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特許7569942車両の走行制御支援システム、サーバ装置、および、車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】車両の走行制御支援システム、サーバ装置、および、車両
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
G08G1/09 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023557520
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 JP2021040676
(87)【国際公開番号】W WO2023079658
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】小山 哉
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-111343(JP,A)
【文献】特開2018-124791(JP,A)
【文献】特開2003-036495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両と複数のサーバ装置とが複数の基地局を通じた無線通信を実行して複数の前記車両の走行制御を複数の前記サーバ装置により支援する車両の走行制御支援システムであって、
複数の前記車両の各々は、
各々に設けられる自車センサの検出情報に基づく走行制御を実行可能な走行制御部と、
前記基地局を通じた無線通信により前記サーバ装置から、前記走行制御部の走行制御に用いる情報を取得する車両通信部と、を有し、
複数の前記サーバ装置の各々は、
複数の前記車両の各々と対応して生成されて、対応する前記車両の前記走行制御部が走行制御のために使用可能な情報を、前記基地局を通じた無線通信により前記車両通信部へ提供して、対応する前記車両の走行制御を支援する複数の個別支援部と、
複数の前記個別支援部の各々から、各前記個別支援部が対応している前記車両の情報を収集する上位収集部と、
前記上位収集部により収集された複数の前記車両の情報を用いて、複数の前記車両の走行状態に基づく各前記車両の走行制御のための上位支援情報を生成する上位支援部と、
前記上位支援部が複数の前記車両の各々へ提供するために生成した上位支援情報を、複数の前記車両の各々と対応して生成されている複数の前記個別支援部へ提供する上位提供部と、
の中の少なくとも1つを備えて、複数の前記サーバ装置の全体において複数の前記個別支援部、前記上位収集部、前記上位支援部、および前記上位提供部を備え、
複数の前記車両の各々と対応して生成される複数の前記個別支援部の各々は、
対応する前記車両から、前記自車センサの検出情報を取得し、
前記上位支援部から、対応する前記車両の走行環境に応じた上位支援情報を取得し、
対応する前記車両の前記走行制御部が前記上位支援情報にしたがって走行した場合に、前記自車センサの検出情報に基づいて認識可能な走行路または周辺物と干渉しないときには、対応する前記車両の前記走行制御部が走行制御のために使用可能な情報として、前記上位支援情報にしたがう情報を生成して、対応する前記車両の前記車両通信部へ送信し、
対応する前記車両の前記走行制御部が前記上位支援情報にしたがって走行した場合に、前記自車センサの検出情報に基づいて認識可能な走行路または周辺物と干渉するときには、対応する前記車両の前記走行制御部が走行制御のために使用可能な情報として、前記上位支援情報にしたがった走行を干渉が生じ難くなるように変更した情報を生成して、対応する前記車両の前記車両通信部へ送信する、
車両の走行制御支援システム。
【請求項2】
前記車両と対応して前記サーバ装置に備えられる前記個別支援部は、
対応する前記車両から前記基地局を通じた無線通信により前記自車センサの検出情報を取得し、
取得した前記自車センサの検出情報を処理して二次的な検出情報を生成し、
生成した二次的な検出情報を、対応する前記車両の前記車両通信部へ送信し、
対応する前記車両の前記走行制御部は、
前記車両通信部が受信した前記二次的な検出情報と、各々の前記車両に設けられる前記自車センサの検出情報と、を用いて走行制御を実行する、
請求項1記載の、車両の走行制御支援システム。
【請求項3】
前記個別支援部は、
対応する前記車両から前記自車センサにより前記車両の周辺を検出した空間情報を含む前記自車センサの検出情報を取得し、
取得した周辺の前記空間情報を処理して、前記車両の周辺の走行路の認識情報または前記車両の周辺物の認識情報を、前記二次的な検出情報として生成し、
生成した前記車両の周辺の走行路の認識情報または前記車両の周辺物の認識情報についての前記二次的な検出情報を、対応する前記車両の前記車両通信部へ送信する、
請求項2記載の、車両の走行制御支援システム。
【請求項4】
複数の前記サーバ装置に備えられる前記上位収集部は、
複数の前記個別支援部の各々から、複数の前記個別支援部の各々が対応している複数の前記車両の少なくとも位置に関する情報を収集し、
前記上位支援部は、
前記上位収集部により収集された複数の前記車両の位置を、高精度地図データに基づく走行路図にマッピングし、
複数の前記車両を前記マッピングした走行路図における走行状態に基づいて、各前記車両の前記走行制御部が各々の走行環境に応じた走行制御のために使用可能な上位支援情報を生成する、
請求項1から3のいずれか一項記載の、車両の走行制御支援システム。
【請求項5】
複数の前記サーバ装置の間での通信には、通信元と通信先との相互認証による仮想プライベートネットワークを用い、
走行により移動する各前記車両とそれに対応する前記個別支援部を備える前記サーバ装置との前記基地局を通じた通信には、前記サーバ装置の認証による仮想プライベートネットワークを用いる、
請求項1からのいずれか一項記載の、車両の走行制御支援システム。
【請求項6】
複数の前記サーバ装置には、
1乃至複数の前記基地局が設けられるエリアごとに設けられる複数のエリアサーバ装置が含まれ、
複数の前記車両の各々に対応して生成される複数の前記個別支援部は、
複数の前記エリアサーバ装置の中で、各前記車両の前記車両通信部が通信する前記基地局に対応する前記エリアサーバ装置に備えられ、
各前記車両の走行に応じて複数の前記エリアサーバ装置の間で動的に割り当てが切り替えられる、
請求項1からのいずれか一項記載の、車両の走行制御支援システム。
【請求項7】
複数の車両と複数のサーバ装置とが複数の基地局を通じた無線通信を実行して複数の前記車両の走行制御を複数の前記サーバ装置により支援する車両の走行制御支援システムに用いられるサーバ装置であって、
他の前記サーバ装置との間で、前記基地局を通じた無線通信を含むことがない有線接続により通信を実行するサーバ通信部と、
複数の前記車両の走行制御を複数の前記サーバ装置により支援する制御を実行するサーバ制御部と、を有し、
前記サーバ制御部は、
複数の前記車両の各々と対応して生成されて、対応する前記車両が走行制御のために使用可能な情報を、前記基地局を通じた無線通信により前記車両へ提供して、対応する前記車両の走行制御を支援する複数の個別支援部と、
複数の前記個別支援部の各々から、各前記個別支援部が対応している前記車両の情報を収集する上位収集部と、
前記上位収集部により収集された複数の前記車両の情報を用いて、複数の前記車両の走行状態に基づく各前記車両の走行制御のための上位支援情報を生成する上位支援部と、
前記上位支援部が複数の前記車両の各々へ提供するために生成した上位支援情報を、複数の前記車両の各々と対応して生成されている複数の前記個別支援部へ提供する上位提供部と、
の中の少なくとも1つの前記個別支援部または少なくとも前記上位支援部についての制御を実行するものであり
複数の前記車両の各々と対応して生成される複数の前記個別支援部の各々は、
対応する前記車両から、前記車両に設けられる自車センサの検出情報を取得し、
前記上位支援部から、対応する前記車両の走行環境に応じた上位支援情報を取得し、
対応する前記車両が前記上位支援情報にしたがって走行した場合に、前記自車センサの検出情報に基づいて認識可能な走行路または周辺物と干渉しないときには、対応する前記車両が走行制御のために使用可能な情報として、前記上位支援情報にしたがう情報を生成して、対応する前記車両へ送信し、
対応する前記車両が前記上位支援情報にしたがって走行した場合に、前記自車センサの検出情報に基づいて認識可能な走行路または周辺物と干渉するときには、対応する前記車両が走行制御のために使用可能な情報として、前記上位支援情報にしたがった走行を干渉が生じ難くなるように変更した情報を生成して、対応する前記車両へ送信する、
サーバ装置。
【請求項8】
車センサと、
前記自車センサの検出情報に基づく走行制御を実行可能な走行制御部と、
請求項1から7のいずれか一項記載の車両の走行制御支援システムの個別支援部により生成される走行制御部の走行制御に用いる情報を、前記基地局を通じた無線通信により前記サーバ装置から取得する車両通信部と、を有し、
前記車両通信部は、
前記自車センサの検出情報を、自車に対応する個別支援部が実現されている前記サーバ装置へ送信し、
前記個別支援部による前記自車センサの検出情報の処理により生成される二次的な検出情報を、自車に対応する個別支援部が実現されている前記サーバ装置から受信し、
前記走行制御部は、
前記車両通信部が受信した前記二次的な検出情報と、前記自車センサの検出情報と、を用いて走行制御を実行する、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御支援システム、サーバ装置、および、車両、に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両では、自動運転を目指した開発が進められている。
そして、自動車の自動運転は、たとえばレベル1からレベル5に分類されている。
日本の国土交通省によれば、レベル1の自動運転とは、ドライバ監視下において、たとえば自動ブレーキ、先行車追従、およびレーンキープの中の1つの運転支援を実行するものをいう。
レベル2の自動運転とは、ドライバ監視下において、たとえば自動ブレーキ、先行車追従、およびレーンキープの中の複数を組み合わせてそれによる特定条件下での運転支援を実行するものをいう。または、レベル2の自動運転とは、ドライバ監視下において、たとえば高速道路での自動追い越し、高速道路での分合流といった特定条件下での運転支援を実行するものをいう。
レベル3の自動運転とは、自動車の制御系の監視下において自動車の継続的な走行制御を試みるものであって、制御系がその監視判断に基づいてドライバへ介入を要求するものをいう。この場合、ドライバは、自動車の制御系からの介入要求があった場合には、その要求に対して責任を持って即時的に対応することが求められる。レベル3の自動運転には、たとえば高速道路での自動運転などが想定できる。
レベル4の自動運転とは、自動車の制御系の監視下において自動車の継続的な走行制御を試みるものであって、特定条件下においては制御系がドライバへの介入を要求することなく完全的な走行制御を実行できるものをいう。この場合、ドライバは、特定条件下においては自動車の制御系から介入が要求されることはない。特定条件下ではない場合には、ドライバは、自動車の制御系からの介入要求を受ける可能性があり、しかも、その要求に対して責任を持って即時的に対応することが求められる。レベル4の自動運転には、たとえば限定地域での無人自動運転移動サービス、高速道路での完全自動運転などが想定できる。
レベル5の自動運転とは、自動車の制御系の監視下において常にすべての走行制御を完全に実行するものをいう。この場合、ドライバは、自動車の走行中に、自動車の制御系からの介入要求を受けることはない。
【0003】
このように自動車といった車両の制御系には、高いレベルの自動運転に対応しようとするほど、複雑で高度な制御を実行することが求められることになる。
また、車両において高度な自動運転を実用化するためには、高度な自動運転のために必要な情報が得られるように、車両に多数の自律センサを設ける必要がある。
たとえば、レベル3、レベル4といった高レベルの走行制御を実行する場合、車両の制御系には、車両の周囲を検出するLidarや全周囲カメラなどを設けて、それらにより検出される周囲の空間情報に基づいて、車両の周辺の走行路や各種の周辺物の認識情報についての認識情報を生成する必要がある。また、車両の制御系は、これらの認識情報に基づいて、たとえば障害を避けながら車線での走行を維持するように走行制御を実行しなければならない。これは、レベル1、レベル2といったレベルの走行制御では、たとえば近距離の撮像画像に基づく車線のパターン認識に基づくレーンキープ制御や、近距離の撮像画像に基づく先行車のパターン認識に基づく車間維持制御(先行車追従制御)により実現可能であることと比べて、車両の処理負荷が格段に増大することを意味する。
また、車両は、移動するためのものであり、基本的に無給電状態となるその走行中において、多数の自律センサを動作させ、多数の自律センサの検出値に基づく検出情報を生成し、検出情報に基づく走行制御を実行することが求められる。このように高レベルの自動運転に対応するほど、自動車といった車両への要求性能が飛躍的に高まることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-027904号公報
【文献】特開2019-185232号公報
【文献】特開2019-145077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、たとえば自動車といった車両の自動運転では、車両と基地局を通じて通信可能なサーバ装置を用いて、高レベルな走行制御を実行する車両の負担を軽減することが考えられる(特許文献1、2)。また、特許文献3のように、車両と基地局を通じて通信可能なサーバ装置により交通情報を整理して車両へ提供することも考えられる。
しかしながら、サーバ装置により車両の走行制御を支援する場合、車両そのものにおいて情報を処理する場合と比べて、車両とサーバ装置との間での情報の送受に必要となる時間が必要になる。通信などによる遅延時間が、制御遅れとなる可能性がある。
特に、自動車といった車両は、移動するものである。このため、車両とサーバ装置との間の通信路には、基地局を通じた無線通信が含まれる。また、車両が移動することにより、車両が無線通信に使用する基地局を切り替えなければならない。このような環境下でサーバ装置により車両の走行を支援するためには、通信による制御の遅れを抑えた低遅延を実現し、しかも、基地局が切り替わる場合であってもその低遅延による遅延量が過度に変動しないように安定化できることが求められる。
【0006】
このように車両の走行制御では、上述したような複数の課題を総合的なバランスをとりながら解決して、車両の走行制御についてのサーバ装置の支援を実現できるようにすることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る車両の走行制御支援システムは、複数の車両と複数のサーバ装置とが複数の基地局を通じた無線通信を実行して複数の前記車両の走行制御を複数の前記サーバ装置により支援する車両の走行制御支援システムであって、複数の前記車両の各々は、各々に設けられる自車センサの検出情報に基づく走行制御を実行可能な走行制御部と、前記基地局を通じた無線通信により前記サーバ装置から、前記走行制御部の走行制御に用いる情報を取得する車両通信部と、を有し、複数の前記サーバ装置の各々は、複数の前記車両の各々と対応して生成されて、対応する前記車両の前記走行制御部が走行制御のために使用可能な情報を、前記基地局を通じた無線通信により前記車両通信部へ提供して、対応する前記車両の走行制御を支援する複数の個別支援部と、複数の前記個別支援部の各々から、各前記個別支援部が対応している前記車両の情報を収集する上位収集部と、前記上位収集部により収集された複数の前記車両の情報を用いて、複数の前記車両の走行状態に基づく各前記車両の走行制御のための上位支援情報を生成する上位支援部と、前記上位支援部が複数の前記車両の各々へ提供するために生成した上位支援情報を、複数の前記車両の各々と対応して生成されている複数の前記個別支援部へ提供する上位提供部と、の中の少なくとも1つを備えて、複数の前記サーバ装置の全体において複数の前記個別支援部、前記上位収集部、前記上位支援部、および前記上位提供部を備え、複数の前記車両の各々と対応して生成される複数の前記個別支援部の各々は、対応する前記車両から、前記自車センサの検出情報を取得し、前記上位支援部から、対応する前記車両の走行環境に応じた上位支援情報を取得し、対応する前記車両の前記走行制御部が前記上位支援情報にしたがって走行した場合に、前記自車センサの検出情報に基づいて認識可能な走行路または周辺物と干渉しないときには、対応する前記車両の前記走行制御部が走行制御のために使用可能な情報として、前記上位支援情報にしたがう情報を生成して、対応する前記車両の前記車両通信部へ送信し、対応する前記車両の前記走行制御部が前記上位支援情報にしたがって走行した場合に、前記自車センサの検出情報に基づいて認識可能な走行路または周辺物と干渉するときには、対応する前記車両の前記走行制御部が走行制御のために使用可能な情報として、前記上位支援情報にしたがった走行を干渉が生じ難くなるように変更した情報を生成して、対応する前記車両の前記車両通信部へ送信する。
【0008】
本発明の一形態に係るサーバ装置は、複数の車両と複数のサーバ装置とが複数の基地局を通じた無線通信を実行して複数の前記車両の走行制御を複数の前記サーバ装置により支援する車両の走行制御支援システムに用いられるサーバ装置であって、他の前記サーバ装置との間で、前記基地局を通じた無線通信を含むことがない有線接続により通信を実行するサーバ通信部と、複数の前記車両の走行制御を複数の前記サーバ装置により支援する制御を実行するサーバ制御部と、を有し、前記サーバ制御部は、複数の前記車両の各々と対応して生成されて、対応する前記車両が走行制御のために使用可能な情報を、前記基地局を通じた無線通信により前記車両へ提供して、対応する前記車両の走行制御を支援する複数の個別支援部と、複数の前記個別支援部の各々から、各前記個別支援部が対応している前記車両の情報を収集する上位収集部と、前記上位収集部により収集された複数の前記車両の情報を用いて、複数の前記車両の走行状態に基づく各前記車両の走行制御のための上位支援情報を生成する上位支援部と、前記上位支援部が複数の前記車両の各々へ提供するために生成した上位支援情報を、複数の前記車両の各々と対応して生成されている複数の前記個別支援部へ提供する上位提供部と、の中の少なくとも1つの前記個別支援部または少なくとも前記上位支援部についての制御を実行するものであり複数の前記車両の各々と対応して生成される複数の前記個別支援部の各々は、対応する前記車両から、前記車両に設けられる自車センサの検出情報を取得し、前記上位支援部から、対応する前記車両の走行環境に応じた上位支援情報を取得し、対応する前記車両が前記上位支援情報にしたがって走行した場合に、前記自車センサの検出情報に基づいて認識可能な走行路または周辺物と干渉しないときには、対応する前記車両が走行制御のために使用可能な情報として、前記上位支援情報にしたがう情報を生成して、対応する前記車両へ送信し、対応する前記車両が前記上位支援情報にしたがって走行した場合に、前記自車センサの検出情報に基づいて認識可能な走行路または周辺物と干渉するときには、対応する前記車両が走行制御のために使用可能な情報として、前記上位支援情報にしたがった走行を干渉が生じ難くなるように変更した情報を生成して、対応する前記車両へ送信する。
【0009】
本発明の一形態に係る車両は、自車センサと、前記自車センサの検出情報に基づく走行制御を実行可能な走行制御部と、上述する車両の走行制御支援システムの個別支援部により生成される走行制御部の走行制御に用いる情報を、前記基地局を通じた無線通信により前記サーバ装置から取得する車両通信部と、を有し、前記車両通信部は、前記自車センサの検出情報を、自車に対応する個別支援部が実現されている前記サーバ装置へ送信し、前記個別支援部による前記自車センサの検出情報の処理により生成される二次的な検出情報を、自車に対応する個別支援部が実現されている前記サーバ装置から受信し、前記走行制御部は、前記車両通信部が受信した前記二次的な検出情報と、前記自車センサの検出情報と、を用いて走行制御を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明において、複数の車両の走行制御を支援するために、複数のサーバ装置を用いる。また、複数の車両の各々は、各々に設けられる自車センサの検出情報に基づく走行制御を実行可能な走行制御部と、基地局を通じた無線通信によりサーバ装置から、走行制御部の走行制御に用いる情報を取得する車両通信部と、を有する。
そして、本発明では、複数の車両の走行制御を支援するための複数のサーバ装置の各々には、複数の車両の各々と対応して生成されて、対応する車両の走行制御部が走行制御のために使用可能な情報を、基地局を通じた無線通信により車両通信部へ提供して、対応する車両の走行制御を支援する複数の個別支援部と、複数の個別支援部の各々から、各個別支援部が対応している車両の情報を収集する上位収集部と、上位収集部により収集された複数の車両の情報を用いて、複数の車両の走行状態に基づく各車両の走行制御のための上位支援情報を生成する上位支援部と、上位支援部が複数の車両の各々へ提供するために生成した上位支援情報を、複数の車両の各々と対応して生成されている複数の個別支援部へ提供する上位提供部と、の中の少なくとも1つを備えるようにする。また、複数のサーバ装置の全体において、上述した複数の個別支援部、上位収集部、上位支援部、および上位提供部のすべてを備えるようにする。
このように、本発明では、複数のサーバ装置において、複数の車両に対応させた複数の個別支援部を実現する。各個別支援部は、対応する車両から取得する情報と、上位提供部から提供される上位支援情報とに基づいて、対応する車両の走行制御部が走行制御のために使用可能な情報を生成して、基地局を通じた無線通信により、対応する車両の車両通信部へ送信する。これにより、上位収集部、上位支援部、および上位提供部は、複数の車両の各々へ提供するために生成する上位支援情報を、複数のサーバ装置の範囲内にある複数の個別支援部へ提供することにより、複数の車両に対して提供することができる。上位収集部、上位支援部、および上位提供部は、基地局を通じた無線通信により複数の車両に対して直接的に提供することなく、安定した低遅延での処理とすることができる。車両が移動して無線通信に使用する基地局が切り替わるとしても、複数のサーバ装置におけるこれら一連の処理は、その切り替わりの影響をそのままで受けてしまうことはなく、安定した低遅延での処理とすることができる。車両の制御に遅れてしまうような過大な遅延は生じ難くなる。
しかも、本発明に係る複数の車両は、複数のサーバ装置において各々と対応して生成される複数の個別支援部から、車両の走行制御部が走行制御のために使用可能な情報を受信して、自車の走行制御に用いることができる。各車両の走行制御部は、たとえば上述したような個別支援部や上位提供部の処理を自ら実行することなく、その処理結果を受信により取得して自車の走行制御に用いることができる。各車両の処理負荷は、軽減され得る。各車両は、高レベルの自動運転に対応する走行制御を実行する場合であっても、複数のサーバ装置からの支援情報を取得して、負荷が抑えられた処理によりそれを実行することができる。自動車といった車両への要求性能は、抑えることができる。
このように、本発明では、車両の走行制御をサーバ装置により支援する際の複数の課題を総合的なバランスをとりながら解決して、車両の走行制御をサーバ装置により支援できるようにすることできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第一実施形態における自動車の制御系の構成図である。
図2図2は、図1の自動車の走行支援に用いることが可能な走行制御支援システムの一例の説明図である。
図3図3は、本発明の第一実施形態に係る自動車の走行制御支援システムの構成図である。
図4図4は、図3の各種のサーバ装置として用いることができるサーバ装置のハードウェア構成の説明図である。
図5図5は、図3の走行制御支援システムの複数のサーバ装置において、複数の自動車の走行制御を支援するために実現される各種機能の説明図である。
図6図6は、図3の走行制御支援システムにより走行支援を受けることが可能な自動車の走行制御のフローチャートである。
図7図7は、図5の個別支援部による、対応する自動車のための個別支援制御のフローチャートである。
図8図8は、図5の上位支援部による、複数の自動車の走行支援制御(上位支援制御)のフローチャートである。
図9図9は、図5の個別支援部を備える基地局サーバ装置における、複数の自動車に対応させた個別支援部の管理制御の一例のフローチャートである。
図10図10は、本発明の第二実施形態の個別支援部による、対応する自動車のための個別支援制御のフローチャートである。
図11図11は、図7の進路情報の生成処理の詳細なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0013】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態における自動車10の制御系の構成図である。
図1の自動車10は、車両の一例である。車両には、この他にもたとえば、モータサイクル、カート、パーソナルモビリティ、軌道上を走行する車両、がある。
【0014】
自動車10では、自動運転を目指した開発が進められている。日本の国土交通省では、自動車10の自動運転を、レベル1の基礎的な運転支援から、高度に自律的な完全自動走行のレベル5に分類している。
レベル1(L1)の自動運転とは、ドライバ監視下において、たとえば自動ブレーキ、先行車追従、およびレーンキープの中の1つの運転支援を実行するものをいう。
レベル2(L2)の自動運転とは、ドライバ監視下において、たとえば自動ブレーキ、先行車追従、およびレーンキープの中の複数を組み合わせてそれによる特定条件下での運転支援を実行するものをいう。または、レベル2の自動運転とは、ドライバ監視下において、たとえば高速道路での自動追い越し、高速道路での分合流といった特定条件下での運転支援を実行するものをいう。
レベル3(L3)の自動運転とは、自動車10の制御系の監視下において自動車10の継続的な走行制御を試みるものであって、制御系がその監視判断に基づいてドライバへ介入を要求するものをいう。この場合、ドライバは、自動車10の制御系からの介入要求があった場合には、その要求に対して責任を持って即時的に対応することが求められる。レベル3の自動運転には、たとえば高速道路での自動運転などが想定できる。
レベル4(L4)の自動運転とは、自動車10の制御系の監視下において自動車10の継続的な走行制御を試みるものであって、特定条件下においては制御系がドライバへの介入を要求することなく完全的な走行制御を実行できるものをいう。この場合、ドライバは、特定条件下においては自動車10の制御系から介入が要求されることはない。特定条件下ではない場合には、ドライバは、自動車10の制御系からの介入要求を受ける可能性があり、しかも、その要求に対して責任を持って即時的に対応することが求められる。レベル4の自動運転には、たとえば限定地域での無人自動運転移動サービス、高速道路での完全自動運転などが想定できる。
レベル5(L5)の自動運転とは、自動車10の制御系の監視下において常にすべての走行制御を完全に実行するものをいう。この場合、ドライバは、自動車10の走行中に、自動車10の制御系からの介入要求を受けることはない。
【0015】
図1の自動車10の制御系は、駆動制御部11、操舵制御部12、制動制御部13、運転操作部14、自車センサ部15、走行制御部16、車両通信部17、および、これらがケーブル19を用いて接続されるセントラルゲートウェイ装置18、を有する。自動車10の制御系には、図示していない他の制御部を備えてもよい。
【0016】
セントラルゲートウェイ装置18と、ケーブル19とは、自動車10の車ネットワークを構成する。車ネットワークには、たとえばCAN(Controller Area Network)規格、LIN(Local Interconnect Network)規格に準拠したものがある。車ネットワークは、この他にもたとえば、LAN(Local Area Network)規格、無線通信規格に準拠したものであってもよい。車ネットワークに接続される各制御部には、互いに異なる識別情報としてのIDが割り当てられる。車ネットワークに接続される各制御部は、基本的に周期的に、他の制御部へパケット化されたデータを出力する。パケットには、出力元の制御部のID(identification)情報と、出力先の制御部のID情報とが付加される。他の制御部は、接続されているケーブル19を監視し、ケーブル19上のパケットの出力先のID情報に自らのID情報または所定のブロードキャストID情報が含まれている場合、そのパケットのデータを取得し、データに基づく処理を実行する。また、セントラルゲートウェイ装置18は、接続されている複数のケーブル19を監視し、出力先の制御部が出力元の制御部とは異なるケーブル19に接続されている場合、出力先の制御部が接続されているケーブル19へのルーティング制御を実行する。このようなセントラルゲートウェイ装置18の中継処理により、複数の制御部は、それぞれとは異なるケーブル19に接続されている他の制御部との間でもパケットによるデータ入出力を実行できる。
【0017】
車両通信部17は、自動車10の外と通信するための通信部である。自動車10が走行する道路や地域には、携帯端末のためのキャリア通信網が設けられていることが多い。自動車10が通信可能な基地局40には、この他にも高速道路などの道路沿いに設けられる高度交通システムの基地局40、などがある。車両通信部17は、これらの基地局40と無線通信して通信路を確立し、その通信路および基地局40を使用してサーバ装置41などと双方向の通信を実行してよい。車両通信部17は、車ネットワークからデータを取得すると、取得したデータを含むパケットを、確立している通信路を用いて、基地局40やサーバ装置41へ送信する。車両通信部17は、車ネットワークからデータを取得すると、確立している通信路を通じて基地局40やサーバ装置41からパケットを受信すると、取得したパケットに含まれるデータを、車ネットワークへ出力する。
【0018】
自車センサ部15は、自動車10に設けられる各種の自車センサが接続される。ここでは、自車センサとして、加速度センサ21、コーナレーダ22、ステレオカメラ23、Lidar24、全周囲カメラ25、GNSS受信機26、が示されている。自車センサ部15は、接続されている自車センサの検出情報を、車ネットワークへ出力する。また、自車センサ部15は、自車センサの検出情報に基づいて二次的な検出情報を生成して、車ネットワークへ出力してもよい。
【0019】
GNSS受信機26は、複数のGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星110からの電波を受信し、自車の現在位置である緯度、経度、高度、および現在時刻を得る。
【0020】
加速度センサ21は、自動車10の加速度を検出する。加速度センサ21には、たとえば自動車10の前後方向の加速度、左右方向の加速度、および上下方向の加速度を検出する3軸方式のものがある。加速度を時間積分することにより、自動車10の速度を得ることができる。この場合、自車センサ部15は、加速度センサ21の検出値に基づいて、自動車10のヨー方向、ピッチ方向、ロール方向の動きを検出できる。
【0021】
コーナレーダ22は、自動車10の前後左右の四角に設けられる。コーナレーダ22は、自動車10の角に外から接近している周辺物までの距離を検出する。周辺物には、たとえば先行車などの他の移動体、道路の交差点などに設けられる信号機などの固定物、がある。
【0022】
ステレオカメラ23は、たとえば所定距離で離間している一対のカメラで構成される。ステレオカメラ23は、自動車10の走行方向である前方の車外を一対のカメラで撮像する。自車センサ部15は、たとえば、撮像画像をたとえばパターンマッチングなどにより解析し、自車が走行している走行路の左右両側の車線境界線や先行車などの所定の立体的な周辺物を認識し、認識した周辺物についての一対のカメラの撮像画像での撮像位置の差に基づいて車外物についての自車からの方向および間隔の検出情報を生成してよい。
【0023】
全周囲カメラ25は、自動車10の周囲360度を撮像する。全周囲カメラ25は、所定の画角ごとに撮像可能な複数のカメラで構成されてもよい。
【0024】
Lidar24は、自動車10の前部に設けられて、自動車10の走行方向である前方を検出波でスキャンし、その反射波の有無および距離についての空間情報を検出する。検出波を出力した方向に立体的な周辺物がない場合、反射波は得られない。検出波を出力した方向に立体的な周辺物がある場合、その反射波を受信するまでの期間により、周辺物までの相対的な距離を検出できる。
【0025】
これらステレオカメラ23、全周囲カメラ25、Lidar24は、自動車10の周辺についての空間情報を検出する。Lidar24は、通常、ステレオカメラ23や全周囲カメラ25より長い距離範囲についての空間情報を取得することが可能である。ただし、高解像度のステレオカメラ23や全周囲カメラ25では、たとえば望遠レンズなどの光学部材を併用することにより、その画像に基づいてLidar24と同等の遠方の距離にある周辺物の撮像画像を画像解析により認識機能な解像度で得ることが可能である。
自車センサ部15は、走行制御部16が実行する自動運転のレベルがたとえばレベル3以上である場合には、これらの周辺の空間情報を解析して、自動車10の周辺の走行路の認識情報または自動車10の周辺物の認識情報を生成する制御を、走行制御部16の指示などに基づいて実行する必要がある。
【0026】
運転操作部14には、ユーザが自動車10の走行を制御するために操作部材として、不図示のたとえばハンドル、ブレーキペダル、アクセルペダル、シフトレバー、などが接続される。操作部材が操作されると、運転操作部14は、操作の有無、操作量などを含むデータを、車ネットワークへ出力する。また、運転操作部14は、操作部材に対する操作についての処理を実行し、その処理結果をデータに含めてよい。運転操作部14は、たとえば自動車10の進行方向に他の自動車や固定物がある状況においてアクセルペダルが操作された場合、その異常操作を判断し、その判断結果をデータに含めてよい。
【0027】
走行制御部16は、車両メモリ31、車両ECU(Electronic Control Unit)32、を有する。
【0028】
車両メモリ31は、たとえば半導体メモリ、HDD、などにより構成されてよい。車両メモリ31には、自動車10の走行を制御するためのプログラム、および制御に使用するデータ、などが記録される。ここでは、自動車10が走行する地域の高精度地図データ33が例示されている。高精度地図データ33は、たとえば、無線通信部を用いて不図示の地図サーバ装置からキャッシュしたものでも、携帯型の半導体メモリに記録されているものでも、よい。
【0029】
車両ECU32は、自動車10のコンピュータ装置である。車両ECU32は、車両メモリ31に記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、車両ECU32は、自動車10の走行を全体的に制御する走行制御部16として機能する。
走行制御部16としての車両ECU32は、自動車10の走行を制御する制御値を生成し、駆動制御部11、操舵制御部12、および、制動制御部13へ出力する。
ここで、走行制御部16は、運転操作部14から入力されるドライバによる運転操作の情報に対応する制御値を生成して自動車10の走行を制御するだけでなく、ドライバによる運転操作を調整した運転支援のための制御値を生成して自動車10の走行を制御したり、ドライバによる運転操作によらない高度に自律的な自動運転による制御値を生成して自動車10の走行を制御したり、してよい。運転支援は、基本的にドライバ監視下において自動車10の走行を制御するレベル1からレベル2の自動運転に対応し、高度に自律的な自動運転は、基本的に自動車10の制御系の監視下において自動車10の走行を制御するレベル3以上の自動運転に対応する。
また、走行制御部16は、たとえば自車センサ部15から取得できる検出情報に基づいて自車の走行環境、自車の状態、ドライバの状態などに応じて、走行中に自動運転のレベルを切り替える制御を実行してもよい。走行制御部16は、たとえば自車センサ部15などから取得できた検出情報に基づいて自車の走行環境、自車の状態、ドライバの状態などを判断し、判断結果の下で実行可能な最も高いレベルの自動運転を実行するようにしてよい。
【0030】
駆動制御部11は、自動車10の不図示の動力源の動作を制御する。自動車10の動力源には、たとえばエンジン、モータなどがある。駆動制御部11は、走行制御部16により生成された制御値により、動力源の動作を制御する。
操舵制御部12は、自動車10の不図示の操舵装置の動作を制御する。自動車10の操舵装置には、たとえばモータの回転量により操舵方向および操舵量を制御するバイワイヤー方式のものがある。操舵制御部12は、走行制御部16により生成された制御値により、操舵装置の動作を制御する。
制動制御部13は、自動車10の不図示の制動装置の動作を制御する。自動車10の制動装置には、たとえばモータの回転量により油圧を制御するバイワイヤー方式のものがある。制動制御部13は、走行制御部16により生成された制御値により、制動装置の動作を制御する。
これらの制御実行部が動作することにより、自動車10は、走行制御部16による走行制御にしたがって走行することができる。
【0031】
このように自動車10の制御系には、高いレベルの自動運転に対応しようとするほど、複雑で高度な制御を実行することが求められることになる。
また、自動車10において高度な自動運転を実用化するためには、高度な自動運転のために必要な情報が得られるように、少なくとも上述したように自動車10に多数の自車センサを設ける必要がある。
たとえば、レベル3、レベル4といった高レベルの走行制御を実行する場合、自動車10の制御系には、自動車10の周辺を検出するLidar24や全周囲カメラ25などを設けて、それらにより検出される周辺の空間情報に基づいて、自動車10の周辺の走行路や各種の周辺物の認識情報についての認識情報を高い確実性をもって生成する必要がある。また、自動車10の制御系は、これらの認識情報に基づいて、たとえば障害を避けながら車線での走行を維持するように走行制御を実行しなければならない。これは、レベル1、レベル2といったレベルの走行制御では、たとえば近距離の撮像画像に基づく車線のパターン認識に基づくレーンキープ制御や、近距離の撮像画像に基づく先行車のパターン認識に基づく車間維持制御(先行車追従制御)により実現可能であることと比べて、自動車10の処理負荷が格段に増大することを意味する。レベル3、レベル4といった高レベルの走行制御では、同様の認識処理を、機械学習済みの人工知能を用いた処理により、認識の確実性を高める必要がある。
また、自動車10は、移動するためのものであり、基本的に無給電状態にある走行中において、自動車10の周辺の状況を常に監視するように多数の自車センサを高速で動作させる必要がある。高レベルの走行制御に対応する自動車10では、多数の自車センサの検出値に基づく検出情報を短時間ごとに繰り返し、短時間ごとに繰り返しに検出される検出情報に基づいて走行制御を短い制御周期の時間ごとに繰り返しに実行する必要がある。高いレベルの自動運転に対応しようとするほど、自動車10への要求性能が飛躍的に高まることになる。
【0032】
そこで、高いレベルの自動運転に対応する自動車10では、自動車10と基地局40を通じて通信可能なサーバ装置41を用いて、高レベルな走行制御を実行する自動車10の走行制御を支援して、走行中の自動車10の負担を軽減することが考えられる。
【0033】
図2は、図1の自動車10の走行支援に用いることが可能な走行制御支援システム1の一例の説明図である。
図2の実線部分には、走行制御支援システム1の構成要素として、2つの基地局40、1つのサーバ装置41、および、これらが接続されるバックホールとしてのキャリア通信ケーブル42、が示されている。
また、図2には、GNSS衛星110が示されている。GNSS衛星110は、地球の衛星軌道に位置し、地表へ向けて電波を発する。GNSS衛星110の電波には、それぞれの衛星の位置を示す緯度経度高度の情報と、複数の衛星間で同期化を図っている絶対的な時刻の情報と、が含まれる。自動車10の制御系やサーバ装置41などは、複数のGNSS衛星110の電波を同様に受信することにより、各々の受信した地点の位置を正確に示す緯度経度高度の情報と、受信した地点の正確な時刻と、を高度に同期させることができる。
【0034】
そして、上述した図2の実線部分の走行制御支援システム1は、狭い領域での走行支援を実現することができる最小限のローカルシステム43の構成の例である。
ここで、サーバ装置41は、2つの基地局40のゾーンを走行する複数の自動車10の制御系の車両通信部17と通信する。
サーバ装置41は、各自動車10の制御系から検出情報を取得する。
サーバ装置41は、複数の自動車10から取得した検出情報に基づいて、各自動車10の走行制御部16が走行制御のために使用可能な支援情報を生成する。
サーバ装置41は、生成した支援情報を、基地局40を通じた無線通信により各自動車10の車両通信部17へ送信する。
これにより、2つの基地局40のゾーンを走行する複数の自動車10の各々は、サーバ装置41から取得する支援情報に基づいて、たとえば他の自動車の走行と干渉しないように安全に走行することが可能となる。
この場合、走行中の各自動車10は、走行制御支援システム1のサーバ装置41による支援を受けて、自らの制御系において検出情報に基づく高度な制御を実行する必要がない。走行中の自動車10の負担は軽減され得る。
【0035】
しかしながら、サーバ装置41により自動車10の走行制御を支援する場合、自動車10そのものにおいて情報を処理する場合と比べて、自動車10とサーバ装置41との間での通信などに時間がかかる。この遅延時間が短く安定している場合には、自動車10での制御に対して制御遅れが生じ難くなるが、遅延時間が絶対的に長くなったり、不安定になったりする場合には、自動車10での制御に対する制御遅れが生じる可能性が高まる。自動車10は、その制御周期ごとに、サーバ装置41から適切な情報を取得し続けることができなくなる可能性が高まる。
特に、自動車10は、走行により移動するものである。このため、自動車10とサーバ装置41との間の通信路には、基地局40を通じた無線通信が含まれる。また、自動車10が移動することにより、基地局40は、自動車10が無線通信に使用できるものに切り替えなければならない。このような通信環境下でサーバ装置41により自動車10の走行を支援するためには、たとえば、通信による制御遅れを抑えた低遅延を実現し、しかも、基地局40が切り替わる場合であってもその低遅延による遅延量が過度に変動しないように安定化させる、ことが必要になる。
【0036】
また、図2の走行制御支援システム1の実線部分においてカバーできる領域は、2つの基地局40が通信可能な狭い第一エリアに限られる。自動車10は、第一エリアの走行中にはサーバ装置41による走行支援を受けることが可能であるが、その外側にある第二エリアにおいては、その第二エリアに他の基地局40が存在するとしても、サーバ装置41による走行支援を受けることができない。
第二エリアでの走行支援を実現するためには、第二エリアの基地局40に接続されている破線の新たな他のサーバ装置44を追加する必要がある。また、自動車10が第一エリアから第二エリアへ移動するように走行した場合には、第一エリアのサーバ装置41から、第二エリアの他のサーバ装置44へ情報を送信する必要がある。第一エリアのサーバ装置41は、図中に破線で示すゲートウェイ装置46を通じて、第二エリアの他のサーバ装置44と通信しなければならない。このような複数のサーバ装置41,44の間でハンズオーバ通信が発生すると、そのための時間などにより、第二エリアの他のサーバ装置44は、新たに第二エリアを走行することになった自動車10への走行支援の開始が遅れてしまう可能性が高まる。特に、第二エリアの他のサーバ装置44が、たとえば図中に破線で示すようにインターネットといった広域通信網45に接続されている場合、通信には時間がかかるようになり、また通信時間が不安定になり易くなる。この場合、第二エリアの他のサーバ装置44は、第一エリアのサーバ装置41から情報を得ることができたとしても、第二エリアの他の基地局40を通じて自動車10の制御系に対して走行制御の支援を実現できるまでには、過大な時間となってしまう可能性がある。
自動車10の走行制御は、不測の事態に対応できるようにするために、一般的に少なくとも数百ミリ秒ごとに繰り返すことが望ましいと考えられる。このような短い期間において、インターネットなどの広域通信網45を通じて、自動車10の走行支援制御を引き継いだり、繰り返したりすることを現実化することは、極めて容易ではない。仮にそれを実現できるとしても、自動車10の制御系がその制御周期の間で残されている時間は、極度に短くなってしまうと考えられる。車両ECU32には、自動車10において検出情報の処理から走行制御までのすべての制御を自律的に実行する場合と比べて、高い処理能力のものが必要になる可能性が高い。複数のサーバ装置50(41,44)により自動車10の走行制御を支援することのメリットが相殺されてしまう可能性がある。
これらの課題は、他のサーバ装置44が、第一エリアと第二エリアとを合わせた広い第三エリアについて設ける場合においても、同様である。
【0037】
このように自動車10の走行制御では、少なくともこれまでに説明した複数の課題を総合的なバランスをとりながら解決して、自動車10の走行制御についての複数のサーバ装置50による支援を実用性が得られるように実現することが求められる。すなわち、自動車10の走行制御支援システム1には、たとえば、複数のサーバ装置50による走行支援を複数の自動車10の各々の走行制御に対して遅れ難くなるように可能な限り短く且つ安定化した時間で実現しつつ、自動車10の走行制御についての複数のサーバ装置50による高度な支援を可能にすること、が求められる。
【0038】
図3は、本発明の第一実施形態に係る自動車10の走行制御支援システム1の構成図である。
図3の走行制御支援システム1は、主にキャリア通信網を好適に利用して、上述した複数の課題を総合的なバランスをとりながら解決するために好適なものであるが、あくまでも一例である。
本実施形態の走行制御支援システム1は、図3に示すように、複数の自動車10の走行制御を支援するために、複数のサーバ装置50を有する。
図3には、複数のサーバ装置50として、複数の基地局サーバ装置51、複数のアクセラレーションサーバ装置54、複数の狭地域サーバ装置52、広地域サーバ装置53、上位サーバ装置55、が示されている。広地域サーバ装置53や、上位サーバ装置55は、走行制御支援システム1において複数で備えられてもよい。
【0039】
基地局サーバ装置51は、基地局40に対応して設けられるサーバ装置である。基地局サーバ装置51は、基本的に基地局40と1対1対応で設けられるとよいが、複数の基地局40について1つ設けられてもよい。基地局サーバ装置51は、たとえば5G用の高性能な基地局40の機能の1つとして設けられてもよい。そして、基地局サーバ装置51は、主に、基地局40のゾーンにいる複数の自動車10との通信を実行する。
【0040】
アクセラレーションサーバ装置54は、基地局サーバ装置51に接続されてよい。アクセラレーションサーバ装置54は、たとえば基地局40のゾーンが広いために多くの自動車10がゾーン内に存在するような場合において、基地局サーバ装置51の処理機能を補強するために設けられてよい。この場合、アクセラレーションサーバ装置54は、基地局サーバ装置51において実行させる制御の中で、処理負荷が重い空間情報に基づくオブジェクトの抽出処理や、抽出したオブジェクトの認識処理などの処理を実行するとよい。オブジェクトの抽出処理、抽出したオブジェクトの認識処理などには、機械学習によるAI処理が用いられてよい。アクセラレーションサーバ装置54は、複数の基地局サーバ装置51に対して1つの対応で設けられてもよい。アクセラレーションサーバ装置54を設けることにより、基地局サーバ装置51の処理負荷を低減して、基地局サーバ装置51の制御応答を早めることができる。
基地局サーバ装置51と、アクセラレーションサーバ装置54とは、基地局40が通信可能な複数の自動車10との通信を管理するローカルのサーバ装置である。ローカルのサーバ装置51,54は、図中においてハッチングが付されている。
【0041】
狭地域サーバ装置52は、複数の基地局サーバ装置51を接続するキャリア通信ケーブル42に接続されてよい。これにより、狭地域サーバ装置52は、キャリア通信ケーブル42に接続されている複数の基地局サーバ装置51の上位側のサーバ装置として機能できる。
広地域サーバ装置53は、複数の基地局サーバ装置51を接続するキャリア通信ケーブル42に接続されてよい。これにより、広地域サーバ装置53は、キャリア通信ケーブル42に接続されている複数の基地局サーバ装置51の上位側のサーバ装置として機能できる。
ここで、狭地域サーバ装置52と、広地域サーバ装置53とは、単に各々が管理する地域のサイズの大小関係に応じた呼称としている。図3において、複数の狭地域サーバ装置52が管理する複数の地域と、広地域サーバ装置53が管理する地域とは、隣接するものと互いに重なる。複数の地域が少なくともそれらの境界部分において互いに重なり合うことにより、自動車10は、図3の走行制御支援システム1により管理される全体的な広域を走行する場合において、走行制御についての支援を、地域をまたいで継続的に受けることが可能になる。
【0042】
上位サーバ装置55は、キャリア広域通信網57に接続される。キャリア広域通信網57は、たとえばATM通信網である。キャリア広域通信網57は、不図示のゲートウェイ装置を通じてインターネットなどに接続されてよい。
また、キャリア広域通信網57には、すべての狭地域サーバ装置52および広地域サーバ装置53が接続される。これにより、上位サーバ装置55は、狭地域サーバ装置52または広地域サーバ装置53を通じて、図3に示す複数の基地局サーバ装置51の各々と通信することが可能になる。
【0043】
このように図3の走行制御支援システム1には、複数の基地局サーバ装置51の上位側のサーバ装置として、狭地域サーバ装置52または広地域サーバ装置53と、上位サーバ装置55とが設けられる。この場合、これらの上位側のサーバ装置52,53,55に実行させる支援制御は、多段化されている複数のサーバ装置に分散させることができる。各上位側のサーバ装置の処理負荷を低減して、各上位側のサーバ装置の制御応答を早めることができる。上位側のサーバ装置52,53,55は、図中においてハッチングが付されていない。
これら上位側のサーバ装置52,53,55は、複数の自動車10と直接には通信をせずに、ローカルのサーバ装置51,54を通じて、複数の自動車10と通信する。上位側のサーバ装置52,53,55は、各自動車10の無線通信環境などに影響されない通信を実行して、低遅延で安定している通信を実行できる。
上位側のサーバ装置52,53,55は、複数の自動車10についての全体的な走行を、管制制御または遠隔制御してよい。たとえば、上位側のサーバ装置52,53,55は、複数の自動車10の管制制御では、管制制御による自動車10の安全な走行可能範囲についての情報を、上位支援情報として各自動車10へ提供してよい。また、上位側のサーバ装置52,53,55は、複数の自動車10の遠隔制御では、遠隔制御値の情報を、上位支援情報として各自動車10へ提供してよい。
【0044】
そして、このような複数種類のサーバ装置51~55は、たとえばキャリア通信ケーブル42、キャリア広域通信網57を通じて、情報を相互に送受する。この通信での各サーバ装置の通信の相手先は、固定的な他のサーバ装置となる。
このため、複数のサーバ装置50の間の通信には、図中に示すように、第一の仮想プライベートネットワークとしてのIPsec(Security Architecture for Internet Protocol)―VPN(Virtual Private Network)を用いとよい。IPsec―VPNによる接続では、通信元のサーバ装置と通信先のサーバ装置との相互認証により、通信元と通信先とを固定化することができる。また、IPsec―VPNによる接続では、通信パケットのペイロードの情報を符号化することなく、秘匿性がある高速な通信を実行できる。
【0045】
これに対し、基地局サーバ装置51と自動車10の車両通信部17との通信には、第二の仮想プライベートネットワークとしてのSSL(Secure Sockets Layer)/TLS(Transport Layer Security)―VPNを用いとよい。SSL/TLS―VPNによる接続では、片側のサーバ装置のみの認証により、サーバ装置の相手先を固定化しないようにすることができる。ただし、SSL/TLS―VPNによる接続では、秘匿性がある高速な通信を実行するためには、通信パケットのペイロードの情報を符号化する必要がある。
【0046】
このように図3の走行制御支援システム1では、基地局サーバ装置51と自動車10との通信と、複数のサーバ装置50の間での通信とで、異なる方式のVPNを使用する。SSL/TLS―VPNによる自動車10との接続性を確保しながら、IPsec―VPNによる通信のための処理負荷を軽減して高速化を図ることができる。
このような走行制御支援システム1は、高レベルの自動運転のためのコネクッドサービスを、広い地域で不断的に提供することが可能である。
【0047】
そして、基地局サーバ装置51などのローカルのサーバ装置51,54は、狭地域サーバ装置52、広地域サーバ装置53、および上位サーバ装置55についての自動車10の支援制御についての中継サーバ装置として機能する。
狭地域サーバ装置52、および広地域サーバ装置53は、上位サーバ装置55についての自動車10の支援制御についての中継サーバ装置として機能する。
これらの中継サーバ装置は、上位側のサーバ装置において自身で生成した情報を付加したり、上位側のサーバ装置から取得する情報を調整したりすることが可能である。上位側のサーバ装置は、中継サーバ装置が介在することにより、自動車10との間で基地局40を通じた無線通信路を確立することなく、自動車10との間で情報を授受することが可能である。走行制御支援システム1の全体において、基地局40を通じた無線通信を含む長距離通信を使用しないようにできる。
また、複数の自動車10の走行を支援するためのサーバ装置が複数段に多層化されていることにより、複数のサーバ装置50は、複数の自動車10を支援するための各種の制御を、各々の地域での設置位置や階層での位置に応じて分散して実行することが可能になる。
たとえば、基地局サーバ装置51などのローカルのサーバ装置51,54は、ゾーンにいる複数の自動車10の各々との間で走行制御周期ごとの通信を不断的に実行する制御に特化することができる。
狭地域サーバ装置52や広地域サーバ装置53は、各々の地域全体での複数の自動車10の走行を将来予測により調整する管制制御または遠隔制御に特化することができる。
上位サーバ装置55は、狭地域サーバ装置52や広地域サーバ装置53より広い地域についての将来予測による管制制御または遠隔制御に特化することができる。また、上位サーバ装置55は、走行制御支援システム1の全体での管理制御に特化することもできる。
【0048】
図4は、図3の各種のサーバ装置として用いることができるサーバ装置60のハードウェア構成の説明図である。
図4のサーバ装置60は、サーバ通信部61、サーバGNSS受信機62、サーバメモリ63、サーバCPU(Central Processing Unit)64、および、これらが接続されるサーババス65、を有する。
図3の基地局サーバ装置51、アクセラレーションサーバ装置54、狭地域サーバ装置52、広地域サーバ装置53、上位サーバ装置55は、基本的に、図4のハードウェア構成のものとしてよい。
ただし、基地局サーバ装置51や、図3においてハッチングを付したローカルのサーバ装置51,54などは、図4中に破線で示すように、さらに、基地局40通信部、を備えることが望ましい。
【0049】
基地局40通信部は、自動車10の車両通信部17と基地局40を通じて通信して、車両通信部17との間で情報を送受する。基地局40通信部は、1:Nの通信に適したSSL/TLS―VPNによる通信路を、複数の自動車10の車両通信部17の各々と確立して、各通信路を通じて各車両通信部17と情報を送受してよい。基地局40通信部が通信可能な複数の自動車10の台数Nは、サーバ装置60としての処理能力に応じて決定するとよい。また、サーバ装置60の処理能力は、サーバ装置60に接続されている基地局40の数、基地局40のゾーンが設定される地域のサイズ、領域において想定される最大の台数に基づいて決定するとよい。
【0050】
サーバ通信部61は、走行制御支援システム1において使用される他のサーバ装置68と通信する。サーバ通信部61は、少なくともキャリア通信ケーブル42により直接的に接続されている他のサーバ装置68との間に、IPsec―VPN接続による通信路を確立する。サーバ通信部61は、他のサーバ装置68を経由して、直接的に接続されていない他のサーバ装置68との間にIPsec―VPN接続などによる通信路を確立してもよい。たとえば、基地局サーバ装置51は、直接的に接続されている狭地域サーバ装置52または広地域サーバ装置53との間に通信路を確立するとともに、キャリア広域通信網57を通じて、上位サーバ装置55との間に通信路を確立してもよい。
【0051】
サーバGNSS受信機62は、複数のGNSS衛星110からの電波を受信し、サーバ装置60の設置位置についての緯度、経度、高度、および現在時刻を得る。この現在時刻は、各自動車10の制御系のGNSS受信機26が取得する時刻と基本的に同じになる。サーバ装置60と自動車10とは、互いに共通する絶対的な時刻の下で、各々の制御を実行することができる。たとえば自動車10での車両センサ部の検出時刻は、そのままでサーバ装置60の時刻との演算に用いることが可能になる。
【0052】
サーバメモリ63は、サーバCPU64が実行するプログラムおよびデータを記録する。サーバメモリ63は、たとえば半導体メモリ、HDD、などにより構成されてよい。
サーバメモリ63には、たとえば、サーバ装置60の管轄地域の高精度地図データ67が記録されている。基地局サーバ装置51の場合、少なくとも基地局40のゾーンに対応する地域の高精度地図データ67が記録されてよい。狭地域サーバ装置52または広地域サーバ装置53の場合、少なくとも各々に接続されている複数の基地局40で網羅される地域の高精度地図データ67が記録されてよい。上位サーバ装置55の場合、図3のすべての地域の高精度地図データ67が記録されてよい。上位サーバ装置55の高精度地図データ67は、たとえば日本国の全体の高精度地図データとしてよい。
ここで、管轄地域の高精度地図データ67は、自動車が走行する道路についての高精度の三次元の地図データでよい。このような高精度地図データ67には、自動車10が走行する道路についての道路の各車線の中央ガイド線、各車線の境界線、を示す情報が含まれる。また、交差点や分岐合流点では、転舵などのためのガイド線、が含まれてよい。ガイド線は、その傾きや曲がりにより、道路の各車線の形状や勾配についての情報を含む。また、高精度地図データ67には、道路標識、マーク、信号機などの走行する自動車10から認識可能な周辺物の情報が含まれてよい。
そして、高精度地図データ67に基づく走行路図には、複数の自動車10の現在位置などをマッピングすることができる。複数の自動車10をマッピングした走行路図では、各自動車10についての走行環境として、たとえば各自動車10についての先行車との車間距離や走行車線だけでなく、先行車より前の走行環境などについても把握することができる。自動車10の自車センサにより把握可能な範囲を超えた範囲についての走行環境を把握することが可能である。
また、これら複数のサーバ装置50に記録される複数の高精度地図データ67は、たとえば同一の高精度地図データに基づいて生成されたものにして、地図データ間の整合性を確保することが望ましい。これにより、地域境界を越えて移動するように走行する自動車10について、連続的な整合性がある管理が可能になる。
【0053】
サーバCPU64は、サーバメモリ63からプログラムを読み込んで実行する。これにより、サーバ装置60には、サーバ制御部が実現される。
サーバ制御部としてのサーバCPU64は、サーバ装置60の全体的な動作を制御する。走行制御支援システム1を構成する複数のサーバ装置50のサーバ制御部は、複数の自動車10の走行制御を支援するための各種の制御を、複数のサーバ装置50の協働により実現する。
たとえば、基地局サーバ装置51のサーバCPU64は、基地局40のゾーンにいる複数の自動車10の各々との通信路の確立制御、確立した通信路を用いた各々の自動車10との情報の送受制御、上位の狭地域サーバ装置52または広地域サーバ装置53、上位サーバ装置55などとの通信路の確立制御、確立した通信路を用いた上位側のサーバ装置との情報の送受制御、取得した検出情報についての処理制御、などを実行する。
狭地域サーバ装置52または広地域サーバ装置53は、接続されている基地局サーバ装置51との通信路の確立制御、確立した通信路を用いた基地局サーバ装置51との情報の送受制御、上位の上位サーバ装置55などとの通信路の確立制御、確立した通信路を用いた上位側のサーバ装置などとの情報の送受制御、取得した検出情報についての処理制御、などを実行する。
上位サーバ装置55は、下位の狭地域サーバ装置52、広地域サーバ装置53または基地局サーバ装置51との通信路の確立制御、確立した通信路を用いた下位側のサーバ装置との情報の送受制御、取得した検出情報についての処理制御、などを実行する。
【0054】
図5は、図3の走行制御支援システム1の複数のサーバ装置50において、複数の自動車の走行制御を支援するために実現される各種機能の説明図である。
図5には、走行制御支援システム1に実現される各種機能として、遠隔検出部72を有する複数の個別支援部71と、上位支援部73と、が示されている。
これらの各機能は、サーバCPU64がプログラムを実行することにより、複数のサーバ装置50の中のいずれかに実現される。
【0055】
そして、図5には、自動車10の制御系についての、自車センサ部15、車両通信部17、および走行制御部16が併せて示されている。
自車センサ部15は、自動車10において、複数の自車センサの検出情報や、検出情報に基づく自動車10の走行状態および走行環境の情報を取得する。自車センサ部15による検出情報には、自動車10の現在位置および向き、現在時刻、現在速度の方向および値、がある。また、検出した撮像画像などに基づいて、自車センサ部15は、自車の近くにおける実際の車線境界線の認識情報、自車の近く周辺における実際の先行車などの周辺物の認識情報、などを生成してもよい。これらの認識情報は、自動運転のレベル3またはそれ以上のレベルでの走行制御において必要になる。
車両通信部17は、自車センサ部15の検出情報などを、基地局40を通じた無線通信により、自車に対応する個別支援部71へ送信する。車両通信部17は、自車に対応する個別支援部71から、基地局40を通じた無線通信により、支援情報を受信して取得する。
走行制御部16は、基本的に、自車センサ部15の検出情報、およびそれに基づく各種の認識情報といった二次的な検出情報に基づいて、自車の走行を自律的に制御する。
【0056】
個別支援部71は、自動車10が直接的に通信可能な基地局40に接続されているたとえば基地局サーバ装置51において、基地局40のゾーンに存在する複数の自動車10の各々と対応付けて生成される。なお、複数の自動車10が1つの群として走行している場合には、個別支援部71は、その群と対応づけて生成されてよい。
個別支援部71は、対応する自動車10の車両通信部17との間で、基地局40を通じた無線通信を含む通信路を確立する。個別支援部71は、対応する自動車10の車両通信部17との間で情報を送受する。個別支援部71は、たとえば、対応する自動車10の走行制御部16から検出情報などを受信して取得する。個別支援部71は、対応する自動車10から取得した検出情報などに基づいて、対応する自動車10の走行制御部16が走行制御のために使用可能な支援情報を生成する。個別支援部71は、生成した支援情報を、対応する自動車10の走行制御部16へ送信して提供する。これにより、個別支援部71は、対応する自動車10の走行制御を支援することができる。
【0057】
遠隔検出部72は、対応する自動車10の車外の撮像画像といった周辺の空間情報に基づいて、対応する自動車10の進行方向の走行路の認識情報、および対応する自動車10の周辺にいる周辺物の認識情報を生成するものである。このような空間情報に基づく周辺の認識情報の生成処理は、個別支援部71が対応する自動車10の走行を支援するために実行する制御の中の一部の処理であり、人工知能などを用いた負荷が高い処理である。遠隔検出部72は、個別支援部71と同じ基地局サーバ装置51において生成されても、基地局サーバ装置51と接続されるアクセラレーションサーバ装置54において生成されても、よい。遠隔検出部72がアクセラレーションサーバ装置54に生成されることにより、基地局サーバ装置51は、その処理負荷が軽減されて、複数の自動車10との通信などに注力することができる。
【0058】
上位支援部73は、複数の個別支援部71の各々から、各個別支援部71が対応している自動車10の情報を収集し、収集した複数の自動車10の情報を用いて、複数の自動車10の走行状態に基づく各自動車10の走行制御のための上位支援情報を生成する。そして、上位支援部73は、複数の自動車10の各々へ提供するために生成した上位支援情報を、各自動車10の車両通信部17そのものではなく、複数の自動車10の各々と対応して生成されている複数の個別支援部71へ送信して提供する。
なお、走行制御支援システム1が管理する領域がたとえば日本国の全体といったようにかなり広い場合、上位支援部73は、たとえば、複数の自動車10の情報を収集する上位収集部と、複数の自動車10の上位支援情報を生成する上位支援部73と、上位支援情報を複数の自動車10の提供する上位支援部73と、のように複数のサーバ装置50に分けて実現されてよい。
また、上位支援部73は、基本的に基地局サーバ装置51とは別の上位側のサーバ装置52,53,55に実現されるものであるが、システム構成上の都合などにより、基地局サーバ装置51やアクセラレーションサーバ装置54といったローカルのサーバ装置において車両通信部17の機能とともに実現されてもよい。
【0059】
このように複数のサーバ装置50には、その全体において、複数の個別支援部71、および上位支援部73が実現される。複数のサーバ装置50には、図5のすべての機能が分散して実現される。
複数のサーバ装置50の各々は、自動車10と基地局40との間の無線通信を含んでいない基本的に有線接続による通信路を用いて、互いの通信を低遅延で安定して実行することができる。
そして、複数の自動車10の各々と対応して生成される複数の個別支援部71の各々は、対応する自動車10から取得する情報と、上位支援部73から提供される上位支援情報とに基づいて、対応する自動車10の走行制御部16が走行制御のために使用可能な情報を生成して、対応する自動車10の車両通信部17へ送信する、
これにより、走行制御支援システム1は、個別支援部71により生成する支援情報と、上位支援部73により生成する支援情報とを、低遅延で安定した通信により、複数の自動車10へ提供することができる。
そして、各自動車10の走行制御部16は、自車での検出情報とともに、走行制御支援システム1から提供されるこれらの支援情報を用いて、自車の走行を制御することができる。
【0060】
特に、本実施形態では、上述したように、複数のサーバ装置50の間での通信にはIPsec―VPNを用いて、通信元と通信先との相互認証により通信元と通信先とを固定化する第一の仮想プライベートネットワークを用いる。これにより、複数のサーバ装置50の間での通信は、通信パケットのペイロードの情報を符号化していなくとも、秘匿性が得られる高速な通信にすることができる。各個別支援部71が上位支援情報を得るまでの遅延時間は、短くでき、かつ、安定化させることができる。
これに対して、本実施形態では、走行により移動する各自動車10とそれに対応する個別支援部71を備える基地局サーバ装置51との基地局40を通じた通信には、SSL/TLS―VPNを用いて、通信の片側であるサーバ装置のみの認証によりサーバ装置の相手先を固定化しない第二の仮想プライベートネットワークを用いる。サーバ装置の相手先は自由に変更可能である。これにより、個別支援部71を備える基地局サーバ装置51は、任意の複数の自動車10との間で、通信パケットのペイロードの情報を符号化して、秘匿性が得られる接続相手先の柔軟性がある通信を実現することができる。
このように本実施形態では、複数の種類の仮想プライベートネットワークを、複数のサーバ装置50の間と、サーバ装置と自動車10との間とで使い分ける。これらの好適な組み合わせによる通信を実現することにより、本実施形態では、通信する装置の間で良好な接続を確保しながら、制御遅れにつながる通信遅延などを最小化することができる。走行制御支援システム1は、自動車10の走行を支援するために実用的に使用することができる。
【0061】
図6は、図3の走行制御支援システム1により走行支援を受けることが可能な自動車10の走行制御のフローチャートである。
自動車10の走行制御部16は、たとえば自動車10が起動されるたびに、図6の走行制御を繰り返し実行してよい。
【0062】
ステップST1において、走行制御部16は、自車センサ部15から、自車センサの検出情報を取得する。
【0063】
ステップST2において、走行制御部16は、走行制御支援システム1の複数のサーバ装置50による支援を利用するか否かを判断する。走行制御部16は、たとえば、自車の現在位置に基づいて、複数のサーバ装置50による支援が利用可能か否かを判断してよい。また、走行制御部16は、たとえば、自動運転のレベルがレベル3以上のL3,L4といった高負荷な制御を実行することがドライバにより求められているか、または、自車のバッテリの残電力などの状態に応じて支援を必要としているか否かを判断してよい。そして、複数のサーバ装置50による支援が利用可能であってそれを利用しようとする場合、走行制御部16は、レベル3以上の高負荷な自動運転などについての支援を受けるために、処理をステップST3へ進める。それ以外の場合、走行制御部16は、自律的に完結した制御を実行するように、処理をステップST6へ進める。
【0064】
ステップST3において、走行制御部16は、自車センサ部15から取得している自車センサの検出情報を、基地局サーバ装置51などにおいて自身に対応して実現されている個別支援部71へ送信する。自動車10の車両通信部17は、基地局サーバ装置51のサーバ通信部61との間で、SSL/TLS-VPN接続による通信路を確立し、走行制御部16により送信が要求された自車センサの検出情報を含むパケットを暗号化し、サーバ通信部61へ送信する。
基地局サーバ装置51のサーバ制御部は、サーバ通信部61が自車センサの検出情報を受信すると、後述するようにそれに応じて支援情報を生成する。そして、レベル3以上の高負荷な制御についての支援を実行する場合、サーバ制御部は、取得した自車センサの検出情報に基づいて、L3,L4で求められる二次的な検出情報を生成してよい。
また、サーバ制御部は、生成した支援情報を、自動車10の走行制御部16へ送信する。サーバ通信部61は、支援情報を含むパケットを暗号化し、車両通信部17との間に確立している通信路を通じて、車両通信部17へ送信する。これにより、自動車10の車両通信部17は、支援情報を受信できる。
【0065】
ステップST4において、走行制御部16は、個別支援部71からの支援情報を取得したか否かを判断する。車両通信部17が支援情報を受信していない場合、走行制御部16は、個別支援部71からの支援情報を取得していないと判断し、本処理を繰り返す。車両通信部17が支援情報を受信すると、走行制御部16は、個別支援部71からの支援情報を取得したと判断して、処理をステップST5へ進める。
【0066】
ステップST5において、走行制御部16は、車両通信部17から取得した支援情報と、自車センサの検出情報とに基づいて、車両の走行制御を実行する。
支援情報に、遠隔制御などによる制御値が含まれている場合、走行制御部16は、その制御値により走行を制御してよい。支援情報に、管制制御などによる走行可能範囲や走行制限範囲の情報が含まれる場合、走行制御部16は、それらの範囲内で走行する制御値を生成し、生成した制御値により走行を制御してよい。
また、走行制御部16は、これらの走行において、自車センサの検出情報に基づいて走行中の走行路を維持するように走行したり、自車センサの検出情報に基づいて認識されている周辺物と干渉しないように走行したりするように、制御値を調整してよい。
これにより、自動車10は、たとえば、走行制御支援システム1の管制制御または遠隔制御にしたがって、かつ、周辺物と干渉しないように、基本的に走行路を維持するように走行することができる。
その後、走行制御部16は、処理をステップST8へ進める。
【0067】
ステップST6において、走行制御部16は、自律的に完結した制御を実行するために、自車において、レベル3以上の高負荷な制御に必要とされる二次的な検出情報を生成する。走行制御部16は、たとえば、自車の周辺の空間情報に基づいて、二次的な検出情報を生成してよい。二次的な検出情報には、自車が走行している走行路の車線境界線の認識情報や、自車の周辺の他の移動体などの周辺物の認識情報、が含まれてよい。走行制御部16は、空間情報についてのオブジェクトの抽出処理や、抽出したオブジェクトの認識処理において、機械学習によるAI処理を用いてもよい。
【0068】
ステップST7において、走行制御部16は、自車センサの検出情報と、に基づいて、車両の走行制御を実行する。ここでの、自車センサの検出情報には、ステップST6にて生成した二次的な検出情報が含まれる。
走行制御部16は、自車での検出情報に基づいて走行中の走行路を維持する制御値を生成したり、周辺物と干渉しないように走行する制御値を生成したりしてよい。また、走行制御部16は、生成した制御値により走行を制御する。
これにより、自動車10は、自車での自律的な制御により、基本的に走行路を維持しつつ、周辺物と干渉しないように走行することができる。
【0069】
ステップST8において、走行制御部16は、自動車10の走行制御を終了するか否かを判断する。走行制御部16は、たとえば自動車10が目的地に到着して停止しているか否かなどに基づいて、自動車10の走行制御を終了すると判断してよい。自動車10の走行制御を終了すると判断しない場合、走行制御部16は、処理をステップST1へ戻す。走行制御部16は、自動車10の走行制御を終了すると判断するまで、ステップST1からステップST8の処理を繰り返し、自動車10の走行制御を繰り返す。自動車10の走行制御を終了すると判断すると、走行制御部16は、本制御を終了する。
【0070】
図7は、図5の個別支援部71による、対応する自動車10のための個別支援制御のフローチャートである。
図5の個別支援部71は、たとえば基地局サーバ装置51などにおいて、自動車10と対応して生成されるものである。
図5の個別支援部71は、図7の個別支援制御を繰り返し実行することにより、対応する自動車10から検出情報を繰り返しに取得して、対応する自動車10の走行制御を継続的に支援する。
【0071】
ステップST11において、個別支援部71は、対応する自動車10から、新たな検出情報を受信して取得しているか否かを判断する。新たな検出情報を受信していない場合、それを受信するまで、個別支援部71は、本処理を繰り返す。新たな検出情報を受信すると、個別支援部71は、処理をステップST12へ進める。
【0072】
ステップST12において、個別支援部71は、対応する自動車10から、取得した新たな検出情報において、空間情報を取得しているか否かを判断する。空間情報を取得している場合、個別支援部71は、空間情報に基づく認識処理のために、処理をステップST13へ進める。空間情報を取得していない場合、個別支援部71は、処理をステップST15へ進める。
【0073】
ステップST13において、個別支援部71は、遠隔検出部72として、取得した空間情報に基づいて、対応する自動車10の周辺の三次元空間モデルを生成し、三次元空間モデルにおいて走行路の車線境界線や周辺物といったオブジェクトの抽出処理を実行する。
【0074】
ステップST14において、個別支援部71は、遠隔検出部72として、ステップST13で抽出したオブジェクトに基づいて、走行路の形状といった認識情報と、周辺物の種類、サイズ、相対的な方向および距離、といった認識情報を生成する。これらの情報は、走行制御部16がレベル3以上の自動運転の制御を実行する場合において、自車の進路を決定するために使用される二次的な検出情報である。
なお、個別支援部71が基地局サーバ装置51において実現され、遠隔検出部72がアクセラレーションサーバ装置54に実現されるように、個別支援部71そのものが階層化された複数のサーバ装置50で構成される可能性がある。この場合、個別支援部71は、ステップST13からステップST14までの処理を、基地局サーバ装置51からアクセラレーションサーバ装置54に要求し、その結果をアクセラレーションサーバ装置54から取得してよい。
【0075】
ステップST15において、個別支援部71は、個別支援部71が上位支援部73から取得している最新の上位支援情報を取得する。最新の上位支援情報は、サーバメモリ63に一時的に記録されてよい。
【0076】
ステップST16において、個別支援部71は、以上の処理により取得した支援情報を、対応する自動車10へ送信する。
【0077】
ステップST17において、個別支援部71は、今回の制御において対応する自動車10から取得している検出情報を、上位支援部73へ送信する。
個別支援部71は、上位支援部73へ送信する検出情報に、自身が対応する自動車10の最新の位置とともに、その時刻、速度の方向および大きさ、個別支援部71が生成した周辺の認識情報、などを含めてよい。
逆に、個別支援部71は、上位支援部73へ送信する検出情報に、自動車10から取得している撮像画像などの空間情報は含めなくてよい。これにより、個別支援部71は、上位支援部73との通信量を削減しつつ、上位支援部73に対して管制制御または遠隔制御の信頼性を高めるための情報を提供することができる。
その後、個別支援部71は、本制御を終了する。
【0078】
このように個別支援部71は、対応する自動車10において自動運転のために使用する検出情報の一部を、その自動車10の制御系に替わって生成して提供する。個別支援部71は、自動車10の外にあるECUとして機能できる。
また、個別支援部71が実現される基地局サーバ装置51は、上位側のサーバ装置52,53,55において生成される上位支援情報を、自身で生成する支援情報とともに、対応する自動車10へ送信する。個別支援部71が実現される基地局サーバ装置51は、走行制御支援システム1において、各自動車10と直接的に通信する唯一のサーバ装置となる。基地局サーバ装置51は、自動車10が通信に使用する基地局40に接続されているサーバ装置であるため、基地局40を通じた無線通信により各自動車10の車両通信部17と通信する場合でも、比較的に安定している短い時間にて自動車10に応答することができる。
このような個別支援部71により支援されることにより、自動車10は、レベル3以上の高度な自動運転のための処理負荷が軽減された状態で、レベル3以上の高度な自動運転により走行することができる。
【0079】
特に、本実施形態では、自動車10と対応して基地局サーバ装置51に備えられる個別支援部71は、対応する自動車10から基地局40を通じた無線通信により自車センサの検出情報を取得し、取得した自車センサの検出情報を処理して二次的な検出情報を生成し、生成した二次的な検出情報を、対応する自動車10の車両通信部17へ送信する。具体的にはたとえば、個別支援部71は、対応する自動車10から自車センサにより自動車10の周辺を検出した空間情報を含む自車センサの検出情報を取得し、取得した周辺の空間情報を処理して、自動車10の周辺の走行路の認識情報または自動車10の周辺物の認識情報を、二次的な検出情報として生成し、生成した自動車10の周辺の走行路の認識情報または自動車10の周辺物の認識情報についての二次的な検出情報を、対応する自動車10の車両通信部17へ送信する。
これにより、本実施形態の自動車10の走行制御部16は、自動車10において自ら自車センサの検出情報を処理して二次的な検出情報を生成することなく、基地局サーバ装置51から車両通信部17が受信した二次的な検出情報を、自車の自車センサの検出情報とともに用いて、高レベルの走行制御を実行することができる。
【0080】
図8は、図5の上位支援部73による、複数の自動車10の走行支援制御(上位支援制御)のフローチャートである。
図5の上位支援部73は、たとえば狭地域サーバ装置52、広地域サーバ装置53または上位サーバ装置55などにおいて、個別支援部71とは別に生成されるものである。なお、上位支援部73は、たとえば狭地域サーバ装置52と上位サーバ装置55とに分散して、または広地域サーバ装置53と上位サーバ装置55とに分散して実現されてもよい。また、上位支援部73は、たとえば1つの基地局サーバ装置51などにおいて、個別支援部71とともに生成されてもよい。上位支援部73は、たとえば地域分けなどと対応させて複数の上位側のサーバ装置に分散して生成されてよい。
図5の上位支援部73は、図8の上位支援制御を繰り返し実行することにより、複数の自動車10の検出情報を繰り返しに取得して、複数の自動車10の走行制御を継続的に支援する。
上位支援部73は、たとえば複数の自動車10の各々についての管制制御の情報や、遠隔制御の情報を生成することにより、複数の自動車10の走行制御を支援する。
【0081】
ステップST21において、上位支援部73は、上位収集部として、複数の自動車10に対応して生成される複数の個別支援部71の各々から、各々の個別支援部71が対応する自動車10の検出情報を受信して収集する。各自動車10の検出情報には、少なくとも各自動車10の現在などの最新の位置情報が含まれている。
また、上位支援部73は、走行制御支援システム1を使用しないで管轄地域を走行している他の自動車からも、各々の最新の位置情報などの検出情報を収集してよい。このような自動車10は、上位支援部73が実現されるサーバ装置と直接に通信してよい。
【0082】
ステップST22において、上位支援部73は、サーバメモリ63に記録されている高精度地図データ67に基づいて管轄地域の走行路図を展開して生成し、管轄地域の走行路図に、収集した複数の自動車10の最新の位置などをマッピングする。これにより、上位支援部73は、管轄地域における複数の自動車10の走行環境についての情報を得ることができる。
ここで、走行路図は、たとえば、管轄地域の各道路または各車線を線分により現したもので構成されてよい。この場合、上位支援部73は、各自動車10を、各自動車10が走行している道路または車線に対応する線分において、最新の位置に対応する位置にマッピングする。この他にもたとえば、走行路図は、上述した道路または車線に対応する線分と時間軸とを組み合わせたもので構成されてもよい。この場合、上位支援部73は、各自動車10の位置だけでなく、各自動車10の走行速度についても、マッピングすることができる。
また、上位支援部73は、高精度地図データ67に基づいて管轄地域の走行路図に、ADASなどによる交通情報、規制情報、工事情報、などをマッピングしてもよい。
また、上位支援部73は、高精度地図データ67に基づいて管轄地域の走行路図に、各自動車10の周辺で認識されている他の移動体や、固定物についての情報を、マッピングしてもよい。
【0083】
ステップST23において、上位支援部73は、複数の自動車10をマッピングした管轄地域の走行路図において、管轄地域を走行している各自動車10の走行状況を得る。また、上位支援部73は、各自動車10について得た走行状況およびその後の走行状況の推定に基づいて、各自動車10についての走行制御に対する上位支援情報を生成する。
たとえば、管轄地域の走行路図において、処理に係る自動車10が現状のまま走行しても周辺物と干渉することがない場合には、上位支援部73は、現状の走行路での走行をそのまま継続するような走行可能範囲や走行制限範囲の情報を、管制制御での上位支援情報として生成する。または、上位支援部73は、現状の走行路での走行をそのまま継続するような制御値を、遠隔制御での上位支援情報として生成する。
この他にもたとえば、管轄地域の走行路図において、処理に係る自動車10が現状のまま走行しても周辺物と干渉する可能性がある場合には、上位支援部73は、その干渉が生じないように現状の走行を変更するような走行可能範囲や走行制限範囲の情報を、管制制御での上位支援情報として生成する。または、上位支援部73は、現状の走行を干渉が生じないように変更するための制御値を、遠隔制御での上位支援情報として生成する。
また、上位支援部73は、各自動車10のドライバの特性を勘案して、これらの上位支援情報を生成してもよい。各自動車10のドライバの特性情報は、予めサーバメモリ63に記録されてよい。この場合、上位支援部73は、たとえば各自動車10の安全性が確保可能な車間距離を最小限としつつ、ドライバが自ら確保する車間距離の偏差に応じた距離を加減算した距離を、上位支援情報における車間距離についての情報としてよい。
【0084】
ステップST24において、上位支援部73は、管轄地域を走行する各自動車10について生成した上位支援情報を、各自動車10に対応する個別支援部71へ送信して提供する。これにより、各個別支援部71は、上位支援部73から、対応する自動車10についての上位支援情報を受信して取得することができる。
【0085】
以上のように、本実施形態では、複数のサーバ装置50に備えられる上位支援部73は、上位収集部として、複数の個別支援部71の各々から、複数の個別支援部71の各々が対応している複数の自動車10の少なくとも位置に関する情報を収集する。そして、上位支援部73は、上位収集部により収集された複数の自動車10の位置を、高精度地図データ67に基づく走行路図にマッピングし、複数の自動車10をマッピングした走行路図における走行状態に基づいて、各自動車10の走行制御部16が各々の走行環境に応じた高レベルの走行制御のために使用可能な上位支援情報を生成する。ここで、上位支援部73が各々の自動車10の走行環境に応じて生成する上位支援情報は、たとえば、各自動車10に走行可能範囲や走行制限範囲を伝える管制制御のための情報であっても、各自動車10の走行制御部16が走行制御に使用する遠隔制御の制御値であっても、よい。
このような上位支援情報を、個別支援部71を通じて取得することにより、各自動車10の走行制御部16は、たとえば周囲にいる他の自動車などと干渉しないように走行する制御を実行することができる。各自動車10の走行制御部16は、上位支援情報に沿って走行制御を実行することにより、たとえば他の自動車などが、たとえば自車センサの検出情報に基づく自律的な制御において回避制御を開始する距離よりも離れている状態において、それとの干渉を回避するように走行制御を実行することが可能となる。各自動車10は、上位支援情報を得ることにより、自車センサの検出情報に基づく自律的な走行制御と比べて、より安定した走行を実現することができる。
【0086】
ところで、上述した複数の個別支援部71は、複数の自動車10の各々に対応付けるように複数の基地局サーバ装置51に生成されるものである。
自動車10が走行により移動すると、それに対応する個別支援部71は、それまでとは異なる基地局サーバ装置51へ切り替わるように、複数の基地局サーバ装置51の間で動的に切り替えて生成されることが望ましい。
図9は、図5の個別支援部71を備える基地局サーバ装置51における、複数の自動車10に対応させた個別支援部71の管理制御の一例のフローチャートである。
基地局サーバ装置51のサーバCPU64は、図9の個別支援部71の管理制御を、繰り返し実行する。
【0087】
ステップST31において、基地局サーバ装置51のサーバCPU64は、個別支援部71についての新たな生成要求があるか否かを判断する。
自動車10の走行制御部16は、たとえば、自動車10にドライバが乗車した場合、自動車10が走行を開始した場合、走行中の自動車10が走行制御支援システム1の管轄地域に入った場合、または、走行制御支援システム1の管轄地域においてドライバが所定の操作をした場合、基地局40を通じた無線通信により基地局サーバ装置51へ生成要求を送信してよい。
また、複数の基地局サーバ装置51は、後述するように、管轄中の自動車10が域外へ移動した場合、自動車10が移動した地域についての基地局サーバ装置51へ、生成要求を送信する。
このいずれかの生成要求がある場合、サーバCPU64は、個別支援部71についての新たな生成要求があると判断して、処理をステップST32へ進める。それ以外の場合、サーバCPU64は、個別支援部71についての新たな生成要求がないとして、処理をステップST33へ進める。
【0088】
ステップST32において、サーバCPU64は、新たな生成要求に係る自動車10に対応する個別支援部71を、自身の基地局サーバ装置51において生成する。サーバCPU64は、たとえば自身の基地局サーバ装置51において生成する個別支援部71ごとに識別情報を新たに発行し、その識別情報を付したワークエリアを、サーバメモリ63に動的に生成してよい。そして、サーバCPU64は、生成したワークエリアに、その個別支援部71に対応する自動車10についての情報を記録するとよい。サーバCPU64は、サーバメモリ63において対応する自動車10ごとに確保しているワークエリアの情報を順番に使用して、図7の個別支援制御を繰り返す。これにより、サーバCPU64は、複数の自動車10に対応する個別支援制御を実行することができる。その後、サーバCPU64は、本制御を終了してよい。
【0089】
ステップST33において、サーバCPU64は、管轄中の複数の自動車10の中に、域外へ移動する自動車10が存在するか否か判断する。サーバCPU64は、管轄中の自動車10についての域外への移動を、その自動車10の位置や移動方向などに基づいて、予測的に判断してよい。
域外へ移動する自動車10がある場合、サーバCPU64は、処理をステップST34へ進める。それ以外の場合、サーバCPU64は、処理をステップST35へ進める。
【0090】
ステップST34において、サーバCPU64は、自動車10の移動先の地域についての基地局サーバ装置51へ、生成要求を送信する。この生成要求には、域外へ移動する自動車10について自身において取得しているワークエリアの情報が含まれてよい。これにより、移動先の地域についての基地局サーバ装置51は、域外から入ってくる自動車10についての情報を、移動元の基地局サーバ装置51から引き継いで、不整合が生じ難い切れ目のない支援を実現し得る。
その後、サーバCPU64は、たとえば域外へ移動した自動車10に対応する個別支援部71の情報を、自身の基地局サーバ装置51から削除して、本制御を終了してよい。
【0091】
ステップST35において、サーバCPU64は、管轄中の複数の自動車10の中に、無検出状態が継続している自動車10が存在するか否か判断する。
自動車10は、その走行が終了すると、走行制御部16を含めて動作が停止する。この場合、自動車10は、自車センサの検出情報を、対応する個別支援部71へ送信しなくなる。
サーバCPU64は、たとえばサーバメモリ63において各自動車10に対応して確保するワークエリアに、情報の最終更新時刻を記録してよい。この場合、サーバCPU64は、たとえば現在時刻と最終更新時刻との時間差が自動車10の走行制御周期以上である閾値より大きくなると、無検出状態が継続していると判断することができる。サーバCPU64は、サーバメモリ63に確保されている複数のすべてのワークエリアについて、このような無検出状態の継続を判断することにより、無検出状態が継続している自動車10が存在するか否か判断してよい。
無検出状態が継続している自動車10が存在する場合、サーバCPU64は、処理をステップST36へ進める。それ以外の場合、サーバCPU64は、本制御を終了する。
【0092】
ステップST36において、サーバCPU64は、無検出状態が継続している自動車10に対応する個別支援部71の情報を、自身の基地局サーバ装置51から削除する。サーバCPU64は、たとえばサーバメモリ63においてその自動車10に対応して確保しているワークエリアを、削除して開放してよい。その後、サーバCPU64は、本制御を終了する。
【0093】
このような個別支援部71の管理制御が複数の基地局サーバ装置51において実行されることにより、各自動車10に対応する個別支援部71は、各自動車10の移動に応じて基地局40のハンズオーバがあると、移動した自動車10が新たに通信する基地局40に接続されている基地局サーバ装置51へ動的に割り当てが切り替えられる。個別支援部71は、あたかも、対応する自動車10の移動に追従して、複数の基地局サーバ装置51の間で動的に移動することになる。基地局サーバ装置51は、エリアサーバ装置の一例である。
このように本実施形態では、走行する各自動車10に対応する個別支援部71は、1乃至複数の基地局40が設けられるエリアごとに設けられる複数の基地局サーバ装置51の中で、各自動車10の車両通信部17が通信する基地局40に対応する基地局サーバ装置51に備えられる。各基地局サーバ装置51は、たとえば、基地局40と一体的に設けられてもよい。
しかも、本実施形態において、各自動車10に対応して生成される個別支援部71は、その自動車10の走行に応じて複数の基地局サーバ装置51の間で動的に割り当てが切り替えられる。個別支援部71は、走行する自動車10に追従するように、複数の基地局サーバ装置51の間で移動する。これにより、各自動車10と個別支援部71との情報の送受における遅延などは、各自動車10が通信する基地局40が切り替えられたとしても、必要最小限に抑えることができる。
各自動車10が対応する個別支援部71へ提供する情報と、各個別支援部71が、対応する自動車10へ提供する情報とは、必要最小限に抑えられるように安定している遅延時間により送受され得る。また、それらの応答時間も、必要最小限に抑えることができる。個別支援部71は、対応する自動車10の走行制御部16の制御に遅れることがないように、対応する自動車10から取得した情報に基づいて、制御に利用可能な情報を提供し続けることが可能になる。
【0094】
以上のように、本実施形態において、複数の自動車10の走行制御を支援するために、複数のサーバ装置50を用いる。また、複数の自動車10の各々は、各々に設けられる自車センサの検出情報に基づく自律的な走行制御を実行可能な走行制御部16と、基地局40を通じた無線通信により複数のサーバ装置50から、走行制御部16の走行制御に用いる情報を取得する車両通信部17と、を有する。
そして、本実施形態では、複数の自動車10の走行制御を支援するための複数のサーバ装置50の各々には、複数の自動車10の各々と対応して生成されて、対応する自動車10の走行制御部16が走行制御のために使用可能な情報を、基地局40を通じた無線通信により車両通信部17へ提供して、対応する自動車10の走行制御を支援する複数の個別支援部71と、複数の自動車10の情報を用いて、複数の自動車10の走行状態に基づく各自動車10の走行制御のための上位支援情報を生成する上位支援部73と、の中の少なくとも1つを備えるようにする。なお、本実施形態での上位支援部73は、複数の個別支援部71の各々から、各個別支援部71が対応している自動車10の情報を収集する上位収集部としての機能と、複数の自動車10の各々へ提供するために生成した上位支援情報を、各自動車10そのものではなく、複数の自動車10の各々と対応して生成されている複数の個別支援部71へ提供する上位提供部としての機能とを、併せ持つ。
そして、複数のサーバ装置50は、その全体において、上述した複数の個別支援部71、上位支援部73、のすべてを備える。この際、複数のサーバ装置50の相互の通信は、自動車10と基地局サーバ装置51との間のように基地局40を通じた無線通信を含むことがないため、有線接続を基本にした低遅延の通信とすることができる。これにより、複数のサーバ装置50の間の通信は、移動体の無線通信において生じ得るような過大な遅延が変動して生じることが起き難くなり、安定した低遅延での通信とすることができる。
本実施形態では、複数のサーバ装置50において、複数の自動車10に対応させた複数の個別支援部71を実現している。各個別支援部71は、対応する自動車10から取得する情報と、上位支援部73から提供される上位支援情報とに基づいて、対応する自動車10の走行制御部16が走行制御のために使用可能な情報を生成して、基地局40を通じた無線通信により、対応する自動車10の車両通信部17へ送信する。これにより、上位収集部、上位支援部73、および上位支援部73は、複数の自動車10の各々へ提供するために生成する上位支援情報を、複数のサーバ装置50の範囲内にある複数の個別支援部71へ提供することにより、複数の自動車10に対して、走行制御のために提供することができる。上位収集部、上位支援部73、および上位支援部73は、基地局40を通じた無線通信により複数の自動車10に対して直接的に提供することなく、複数の自動車10へ走行制御のために提供して、各々の処理を終えることができる。複数のサーバ装置50におけるこれら一連の処理は、それら複数のサーバ装置50の間での通信を含めて、安定した低遅延での処理とすることができる。自動車10が移動して無線通信に使用する基地局40を切り替えたとしても、複数のサーバ装置50におけるこれら一連の処理は、その切り替わりの影響をそのままで受けてしまうことなく、安定した低遅延での処理とすることができる。制御遅れにつながる遅延は生じ難くなる。
しかも、本実施形態に係る複数の自動車10は、複数のサーバ装置50において各々と対応して生成される複数の個別支援部71から、自動車10の走行制御部16が走行制御のために使用可能な情報を受信して、自車の走行制御に用いることができる。各自動車10の走行制御部16は、たとえば上述したような上位支援部73から提供される上位支援情報を自らの処理により生成することなく、上位支援情報に基づく情報を受信して、自車の走行制御に用いることができる。各自動車10の処理負荷は、軽減され得る。各自動車10は、高レベルの自動運転に対応する走行制御を実行する場合であっても、複数のサーバ装置50において生成される上位支援情報やそれに基づく情報を複数のサーバ装置50から取得して、負荷が抑えられている処理により、それを実行することができる。自動車10への要求性能は、抑えることができる。
このように、本実施形態では、自動車10の走行制御をサーバ装置により支援する際の複数の課題を総合的なバランスをとりながら解決して、自動車10の走行制御を複数のサーバ装置50により好適に支援することができる。
【0095】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る自動車10の走行制御支援システム1について説明する。本実施形態での走行制御支援システム1の構成および制御は、上述した実施形態のものと同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。以下、主に、上述した実施形態との相違点について説明する。
【0096】
図10は、本発明の第二実施形態の個別支援部71による、対応する自動車10のための個別支援制御のフローチャートである。
個別支援部71は、図10の個別支援制御を繰り返し実行することにより、対応する自動車10から検出情報を繰り返しに取得して、対応する自動車10の走行制御を継続的に支援する。
図10においてステップST11からステップST17までの処理は、図7のものと同様である。ただし、個別支援部71は、ステップST15の後、処理をステップST40へ進める。
【0097】
ステップST40において、個別支援部71は、ステップST14までに取得している対応する自動車10の自車センサの検出情報(二次的な検出情報を含む。)と、ステップST15において取得している上位支援部73からの上位支援情報と、に基づいて、実際に自動車10へ送信する進路情報を生成する。ここでの進路情報は、上位支援情報に替えて、自動車10へ送信されてよい。その後、個別支援部71は、処理をステップST17へ進める。
【0098】
図11は、図7の進路情報の生成処理の詳細なフローチャートである。
個別支援部71は、図10のステップST40において、図11の進路情報の生成処理を実行する。
【0099】
ステップST41において、個別支援部71は、上位支援部73から取得している上位支援情報に従う走行進路を仮生成する。
たとえば上位支援情報が走行可能範囲や走行禁止範囲についての管制情報である場合、個別支援部71は、その範囲により制限された走行進路を仮生成する。
この他にもたとえば上位支援情報が自動車10の走行制御部16が走行制御に使用可能な遠隔制御の制御値である場合、個別支援部71は、その制御値による走行進路を仮生成する。
【0100】
ステップST42において、個別支援部71は、仮生成している走行進路と、自動車10の自車センサの検出情報とを比較して、走行路または周辺物と干渉するか否かを判断する。ここで比較する自車センサの検出情報には、個別支援部71が自車センサの検出情報に基づいて生成している走行路の認識情報や周辺物の認識情報を使用してよい。仮生成している走行進路が走行路または周辺物と干渉しない場合、個別支援部71は、処理をステップST43へ進める。仮生成している走行進路が走行路または周辺物と干渉する場合、個別支援部71は、処理をステップST44へ進める。
【0101】
ステップST43において、個別支援部71は、仮生成している走行進路を、対応する自動車10へ提供する進路として決定する。その後、個別支援部71は、処理を図10へ戻し、ステップST16において、仮生成している走行進路を、対応する自動車10へ送信して提供する。
【0102】
ステップST44において、個別支援部71は、上位支援情報にしたがって仮生成している走行進路を、干渉し難くなるように調整した走行進路を生成する。個別支援部71は、調整により変更した走行進路を、対応する自動車10へ提供する進路として決定する。その後、個別支援部71は、処理を図10へ戻し、ステップST16において、調整後の走行進路を、対応する自動車10へ送信して提供する。
【0103】
このように個別支援部71は、上位支援部73から取得する上位支援情報を、対応する自動車10へ送信して提供するのではなく、上位支援情報に基づいて生成した走行進路を、対応する自動車10へ送信して提供する。個別支援部71は、対応する自動車10の実際の走行状況に応じた走行進路の情報を、対応する自動車10へ提供することができる。
【0104】
なお、個別支援部71は、ステップST42において、単に対応する自動車10の検出情報との対比により干渉を判断するだけでなく、その他の対比判断を併せてしてもよい。
このような対比判断としては、たとえば、個別支援部71が実現されている基地局サーバ装置51のサーバメモリ63に記録されている高精度地図データ67に基づく走行路図と走行進路との対比がある。そして、仮生成している走行進路が、基地局サーバ装置51の高精度地図データ67に基づく走行路図と整合しない場合には、個別支援部71は、処理をステップST44へ進めてよい。この場合、個別支援部71は、ステップST44において、基地局サーバ装置51の高精度地図データ67に基づく走行路図と整合するように、仮生成している走行進路を調整するとよい。
この他にもたとえば、個別支援部71が実現されている基地局サーバ装置51のサーバメモリ63には、ドライバの車間距離などについての特性情報が記録されてよい。この場合、個別支援部71は、ステップST41において、ドライバの車間距離などの特性に沿うように、仮生成している走行進路を調整してもよい。個別支援部71は、たとえば各自動車10の安全性が確保可能な車間距離を最小限としつつ、ドライバについての車間距離の偏差に応じた距離を加減算した距離での走行進路を生成してよい。
個別支援部71が実現されている基地局サーバ装置51は、上位支援部73が実現されている上位側のサーバ装置とは別に、ローカルに閉じている管制/遠隔制御を独自に実行してよい。
【0105】
以上のように、本実施形態では、自動車10と対応して基地局サーバ装置51に備えられる個別支援部71は、対応する自動車10から、自車センサの検出情報を取得するとともに、上位支援部73から、対応する自動車10の走行環境に応じた上位支援情報を取得する。そして、対応する自動車10の走行制御部16が上位支援情報にしたがって走行した場合に、自車センサの検出情報(二次的な検出情報を含む。)に基づいて認識可能な走行路または周辺物と干渉しないときには、個別支援部71は、上位支援情報にしたがう情報を、対応する自動車10の走行制御部16が走行制御のために使用可能な情報として生成する。これに対して、対応する自動車10の走行制御部16が上位支援情報にしたがって走行した場合に、自車センサの検出情報に基づいて認識可能な走行路または周辺物と干渉するときには、個別支援部71は、上位支援情報にしたがった走行を干渉が生じ難くなるように調整して変更した情報を、対応する自動車10の走行制御部16が走行制御のために使用可能な情報として生成する。
これにより、各自動車10に対応する個別支援部71は、現実と十分には対応していない上位支援情報を上位支援部73から取得している場合であっても、各自動車10の自車センサにより検出される現実に対して十分に対応している進路情報を生成して、対応する各自動車10へ提供することができる。個別支援部71がこのような調整処理を下位側において実行することにより、上位支援部73は、複数の自動車10の現実の走行環境についてのすべての情報を得ていなくとも、基本的に複数の自動車10が安全に走行を継続することが可能な上位支援情報を生成することができる。
【0106】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0107】
上述した実施形態では、複数の自動車10の走行環境を判断して各自動車10への上位支援情報を生成する上位支援部73は、基本的に、図3の狭地域サーバ装置52若しくは広地域サーバ装置53、または上位サーバ装置55において実現されている。
この他にもたとえば、上位支援部73は、複数の基地局サーバ装置51の中の一部において実現されてもよい。
複数のサーバ装置50における、複数の個別支援部71と上位支援部73との配置は、図3のものには限られない。たとえば上位支援部73は、1つの基地局サーバ装置51において、個別支援部71とともに配置されてよい。
また、本発明が適用可能な走行制御支援システム1は、図3の複数のサーバ装置50の構成に限られない。複数のサーバ装置50の構成は、走行制御支援システム1が管理する地域の地形や都市配置、人口密度の分布、高速道路の有無、などの各種の設置環境に応じてデザインしてよい。
【符号の説明】
【0108】
1…走行制御支援システム、10…自動車(車両)、11…駆動制御部、12…操舵制御部、13…制動制御部、14…運転操作部、15…自車センサ部、16…走行制御部、17…車両通信部、18…セントラルゲートウェイ装置、19…ケーブル、21…加速度センサ、22…コーナレーダ、23…ステレオカメラ、24…Lidar、25…全周囲カメラ、26…GNSS受信機、31…車両メモリ、32…車両ECU、33…車両の高精度地図データ、40…基地局、41,60…サーバ装置、42…キャリア通信ケーブル、43…ローカルシステム、44…他のサーバ装置、45…広域通信網、46…ゲートウェイ装置、50…複数のサーバ装置、51…基地局サーバ装置、52…狭地域サーバ装置、53…広地域サーバ装置、54…アクセラレーションサーバ装置、55…上位サーバ装置、57…キャリア広域通信網、61…サーバ通信部、62…サーバGNSS受信機、63…サーバメモリ、64…サーバCPU、65…サーババス、67…管轄地域の高精度地図データ、68…他のサーバ装置、71…個別支援部、72…遠隔検出部、73…上位支援部(上位収集部,上位提供部)、110…GNSS衛星


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11