IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アドバンシックス・レジンズ・アンド・ケミカルズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許-ポリアミドベースのマスターバッチ製剤 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ポリアミドベースのマスターバッチ製剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/42 20060101AFI20241010BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C08G69/42
C08L77/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022549592
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 US2021018270
(87)【国際公開番号】W WO2021167913
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】62/977,868
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517213094
【氏名又は名称】アドバンシックス・レジンズ・アンド・ケミカルズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ADVANSIX RESINS & CHEMICALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ネリアッパン,ビーラ
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ターレビー,ファルザネ
(72)【発明者】
【氏名】ウェストン,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ショーブ,アン
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03640942(US,A)
【文献】特開平05-222190(JP,A)
【文献】特開昭57-121620(JP,A)
【文献】特開平05-209053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/42
C08L 77/00-77/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスターバッチポリアミドポリマーであって、
カプロラクタムの残基、
ジアミンの残基、
酢酸、プロピオン酸、安息香酸、及びステアリン酸のうちの少なくとも1つの残基を含む、単官能性酸の残基、及び
5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つの残基、
を含み、
それによって、前記マスターバッチポリアミドポリマーは、末端封止ポリアミドポリマーに耐汚染性を付与すると同時に、前記末端封止ポリアミドポリマーの加工性を実質的に維持することができる、マスターバッチポリアミドポリマー。
【請求項2】
前記5-スルホイソフタル酸塩が、5-スルホイソフタル酸ナトリウム、5-スルホイソフタル酸リチウム、5-スルホイソフタル酸カリウム、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項1に記載のマスターバッチポリアミドポリマー。
【請求項3】
5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの前記少なくとも1つの残基の濃度が、前記マスターバッチポリアミドポリマーの総重量に基づいて、0.5重量%~20重量%である、請求項1に記載のマスターバッチポリアミドポリマー。
【請求項4】
前記ジアミンの残基が、ヘキサメチレンジアミンの残基を含む、請求項1に記載のマスターバッチポリアミドポリマー。
【請求項5】
前記末端封止ポリアミドポリマーが、20%~90%の総末端封止率を有する、請求項1に記載のマスターバッチポリアミドポリマー。
【請求項6】
カプロラクタム、ジアミン、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、及びステアリン酸のうちの少なくとも1つを含む単官能性酸、及び、5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つ、を反応器に供給することと、
前記カプロラクタム、前記ジアミン、前記単官能性酸、及び、前記5-スルホイソフタル酸及び前記5-スルホイソフタル酸塩のうちの前記少なくとも1つを前記反応器中で一緒に混合することと、
前記カプロラクタム、前記ジアミン、前記単官能性酸、及び、前記5-スルホイソフタル酸及び前記5-スルホイソフタル酸塩のうちの前記少なくとも1つを前記反応器中、反応温度で反応させることと、
を含むマスターバッチポリアミドポリマーの製造方法。
【請求項7】
前記供給工程において、前記5-スルホイソフタル酸及び前記5-スルホイソフタル酸塩のうちの前記少なくとも1つが、ポリアミドポリマーの総重量に基づいて、0.5重量%~20重量%である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記供給工程において、前記5-スルホイソフタル酸塩が、5-スルホイソフタル酸ナトリウム、5-スルホイソフタル酸リチウム、5-スルホイソフタル酸カリウム、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記供給工程において、前記ジアミンが、ヘキサメチレンジアミンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記反応工程において、前記反応温度が、約225℃~約290℃である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
ポリアミドポリマーブレンドであって、
末端封止ポリアミドポリマーと、
マスターバッチポリアミドポリマーであって、
カプロラクタムの残基、
ジアミンの残基、
酢酸、プロピオン酸、安息香酸、及びステアリン酸のうちの少なくとも1つの残基を含む、単官能性酸の残基、及び
5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つの残基、
を含む、マスターバッチポリアミドポリマーと、を含み、
それによって、前記マスターバッチポリアミドポリマーは、前記末端封止ポリアミドポリマーに耐汚染性を付与すると同時に、前記末端封止ポリアミドポリマーの加工性を実質的に維持することができる、ポリアミドポリマーブレンド。
【請求項12】
前記マスターバッチポリアミドポリマーが、前記ポリアミドポリマーブレンドの総重量の5重量%~25重量%である、請求項11に記載のポリアミドポリマーブレンド。
【請求項13】
5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの前記少なくとも1つの残基の濃度が、前記ポリアミドポリマーブレンドの総重量に基づいて、0.8重量%~1.2重量%である、請求項11に記載のポリアミドポリマーブレンド。
【請求項14】
前記5-スルホイソフタル酸塩が、5-スルホイソフタル酸ナトリウム、5-スルホイソフタル酸リチウム、5-スルホイソフタル酸カリウム、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項11に記載のポリアミドポリマーブレンド。
【請求項15】
前記末端封止ポリアミドポリマーが、25ミリモル/kg~40ミリモル/kgのアミン末端基濃度、及び18ミリモル/kg~50ミリモル/kgのカルボキシル末端基濃度を有する、請求項11に記載のポリアミドポリマーブレンド。
【請求項16】
前記末端封止ポリアミドポリマーが、25ミリモル/kg未満のアミン末端基濃度、及び18ミリモル/kg未満のカルボキシル末端基濃度を有する、請求項11に記載のポリアミドポリマーブレンド。
【請求項17】
前記末端封止ポリアミドポリマーが、20%~90%の総末端封止率を有する、請求項11に記載のポリアミドポリマーブレンド。
【請求項18】
ASTM D-789-07によって測定した場合、約30FAV~約100FAVのギ酸粘度を有する、請求項11に記載のポリアミドポリマーブレンド。
【請求項19】
CIE DE2000に従う色差ΔEが、10未満である、請求項11に記載のポリアミドポリマーブレンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全内容が参照により本明細書に援用される、2020年2月18日に出願された米国仮特許出願第62/977,868号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、ポリアミド組成物を提供する。詳細には、本開示は、望ましい加工性及び耐汚染性を有するポリアミドブレンドを提供する。
【背景技術】
【0003】
典型的には、ポリアミド-6ポリマーは、アミン末端基の一部と反応することで末端封止する二官能性の酸を用いた単一末端封止(mono-termination)によって重合される。DUAL-TERMINATED POLYAMIDE FOR HIGH SPEED SPINNING APPLICATIONと題する米国特許第10,494,740号には、高速繊維紡糸用途を意図するポリアミドポリマーの二重末端封止が開示されている。’740号の特許には、単官能性塩基及び単官能性酸の両方を用いてカルボン酸末端基の一部及びアミン末端基の一部を封止することが開示されている。二重末端封止では、単一末端封止ポリアミドポリマーよりも高速で繊維を紡糸製造することができる熱安定性のより高いポリアミドポリマーが得られる。STAIN RESISTANT POLYAMIDE POLYMERS OBTAINED VIA HIGH END GROUP TERMINATIONと題する同時係属米国特許出願第62/836,813号には、高度に二重末端封止されたポリアミドポリマーが開示されており、この場合、高度な末端封止が、高速繊維紡糸用途を意図するポリアミドポリマーに対して耐汚染性を付与している。
【0004】
’813号の特許出願に記載されているように、ポリエステルベース耐汚染性マスターバッチを非末端封止ポリアミド及び高度二重末端封止ポリアミドに添加すると、両樹脂の繊維紡糸加工性が大きく低下した。追加の耐汚染性及び非常に優れた紡糸加工性の両方を有するポリアミド組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、末端封止ポリアミドポリマーに耐汚染性を付与すると同時に、末端封止ポリアミドポリマーの加工性を実質的に維持することができるマスターバッチポリアミドポリマーを提供する。
【0006】
その1つの形態では、本開示は、カプロラクタムの残基、ジアミンの残基、並びに5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つの残基を含むマスターバッチポリアミドポリマーを提供する。マスターバッチポリアミドポリマーは、末端封止ポリアミドポリマーに耐汚染性を付与すると同時に、末端封止ポリアミドポリマーの加工性を実質的に維持することができる。
【0007】
5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つの残基は、5-スルホイソフタル酸ナトリウム、5-スルホイソフタル酸リチウム、5-スルホイソフタル酸カリウム、及びこれらの組み合わせから成る群より選択され得る。5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つの残基の濃度は、マスターバッチポリアミドポリマーの総重量に基づいて、0.5重量%~20重量%であり得る。5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つの残基の濃度は、マスターバッチポリアミドポリマーの総重量に基づいて、7重量%~20重量%であり得る。5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つの残基の濃度は、マスターバッチポリアミドポリマーの総重量に基づいて、4重量%~10重量%であり得る。ジアミンの残基は、ヘキサメチレンジアミンの残基を含み得る。
【0008】
マスターバッチポリアミドポリマーは、単官能性酸の残基をさらに含み得る。単官能性酸の残基は、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、及びステアリン酸のうちの少なくとも1つの残基を含み得る。末端封止ポリアミドポリマーは、20%~90%の総末端封止率を有し得る。
【0009】
その別の形態では、本開示は、マスターバッチポリアミドポリマーの製造方法を提供する。方法は、カプロラクタム、ジアミン、並びに5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つを反応器に供給することと、カプロラクタム、ジアミン、並びに5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つを反応器中で一緒に混合することと、カプロラクタム、ジアミン、並びに5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つを反応器中、反応温度で反応させることと、を含む。
【0010】
供給工程において、5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つは、ポリアミド組成物の総重量に基づいて、0.5重量%~20重量%であり得る。供給工程において、5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つは、ポリアミド組成物の総重量に基づいて、7重量%~20重量%であり得る。供給工程において、5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つは、ポリアミド組成物の総重量に基づいて、4重量%~10重量%であり得る。供給工程において、5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つは、5-スルホイソフタル酸ナトリウム、5-スルホイソフタル酸リチウム、5-スルホイソフタル酸カリウム、及びこれらの組み合わせから成る群より選択され得る。供給工程において、ジアミンは、ヘキサメチレンジアミンを含み得る。
【0011】
反応工程において、反応器は、反応工程の一部分で加圧され得る。反応工程において、反応温度は、約225℃~約290℃であり得る。
その別の形態では、本開示は、マスターバッチポリアミド及び末端封止ポリアミドポリマーを含むポリアミドポリマーブレンドを提供する。マスターバッチポリアミドポリマーは、カプロラクタムの残基、ジアミンの残基、並びに5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つの残基を含む。マスターバッチポリアミドポリマーは、末端封止ポリアミドポリマーに耐汚染性を付与すると同時に、末端封止ポリアミドポリマーの加工性を実質的に維持することができる。
【0012】
マスターバッチポリアミドポリマーは、ポリアミドポリマーブレンドの総重量の5重量%~25重量%であり得る。
5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つの残基の濃度は、ポリアミドポリマーブレンドの総重量に基づいて、0.8重量%~1.2重量%であり得る。5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つは、5-スルホイソフタル酸ナトリウム、5-スルホイソフタル酸リチウム、5-スルホイソフタル酸カリウム、及びこれらの組み合わせから成る群より選択され得る。
【0013】
末端封止ポリアミドポリマーは、25ミリモル/kg~40ミリモル/kgのアミン末端基濃度、及び18ミリモル/kg~50ミリモル/kgのカルボキシル末端基濃度を有し得る。末端封止ポリアミドポリマーは、25ミリモル/kg未満のアミン末端基濃度、及び18ミリモル/kg未満のカルボキシル末端基濃度を有し得る。末端封止ポリアミドポリマーは、20%~90%の総末端封止率を有し得る。
【0014】
ポリアミドポリマーブレンドは、ASTM D-789-07によって測定した場合、約30FAV~約100FAVのギ酸粘度を有し得る。ポリアミドポリマーブレンドの色差ΔEは、CIE DE2000に従って、10未満であり得る。末端封止ポリアミドポリマーは、ポリアミド-6ポリマーであり得る。
【0015】
その別の形態では、本開示は、ポリアミドポリマーブレンドの製造方法を提供する。方法は、マスターバッチポリアミドポリマーを供給すること、末端封止ポリアミドポリマーを供給すること、マスターバッチポリアミドポリマーと末端封止ポリアミドポリマーとを組み合わせてポリアミドポリマーブレンドを製造すること、を含む。マスターバッチポリアミドポリマーは、カプロラクタムの残基、ジアミンの残基、並びに5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つの残基を含む。
【0016】
マスターバッチポリアミドポリマーは、ポリアミドポリマーブレンドの総重量の5重量%~25重量%の量で供給され得る。5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つの残基の濃度は、ポリアミドポリマーブレンドの総重量に基づいて、0.8重量%~1.2重量%であり得る。5-スルホイソフタル酸及び5-スルホイソフタル酸塩のうちの少なくとも1つは、5-スルホイソフタル酸ナトリウム、5-スルホイソフタル酸リチウム、5-スルホイソフタル酸カリウム、及びこれらの組み合わせから成る群より選択され得る。
【0017】
末端封止ポリアミドポリマーは、25ミリモル/kg~40ミリモル/kgのアミン末端基濃度、及び18ミリモル/kg~50ミリモル/kgのカルボキシル末端基濃度を有し得る。末端封止ポリアミドポリマーは、25ミリモル/kg未満のアミン末端基濃度、及び18ミリモル/kg未満のカルボキシル末端基濃度を有し得る。末端封止ポリアミドポリマーは、20%~90%の総末端封止率を有し得る。
【0018】
ポリアミドポリマーブレンドのギ酸粘度は、ASTM D-789-07によって測定した場合、約30FAV~約100FAVであり得る。ポリアミドポリマーブレンドの色差ΔEは、CIE DE2000に従って、10未満であり得る。
【0019】
本発明の上述の及び他の特徴、並びにそれらを達成する方法は、以下の記述を参照することによって、より明らかとなり、本発明自体も、より良く理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、繊維又はフィラメントの押出し、紡糸、及び延伸を行うためのシステムの例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、非常に優れた繊維紡糸加工性を有する、耐汚染性で高度に末端封止されたポリアミドブレンドを提供する。ポリアミドは、カプロラクタムなどの前駆体から、加水分解、付加重合、及び重縮合の反応を介して形成され得る。これらの材料がカプロラクタムから形成される場合、ラクタム環が開環されて、1つのアミンと1つのカルボン酸又はカルボキシレートとの2つの末端基が形成される。付加重合によってラクタムモノマーが組み合わされて、中間分子量のオリゴマーとなり、重縮合によってオリゴマーが組み合わされて、より高分子量のポリマーとなる。
【0022】
本明細書の開示では、ポリアミド-6(PA-6)ポリマーブレンドについて述べるが、本開示は、PA-6ポリマーだけに限定することを意図するものではない。本開示に従うポリマーブレンド、繊維、及びフィラメントは、例えばポリアミド-6,6(PA-66)、ポリアミド-666(PA-666)、ポリアミド-46(PA-46)、ポリアミド-610(PA-610)、ポリアミド-1212(PA-1212)、並びにこれらの混合物及びコポリマーを含む他のポリアミドポリマーから形成されてもよい。
【0023】
そのように限定するものではないが、本明細書で述べるポリアミドポリマーブレンドは、例えばカーペット及びテキスタイル用途における着色繊維用の耐汚染性ポリマーの形成に特に有用である。
【0024】
驚くべきことに、末端封止ポリアミドポリマーと、5-スルホイソフタル酸又は5-スルホイソフタル酸塩を組み込んだマスターバッチポリアミドポリマーとを組み合わせることで、非常に優れた紡糸加工性及び非常に優れた耐汚染性を有するポリアミドポリマーブレンドが製造されることが見出された。本技術分野において公知であるように、混和性ポリマーブレンドは、2つ以上の別個のポリマーの均質な混合物である。2つ以上の別個のポリマーは、ブレンド後も、それらの化学的構造を維持している。マスターバッチは、機能性添加剤を濃縮されたレベルで含有する材料である。少量のマスターバッチが別の材料と都合良くブレンドされて、低いが充分に制御された濃度で、ブレンドに対して機能性添加剤が提供され得る。したがって、本開示のマスターバッチポリアミドポリマーは、末端封止ポリアミドポリマーとブレンドされて、5-スルホイソフタル酸をより低い濃度で、ポリアミドポリマーブレンドに都合良く提供し得る。
【0025】
ポリアミドポリマーブレンドに用いるために本開示によって提供されるマスターバッチポリアミドポリマーは、カプロラクタム、1又は複数のジアミン、5-スルホイソフタル酸塩又は5-スルホイソフタル酸、及び所望に応じて単官能性酸、から形成され得る。したがって、得られるマスターバッチポリアミドポリマーは、カプロラクタムの残基、ジアミンの残基、5-スルホイソフタル酸塩又は5-スルホイソフタル酸塩の残基、及び所望に応じて単官能性酸の残基を、マスターバッチポリアミドポリマーを作り上げる残基として含む。
【0026】
カプロラクタム(ヘキサノ-6-ラクタム、アゼパン-2-オン、及びε-カプロラクタムとも称される)を以下に示す。
【0027】
【化1】
【0028】
ジアミンは、例えばC4~C6直鎖状又は分岐鎖状ジアミンであり得る。ジアミンは、例えばSigma-Aldrich Corp,St.Louis,MOから入手可能なヘキサメチレンジアミンを含み得る。
【0029】
マスターバッチポリアミドポリマーは、ジアミンの残基を、低くは0.5重量%、0.6重量%、0.8重量%、1重量%、1.2重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、若しくは3重量%、又は高くは3.5重量%、4重量%、5重量%、6重量%、8重量%、10重量%、15重量%、若しくは20重量%、又は例えば0.5重量%~20重量%、0.6重量%~15重量%、0.8重量%~10重量%、1重量%~8重量%、1.2重量%~6重量%、1.5重量%~5重量%、2重量%~4重量%、2.5重量%~3.5重量%、1重量%~3重量%、2重量%~6重量%、若しくは5重量%~15重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で含み得る。
【0030】
5-スルホイソフタル酸の塩は、5-スルホイソフタル酸リチウム、5-スルホイソフタル酸ナトリウム、5-スルホイソフタル酸カリウム、又はこれらの組み合わせであり得る。5-スルホイソフタル酸リチウムを以下に示す。
【0031】
【化2】
【0032】
5-スルホイソフタル酸ナトリウムを以下に示す。
【0033】
【化3】
【0034】
5-スルホイソフタル酸カリウムを以下に示す。
【0035】
【化4】
【0036】
マスターバッチポリアミドポリマーは、5-スルホイソフタル酸塩又は5-スルホイソフタル酸の残基を、低くは0.5重量%、0.6重量%、0.8重量%、1重量%、1.2重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、若しくは5重量%、又は高くは6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、12重量%、15重量%、若しくは20重量%、又は例えば0.5重量%~20重量%、0.6重量%~15重量%、0.8重量%~10重量%、1重量%~8重量%、1.2重量%~6重量%、1.5重量%~5重量%、2重量%~4重量%、2.5重量%~3.5重量%、1重量%~3重量%、2重量%~6重量%、2重量%~12重量%、5重量%~9重量%、7重量%~20重量%、4重量%~10重量%、若しくは5重量%~15重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で含み得る。マスターバッチポリアミドポリマーに関して本明細書で列挙されるすべての重量パーセントは、マスターバッチポリアミドポリマーの総重量に基づいている。
【0037】
所望に応じて、マスターバッチポリアミドポリマーは、末端封止剤として単官能性酸をさらに含み得る。単官能性酸は、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ステアリン酸、又はこれらのいずれかの組み合わせであり得る。単官能性酸は、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、又はステアリン酸のうちの1つから成り得る。
【0038】
マスターバッチポリアミドポリマーは、所望に応じて、単官能性酸の残基を、低くは0.5重量%、0.6重量%、0.8重量%、1重量%、1.2重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、若しくは3重量%、又は高くは3.5重量%、4重量%、5重量%、6重量%、8重量%、10重量%、15重量%、若しくは20重量%、又は例えば0.5重量%~20重量%、0.6重量%~15重量%、0.8重量%~10重量%、1重量%~8重量%、1.2重量%~6重量%、1.5重量%~5重量%、2重量%~4重量%、2.5重量%~3.5重量%、1重量%~3重量%、2重量%~6重量%、若しくは5重量%~15重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で含み得る。
【0039】
マスターバッチポリアミドポリマーは、ASTM D-6869によって測定した場合、低い水分レベルを有し得る。水分レベルは、約2000ppm未満、約1500ppm未満、約1200ppm未満、約1000ppm未満、約800ppm未満、約600ppm未満、約500ppm未満、若しくは約400ppm未満、又は上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の水分含有量未満であり得る。
【0040】
マスターバッチポリアミドポリマーは、カプロラクタム、ジアミン、水、5-スルホイソフタル酸塩又は5-スルホイソフタル酸、及び所望に応じて単官能性酸を反応器に供給すること、カプロラクタム、ジアミン、水、5-スルホイソフタル酸塩又は5-スルホイソフタル酸、及び所望に応じて単官能性酸を反応器中で一緒に混合すること、並びにカプロラクタム、ジアミン、水、5-スルホイソフタル酸塩又は5-スルホイソフタル酸、及び所望に応じて単官能性酸を反応器中、反応温度で反応させること、によって合成され得る。ジアミンは、水溶液として供給され得る。反応器は、反応工程の少なくとも一部分の過程で、反応圧力下とされ得る。混合は、反応工程の少なくとも一部分の過程で、連続され得る。
【0041】
反応温度は、低くは約225℃、約230℃、約235℃、約240℃、若しくは約245℃、又は高くは約250℃、約255℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、又は例えば約225℃~約290℃、約230℃~約280℃、約235℃~約270℃、約230℃~約260℃、約260℃~約280℃、約230℃~約240℃、若しくは約260℃~約270℃などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であり得る。
【0042】
供給工程において、縮合触媒が供給され得る。適切な縮合触媒としては、例えば次亜リン酸塩又は次亜リン酸ナトリウムが挙げられる。縮合触媒は、低くは約50ppm、約100ppm、若しくは約150ppm、又は高くは約200ppm、約250ppm、若しくは約300ppm、又は例えば約50ppm~約300ppm、100ppm~約250ppm、150ppm~約200ppm、若しくは約150ppm~約250ppmなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の濃度で供給され得る。
【0043】
マスターバッチポリアミドポリマーは、ペレット化されて、マスターバッチポリアミドポリマーのチップが形成され得る。チップは、脱イオン水での浸出に掛けられて、いかなる未反応のカプロラクタムも除去され得、続いて真空乾燥によってほとんどの水が除去され得る。
【0044】
本開示のポリアミドポリマーブレンドに用いるための末端封止ポリアミドポリマーは、単一末端封止ポリアミドポリマー及び/又は二重末端封止ポリアミドポリマーを含み得る。単一末端封止ポリアミドポリマーは、例えばポリアミド-6の場合のカプロラクタム、又はポリアミド-6,6の場合のヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸などの二重末端封止ポリアミドポリマーを成す特定のポリアミドを形成するために用いられるモノマー材料の残基に加えて、カルボキシル末端基封止剤の残基又はアミン末端基封止剤の残基を含み得る。
【0045】
アミン末端基封止剤としては、例えば酢酸、プロピオン酸、安息香酸、及び/又はステアリン酸などの単官能性酸末端封止剤が挙げられ得る。カルボキシル末端基封止剤としては、例えばシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、及びポリエーテルアミンなどの単官能性アミンが挙げられ得る。末端基封止剤のレベルを高めると、反応性のアミン末端基及び/又はカルボキシル末端基の濃度が低下する。
【0046】
単一末端封止ポリアミドポリマーは、カルボキシル末端基封止剤の残基を、少なくは0.01重量%、0.05重量%、0.10重量%、多くは0.40重量%、0.45重量%、0.50重量%、又は例えば0.01重量%~0.5重量%、0.05重量%~0.45重量%、若しくは0.10重量%~0.40重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で含み得る。
【0047】
単一末端封止ポリアミドポリマーは、アミン末端基封止剤の残基を、少なくは0.20重量%、0.25重量%、0.30重量%、多くは0.60重量%、0.65重量%、0.70重量%、又は例えば0.20重量%~0.80重量%、0.25重量%~0.65重量%、若しくは0.30重量%~0.6重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で含み得る。末端封止ポリアミドポリマーに関して本明細書で列挙されるすべての重量パーセントは、追加の添加剤は含まない末端封止ポリアミドポリマーの総重量に基づいている。
【0048】
本開示のポリアミドポリマーブレンドに用いるための二重末端封止ポリアミドポリマーは、例えばポリアミド-6の場合のカプロラクタム、又はポリアミド-6,6の場合のヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸などの二重末端封止ポリアミドポリマーを成す特定のポリアミドを形成するために用いられるモノマー材料の残基に加えて、カルボキシル末端基封止剤の残基及びアミン末端基封止剤の残基を含み得る。
【0049】
アミン末端基封止剤としては、例えば酢酸、プロピオン酸、安息香酸、及び/又はステアリン酸などの単官能性酸末端封止剤が挙げられ得る。カルボキシル末端基封止剤としては、例えばシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、及びポリエーテルアミンなどの単官能性アミンが挙げられ得る。末端基封止剤のレベルを高めると、反応性のアミン末端基及び/又はカルボキシル末端基の濃度が低下する。
【0050】
二重末端封止ポリアミドポリマーは、カルボキシル末端基封止剤の残基を、少なくは0.01重量%、0.05重量%、0.10重量%、0.20重量%、若しくは0.30重量%、多くは0.40重量%、0.50重量%、0.60重量%、0.80重量%、若しくは1重量%、又は例えば0.01重量%~1重量%、0.05重量%~0.80重量%、0.10重量%~0.60重量%、0.20重量%~0.50重量%、若しくは0.30重量%~0.40重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で含み得る。
【0051】
二重末端封止ポリアミドポリマーは、アミン末端基封止剤の残基を、少なくは0.20重量%、0.25重量%、0.30重量%、若しくは0.40重量%、又は多くは0.50重量%、0.60重量%、0.65重量%、0.70重量%、若しくは1重量%、又は例えば0.20重量%~1重量%、0.25重量%~0.70重量%、0.30重量%~0.65重量%、0.40重量%~0.60重量%、0.50重量%~1重量%、若しくは0.40重量%~0.7重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で含み得る。
【0052】
末端封止ポリアミドポリマーは、ASTM D-6869によって測定した場合、低い水分レベルを有し得る。水分レベルは、約2000ppm未満、約1500ppm未満、約1200ppm未満、約1000ppm未満、約800ppm未満、約600ppm未満、約500ppm未満、若しくは約400ppm未満、又は上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の水分含有量未満であり得る。
【0053】
末端封止ポリアミドポリマーは、カプロラクタム、水、アミン末端基封止剤、及び/又はカルボキシル末端基封止剤を反応器に供給すること、カプロラクタム、水、アミン末端基封止剤、及び/又はカルボキシル末端基封止剤を反応器中で一緒に混合すること、並びにカプロラクタム、水、アミン末端基封止剤、及び/又はカルボキシル末端基封止剤を反応器中、反応温度で反応させること、によって合成され得る。反応器は、反応工程の少なくとも一部分の過程で、反応圧力下とされ得る。反応工程の過程で発生した水を除去するために、反応器に真空が適用され得る。混合は、反応工程の少なくとも一部分の過程で、連続され得る。
【0054】
反応温度は、低くは約225℃、約230℃、約235℃、約240℃、若しくは約245℃、又は高くは約250℃、約255℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、又は例えば約225℃~約290℃、約230℃~約280℃、約235℃~約270℃、約230℃~約260℃、約260℃~約280℃、約230℃~約240℃、若しくは約260℃~約270℃などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であり得る。
【0055】
供給工程において、縮合触媒が供給され得る。適切な縮合触媒としては、例えば次亜リン酸塩又は次亜リン酸ナトリウムが挙げられる。縮合触媒は、低くは約50ppm、約100ppm、若しくは約150ppm、又は高くは約200ppm、約250ppm、若しくは約300ppm、又は例えば約50ppm~約300ppm、100ppm~約250ppm、150ppm~約200ppm、約50ppm~約150ppm、若しくは約150ppm~約250ppmなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の濃度で供給され得る。
【0056】
末端基封止ポリアミドポリマーは、ペレット化されて、末端基封止ポリアミドポリマーのチップが形成され得る。チップは、脱イオン水での浸出に掛けられて、いかなる未反応のカプロラクタムも除去され得、続いて真空乾燥によってほとんどの水が除去され得る。
【0057】
本開示によって提供されるポリアミドポリマーブレンドは、マスターバッチポリアミドポリマーを、低くは5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、若しくは10重量%、又は高くは12重量%、14重量%、16重量%、18重量%、20重量%、22重量%、若しくは25重量%、又は例えば5重量%~25重量%、6重量%~22重量%、7重量%~20重量%、8重量%~18重量%、9重量%~15重量%、10重量%~12重量%、10重量%~20重量%、10重量%~16重量%、5重量%~10重量%、若しくは12重量%~20重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で含み得る。ポリアミドポリマーブレンドに関して本明細書で列挙されるすべての重量パーセントは、追加の添加剤は含まない末端封止ポリアミドポリマーとマスターバッチポリアミドポリマーとの総重量に基づいている。
【0058】
本開示によって提供されるポリアミドポリマーブレンドは、5-スルホイソフタル酸塩又は5-スルホイソフタル酸の残基を、低くは0.8重量%、0.85重量%、0.9重量%、0.95重量%、若しくは1重量%、又は高くは1.05重量%、1.1重量%、1.15重量%、若しくは1.2重量%、又は例えば0.8重量%~1.2重量%、0.85重量%~1.15重量%、0.9重量%~1.1重量%、1重量%~1.05重量%、若しくは0.95重量%~1.05重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で含み得る。
【0059】
ポリアミドポリマーブレンドは、末端基封止ポリアミドポリマーの末端基封止剤によって末端封止されていないいくつかの残留するアミン末端基及びカルボキシル末端基も含み得る。
【0060】
アミン末端基濃度(AEG)は、70%フェノール及び30%メタノールの溶媒中のポリアミド組成物サンプルを滴定するのに要する塩酸(0.1Nの標準HCl)の量により、以下の式1に従って特定することができる。
【0061】
【数1】
【0062】
例えば、ポリアミドポリマーブレンドは、低くは20mmol/kg、22mmol/kg、24mmol/kg、26mmol/kg、28mmol/kg、若しくは30mmol/kg、又は高くは32mmol/kg、34mmol/kg、36mmol/kg、38mmol/kg、若しくは40mmol/kg、又は例えば20mmol/kg~40mmol/kg、22mmol/kg~38mmol/kg、24mmol/kg~36mmol/kg、26mmol/kg~34mmol/kg、28mmol/kg~32mmol/kg、20mmol/kg~30mmol/kg、若しくは20mmol/kg~24mmol/kgなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内のアミン末端基濃度を有し得る。別の選択肢として、ポリアミドポリマーブレンドは、高末端封止ポリアミドポリマーから形成されてもよく、20mmol/kg未満、18mmol/kg未満、10mmol/kg未満、8mmol/kg未満、7mmol/kg未満、若しくは5mmol/kg未満のアミン末端基濃度を有し得る、又は例えば5mmol/kg~20mmol/kg、7mmol/kg~18mmol/kg、若しくは8mmol/kg~10mmol/kgなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であるアミン末端基濃度を有し得る。
【0063】
カルボキシル末端基(CEG)濃度は、ベンジルアルコール中のポリアミドのサンプルを滴定するのに要する水酸化カリウム(KOH)の量により、以下の式2に従って特定することができる。
【0064】
【数2】
【0065】
例えば、ポリアミドポリマーブレンドは、低くは20mmol/kg、22mmol/kg、24mmol/kg、26mmol/kg、28mmol/kg、若しくは30mmol/kg、又は高くは32mmol/kg、34mmol/kg、36mmol/kg、38mmol/kg、若しくは40mmol/kg、又は例えば20mmol/kg~40mmol/kg、22mmol/kg~38mmol/kg、24mmol/kg~36mmol/kg、26mmol/kg~34mmol/kg、28mmol/kg~32mmol/kg、20mmol/kg~30mmol/kg、若しくは20mmol/kg~24mmol/kgなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内のカルボキシル末端基濃度を有し得る。別の選択肢として、ポリアミドポリマーブレンドは、高末端封止ポリアミドポリマーから形成されてもよく、20mmol/kg未満、18mmol/kg未満、16mmol/kg未満、14mmol/kg未満、10mmol/kg未満、8mmol/kg未満、7mmol/kg未満、若しくは5mmol/kg未満のカルボキシル末端基濃度を有し得る、又は例えば5mmol/kg~20mmol/kg、7mmol/kg~18mmol/kg、若しくは8mmol/kg~16mmol/kgなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であるカルボキシル末端基濃度を有し得る。
【0066】
直鎖状ポリマーの末端封止のレベルを測定するための別の方法は、末端封止度による。ポリアミドポリマーブレンドの末端封止度は、以下の式を用いて特定することができる:
【0067】
【数3】
【0068】
ポリアミドポリマーブレンドは、低くは20%、25%、30%、35%、40%、45%、若しくは50%、又は高くは55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、若しくは95%、又は例えば20%~90%、25%~85%、30%~80%、35%~75%、40%~70%、45%~65%、50%~60%、55%~60%、若しくは20%~60%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の総末端封止%を有し得る。
【0069】
ポリアミドポリマーブレンドは、低くは約2.0RV、約2.5RV、約3.0RV、約3.5RV、約4.0RV、約4.5RV、又は高くは約5.0RV、約5.5RV、約6.0RV、約6.5RV、約7.0RV、又は例えば約2.0RV~約7.0RV、約2.5RV~約6.5RV、約3.0RV~約6.0RV、約3.5RV~約5.5RV、約4.0RV~約5.0RV、約4.5RV~約5.0RV、約2.0RV~約4.5RV、若しくは約5.0RV~約7.0RVなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の相対粘度(RV)を有し得る。本明細書におけるすべての相対粘度測定値は、GB/T 12006.1-2009/ISO 307:2007によって測定された場合である。
【0070】
ポリアミドポリマーブレンドは、低くは約30FAV、約25FAV、約40FAV、約45FAV、約50FAV、約55FAV、若しくは約60、又は高くは約65FAV、約70FAV、約75FAV、約80FAV、約85FAV、約90FAV、約95FAV、若しくは約100FAV、又は例えば約30FAV~約100FAV、約35FAV~約95FAV、約40FAV~約90FAV、約45FAV~約85FAV、約50FAV~約80FAV、約55FAV~約75FAV、約60FAV~約70FAV、約55FAV~約65FAV、約50FAV~約70FAV、約40FAV~約60FAV、若しくは約55FAV~約75FAVなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内のギ酸粘度(FAV)を有し得る。本明細書におけるすべてのFAV測定値は、ASTM D-789-07によって測定された場合である。
【0071】
このポリアミドポリマーブレンドは、非常に優れた耐汚染特性を呈することが示された。コーヒー、ワイン、及び食品の着色分などの一般的な汚染は、酸性の性質である。これらの物質は、ナイロン(ポリアミド)繊維を、ナイロンポリマー中の末端塩基性アミン基に結合することによって汚染し得る。ポリマー中の負に荷電した基は、酸性物質を寄せ付けない補助となることができ、繊維を耐汚染性とすることができる。理論に束縛されるものではないが、5-スルホイソフタル酸塩又は5-スルホイソフタル酸の残基が、ポリマー組成物の負電荷を増加させることによって耐汚染性を高めるものと考えられる。
【0072】
耐汚染性の1つの尺度は、全色差ΔEである。ΔEは、CIE DE2000に従う、標準色サンプルと比較した汚染サンプルの視知覚の変化の尺度である。0のΔE値は、汚染サンプルと標準色サンプルとの間に測定可能な差が存在しないことを意味する。およそ2のΔE値が、一般的に、人間の眼によって知覚可能な最小色差と見なされている。
【0073】
ポリアミド組成物のΔEは、10未満、9未満、8未満、7未満、6未満、5未満、4未満、3未満、若しくは2未満、又は上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内のいずれかの値未満であり得る。
【0074】
ポリアミドポリマーブレンドは、上記で述べたマスターバッチポリアミドポリマーを上記で述べた末端封止ポリアミドポリマーと組み合わせることによって形成され得る。ポリアミドポリマーブレンドは、マスターバッチポリアミドポリマーを溶融すること、末端封止ポリアミドポリマーを溶融すること、及びマスターバッチポリアミドポリマーと末端封止ポリアミドポリマーとを一緒に混合すること、によって製造され得る。別の選択肢として又は加えて、ポリアミドポリマーブレンドは、マスターバッチポリアミドポリマーのチップと末端封止ポリアミドポリマーのチップとを一緒に混合し、続いてチップの混合物を溶融することによって製造され得る。溶融は、さらなる混合を含み得る。すなわち、チップは、溶融の前に一緒に混合されてよく、溶融された混合物が混合されて、均質なブレンドが提供されてよい。
【0075】
図は、本明細書で開示されるポリアミドポリマーブレンドから繊維又はフィラメントを形成するためのシステム及びプロセス120を示す模式図である。図に例示的に示されるように、ポリアミドポリマーブレンドは、押出機124のホッパーにフィード122として供給され、続いて押出機中で溶融され、紡糸口金126を通して繊維128として押出される。加熱されたポリアミドポリマーブレンドは、円形又は三角形断面の個々の繊維128を形成するための1又は複数の出口部を含み得る紡糸口金126を用いて紡糸される。個々の繊維128は、次に、132で回収されて、1又は複数の延伸ローラー134上で延伸されてよく、その後、得られた繊維136は、巻き取りボビン138で回収される(テキスタイル及びカーペット繊維として)。各繊維136は、少なくは30、32、34、又は多くは56、58、60のフィラメント、又は例えば30~60、32~58、若しくは34~56のフィラメントなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内のフィラメントを含有し得る。
【0076】
図では、フィード122をポリアミドポリマーブレンドの単一フィードとして示しているが、フィード122は、別の選択肢として又は加えて、上記で述べたように押出機124のホッパー中で一緒に混合されてポリアミドポリマーブレンドを形成するマスターバッチポリアミドポリマー及び末端封止ポリアミドポリマーの別々のフィードを含んでもよいことは理解される。
【0077】
加工性は、様々な測定値を用いて表され得る。溶融安定性は、均一な品質の押出し繊維の製造に必要であることから、加工性の重要な尺度である。ポリマーが押出機に保持され、続いて押出される場合、粘度などの特性が変化すると、製造される繊維が変化する結果となり得ることから、ポリマーの特性が安定に維持されることが望ましい。ポリアミドポリマーブレンドは、高くは255℃、260℃、265℃、270℃、272℃、若しくは275℃、又は例えば255℃~275℃、260℃~270℃、若しくは260℃~265℃などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内のいずれかの温度において、熱安定性であり得る。
【0078】
特定の運転速度での繊維の糸切れ数によって表される繊維紡糸性能は、ポリマー加工性の別の指標であり、より早い速度でのより少ない切断数が、効率的な繊維製造のための重要な特性である。
【0079】
テナシティ及び伸び率も、重要な特性である。繊維136は、低くは4.0グラム/デニール(gpd)、4.1gpd、4.2gpd、4.3gpd、若しくは4.4gpd、又は高くは4.5gpd、4.6gpd、4.7gpd、若しくは4.8gpd、又は例えば4.0gpd~4.8gpd、4.1gpd~4.7gpd、4.2gpd~4.6gpd、4.3gpd~4.5gpd、4.4gpd~4.8gpd、4.1gpd~4.4gpd、4.0gpd~4.5gpd、若しくは4.4gpd~4.6gpdなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であるテナシティを有し得る。
【0080】
繊維136は、30%、40%、50%、又はさらには大きくは70%、80%、90%、又は例えば30%~90%、40%~80%、50%~70%、30%~50%、若しくは70%~90%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の伸びを有し得る。
【0081】
繊維136は、小さくは90×、100×、110×、大きくは230×、240×、250×、又は90×~250×、100×~240×、若しくは110×~230×などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の全延伸率(紡糸口金126から巻き取りボビン138まで)を有し得る。
【0082】
繊維136は、低くは150、165、若しくは180、又は高くは1400、1450、1500、又は例えば150~1500、165~1450、若しくは180~1400デニールなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の全デニールを有し得る。フィラメントあたりのデニールは、低くは4、5、若しくは6、又は高くは46、48、若しくは50、又は例えばテキスタイル用途には4~10デニール、若しくはカーペット用途には22~28デニールなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であり得る。
【0083】
上記で述べた方法によって製造されたポリアミドポリマーブレンドは、押出され、紡糸されて、高巻き取り速度で繊維136を形成することができ、これによって、高効率の製造が可能となる。繊維136は、低くは2500メートル毎分(m/分)、3000m/分、3500m/分、若しくは4000m/分、又は高くは4500m/分、5000m/分、5500m/分、若しくは6000m/分、又は例えば2500m/分~6000m/分、3000m/分~5500m/分、3500m/分~5000m/分、4000m/分~4500m/分、5000m/分~6000m/分、2500m/分~4500m/分、若しくは4000m/分~6000m/分などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の巻き取り速度で形成され得る。
【0084】
本発明を例示的な設計に関して記載してきたが、本発明は、本開示の趣旨及び範囲内でさらに改変されてよい。さらに、本出願は、本発明が属する技術分野における公知の又は慣習的な実践の範囲内に含まれるような本開示からの逸脱も包含することを意図している。
【0085】
本明細書で用いられる場合、「上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内」の句は、文字通り、値が列挙の低い値の方にあるか、又は列挙の高い値の方にあるかにかかわらず、その句の前に列挙された値のいずれか2つからのいずれの範囲が選択されてもよいことを意味する。例えば、値の対は、低い方の値2つ、高い方の値2つ、又は低い方の値及び高い方の値、から選択され得る。
【0086】
実施例
例1:5-スルホイソフタル酸塩の残基を含むマスターバッチポリアミドポリマーの製造
この例では、5-スルホイソフタル酸塩の残基を含むマスターバッチポリアミドポリマーの製造について示す。撹拌器を取り付けた2000mLのガラスビーカーに300グラムの脱イオン水を入れ、水を50℃に加熱し、続いて342グラムの5-スルホイソフタル酸リチウム(Sigma-Aldrich Corp.,St.Louis,MO)を加熱した脱イオン水に添加することによって溶液を調製した。この混合物を、100グラムの追加の脱イオン水を添加しながら撹拌して、透明な溶液を調製した。溶液の温度を上昇させて70℃~75℃で維持し、同時に、70重量%のヘキサメチレンジアミン及び30重量%の水(Sigma-Aldrich Corp.,St.Louis,MO)から本質的に成る溶液の191グラムを、撹拌しながら少しずつ添加して、5-スルホイソフタル酸リチウム塩及びヘキサメチレンジアミン塩の溶液を調製した。反応器は、12Lのステンレス鋼容器にらせん型撹拌器を取り付けることで準備した。5500グラムのカプロラクタム(AdvanSix Resins and Chemicals LLC,Parsippany,NJ)、5-スルホイソフタル酸リチウム塩及びヘキサメチレンジアミン塩の溶液、並びに次亜リン酸塩の形態の縮合触媒を反応器に供給した。約100ppmの濃度の縮合触媒。
【0087】
反応器の内容物を反応器中で一緒に混合した。反応器を約230℃の反応温度まで加熱し、反応物を1時間混合した。約9バールの反応器圧が観察された。1時間後、反応器を排気して、圧力を開放した。反応温度を約260℃に上昇させて1時間保持し、同時に反応器に窒素を通し(2L/分)、内容物をらせん型撹拌器で混合して、ポリアミドポリマーの分子量を増加させた。1時間後、約0.9バールの減圧を適用し、らせん型撹拌器に掛かるトルクが約28Nmの目標トルク値に到達するまで内容物を混合して、ポリアミドポリマーを製造した。ポリアミドポリマーを、反応器から単一ストランドとして水槽中に押出して、冷却した。冷却したポリアミドポリマーを、ペレタイザーでペレット化して、ポリアミドポリマーのチップを形成した。チップを、約15psiの圧力下、120℃で1時間の脱イオン水中での浸出に3回掛け、合計3時間で未反応カプロラクタムを除去した。このリンスしたポリアミドポリマーを、80℃及び28水銀柱インチの真空度の真空オーブン中で3日間乾燥して、水分含有量約800ppmのマスターバッチポリアミドポリマーを製造した。マスターバッチポリアミドポリマーは、約7重量%の濃度の5-スルホイソフタル酸リチウムを有すると特定された。5-スルホイソフタル酸リチウムの濃度は、誘導結合プラズマ(ICP)分光法によって測定した場合のポリマー中の金属濃度から特定した。
【0088】
例2:二重末端封止ポリアミドポリマーの製造
この例では、二重末端封止ポリアミド-6ポリマーの製造について示す。反応器は、12Lのステンレス鋼容器にらせん型撹拌器を取り付けることで準備した。反応器に供給した反応物は、5,5000グラムのカプロラクタム(AdvanSix Resins and Chemicals LLC,Parsippany,NJ)、10グラムの酢酸(Sigma-Aldrich Corp.,St.Louis,MO)、14グラムのシクロヘキシルアミン(Sigma-Aldrich Corp.,St.Louis,MO)、及び100グラムの脱イオン水を含んでいた。
【0089】
反応物、触媒、及び水を反応器中で一緒に混合した。反応器を約250℃の反応温度まで加熱し、反応物を1時間混合した。約3.5バールの反応器圧が観察された。1時間後、反応器を排気して、圧力を開放した。反応温度を約260℃に上昇させて1時間保持し、同時に反応器に窒素を通し(2L/分)、内容物をらせん型撹拌器で混合して、ポリアミドポリマーの分子量を増加させた。1時間後、約0.9バールの減圧を適用し、らせん型撹拌器に掛かるトルクが約24Nmの目標トルク値に到達するまで内容物を混合して、二重末端封止ポリアミドポリマーを製造した。二重末端封止ポリアミドポリマーを、反応器から水槽中に押出して、冷却した。冷却した二重末端封止ポリアミドポリマーを、ペレタイザーでペレット化して、二重末端封止ポリアミドポリマーのチップを形成した。チップを、約15psiのゲージ圧力下、120℃で1時間の脱イオン水中での浸出に3回掛け、合計3時間で未反応カプロラクタムを除去した。このリンスした二重末端封止ポリアミドポリマーを、80℃及び28水銀柱インチの真空度の真空オーブン中で3日間乾燥して、水分含有量約800ppmの二重末端封止ポリアミドポリマーを製造した。
【0090】
例3:ポリアミドポリマーブレンド及び繊維の製造
この例では、ポリアミドポリマーブレンド及び繊維の製造について示す。いくつかのマスターバッチポリアミドポリマーを、以下の表1に示されるようにマスターバッチポリアミドポリマー中の5-スルホイソフタル酸塩(SIPA)の量、さらには塩自体を変化させた以外は、上記例1に従って製造した。ポリアミドポリマーブレンドサンプル1~3は、表1に示される重量パーセントでマスターバッチポリアミドポリマーのチップと二重末端封止ポリアミドポリマーのチップとを一緒に混合し、チップの混合物を一軸押出機(2インチの軸径、27対1のL/D)に供給することによって形成した。チップの混合物を加熱し、255℃~265℃の範囲内の温度で押出機中で混合して、ポリアミドポリマーブレンドサンプルを形成した。ポリアミドポリマーブレンドサンプル1~3の各々を、ギ酸粘度(FAV)、アミン末端基濃度、及びカルボキシル末端基濃度に関して特性評価した。アミン末端基濃度及びカルボキシル末端基濃度は、二重末端封止ポリアミドポリマー(DTPP)単独についても、さらには比較のために1重量%の5-スルホイソフタル酸を含有する市販のナイロン材料(市販サンプル)についても測定した。サンプル1~3の各々及びDTPPの総末端封止率は、58~59%であった。市販サンプルの総末端封止率は、37%であった。結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
繊維を、ポリアミドポリマーブレンドサンプル1~3から形成した。ポリアミドポリマーブレンドを、15ポンド/時間の速度及び750psigの押出機圧力で押出した。繊維を、0.4mm径のキャピラリーが36個ある紡糸口金を用いて各サンプルから紡糸した。繊維を、3000メートル毎分(mpm)~6000mpmの範囲内の巻き取り速度で延伸した。比較の目的で、DTPP材料単独から、及び市販サンプル材料からも繊維を紡糸した。
【0093】
例4:ポリアミドポリマーブレンド及び繊維の評価
例3のポリアミドポリマー繊維の一部を、サンプルの各々を紡糸速度を増加させながら5分間延伸した場合に見られる糸切れフィラメント数によって示される加工性について評価した。結果を表2に示す。
【0094】
ポリアミドポリマー繊維は、全色差ΔEによって示される耐汚染性についても評価した。FD&C Red 40染料の溶液100mgを200mLの水に溶解し、クエン酸を添加して約2.8のpHとした。ポリアミドポリマー繊維をRed 40染料溶液中に30秒間入れ、続いて水でリンスした。これらの汚染繊維を、90℃の真空オーブン中に24時間入れて乾燥させた。汚染サンプル及び非汚染オリジナルサンプルの両方を白色の板紙製カードに巻き付け、分光光度計(コニカミノルタCM-5分光光度計)で色を測定して、CIE Lab色空間のL、a、及びbの値を特定した。標準ΔE値を、色測定値に基づいて式6を用いて算出した。
式6:
ΔE=((ΔL)+(Δa)+(Δb))0.5
標準ΔEは、染料取り込みによる汚染に起因する色変化の尺度となる。結果を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
表2に示されるように、サンプル1~3の耐汚染性は、市販の耐汚染性ポリアミド-6ポリマーと同等又はそれよりも良好である。二重末端封止ポリアミドポリマー単独では、サンプル1~3のような非常に優れた耐汚染性を呈していない。
【0097】
サンプル1~3のテナシティは、二重末端封止ポリアミドポリマーほど高くはないが、市販の耐汚染性ポリアミド-6ポリマーよりも良好である。この差異は、観察されたフィラメントの糸切れ数にさらに反映されている。二重末端封止ポリアミドポリマーは、非常に優れた紡糸性能を示し、6000mpmまでの紡糸速度においてフィラメントの糸切れは起こしていない。サンプル1及び2は、ほぼ同等に優れており、5500mpmまでの紡糸速度においてフィラメントの糸切れは起こさず、6000mpmにおいては許容される性能である。サンプル3は、5000mpmまでの紡糸速度においてフィラメントの糸切れを起こさない良好な紡糸性能を示している。市販の耐汚染性ポリアミド-6ポリマーは、非常により低い紡糸性能を呈し、4000mpmでフィラメントの糸切れを起こし、5500mpmでは非常に多くのフィラメントが糸切れを起こしている。したがって、本開示に従うポリアミドポリマーブレンドを用いて製造した繊維は、非常に優れた加工性及び非常に優れた耐汚染性の両方を示す。
【0098】
二重末端封止ポリアミドポリマー(DTPP)、上記のサンプル1で用いたマスターバッチとDTPPとのポリアミドポリマーブレンド、及びサンプル1で用いたマスターバッチと単一末端封止ポリアミドポリマーとのポリアミドブレンドの3つのポリマー/ポリマーブレンドを、溶融安定性について評価した。これら3つのポリマー/ポリマーブレンドの各々を、260℃~265℃の範囲内の温度で32分間保持し、定期的に粘度を測定した。二重末端封止ポリアミドポリマー及びマスターバッチと二重末端封止ポリアミドポリマーとのポリアミドポリマーブレンドは、32分間全体にわたって実質的に粘度の変化を示さなかったが、マスターバッチと単一末端封止ポリアミドポリマーとのポリマーブレンドは、約10%の粘度上昇を呈した。したがって、本開示に従うポリアミドポリマーブレンドを用いて製造したいくつかの繊維も、非常に優れた溶融安定性を示す。
図1