(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】純ポリラウロラクタムを酸加水分解する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 227/22 20060101AFI20241010BHJP
C07C 229/08 20060101ALI20241010BHJP
C08J 11/16 20060101ALI20241010BHJP
C08G 69/48 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C07C227/22
C07C229/08
C08J11/16 ZAB
C08G69/48
(21)【出願番号】P 2023517409
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(86)【国際出願番号】 EP2021075148
(87)【国際公開番号】W WO2022058291
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-04-07
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー リヒター
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ネアンベアク
(72)【発明者】
【氏名】ノルベアト ケアン
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ヘアメス
(72)【発明者】
【氏名】フランツ-エーリッヒ バウマン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ロース
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル デミコリ
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-081524(JP,A)
【文献】特開昭53-028642(JP,A)
【文献】特開2008-184562(JP,A)
【文献】特開昭48-75544(JP,A)
【文献】特開2011-168755(JP,A)
【文献】特開2000-248061(JP,A)
【文献】特開2015-34276(JP,A)
【文献】特開昭59-102924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C227/22
C07C229/08
B29B 17/00- 17/04
C08J 11/00- 11/28
C08G 69/00- 69/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリラウロラクタムを加水分解する方法であって、ポリラウロラクタムを硫酸
の水溶液で125℃~190℃の温度でω-アミノラウリン酸へと開裂さ
せ、
前記ポリラウロラクタムが4.9重量%未満のラウロラクタムの含有率及び/又は4.9重量%未満のω-アミノラウリン酸の含有率を有するPA12廃棄物であり、
前記水溶液中の硫酸の含有率が、10~90重量%の範囲内であり、かつ、
使用される硫酸対使用されるポリラウロラクタムの重量の比が、1:0.1~1:1の範囲内である、前記方法。
【請求項2】
前記ポリラウロラクタムが1000~10
6g/molのモル質量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
圧力が1bar~100barである、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項4】
使用されるポリラウロラクタムの1~99重量%が反応された後に、前記硫酸を中和するために、水酸化アルカリが添加され、ついで別の水酸化アルカリが添加されて、残りのポリラウロラクタムが前記の別の水酸化アルカリと反応される、請求項1から
3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
水酸化アルカリが後続工程において、前記硫酸の中和後に、未変換のポリラウロラクタム対残りの水酸化アルカリの重量の比が、1:0.1~1:1の範囲内であるような量で水酸化アルカリが残るような量で、使用される、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記後続工程における温度が160℃~280℃の範囲内である、請求項
4又は
5に記載の方法。
【請求項7】
前記後続工程における圧力が1~100barの範囲内である、請求項
4から
6までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリラウロラクタムを硫酸で酸加水分解する改良法に関する。出発物質として、リサイクルされるものであって、低い含有率のラウロラクタムを特徴とするポリラウロラクタムが特に適している。
【0002】
発明の背景
ポリラウロラクタム(CAS番号:24937-16-4;別名:ナイロン12、ポリアミド12、以下に“PA12”と略記する)は、工業的に重要なポリマーである。
【0003】
PA12は、以下の構造(I)の繰返し単位を含み、ここで、繰返し単位の(
*)で示された結合は、隣接する繰返し単位の(
**)で示された結合に結合する。
【化1】
【0004】
PA12は、とりわけその高い加水分解安定性のために用途において評価され、かつこの特性の点で、短鎖ポリアミド、例えばポリカプロラクタム(CAS番号:25038-54-4;別名:ポリアミド6;以下に“PA6”と略記する)又はポリ-(N,N′-ヘキサメチレンアジピンジアミド)/ポリ-(ヘキサメチレンアジポアミド)(CAS番号:32131-17-2;別名:ポリアミド66;以下に“PA66”と略記する)とは明らかに異なる。
【0005】
PA6及びPA66は、より高密度のアミド基のために、数倍の水を吸収する。そのうえ、短鎖ポリアミドの場合の反応平衡は、そのモノマーの側へはるかに偏っているので、その加水分解は、はるかに早く進行することができる。
これらの材料のリサイクルは、そのアミド結合の開裂を必要とし、これは通常、酸触媒作用又は塩基触媒作用下に行われて、規定されたモノマー単位を得る。
【0006】
ナイロン66のケミカルリサイクリングのための最初のアプローチは、これらの材料が存在して以後、行われてきた。
【0007】
米国特許第2872420号明細書(US 2,872,420)には、ナイロン66を、廃棄物から硫酸で回収する方法が記載されている。それによれば、高純度の硫酸は、ポリアミドの分子量に僅かな影響のみを及ぼし、そのため溶解及び沈殿による精製に利用することができる。
【0008】
ナイロン6のリサイクルは、特殊な場合である、それというのも、そのモノマーのカプロラクタムは、蒸留によりその反応混合物から分離除去することができ、かつその反応は、酸又は塩基を非定量的に添加することでも、高い転化率をもたらすことができるからである。
【0009】
水の存在下での比較的高い温度での塩基又は鉱酸でのPA6及びPA66の処理は、それらのモノマー単位への分解をもたらす。
【0010】
米国特許第2407896号明細書(US 2,407,896 A)及び米国特許第3069465号明細書(US 3,069,465 A)には、硫酸でのPA66の加水分解が記載されている。
【0011】
国際公開第97/00846号(WO 97/00846 A1)には、硝酸でのPA66の加水分解が記載されている。
【0012】
米国特許第2840606号明細書(US 2,840,606 A)には、短鎖AABB型ポリアミドのアルカリ加水分解が記載されている。アルカリ触媒作用下では、成分としてそのジアミン及び二酸が、160℃を上回る温度で再形成される。脂肪族アルコールの添加は、その反応を促進する。
【0013】
従来技術に記載された方法を用いるPA6の加水分解はうまく行くのに対し、このアミノ酸の水溶液の後処理は困難である、それというのも、前記の短鎖ω-アミノカルボン酸は、塩としても遊離酸としても易溶性であり、ひいてはその精製は、多量の水の蒸留を必要とするからである。
【0014】
中国特許出願公開第102399363号明細書(CN102399363 A)には、SO4
2-基を有する固体酸による加水分解的分解によるナイロン6の加水分解が記載されている。それからホットメルト接着剤を製造する経路が記載されている。該反応は、完全転化をもたらさない。
【0015】
西独国特許出願公告第1240087号明細書(DE1240087B)には、より長鎖のω-アミノカルボン酸、例えばω-アミノドデカン酸の後処理が記載されている。
【0016】
ポリアミド12の加水分解によるリサイクルは、その比較的高い安定性に基づき、より技術的に要求が厳しい。
【0017】
特開昭55-108453号公報(JPS55-108453 A)には、押出しの際に水及びリン酸を添加することによるポリアミド12の分解が記載されている。しかし、そのモノマーの値を上回る値への分子量の減少を目的とするに過ぎない。それに応じて、この分解は、アミノラウリン酸まで進行しない。
【0018】
独国特許発明第69309709号明細書(DE 693 09 709 T2)には、ポリアミドの加水分解及び酸化が記載されている。可能なポリアミドとして、PA6、PA66及びPA12が挙げられている。この反応は、加水分解媒体中にニトロソ基が溶解されていることに基づいている。
【0019】
西独国特許出願公開第3401415号明細書(DE 3401415 A)には、ラウロラクタム製造からの廃棄物流の後処理が記載されている。この廃棄物流は、ラウロラクタム、オリゴアミド及びポリアミド並びにさらなる不純物の混合物からなる。酸触媒もしくは塩基触媒された加水分解によって、ω-アミノラウリン酸に変換することができる。
【0020】
西独国特許出願公開第3401415号明細書に記載された方法における加水分解が、可塑剤としてのラウロラクタムにより容易になったことが今や見出された。しかしながら、PA12廃棄物は、ほとんどの場合にラウロラクタムを含まない。
【0021】
それに加えて、米国特許第4170588号明細書(US 4,170,588 A)には、80℃で硫酸でポリラウロラクタムを加水分解する方法が記載されている。
【0022】
それに応じて、本発明の課題は、ポリアミド12廃棄物を加水分解する改良法を提供することにあった。
【0023】
この課題を解決する方法が、目下驚くべきことに見出された。
【0024】
発明の簡単な説明
それに応じて、本発明は、ポリラウロラクタムを加水分解する方法に関するものであって、
ポリラウロラクタムを硫酸で、125℃~190℃、好ましくは140℃~180℃、より好ましくは150℃~170℃、よりいっそう好ましくは160~165℃の温度でω-アミノラウリン酸へと開裂させる。
【0025】
発明の詳細な説明
硫酸でのポリラウロラクタムの加水分解が、従来技術に記載された方法に比べてより高い収率で進行することが驚くべきことに見出された。
【0026】
本発明による方法において使用されるポリラウロラクタムは、別に限定されない。好ましくは、リサイクルされうる材料(PA12廃棄物)が利用される。
【0027】
該ポリラウロラクタムは、殊に粉末として使用される、それというのも、それにより、その加水分解を表面積の増大により促進することができるからである。適した粉末状PA12は、例えば、欧州特許出願公開第0911142号明細書(EP 0 911 142 A1)に記載されている。このためには、PA12は、本発明による方法において使用される前に、当業者に公知の方法を用いて粉末へと粉砕することができる。
【0028】
本発明により使用されるPA12は、前記の構造(I)の繰返し単位を含み、ここで、繰返し単位の(*)で示された結合は、隣接する繰返し単位の(**)で示された結合に結合する。
好ましくは、本発明により使用されるPA12は、その際に、1000~106g/mol、好ましくは3000~200000g/mol、より好ましくは15000~150000g/mol、より好ましくは25000~120000g/mol、よりいっそう好ましくは40000~95000g/mol、より好ましくは80000g/molのモル質量を有する。
【0029】
殊に、本発明は、低い含有率のラウロラクタムを有するポリラウロラクタムの加水分解に適している。好ましくは、それぞれ、PA12とラウロラクタムとの質量の和を基準として、<4.9重量%、好ましくは<4.0重量%、より好ましくは<3.0重量%、よりいっそう好ましくは<1.0重量%、さらによりいっそう好ましくは<0.01重量%のラウロラクタムの含有率を有するポリラウロラクタムが使用される。
【0030】
殊に、本発明は、低い含有率のω-アミノラウリン酸を有するポリラウロラクタムの加水分解に適している。好ましくは、それぞれ、PA12とω-アミノラウリン酸との質量の和を基準として、<4.9重量%、好ましくは<4.0重量%、より好ましくは<3.0重量%、よりいっそう好ましくは<1.0重量%、さらによりいっそう好ましくは<0.3重量%のω-アミノラウリン酸の含有率を有するポリラウロラクタムが使用される。
【0031】
このことは、本方法を、殊に、ラウロラクタム製造からの残留物が加水分解されて、加水分解されうる出発物質中の高い割合のラウロラクタムをもたらす西独国特許出願公開第3401415号明細書における方法とは、区別するものである。
【0032】
それに対して、本発明による方法における硫酸での加水分解は、低い含有率のラウロラクタム及びω-アミノラウリン酸により特徴付けられる、リサイクルされうる材料の使用に特に好適である。
【0033】
該加水分解は、当業者に公知の方法により、実施することができる。
【0034】
本発明による方法における温度は、125℃~190℃、好ましくは140℃~180℃、より好ましくは150℃~170℃、よりいっそう好ましくは160~165℃である。
【0035】
本発明による方法における圧力は、好ましくは1bar~100bar、好ましくは10bar~60barの範囲内である。
【0036】
典型的には、加水分解されうるポリラウロラクタムは、反応容器中、例えば貴金属、例えば金又は特殊鋼で被覆されたオートクレーブ中に装入され、かつ該硫酸と混合される。
【0037】
該硫酸はその際に、通常、水溶液であり、ここで、該水溶液中の硫酸の含有率は別に限定されない。
【0038】
該水溶液中の硫酸の含有率は、好ましくは10~90重量%の範囲内、好ましくは20~80重量%、より好ましくは30~50重量%、よりいっそう好ましくは35~40重量%である。
【0039】
使用される硫酸対使用されるポリラウロラクタムの比は、同様に別に限定されない。殊に、使用される硫酸対使用されるPA12の重量の比が、1:0.1~1:1の範囲内、好ましくは1:0.2~1:0.8の範囲内、好ましくは1:0.3~1:0.7の範囲内、より好ましくは1:0.4~1:0.6の範囲内、よりいっそう好ましくは1:0.45~1:0.51の範囲内であるような量で硫酸が使用される。
【0040】
本発明による方法は、使用されるPA12の少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、よりいっそう好ましくは少なくとも90重量%、さらにより好ましくは少なくとも99重量%が反応されるまで、好ましくは実施される。
【0041】
本発明による方法の選択的な特別な実施態様において、使用されるPA12の1~99重量%、好ましくは30~90重量%、好ましくは50~70重量%が反応された後に、該硫酸を中和する(すなわち殊に、この反応混合物において7のpHに調節する)ために水酸化アルカリが添加され、ついで別の水酸化アルカリが添加されて、残りのPA12が、加水分解触媒としてのこの別の水酸化アルカリと反応される。
【0042】
水酸化アルカリとして、殊に水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、好ましくは水酸化カリウムが使用される。
【0043】
この選択的な実施態様において、硫酸での低い含有率のラウロラクタム又は極めて似たω-アミノラウリン酸を有するPA12の加水分解が極めて良好に機能することを利用する。該PA12がある程度まで分解された際に、残りの加水分解による開裂を、ついで後続工程において、水酸化アルカリで実施することができる。
【0044】
この後続工程は、ついで好ましくは西独国特許出願公開第3401415号明細書に記載されたように実施することができる。
【0045】
殊に、水酸化アルカリは後続工程において、該硫酸の中和後に、未変換のポリラウロラクタム対残りの水酸化アルカリの重量の比が1:0.1~1:1の範囲内、好ましくは1:0.2~1:0.8の範囲内、好ましくは1:0.3~1:0.7の範囲内、より好ましくは1:0.4~1:0.6の範囲内、よりいっそう好ましくは1:0.45~1:0.51の範囲内であるような量で水酸化アルカリが残るような量で、使用される。
【0046】
該後続工程における温度は、好ましくは160℃~280℃、好ましくは180℃~250℃、より好ましくは200℃~230℃の範囲内である。
【0047】
該後続工程における圧力は、好ましくは1bar~100bar、好ましくは10bar~60barの範囲内である。
【0048】
該後続工程において、該水酸化アルカリは好ましくは水溶液として、より好ましくは水酸化アルカリ1~10重量%の濃度で、使用される。
【0049】
該後続工程が実施される場合には、開裂されたPA12のその他の後処理は、西独国特許出願公開第3401415号明細書に記載されたように実施することができる。
【0050】
以下の実施例は、本発明を説明するが、本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0051】
それぞれ<1%のラウロラクタム及びω-アミノラウリン酸の含有率を有するPA12の解重合を、多様な触媒及び温度条件で調べた。
【0052】
以下の触媒を試験した:KOH、H2SO4、H3PO4。
【0053】
転化率を、CDCl2+トリフルオロ酢酸無水物中での1H-NMRで求めた。
【0054】
以下の試験を実施した:
1.比較試験V1:H3PO4、320℃
PA12粉末6.66mgを、金被覆オートクレーブ中へ入れた。その後、H3PO4(85%)6.8mg及び水6.30mgを添加し、該オートクレーブをシールした。該オートクレーブを炉中で320℃に加熱し、この反応混合物をこの温度で4時間保持した。その後、この混合物を100K/minの速度で室温に冷却した。この反応混合物を、反応器から取り出し、水1g及び化学量論量のKOHの添加により中和した。この混合物を80℃及び200mbarで乾燥させた。該PA12の転化率は96%であった。
【0055】
2. 比較試験V2:H3PO4、300℃
PA12粉末5.9mgを、金被覆オートクレーブ中へ入れた。その後、H3PO4(85%)4.25mg及び水5.23mgを添加し、該オートクレーブをシールした。該オートクレーブを炉中で300℃に加熱し、この反応混合物をこの温度で4時間保持した。その後、この混合物を100K/minの速度で室温に冷却した。この反応混合物を、反応器から取り出し、水1g及び化学量論量のKOHの添加により中和した。この混合物を80℃及び200mbarで乾燥させた。該PA12の転化率は85%であった。
【0056】
3. 比較試験V3:H3PO4、250℃
PA12粉末7.17mgを、金被覆オートクレーブ中へ入れた。その後、H3PO4(85%)4.98mg及び水6.23mgを添加し、該オートクレーブをシールした。該オートクレーブを炉中で250℃に加熱し、この反応混合物をこの温度で4時間保持した。その後、この混合物を100K/minの速度で室温に冷却した。この反応混合物を、反応器から取り出し、水1g及び化学量論量のKOHの添加により中和した。この混合物を80℃及び200mbarで乾燥させた。該PA12の転化率は88%であった。
【0057】
4. 比較試験V4:H3PO4、220℃
PA12粉末6.95mgを、金被覆オートクレーブ中へ入れた。その後、H3PO4(85%)4.6mg及び水6.30mgを添加し、該オートクレーブをシールした。該オートクレーブを炉中で220℃に加熱し、この反応混合物をこの温度で4時間保持した。その後、この混合物を100K/minの速度で室温に冷却した。この反応混合物を、反応器から取り出し、水1g及び化学量論量のKOHの添加により中和した。この混合物を80℃及び200mbarで乾燥させた。該PA12の転化率は87%であった。
【0058】
5.比較試験V5:H3PO4、200℃
PA12粉末7.27mgを、金被覆オートクレーブ中へ入れた。その後、H3PO4(85%)5.43mg及び水6.20mgを添加し、該オートクレーブをシールした。該オートクレーブを炉中で200℃に加熱し、この反応混合物をこの温度で4時間保持した。その後、この混合物を100K/minの速度で室温に冷却した。この反応混合物を、反応器から取り出し、水1g及び化学量論量のKOHの添加により中和した。この混合物を80℃及び200mbarで乾燥させた。該PA12の転化率は100%であった。
【0059】
6.本発明による例E1:H2SO4、180℃
PA12粉末6.5mgを、金被覆オートクレーブ中へ入れた。その後、H2SO4(35%)8.62mgを添加し、該オートクレーブをシールした。該オートクレーブを炉中で180℃に加熱し、この反応混合物をこの温度で4時間保持した。その後、この混合物を100K/minの速度で室温に冷却した。この反応混合物を、反応器から取り出し、水1g及び化学量論量のKOHの添加により中和した。この混合物を80℃及び200mbarで乾燥させた。該PA12の転化率は100%であった。
【0060】
7.本発明による例E2:H2SO4、160℃
PA12粉末6.61mgを、金被覆オートクレーブ中へ入れた。その後、H2SO4(35%)8.63mgを添加し、該オートクレーブをシールした。該オートクレーブを炉中で160℃に加熱し、この反応混合物をこの温度で4時間保持した。その後、この混合物を100K/minの速度で室温に冷却した。この反応混合物を、反応器から取り出し、水1g及び化学量論量のKOHの添加により中和した。この混合物を80℃及び200mbarで乾燥させた。該PA12の転化率は98%であった。
【0061】
8.比較試験V6(西独国特許出願公開第3407415号明細書(DE 3407415 A1)に相当):KOH、320℃
PA12粉末30.0gを、ニッケル被覆オートクレーブ中へ入れた。その後、水中KOH溶液(50%)18.95gを添加し、該オートクレーブをシールした。該オートクレーブに窒素を圧入して28barにし、かつ320℃に加熱した。この反応混合物をこの温度で4時間保持した。その後、この混合物を100K/minの速度で室温に冷却し、圧力を解放した。この反応混合物を、反応器から取り出し、水中に溶解させ、硫酸13gの添加により中和した。この混合物を70℃及び100mbarで乾燥させた。該PA12の転化率は94%であった。
【0062】
9.比較試験V7(西独国特許出願公開第3407415号明細書に相当):KOH、300℃
PA12粉末7.42mgを、金被覆オートクレーブ中へ入れた。その後、水中KOH溶液(50%)4.03mgを添加し、該オートクレーブをシールした。該オートクレーブを炉中で300℃に加熱した。この反応混合物を、この温度で4時間保持し、ついで100K/minの速度で室温に冷却した。その後、この混合物を室温に冷却した。この反応混合物を、反応器から取り出し、水1g及び化学量論量のリン酸の添加により中和した。この混合物を70℃及び100mbarで乾燥させた。該PA12の転化率は78%であった。
【0063】
10.比較試験V8(西独国特許出願公開第3407415号明細書に相当):KOH、280℃
PA12粉末7.17mgを、金被覆オートクレーブ中へ入れた。その後、水中KOH溶液(50%)4.42mgを添加し、該オートクレーブをシールした。該オートクレーブを炉中で280℃に加熱した。この反応混合物を、この温度で4時間保持し、ついで100K/minの速度で室温に冷却した。その後、この混合物を室温に冷却した。この反応混合物を、反応器から取り出し、水1g及び化学量論量のリン酸の添加により中和した。この混合物を70℃及び100mbarで乾燥させた。該PA12の転化率は78%であった。
【0064】
11.比較試験V9(西独国特許出願公開第3407415号明細書に相当):KOH、280℃
PA12粉末6.80mgを、金被覆オートクレーブ中へ入れた。その後、水中KOH溶液(50%)0.95mgを添加し、該オートクレーブをシールした。該オートクレーブを炉中で320℃に加熱した。この反応混合物を、この温度で4時間保持し、ついで100K/minの速度で室温に冷却した。その後、この混合物を室温に冷却した。この反応混合物を、反応器から取り出し、水1g及び化学量論量のリン酸の添加により中和した。この混合物を70℃及び100mbarで乾燥させた。該PA12の転化率は2%であった。
【0065】
12.比較試験V10:触媒なし、320℃
PA12粉末7.62mgを、ニッケル被覆オートクレーブ中へ入れた。その後、水3.91mgを添加し、該オートクレーブをシールした。該オートクレーブを炉中で320℃に加熱した。この反応混合物を、この温度で4時間保持し、ついで100K/minの速度で室温に冷却した。この反応混合物を、反応器から取り出し、80℃及び200mbarで乾燥させた。該PA12の転化率は6%であった。
【0066】
以下の第1表は、該試験及び比較試験の結果をまとめる。
第1表
【表1】
【0067】
これらの結果から、H2SO4の添加が、特に低い温度で、すなわち190℃及び160℃ですでに、ほぼ定量的変換をもたらすことは明らかである。
【0068】
13.硫酸でのPA12の加水分解の温度依存性
硫酸でのPA12の加水分解の温度依存性を調べるために、以下の試験系列を実施した:
PA12粉末及びH2SO4(35%)を、金被覆オートクレーブ中に、それぞれ以下の第2表に記載された量で添加した。その後、該オートクレーブをシールした。該オートクレーブを、炉中で、以下の第2表に記載されたそれぞれの温度Tに加熱し(加熱速度5K/min)、この反応混合物をこの温度で4時間保持した。その後、この混合物を5K/minの速度で室温に冷却した。その後、PA12の残留含有率を決定した。
【0069】
【0070】
第2表に示された試験結果に基づき、125℃~190℃の温度範囲内の硫酸でのPA12の加水分解(E3~E5;E6~E8)が、驚くべきことに効率的に進行することは明らかである。
それに比べて、従来技術(米国特許第4170588号明細書)において行われる80℃の温度での加水分解(比較試験V11、V13)は、生産的ではない。比較試験V12及びV14は、そのうえ、230℃の温度でPA12の残留含有率が再び上昇し、そのため転化の効率が再び低下することを実証する。