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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】光装置、および光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20241010BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20241010BHJP
   H01S 5/02208 20210101ALI20241010BHJP
   H01S 5/02253 20210101ALI20241010BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B6/32
H01S5/02208
H01S5/02253
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022530636
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2021022326
(87)【国際公開番号】W WO2021251488
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020102422
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】沖 和重
(72)【発明者】
【氏名】小林 知存
(72)【発明者】
【氏名】原 弘
(72)【発明者】
【氏名】津村 英志
(72)【発明者】
【氏名】川村 正信
(72)【発明者】
【氏名】吉村 悟士
(72)【発明者】
【氏名】石井 邦幸
(72)【発明者】
【氏名】中島 史博
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 秀章
(72)【発明者】
【氏名】神杉 秀昭
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-102498(JP,A)
【文献】国際公開第2020/004872(WO,A1)
【文献】特開2014-095843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0263970(US,A1)
【文献】特開2013-101244(JP,A)
【文献】特開2004-61541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
6/30-6/34
6/42-6/43
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子と、
前記光素子と光結合するレンズと、
前記光素子と前記レンズとの間に設けられ、前記光素子と前記レンズの光結合し、入力光を合波または分波し、前記入力光の光軸に対して斜めの面を有する光入力面および光出力面を有し、前記光入力面と前記光出力面が平行である光部品と、
表面に前記光部品のそれぞれが搭載される凸状の複数の搭載面を有する下板、ならびにレセプタクルが接続する側壁、を有するベースと、
を備え、
前記ベースの前記下板の前記搭載面は、平行する2辺を持ち、前記2辺の距離は前記光部品の前記光入力面と前記光出力面の距離より小さく、
前記光部品の前記光入力面と前記光出力面の関係が、前記搭載面の平行する前記2辺と平行する関係であり、前記搭載面の平行する前記2辺が前記光部品の前記光入力面と前記光出力面よりもそれぞれ内側に位置する関係で前記光部品が前記搭載面に配置される、
光装置。
【請求項2】
前記下板は、前記光素子を搭載する凸状の別の搭載面を有し、
前記搭載面と前記別の搭載面の高さは互いに同一であり、前記下板の表面に平行である、
請求項1に記載の光装置。
【請求項3】
前記光部品は、複数の前記入力光を合成する合波器である、
請求項1または請求項2に記載の光装置。
【請求項4】
前記光部品は、前記入力光を複数の出力光に分波する分波器である、
請求項1または請求項2に記載の光装置。
【請求項5】
前記下板は、前記入力光を受光する受光素子が搭載される凸状の受光素子搭載面を更に有し、
前記受光素子搭載面は、前記下板の前記表面とは非平行であり、前記側壁の反対側を向いてなる、
請求項3に記載の光装置。
【請求項6】
請求項1に記載の光装置の製造方法であって、
壁をアライメントマーカとして前記搭載面に前記光部品を搭載する工程と、
前記レンズを調芯する工程と、
を備える光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光装置、および光装置の製造方法に関する。
本出願は、2020年6月12日の日本出願第2020-102422号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体発光モジュールが記載されている。半導体発光モジュールは、半導体発光素子を含む半導体発光モジュール主要部と、半導体発光モジュール主要部を収容するハウジングとを備える。ハウジングは気密性を有するハーメチックタイプの収納体であって、当該収納体の内部に光素子が搭載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-033037号公報
【発明の概要】
【0004】
一形態に係る光装置は、光素子と、光素子と光結合するレンズと、光素子とレンズとの間に設けられ、光素子とレンズのそれぞれと光結合し、入力光を合波または分波する光部品と、光素子、レンズおよび光部品のそれぞれが搭載される凸状の複数の搭載面を有する下板、ならびにレセプタクルが接続する側壁、を有するベースと、を備える。
【0005】
一形態に係る光装置の製造方法は、光素子と、光素子と光結合するレンズと、光素子とレンズとの間に設けられ、光素子とレンズのそれぞれと光結合し、入力光を合波または分波する光部品と、光素子、レンズおよび光部品のそれぞれが搭載される凸状の複数の搭載面を有する下板、ならびにレセプタクルが接続する側壁、を有するベースと、を備えた光装置の製造方法である。この製造方法において、光部品の搭載面に対応するベースの搭載面の長手方向の両側には、光部品の外形に沿う外壁を有する溝部が設けられており、外壁をアライメントマーカとして搭載面に光部品を搭載する工程と、レンズを調芯する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係る光装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1の光装置からカバーを外した状態を示す斜視図である。
図3図3は、比較例の光装置のベース、光素子および光路の関係を模式的に示す図である。
図4図4は、図1の光装置のレンズ、光部品、配線基板および光素子を示す斜視図である。
図5図5は、図1の光装置のベースを示す斜視図である。
図6図6は、図1の光装置のベース、光素子および光路の関係を模式的に示す図である。
図7図7は、図5のベースの搭載面および溝部を示す平面図である。
図8図8は、図1の光装置のベース、レンズ、光部品、配線基板および光素子を示す側断面図である。
図9図9は、図8のベース、レンズ、光部品、配線基板および光素子を示す平面図である。
図10図10は、第1の変形例に係るベースを示す斜視図である。
図11図11は、第2の変形例に係るベースを示す斜視図である。
図12図12は、ベースに部品を搭載する治具を示す斜視図である。
図13図13は、図12の治具を用いてベースに部品を固定する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ところで、前述したハーメチックタイプの収納体とは異なり、コスト低減のため、ノンハーメチックタイプ(非気密性)の収納体を備えた光装置が用いられることがある。光装置は、LD(Laser Diode)と、LDを搭載するキャリアと、LDに電気的に接続される
パッドを有するFPC(Flexible Printed Circuit)と、LDからの光をモニタするモニタPD(Photo Diode)と、ベースとを備える。ベースは、キャリア、FPCおよびモニ
タPDを搭載する。
【0008】
ベースは、レセプタクルが取り付けられる側壁と、キャリア、FPCおよびモニタPDが搭載される下板と、を有するL字状とされている。ベースの下板には、モニタPD等の光素子の他に、レンズ等の光部品が搭載されることがある。光素子および光部品は、下板の上面に樹脂製の接着剤によって固定される。このとき、光素子および光部品の下の接着剤が接着時等にせり上がることがあり、光素子および光部品の光路に接着剤が干渉する可能性がある。
【0009】
本開示は、光路への接着剤の干渉を抑制することができる光装置、および光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
本開示によれば、光路への接着剤の干渉を抑制することができる。
【0011】
本開示の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る光装置は、光素子と、光素子と光結合するレンズと、光素子とレンズとの間に設けられ、光素子とレンズのそれぞれと光結合し、入力光を合波または分波する光部品と、光素子、レンズおよび光部品のそれぞれが搭載される凸状の複数の搭載面を有する下板、ならびにレセプタクルが接続する側壁、を有するベースと、を備える。
【0012】
この光装置では、ベースが下板および側壁を有し、下板が複数の搭載面を備える。複数の搭載面のそれぞれには、光素子、レンズおよび光部品のそれぞれが搭載される。ベースの下板において、複数の搭載面のそれぞれは凸状とされている。よって、光素子、レンズおよび光部品のそれぞれの下に接着剤を塗布して凸状の搭載面への搭載を行うと、接着剤が凸状の搭載面からはみ出ても、はみ出た接着剤は搭載面から下方に流れることとなる。したがって、光素子、レンズおよび光部品の下の接着剤が接着時等にせり上がることを抑制することができるので、光素子、レンズおよび光部品の光路への接着剤の干渉を抑制することができる。
【0013】
複数の搭載面の高さは互いに同一であってもよい。この場合、凸状の複数の搭載面を研磨で形成するときに、複数の搭載面の高さが互いに同一であることにより、研磨性を向上させることができる。すなわち、研磨によって高さが互いに同一の搭載面を容易に形成できると共に搭載面の寸法精度を高めることができる。
【0014】
光部品は、互いに平行に延びる2つの面を有し、光部品の搭載面は、光部品の2つの面に平行に延びる2つの辺を有してもよい。光部品の搭載面の2つの辺の間の距離は、光部品の2つの面の間の距離よりも短くてもよい。この場合、光部品の当該2つの面と、搭載面の当該2つの辺とが互いに平行に配置されるので、光部品に生じる煽り角度の差を解消することができる。
【0015】
光部品の搭載面に対応するベースの搭載面の長手方向の両側には溝部が設けられていてもよい。この場合、接着剤の量が多い場合であっても、当該溝部に接着剤を逃がすことができるので、光路への接着剤の干渉をより確実に抑制することができる。
【0016】
溝部は、光部品の外形に沿う外壁を有してもよい。この場合、溝部の外壁を、光部品のパッシブアライメントに利用することができる。
【0017】
一実施形態に係る光装置の製造方法は、光素子と、光素子と光結合するレンズと、光素子とレンズとの間に設けられ、光素子とレンズのそれぞれと光結合し、入力光を合波または分波する光部品と、光素子、レンズおよび光部品のそれぞれが搭載される凸状の複数の搭載面を有する下板、ならびにレセプタクルが接続する側壁、を有するベースと、を備えた光装置の製造方法である。この製造方法では、光部品の搭載面に対応するベースの搭載面の長手方向の両側には、光部品の外形に沿う外壁を有する溝部が設けられており、外壁をアライメントマーカとして搭載面に光部品を搭載する工程と、レンズを調芯する工程と、を備える。
【0018】
この光装置の製造方法では、複数の搭載面のそれぞれに、光素子、レンズおよび光部品のそれぞれが搭載される。ベースの下板において、複数の搭載面のそれぞれは凸状とされている。よって、光素子、レンズおよび光部品のそれぞれの下に接着剤を塗布して凸状の搭載面への搭載を行うと、接着剤が凸状の搭載面からはみ出ても、はみ出た接着剤は搭載面から下方に流れることとなる。したがって、光素子、レンズおよび光部品の下の接着剤が接着時等にせり上がることを抑制できるので、光素子、レンズおよび光部品の光路への接着剤の干渉を抑制することができる。この製造方法では、溝部の外壁をアライメントマーカとして搭載面に部品を搭載した状態でレンズの調芯を行うことができる。よって、各搭載面への光部品およびレンズの配置を高精度に行うことができる。
【0019】
本開示の光装置の具体例を以下で図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、下記の例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の範囲内における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解を容易するため、一部を簡略化または誇張して描いている場合があり、寸法比率は図面に記載のものに限定されない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る光装置1を示す斜視図である。本実施形態では、光送信器である光装置1について例示する。図1に示されるように、光装置1は、ベース2と、ベース2を覆うカバー3と、円筒状のスリーブを備えたレセプタクル4と、配線基板5とを備える。光装置1は、長手方向D1に沿って延びており、レセプタクル4、カバー3(ベース2)および配線基板5がこの順で並んでいる。
【0021】
図2は、カバー3を外した光装置1の斜視図である。図1および図2に示されるように、ベース2は、長手方向D1に延びる下板2Aと、下板2Aの長手方向D1の一端から高さ方向D2に延びる側壁2Bとを備える。ベース2は、例えば、金属製である。ベース2の材料は、一例として、コバール(少なくともニッケルおよびコバルトを鉄に配合した合金)またはSUS(Steel Use Stainless)である。ベース2は、鉄、クロム、鉄とクロ
ムの合金、鉄とニッケルの合金、またはプラスチックによって構成されていてもよい。
【0022】
光装置1の幅方向D3から見たベース2の形状は、L字状とされている。ベース2はL字ベースとも称される。側壁2Bにはレセプタクル4が接続されると共に出力光L(図3参照)の出射端である孔が形成されており、当該孔は側壁2Bを長手方向D1に貫通している。レセプタクル4は、円筒状に形成される。レセプタクル4は、複数のフランジ4cを有し、複数のフランジ4cのうちの1つがレセプタクル4の位置を定めるガイド4bとして機能する。レセプタクル4では、ベース2に固定される状態において、例えば、ガイド4bが側壁2Bの外面2fに接触する。
【0023】
高さ方向D2から見て、例えば、ベース2は、長方形状とされている。ベース2は光装置1の内部に収容される部品を搭載する部品であって、光装置1の各部品は下板2Aに搭載される。下板2Aは、側壁2Bから長手方向D1に突出する長尺部とされており、当該長尺部の上に光装置1の各部品が実装される。光装置1の各部品は、接着用の樹脂R(図3参照)によって下板2Aに固定される。下板2Aは、光装置1の内部の各部品に対向する主面2bと、ベース2に対するカバー3および配線基板5の位置を定めるガイドピン2dと、光装置1の外部に露出する外面2fとを備える。主面2bは、長手方向D1および幅方向D3に延びる長方形状とされている。
【0024】
ガイドピン2dは、主面2bにおいて高さ方向D2に突出している。ガイドピン2dは、例えば、円柱状とされている。ガイドピン2dは、例えば、幅方向D3の一方側(ベース2の幅方向D3の中央から偏った位置)に設けられる。カバー3は、ベース2を高さ方向D2から覆う部品である。ベース2およびカバー3の内部に光装置1の各部品が収容される。
【0025】
光装置1は、ベース2およびカバー3の内部に、配線基板5、光部品6、受光素子7(光素子)、第1レンズ8(レンズ)、発光素子9(光素子)、スペーサ10およびサーミスタ14を備える。配線基板5は、その一部がベース2およびカバー3からレセプタクル4の反対側に延び出している。配線基板5のレセプタクル4との反対側に延び出す部分は光装置1の外部に突出している。光装置1は、レセプタクル4と光部品6との間に介在する第2レンズ11をさらに備える。例えば、光装置1は、4個の発光素子9、4個の第1レンズ8、4個の受光素子7、光部品6および第2レンズ11(レンズ)を備える。
【0026】
光装置1は、4個の受光素子7、4個の第1レンズ8および4個の受光素子7を含む4レーンの多チャネル発光モジュールである。4レーンの出力光Lの光路を備えた光装置1において、チャネル毎に出力光Lの光路長は互いに異なっている。レセプタクル4は、例えば、ベース2の幅方向D3の中央から偏った位置に配置されている。幅方向D3のレセプタクル4との反対側の端部(図2では上側の端部)に位置する発光素子9からの出力光Lの光路が最も長い。幅方向D3のレセプタクル4側の端部(図2では下側の端部)に位置する発光素子9からの出力光Lの光路が最も短い。
【0027】
ベース2には、複数の発光素子9、および複数の受光素子7が搭載されている。複数の発光素子9は幅方向D3に沿って並ぶように配置され、複数の受光素子7は幅方向D3に沿って並ぶように配置されている。例えば、4個の発光素子9のそれぞれは、キャリア12を介してベース2の主面2bに搭載されている。各発光素子9は、4個の第1レンズ8のそれぞれ、および4個の受光素子7のそれぞれに対応して設けられる。各発光素子9は、例えば、半導体レーザダイオード(LD)である。発光素子9から出力された発散光である出力光Lは、各第1レンズ8によってコリメート光に変換される。このように、第1レンズ8は発光素子9と光結合する。
【0028】
配線基板5は、例えば、ベース2に搭載されるFPC(Flexible Printed Circuit)である。配線基板5は、光装置1の外方に延び出す第1領域5Aと、パッド5bが設けられる第2領域5Bと、第1領域5Aおよび第2領域5Bを互いに接続する接続領域5Cとを備える。高さ方向D2から見て第1領域5A、第2領域5Bおよび接続領域5Cはコの字形状(C字状)とされている。
【0029】
第1領域5Aは、発光素子9と電気的に接続されるパッド5dを備える。例えば、複数の発光素子9のそれぞれがワイヤを介してパッド5dに接続される。第1領域5Aは、第2領域5Bよりも高い位置(ベース2の主面2bから離れた位置)に設けられる。例えば、第1領域5Aの高さ位置は発光素子9を搭載するキャリア12の高さと一致する。これにより、各発光素子9からパッド5dまで延びるワイヤの長さを短くすることができる。
【0030】
例えば、1枚の配線基板5が、上段としての第1領域5Aと下段としての第2領域5Bとを備えており、接着によってベース2に固定されている。第2領域5Bは、第1領域5Aよりも低い位置に設けられ、例えば、ベース2の主面2bに接触している。第2領域5Bの位置が低いことにより、配線基板5または受光素子7から延びるワイヤが発光素子9および第1レンズ8を通る出力光Lに干渉しないようにすることができる。
【0031】
配線基板5の接続領域5Cの幅(幅方向D3の長さ)は、第1領域5Aの幅および第2領域5Bの幅のそれぞれよりも狭い。接続領域5Cは、例えば、幅方向D3のレセプタクル4側の端部に設けられている。接続領域5Cは、第1領域5Aの幅方向D3の端部から第2領域5Bの幅方向D3の端部まで延びている。第1領域5Aにおける配線基板5の厚さ、および第2領域5Bにおける配線基板5の厚さは、例えば、互いに同一である。接続領域5Cは、第1領域5Aおよび第2領域5Bの間において長手方向D1に延在しており、例えば、ベース2の幅方向D3の端部に位置する。接続領域5Cは、第1領域5Aおよび第2領域5Bの間に位置する段差または傾斜を有する。本実施形態では、接続領域5Cが傾斜5fを有する例を示している。
【0032】
スペーサ10は、第1領域5Aとベース2との間に設けられており、例えば、このスペーサ10によって第1領域5Aの高さが確保されている。なお、スペーサ10に代えて、配線基板5の第1領域5Aに絶縁材料からなる補強板が設けられていてもよい。この場合、第1領域5Aの下面にも配線パターンを設けることが可能となる。
【0033】
発光素子9から第1レンズ8を介して出力された出力光Lは、受光素子7を通って光部品6に入力する。光部品6は、発光素子9と第2レンズ11の間に設けられ、発光素子9と第2レンズ11とを光結合する。光部品6は、光部品6に入力する入力光(出力光L)を合波する。例えば、光部品6は、4つの出力光Lを合波する光合波器である。4つの出力光Lは、光部品6の内部において合波された1つの出力光Lとして光部品6から第2レンズ11に出力する。第2レンズ11は光部品6からの出力光Lを集光してレセプタクル4に保持された光ファイバに出力光Lを集光し、レセプタクル4に保持された当該光ファイバを介して出力光Lは光装置1の外部に出力する。第2レンズ11は、光部品6を介して発光素子9と光結合する。
【0034】
受光素子7は、複数の発光素子9のそれぞれからの出力光LをモニタするモニタPD(Photo Diode)である。受光素子7は、発光素子9からの出力光Lの一部を受光すること
によって、出力光Lの強度をモニタする。例えば、4個の受光素子7のそれぞれは、誘電体を含む材料からなるキャリアを介してベース2の主面2bに搭載されている。受光素子7は、発光素子9からの出力光Lの一部を電気信号に変換し、変換した電気信号をワイヤ(不図示)を介して配線基板5のパッド5bに出力する。受光素子7、および受光素子7からパッド5bに延びるワイヤは、発光素子9よりも光出力側(レセプタクル4側)に設けられている。受光素子7からの電気信号の出力により、発光素子9からの出力光LについてAPC制御(Auto Power Control)を実行可能である。
【0035】
第2領域5Bは、受光素子7への配線用のパッド5bを有するPD配線用FPCであり、受光素子7の光出力側(レセプタクル4側)に位置する。受光素子7は、表面入射型の受光素子である。受光素子7は、例えば、その受光面が出力光Lの光軸に対して斜めとなるように配置される。出力光Lの光軸に対して受光面が斜めとなるように受光素子7が配置されることにより、出力光Lの一部を受光素子7が受光する。
【0036】
したがって、発光素子9の光出力側に受光素子7を配置することによって光出力側で簡易な構成で出力光Lのモニタを行うことが可能となる。モニタPDである受光素子7用のワイヤ等の配線は、受光素子7よりも光出力側に設けられる。したがって、受光素子7の受光感度を下げずに受光素子7との電気的接続を行うことが可能となる。受光素子7は、例えば、配線基板5上のパッド5bに直接ワイヤリングされるため、別途キャリア等を実装する必要がない。したがって、コストの低減に寄与する。
【0037】
ところで、図3に示されるように、仮に光装置1の内部の部品X(例えば、前述した光部品6、第1レンズ8または第2レンズ11等の光学部品)が実装されるベース2の部品実装面が平坦面である場合、接着用の樹脂Rが出力光Lの光路にはみ出す可能性がある。このように部品Xを接着する樹脂Rが出力光Lの光路に干渉する懸念がある。
【0038】
図4は、出力光Lへの樹脂Rの干渉を抑制可能なベース2の構成を示す斜視図である。図5は、図4のベース2を示す斜視図である。図4および図5に示されるように、ベース2は、長手方向D1の側壁2Bとの反対側の端部に、上方に突出する一対の突出部2kを備える。一対の突出部2kは幅方向D3に並ぶように配置されている。第1領域5Aは幅方向D3に並ぶ一対の凹部5cを有する。各凹部5cにベース2の各突出部2kが嵌まることによってベース2に配線基板5が固定される。
【0039】
ベース2は、部品を搭載する凸状の搭載面2cを備える。搭載面2cは部品の接着台座である。搭載面2cは、光装置1の複数の光学部品のそれぞれが搭載される面である。例えば、ベース2は複数の搭載面2cを主面2bに備える。複数の搭載面2cのそれぞれは、光部品6、第1レンズ8、第2レンズ11およびキャリア12のそれぞれを搭載する。搭載面2cは、主面2bにおいて高さ方向D2に突出する部位である。各搭載面2cは、主面2bよりも高い位置に設けられる。例えば、複数の搭載面2cは、互いに同一の高さとされている。この場合、複数の搭載面2cを研磨によって形成するときに、研磨性を向上させて寸法精度を高めることができる。
【0040】
図6は、光装置1の部品X、搭載面2cおよび樹脂Rを模式的に示す側面図である。図6に示されるように、搭載面2cの上に樹脂Rを介して部品Xが搭載される場合、樹脂Rが部品Xからはみ出しても、はみ出した樹脂Rが搭載面2cの下に流れ出る。よって、出力光Lへの樹脂Rの干渉を回避することが可能となる。例えば、高さ方向D2から部品Xを見たときに搭載面2cは部品Xに収まっている。部品Xのベース2に対向する面X1(例えば下面)に搭載面2cが収まっている。これにより、搭載面2cに搭載された部品Xの面X1からより確実に樹脂Rを下方に流して樹脂Rが出力光Lに干渉する可能性を低減させることができる。
【0041】
図7は、例示的な光部品6の搭載面2cを示す平面図である。図4および図7に示されるように、光部品6は互いに平行に延びる2つの面6bを有し、光部品6を搭載する搭載面2cは当該2つの面6bに平行に延びる2つの辺2gを有する。例えば、搭載面2cの周囲には主面2bよりも低い溝部2hが形成されている。溝部2hは、例えば、搭載面2cの長手方向D1の一方側および他方側のそれぞれに設けられる。
【0042】
溝部2hは、光部品6の外形に沿う外壁2jを有する。外壁2jは、高さ方向D2から見たときにおける搭載面2cおよび溝部2hの外形を構成する壁部である。例えば、搭載面2cから長手方向D1の端部側の外壁2jまでの距離は、幅方向D3の位置によらず一定である。すなわち、搭載面2cが光部品6の面6bに平行な辺2gを有することにより、上記の距離を一定とすることが可能である。搭載面2cおよび外壁2j(光部品6)は、高さ方向D2から見たときの中心Oに対して点対称な形状とされている。一例として、搭載面2c、溝部2hおよび外壁2jは平行四辺形状とされている。搭載面2cが平行四辺形であることにより、光部品6の面6bの煽り角度による面6bのそれぞれの入射面の位置(ベース2の主面2bからの高さ)のずれを一定にすることが可能となる。
【0043】
本実施形態に係る光装置の製造方法について説明する。以下では、例示的な光装置1の製造方法について説明する。まず、ベース2を用意する。そして、図8および図9に示されるように、レセプタクル4とベース2の位置決めを行う。なお、ベース2に対する位置調整がなされたレセプタクル4をYAG溶接によってベース2に固定する。配線基板5、発光素子9を搭載したキャリア12、受光素子7、サーミスタ14および光部品6を実装する。このとき、外壁2jをアライメントマーカとして搭載面2cに光部品6を搭載する(光部品を搭載する工程)。このように、溝部2hの外壁2jが光部品6の形状であることによってパッシブアライメントを行うことができる。
【0044】
次に、ベース2の各搭載面2cに第1レンズ8および第2レンズ11を搭載する。そして、実装済みの発光素子9から出力光Lを出力して、第1レンズ8および第2レンズ11のそれぞれを調芯する(レンズを調芯する工程)。出力光Lの強度が最大となる箇所となるように第1レンズ8および第2レンズ11のそれぞれを調芯した後に、第1レンズ8および第2レンズ11のそれぞれを固定する(アクティブアライメント)。
【0045】
本実施形態に係る光装置1、および本実施形態に係る光装置の製造方法から得られる作用効果について説明する。光装置1、および本実施形態に係る光装置の製造方法では、ベース2が下板2Aおよび側壁2Bを有し、下板2Aが複数の搭載面2cを備える。複数の搭載面2cのそれぞれには、発光素子9(キャリア12)、第1レンズ8、第2レンズ11および光部品6のそれぞれが搭載される。
【0046】
ベース2の下板2Aにおいて、複数の搭載面2cのそれぞれは凸状とされている。よって、発光素子9、第1レンズ8、第2レンズ11および光部品6のそれぞれの下に樹脂Rを塗布して凸状の搭載面2cへの搭載を行うと、樹脂Rがはみ出ても、はみ出た樹脂Rは搭載面2cから下方に流れ出ることとなる。したがって、発光素子9、第1レンズ8、第2レンズ11および光部品6の下の樹脂Rが接着時等にせり上がることを抑制することができる。よって、発光素子9、第1レンズ8、第2レンズ11および光部品6の光路への樹脂Rの干渉を抑制することができる。さらに、樹脂Rによる接着領域が凸形状となるので、樹脂Rによる接着領域をコントロールできる。例えば、外部温度が変化したときの線膨張係数差による光部品6の変形を抑制することができる。
【0047】
複数の搭載面2cの高さは、互いに同一であってもよい。この場合、凸状の複数の搭載面2cを研磨で形成するときに、複数の搭載面2cの高さが互いに同一であることにより、研磨性を向上させることができる。すなわち、研磨によって高さが互いに同一の搭載面2cを容易に形成できると共に搭載面2cの寸法精度を高めることができる。さらに、寸法公差を小さくできるので、光学結合効率のばらつきを抑えることができる。
【0048】
光部品6は、互いに平行に延びる2つの面6bを有し、光部品6の搭載面2cは、光部品6の2つの面6bに平行に延びる2つの辺2gを有してもよい。光部品6の搭載面2cの2つの辺2gの間の距離は、光部品6の2つの面6bの間の距離よりも短くてもよい。この場合、光部品6の2つの面6bと、搭載面2cの2つの辺2gとが互いに平行に配置されるので、光部品6に生じる煽り角度の差を解消することができる。
【0049】
光部品6の搭載面2cに対応するベース2の搭載面2cの長手方向D1の両側には溝部2hが設けられていてもよい。この場合、樹脂Rの量が多い場合であっても、溝部2hに樹脂Rを逃がすことができるので、光路への樹脂Rの干渉をより確実に抑制することができる。
【0050】
溝部2hは、光部品6の外形に沿う外壁2jを有してもよい。この場合、溝部2hの外壁2jを、光部品6のパッシブアライメントに利用することができる。
【0051】
本実施形態に係る光装置の製造方法では、複数の搭載面2cのそれぞれに発光素子9、第1レンズ8、第2レンズ11および光部品6のそれぞれが搭載される。ベース2の溝部2hの外壁2jをアライメントマーカとして搭載面2cに部品を搭載した状態で第1レンズ8および第2レンズ11のそれぞれの調芯を行うことができる。よって、搭載面2cへの光部品6、第1レンズ8および第2レンズ11の配置を高精度に行うことができる。
【0052】
ベース2は、MIM(金属粉末射出成形)によって製造されてもよい。この場合、ベース2の製造にかかるコストを抑えることができる。ベース2では、レセプタクル4が取り付けられる側壁2Bと、部品が実装される下板2Aとが一体となっているので、部品公差を生じにくくでき、かつ高剛性なベース2とすることが可能となる。ベース2は、長手方向D1の側壁2Bとの反対側の端部に、上方に突出する一対の突出部2kを備える。よって、例えば図4に示される部品搭載済みのベース2を誤って上下逆に配置しても、側壁2Bと突出部2kが床等に当たるので、搭載済みの部品が床等に干渉することを回避できる。
【0053】
変形例に係るベース22について図10を参照しながら説明する。ベース22は、部品を搭載する凸状の搭載面2cの他に、部品実装用治具の固定用の凸部22cを備える。凸部22cと搭載面2cとは、例えば、幅方向D3に沿って並ぶように配置される。この場合、凸部22cの長手方向D1の位置は、搭載面2cの長手方向D1の位置と同一である。例えば、凸部22cの高さは搭載面2cの高さと同一である。
【0054】
別の変形例に係るベース32について図11を参照しながら説明する。ベース32は、前述した搭載面2cに代えて、部品(例えば第2レンズ11)の平面形状(高さ方向D2から見た形状)よりも幅方向D3に長い平面形状を備えた凸部32cを備える。凸部32cには、部品が実装されるときに部品実装用治具が当てられる当接部を有する。
【0055】
図12及び図13は、例示的な部品実装用治具40を示す斜視図である。部品実装用治具40は、レセプタクル4のスリーブ4Aとベース2との位置決めを行う治具である。部品実装用治具40は、ベース2を保持するベース保持部41と、スリーブ4Aを保持するスリーブ保持部42とを備える。ベース保持部41は、ベース2の下板2Aの主面2b側が対向する対向部41bと、対向部41bに下板2Aを対向させた状態でベース2を保持する保持部41cとを有する。
【0056】
前述した凸部22cを備えるベース22、および凸部32cを備えるベース32では、対向部41bの当接面41dに凸部22cまたは凸部32cを突き当てた状態でベース22またはベース32に対するスリーブ4Aの位置決めを行うことができる。したがって、ベース22またはベース32を安定させた状態でスリーブ4Aの位置決めを行えるので、ベース22またはベース32に搭載された部品に対するスリーブ4Aの位置精度を高めることができる。その結果、光学部品の調芯トレランスを大きくすることができ、製造性を向上させることができる。なお、ベース22またはベース32に対する位置調整がなされたスリーブ4AはYAG溶接によってベース22またはベース32に固定される。
【0057】
以上、本開示に係る光装置の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述した実施形態に限定されない。すなわち、本発明が請求の範囲に記載された要旨を変更しない範囲において種々の変形および変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。例えば、光装置の各部品の形状、大きさ、数、材料および配置態様は、前述した内容に限られず適宜変更可能である。
【0058】
例えば、前述の実施形態では、光送信器である光装置1について例示した。しかしながら、本開示に係る光装置は、光送信器以外の光装置であってもよく、例えば、光受信器であってもよい。また、前述の実施形態では、光合波器である光部品6について例示した。しかしながら、光部品は、光合波器以外の光部品であってもよく、例えば、入力光を分波する光分波器であってもよい。このように、光装置、および光装置に搭載される部品の種類も適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…光装置
2,22,32…ベース
2A…下板
2B…側壁
2b…主面
2c…搭載面
2d…ガイドピン
2f…外面
2g…辺
2h…溝部
2j…外壁
2k…突出部
3…カバー
4…レセプタクル
4A…スリーブ
4b…ガイド
4c…フランジ
5…配線基板
5A…第1領域
5b,5d…パッド
5B…第2領域
5C…接続領域
5c…凹部
5f…傾斜
6…光部品
6b…面
7…受光素子(光素子)
8…第1レンズ(レンズ)
9…発光素子(光素子)
10…スペーサ
11…第2レンズ(レンズ)
12…キャリア
14…サーミスタ
22c,32c…凸部
40…部品実装用治具
41…ベース保持部
41b…対向部
41c…保持部
41d…当接面
42…スリーブ保持部
D1…長手方向
D2…高さ方向
D3…幅方向
L…出力光
O…中心
R…樹脂(接着剤)
X…部品
X1…面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13