(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】発光装置、電子機器及び照明装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/12 20230101AFI20241010BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20241010BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241010BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20241010BHJP
C07D 333/76 20060101ALI20241010BHJP
C07D 491/048 20060101ALI20241010BHJP
C07D 209/82 20060101ALI20241010BHJP
H10K 101/25 20230101ALN20241010BHJP
【FI】
H10K50/12
H10K59/12
H10K85/60
C09K11/06 690
C07D333/76
C07D491/048
C07D209/82
H10K101:25
(21)【出願番号】P 2023015837
(22)【出願日】2023-02-06
(62)【分割の表示】P 2021075710の分割
【原出願日】2016-05-20
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2015109818
(32)【優先日】2015-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】細海 俊介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 辰義
(72)【発明者】
【氏名】石曽根 崇浩
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-209611(JP,A)
【文献】特開2014-225661(JP,A)
【文献】特開2014-192214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の上方の半導体層と、前記半導体層の上方の第1の導電層と、前記半導体層と電気的に接続する第2の導電層と、発光素子と、を有し、
前記発光素子の一方の電極は、前記第2の導電層と電気的に接続し、
前記発光素子は前記一方の電極と他方の電極の間に、第1の層と、第2の層と、を有し、
前記第1の層は、有機化合物を有し、
前記第2の層は、蛍光発光物質と、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、を有し、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物は、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の有機化合物は、ベンゾフロピリミジン骨格又はベンゾチエノピリミジン骨格を含む第1の骨格を有し、且つ、カルバゾール骨格を含む第2の骨格を有する
化合物であり、
前記第2の有機化合物は、窒素原子を有する芳香族アミン化合物であり、
前記第2の有機化合物は、前記窒素原子にカルバゾール骨格が結合した化合物である、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記基板と、前記一方の電極との間に、着色層を有する、発光装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の発光装置と、
センサ、操作ボタン、スピーカ、または、マイクと、
を有する、電子機器。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の発光装置と、
筐体と、
を有する、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物を発光物質として用いた発光素子、表示装置、発光装置、電子機
器及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物を発光物質として用いた電流励起の発光素子、いわゆる有機EL素子は、光
源や照明、ディスプレイなどの応用化が進んでいる。
【0003】
有機EL素子の励起子の生成割合は一重項励起状態1に対し、三重項励起状態3である
ことが知られている。そのため、一重項励起状態を発光に変換する蛍光発光の内部量子効
率の限界は25%であるが、三重項励起状態を発光に変換するりん光発光は、一重項励起
状態からの項間交差を介したエネルギー移動を考慮すると、内部量子効率100%が実現
可能である。このことから、効率良い発光を得るために、りん光発光材料を発光物質とし
て適用した有機EL素子(りん光発光素子ともいう)が選択されることが多い。
【0004】
しかし、三重項励起状態を効率良く発光に変換することが可能な物質は、その多くが有
機金属錯体であり、その中心金属は産出量の少ない希少金属であることが殆どである。こ
のような希少金属は、高価であることはもちろんのこと、価格の変動が激しく、また、世
界情勢による供給の不安定さも付きまとう。そのため、りん光発光素子は、コストや安定
供給の面で不安がある。
【0005】
一方、蛍光発光物質は、りん光発光物質のような高い効率は得られていないものの、供
給や価格の問題がない物質が殆どである。また、寿命等の安定性や発光色が良好な物質も
多く見出されている。
【0006】
ところで、三重項励起状態を発光に変換するための他の手段として、遅延蛍光を利用す
る方法がある。これは、三重項励起状態から一重項励起状態への逆項間交差を利用したも
のであり、発光は一重項励起状態から起こるためりん光ではなく、蛍光である。これは、
一重項励起状態と三重項励起状態とのエネルギー差が小さい場合に起こりやすく、実際に
蛍光発光の理論的限界を超える発光効率が得られたことも報告されている。
【0007】
また、このような熱活性化遅延蛍光(以下TADFとも称する。)を発する物質から蛍
光発光物質へエネルギー移動を行うことによって、良好な効率で発光する蛍光発光素子を
得られたとの報告もある。
【0008】
また、一重項励起状態と三重項励起状態のエネルギー差が小さい状態を、二種類の物質
からなる励起錯体(エキサイプレックス)により得、TADFを得ることで効率の良い発
光素子を実現したことも報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】K.合志 他、「アプライド・フィジクス・レターズ(Applied Physics Letters)」,2012年, 101号,023306/1-023306/4頁.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
単独の分子からTADFを得るTADF材料の場合、一重項励起エネルギー準位と、三
重項励起エネルギー準位が近接するという特殊な構造を実現する必要があるため、その分
子設計には大きな制約が伴う。
【0011】
また、蛍光発光物質を効率良く励起するためには、エネルギードナーとなる物質の励起
準位が適切な位置にあることが必要であるが、TADF材料を蛍光発光物質のエネルギー
ドナーとして用いる場合制約された分子設計の元ではそれを最適化するには困難が伴う。
【0012】
一方、励起錯体からTADFを得る場合、そのエネルギーギャップは励起錯体を形成す
る二つの物質のうち、高い方のHOMO準位と低い方のLUMO準位との差となることが
わかっているため、用いる物質の組み合わせによって適切な一重項励起エネルギー準位を
有する励起錯体を得ることが容易である。また、励起錯体は一重項励起エネルギー準位と
三重項励起エネルギー準位が近接して存在するため、三重項励起エネルギー準位の位置の
設定も容易である。
【0013】
しかし、上記励起錯体をエネルギードナーとして用い、各励起準位を最適化した蛍光発光
素子の場合であっても、励起錯体を形成する物質によってその効率に大きな違いがあった
。そして、どのような物質を用いれば良好な効率を呈する蛍光発光素子を得られるかの指
標は示されていない。
【0014】
そこで、本発明の一態様では、発光効率の良好な発光素子を提供することを課題とする
。また、本発明の一態様では、希少金属を発光材料として使用せずに発光効率の良好な発
光素子を提供することを課題とする。また、本発明の一態様では、励起錯体からのエネル
ギー移動を利用した蛍光発光素子において、効率の良好な発光素子を提供することを課題
とする。
【0015】
また、本発明の一態様は、上述の発光素子を用いることにより、発光効率の高い発光装
置、表示装置、電子機器、及び照明装置を各々提供することを課題とする。
【0016】
本発明は上述の課題のうちいずれか一を実現すればよいものとする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極及び第2の電極との間に
挟まれた有機化合物を含む層を有する発光素子であって、有機化合物を含む層は、少なく
とも蛍光発光物質を含む発光層を有し、発光層は、蛍光発光物質と、第1の有機化合物と
、第2の有機化合物とを含み、第1の有機化合物と第2の有機化合物は励起錯体を形成す
る組み合わせであり、第1の有機化合物はベンゾフロピリミジン骨格又はベンゾチエノピ
リミジン骨格を含む第1の骨格を有する物質である発光素子である。
【0018】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、第1の骨格がベンゾフロ
[3,2-d]ピリミジン骨格又はベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格を有する
物質である発光素子である。
【0019】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、第1の骨格が、ベンゾフ
ロピリミジン骨格である発光素子である。
【0020】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、第1の骨格が、ベンゾフ
ロ[3,2-d]ピリミジン骨格である発光素子である。
【0021】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、ベンゾフロ[3,2-d
]ピリミジン骨格又はベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格が4位に置換基を有す
る発光素子である。
【0022】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、ベンゾフロ[3,2-d
]ピリミジン骨格又はベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格が4位のみに置換基を
有する発光素子である。
【0023】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、第1の有機化合物がさら
にカルバゾール骨格又はジベンゾチオフェン骨格を含む第2の骨格を有する物質である発
光素子である。
【0024】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、第2の骨格がカルバゾー
ル骨格であり、前記カルバゾール骨格の9位が置換されている発光素子である。
【0025】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、第2の骨格がジベンゾチ
オフェン骨格であり、前記ジベンゾチオフェン骨格の4位が置換されている発光素子であ
る。
【0026】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、第1の有機化合物が、第
1の骨格と、第2の骨格とが、2価の連結基によって接続されている物質である発光素子
である。
【0027】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、第1の骨格がベンゾフロ
[3,2-d]ピリミジン骨格又はベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格であり、
当該第1の骨格の4位が連結基に結合している発光素子である。
【0028】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、第2の骨格がジベンゾチ
オフェン骨格であり、ジベンゾチオフェン骨格の4位が連結基に結合している発光素子で
ある。
【0029】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、第2の骨格はカルバゾー
ル骨格であり、カルバゾール骨格の9位が連結基に結合している発光素子である。
【0030】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、連結基が炭素数6乃至炭
素数60の2価の基である発光素子である。
【0031】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、連結基が、炭素数6乃至
炭素数60の2価の芳香族炭化水素基である発光素子である。
【0032】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、連結基が、置換又は無置
換の炭素数6乃至炭素数13の2価の基である発光素子である。
【0033】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、連結基が、置換または無
置換の炭素数6乃至炭素数13の2価の芳香族炭化水素基である発光素子である。
【0034】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、連結基がビフェニルジイ
ル基である発光素子である。
【0035】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、ビフェニルジイル基が3
,3’-ビフェニルジイル基である発光素子である。
【0036】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、励起錯体の三重項励起エ
ネルギー準位が、蛍光発光物質の三重項励起エネルギー準位よりも高い発光素子である。
【0037】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、第1の有機化合物及び第
2の有機化合物の三重項励起エネルギー準位が、励起錯体の三重項励起エネルギー準位よ
りも高い発光素子である。
【0038】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、励起錯体の発光が、蛍光
発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯と重なりを有する発光素子である。
【0039】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、第1の有機化合物は正孔
輸送性よりも電子輸送性の高い物質であり、第2の有機化合物は電子輸送性よりも正孔輸
送性の方が高い物質である発光素子である。
【0040】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、第2の有機化合物は、π
電子過剰型複素芳香環骨格又は芳香族アミン骨格を有する発光素子である。
【0041】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、励起錯体のPL発光にお
ける遅延蛍光の割合が5%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上で
ある発光素子である。
【0042】
本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子において、励起錯体のPL発光にお
ける遅延蛍光寿命が1μs以上50μs以下、好ましくは1μs以上40μs以下、さら
に好ましくは1μs以上30μs以下である発光素子である。
【0043】
また、本発明の他の構成は、上記構成を有する発光素子と、トランジスタ、または、基
板と、を有する発光装置である。
【0044】
また、本発明の他の構成は、上記構成を有する発光装置と、センサ、操作ボタン、スピ
ーカ、または、マイクと、を有する電子機器である。
【0045】
また、本発明の他の構成は、上記構成を有する発光素子と、筐体と、を有する照明装置
である。
【0046】
なお、本明細書中における発光装置とは、発光素子を用いた画像表示デバイスを含む。
また、発光素子にコネクター、例えば異方導電性フィルム又はTCP(Tape Car
rier Package)が取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板
が設けられたモジュール、又は発光素子にCOG(Chip On Glass)方式に
よりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールは、発光装置を有する場合がある。さ
らに、照明器具は、発光装置を有する場合がある。
【発明の効果】
【0047】
本発明の一態様では、新規発光素子を提供することができる。本発明の一態様では発光
効率の良好な発光素子を提供することができる。また、本発明の一態様では、希少金属を
発光材料として使用せずとも発光効率の良好な発光素子を提供することができる。また、
本発明の一態様では、励起錯体を利用した発光素子において、効率の良好な発光素子を提
供することができる。また、本発明の一態様では、励起錯体からの発光を発する発光素子
において、効率の良好な発光素子を提供することができる。
【0048】
また、本発明の一態様では、発光効率の高い発光装置、表示装置、電子機器、及び照明
装置を各々提供することができる。
【0049】
本発明の一態様は上述の効果のうちいずれか一を奏すればよいものとする。なお、これ
らの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必
ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、
図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項な
どの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図14】発光素子1乃至発光素子4の輝度-電流密度特性。
【
図15】発光素子1乃至発光素子4の電流効率-輝度特性。
【
図16】発光素子1乃至発光素子4の輝度-電圧特性。
【
図17】発光素子1乃至発光素子4の電流-電圧特性。
【
図18】発光素子1乃至発光素子4の外部量子効率-輝度特性。
【
図19】発光素子1乃至発光素子4の発光スペクトル。
【
図20】本発明の一態様の発光素子のエネルギー準位の相関の例。
【
図21】第1の有機化合物と第2の有機化合物及びそれらが形成する励起錯体の発光スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下
の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細
を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示
す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0052】
(実施の形態1)
三重項励起状態を発光に変換するためには、三重項励起状態からの直接発光であるりん
光を利用する方法と、三重項励起状態が逆項間交差を経て一重項励起状態となり、一重項
励起状態から発光する遅延蛍光を利用する方法などがある。
【0053】
りん光発光材料を用いた発光素子は、非常に高い効率で発光する構成の報告も見られ、
三重項励起状態を発光に利用することの優位性は実際に証明されている。しかし、りん光
発光材料は、中心金属がレアメタルであることが殆どであるため、量産化された際のコス
トや安定供給に不安がある。
【0054】
一方、遅延蛍光材料を用いた発光素子も、近年では一定の成果が報告されている。しか
し、比較的高い効率で遅延蛍光を発する物質は、一重項励起状態と三重項励起状態が近接
するという、非常に稀な状態を有する物質である必要があり、そのため、特殊な分子構造
を有し、種類も限られているのが現実である。
【0055】
励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスともいう)は、2種類の分子から電
荷移動相互作用によって形成される、励起状態の錯体であり、その一重項励起状態と三重
項励起状態は近接している場合が多いことが報告されている。そのため、励起錯体は室温
環境下においても三重項励起エネルギー準位から一重項励起エネルギー準位への逆項間交
差が起きやすく、励起錯体を蛍光発光物質のエネルギードナーとして用いることで効率の
良好な蛍光発光素子を得られる可能性がある。さらに、励起錯体のエネルギーギャップは
、当該錯体を形成する二つの物質のうち、浅い方のHOMO準位と深い方のLUMO準位
とのエネルギー差に相当する。このため、励起錯体を形成する物質の選択によって、励起
する蛍光発光物質へのエネルギー移動に好適な一重項励起エネルギー準位及び三重項励起
エネルギー準位を有する励起錯体を得ることが比較的容易である。
【0056】
しかし、励起錯体から蛍光発光物質へのエネルギー移動を積極的に利用するための研究
は未だ途上であり、どのような物質を用いれば良好な発光効率が得られるといった指針は
少ない。そして、何の指針もなく素子を作製しても良好な発光はまず得られない。
【0057】
そこで、本実施の形態では、励起錯体を蛍光発光物質へのエネルギードナーとして用い
た高効率で発光する発光素子の構成について開示する。
【0058】
本実施の形態における発光素子は、一対の電極間に有機化合物を含む層(無機化合物を
含んでいても良い)を挟んで構成されており、当該有機化合物を含む層は、少なくとも発
光層(発光する機能を有する層)を有する。発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機
化合物と、蛍光発光物質とを含む。
【0059】
第1の有機化合物と第2の有機化合物は、励起錯体を形成する組み合わせであるものと
する。励起錯体を形成するためには、第1の有機化合物のHOMO準位及びLUMO準位
が第2の有機化合物のHOMO準位及びLUMO準位よりも各々深いことが好ましい。
【0060】
励起錯体の形成過程については、以下の2つの過程が考えられる。
【0061】
1つ目の形成過程は、電子輸送性を有する第1の有機化合物と正孔輸送性を有する第2
の有機化合物がそれぞれ異なるキャリアを持った状態(カチオン又はアニオン)から、励
起錯体を形成する形成過程である。
【0062】
2つ目の形成過程は、第1の有機化合物及び第2の有機化合物のどちらか一方が一重項
励起子を形成した後、基底状態の他方と相互作用して励起錯体を形成する素過程である。
【0063】
本発明の一態様で用いる励起錯体はそのどちらの過程で生成されたものであっても良い
。
【0064】
第1の有機化合物と第2の有機化合物との組み合わせは、励起錯体を形成することが可
能な組み合わせであればよいが、一方が正孔を輸送する機能(正孔輸送性)を有する化合
物であり、他方が電子を輸送する機能(電子輸送性)を有する化合物であることが、より
好ましい。この場合、励起錯体形成が起こりやすく、効率よく励起錯体を形成することが
できる。また、第1の有機化合物と第2の有機化合物との組み合わせが、電子輸送性を有
する化合物と正孔輸送性を有する化合物との組み合わせである場合、その混合比によって
キャリアバランスを容易に制御することが可能となる。具体的には、正孔輸送性を有する
化合物:電子輸送性を有する化合物=1:9から9:1(重量比)の範囲が好ましい。ま
た、該構成を有することで、容易にキャリアバランスを制御することができることから、
キャリア再結合領域の制御も簡便に行うことができる。
【0065】
発光層における第1の有機化合物131_1と、第2の有機化合物131_2と、蛍光
発光物質132とのエネルギー準位の相関の例を
図20に示す。
【0066】
本発明の一態様の発光素子においては、発光層が有する第1の有機化合物131_1と
第2の有機化合物131_2とが励起錯体を形成する。このような励起錯体においては、
その最も低い一重項励起エネルギー準位(SE)とその最も低い三重項励起エネルギー準
位(TE)とは、互いに近接したエネルギー準位となる。
【0067】
励起錯体は、2種類の物質からなる励起状態であり、光励起の場合、励起状態となった
一つの物質がもう一方の基底状態の物質と相互作用することによって形成される。そして
、光を発することによって基底状態になると、励起錯体を形成していた2種類の物質は、
また元の別々の物質として振る舞う。電気励起の場合は、一方が励起状態になると、他方
と相互作用して励起錯体を形成する。あるいは、一方が正孔を、他方が電子を受け取り、
近接したそれらが励起錯体を形成する。この場合、励起錯体の形成は速やかに行われるた
め、発光層における励起子のほとんどが励起錯体として存在することが可能である。励起
錯体の一重項励起エネルギー準位(SE)は、励起錯体を形成するホスト材料(第1の有
機化合物131_1および第2の有機化合物131_2)の一重項励起エネルギー準位(
SH)より小さくなるため、より低い励起エネルギーで励起状態を形成することが可能と
なる。これによって、発光素子の駆動電圧を低減することができる。
【0068】
励起錯体の一重項励起エネルギー準位(S
E)と三重項励起エネルギー準位(T
E)は
、互いに近接しているため、熱活性化遅延蛍光を呈する場合がある。すなわち、励起錯体
は三重項励起エネルギーを逆項間交差(アップコンバージョン)によって一重項励起エネ
ルギーに変換する機能を有する(
図20 ルートE
4参照)。したがって、発光層で生成
した三重項励起エネルギーの一部は励起錯体により一重項励起エネルギーに変換される。
そのためには、励起錯体の一重項励起エネルギー準位(S
E)と三重項励起エネルギー準
位(T
E)とのエネルギー差は0eV以上0.2eV以下であると好ましい。なお、逆項
間交差を効率よく生じさせるためには、励起錯体を形成するホスト材料を構成している各
有機化合物(第1の有機化合物131_1および第2の有機化合物131_2)の三重項
励起エネルギー準位が、励起錯体の三重項励起エネルギー準位(T
E)よりも高いことが
好ましい。これにより、各有機化合物による励起錯体の三重項励起エネルギーのクエンチ
が生じにくくなり、効率よく逆項間交差が発生する。
【0069】
また、励起錯体の一重項励起エネルギー準位(S
E)は、蛍光発光物質132の一重項
励起エネルギー準位(S
G)より大きいことが好ましい。そうすることで、生成した励起
錯体の一重項励起エネルギーは、励起錯体の一重項励起エネルギー準位(S
E)から蛍光
発光物質132の一重項励起エネルギー準位(S
G)へエネルギー移動することができ、
蛍光発光物質132が一重項励起状態となり、発光する(
図20 ルートE
5参照)。
【0070】
なお、蛍光発光物質132の一重項励起状態から効率よく発光を得るためには、蛍光発
光物質132の蛍光量子収率は高いことが好ましく、具体的には、好ましくは50%以上
、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0071】
なお、励起錯体の一重項励起エネルギー準位(SE)から、蛍光発光物質132の三重
項励起エネルギー準位(TG)へのエネルギー移動は、蛍光発光物質132における一重
項基底状態から三重項励起状態への直接遷移が禁制であることから、主たるエネルギー移
動過程になりにくい。
【0072】
また、励起錯体の三重項励起エネルギー準位(T
E)から蛍光発光物質132の三重項
励起エネルギー準位(T
G)へ三重項励起エネルギー移動が生じると、三重項励起エネル
ギーは失活してしまう(
図20 ルートE
6参照)。そのため、ルートE
6のエネルギー
移動が少ない方が、蛍光発光物質132の三重項励起状態の生成確率を低減することがで
き、熱失活を減少することができるため好ましい。そのためには、ホスト材料に対する蛍
光発光物質132の濃度は低いことが好ましい。これにより、効率の高い発光素子が得ら
れるため、本発明の一態様においては、前記励起錯体の三重項励起エネルギー準位(T
E
)が、前記蛍光発光物質の三重項励起エネルギー準位(T
G)よりも高いことも特徴の一
つである。
【0073】
また、蛍光発光物質132においてキャリアの直接再結合過程が支配的になると、発光
層において三重項励起子が多数生成することになり、熱失活によって発光効率を損ねてし
まう。そのため、蛍光発光物質132においてキャリアが直接再結合する過程よりも、励
起錯体の生成過程を経たエネルギー移動過程(
図20 ルートE
4及びE
5)の割合が多
い方が、蛍光発光物質132の三重項励起状態の生成確率を低減することができ、熱失活
を抑制することができるため好ましい。そのためには、やはりホスト材料に対する蛍光発
光物質132の濃度は低いことが好ましい。
【0074】
以上を踏まえ、ホスト材料に対する蛍光発光物質132の濃度は0.1wt%以上5w
t%以下が好ましく、0.1wt%以上1wt%以下がより好ましい。
【0075】
このように、上述のルートE4及びE5のエネルギー移動過程が全て効率よく生じれば
、ホスト材料の一重項励起エネルギー及び三重項励起エネルギーの双方が効率よく蛍光発
光物質132の一重項励起状態に変換されるため、本実施の形態の発光素子は高い発光効
率で発光することが可能となる。
【0076】
上記に示すルートE3、E4、及びE5の過程を、本明細書等において、ExSET(
Exciplex-Singlet Energy Transfer)またはExEF
(Exciplex-Enhanced Fluorescence)と呼称する場合が
ある。別言すると、発光層は、励起錯体から蛍光発光物質132への励起エネルギーの授
受がある。
【0077】
発光層を上述の構成とすることで、発光層の蛍光発光物質132からの発光を効率よく
得ることができる。
【0078】
次に、ホスト材料と、蛍光発光物質132との分子間のエネルギー移動過程の支配因子
について説明する。分子間のエネルギー移動の機構としては、フェルスター機構(双極子
-双極子相互作用)と、デクスター機構(電子交換相互作用)の2つの機構が提唱されて
いる。ここでは、ホスト材料と蛍光発光物質132との分子間のエネルギー移動過程につ
いて説明するが、ホスト材料が励起錯体の場合も同様である。
【0079】
≪フェルスター機構≫
フェルスター機構では、エネルギー移動に、分子間の直接的接触を必要とせず、ホスト
材料及び蛍光発光物質132間の双極子振動の共鳴現象を通じてエネルギー移動が起こる
。双極子振動の共鳴現象によってホスト材料が蛍光発光物質132にエネルギーを受け渡
し、ホスト材料が基底状態になり、蛍光発光物質132が励起状態になる。なお、フェル
スター機構の速度定数kh*→gを数式(1)に示す。
【0080】
【0081】
数式(1)において、νは、振動数を表し、f’h(ν)は、ホスト材料の規格化され
た発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル
、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、εg(
ν)は、蛍光発光物質132のモル吸光係数を表し、Nは、アボガドロ数を表し、nは、
媒体の屈折率を表し、Rは、ホスト材料と蛍光発光物質132の分子間距離を表し、τは
、実測される励起状態の寿命(蛍光寿命や燐光寿命)を表し、φは、発光量子収率(一重
項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光量子収率、三重項励起状態からのエ
ネルギー移動を論じる場合は燐光量子収率)を表し、K2は、ホスト材料と蛍光発光物質
132の遷移双極子モーメントの配向を表す係数(0から4)である。なお、ランダム配
向の場合はK2=2/3である。
【0082】
≪デクスター機構≫
デクスター機構では、ホスト材料と蛍光発光物質132が軌道の重なりを生じる接触有
効距離に近づき、励起状態のホスト材料の電子と、基底状態の蛍光発光物質132との電
子の交換を通じてエネルギー移動が起こる。なお、デクスター機構の速度定数kh*→g
を数式(2)に示す。
【0083】
【0084】
数式(2)において、hは、プランク定数であり、Kは、エネルギーの次元を持つ定数
であり、νは、振動数を表し、f’h(ν)は、ホスト材料の規格化された発光スペクト
ル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状
態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、ε’g(ν)は、蛍光
発光物質132の規格化された吸収スペクトルを表し、Lは、実効分子半径を表し、Rは
、ホスト材料と蛍光発光物質132の分子間距離を表す。
【0085】
ここで、ホスト材料から蛍光発光物質132へのエネルギー移動効率φETは、数式(
3)で表されると考えられる。krは、ホスト材料の発光過程(一重項励起状態からのエ
ネルギー移動を論じる場合は蛍光、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は
燐光)の速度定数を表し、knは、ホスト材料の非発光過程(熱失活や項間交差)の速度
定数を表し、τは、実測されるホスト材料の励起状態の寿命を表す。
【0086】
【0087】
数式(3)より、エネルギー移動効率φETを高くするためには、エネルギー移動の速
度定数kh*→gを大きくし、他の競合する速度定数kr+kn(=1/τ)が相対的に
小さくなれば良いことがわかる。
【0088】
≪エネルギー移動を高めるための概念≫
まず、フェルスター機構によるエネルギー移動を考える。数式(3)に数式(1)を代
入することでτを消去することができる。したがって、フェルスター機構の場合、エネル
ギー移動効率φETは、ホスト材料の励起状態の寿命τに依存しない。また、エネルギー
移動効率φETは、発光量子収率φ(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じている
ので、蛍光量子収率)が高い方が良いと言える。一般的に、有機化合物の三重項励起状態
からの発光量子収率は室温において非常に低い。そのため、ホスト材料が三重項励起状態
である場合、フェルスター機構によるエネルギー移動過程は無視でき、ホスト材料が一重
項励起状態である場合のみ考慮すればよい。
【0089】
また、ホスト材料の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場
合は蛍光スペクトル)と蛍光発光物質132の吸収スペクトル(一重項基底状態から一重
項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きいことが好ましい。さらに、蛍光
発光物質132のモル吸光係数も高い方が好ましい。このことは、ホスト材料の発光スペ
クトルと、蛍光発光物質132の最も長波長側に現れる吸収帯とが重なることを意味する
。なお、蛍光発光物質132における一重項基底状態から三重項励起状態への直接遷移が
禁制であることから、蛍光発光物質132において三重項励起状態が係わるモル吸光係数
は無視できる量である。このことから、フェルスター機構による蛍光発光物質132の三
重項励起状態へのエネルギー移動過程は無視でき、蛍光発光物質132の一重項励起状態
へのエネルギー移動過程のみ考慮すればよい。すなわち、フェルスター機構においては、
ホスト材料の一重項励起状態から蛍光発光物質132の一重項励起状態へのエネルギー移
動過程を考えればよい。
【0090】
次に、デクスター機構によるエネルギー移動を考える。数式(2)によれば、速度定数
kh*→gを大きくするにはホスト材料の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネル
ギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル)と蛍光発光物質132の吸収スペクトル(一重
項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きい方が良いこ
とがわかる。したがって、エネルギー移動効率の最適化は、ホスト材料(すなわち励起錯
体)の発光スペクトルと、蛍光発光物質132の最も低エネルギー側に現れる吸収帯とが
重なることによって実現される。
【0091】
また、数式(3)に数式(2)を代入すると、デクスター機構におけるエネルギー移動
効率φETは、τに依存することが分かる。デクスター機構は、電子交換に基づくエネル
ギー移動過程であるため、ホスト材料の一重項励起状態から蛍光発光物質132の一重項
励起状態へのエネルギー移動と同様に、ホスト材料の三重項励起状態から蛍光発光物質1
32の三重項励起状態へのエネルギー移動も生じる。
【0092】
本発明の一態様の発光素子においては、蛍光発光物質132は蛍光材料であるため、蛍
光発光物質132の三重項励起状態へのエネルギー移動効率は低いことが好ましい。すな
わち、ホスト材料から蛍光発光物質132へのデクスター機構に基づくエネルギー移動効
率は低いことが好ましく、ホスト材料から蛍光発光物質132へのフェルスター機構に基
づくエネルギー移動効率は高いことが好ましい。
【0093】
既に述べたように、フェルスター機構におけるエネルギー移動効率は、ホスト材料の励
起状態の寿命τに依存しない。一方、デクスター機構におけるエネルギー移動効率は、ホ
スト材料の励起寿命τに依存し、デクスター機構におけるエネルギー移動効率を低下させ
るためには、ホスト材料の励起寿命τは短いことが好ましい。
【0094】
なお、ホスト材料から蛍光発光物質132へのエネルギー移動と同様に、励起錯体から
蛍光発光物質132へのエネルギー移動過程についても、フェルスター機構、及びデクス
ター機構の双方の機構によるエネルギー移動が考えられる。
【0095】
そこで、本発明の一態様の発光素子においては、蛍光発光物質132に効率的にエネル
ギー移動が可能なエネルギードナーとして、励起錯体が形成される組み合わせの第1の有
機化合物131_1および第2の有機化合物131_2を有するホスト材料を用いた発光
素子を提供する。第1の有機化合物131_1および第2の有機化合物131_2が形成
する励起錯体は、一重項励起エネルギー準位と、三重項励起エネルギー準位とが近接して
いるという特徴を有する。そのため、発光層において生成する三重項励起子から一重項励
起子への遷移(逆項間交差)が起こりやすい。したがって、発光層において一重項励起子
の生成確率を高めることができる。さらに、第1の有機化合物131_1および第2の有
機化合物131_2が形成する励起錯体の発光スペクトルと、エネルギーアクセプターと
なる蛍光発光物質132の最も長波長側(低エネルギー側)に現れる吸収帯と、が重なる
と好ましい。上記構成とすることで、励起錯体の一重項励起状態から蛍光発光物質132
の一重項励起状態へのエネルギー移動が生じやすくなる。したがって、蛍光発光物質13
2の一重項励起状態の生成確率を高めることができる。また、蛍光発光物質132が、励
起錯体との近接を阻害する置換基を少なくとも2つ以上有することで、励起錯体の三重項
励起状態から蛍光発光物質132の三重項励起状態へのエネルギー移動効率を低下させる
ことができ、一重項励起状態の生成確率を高めることができる。
【0096】
また、励起錯体が呈する発光のうち、熱活性化遅延蛍光成分における蛍光寿命は短いこ
とが好ましく、具体的には、好ましくは10ns以上50μs以下、より好ましくは10
ns以上40μs以下、さらに好ましくは10ns以上30μs以下である。
【0097】
また、励起錯体が呈する発光のうち、熱活性化遅延蛍光成分が占める割合は高いことが
好ましい。具体的には、励起錯体が呈する発光のうち、熱活性化遅延蛍光成分が占める割
合は5%以上が好ましく、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上であ
る。
【0098】
また、励起錯体の三重項励起エネルギー準位が、第1の有機化合物および第2の有機化
合物の三重項励起エネルギー準位よりも高い位置にあることが好ましい。
【0099】
なお、一重項励起状態と三重項励起状態のエネルギー差が小さい励起錯体の三重項励起
エネルギーは、励起錯体が発する発光波長に相当するエネルギーとして見積もることがで
きる。
【0100】
ここで、第1の有機化合物がベンゾフロピリミジン骨格又はベンゾチエノピリミジン骨
格を含む第1の骨格を有する物質であると、非常に良好な効率で発光を得ることができる
。
【0101】
また、第1の有機化合物は、ベンゾフロピリミジン骨格又はベンゾチエノピリミジン骨
格を含む第1の骨格がベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格又はベンゾチエノ[3,
2-d]ピリミジン骨格を有する物質であることが好ましい。ピリミジンの6位にベンゼ
ン環が導入される骨格となるため、電子輸送性が高まる(すなわち、第1の有機化合物は
正孔輸送性よりも電子輸送性が高くなりやすくなる)ためである。また、LUMO準位が
ピリミジンよりも深くなり、励起錯体の形成に好適となる。
【0102】
また、上記第1の有機化合物は、第1の骨格がベンゾフロピリミジン骨格を含む骨格で
あると、より発光効率の良好な発光素子を得ることができるため好ましい。また、ベンゾ
フロピリミジン骨格は、ベンゾチエノピリミジンよりもわずかにLUMO準位が深くなる
。より好ましくは、当該第1の骨格がベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格である発
光素子である。
【0103】
また、上記ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格又は前記ベンゾチエノ[3,2-
d]ピリミジン骨格は4位で他の骨格と結合していることが好ましい。これにより、ピリ
ミジンの4位および6位が置換される形となるため、電子輸送性が高くなり、LUMO準
位が深くなる。すなわち、励起錯体の形成に好適となる。
【0104】
また、第1の有機化合物は、第1の骨格の他にカルバゾール骨格、ジベンゾチオフェン
骨格及びジベンゾフラン骨格のいずれかを含む第2の骨格を有することが好ましい。なお
、第2の骨格がカルバゾール骨格の場合、当該カルバゾール骨格は9位で、また、第2の
骨格がジベンゾチオフェン骨格又はジベンゾフラン骨格である場合、当該ジベンゾチオフ
ェン骨格又はジベンゾフラン骨格は4位で第1の骨格又は第1の骨格と第2の骨格を繋ぐ
2価の連結基に結合していることが好ましい。これにより、電気化学的に安定な化合物を
得ることができる。
【0105】
また、上記第1の有機化合物は、第1の骨格と、第2の骨格とが、2価の連結基によっ
て接続されていると、第1の有機化合物中での電荷移動励起状態よりも、第1の有機化合
物と第2の有機化合物で構成される励起錯体の形成の方が支配的になりやすいため好まし
い。換言すれば、第1の骨格と第2の骨格を物理的に離すことにより、分子内でのHOM
O-LUMO遷移ではなく、分子間でのHOMO-LUMO遷移(例えば第2の有機化合
物のHOMOから第1の有機化合物のLUMOへの遷移)が支配的になりやすいとも言え
る。当該連結基は、炭素数6乃至炭素数60の2価の連結基であることが好ましく、当該
連結基はさらに、芳香族炭化水素基であることがより好ましい。また、炭素数は、炭素数
6乃至炭素数13であると昇華性に優れるため、より好適である。連結基により第1の骨
格と第2の骨格を離すことと、昇華性とのバランスを考慮すると、これら連結基としては
、ビフェニルジイル基が好ましい。特に、三重項励起準位を高くする観点から、3,3’
-ビフェニルジイル基が好適である。
【0106】
また、上記第1の骨格におけるベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格又はベンゾチ
エノ[3,2-d]ピリミジン骨格は4位で上記連結基と結合していることが好ましい。
【0107】
また、第2の骨格は、カルバゾール骨格を含むことが、本実施の形態の発光素子がより
良好な効率で発光を得ることができるようになるため好ましく、当該骨格は9位が置換さ
れていることが好ましい。特に、当該骨格は、上記連結基に9位で結合するカルバゾール
骨格であることがより好ましい。
【0108】
上述のような第1の有機化合物としては、具体的には下記構造式(100)乃至(61
1)のようなものを挙げることができる。但し、本実施の形態で用いることが可能な第1
の有機化合物は以下の例示に限られない。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
なお、上記ベンゾフロピリミジン骨格又はベンゾチエノピリミジン骨格を含む第1の有
機化合物が、電子輸送性を有する物質であった場合、上述したように第2の有機化合物は
正孔輸送性を有する物質であることが、励起子生成が容易となるため好ましい。この際、
第2の有機化合物は、π電子過剰型複素芳香環骨格又は芳香族アミン骨格を有する物質で
あるとなお良い。
【0116】
第2の有機化合物としては、好ましくは電子輸送性よりも正孔輸送性の方が高い物質で
あり、主として10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する正孔輸送性材料を用いる
ことができる。具体的には、カルバゾール誘導体やインドール誘導体のようなπ電子過剰
型複素芳香族化合物や、芳香族アミン化合物が好ましく、2-[N-(9-フェニルカル
バゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:
PCASF)、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ
]トリフェニルアミン(略称:1’-TNATA)、2,7-ビス[N-(4-ジフェニ
ルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:
DPA2SF)、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N,N’-
ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称:PCA2B)、N-(9,9-ジメチル
-2-ジフェニルアミノ-9H-フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:DP
NF)、N,N’,N’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカ
ルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、2-
[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビ
フルオレン(略称:DPASF)、N,N’-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フ
ェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジアミン(略
称:YGA2F)、NPB、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェ
ニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビ
ス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:
DPAB)、BSPB、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)ト
リフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオ
レン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、N-(9,9-ジメチ
ル-9H-フルオレン-2-イル)-N-{9,9-ジメチル-2-[N’-フェニル-
N’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオレン
-7-イル}フェニルアミン(略称:DFLADFL)、PCzPCA1、3-[N-(
4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(
略称:PCzDPA1)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-
フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、DNTPD、
3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]
-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、PCzPCA2、4-フェニル
-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:
PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾー
ル-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)
-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:
PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カル
バゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、3-[N-(1-ナ
フチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバ
ゾール(略称:PCzPCN1)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-
フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-フルオレン-2-アミン(略称
:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-
イル)フェニル]-スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF
)、N-(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)
-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、N-(1,1
’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イ
ル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBi
F)などの芳香族アミン骨格を有する化合物や、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベン
ゼン(略称:mCP)、CBP、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フ
ェニルカルバゾール(略称:CzTP)、9-フェニル-9H-3-(9-フェニル-9
H-カルバゾール-3-イル)カルバゾール(略称:PCCP)などのカルバゾール骨格
を有する化合物や、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベ
ンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-
フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBT
FLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル
]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨
格を有する化合物や、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジ
ベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-
フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLB
i-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミ
ン骨格を有する化合物やカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また
、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。
【0117】
蛍光発光物質としては、例えば以下のような物質を用いることができる。また、これ以
外の蛍光発光物質も用いることができる。5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-ア
ントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス
[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピ
リジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス〔4-(9
-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル〕ピレン-1,6-ジアミン(略称
:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[
3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-ピレン-1,6-ジア
ミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾ
ール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(
略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル
-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾー
ル-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン
(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-ア
ントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレ
ン、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(略称:TBP)、4-(1
0-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イ
ル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’-(2-tert-ブチル
アントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリ
フェニル-1,4-フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル
-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾー
ル-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-ア
ントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(
略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-
オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称
:DBC1)、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9
-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,1
0-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル
-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフ
ェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミ
ン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)
-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略
称:2DPABPhA)、9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-[
4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-ア
ミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン
(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン、(
略称:DPQd)、ルブレン、2,8-ジ-tert-ブチル-5,11-ビス(4-t
ert-ブチルフェニル)-6,12-ジフェニルテトラセン(略称:TBRb)、5,
12-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン(略
称:BPT)、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-
メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2-{
2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]
キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル
(略称:DCM2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセ
ン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N
’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン
-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6-[2
-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベン
ゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパン
ジニトリル(略称:DCJTI)、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,
7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キ
ノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(
略称:DCJTB)、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エ
テニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、
2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6
,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-
4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)などが挙
げられる。特に、1,6FLPAPrnや1,6mMemFLPAPrnのようなピレン
ジアミン化合物に代表される縮合芳香族ジアミン化合物は、ホールトラップ性が高く、発
光効率や信頼性に優れているため好ましい。
【0118】
なお、上述した通り、ホスト材料(あるいは励起錯体)から蛍光発光物質132へのデ
クスター機構に基づくエネルギー移動効率は低いことが好ましい。デクスター機構の速度
定数は、二分子間の距離の指数関数に反比例する。一般的に、二分子間の距離が1nm以
下ではデクスター機構が優勢となり、1nm以上ではフェルスター機構が優勢となる。し
たがって、デクスター機構におけるエネルギー移動効率を低下させるためには、ホスト材
料と蛍光発光物質132との距離を大きくすることが好ましく、具体的には0.7nm以
上、より好ましくは0.9nm以上、さらに好ましくは1nm以上である。このような観
点から、蛍光発光物質132が、ホスト材料との近接を阻害する置換基を有することが好
ましく、該置換基としては、脂肪族炭化水素が好ましく、より好ましくはアルキル基、さ
らに好ましくは分岐を有するアルキル基である。具体的には、蛍光発光物質132は、炭
素数2以上のアルキル基を少なくとも2つ以上有すると好ましい。あるいは、蛍光発光物
質132は、炭素数3以上10以下の分岐を有するアルキル基を少なくとも2つ以上有す
ると好ましい。あるいは、蛍光発光物質132は、炭素数3以上10以下のシクロアルキ
ル基を少なくとも2つ以上有すると好ましい。具体的には、上記で列挙したTBRbやT
BPが挙げられる。
【0119】
以上のような構成を有する蛍光発光素子は、非常に良好な効率で発光を得ることができ
る。取り出し効率の対策を施さない蛍光発光素子における外部量子効率の理論的限界は、
5~7%と一般に言われているが、それをはるかに超える外部量子効率を示す発光素子を
提供することも本実施の形態の発光素子の構成を用いることで容易に可能となる。
【0120】
また、上述のように、励起錯体は、当該励起錯体を形成する第1の有機化合物と第2の
有機化合物のうち、浅い方のHOMO準位と深い方のLUMO準位との差に相当する一重
項励起エネルギー準位を有するため、適当な準位の組み合わせを選択することによって所
望の蛍光発光物質へ効率良くエネルギー移動することが可能な発光素子を得ることも容易
である。
【0121】
このように、本実施の形態の構成を用いることによって、三重項励起状態を発光に変換
することが可能な高効率の発光素子を、レアメタル等、供給に不安のある材料を用いずに
簡便に得ることが可能となる。また、以上のような特徴を有する発光素子を発光波長のバ
リエーションに大きな制限なく提供することができる。
【0122】
(実施の形態2)
本実施の形態では実施の形態1で説明した発光素子の詳細な構造の例について
図1(A
)(B)を用いて以下に説明する。
【0123】
図1(A)において、発光素子は、第1の電極101と、第2の電極102と、第1の
電極101と第2の電極102との間に設けられた有機化合物を含む層103とから構成
されている。なお、本実施の形態では第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極
102は陰極として機能するものとして、以下説明をする。
【0124】
第1の電極101を陽極として機能させるためには、仕事関数の大きい(具体的には4
.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いて形成する
ことが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indiu
m Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化
スズ、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジ
ウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング
法により成膜されるが、ゾル-ゲル法などを応用して作製しても構わない。作製方法の例
としては、酸化インジウム-酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1乃至20wt%の酸化
亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成する方法などがある。また
、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジ
ウムに対し酸化タングステンを0.5乃至5wt%、酸化亜鉛を0.1乃至1wt%含有
したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することもできる。この他、金(A
u)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブ
デン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、また
は金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。グラフェンも用いることが
できる。なお、後述する複合材料を、有機化合物を含む層103における第1の電極10
1と接する層に用いることで、仕事関数に関わらず、電極材料を選択することができるよ
うになる。
【0125】
有機化合物を含む層103の積層構造については、発光層113が実施の形態1に示し
たような構成となっていれば他は特に限定されない。
図1(A)では例えば、正孔注入層
、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、キャリアブロック層、電荷発生層等を
適宜組み合わせて構成することができる。本実施の形態では、第1の電極101側から正
孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層11
5が順に積層した構成を有する有機化合物を含む層103について説明する。各層を構成
する材料について以下に具体的に示す。
【0126】
正孔注入層111は、正孔注入性を有する物質を含む層である。遷移金属酸化物、元素
周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物(例えばモリブデン酸化物やバナ
ジウム酸化物、ルテニウム酸化物、レニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化
物)等を用いることができる。また、遷移金属あるいは元素周期表における第4族乃至第
8族に属する金属の錯体を用いることもでき、例えばモリブデントリス[1,2-ビス(
トリフルオロメチル)エタン-1,2-ジチオレン](略称:Mo(tfd)3)のよう
なモリブデン錯体が挙げられる。これらの遷移金属酸化物、元素周期表における第4族乃
至第8族に属する金属の酸化物、遷移金属あるいは元素周期表における第4族乃至第8族
に属する金属の錯体は、アクセプタとして作用する。アクセプタは、隣接する正孔輸送層
112(あるいは正孔輸送材料)から、少なくとも電界の印加により電子を引き抜くこと
ができる。さらに、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキ
ノジメタン(略称:F4-TCNQ)、3,6-ジフルオロ-2,5,7,7,8,8-
ヘキサシアノキノジメタン、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-
1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)等の電子
吸引基(ハロゲン基やシアノ基)を有する化合物を用いることができる。この他、フタロ
シアニン(略称:H2Pc)や銅フタロシアニン(略称:CuPC)等のフタロシアニン
系の化合物、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルア
ミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス{4-[ビス(3-メチルフェニ
ル)アミノ]フェニル}-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’
-ジアミン(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、或いはポリ(3,4-エチレ
ンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(略称:PEDOT/PSS)等
の高分子等によっても正孔注入層111を形成することができる。
【0127】
また、正孔注入層111として、正孔輸送性の物質にアクセプタ性物質を含有させた複
合材料を用いることができる。なお、正孔輸送性の物質にアクセプタ性物質を含有させた
ものを用いることにより、電極の仕事関数に依らず電極を形成する材料を選ぶことができ
る。つまり、第1の電極101として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さ
い材料も用いることができるようになる。アクセプタ性物質としては、F4-TCNQ、
クロラニル、HAT-CN等の電子吸引基(ハロゲン基やシアノ基)を有する化合物や、
遷移金属酸化物、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物などを挙げ
ることができる。遷移金属酸化物、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の
酸化物は、HOMOが-5.4eVより低い(深い)正孔輸送性の物質に対してもアクセ
プタ性を示す(少なくとも電界の印加により電子を引き抜くことができる)ため、好適で
ある。
【0128】
上記電子吸引基(ハロゲン基やシアノ基)を有する化合物としては特に、HAT-CN
のように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に
安定であり好ましい。
【0129】
遷移金属酸化物、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物としては
、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タン
グステン、酸化マンガン、酸化レニウムはアクセプタ性が高いため好ましい。中でも特に
、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0130】
複合材料に用いる正孔輸送性の物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導
体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種
々の有機化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正
孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10-6cm2/Vs以
上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。以下では、複合材料における正孔輸
送性の物質として用いることのできる有機化合物の例を具体的に列挙する。
【0131】
複合材料に用いることのできる芳香族アミン化合物としては、N,N’-ジ(p-トリ
ル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4
’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(
略称:DPAB)、N,N’-ビス{4-[ビス(3-メチルフェニル)アミノ]フェニ
ル}-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(略称:
DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェ
ニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。カルバゾール誘導
体としては、具体的には、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フ
ェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[
N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカ
ルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニ
ルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN
1)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5-ト
リス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9-[4-(
10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)
、1,4-ビス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]-2,3,5,6-テトラフェニ
ルベンゼン等を用いることができる。芳香族炭化水素としては、例えば、2-tert-
ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、2-t
ert-ブチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,5
-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2-tert-ブチル-9,
10-ビス(4-フェニルフェニル)アントラセン(略称:t-BuDBA)、9,10
-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10-ジフェニルアントラセ
ン(略称:DPAnth)、2-tert-ブチルアントラセン(略称:t-BuAnt
h)、9,10-ビス(4-メチル-1-ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、
2-tert-ブチル-9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン
、9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-テ
トラメチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメチ
ル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,10
’-ジフェニル-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニル
)-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフェ
ニル)フェニル]-9,9’-ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペ
リレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン等が挙げられる。また
、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。ビニル骨格を有していてもよ
い。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’-ビス(2,2-
ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10-ビス[4-(2,2-
ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0132】
また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェ
ニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニル
アミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](
略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス
(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等の高分子化合物を用いることも
できる。
【0133】
正孔注入層を形成することによって、正孔の注入性が良好となり、駆動電圧の小さい発
光素子を得ることが可能となる。
【0134】
なお、正孔注入層は、上述したアクセプタ材料を単独または他の材料と混合して形成し
ても良い。この場合、アクセプタ材料が正孔輸送層から電子を引き抜き、正孔輸送層に正
孔注入することができる。アクセプタ材料は引き抜いた電子を陽極へ輸送する。
【0135】
正孔輸送層112は、正孔輸送性の物質を含む層である。正孔輸送性の物質としては、
例えば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略
称:NPB)やN,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,
1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’-トリス
(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4
’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン
(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2
-イル)-N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-
(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)など
の芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、正孔輸送性が高く
、主に10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。また、上述の複合材
料における正孔輸送性の物質として挙げた有機化合物も正孔輸送層112に用いることが
できる。また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルト
リフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。なお
、正孔輸送性の物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上
積層したものとしてもよい。
【0136】
発光層113は第1の有機化合物と第2の有機化合物と、蛍光発光物質とを含む層であ
る。各物質の材料、構成などは実施の形態1に記載のとおりである。このような構成を有
することで、本実施の形態の発光素子は、レアメタルなどを用いない蛍光発光素子であり
ながら、非常に良好な外部量子効率を示す。また、発光波長の調整も容易であるため、高
い効率を維持しながら所望の波長帯の発光を得やすいというメリットも有する。
【0137】
電子輸送層114は、電子輸送性を有する材料を含む層である。例えば、ビス(10-
ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(
2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(
略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2
-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[
2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金
属錯体や、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3
,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-
5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、
1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール
-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-
オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、2
,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベン
ゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フ
ェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)な
どのポリアゾール骨格を有する複素環化合物や、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-
イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)
、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f
,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カル
バゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン(略称:
2mCzBPDBq)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピ
リミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス〔3-(4-ジベンゾチエニル
)フェニル〕ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)などのジアジン骨格を
有する複素環化合物や、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル
]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)-フ
ェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物が挙
げられる。上述した中でも、ジアジン骨格を有する複素環化合物やピリジン骨格を有する
複素環化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンやピラジン
)骨格を有する複素環化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。ここに
述べた物質は、電子輸送性が高く、主に10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する
物質である。
【0138】
また、電子輸送層114は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積
層したものとしてもよい。
【0139】
また、電子輸送層と発光層との間に電子キャリアの移動を制御する層を設けても良い。
これは上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質を少量添加し
た層であって、電子キャリアの移動を抑制することによって、キャリアバランスを調節す
ることが可能となる。このような構成は、発光層を電子が突き抜けてしまうことにより発
生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
【0140】
また、電子輸送層114と第2の電極102との間に、第2の電極102に接して電子
注入層115を設けてもよい。電子注入層115としては、フッ化リチウム(LiF)、
フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等のようなアルカリ金属又は
アルカリ土類金属又はそれらの化合物を用いることができる。例えば、電子輸送性を有す
る物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させ
たものを用いることができる。また、電子注入層115にエレクトライドを用いてもよい
。エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高
濃度添加した物質等が挙げられる。なお、電子注入層115として、電子輸送性を有する
物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させたものを用いることに
より、第2の電極102からの電子注入が効率良く行われるためより好ましい。
【0141】
また、電子注入層115の代わりに電荷発生層116を設けても良い(
図1(B))。
電荷発生層116は、電位をかけることによって当該層の陰極側に接する層に正孔を、陽
極側に接する層に電子を注入することができる層のことである。電荷発生層116には、
少なくともP型層117が含まれる。P型層117は、上述の正孔注入層111を構成す
ることができる材料として挙げた複合材料を用いて形成することが好ましい。またP型層
117は、複合材料を構成する材料として上述したアクセプタ材料を含む膜と正孔輸送材
料を含む膜とを積層して構成しても良い。P型層117に電位をかけることによって、電
子輸送層114に電子が、陰極である第2の電極102に正孔が注入され、発光素子が動
作する。この際、電子輸送層114の電荷発生層116に接する位置に、本発明の一態様
の有機化合物を含む層が存在することによって、発光素子の駆動時間の蓄積に伴う輝度低
下が抑制され、寿命の長い発光素子を得ることができる。
【0142】
なお、電荷発生層116はP型層117の他に電子リレー層118及び電子注入バッフ
ァ層119のいずれか一又は両方がもうけられていることが好ましい。
【0143】
電子リレー層118は少なくとも電子輸送性を有する物質を含み、電子注入バッファ層
119とP型層117との相互作用を防いで電子をスムーズに受け渡す機能を有する。電
子リレー層118に含まれる電子輸送性を有する物質のLUMO準位は、P型層117に
おけるアクセプタ性物質のLUMO準位と、電子輸送層114における電荷発生層116
に接する層に含まれる物質のLUMO準位との間であることが好ましい。電子リレー層1
18に用いられる電子輸送性を有する物質におけるLUMO準位の具体的なエネルギー準
位は-5.0eV以上、好ましくは-5.0eV以上-3.0eV以下とするとよい。な
お、電子リレー層118に用いられる電子輸送性を有する物質としてはフタロシアニン系
の材料又は金属-酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0144】
電子注入バッファ層119には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およ
びこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸
リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲ
ン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を
含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0145】
また、電子注入バッファ層119が、電子輸送性を有する物質とドナー性物質を含んで
形成される場合には、ドナー性物質として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金
属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化
物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物
、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、
炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメ
チルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性を有する物質
としては、先に説明した電子輸送層114を構成する材料と同様の材料を用いて形成する
ことができる。また、本発明の有機化合物を用いることもできる。
【0146】
第2の電極102を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV
以下の)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができ
る。このような陰極材料の具体例としては、リチウム(Li)やセシウム(Cs)等のア
ルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr
)等の元素周期表の第1族または第2族に属する元素、およびこれらを含む合金(MgA
g、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属および
これらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、第2の電極102と電子輸送層との間
に、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、
ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ等様々な導電性材料を第
2の電極102として用いることができる。これら導電性材料は、真空蒸着法やスパッタ
リング法などの乾式法、インクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可
能である。また、ゾル-ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペースト
を用いて湿式法で形成してもよい。
【0147】
また、有機化合物を含む層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々
の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、グラビア印刷法、オフセット印刷法
、スクリーン印刷法、インクジェット法またはスピンコート法など用いても構わない。
【0148】
電極についても、ゾル-ゲル法を用いて形成しても良いし、金属材料のペーストを用い
て形成してもよい。また、スパッタリング法や真空蒸着法などの乾式法を用いて形成して
も良い。
【0149】
当該発光素子の発光は、第1の電極101または第2の電極102のいずれか一方また
は両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極101または第2の電極102
のいずれか一方または両方を透光性を有する電極で形成する。
【0150】
なお、第1の電極101と第2の電極102との間に設けられる層の構成は、上記のも
のには限定されない。しかし、発光領域と電極やキャリア注入層に用いられる金属とが近
接することによって生じる消光が抑制されるように、第1の電極101および第2の電極
102から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成が好ましい。
【0151】
また、発光層113に接する正孔輸送層や電子輸送層、特に発光層113における再結
合領域に近い方に接するキャリア輸送層は、発光層で生成した励起子からのエネルギー移
動を抑制するため、その一重項励起エネルギー準位及び三重項励起エネルギー準位が、第
1の有機化合物及び第2の有機化合物のそれらと同等又は大きい物質で構成することが好
ましい。
【0152】
続いて、複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子(積層型素子ともいう)の態様
について、
図1(C)を参照して説明する。この発光素子は、陽極と陰極との間に、複数
の発光ユニットを有する発光素子である。一つの発光ユニットは、
図1(A)で示した有
機化合物を含む層103と同様な構成を有する。つまり、
図1(A)又は
図1(B)で示
した発光素子は、1つの発光ユニットを有する発光素子であり、
図1(C)で示した発光
素子は複数の発光ユニットを有する発光素子であるということができる。
【0153】
図1(C)において、第1の電極501と第2の電極502との間には、第1の発光ユ
ニット511と第2の発光ユニット512が積層されており、第1の発光ユニット511
と第2の発光ユニット512との間には電荷発生層513が設けられている。第1の電極
501と第2の電極502はそれぞれ
図1(A)における第1の電極101と第2の電極
102に相当し、
図1(A)の説明で述べたものと同じものを適用することができる。ま
た、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512は同じ構成であっても異なる
構成であってもよい。
【0154】
電荷発生層513は、第1の電極501と第2の電極502に電圧を印加したときに、
一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入する機能を有する
。すなわち、
図1(C)において、第1の電極の電位の方が第2の電極の電位よりも高く
なるように電圧を印加した場合、電荷発生層513は、第1の発光ユニット511に電子
を注入し、第2の発光ユニット512に正孔を注入するものであればよい。
【0155】
電荷発生層513は、
図1(B)にて説明した電荷発生層116と同様の構成で形成す
ることが好ましい。有機化合物と金属酸化物の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸
送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。なお、発光ユ
ニットの陽極側の面が電荷発生層513に接している場合は、電荷発生層513が発光ユ
ニットの正孔注入層の役割も担うことができるため、発光ユニットは正孔注入層を設けな
くとも良い。
【0156】
また、電子注入バッファ層119を設ける場合、当該層が陽極側の発光ユニットにおけ
る電子注入層の役割を担うため、当該発光ユニットには必ずしも電子注入層を形成する必
要はない。
【0157】
図1(C)では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、3つ以上
の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。本実
施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層51
3で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さら
に長寿命な素子を実現できる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低い発光装置を実現
することができる。
【0158】
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、発光素子全体とし
て、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する発光素子
において、第1の発光ユニットで赤と緑の発光色、第2の発光ユニットで青の発光色を得
ることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも容易である。
【0159】
≪微小光共振器(マイクロキャビティ)構造≫
マイクロキャビティ構造を有する発光素子は、上記一対の電極を、反射電極と半透過・
半反射電極とから構成することにより得られる。反射電極と半透過・半反射電極は上述の
第1の電極と第2の電極に相当する。反射電極と半透過・半反射電極との間には少なくと
も有機化合物を含む層を有し、有機化合物を含む層は少なくとも発光領域となる発光層を
有している。
【0160】
有機化合物を含む層に含まれる発光層から射出される発光は、反射電極と半透過・半反
射電極とによって反射され、共振する。なお、反射電極は、可視光の反射率が40%乃至
100%、好ましくは70%乃至100%であり、かつ抵抗率が1×10-2Ωcm以下
である。また、半透過・半反射電極は、可視光の反射率が20%乃至80%、好ましくは
40%乃至70%であり、かつ抵抗率が1×10-2Ωcm以下である。
【0161】
また、当該発光素子は、透明導電膜や上述の複合材料、キャリア輸送材料などの厚みを
変えることで反射電極と半透過・半反射電極の間の光学的距離を変えることができる。こ
れにより、反射電極と半透過・半反射電極との間において、共振する波長の光を強め、共
振しない波長の光を減衰させることができる。
【0162】
なお、発光層から発する光のうち、反射電極によって反射されて戻ってきた光(第1の
反射光)は、発光層から半透過・半反射電極に直接入射する光(第1の入射光)と大きな
干渉を起こすため、反射電極と発光層の光学的距離を(2n-1)λ/4(ただし、nは
1以上の自然数、λは増幅したい色の波長)に調節することが好ましい。これにより、第
1の反射光と第1の入射光との位相を合わせ発光層からの発光をより増幅させることがで
きる。
【0163】
なお、上記構成においては、有機化合物を含む層に複数の発光層を有する構造であって
も、単一の発光層を有する構造であっても良く、例えば、上述のタンデム型発光素子の構
成と組み合わせて、一つの発光素子に電荷発生層を挟んで複数の有機化合物を含む層を設
け、それぞれの有機化合物を含む層に単数もしくは複数の発光層を形成する構成に適用し
てもよい。
【0164】
≪発光装置≫
本発明の一態様の発光装置について
図2を用いて説明する。なお、
図2(A)は、発光
装置を示す上面図、
図2(B)は
図2(A)をA-BおよびC-Dで切断した断面図であ
る。この発光装置は、発光素子の発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部
(ソース線駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート線駆動回路)603を
含んでいる。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲ま
れた内側は、空間607になっている。
【0165】
なお、引き回し配線608はソース線駆動回路601及びゲート線駆動回路603に入
力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプ
リントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号
等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント
配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光
装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものと
する。
【0166】
次に、断面構造について
図2(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路
部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース線駆動回路601
と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0167】
なお、ソース線駆動回路601はnチャネル型FET623とpチャネル型FET62
4とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、種々のCMOS回路
、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても 良い。また、本実施の形態では、基
板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路
を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0168】
また、画素部602はスイッチング用FET611と、電流制御用FET612とその
ドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成されてい
るが、これに限定されず、3つ以上のFETと、容量素子とを組み合わせた画素部として
もよい。
【0169】
FETに用いる半導体の種類及び結晶性については特に限定されず、非晶質半導体を用
いてもよいし、結晶性半導体を用いてもよい。FETに用いる半導体の例としては、第1
3族半導体、第14族半導体、化合物半導体、酸化物半導体、有機半導体材料を用いるこ
とができるが、特に、酸化物半導体を用いると好ましい。該酸化物半導体としては、例え
ば、In-Ga酸化物、In-M-Zn酸化物(Mは、Al、Ga、Y、Zr、La、C
e、またはNd)等が挙げられる。なお、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは
2.5eV以上、さらに好ましくは3eV以上の酸化物半導体材料を用いることで、トラ
ンジスタのオフ電流を低減することができるため、好ましい構成である。
【0170】
なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポ
ジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成することができる。
【0171】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有
する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性ア
クリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm乃至3μm)を
有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型の感光性樹脂
、或いはポジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
【0172】
第1の電極613上には、有機化合物を含む層616及び第2の電極617がそれぞれ
形成されている。これらはそれぞれ
図1(A)で説明した第1の電極101、有機化合物
を含む層103及び第2の電極102又は
図1(C)で説明した第1の電極501、有機
化合物を含む層503及び第2の電極502に相当する。有機化合物を含む層616は実
施の形態1で記載したような構成を有することが好ましい。
【0173】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、
素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素
子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されてお
り、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填され
る場合もある。封止基板604には凹部を形成し、そこに乾燥材を設けると水分の影響に
よる劣化を抑制することができ、好ましい構成である。
【0174】
シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。また、こ
れらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、素子
基板610及び封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(
Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライ
ド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0175】
例えば、本明細書等において、様々な基板を用いて、トランジスタや発光素子を形成す
ることが出来る。基板の種類は、特定のものに限定されることはない。その基板の一例と
しては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、
石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル
・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性
基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどがある。ガラ
ス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソ
ーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの例
としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN
)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポ
リプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポ
リイミド、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。特に、半導体
基板、単結晶基板、又はSOI基板などを用いてトランジスタを製造することによって、
特性、サイズ、又は形状などのばらつきが少なく、電流能力が高く、サイズの小さいトラ
ンジスタを製造することができる。このようなトランジスタによって回路を構成すると、
回路の低消費電力化、又は回路の高集積化を図ることができる。
【0176】
また、基板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタや発光素子
を形成してもよい。または、基板とトランジスタの間や、基板と発光素子の間に剥離層を
設けてもよい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板よ
り分離し、他の基板に転載するために用いることができる。その際、トランジスタは耐熱
性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タング
ステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造の構成や、基板上にポリイミド等の有機
樹脂膜が形成された構成等を用いることができる。
【0177】
つまり、ある基板を用いてトランジスタや発光素子を形成し、その後、別の基板にトラ
ンジスタや発光素子を転置し、別の基板上にトランジスタや発光素子を配置してもよい。
トランジスタや発光素子が転置される基板の一例としては、上述したトランジスタを形成
することが可能な基板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイ
ミドフィルム基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(
ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レ
ーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などがある。これら
の基板を用いることにより、特性のよいトランジスタの形成、消費電力の小さいトランジ
スタの形成、壊れにくい装置の製造、耐熱性の付与、軽量化、又は薄型化を図ることがで
きる。
【0178】
図3には白色発光を呈する発光素子を形成し、着色層(カラーフィルタ)等を設けるこ
とによってフルカラー化した発光装置の例を示す。
図3(A)には基板1001、下地絶
縁膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート電極1006、1007、1008、第1
の層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜1021、周辺部1042、画素部1040、
駆動回路部1041、発光素子の第1の電極1024W、1024R、1024G、10
24B、隔壁1025、有機化合物を含む層1028、発光素子の第2の電極1029、
封止基板1031、シール材1032などが図示されている。
【0179】
また、
図3(A)では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青
色の着色層1034B)は透明な基材1033に設けている。また、黒色層(ブラックマ
トリックス)1035をさらに設けても良い。着色層及び黒色層が設けられた透明な基材
1033は、位置合わせし、基板1001に固定する。なお、着色層、及び黒色層は、オ
ーバーコート層1036で覆われている。また、
図3(A)においては、光が着色層を透
過せずに外部へと出る発光層と、各色の着色層を透過して外部に光が出る発光層とがあり
、着色層を透過しない光は白、着色層を透過する光は赤、青、緑となることから、4色の
画素で映像を表現することができる。
【0180】
なお、本発明の一態様の発光素子は、発光効率の高い発光素子とすることができ、消費
電力の小さな発光素子とすることもできるため、当該発光素子を用いた発光装置は消費電
力の小さい発光装置とすることができる。また、りん光発光物質を用いた発光装置と比較
して、安価で供給の安定した発光装置とすることができる。
【0181】
図3(B)では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着
色層1034B)をゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜1020との間に形成する
例を示した。このように、着色層は基板1001と封止基板1031の間に設けられてい
ても良い。
【0182】
また、以上に説明した発光装置では、FETが形成されている基板1001側に光を取
り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としたが、封止基板1031側に発光を
取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置としても良い。トップエミッション型
の発光装置の断面図を
図4に示す。この場合、基板1001は光を通さない基板を用いる
ことができる。FETと発光素子の陽極とを接続する接続電極を作製するまでは、ボトム
エミッション型の発光装置と同様に形成する。その後、第3の層間絶縁膜1037を電極
1022を覆って形成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。第3の層間
絶縁膜1037は第2の層間絶縁膜と同様の材料の他、他の様々な材料を用いて形成する
ことができる。
【0183】
発光素子の第1の電極1024W、1024R、1024G、1024Bはここでは陽
極とするが、陰極であっても構わない。また、
図4のようなトップエミッション型の発光
装置である場合、第1の電極を反射電極とすることが好ましい。有機化合物を含む層10
28の構成は、
図1(A)の有機化合物を含む層103または
図1(B)の有機化合物を
含む層503として説明したような構成とし、且つ、白色の発光が得られるような素子構
造とする。
【0184】
図4のようなトップエミッションの構造では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の
着色層1034G、青色の着色層1034B)を設けた封止基板1031で封止を行うこ
とができる。封止基板1031には画素と画素との間に位置するように黒色層(ブラック
マトリックス)1035を設けても良い。着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色
層1034G、青色の着色層1034B)や黒色層はオーバーコート層によって覆われて
いても良い。なお封止基板1031は透光性を有する基板を用いることとする。
【0185】
また、ここでは赤、緑、青、白の4色でフルカラー表示を行う例を示したが特に限定さ
れず、赤、緑、青の3色や赤、緑、青、黄の4色でフルカラー表示を行ってもよい。
【0186】
図5には本発明の一態様であるパッシブマトリクス型の発光装置を示す。なお、
図5(
A)は、発光装置を示す斜視図、
図5(B)は
図5(A)をX-Yで切断した断面図であ
る。
図5において、基板951上には、電極952と電極956との間には有機化合物を
含む層955が設けられている。電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そし
て、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面
に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有
する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の
面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方
向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層9
54を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。
【0187】
以上、説明した発光装置は、マトリクス状に配置された多数の微小な発光素子を、画素
部に形成されたFETでそれぞれ制御することが可能であるため、画像の表現を行う表示
装置として好適に利用できる発光装置である。
【0188】
≪照明装置≫
本発明の一態様である照明装置を
図6を参照しながら説明する。
図6(B)は照明装置
の上面図、
図6(A)は
図6(B)におけるe-f断面図である。
【0189】
当該照明装置は、支持体である透光性を有する基板400上に、第1の電極401が形
成されている。第1の電極401は
図1(A)、(B)の第1の電極101に相当する。
第1の電極401側から発光を取り出す場合、第1の電極401は透光性を有する材料に
より形成する。
【0190】
第2の電極404に電圧を供給するためのパッド412が基板400上に形成される。
【0191】
第1の電極401上には有機化合物を含む層403が形成されている。有機化合物を含
む層403は
図1(A)、(C)の有機化合物を含む層103又は有機化合物を含む層5
03などに相当する。なお、これらの構成については当該記載を参照されたい。
【0192】
有機化合物を含む層403を覆って第2の電極404を形成する。第2の電極404は
図1(A)の第2の電極102に相当する。発光を第1の電極401側から取り出す場合
、第2の電極404は反射率の高い材料を含んで形成される。第2の電極404はパッド
412と接続することによって、電圧が供給される。
【0193】
第1の電極401、有機化合物を含む層403及び第2の電極404によって発光素子
が形成される。当該発光素子を、シール材405、406を用いて封止基板407を固着
し、封止することによって照明装置が完成する。シール材405、406はどちらか一方
でもかまわない。また、内側のシール材406(
図6(B)では図示せず)には乾燥剤を
混ぜることもでき、これにより、水分を吸着することができ、信頼性の向上につながる。
【0194】
また、パッド412と第1の電極401の一部をシール材405、406の外に伸張し
て設けることによって、外部入力端子とすることができる。また、その上にコンバーター
などを搭載したICチップ420などを設けても良い。
【0195】
≪電子機器≫
本発明の一態様である電子機器の例について説明する。電子機器として、例えば、テレ
ビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモ
ニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(
携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パ
チンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を以下に示す
。
【0196】
図7(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体71
01に表示部7103が組み込まれている。また、ここでは、スタンド7105により筐
体7101を支持した構成を示している。表示部7103により、映像を表示することが
可能であり、表示部7103は、発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。
【0197】
テレビジョン装置の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操
作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー710
9により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像
を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機711
0から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0198】
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一
般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通
信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信
者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0199】
図7(B1)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、
キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含
む。なお、このコンピュータは、発光素子をマトリクス状に配列して表示部7203に用
いることにより作製される。
図7(B1)のコンピュータは、
図7(B2)のような形態
であっても良い。
図7(B2)のコンピュータは、キーボード7204、ポインティング
デバイス7206の代わりに第2の表示部7210が設けられている。第2の表示部72
10はタッチパネル式となっており、第2の表示部7210に表示された入力用の表示を
指や専用のペンで操作することによって入力を行うことができる。また、第2の表示部7
210は入力用表示だけでなく、その他の画像を表示することも可能である。また表示部
7203もタッチパネルであっても良い。二つの画面がヒンジで接続されていることによ
って、収納や運搬をする際に画面を傷つける、破損するなどのトラブルの発生も防止する
ことができる。
【0200】
図7(C)は、携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末は、筐体7401に組
み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピー
カ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯情報端末は、発光素子をマト
リクス状に配列して作製された表示部7402を有している。
【0201】
図7(C)に示す携帯情報端末は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入
力することができる構成とすることもできる。この場合、電話を掛ける、或いはメールを
作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0202】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする
表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表
示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0203】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力
を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場
合、表示部7402の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが
好ましい。
【0204】
また、携帯電話機内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する
検出装置を設けることで、携帯電話機の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の
画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0205】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操
作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類
によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画
のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0206】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表
示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モー
ドから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0207】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7
402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。
また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用
光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0208】
なお、上記電子機器は、本明細書中に示した構成を適宜組み合わせて用いることができ
る。
【0209】
また、表示部に本発明の一態様の発光素子を用いることが好ましい。当該発光素子は発
光効率が良好な発光素子とすることが可能である。また、駆動電圧の小さい発光素子とす
ることが可能である。このため、本発明の一態様の発光素子を含む電子機器は消費電力の
小さい電子機器とすることができる。
【0210】
図8は、発光素子をバックライトに適用した液晶表示装置の一例である。
図8に示した
液晶表示装置は、筐体901、液晶層902、バックライトユニット903、筐体904
を有し、液晶層902は、ドライバIC905と接続されている。バックライトユニット
903には、発光素子が用いられおり、端子906により、電流が供給されている。
【0211】
発光素子には本発明の一態様の発光素子を用いることが好ましく、当該発光素子を液晶
表示装置のバックライトに適用することにより、消費電力の低減されたバックライトが得
られる。
【0212】
図9は、本発明の一態様である電気スタンドの例である。
図9に示す電気スタンドは、
筐体2001と、光源2002を有し、光源2002として発光素子を用いた照明装置が
用いられている。
【0213】
図10は、室内の照明装置3001の例である。当該照明装置3001には本発明の一
態様の発光素子を用いることが好ましい。
【0214】
本発明の一態様である自動車を
図11に示す。当該自動車はフロントガラスやダッシュ
ボードに発光素子が搭載されている。表示領域5000乃至表示領域5005は発光素子
を用いて設けられた表示領域である。本発明の一態様の発光素子を用いることが好ましく
、当該発光素子を用いることによって消費電力の小さい発光素子とすることができる。ま
た、これにより表示領域5000乃至表示領域5005は消費電力を抑えられるため、車
載に好適である。
【0215】
表示領域5000と表示領域5001は、自動車のフロントガラスに設けられた、発光
素子を用いる表示装置である。この発光素子を、第1の電極と第2の電極を透光性を有す
る電極で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態の表示
装置とすることができる。シースルー状態の表示であれば、自動車のフロントガラスに設
置したとしても、視界の妨げになることなく設置することができる。なお、駆動のための
トランジスタなどを設ける場合には、有機半導体材料による有機トランジスタや、酸化物
半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するトランジスタを用いると良い。
【0216】
表示領域5002はピラー部分に設けられた発光素子を用いる表示装置である。表示領
域5002には、車体に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、ピラー
で遮られた視界を補完することができる。また、同様に、ダッシュボード部分に設けられ
た表示領域5003は車体によって遮られた視界を、自動車の外側に設けられた撮像手段
からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を高めることができる。見えな
い部分を補完するように映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行う
ことができる。
【0217】
表示領域5004や表示領域5005はナビゲーション情報、速度計や回転数、走行距
離、給油量、ギア状態、空調の設定など、その他様々な情報を提供することができる。表
示は使用者の好みに合わせて適宜その表示項目やレイアウトを変更することができる。な
お、これら情報は表示領域5000乃至表示領域5003にも設けることができる。また
、表示領域5000乃至表示領域5005は照明装置として用いることも可能である。
【0218】
図12(A)及び
図12(B)は2つ折り可能なタブレット型端末の一例である。
図1
2(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a
、表示部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省
電力モード切り替えスイッチ9036、留め具9033、を有する。なお、当該タブレッ
ト端末は、本発明の一態様の発光素子を備えた発光装置を表示部9631a、表示部96
31bの一方又は両方に用いることにより作製される。
【0219】
表示部9631aは、一部をタッチパネル領域9632aとすることができ、表示され
た操作キー9637にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部963
1aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域
がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部963
1aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部96
31aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示
画面として用いることができる。
【0220】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一
部をタッチパネル領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード
表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで
表示部9631bにキーボードボタンを表示することができる。
【0221】
また、タッチパネル領域9632aとタッチパネル領域9632bに対して同時にタッ
チ入力することもできる。
【0222】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向き
を切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替え
スイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外
光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光セ
ンサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置
を内蔵させてもよい。
【0223】
また、
図12(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示
しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表
示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネ
ルとしてもよい。
【0224】
図12(B)は、閉じた状態であり、本実施の形態におけるタブレット型端末では、筐
体9630、太陽電池9633、充放電制御回路9634、バッテリー9635、DCD
Cコンバータ9636を備える例を示す。なお、
図12(B)では充放電制御回路963
4の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成について
示している。
【0225】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態
にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、
耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0226】
また、この他にも
図12(A)及び
図12(B)に示したタブレット型端末は、様々な
情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻な
どを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ
入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有する
ことができる。
【0227】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル
、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は
、筐体9630の一面または二面に設けられていると効率的なバッテリー9635の充電
を行う構成とすることができるため好適である。
【0228】
また、
図12(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について
図12(
C)にブロック図を示し説明する。
図12(C)には、太陽電池9633、バッテリー9
635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9638、スイッチSW1乃至SW3
、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ963
6、コンバータ9638、スイッチSW1乃至SW3が、
図12(B)に示す充放電制御
回路9634に対応する箇所となる。
【0229】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する
。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDC
DCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に
太陽電池9633で充電された電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コン
バータ9638で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また
、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバ
ッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0230】
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、発電手段は特に
限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電
手段によってバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。無線(非接触)で電
力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて
行う構成としてもよく、発電手段を有さなくとも良い。
【0231】
また、上記表示部9631を具備していれば、
図12に示した形状のタブレット型端末
に限定されない。
【0232】
また、
図13(A)~(C)に、折りたたみ可能な携帯情報端末9310を示す。
図1
3(A)に展開した状態の携帯情報端末9310を示す。
図13(B)に展開した状態又
は折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の携帯情報端末9310を示す
。
図13(C)に折りたたんだ状態の携帯情報端末9310を示す。携帯情報端末931
0は、折りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領
域により表示の一覧性に優れる。
【0233】
表示パネル9311はヒンジ9313によって連結された3つの筐体9315に支持さ
れている。なお、表示パネル9311は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパ
ネル(入出力装置)であってもよい。また、表示パネル9311は、ヒンジ9313を介
して2つの筐体9315間を屈曲させることにより、携帯情報端末9310を展開した状
態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。本発明の一態様の発光装置
を表示パネル9311に用いることができる。表示パネル9311における表示領域93
12は折りたたんだ状態の携帯情報端末9310の側面に位置する表示領域である。表示
領域9312には、情報アイコンや使用頻度の高いアプリやプログラムのショートカット
などを表示させることができ、情報の確認やアプリなどの起動をスムーズに行うことがで
きる。
【実施例1】
【0234】
本実施例では、実施の形態1で説明した本発明の一態様の発光素子である発光素子1乃
至発光素子4について説明する。発光素子1乃至発光素子4で用いた有機化合物の構造式
を以下に示す。
【0235】
【0236】
(発光素子1の作製方法)
まず、ガラス基板上に、ケイ素もしくは酸化ケイ素を含むインジウム錫酸化物(ITS
O)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極101を形成した。なお、その膜厚は1
10nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0237】
次に、基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、20
0℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0238】
その後、10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸
着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程
度放冷した。
【0239】
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、第1の電極101が形成
された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10-4Pa程度まで
減圧した後、第1の電極101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により上記構造式(i)で
表される4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフ
ェン)(略称:DBT3P-II)と酸化モリブデン(VI) とを重量比4:2(=D
BT3P-II:酸化モリブデン)となるように60nm共蒸着して正孔注入層111を
形成した。
【0240】
次に、正孔注入層111上に、上記構造式(ii)で表される4-フェニル-4’-(
9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を膜厚
20nmとなるように成膜し、正孔輸送層112を形成した。
【0241】
さらに、正孔輸送層112上に、上記構造式(iii)で表される4-{3-[3’-
(9H-カルバゾール-9-イル)]ビフェニル-3-イル}ベンゾフロ[3,2-d]
ピリミジン(略称:4mCzBPBfpm)と上記構造式(iv)で表されるN-(1,
1’-ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-
カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBB
iF)と、上記構造式(iv)で表される2,8-ジ-tert-ブチル-5,11-ビ
ス(4-tert-ブチルフェニル)-6,12-ジフェニルテトラセン(略称:TBR
b)とを、重量比0.8:0.2:0.01(=4mCzBPBfpm:PCBBiF:
TBRb)となるように40nm共蒸着して発光層113を形成した。
【0242】
その後、発光層113上に電子輸送層114として4mCzBPBfpmを20nm成
膜したのち、電子注入層115として上記構造式(v)で表されるバソフェナントロリン
(略称:BPhen)を膜厚10nmとなるように成膜した。
【0243】
電子輸送層及び電子注入層115を形成した後、フッ化リチウム(LiF)を1nmの
膜厚となるように蒸着し、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで
第2の電極102を形成し、本実施例の発光素子1を作製した。
【0244】
(発光素子2の作製方法)
発光素子2は発光素子1の発光層113におけるPCBBiFを、上記構造式(vii
)で表されるN-(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2
-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)に変え
た他は発光素子1と同様に作製した。
【0245】
(発光素子3の作製方法)
発光素子3は発光素子1の発光層113におけるPCBBiFを、上記構造式(vii
i)で表される2-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミ
ノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:PCASF)に変えた他は発光素子1と同
様に作製した。
【0246】
(発光素子4の作製方法)
発光素子4は発光素子1の発光層113におけるPCBBiFを、上記構造式(ix)
で表される3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]
-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)に変えた他は発光素子1と同様に
作製した。
【0247】
発光素子1乃至発光素子4の素子構造を以下の表にまとめる。
【0248】
【0249】
発光素子1乃至発光素子4を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が
大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し
、封止時にUV処理、80℃にて1時間熱処理)を行った後、これら発光素子の初期特性
について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0250】
発光素子1乃至発光素子4の輝度-電流密度特性を
図14に、電流効率-輝度特性を図
15に、輝度-電圧特性を
図16に、電流-電圧特性を
図17に、外部量子効率-輝度特
性を
図18に、発光スペクトルを
図19に示す。また、各発光素子の1000cd/m
2
付近における主要な特性を表2に示す。
【0251】
【0252】
図14乃至
図19及び表2より、いずれの発光素子も良好な特性の発光素子であること
がわかった。どの発光素子も、光取出し効率30%と仮定した場合の蛍光発光素子の理論
的限界値7.5%を大きく超えた外部量子効率を示し、特に発光素子3は外部量子効率の
最大値が19.3%と非常に良好な効率を示した。なお、これら発光素子1乃至発光素子
4は光取出し効率向上のための特別な構造を有していないため、光取出し効率は上記仮定
と同様の30%程度と見積もられる。また、駆動電圧はいずれも3.0Vであり、非常に
低い電圧で駆動できていることが分かる。
【0253】
このように、蛍光発光物質のエネルギードナーとして励起錯体を用い、励起錯体を形成
する2つの有機化合物のうち、一方がベンゾフロピリミジン骨格又はベンゾチエノピリミ
ジン骨格を含む第1の骨格を有する物質である本発明の一態様の発光素子は非常に発光効
率の良好な蛍光発光素子とすることができる。また、低い電圧で駆動することができる。
【0254】
なお、ここで、各素子の発光層に含まれる第1の有機化合物と第2の有機化合物及びそ
れらが形成する励起錯体について
図21を用いて説明する。
図21は発光素子1乃至発光
素子4に用いた第1の有機化合物と第2の有機化合物それぞれの薄膜のフォトルミネッセ
ンス(PL)スペクトルと、当該第1の有機化合物と第2の有機化合物が混合された膜を
発光層として有する発光素子のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルである。
【0255】
図21(A)には4mCzBPBfpm薄膜とPCBBiF薄膜のPLスペクトル、及
びこれらを発光層に用いた発光素子AのELスペクトルが、
図21(B)には4mCzB
PBfpm薄膜とPCBiF薄膜のPLスペクトル、及びこれらを発光層に用いた発光素
子BのELスペクトルが、
図21(C)には4mCzBPBfpm薄膜とPCASF薄膜
のPLスペクトル、及びこれらを発光層に用いた発光素子CのELスペクトルが、
図21
(D)は4mCzBPBfpm薄膜とPCzPCA1薄膜のPLスペクトル、及びこれら
を発光層に用いた発光素子DのELスペクトルが示されている。
【0256】
なお、各々のグラフにおいてELスペクトルを測定した素子の発光層には発光素子1乃
至発光素子4で用いた蛍光発光物質であるTBRbは用いられていない。また、上記EL
スペクトルを測定した発光素子A乃至Dは、各々発光素子1乃至4に対応し、その素子構
造は、対応する発光素子からTBRbのみを抜いた構造と同一である。
【0257】
この結果より、素子のELスペクトルは
図21(A)乃至(D)いずれにおいても、第
1の有機化合物、第2の有機化合物、それぞれ単独のPLスペクトルよりも長波長側に位
置していることがわかった。
【0258】
また、そのスペクトルの発光ピークは一つであり、単一の状態からの発光であることもわ
かる。このことから、本実施例の発光素子に用いられた第1の有機化合物と第2の有機化
合物は励起錯体を形成している蓋然性が高いことがわかる。
【0259】
このように、本実施例における発光素子1乃至4は、発光層において第1の有機化合物
及び第2の有機化合物が励起錯体を形成し、当該励起錯体から蛍光発光物質へのエネルギ
ー移動が行われることによって非常に効率の良好な発光素子となっていることがわかる。
【0260】
なお、薄膜のPLスペクトルと素子のELスペクトルでは多少ピーク位置やスペクトル
形状に違いが見受けられるが、これらが励起錯体を形成する可能性を論じるにあたって大
きな影響を及ぼすほどの差ではない。
【符号の説明】
【0261】
101 第1の電極
102 第2の電極
103 有機化合物を含む層
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
115 電子注入層
116 電荷発生層
131_1 第1の有機化合物
131_2 第2の有機化合物
132 蛍光発光物質
400 基板
401 第1の電極
403 有機化合物を含む層
404 第2の電極
405 シール材
406 シール材
407 封止基板
412 パッド
420 ICチップ
501 第1の電極
502 第2の電極
503 有機化合物を含む層
511 第1の発光ユニット
512 第2の発光ユニット
513 電荷発生層
601 駆動回路部(ソース線駆動回路)
602 画素部
603 駆動回路部(ゲート線駆動回路)
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 配線
609 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
610 素子基板
611 スイッチング用FET
612 電流制御用FET
613 第1の電極
614 絶縁物
616 有機化合物を含む層
617 第2の電極
618 発光素子
623 nチャネル型FET
624 pチャネル型FET
901 筐体
902 液晶層
903 バックライトユニット
904 筐体
905 ドライバIC
906 端子
9310 携帯情報端末
9311 表示パネル
9312 表示領域
9313 ヒンジ
9315 筐体
951 基板
952 電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 有機化合物を含む層
956 電極
1001 基板
1002 下地絶縁膜
1003 ゲート絶縁膜
1006 ゲート電極
1007 ゲート電極
1008 ゲート電極
1020 第1の層間絶縁膜
1021 第2の層間絶縁膜
1022 電極
1024W 発光素子の第1の電極
1024R 発光素子の第1の電極
1024G 発光素子の第1の電極
1024B 発光素子の第1の電極
1025 隔壁
1028 有機化合物を含む層
1029 発光素子の第2の電極
1031 封止基板
1032 シール材
1033 透明な基材
1034R 赤色の着色層
1034G 緑色の着色層
1034B 青色の着色層
1035 黒色層(ブラックマトリックス)
1036 オーバーコート層
1037 第3の層間絶縁膜
1040 画素部
1041 駆動回路部
1042 周辺部
2001 筐体
2002 光源
3001 照明装置
5000 表示領域
5001 表示領域
5002 表示領域
5003 表示領域
5004 表示領域
5005 表示領域
7101 筐体
7103 表示部
7105 スタンド
7107 表示部
7109 操作キー
7110 リモコン操作機
7201 本体
7202 筐体
7203 表示部
7204 キーボード
7205 外部接続ポート
7206 ポインティングデバイス
7210 第2の表示部
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作ボタン
7404 外部接続ポート
7405 スピーカ
7406 マイク
9033 留め具
9034 スイッチ
9035 電源スイッチ
9036 スイッチ
9630 筐体
9631 表示部
9631a 表示部
9631b 表示部
9632a タッチパネル領域
9632b タッチパネル領域
9633 太陽電池
9634 充放電制御回路
9635 バッテリー
9636 DCDCコンバータ
9638 コンバータ
9637 操作キー
9639 ボタン