(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】締固め車両
(51)【国際特許分類】
E01C 19/26 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
E01C19/26
(21)【出願番号】P 2023186780
(22)【出願日】2023-10-31
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000194516
【氏名又は名称】世紀東急工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】磯部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】永渕 克己
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】実公平02-026968(JP,Y2)
【文献】特公平07-049644(JP,B2)
【文献】特開2020-133324(JP,A)
【文献】特開平10-212705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00-19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に配置され、路面を締め固める前部転圧輪と、
車体後部に配置され、前記路面を締め固める後部転圧輪と、
前記前部転圧輪と前記後部転圧輪とを連結する連結部と、
前記前部転圧輪と前記後部転圧輪との間に配置され前記路面の凹凸を測定する変位センサと、
前記変位センサにおいて測定された前記路面の凹凸に関する測定値から前記路面の平たん性を示す平たん性数値を算出する制御装置と、
速度センサと、を備え、
前記制御装置は、
前記速度センサより取得した前記後部転圧輪の回転速度の変化から締固め車両の加速度を算出し、算出された前記加速度と予め設定される閾値との比較の結果、前記加速度が前記閾値を超えると判定した場合には、報知装置に判定結果を表示させることを特徴とする締固め車両。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記変位センサから取得した前記路面の凹凸に関する測定値を基に前記平たん性数値を算出する比較演算部と、
前記比較演算部によって算出された前記平たん性数値を
前記報知装置に表示させる報知部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の締固め車両。
【請求項3】
前記速度センサは、前記後部転圧輪の回転速度を測定するセンサであることを特徴とする
請求項1に記載の締固め車両。
【請求項4】
前記締固め車両は、前記路面の温度を測定する温度センサを備えていることを特徴とする請求項1に記載の締固め車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記制御装置において取得された前記平たん性数値や加速度、或いは、前記路面の温度の少なくとも1つの情報を前記締固め車両から離れた場所で用いられる情報端末に送信する通信制御部を備えていることを特徴とする請求項1ないし
請求項4のいずれかに記載の締固め車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、締固め車両に関する。
【背景技術】
【0002】
転圧ローラや振動ローラ等の締固め車両は、比較的低速度で前後進を繰り返しながら転圧輪により路面を締め固めるものである。そして締固め車両を用いて路面を締め固める場合には、締固め後の路面に凹凸ができないように平たん性を確保する必要がある。平たん性を確保するために、例えば、日々の施工後、或いは、工事の完了後に平たん性の測定が行われる。
【0003】
さらに平たん性の確保とともに、路面を締固める際には、締固め密度にバラツキが出ないようにする必要がある。締固め車両による締固め施工においては、路面材料の種類(アスファルト合材の種類等)等によって車両の走行速度を異ならせる場合があるが、どのような条件であっても、急発進、急停止等を行うことなく、なるべく締固め車両を一定の速度で走行させることが肝要である。以下に示す特許文献1には、例えば前後進を繰り返す場合であっても容易に一定の速度で走行させることができる締固め車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
締め固められた路面の平たん性については、上述したように、例えば日々の施工後、或いは、工事の完了後に確認されるが、この時点で平たん性が確保されていない場合、平たん性の悪い路面となって施工品質に問題が生ずる。
【0006】
また、上記特許文献1に開示されているように、締固め車両を一定の速度で走行させることは必要であると考える。但し、締固め車両が一定の速度で走行したとしても、締め固められた路面が平坦であるとは限らない。
【0007】
すなわち、路面の締固めを行う際には、締固めが必要な区間において締固め車両を行き来させることが必要となる。このような場合、確かに区間途中では一定の速度で締固め車両が走行することになるが、区間の両端においては前進から後進へ、或いは、後進から前進へと締固め車両の走行の方向を変更する必要がある。
【0008】
そしてこのような締固め車両の区間両端における折り返し時において、締固め車両が急発進や急停止を行うと、締固めの対象となる路面に凹凸が発生する可能性がある。そして凹凸が発生してしまうと、上述した平たん性の確保との関係からも分かるように当該凹凸の修正が困難となりかねない。
【0009】
本発明は、路面の締固め工程において、締め固められた路面の平たん性に関する情報を随時取得することで平たん性の確保に資するとともに、締固め車両の移動の際の急発進、急停止を抑制することで締め固める路面に凹凸が生ずること防止することができる締固め車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態における締固め車両は、車体前部に配置され、路面を締め固める前部転圧輪と、車体後部に配置され、路面を締め固める後部転圧輪と、前部転圧輪と後部転圧輪とを連結する連結部と、前部転圧輪と後部転圧輪との間に配置され路面の凹凸を測定する変位センサと、変位センサにおいて測定された路面の凹凸に関する測定値から路面の平たん性を示す平たん性数値を算出する制御装置と、速度センサと、を備え、制御装置は、速度センサより取得した後部転圧輪の回転速度の変化から締固め車両の加速度を算出し、算出された加速度と予め設定される閾値との比較の結果、加速度が閾値を超えると判定した場合には、報知装置に判定結果を表示させることを特徴とする。
【0011】
また、当該締固め車両における制御装置は、変位センサから取得した路面の凹凸に関する測定値を基に平たん性数値を算出する比較演算部と、比較演算部によって算出された平たん性数値を報知装置に表示させる報知部と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
さらに当該締固め車両は、速度センサを備えており、この速度センサは、後部転圧輪の回転速度を測定するセンサである。
【0014】
さらに当該締固め車両は、締固めの対象となる路面の温度を測定する温度センサを備えていることを特徴とする。
【0015】
当該締固め車両の制御装置は、制御装置において取得された平たん性数値や加速度、或いは、路面の温度の少なくとも1つの情報を締固め車両から離れた場所で用いられる情報端末に送信する通信制御部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明の実施の形態における締固め車両であれば、路面の締固め工程において、締め固められた路面の平たん性に関する情報を随時取得することで平たん性の確保に資するとともに、締固め車両の移動の際の急発進、急停止を抑制することで締め固める路面に凹凸が生ずること防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る締固め車両の全体構成を示す全体図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る締固め車両の制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る締固め車両に搭載される変位センサの測定値に基づく平たん性とプロフィルメータを用いた際の平たん性との関係を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施の形態に係る締固め車両における速度及び加速度の変化を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る締固め車両に搭載された制御装置に対して指示を行う、或いは、測定結果を示す情報端末の表示部の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る締固め車両1の全体構成を示す全体図である。締固め車両1は、土壌やアスファルト等の路面を締め固める際に用いられる。締固め車両1は、車体前部に配置され、路面を締め固める前部転圧輪11と、車体後部に配置され、路面を締め固める後部転圧輪12と、前部転圧輪11と後部転圧輪12とを連結する連結部13と、を備えている。
【0019】
そして前部転圧輪11及び後部転圧輪12は、いずれも重量が重く、路面に対する設置圧が大きいため、その重量によって路面を押し固めることができる。また、前部転圧輪11と後部転圧輪12との間には連結部13があり、当該連結部13によって締固め車両1の車体前部に配置される前部転圧輪11と車体後部に配置される後部転圧輪12とが連結される。
【0020】
そして当該連結部13を軸に締固め車両1の車体前部と車体後部との向きを変えることができるため、運転席14に設けられているハンドルを切ることによって締固め車両1の進路方向を変更することができる。
【0021】
締固め車両1は、運転者が運転席14に乗り込んで上述したハンドル等が操作されることによって移動する。また、運転席14と前部転圧輪11との間には、エンジン15が搭載されており、当該エンジン15からの駆動力が 前部転圧輪11に伝達されることで前部転圧輪11が回転し、締固め車両1が移動する。
【0022】
なお、
図1に示す本発明の実施の形態における締固め車両1は、いわゆるマカダムローラと言われる3輪の車両であり、前部転圧輪11が2つ、後部転圧輪が1つ設けられている。また、
図1における締固め車両1においては、図面右側が前進方向、図面左側が後進方向である。
【0023】
但しこのようなマカダムローラに限定されず、本発明の実施の形態における締固め車両1は、例えば、タンデムローラと言われる2輪の締固め車両であっても良い。或いは、転圧輪が振動して締固めの対象となる路面に対して振動を付加する機能等、種々の機能が備えられていても良い。
【0024】
本発明の実施の形態における締固め車両1には、締固め車両1の移動に伴う種々の変位について測定するセンサSが設けられている。まず締固め車両1が締固めを行った際の路面の平たん性を測定する変位センサS1が設けられている。当該変位センサS1は、例えば、
図1に示されているように、前部転圧輪11と後部転圧輪12との概ね中間の位置に配置されている。
【0025】
具体的には、例えば、変位センサS1の測定面が路面と対向する位置に配置され、締固め車両1が移動する際の路面の凹凸に関する測定値を取得する。取得された測定値は、後述する制御装置2に送信されて、路面の平たん性を示す平たん性数値を算出する際の基となるデータとなる。
【0026】
なお、本発明の実施の形態における締固め車両1においては、変位センサS1として、レーザ変位計を用いている。但し、変位センサS1として、路面の凹凸(平たん性)を測定することができるセンサであれば、どのような形態のセンサであっても良い。
【0027】
次に締固め車両1の速度を測定するセンサとして速度センサS2が設けられている。速度センサS2は、
図1に示されているように、締固め車両1の後部転圧輪12の回転軸に設けられている。すなわち、速度センサS2は後部転圧輪12の回転速度を測定するセンサである。
【0028】
具体的には、速度センサS2は後部転圧輪12の回転軸に、後部転圧輪12の回転に伴って変化する、例えば連続する白黒の模様からなる印が設けられている。そして締固め車両1が移動する際の後部転圧輪12の回転とともに変化する当該印を読み取り、この読み取った結果を基に締固め車両1の速度を取得する。そして本発明の実施の形態における締固め車両1においては、当該速度センサS2において取得された回転速度の変化(速度)を基に、後述するように締固め車両1の加速度を算出する。
【0029】
なお速度センサS2として上述した構造の速度センサS2を採用しているが、これはそもそも締固め車両1には速度計が設けられていないからである。そのため締固め車両1の速度を測定することができるセンサであれば、どのような構造のセンサであっても良い。
【0030】
さらに、締固め車両1が締め固める対象となる路面の温度を測定する温度センサS3も設けられている。例えば締め固める対象となる路面の温度が適切な温度ではない状態で締固め車両1が締固めを行うと、例えば、凹凸が生じたり、或いは、転圧しても締固まらない等の不都合が生じかねず、その結果、平たん性が確保できないことも考えられる。そこで締固めの最中においても適宜路面の温度を測定することができる温度センサS3が搭載されている。
【0031】
当該温度センサS3は、締固め車両1の前方の路面の温度を面で測定することができるように、例えば、運転席14の前面に配置されている。また、温度センサS3としては、例えば、放射温度計等を採用することができる。或いは、路面の表面のみならず、例えば、路面の内部における温度も測定することができるようにされていても良い。
【0032】
締固め車両1には、上述した各種センサSからの測定結果を基に締固め車両1による締固めの施工に必要な情報を取得、算出するための制御装置2が搭載されている。ここで
図2は、本発明の実施の形態に係る締固め車両1の制御装置2の内部構成を示すブロック図である。
【0033】
なお制御装置2は、
図1に示す本発明の実施の形態における締固め車両1においては、例えば、運転席の座席の下に配置されている。但し、制御装置2の配置位置については締固め車両1のいずれであっても良い。
【0034】
制御装置2は、第1のアンプ21と、第2のアンプ22と、比較演算部23と、報知部24と、記憶部25と、通信制御部26と、を備えている。第1のアンプ21は、変位センサS1からの測定値を取得する。また第1のアンプ21は、変位センサS1から取得した測定値を基に、路面の凹凸の変位量に変換する。
【0035】
第2のアンプ22は、速度センサS2から取得した締固め車両1の測定値を取得する。そして取得された測定値から、例えば、電圧値へと変換する。第1のアンプ21や第2のアンプ22で変換された値は、比較演算部23に送信される。
【0036】
なお、温度センサS3において測定された路面の温度値については、特段アンプは設けられず、温度センサS3において測定された温度値がそのまま、例えば、記憶部25へと送信される。
【0037】
比較演算部23では、第1のアンプ21や第2のアンプ22において変換された値を用いて、それぞれ路面の平たん性や加速度を算出する。具体的に路面の平たん性については、第1のアンプ21から送信された路面の凹凸の変位量を基に、路面の平たん性を示す平たん性数値が算出される。
【0038】
上述したように、路面を締固め車両1を用いて締め固めた際には、所定のタイミングで平たん性を確認するが、その際に用いる器具としてこれまでは、例えば、プロフィルメータが用いられている。プロフィルメータは、締め固めた路面の測定値を基に平たん性を算出する器具であるが、都度当該器具を用いなければ平たん性を確認できないのは不便である。
【0039】
またプロフィルメータを用いる場合、締固め車両1による締固めが終了した後、安全性を確認した上で用いなければならず、このような手間があるため、上述したような、例えば日々の施工後、或いは、工事の完了後といったタイミングにおいて平たん性の確認が行われることにつながる。
【0040】
そこで本発明の実施の形態における締固め車両1においては、
図1に示すような位置に変位センサS1を設けることによって、別途プロフィルメータを用いずとも路面の平たん性を確認することができる。すなわち、前部転圧輪11と後部転圧輪12との間に変位センサS1が設けられており、締固め車両1が前進、或いは、後進する際に随時路面の凹凸を測定する。
【0041】
ここで
図3は、本発明の実施の形態に係る締固め車両1に搭載される変位センサS1の測定値に基づく平たん性とプロフィルメータを用いた際の平たん性との関係を示すグラフである。
【0042】
図3に示すグラフでは、横軸に締固め車両1に搭載される変位センサS1を用いて測定した際の路面の平たん性を示し、縦軸には、同じ路面を測定対象とした場合におけるプロフィルメータを用いて測定した際の路面の平たん性が示されている。
【0043】
図3のグラフをみると、変位センサS1による測定結果についてもプロフィルメータによる測定結果についてもその平たん性は1mmから2mmの間に収まっており、近似が取れる結果となった。従って、これまで平たん性の確認のために用いてきたプロフィルメータに代えて締固め車両1に搭載された変位センサS1を用いて路面の平たん性を確認しても、これまでと同等の精度をもって平たん性の確認を行うことが可能であることがわかる。
【0044】
さらに比較演算部23では、第2のアンプ22から送信された締固め車両1のおける速度から加速度を算出する。上述したように締固め車両1を用いて路面を締め固める際に、急発進や急停止を行うと、締固め車両1の重量が必要以上に路面に掛かってしまい、その結果路面に凹凸が発生してしまう。
【0045】
但し、急発進や急停止については、締固め車両1の速度を測定しても把握しにくい。すなわち、締固めの区間において、当該区間の両端を除く区間においては、上述したように締固め車両1は概ね一定の速度で走行しており、凹凸はできにくい。むしろ区間両端において前進と後進とが入れ替わる場合に急発進や急停止が行われやすい。そしてこのような場所においては、速度は低速であり、速度を算出した速度管理を行うだけでは急発進や急停止の把握、回避ができない。
【0046】
そこで本発明の実施の形態における締固め車両1においては、比較演算部23において取得された速度の情報を基に加速度を算出して、算出された加速度が予め設定された閾値を超えた場合に、急発進や急停止が行われたものと把握する。
【0047】
図4は、本発明の実施の形態に係る締固め車両1における速度及び加速度の変化を示す説明図である。
図4に示す説明図においては、上段に速度が、下段に加速度が示されている。また、下段の加速度は、上段の速度に対応している。
【0048】
上述したように本発明の実施の形態における速度センサS2は、後部転圧輪12の回転軸に設けられておらず、後部転圧輪12の回転から速度が算出される。ここで、速度の単位は「rad/s」である。一方、加速度は速度を微分して算出されることから、加速度の単位は「度/S2」である。
【0049】
また、当該説明図において横軸は「時間」を示している。すなわち
図4は、締固め車両1が締固めの区間において前進、或いは、後進することによって移動した際の速度の変化、及び、加速度の変化を示すものである。
【0050】
速度を示す説明図における上段には、左から「F1」、「B1」、「F2」、「B2」の符号が付された両矢印が4つ示されている。これは、締固めの区間における締固め車両1による前進、後進を示している。すなわち、「F1」、「F2」で示される時間において締固め車両1は前進し、「B1」、「B2」で示される時間において後進している。
【0051】
なお、説明図における速度の部分において、縦軸は速度を示しており、下部に締固め車両1が移動していない状態を示す、速度「0」が示されている。
また、この速度が「0」である部分に、締固め車両1の前後進を示す上述した4つの両矢印が示されている。
【0052】
例えば、締固め車両1の最初の前進を示す符号F1の時間、締固め車両1は締固めの区間の一方の端部における停止状態から加速し、概ね一定の速度で走行して路面を締め固めた後、速度を落としている。これは、締固めの区間の他方の端部に到達したことを示している。
【0053】
但し、他方の端部に到達して締固め車両1がF1の時間前進してから後進に進行方向が変更となる場合であっても、完全に止まることはなく(速度は「0」にならない)、非常に低速な状態の状態でそのまま前進から後進へと切り替わる。
【0054】
締固めの区間において、時間B1の間締固め車両1を後進させる場合には、前進ほどの速度は出ていない。また、途中で後進の速度が上がっているが、概ね一定の速度で他方の端部から一方の端部に向けて後進している。
【0055】
そして締固め車両1が他方の端部から一方の端部に到達すると、今度は後進から前進へと改めて切り換えて締固めが行われる。F2の時間にわたって締固め車両1が前進しながら路面を締め固めるが、時間F1の時と同じように概ね一定の速度で移動している。また締固め車両1を前進させる速度も時間F1と時間F2では概ね同じである。
【0056】
締固めの区間の他方の端部に到達すると、今度は時間B2の間、締固め車両1を後進させて改めて路面を締め固める。なお、
図4に示す説明図では、2回実施された締固め車両1の後進での締固めにおいて、時間B2の場合の方が締固め車両1の速度が高い。また、時間B1の場合と異なり、時間B2における走行速度は、締固めの区間における他方の端部から一方の端部に向かって概ね一定の速度で走行していることが分かる。
【0057】
このような速度センサS2において測定された締固め車両1の速度の情報を基に、比較演算部23は、締固め車両1の加速度を算出する。比較演算部23によって算出された加速度の変化について示したのが、
図4の説明図における下段の部分である。
【0058】
説明図における加速度については、加速度「0」を中心にして、上振れと下振れの線が示されている。これは上振れが締固め車両1が加速した場合を示し、下振れが締固め車両1が減速した場合を示している。
【0059】
図4の下段に示される加速度を示す線を、上段に示す速度の線と比べてみると、加速から減速、或いは、減速から加速への変化が生じているのは、締固め車両1が前進と後進との間で速度に変化が生じた場合である。また、多くの時間加速度が「0」の付近に示されているが、これは、締固め車両1が前進、或いは、後進を問わず、概ね一定の速度で走行しており、加速度の変化が小さなことを示している。
【0060】
なお、説明図において、加速側には時間を示す横軸と平行となるように破線が示されている。当該破線は、加速度が大きいか否か、すなわち、締固め車両1が急発進したか否かを判定するための閾値Xを示すものである。
【0061】
当該閾値Xの値については、例えば、締固め車両1の種類等を基に適宜設定することができる。また、
図4では、加速側について閾値Xが設定された場合を示しているが、減速側に閾値を設定しても良い。また、加速側と減速側とで閾値の値を変えても良い。
【0062】
図4に示す説明図では、例えば、締固め車両1が時間B1の間後進した後、時間F2の間前進するために締固めの区間の一方の端部において後進から前進に切り換えられた際に、締固め車両1が急激に加速した結果、閾値Xを超えた状態が示されている(
図4においては、円形の点線で囲まれて示されている部分である)。
【0063】
比較演算部23では、速度センサS2において測定された値を基に締固め車両1の加速度を算出した上で、閾値Xの値との比較を行う。このように締固め車両1の加速度の値と閾値Xの値との比較を行うのは、上述したように締固め車両1が急激に速度を増すと(急発進すると)、路面に凹凸を生じさせかねないからである。
【0064】
比較演算部23による加速度の値と閾値Xの値との比較の結果、
図4の円形の点線で示すような前者が後者を超えたような場合には、例えば、
図2に示す報知装置3を介して、例えば運転者に注意喚起を行う。
【0065】
ここで報知部24は、比較演算部23における比較結果に基づいて、例えば運転者にその結果を報知する。また、運転者に対して報知するための報知装置3が報知部24に接続されており、報知部24の指示に基づいて運転者に報知する。
【0066】
報知装置3としては、例えば、運転席14の近傍に設けられるランプを挙げることができる。すなわち、比較演算部23が加速度の値が閾値Xの値を超えたと判定した場合に、報知部24に比較結果を送信する。報知部24では、報知装置3に信号を送信して、例えば、報知装置3を点灯させる、或いは、点滅させる。そして締固め車両1の運転者は、報知装置3からの報知を受けて、加速や減速が緩やかとなるように締固め車両1の運転を行う。
【0067】
なお、ここでは報知装置3の例としてランプを挙げたが、例えば運転者に対して報知することができるのであれば、スピーカやモニタ等、運転者の五感に訴えることのできる装置であればどのような装置であっても良い。
【0068】
また、ここでは比較演算部23が加速度の値が閾値Xの値を超えたと判定した場合に、報知部24、報知装置3を介して運転者に注意を喚起する旨、説明した。但し、運転者に対する注意喚起に留まらず、例えば、運転者の操作を待たずに制御装置2において締固め車両1の加速や減速が緩やかとなるように制御することとしても良い。
【0069】
記憶部25は、例えば、各センサSから送信された情報を記憶しておく。また、比較演算部23によって算出された締固め車両1の加速度の情報、或いは、平坦整数値についても記憶しても良い。
【0070】
通信制御部26は、締固め車両1と締固め車両1の外部との間で情報のやり取りを行う際の通信を制御する。例えば、制御装置2において取得された平たん性数値や加速度、或いは、路面の温度の少なくとも1つの情報が制御装置2によって締固め車両から離れた場所で用いられる情報端末4に送信される。
【0071】
当該情報端末4は、締固め車両1の運転者以外の者が各センサSを用いた平たん性等の測定開始や終了を操作するために用いられる。締固め車両1の運転者は、締固めの区間において確実に締固めを行うように締固め車両1を運転しなければならず、測定開始や終了の操作を行うことが困難な場合も考えられるからである。
【0072】
また、例えば、締固め車両1が稼働する現場、或いは、現場から離れた、例えば会社において種々の情報を取得するために用いられる。また、情報端末4においては、取得した情報を基に、例えば、地図上に反映させる、従来の結果との比較を行うといった、様々な加工を施すことができる。また、当該情報端末4を用いて、例えば、締固め車両1の運転者に対して指示を出すこともできる。
【0073】
図5は、本発明の実施の形態に係る締固め車両1に搭載された制御装置2に対して指示を行う、或いは、測定結果を示す情報端末4の表示部41の一例を示す模式図である。従って、表示部41に示されている情報の配置や表示される情報の内容、或いは、レイアウト等については、あくまでも一例である。
【0074】
図5に示す表示部41は大きく2つの領域に分かれており、右側の表示領域41aには「路面の凹凸形状」を示す情報が、左側の表示領域41bには「加速度」を示す情報が表示されている。そして、右側の表示領域41aと左側の表示領域41bとの間には両者を区切る破線が示されている。
【0075】
右側の表示領域41aには、上述したように、「路面の凹凸形状」を示す情報が示されている。ここでは「平たん性」と「IRI」と表示される2種類の数値が選択可能に表示することができるようにされている。
【0076】
「平たん性」については、変位センサS1で測定された路面の凹凸に関する測定値を用いて比較演算部23によって算出された路面の平たん性を示す平たん性数値が示される。一方の「IRI」とは、国際ラフネス指数(International Roughness Index)のことであり、舗装路面の凹凸に関する評価指数である。締め固めの対象となる路面によっては、IRIの値を用いた平たん性の確保が求められることもあることから、選択によって表示可能としたものである。
【0077】
「25cm毎」、或いは、「1.5m毎」の表示は、変位センサS1における測定間隔を示すものであり、これらもいずれかを選択することができる。例えば、締固めの区間が短い場合に測定間隔が長く設定される、平たん性の確保を図る上で、正確な値を取得することができなくなってしまうからである。
【0078】
また反対に、締固めの区間が長い場合に測定間隔が短く設定されるといった場合が生ずると、多くの平たん性数値が取得されることになり、必要以上に細かな情報が取得されてしまうからである。そこで締固めの区間が短い場合には「25cm毎」、締固めの区間が長い場合には「1.5m毎」に測定することを選択して、その値を表示させることが可能とされている。
【0079】
変位センサS1によって測定され比較演算部23によって算出された平たん性数値については、右側の表示領域41aの概ね中央部に表示されている。ここでは左側に目標値が示されており、右側に算出された平たん性数値が表示されている。
【0080】
平たん性数値の下側には、各センサSを用いた測定の開始、終了を入力するためのボタンが設けられている。
図5に示す情報端末4の場合、「測定開始」と表示されているボタンを押すと測定が開始される。そしてこのボタンの表示は「測定開始」から「測定終了」へと変化する。そこで情報端末4を操作する者は、測定を終了する際には、「測定終了」と示されているボタンを押すことで測定の終了を指示する。
【0081】
測定開始と測定終了のボタンの下には、グラフが表示されている。このグラフは、縦軸が「高さ」を示しており、横軸が「時間」を示している。すなわち、締固め車両1が路面の締固めを行っている際の高さの変化を示している。
【0082】
図5に示す情報端末4の表示部41における左側の表示領域41bには、「加速度の評価」が示されている。当該左側の表示領域41bの中央部に「加速度」と「最大値」とが並んで表示されており、さらには「加速度」の表示領域の左側には、閾値Xの値も示されている。ここでは、「加速度」が「20」、「最大値」は「40」、「閾値」は「30」である。
【0083】
そしてこれらの表示の下には、「測定開始」、「測定終了」のボタンが設けられている。当該ボタンの役割については、上述した通りである。また当該ボタンの下には、「速度」と「加速度」の時間変化を示す、例えば、
図4に示したようなグラフが示されている。
【0084】
また、右側の表示領域41aと左側の表示領域41bとの間に設けられている破線を跨ぐように表示部41の中央下部であってグラフの上側には、温度センサS3において測定された「路面温度(℃)」が示されている。
【0085】
この「路面温度(℃)」における表示のうち、左側に示されている「150(℃)」が温度センサS3において測定された温度値である。一方、右側の「145(℃)」の表示は、目標値であり、温度センサS3によって測定される温度値がこの値になった際に、締固め車両1を用いた締固めが行われる。
【0086】
なお右側の表示領域41a、及び、左側の表示領域41bのいずれも右上には、「設定画面」との表示がされている。この「設定画面」の表示をタップすることで、図示しない設定画面へと画面が遷移する。設定画面では、例えば、変位センサS1による測定間隔や加速度における閾値Xの値を設定することができる。
【0087】
以上説明した構成を備える締固め車両を採用することによって、路面の締固め工程において、締め固められた路面の平たん性に関する情報を随時取得することで平たん性の確保に資するとともに、締固め車両の移動の際の急発進、急停止を抑制することで締め固める路面に凹凸が生ずること防止することができる。
【0088】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、本発明の一例を示したものである。実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化でき、また、上記実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。
【0089】
例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよく、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0090】
なお、上述した比較演算部23が算出する平たん性数値については、変位センサS1において測定された値から算出されるが、例えば、変位センサS1において測定された数値を基に、プロフィルメータとの相関に基づいて、プロフィルメータが測定した値として表示させることも可能である。
【0091】
なお、本発明の実施の形態において説明した技術については、以下のような構成を採用することもできる。
(1)車体前部に配置され、路面を締め固める前部転圧輪と、
車体後部に配置され、前記路面を締め固める後部転圧輪と、
前記前部転圧輪と前記後部転圧輪とを連結する連結部と、
前記前部転圧輪と前記後部転圧輪との間に配置され前記路面の凹凸を測定する変位センサと、
前記変位センサにおいて測定された前記路面の凹凸に関する測定値から前記路面の平たん性を示す平たん性数値を算出する制御装置と、
を備えることを特徴とする締固め車両。
(2)前記制御装置は、
前記変位センサから取得した前記路面の凹凸に関する測定値を基に前記平たん性数値を算出する比較演算部と、
前記比較演算部によって算出された前記平たん性数値を報知装置に表示させる報知部と、
を備えることを特徴とする上記(1)に記載の締固め車両。
(3)前記締固め車両は、速度センサを備えていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の締固め車両。
(4)前記速度センサは、前記後部転圧輪の回転速度を測定するセンサであることを特徴とする上記(3)に記載の締固め車両。
(5)前記制御装置は、
前記比較演算部が、前記速度センサより取得した前記後部転圧輪の回転速度の変化から前記締固め車両の加速度を算出し、算出された前記加速度と予め設定される閾値との比較の結果、前記加速度が前記閾値を超えると判定した場合には、前記報知部を介して前記報知装置に判定結果を表示させることを特徴とする上記(3)または(4)に記載の締固め車両。
(6)前記締固め車両は、前記路面の温度を測定する温度センサを備えていることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の締固め車両。
(7)前記制御装置は、前記制御装置において取得された前記平たん性数値や前記加速度、或いは、前記路面の温度の少なくとも1つの情報を前記締固め車両から離れた場所で用いられる情報端末に送信する通信制御部を備えていることを特徴とする上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の締固め車両。
【符号の説明】
【0092】
1・・・締固め車両
2・・・制御装置
3・・・報知装置
4・・・情報端末
11・・・前部転圧輪
12・・・後部転圧輪
13・・・連結部
14・・・運転席
15・・・エンジン
21・・・第1のアンプ
22・・・第2のアンプ
23・・・比較演算部
24・・・報知部
25・・・記憶部
26・・・通信制御部
S1・・・変位センサ
S2・・・速度センサ
S3・・・温度センサ
【要約】
【課題】路面の締固め工程において、締め固められた路面の平たん性に関する情報を随時取得することで平たん性の確保に資するとともに、締固め車両の移動の際の急発進、急停止を抑制することで締め固める路面に凹凸が生ずること防止することができる締固め車両を提供する。
【解決手段】車体前部に配置され、路面を締め固める前部転圧輪11と、車体後部に配置され、路面を締め固める後部転圧輪12と、前部転圧輪11と後部転圧輪12とを連結する連結部13と、前部転圧輪11と後部転圧輪12との間に配置され路面の凹凸を測定する変位センサS1と、変位センサS1において測定された路面の凹凸に関する測定値から路面の平たん性を示す平たん性数値を算出する制御装置2と、を備える。
【選択図】
図1