でステンレス鋼製のパイロット弁ハウジング72の内部のパイロット弁体74をスライド移動させて流路を切り換える。パイロット弁体74は、圧縮機31の吸入口と接続された低圧配管としてのS継手管13sに連通する低圧継手用細管14sの連通先を、次のように切り替える。即ち、パイロット弁体74は、低圧継手用細管14sの連通先を、スライド式切換弁10の第1作動室12Aに接続された第1ハウジング用細管14Lと、第2作動室12Bに接続された第2ハウジング用細管14Rとで切り換える。同時に、圧縮機31の吐出口と接続された高圧配管としてのD継手管13dに連通する高圧継手用細管14dの連通先を第2ハウジング用細管14Rと第1ハウジング用細管14Lとで切り換える。これにより、圧縮機31の吸入圧力及び吐出圧力が導入された第1作動室12Aの圧力と第2作動室12Bの圧力との間に圧力差を発生させ、当該圧力差により、ピストン2L,2Rで区画されたスライド弁体6を軸方向D11に高圧側から低圧側へとスライド移動させる。そして、このスライド移動により、スライド弁体6における弁体5の位置が切り換えられて冷凍サイクルシステム30の流路が切り換えられる。
【0037】
以上の構成により、圧縮機31で圧縮された高圧の冷媒はD継手管13dから主弁室11A内に流入し、冷房運転の状態(冷却モード時)では、高圧冷媒はC継手管13cから室外熱交換機32に流入される。また、弁体5の位置を切り換えた暖房運転の状態(暖房モード時)では、高圧冷媒はE継手管13eから室内熱交換機33に流入される。すなわち、冷房運転時には、圧縮機31から吐出される冷媒はC継手管13c→室外熱交換機32→絞り装置34→室内熱交換機33→E継手管13eと循環し、室外熱交換機32が凝縮器(コンデンサ)、室内熱交換機33が蒸発器(エバポレータ)として機能し、冷房がなされる。絞り装置34は、室外熱交換機32と室内熱交換機33との間にて冷媒を膨張させて減圧する。また、暖房運転時には冷媒は逆に循環され、室内熱交換機33が凝縮器、室外熱交換機32が蒸発器として機能し、暖房がなされる。
【0038】
スライド式切換弁10の各ピストン2L,2Rは、図3に示すように鏡映対称な構造になっている。ピストン2L,2Rは、それぞれパッキン21と、連結板3に固定される固定円板22と、板ばね23と、円板状のストッパ板24とを備えている。これらのパッキン21と、固定円板22と、板ばね23と、ストッパ板24は軸線Xを中心として同軸に配置され、リベットにより一体に固定され、一体のピストン2L,2Rはボルトにより連結板3に固定されている。
【0039】
ここで、スライド式切換弁10には、上述のようにパイロット弁7と弁ハウジング1の内部における第1作動室12A及び第2作動室12Bを繋いで駆動流体を流通させる第1ハウジング用細管14L及び第2ハウジング用細管14Rが設けられている。また、パイロット弁7と高圧配管としてのD継手管13dを繋ぎ、D継手管13dの高圧流体を駆動流体としてパイロット弁7に流通させる高圧継手用細管14dが設けられている。更に、パイロット弁7と低圧配管としてのS継手管13sを繋ぎ、S継手管13sの低圧流体を駆動流体としてパイロット弁7に流通させる低圧継手用細管14sが設けられている。このとき、これら4本の細管は、何れもステンレス鋼製の細管となっており、各端部が、同じく何れもステンレス鋼製の弁ハウジング1、パイロット弁ハウジング72、D継手管13d、及びS継手管13sの周壁に以下に説明するように接続されている。
【0040】
まず、第1ハウジング用細管14L及び第2ハウジング用細管14Rと弁ハウジング1との互いに同等な接続について、第2ハウジング用細管14Rと弁ハウジング1の接続を代表例として挙げて説明する。
【0041】
図6は、第2ハウジング用細管14Rと弁ハウジング1の接続について、図3中の領域A11を模式的に拡大して示す模式図である。
【0042】
この図6に示されているように、第2ハウジング用細管14Rは弁ハウジング1におけるキャップ部12Rに直接接続されている。具体的には、皿状に形成されたキャップ部12Rの周壁に細管挿入用の貫通孔121が形成されており、第2ハウジング用細管14Rの端部がこの貫通孔121に挿入された状態で、スポット溶接による仮止め溶接とろう付けによる本固定によって接続されている。第2ハウジング用細管14Rとキャップ部12Rの接続箇所には、仮止め溶接した痕跡としての仮止め溶接跡122(図1にも黒点で図示)と、ろう付けによって本固定した痕跡としてのろう付け固定跡123と、が形成されている。ろう付け固定跡123は、一部が仮止め溶接跡122と重なるように、第2ハウジング用細管14Rの周方向に全周に亘って形成されている。第1ハウジング用細管14Lと弁ハウジング1の接続も、以上と同様に仮止め溶接跡122及びろう付け固定跡123が形成されるように行われる。
【0043】
次に、互いに同等な、高圧継手用細管14dとD継手管13dの接続と、低圧継手用細管14sとS継手管13sの接続について、後者の接続を代表例として挙げて説明する。
【0044】
図7は、低圧継手用細管14sとS継手管13sの接続について、図2中の領域A12を模式的に拡大して示す模式図である。
【0045】
この図7に示されているように、低圧継手用細管14sはS継手管13sに直接接続されている。具体的には、S継手管13sの周壁に細管挿入用の貫通孔131が形成されており、低圧継手用細管14sの端部がこの貫通孔131に挿入された状態で、スポット溶接による仮止め溶接とろう付けによる本固定によって接続されている。低圧継手用細管14sとS継手管13sの接続箇所には、仮止め溶接した痕跡としての仮止め溶接跡132(図1にも黒点で図示)と、ろう付けによって本固定した痕跡としてのろう付け固定跡133と、が形成されている。ろう付け固定跡133は、一部が仮止め溶接跡132と重なるように、低圧継手用細管14sの周方向に全周に亘って形成されている。高圧継手用細管14dとD継手管13dの接続も、以上と同様に仮止め溶接跡132及びろう付け固定跡133が形成されるように行われる。
【0046】
次に、第1ハウジング用細管14L、第2ハウジング用細管14R、高圧継手用細管14d、及び低圧継手用細管14sと、パイロット弁ハウジング72との接続について説明する。ここでは、図4に、領域A13を矢印V14方向から見た断面である模式的な拡大図として示されているように、第2ハウジング用細管14Rとパイロット弁ハウジング72の接続を代表例として挙げて説明する。
【0047】
この図4の拡大図に示されているように、第2ハウジング用細管14Rはパイロット弁ハウジング72に直接接続されている。まず、パイロット弁ハウジング72の周壁の一部をなすパイロット弁座721に細管挿入用の貫通孔722が形成されている。第2ハウジング用細管14Rの端部がこの貫通孔722に挿入された状態で、スポット溶接による仮止め溶接とろう付けによる本固定によって接続されている。第2ハウジング用細管14Rとパイロット弁座721の接続箇所には、仮止め溶接した痕跡としての仮止め溶接跡723(図1にも黒点で図示)と、ろう付けによって本固定した痕跡としてのろう付け固定跡724と、が形成されている。ろう付け固定跡724は、一部が仮止め溶接跡723と重なるように、第2ハウジング用細管14Rの周方向に全周に亘って形成されている。第1ハウジング用細管14L、高圧継手用細管14d、及び低圧継手用細管14sと、パイロット弁ハウジング72との接続も、以上と同様に仮止め溶接跡723及びろう付け固定跡724が形成されるように行われる。尚、高圧継手用細管14dとパイロット弁ハウジング72との接続は、パイロット弁ハウジング72の周壁においてパイロット弁座721と対面する部位について行われる。
【0048】
以上に説明した第1実施形態のスライド式切換弁10及び冷凍サイクルシステム30によれば、第1ハウジング用細管14L、第2ハウジング用細管14R、高圧継手用細管14d、及び低圧継手用細管14sが、何れもステンレス鋼により作製されている。このため、各細管について高い剛性が得られて耐振動性が向上しており、振動環境下での長期使用時における各細管の強度低下を抑制することができる。
【0049】
ここで、本実施形態のスライド式切換弁10は、4本の継手管の連通状態を切換える四方切換弁の構成を有している。四方切換弁は、例えば空気調和装置等に取り付けられ圧縮機等の振動による振動環境下で長期に亘って使用されることが多い。上記の構成によれば、このような四方切換弁について、各細管の強度低下を抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、弁ハウジング1がステンレス鋼製であり、第1ハウジング用細管14L及び第2ハウジング用細管14Rが弁ハウジング1に直接接続されている。この構成によれば、第1ハウジング用細管14L及び第2ハウジング用細管14Rと弁ハウジング1の接続に中間部材を介さずに両者が直接接続されるので、部品点数が削減されてスライド式切換弁10についての製品コストを低減させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、弁ハウジング1が、ステンレス鋼製の円筒部11と、各々がステンレス鋼製の一対のキャップ部12L,12Rと、を備えている。そして、第1ハウジング用細管14Lが図1中及び図3中における左側のキャップ部12Lに直接接続され、第2ハウジング用細管14Rが右側のキャップ部12Rに直接接続される。この構成によれば、円筒部11とキャップ部12L,12Rがステンレス鋼製となっているので、例えば黄銅で作製されたもの等に比べると、各部品の薄肉化が可能となり、スライド式切換弁10の小型化を図ることができる。更に、第1ハウジング用細管14L及び第2ハウジング用細管14Rとキャップ部12L,12Rとの接続が同種金属どうしでの接続となるので、ろう付け等による接続を容易に行うことができる。
【0052】
また、本実施形態では、D継手管13d、S継手管13s、C継手管13c、及びE継手管13eの全てがステンレス鋼製である。そして、高圧継手用細管14d及び低圧継手用細管14sが、D継手管13d及びS継手管13sに直接接続されている。この構成によれば、高圧継手用細管14d及び低圧継手用細管14sと接続対象のD継手管13d及びS継手管13sがステンレス鋼製となっている。これにより、例えば銅で作製されたもの等に比べると、各部品の薄肉化が可能となり、スライド式切換弁10の小型化を図ることができる。更に、高圧継手用細管14d及び低圧継手用細管14sとD継手管13d及びS継手管13sとの接続が同種金属どうしでの接続となるので、ろう付け等による接続を容易に行うことができる。
【0053】
また、本実施形態では、パイロット弁7がステンレス鋼製のパイロット弁ハウジング72を備えている。そして、第1ハウジング用細管14L、第2ハウジング用細管14R、高圧継手用細管14d、及び低圧継手用細管14sが、パイロット弁ハウジング72に直接接続されている。この構成によれば、パイロット弁ハウジング72がステンレス鋼製となっているので、例えば黄銅で作製されたもの等に比べると、部品の薄肉化が可能となり、スライド式切換弁10の小型化を図ることができる。更に、第1ハウジング用細管14L、第2ハウジング用細管14R、高圧継手用細管14d、及び低圧継手用細管14sとパイロット弁ハウジング72との接続が同種金属どうしでの接続となるので、ろう付け等による接続を容易に行うことができる。
【0054】
また、本実施形態では、第1ハウジング用細管14L及び第2ハウジング用細管14Rと弁ハウジング1の接続箇所には、仮止め溶接跡122とろう付け固定跡123が形成されている。更に、高圧継手用細管14d及び低圧継手用細管14sとD継手管13d及びS継手管13sの接続箇所にも、仮止め溶接跡132とろう付け固定跡133が形成されている。この構成によれば、各細管と接続相手との接続について、ろう付けの前にステンレス鋼どうしによる溶接にて仮止めされるので、ろう付け時の各細管の位置決めが不要となり、ろう付けの工数を削減することができる。
【0055】
また、本実施形態では、第1ハウジング用細管14L、第2ハウジング用細管14R、高圧継手用細管14d、及び低圧継手用細管14sとパイロット弁7との接続箇所にも、仮止め溶接跡723とろう付け固定跡724が形成されている。この構成によれば、各細管とパイロット弁7との接続についても、ろう付けの前にステンレス鋼どうしによる溶接にて仮止めされるので、ろう付け時の各細管の位置決めが不要となり、ろう付けの工数を削減することができる。
【0056】
以上で第1実施形態の説明を終了し、次に第2実施形態について図8に基づいて説明する。尚、第2実施形態の冷凍サイクルシステムは、図5に示されている第1実施形態の冷凍サイクルシステム30と同じシステムとなるので、以下では、第2実施形態の冷凍サイクルシステムについては図示及び説明を割愛する。
【0057】
図8は、本発明の第2実施形態のスライド式切換弁を、図3と同等の断面で示す図である。尚、図8では、図3に示されている第1実施形態の構成要素と同等な構成要素のうち、以下の説明に必要なものについて図3と同じ符号が付されている。また、以下では、それら同等な構成要素に関する重複説明を割愛する。
【0058】
この図8に示されている第2実施形態のスライド式切換弁50は、第1ハウジング用細管14L及び第2ハウジング用細管14Rと弁ハウジング1の接続箇所を除いて、図1図7に示されている第1実施形態のスライド式切換弁10と同等である。以下、両者の相違点に注目してスライド式切換弁50の説明を行う。
【0059】
本実施形態では、ステンレス鋼製の第1ハウジング用細管14L及び第2ハウジング用細管14Rが、キャップ52R,52Lではなく、弁ハウジング1におけるステンレス鋼製の円筒部11に直接接続されている。また、各接続箇所は、第1ハウジング用細管14L及び第2ハウジング用細管14Rそれぞれの端部が、弁ハウジングの内部における一対の端部室である第1作動室12A及び第2作動室12Bに達するように、キャップ52R,52Lの近傍となっている。キャップ52R,52Lは、第1作動室12A及び第2作動室12Bに達した第1ハウジング用細管14L及び第2ハウジング用細管14Rそれぞれの端部と干渉しないように、これらを避けた形状となっている。以下、図8に、領域A21の模式的な拡大図として示されているように、第2ハウジング用細管14Rと円筒部11の接続を代表例として挙げて説明を行う。
【0060】
この図8の拡大図に示されているように、円筒部11の周壁には細管挿入用の貫通孔511が形成されている。第2ハウジング用細管14Rの端部は、この貫通孔511に挿入された状態で、スポット溶接による仮止め溶接とろう付けによる本固定によって接続されている。第2ハウジング用細管14Rと円筒部11の接続箇所には、仮止め溶接した痕跡としての仮止め溶接跡512と、ろう付けによって本固定した痕跡としてのろう付け固定跡513と、が形成されている。ろう付け固定跡513は、一部が仮止め溶接跡512と重なるように、第2ハウジング用細管14Rの周方向に全周に亘って形成されている。第1ハウジング用細管14Lと弁ハウジング1の接続も、以上と同様に仮止め溶接跡512及びろう付け固定跡513が形成されるように行われる。
【0061】
以上に説明した第2実施形態のスライド式切換弁50によっても、上述の第1実施形態と同様に、振動環境下での長期使用時における各細管の強度低下を抑制することができることは言うまでもない。
【0062】
尚、以上に説明した第1及び第2実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これに限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によっても尚本発明のスライド式切換弁の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0063】
例えば、上述の第1及び第2実施形態では、スライド式切換弁の一例として、4本の継手管の連通状態を切換える四方切換弁としてのスライド式切換弁10,50が例示されているが、スライド式切換弁は四方切換弁に限るものではない。スライド式切換弁は、スライド弁体を用いて複数の継手管の連通状態を切換えるものであれば、例えば3本の継手管のうちの一対の継手管を連通させるときの連通対象の継手管を、スライド弁体を用いて切換える三方切換弁であってもよい。または、2本の継手管の相互間を、スライド弁体を用いて開閉する二方切換弁等であってもよい。スライド式切換弁における継手管の数や、連通状態の切換え方等については、スライド式切換弁の適用対象等に応じて適宜に設定し得るものである。ただし、四方切換弁のスライド式切換弁10を用いることで、各細管の強度低下を抑制するという効果を有効活用することができる点は上述した通りである。
【0064】
また、上述の第1及び第2実施形態では、スライド式切換弁の一例として、第1ハウジング用細管14L及び第2ハウジング用細管14Rが、ステンレス鋼製の弁ハウジング1に直接接続されたスライド式切換弁10,50が例示されている。しかしながら、スライド式切換弁は、これに限るものではなく、例えばステンレス以外の材料で弁ハウジングを形成し、ステンレス鋼製の接続部材を介してハウジング用細管を弁ハウジングに間接接続させることとしてもよいし、ステンレス鋼製のハウジング用細管を、接続部材を介さず黄銅等の異種金属製の弁ハウジングに直接接続させることとしてもよい。ただし、第1ハウジング用細管14L及び第2ハウジング用細管14Rをステンレス鋼製の弁ハウジング1に直接接続させることで、製品コストを低減させることができるとともに、同種金属どうしでの接続となるので、ろう付け等による接続を容易に行うことができる点は上述した通りである。
【0065】
また、上述の第1及び第2実施形態では、弁ハウジングの一例として、ステンレス鋼製の円筒部11及び一対のキャップ部12L,12Rを備えた弁ハウジング1が例示されている。しかしながら、弁ハウジングは、これに限るものではなく、その具体的な構成や材料等を問うものではない。ただし、ステンレス鋼製の円筒部11及び一対のキャップ部12L,12Rを採用することで、各部品の薄肉化が可能となり、スライド式切換弁の小型化を図ることができる点は上述した通りである。
【0066】
また、上述の第1及び第2実施形態では、複数の継手管の一例として、何れもがステンレス鋼製のD継手管13d、S継手管13s、C継手管13c、及びE継手管13eが例示されている。しかしながら、継手管は、これらに限るものではなく、その具体的な構成や材料等を問うものではない。ただし、ステンレス鋼製の継手管を採用することで、スライド式切換弁を小型化できるとともに、ろう付け等による接続を容易に行うことができる点は上述した通りである。
【0067】
また、上述の第1及び第2実施形態では、スライド式切換弁の一例として、4本の細管が、パイロット弁7におけるステンレス鋼製のパイロット弁ハウジング72に直接接続されたスライド式切換弁10,50が例示されている。しかしながら、スライド式切換弁は、これに限るものではなく、パイロット弁の具体的な構成や素材等を問うものではない。ただし、ステンレス鋼製のパイロット弁ハウジング72を有するパイロット弁7を採用し、各細管をパイロット弁ハウジング72に直接接続させることで、スライド式切換弁の小型化やろう付け等の容易化を図ることができる点は上述した通りである。
【0068】
また、上述の第1及び第2実施形態では、スライド式切換弁の一例として、細管と弁ハウジング1や継手管との接続箇所に仮止め溶接跡122,132とろう付け固定跡123,133が形成されているスライド式切換弁10,50が例示されている。しかしながら、スライド式切換弁は、これに限るものではなく、細管と弁ハウジングや継手管との接続の際に仮止め溶接等は行わず、接続箇所に仮止め溶接跡が形成されないこととしてもよい。ただし、細管と弁ハウジング1や継手管との接続について、仮止め溶接跡122,132とろう付け固定跡123,133が形成されるように行うことで、ろう付けの工数を削減することができる点は上述した通りである。
【0069】
また、上述の第1及び第2実施形態では、スライド式切換弁の一例として、細管とパイロット弁7との接続箇所に仮止め溶接跡723とろう付け固定跡724が形成されているスライド式切換弁10,50が例示されている。しかしながら、スライド式切換弁は、これに限るものではなく、細管とパイロット弁との接続の際に仮止め溶接等は行わず、接続箇所に仮止め溶接跡が形成されないこととしてもよい。ただし、細管とパイロット弁7との接続について、仮止め溶接跡723とろう付け固定跡724が形成されるように行うことで、ろう付けの工数を削減することができる点は上述した通りである。
【符号の説明】
【0070】
1 弁ハウジング
2L,2R ピストン
3 連結板
3a 透孔
4 弁座
5 弁体
5A 椀状凹部
6 スライド弁体
7 パイロット弁
10,50 スライド式切換弁
11 円筒部
11A 主弁室
12A 第1作動室(端部室)
12B 第2作動室(端部室)
12L,12R,52L,52R キャップ部
13c C継手管
13d D継手管
13e E継手管
13s S継手管
14L 第1ハウジング用細管
14R 第2ハウジング用細管
14d 高圧継手用細管
14s 低圧継手用細管
21 パッキン
22 固定円板
23 板ばね
24 ストッパ板
30 冷凍サイクルシステム
31 圧縮機
32 室外熱交換機(第一熱交換器)
33 室内熱交換機(第二熱交換器)
34 絞り装置(膨張手段)
71 ブラケット
72 パイロット弁ハウジング
73 電磁アクチュエータ
74 パイロット弁体
121,131,511,722 貫通孔
122,132,512,723 仮止め溶接跡
123,133,513,724 ろう付け固定跡
721 パイロット弁座
D11 軸方向
X 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8