(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】血液速度決定
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
A61B8/06
(21)【出願番号】P 2023532491
(86)(22)【出願日】2021-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2021083263
(87)【国際公開番号】W WO2022117469
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2024-04-18
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン クナイペンベルグ ルーク アントン エリ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ファン ローイ ヨハネス アントニウス
(72)【発明者】
【氏名】パラニサミー クリシュナモールティ
(72)【発明者】
【氏名】シュレポフ セルゲイ ワイ.
【審査官】宮川 数正
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-248304(JP,A)
【文献】特表2001-503654(JP,A)
【文献】特開2012-005690(JP,A)
【文献】特表2018-538100(JP,A)
【文献】特開平10-165400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の測定セッションで実行される、被検者の血管内の
平均血液速
度を導出する方法であって、
(a)第1の心周期において、
前記血管の超音波データを収集するステップと、
前記血管の半径方向断面にわたる異なる半径方向位置での複数の血液速度測定値を収集することに基づいて、前記超音波データを使用して、前記第1の心周期中の前記血管の前記半径方向断面にわたる血液速度プロファイルを決定するステップと、
を含む、方法において、
(b)1つ以上の後続の心周期において、
前記血管の超音波データを収集するステップと、
前記超音波データを使用して、前記血管の前記半径方向断面内の単一点での血液速度を測定するステップと、
前記単一点で測定された前記血液速度及び前記血液速度プロファイルに基づいて、前記血管の前記半径方向断面にわたる平均血液速度を計算するステップと、
を更に含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記単一点は、最大血液速度の点である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血液速度プロファイルを決定するステップは更に、前記異なる半径位置の各々についての異なる円周方向位置で血液速度測定値を収集するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(a)が1回実行され、(b)が、(a)の実行後に、(a)で取得した同じ血液速度プロファイルを使用して、複数の心周期について反復的に繰り返される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記被検者の少なくとも1つの血行動態パラメー
タを取得し、前記少なくとも1つの血行動態パラメータが1つ以上の事前定義された基準を満たすことの検出に応答して、(a)の再実行をトリガするステップを更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の事前定義された基準は、前記少なくとも1つの血行動態パラメータの閾値を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの血行動態パラメータは、(b)において収集した前記血管の前記超音波データの処理に基づいて取得される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(b)において、前記血管の前記単一点で前記血液速度を測定するステップは、スペクトルドップラー超音波データを使用して実行される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(a)において、前記血液速度プロファイルは、前記第1の心周期の間に、前記第1の心周期の異なる位相点で反復的に測定されて、前記第1の心周期の前記異なる位相点の各々について対応する速度プロファイルが収集される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(b)は、前記単一点での前記血液速度が決定された前記第1の心周期の位相点を決定するステップを含み、前記平均血液速度を計算するステップは、前記第1の心周期の対応する位相点で(a)において測定された前記血液速度プロファイルに基づいて実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(b)は更に、決定された前記平均血液速度に基づいて前記血管を通る血流
量を決定するステップを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(b)は更に、Bモード超音波データを使用して前記血管の前記半径方向断面の面積を決定するステップを含み、前記血流
量を決定するステップは、前記平均血液速度及び前記半径方向断面に基づいている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コード手段を含むコンピュータプログラムであって、プロセッサ上で実行されると、前記プロセッサに、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項14】
単一の測定セッション中に血管内の
平均血液速
度を決定する際に使用する処理装置であって、
(a)第1の心周期において、
前記血管の超音波データを受信し、
前記血管の半径方向断面にわたる異なる半径方向位置での複数の血液速度測定値を収集することに基づいて、前記超音波データを使用して、前記第1の心周期中の前記血管の前記半径方向断面にわたる血液速度プロファイルを決定する、処理装置において、更に、
(b)1つ以上の後続の心周期において、
前記血管の超音波データを受信し、
前記超音波データを使用して、前記血管の前記半径方向断面内の単一点での血液速度を測定し、
前記単一点で測定された前記血液速度及び前記血液速度プロファイルに基づいて、前記血管の前記半径方向断面にわたる平均血液速度を計算することを特徴とする、処理装置。
【請求項15】
被検者の少なくとも1つの血行動態パラメー
タを取得し、前記少なくとも1つの血行動態パラメータが1つ以上の事前定義された基準を満たすことの検出に応答して、(a)の再実行をトリガする、請求項14に記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に超音波データを使用して、血管内の血液速度の尺度を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液速度を使用して、多数の様々な血行動態パラメータを導出できる。その1つが血流量である。血流量は、心拍出量と組織灌流にも関連しているため、心血管状態を評価するための貴重なパラメータである。
【0003】
血管を通る血流
量は、血管を通る血液速度と血管の断面積とに依存する。しかし、血液速度は半径方向の断面によって変化する。非侵襲的に血液速度を推定するために、3つの主なアプローチが分類できる。これらについては、血管内の半径方向の場所(x軸)の関数としての血液速度(y軸)を概略的に示した
図1を参照して以下に概説する。
【0004】
第1のアプローチでは、Bモード画像(真円度を仮定している)から血管の直径が推定され、ドップラーゲートサイズが小さいスペクトルドップラー超音波を使用して、血管の半径方向中心で最大血液速度が測定される。最大速度測定のためのドップラーゲート設定は、
図1のバー12に概略的に示されている。最大速度測定は点線14で概略的に示されている。所定の半径方向速度プロファイル18(血管内の半径方向測定位置の関数としての血液速度)が適用されると仮定される。例えば末梢血管系の場合は放物線状、大動脈弓のように流れが大きな加速度の影響を受ける場所の場合は平坦である。測定された最大速度14は、仮定される速度プロファイルに基づいて平均速度に変換される。次に、ボリューム流量が、測定された平均速度と血管の断面面積との積として計算される。
【0005】
血管内の速度プロファイルは実際には変化する可能性があるため、この方法は正確性を欠いている。ただし、この方法は、1つの小さなサンプルボリュームからのデータのみを収集して処理すればよいので、比較的高速である。
【0006】
第2のアプローチでは、例えば血管の直径の全体又は大部分をカバーするより大きなスペクトルドップラーゲート22を使用できる。その結果、サンプルボリューム内で収集されたドップラーシフト測定値は、血管内の平均流速を表す。このアプローチで得られた例示的な速度測定値は点線24で示されている。
【0007】
しかし、この方法の精度は、超音波強度の均一性とサンプルボリューム内の散乱体の分布とに強く依存する。均一照射条件が満たされている場合、ドップラー信号のパワースペクトル密度はサンプルボリューム内の赤血球速度の分布を表し、空間平均速度を強度加重平均ドップラーシフトから計算できる。しかし、この条件が満たされていない場合、結果が正確でない可能性がある。
【0008】
第3のアプローチは、異なる半径方向位置で複数の血液速度測定値を収集することに基づいている。例えば異なる場所をカバーする複数のスペクトルドップラーゲート又はカラードップラーを使用して、血管内の速度プロファイルを決定する。
図1は、一連の円28で複数の個々の速度測定値を概略的に示している。これらは、血管内での測定の半径方向の場所(x軸)の関数としての速度測定値(y軸)を示す。複数の速度測定値に対応するドップラー超音波測定ゲートは、線30で示されている。複数の流速測定値28を使用して、血管半径に対して収集された速度プロファイルを積分することで、平均流速を計算できる。この方法では、小さなサンプルボリューム(即ち、局所的な測定位置)が正確である必要がある。しかし、複数の測定を行う必要があるため、より大きな計算能力が必要となり、実装態様によってはより多くの超音波送信イベントが必要になる。したがって、この方法は処理が遅く、より多くのリソースを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
血液速度を測定する新しいアプローチが有用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特許請求の範囲によって規定される。
【0011】
本発明の一態様による実施例によれば、被検者の血管内の血液速度の尺度を決定する方法が提供される。この方法は、
(a)第1の心周期において、
血管の超音波データを収集するステップと、
血管の半径方向断面にわたる異なる半径方向位置での複数の血液速度測定値を収集することに基づいて、超音波データを使用して、心周期中の血管の半径方向断面にわたる血液速度プロファイルを決定するステップと、
を含み、
(b)1つ以上の後続の心周期において、
血管の超音波データを収集するステップと、
超音波データを使用して、血管の半径方向断面内の単一点での血液速度を測定するステップと、
単一点で測定された速度及び速度プロファイルに基づいて、血管の半径方向断面にわたる平均血液速度を計算するステップと
を含む。
【0012】
好ましくは、この方法は、単一の測定セッション又は検査セッションで実行される。つまり、(a)及び(b)は同じ測定セッション又は検査セッションで実行される。
【0013】
上述したように、血液速度を決定する様々な既知のアプローチが存在している。その1つは、血管の異なる半径方向位置での血液速度の複数の測定値を収集し、速度測定値のセット全体を積分することによって決定される「平均」速度に基づいて流量を決定することである。このアプローチが最も正確である。第2のより高速なアプローチは、1つの半径方向位置で単一の速度測定値のみを取り、事前定義された変換関数又は伝達関数に基づいて断面全体の「平均」速度を推定することである。これは精度が低いが、速度が速くなる。
【0014】
本発明の実施形態は、両方のアプローチの利点を最適化することに基づいている。特に、本方法は、第1のフェーズと第2のフェーズとを含む。第1のフェーズ(a)では、血管の半径方向断面にわたって複数の速度測定値を収集することに基づいて、特定の患者の速度プロファイルが決定される。次に、同じ検査セッションの第2のフェーズ(b)では、単一の速度測定値のみを収集し、計算された被検者固有の速度プロファイルを使用して、それを平均速度に正確に変換することに基づいて、後続の心周期の「平均」速度が計算される。これを使用して血流量を決定できる。
【0015】
したがって、本発明の実施形態は、患者の速度プロファイルを明示的に計算することにより、速度積分アプローチの精度の利点を達成する一方で、この方法で先に決定した同じ単一の速度プロファイルを再使用することで、推定速度アプローチの速さの利点も依然として達成する。本方法は、速度プロファイル推定の処理及び時間要求を効率的に前倒しにする。つまり、後続の速度計算ははるかに迅速に行われる。
【0016】
速度プロファイルを決定するステップは、血管の直径又は半径(血管の半径方向の断面)に及ぶ異なる半径方向位置での血液速度の測定値のセットを収集することを含む。
【0017】
つまり、速度プロファイルは、血管の半径方向断面にわたる半径方向位置の関数としての血流速度の表現を効果的に含んでいる。
【0018】
導出した速度プロファイルの記録は、ローカル又はリモートのデータストアに保存される。速度プロファイル全体の記録を保存する代わりに、比率又は変換係数が計算されてもよい。これは、単一の速度測定値(最大速度値など)と平均速度(プロファイルの導出に使用された複数の測定値から計算される)との比率である。この比率又は変換係数は保存されて、フェーズ(b)において、その後に収集した単一の速度測定の値を平均速度の値に変換するために使用される。
【0019】
半径方向断面とは、血管の長手方向軸に直交する断面を意味する。
【0020】
1つ以上の実施形態に従って、血管の単一点で血液速度を測定するステップは、スペクトルドップラー超音波データを使用して実行される。これはパルス波ドップラー超音波データであってもよい。
【0021】
速度プロファイルは、平均血液速度の決定と同時に測定される。好ましくは、(a)及び(b)は、同じ測定セッションで実行される。いくつかの実施例では、(a)及び(b)において収集した超音波データは、同じ測定位置から収集される。
【0022】
同じ測定セッションとは、フェーズ(b)が、フェーズ(a)の実行直後に実行されることを意味する。フェーズ(b)は、フェーズ(a)と同じ超音波トランスデューサユニット(プローブなど)を使用して実行される。フェーズ(b)は、超音波トランスデューサユニットを用いて、身体に対して、フェーズ(a)と同じ位置で実行される。フェーズ(b)は、フェーズ(a)の後で、フェーズ(a)と比べて移動していない超音波トランスデューサユニットを用いて実行される。
【0023】
いくつかの実施例では、(a)及び(b)において収集した超音波データは、同じ超音波トランスデューサユニットを使用して収集される。超音波トランスデューサユニットは、(a)と(b)との間で静止したままにしておいてよい。
【0024】
好ましい実施例では、血管の単一点で収集された血液速度測定値が、最大血流速度を表す。速度プロファイルを使用して、血管の直径にわたる平均血液速度の正確な推定を決定できる。以下で更に説明するように、これは血管の半径方向の中心にある点である場合もあれば、血管の形状によっては中心からオフセットして配置される場合もある。
【0025】
最大速度の点を決定する様々なやり方がある。最大速度の場所を特定する手順を実行できる。これには反復的なゲート調整手順が含まれる。この手順では、初期のゲート場所が選択され、設定されたゲートサイズ及び位置が推定速度プロファイルにおける最大速度の場所とどの程度よく一致するかを示す品質係数を決定することに基づいて調整される。
【0026】
1つ以上の実施形態に従って、速度プロファイルを決定するステップは更に、異なる半径方向位置の各々について異なる円周方向位置で血液速度測定値を収集するステップを含む。したがって、これにより、異なる半径方向位置及び円周方向位置での血液速度測定値を含む2D速度プロファイルが提供される。
【0027】
1つ以上の実施形態に従って、フェーズ(a)は1回実行され、フェーズ(b)は、(a)の実行後に、(a)で取得した同じ速度プロファイルを使用して、複数の心周期について反復的に繰り返される。したがって、同じ速度プロファイルが複数の測定インスタンスに再使用され、処理リソースが節約され、効率が向上される。
【0028】
1つ以上の実施形態に従って、本方法は更に、被検者の少なくとも1つの血行動態パラメータの指示を取得し、その少なくとも1つの血行動態パラメータが1つ以上の事前定義された基準を満たすことの検出に応答して、(a)の再実行をトリガするステップを含む。1つ以上の事前定義された基準には、例えば少なくとも1つの血行動態パラメータの閾値が含まれている。基準には、少なくとも1つの血行動態パラメータが閾値を超えているか、閾値を下回っているかが含まれている。
【0029】
方法全体を通して、評価手順が反復的に実行されてもよい。この評価手順では、少なくとも1つの血行動態パラメータの尺度が取得され、1つ以上の事前定義された基準が満たされているかどうかが決定される。これらの基準は、ローカル又はリモートのデータストアから取得されてもよい。
【0030】
フェーズ(a)の実行後にフェーズ(b)を反復的に再実行することが想定されている。つまり、平均速度の複数の反復的な測定値が収集され、任意選択で血流量も(平均速度に基づいて)収集されることが想定されている。
【0031】
(b)の複数回の実行中に少なくとも1つの血行動態パラメータがモニタリングされ、事前定義された基準が反復的にチェックされる。
【0032】
少なくとも1つの血行動態パラメータには、非限定的な例として、心拍数、血圧、血管直径、体積流量、ピーク速度、及び動脈コンプライアンスのうちの1つ以上が含まれる。
【0033】
1つ以上の実施形態に従って、少なくとも1つの血行動態パラメータは、(b)において収集した血管の超音波データの処理に基づいて取得される。したがって、これにより、血行動態パラメータを決定するために、更なる収集イベントを実行したり、更なるソースからのデータを使用したりする必要がなくなる。これにより、効率が向上される。
【0034】
1つの実施形態のグループに従って、速度プロファイルが収集された心周期内の位相点が計算に考慮される。
【0035】
いくつかの実施例では、速度プロファイルは、第1の心周期の間に、心周期の異なる位相点で反復的に測定されて、心周期の異なる位相点の各々について対応する速度プロファイルが収集される。
【0036】
この場合、方法のフェーズ(b)は、単一の点での速度が決定された心周期の位相点を決定するステップを含み、平均速度の計算は、心周期の対応する位相点でフェーズ(a)において測定された速度プロファイルに基づいて実行される。
【0037】
血液速度の測定値には多くの有用な用途がある。例えば様々な異なる血行動態パラメータの決定に使用できる。1つの実施形態のセットに従って、血液速度測定値を使用して血流量を決定できる。方法のフェーズ(b)は、決定された平均血液速度に基づいて血管を通る血流量を決定する更なるステップを含む。フェーズ(b)は更に、Bモード超音波データを使用して血管の半径方向断面の面積を決定するステップを含み、血流量を決定するステップは、平均血液速度及び半径方向断面に基づいている。
【0038】
本発明の更なる態様による実施例は、コード手段を含むコンピュータプログラム製品を提供する。コード手段は、プロセッサ上で実行されると、プロセッサに、上記若しくは後述の任意の実施例若しくは実施形態に従う又は本出願の任意の請求項に従う方法を実行させる。
【0039】
本発明の更なる態様に従う実施例は、単一の測定セッション中に血管内の血液速度の尺度を決定する際に使用する処理装置を提供する。この処理装置は、
(a)第1の心周期において、
血管の超音波データを受信し、
血管の半径方向断面にわたる異なる半径方向位置での複数の血液速度測定値を収集することに基づいて、超音波データを使用して、心周期中の血管の半径方向断面にわたる血液速度プロファイルを決定し、
(b)1つ以上の後続の心周期において、
血管の超音波データを受信し、
超音波データを使用して、血管の半径方向断面内の単一点での血液速度を測定し、
単一点で測定された血液速度及び血液速度プロファイルに基づいて、血管の半径方向断面にわたる平均血液速度を計算する。
【0040】
処理装置は更に、被検者の少なくとも1つの血行動態パラメータの指示を取得し、少なくとも1つの血行動態パラメータが1つ以上の事前定義された基準を満たすことの検出に応答して、(a)の再実行をトリガする。
【0041】
1つ以上の実施形態に従って、少なくとも1つの血行動態パラメータは、(b)において収集した血管の超音波データの処理に基づいて取得される。
【0042】
1つ以上の実施形態に従って、(a)において、速度プロファイルは、第1の心周期の間に、心周期の異なる位相点で反復的に測定されて、心周期の異なる位相点の各々について対応する速度プロファイルが収集される。
【0043】
フェーズ(b)は、中央点での速度が決定された心周期の位相点を決定することを含み、平均速度の計算は、心周期の対応する位相点でフェーズ(a)において測定された速度プロファイルに基づいて実行される。
【0044】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明する実施形態から明らかになり、また、当該実施形態を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明を更に深く理解し、本発明がどのように実行されるかをより明確に示すために、ほんの一例として添付の図面を参照する。
【0046】
【
図1】
図1は、血液速度を推定する既知のアプローチのセットを概略的に示す。
【
図2】
図1は、1つ以上の実施形態による例示的な方法のステップの概要を説明する。
【
図3】
図3は、速度プロファイルの決定に使用する複数の半径方向点での速度測定値の収集を示す。
【
図6】
図6は、単一の半径方向場所での速度測定値の収集を示す。
【
図7】
図7は、2D速度プロファイルを決定するための速度測定の収集を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、図を参照して説明される。
【0048】
詳細な説明及び具体的な実施例は、装置、システム、及び方法の模範的な実施形態を示しているが、説明のみを目的としたものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではないことが理解されるべきである。本発明の装置、システム、及び方法のこれらの及び他の特徴、態様並びに利点は、次の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からよりよく理解されるようになるであろう。図は単なる概略図であり、縮尺どおりに描かれていないことが理解されるべきである。また、図全体で同じ参照番号を使用して、同じ部分又は類似の部品を示すことが理解されるべきである。
【0049】
本発明は、血管内の血液速度を推定する方法を提供する。血液速度は、任意選択で、血管を通る血流量の尺度を導出するために使用される。この方法は2つの段階を含む。第1の段階では、異なる位置で、超音波データを使用して、血液速度の複数の測定値が収集される。これに基づいて、速度プロファイル(速度は血管断面にわたる測定場所に応じたものである)が決定される。第2の段階では、1つ以上の後続の心周期において、新しい超音波データが収集され、単一の場所(又は、速度プロファイルの導出に使用された場所よりも少ない1つ以上の選択された場所)において、血液速度測定値が収集される。単一の血流速度測定値は、好ましくは最大速度の場所に対応している。この単一の測定値を、被検者について既に収集されているパーソナライズされた速度プロファイルと組み合わせて使用して、平均速度の尺度を導出する。
【0050】
本発明の実施形態は、速度プロファイルを一度測定し、次に単一の速度値(好ましくは最大速度)から平均速度への変換係数を使用して、流れを推定することで、上述の「仮定速度プロファイル」方法の速度と、上記のマルチゲートアプローチ(複数速度測定値)の精度とを組み合わせることを目的とする。上述したように、この変換係数は速度プロファイルに依存する。ほとんどの血管の速度プロファイルは放物線(変換係数0.5)と平坦(変換係数1)との間にあるため、プロファイルの正確でない仮定は、速度計算の大きな誤差につながる可能性がある。本発明の実施形態は、特定の被検者のためにパーソナライズされた速度プロファイルを測定することで精度を向上させる。しかし、後にこれを複数回の速度測定に再利用することで(前述のフェーズ(b)の繰り返される反復)、作業の不必要な繰り返しが回避され、効率及びフレームレートが向上される。精度を更に上げるために、1つ以上の特定の血行動態パラメータの閾値変化(血液速度又は流量の可能な変化を示す)を検出したことに応答して、速度プロファイルを再測定する。
【0051】
図2は、1つ以上の実施形態による、血液速度の尺度を取得する例示的な方法のステップの概要を説明する。この方法は、まず簡単に要約してから、様々なステップについてより詳細に説明する。この方法は、第1の段階又はフェーズ100、第2の段階又はフェーズ110とを含む。第2のフェーズは、第1のフェーズを1回実行した後に複数回繰り返すことができる。この2つのフェーズは、同じ1回の測定セッションで実行される。例えばフェーズ(b)110は、フェーズ(a)100の実行直後に実行される。フェーズ(b)は、フェーズ(a)と同じ超音波トランスデューサユニット(プローブなど)を使用して実行される。フェーズ(b)は、超音波トランスデューサユニットを用いて、身体に対して、フェーズ(a)と同じ位置で実行される。
【0052】
フェーズ(a)100は、被検者の第1の心周期において、血管の超音波データを収集すること(102)を含む。フェーズ(a)は更に、血管の半径方向断面にわたる異なる半径方向位置での複数の血液速度測定値を収集することに基づいて、超音波データを使用して、心周期中の血管の半径方向断面にわたる血液速度プロファイルを決定すること(104)を含む。フェーズ(a)は更に、任意選択で、速度プロファイルの記録を保存することを含む。或いは、血管内の特定の1つの場所(最大速度の場所など)からの速度値と速度値の平均との間の計算された比率又は変換係数の記録が保存されてもよい。
【0053】
方法のフェーズ(b)は、1つ以上の後続の心周期において、血管の超音波データを収集すること(112)と、超音波データを使用して血管の半径方向断面内の単一の場所又は領域での血液速度の尺度を取得すること(114)と、単一点で測定された速度と速度プロファイル(又は計算された比率若しくは変換係数)に基づいて、血管の半径方向断面にわたる平均血液速度を計算すること(116)とを含む。
【0054】
有利な実施形態では、フェーズ(a)は1回実行され、フェーズ(b)は、フェーズ(a)の実行後に、フェーズ(a)で取得した同じ速度プロファイルを使用して、複数の心周期について反復的に繰り返される。
【0055】
フェーズ(a)に関して、
図3は、血管42の半径方向断面にわたる異なる半径方向位置での複数の血液速度測定値28の収集を概略的に示している。
図3は、血管の長手方向寸法lと平行な長手方向断面にわたる血管42を示している。半径方向断面を定義する半径方向平面は、
図3に示す平面と直交する。
【0056】
複数の速度測定値28の収集は、例えばスペクトルドップラー超音波(パルス波ドップラーなど)やカラードップラーイメージングを使用して行われる。スペクトルドップラー(パルス波ドップラーなど)を使用する場合、複数の速度測定値は、対応する複数の小幅(空間)ゲートを使用して収集される。ゲーティングは、単一の超音波データ収集シーケンスで捕捉されたデータに、収集後に適用される(即ち、収集したスペクトルドップラー超音波データの後処理で適用される)か、複数のゲーティングされた収集を実行して適用される。後者のアプローチでは、超音波ビームを各ゲートに最適に集束できるため、精度がより高くなる。ただし、これによりスキャン時間は長くなる。したがって、データは単一の収集イベントで収集されるが、収集したデータには異なるゲートの各々に適したデータが含まれているように構成されている。つまり、異なるゲートのデータが同時に収集される。そのためには、超音波ビームが血管幅全体に沿って適切に集束されている単一の収集が実行される。この場合、ゲートは収集後に適用される。
【0057】
(血管断面にわたる各場所における)各速度測定に必要なゲートは、事前に決定することも、動的に設定することもできる。
【0058】
カラードップラーイメージングでは、各場所の測定値は、その場所を含む小さな空間的画像領域にわたる速度値に基づいて取得される。例えば断面を複数の同じサイズの半径方向スライスに分割し、各々の速度測定が、各々の平均カラードップラーデータに基づいて取得される。
【0059】
複数の速度測定値を使用して、半径方向断面にわたる速度プロファイルが決定される。速度プロファイルとは、半径方向断面内の位置の関数としての血液速度のプロファイルを意味する。
【0060】
図4に、1つの例示的な速度プロファイルを概略的に示している。
図4では、速度をx軸で、半径方向位置をy軸で示している。
図5に更なる例を示し、ここでは、速度をy軸で、半径方向位置をx軸で示し、速度測定値の計算された平均46を示している。
【0061】
速度プロファイルは、好ましくは、少なくとも、半径方向位置の関数として血液速度を表す。任意選択で、速度プロファイルは、半径方向位置と円周方向位置の両方の関数として速度を表す場合もある。この場合、複数の速度測定値が、異なる半径方向位置の各々について複数の円周方向位置で収集される。
【0062】
有利な実施形態では、収集した速度プロファイルに基づいて、複数の速度測定値のうちの最大速度測定値が特定され、複数の速度測定値の平均(例えば算術平均(mean))が計算される。この場合、平均速度に対する最大速度の比率が計算される。この比率は、測定された最大速度を平均速度測定値に変換する際に後で使用するために変換係数として保存される。
【0063】
速度プロファイルは単一の心周期の間に変化する可能性があるため、速度プロファイル(及び任意選択で変換係数)は、フェーズ(a)が実行される心周期内の複数の時点で測定される。そのため、速度プロファイル測定は通常、1回の心周期(約1秒)の間継続する。複数の心周期の位相点における速度プロファイルの平均を導出し、段階(b)の手順のための速度プロファイルとして使用されてもよい。或いは、以下で説明するように、方法の段階(b)では位相に依存する速度プロファイルを使用してもよい。
【0064】
方法のフェーズ(b)に関して、
図6は、収集した超音波データを使用する、血管の半径方向断面内の単一点での血液速度測定値28の収集を概略的に示している。これは、スペクトルドップラー超音波収集で収集される。この単一点で測定された速度は、以前に取得した速度プロファイルに基づいて平均血液速度に変換される。例えば単一の速度測定値が、半径方向断面内の場所xで取得される場合、速度プロファイルを参照して、プロファイル内の場所xでの速度値とプロファイル内の全ての値の平均速度との比率が特定される。この比率を単一の収集値に適用して、血管の平均速度値に変換する。
【0065】
上述したように、好ましい実施例では、フェーズ(b)で単一の場所又は領域で収集された血液速度測定値は、好ましくは、血管内の最大血液速度の場所と一致する場所又は領域である。速度プロファイルの中の最大速度測定値と速度プロファイルの中の平均速度との比率が事前に計算され、方法のフェーズ(b)における平均速度尺度を取得するために使用される。
【0066】
1つ以上の実施形態に従って、血管断面内の最大血液速度点の場所は、血管の半径方向中心の領域又は場所であると仮定される。
【0067】
ただし、この仮定は、例えば血管内の屈曲部のために、必ずしも正確ではない。したがって、1つ以上の実施形態に従って、この方法は、最大血液速度が発生する血管の半径方向断面(血管内腔の長手方向軸に直交する断面)内の場所を決定する更なるステップを含む。これは、フェーズ(a)で収集した複数の血液速度測定値、又はこれらの測定値から導出された速度プロファイルから決定できる。フェーズ(a)で測定した最大血液速度の場所の記録が保存される。フェーズ(b)では、単一の血液速度測定値を収集するために、フェーズ(a)で記録された最大血液速度の場所に基づいて、ドップラーゲートの位置及びサイズが設定される。
【0068】
しかし、更に複雑なのは、場合によっては、最大値の場所が、単一の心周期を通じて異なる場合があることである。例えば収縮期では、血管の中心から離れている可能性が高く、拡張期では血管の中心に近い可能性が高い。したがって、フェーズ(a)で決定された単一の最大速度場所に基づいてドップラーゲートを再配置するだけでは、最大精度が得られない場合がある。したがって、1つ以上の実施形態に従って、心周期における最大速度場所の小さな変動に対応するのに十分な幅の(即ち、可能な位置の範囲をカバーする)ドップラーゲートサイズが選択される。いくつかの実施例では、一心周期の間での最大速度位置の変動が、フェーズ(a)か、フェーズ(a)の前の専用の較正フェーズで測定又は追跡され、ゲート幅及び位置は、最大速度位置の全範囲をカバーするように選択され、例えば心周期にわたる中央値位置がゲート幅の中心に位置合わせされる。
【0069】
フェーズ(b)で平均速度を導出した後、方法は、平均速度尺度に基づいて血管を通る血流量の尺度を決定することを含む。例えばフェーズ(b)は、血管の半径方向断面の面積を決定することを更に含み、上記の血流量の決定は、平均血液速度と半径方向断面との積に基づいている。断面面積は、血管のBモード超音波イメージングを使用して導出される。血管のBモード画像から、血管の直径が決定され、断面面積が推定される(例えば真円度を仮定することによって)。画像解析アルゴリズムを適用して、より正確に面積が決定される。例えばモデルベースのセグメンテーションやエッジ検出技法を使用できる。
【0070】
Bモード超音波収集は、フェーズ(b)を繰り返し実行する際に、スペクトルドップラー収集と時間的にインターリーブされてもよい。つまり、フェーズ(b)の各反復は、スペクトルドップラーデータとBモードイメージングデータとを連続的に収集することを含み得る。
【0071】
上述のように、速度プロファイルは、第1の心周期(フェーズ(a))の間に、心周期の異なる位相点で反復的に測定されて、心周期の異なる位相点の各々について対応する速度プロファイルが収集される。
【0072】
段階(b)の各反復は、単一点での速度が決定された心周期の位相点を決定し、次に、心周期の対応する位相点で段階(a)において測定された速度プロファイルに基づいて平均速度を計算することを含む。
【0073】
この実施形態のセットに関して、フェーズ(a)及び(b)において収集された超音波データのフレームレートは異なる場合があるため、フェーズ(b)の反復においてデータが収集された心位相点と、フェーズ(a)において速度プロファイルが導出された複数の位相点のうちの1つとの間に正確な1対1の一致が常にあるとは限らない。この場合、最もよく一致する2つの心位相点(つまり、問題の位相点のいずれかの側に最も近い位相点)の速度プロファイル間で補間が実行される。
【0074】
一般的に、フェーズ(a)において収集した速度プロファイルと、最大速度から平均速度への変換係数は、血行動態に大きな変化が生じるまで正確なままであると仮定される。血行動態の変化は、非限定的な例として、心拍数、血圧、血管直径、心周期における平均血管直径、収縮期又は拡張期における血管直径、体積流量、ピーク速度、及び動脈コンプライアンスなどの様々な血行動態パラメータの範囲のいずれかにおいて観察される。
【0075】
したがって、1つ以上の実施形態に従って、方法は更に、被検者の少なくとも1つの血行動態パラメータの指示を取得し、その少なくとも1つの血行動態パラメータが1つ以上の事前定義された基準を満たすことの検出に応答して、フェーズ(a)の再実行をトリガすることを含む。
【0076】
1つ以上の事前定義された基準には、少なくとも1つの血行動態パラメータの閾値が含まれている。基準には、少なくとも1つの血行動態パラメータが閾値を超えているか、閾値を下回っているかが含まれている。
【0077】
方法全体を通して、評価手順が反復的に実行される。この評価手順では、少なくとも1つの血行動態パラメータの尺度が取得され、1つ以上の事前定義された基準が満たされているかどうかが決定される。これらの基準は、ローカル又はリモートのデータストアから取得されてもよい。
【0078】
フェーズ(a)の実行後にフェーズ(b)を反復的に再実行することが想定されている。つまり、平均速度の複数の反復的な測定値が収集され、任意選択で血流量も(平均速度に基づいて)収集されることが想定されている。
【0079】
フェーズ(b)の複数回の実行中に少なくとも1つの血行動態パラメータがモニタリングされ、事前定義された基準が反復的にチェックされる。
【0080】
なお、血圧と動脈コンプライアンスを除く上記の血行動態パラメータの全ては、取得した超音波測定データから直接導出できる。したがって、少なくとも1つの血行動態パラメータは、フェーズ(b)において収集された血管の超音波データの処理に基づいて取得できる。
【0081】
別のアプローチとして、速度プロファイルは、単純に固定の時間間隔(例えば用途によって30秒ごと)で再収集されてもよい。
【0082】
上述のように、フェーズ(a)では、速度プロファイルを決定することは更に、異なる半径方向位置の各々について異なる円周方向位置で血液速度測定値を収集することを含む。これにより、血管の半径方向断面全体にわたる異なる半径方向位置及び円周方向位置での血液速度測定値を含む2D速度プロファイルが提供される。
【0083】
これは
図7に概略的に示されている。
図7は、半径方向断面50にわたる複数の半径方向位置又はバンド54の各々内の複数の円周方向の場所52における測定値を含む、複数の速度測定28を示している。これから、2D速度プロファイルを導出でき、これは、半径方向断面内の半径方向及び円周方向位置の関数としての血液速度を示す。
【0084】
本発明の実施形態は、血液速度及び任意選択で血流量が長期間にわたってモニタリングされる超音波モニタリング用途において特定の有用性を有する。このような状況では、被検者の体動によって測定が妨げられる。体動によって、血管に対するスペクトルドップラー(パルス波ドップラー)の超音波ゲートの空間位置がずれてしまうからである。したがって、測定の精度を完全に回復するには、ゲート位置の再調整が必要になる。
【0085】
1つ以上の実施形態に従って、本方法は更に、患者の体動による外乱を検出し、これに応答して超音波収集ゲートの位置を調整することを含む。本方法は、検出された体動が所定の閾値を超えることに応答して、ゲート位置及びサイズの再調整をトリガすることを含む。
【0086】
患者の体動は、例えば患者(例えば患者の胸部)に結合された補助動きセンサ(加速度計など)を使用して検出される。更に又は或いは、体動は、フェーズ(b)で収集した超音波データに基づいて検出されてもよい。特に、患者の体動は通常、(ピーク収縮期)速度の突然の変化や、信号の消失(つまり、ドップラーゲートがもはや血管内にない場合)をもたらす。したがって、患者の体動は、速度の閾値変化の検出や、所定の期間を超える速度信号の消失の検出に基づいて検出される。
【0087】
また、例えば収集したデータがカラードップラー又はパワードップラー画像データである場合、収集した超音波画像データの中で血管の質量中心の位置の変化を検出することに基づいて体動を検出することも可能である。例えば、カラー又はパワードップラーデータに示されている血管に楕円をフィットさせ、楕円の動きが時間の経過とともに、例えばフェーズ(b)の複数回の反復にわたって追跡される。患者の体動は、閾値量を超える血管の動きが検出されること基づいて検出される。
【0088】
上述したように、1つ以上の血行動態パラメータの変化を検出することに応答して、ゲートの再位置決めもトリガされる。いくつかの実施例では、患者の体動の量と1つ以上の血行動態パラメータの変化との両方に基づく複合品質メトリックが定義される。ドップラーゲートの再調整は、この複合メトリックが閾値を下回ったことに応答してトリガされる。これらの両方の因子を組み合わせることで、再調整イベントの数が最小限に抑えられ、モニタリング時間が最大化される。
【0089】
本発明の更なる態様による実施例は、コード手段を含むコンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラム製品は、プロセッサ上で実行されると、当該プロセッサに、上記若しくは後述の任意の実施例若しくは実施形態に従う、又は本出願の任意の請求項に従う方法を実行させるように構成されている。
【0090】
本発明の更なる態様による実施例は、上記の若しくは後述する任意の実施例若しくは実施形態に従う、又は本出願の任意の請求項に従う方法を実行する処理装置を提供する。処理装置は、フェーズ(a)及びフェーズ(b)の各々における超音波データを受信する入出力部を含み、また、上記の実施例若しくは実施形態のいずれかに従う、又は本出願の任意の請求項に従う方法を実行する1つ以上のプロセッサを更に含む。
【0091】
処理装置は、一般に、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサを含む。処理装置は、単一の含有デバイス、構造体、又はユニット内に設置されても、複数の異なるデバイス、構造体、又はユニット間に分散されてもよい。したがって、特定のステップ又はタスクを実行するように適合又は構成されている処理装置への言及は、単独又は組み合わせのいずれかで、複数の処理コンポーネントのうちの任意の1つ又は複数によって実行されているそのステップ又はタスクに対応する。当業者は、そのような分散処理装置をどのように実装できるかを理解するであろう。処理装置は、データを受信し、更なるコンポーネントにデータを出力する通信モジュール又は入出力部を含む。
【0092】
処理装置の1つ以上のプロセッサは、ソフトウェアやハードウェアを使用して、様々なやり方で実装して、必要な様々な機能を実行することができる。通常、プロセッサは、ソフトウェア(例えばマイクロコード)を使用してプログラムされて、必要な機能を行う1つ以上のマイクロプロセッサを用いる。プロセッサは、一部の機能を行うための専用ハードウェアと、他の機能を行うための1つ以上のプログラム済みマイクロプロセッサ及び関連回路との組み合わせとして実装できる。
【0093】
本開示の様々な実施形態に用いられ得る回路の例としては、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
様々な実装形態では、プロセッサは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM(登録商標)などの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリなどの1つ以上の記憶媒体と関連付けられ得る。記憶媒体は、1以上のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、必要な機能を実行する1つ以上のプログラムでエンコードされ得る。様々な記憶媒体は、プロセッサ又はコントローラ内で固定されていても、そこに保存されている1つ以上のプログラムをプロセッサにロードできるように輸送可能であってもよい。
【0095】
開示された実施形態の変形例は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、実行され得る。特許請求の範囲において、語「含む」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形の要素は複数を排除するものではない。
【0096】
単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されているいくつかのアイテムの機能を果たしてもよい。
【0097】
特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを意味するものではない。
【0098】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される、光記憶媒体又は固体媒体などの任意の適切な媒体に格納/配布することができるが、インターネット又は他の有線若しくはワイヤレス通信システムを介してなど他の形式で配布することもできる。
【0099】
「~するように適応されている」という用語が、特許請求の範囲又は説明で使用されている場合、「~するように適応されている」という用語は「~するように構成されている」という用語と同等であることを意図していることに留意されたい。
【0100】
特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。