(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】圧力補償手段があるフレキシブルガイドを備える計時器用調速メンバー
(51)【国際特許分類】
G04B 17/04 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
G04B17/04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023105654
(22)【出願日】2023-06-28
【審査請求日】2023-06-28
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャンニ・ディ ドメニコ
(72)【発明者】
【氏名】バティスト・イノー
(72)【発明者】
【氏名】モハマド フセイン・カーロバイヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-リュック・エルフェ
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ウィンクレ
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-97417(JP,A)
【文献】特開2022-94312(JP,A)
【文献】スイス国特許出願公開第716434(CH,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/04-17/10
G04B 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用ムーブメントのための調速メンバー(1)であって、
バランスのような振動錘(19)と、フレキシブルガイド(2)とを備え、
前記フレキシブルガイド(2)は、剛性支持体(3)を前記振動錘(19)に接続して前記振動錘(19)が仮想ピボットのまわりの回転運動を行うことを可能にする少なくとも2つのフレキシブルブレード(9)を備え、
前記調速メンバー(1)は、外圧を補償する弾性補償デバイス(50)を備え、
前記弾性補償デバイス(50)は、前記剛性支持体(3)と直列に配置されて、前記調速メンバー(1)を計時器用ムーブメントに固定する固定手段(7)に前記剛性支持体(3)を接続するように構成しており、
前記弾性補償デバイス(50)は、外圧に応じて自身の剛性を調整して、前記調速メンバー(1)に対する外圧の影響を補償するように構成している
ことを特徴とする調速メンバー。
【請求項2】
前記弾性補償デバイス(50)は、前記剛性支持体(3)と前記固定手段(7)の間に配置される弾性要素(5)と、外圧に応じて前記弾性要素(5)に可変の力又はトルクを与えるための予応力手段(6)とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の調速メンバー。
【請求項3】
前記予応力手段(6)は、外圧に応じて体積が変わるアネロイドカプセル(10)を備え、これによって、外圧に応じて可変の力又はトルクを伝達する
ことを特徴とする請求項2に記載の調速メンバー。
【請求項4】
前記予応力手段(6)は、可動な前記剛性支持体(3)と前記アネロイドカプセル(10)に接続されるばね部を備え、
このばね部は、前記剛性支持体(3)を利用して力又はトルクを前記弾性要素(5)に伝達する
ことを特徴とする請求項3に記載の調速メンバー。
【請求項5】
前記アネロイドカプセルは、互いに少なくとも1つのばね(16)によって接続される可動壁(13)と不動壁(15)を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の調速メンバー。
【請求項6】
前記ばね部は、前記アネロイドカプセル(10)と、可動な前記剛性支持体(3)との間に直列に配置される単一のフレキシブルブレード(11)と変換機構(33)を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の調速メンバー。
【請求項7】
前記可動壁(13)は、前記ばね部の前記変換機構(33)に接続される
ことを特徴とする請求項6に記載の調速メンバー。
【請求項8】
前記弾性要素(5)は、前記剛性支持体(3)を前記固定手段(7)に接続する非交差ブレード対(4)を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の調速メンバー。
【請求項9】
前記予応力手段(6)は、前記弾性要素(5)の前記非交差ブレード
対(4)の間に配置される
ことを特徴とする請求項8に記載の調速メンバー。
【請求項10】
主フレキシブルブレードである、前記フレキシブルガイド(2)の2つのブレード(9)は、交差している
ことを特徴とする請求項1に記載の調速メンバー。
【請求項11】
前記調速メンバー(1)は、前記振動錘(19)を除いて、実質的に同じ平面内に延在している
ことを特徴とする請求項1に記載の調速メンバー。
【請求項12】
請求項1に記載の調速メンバー(1)を備える
ことを特徴とする計時器用ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力補償手段があるフレキシブルガイドを備える計時器用調速メンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
今日の機械式の携行型時計(例、腕時計、懐中時計)の多くは、バランスばねとスイス式レバーエスケープを搭載している。バランスばねは、携行型時計のタイムベースを構成する。また、バランスばねは、共振器や調速メンバーとも呼ばれる。
【0003】
エスケープには、主に、共振器の往復運動を維持すること、この往復運動をカウントすること、の2つの機能がある。
【0004】
調速メンバーを構成するためには、慣性要素と、ガイド要素と、弾性戻し要素が必要である。伝統的に、バランスによって構成している慣性要素に対して、渦巻きばねが弾性戻し要素として機能する。このバランスは、ピボットによって回転ガイドされ、このピボットは、概して、ルビー製のプレーンベアリング内にて回転する。
【0005】
現在は、フレキシブルガイドをばね部として用いて、仮想ピボットを形成している。仮想ピボットを用いるフレキシブルガイドによって、計時器用共振器を大幅に改良することが可能となる。最も単純なものは、概して垂直に、互いに交差するまっすぐなブレードがある2つのガイドデバイスによって構成する交差型ブレードガイドである。これらの2つのブレードは、2つの異なる平面内にある3次元的なものであったり同じ平面内にあってその交差点にて溶接されるような2次元的なものであったりする。しかし、非交差型のまっすぐなブレードを備えるRCC(「リモートセンターコンプライアンス」の略)タイプの非交差ブレードガイドも存在する。このような共振器は、欧州特許文献EP2911012、EP14199039、EP16155039に記載されている。
【0006】
しかし、このような機械式共振器は、動作中に外部パラメーターの変化によって外乱を受け、このことによって共振器の振動数が変動することがある。このようなパラメーターは、例えば、温度、圧力、湿度、重力の向きである。共振器の振動数が変動すると、時間の計測に誤差が発生する。
【0007】
例えば、スイス特許文献CH704687は、渦巻きばねと、温度に起因する渦巻きばねの変形を補正するためのバランスばねスタッドの位置を補正するメンバーとを備える調速メンバーについて記載している。
【0008】
現時点において、周囲の圧力の変動を補償するように構成している補償手段を備える調速メンバーは存在しない。したがって、高度などのために圧力が変わると、圧力の差が調速メンバーの空気力学的摩擦を変えるために、調速メンバーの精度が悪くなる。例えば、圧力が大きくなると、調速メンバーの振動数が減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、精密でありフレキシブルガイドに適応可能である圧力補償手段があるフレキシブルガイドを備える計時器用調速メンバーを提供することによって、前記課題のすべて又は一部を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、本発明は、計時器用ムーブメントのための調速メンバーに関し、この調速メンバーは、バランスのような振動錘と、フレキシブルガイドとを備え、前記フレキシブルガイドは、剛性支持体を前記振動錘に接続して前記振動錘が仮想ピボットのまわりの回転運動を行うことを可能にする少なくとも2つのフレキシブルブレードを備える。
【0011】
本発明は、前記調速メンバーが、外圧を補償する弾性補償デバイスを備え、前記弾性補償デバイスが、前記剛性支持体と直列に配置されて、前記調速メンバーを計時器用ムーブメントに固定する固定手段に前記剛性支持体を接続するように構成しており、前記弾性補償デバイスが、外圧に応じて自身の剛性を調整して、前記調速メンバーに対する外圧の影響を補償するように構成している点で画期的である。
【0012】
本発明によって、予応力手段は、圧力に応じて弾性補償デバイスの弾性要素に可変の力又はトルクを与え、圧力が著しく変化しても調速メンバーが相当に精密な動作を維持するようにする。なぜなら、圧力が変わると、予応力手段が弾性要素に与える力又はトルクを変えて、フレキシブルガイドの剛性が変わるからである。フレキシブルガイドの剛性を変えることで、調速メンバーの動作が調整される。これによって、圧力が変わると、この変化に合わせてフレキシブルガイドの動作が調整されるように弾性要素が機械的に衝撃を受ける。
【0013】
この弾性要素は、取り付け部の剛性を変えて、共振器のフレキシブル性を大きくする。したがって、共振器の実効的な剛性は、フレキシブルガイドの剛性と弾性要素の剛性によって構成される。可変の力又はトルクによって、好ましくはフレキシブルガイドに予応力を与えずフレキシブルガイドの端を動かすことなく、弾性要素に予応力を与えることが可能となる。弾性要素に予応力を与えることによって弾性要素の剛性は変わるが、フレキシブルガイドの剛性は変わらないままである。なぜなら、フレキシブルガイドには予応力が与えられず、その端が動かないからである。
【0014】
弾性要素の剛性を変えることによって、共振器の剛性(フレキシブルガイドの剛性と弾性要素の剛性)が変わり、これによって、共振器の動作が変わる。弾性要素は、好ましくは、フレキシブルガイドよりも剛性が高く、全体の剛性に占める弾性要素の剛性の割合は、フレキシブルガイドの剛性よりも小さい。したがって、弾性要素の剛性が変わると、共振器全体の剛性が変わり、これによって、共振器の動作が細かく調整され、タイムベースの振動数を精密に調整することが可能となる。このようにして、高い精度の圧力に応じた動作の維持が可能となる。
【0015】
本発明の特定の実施形態において、前記弾性補償デバイスは、前記剛性支持体と前記固定手段の間に配置される弾性要素と、外圧に応じて前記弾性要素に可変の力又はトルクを与えるための予応力手段とを備える。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、外圧に応じて体積が変わるアネロイドカプセルを備え、これによって、外圧に応じて可変の力又はトルクを伝達する。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、前記可動支持体と前記アネロイドカプセルに接続されるばね部を備え、このばね部は、前記可動支持体を利用して力又はトルクを前記弾性要素に伝達する。
【0018】
本発明の特定の実施形態において、前記アネロイドカプセルは、互いに少なくとも1つのばねによって接続される可動壁と不動壁を備える。
【0019】
本発明の特定の実施形態において、前記ばね部は、前記アネロイドカプセルと前記可動支持体の間に直列に配置される単一のフレキシブルブレードと変換機構を備える。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、前記可動壁は、前記ばね部の前記変換機構に接続される。
【0021】
本発明の特定の実施形態において、前記弾性要素は、前記可動支持体を前記固定手段に接続する非交差ブレード対を備える。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、前記弾性要素の前記非交差ブレードの間に配置される。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、主フレキシブルブレードである、前記フレキシブルガイドの2つのブレードは、交差している。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、前記調速メンバーは、前記振動錘を除いて、実質的に同じ平面内に延在している。
【0025】
本発明の特定の実施形態において、前記弾性要素は、前記フレキシブルガイドの剛性よりも大きい、好ましくは、少なくとも5倍大きい、さらには少なくとも10倍大きい、剛性を有する。
【0026】
本発明は、さらに、このような調速メンバーを備える計時器用ムーブメントに関する。
【0027】
添付の図面を参照しながら例としてのみ与えられるいくつかの実施形態を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】圧力を補償する手段を備える調速メンバーの一実施形態を概略的に示している平面図である。
【
図2】
図1の本発明の実施形態の補償手段を概略的に示している拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1及び2は、本発明に係る調速メンバー1の一実施形態を示しており、この調速メンバー1は、調速メンバー1に与えられる圧力の変動を補償するように構成している弾性補償デバイス50を備える。このような調速メンバー1は、調速するように計時器用ムーブメント内において構成するように意図されている。
【0030】
この実施形態において、調速メンバー1は、フレキシブルガイド2と振動錘19を備える。振動錘は、例えば、環状であることができ、また、骨の形(I字状)のアームであることができる。
【0031】
振動錘19は、ここでは環状であり、振動錘19には、リングを通り抜ける分岐部8があり、この分岐部8はリングを2つの部分に分けるように構成しており、その第1の部分はリングの1/3を占め、第2の部分はリングの2/3を占める。また、振動錘19には、ここでは3つある、アンバランスを調整するねじ20がある。調整ねじ20は、リングのまわりにて角度的に分布しており、リングの中心方向に向かってリングを貫通する。
【0032】
好ましくは、調速メンバー1は、振動錘19を除いて、実質的に同じ平面内で延在しており、この振動錘19は、仮想ピボットを中心とする回転運動をするように、例えばフレキシブルガイド2の上方にて、平行な平面内で振動する。
【0033】
フレキシブルガイド2は、2つの主フレキシブルブレード9と、剛性支持体3とを備える。フレキシブルガイド2は、主対称軸に沿って延在している。主フレキシブルブレード9は、まず、フレキシブルガイド2の剛性支持体3に結合し、次に、振動錘19の分岐部8に結合する。
【0034】
フレキシブルガイド2の2つの主フレキシブルブレード9は、交差しており、好ましくは、まっすぐであり同じ長さである。主フレキシブルブレード9の交差点は、分岐部8よりも剛性支持体3に近い位置にある。主フレキシブルブレード9は、主対称軸がリングを2つに分ける直線を通り抜けるように、中央に配置される。
【0035】
フレキシブルガイド2は、大きい方の第2の部分にて、リングの内側に配置される。
【0036】
剛性支持体3には、実質的に平行六面体の細長い本体がある。
【0037】
本発明によると、調速メンバー1は、圧力を補償するための弾性補償デバイス50を備え、この弾性補償デバイス50は、調速メンバー1を計時器用ムーブメントに固定する固定手段7に剛性支持体3を接続するように、剛性支持体3と直列に配置される。
【0038】
弾性補償メンバー50は、周囲の圧力の変動に応じて自身の剛性を適応させて、調速メンバー1に対するこれらの変動の影響を補償するように構成している。弾性補償デバイス50は、好ましくは、主フレキシブルブレード対9よりも剛性が大きい。
【0039】
弾性補償デバイス50は、剛性支持体3と固定手段7の間に配置される弾性要素5と、圧力に応じて弾性要素5と剛性支持体3に可変の力又はトルクを与えるための予応力手段6とを備える。
【0040】
図2において、弾性要素5は、剛性支持体3を固定手段7に接続する非交差ブレード対4を備える。非交差ブレード4は、剛性支持体3から固定手段7まで、主フレキシブルブレード9の側とは反対側にて、固定手段7に近づくほど互いに離れるように延在している。
【0041】
予応力手段6は、非交差型ブレード対4のフレキシブルブレードの間に配置される。
【0042】
予応力手段6は、さらに、剛性支持体3に可変の力又はトルクを与えるばね部を備える。したがって、予応力手段6が非交差ブレード4の剛性を変えるために、弾性補償デバイスの剛性が変わる。ばね部は、さらに、弾性要素5に伝達される可変の力又はトルクを受けるように構成している。
【0043】
外圧に応じた可変の力又はトルクをばね部に伝達するために、予応力手段6はアネロイドカプセル10を備える。
【0044】
このようなアネロイドカプセルは、概して気圧を測定するために用いられる。このために、このアネロイドカプセルには、空間があり、この空間の少なくとも一部には空気がなく、その空間にばねタイプの弾性戻し要素があって、カプセルの可動壁を保持する。したがって、外圧が上昇するとカプセルは圧縮され、外圧が低下するとカプセルは拡大する。
【0045】
図2において、アネロイドカプセル10の体積は、外圧に応じて変動する。
【0046】
このために、アネロイドカプセル10には、互いに少なくとも1つのばね16によって接続される可動壁13と不動壁15がある。図示していない気密室のおかげで、可動壁13と不動壁15内において少なくとも部分的に真空を発生させることが可能となる。
【0047】
不動壁15は、固定手段7にしっかりと接続される。この不動壁15は、L字形であり、その大きい区画21は、固定手段7と支持体に対して実質的に平行であり、小さい区画22は、大きい区画21に対して垂直に固定手段7に接続される。
【0048】
可動壁13は、L字形であり、この可動壁13は、L字の大きい区画17、21が互いに実質的に向かい合い、また、L字の小さい区画18、22が互いに実質的に向かい合うように、不動壁15に対して反対の向きに配置される。
【0049】
予応力手段6は、さらに、アネロイドカプセルの弾性戻し要素を形成する、少なくとも1つのばねを備え、ここでは、大きい区画17、21どうしを内側にて接続する2つのばね16を備える。可動壁13に与えられる圧力に応じて、ばね16は、特に圧力が低下したときに、伸長し、特に圧力が上昇したときに、収縮する。したがって、ばね16は、可動壁13を不動壁15に対して近づけたり遠ざけたりする。
【0050】
予応力手段6のばね部は、可動支持体3とアネロイドカプセル10に接続され、このばね部は、可動支持体3を利用して、アネロイドカプセル10からの力又はトルクを弾性要素5に伝達する。
【0051】
ばね部は、非交差ブレード4と同じ側で剛性支持体3に垂直に接続される単一のフレキシブルブレード11を備える。単一のフレキシブルブレード11のおかげで、可動支持体3を自由に回転させたまま予応力を可動支持体3に伝達することが可能となる。
【0052】
ばね部は、さらに、可動壁13と単一のフレキシブルブレード11の間にて直列に配置される変換機構33を備える。この変換機構33は、実質的に平行な2つのフレキシブルブレード14と、可動要素12とを備える。フレキシブルブレード14は、L字の大きい区画に平行になるように、可動壁13のL字の小さい区画の内側に可動要素12を接続する。
【0053】
変換機構33の機能は、カプセルの分離力を可動支持体3に対する予応力の力に変換することである。
【0054】
可動要素12は、単一のフレキシブルブレード11によって剛性支持体3に接続される平行六面体であり、変換機構33の2つのフレキシブルブレード14は、単一のフレキシブルブレード11に対して垂直に配置される。単一のフレキシブルブレード11は、可動要素12の上側から、剛性支持体3の下側の中央部まで延在している。
【0055】
圧力が変わると、可動壁13は、不動壁15と剛性支持体3に対して近づいたり離れたりする。したがって、変換機構の可動要素12は、剛性支持体3の方への大きかったり小さかったりするスラスト力を受け、この力は、単一のフレキシブルブレード11を介して剛性支持体3に伝達される。
【0056】
したがって、予応力手段6は、剛性支持体3と固定手段7の間を分離する可変の分離力を与える。これによって、弾性要素5の剛性が変わり、バランスの動作を外圧の条件に適応させて、調速メンバーの精度を保つことが可能となる。
【0057】
例えば、圧力が大きくなると、可動壁13が不動壁15に近づく。このように近づくことによって、予応力手段6によって与えられる、剛性支持体3と固定手段7の間の分離力を大きくする。したがって、弾性要素5の剛性、したがって、非交差ブレード対のブレード4の剛性、が増加する。
【0058】
一方、圧力が低下すると、可動壁13は、不動壁15からさらに離れる。このように離れることによって、予応力手段6によって与えられる、剛性支持体3と固定手段7の間の分離力が弱くなる。したがって、弾性要素5の剛性、したがって、非交差ブレード対4の剛性、が低下する。
【0059】
本発明は、さらに、図示していない計時器用ムーブメントに関し、このムーブメントは、前述のように調速メンバー1を備える。
【0060】
当然、本発明は、図面を参照しながら説明した実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく様々な変異形態を考えることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 調速メンバー
2 フレキシブルガイド
3 剛性支持体
4 非交差ブレード
5 弾性要素
6 予応力手段
7 固定手段
9、11 フレキシブルブレード
10 アネロイドカプセル
13 可動壁
15 不動壁
16 ばね
19 振動錘
33 変換機構
50 弾性補償デバイス