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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】血管採取のための装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3205 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
A61B17/3205
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022508534
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 US2020046188
(87)【国際公開番号】W WO2021030591
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】62/886,374
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/916,571
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/981,813
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506243057
【氏名又は名称】エルエスアイ ソルーションズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サウアー, ジュード, エス.
(72)【発明者】
【氏名】デクラーク, マシュー, デービッド
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102009011205(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0109186(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0213347(US,A1)
【文献】特表2014-511734(JP,A)
【文献】特表2018-512933(JP,A)
【文献】特開2018-171349(JP,A)
【文献】特表平09-509585(JP,A)
【文献】特表2012-516716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32-17/3205
A61B 17/28-17/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの第1部分に結合されたアクチュエータと、
長手方向軸に沿って基端から先端まで延びるシャフトであって、その第1部分が前記ハウジングの第2部分に結合されたシャフトと、
先端チップアセンブリと、を備え、
前記先端チップアセンブリが、前記シャフトの先端に固定的に結合された先端チップハウジングと、前記先端チップハウジングに回動可能に結合された第1鈍的ディセクタと、前記先端チップハウジングに結合された第2鈍的ディセクタと、を備え、
前記第1鈍的ディセクタが前記アクチュエータに動作可能に結合され、前記アクチュエータが第1位置にある時、前記第1鈍的ディセクタが前記先端チップハウジングに対して第1回動位置にあり、前記アクチュエータが第2位置にある時、前記第1鈍的ディセクタが前記先端チップハウジングに対して第2回動位置にあり、
前記第1鈍的ディセクタが、前記シャフトの先端で、前記長手方向軸と一直線上にあるか又は平行なチップ軸の周りを回動するように構成され、
前記アクチュエータが前記第1位置から前記第2位置まで変位する時、前記第1鈍的ディセクタは、前記シャフトの先端から前記シャフトの基端に向かって前記チップ軸に沿って移動するように構成されている、低侵襲手術装置。
【請求項2】
前記シャフトの第1部分が前記長手方向軸の周りを回動するように、前記シャフトが前記
ハウジングの第2部分に回動可能に結合された、請求項1に記載の低侵襲手術装置。
【請求項3】
前記長手方向軸が前記シャフトの先端から基端まで直線をなす、請求項1に記載の低侵襲手術装置。
【請求項4】
前記第2鈍的ディセクタが前記先端チップハウジングに固定されている、請求項1に記載の低侵襲手術装置。
【請求項5】
前記アクチュエータがレバーを備え、このレバーが、前記第1位置から前記第2位置まで回わるように前記ハウジングの前記第1部分に回動可能に結合された、請求項1に記載の低侵襲手術装置。
【請求項6】
前記シャフトの前記第1部分が、前記シャフトの基端又はその近傍にある、請求項1に記載の低侵襲手術装置。
【請求項7】
前記第1鈍的ディセクタが駆動ワイヤにより前記アクチュエータに動作可能に結合され、前記駆動ワイヤの少なくとも一部が前記シャフトの内部を通る、請求項1に記載の低侵襲手術装置。
【請求項8】
前記駆動ワイヤは基端から先端まで長く延び、前記駆動ワイヤの基端が前記アクチュエータの一部に結合され、前記駆動ワイヤの先端が第1カム部に結合され、前記第1カム部がガイドチップ部ボデイに形成された第1カム経路に受容され、前記ガイドチップ部ボデイ
が前記第1鈍的ディセクタに固定的に結合されており、
前記アクチュエータが前記第1位置から前記第2位置まで変位する時、前記第1カム部が前記第1カム経路内で前記シャフトの長手方向軸に沿う方向に変位して、前記第1鈍的デ
ィセクタに固定的に結合された前記ガイドチップ部ボデイを回動させる、請求項に記載の低侵襲手術装置。
【請求項9】
前記シャフトの第2部分に形成された第1の複数のスリットをさらに備え、この第1の複
数のスリットの全て又は一部が協働して、前記シャフトの前記第2部分に沿って延びる前記長手方向軸の一部分が直線でなくなるよう、前記シャフトの前記第2部分が曲がることを許容する、請求項1に記載の低侵襲手術装置。
【請求項10】
前記シャフトの第3部分に形成された第2の複数のスリットをさらに備え、この第2の複数のスリットの全て又は一部が協働して、前記シャフトの前記第3部分に沿って延びる前記長手方向軸の一部分が直線でなくなるよう、前記シャフトの前記第3部分が曲がることを許容する、請求項に記載の低侵襲手術装置。
【請求項11】
前記第1の複数のスリットの各々が第1端から第2端まで前記シャフトの前記長手方向軸と垂直な方向に延び、前記第2の複数のスリットの各々が第1端から第2端まで前記シャフトの前記長手方向軸と垂直な方向に延びる、請求項10に記載の低侵襲手術装置。
【請求項12】
前記第1の複数のスリットの各々の前記第1端が前記長手方向軸と平行な第1参照線に沿
ってアライメントされ、前記第1の複数のスリットの各々の前記第2端が前記長手方向軸
と平行な第2参照線に沿ってアライメントされ、
前記第2の複数のスリットの各々の前記第1端が前記長手方向軸と平行な第3参照線に沿ってアライメントされ、前記第2の複数のスリットの各々の前記第2端が前記長手方向軸と平行な第4参照線に沿ってアライメントされ、
前記第1参照線は前記第3参照線とアライメントされず、前記第2参照線は前記第4参照線とアライメントされない、請求項11に記載の低侵襲手術装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低侵襲手術装置に関し、より具体的には血管採取の外科処置で用いられる手術装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲の外科的アプローチは、冠状動脈手術に関連してますます関心を集めている。内胸動脈(ITA)の移植などの冠状動脈血管再生術は、冠状動脈バイパス移植(CABG)手術において、優れた長期開存性と結果の改善を示している。
【0003】
ITA採取への従来のアプローチには、胸骨正中切開または複数のトラカールが含まれていたが、低侵襲アプローチが望ましい。左または右の内胸動脈(ITA)、または左または右の内乳腺動脈(内胸動脈;IMA)のいずれかを使用した血管再建術に関連する低侵襲手術では、剣状突起下アクセスを経てITAsへアクセスできる。剣状突起下領域の切開を介して内胸動脈にアクセスすることによって、広い手術空間が得られる。
【0004】
左内胸動脈(LITA)または右内胸動脈(RITA)のいずれかを採取すると、それぞれ左前下行枝(LAD)の冠状動脈と右冠状動脈(RCA)への吻合を、心肺バイパス(CPB)なしで実行できる。このアプローチの重要な利点は、完全に採取されたITAグラフトを、LAD動脈の通常の部位やRCA動脈に完全に吻合できることである。剣状突起下へのアクセスを伴う低侵襲のITA採取処置も、優れた美容効果をもたらし、痛みが少なく、動脈移植は鼓動している心臓で実行することができる。低侵襲のITA採取外科技術の最近のアプローチは、ITAバイパスの有効長の増加、手術時間の短縮、および患者の回復の改善をもたらすことが示されている。
【0005】
ITA採取とCABGのためのより侵襲性の低い外科的アプローチが有望であるが、鼓動する心臓への完全内視鏡下の冠状動脈バイパス移植において、冠状動脈吻合の視覚化、ガス吹入の維持、および先端での縫合は技術的に要求が厳しい。低侵襲の外科用ツールおよび手順は、内視鏡、縫合ツールなどの追加の外科用ツールを収容するためのより大きな作業スペースを作成することができる。しかし、作業スペースを増やす場合に、理想的には胸壁を傷つけずに維持し、CPBを回避する必要がある。同様に、低侵襲の外科的アプローチは、心臓修復の信頼性を損なうべきではない。したがって、低侵襲の採取および血行再建術の外科的処置中に、ITAの切除または採取を支援するための適切な外科用ツールが必要である。
【発明の概要】
【0006】
血管採取用の装置が開示されている。この血管採取用の装置は、先端側ハウジングと、前記先端側ハウジングに結合されたディセクタと、前記ディセクタに結合された駆動要素と、前記駆動要素に結合されたアクチュエータと、を備えている。
【0007】
血管採取のための別の装置が開示されている。この血管採取用の装置は、回転可能なディセクタを画成する先端側ハウジングと、前記先端側ハウジングに結合されたシャフトであって、第1平面内で可動の第1関節ジョイントと、前記第1平面に実質的に垂直である第2平面内で可動の第2関節ジョイントを含むシャフトと、前記回転可能なディセクタに結合されたバレルチェーン駆動要素と、前記駆動要素に結合されたアクチュエータと、を備えている。
【0008】
血管採取のための別の装置が開示されている。この血管採取用の装置は、シャフトと、前記シャフトに結合されたディセクタと、を備えている。
【0009】
血管採取のための別の装置が開示されている。この血管採取用の装置は、シャフトと、前記シャフトの先端に結合され弧状フィンガーを画成する先端チップと、前記先端チップにスライド可能に係合された部材と、を備えた低侵襲手術装置。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態をなす低侵襲手術装置を左上の正面側から見た斜視図である。
【0011】
図2A図1の低侵襲手術装置の組み立て工程を示す分解図である。
図2B図2Aの次の工程を示す分解図である。
図2C図2Bの次の工程を示す分解図である。
【0012】
図3A図1の低侵襲手術装置の側断面図であり、同装置の動作原理を示す。
図3B図1の低侵襲手術装置の平断面図であり、同装置の動作原理を示す。
【0013】
図3C図1の低侵襲手術装置の側断面図であり、同装置の動作原理を示す。
図3D図1の低侵襲手術装置の平断面図であり、同装置の動作原理を示す。
【0014】
図3E図1の低侵襲手術装置の側断面図であり、同装置の動作原理を示す。
図3F図1の低侵襲手術装置の平断面図であり、同装置の動作原理を示す。
【0015】
図4A】低侵襲手術装置用の駆動機構の代替実施形態を示す要部平面図である。
図4B】低侵襲手術装置用の駆動機構の別の代替実施形態を示す要部平面図である。
図4C】低侵襲手術装置用の駆動機構の別の代替実施形態を示す要部平面図である。
【0016】
図5A】低侵襲手術装置用のディセクタの代替実施形態を示す側面図である。
図5B】低侵襲手術装置用のディセクタの別の代替実施形態を示す側面図である。
図5C】低侵襲手術装置用のディセクタの別の代替実施形態を示す側面図である。
図5D】低侵襲手術装置用のディセクタの別の代替実施形態を示す側面図である。
図5E】低侵襲手術装置用のディセクタの別の代替実施形態を示す側面図である。
図5F】低侵襲手術装置用のディセクタの別の代替実施形態を示す側面図である。
図5G】低侵襲手術装置用のディセクタの別の代替実施形態を示す側面図である。
図5H】低侵襲手術装置用のディセクタの別の代替実施形態を示す側面図である。
【0017】
図6】別の実施形態をなす低侵襲手術装置を左上の正面側から見た斜視図である。
【0018】
図7】別の実施形態をなす低侵襲手術装置を左上の正面側から見た斜視図である。
【0019】
図8】別の実施形態をなす低侵襲手術装置を左上の正面側から見た斜視図である。
【0020】
図9】別の実施形態をなす低侵襲手術装置を左上の正面側から見た斜視図である。
【0021】
図10A図9の低侵襲手術装置の先端の側面図であり、閉じ位置を示す。
図10A図9の低侵襲手術装置の先端の側面図であり、開き位置を示す。
【0022】
図11】別の実施形態をなす低侵襲手術装置を左上の正面側から見た斜視図である。
【0023】
図12図11の低侵襲手術装置の先端の分解図である。
【0024】
図13A図11の低侵襲手術装置の組み立てられた先端を左上の正面側から見た斜視図であり、開き位置を示す。
図13B図11の低侵襲手術装置の組み立てられた先端を左上の正面側から見た斜視図であり、閉じ位置を示す。
【0025】
図14A図11の低侵襲手術装置を開き位置で示す側断面図である。
図14B図11の低侵襲手術装置を開き位置で示す正面図である。
【0026】
図15A図11の低侵襲手術装置を閉じ位置で示す側断面図である。
図15B図11の低侵襲手術装置を閉じ位置で示す正面図である。
【0027】
図16図11の低侵襲手術装置のシャフトの一部の拡大側面図である。
【0028】
明確にする目的で、そして適切であると思われる場合、対応するフィーチャを示すために参照番号が図で繰り返されていること、フィーチャをより良く示すために、図面の様々な要素が必ずしも縮尺どおりに描かれていないことを、理解されたい。
【発明の詳細な説明】
【0029】
図1は、一実施形態をなす低侵襲の血管採取装置(vessel harvesting device)10を左上の正面側から見た斜視図である。低侵襲血管採取装置10は、ハウジング12を有し、このハウジング12は下方に延びてハンドル14を形成している。この装置はまた、ハンドル14に回動可能に結合された作動レバー16を有する。低侵襲血管採取装置10はまた、ハウジング12に結合されたシャフト18を有する。低侵襲血管採取装置10は、シャフト18の反対側の端部に先端チップハウジング20を有している。この先端チップハウジング20は、血管再建のための内胸動脈(IMA)の採取を含む低侵襲外科手術で使用される鈍的ディセクタ(blunt dissector)22を画成する。鈍的ディセクタ22は作動レバー16に結合されており、作動レバー16の動きで鈍的ディセクタ22を回転し、これにより、内胸動脈の採取など、低侵襲の心臓血管処置での使用中に鈍的ディセクタ22を調節可能に位置決めする。このメカニズムについてさらに詳しく説明する。鈍的ディセクタ22は、滑らかで非傷性の(組織を傷つけない)先端を有する弧状または湾曲した付属枝であり、対象の組織を取り巻く解剖学的フィーチャおよび構造への損傷を防ぎながら、組織の穏やかな操作および分離を可能にする。鈍的ディセクション(blunt dissection)とは、一般的に、指または鈍い手術器具を用いて組織を注意深く分離する外科手術の要素を指す。鈍的ディセクタチップは、ITA /IMAの取り出し又は採取に関連する処置で役立つ。鈍的ディセクタ22の形状と操作性と非傷性は、低侵襲の外科手術の際に、実用性の改善、周囲の組織を傷つけるリスクの低減、および肯定的な結果の達成に寄与する特徴である。一方、図1に示される鈍的ディセクタ22は、非傷性の弓状(弧状)の付属肢、または穏やかなフィンガーであるが、他の実施形態では、鈍くてもよいし、部分的に鈍くてもよいし、または部分的なエッジを有してもよい。さらに他の実施形態では、部分的に鋭利にされるか意図する外科手術のために必要に応じて形成される、部分またはエッジを有してもよい。この実施形態では作動レバーが示されているが、他の実施形態は、レバー、スライディングロッド、ノブ、プーリー、ギア、ソレノイド、モーター等のアクチュエータや、当業者に知られている他のアクチュエータを有してもよい。
【0030】
図2A図2Cは、図1の低侵襲手術装置の一連の組み立て工程を示す分解図である。図2Aは、低侵襲血管採取装置10の先端チップハウジング20の組み立て工程を示している。鈍的ディセクタ22は上側ディセクタ28と下側ディセクタ30を画成するとともに内面32を有している。さらに鈍的ディセクタ22は、ディセクタベース24とハブ26を画成する。鈍的ディセクタ22のハブ26の内側に、ギアアセンブリ34が配置される。このギアアセンブリ34は、上側ギア38と下側ギア40とキャプスタン(capstan)42を有するギアシャフト36を画成する。上側ギア38は、いくつかの歯44と、歯44の間に配されたくぼみ45とを有する。同様に、下側ギア40も、いくつかの歯46と、歯46の間に配された窪み47とを有する。ピン84は、鈍的ディセクタ22の穴25と、ギアアセンブリ34の対応する穴37に挿入される。この実施形態では、ピンを用いてこれら構成要素を組み立てているが、接着や溶接の組み立て手段を用いてもよいし、別の実施形態ではディセクタとギアアセンブリを画成する単一の構成要素を用いてもよい。次に、鈍的ディセクタ22とギアアセンブリ34は、上側先端チップハウジング48の先端48Dの穴54に配置される。上側先端チップハウジング48はまた、アライメントガイド50と側壁56と基端48Pの管状部58を画成する。管状部58はさらに内部チャネル52を画成する。
【0031】
図2Bは、図1の低侵襲血管採取装置10の次の組み立て工程を示している。駆動要素、この実施形態におけるバレルチェーン60は、壁66と、壁に沿って配置された複数のタブ64と、タブ間に介在されたバレル62とを有している。バレルチェーン60は、上側先端チップハウジング48の内側に配置され、壁66が上側先端チップハウジング48における側壁56の反対側の側壁に乗り、バレル62が、下側ギア40の歯46間のくぼみ47と上側ギア38の歯44の間のくぼみ45(この図では見えない)に捕捉され、ギアアセンブリを回り、上側先端チップハウジング48の側壁56に対峙する。タブ64は、バレルチェーン60に剛性を提供するだけでなく、ギアアセンブリ34のキャプスタン42部分(ここでは見えない)において、バレルチェーン60のアライメントとトラッキングを維持するようなサイズおよび構成であることに留意されたい。駆動カプラー68は、駆動要素カプラー70と、駆動ロッドスロット74の端部の駆動ロッドカプラー72を有している。駆動カプラー68は、駆動要素カプラー70をバレルチェーン60の終端バレル62に被せて嵌合することにより、バレルチェーン60の端部に結合される。駆動ロッド76はその先端76Dにボールエンド78を有している。駆動ロッド76は、ボールエンド78を駆動ロッドカプラー72内に配置し、駆動ロッド76を駆動ロッドスロット74に通すことによって、駆動ロッドカプラー72に捕捉される。駆動ロッド76と駆動カプラー68は、上側先端チップハウジング48の管状部58の内側のチャネル52内で自由に移動可能である。下側先端チップハウジング80は、基端80Pに管状部82を有する。下側先端チップハウジング80は上側先端チップハウジング48に固定され、上側先端チップハウジング48の組み立てが完了する。図2Cは、低侵襲血管採取装置10における別の組み立て工程を示している。駆動ロッド76が突出している先端チップハウジングの管86は、低侵襲血管採取装置10のシャフト18の先端18Dのシャフト開口90に挿入される。この先端チップハウジングの管86は、溶接、ろう付け、または当業者に知られている他の方法によってシャフト18に固定される。ハンドル、レバーおよび他の構成要素を含む装置のさらなる組み立て工程は、低侵襲血管採取装置の当業者によく知られている。実施形態にしたがってバレルチェーン駆動機構を記載したが、他の駆動要素または駆動機構もまた、低侵襲血管採取装置の他の実施形態で使用され得ることに留意されたい。図示の実施形態は、駆動要素として一体の又は単一部品のバレルチェーンを有する。駆動要素は、チェーンまたはベルトとカプラーと駆動ロッド、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。本明細書に示されるキャプスタンとギアを含むギアアセンブリへの代替の駆動アタッチメントとして、例えば、スロット付きシャフトまたはスプール、円筒形ベアリングまたはブッシングを用いてもよく、当業者に知られている他の回転可能なシャフトを用いてもよい。鈍的ディセクタに駆動要素を取り付け、鈍的ディセクタを回転させる目的で、鈍的ディセクタから突出しまたは鈍的ディセクタに取り付けるのに適した構造が、適切な駆動アタッチメントである。バレルチェーンおよび駆動カプラーの代替の駆動要素は、本明細書に記載の低侵襲血管採取装置の他の実施形態の駆動要素として使用することができる。代替の実施形態の駆動要素として、鈍的ディセクタに結合された駆動アタッチメントを押したり引いたりすることができる、当技術分野で知られている剛性ベルトやロッドやワイヤや連結チェーンや他のリンケージを、使用することができる。
【0032】
図3A図3Bはそれぞれ、図1の低侵襲血管採取装置の側断面図と平断面図であり、低侵襲血管採取装置の動作原理を示している。図3Aは、作動レバー16および鈍的ディセクタ22が中立位置にある侵襲性血管採取装置10を示している。作動レバー16は、ハンドル14から離れた中間位置にあり、鈍的ディセクタ22は、それが低侵襲血管採取装置10のシャフト18とアライメントした位置に向けられている。作動レバー16の内部構造を、図3Aの断面図において見ることができる。作動レバー16は、ピボット92を中心に回動可能に結合され、数個のレバーギア歯96を有するレバーギア94を画成する。駆動ギア100は、ピボット点88を中心に旋回する。駆動ギア100は、数個の歯101および駆動ギアカプラー102を画成する。駆動ギア100の歯101は、レバーギア94の歯96と噛み合う。駆動ロッド76は、その基端76Pに駆動ロッドカップリングボール98を有しており、これは駆動ギアカプラー102内に保持されている。
【0033】
図3Bは、上側先端チップハウジング48の平断面図であり、図3Aに示されるレバー位置に対応する上側先端チップハウジング48内の構成要素の位置、特に鈍的ディセクタ22の位置を示している。図3Aに示されるこの位置では、鈍的ディセクタ22は、鈍的ディセクタ22の弧状部分が、低侵襲血管採取装置10のシャフト18とアライメントするように配向され、図3Bに示される角度インジケータを参照にすると約0度の角度にあることに留意すべきである。
【0034】
図3C図3Dはそれぞれ、図1の低侵襲血管採取装置の側断面図と平断面図であり、低侵襲血管採取装置の動作原理を示している。図3Cは、作動レバー16と鈍的ディセクタ22が回転した位置にある侵襲性血管採取装置10を示している。作動レバー16は、ハンドル14に向かって方向104に引き絞られた位置にあり、鈍的ディセクタ22は、低侵襲血管採取装置10のシャフト18を基準にして時計回りに回転した位置に向けられている。レバー16がハンドル14に向かって引き絞られると、レバーギア94がレバー駆動ギア100と係合して、レバー駆動ギア100を方向106に回転させる。レバー駆動ギア100は駆動ロッド76に結合されているので、駆動ロッド76は方向108に引かれる。図3Dは、上側先端チップハウジング48の平断面図であり、図3Cに示されるレバー位置に対応する上側先端チップハウジング48内の構成要素の位置、特に鈍的ディセクタ22の位置を示している。駆動ロッド76が方向108に引かれると、駆動ロッド76のボールエンド78が駆動カプラー68に結合されているので、駆動カプラー68も方向108に引かれる。バレルチェーン60もまた、駆動カプラー68の駆動要素カプラー70に結合されているので、方向108に引かれる。そのため、鈍的ディセクタ22は、バレルチェーン60が下側ギア40の歯46と係合しているので、方向110に回転し、図3Dに示される角度インジケータを基準にして約135度の角度位置にある。
【0035】
図3E図3Fはそれぞれ、図1の低侵襲血管採取装置の側断面図と平断面図であり、低侵襲血管採取装置の動作原理を示している。図3Eは、作動レバー16と鈍的ディセクタ22が別の回転位置にある侵襲性血管採取デバイス10を示している。作動レバー16は、ハンドル14から離れる方向112に動かされた開き位置にあり、鈍的ディセクタ22は、低侵襲血管採取装置10のシャフト18を基準にして反時計回りに回転した位置に向けられている。レバー16がハンドル14から離れる方向に動かされると、レバーギア94はレバー駆動ギア100と係合して、レバー駆動ギア100を方向114に回わす。レバー駆動ギア100は駆動ロッド76に結合されているので、駆動ロッド76は方向116に押される。図3Fは、上側先端チップハウジング48の平断面図であり、図3Eに示されるレバー位置に対応する上側先端チップハウジング48内の構成要素の位置、特に鈍的ディセクタ22の位置を示している。駆動ロッド76が方向116に押されると、駆動ロッド76のボールエンド78が駆動カプラー68に結合されるので、駆動カプラー68も方向116に押される。バレルチェーン60もまた、駆動カプラー68の駆動要素カプラー70に結合されているので、方向116に押される。前述のように、バレルチェーン60のタブ64は、バレルチェーン60に追加の支持および剛性を提供するので、チェーンを押すことを可能にする。そのため、鈍的ディセクタ22は、バレルチェーン60が下側ギア40の歯46と係合するので、方向118に回転され、図3Fに示された角度インジケータを基準にして約-135度の角度位置にある。本明細書に記載の実施形態では、鈍的ディセクタは先端チップハウジングに対して回転可能で、図3B図3D図3Fに示された角度インジケータを基準にして約270度の回転範囲で回転可能である。鈍的ディセクタ22は、先端チップハウジングと実質的に平行な平面で回転可能である。本明細書に記載されるような回転可能なディセクタを含む他の実施形態では、約210度、約270度、または約360度の範囲にわたって回転するように構成することができる。鈍的ディセクタ22の回転範囲は、血管採取を含む外科手術の際の鈍的ディセクタの関節運動および位置の正確な制御を可能にする。
【0036】
図4A図4Cは、低侵襲血管採取装置の駆動機構の代替実施形態を示す要部の平断面図である。図4Aは、ベルト駆動要素120の要部の平断面図である。このベルト駆動要素120は、図1図3Fに示す血管採取装置の実施形態のキャプスタンと似た駆動シャフト122に結合されている。この駆動シャフト122はキャプスタンスロット124を有しており、このキャプスタンスロット124内にベルト駆動要素120が固定されている。
【0037】
図4Bは、セグメント化されたチェーンドライブ126の要部の平断面図である。このチェーンドアライブ126は、図1図3Fの血管採取装置の実施形態のキャプスタンと同様のギアアセンブリ駆動シャフト123の周りに結合されている。セグメント化されたチェーンドライブ126は、複数のリンク128からなる。各リンク128はクラスプを画成する。クラスプは、凹部132、支持タブ134、およびペグ136を有している。各リンク128とそれに続くリンク128は、一方のリンク128のペグ136を他方のリンク128の凹部132に結合することにより、接続されている。
【0038】
図4Cは、バレルチェーン138の別の実施形態を示す要部平断面図である。このバレルチェーン138は、チェーン壁142に配置された複数のバレル140を有する単一部品からなる。バレル140は間隔をおいて配置され、これにより、図1図3Fに示す血管採取装置の実施形態のキャプスタンと同様のギアアセンブリ駆動シャフトと係合するようになっている。
【0039】
図5A~5Hは、低侵襲血管採取装置のためのディセクタの代替実施形態の側面図である。図5Aに示すディセクタは、ディセクタベース146と上側ディセクタ148と下側ディセクタ150を有している。ディセクタ144はまた、内面152を画成する。このディセクタ144は、片側に開口がある弧状のC字形のプロファイルを持っている。図5Bに示すディセクタ154は、ディセクタベース156と上側ディセクタ158と下側ディセクタ160を有している。ディセクタ154はまた、内面162を画成する。このディセクタ154は、わずかに下向きの角度を向く開口を備えて、弧状のC字形のプロファイルを有する。図5Cに示すディセクタ164は、ディセクタベース166と上側ディセクタ168と下側ディセクタ170を有している。ディセクタ164はまた、内面172を画成する。このディセクタ164は、開口が側方を向く角張った四角形のようなプロファイルを有する。図5Dに示すディセクタ174は、ディセクタベース176と上側ディセクタ178と下側ディセクタ180を有する。ディセクタ174はまた、内面182を画成する。このディセクタ174は、角張ったL字型のプロファイルを有する。図5Eに示すディセクタ184は、ディセクタベース186と上側ディセクタ188と下側ディセクタ190を有する。ディセクタ184はまた、内面192を画成する。このディセクタ184は、開口が側方を向く弧状のC字形のプロファイルを有する。図5Fに示すディセクタ196は、ディセクタベース198と上側ディセクタ200と下側ディセクタ202を有する。ディセクタ196はまた、内面204を画成する。このディセクタ196は、開口が側方を向く弧状のC字形のプロファイルを有する。図5Gに示すディセクタ208は、ディセクタベース210と上側ディセクタ212と下側ディセクタ214を有する。ディセクタ208はまた、内面216を画成する。このディセクタ208は、下向きの開口を備えた弧状のC字形のプロファイルを有する。図5Hに示すディセクタ226は、ディセクタベース222と上側ディセクタ224と下側ディセクタ220を有する。ディセクタ224はまた、内面218を画成する。このディセクタ224は、弧状の、C字の半分のプロファイルを有する。ディセクタの代替の実施形態は、L字形、コルク栓抜きスクリューなどの形状を有してもよいし、本明細書に示す実施形態よりも鋭角を有してもよい。本明細書に記載のディセクタのいくつかの代替実施形態の内面は、滑らかでもよいし、テクスチャード加工されていてもよいし、または適合した表面でもよい。ディセクタの代替の実施形態は、プラスチック、金属、セラミック、複合材料、またはそれらの組み合わせなどの材料により構成することができる。
【0040】
図6は、別の実施形態をなす低侵襲血管採取装置228を左上の正面側から見た斜視図である。低侵襲血管採取装置228はハウジング230を有し、このハウジング230は下方に延びてハンドル232を形成している。装置はまた、前述の実施形態と同様の方法で動作する作動レバー234を有する。低侵襲血管採取装置228はまた、シャフト242を有する。このシャフト242は、回転アダプタによって、ハウジング230に結合されている。回転アダプタは、この図では完全には見えないが当業者には知られている。この図では、回転アダプタのインジケータフィン236を見ることができる。低侵襲血管採取装置228は、第2関節ジョイント248によって先端側シャフト部244に回転可能に結合された先端チップハウジング254を有する。先端チップハウジングは、前述したものと同様の鈍的ディセクタ252を有する。先端側シャフト部244は、第1関節ジョイント246によってシャフト242に回動可能に結合されている。第1関節ジョイント246は第1関節ノブ238に作用的に結合されており、第1関節ノブ238の回転により、第1関節ジョイント246が第1の平面250において先端側シャフト部244を関節運動させるようになっている。第2関節ジョイント248は第2関節ノブ240に作用的に結合されており、第2関節ノブ240の回転により、第2関節ジョイントが第2平面256内で先端チップハウジング254を関節運動させるようになっている。この実施例では、第1平面250は、第2平面256に対して実質的に垂直である。2つの関節ジョイントを有する他の実施形態では、2つの関節平面は実質的に平行でなくてもよい。他の実施形態では、関節ジョイントはより多くてもよいし、より少なくてもよい(無くてもよい)。他の実施形態では、関節ジョイントが複数の平面で動くようにしてもよい。回転アダプタと低侵襲手術装置の実施形態は、当業者に知られている。
【0041】
図7は、低侵襲手術装置の別の実施形態を左上の正面側から見た斜視図である。低侵襲血管採取装置260は、人間工学的ハンドル264を形成するハウジング262を有する。装置はまた、チャネル266を有する。このチャネル266は、スライド部材270が装置260の長手方向に沿ってその先端260Dから基端260Pまでスライドするための経路を提供するように構成されている。チャネル266は複数の位置決め凹部268を画成する。この位置決め凹部268は、スライド部材270の係合フィーチャに対応する。設計態様では、チャネル260に沿ってスライド部材270をスライドさせ、スライド部材270を所望位置でロックする手段を提供する。低侵襲血管採取装置260はまた、ハウジング262に結合されたシャフト274を有する。シャフト274は低侵襲血管採取装置260の先端260Dに向かって延び、シャフト274には二次シャフト276が結合されている。二次シャフト276には、先端チップ278が結合されている。先端チップ278は、U字形をなす又は隆起した、弧状のフィンガー280を画成する。フィンガー280の弧状の湾曲は、先端チップ278に対しておよびシャフト274と二次シャフト276に対して実質的に垂直な方向に形成され、鈍的ディセクタとして使用することができる。弧状のフィンガー280は、両端が先端チップ278と接触した状態で閉じていないが、滑走部材282がその閉鎖手段を提供する。滑走部材282はスライド部材270に結合されており、スライド部材270が基端260Pに向かって移動する時、滑走部材282もまた、低侵襲血管採取装置260の基端260Pに向かって移動するように構成されている。滑走部材282が、低侵襲血管採取装置260の基端260Pに向かって移動する時、弧状のフィンガー280は開く。この開き位置により、低侵襲血管採取装置260を、IMAなどの血管の周りに配置することができ、ひいては血管の採取または取り出し(take down)処置の際に、弧状のフィンガー280を血管の周りに配置することができる。滑走部材282が低侵襲血管採取装置260の先端260Dに向かって移動する時、弧状フィンガー280は、滑走部材282の位置と組み合わせて閉ループを形成する。この閉ループ位置により、低侵襲血管採取装置260の操作者は、採取または取り出し処置の際に、滑走部材282と弧状フィンガー280によって形成される閉ループ内にIMAなどの血管を保持または固定することができる。他の実施形態では、滑走部材282と弧状フィンガー280によって形成されるループは、低侵襲血管採取装置260のシャフト274に対して実質的に平行でもよいし、または実質的に平行と実質的に垂直の間の位置であってもよい。他の実施形態では、弧状のループを形成しなくてもよいし、異なる形状の閉鎖またはループを形成してもよい。
【0042】
図8は、別の実施形態をなす低侵襲手術装置を左上の正面側から見た斜視図である。低侵襲血管採取装置286は、人間工学的ハンドル290を形成するハウジング288を有する。低侵襲血管採取装置286はまた、ハウジング288に結合されたシャフト292を有する。シャフト292は、低侵襲血管採取装置286の先端286Dに向かって延びる。シャフト292には、複数の弧状の鈍的ディセクタまたはオメガ形状のフィンガー296、302、308が結合されている。これらはギリシャ文字のオメガと似ているため、オメガ形状と言う。これらはC字形またはU字形とも言う。フィンガー296、302、308の弧状の湾曲は、シャフトに対して実質的に垂直な方向に形成される。第1のオメガ形状のフィンガー296は、第1の管状マウント294によってシャフト292に結合され、開口298を画成する。第2のオメガ形状のフィンガー302は、管状マウント300によってシャフト292に結合され、開口304を画成する。第3のオメガ形状のフィンガー308は、管状マウント306によってシャフト292に結合され、開口310を画成する。オメガ形状のフィンガー296、302、308のそれぞれによって形成される開口298、304、310により、低侵襲血管採取装置286を1箇所または複数個所でIMA等の血管の周りに配置することができ、採取または取り出し処置の際に、オメガ形状のフィンガー296、302、308の1つまたは複数を血管の周りに配置して、血管を所望の位置に一時的に保持または固定することができる。他の実施形態では、フィンガー296、302、308によって形成される開口は、低侵襲血管採取装置286のシャフト292に実質的に平行であってもよいし、または実質的に平行と実質的に垂直の間に位置してもよい。フィンガーの他の実施形態では、弧状のループを形成しなくてもよいし、異なる形状の閉鎖またはループを形成してもよい。
【0043】
図9は、別の実施形態をなす低侵襲手術装置を左上の正面側から見た斜視図である。低侵襲血管採取装置312は、基端312Pにハウジング314を有し、ハウジングは人間工学的ハンドル316を形成する。装置312はまた、ハウジング314内に配置された関節レバー318と、回転アダプタノブ320を有する。回転アダプタノブ320は、取り付けられたシャフト322の長手方向軸の周りで回転し、これにより、シャフト322ひいては装置312の先端312Dを回転可能に位置決めすることができる。中空シャフト322は、回転アダプタノブ320に取り付けられ、剛性ロッドまたは駆動ワイヤ(この図では見えないが、後でより詳細に説明する)を収容している。シャフト322に沿ってハウジング314のより近くには、第1の複数の水平関節ジョイント324が配置されている。水平関節ジョイント324のそれぞれは、複数のスリット324Sにより構成される。同様にシャフト322に沿いさらに装置312の先端312Dに向かって、第2の複数の垂直関節ジョイント326が配置されている。垂直関節ジョイント326のそれぞれは、いくつかのスリット326Sにより構成される。第1の複数の関節ジョイント324は、ハウジング314を二等分する平面またはレバー318に沿う平面に対して、実質的に垂直であるか又は実質的に平行である平面上で、関節運動する。第2の複数の関節ジョイント326は、ハウジング314を二等分する平面に対して実質的に平行であるか又は実質的に垂直である平面上で、関節運動する。これらの関節ジョイント324、326は、所望の関節運動方向のスリット324S、326Sにより構成される。回転アダプタノブの回転時に、関節運動方向が回転量だけオフセットすることに、留意すべきである。図9に示す実施形態では、回転アダプタノブ320の各部分回転は、シャフト322によって定義される長手方向軸を中心にシャフト322を60度回転させるが、代替の実施形態では、部分回転の程度が異なっていてもよい。関節シャフト322の代替の実施形態では、様々な数のスリットを含んでいてもよい。例えば、約1~約10、約3~約8、または約5~約7でもよい。スリット324S、326Sは、中空剛性シャフト322の外面の部分的な円周方向の分割によって画成される。この実施形態の関節フィーチャは、各関節ジョイントの複数のスリットからなるが、代替実施形態の関節フィーチャは、同様に配置された他の関節ジョイント構造を含んでもよく、ヒンジ、可撓性シャフト材料、および既知の他のタイプの関節ジョイント構造などでもよい。この関節フィーチャは、外科手術のためにシャフト322を、所望の形状またはアプローチ角度に形成することができ、意図的に異なる形状または角度に動かすまで、設定された形状のまま維持できるように、構成される。これらの関節ジョイント324、326は前述の平面上を動くように構成されているが、関節ジョイントの代替の配置は、代替装置の実施形態で使用することができる。例えば、水平関節ジョイントを先端チップ328の近くに配置し、垂直関節ジョイントをハウジング314の近くに配置してもよいし、垂直関節ジョイントと水平関節ジョイントをシャフトに沿って交互に配置してもよいし、異なる数の関節ジョイントが存在してもよい。さらに装置312の先端312Dに向かって、シャフト322には先端チップ328が固定されている。先端チップ328は、弧状フィンガー330および滑動可能に係合する滑走部材332を含み、図9に示す位置では、滑走部材332と弧状フィンガー330の組み合わせによって、チャネルまたは開口334が可逆的に形成される。囲まれたチャネルまたは開口334は、チャネルまたは開口334内に血管、動脈、または他の解剖学的フィーチャを保持するように構成される。血管、動脈、または他の解剖学的フィーチャは、レバー318を作動させることによって解放することができる。装置312のレバー318がハンドル316に向かって引き絞られると、滑走部材332は、先端チップ328によって画成されたカム経路336に沿って移動して開き、血管または他の解剖学的フィーチャが、先端チップ328によって画成されたチャネルまたは開口334へ進入または通過するのを可能にする。この動きの詳細は、図10A,図10Bを参照しながら詳細に説明する。
【0044】
図10A図10Bは、図9の低侵襲手術装置の先端部の側面図であり、それぞれ、閉じ位置と開き位置を示している。図10Aは、装置312のレバー318が引き絞られていない位置にあり、レバー318がハンドル316から離れて配置されている時の、先端部328の配置を示している。駆動ワイヤ342が滑走部材332に結合されており、装置312の先端312Dに向かっていっぱいに延びている。この配置では、滑走部材332と弧状フィンガー330がチャネルまたは開口334の周りを完全に閉鎖した状態で、開口334が装置312の先端部328に維持されている。この構成では、例えば低侵襲血管採取の外科的処置等において、血管を、保持または他の所望の外科的処置のために開口334内に配して同伴させることができる。レバー318が装置312のハンドル316に向かって引き絞られると、駆動ワイヤ342およびこれに接続された滑走部材332は、装置312の基端312Pに向かって338方向にスライドまたは移動する。
【0045】
図10Bは、レバー318がハンドル316に向かって引き絞られた後の、装置312の先端チップ318の要素の位置を示している。駆動ワイヤ342が方向338に移動すると、滑走部材332は、先端チップ328によって画成されたカム経路336に沿って駆動ワイヤ342と共に移動する。カム経路336は、滑走部材332の内側の面がカム経路336で定義された経路と干渉する際に滑走部材332が先端チップ328から方向340に回転するように、構成されている。方向338の移動と実質的に同時の方向340の回転は、装置312の先端チップ328の開口334内に配置されるべき血管または他の解剖学的フィーチャのために、開口334を開くための追加のクリアランスを許容する。所望の解剖学的フィーチャが開口334に配置されると、レバー318は、装置312のユーザによって解放され、先端チップの328の位置は、図10Aの位置に戻り、先端チップ328の開口334に解剖学的フィーチャを効果的に捕捉することができる。
【0046】
図11は、別の実施形態をなす低侵襲手術装置を左上の正面側から見た斜視図である。低侵襲血管採取装置344は、基端344Pにハウジング346を有し、ハウジングは人間工学的ハンドル348を形成する。装置344はまた、ハウジング346内に配置された関節レバー350および回転アダプタノブ352を有する。回転アダプタノブ352は、取り付けられたシャフト354の長手方向軸の周りで回転することができ、これによりシャフト354ひいては装置344の先端344Dの回転可能な位置決めをすることができる。中空シャフト354は、回転アダプタノブ352に取り付けられ、駆動ワイヤ(この図には示されていないが、後述する)を収容している。シャフト354に沿ってハウジング346の近くには、複数のスリット358から構成される第1の複数の水平関節ジョイント356が配置されている。同じくシャフト354に沿いさらに装置344の先端344Dに向かった箇所には。複数のスリット362から構成される第2の複数の垂直関節ジョイント360が配置されている。第1の複数の関節ジョイント356は、ハウジング346を二等分する平面またはレバー350に沿う平面に対して、実質的に垂直であるか又は実質的に並行である平面上で、関節運動する。第2の複数の関節ジョイント360は、ハウジング346を二等分する平面に対して実質的に平行であるか又は実質的に垂直である平面上で、関節運動する。これらの関節ジョイント356、360は、所望の関節運動方向のスリット358、362により構成される。回転アダプタノブ352の回転時に、関節運動方向が回転量だけオフセットすることに、留意すべきである。図11に示す実施形態では、回転アダプタノブ352の各部分回転は、シャフト354によって定義される長手方向軸を中心にシャフト354を60度回転させるが、代替の実施形態では、部分回転の程度が異なっていてもよい。関節シャフト354の代替の実施形態では、様々な数のスリットを含んでいてもよい。例えば、約1~約10、約3~約8、または約5~約7でもよい。スリット358,362は、中空剛性シャフト354の外面の部分的な円周方向の分割によって画成される。これらのスリットは、レーザーカッティング、機械加工、または当業者に知られている他の手段によって形成することができる。この実施形態の関節フィーチャは、各関節ジョイントが複数のスリットからなるが、代替実施形態の関節フィーチャは、同様に配置された他の関節ジョイント構造を含んでもよく、ヒンジ、可撓性シャフト材料、および既知の他のタイプの関節ジョイント構造などでもよい。この関節フィーチャは、外科手術のためにシャフト354を、所望の形状またはアプローチ角度に形成することができ、意図的に異なる形状または角度に動かすまで、設定された形状のまま維持できるように、構成される。これらの関節ジョイント356、360は前述の平面上を動くように構成されているが、関節ジョイントの代替の配置は、代替装置の実施形態で使用することができる。例えば、水平関節ジョイントを先端ハウジング又は先端チップ364の近くに配置し、垂直関節ジョイントをハウジング346の近くに配置してもよいし、垂直関節ジョイントと水平関節ジョイントをシャフトに沿って交互に配置してもよいし、異なる数の関節ジョイントが存在してもよい。さらに装置344の先端344Dに向かって、シャフト354には先端チップ364が固定されている。先端チップ364は、開いた位置にある弧状の第1鈍的ディセクタ366と弧状の第2鈍的ディセクタ368を含む。第1鈍的ディセクタは、弧状フィンガーと呼ばれることもある。第2鈍的ディセクタ368は、固定部材と呼ばれるか、またはカム経路にわたる第1カム部382の滑走運動のために、滑走部材と呼ばれることもある。図11に示されるように開いている時、先端チップ364は、先端チップ364内に血管、動脈、または他の解剖学的フィーチャを受け入れるように構成される。血管、動脈、または他の解剖学的フィーチャは、レバー350を作動させ、第1鈍的ディセクタ366と第2鈍的ディセクタ368を閉位置に置くことによって、維持され、解放可能に保持することができる。この操作上の動きは、図13A,図13B,図14A,図14Bを参照しながら詳細に説明する。
【0047】
図12は、図11の低侵襲手術装置の先端部の分解図である。中空シャフト354は、中空シャフト354に固定されたチップ370を有している。チップ370はヘッド372とキー溝374を画成している。チップ370のキー溝374には、平坦なチップキー376が挿入されている。このチップキー376は、駆動カプラー378とアクチュエータカプラー386を有する。平坦なチップキー376は、駆動ワイヤ(この図には示されていない)に結合されている。平坦なチップキー376のアクチュエータカプラ386には、アクチュエータピン380が取り付けられている。このアクチュエータピン380は、第1カム部382と第2カム部384をさらに画成する。次に、中空シャフト354のチップ370を被うようにして第1のガイドチップ部ボデイ388が配置される。この第1のガイドチップ部ボデイ388は、第1のカム経路390とチャネル392と第1鈍的ディセクタ366を画成する。次に、第1のガイドチップ部ボデイ388の内側に第2のガイドチップ部ボデイ394を配置することにより、先端チップ364のアセンブリが完成する。この第2のガイドチップ部ボデイ394は、内側カム経路396と第2鈍的ディセクタ368を画成する。
【0048】
図13A図13Bは、図11の低侵襲手術装置の組み立てられた先端部を、左上の正面側から見た斜視図であり、それぞれ開き位置と閉じ位置を示す。低侵襲装置が非作動状態の時、第2鈍的ディセクタ368と第1鈍的ディセクタ366の相対的位置は開位置にあり、第1カム部382は、第1ガイドチップ部ボデイ388の第1カム経路390内において、中空シャフト354の近くに配置される。第1のガイドチップ部ボデイ388の反対側(この図には示されていない)に、対応するカム経路があってもよい。対応するカム経路は、第1カム経路390の湾曲した経路ではなく、直線の経路であってもよい。第2鈍的ディセクタ368は、第1鈍的ディセクタ366の対応する凹部(図示せず)内に着座するガイドフィーチャ398を有する。図13Bは、第1鈍的ディセクタ366と第2鈍的ディセクタ368を閉じ位置で示している。作動レバーが引き絞られると、駆動ワイヤが先端方向に押され、第1カム部分382が第1カム経路390内においてシャフトから離れた先方位置で係合し、第1鈍的ディセクタ366と第2鈍的ディセクタ368が閉位置となる。この動作は、図14A図14Bを参照しながらさらに説明する。
【0049】
図14A図14Bはそれぞれ、図11の低侵襲手術装置の側断面図と正面図であり、開き位置で示す。装置344のハウジング346内には、スプリング402が示されている。このスプリング402は、装置344が開位置にあるとき(作動レバー350が作動されていない位置にあるとき)、作動レバー350にバイアスを提供する。また、駆動ワイヤ400がボールエンド406に結合され、このボールエンド406が作動レバー350のレバーカプラー404に捕捉されている。図14Bは、装置344が開位置にある間の第1鈍的ディセクタ366と第2鈍的ディセクタ368とガイドフィーチャ398の位置を示す正面図である。この位置では、装置344は、対向するペンチ(すなわち第1鈍的ディセクタ366と第2鈍的ディセクタ368)内に血管、動脈、または他の解剖学的フィーチャを受け入れるように構成される。
【0050】
図15A図15Bはそれぞれ、図11の低侵襲手術装置の側断面図と正面図であり、閉じ位置で示す。装置344の作動レバー350がハンドルに向かって方向408に引き絞られると(作動されると)、駆動ワイヤ400は、装置344の先端に向かって方向410に移動される。図13A図13Bにおいて説明したように、駆動ワイヤ400と第1カム部382が結合されているので、第2鈍的ディセクタ368が第1鈍的ディセクタ366に対して押し閉じられる。閉位置において装置344は、第1鈍的ディセクタ366と第2鈍的ディセクタ368によって画成された閉鎖構造内に血管、動脈、または他の解剖学的フィーチャを保持し、優しく把持するために用いることができる。
【0051】
図16は、図11の低侵襲手術装置のシャフトの一部の拡大側面図である。図16は、スリットの第1セット412を有する中空シャフト414を示す拡大側面図を示す。スリットの第1セット412は、第1の複数のスリット416と第2の複数のスリット418を含む。中空ロッドまたはシャフト414は、長さおよび外周を有する。スリットの第1セット412は、中空ロッドの外周を横切ってその頂部を切開する第1の複数のスリットと、第1の複数のスリットに対して中空ロッドの外周の周りに180度をなして配向された第2の複数のスリットとを含む。図16に示すスリットはそれぞれ、長方形部分(矩形部分)と円形部分を組み合わせた複合断面形状をなしている。長方形部分は、中空ロッドの外周と連絡している。他の実施形態では、代替の複合形状を有するスリットまたは複合形状の部分の代替の配向を有するスリットを含んでいてもよい。例えば、三角形、正方形、および他の多角形により、様々な複合形状を形成することができる。
【0052】
いくつかのパラメータが図16に示されている。これらパラメータは、スリットの形状と配置に関連する重要な寸法事項を定義している。スリットの円形部分の直径d、および各スリットの断面高さhが表記されている。いくつかの高さh1、h2、h3、h4が示されており、これらは別々に指定される。図16に示される第1の複数のスリット416と第2の複数のスリット418のそれぞれの高さは、複数の隣接するスリットによって形成されるアーチまたは放物線の配置を示している。他の実施形態では、異なる形状のアーチまたは弧を有してもよいし、または隣接するスリットについて同等の高さであってもよい。各スリットの長方形部分の幅wは、各スリット間の間隔sと同様に指定される。最後に、ウェブ距離Weすなわち、第1の複数のスリット416のそれぞれの円形部分(または内側境界)と、第2の複数のスリット418のそれぞれの円形部分(または内側境界)との間の距離が、図16に示されている。円形部分の直径dは、中空シャフトを曲げた時に中空シャフトに生じる応力に影響を与える。円形部分は、装置の使用に際してシャフトを複数回関節運動させながら複数回の曲げ操作を実行する最中に、応力集中を低減する。より大きな直径の円は、より小さな直径の円と比較して、曲げ操作中に生じる応力を低減することができる。スリットの断面高さ(h1、h2、h3、h4)は、ウェブ距離Weに反比例する。高さとウェブ距離のバランスは、器具シャフトの性能において、曲げ性と降伏強度の間でトレードオフの関係をもたらす。この特異な構成は、曲げ応力下で破損することなく曲がるように構成された器具シャフトを提供する。Weが大きい場合、曲げ応力下で器具シャフトがより大きな応力に対応でき、Weが小さい場合、曲げ応力下で器具シャフトが対応できる応力が小さくなる。高さhと幅wとスリット間の間隔sは、スリットのセットを含む器具シャフト部分の曲げ角度と曲げ半径に影響を与える。h、w、sの寸法を小さくすると曲げ半径が小さくなり、その逆も同様である。図16には前述のパラメータのそれぞれの相対的な寸法および配置が示されているが、関節式器具シャフトの代替の実施形態では、スリットのそれぞれは、前述のパラメータとは異なる値を有してもよい。上述したパラメータとフィーチャの組み合わせは、剛性と順応性を有し頑丈で、低侵襲外科的処置の過程で関節運動し屈曲し、その形状の保持し、繰り返し操作できる、関節運動可能な器具シャフトを提供することができる。図11に示されるように、例えば、計器シャフトは、スリットの第2セット、スリットの第3または第4セット、またはそれ以上のセットなど、前述と同様の特徴を有する複数のスリットのセットを有してもよい。これらの複数のスリットのセットは、同様に、または図11の例のように配向することができる。複数のスリットのセットは互いに直交しており、例えば、スリットの第2セットは、スリットの第1セットに対して中空ロッドの外周の周りに90度をなして配向されている。さらに、代替の実施形態では、スリットを1セットのみ有してもよいし、180度離れて配向してもよいし、用途に応じて様々な角度で配向してもよい。さらに、スリットは、三角形、円形、多角形などの代替形状、またはドッグボーン、キノコ、ホットドッグ形状などの代替複合形状、および本明細書で特徴付けし定義した形状の代替寸法を有してもよい。シャフト全体の直径も前述の定義された各機能と相互関係を有する。おそらく、シャフトの直径が異なる場合は、それに比例して寸法を決める必要がある。
【0053】
血管採取用の装置の様々な利点を論じた。本明細書で論じられる実施形態は、本明細書では例として説明されている。前述の詳細な開示は、単なる例として提示されることを意図しており、限定するものではないことは、当業者には明らかであろう。一例として、論じてきたエンドエフェクタはしばしばスコープの使用に焦点を合わせていたが、このシステムは他のタイプの手術器具を位置決めするために用いることができる。本明細書に明示的に記載されていないが、様々な変更、改善、および修正を当業者は意図するであろう。本明細書で明示的に述べられていないが、様々な変更、改善、および修正が当業者に意図されるであろう。これらの変更、改善、および修正は、ここに示唆されることを意図しており、クレームされた発明の精神および範囲内にある。図面は必ずしも縮尺通りではない。さらに、要素の処理またはシーケンスの記載された順序、または数字、文字、または他の指定は、したがって、特許請求の範囲で指定されている場合を除き、請求項を任意の順序に限定することを意図しない。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲およびその均等物よってのみ限定される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16