(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】頭蓋内血管の解析方法及び解析システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20241010BHJP
A61B 6/50 20240101ALI20241010BHJP
G16H 30/00 20180101ALI20241010BHJP
G16H 50/00 20180101ALI20241010BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241010BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61B6/03 560J
A61B6/03 560D
A61B6/03 560B
A61B6/50 511E
G16H30/00
G16H50/00
G06T7/00 612
G06T1/00 290A
G06T7/00 350C
(21)【出願番号】P 2022512706
(86)(22)【出願日】2020-05-03
(86)【国際出願番号】 US2020031230
(87)【国際公開番号】W WO2020227176
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-04-28
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521480846
【氏名又は名称】イスキマビュー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ISCHEMAVIEW,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ストラカ、マトゥーシュ
(72)【発明者】
【氏名】アムコトゥワ、シャリニ アンビカ
(72)【発明者】
【氏名】バンマー、ローラント
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/081492(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0019846(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0125595(US,A1)
【文献】特開2013-017781(JP,A)
【文献】特開2012-125407(JP,A)
【文献】特開2017-018234(JP,A)
【文献】特開2009-011828(JP,A)
【文献】特開2008-073332(JP,A)
【文献】特開2008-104886(JP,A)
【文献】特開2009-050726(JP,A)
【文献】特開2018-011958(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0283070(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0021035(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0328239(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0287100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
A61B 6/50
G16H 30/00
G16H 50/00
G06T 7/00
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
撮像装置によって取り込まれた画像データにアクセスすることであって、前記画像データが、個体の脳の1つ又は複数の画像に対応する情報を含み、前記情報がボクセルを含み、個々のボクセルが強度値に関連している、アクセスすることと、
1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、第1修正画像データを生成すべく、前記画像データの第1部分を除去することであって、前記画像データの第1部分が、前記個体の頭部の外側にある1つ又は複数の第1特徴部に対応する、除去することと、
前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、前記第1修正画像データによって表される1つ又は複数の第2特徴部を、ヒト頭部の特徴部に対応する1つ又は複数のテンプレートと位置合せすることと、
前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、前記1つ又は複数のテンプレートに基づき、前記第1修正画像データに含まれるとともに前記個体の前記頭部に含まれる骨に対応する、前記画像データの第2部分を同定することと、
前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して第2修正画像データを生成すべく、前記第1修正画像データから前記画像データの前記第2部分を除去することと、
前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、前記第2修正画像データに含まれるとともに前記個体の前記頭部に位置する血管に対応する、前記画像データの第3部分を同定することと、
前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、値の第1範囲に含まれる第1直径を有する前記血管の第1部分を含む第1グループを決定することと、
前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、値の前記第1範囲とは異なる値の第2範囲に含まれる第2直径を有する前記血管の第2部分を含む第2グループを決定することと、
前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、前記脳の第1半球の第1領域に位置する第1血管に対応する第1ボクセルの第1強度値の第1基準を求めることであって、前記第1血管が前記第1グループに含まれる、求めることと、
前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、前記脳の第2半球の第2領域に位置する第2血管に対応する第2ボクセルの第2強度値の第2基準を求めることであって、前記第2血管が、前記個体の前記脳内において前記第1血管に対して実質的に対称的に位置し、前記第2血管が前記第1グループに含まれる、求めることと、
前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、第1強度値の前記第1基準と第2強度値の前記第2基準との差の尺度を求めることであって、強度値の前記第2基準が強度値の前記第1基準とは異なる、求めることと、
前記1つ又は複数のプロセッサを使用して、前記1つ又は複数の第1血管及び前記1つ又は複数の第2血管の位置とは異なる、前記脳の1つ又は複数の領域に位置する1つ又は複数の血管に対応する血管密度の1つ又は複数の追加の尺度を評価すべきかを判断すべく、スキーマの1つ又は複数の閾値の尺度に対する前記尺度を解析することであって、前記スキーマは複数の層を含み、各層が前記第1半球に位置する血管と前記第2半球に位置する相対血管との間の血管密度の低下の量の範囲に対応することと、
前記1つ又は複数のプロセッサを使用して、前記尺度に基づき、前記第2血管に関して異常が存在する確率が閾値確率を上回ると判断することと、
前記第1血管と、前記第2血管と、前記第2血管を強調表示するユーザインタフェース要素とを含む画像に対応するユーザインタフェースデータを生成することと
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記個体の事前指定された解剖学的ランドマークにある前記個体の特徴部に対応する前記画像データの追加部分を決定することを含み、
前記第1修正画像データを生成するために除去された前記画像データの前記第1部分が、前記画像データの前記追加部分を含む、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記撮像装置の一部に対応する前記画像データの追加部分を決定することを含み、
前記第1修正画像データを生成するために除去された前記画像データの前記第1部分が、前記画像データの前記追加部分を含む、方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法であって、
ヒト脳の複数の領域のデジタル表現を決定することと、
ヒトの前記複数の領域のデジタル表現を前記第1修正画像データの部分と位置合せすることとを含む方法。
【請求項5】
前記ヒト脳の前記複数の領域が、頭蓋内内頸動脈の少なくとも一部と、中大脳動脈のM1セグメントの少なくとも近位部とを含む第1領域と、前記中大脳動脈の前記M1セグメントの少なくとも中部から遠位部を含む第2領域と、前記中大脳動脈のM2セグメントの少なくとも一部を含む第3領域とを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒト脳の前記複数の領域の前記デジタル表現が、1つ又は複数の機械学習技法を使用して生成される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
請求項4に記載の方法であって、
前記ヒト脳の前記複数の領域の前記デジタル表現が少なくとも1つのテンプレートを含み、
前記少なくとも1つのテンプレートによって示される前記ヒト脳の前記複数の領域が、前記第1修正画像データの前記部分と位置合せされる、方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の方法であって、
前記第1ボクセルの前記第1強度値が、前記第1領域に位置する前記第1血管の第1密度を示し、前記第2ボクセルの第2強度値が、前記第2領域に位置する前記第2血管の第2密度を示し、
前記異常が前記第2血管の閉塞に対応する、方法。
【請求項9】
システムであって、
少なくとも1つのハードウェアプロセッサと、
コンピュータ可読媒体と
を備え、前記コンピュータ可読媒体は、前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行される場合、
個体の脳の画像に対応する情報を含む画像データにアクセスすることと、
前記画像データに基づき、前記脳の第1半球に位置する1つ又は複数の第1血管を同定することと、
前記画像データに基づき、前記脳の第2半球に位置する1つ又は複数の第2血管を同定することと、
前記1つ又は複数の第1血管の1つ又は複数の第1密度と前記1つ又は複数の第2血管の1つ又は複数の第2密度との差の量に対応する尺度を求めること
であって、前記1つ又は複数の第1密度の個々の第1密度は、前記1つ又は複数の第1血管の個々の第1血管に対応し、前記1つ又は複数の第2密度の個々の第2密度は、前記1つ又は複数の第2血管の個々の第2血管に対応することと、
前記1つ又は複数の第1血管及び前記1つ又は複数の第2血管の位置とは異なる、前記脳の1つ又は複数の領域に位置する1つ又は複数の血管に対応する血管密度の1つ又は複数の追加の尺度を評価すべきかを判断すべく、スキーマの1つ又は複数の閾値の尺度に対する前記尺度を解析することであって、前記スキーマは複数の層を含み、各層が前記第1半球に位置する血管と前記第2半球に位置する相対血管との間の血管密度の低下の量の範囲に対応することと、
前記尺度に基づき、前記1つ又は複数の第1血管のうちの少なくとも1つの第1血管、もしくは前記1つ又は複数の第2血管のうちの少なくとも1つの第2血管に関する異常の確率を求めることと、を含む動作を前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサに実行させる命令を格納する、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行される場合、
前記個体の前記脳の第1半球に位置する第1領域を同定することであって、前記第1領域が前記1つ又は複数の血管を含む、同定することと、
前記個体の前記脳の第2半球に位置する相対第1領域を同定することであって、前記相対第1領域が前記1つ又は複数の第2血管を含み、前記相対第1領域が、前記第1領域に対して実質的に対称的に位置し
、前記第1領域及び前記相対第1領域は前記スキーマの前記複数の層の第1層に対応することと、
前記1つ又は複数の第1血管の前記1つ又は複数の第1密度と前記1つ又は複数の第2血管の前記1つ又は複数の第2密度との差の量に対応する前記尺度が
前記スキーマの前記第1層の閾値基準を満たすと判断することと、を含む動作を前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサに実行させる、前記コンピュータ可読媒体によって格納された追加の命令を含む、システム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムであって、前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行される場合、
前記画像データに基づき、前記個体の前記脳の前記第1半球の第2領域に位置する1つ又は複数の第3血管を同定することと、
前記画像データに基づき、前記個体の前記脳の前記第2半球の相対第2領域に位置する1つ又は複数の第4血管を同定すること
であって、前記相対第1領域は前記第1領域に対して実質的に対称的に位置し、前記第2領域及び前記相対第2領域は前記スキーマの前記複数の層の第2層に対応することと、
前記1つ又は複数の第3血管の1つ又は複数の第3密度と前記1つ又は複数の第4血管の1つ又は複数の第4密度との差の追加の量に対応する追加の尺度を求めること
であって、前記1つ又は複数の第3密度の個々の第3密度は、前記1つ又は複数の第3血管の個々の第3血管に対応し、前記1つ又は複数の第4密度の個々の第4密度は、前記1つ又は複数の第4血管の個々の第4血管に対応することと、
前記追加の尺度が
前記第2層に対応するとともに前記閾値基準とは異なる追加の閾値基準を満たすと判断することと、を含む動作を前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサに実行させる、前記コンピュータ可読媒体によって格納された命令をさらに含む、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムであって、前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行される場合、
前記画像データに基づき、前記個体の前記脳の前記第1半球の第3領域に位置する1つ又は複数の第5血管を同定することと、
前記画像データに基づき、前記個体の前記脳の前記第2半球の相対第3領域に位置する1つ又は複数の第6血管を同定することであって、前記相対第3領域が、前記第3領域に対して実質的に対称的に位置し
、前記第3領域及び前記相対第3領域は前記スキーマの前記複数の層の第3層に対応することと、
前記1つ又は複数の第5血管の1つ又は複数の第5密度と前記1つ又は複数の第6血管の1つ又は複数の第6密度との差の追加の量に対応する追加の尺度を求めること
であって、前記1つ又は複数の第5密度の個々の第5密度は、前記1つ又は複数の第5血管の個々の第5血管に対応し、前記1つ又は複数の第6密度の個々の第6密度は、前記1つ又は複数の第6血管の個々の第6血管に対応することと、
前記追加の尺度が、
前記第3層に対応するとともに前記閾値基準又は前記追加の閾値基準のうちの少なくとも一方とは異なる追加の閾値基準を満たすと判断することと、を含む動作を前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサに実行させる、前記コンピュータ可読媒体によって格納された命令をさらに含む、システム。
【請求項13】
請求項9乃至12の何れか一項に記載のシステムであって、前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行される場合、
前記個体の前記脳に関連する血管の画像を含むとともに、前記個体の頭部内に位置する血管に関して起こり得る異常を示すユーザインタフェース要素を含むユーザインタフェースに対応するユーザインタフェースデータを生成することであって、前記ユーザインタフェース要素が、前記血管に関する異常の確率又は前記異常の重症度のうちの少なくとも一方を示す、生成することを含む動作を前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサに実行させる、前記コンピュータ可読媒体によって格納された命令をさらに含み、
前記画像が、基礎となる血管造影画像ボリュームの最大値投影(MIP)画像である、システム。
【請求項14】
請求項9乃至12の何れか一項に記載のシステムであって、前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行される場合、
前記個体の頭部内に位置する血管の直径を求めることと、
測定値の第1範囲に含まれる第1直径を有する前記血管の第1グループを決定することと、
測定値の第2範囲に含まれる第2直径を有する前記血管の第2グループを決定することであって、前記第1直径の少なくとも一部が前記第2直径の少なくとも一部の少なくとも2倍大きい、決定することと、を含む動作を前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサに実行させる、前記コンピュータ可読媒体によって格納された命令をさらに含む、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行される場合、
前記画像データに含まれる第1ボクセルの第1強度値に基づいて前記血管の前記第1グループに対する第1密度値を決定することであって、前記第1ボクセルが前記第1血管の前記第1グループに対応する、決定することと、
前記血管の前記第1グループに含まれる個々の血管のそれぞれの長さを求めることと、
前記画像データに含まれる第2ボクセルの第2強度値に基づき前記血管の前記第2グループに対する第2密度値を求めることであって、前記第2ボクセルが前記血管の前記第2グループに対応する、求めることと、を含む動作を前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサに実行させる、前記コンピュータ可読媒体によって格納された命令をさらに含む、システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムであって、
前記第1血管及び前記第2血管が、前記血管の前記第1グループに含まれ、
前記システムが、前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行される場合、
前記脳の前記第1半球に位置する第1の追加の血管の第1の追加の密度と、前記脳の前記第2半球に位置する第2の追加の血管の第2の追加の密度との差の追加の量に対応する追加の尺度を求めること
であって、前記第1の追加の密度の個々の第1の追加の密度は、前記第1の追加の血管の個々の第1の追加の血管に対応し、前記第2の追加の密度の個々の第2の追加の密度は、前記第2の追加の血管の個々の第2の追加の血管に対応することを含む動作を前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサに実行させる、前記コンピュータ可読媒体によって格納された命令をさらに含み、前記第1の追加の血管及び前記第2の追加の血管が前記血管の前記第2グループに含まれ、
前記異常の確率が、前記第1血管のうちの少なくとも1つの長さと、前記第2血管のうちの少なくとも1つの長さと、前記追加の尺度とに基づくものである、システム。
【請求項17】
方法であって、
個体の脳の画像を取得することと、
前記画像を使用して、ヒト脳内に位置する複数の血管の位置を示すテンプレートに基づき、個体の前記脳内に位置する血管を同定することと、
前記血管に関する始点を決定することであって、前記始点が、前記個体の前記脳内の前記血管の経路に含まれる前記画像の第1ボクセルを示す、決定することと、
前記血管に対応する密度値に基づき前記血管に沿った経路を決定することであって、前記密度値が、前記血管に関連する前記画像の部分と前記画像の背景部分とのコントラストの量を示す、決定することと、
少なくとも部分的に前記テンプレートに基づき前記血管の終点を決定することと、
前記血管が前記終点の前で終端すると判断することと、
前記血管が終点の前で終端することに基づき、前記血管に関連する異常が存在する確率を求めることと、を含む方法。
【請求項18】
前記血管に沿った前記経路が、前記血管の位置に対応する位置における前記画像のボクセルの血管性値に基づいて決定される最短経路に対応し、前記血管性値がヘシアンフィルタの固有値に対応する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記血管の前記始点が、最高血管性値を有するボクセルに対応し、前記ボクセルが、前記血管の近位部に位置する、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記血管の前記経路が、最短経路のコストが閾値コストを超えることに基づいて終端する、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
前記血管の前記経路が、通過するのに有限コストを有する前記血管の前記経路に沿ってボクセルが残っていないと判断することに応じて終端する、請求項17または18に記載の方法。
【請求項22】
前記始点が、中大脳動脈の近位端に位置し、前記終点が、中大脳動脈の遠位部に位置する、請求項17または18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
頭蓋内血管の解析に関する。
【背景技術】
【0002】
頭蓋内血管は、大脳、小脳及び脳幹を含む脳に栄養分及び酸素を供給する。いくつかの動脈は、脳の前方部分に血液を供給し、他の動脈は、脳の後方部分に血液を供給する。主要血管には、内頸動脈(ICA)、脳底動脈(BA)及び頸椎動脈(VA)があり、それらは、脳の両半球に分散されている。脳の前方部分に血液を供給する血管としては、ICA、前大脳動脈(ACA)及び中大脳動脈(MCA)を挙げることができる。さらに、脳の後方部分に血液を供給する血管には、BA、後大脳動脈(PCA)、後下小脳動脈(PICA)、前下小脳動脈(AICA)及び上小脳動脈(SCA)がある。
【0003】
脳の任意の部分への血液の流れの中断は、深刻な影響を及ぼす可能性がある。脳への血液の流れは、脳に血液を供給する血管の狭窄及び/又は閉塞によって遮断される可能性がある。脳の一部への血液の流れの中断は、脳の機能を低下させ、身体の一部に痺れ、脱力又は麻痺をもたらす可能性がある。脳の一部への血液供給が遮断されると、脳卒中が発生する可能性がある。脳卒中の早期検出及び治療により、血液供給が中断された脳の部分への損傷を最小限にし、脳卒中の後遺症を最小限にすることができる。治療は、例えば血栓溶解を介して、内科的に、又は、血管内血栓回収(ECR:endovascular clot retrieval)を可能にする血管内カテーテルを介して機械的に、行うことができる。臨床研究により、ICA又はMCAに血栓があり、ECRを介して血流を回復させることができた患者は、内科的治療のみを受けた患者よりも著しく良好な転帰が得られることが示された。
【0004】
本開示は、同様の参照符号が同様の要素を示す添付図面の図において、限定としてではなく例として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】1つ又は複数の実装例による、脳の血管を解析するフレームワーク例を示す図である。
【
図2】1つ又は複数の実装例による、脳の血管を解析し、その解析に基づき血管の1つ又は複数の画像を生成するプロセス例を示す絵図である。
【
図3】1つ又は複数の実装例による、脳の一方の半球に位置する血管を脳の別の半球に位置するさらなる血管に関連して解析するフレームワーク例を示す図である。
【
図4】1つ又は複数の実装例による、血管の経路を追跡することにより個体の脳内に位置する血管を解析するプロセスの図解例400を示す図である。
【
図5】1つ又は複数の実装例による、個人の脳内に血管の閾値量の閉塞(blockage)がある確率を求めるプロセス例のフロー図である。
【
図6】1つ又は複数の実装例による、あり得る血管閉塞を示す個体の脳の1つ又は複数の画像を生成するプロセス例のフロー図である。
【
図7】1つ又は複数の実装例による、脳内の1つ又は複数の血管の経路を追跡することによりあり得る血管閉塞を決定するプロセス例700のフロー図である。
【
図8】1つ又は複数の実装例による、本明細書に記載する装置のうちの任意の1つ又は複数にインストールすることができるソフトウェアのアーキテクチャ例を示すブロック図である。
【
図9】1つ又は複数の実装例による、コンピュータシステムの形態の機械例の図式表現であり、この機械内で、本明細書で考察する方法論のうちの任意の1つ又は複数を機械に実施させるために、命令のセットを実行することができる。
【
図10】A-Dは、本明細書に記載する1つ又は複数の実装により、脳主幹動脈閉塞(large vessel occlusion)検出を実施した、脳の血管の画像を示す。
【
図11】A-Dは、解離に伴う左錐体内頸動脈(ICA)閉塞がある59歳の男性の脳の画像を示す。
【
図12】A-Dは、失語症及び右側脱力を示す50歳の男性に偽陽性判断がなされた、個体の脳の画像を示す。
【
図13】Aは、頭蓋内LVOの検出のためのROC曲線を示し、Bは、頭蓋内LVO又はM2-MCA閉塞のいずれかの検出のためのROC曲線を示す。
【
図14】A-Iは、本明細書に記載する1つ又は複数の実装により、脳主幹動脈閉塞検出が実施された、脳の血管の画像を示す。
【
図15】A-Bは、偽陰性判断がなされた血管の画像を示す。
【
図16】A-Dは、自動脳主幹動脈閉塞(LVO)検出のための結果に関連する画像例を示す。
【
図17】A-Bは、頭蓋内脳主幹動脈閉塞(LVO)の検出のためのROC曲線を示す。
【
図18】A-Cは、個々の血管セグメントの閉塞に対するROC曲線を示す。
【
図20】A-Bは、偽陰性結果のさらなる画像を示す。
【
図21】A-Cは、正常変異に関連する偽陽性結果の画像を示す。
【
図22】A-Cは、他の病理からの偽陽性結果のさらなる画像を示す。
【
図23】LVOの予測因子としての血管密度比スコアに対するROC曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
脳卒中は、動脈を通る血液の流れを中断している血栓を除去することによって治療することができる。血管内血栓除去術は、脳の動脈内の血栓を除去することにより血流を回復させるために使用される1つの方法であり得る。脳主幹動脈閉鎖(LVO)は、急性虚血性脳卒中のおよそ1/3をもたらし、さらに、この症状に関連する死亡率の90%及び生存者における深刻な神経障害の原因である。血管内血栓除去術は、前方循環脳主幹動脈閉塞のある患者における標準的な内科的治療と比較して、障害を低減させるとともに機能的転帰を向上させることが示されている。したがって、頭蓋内内頸動脈(ICA)又は中大脳動脈のM1セグメント(M1-MCA)の閉塞に対する最適な治療であり、脳卒中発症の後の最大24時間、厳選された患者において安全に実施することができる。血栓の除去が、LVOが起こっている個体に対して時間窓内で実施されない状況では、血液供給がないために脳組織の壊死が発生する可能性があり、それにより、重大な罹患率及び死亡率に至る可能性がある。したがって、LVOの迅速な診断により、この状態が起こっている個体の有益な治療を容易にすることができる。
【0007】
本明細書に記載するシステム及び技法は、脳の血管の異常を検出するための、脳内の造影された血管のX線コンピュータ断層撮影血管造影(CTA)画像を使用する脳の血管の解析に関する。1つ又は複数のさらなる実装は、磁気共鳴血管造影(MRA)、例えば、造影増強MRA、飛行時間(TOF)MRA、位相コントラスト(PC)MRA又は動脈スピンラベルベースMRA等を実施することができる。本明細書で用いる場合の「血管」は、血管の全長、又は、血管のセグメント等、血管の一部を指すことができる。実装例では、本明細書に記載する技法及びシステムを使用して、脳卒中をもたらす脳の大血管の閉塞及び深刻な狭窄を検出することができる。さまざまな例では、脳の血管における異常を示す画像を生成することができ、そうした画像を使用して、脳卒中に対する迅速な治療を必要としている可能性がある個体を特定することができる。このように、画像によって示される状態に基づき、個体の治療に優先順位を付けることができる。
【0008】
例示的な実装では、個体の脳の画像を取得することができる。さまざまな例では、画像は、患者の脳のコンピュータ断層撮影血管造影(CTA)画像を含むことができる。画像を処理及び解析して、患者の脳のさまざまな解剖学的特徴部を同定することができる。例えば、画像を解析して、それらの画像に含まれる骨を同定することができる。加えて、画像を解析して、それらの画像に含まれる血管を同定することができる。さまざまな実装では、限定されないが解剖学的領域等、ヒト脳の特徴部に対応する1つ又は複数のテンプレートを使用して、画像に含まれる脳のそれぞれの特徴部を同定することができる。
【0009】
脳の血管は異なる直径を有する可能性があり、それらの直径に従って、血管を特徴付けることができる。例示のために、脳の血管は、比較的大きい内腔径(例えば、約4mm~約8mm)を有するものとして、又は、比較的小さい内腔径(例えば、約1mm~約4mm未満)を有するものとして、分類することができる。さまざまな実装では、脳の血管における異常を検出するために実施される解析は、解析されている血管の直径に基づくことができる。
【0010】
実装例では、CTA画像のデータは、ボクセルとして表すことができ、これらのボクセルは、ハンスフィールド単位(HU:Hounsfield Unit)密度値に関連付けることができる。視覚化の目的で、所与のボクセルに関連する密度は、その画像におけるボクセルのグレースケール値によって示すことができる。例えば、比較的密度の高い特徴部は、より低いグレースケール値を有するとともに画像においてより暗く見える、比較的密度の低い特徴部よりも、より高いグレースケール値を有するとともに画像においてより白く見える。
【0011】
血管異常を検出する本明細書に記載する実装は、脳の各半球に位置する血管の密度の差を求めることができる。例えば、脳の第1半球における内頸動脈のセグメントの密度を、脳の第2半球における内頸動脈のセグメントに対応する密度と比較することができる。脳の異なる半球における対称的に位置する血管の相違の程度は、血管セグメントに関連する異常がある確率を示すことができる。脳の異なる半球における対称的に位置する血管の密度の差が、閾値差よりも大きい状況では、低い方の密度値を有する血管セグメントにおける異常の確率が、閾値確率よりも高い可能性がある。その結果、個体の脳の血管を含むとともに、異常に関連する可能性がある血管を強調表示する、さらなる画像を生成することができる。これらのさらなる画像は、個体に対する治療を決定する検討のために、1人又は複数人の臨床医に提供することができる。
【0012】
1つ又は複数のさらなる実装では、脳の異なる半球における血管の密度の比較なしに、LVOの存在を決定することができる。例えば、脳の大血管を示す解剖学的テンプレートを、患者の脳の画像と位置合せすることができる。これらのシナリオでは、HUでの密度値は、大血管の1つ又は複数の位置に対応する、患者の脳の領域において解析される。さまざまな例では、患者の血管に提供される造影剤として、ヨウ素を使用することができる。造影剤は、他の脳組織と対照的に血管の位置を示すことができる。1つ又は複数の例では、血管の複数の位置に対するHU値を、1つ又は複数の閾値HU値と比較することができる。患者の脳内の1つ又は複数の位置におけるHU値が閾値未満である状況では、LVOを検出することができる。異常な血管の存在の推論を使用して、患者の治療における行為を自動化することができる。例えば、コンピュータアルゴリズムは、別の病院の臨床医に警報をトリガするか又は放射線科医/臨床医によりこの患者のCTAの検討を優先させるために、それらの入力として、本明細書に記載する実装の出力を使用する。
【0013】
したがって、本明細書に記載する実装は、脳の血管セグメントにおけるあり得る異常を自動化方法で同定することができる。あり得る異常は、臨床医に提供することができる画像に視覚的に示すことができ、これらの画像は、臨床医による画像の検討に関して緊急性を示すことができる。このように、脳卒中等、ある状態の発症と、個体の脳の画像に基づく臨床医による診断との間の時間の量が、最小限になる。さらに、その状態の発症と、個体がその状態に対する治療を受けるときとの間の時間の量もまた、最小限にすることができる。さらに、ECRを提供することができない病院から患者の治療を引き継ぐ必要がある可能性がある、専門施設の臨床医に、標準治療チャネルを介するよりも早期にECR候補患者について注意を促すことができる。このように、個体の脳内の血管の閉塞又は狭窄に起因して血流が妨げられる個体の組織に対する損傷の量を、最小限にすることができる。
【0014】
図1は、1つ又は複数の実装例による、脳の血管を解析するフレームワーク例100を示す図である。フレームワーク100は、脳画像解析システム102を含むことができる。脳画像解析システム102は、個体の脳の画像を解析し、その個体の脳に関連するあり得る生物学的状態を同定することができる。さまざまな実装では、脳画像解析システム102は、個体の脳の画像を解析して、個体の脳の血管における異常を同定することができる。例えば、脳画像解析システム102は、脳内に位置する血管の特徴を解析して、その個体が、脳機能に悪影響を及ぼす可能性がある生物学的状態を有する確率を求めることができる。例示のために、脳画像解析システム102は、脳内に位置する血管の特徴を解析して、個体に脳卒中が起きている確率を求めることができる。例示的な例では、脳画像解析システム102は、脳内に位置する血管の特徴を解析して、脳主幹動脈閉塞を同定することができる。本明細書において1つ又は複数の実装で用いる場合の「近位」という用語は、個体の脳の正中線に比較的近い位置を指すことができ、「遠位」という用語は、その正中線から遠くなる、個体の脳の位置を指すことができる。
【0015】
脳画像解析システム102は、複数の画像104に関連するデータを取得することができる。画像104は、個体の頭部内に位置する特徴部を含むことができる。実装例では、画像104は、骨、血管、筋肉等、個体の頭部内の内部に位置する特徴部を示すことができる。例えば、画像104は、個体の脳と、血液を脳内に且つ脳から出るように循環させる血管と、頭蓋底及び頭蓋冠等、個体の頭部内に位置する骨とを含むことができる。
【0016】
画像104は、撮像装置106によって取り込むことができる。撮像装置106は、1つ又は複数の撮像技術を利用して画像104を取り込むことができる。例示的な例では、撮像装置106は、X線コンピュータ断層撮影(CT)撮像装置を含むことができる。実装例では、撮像装置106は、コンピュータ断層撮影血管造影(CTA)撮像装置を含むことができる。さらなる例示的な例では、撮像装置106は、コンピュータ断層撮影灌流(CTP)撮像装置を含むことができる。1つ又は複数の処理デバイスが表示デバイス上で画像104を生成するために使用することができる、撮像装置106によって生成されるデータは、脳画像解析システム102に画像データ108として提供することができる。画像データ108は、指定された標準規格に従ってフォーマットすることができる。例えば、画像データ108は、医療におけるデジタル画像と通信(DICOM:Digital Imaging and Communications in Medicine)標準規格に従ってフォーマットすることができる。画像データ108は、1つ若しくは複数のネットワークを介して、又は1つ若しくは複数のポータブルメモリ記憶デバイス(例えば、フラッシュデバイス)を介して、脳画像解析システム102に通信することができる。さらに、画像データ108は、ウェブサイトを介して、又はクラウドコンピューティングサービスプロバイダを介して、脳画像解析システム102にアクセス可能であり得る。さまざまなシナリオでは、画像データ108は、1つ又は複数の撮像技法によって生成されたデータを含むことができる。例示のために、画像データ108は、CTA撮像技法及びCTP撮像技法を使用して生成されたデータを含むことができる。
【0017】
例示的な実装では、撮像装置106は、個体112の脳110を含む1つ又は複数の画像104を取り込むことができる。個体112の脳110は、第1半球114及び第2半球116を含むことができる。第1半球114に位置する脳110の特徴部は、第2半球116に位置する脳110の特徴部に対して実質的に対称的に配置されている可能性がある。例えば、第1半球114に位置する血管118は、実質的に対称的な位置で第2半球116に位置する相対血管120を有する可能性がある。1つ又は複数の例示的な例では、第1半球114に位置する血管は、本明細書では対側血管と称することができ、第2半球116に位置する血管は、本明細書では同側血管と称することができる。
【0018】
脳画像解析システム102は、画像104の解析において複数の動作を実施して、画像104に示されている特徴部に基づき個体がさまざまな生物学的状態を有する確率を求めることができる。例えば、動作122において、脳画像解析システム102は、血管同定を実施することができる。実装例では、脳画像解析システム102は、個体の脳に含まれる血管に対応しない画像104の特徴部を同定し、それらの特徴部を除去して、修正画像データ124を生成することができる。修正画像データ124は、脳画像解析システム102が画像104に関連するデータの一部を除去した後に残っている、画像104に関連するデータの部分を含むことができる。修正画像データ124を使用して、元の画像セットに含まれていた1つ又は複数の特徴部を含まない、個体の脳の修正画像を生成することができる。例えば、脳画像解析システム102は、画像104に含まれる頸部の部分を同定し、頸部の部分に対応するデータを除去することができる。すなわち、脳画像解析システム102は、個体の頸部の一部である画像104の部分に対応するデータを削除することができる。脳画像解析システム102はまた、個体の頭部に位置する血管に対応しない画像104の部分を同定し、画像104からそれらの部分を除去することができる。例示のために、脳画像解析システム102は、画像104に含まれる骨を同定し、画像104から骨に関連するデータを削除して修正画像データ124を生成することができる。
【0019】
さまざまな実装では、血管解析システム102は、1つ又は複数のテンプレートを利用して、個体の脳内又は脳の周囲に位置する特徴部を同定することができる。例では、血管解析システム102は、個体の脳に関連する特徴部の位置を示すテンプレートを格納し、又は他の方法でそうしたテンプレートにアクセスすることができる。例示的な例では、血管解析システム102は、椎骨、頭蓋冠及び頭蓋底等、個体の頭部内に位置する骨構造を示すテンプレートを使用することができる。さらなる例では、血管解析システム102は、個体の脳内及び脳の周囲の血管の位置を示すテンプレートを使用することができる。例示のために、テンプレートは、内頸動脈及び中大脳動脈の位置を示すことができる。
【0020】
脳画像解析システム102によって使用されるテンプレートは、個体の脳と個体の脳に関連する特徴部とを含む、複数の個体から取得された参照画像を使用して生成することができる。画像に含まれる特徴部の平均又は中央位置を示す参照画像を使用して、合成画像を生成することができる。さまざまな実装では、指定された年齢群に対して、且つ/又はさまざまな生物学的状態を有する個体に対して、テンプレートを生成することができる。例えば、55歳~70歳の年齢の個体の脳を含む参照画像を取得することができる。これらの状況では、55~70歳群内の個体の脳に関連する特徴部の位置を示す参照画像から、1つ又は複数のテンプレートを生成することができる。55~70歳群内の個体とは異なる位置を有する、脳に関連する特徴部を有する可能性がある、40~54歳の個体に対して、さらなるテンプレートを生成することができる。さらなる例では、脳卒中が起こった個体、又は、限定されないが、胎児性PCA、ACAの低形成若しくは無形性A1セグメント、又は無形性若しくは低形成椎骨動脈等、脳血管系の正常変異がある個体の脳を含む参照画像から、1つ又は複数のテンプレートを生成することができる。
【0021】
実装例では、脳画像解析システム102により、テンプレートを使用して、レジストレーションプロセスを使用して個体の脳に関連する特徴部の位置を決定することができる。レジストレーションプロセスは、画像104をテンプレートと位置合せして、画像104をテンプレートと空間的に位置合せすることができる。実装例では、脳画像解析システム102は、1つ又は複数の座標変換を実施して、画像104をテンプレートと位置合せすることができる。例示的な例では、脳画像解析システム102は、1つ又は複数のテンプレートに含まれる対応する特徴部との位置合せの閾値量を有する、画像104に含まれる特徴部を決定し、画像104に含まれる特徴部がテンプレートの特徴部に対応することを示すことができる。具体的な例示的な例では、脳画像解析システム102は、画像104の特徴部がテンプレートの内頸動脈に対応すると判断することができる。そして、脳画像解析システム102は、画像104の特徴部を内頸動脈として標識することができる。いくつかの例では、脳画像解析システム102は、画像104に含まれる特徴部が内頸動脈であることを示すメタデータを生成することができる。
【0022】
さまざまな例では、1つ又は複数の第1テンプレートを使用して、第1半球114又は第2半球116のうちの少なくとも一方に位置するICAを同定することができる。さらに、1つ又は複数の第2テンプレートを使用して、第1半球114又は第2半球116のうちの少なくとも一方に位置するM1-MCAを同定することができる。さらに、1つ又は複数の第3テンプレートを使用して、第1半球114又は第2半球116のうちの少なくとも一方に位置するM2-MCAと、さらに遠位のMCA枝を同定することができる。1つ又は複数のさらなる例では、第1半球114及び第2半球116に位置する血管は、1つ又は複数の機械学習技法を使用して決定することができる。例えば、第1半球114及び第2半球116に位置する血管は、1つ又は複数の深層畳み込みニューラルネットワークを使用して同定することができる。脳110の1つ又は複数の領域もまた、1つ又は複数の畳み込みニューラルネットワーク等、1つ又は複数の機械学習技法を使用して決定することができる。
【0023】
動作126において、脳画像解析システム102は、血管の特徴付けに関連する動作を実施することができる。すなわち、脳画像解析システム102は、修正画像データ124又は画像データ108のうちの少なくとも1つを解析し、画像104に含まれる血管を同定することができる。画像データ108に含まれる血管は、画像における管状物体を同定する1つ又は複数のフィルタリングアルゴリズムを使用して同定することができる。例示的な例では、脳画像解析システム102は、画像データ108におけるデータ点に関連する輝度値に基づき、画像104において管状物体を同定することができる。
【0024】
脳画像解析システム102は、血管の特徴のセット128も求めることができる。例えば、脳画像解析システム102は、個体の脳内に位置する血管の直径を求めることができる。さらなる例では、脳画像解析システム102は、個体の脳内に含まれる血管の長さを求めることができる。さらに、脳画像解析システム102は、個体の脳内に含まれる血管の密度を求めることができる。さまざまな実装では、血管の密度は、画像104における血管の強度を使用して決定することができる。例示のために、ある材料によって吸収されるX線の量は、その材料の密度を示すことができ、その材料によって吸収されるX線の量は、画像104における材料の強度に対応することができる。画像104に含まれる特徴部の強度はまた、その特徴部の不透明度の尺度(measure)に対応することができる。
【0025】
脳画像解析システム102は、血管の1つ又は複数の特徴に従って、画像104に含まれる血管をグループ化することができる。例えば、画像104に含まれる血管は、血管の直径に従ってグループ化することができる。さらに、画像104に含まれる血管は、血管の長さに従ってグループ化することができる。さらなる例では、画像104に含まれる血管は、血管の密度に従ってグループ化することができる。例示的な実装では、脳画像解析システム102は、第1範囲の直径を有する第1グループ血管と、第2範囲の直径を有する血管の第2グループとを生成することができる。さまざまな例では、脳画像解析システム102は、少なくとも約0.2mmから約4mm以下の直径を有する血管の第1グループと、少なくとも約4mmから約10mm以下の直径を有する血管の第2グループとを生成することができる。
【0026】
脳画像解析システム102は、動作130において、個体の脳の異なる半球における血管の特徴の解析を実施することができる。脳画像解析システム102は、指定された直径を有するとともに、脳の所与の領域に位置している血管の密度を求めることができる。例えば、脳画像解析システム102は、脳の第1領域に位置している比較的大きい直径を有する血管及び血管のセグメントの密度を求めることができる。例示的なシナリオでは、脳画像解析システム102は、床突起上(supraclinoid)ICAの直径を求めることができる。第1領域は、中大脳動脈の近位M1セグメントも含む場合もある。
【0027】
脳画像解析システム102は、少なくとも脳の第2領域及び脳の第3領域等、第1領域の外側の脳の領域に位置する、約3.5mm以下等、比較的小さい直径を有する血管及び血管のセグメントの直径も求めることができる。例示のために、脳画像解析システム102は、中大脳動脈のM1セグメントの中部から遠位部を含む、脳の第2領域に位置する血管の直径を求めることができる。さらに、脳画像解析システム102によって解析されている脳の第3領域に位置する血管又は血管のセグメントは、中大脳動脈のM2セグメント及びM3セグメントを含むことができる。中大脳動脈のM2セグメント(例えば、上、下、分岐)は、島セグメントとも称することができる。
【0028】
解剖学的テンプレート又は他の事前指定された特徴部によって同定される、脳の異なる部分に位置する血管の密度を求めた後、脳画像解析システム102は、脳の異なる半球にわたるそれぞれの領域に位置する密度、又は、血管の位置が解剖学的テンプレートを介して見つけられた場合は、その絶対HU値を比較することができる。実装例では、脳画像解析システム102は、患者の脳の第1半球の解剖学的テンプレートによって配置された領域内に位置する血管のHU密度を、患者の脳の第2半球の対応する領域内に位置する血管の密度と比較することができる。1つ又は複数の例示的な例では、脳の半球間の血管密度の比較は、頭蓋内動脈を含む第1領域と、中大脳動脈のM1セグメントを含む第2領域と、中大脳動脈のM2セグメント及び中大脳動脈のさらなる遠位枝を含む第3領域とを含むことができる。
【0029】
半球にわたる個体の脳の異なる部分に位置する血管の密度を比較することにより、半球間の血管の密度の差を求めることができる。異なる半球における血管の密度の差は、血管に関連する異常を示すことができる。実装例では、脳内に位置する血管の異常は、生物学的状態に対応する可能性がある。例示的な実装では、脳画像解析システム102は、個体の脳の第1半球の領域に位置する血管の密度と、個体の脳の第2半球の相対領域に位置する血管の密度との差を求めることができる。個体の脳の異なる半球の相対領域における血管差の差が少なくとも閾値量である状況では、脳画像解析システム102は、個体の脳のある領域における血管に関する異常の少なくとも閾値確率があると判断することができる。脳画像解析システム102は、個体の脳の第1半球に位置する領域が、個体の脳の第2半球の相対領域に位置する血管の密度に対して閾値量未満である血管密度を有する状況では、個体の脳の領域に位置する血管に関して異常が存在すると判断することができる。すなわち、個体の脳内の血管に関する異常の確率は、血管の密度が一方の半球から他方の半球に関して低下するに従い、増大する可能性がある。
【0030】
いくつかの実装では、脳画像解析システム102は、個体の脳の半球にわたる複数の領域において血管密度の差を求めることができるが、他の状況では、脳画像解析システム102は、個体の脳の半球にわたる単一領域において血管密度の差を求めることができる。さまざまな実装では、脳画像解析システム102が脳の半球にわたる比較を実施する領域の数は、個体の脳の相対領域に位置する血管の密度の差の量に基づき、且つ/又は血管密度の少なくとも閾値量の差が存在する領域に基づくことができる。
【0031】
脳画像解析システム102は、132において、個体の脳の修正画像を生成することができる。修正画像は、少なくとも一部には、修正画像データ124に基づいて生成することができる。さまざまな実装では、修正画像は、個体の脳の血管を示すことができる。修正画像は、個体の脳の異なる部分における血管密度の差も示すことができる。例示的な実装では、脳画像解析システム102は、異常な血管の存在のさまざまな確率に関連する可能性がある、個々の脳の領域を示す画像を生成することができる。脳画像解析システム102は、個体がある生物学的状態を有することを示す、個体の脳の領域を示す画像も生成することができる。例示的な例では、脳画像解析システム102は、個体112の脳110の血管を含む修正画像134を生成することができる。修正画像134は、脳画像解析システム102が、少なくとも異常であるという閾値確率を有すると判断した血管を含む、個体112の脳110の領域、及び/又は、個体112に関する生物学的状態の存在に対応する特徴を有する血管を含む、個体112の脳110の領域を示すユーザインタフェース要素136も含む。ユーザインタフェース要素136は、個体112の脳110に関して表示されるオーバレイであり得る。1つ又は複数の例示的な例では、脳画像解析システム102によって生成される修正画像は、さまざまなシナリオでは、最大値投影(MIP:maximum intensity projection)を含むことができる。
【0032】
図2は、1つ又は複数の実装例による、脳の血管を解析し、その解析に基づき血管の1つ又は複数の画像を生成するプロセス例200を示す、絵図である。
図2の例示的な例では、個体の脳を含む個体の、撮像装置によって取り込まれる画像に関して実施することができる、複数の動作が示されており、
図2は、画像に対して実施されている動作の結果を示す複数の画像例を示す。
【0033】
特に、
図2は、自動脳主幹動脈閉塞(LVO)検出アルゴリズムの絵図を含む。(1)医療におけるデジタル画像と通信(DICOM)フォーマットでの生の薄層スライスのCT血管造影(CTA)画像をインポートした後、(2)C1の上のスライスのみがさらなる処理に使用され、CT頭部固定具が取り除かれる。(3)次いで、CT頭部テンプレートが患者のCTAと相互にレジストレーションされ、その後、(CTテンプレート上で先行して画定された)CTA解析領域は、患者のCTAスキャン上に空間的に変換される。次に、すべての骨が除去される(4)。管状フィルタが適用されて(5)血管が抽出される。次いで、(6)大血管を構成するすべてのボクセルの密度(ハンスフィールド単位)和と遠位血管を構成するすべてのボクセルの密度和とが計算され、(7)半球の比較がなされる。(8)血管密度和が事前指定された閾値を下回る領域は、最大値投影においてカラーオーバレイとして強調表示される。ICAは内頸動脈を示し、MCAは中大脳動脈を示す。このプロセスについて、より詳細に後述する。
【0034】
動作202において、プロセス200は、データインポート動作を含む。データインポート動作は、個体の脳204を含む1つ又は複数の画像に対応する画像データを取得することを含むことができる。画像データは、DICOM標準規格に従ってフォーマットすることができる。さらに、画像データは、コンピュータ断層撮影血管造影(CTA)撮像技術を使用してデータを生成する撮像装置から取得することができる。
図2の例示的な例では、画像データを使用して、頭蓋、歯、顎、椎骨等、個体の他の身体部分に加えて個体の脳204を含む画像206を生成することができる。実装例では、画像を表すデータは、ボクセルとして表すことができる。個々のボクセルは、3次元空間における位置を有することができ、個々のボクセルは、ボクセルのそれぞれの位置に対応する情報を符号化することができる。例示的な例では、画像データに含まれるボクセルは、個々のボクセルに対応するそれぞれの位置に関して検出されたX線の強度を符号化することができる。CTA検査の顕著な特徴は、ヨウ素等、X線減衰性である外因性造影剤の、患者の血流内への投与である。血管内のヨウ素は、X線を減衰させ、血管の自然な顕著性を増大させ、したがって、人が血管を正常組織から識別するのを容易にする。
【0035】
プロセス200は、動作208において、インポートされた画像データに関する前処理動作も含むことができる。例えば、患者の頭部よりも下方であるとともに患者の頸部を含む、画像206の部分210は、画像データから切り取ることができる。さまざまな実装では、個体の頭部に対応しない画像データの部分は、同定し、削除するか、又は、画像データを含む1つ又は複数のデータボリュームから移動させることができる。部分210に対応するデータが除去された後、画像212を生成することができる。さらに、画像216に示されている頭部固定具214に対応するデータもまた、前処理中に除去することができ、残りのデータを使用して、頭部固定具214を含まない画像218を生成することができる。頭部固定具214は、撮像装置の一部である可能性があり、画像データを取り込むために使用される撮像プロセス中に患者の頭部を保持するために使用することができる。画像の前処理は、1つ又は複数の撮像技術を使用して取得された初期画像に、1つ若しくは複数の体動補正及び/又は1つ若しくは複数の頭部傾斜補正を適用することも含むことができる。
【0036】
加えて、動作220において、プロセス200は、画像データの少なくとも一部から個体の解剖学的構造の部分を同定することを含むことができる。1つ又は複数のテンプレートを使用して、個体のさまざまな解剖学的部分を同定することができる。
図2の例示的な例では、ヒトの頭部部分に対応する第1テンプレート222及び第2テンプレート224を、1つ又は複数の画像レジストレーション技法を使用して、画像データに含まれる患者の頭部の部分と位置合せすることができる。第1テンプレート222及び第2テンプレート224を患者の画像データと位置合せした後、画像226を生成することができる。個体の脳204の領域を同定するために、第3テンプレート228、第4テンプレート230、第5テンプレート232及び第6テンプレート234も使用することができる。すなわち、第3テンプレート228は、個体の脳204のある領域に対応することができ、第4テンプレート230は、個体の脳204のさらなる領域に対応することができ、第5テンプレート232は、個体の脳204の別の領域に対応することができ、第6テンプレート234は、個体の脳204のさらに別の領域に対応することができる。個体の画像データに関してテンプレート228、230、232、234を使用して、1つ又は複数の空間変換を実施することができる。テンプレート228、230、232、234が個体の画像データに位置合せされた後、画像236を生成することができ、そこでは、画像236は、個体の脳204に関するヒト脳の領域を示す。
【0037】
動作238では、プロセス200は、骨除去プロセスを含むことができ、240によって示される特徴部等、骨に対応する画像データの部分を画像データから除去することができる。実装例では、個体の画像データとレジストレーションされた、ヒト頭部に位置する骨を示す1つ又は複数のテンプレート242を使用して、骨240を同定することができる。骨240に対応するデータが特定された後、画像データから、骨240に対応するデータを除去することができる。元の画像データから骨240(並びに頭部固定具及び頸部)に対応する画像データの部分が除去された後、画像データの残りの部分に対応する画像244を生成することができる。
【0038】
プロセス200は、動作246において、画像データを使用して、個体の脳204内に又はその近くに位置する血管を検出することを含むことができる。画像データに含まれる管状物体を同定する1つ又は複数の技法を適用することにより、血管を検出することができる。例示的な例では、所与のボクセルと背景ボクセルとのコントラストの量に基づき管状物体を同定する1つ又は複数のフィルタリング技法により、血管を検出することができる。さらに、1つ又は複数のテンプレートを使用して、脳内の血管の位置を求めることができる。さらに、血管の直径に従って、血管をグループ化することができる。例えば、画像データに含まれる血管は、比較的小さい直径を有する第1グループと、比較的大きい直径を有する第2グループとに分割することができる。さまざまな実装では、一般性を失うことなく、血管の第1グループは、少なくとも約0.2mmから約3mm以下の直径を有することができ、血管の第2グループは、少なくとも約3mmから約10mm以下の直径を有することができる。画像248は、脳204の比較的小さい血管のグループを含み、画像250は、脳204の比較的大きい血管のグループを含む。
【0039】
さらに、動作252において、プロセス200は、脳204の異なる領域に含まれる血管を評価することを含むことができる。加えて、脳204の異なる領域における血管に関して異なる解析を実施することができる。画像254は、脳204の第1半球に位置する第1領域をR1として示すとともに、脳204の第2半球に位置する相対第1領域をR1’として示す。R1及びR1’は、任意の形状であり、1つ又は複数の血管、及び/又は血管の1つ又は複数のセグメントを含むことができる。例えば、R1及びR1’は、内頸動脈の1つ又は複数のセグメント、又は、中大脳動脈の1つ又は複数のセグメントのうちの少なくとも1つを含むことができる。実装例では、R1及びR1’は、内頸動脈の頭蓋内部分と、中大脳動脈のM1セグメントの近位部とを含むことができる。さまざまな実装では、252における領域の評価は、比較的大きい直径を有する、領域R1に位置する血管に対応するボクセルの強度を求めることを含むことができる。加えて、比較的大きい直径を有する、領域R1に位置する血管に対応するボクセルの強度を総計して、これらの強度の和を求めることができる。さらに、比較的大きい直径を有する、領域R1に位置する血管に対応するボクセルの強度の和は、比較的大きい直径を有する、R1に位置する血管の長さに関して、評価することができる。
【0040】
252における個体の脳204に含まれる血管の特徴の評価は、画像256においてR2として示す第2領域と、画像256においてR3として示す第3領域とに含まれる血管の特徴を解析することも含むことができる。領域R2及びR3は、任意の形状とすることができ、脳204の第1半球に位置している。さらに、画像256は、脳204の第2半球に位置する相対第2領域R2’及び相対第3領域R3’も含む。画像256は、脳204内の血管を同定し且つ/又はグループ化するために使用することができる1つ又は複数のテンプレートの領域に対応するオーバレイも含む。例示のために、画像256は、脳204の第1半球に位置する第1テンプレート領域RT3と、脳204の第2半球に位置する第2テンプレート領域RT3’とを示す。実装例では、第2領域R2及び相対第2領域R2’は、中大脳動脈のM1セグメントの遠位部と、中大脳動脈のM2セグメントの部分とを含むことができる。さらに、第3領域R3及び相対第3領域R3’は、中大脳動脈のM3セグメント、及び場合により中大脳動脈のM4セグメント等、中大脳動脈のより遠位のセグメントを含むことができる。領域R2、R3、R2’及びR3’に含まれる血管は、領域R1及びR1’に含まれる血管の直径に関して比較的小さい直径を有することができる。さまざまな実装では、領域R2、R3、R2’及びR3’に含まれる、256における血管の特徴の評価は、領域R2、R3、R2’及びR3’に位置する血管に対応するボクセルのHU強度を求めることを含むことができる。いくつかの例示的な例では、それぞれの領域R2、R3、R2’及びR3’に位置する血管に対応するボクセルの強度の和を求めることができる。すなわち、領域R2に位置する血管に対応するボクセルの強度の和を求めることができ、領域R3に位置する血管に対応するボクセルの強度の和を求めることができ、領域R2に位置する血管に対応するボクセルの強度の和を求めることができ、領域R3’に位置する血管に対応するボクセルの強度の和を求めることができる。
【0041】
プロセス200は、動作258において、脳204の血管内に異常が存在するか否かを判断する動作を実施することを含むことができる。脳204の領域の血管に異常が存在するか否かの判断は、脳204の半球にわたる血管の強度の比を求めることを含むことができる。例えば、R1に位置する血管に対応するボクセルの強度の、R1’に位置する血管に対応するボクセルの強度に対する差を示す第1比を求めることができる。加えて、R2に位置する血管に対応するボクセルの強度の、R2’に位置する血管に対応するボクセルの強度に対する差を示す第2比を求めることができる。さらに、R3に位置する血管に対応するボクセルの強度の、R3’に位置する血管に対応するボクセルの強度に対する差を示す第3比を求めることができる。
【0042】
脳204の半球にわたる異なる領域に位置する血管に対応するボクセルの強度の差を求めることにより、脳204の半球にわたる個々の領域における血管密度の差を特定することができる。脳204の異なる半球における実質的に対称的に位置する領域に位置する血管の密度の差が、1つ又は複数の閾値差よりも大きい状況では、異常が存在する可能性がある。さまざまな実装では、脳204の異なる半球における相対領域のボクセルの強度の差を示す比を求めた後、個々の領域に対して、その比を閾値と比較することができる。閾値は、血管に関して異常が存在する確率を示すことができる。半球の比の代わりに単一位置を使用する場合、血流における典型的な量のヨウ素造影剤で正常血管が不透明化した状態で、HU値に対する絶対的な又は相対的な変化を評価することができる。ヨウ素不透明化のこれらの正常なHU値は、大動脈弓等、各患者の大血管からの文献値又は参照値から得られる、200~300HUであり得る。
【0043】
例示的な例では、脳204に関連する血管の異常の検出において、閾値のスキーマを実施することができる。例えば、このスキーマは複数の層を含みことができ、第1層が、脳204の異なる半球に位置する相対領域に対する血管密度の緩やかな低下を示すとともに、脳204の異なる半球における相対領域の間の血管密度の最大差を示す最後の層までわたっている。実装例では、スキーマの第1層は、脳204の第1半球に位置する領域と、脳204の第2領域に位置する相対領域との間における、少なくとも約80%から約100%までの血管密度の低下に対応することができる。さらに、スキーマの第2層は、脳204の第1半球に位置する領域と、脳204の第2半球に位置する相対領域との間における、少なくとも約75%から約80%以下までの血管密度の低下に対応することができる。スキーマの第3層は、脳204の第1半球に位置する領域と、脳204の第2半球に位置する相対領域との間における、少なくとも約60%から約74%以下までの血管密度の低下に対応することができる。スキーマの第4層は、脳204の第1半球に位置する領域と、脳204の第2半球に位置する相対領域との間における、少なくとも約45%から約59%以下までの血管密度の低下に対応することができる。さらに、スキーマの第5層は、脳の第1半球に位置する領域と、脳204の第2半球に位置する相対領域との間における、約45%以下の血管密度の低下に対応することができる。スキーマの例示的な例を上述しているが、層の数、閾値レベル及び範囲に対する他のさまざまな値を選択することができる。
【0044】
血管における異常を決定するために適用される閾値は、異なる領域に対して異なる可能性がある。例示的な例では、脳204の1つの領域において異常を検出するための閾値は、スキーマの1つの層に対応することができ、脳204の別の領域において異常を検出するための閾値は、スキーマの別の層に対応することができる。さらなる例示的な例では、脳204のR1又はR1’領域において血管の異常を検出するための閾値は、領域R1及びR1’に位置する相対血管の少なくとも1つの対の間における血管密度の少なくとも約60%から75%以下の低下であり得る。さらなる例示的な例では、脳204のR2又はR2’領域において血管の異常を検出するための閾値は、領域R2及びR2’に位置する相対血管の少なくとも1つの対の間における血管密度の約45%以下の低下であり得る。
【0045】
さまざまな実装では、脳204の領域に対して、いくつかの領域において半球にわたる血管の密度の比較が、別の領域における半球にわたる血管密度の閾値低下が満足されるまで実施されないように、優先順位を割り当てることができる。例示のために、領域R1と領域R1’との血管密度の差が差の閾値範囲内にない限り、領域R2と領域R2’との血管密度の差を求めることはできない。加えて、領域R2と領域R2’との血管密度の差が差の閾値範囲内にない限り、領域R3と領域R3’との血管密度の差を求めることはできない。領域R1、R2、R3、R1’、R2’又はR3’のうちの1つ又は複数における血管密度の低下の量に基づき、個体の脳204において異常を検出することができる。
【0046】
さらなる実装では、R1領域及びR1’領域における血管密度の差が第1閾値密度よりも大きいシナリオでは、脳半球の間の血管密度の比較解析は停止する可能性があり、R1領域又はR1’領域に位置する血管の異常を推断することができる。R1領域及びR1’領域における血管密度が第1閾値密度よりも小さい状況では、領域R2と領域R2’との血管密度の差の解析を実施することができる。これらの状況では、R2領域及びR2’領域における血管密度の差を求めることができる。R2領域及びR2’領域の血管の間の密度が第2閾値密度よりも大きい場合、脳の連続した半球の血管密度の比較解析は停止する可能性があり、R2領域又はR2’領域に位置する異常を推断することができる。さまざまな例では、第2閾値密度は、第1閾値密度とは異なり得る。R2領域又はR2’領域における血管密度が第2閾値密度よりも小さいシナリオでは、R3領域及びR3’領域における血管密度を解析して、脳204のR3領域又はR3’領域に位置する1つ又は複数の血管に異常が存在するか否かを判断することができる。このように、脳204のそれぞれの半球に位置する比較的対称的な領域の間の初期比較解析が解析され、先行する領域の対に異常が見つからない場合を除き、脳204のさらなる領域の比較解析が実施されない、漸進的解析を実施することができる。
【0047】
動作260において、プロセス200は、血管における異常が存在する可能性がある、個体の脳204のあり得る領域を示す報告を生成することを含むことができる。実装では、最大値投影(MIP)画像を生成するために使用することができるデータを生成することができる。MIP画像は、個体の脳204の特徴部を含むことができる。例えば、MIP画像は、個体の脳204の血管を含むことができる。さまざまな実装では、MIP画像を生成するために使用されるデータは、202で取得された初期画像データのサブセットであり得る。実装例では、MIP画像を生成するために使用されるデータは、202でインポートされた初期データを含むことができ、頭部以外の個体の身体の特徴部、骨に対応する頭部の部分、及び、初期画像データを生成するために使用された撮像装置の頭部固定具等、個体の身体の外側に位置する特徴部に対応する、初期データの部分は除去されている。
【0048】
さらに、血管異常を含む可能性がある脳204の領域を、強調表示することができる。いくつかの実装では、血管異常を含む可能性がある、脳204の1つ又は複数の領域を示す、1つ又は複数のオーバレイを生成することができる。例示的な例では、オーバレイの色は、個体の脳204の血管における異常の確率又は重症度のうちの少なくとも一方に対応することができる。例示的な実装では、青色は、少なくとも約75%から約80%以下までの、脳領域に対する半球の間の血管密度の低下に対応することができる。さらに、緑色は、少なくとも約60%から約75%以下までの、脳領域に対する半球の間の血管密度の低下に対応することができ、黄色は、少なくとも約45%から約60%以下までの、脳領域に対する半球の間の血管密度の低下に対応することができる。さらに、赤色は、45%以下の、脳領域に対する半球の間の血管密度の低下に対応することができる。さまざまな例では、80%を超える、脳領域に対する半球の間の血管密度の低下は、画像において色によって示されない場合がある。
図2の例示的な例では、画像262は、強調表示部分264を含み、それは、その強調表示部分264に対応するその領域におけるあり得る血管異常を示す。
図2の例示的な例は、強調表示部分268を有する画像266も含み、その強調表示部分268に対応するその領域におけるあり得る血管異常を示す。
【0049】
MIP画像に対するデータが生成された後、そのデータをエクスポートして、臨床医に表示することができるユーザインタフェースを生成するために使用することができる。MIP画像に対するデータは、DICOM標準規格に従ってフォーマットすることができる。実装例では、臨床医による画像の検討に対して、画像に含まれるオーバレイの色分けに基づいて優先順位を付けることができる。例えば、赤色オーバレイを含む画像に対して、緑色オーバレイを含む画像よりも、検討に対して高い優先順位を付けることができ、緑色オーバレイを含む画像に対して、青色オーバレイを含む画像又はオーバレイのない画像よりも、検討に対して高い優先順位を付けることができる。プロセス200の結果に基づく画像検討の優先順位付けにより、個体の脳内の血管異常に関連する生物学的状態の発症と、治療が個体に提供されるときとの間の時間の量を最小限にすることができる。したがって、異常によってもたらされる悪影響もまた最小限にすることができる。
【0050】
図3は、1つ又は複数の実装例による、脳の一方の半球に位置する血管を、脳の別の半球に位置するさらなる血管に関連して解析する、フレームワーク例300を示す図である。フレームワーク300は、動作302において、個体の脳304の半球間で血管の密度値を比較することを含むことができる。例示のために、脳304は、第1半球306及び第2半球308を含むことができる。
図3の例示的な例は、値の第1範囲に含まれる直径の血管を有する脳304の血管を含む第1図解310と、値の第2範囲に含まれる直径の血管を有する脳304の血管を含む第2図解312とを含む。さまざまな実装では、値の第1範囲に含まれる直径の少なくとも一部は、値の第2範囲に含まれる直径よりも大きい可能性がある。例示的な例では、図解310に示す値の第1範囲に含まれる直径は、少なくとも約3mmから約8mm以下、少なくとも約3.5mmから約9mm以下、少なくとも約4mmから約10mm以下、又は少なくとも約3.2mmから約10.5mm以下であり得る。さらに、図解312に示す値の第2範囲に含まれる直径は、少なくとも約0.1mmから約3mm以下、少なくとも約0.3mmから約3.5mm以下、少なくとも約0.5mmから約4mm以下、又は少なくとも約0.1mmから約2.8mm以下であり得る。
【0051】
脳304は、複数の領域に分割することができ、第1半球306の領域は第2半球308に相対領域を有する。例えば、第1半球306は第1領域314を含むことができ、第2半球308は、第1領域314に対応するとともに第1領域314に関して実質的に対称的に位置する、第1相対領域316を有することができる。さらに、第1半球306は第2領域318を含むことができ、第2半球308は、第2領域318に対応するとともに第2領域318に関して実質的に対称的に位置する第2相対領域320を含むことができる。さらに、第1半球306は第3領域322を含むことができ、第2半球308は、第3領域322に対応するとともに第3領域322に関して実質的に対称的に位置する第3相対領域324を含むことができる。
【0052】
例示的な例では、第1領域314は、第1半球306に位置する、頭蓋内内頸動脈の少なくとも一部と、中大脳動脈のM1セグメントの近位部とを含むことができ、相対第1領域316は、第2半球308に位置する、頭蓋内内頸動脈の少なくとも一部と、中大脳動脈のM1セグメントの近位部とを含むことができる。さらなる例示的な例では、第2領域318は、第1半球306に位置する、中大脳動脈のM1セグメントの中部から遠位部を含むことができ、相対第2領域320は、第2半球308に位置する、中大脳動脈のM1セグメントの中部から遠位部を含むことができる。さらに別の例示的な例では、第3領域322は、第1半球306に位置する、中大脳動脈のM2セグメントのうちの1つ又は複数の少なくとも一部を含むことができ、相対第3領域324は、第2半球308に位置する、中大脳動脈のM2セグメントのうちの1つ又は複数の少なくとも一部を含むことができる。さまざまな実装例では、第3領域322は、第1半球306に位置する中大脳動脈のM3セグメントのうちの1つ又は複数の少なくとも一部を含むことができ、相対第3領域324は、第2半球308に位置する中大脳動脈のM3セグメントのうちの1つ又は複数の少なくとも一部を含むことができる。
【0053】
脳304の半球の間の血管の密度値の比較は、脳304の両半球306、308における個々の血管及び/又は血管のセグメントに対する密度値を求めることを含むことができる。例えば、第1血管326に対して密度を求めることができ、相対第1血管328に対して密度を求めることができる。さらに、第2血管330に対して密度を求めることができ、相対第2血管332に対して密度を求めることができる。さらなる例示的な例では、第3血管334に対して密度を求めることができ、相対第3血管336に対して密度を求めることができる。さらに追加の例示的な例では、第4血管338に対して密度を求めることができ、相対第4血管340に対して密度を求めることができる。また、第5血管342に対して密度を求めることができ、相対第5血管344に対して密度を求めることができる。
【0054】
血管326、330、334、338、342及び相対血管328、332、336、340、344に対して密度値を求めた後、それらの密度値を比較することができる。例示のために、第1血管326の密度値は、相対第1血管328の密度値と比較することができる。また、第2血管330の密度値は、相対第2血管332の密度値と比較することができる。加えて、第3血管334の密度値は、相対第3血管336の密度値と比較することができる。さらに、第4血管338の密度値は、相対第4血管340の密度値と比較することができる。第5血管342の密度値もまた、相対第5血管344の密度値と比較することができる。
【0055】
さまざまな実装では、脳304のある領域に位置する個々の血管の密度値の和を求めて、相対領域における血管密度の和と比較することができる。例えば、第2領域318に位置する血管の密度の和は、第2血管330の密度を第3血管332の密度に且つ第5血管342の密度に可算することにより、求めることができる。さらに、相対第2領域320に位置する血管の密度の和は、相対第2血管332の密度を相対第3血管336の密度に且つ相対第5血管344の密度に可算することにより、求めることができる。そして、第2領域318に対する血管密度の和を、相対第2領域320に対する血管密度の和と比較することができる。
【0056】
フレームワーク300は、動作346において、脳304の異なる半球306、308における血管の密度値の差を示す尺度を求めることも含むことができる。さまざまな実装では、半球306、308の間の血管の密度値の差を示す尺度は、第1半球306のある領域に位置する少なくとも1つの血管の、第2半球308の相対領域に位置する少なくとも1つの血管の血管密度に対する血管密度に基づく、比を含むことができる。例示的な例では、第1血管326の密度の値と相対第1血管328の密度の値とを使用して、比を求めることができる。実装例では、半球306、308にわたる血管密度の差は、百分率差として表すことができる。例示のために、第1半球306のある領域に位置する少なくとも1つの血管の密度の、第2半球308の相対領域に位置する少なくとも1つの血管の密度に対する差の百分率を、求めることができる。実装では、半球306、308のうちの一方に位置する1つ又は複数の血管の密度の、半球306、308のうちの他方に位置する1つ又は複数の相対血管に対する低下の百分率を、求めることができる。例えば、相対第2血管332の密度が第2血管330の密度の70%であることを示す尺度を求めることができる。別の例では、相対第2血管332及び相対第3血管336の密度の和が、第2血管330及び第3血管334の密度の和の65%であることを示す尺度を求めることができる。
【0057】
348において、フレームワーク300は、基準350等、1つ又は複数の基準に基づいて尺度を評価することを含むことができる。例えば、動作346で求められた尺度を、1つ又は複数の閾値と比較することができる。実装では、閾値は、脳304の血管に関する異常の確率を示すことができる。さらに、閾値は、脳304の血管に関する異常の重症度を示すことができる。さまざまな実装では、一方の半球306、308に位置する1つ又は複数の血管の、他方の半球306、308に位置する1つ又は複数の相対血管の密度に関する低下が大きいほど、脳304に関連する血管に関して異常が存在する確率が高いこと、又は、脳304に関連する血管の異常の重症度が高いことのうちの少なくとも一方を示すことができる。例示的な例では、少なくとも約45%から約60%以下である、異なる半球306、308に位置する相対血管の1つ又は複数の対の間の密度の低下は、少なくとも約75%から約80%以下である、異なる半球306、308に位置する相対血管の対の間の密度の低下よりも、脳304において1つ又は複数の血管の異常が存在する確率が高いこと、又は、脳304に関連する1つ又は複数の血管の異常の重症度が高いこととのうちの少なくとも一方を示すことができる。
【0058】
さらに、脳304の異なる領域に関連する血管に対する優先順位を使用して、それぞれの領域に位置する血管の密度値の差を示す尺度を評価することができる。例示的な例では、第1領域314及び相対第1領域316に位置する血管に対する密度値の差が1つ又は複数の閾値基準を満足させるまで、第2領域318及び相対第2領域320に位置する血管に対する密度値の差を示す尺度を評価することができない。さらに、第2領域318及び相対第2領域320に位置する血管に対する密度値の差が1つ又は複数の閾値基準を満足させるまで、第3領域322及び相対第3領域324に位置する血管に対する密度値の差を示す尺度を評価することができない。さまざまな実装では、領域優先順位は、血管密度差が、脳304の他の領域における血管密度差よりも比較的高い、脳の血管に関する異常の確率を示す、脳304の領域を示すことができる。領域優先順位は、血管密度差が、ある領域の血管において脳304の別の領域における血管密度差よりも高い異常の重症度を示す、脳304の領域も示すことができる。
【0059】
図4は、1つ又は複数の実装例による、血管の経路を追跡することにより個体の脳内に位置する血管を解析するプロセスの図解例400を示す図である。図解400は、脳の他の部分に対するコントラストにより脳の血管を示すことができる。ヨウ素等の造影剤を個体内に注入することができ、脳の血管内の造影剤の位置を示す、CTA等の撮像技法を実施することができる。1つ又は複数の実装では、脳内の血管の存在は、造影剤が見出される脳内の位置と、造影剤が存在しないか又は1つ若しくは複数の閾値量未満の量で存在する脳内の位置とのコントラストの量を測定することにより、追跡することができる。さまざまな例では、
図4に関して記載する技法は、対称的に位置する血管に対する血管密度の比較解析を実施することができない状況において実施することができる。
【0060】
図解400は、第1血管402及び第2血管404を含む複数の血管を示す。
図4に示す血管に沿った経路を追跡して、予測される終点の前で経路が終端しているか否かを判断することができる。MCAの一部で起始している血管の経路を追跡することができる。
図4の例示的な例では、図解400は、脳の第1半球に位置する第1MCA領域406と、脳の第2半球に位置する第2MCA領域とを示す。第1MCA領域406は、脳の一方の半球におけるMCAの近位端に位置することができ、第2MCA領域408は、脳の第2半球におけるMCAの近位端に位置することができる。さらに、第1始点410が、第1MCA領域406に位置することができ、第1血管420を追跡する開始位置を示すことができる。さらに、第2始点412が、第2MCA領域408に位置することができ、第2血管404を追跡する開始位置を示すことができる。第1MCA領域406内のボクセルであって、第1MCA領域406内に位置するさらなるボクセルに関連して最大の血管性(vesselness)値を有するボクセルを決定することにより、第1始点410を特定することができる。本明細書で用いる場合の「血管性値」は、所与のボクセルが血管の少なくとも一部を含む確率に対応することができる。加えて、第2MCA領域408内のボクセルであって、第2MCA領域408内に位置するさらなるボクセルに関連して最大の血管性値を有するボクセルを決定することにより、第2始点412を特定することができる。第1MCA領域406又は第2MCA領域408のうちの少なくとも一方に含まれるボクセルに対する血管性値は、背景に関する相対HUの輝度の量を示すことができる。1つ又は複数の例示的な例では、ヘシアン(Hessian)フィルタ行列の固有値を計算することにより、第1MCA領域406又は第2MCA領域408のうちの少なくとも一方に位置するボクセルに対する血管性値を求めることができる。ヘシアンフィルタ行列の固有値は、ヘシアンフィルタで計算された主固有ベクトル次元に沿ったコントラストの変化に対応することができる。
【0061】
経路をトラッキングすべき各血管に対して、終点も求めることができる。図解400は、第1血管402に対応する第1終点414と、第2血管404に対応する第2終点416とを含むことができる。第1終点414及び第2終点416は、MCA遠位端が脳の遠位部に達するために通過する脳のそれぞれの領域に対応することができる。1つ又は複数の実装では、図解400は、第1終点414で終端する第1血管402に沿った第1経路418を示す。図解400は、第2終点416に達する前に終端する第2血管404に沿った第2経路420も示す。
【0062】
第1経路418及び第2経路420は、第1始点410及び第2始点412で開始するボクセルに沿った最低コストの経路を特定することにより決定することができる。1つ又は複数の例では、第1経路418は、第1始点410で開始し、第1始点410からのすべてのあり得る経路を評価して現時点での最低コストを有する経路に沿って移動することにより、継続することができる。第2経路420は、第2始点412で開始し、第2始点からのすべてのあり得る経路を評価して現時点での最低コストを有する経路に沿って移動することにより、継続することができる。さまざまな例では、第1経路418及び第2経路420は、第1血管402及び第2血管404に沿った最低コストの経路の再帰探索を実施することにより決定することができる。比較的高い血管性値を有するボクセルは、背景に関して比較的高い量のコントラストを有するとともに、血液の流れが妨げられない血管に対応する、図解400内の位置に対応する。1つ又は複数の例では、比較的高い血管性値を有するボクセルに移動するコストは、比較的低い血管性値を有するボクセルに移動するコストよりも低い。さまざまな例では、閾値未満である血管性値又はゼロを含むか若しくはゼロに近づく血管性値を有するボクセルを通過するコストは、通過するのに非常に高いか又は無限のコストを有する可能性がある。
【0063】
探索は、第1終点414又は第2終点416等の終点とともに位置するボクセルに達すると、終了することができる。1つ又は複数の実装では、第1終点414に位置する少なくとも1つのボクセルと、第2終点416に位置する少なくとも1つのボクセルとは、第1終点414又は第2終点内にあるものとして標識することができる。これらのシナリオでは、第1終点414又は第2終点416に位置していることに対応する標識を有するボクセルの検出により、第1血管402又は第2血管404に沿った最低コストの経路に対する探索を終了することができる。さらに、探索は、現ボクセルから移動すべきボクセルが残っていないと判断することに応じて終了することができる。例えば、有限コストを有する第1血管402又は第2血管404に対応するボクセルにはすでに訪れており、有限コストが存在するさらなるボクセルは残っていない。これらの状況では、経路は、終点に位置しているものとして標識されたボクセルに達する前に終了する可能性がある。さらなる例では、探索は、現時点での最低コストの経路の総コストが事前定義された最大コストに対応すると判断することに応じて、終了することができる。事前定義された最大コストに達する少なくともいくつかの状況では、経路は、終点に位置しているものとして標識されたボクセルに達する前にも終端する可能性がある。血管内の血流の中断、又は閾値量を超える血管の狭窄は、その血管に対する終点に達する前の血管に沿った経路の終了によって示すことができる。これらの状況では、患者の脳の画像の上にあり得るLVOを示すことができる。
【0064】
1つ又は複数の実装では、血管の位置は、1つ又は複数のテンプレートを使用して決定することができる。例示のために、第1血管402の位置及び第2血管404の位置は、脳内に位置する血管の位置を示す1つ又は複数のテンプレートを使用して決定することができる。1つ又は複数のテンプレートによって指定されるように、血管の位置に関して、HU値の解析を実施することができる。1つ又は複数の例では、HU値は、1つ又は複数のテンプレートによって指定される血管の位置の、約±5%、±10%、±15%、±20%又は±25%等の許容範囲内で決定することができる。
【0065】
図4の例示的な例では、図解400は、第1経路418が第1始点410で開始し、第1終点414内の位置まで進むことを示す。したがって、この状況では、第1始点410から第1終点414までの第1血管402内の閉塞の可能性は、比較的低い。図解400は、第2経路420が第2始点412で開始し、第2終点416に達する前に終了することも示す。したがって、このシナリオでは、第2始点412と第2終点416との間の第2血管404内の閉塞の可能性は、比較的高い。
図4に関して記載する技法を使用して、ICA及びMCAのさまざまな部分等、脳の半球に対称的に配置され得る血管内の異常を決定することができる。さらに、
図4に関して記載する技法を使用して、脳底動脈等、対称性のない単一血管における異常を決定し、又は血栓の遠位/後の血流の再構成により比較的短いセグメントにわたり閉塞が発生しているか否かを判断することも可能である。
【0066】
図5は、1つ又は複数の実装例による、個体の脳内に位置する血管に関して異常がある確率を求めるプロセス例500のフロー図である。動作502において、プロセス500は、個体の脳内に位置する血管を示す1つ又は複数の画像に対応する画像データを取得することを含むことができる。画像データは、コンピュータ断層撮影(CT)撮像装置又は磁気共鳴画像化(MRI)装置等の撮像装置によって生成することができる。さまざまな実装では、画像データは、ボクセルとして1つ又は複数の画像に含まれる特徴部を表すことができる。ボクセルは、3次元空間において互いに関する位置を有することができる。さらに、個々のボクセルは、強度値に関連付けることができる。
【0067】
例示的な例では、コンピュータ断層撮影撮像装置は、複数のX線検出器を含み、X線検出器によって検出されるX線をさまざまな角度で放出することができる。画像データは、スライスでデータを指定された間隔で取り込むCT撮像装置によって生成することができる。スライスは、少なくとも約0.5mmから約5mm以下の厚さを有し、少なくとも約0.5mmから約5mm以下の増分で取り込まれ得る。所与の検出器で検出されるX線の強度は、画像においてグレースケールに従って表すことができる。画像の一部の強度は、画像のその部分に含まれる物質の密度に対応することができる。例示的な例では、物質の密度は、ハンスフィールド単位で表すことができ、物質のハンスフィールド密度は、その物質の物理的密度に対応することができる。慣習により、比較的高密度である物質は、CT画像において比較的白い色として見える可能性があり、比較的低密度である物質は、CT画像において比較的暗い色として見える可能性がある。CT撮像装置によって検出される強度は、撮像されている物質の不透明度にも対応することができる。さまざまな例示的な例では、撮像装置は、CT血管造影(CTA)撮像装置を含むことができる。
【0068】
加えて、動作504において、プロセス500は、脳の第1半球の第1領域に位置する血管の第1グループに対して密度の第1尺度を求めることを含むことができる。例示的な例では、第1領域は、第1半球に位置する、頭蓋内内頸動脈の少なくとも一部と中大脳動脈のM1セグメントの少なくとも一部とを含むことができる。血管の第1グループに対する密度の第1尺度は、画像データに含まれる強度値に基づくことができる。第1グループに含まれる個々の血管に対する密度は、個々の血管に対応するボクセルに関連する強度値を加算することにより求めることができる。実装例では、第1グループに含まれる血管に対する密度の個々の尺度を加算して、第1尺度の和を生成することができる。
【0069】
プロセス500は、506において、脳の第2半球の第2領域に位置する血管の第2グループに対して密度の第2尺度を求めることを含むことができる。第2領域は、第1領域に対する相対領域であり得る。さまざまな実装では、第2領域は、第1領域に関して実質的に対称的に位置することができる。例示的な例では、第2領域は、第2半球に位置する、頭蓋内内頸動脈の少なくとも一部と中大脳動脈のM1セグメントの少なくとも一部とを含むことができる。血管の第2グループに対する密度の第2尺度は、画像データに含まれる強度値に基づくことができる。第2グループに含まれる個々の血管に対する密度は、個々の血管に対応するボクセルに関連する強度値を加算することにより求めることができる。実装例では、第2グループに含まれる血管に対する密度の個々の尺度を加算して、第2尺度の和を生成することができる。
【0070】
動作508において、プロセス500は、脳の異なる半球に位置する個々の領域の間の1つ又は複数の差異を示す尺度を求めることを含むことができる。この尺度は、密度の第1尺度と密度の第2尺度との差を示すことができる。さまざまな実装では、第1半球及び第2半球に位置する個々の血管の密度値の差を求めることができる。例えば、第1半球に位置する頭蓋内内頸動脈の密度の尺度と、第2半球に位置する頭蓋内内頸動脈の密度の尺度との差を、求めることができる。さらなる例では、第1半球に位置する中大脳動脈のM1セグメントの密度の尺度と、第2半球に位置する中大脳動脈のM1セグメントの密度の尺度との差を、求めることができる。さまざまな実装では、血管の第1グループに対する密度の第1尺度の和と、血管の第2グループに対する密度の第2尺度の和との差を、求めることができる。実装例では、密度の第1尺度と密度の第2尺度との1つ又は複数の差を示すように、1つ又は複数の比を求めることができる。例示のために、血管の第2グループの密度の個々の尺度に対する、血管の第1グループの密度の個々の尺度に対応する比を、求めることができる。さらに、密度の第2尺度の和に対する密度の第1尺度の和に対応する比を、求めることができる。
【0071】
さらに、動作510において、少なくとも個体の脳内に位置する領域に関する異常の確率を、求めることができる。さまざまな実装では、異常は、個体の脳の領域に位置する少なくとも1つの血管の閉塞を含むことができる。例示的な例では、閉塞は、脳主幹動脈閉塞であり得る。さらに、個体の脳内に位置する少なくとも1つの血管の閉塞は、脳卒中を起こしている個体を示すことができる。
【0072】
実装では、血管に関して異常が存在する確率は、個体の脳の異なる半球に位置する血管の密度の差に対応することができる。異なる半球における血管密度の差の量の尺度は、一方の半球(例えば、同側半球)における、別の半球(例えば、対側半球)における平均血管信号密度に関連する、平均血管信号密度に対応することができる。さまざまな実装では、血管の密度の低下は、血管に関する異常を示すことができる。血管の密度の低下は、血管の密度を対向する半球におけるその相対血管と比較することにより特定することができる。個体の脳の第1半球に位置する第1血管の密度が、少なくとも、脳の第2半球における相対血管の密度よりも小さい閾値量である状況では、第1血管に異常が存在する可能性がある確率は、閾値確率よりも高い可能性がある。さらに、脳の領域に位置する血管のグループの密度の低下の量は、そのグループに含まれる血管のうちの少なくとも1つにおける異常の確率を示すことができる。例示のために、脳の第1半球のある領域に含まれる血管の第1グループに対する密度値の和の、脳の第2半球の相対領域に含まれる血管の第2グループに対する密度値の和に対する低下の量は、血管の第1グループに含まれる少なくとも1つの血管に関して異常が存在する確率を示すことができる。
【0073】
1つ又は複数の例では、閾値確率基準は、脳の同側領域と対側領域との血管密度比に対応することができ、そこでは、第1領域がICAを含むことができ、第2領域がM1-MCAを含むことができ、第3領域がM2-MCAとさらに遠位のMCA枝とを含むことができる。これらの状況では、1.0という血管密度値は、両半球の血管の間の等しい密度に対応することができる。異常を決定するための閾値は、閉塞に対する感度が低いように相対的に低く設定され得るが、相対的に高い特異度を有することができる。例示のために、比較的低い閾値(例えば、0.3)は、この領域における正常な対側血管密度に対して同側血管密度を極度に(すなわち、30%まで)低下させる必要があることを意味する可能性がある。血管密度が比較的大きい量で低下する場合、LVOを特定する確率は比較的高く、偽検出の可能性は比較的低い(すなわち、高い特異度)。これらの状況では、極度の血管密度の低下があるLVOのみが基準を満たすことになるため、いくつかのLVOは見落とされる可能性がある。このため、こうした閾値により感度が低くなる。逆に、閾値が0.8に設定される場合、80%の血管密度差を使用してLVOを同定することができる。これにより、この閾値で感度が高くなる。しかしながら、自然な半球の差異又はLVOに似たものもまた、同様の血管密度変化をもたらす可能性があり、LVOを検出する特異度を低下させる可能性がある偽警報に至る可能性がある。
【0074】
さまざまな実装では、個体の脳に含まれる少なくとも1つの血管に関する異常の確率を示すユーザインタフェースを生成することができる。例示的な例では、ユーザインタフェースは、個体の脳の血管の最大値投影(MIP)画像を含むことができる。ユーザインタフェースはまた、少なくとも1つの血管に異常が存在する最高の確率を有する、個体の脳の1つ又は複数の領域を強調表示することができる。実装例では、1つ又は複数の強調表示領域の色は、所与の領域における血管に関する異常の確率を示すことができる。例示のために、赤色強調表示領域は、黄色強調表示領域に位置する血管よりも、その領域に位置する血管に関して異常が存在する高い確率を有する可能性がある。さらに、黄色強調表示領域は、緑色強調表示領域に位置する血管よりも、その領域に位置する血管に関して異常が存在する高い確率を有する可能性がある。さらに、緑色強調表示領域は、青色強調表示領域に位置する血管よりも、その領域に位置する血管に関して異常が存在する高い確率を有する可能性がある。強調表示が存在しないユーザインタフェースに含まれる領域は、血管が異常に関連する閾値確率未満を有する領域を示す可能性がある。
【0075】
図6は、1つ又は複数の実装例による、あり得る血管閉塞を示す個体の脳の1つ又は複数の画像を生成するプロセス例600のフロー図である。動作602において、プロセス600は、コンピュータ断層撮影血管造影(CTA)撮像プロセスを使用して生成された画像データを取得することを含むことができる。画像データは、個体の特徴部に対応することができる。例示のために、画像データは、個体の頭部、個体の頸部、個体の肩部、個体の胸部、個体の腹部、それらの組合せ等に関連する特徴部に対応することができる。実装では、画像データは、有線ネットワーク又は無線ネットワーク等、1つ又は複数のネットワークを介して、CTA撮像装置から直接取得することができる。さまざまな実装では、画像データは、ローカル無線ネットワークを介してCTA撮像装置から取得することができる。画像データはまた、クラウドコンピューティングストレージシステムを介してアクセス可能であり得る。例えば、画像データは、CTA撮像装置により、クラウドコンピューティングストレージシステムに送信することができ、コンピューティングデバイスは、クラウドコンピューティングストレージシステムによって格納された画像データにアクセスすることができる。さまざまな実装では、画像データは、セキュリティクレデンシャル又は他の認証情報が提供された後にアクセス可能であり得る。
【0076】
プロセス600は、動作604において、個体のC1椎骨から脳の頭頂まで位置する個体の身体の一部に対応する画像データのサブセットを決定することを含むことができる。実装例では、身体のその部分に対応しない画像データのさらなる部分は、画像データから除去することができる。このように、修正画像データを生成することができる。画像データのさらなる部分の除去は、さらなる部分を削除すること、又は画像データのさらなる部分のない修正画像データを含むデータファイルを作成することのうちの一方を含むことができる。
【0077】
動作606において、プロセス600は、脳に関連する骨又は血管のうちの少なくとも1つを示す1つ又は複数のテンプレートを、個体の解剖学的構造に位置合せすることを含むことができる。1つ又は複数のテンプレートは、複数の個体からの画像を集め、それら複数の個体の脳に関連する骨及び/又は血管の位置を決定することにより、生成することができる。1つ又は複数のテンプレートを使用して、画像データに含まれる個体の特徴部の、1つ又は複数のテンプレートに含まれる特徴部とのレジストレーションプロセスを実施することにより、個体の脳に関連する特徴部を同定することができる。レジストレーションプロセスは、画像データ及び/又は修正画像データを解析して、1つ又は複数のテンプレートに含まれる特徴部の特徴に対応する特徴を有する画像データ及び/又は修正画像データに含まれる特徴部を決定することを含むことができる。例示的な例では、1つ又は複数のテンプレートに含まれる特徴部に対応する画像データ及び/又は修正画像データの特徴部を同定するために使用される特徴は、1つ又は複数のテンプレートのボクセルの位置に関連する画像データ及び/又は修正画像データに含まれる特徴部のボクセルの位置、もしくは、1つ又は複数のテンプレートのボクセルの強度情報に関する画像データ及び/又は修正画像データに含まれるボクセルの強度情報のうちの少なくとも一方を含むことができる。レジストレーションプロセスは、画像データ及び/又は修正画像データに含まれる特徴部を、1つ又は複数のテンプレートに含まれる対応する特徴部と位置合せすることも含むことができる。
【0078】
さらに、動作608において、プロセス600は、1つ又は複数のテンプレートのうちの少なくとも1つを使用して、個体の頭部内に位置する頭蓋底及び頭蓋冠に対応するデータを、修正画像データから除去することを含むことができる。このように、骨特徴部を示すテンプレートを使用して、骨に対応する個体の頭部内に位置する特徴部を、修正画像データから除去することができる。さらに、プロセス600は、動作610において、個体の頭蓋内血管に対応する修正画像データの1つ又は複数の領域を特定することを含むことができる。さまざまな実装では、頭蓋内血管は、個体の頭部内に含まれる骨特徴部に対応するデータが除去された後に同定することができる。実装例では、頭蓋内血管に対応するデータは、頭蓋内血管の位置を示す1つ又は複数のテンプレートのうちのテンプレートを使用して同定することができる。さらに、頭蓋内血管に対応するデータは、修正画像データに含まれるボクセルの強度値等、データの特徴に基づいて同定することができる。
【0079】
さらに、プロセス600は、動作612において、異なる直径を有する血管のグループを決定することを含むことができる。例えば、値の第1範囲にある直径値を有する血管の第1グループを決定することができ、値の第1範囲とは少なくとも部分的に異なる値の第2範囲にある直径値を有する血管の第2グループを決定することができる。いくつかの状況では、値の第1範囲及び値の第2範囲は部分的に重なる場合があるが、他のシナリオでは、値の第1範囲及び値の第2範囲は部分的に重なっていない。例示的な例では、血管の第1グループは、少なくとも約0.1mm、少なくとも約0.5mm、少なくとも約0.8mm、少なくとも約1mm、少なくとも約1.3mm、少なくとも約1.5mm、少なくとも約1.8mm又は少なくとも約2mmの直径を有する血管を含むことができる。さらに、血管の第1グループは、約4mm以下、約3.8mm以下、約3.5mm以下、約3.2mm以下、約3mm以下、約2.8mm以下、約2.5mm以下又は約2.2mm以下の直径を有する血管を含むことができる。さまざまな例では、値の第1範囲は、少なくとも約0.1mmから約4mm以下、少なくとも約0.1mmから約3mm以下、少なくとも約0.5mmから約3mm以下等、この段落に記載する例示的な例のうちの任意のものによって制限され得る。
【0080】
血管の第2グループは、少なくとも約3mm、少なくとも約3.2mm、少なくとも約3.5mm、少なくとも約3.8mm、少なくとも約4mm、少なくとも約4.2mm、少なくとも約4.5mm、少なくとも約4.5mm、少なくとも約4.8mm又は少なくとも約5mmの直径を有する血管を含むことができる。加えて、血管の第2グループは、約12mm以下、約11.5mm以下、約11mm以下、約10.5mm以下、約10mm以下、約9.8mm以下、約9.5mm以下、約9.2mm以下、約9mm以下、約8.8mm以下、約8.5mm以下、約8.2mm以下又は約8mm以下の直径を有する血管を含むことができる。さまざまな例では、値の第2範囲は、少なくとも約3mmから約12mm以下、少なくとも約3mmから約11mm以下、少なくとも約3mmから約10mm以下、少なくとも約3.2mmから約10mm以下等、この段落に記載する例示的な例のうちの任意のものによって制限され得る。
【0081】
さまざまな例では、異なる直径を有する血管のグループの決定は、各グループのそれぞれの血管の直径の差の閾値量を有する血管のグループを同定することを含むことができる。1つ又は複数の例では、動作612は、1つ又は複数の血管であって、1つ又は複数のさらなる血管の1つ又は複数のさらなる直径の少なくとも1.25倍大きい1つ又は複数のそれぞれの直径を有する、1つ又は複数の血管を決定することを含むことができる。さらに、動作612は、1つ又は複数の血管であって、1つ又は複数のさらなる血管の1つ又は複数のさらなる直径よりも少なくとも1.5倍大きい1つ又は複数のそれぞれの直径を有する、1つ又は複数の血管を決定することを含むことができる。さらに、動作612は、1つ又は複数の血管であって、1つ又は複数のさらなる血管の1つ又は複数のさらなる直径よりも少なくとも1.75倍大きい1つ又は複数のそれぞれの直径を有する、1つ又は複数の血管を決定することを含むことができる。さらに他の例では、動作612は、1つ又は複数の血管であって、1つ又は複数のさらなる血管の1つ又は複数のさらなる直径よりも少なくとも2倍大きい1つ又は複数のそれぞれの直径を有する、1つ又は複数の血管を決定することを含むことができる。さらに追加の例では、動作612は、1つ又は複数の血管であって、1つ又は複数のさらなる血管の1つ又は複数のさらなる直径よりも少なくとも2.5倍大きい1つ又は複数のそれぞれの直径を有する、1つ又は複数の血管を決定することを含むことができる。1つ又は複数の他の例では、動作612は、1つ又は複数の血管であって、1つ又は複数のさらなる血管の1つ又は複数のさらなる直径よりも少なくとも3倍大きい1つ又は複数のそれぞれの直径を有する、1つ又は複数の血管を決定することを含むことができる。
【0082】
動作614において、プロセス600は、グループの各々に含まれる血管の血管密度の尺度及び/又は基準を求めることを含むことができる。実装例では、血管密度の尺度は、血管に関連する修正画像データに含まれる強度値に対応することができる。例えば、内頸動脈の頭蓋内セグメントに対する血管密度の尺度は、内頸動脈の頭蓋内セグメントに関連する修正画像データに含まれるボクセルの強度値に対応することができる。別の例では、中大脳動脈のM1セグメントに対する血管密度の尺度は、中大脳動脈のM1セグメントに関連する修正画像データに含まれるボクセルの強度値に対応することができる。さらなる例では、中大脳動脈のM2セグメントに対する血管密度の尺度は、中大脳動脈のM2セグメントに関連する修正画像データに含まれるボクセルの強度値に対応することができる。さまざまな実装では、個体の頭部内に位置する血管に対する密度の尺度は、修正画像データに含まれる血管に関連するボクセルの強度値の和に対応することができる。
【0083】
プロセス600は、動作616において、個体の脳の半球の対称的に配置された領域に位置する血管に対する血管密度の尺度の間の差を求めることを含むことができる。実装では、個体の脳は、個体の脳の各半球における1つ又は複数の領域に分割することができる。例示的な例では、個体の脳は、個体の脳の各半球における3つの領域に分割することができる。これらのシナリオでは、合計6つの領域を三組の対にグループ化することができ、各対は、互いに対して実質的に対称に配置されている。さらなる例示的な例では、領域の対は、個体の脳の第1半球に位置する、内頸動脈の頭蓋内セグメントと中大脳動脈のM1セグメントの近位部とを含む第1領域と、個体の脳の第2半球に位置する、内頸動脈の頭蓋内セグメントと中大脳動脈のM1セグメントの近位部とを含む第2領域とを含むことができる。さらに、領域の第2対は、個体の脳の第1半球に位置する中大脳動脈のM1セグメントの中部から遠位部を含む第3領域と、個体の脳の第2半球に位置する中大脳動脈のM1セグメントの中部から遠位部を含む第4領域とを含むことができる。さらに、領域の第3対は、個体の脳の第1半球に位置する中大脳動脈の少なくともM2セグメントを含む第5領域と、個体の脳の第2半球に位置する中大脳動脈の少なくともM2セグメントを含む第6領域とを含むことができる。
【0084】
さまざまな実装では、個体の脳の第1半球の第1領域に位置する1つ又は複数の血管と、個体の脳の第2半球の第2領域に位置する1つ又は複数の血管との少なくとも1つの差異を求めることができる。さらに、個体の脳の第1半球の第3領域に位置する1つ又は複数の血管と、個体の脳の第2半球の第4領域に位置する1つ又は複数の血管との少なくとも1つの差異を求めることができる。さらに、個体の脳の第1半球の第5領域に位置する1つ又は複数の血管と、個体の脳の第2半球の第6領域に位置する1つ又は複数の血管との少なくとも1つの差異を求めることができる。実装例では、脳の異なる半球に位置する血管の密度の差に対応する比を求めることができる。
【0085】
脳の異なる半球に位置する血管の密度の差は、脳内に位置する血管に関連する異常の確率及び/又は重症度を示すことができる。さまざまな実装では、異常は、個体の脳内に位置する1つ又は複数の血管の閉塞に関連する可能性がある。実装例では、異常は、脳卒中が起こっている個体に関連する可能性がある。実装では、脳の異なる半球に位置する血管の間の密度の低下の量は、低下した密度を有する血管に関する異常を示す可能性がある。例えば、個体の脳の第1半球の1つの領域に位置する血管の密度の、個体の脳の第2半球の相対領域の密度に対する低下の量は、その血管に関する異常を示す可能性がある。血管密度の低下の複数の範囲を利用して、個体の脳内に位置する血管に関する異常の確率及び/又は重症度を決定することができる。例示のために、個体の脳の異なる半球に位置する血管の間の密度の低下の量に対応する値の第1範囲は、その血管に関する異常の第1数の確率及び/又は重症度を示す可能性があり、個体の脳の異なる半球に位置する血管の間の密度の低下の量に対応する値の第2範囲は、その血管に関する異常の第2数の確率及び/又は重症度を示す可能性がある。
【0086】
血管密度の尺度の差を求めることに加えて、血管密度の基準及び/又は尺度の比を求めることができる。例えば、脳の第1半球のある領域に位置する1つ又は複数の第1血管に対する血管密度の1つ又は複数の尺度及び/又は基準と、脳の第2半球の相対領域に位置する1つ又は複数の第2血管に対する血管密度の1つ又は複数の尺度及び/又は基準との比を、求めることができる。さまざまな例では、この比を使用して、個体の脳の少なくとも1つの領域に位置する1つ又は複数の血管に関する異常の確率を求めることができる。
【0087】
動作618において、プロセス600は、血管密度の尺度間の差を示す個体の脳の1つ又は複数の画像を生成することを含むことができる。画像は、個体の脳内に位置する血管を示すことができ、少なくとも異常の閾値確率及び/又は閾値重症度に関連する可能性がある個体の脳及び/又は血管の領域も示すことができる。さまざまな実装では、個体の脳内に位置する血管の異常に関連する確率及び/又は重症度は、1つ又は複数の画像において異なる色を使用して表示することができる。例えば、個体の脳に含まれる血管に関する異常の確率及び/又は異常の重症度のレベルの第1範囲は、1つ又は複数の画像において第1色として示すことができ、個体の脳に含まれる血管に関する異常の確率及び/又は異常の重症度のレベルの第2範囲は、1つ又は複数の画像において第2色として示すことができる。実装例では、1つ又は複数の画像は、臨床医がアクセス可能である表示デバイスに表示することができる。さらに、1つ又は複数の画像は、閉塞が位置する可能性がある個体の脳内の位置を、矢印、円、ボックス又は他の任意の形状の外形を表示することにより、強調表示することができる。
【0088】
図7は、1つ又は複数の実装例による、脳内の1つ又は複数の血管の経路を追跡することによりあり得る血管閉塞を決定するプロセス例700のフロー図である。動作702において、プロセス700は、個体の脳内に位置する血管を示す1つ又は複数の画像に対応する画像データを取得することを含むことができる。1つ又は複数の画像は、コンピュータ断層撮影血管造影(CTA)撮像プロセスを使用して生成することができる。画像データは、個体の特徴部に対応することができる。例示のために、画像データは、個体の頭部、個体の頸部、それらの組合せ等に関連する特徴部に対応することができる。さまざまな実装では、画像データは、頭蓋、頸部及び/又は顔の骨等、脳を含まない個体の身体の部分に対応するデータの部分を除去することにより、修正することができる。
【0089】
プロセス700は、動作704において、個体の脳に関連する骨又は血管のうちの少なくとも1つを示す1つ又は複数のテンプレートを位置合せすることを含むことができる。1つ又は複数のテンプレートは、複数の個体からの画像を集め、それら複数の個体の脳に関連する骨及び/又は血管の位置を決定することにより、生成することができる。1つ又は複数のテンプレートを使用して、画像データに含まれる個体の特徴部の、1つ又は複数のテンプレートに含まれる特徴部とのレジストレーションプロセスを実施することにより、個体の脳に関連する特徴部を同定することができる。レジストレーションプロセスは、画像データ及び/又は修正画像データを解析して、1つ又は複数のテンプレートに含まれる特徴部の特徴に対応する特徴を有する画像データ及び/又は修正画像データに含まれる特徴部を決定することを含むことができる。例示的な例では、1つ又は複数のテンプレートに含まれる特徴部に対応する画像データ及び/又は修正画像データの特徴部を同定するために使用される特徴は、1つ又は複数のテンプレートのボクセルの位置に関連する画像データ及び/又は修正画像データに含まれる特徴部のボクセルの位置、もしくは、1つ又は複数のテンプレートのボクセルの強度情報に関する画像データ及び/又は修正画像データに含まれるボクセルの強度情報のうちの少なくとも一方を含むことができる。レジストレーションプロセスは、画像データ及び/又は修正画像データに含まれる特徴部を、1つ又は複数のテンプレートに含まれる対応する特徴部と位置合せすることも含むことができる。
【0090】
加えて、動作706において、プロセス700は、個体の頭蓋内血管に対応する修正画像データの1つ又は複数の部分を同定することを含むことができる。さまざまな実装では、頭蓋内血管は、個体の頭部内に含まれる骨特徴部に対応するデータが除去された後に同定することができる。実装例では、頭蓋内血管に対応するデータは、頭蓋内血管の位置を示す1つ又は複数のテンプレートのうちのテンプレートを使用して同定することができる。さらに、頭蓋内血管に対応するデータは、修正画像データに含まれるボクセルの強度値等、データの特徴に基づいて同定することができる。
【0091】
さらに、プロセス700は、動作708において、脳に関連する血管の1つ又は複数のあり得る経路の決定を開始するために、脳の第1領域内の始点を決定することを含むことができる。1つ又は複数のあり得る経路の少なくとも一部は、個体の脳内の血管のある位置に対応することができる。開始位置は、脳の正中線に対して近位である脳の領域を同定することにより決定することができる。1つ又は複数の実装では、脳の領域は、その領域を示すとともに個体の脳の画像データに基づいて個体の解剖学的構造に位置合せされる、テンプレートに基づいて、同定することができる。1つ又は複数の例では、領域は、中大脳動脈の近位部を含むことができる。始点は、領域に含まれる画像データの個々のボクセルに対して血管性値を求めることによって同定することができる。それぞれの血管性値は、所与のボクセルが個体の脳の血管のある位置に対応する確率を示すことができる。血管性値は、ボクセルと背景とのコントラストの量に対応することができる。1つ又は複数の例示的な例では、ボクセルに対する血管性値は、ヘシアンフィルタ行列の固有値を計算することによって求めることができる。ヘシアンフィルタ行列の固有値は、ヘシアンフィルタで計算された主固有ベクトル次元に沿ったコントラストの変化に対応することができる。さまざまな例では、ヘシアンフィルタの出力は、ボクセルの輝度及びボクセルのサイズに対応することができ、輝度は、周囲に対して異なる相対HUに対応することができる。
【0092】
また、動作710において、プロセス700は、血管の予測される終点を含む脳の第2領域を決定することを含むことができる。第2領域は、血管の終点の1つ又は複数のあり得る位置を示すテンプレートに基づいて決定することができる。血管が中大脳動脈である状況では、第2領域は、中大脳動脈の遠位部を含むことができる。1つ又は複数の例では、第2領域は、血管の遠位部が脳の遠位部に達するために通過する1つ又は複数の位置を含むことができる。
【0093】
プロセス700は、動作712において、始点で開始する経路を決定することを含むことができる。経路は、血管の少なくとも一部の位置に対応することができる。経路は、1つ又は複数の画像のボクセルに対応するノードを含む評価グラフの最低コストの経路を含むことができる。1つ又は複数の例示的な例では、最低コストの経路は、プリム,R.C.(Prim,R.C.)(1957年11月)、「最短接続ネットワーク及びいくつかの一般化(Shortest connection networks and some generalizations)」、ベルシステムテクニカルジャーナル(Bell System Technical Journal)、第36巻、第6号、p.1389~1401、及びダイクストラ,E.W(Dijkstra,E.W)(1959年)、「グラフに関連する2つの問題について(A note on two problems in connexion with graphs)」、数値数学(Numerische Mathematik)、第1巻、p.269~271から導出される概念を使用して決定することができる。さまざまな例では、経路のノード間の移動コストは、以下の式に従って求めることができる。
【0094】
コスト=100/(血管性-血管性mn_閾値+1)
したがって、ボクセルの血管性値が定義された閾値を下回る状況では、コストは無限であり得る。血管性mn_閾値値は、CTA画像等の画像を含む複数のデータセットの解析を実施することにより求めることができる。さまざまな例では、解析により、画像の雑音及び画像に含まれる物体に対応する閾値血管性値を求めることができる。いくつかの例では、血管性mn_閾値は、6.0HU~12.0HUの値であり得る。CTA画像では、血管は、約25HU~約400HUの不透明化値を有する可能性があり、雑音は、ヘシアンフィルタによりゼロに近い値まで抑制することができる。1つ又は複数の例では、経路は、1つのボクセルから、隣接するボクセルに関連して最低コストを有する別のボクセルにわたることができる。
【0095】
1つ又は複数の実装では、経路は、複数の理由で終端する可能性がある。例えば、経路は、経路が、終点を含む第2領域に含まれているものとして標識されたボクセルに達することに応じて、終端する可能性がある。さらなる例では、経路は、通過するために有限のコストを有する各ボクセルをすでに訪れたという判断に応じて、終端する可能性がある。これらの状況では、経路は、第2領域に達する前に終端する。さらに、経路は、コストが指定された最大コストを上回る経路であることに応じて終端する可能性がある。
【0096】
動作714において、プロセス700は、個体の脳内に位置する少なくとも1つの血管に関する異常の確率を求めることを含むことができる。さまざまな例では、個体の脳内に異常が存在する確率は、経路が第2領域に達することによって決まる可能性がある。経路が第2領域に達する状況では、個体の脳内に位置する少なくとも1つの血管に関して異常が存在する確率は、ゼロであるか又は比較的低い可能性がある。さらに、経路が第2領域に達しない状況では、個体の脳内に位置する少なくとも1つの血管に関して異常が存在する確率は、比較的高い可能性がある。
【0097】
さらに、プロセス700は、動作716において、個体の脳内に位置する少なくとも1つの血管に関する異常の確率を示す、1つ又は複数のユーザインタフェースを生成することを含むことができる。さまざまな例では、1つ又は複数のユーザインタフェースは、比較的高い確率に対する赤色、中位の確率に対する黄色、及び比較的低い確率に対する緑色等、異常が存在する確率を示す1つ又は複数の色を含むことができる。
【0098】
図8は、上述した装置のうちの任意の1つ又は複数にインストールすることができるソフトウェア802のアーキテクチャを示すブロック
図800である。実装では、フレームワーク100、300及び400並びにプロセス200、500及び600に関して記載した動作の少なくとも一部は、ソフトウェア802を使用して実行することができる。
図8は、単に、ソフトウェアアーキテクチャの非限定的な例であり、本明細書に記載する機能を容易にするために、他の多くのアーキテクチャを実装することができることが理解されよう。さまざまなシナリオでは、ソフトウェア802は、プロセッサ910、メモリ930及び入出力(I/O)コンポーネント950を含む
図9の機械900等のハードウェアによって実装される。このアーキテクチャ例では、ソフトウェア802は、層のスタックとして概念化することができ、そこでは、各層は、指定された機能を提供することができる。例えば、ソフトウェア802は、オペレーティングシステム804、ライブラリ806、フレームワーク808及びアプリケーション810等の層を含む。任意選択的に、アプリケーション810は、いくつかの実装に一貫して、ソフトウェアスタックを通してアプリケーションプログラミングインタフェース(API)コール812を呼び出し、APIコール812に応答してメッセージ814を受け取る。
【0099】
さまざまな実装では、オペレーティングシステム804は、ハードウェア資源を管理し、共通サービスを提供する。オペレーティングシステム804は、例えば、カーネル820、サービス822及びドライバ824を含む。カーネル820は、いくつかの実施形態に一貫して、ハードウェアと他のソフトウェア層との間の抽象化層として作用する。例えば、カーネル820は、他の機能の中でもとりわけ、メモリ管理、プロセッサ管理(例えば、スケジューリング)、コンポーネント管理、ネットワーク化及びセキュリティ設定を提供する。サービス822は、他のソフトウェア層に対する他の共通サービスを提供することができる。ドライバ824は、いくつかの実施形態により、基礎となるハードウェアを制御するか又はハードウェアとインタフェースする役割を担う。例えば、ドライバ824は、ディスプレイドライバ、カメラドライバ、ブルートゥース(登録商標)又はブルートゥース(登録商標)ローエナジー(Low-Energy)ドライバ、フラッシュメモリドライバ、シリアル通信ドライバ(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)ドライバ)、Wi-Fi(登録商標)ドライバ、オーディオドライバ、電源管理ドライバ等を含むことができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、ライブラリ806は、アプリケーション810によって利用される低レベルの共通インフラストラクチャを提供することができる。ライブラリ806は、メモリ割当機能、文字列操作機能、数学機能等の機能を提供することのできるシステムライブラリ830(例えば、C標準ライブラリ)を含むことができる。加えて、ライブラリ806は、メディアライブラリ(例えば、ムービング・ピクチャ・エクスパーツ・グループ-4(Moving Picture Experts Group-4)(MPEG4)、アドバンスド・ビデオ・コーティング(Advanced Video Coding)(H.264又はAVC)、ムービング・ピクチャ・エクスパーツ・グループ-3(Moving Picture Experts Group-3)(MP3)、アドバンスド・オーディオ・コーディング(Advanced Audio Coding)(AAC)、アダプティブ・マルチレート(Adaptive Multi-Rate)(AMR)音声コーディック、ジョイント・フォトグラフィック・エキスパーツ・グループ(Joint Photographic Experts Group)(JPEG又はJPG)、ポータブル・ネットワーク・グラフィックス(Portable Network Graphics)(PNG)等のさまざまなメディアフォーマットの提示及び操作をサポートするためのライブラリ)、グラフィックスライブラリ(例えば、ディスプレイ上のグラフィックコンテンツにおいて2D及び3Dをレンダリングするのに用いられるOpenGLフレームワーク)、データベースライブラリ(例えば、さまざまなリレーショナルデータベース機能を提供するSQLite)、ウェブライブラリ(例えば、ウェブブラウジング機能を提供するWebKit)等、APIライブラリ832を含むことができる。ライブラリ806は、アプリケーション810に他の多くのAPIを提供する多種多様な他のライブラリ834も含むことができる。
【0101】
フレームワーク808は、いくつかの実装により、アプリケーション810が利用することができる高レベルの共通インフラストラクチャを提供する。例えば、フレームワーク808は、さまざまなグラフィックユーザインタフェース(GUI)機能、高レベル資源管理、及び高レベル位置情報サービス等を提供する。フレームワーク808は、アプリケーション810が利用することができる広範囲の他のAPIを提供することができ、それらのうちのいくつかは、オペレーティングシステム804又はプラットフォームに特有であり得る。
【0102】
実装例では、アプリケーション810は、ホームアプリケーション850、連絡先アプリケーション852、ブラウザアプリケーション854、ブックリーダアプリケーション856、位置情報アプリケーション858、メディアアプリケーション860、メッセージングアプリケーション862、ゲームアプリケーション864、及びサードパーティアプリケーション866等の多種多様な他のアプリケーションを含む。いくつかの実施形態によれば、アプリケーション810は、プログラムにおいて定義された機能を実行するプログラムである。種々の方法で構造化されたアプリケーション810のうちの1つ又は複数を作成するために、オブジェクト指向プログラミング言語(例えば、オブジェクティブC(Objective-C)、Java(登録商標)又はC++)又は手続型プログラミング言語(例えば、C又はアセンブリ言語)等、さまざまなプログラミング言語を採用することができる。具体例では、サードパーティアプリケーション866(例えば、プラットフォームのベンダ以外のエンティティによりアンドロイド(登録商標)又はIOS(登録商標)ソフトウェア開発キット(SDK)を使用して開発されたアプリケーション)は、IOS(登録商標)、アンドロイド(登録商標)、ウィンドウズ(WINDOWS)(登録商標)フォン、又は別のモバイルオペレーティングシステム等のモバイルオペレーティングシステム上で実行するモバイルソフトウェアであり得る。この例では、サードパーティアプリケーション866は、本明細書に記載する機能を容易にするためにオペレーティングシステム804により提供されるAPIコール812を呼び出すことができる。
【0103】
図9は、1つ又は複数の実装例による、本明細書で考察する方法論のうちの任意の1つ又は複数を機械900に実施させるように命令のセットが実行され得るコンピュータシステムの形態での機械例900の概略図を示す。具体的には、
図9は、本明細書で考察する方法論のうちの任意の1つ以上を機械900に実施させる命令916(例えば、ソフトウェア、プログラム、アプリケーション、アプレット、アプリケーションソフトウェア(app)、又は他の実行可能コード)が実行され得るコンピュータシステムの形態例での機械900の概略図を示す。例えば、命令916は、
図2のプロセス200、
図5のプロセス500及び/又は
図6のプロセス600を機械900に実行させることができる。機械900は、
図1のフレームワーク100、
図3のフレームワーク300及び
図4のフレームワーク400に関して記載した動作も実行することができる。さまざまな実装では、機械900により、脳画像解析システム102により実施される動作の少なくとも一部を実施することができる。命令916は、プログラムされていない一般的な機械900を、記載及び例示した機能を記載した方法で実行するようにプログラムされた所定の機械900に変換する。代替実施形態では、機械900は、スタンドアローンデバイスとして動作し、又は他の機械に結合(例えば、ネットワーク化)され得る。ネットワーク化される展開では、機械900は、サーバ-クライアントネットワーク環境におけるサーバマシン又はクライアントマシンとして、又はピアツーピア(又は分散)ネットワーク環境におけるピアマシンとして動作することができる。機械900は、限定されないが、サーバコンピュータ、クライアントコンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ネットブック、セットトップボックス(STB)、携帯情報端末(PDA)、エンターテイメントメディアシステム、携帯電話、スマートフォン、モバイルデバイス、ウェアラブルデバイス(例えば、スマートウォッチ)、スマートホームデバイス(例えば、スマートアプライアンス)、他のスマートデバイス、ウェブアプライアンス、ネットワークルータ、ネットワークスイッチ、ネットワークブリッジ、又は機械900が取るべき行為を指定する命令916を順次又は他の方法で実行することができる任意の機械を含むことができる。さらに、単一の機械900のみを示すが、「機械」という用語は、本明細書で考察する方法論のうちの任意の1つ以上を実施するように命令916を個々に又は合わせて実行する一群の機械900を含むようにも解釈されよう。
【0104】
機械900は、プロセッサ910、メモリ930及びI/Oコンポーネント950を含むことができ、それらは、バス902を介する等して互いに通信するように構成され得る。一実装例では、プロセッサ910(例えば、中央処理装置(CPU)、縮小命令セットコンピューティング(RISC)プロセッサ、複合命令セットコンピューティング(CISC)プロセッサ、グラフィック処理ユニット(GPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、無線周波数集積回路(RFIC)、別のプロセッサ、又はそれらの任意の好適な組合せ)は、例えば、命令916を実行することができるプロセッサ912及びプロセッサ914を含むことができる。「プロセッサ」という用語は、命令916を同時に実行することができる2つ以上の独立したプロセッサ(「コア」と称する場合もある)を含むことができるマルチコアプロセッサを含むように意図されている。
図8は、複数のプロセッサ910を示すが、機械900は、単一のコアを有する単一のプロセッサ912、複数のコアを有する単一のプロセッサ912(例えば、マルチコアプロセッサ912)、単一のコアを有する複数のプロセッサ912、914、複数のコアを有する複数のプロセッサ912、914、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0105】
メモリ930は、各々がバス902を介する等してプロセッサ910にアクセス可能な、メインメモリ932、スタティックメモリ934及びストレージユニット936を含むことができる。メインメモリ932、スタティックメモリ934及びストレージユニット936は、本明細書に記載する方法論又は機能の任意のうちの任意の1つ又は複数を具現化する命令916を格納する。命令916はまた、機械900によるそれらの実行中、完全に又は部分的に、メインメモリ932内に、スタティックメモリ934内に、ストレージユニット936内に、プロセッサ910のうちの少なくとも1つ内に(例えば、プロセッサのキャッシュメモリ内に)、又はそれらの任意の好適な組合せで存在することができる。
【0106】
I/Oコンポーネント950は、入力を受け取る、出力を提供する、出力を生成する、情報を送信する、情報を交換する、測定値を取り込む等、多種多様なコンポーネントを含むことができる。指定された機械900に含まれる具体的なI/Oコンポーネント950は、機械のタイプによって決まることになる。例えば、モバイルフォン等のポータブルマシンは、タッチ入力デバイス又はその他のそうした入力機構を含む可能性が高く、一方で、ヘッドレスサーバマシンは、そうしたタッチ入力デバイスを含まない可能性が高い。I/Oコンポーネント950が
図8に示さない他の多くのコンポーネントを含む可能性があることは理解されよう。I/Oコンポーネント950は、単に以下の考察を簡単にするために機能性に従ってグループ化され、このグループ化は決して限定的ではない。さまざまな実施形態例では、I/Oコンポーネント950は、出力コンポーネント952及び入力コンポーネント954を含むことができる。出力コンポーネント952は、視覚コンポーネント(例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、プロジェクタ、又は陰極線管(CRT)等のディスプレイ)、音響コンポーネント(例えば、スピーカ)、ハプティックコンポーネント(例えば、振動性モータ、抵抗機構)、他の信号発生器等を含むことができる。入力コンポーネント954は、英数字入力コンポーネント(例えば、キーボード、英数字入力を受け取るように構成されたタッチスクリーン、フォトオプティカル(photo-optical)キーボード、又は他の英数字入力コンポーネント)、ポイントベースの入力コンポーネント(例えば、マウス、タッチパッド、トラックボール、ジョイスティック、モーションセンサ、又は別のポインティング機器)、触覚入力コンポーネント(例えば、物理的ボタン、タッチ若しくはタッチジェスチャの位置及び/又は力を提供するタッチスクリーン、又は他の触覚入力コンポーネント)、及び音声入力コンポーネント(例えば、マイクロフォン)等を含むことができる。
【0107】
さらなる実施形態例では、I/Oコンポーネント950は、種々のコンポーネントの中でもとりわけ、生体認証コンポーネント956、モーションコンポーネント958、環境コンポーネント960、又は位置コンポーネント962を含むことができる。例えば、生体認証コンポーネント956は、表情(例えば、手振り、顔の表情、声質、身振り又は視線計測)を検出し、生体信号(例えば、血圧、心拍数、体温、発汗又は脳波)を測定し、人を識別する(例えば、音声識別、網膜識別、顔識別、指紋識別、又は脳波ベースの識別)等のコンポーネントを含むことができる。モーションコンポーネント958は、加速度センサコンポーネント(例えば、加速度計)、重力センサコンポーネント及び回転センサコンポーネント(例えば、ジャイロスコープ)等を含むことができる。環境コンポーネント960は、例えば、照度センサコンポーネント(例えば、光度計)、温度センサコンポーネント(例えば、周囲温度を検出する1つ又は複数の温度計)、湿度センサコンポーネント、圧力センサコンポーネント(例えば、気圧計)、音響センサコンポーネント(例えば、背景雑音を検出する1つ又は複数のマイクロフォン)、近接センサコンポーネント(例えば、近くの物体を検出する赤外線センサ)、ガスセンサ(例えば、安全のために危険なガスの濃度を検出するか、又は大気中の汚染物質を測定するガス検出センサ)、又は周囲の物理的環境に対応する指標、測定値若しくは信号を提供することができる他のコンポーネントを含むことができる。位置コンポーネント962は、位置情報センサコンポーネント(例えば、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)受信機コンポーネント)、高度センサコンポーネント(例えば、高度計、又は高度を導出することができる気圧を検出する気圧計)、及び方位センサコンポーネント(例えば、磁力計)等を含むことができる。
【0108】
多種多様な技術を使用して、通信を実装することができる。I/Oコンポーネント950は、結合機能(coupling)9142及び結合機能972をそれぞれ介して機械900をネットワーク9140又はデバイス970に結合するように動作可能な通信コンポーネント964を含むことができる。例えば、通信コンポーネント964は、ネットワーク9140とインタフェースするためのネットワークインタフェースコンポーネント又は別の好適なデバイスを含むことができる。さらなる例では、通信コンポーネント964は、有線通信コンポーネント、無線通信コンポーネント、セルラ通信コンポーネント、近距離無線通信(NFC)コンポーネント、ブルートゥース(登録商標)コンポーネント(例えば、ブルートゥース(登録商標)ローエナジー(Low Energy))、Wi-Fi(登録商標)コンポーネント、及び他の様式を介して通信を提供する他の通信コンポーネントを含むことができる。デバイス970は、別の機械、又は多種多様な(例えば、USBを介して結合される)周辺デバイスのうちの任意のものであり得る。
【0109】
さらに、通信コンポーネント964は、識別子を検出するか、又は識別子を検出するように動作可能なコンポーネントを含むことができる。例えば、通信コンポーネント964は、無線周波数識別(RFID)タグリーダコンポーネント、NFCスマートタグ検出コンポーネント、光学式リーダコンポーネント(例えば、ユニバーサルプロダクトコード(Universal Product Code)(UPC)バーコード等の一次元バーコード、QRコード(登録商標)、アズテック(Aztec)コード、データマトリックス(Data Matrix)、データグリフ(Dataglyph)、マックスコード(MaxiCode)、PDF417、ウルトラコード(Ultra Code)、UCC RSS-2Dバーコード等の多次元バーコード、及びその他の光学コード)、又は音響検出コンポーネント(例えば、タグ付きの音声信号を識別するマイクロフォン)を含むことができる。加えて、インターネットプロトコル(IP)ジオロケーションを介する位置情報、Wi-Fi(登録商標)信号三角測量を介する位置情報、及び所与の位置を示すことができるNFCビーコン信号の検出を介する位置情報等、通信コンポーネント964を介して種々の情報を導出することができる。
【0110】
さまざまなメモリ(すなわち、930、932、934、及び/又はプロセッサ910のメモリ)及び/又はストレージユニット936は、本明細書に記載する方法論又は機能のうちの任意の1つ又は複数を具現化するか又はそうしたものにより利用される命令916及びデータ構造(例えば、ソフトウェア)の1つ又は複数のセットを格納することができる。これらの命令(例えば、命令916)は、プロセッサ910により実行されると、さまざまな動作により開示する実施形態が実施されるようにする。
【0111】
本明細書で用いる場合の「機械記憶媒体」、「デバイス記憶媒体」及び「コンピュータ記憶媒体」という用語は、同じことを意味し、同義で使用され得る。この用語は、実行可能な命令916及び/又はデータを格納する単一の又は複数の記憶デバイス及び/若しくは媒体(例えば、集中型又は分散型のデータベース、並びに/又は関連付けられたキャッシュ及びサーバ)を指す。したがって、この用語は、限定されないが、プロセッサ910の内部又は外部のメモリを含む、固体メモリ並びに光学媒体及び磁気媒体を含むように解釈されよう。機械記憶媒体、コンピュータ記憶媒体及び/又はデバイス記憶媒体の具体例としては、例として、半導体メモリデバイス、例えば、消去可能プログラム可能リードオンリメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能リードオンリメモリ(EEPROM)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)及びフラッシュメモリデバイスと、内蔵ハードディスク及びリームバブルディスク等の磁気ディスクと、光磁気ディスクと、CD-ROM及びDVD-ROMディスクとを含む、不揮発性メモリが挙げられる。「機械記憶媒体」、「コンピュータ記憶媒体」及び「デバイス記憶媒体」という用語は、特に、搬送波、変調データ信号、及び他のそうした媒体は除外し、それらのうちの少なくともいくつかは、以下で考察する「信号媒体」という用語の下でカバーされる。
【0112】
さまざまな実施形態例では、ネットワーク9140の1つ又は複数の部分は、アドホックネットワーク、イントラネット、エクストラネット、仮想プライベートネットワーク(VPN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、無線LAN(WLAN)、広域ネットワーク(WAN)、無線WAN(WWAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、インターネット、インターネットの一部、公衆交換電話網(PSTN)の一部、一般電話サービス(POTS)ネットワーク、携帯電話ネットワーク、無線ネットワーク、Wi-Fi(登録商標)ネットワーク、別のタイプのネットワーク、又は2つ以上のこうしたネットワークの組合せであり得る。例えば、ネットワーク9140又はネットワーク9140の一部は、無線又はセルラーネットワークを含むことができ、結合機能9142は、符号分割多元アクセス(CDMA)接続、移動体通信用グローバルシステム(GSM:Global System or Mobile communications)接続、又は別のタイプのセルラ若しくは無線結合機能であり得る。この例では、結合機能9142は、シングルキャリア無線伝送技術(Single Carrier Radio Transmission Technology)(1xRTT)、エボリューションデータ最適化(Evolution-Data Optimized)(EVDO)技術、汎用パケット無線サービス(GPRS:General Packet Radio Service)技術、GSMエボリューションの拡張データレート(EDGE:Enhanced Data rates for GSM Evolution)技術、3Gを含む第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)、第4世代無線(4G)ネットワーク、ユニバーサルモバイルテレコミュニケーションシステム(UMTS:Universal Mobile Telecommunications System)、高速パケットアクセス(HSPA:High Speed Packet Access)、マイクロ波アクセスのための世界規模相互運用性(WiMAX(登録商標):Worldwide Interoperability for Microwave Access)、ロングタームエボリューション(LTE:Long Term Evolution)標準規格、さまざまな標準化機関により規定された他のもの、他の長距離プロトコル、又は他のデータ転送技術等の種々のタイプのデータ転送技術のうちの任意ものを実装することができる。
【0113】
命令916は、ネットワークインタフェースデバイス(例えば、通信コンポーネント964に含まれるネットワークインタフェースコンポーネント)を介する伝送媒体を使用し、複数の周知の転送プロトコル(例えば、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP))のうちの任意の1つを利用して、ネットワーク9140を介して送信又は受信することができる。同様に、命令916は、デバイス970への結合機能972(例えば、ピアツーピア接続)を介して伝送媒体を使用して送信又は受信することができる。「伝送媒体」及び「信号媒体」という用語は、同じことを意味し、本開示では同義で使用され得る。「伝送媒体」及び「信号媒体」という用語は、機械900が実行する命令916を格納、符号化、又は搬送することができる任意の無形媒体を含み、そうしたソフトウェアの通信を容易にするデジタル若しくはアナログ通信信号又はその他の無形媒体を含むように解釈されよう。このため、「伝送媒体」及び「信号媒体」という用語は、変調データ信号及び搬送波等の任意の形式を含むように解釈されよう。「変調データ信号」という用語は、信号であって、その信号において情報を符号化する方法で設定又は変更されるその特徴の内の1つ又は複数を有する信号を意味する。
【0114】
「機械可読媒体」、「コンピュータ可読媒体」及び「デバイス可読媒体」という用語は、同じことを意味し、本開示では同義で使用され得る。これらの用語は、機械記憶媒体及び伝送媒体の両方を含むように定義される。したがって、これらの用語は、記憶デバイス/媒体及び搬送波/変調データ信号の両方を含む。
【0115】
実装例
実装1.撮像装置によって取り込まれた画像データにアクセスするステップであって、画像データが、個体の脳の1つ又は複数の画像に対応する情報を含み、情報がボクセルを含み、個々のボクセルが強度値に関連している、ステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して第1修正画像データを生成すべく、画像データの第1部分を除去するステップであって、画像データの第1部分が、個体の頭部の外側にある1つ又は複数の第1特徴部に対応する、ステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、第1修正画像データによって表される1つ又は複数の第2特徴部を、ヒト頭部の特徴部に対応する1つ又は複数のテンプレートと位置合せするステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、1つ又は複数のテンプレートに基づき、第1修正画像データに含まれるとともに個体の頭部に含まれる骨に対応する、画像データの第2部分を同定するステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、第1修正画像データから画像データの第2部分を除去して第2修正画像データを生成するステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、第2修正画像データに含まれるとともに個体の頭部に位置する血管に対応する、画像データの第3部分を同定するステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、値の第1範囲に含まれる第1直径を有する血管の第1部分を含む第1グループを決定するステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、値の第1範囲とは異なる値の第2範囲に含まれる第2直径を有する血管の第2部分を含む第2グループを決定するステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、脳の第1半球の第1領域に位置する第1血管に対応する第1ボクセルの第1強度値の第1基準を求めるステップであって、第1血管が第1グループに含まれる、ステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、脳の第2半球の第2領域に位置する第2血管に対応する第2ボクセルの第2強度値の第2基準を求めるステップであって、第2血管が、個体の脳内において第1血管に対して実質的に対称的に位置し、第2血管が第1グループに含まれる、ステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、第1強度値の第1基準と第2強度値の第2基準との差の尺度を求めるステップであって、強度値の第2基準が強度値の第1基準とは異なる、ステップと、1つ又は複数のプロセッサを使用して、上記尺度に基づき、第2血管に関して異常が存在する確率が閾値確率を上回ると判断するステップと、第1血管と、第2血管と、第2血管を強調表示するユーザインタフェース要素とを含む画像に対応するユーザインタフェースデータを生成するステップとを含む、方法。
【0116】
実装2.個体の事前指定された解剖学的ランドマークにある個体の特徴部に対応する画像データの追加部分を決定するステップを含み、第1修正画像データを生成するために除去された画像データの第1部分が、画像データの上記さらなる部分を含む、実装1の方法。
【0117】
実装3.撮像装置の一部に対応する画像データの追加部分を決定するステップを含み、第1修正画像データを生成するために除去された画像データの第1部分が、画像データの上記さらなる部分を含む、実装1又は2の方法。
【0118】
実装4.ヒト脳の複数の領域のデジタル表現を決定するステップと、ヒトの複数の領域のデジタル表現を第1修正画像データの部分と位置合せするステップとを含む、実装1~3のうちのいずれか1つの方法。
【0119】
実装5.ヒト脳の複数の領域が、頭蓋内内頸動脈の少なくとも一部と、中大脳動脈のM1セグメントの少なくとも近位部とを含む第1領域と、中大脳動脈のM1セグメントの少なくとも中部から遠位部を含む第2領域と、中大脳動脈のM2セグメントの少なくとも一部を含む第3領域とを含む、実装4の方法。
【0120】
実装6.ヒト脳の複数の領域のデジタル表現が、1つ又は複数の機械学習技法を使用して生成される、実装4の方法。
実装7.ヒト脳の複数の領域のデジタル表現が少なくとも1つのテンプレートを含み、少なくとも1つのテンプレートによって示されるヒト脳の複数の領域が、第1修正画像データの部分と位置合せされる、実装4の方法。
【0121】
実装8.ヒト脳に関連する1つ又は複数の血管のデジタル表現を決定するステップと、デジタル表現を使用して個体の頭部内の血管に対応する画像データの第3部分を同定するステップとを含む、実装1~3のうちのいずれか1つの方法。
【0122】
実装9.ヒト脳に関連する1つ又は複数の血管のデジタル表現が、1つ又は複数の機械学習技法を使用して生成される、実装8の方法。
実装10.ヒト脳に関連する1つ又は複数の血管のデジタル表現が、少なくとも1つのテンプレートを含み、個体の頭部内の血管に対応する画像データの第3部分が、少なくとも1つのテンプレートを使用して同定される、実装8の方法。
【0123】
実装11.第1ボクセルの第1強度値が、第1領域に位置する第1血管の第1密度を示し、第2ボクセルの第2強度値が、第2領域に位置する第2血管の第2密度を示し、異常が、第2血管の閉塞に対応する、実装1~10のうちのいずれか1つの方法。
【0124】
実装12.少なくとも1つのハードウェアプロセッサと、少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行される場合、少なくとも1つのハードウェアプロセッサに、個体の脳の画像に対応する情報を含む画像データにアクセスすることと、画像データに基づき、脳の第1半球に位置する1つ又は複数の第1血管を同定することと、画像データに基づき、脳の第2半球に位置する1つ又は複数の第2血管を同定することと、1つ又は複数の第1血管の1つ又は複数の第1密度と1つ又は複数の第2血管の1つ又は複数の第2密度との差の量に対応する尺度を求めることと、上記尺度に基づき、1つ又は複数の第1血管のうちの少なくとも1つの第1血管、もしくは1つ又は複数の第2血管のうちの少なくとも1つの第2血管に関する異常の確率を求めることとを含む動作を実施させる命令を格納するコンピュータ可読媒体とを備える、システム。
【0125】
実装13.少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行される場合、少なくとも1つのハードウェアプロセッサに、個体の脳の第1半球に位置する第1領域を同定することであって、第1領域が1つ又は複数の血管を含む、同定することと、個体の脳の第2半球に位置する相対第1領域を同定することであって、相対第1領域が1つ又は複数の第2血管を含み、相対第1領域が、第1領域に対して実質的に対称的に位置している、同定することと、1つ又は複数の第1血管の1つ又は複数の第1密度と1つ又は複数の第2血管の1つ又は複数の第2密度との差の量に対応する尺度が閾値基準を満たすと判断することとを含む動作を実施させる、コンピュータ可読媒体によって格納されたさらなる命令を含む、実装12のシステム。
【0126】
実装14.少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行される場合、少なくとも1つのハードウェアプロセッサに、画像データに基づき、個体の脳の第1半球の第2領域に位置する1つ又は複数の第3血管を同定することと、画像データに基づき、個体の脳の第2半球の相対第2領域に位置する1つ又は複数の第4血管を同定することと、1つ又は複数の第3血管の1つ又は複数の第3密度と1つ又は複数の第4血管の1つ又は複数の第4密度との差のさらなる量に対応するさらなる尺度を求めることと、上記さらなる尺度が閾値基準とは異なるさらなる閾値基準を満たすと判断することとを含む動作を実施させる、コンピュータ可読媒体によって格納された命令をさらに含む、実装13のシステム。
【0127】
実装15.少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのハードウェアプロセッサに、画像データに基づき、個体の脳の第1半球の第3領域に位置する1つ又は複数の第5血管を同定することと、画像データに基づき、個体の脳の第2半球の相対第3領域に位置する1つ又は複数の第6血管を同定することであって、相対第3領域が、第3領域に対して実質的に対称的に位置している、同定することと、1つ又は複数の第5血管の1つ又は複数の第5密度と1つ又は複数の第6血管の1つ又は複数の第6密度との差のさらなる量に対応するさらなる尺度を求めることと、上記さらなる尺度が、閾値基準又はさらなる閾値基準のうちの少なくとも一方とは異なる別の閾値基準を満たすと判断することとを含む動作を実施させる、コンピュータ可読媒体によって格納された命令をさらに含む、実装14のシステム。
【0128】
実装16.少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのハードウェアプロセッサに、個体の脳に関連する血管の画像を含むとともに、個体の頭部内に位置する血管に関するあり得る異常を示すユーザインタフェース要素を含むユーザインタフェースに対応するユーザインタフェースデータを生成することであって、ユーザインタフェース要素が、血管に関する異常の確率又は異常の重症度のうちの少なくとも一方も示し、画像が、基礎となる血管造影画像ボリュームの最大値投影(MIP)画像である、生成することを含む動作を実施させる、コンピュータ可読媒体によって格納されたさらなる命令を含む、実装12~15のうちのいずれか1つのシステム。
【0129】
実装17.少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのハードウェアプロセッサに、個体の頭部内に位置する血管の直径を求めることと、測定値の第1範囲に含まれる第1直径を有する血管の第1グループを決定することと、測定値の第2範囲に含まれる第2直径を有する血管の第2グループを決定することであって、第1直径の少なくとも一部が第2直径の少なくとも一部の少なくとも2倍大きい、決定することとを含む動作を実施させる、コンピュータ可読媒体によって格納されたさらなる命令を含む、実装12~16のうちのいずれか1つのシステム。
【0130】
実装18.少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのハードウェアプロセッサに、画像データに含まれる第1ボクセルの第1強度値に基づいて血管の第1グループに対する第1密度値を決定することであって、第1ボクセルが第1血管の第1グループに対応する、決定することと、血管の第1グループに含まれる個々の血管のそれぞれの長さを求めることと、画像データに含まれる第2ボクセルの第2強度値に基づき血管の第2グループに対する第2密度値を求めることであって、第2ボクセルが血管の第2グループに対応する、求めることとを含む動作を実施させる、コンピュータ可読媒体によって格納された命令をさらに含む、実装17のシステム。
【0131】
実装19.第1血管及び第2血管が、血管の第1グループに含まれ、本システムが、少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのハードウェアプロセッサに、脳の第1半球に位置する第1のさらなる血管の第1のさらなる密度と、脳の第2半球に位置する第2のさらなる血管の第2のさらなる密度との差のさらなる量に対応するさらなる尺度を求めることであって、第1のさらなる血管及び第2のさらなる血管が血管の第2グループに含まれ、異常の確率が、第1血管のうちの少なくとも1つの長さと、第2血管のうちの少なくとも1つの長さと、上記さらなる尺度とに基づく、求めることを含む動作を実施させる、コンピュータ可読媒体によって格納された命令をさらに含む、実装18のシステム。
【0132】
実装20.1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、撮像装置によって取り込まれた画像データにアクセスするステップであって、画像データが、個体の脳の画像に対応する情報を含み、情報が複数のボクセルを含み、個々のボクセルが強度値に関連している、ステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、画像データによって表される特徴部をヒト頭部の特徴部を含むテンプレートと位置合せするステップであって、ヒト頭部の特徴部が骨又は血管のうちの少なくとも1つを含む、ステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、画像データのいくつかの部分を除去して修正画像データを生成するステップであって、画像データの上記部分が個体の頭部内に位置する1つ又は複数の骨に対応する、ステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、修正画像データに基づき、脳の第1半球に位置する1つ又は複数の第1血管を同定するステップであって、1つ又は複数の第1血管が、値のある範囲に含まれる1つ又は複数の第1直径を有する、ステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、修正画像データに基づき、脳の第2半球に位置する1つ又は複数の第2血管を同定するステップであって、1つ又は複数の第2血管が値の上記範囲に含まれる1つ又は複数の第2直径を有する、ステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、1つ又は複数の第1血管の1つ又は複数の第1密度と1つ又は複数の第2血管の1つ又は複数の第2密度との差の量に対応する尺度を求めるステップであって、1つ又は複数の第1密度が1つ又は複数の第2密度よりも小さい、ステップと、1つ又は複数のハードウェアプロセッサを使用して、上記尺度に基づき、個体の頭部内に位置する少なくとも1つの血管に関する異常の確率を求めるステップと含む、方法。
【0133】
実装21.撮像装置が、コンピュータ断層撮影血管造影(CTA)撮像装置であり、画像データが、医療におけるデジタル画像と通信(DICOM)標準規格に従ってフォーマットされ、画像が、撮像装置によって取得された複数の画像スライスに基づき、複数の画像スライスの個々の画像スライスが、少なくとも約0.5mmから約5mm以下の厚さを有する、実装20の方法。
【0134】
実装22.テンプレートを使用して、個体の頭部内に位置する1つ又は複数の骨を同定するステップを含み、第1血管及び第2血管がさらなるテンプレートを使用して同定される、実装20又は21の方法。
【0135】
実装23.個体の頭部内に位置する1つ又は複数の血管に関する異常の確率が閾値確率を上回ると判断するステップと、個体の頭部内に位置する1つ又は複数の血管に関する異常の確率が閾値確率を上回ることに応じて:修正画像データに基づき、脳の第1半球に位置する第3血管を同定するステップと、修正画像データに基づき、脳の第2半球に位置する第4血管を同定するステップと、第3血管の第3密度と第4血管の第4密度との差のさらなる量に対応するさらなる尺度を求めるステップと、上記さらなる尺度に基づき、個体の頭部内に位置する1つ又は複数の血管に関する異常のさらなる確率を求めるステップとをさらに含む、実装20~22のうちのいずれか1つの方法。
【0136】
実装24.個体の脳の画像を取得するステップと、画像を使用して、ヒト脳内に位置する複数の血管の位置を示すテンプレートに基づき、個体の脳内に位置する血管を同定するステップと、血管に関する始点を決定するステップであって、始点が、個体の脳内の血管の経路に含まれる画像の第1ボクセルを示す、ステップと、血管に対応する密度値に基づき血管に沿った経路を決定するステップであって、密度値が、血管に関連する画像の部分と画像の背景部分とのコントラストの量を示す、ステップと、少なくとも部分的にテンプレートに基づき血管の終点を決定するステップと、血管が終点の前で終端すると判断するステップと、血管が終点の前で終端することに基づき、血管に関連する異常が存在する確率を求めるステップとを含む方法。
【0137】
実装25.血管に沿った経路が、血管の位置に対応する位置における画像のボクセルの血管性値に基づいて決定される最短経路に対応し、血管性値がヘシアンフィルタの固有値に対応する、実装24の方法。
【0138】
実装26.血管の始点が、最高血管性値を有するボクセルに対応し、そのボクセルが、血管の近位部に位置する、実装24又は25の方法。
実装27.血管の経路が、最短経路のコストが閾値コストを超えることに基づいて終端する、実装24~26のうちのいずれか1つの方法。
【0139】
実装28.血管の経路が、通過するのに有限コストを有する血管の経路に沿ってボクセルが残っていないと判断することに応じて終端する、実装24~27のうちのいずれか1つの方法。
【0140】
実装29.始点が、中大脳動脈の近位端に位置し、終点が、中大脳動脈の遠位部に位置する、実装24~28のうちのいずれか1つの方法。
実装30.少なくとも1つのハードウェアプロセッサと、少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのハードウェアプロセッサに、個体の脳の画像を取得することと、上記画像を使用して、ヒト脳内に位置する複数の血管の位置を示すテンプレートに基づき個体の脳内に位置する血管を同定することと、血管に関する始点を決定することであって、始点が個体の脳内の血管の経路に含まれる画像の第1ボクセルを示す、決定することと、血管に対応する密度値に基づき血管に沿った経路を決定することであって、密度値が、血管に関連する画像の部分と画像の背景部分とのコントラストの量を示す、決定することと、少なくとも部分的にテンプレートに基づき、血管の終点を決定することと、上記血管が終点の前に終端すると判断することと、上記血管が終点の前に終端することに基づき、上記血管に関して異常が存在する確率を求めることとを含む動作を実施させる命令を格納するコンピュータ可読媒体とを備える、システム。
【0141】
実装31.血管に沿った経路が、血管の位置に対応する位置における画像のボクセルの血管性値に基づいて決定される最短経路に対応し、血管性値がヘシアンフィルタの固有値に対応する、実装30のシステム。
【0142】
実装32.血管の始点が、最高血管性値を有するボクセルに対応し、ボクセルが、血管の近位部に位置する、実装30又は31のシステム。
実装33.血管の経路が、最短経路のコストが閾値コストを超えることに基づいて終端する、実装30~32のうちのいずれか1つのシステム。
【0143】
実装34.血管の経路が、通過するのに有限コストを有する血管の経路に沿ってボクセルが残っていないと判断することに応じて終端する、実装30~33のうちのいずれか1つのシステム。
【0144】
実装35.上記始点が、中大脳動脈の近位端に位置し、上記終点が、中大脳動脈の遠位部に位置する、実装30~34のうちのいずれか1つのシステム。
【実施例】
【0145】
実施例1
方法
発症から24時間以内の急性虚血性脳卒中の疑いのある2017年1月1日から2018年12月31日までの薄層スライスCTAによるマルチモーダルCTを受けた連続患者を、後ろ向きに特定した。これらのマルチモーダルCTを、2人の神経放射線科医が、前方循環LVO又はM2-セグメント中大脳動脈(M2-MCA)閉塞(参照標準)の存在及び部位に対し合意して評価した。次いで、自動化LVO検出アルゴリズム(ラピッド(RAPID)CTA)を使用して、患者のCTAを処理した。受信者操作特性解析を使用して、a)LVO、及びb)LVO又はM2-MCA閉塞のいずれかの検出のためのアルゴリズムの感度、特異度及びNPVを求めた。
【0146】
結果
477人の患者からのCTAを解析した(271人の男性及び206人の女性、年齢中央値71歳、四分位範囲60~80)。処理時間中央値は158秒間であった(四分位範囲150~167秒)。78人の患者に前方循環LVOがあり、28人の患者に孤立性M2-MCA閉塞があった。感度、陰性的中率(NPV)及び特異度は、頭蓋内LVOの検出に対してそれぞれ0.94、0.98及び0.76であり、頭蓋内LVO又はM2-MCA閉塞のいずれかの検出に対してそれぞれ0.92、0.97及び0.81であった。
【0147】
材料及び方法
本発明者らの医療用画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System)及び電子医療記録を使用して、2017年1月1日~2018年12月31日の本発明者らの機関を受診し、急性虚血性脳卒中の疑いがあるためにマルチモーダル脳CTを受け、以下の選択基準(inclusion criteria)を満たした基準連続患者を、後ろ向きに特定した。選択基準は、a)18歳を超える患者、及びb)症状発症の又は健康であることが確認されてから24時間以内に実施されたマルチモーダル「脳卒中プロトコル」CTであるということであった。除外基準は、a)技術的に不適切なCTA(経験を積んだ神経放射線科医による中大脳動脈の遠位M2セグメントのレベルまでの頭蓋内動脈の正確な評価を妨げた、不十分な造影剤ボーラス又は実質的な体動又は金属アーチファクト)、及びb)薄層スライスCTA画像が入手可能でないということであった。これらの除外基準が正当である理由は、a)CTAは、経験を積んだ人間の読影者による正確な解釈のために十分な品質のものでなければならず、その理由は、これが、LVO検出アルゴリズムが評価される基準標準であったためであり、b)アルゴリズムによって処理されるために、512×512画像マトリックスを使用して収集された薄層スライス画像が必要であった、ということであった。
【0148】
CT画像収集及び再構成技法
256スライスのマルチディテクタ(multi-detector)CT(iCT256、米国オハイオ州クリーブランド(Cleveland,OH,USA)所在のフィリップス・ヘルスケア社(Philips Healthcare))において、すべての患者をスキャンした。本発明者らの機関の日常的なマルチモーダル「脳卒中CTプロトコル」は、単純CTと、それに続くCT灌流(CTP)及びCT血管造影法からなっていた。
【0149】
単純CTは、以下のパラメータ、すなわち、0.625mmスライスコリメーション、0.283のらせんピッチファクタ、120kVの管電圧及び画像マトリクス512×512でのヘリカルモードで獲得した。体軸、冠状及び矢状多断面再構成を4mmスライス厚で実施して、1mm重複部分でUBカーネルを使用して、画像を再構成した。
【0150】
CTPのために、50mLの非イオン性造影剤(350mgヨウ素/mL、イオヘキソール、オムニパーク(Omnipaque)350、米国ウィスコンシン州(Wisconsin,USA)所在のGEヘルスケア社(GE Healthcare)を静脈注射した。
【0151】
後続するCTAに対して、80mLの同じ非イオン性造影剤を5mL/sの速度で静脈注射し、その後、40mLの生理食塩水洗浄を6mL/sで行った。大動脈弓で造影剤ボーラストリガを実施した。ヘリカル収集のためのパラメータは以下の通りであった。すなわち、大動脈弓から頭頂までの頭尾方向カバレッジ、線量調整を伴う100kV管電圧、スライスコリメーション幅0.625mm、画像マトリクス512×512及びらせんピッチファクタ0.618である。以下の再構成パラメータを使用した。すなわち、5の反復再構成(iterative reconstruction)(iDose)ファクタ及び畳み込みカーネルBである。0.8mm重複部分で体軸画像を再構成した。4mmスライス厚で、体軸、冠状及び矢状多断面再構成を実施した。10mm厚で体軸最大値投影を再構成した。
【0152】
LVO定義
実施例1に関して、頭蓋内「LVO」という用語は、具体的に、M1-MCA及び頭蓋内ICA(錐体セグメントからICA二分岐まで)を含む、前方循環閉塞を述べるために使用した。「床突起上ICA」は、ICAの眼及び交通セグメントを指す。
【0153】
M1-MCAは、ICA二分岐からMCA二分岐又は三分岐までのセグメントとして機能的に定義した。MCAの膝部に対して近位にMCAの早期分岐があった場合、短い近位の動脈幹をM1セグメントと称し、分岐の遠位の枝をM2セグメントとして定義した。
【0154】
M2セグメントは、(冠状画像で評価した)シルビウス裂内に垂直に上行するMCA二分岐/三分岐のすぐ遠位のセグメントとして定義した。近位M2閉塞は、冠状画像におけるシルビウス槽の中点を通って描かれる横断面に対して下位に位置しているものとして定義した。M2セグメントの有意性は、他のM2セグメントに対するそのサイズと、それがもたらした灌流異常の程度とに基づいて評価した。
【0155】
画像解析
(それぞれ、8年間及び9年間のフェローシップ後の経験がある)2人の診断神経放射線科医が、各患者の完全なマルチモーダルCT、すなわち、単純CT、CTP及びCTAを検討した。
【0156】
患者の臨床症状の詳細が提供された。次いで、7年間の経験がある介入神経放射線科医が、所見を確認した。これらの神経放射線科医の読影は、自動化LVO検出ツールの性能が評価される標準基準(criterion-standard)としての役割を果たした。
【0157】
各患者に対して、CTAの技術的妥当性を評価した。次いで、合意して以下の特徴を記録した。
1.頭蓋内LVO又は頸部ICA閉塞の存在、側及び部位、
2.M2-MCA閉塞の存在、側、部位(近位対遠位)及び優位性。
【0158】
重複病変の場合、閉塞の各部位を記録した。M1-MCA閉塞の場合、閉塞の具体的な下位部位(M1セグメントの近位2/3対遠位1/3)と非不透明化血管セグメントの長さとを記録した。
【0159】
自動化ソフトウェアを使用するLVO検出
自動化ツール(ラピッド(RAPID)CTA、ラピッド(RAPID)4.9、カリフォルニア州メンローパーク(Menlo Park,CA)のイスキーマ・ビュー(iSchema View))を使用して、LVOの存在及び側に対して各患者のCTA生データを解析した。
【0160】
ラピッドCTA(RAPID CTA)アルゴリズムは、以下の動作を実施する。すなわち、(1)医療におけるデジタル画像と通信フォーマットでCTA生データをインポートし、(2)画像を体動及び傾斜補正し、(3)CTAデータを頭尾方向に切り取ってC1椎骨から頭頂までのカバレッジを制限し、(4)ヒト頭部の解剖学的テンプレートをCTAデータと弾性的に位置合せし、(5)関連する解剖学的構造(例えば、骨及び血管)のテンプレートをCTA上で歪ませてマスクを作成し、(6)骨マスクを使用して頭蓋底及び頭蓋冠を除去し、(7)頭蓋内血管を同定するとともに、それらを小径グループ及び大径グループに二分し、(8)鞍上槽(床突起上ICA)及び近位シルビウス槽(M1-MCA)における大内径血管の長さを評価することにより血管密度を求めるとともに、これらの血管を構成するボクセルの密度値(ハンスフィールド単位)の和を求め、(9)シルビウス槽における且つそれに隣接するさらに遠位の小内径血管(遠位M1、M2及びM3セグメント)に対して血管密度を求め、(10)左右比較を実施して、最初に鞍上槽及び近位シルビウス槽内で、次いでさらに遠位に進んで、相対血管密度比を求め、(11)骨マスクCTAから頭蓋内血管系の体軸、冠状及び矢状最大値投影を作成し、(12)以下の色分け閾値、すなわち75%~80%(青色)、60%~74%(緑色)、45%~59%(黄色)及び45%未満(赤色、
図10)を適用して、これらのMIP上で相対両半球間血管密度の低下した領域を強調表示し、(13)これらのMIPを匿名出力マップとして画像保存通信システムに送信する。4つの異なる閾値の適用は、同時であり且つ完全に自動化されている。
【0161】
各患者に対して、これらのステップを完了するためにかかった処理時間を記録した。研究期間中、アルゴリズムのさらなる訓練は発生しなかった。
統計解析
ソフトウェアパッケージ(メッドカルク(MedCalc)バージョン(Version)17.2、2017、ベルギー国オステンド(Ostend,Belgium)所在のメッドカルク・ソフトウェア有限責任会社(MedCalc Software bvba))を使用して、すべての統計解析を実施した。
【0162】
受信者操作特性(ROC)解析を実施して、
1.頭蓋内LVO、及び
2.頭蓋内LVO又はM2セグメント閉塞のいずれか
の検出のためのアルゴリズムの感度、特異度、陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)及びROC曲線下の面積(AUC)を求めた。
【0163】
LVO検出に対するこの研究において、75%未満の血管密度閾値(60%~75%、45%~59%及び45%未満の閾値を含む)を使用し、その理由は、これがそれらの公開前テストに基づいてソフトウェア開発者により推奨されたためである。
【0164】
置換ありの10000サンプルによるブートストラップ手順を使用して、信頼区間を計算した。
結果
選択基準を満たす501人の連続患者が、2017年1月1日から2018年12月31日の間に、CTA及びCTPを伴うマルチモーダルCTを受けた。技術的に不適切なCTAにより8人が除外された(5人は不十分な造影剤ボーラス、3人は深刻な動き劣化)。(LVOがある2人を含む)16人が、PACSで薄層CTAが入手可能でなかったため除外された。
【0165】
477人の患者、271人の男性(年齢中間値70歳、IQR59.5~79)及び206人の女性(年齢中間値71.5歳、IQR60~83)からのCTAを解析した。患者のベースライン特性及び血管閉塞の詳細は、それぞれ表1及び表2に示す。
【0166】
【0167】
【0168】
すべての事例を5分未満で処理した。平均処理時間は158秒(IQR150~167秒)であった。
1.頭蓋内LVO検出
LVO検出のためのROC解析の結果を表3に示す。
【0169】
【0170】
研究母集団におけるLVOのある78人の患者のうち、73人(93.6%)が、アルゴリズムにより正確に特定され、0.94の感度(CI
95%0.86~0.98)及び0.76の特異度(CI
95%0.72~0.80)をもたらした。陰性的中率は非常に高かった(0.98、CI
95%0.96~0.99)。ROC曲線を
図11Aに示す。
【0171】
事後解析において、アルゴリズムは、(LVOの遠位のM2及びM3セグメントの不透明化がないことによって示される)不十分な側副血行状態に関連するいかなるLVOも見落とさなかった。
【0172】
A.)ICA閉塞
LVOは、頭蓋内ICA閉塞のある31/32(96.9%)の患者において正確に同定された。重複ICA及びM1-MCA閉塞のある患者が11人、ICA末端を含む孤立性床突起上ICA閉塞のある患者が14人(不完全な閉塞のある患者を含む)であった。これらは、すべて、45%未満閾値を使用して正確に同定された(
図10(A)及び
図10(B)に示す例)。
【0173】
ICA末端を残した床突起上ICA閉塞がある3人の患者において、ICA末端及びM1-MCAは、開存前交通セグメントを介して交差流により不透明化された。これらの患者では、床突起上ICAの近位部は不透明化されず、その結果、60%未満のより高い閾値を使用しても、アルゴリズムによる検出を可能にする血管密度比の低下がもたらされた。
【0174】
本アルゴリズムは、45%未満閾値を使用して、4人のうち3人の錐体-海綿状セグメントICA閉塞を同定した。これらの患者においては、床突起上ICAの内径及び内腔密度は、対側側(
図11)と比較して、検出を可能にするほど十分に低減及び低下した。本アルゴリズムが見落とした、錐体セグメントICA閉塞のある残りの患者においては、床突起上ICAは十分に不透明化されず、眼動脈を介する外頸動脈からの側副血行供給により、内径の低減又は内腔密度の低下はなかった。
【0175】
B.)M1閉塞
孤立性M1-MCA閉塞のある46人の患者のうち、42人(91.3%)が、本アルゴリズムにより正確に同定された。33人が45%未満(赤色)閾値を使用して特定され、5人が60%未満(黄色)閾値を使用して特定され、4人が75%未満(緑色)閾値を使用して特定された。
【0176】
緑色又は黄色閾値を使用して特定された9人の患者のうち、6人に(長さが8mm未満である)短いセグメントの閉塞があった。これらの患者には、良好な側副血行状態を示す、閉塞の遠位のM2セグメントの良好な不透明化(したがって、より小さい相対血管密度低下)があった。
【0177】
図10(C)及び
図10(D)に2つの例を示す。残りの3人の患者もまた、近位M2セグメントの再構成によって示されるように良好な側副血行があった。
4つのM1ーMCA閉塞が見落とされ、1つは不完全であり、1つは短いセグメント(5mm長)であり、もう1つは、側副血行を介する近位M2セグメントの再構成があって15mm長であった。残りの事例は、この場合もまた良好な側副血行状態を示す、前側頭枝及び近位M2セグメントの再構成がある、長いセグメントの近位M1-MCA閉塞であった。
【0178】
2.LVO及びM2-MCA閉塞
LVO又はM2-MCA閉塞のいずれかの検出のためのROC解析の結果を表3に示す(ROC曲線は
図13(B)に示す)。0.92という感度(95%CI、0.86~0.96)は、純粋にLVO検出に対するよりも低かったが、0.81という特異度(95%CI、0.77~0.85)はより高かった。NPVは0.97(95%CI、0.95~0.98)であった。
【0179】
28のM2-MCA閉塞のうち、4つは検出されず、すなわち、2つの(さらに遠位のM2セグメントの不透明化によって示される)良好な側副血行がある短いセグメントの近位閉塞と、小さい非優位M2セグメント閉塞と、遠位非優位M2閉塞とであった。
【0180】
3.偽陽性
71の偽陽性があった。床突起上及びシルビウス槽における非対称血管密度の原因が、これらの患者のうちの64人において特定された。同側の血管密度の低下は、慢性M1-MCA狭窄症(n=5)、高悪性度床突起上ICA狭窄症(n=1)、床突起上ICAの密度の低下及び内径の低減による頸部ICA閉塞(n=1)、M1又はM2セグメントの減弱による古い同側MCA領域梗塞(n=4)及びMCAの早期二分岐(n=12)によってもたらされた。
【0181】
偽陽性は、対側の血管密度の増加(
図12)の以下の原因からももたらされた。すなわち、大きい前側頭枝(n=7)、非対称に大型又は一側の後交通セグメント(n=15)、過灌流(n=3、2人の患者は血管過多腫瘍があり、1人は発作があった)、大型MCA動脈瘤(n=1)、両前大脳動脈に血液を供給する大きい床突起上ICA(n=2)及び不透明化静脈構造(n=13)である。
【0182】
頸部ICA閉塞
8人の患者に孤立性頸部ICA閉塞があった。本アルゴリズムは、床突起上ICAがその対側相対物と比較して密度が低下する(15%)とともに内径が低減(50%)した、これらの患者のうちの1人において、頭蓋内LVOを診断した。残りの7人の患者では、同側床突起上ICAには、密度の緩やかな低下及び内径の緩やかな低減のみがあった。
【0183】
考察
この研究は、大規模地方病院において急性虚血性脳卒中が疑われるためにマルチモーダルCTを受けた連続患者のコホートにおいて、自動化LVO検出ツールの性能を後ろ向きに評価した。本発明者らの結果は、完全自動化ソフトウェアアルゴリズムが、高い診断感度(0.94)及び陰性的中率(0.98)、並びに適度に高い特異度(0.76)で頭蓋内前方循環LVOを検出することができることを実証している。この研究はまた、これが、3分未満の非常に短い計算時間で達成することができ、それにより、このツールが緊急臨床状況に理想的に適するものとなることも示す。
【0184】
本アルゴリズムの感度は、経験レベルの異なる神経放射線科医に対して先行して報告された範囲内にある(0.94~1.0)。しかしながら、特異度は、経験を積んだ人間の読影者によって達成される0.95~0.98よりもはるかに低い。大部分の偽陽性をもたらした血管非対称性は、放射線科医及び神経科医によってLVOから容易に識別することができる。したがって、本発明者らは、経験を積んだ人間の読影者を自動化LVO検出ツールに置き換えることを推奨しない。代わりに、そのNPVが高いことを考慮して、脳卒中患者のマルチモーダルCTをスクリーニングするための臨床判断支援ツールとしてこのソフトウェアを使用することを提案する。
【0185】
それは、治療する神経科医及び報告する放射線科医にあり得るLVOに対する注意を促し、高い優先順位として患者の撮像の評価を促すことにより、診断を促進することができる。こうしたツールは、24時間体制の現場マルチモーダル脳卒中CT解釈を提供する資源がなく且つ経験を積んだスタッフがいない、本発明者らの施設等の地方及び周辺施設において特に価値がある。最終的に、放射線科医によってすべてのCTAが読影されるが、特に、資源が限られる勤務時間後、それらには常に最高優先順位が割り当てられるとは限らない。多くの場合、より小さい施設、及び超専門医(subspecialist)放射線学が実施されない国では、待機している放射線科医又はレジデントが1人しかいない。この状況では、脳卒中患者のマルチモーダルCTよりも、外傷等の他の緊急スキャンが優先される可能性があり、その結果、診断が遅延する。本著者らは、臨床診察においてこの問題に繰返し直面してきた。本アルゴリズムは、LVO検出を完全に自動化し、事例の75%において3分以内(すべての事例において5分以内)で出力を生成する。これにより、陽性所見が、スキャンの5分以内に、報告する放射線科医、遠隔画像診断医(teleradiologist)又は研修医に知らされ、それにより診断を促進することが確実になる。目下、CTA再フォーマットが完了し、研究がCT技術者により放射線科医ワークリストに掲示されるまで、評価が遅延することが多い。
【0186】
現場での血栓除去術サービスを提供しない本発明者らの病院のような病院に対する本アルゴリズムの追加の利益は、最寄りの血栓除去術施設の通知である。これにより、血栓回収チームの動員及び対象となる患者の治療が促進され、それによりあり得る最良の転帰が確実になる。通知は、目下、地元の神経科医又は救急医が血栓除去術施設に連絡することに頼り、それによりさらに遅延する可能性がある。
【0187】
本アルゴリズムは、価値のある診断支援ツールでもあり得る。経験を積んだ神経放射線科医はLVOの検出に対して高感度を有し、75%~98%であると報告されているが、神経科医及び研修生の診断能力は著しく低い可能性がある(1回の研究で63%)。本発明者らの施設等、世界中の多くの施設において、マルチモーダル脳卒中CTAの重大な検討が、研修生の放射線科医及び神経科医によって実施され、これらの検査は、後に放射線科医(多くの場合、一般医)によりもう一度読影される。また、経験を積んだ放射線科医であっても、LVOを見落とす。本ツールは、これらの場合に見直しを促すことができ、臨床的に重大な見落とし及び結果としての損害を回避する可能性がある。ソフトウェアのコストは低いが、患者が有益な治療の機会を逃すとともに著しい神経学的障害を被る、LVOの見落とされた又は遅延した診断のコストは高い。したがって、本発明者らは、LVO検出ソフトウェアの使用が、費用効果が高いか否かを評価する具体的な介入は実施していないが、LVOの遅延し見落とされる診断の本発明者らの経験から、費用効果は高いと考えられる。
【0188】
本発明者らの知るところでは、自動化LVO検出アルゴリズムの診断性能を評価した完全な研究はこれまで発表されていない。別のLVO検出ソフトウェアの評価に対して2つの論文要約が入手可能であり、これらの論文要約で報告されている0.85~0.97の感度は本発明者らのものに匹敵するが、報告されている特異度は広範囲(0.52~0.83)を有していた。それらの研究論文における患者のコホートは、複数の包括的脳卒中施設において急性虚血性脳卒中患者からランダムに選択され、LVOの事例が多かった。本発明者らの研究コホートは、急性虚血性脳卒中の疑いがある地方病院を受診している連続患者から構成され、したがって、LVOの罹患率はより低く、より異種である可能性があり、その理由は、臨床トリアージが包括的脳卒中施設におけるよりも明確に定義されていないためである。キュレートされていないデータセットを使用することにより、本発明者らは、本発明者らのアルゴリズムをテストし、現実世界の状況でその診断性能を判断した。本発明者らのコホートは、LVO検出ツールに対する目標母集団をより表しているとも感じられる。
【0189】
本研究で評価したLVO検出アルゴリズムは、鞍上槽及びシルビウス槽内の血管密度の半球の差を検出する。血管密度は、不透明化された血管の長さ、内径及び数(空間密度)とともに、(ハンスフィールド単位で測定される)内腔不透明化の密度によって影響を受ける。LVOにより血管非不透明化がもたらされ、それにより、同側血管密度が低下する。結果としての非対称性が、本アルゴリズムにより検出される。例えば、ICA末端を含む床突起上ICA閉塞のすべてが、45%未満閾値を使用して、本アルゴリズムにより検出された。これらの患者において、床突起上ICA及びM1-MCAの少なくとも近位部の非不透明化により、極度に血管密度が低下した。同様に、広範囲の動脈非不透明化があった、重複M1-MCA及び頭蓋内ICA閉塞のある患者が、45%未満閾値を使用して検出された。開存した前交通セグメントもあった、末端を保存したICA閉塞のある患者は、交差流が遠位床突起上ICAを不透明化したため、より緩やかな血管密度低下を示した。血管密度低下は、アルゴリズムがLVOを検出するのに十分であったが、これらの患者においてはより高い閾値の使用が必要であった。
【0190】
LVO検出に対する偽陰性は、本アルゴリズムによる検出を可能にするのに不十分な相対血管密度低下により説明することができた。これは、短いセグメント(
図15)及び不完全なM1-MCA閉塞で、閉塞の遠位のM1又はM2セグメント不透明化があった良好な側副血行のある患者において発生した。閉塞の遠位の血管不透明化(したがって、相対血管密度のより小さい低下)のある、高い側副血行グレードもまた、最低(45%未満)閾値を使用して検出されなかった9つのM1-MCA閉塞の原因であった。頑強な側副血行があるこれらの患者は、梗塞成長がそれほど時間依存ではない長期未発症者である可能性がより高い。したがって、この群では、検出の促進はそれほど重大ではない可能性がある。アルゴリズムがLVOを見落とした患者のいずれも、不十分な側副血行グレードを有していなかった。不十分な側副血行は急速な進行に関連し、したがって、これは、組織救済に迅速な再灌流が必要であるため、迅速な診断が最も重要である群である。
【0191】
他の偽陰性は、錐体ICA閉塞のみであり、これは、本アルゴリズムの重要な限界を目立たせる。錐体-床突起ICA閉塞は、頭蓋底における骨マスクの性能が不十分であるため直接検出することができない。床突起上ICAは、通常、この患者において不透明化され、本アルゴリズムによる検出を妨げる。本研究における頭蓋底ICA閉塞のある患者の数(4)は、このグループにおけるLVO検出ツールの精度の意味のある解析には少なすぎたが、それはまた、急性虚血性脳卒中母集団における錐体-床突起ICA閉塞の罹患率が低いことも反映している。頸部血管は照会されないため、頸部ICA閉塞もまた本アルゴリズムに対して難題を提起し、これらの閉塞により、必ずしも、床突起上ICAの密度が低下するか又は内径が低減することになるとは限らない。現行のガイドラインは、孤立性頸部ICA閉塞のある患者に対して血栓除去術の必要を示さず、したがって、現時点ではLVO検出ツールを使用してこれらを特定することは恐らくはそれほど重大ではない。放射線科医及び神経科医は、偽陰性の存在及び原因を認識しており、アルゴリズムが陰性結果を与える場合であってもCTAの自身の解釈において油断せずにいることが重要である。
【0192】
本アルゴリズムは、大部分のM2-MCA閉塞を検出することができた。感度は0.92までわずかに低下したが、M2-MCA閉塞が含まれていたとき、特異度は0.81まで上昇し、NPVはおよそ安定したままであった。M2-MCA閉塞のある患者における標準的な内科的治療と比較して、血栓除去術による機能的転帰が向上するエビデンスがある。したがって、現行のガイドラインは、血管内血栓除去術は、M2-MCA閉塞のある厳選された患者において考慮することができると述べている6。特に、血栓除去術は、非常に機能的に重要な(eloquent)脳領域の深刻な神経学的障害及び虚血のある患者において迅速な再灌流を達成するものとして価値が与えられ得る。加えて、(例えば、4.5時間窓を超えての診察のため)経静脈的血栓溶解に適していないM2-MCA閉塞のある患者においては、血栓除去術が唯一の利用可能な再灌流療法である。したがって、LVO検出ツールは、M2-MCA閉塞も同定するべきであると主張することができる。
【0193】
偽陽性は、進化変種(例えば、血管内径の非対称をもたらす同側MCAの早期一側二分岐、及び一側又は大型の対側後交通セグメント)、慢性狭窄閉塞疾患、及び(例えば、血管過多腫瘍による)対側過灌流に関連する血管非対称によってもたらされた。本アルゴリズムは、静脈構造と動脈構造とを識別しないため、深中大脳静脈及び浅中大脳静脈等の静脈構造における非対称により偽陽性がもたらされる可能性がある。これは、急速造影剤ボーラス注入及びCTPの前のCTAの実施等、CTAの静脈汚染を防止する手段によって回避することができる。
【0194】
この研究の限界は、単一施設での経験であるということである。複数の地方スポーク(spoke)病院及び血栓回収ハブ(hub)を含む多施設研究におけるツールの有用性のさらなる調査が計画されている。
【0195】
結論
この研究において評価したアルゴリズムは、臨床的に脳卒中が疑われるためマルチモーダルCTを受けた患者のコホートにおけるLVO検出に対して、高い感度及びNPVを有していた。M2-MCA閉塞もまた確実に検出され、これは、これらの患者を血栓除去術に選考することができるため重要である。感度は、神経放射線科医に対して先行して報告された範囲にあるが、特異度は、経験を積んだ人間の読影者のものよりもはるかに低い。したがって、本アルゴリズムは、経験を積んだ人間の読影者の代理ではなく、診断を促進するスクリーニングツールとして使用されるべきである。迅速な処理時間により、緊急臨床状況において実行可能となる。
【0196】
図
図10。本アルゴリズムによる脳主幹動脈閉塞検出の例(
図14に拡大バージョンを示す)。A、冠状コンピュータ断層撮影血管造影最大値投影(MIP)が、急性発症右側脱力及び失語症を呈していた44歳の女性における、末端内頸動脈及び中大脳動脈の近位M1セグメント(M1-MCA)閉塞(矢印)を示す。B、結果としての鞍上槽における(対側の45%未満までの)極度の血管密度低下により、本アルゴリズムは脳主幹動脈閉塞を検出することができた。血管密度低下の領域が赤色で強調表示されている、体軸骨マスクMIPのソフトウェア出力。C、急性発症左側脱力を呈していた88歳の女性。血管密度低下の領域が黄色で強調表示されている(対側の60%未満)、短いセグメントの遠位右MCA-M1閉塞(矢印)を示す冠状MIPのソフトウェア出力。M2セグメントのうちの1つが、閉塞の遠位で不透明化されており、したがって、血管密度低下は、より高い閾値の使用を必要とする先行する事例よりも小さかった。D、急性発症左側脱力を呈する61歳の男性。血管密度低下の領域が緑色で強調表示されている(対側の75%未満)、短いセグメントの遠位右M1-MCA閉塞(矢印)を示すソフトウェア出力。短いセグメントの閉塞の遠位のM2及びM3セグメントの良好な不透明化(良好な側副血行を示す)により、先行する例よりも顕著ではなかった血管密度低下を特定するために、より大きい領域のサンプリングが必要であった。カラーオーバレイによる疑似コントラストにより、対応する従来のMIPよりも血管が目立って見える。
【0197】
図11。解離に伴う左錐体内頸動脈(ICA)閉塞がある59歳の男性。A、体軸骨除去最大値投影(MIP)を含むソフトウェア出力。鞍上槽及びシルビウス槽内の血管が赤色で強調表示されて、MIPにおける正常な外観にも関わらず対側と比較して極度の密度低下を示す。B、左海綿状ICA(矢印)の非不透明化を示す、体軸0.8mmコンピュータ断層撮影血管造影。C、左床突起上ICAが、右(平均密度510ハンスフィールド単位、下部テキストボックス)よりも低い内腔密度(平均密度390ハンスフィールド単位、上部テキストボックス)を有し、これにより、本アルゴリズムは脳主幹動脈閉塞(LVO)を検出することができた。
【0198】
図12。失語症及び右側脱力を呈している50歳の男性における偽陽性の例。A、鞍上槽及びシルビウス槽内の血管が照会されたとき、対側の60%未満までの右側血管密度低下を示すソフトウェア出力。B、左シルビウス槽内の血管の増加を示す、冠状コンピュータ断層撮影血管造影最大値投影(MIP)(20mm)。C、左側頭葉及び島における原因となる血管過多腫瘍(膠芽腫、矢印付き)を示す、造影剤増強コンピュータ断層撮影体軸画像。D、血流マップに、同側中大脳動脈の上昇した相対大脳血流及び充溢が見える。
【0199】
補足的材料
CT技法。
CTPのために、50mLの非イオン性造影剤(350mgヨウ素/mL、イオヘキソール、オムニパーク(Omnipaque)350、米国ウィスコンシン州(Wisconsin,USA)のGEヘルスケア(GE Healthcare))を静脈注射し、続いて、50mL生理食塩水洗浄を5mL/sで行った。以下のパラメータ、すなわち、80kV管電圧、160mA管電流、2.05s平均時間分解能、500msガントリ回転時間、80mm z軸カバレッジ、1.5mmスライスコリメーション及び512×512収集マトリクスを用いて、脳の35回の連続スキャンからなる体軸アプローチを使用して灌流CTデータを収集した。画像は、10mmスライス厚で4の反復再構成(iDose)ファクタを使用して再構成し、市販のソフトウェア(ラピッド(RAPID)、カリフォルニア州メンローパーク(Menlo Park,California)のイスキーマ・ビュー(iSchema View))を使用して処理した。
【0200】
図13:A.頭蓋内LVOの検出、及びB.頭蓋内LVO又はM2-MCA閉塞のいずれかの検出のためのROC曲線。M2-MCA閉塞が含まれるとき、感度はわずかに低下するが、AUCは特異度の向上により上昇する。
【0201】
図14:本アルゴリズムによる脳主幹動脈閉鎖検出の例。A~C:急性発症右側脱力及び失語症を呈していた44歳の女性。A.冠状CTA MIPは、末端ICA及び近位M1-MCA閉塞(矢印)を示す。結果としての鞍上槽における(対側の45%未満までの)極度の血管密度低下により、本アルゴリズムはLVOを検出することができた。B.及びC.血管密度低下のある領域が赤色で強調表示されている、体軸及び冠状骨マスクMIPのソフトウェア出力。D~E:急性発症左側脱力で診察を呈している88歳の女性。D.短いセグメントの遠位右MCA-M1閉塞(矢印)を示す体軸CTA MIP。M2セグメントのうちの1つが充満されているが、減弱している。E.及びF.(対側の60%未満までの)血管密度低下の領域を強調表示しているソフトウェア出力。G~I:急性発症左側脱力を呈している61歳の男性。G.短いセグメントの遠位右M1-MCA閉塞(矢印)を示す体軸CTA MIP。H.及びI.血管密度が対側の75%未満まで低下した、広範囲の領域を緑色で強調表示しているソフトウェア出力。(良好な側副血行を示す)閉塞の短いセグメントの遠位のM2及びM3セグメントの不透明化により、先行する例よりも小さかった、血管密度低下を特定するために、より広い領域のサンプリングが必要であった。カラーオーバレイによる疑似コントラストにより、対応する従来のMIPよりも血管が顕著に見える。
【0202】
図15、偽陰性。A.軟膜側副血行を介する近位M2セグメントの再構成を含む短いセグメントの右遠位M1-MCA閉塞を示す体軸CTA MIP画像。B.本アルゴリズムはこのLVOを検出しなかった。
【0203】
実施例2
方法
この後ろ向き研究のために、2つの脳卒中試験、ディフューズ(DEFUSE)2(n=62、2008年7月~2011年9月)及び3(n=213、2017年5月~2018年5月)と、単一の四次施設からのECR候補(n=82、2014年8月2日~2015年8月30日)及び正常者(n=111、2017年6月6日~2019年1月28日)のコホートと、単一の地方病院からの「コードストローク(code stroke)」患者(n=501、2017年1月1日~2018年12月31日)とから、データをプールした。自動化アルゴリズムにより、すべてのCTAを評価した。2人の神経放射線科医による合意した読影が、参照標準としての役割を果たした。ROC解析を使用して、1)頭蓋内内頸動脈(ICA)又はM1セグメント中大脳動脈(M1-MCA)を含む前方循環LVO、2)前方循環LVO及び近位M2セグメント中大脳動脈(M2-MCA)閉塞、並びに3)個々のセグメント閉塞の検出のためのアルゴリズムの診断性能を評価した。
【0204】
結果
926人の患者(年齢中間値70歳、IQR:58~80、422人女性)からのCTAを解析した。395人の患者に、前方循環閉塞LVO又はM2-MCA閉塞があった(NIHSS14(中央値)、IQR9~19)。感度及び特異度は、LVO検出に対してそれぞれ97%及び74%であり、M2閉塞が含まれる場合、それぞれ95%及び79%であった。閉塞部位による解析において、感度は90%(M2-MCA)、97%(M1-MCA)及び97%(頭蓋内ICA)であり、対応するROC曲線下の面積は0.874(M2)、0.962(M1)及び0.997(頭蓋内ICA)であった。
【0205】
結論
頭蓋内前方循環LVO及び近位M2閉塞は、自動化検出ツールにより迅速に且つ確実に検出することができ、それにより、脳卒中患者の治療において機関内及び機関間ワークフロー及び緊急撮像トリアージを容易にすることができる。
【0206】
材料及び方法
この後ろ向き研究は、インフォームドコンセントに対する要件を適用除外した、関係する地方病院及び四次病院のIRBによって承認された。
【0207】
a.患者選択
この後ろ向き研究には、合計969人の患者が含まれていた。患者母集団は、すべての主要なCT販売業者からのスキャナモデルの十分に表されているサンプルと、病院で見られるCTAプロトコルの典型的な変形とを構成する5つの個々のコホートを含んでいた。275人の患者は、ディフューズ(DEFUSE)2(脳卒中進行を理解するための拡散及び灌流撮像評価(Diffusion and Perfusion Imaging Evaluation for Understanding Stroke Evolution)、n=62、2008年7月~2011年9月)及びディフューズ(DEFUSE)3(n=213、2017年5月~2018年5月)、2つの大規模多施設脳卒中試験からプールされ、193人の患者は、82人が潜在的なECR候補として撮像された患者であった、単一の四次施設からであり(2014年8月2日~2015年8月30日)、111人は、正常な前方循環を含む非脳卒中関連指標に対して撮像された(2017年6月6日~2019年1月28日)。第5コホートは、一次脳卒中施設である地方病院におけるコードストローク精密検査の一部としてCTAがあった連続した一連の501人の患者であった(2017年1月1日~2018年12月31日)。ディフューズ(DEFUSE)2及び3に関して、急性CTAが起こっていた同意した患者の一部のみを使用したことに留意されたい。第5コホートにおける患者からのデータは、すでに発表されている後続研究に使用された。
【0208】
(1)スクリーニング不適格(n=4、ディフューズ(DEFUSE)2より)、(2)CTAが急性CTプロトコルに含まれていない(n=7)、(3)不適切なデータフォーマット(薄層スライスCTA生データが入手可能でない)、及び(4)CTAが、経験を積んだ神経放射線科医(S.A.)により、人間の読影者による正確な解釈を可能にするのに技術的に不適切な、したがって不十分な品質であるとみなされた(n=15、3人が激しい体動、8人が不十分な造影剤ボーラス/造影剤ボーラスなし、4人が頭蓋内動脈の不完全なカバレッジ)ため、43人の患者(4.4%)を除外した。
【0209】
残りの926人の患者(年齢70(中間値、四分位範囲(IQR))、58~80歳)を解析し、そのうちの504人は男性(年齢69、IQR、58~78)であり、422人は女性(年齢71、IQR、59~82)であった。自身の頸部-脳血管系の診断精密検査のために撮像された、これらの患者のうちの531人には、前方循環血管閉塞又は遠位(M3/M4セグメント)閉塞のみのいずれのエビデンスもなく、この研究では、対照群とみなされた。CTA専門家読影に基づき、残りの395人の患者には、以下の位置において前方循環に閉塞があった。
【0210】
I.単一部位(n=241):頸部ICA(n=15)、頭蓋内ICA(n=16)、M1-MCA(n=161)、M2-MCA(n=37)及び遠位MCA(n=12)。
II.重複病変(n=154):いずれかのICA+M1(n=124)、いずれかのICA+M2(n=8)、M1+M2(n=5)、頸部ICA+頭蓋内ICA(n=9)及びM2+遠位MCA(n=8)。
【0211】
閉塞血管がある395人の患者のうち、15人の患者には孤立性頸部ICA閉塞があり、60人の患者にはいかなる頭蓋内LVOもなくM2-MCA閉塞があった。頭蓋内LVOがある残りの320人の患者のうち、16人の患者には孤立性頭蓋内ICAがあり、161人の患者には孤立性M1-MCA閉塞があり、143人の患者には重複/複数閉塞、すなわちM1+M2(n=5)、頸部ICA+M1(n=21)、頭蓋内ICA+M1(n=103)、頭蓋内ICA+M2(n=5)並びに頭蓋内及び頸部ICA(n=9)があった。
【0212】
b.参照標準
ディフューズ(DEFUSE)2及び3に登録された患者に対して、閉塞病変の存在及び正確な位置を、調査者が先行して決定し、8年間のフェローシップ後の経験がある神経放射線科医が検証した。残りの患者に対して、9年間のフェローシップ後の経験がある2人神経放射線科医が、検討に利用可能な(灌流撮像を含む)すべての臨床及び撮像データを用いて、合意して、閉塞病変の存在及び部位に関してCTAを含むマルチモーダルCTを評価した。いかなる意見の相違も、灌流を含む、患者に対するすべての利用可能な撮像の検討によって解決した。これらの神経放射線科医の読影は、アルゴリズムの診断性能が評価された参照標準としての役割を果たした。
【0213】
c.アルゴリズム説明
本明細書に提示するLVO検出の基礎となる概念は、CTA上での3つの事前指定された解剖学的評価領域(R1、R2及びR3)の弾性レジストレーションとその後のCTAの管状フィルタリングとを実施して、対側半球に対する前頭蓋内血管の不透明化低減を検出する、ソフトウェアに依存する。このアルゴリズムは、ラピッド(RAPID)4.9.1(カリフォルニア州メンローパーク(Menlo Park,CA)のイスキーマ・ビュー(iSchema View))に実装し、従来のコンピュータ環境(各々8コア及びハイパースレッディング(hyperthreading)を有する2×インテル(Intel)ジーオン(Xeon)E5-2680 2.7GHz CPU、64GB RAM、セントオーエス(CentOS)7リナックス(Linux(登録商標)))で実行した。この研究で使用したアルゴリズムは、欧州適合(Conformite Europeenne)表示を受け、米国食品医薬品局(US Food and Drug Administration)により承認を得た。アルゴリズムは、販売業者によって提供されるように、いかなる変更もいかなるさらなる前処理及び後処理もなしに、使用した。LVO検出に対する相対血管密度閾値は、使用者が任意に選択することができるが、この研究では、ソフトウェアのデフォルト値、すなわち、75%~80%未満(青色)、60%~75%未満(緑色)、45%~60%未満(黄色)及び45%未満(赤色)を使用した。
【0214】
統計解析
一次転帰は、頭蓋内LVOを検出するアルゴリズムの診断性能であった。ROC解析を使用して、頭蓋内LVOを検出する感度及び特異度を評価した。特異度、すなわち、動脈不透明化がないか又は極度に低減していることによって示される、LVOのCT血管造影徴候の存在を検出するアルゴリズムの能力は、頭蓋内ICA及びM1-MCAに対して評価した。そして、LVO群に近位M2-MCA閉塞を加えて、診断性能の評価を繰り返した。
【0215】
ブートストラップ解析(1000回反復)を使用して、すべてのパラメータに対して95%CIを計算した。ROC曲線下の面積(AUC)を、AUCのSEを計算するデロング(DeLong)アルゴリズムとともに使用した。このソフトウェアは、主にスクリーニングツールとして使用されるように意図されているため、95%以上の診断感度が要件となった。
【0216】
二次転帰は、具体的な血管セグメントにおけるLVOを検出するアルゴリズムの診断性能と処理速度とであった。以下の下位部位、すなわち(1)頭蓋内ICA(末端ICAを含む)、(2)M1-MCA及び(3)近位M2-MCAにおいて閉塞を検出する、アルゴリズムの診断性能を評価した。各閉塞部位の解析に対して、他の2つの下位部位における閉塞は除外した。
【0217】
すべての統計テストは、メッドカルク(MedCalc)(メッドカルク(MedCalc)バージョン(Version)17.2、2017、ベルギー国オステンド(Ostend,Belgium)のメッドカルク・ソフトウェア(MedCalc Software))を使用して実施した。すべてのテストに対する有意性を示すために、0.05のα水準を使用した。
【0218】
結果
図16に、頭蓋内LVOのある4人の患者における自動病変検出の代表的な例を示す。処理された926の事例に対して、ターンアラウンドタイム、すなわちデータ送信から結果の受信までの時間は、158秒(IQR:140~176秒)であり、そのうち、弾性レジストレーションが最も時間のかかるステップ(約130秒)であった。
【0219】
図16.自動脳主幹動脈閉塞(LVO)検出に対する結果例。A、側副血行の部分的再構成(矢印)がある、遠位内頸動脈(ICA)閉塞(白抜き矢印)及びA1-ACAセグメントの閉塞(曲線矢印)のある65歳の男性。アルゴリズムによって決定された極度の血管密度低下の領域は赤色で示されている。B、左近位M1-中大脳動脈(MCA)閉塞(白抜き矢印)がある72歳の女性。ソフトウェアによって見つけられた異常密度の領域は、赤色で強調表示されている。C、左側の遠位M1閉塞(白抜き矢印)と赤色での異常血管の領域とを含む84歳の男性。D.近位左上M2分岐の閉塞(白抜き矢印)とソフトウェアによって選択された対応する領域とを含む55歳の男性。血管密度低下の程度は、他の3人の患者よりも小さかった。
【0220】
頭蓋内LVO:
【0221】
【0222】
320人の患者に頭蓋内前方循環LVOがあり、残りの588人の患者にはなかった(表1)。自動アルゴリズムは、0.941のAUC(95%CI、0.926~0.957)をもたらした。95%以上の感度目標は、75%未満から60%(緑色)閾値で達成され、96.87%の感度(310/320(95%CI、94.3%~98.5%))と74.32%の特異度(437/588(95%CI、70.6%~77.8%)、
図17(A))とをもたらした。
【0223】
図17.ROC解析。すべての頭蓋内脳主幹動脈閉塞(LVO)の検出に対するROC曲線(A)、並びにすべての頭蓋内LOC及び近位M2-中大脳動脈(MCA)セグメンチ閉塞(B)。ROC曲線上のドットは、個々の閾値レベルを示し、1つは最低感度を有し、最特異度は45%未満閾値であり、最高感度及び最低特異度は、75%~80%未満閾値にあった。白抜き円は、最大ヨーデン指標(Youden index)を示す。アスタリスクは、95%以上の感度目標での閾値が最高特異度で達成されたことを示す。凡例における有意性水準は、デロング(DeLong)アルゴリズムから導出されたZ統計のP値を示す。AUCは曲線の下の面積を示す。
【0224】
頭蓋内LVO+M2-MCA閉塞:
368人の患者に前方循環LVO又は近位M2-MCA閉塞があり、543人の患者にはなかった。95%以上の目標感度は、60%~75%未満(緑色)閾値で満たされ、それにより、(351/368)95.38%の感度(95%CI、92.7%~97.3%)及び(431/543)79.37%の特異度(95%CI、75.7%~82.7%)がもたらされた。0.947のAUC(95%CI、0.933%~0.962%)によって測定された全体的な診断性能は、M2セグメントを加えることによりわずかに向上し、これは、主に、感度のわずかな(1.49%)の低下のみで特異度が向上したためであった(
図17B)。
【0225】
b.個々の血管セグメント
この下位解析のために、LVOもM2-MCA閉塞もない531人の患者が対照群としての役割を果たした。
【0226】
頭蓋内ICA(ICA末端を含む):
133人の患者に頭蓋内ICA閉塞があった。本アルゴリズムは、0.977(95%CI、0.965~0.989)のAUCをもたらした。95%以上の感度目標は、45%~60%未満(黄色)閾値で達成され、これは、86.44%の特異度(459/531(95%CI、83.2%~89.2%)、表2))で96.99%の非常に高い感度(129/133(95%CI、92.5%~99.2%))をもたらした。
【0227】
頭蓋内LVO:
【0228】
【0229】
M1-MCA:
290人の患者にM1-MCA閉塞があった。本アルゴリズムは、0.962のAUC(95%CI、0.948~0.976)をもたらした。ただし、AUCによって測定される診断性能は、頭蓋内ICA閉塞と比較してM1-MCA閉塞ではわずかに低かった。95%以上の感度目標は60%~75%未満(緑色)閾値で満たされ、これは、96.90%の感度(281/290(95%CI、94.2~98.6))及び79.66%の特異度(423/531(95%CI、76.0%~83.0%)、
図18B)をもたらした。
【0230】
M2-MCA:
60人の患者に近位M2-MCAセグメント閉塞があった。自動化アルゴリズムは、M1-MCAセグメント閉塞の検出に対するよりもわずかに低い性能で実施したが、0.874のAUC(95%CI、0.826~0.921)をもたらした。95%以上の感度目標は、いかなる閾値でも達成することができなかったが、75%~80%未満(青色)閾値で、それぞれ90.00%(54/60(95%CI、79.5%~96.2%))及び74.95%(398/531(95%CI、71.0~78.6))の感度及び特異度が達成された(
図18C)。
【0231】
c.偽陰性
頭蓋内LVOが最大感度閾値(75%~80%未満、青色)であっても検出されなかった偽陰性の数は、比較的小さく(n=14)、1つの頭蓋内ICA、8つのM1-MCA閉塞及び5つのM2-MCA閉塞であった。
【0232】
8つのM1-MCA病変に対して、閉塞のすぐ遠位の流れの再構成により3人の短いセグメント又は不完全な閉塞があった。ここで、不完全な閉塞を横切る少量の流れ又は軟膜側副血行を介する逆行性充満により、同側血管密度が正常となるか又は上昇した。5つの残りは、M2-MCAセグメントを再構成する頑強な軟膜側副血行によりR1領域レベルの遠位の中~遠位M1-MCA閉塞であり、その結果、同側R2及びR3領域において血管密度が正常となるか又は上昇した(
図19は、これらの偽陰性事例の例を提供する)。見落とされた頭蓋内ICA閉塞は頭蓋底においてのみであり、床突起上ICAの正常な不透明化があった(
図20A)。
【0233】
5つのM2-MCAが見落とされ、1つの閉塞は、R2テンプレートでカバーされていなかった、シルビウス槽の上半分に位置し、2つは、閉塞した非優位近位上M2-MCA枝であり、2つは、頑強な軟膜側副血行を示す、閉塞のすぐ遠位の再構成を含む、それらの下M2分岐の短いセグメントの近位閉塞であった。頭蓋内LVOに加えて、この群に近位M2-MCA閉塞が含まれたとき、偽陰性の総数は14から9に減少した。
【0234】
d.偽陽性
最大所定閾値でのLVO検出に対して11の偽陽性があった(赤色、45%未満のマークされた半球間血管密度差があった)。これらは、(1)MCA解剖学的構造における実質的な半球間のばらつき(n=4)、又は後大脳動脈の胎児起源(n=1)、(2)17mm正中偏位をもたらす腫瘤効果(mass effect)による全半球(holohemispheric)硬膜下血種、(3)8mmの遠位MCA動脈瘤、(4)M2-MCA狭窄症(n=3)及び(5)CTAの24時間前の機械的血栓除去術試行の後の不完全な再開通(TICI 2b)に起因した。LVO群にM2-MCAが含まれていなかった場合、LVO検出に対してさらなる17の偽陽性があり、17すべてが近位M2-MCA閉塞であった。
【0235】
75%~80%未満(青色)、60%~75%未満(緑色)及び45%~60%未満(黄色)閾値での偽陽性は、M1-MCA分枝パターン及び血管内径の解剖学的ばらつき、後大脳動脈の胎児起源、並びに、慢性狭窄閉塞疾患における同側のセグメントの流量低減及び(例えば、膠芽腫の患者における梗塞又は発作の再灌流に起因する)反応性充血による対側の血流の増加等、他の血管病理に起因した。これらの例は、
図VI及び
図VIIに見出すことができる。
【0236】
考察
この研究は、頭蓋内前方循環LVOの自動化検出の新たなアルゴリズムを評価し、それが優れた診断感度及び高い特異度を有することを実証した。処理時間が短い(160秒未満)ことにより、緊急臨床状況における適用が可能となる。
【0237】
先行する研究は、神経放射線科医が、89%~98%の感度及び95%~98%の特異度でLVOを検出することができることを示した。この高い特異度を達成しない自動化は、放射線科医に取って代わることはできず、むしろ、その強度及び有用性は高い感度にあり、それにより、これらのスキャンを緊急の放射線科医の検討を必要とするものとしてフラグを立てるとともに優先することによって、LVOの診断の促進が可能になる。非常に高い感度は、スクリーニングツールに対する要件である。本アルゴリズムは、任意の頭蓋内LVOの検出に対して95%以上という目標感度を満たした。これは、1回の研究におけるICA閉塞の検出に対して90%であると報告されている、LVOを検出する感度が高いが完全ではない経験を積んだ神経放射線科医に匹敵する。感度は、一般放射線科医及び研修医等、頭蓋CTAの解釈の経験が浅い読影者の場合はより低く、感度は1回の研究において63%程度に低い。
【0238】
世界中の多くの施設において、研修医が最初にマルチモーダル脳卒中CTを解釈し、その後、それは、神経放射線科医により正式に読影される。さらに、世界中のすべての病院及び医療サービスが、24時間体制の神経放射線医学の専門知識にアクセスできるとは限らない。コホート5が引き出されたもの等、いくつかの一次脳卒中施設及び地域病院(community hospital)では、一般放射線科医がマルチモーダル脳卒中CTを解釈し、典型的に、勤務時間後、資源が限られているため、待機している放射線科医又はレジデントが1人しかいない。この状況では、外傷等の他の緊急スキャンが優先される場合、急性脳卒中スキャンが見過ごされる可能性がある。これらの要因は、著者らの経験からするとLVOの診断の遅延及び見落としの原因となる可能性がある。完全自動化アルゴリズムは、これらの状況において価値のある診断補助及びスクリーニングツールの両方である可能性が高い。本アルゴリズムは、報告する放射線科医又はレジデントに陽性所見を知らせることにより、正確な診断を促進することができる。本アルゴリズムはまた、脳卒中チーム及び神経血管内治療科医(neurointerventionalist)の通知も容易にすることができ、血栓回収チームの動員を可能にし、それにより、対象となる患者の治療が促進される。別の重要な考慮事項は、本アルゴリズムが、人間の読影者の間の驚くほど不十分な評価者間一致とは対照的に、一貫性を提供する、ということである。
【0239】
個々のセグメントに対して、頭蓋内ICA又はM1-MCAの閉塞に対して、略完全な感度が達成され、近位M2-MCAの検出に対する感度はわずかに低かった。これは、(側副血行が閉塞のすぐ遠位のM2セグメントを再構成した)短いセグメント及び(順行性の流れの)不完全な閉塞からの偽陰性に起因する可能性があり、そこでは、半球間血管密度低下が、アルゴリズムが検出するには小さすぎた。頑強な側副血行は、治療のためのより長い時間窓を与えると考えられる。事後解析において、本アルゴリズムは、側副血行が不十分であるいかなる患者においてもLVOを見落とさず、これらの患者は、組織救済に迅速な再灌流が避けられない、長期未発症者である可能性が高い。放射線科医及び神経科医は偽陰性の存在及び原因を認識していることが重要であり、陰性結果により、実施可能な限り早急なCTAの完全な且つ注意深い評価が思いとどまらせられるべきではない。
【0240】
本アルゴリズムの全体の特異度は、頭蓋内LVO検出の場合は74%超、M2-MCAが含まれた場合は79%超であった。個々のセグメントに対して、特異度は、M2-MCA閉塞の検出の場合は75%であり、M1-MCAの場合は80%、頭蓋内ICA閉塞の場合は86%まで上昇した。LVO検出アルゴリズムにおいてM2-MCA閉塞を含む根拠は、それらが今では、ECRに対する主流目標として関心対象であるということである。血栓除去術は、M2-MCA閉塞のある患者における標準的な内科的治療と比較して転帰を向上させることができる。しかしながら、M2-MCA閉塞の検出は、これらの血管により大きい解剖学的ばらつきがあるとともにそれらの内径がより小さいため、より難題であった。さらに、この研究に使用したソフトウェアのバージョンにより、血管密度が求められる関心領域が、シルビウス槽の中点まで、M2セグメントの近位半分のみをカバーするように制約され、将来の実施はさらに遠位の領域まで広がるであろう。
【0241】
この研究で評価したLVO検出ツールは、3つの領域、R1~R3と、病変位置を反映するとともに血管密度低下の重症度を増大させる、LVO検出のための4つの異なる閾値とを有していた。閾値が80%未満から45%未満までの血管密度低下に変化したとき、診断感度は低下したが、特異度は上昇した。(60%~75%未満)閾値が最適であることが分かり、それにより、70%~80%の許容可能な特異度で95%以上の所望の感度がもたらされた。放射線科医に対し、これにより、緊急検討を必要とするスキャンの数が依然として実質的に低下する。しかしながら、より少ない偽LVO警報が望まれる場合、これは、単に、ROC曲線に沿って移動し、特異度の上昇のために目標95%超の感度をトレードすることにより、達成することができる。
【0242】
本発明者らの知る限り、これは、自動化LVO検出ツールを導入するとともに、患者の大規模且つ多様なコホートを組み込む多施設研究においてその性能を評価した、最初の査読付き刊行物である。近年、この主題に関するいくつかの会議要約は発表されているが、それらはこのアルゴリズムには関連していない。登録された患者の数及び混合、並びにこれらの要約で報告された結果は、90%~97%のLVO検出に対する感度、及び52%~83%の広い特異度範囲で、広く異なる。
【0243】
このプールされたコホート研究の強みは、2回の注目される多施設脳卒中試験に登録された患者を含んでいたということである。これは、血栓除去術候補に選考された、LVOがある急性虚血性脳卒中の患者の事前選択されたコホートにおける、アルゴリズムの妥当性検査を提供した。LVOのある多数の患者が、診断感度のロバストなテストを可能にした。他の大規模コホートは、急性虚血性脳卒中が疑われる、地方病院を受診している連続患者から構成されていた。すべての有望者のこのコホートを含むことにより、広範囲の脳卒中に似たものに関するアルゴリズムのテストが可能になり、LVO検出ツールが使用される可能性が最も高い患者の母集団に対して本発明者らの所見の広範囲な適用可能性が確保される。この研究において異なる現場からの複数の患者コホートを含むことにより、CTスキャナ及びCTAプロトコルの異なるメーカ及びモデルに対するアルゴリズムのテスト及び妥当性検査が可能となった。
【0244】
この研究には、いくつかの関連する限界がある。第1に、それは後ろ向き研究である。したがって、本発明者らは、特に、長期転帰及び臨床スコアに関する臨床情報に関して、すべての患者に対する完全なデータセットを有していなかった。機関内及び機関間ワークフローを円滑化するために本ツールを使用することができるか否かをテストするために、少なくとも1つの包括的脳卒中施設(ハブ)と、いくつかの周辺の地方/地域病院(スポーク)とを含む前向き研究が必要である。アルゴリズム自体に関連する限界は、薄層スライスCTA生データ及び動脈不透明化に対する処理要件を含む。薄層スライスCTAデータは、依然としていくつかの施設では使用されている可能性があるより古い世代のマルチスライスCTスキャナであっても、日常的に取得される。頭蓋内動脈の造影剤不透明化に対する要件もまた、人間の読影者に適用される。経験を積んだ人間の読影者による正確な解釈を可能にするために、CTAにおける動脈不透明化が存在しないか又は非常に不十分であるとみなされた患者は、15/969(1.5%)であった。これらの事例のうちの8つは、コホート5、すなわち地方病院からであった。技術的に不十分な研究の比率は、実施されるCTAのボリュームがより小さく、したがって専門家スタッフの経験が浅い、より小規模の地域病院ではより高い可能性がある。動脈不透明化が、人間の解釈を可能にするのに十分であるとみなされたすべての事例は、本アルゴリズムにより正常に処理された。
【0245】
本アルゴリズムは、血栓を直接検出するのではなく、結果としての血管不透明化の喪失を検出し、したがって、慢性閉塞から偽陽性がもたらされることに留意されたい。このソフトウェアの目的は、LVOの可能性がある患者に対して放射線科医の注意を喚起するトリアージツールとしての役割を果たし、それにより、人間の読影者による患者のマルチモーダルCTの評価をトリガすることであり、それにより、人間の読影者は、(CTAのみでなく)すべての利用可能な情報を使用して、主観的判断(judgement call)を行うことができる。本アルゴリズムによる閉塞部位の正確な局所化と慢性閉塞の識別とは、重要ではなく、そのため、この研究では評価しなかった。
【0246】
要約すると、自動化コンピュータ化スクリーニングツールにより、(近位M2-MCA閉塞を含む)前方循環内の頭蓋内LVOを有効に且つ効率的に検出することができる。ワークフローを改善し治療を促進するためにこのツールを使用することができるか否かを判断するために、将来の前向き研究が保証される可能性がある。
【0247】
補足的材料
補足的方法-アルゴリズム説明
本明細書に提示するLVO検出の基礎となる概念は、前頭蓋内血管の不透明化及び数の低減を検出することができるソフトウェアに依存する。それは、以下の8つの主なステップからなる。
【0248】
1.データインポート:固有の薄層スライスCTA DOCOM画像が、ソフトウェア内にインポートされる。
2.前処理:a.C1椎骨と頭頂との間に位置するスライスのみを維持するためにCTA入力データを切り取る。b.すべてのCTA画像からCT頭部固定具を除去する。
【0249】
3.解剖学的構造を同定する:a.非剛性レジストレーション1を使用して、ヒト頭部の解剖学的テンプレートが患者のCTAデータセットと弾性的に位置合せされる。b.関連する解剖学的構造(例えば、骨、血管)と(解剖学的テンプレートの座標空間で定義された)後続する解析に関連する3つの事前指定された半球の関心領域(R1、R2及びR3)とのテンプレートが、(a)において求められた変換パラメータを使用して患者のCTA上で歪められる。ここで注目すべきは、R2領域が、M2-MCAセグメントをその膝部からシルビウス槽の頂部への途中までカバーする。
【0250】
4.骨除去:ステップ2で定義された骨マスクを使用して、CTAボリュームから頭蓋底及び頭蓋冠が除去される。
5.血管検出:頭蓋内血管が同定され、管状フィルタリング2を使用して大径血管グループ及び小径血管グループに分類される。
【0251】
6.領域を評価する:a.大内径血管(頭蓋内ICA及び近位M1-MCAセグメント(R1))内のボクセル密度(ハンスフィールド単位)の総和が、各血管のセグメント長とともに合わせて評価される。b.「小内径」血管(中~遠位のM1(R2)、M2及びより遠位のMCAセグメント(R3)に対して、(先行ステップで求められた)ボクセル密度の総和が測定される。
【0252】
7.異常検出:a.半球間で、R1、R2及びR3に対する密度基準が比較される。b.相対半球血管密度比及び対応する色スキームに対する以下の閾値、すなわち、75%~80%未満(青色)、60%~75%未満(緑色)、45%~60%未満(黄色)及び45%未満(赤色)が使用された。ここで、百分率は、対向する半球に対する信号の割合を示し、すなわち、45%未満(赤色)は血管密度の最大低下となり、75%~80%未満は最も緩やかな低下である。c.領域は、R1~R3で優先順位が付けられ、R1に最高優先順位が与えられる。すなわち、本アルゴリズムは、最初に両半球におけるR1領域を比較し、密度低下が選択された重症度閾値を満たさなかった場合にのみ、次の領域(すなわち、R2、次いでR3)に進む。
【0253】
8.報告生成:a.頭蓋内血管系の傾斜が除去され且つ回転補正された体軸、冠状及び矢状最大値投影(MIP)が、骨マスクCTAボリュームからレンダリングされた。b.領域R1、R2又はR3が((上述した基準に基づき)いずれが異常であるとみなされるかに応じて)、MIP画像上でカラーオーバレイとして強調表示される。検討を簡単にするために、オーバレイ上には、半球異常を実証する最も近位の領域のみが示される。c.次いで、二次取込みDICOM画像として、注釈付き及び注釈なしのMIPがエクスポートされる。
【0254】
補足的参考文献
1.クレインS(Klein S)、スターリングM(Staring M)、マーフィーK(Murphy K)、フィエルヘフェルMA(Viergever MA)、「エラスティックス:医用画像レジストレーションに基づく強度のためのツールボックス(Elastix: A toolbox for intensity based medical image registration)」、医用画像に関するIEEE議事録(IEEE Transactions on Medical Imaging)、2010年、第29巻、p.196~205。
【0255】
2.フランジAF(Frangi AF)、ニーセンWJ(Niessen WJ)、フィンケンKL(Vincken KL)、フィエルヘフェルMA(Viergever MA)、「マルチスケール血管増強フィルタリング(Multiscale vessel enhancement filtering)」、コンピュータ医用画像処理及びコンピュータ支援治療学会(Medical image computing and computer-assisted intervention)-miccai’98、1998年、第1496巻、p.130-137。
【0256】
補足的図
図18-個々の血管セグメントの閉塞に対するROC解析。頭蓋内ICA閉塞(A)の検出のための診断性能は略完璧であり、M1-MCA閉塞(B)に対しても優れた性能であり、M2-MCA閉塞(C)に対しては良好な性能であった。ROC曲線上のドットは個々の閾値レベルを示し、最低感度及び最高特異度のものは45%未満閾値であり、最高感度及び最低特異度は75%~80%未満閾値にあった。白抜き円は最大ヨーデン指標を示す。アスタリスクは、95%以上の感度目標での閾値が最高特異度で達成されたことを示す。凡例における有意性水準は、デロング(DeLong)アルゴリズムから導出されたZ統計のP値を示す。
【0257】
図19-偽陰性結果。(A)及び(B)は、低減した内径を有するにも関わらず、閉塞の遠位の高い内腔密度(「CTA信号」)によって示される、遠位M1セグメント及びM2セグメントを再構成している良好な側副血行がある、短いセグメントのM1-MCA閉塞(白抜き矢印)がある患者の体軸及び冠状MIPを示す。(A)右中M1閉塞がある76歳の女性。(B)右遠位M1閉塞がある61歳の男性。(C)及び(D)は、完全な中M1閉塞(白抜き矢印)がある2人の患者を示す。両患者は、近位M2セグメントの不透明化によって示される頑強な側副血行を有し、それにより、アルゴリズムの陰性出力がもたらされた。
【0258】
図20-最も穏やかな(青色)閾値での偽陰性例。(A)頭蓋底ICA閉塞(矢印)。床突起上ICA及び黄色矢印によって強調表示される領域の遠位の不透明化により、偽陰性検出に至った。(B)閉塞のすぐ遠位の顕著な側副血行(アスタリスク)がある中~遠位M1閉塞(矢印)のある5つの偽陰性のうちの1つ。
【0259】
図21-正常変異に関連する偽陽性結果。(A)右M1-MCA(曲線矢印)及びその結果左半球におけるより顕著な遠位血管の非常に早期の二分岐がある67歳の男性。(B)左MCA M1セグメント及び遠位枝がより顕著となっている右M1-MCA(曲線矢印)の早期の三分岐がある68歳の男性。左胎児性PCA(白抜き矢印)も存在し、血管密度における半球非対称の一因であった。(C)対側の相対物に対する顕著な前(矢じり)及び後(曲線矢印)M2分岐がある71歳の男性。左胎児性PCA(白抜き矢印)が、さらなる半球不均衡の一因であった。カラーオーバレイが血管密度を誇張し、血管密度の低下を認識するのを困難にするため、対応する元の薄層スライスMIP(最上部矢印)が追加されている。
【0260】
図22-他の病理からの偽陽性結果。(A)左MCA領域(遠位下M2再分岐)の後態様内に古い梗塞(曲線矢印)がある89歳の男性。CPTからの血流の減少及び高いTmaxも示されている。遠位下M2分岐の慢性閉塞があり、それにより、梗塞領域における血管の減少及び半球不均衡(緑色領域)がもたらされている。(B)再灌流急性梗塞による可能性が高い、右前MCA及びACA領域における過灌流(曲線矢印)及びNCCTにおける低密度(hypodensity)(白抜き矢印)がある82歳の女性。(上昇した相対CBF及び低下したTmaxとして灌流パラメトリックマップで最もよく見える)この領域内の相対的に実質的に高い流量により、全体的な血管密度が上昇し、それにより非対称がもたらされ、これは、本アルゴリズムにより、対側半球における相対的に低いCTA不透明化として解釈された。(C)右島にGBMがある(曲線矢印)79歳の男性患者。腫瘍自体及び発作活動に関連する血管過多により、(CBF及びTmaxマップで最もよく認められる)島内及び島に隣接する血流の増加に至り、それにより、対側半球に関してこの領域における全体的なCTA不透明化が増大した。
【0261】
補足的表
以下の5つの表は、実施したすべてのテストに対する完全混同行列を提供し、関心のある研究者が、この研究に対して実施されたROC解析を再現することができるようにする。
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
実施例3
LVOアルゴリズムは、0/1すなわちLVOなし/LVOの転帰を有する。この転帰は、決定木を通して求められるスコアに閾値を設定することにより決定される。
【0268】
1.血管セグメントが評価領域の遠位端に達しない(ハードストップは評価領域内部で検出される)場合、血管密度比(VDR)に対してスコア=0.0。
2.血管トラッカがM2に向かう血管を追跡することができない場合、VDRに対するスコア=0.59。
【0269】
3.それ以外では、血管密度比を評価する(これは、0.0~1.0の値を有することになる)。任意の解析からの0.6未満のスコアは、以下に記載するようにLVO検出に対して陽性であるとみなされる
a.MCA M1近位VDRが0.6未満である場合、LVOを報告する
b.MCA M1/M2遠位VDRが0.45未満である場合、LVOを報告する
c.半球VDRが0.6未満である場合、LVOを報告する
217事例に基づき、LVOアルゴリズムスコア対参照LVO決定に対するROC曲線は、AUC=0.99を有する(95%ブートストラップCI:0.971、0.999)。
【0270】
図23:LVOの予測因子としての血管密度比スコアに対するROC曲線。22~95歳の271人の患者のグループ、100人の女性、116人の女性、1人未知に対する性能、109のグラウンドトゥルース陽性及び108のグラウンドトゥルース陰性事例。