(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】部品実装機
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
(21)【出願番号】P 2022501487
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2020006596
(87)【国際公開番号】W WO2021166133
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 みきね
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/059679(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/138815(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/063328(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00
13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を吸着して基板に実装する部品実装機であって、
基板を搬送する基板搬送装置と、
昇降可能に配列される2つで一組の吸着部材を複数組有するヘッドと、
前記一組の2つの吸着部材の補正値を前記複数組分受信し、該受信した前記複数組分の補正値に基づいて前記複数組分の目標送り量を設定すると共に該設定した各目標送り量で前記複数組分の部品を所定の方向へ順次送り出す2つのフィーダと、
各組ごとに前記2つの吸着部材の前記所定の方向における位置ずれ量を取得し、前記複数組分の位置ずれ量に基づく前記複数組分の前記補正値を前記吸着部材毎に区別して前記2つのフィーダが所定のタイミングで一括して受信するように該2つのフィーダに送信する制御装置と、
を備える部品実装機であって、
前記制御装置は、前記所定のタイミングとして、前記2つのフィーダから送り出される部品を前記一組の2つの吸着部材に略同時に吸着させる同時吸着動作の実行中以外のタイミングである前記基板の搬送中のタイミング、又は、前記同時吸着動作の実行中以外のタイミングである、前記吸着部材に吸着させた部品を前記基板に実装させる実装動作中のタイミングで前記補正値を前記2つのフィーダに一括して送信し、
前記2つのフィーダは、それぞれにフィーダ制御装置を備え、
前記フィーダ制御装置は、部品を供給すべきタイミングとは異なるタイミングで前記複数組分の
前記補正値を一括受信して
前記目標送り量を設定する、
部品実装機。
【請求項2】
請求項1に記載の部品実装機であって、
前記ヘッドは、回転体を有すると共に、該回転体の回転軸を中心とした同一円周上において前記2つで一組の吸着部材を複数組有するロータリヘッドである、
部品実装機。
【請求項3】
請求項2に記載の部品実装機であって、
前記ロータリヘッドを移動させる移動装置を備え、
前記ロータリヘッドには、前記複数組の吸着部材のうち、前記複数組の吸着部材の公転軸を通り且つ前記2つフィーダの配列方向に平行なライン上に位置する前記一組の2つの吸着部材が昇降可能に配置され、
前記2つのフィーダは、前記所定の方向と直交する直交方向に、昇降可能な前記一組の2つの吸着部材の間隔と略同一の間隔をおいて配列され、
前記制御装置は、前記2つのフィーダから送り出される部品が前記一組の2つの吸着部材に略同時に吸着されるよう前記移動装置と前記ヘッドとを制御する前記同時吸着動作を実行する、
部品実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品実装機について開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のテープフィーダから複数の吸着ノズルを備えた移載ヘッドによって複数の電子部品を同時にピックアップして基板に実装する部品実装機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この部品実装機は、各テープフィーダにおける部品停止位置の位置ずれ量を予め検出して停止位置補正データとして記憶しておく。そして、部品実装機は、移載ヘッドによる部品ピックアップに際しては、停止位置補正データに基づいてテープ送り機構を制御して、部品停止位置を移載ヘッドの吸着ノズルによる部品吸着位置に一致させる位置合わせを行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、特許文献1には、テープフィーダのテープ送り機構によって送られる部品が停止する部品停止位置に位置ずれが生じている場合にその位置ずれを補正することについては記載されている。しかし、特許文献1には、複数の吸着ノズルの方に部品の送り方向に位置ずれが生じている場合については何ら言及されていない。
【0005】
本開示は、複数の吸着部材に部品の送り方向に位置ずれが生じている場合でも部品の吸着を適切に実行することができる部品実装機を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示は、
部品を吸着して基板に実装する部品実装機であって、
昇降可能に配列される複数の吸着部材を少なくとも一組有するヘッドと、
前記複数の吸着部材の補正値を組数分受信し、該受信した組数分の補正値に基づいて組数分の目標送り量を設定すると共に該設定した各目標送り量で組数分の部品を所定の方向へ順次送り出す少なくとも一つのフィーダと、
各組ごとに前記複数の吸着部材の前記所定の方向における位置ずれ量を取得し、前記組数分の位置ずれ量に基づく組数分の前記補正値を前記フィーダが所定のタイミングで一括して受信するように該フィーダに送信する制御装置と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本開示の部品実装機によれば、複数の吸着部材に部品の送り方向に位置ずれが生じている場合でも部品の吸着を適切に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】フィーダの部品供給位置付近の部分拡大図である。
【
図5】ノズルホルダの配列を説明する説明図である。
【
図6】部品実装機の実装制御装置の電気的な接続関係を示すブロック図である。
【
図7】同時吸着処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】Y軸方向位置ずれ量を説明する説明図である。
【
図9】記憶装置に記憶されるY軸方向位置ずれ量の一例を示す説明図である。
【
図10】部品供給処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、部品実装機の概略構成図である。
図2は、フィーダの概略構成図である。
図3は、フィーダの部品供給位置付近の部分拡大図である。
図4は、実装ヘッドの概略構成図である。
図5は、ノズルホルダの配列を説明する説明図である。
図6は、部品実装機の実装制御装置の電気的な接続関係を示す説明図である。なお、
図1の左右方向がX軸方向であり、前(手前)後(奥)方向がX軸方向と概ね直交するY軸方向であり、上下方向がX軸方向およびY軸方向(水平面)に概ね直交するZ軸方向である。
【0012】
部品実装機1は、
図1に示すように、基台2上に設置される筐体3と、基板搬送装置12と、フィーダ20と、ヘッド移動装置30と、実装ヘッド40と、実装制御装置80(
図6参照)と、を備える。また、部品実装機1は、これらの他に、パーツカメラ14やマークカメラ16なども備えている。なお、パーツカメラ14は、フィーダ20と基板搬送装置12との間に設けられ、実装ヘッド40の吸着ノズル44に吸着された部品Pを下方から撮像するためのものである。また、マークカメラ16は、実装ヘッド40に設けられ、基板Sに付された基準マークを上方から撮像して読み取るためのものである。
【0013】
基板搬送装置12は、
図1の前後に間隔を開けて設けられX軸方向(左右方向)に架け渡された1対のコンベアベルトを有している。基板Sは、基板搬送装置12のコンベアベルトにより図中左から右へと搬送される。
【0014】
フィーダ20は、
図1に示すように、筐体3の前方に設けられたフィーダ台4に対して、左右方向(X軸方向)に並ぶように取り付けられる。フィーダ20は、
図2に示すように、リール21とテープ送り機構24とコネクタ26とフィーダ制御装置28とを備えるテープフィーダとして構成される。リール21には、テープ22が巻回されている。テープ22には、
図3に示すように、その長手方向に沿って所定間隔置きにキャビティ22aとスプロケット孔22bとが形成されている。キャビティ22aには、部品Pが収容されている。
【0015】
テープ送り機構24は、ステッピングモータとして構成される送りモータ24aと、送りモータ24aの回転軸に設けられた駆動ギヤ24bと、駆動ギヤ24bに噛合する伝達ギヤ24cと、伝達ギヤ24cに噛合するスプロケット歯を外周面に有するスプロケット24dと、を備える。テープ送り機構24は、テープ22に形成されたスプロケット孔22bにスプロケット24dのスプロケット歯を係合させると共に送りモータ24aの駆動によりスプロケット24dを間欠的に回転させることで、テープ22をリール21から引き出して部品供給位置(
図3参照)へ順次送り出す。なお、テープ22に収容された部品Pは、テープ22の表面を覆うフィルムによって保護されている。そして、部品Pは、部品供給位置の手前でフィルムが剥がされることで部品供給位置にて露出した状態となり、吸着ノズル44により吸着可能とされる。
【0016】
フィーダ制御装置28は、
図6に示すように、CPUやROM,RAMなどを内蔵するマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)28aと、送りモータ24aの駆動回路としてのモータドライバ28bと、を備える。マイコン28aは、伝達ギヤ24cの回転変位を検出することでテープ22の送り量を検出する送り量センサ25から検知信号を入力し、モータドライバ28bに送りモータ24aを駆動するためのパルス信号を出力する。モータドライバ28bは、入力したパルス信号に基づいて駆動電流を生成して送りモータ24aへ出力する。送りモータ24aからの駆動力により伝達ギヤ24cを介してスプロケット24dが回転することで、スプロケット24dと係合するテープ22は、部品供給位置へ送り出される。
【0017】
ヘッド移動装置30は、実装ヘッド40をXY軸方向(前後左右の方向)に移動させるものであり、
図1に示すように、X軸スライダ32と、Y軸スライダ34と、を備える。X軸スライダ32は、Y軸スライダ34の前面にX軸方向(左右方向)に延在するように設けられた上下一対のX軸ガイドレール31に支持され、X軸モータ36(
図6参照)の駆動によってX軸方向に移動可能である。Y軸スライダ34は、筐体3の上段部にY軸方向(前後方向)に延在するように設けられた左右一対のY軸ガイドレール33に支持され、Y軸モータ38(
図6参照)の駆動によってY軸方向に移動可能である。なお、X軸スライダ32は、X軸位置センサ37(
図6参照)によりX軸方向の位置が検知され、Y軸スライダ34は、Y軸位置センサ39(
図6参照)によりY軸方向の位置が検知される。X軸スライダ32には実装ヘッド40が取り付けられている。このため、実装ヘッド40は、ヘッド移動装置30(X軸モータ36およびY軸モータ38)を駆動制御することにより、XY平面(水平面)に沿って移動可能である。
【0018】
実装ヘッド40は、
図4に示すように、ヘッド本体41と、複数(実施形態では、8個)のノズルホルダ42と、複数(実施形態では、8個)の吸着ノズル44と、R軸駆動装置50と、Q軸駆動装置60と、2つのZ軸駆動装置70と、を備える。
【0019】
ヘッド本体41は、R軸駆動装置50によって回転可能な回転体である。ノズルホルダ42は、ヘッド本体41の回転軸(中心軸)を中心とした同一円周上において所定角度間隔(実施形態では、45度間隔)をおいて配列され、且つ、ヘッド本体41に昇降自在に支持されている。ノズルホルダ42の先端部には、吸着ノズル44が装着される。吸着ノズル44は、先端に吸着口を有し、図示しない負圧源から圧力調整弁46(
図6参照)を介して吸着口に供給される負圧により部品Pを吸着する。なお、吸着ノズル44は、ノズルホルダ42に対して着脱可能であり、吸着する部品Pの種類に応じてその吸着に適したものに交換される。
【0020】
R軸駆動装置50は、複数のノズルホルダ42(複数の吸着ノズル44)をヘッド本体41の中心軸回りに円周方向に旋回(公転)させるものである。R軸駆動装置50は、
図4に示すように、R軸モータ51と、ヘッド本体41の中心軸から軸方向に延出されたR軸52と、R軸モータ51の回転をR軸52に伝達する伝達ギヤ53と、を備える。R軸駆動装置50は、R軸モータ51により伝達ギヤ53を介してR軸52を回転駆動することにより、ヘッド本体41を回転させる。各ノズルホルダ42は、ヘッド本体41の回転によって、吸着ノズル44と一体となって円周方向に旋回(公転)する。また、R軸駆動装置50は、この他に、R軸52の回転位置、即ち各ノズルホルダ42(吸着ノズル44)の旋回位置を検知するためのR軸位置センサ55(
図6参照)も備える。
【0021】
Q軸駆動装置60は、各ノズルホルダ42(各吸着ノズル44)をその中心軸回りに回転(自転)させるものである。Q軸駆動装置60は、
図4に示すように、Q軸モータ61と、円筒ギヤ62と、伝達ギヤ63と、Q軸ギヤ64と、を備える。円筒ギヤ62は、その内部にR軸52が同軸かつ相対回転可能に挿通され、外周面に平歯の外歯62aが形成されている。伝達ギヤ63は、Q軸モータ61の回転を円筒ギヤ62に伝達するものである。Q軸ギヤ64は、各ノズルホルダ42の上部に設けられ、円筒ギヤ62の外歯62aとZ軸方向(上下方向)にスライド可能に噛み合うものである。Q軸駆動装置60は、Q軸モータ61により伝達ギヤ63を介して円筒ギヤ62を回転駆動することにより、円筒ギヤ62の外歯62aと噛み合う各Q軸ギヤ64を纏めて同方向に回転させることができる。各ノズルホルダ42は、Q軸ギヤ64の回転によって、吸着ノズル44と一体となってその中心軸回りに回転(自転)する。また、Q軸駆動装置60は、この他に、Q軸ギヤ64の回転位置、即ち各ノズルホルダ42(吸着ノズル44)の回転位置を検知するためのQ軸位置センサ65(
図6参照)も備える。
【0022】
各Z軸駆動装置70は、ノズルホルダ42の旋回(公転)軌道上の2箇所においてノズルホルダ42を個別に昇降可能に構成されている。ノズルホルダ42に装着される吸着ノズル44は、ノズルホルダ42と共に昇降する。本実施形態では、
図5に示すように、各Z軸駆動装置70は、ヘッド本体41の中心軸Oを通り且つフィーダ20の配列方向(X軸方向)に平行なラインL上に位置する2つのノズルホルダ42(吸着ノズル44)を昇降可能に配置されている。本実施形態では、各Z軸駆動装置70は、周方向に並ぶ8個のノズルホルダ42に装着される8個の吸着ノズル44A~44Hのうち、吸着ノズル44A,44Eの組と、吸着ノズル44B,44Fの組と、吸着ノズル44C,44Gの組と、吸着ノズル44D,44Hの組とを昇降可能である。これらを構成する8個の吸着ノズル44A~44Hがヘッド本体41の中心軸Oを中心とした同一円周上に配列されていることから、各ノズル組は概ね同一のノズル間距離を有している。
【0023】
各Z軸駆動装置70は、何れも、
図4に示すように、Z軸スライダ72と、Z軸スライダ72を昇降させるZ軸モータ71と、を備える。また、各Z軸駆動装置70は、この他に、対応するZ軸スライダ72の昇降位置、即ち対応するノズルホルダ42(吸着ノズル44)の昇降位置を検知するためのZ軸位置センサ73(
図6参照)も備える。各Z軸駆動装置70は、それぞれZ軸モータ71を駆動して対応するZ軸スライダ72を昇降させることにより、Z軸スライダ72の下方にあるノズルホルダ42と当接して、当該ノズルホルダ42を吸着ノズル44と一体的に昇降させる。なお、2つのZ軸駆動装置70は、Z軸モータ71としてリニアモータを用いてZ軸スライダ72を昇降させるものとしてもよいし、回転モータと送りねじ機構とを用いてZ軸スライダ72を昇降させるものとしてもよい。また、各Z軸駆動装置70は、Z軸モータ71に代えてエアシリンダなどのアクチュエータを用いてZ軸スライダ72を昇降させるものとしてもよい。このように、実施形態の実装ヘッド40は、それぞれノズルホルダ42(吸着ノズル44)を個別に昇降可能な2つのZ軸駆動装置70を備え、各Z軸駆動装置70を用いて吸着ノズル44による部品Pの吸着動作を個別に行なうことができる。また、実施形態の実装ヘッド40は、
図5に示すように、2つのZ軸駆動装置70によって昇降可能な2つの吸着ノズル44と略同じ間隔でX軸方向(左右方向)に並ぶように2つの部品Pを対応するフィーダ20から供給することで、当該2つの吸着ノズル44を同時に下降させて2つの部品Pを同時に吸着させることができる(同時吸着動作)。
【0024】
実装制御装置80は、
図6に示すように、CPU81を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU81の他に、ROM82やHDD83、RAM84、入出力インタフェース85などを備える。これらはバス86を介して接続されている。実装制御装置80には、X軸位置センサ37やY軸位置センサ39、R軸位置センサ55、Q軸位置センサ65、Z軸位置センサ73などからの各種検知信号が入力されている。また、実装制御装置80には、パーツカメラ14やマークカメラ16からの画像信号なども入出力インタフェース85を介して入力されている。一方、実装制御装置80からは、フィーダ20や基板搬送装置12、X軸モータ36、Y軸モータ38、R軸モータ51、Q軸モータ61、Z軸モータ71、圧力調整弁46、パーツカメラ14、マークカメラ16などへの各種制御信号が出力されている。
【0025】
次に、こうして構成された実施形態の部品実装機1の動作、特に、上述した同時吸着動作について説明する。
図7は、実装制御装置80のCPU81により実行される同時吸着処理の一例を示すフローチャートである。
【0026】
同時吸着処理が実行されると、実装制御装置80のCPU81は、まず、基板搬送装置12による基板Sの搬入が完了したか否かを判定する(S100)。CPU81は、基板Sの搬入が完了していないと判定すると、各吸着ノズル44のY軸方向位置ずれ量δnを送信済みであるか否かを判定し(S110)、送信済みでなければ、各吸着ノズル44のY軸方向位置ずれ量δnを、各吸着ノズル44に同時吸着させる部品Pを供給する各フィーダ20(フィーダ制御装置28)へ一括送信する(S120)。
図8は、Y軸方向位置ずれ量を説明する説明図である。図示するように、Y軸方向位置ずれ量δnは、ヘッド本体41の中心軸Oを通り且つX軸方向(フィーダ20の配列方向)に平行なラインLに対して、吸着動作を行なう吸着ノズル44の先端(吸着口)のY軸方向(部品Pの送り方向)における位置ずれ量である。このY軸方向位置ずれ量δnは、後述するが、同時吸着される部品Pを供給するフィーダ20において、目標テープ送り量αnを設定する際の補正値として用いられる。Y軸方向位置ずれ量δnの送信は、予め吸着ノズル44ごとにY軸方向位置ずれ量δnを測定してHDD83(記憶装置)に記憶しておき、記憶したY軸方向位置ずれ量δnを基板Sの搬入中のタイミングで対応するフィーダ20のフィーダ制御装置28に送信することにより行なわれる。
図9は、記憶装置に記憶されるY軸方向位置ずれ量の一例を示す説明図である。本実施形態では、8個の吸着ノズル44A~44H(
図5参照)のうち吸着ノズル44A,44B,44C,44Dが、同時吸着される部品Pを供給する2つのフィーダ20のうち一方のフィーダ20から供給される部品Pを吸着する。また、8個の吸着ノズル44A~44Hのうち吸着ノズル44E,44F,44G,44Hが、上記2つのフィーダ20のうち他方のフィーダ20から供給される部品Pを吸着する。このため、吸着ノズル44A,44B,44C,44Dの各Y軸方向位置ずれ量δnは、上記一方のフィーダ20のフィーダ制御装置28に一括送信される。また、吸着ノズル44E,44F,44G,44Hの各Y軸方向位置ずれ量δnは、上記他方のフィーダ20のフィーダ制御装置28に一括送信される。CPU81は、S110において、Y軸方向位置ずれ量δnを送信済みであると判定すると、S120にスキップして、基板Sの搬入が完了するのを待つ。
【0027】
CPU81は、基板Sの搬入が完了したと判定すると、変数nを値1に初期化し(S130)、第n組目の2つの吸着ノズル44が、同時吸着される2つの部品Pが供給される部品供給位置の上方に移動するようヘッド移動装置30を制御する(S140)。続いて、CPU81は、同時吸着される2つの部品Pを供給する2つのフィーダ20のフィーダ制御装置28に部品供給指令を送信する(S150)。そして、CPU81は、第n組目の2つの吸着ノズル44にそれぞれ部品Pを同時吸着させる同時吸着動作を行なう(S160)。同時吸着動作は、第n組目の2つの吸着ノズル44が下降するよう2つのZ軸駆動装置70を制御すると共に当該2つの吸着ノズル44の吸着口に負圧が供給されるよう圧力調整弁46を制御することにより行なわれる。CPU81は、同時吸着動作を行なうと、全ての組の吸着ノズル44への部品Pの吸着が終了したか否かを判定する(S170)。CPU81は、全ての組の吸着が終了していないと判定すると、変数nを値1だけインクリメントして(S180)、S140に戻り、次の第n組目の2つの吸着ノズル44に部品Pを吸着させる同時吸着動作を繰り返す。CPU81は、全ての組の吸着が終了したと判定すると、これで部品吸着処理を終了する。CPU81は、部品吸着処理が終了すると、図示しない部品実装処理へ移行する。
【0028】
CPU81は、部品実装処理へ移行すると、実装ヘッド40がパーツカメラ14の上方へ移動するようヘッド移動装置30を制御し、パーツカメラ14により吸着ノズル44に吸着させた部品Pを下方から撮像する。続いて、CPU81は、撮像画像を処理して各吸着ノズル44に吸着されている部品Pの位置ずれ量(吸着ずれ量)を算出し、算出した位置ずれ量に基づいて基板Sの実装位置を補正する。次に、CPU81は、今回実装すべき吸着ノズル44に吸着させた部品Pが補正した実装位置の上方へ位置するようヘッド移動装置30を制御する。そして、CPU81は、吸着ノズル44が下降するよう対応するZ軸駆動装置70を制御すると共に吸着ノズル44の吸着口への負圧の供給が解除されるよう圧力調整弁46を制御する。これにより、部品Pが基板Sの実装位置へ実装される。また、CPU81は、実装ヘッド40の複数の吸着ノズル44のいずれかに未実装の部品Pが残っていれば、全ての部品Pが実装されるまで、次に実装すべき吸着ノズル44を基板Sの実装位置へ実装する実装動作を繰り返す。
【0029】
次に、同時吸着される部品Pを供給するフィーダ20の動作について説明する。
図10は、フィーダ制御装置28のマイコン28a(CPU)により実行される部品供給処理の一例を示すフローチャートである。
【0030】
部品供給処理では、マイコン28aは、まず、上述した同時吸着処理のS120において実装制御装置80により一括送信される全ての組の吸着ノズル44のY軸方向位置ずれ量δnを一括受信するのを待つ(S200)。マイコン28aは、全ての組のY軸方向位置ずれ量δnを一括受信したと判定すると、各組ごとのY軸方向位置ずれ量δnを補正値として用いて各組ごとの目標テープ送り量αnを設定する(S210)。各組ごとの目標テープ送り量αnは、部品Pを部品供給位置に供給するための各組共通の基準送り量βを、各組ごとのY軸方向位置ずれ量δnを補正値として用いて補正することにより設定される。具体的には、各組ごとの目標テープ送り量αnの設定は、基準送り量βに、対応する組のY軸方向位置ずれ量δn)を加算することにより行なわれる。
【0031】
次に、マイコン28aは、変数nを値1に初期化し(S220)、上述した同時吸着処理のS150において実装制御装置80から送信される部品供給指令を受信するのを待つ(S230)。マイコン28aは、部品供給指令を受信したと判定すると、第n組目の目標テープ送り量αnでテープ22が送り出されるよう送りモータ24aを駆動制御する(S240)。これにより、テープ22に収容された部品Pは、部品供給位置へ向かって送り出されることになる。目標テープ送り量αnは、Y軸方向位置ずれ量δnが値0のときには、基準送り量βとなるから、目標テープ送り量αnでテープ22が送り出されることで、テープ22に収容された部品Pは、丁度、部品吸着位置に位置する。一方、Y軸方向位置ずれ量δnが正の所定値のとき(吸着ノズル44の先端が部品送り方向における後方に位置ずれしているとき)には、目標テープ送り量αnでテープ22が送り出されることで、テープ22に収容された部品Pは、部品供給位置よりも上記所定値だけ後方(奥)に位置する。また、Y軸方向位置ずれ量δnが負の所定値のとき(吸着ノズル44の先端が部品送り方向における前方に位置ずれしているとき)には、目標テープ送り量αnでテープ22が送り出されることで、テープ22に収容された部品Pは、部品供給位置よりも上記所定値だけ前方(手前)に位置する。これにより、部品送り方向(Y軸方向)において吸着ノズル44に位置ずれが生じていても、当該吸着ノズル44を用いて部品Pを正しい位置で吸着させることができる。
【0032】
そして、マイコン28aは、全ての組で部品Pの供給が終了したか否かを判定する(S250)。マイコン28aは、全ての組で部品Pの供給が終了していないと判定すると、変数nを値1だけインクリメントして(S260)、S230に戻り、次に部品供給指令を受信したときに、次の第n組目の目標テープ送り量αnで送りモータ24aを駆動制御することにより、次の第n組目の部品Pを供給する動作を繰り返す。そして、マイコン28aは、S250において、全ての組で部品Pの供給が終了したと判定すると、これで部品供給処理を終了する。
【0033】
ここで、実施形態の主要な要素と請求の範囲に記載した本開示の主要な要素との対応関係について説明する。即ち、実施形態の吸着ノズル44が本開示の吸着部材に相当し、実装ヘッド40がヘッドに相当し、ヘッド移動装置30が移動装置に相当し、フィーダ20がフィーダに相当し、実装制御装置80が制御装置に相当する。また、基板搬送装置12が基板搬送装置に相当する。また、ヘッド本体41が回転体に相当し、実装ヘッド40がロータリヘッドに相当する。
【0034】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、実装制御装置80は、基板Sの搬送中(搬入中)に、全ての組のY軸方向位置ずれ量δnをフィーダ20(フィーダ制御装置28)が一括受信するように当該フィーダ20に送信するものとした。しかし、実装制御装置80は、実装動作中に、全ての組のY軸方向位置ずれ量δnをフィーダ20(フィーダ制御装置28)が一括受信するように当該フィーダ20に送信してもよい。すなわち、実装制御装置80は、同時吸着動作中以外のタイミングでフィーダ20が一括受信するようにフィーダ20に送信するものであればよい。
【0036】
また、上述した実施形態では、実装ヘッド40は、ヘッド本体41に対して複数のノズルホルダ42が周方向に配列されたロータリ型のヘッドとして構成されるものとした。しかし、
図11に示すように、実装ヘッド40は、フィーダ20の配列方向(X軸方向)に沿ってフィーダ20から供給される複数の部品Pと同ピッチで配列され且つそれぞれ独立して昇降可能な複数の吸着ノズル144を複数組有する並列型の実装ヘッド140を備えるものとしてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、実装ヘッド40は、所定位置にある2つのノズルホルダ42(吸着ノズル44)をそれぞれ個別に昇降させる2つのZ軸駆動装置70を備えるものとした。しかし、実装ヘッド40は、Z軸駆動装置を3つ以上備えてもよく、3つ以上のZ軸駆動装置により3つ以上の吸着ノズルを同時的に下降させ、各吸着ノズルに3つ以上の部品Pを同時的に吸着するものとしてもよい。
【0038】
以上説明したように、本開示の部品実装機は、部品を吸着して基板に実装する部品実装機であって、昇降可能に配列される複数の吸着部材を少なくとも一組有するヘッドと、前記複数の吸着部材の補正値を組数分受信し、該受信した組数分の補正値に基づいて組数分の目標送り量を設定すると共に該設定した各目標送り量で組数分の部品を所定の方向へ順次送り出す少なくとも一つのフィーダと、各組ごとに前記複数の吸着部材の前記所定の方向における位置ずれ量を取得し、前記組数分の位置ずれ量に基づく組数分の前記補正値を前記フィーダが所定のタイミングで一括して受信するように該フィーダに送信する制御装置と、を備えることを要旨とする。
【0039】
この本開示の部品実装機によれば、複数の吸着部材に部品の送り方向に位置ずれが生じている場合でも吸着を適切に実行することができる。ここで、前記ヘッドは、前記複数の吸着部材を複数組有し、前記フィーダとして、複数のフィーダを有するものとしてもよい。
【0040】
こうした本開示の部品実装機において、基板の搬送する基板搬送装置を備え、前記所定のタイミングは、前記基板の搬送中のタイミングであるものとしてもよい。あるいは、前記所定のタイミングは、前記吸着部材に吸着させた部品を前記基板に実装させる実装動作中のタイミングであるものとしてもよい。フィーダは、部品を供給すべきタイミングとは異なるタイミングで組数分の補正値を一括受信して目標送り量を設定することで、通信遅れ等により部品の供給に遅延が生じるのを抑制することができる。
【0041】
また、本開示の部品実装機において、前記ヘッドは、回転体を有すると共に、該回転体の回転軸を中心とした同一円周上において前記複数の吸着部材を複数組有するロータリヘッドであるものとしてもよい。
【0042】
さらに、本開示の部品実装機において、前記ヘッドを移動させる移動装置を備え、前記複数の吸着部材は、前記所定の方向に直交する直交方向に、所定の間隔をおいて昇降可能に配列され、前記フィーダは、前記直交方向に、前記所定の間隔と略同一の間隔をおいて配列される複数のフィーダを含み、前記制御装置は、前記複数のフィーダから送り出される部品が前記複数の吸着部材に略同時に吸着されるよう前記移動装置と前記ヘッドとを制御する同時吸着動作を実行するものとしてもよい。こうすれば、複数のフィーダから供給される部品をそれぞれ略同時に吸着可能な複数の吸着部材を有する実装ヘッドを備えるものにおいて、複数の吸着部材に部品の送り方向(所定の方向)に位置ずれが生じている場合でも同時吸着を適切に実行することができる。この場合、前記制御装置は、前記所定のタイミングとして、前記同時吸着動作の実行中以外のタイミングで前記補正値を前記複数のフィーダに一括して送信するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示は、部品実装機の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 部品実装機、2 基台、3 筐体、4 フィーダ台、12 基板搬送装置、14 パーツカメラ、16 マークカメラ、20 フィーダ、21 リール、22 テープ、22a キャビティ、22b スプロケット孔、24 テープ送り機構、24a 送りモータ、24b 駆動ギヤ、24c 伝達ギヤ、24d スプロケット、25 送り量センサ、26 コネクタ、28 フィーダ制御装置、28a マイコン、28b モータドライバ、30 ヘッド移動装置、31 X軸ガイドレール、32 X軸スライダ、33 Y軸ガイドレール、34 Y軸スライダ、36 X軸モータ、37 X軸位置センサ、38 Y軸モータ、39 Y軸位置センサ、40,140 実装ヘッド、41 ヘッド本体、42 ノズルホルダ、44,44A~44H,144 吸着ノズル、46 圧力調整弁、50 R軸駆動装置、51 R軸モータ、52 R軸、53 伝達ギヤ、55 R軸位置センサ、60 Q軸駆動装置、61 Q軸モータ、62 円筒ギヤ、62a 外歯、64 Q軸ギヤ、65 Q軸位置センサ、70 Z軸駆動装置、71 Z軸モータ、72 Z軸スライダ、73 Z軸位置センサ、80 実装制御装置、81 CPU、82 ROM、83 HDD、84 RAM、85 入出力インタフェース、86 バス、P 部品、S 基板。