(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】感熱記録積層体および感熱記録積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/40 20060101AFI20241010BHJP
B41M 5/323 20060101ALI20241010BHJP
B41M 5/333 20060101ALI20241010BHJP
B41M 5/337 20060101ALI20241010BHJP
B41M 5/44 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B41M5/40 210
B41M5/323 220
B41M5/333 220
B41M5/337 230
B41M5/44 210
B41M5/44 220
(21)【出願番号】P 2024007134
(22)【出願日】2024-01-22
【審査請求日】2024-03-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 光宏
(72)【発明者】
【氏名】川邉 和也
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-030993(JP,A)
【文献】特開2022-151636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/40
B41M 5/323
B41M 5/333
B41M 5/337
B41M 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム基材の一方の面に、ロイコ染料と、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物のうち少なくとも一つの顕色剤と、水性樹脂と、アルコールと、水とを含む感熱発色剤からなる感熱発色層と、
前記感熱発色層上に、水溶性樹脂と水とを含む水性コート剤からなる水性コート層と、
前記水性コート層上に、
アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩酢ビ共重合体および繊維系樹脂を一種類以上と、ポリイソシアネートと、有機溶剤とを含むオーバーコート剤からなるオーバーコート層とを有することを特徴とする感熱記録積層体。
【化1】
(R
1は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、R
2は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、Z
1は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基である。)
【化2】
(R
3は、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のアルキルオキシアルキル基、炭素数3~12のポリオキシアルキレンアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数1~12のアルキルスルファニル基、炭素数7~12のアラルキルスルファニル基、炭素数6~14のアリールスルファニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、炭素数7~12のアラルキルスルホニル基、炭素数6~15のアリールスルホニル基、炭素数7~12のアラルキルスルホニルアミノ基、炭素数6~15のアリールスルホニルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数2~10のアシルアミノ基、(炭素数2~10のアシル)オキシカルボニルアミノ基、(炭素数1~12のアルキル)オキシカルボニルアミノ基、アラルキルオキシカルボニルアミノ基、(炭素数7~12のアラルキル)オキシカルボニルアミノ基、または、(炭素数6~15のアリール)オキシカルボニルアミノ基であり、隣接する2つのR
3は互いに結合してそれぞれが結合している炭素原子とともに芳香環または非芳香環を形成してもよく、R
4、R
5は、水素原子またはメチル基であり、a、b、cは、独立して、0~4の整数であり、a+cは、0~5の整数であり、nは0または1であり、Yは、2価の有機基であり、Z
2は、スルホニルオキシ基またはスルホニル基である。)
【化3】
(R
6は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、R
7は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、lおよびmは0または1であり、Z
3は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基である。)
【化4】
(R
8は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、R
9は、メチル基であり、dは、0~4の整数であり、Z
4およびZ
5は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
プラスチックフィルム基材の一方の面に、ロイコ染料と、下記一般式(5)で表される化合物と、水性樹脂と、アルコールと、水とを含む感熱発色剤からなる感熱発色層と、
前記感熱発色層上に、水溶性樹脂と水とを含む水性コート剤からなる水性コート層と、
前記水性コート層上に、
アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩酢ビ共重合体および繊維系樹脂を一種類以上と、ポリイソシアネートと、有機溶剤とを含むオーバーコート剤からなるオーバーコート層とを有することを特徴とする感熱記録積層体。
【化5】
(R
10は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記水性樹脂が、水溶性
アクリル樹脂
、水性
アクリルエマルジョン樹脂
および水溶性ポリエステル樹脂を一種類以上含むことを特徴とする請求項1または2に記載の感熱記録積層体。
【請求項4】
請求項1または2のいずれかに記載の感熱記録積層体に用いるオーバーコートセットであって、
アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩酢ビ共重合体および繊維系樹脂を一種類以上と有機溶剤とを含むコート剤Aと、
ポリイソシアネートと有機溶剤とを含む硬化剤Bと、を含むことを特徴とするオーバーコートセット。
【請求項5】
請求項3に記載の感熱記録積層体に用いるオーバーコートセットであって、
アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩酢ビ共重合体および繊維系樹脂を一種類以上と有機溶剤とを含むコート剤Aと、
ポリイソシアネートと有機溶剤とを含む硬化剤Bと、を含むことを特徴とするオーバーコートセット。
【請求項6】
プラスチックフィルム基材を準備する工程と、
前記プラスチックフィルム基材の一方に、ロイコ染料と、顕色剤と、水性樹脂と、アルコールと、水とを含む感熱発色剤により設けられた感熱発色層を形成するグラビア印刷工程と、
前記感熱発色層上に、水溶性樹脂と水とを含む水性コート剤により設けられた水性コート層を形成する塗布工程と、
前記水性コート層上に、
アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩酢ビ共重合体および繊維系樹脂を一種類以上と、ポリイソシアネートと、有機溶剤とを含むオーバーコート剤により設けられたオーバーコート層を形成する塗布工程とを備える感熱記録積層体の製造方法において、
前記顕色剤が、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物のうち少なくとも一つであることを特徴とする感熱記録積層体の製造方法。
【化6】
(R
1は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、R
2は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、Z
1は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基である。)
【化7】
(R
3は、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のアルキルオキシアルキル基、炭素数3~12のポリオキシアルキレンアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数1~12のアルキルスルファニル基、炭素数7~12のアラルキルスルファニル基、炭素数6~14のアリールスルファニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、炭素数7~12のアラルキルスルホニル基、炭素数6~15のアリールスルホニル基、炭素数7~12のアラルキルスルホニルアミノ基、炭素数6~15のアリールスルホニルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数2~10のアシルアミノ基、(炭素数2~10のアシル)オキシカルボニルアミノ基、(炭素数1~12のアルキル)オキシカルボニルアミノ基、アラルキルオキシカルボニルアミノ基、(炭素数7~12のアラルキル)オキシカルボニルアミノ基、または、(炭素数6~15のアリール)オキシカルボニルアミノ基であり、隣接する2つのR
3は互いに結合してそれぞれが結合している炭素原子とともに芳香環または非芳香環を形成してもよく、R
4、R
5は、水素原子またはメチル基であり、a、b、cは、独立して、0~4の整数であり、a+cは、0~5の整数であり、nは0または1であり、Yは、2価の有機基であり、Z
2は、スルホニルオキシ基またはスルホニル基である。)
【化8】
(R
6は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、R
7は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、lおよびmは0または1であり、Z
3は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基である。)
【化9】
(R
8は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、R
9は、メチル基であり、dは、0~4の整数であり、Z
4およびZ
5は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項7】
プラスチックフィルム基材を準備する工程と、
前記プラスチックフィルム基材の一方に、ロイコ染料と、顕色剤と、水性樹脂と、アルコールと、水とを含む感熱発色剤により設けられた感熱発色層を形成するグラビア印刷工程と、
前記感熱発色層上に、水溶性樹脂と水とを含む水性コート剤により設けられた水性コート層を形成する塗布工程と、
前記水性コート層上に、
アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩酢ビ共重合体および繊維系樹脂を一種類以上と、ポリイソシアネートと、有機溶剤とを含むオーバーコート剤により設けられたオーバーコート層を形成する塗布工程とを備える感熱記録積層体の製造方法において、
前記顕色剤が、下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする感熱記録積層体の製造方法。
【化10】
(R
10は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項8】
前記水性樹脂が、水溶性
アクリル樹脂
、水性
アクリルエマルジョン樹脂
および水溶性ポリエステル樹脂を一種類以上含むことを特徴とする請求項
6または
7に記載の感熱記録積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録積層体および感熱記録積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱記録体は、通常無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料(以下、「ロイコ染料」ともいう)とフェノール性化合物などの電子受容性顕色剤(以下、「顕色剤」ともいう)とを含有する塗工液を、紙、合成紙、フィルム、プラスチックなどの支持体に塗工したものであり、サーマルヘッド、ホットスタンプ、熱ペン、レーザー光などの加熱による瞬時の化学反応により発色し、記録画像が得られる。感熱記録体は、ファクシミリ、コンピューターの端末プリンタ、自動券売機、計測用レコーダー、スーパーマーケットやコンビニなどのレシートなどの記録媒体として広範囲に使用されている。
【0003】
比較的簡単な装置を用いて短時間で記録することができる上に、コストが安いという利点があるため、近年では、画像の信頼性や従来のラベルの削減、デザイン性、包装材のコストダウンに寄与することができ、食品、弁当、惣菜などの食品包装分野において、急速に使われるようになっており、ラベルレス、透明性、耐水性、耐油性、耐アルコール性、耐スクラッチ性、低温で発色しない(耐地汚れ性)の要望がある。
【0004】
特許文献1には、プラスチックフィルム上に、ロイコ染料と、顕色剤としてウレアウレタン系化合物とを含有する感熱記録層と、該感熱記録層上に最外層として保護層を有し、該保護層が、アクリル系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含有する感熱記録体が開示されている。
しかしながら、保護層にはアクリル系樹脂およびポリオレフィン系樹脂の水性エマルジョンを併用するものであり、その比較例よりアクリル系樹脂の水性エマルジョンだけでは、印字走行性(耐ヘッド性)は優れるものの、ある程度の耐水性とわずかな塗工欠陥(ある程度の透明性)で済むことが明らかであるが、耐アルコール性は劣るおそれがある。該保護層に硬化剤あるいは架橋剤を使用していないため、耐油性は劣るおそれがある。また、耐地汚れ性、ブロッキング、残留溶剤、密着性、耐スクラッチ性、耐摩擦性についての記載も示唆もない。
【0005】
特許文献2には、支持体と、前記支持体上に、N,N’-ジアリール尿素誘導体である顕色剤と、スチレン-アクリル樹脂を含有する感熱記録層とを有する感熱記録媒体が開示されている。また、感熱記録層上に保護層を有するものである(実施例6)。
該保護層は、水溶性スチレン-アクリル樹脂と硬化剤としてオキサゾリン基含有ポリマーを使用したもので、耐水性は有するものである。また、耐エタノール性として、感熱記録媒体にレーザーマーカーで印刷をして画像形成後、エタノールに浸漬前後の画像濃度変化を評価しているが、感熱記録媒体自体の耐アルコール性については評価しておらず、劣るおそれがある。また、耐地汚れ性、ブロッキング、残留溶剤、密着性、耐スクラッチ性、耐ヘッド性、耐摩擦性、耐油性について、記載も示唆もない。透明性については、支持体について透明性フィルムであることが好ましく、ヘイズ(濁度)で10%程度以下であれば問題がないと記載されているが、あくまで支持体の透明性であって、感熱記録媒体自体の透明性ではなく、該感熱記録媒体の透明性についての記載も示唆もない。
【0006】
特許文献3は、ロイコ染料と、特定の溶解度を持つ顕色剤と、溶媒と、を含有する感熱記録層形成液および支持体の一部の領域上に感熱記録層を有する感熱記録媒体が開示されている。また、感熱記録層上に保護層を有するものである(実施例21~28)。
該保護層は、アクリル樹脂エマルジョンを使用したもので、耐水性は有するものである。また、地肌均一性(塗工ムラの少なさ=密着性)、地肌濃度(発色濃度)についても優れるものである。しかし、該保護層に硬化剤あるいは架橋剤を使用していないため、耐油性は劣るおそれがある。さらに、耐アルコール性も劣るおそれがある。また、耐地汚れ性、ブロッキング、透明性、残留溶剤、耐スクラッチ性、耐ヘッド性、耐摩擦性についての記載も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-199054号公報
【文献】特開2022-146283号公報
【文献】特開2022-151636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、耐水性はもちろん、残留溶剤が少なく、ブロッキングしにくく、耐地汚れ性、透明性、発色濃度、密着性、耐アルコール性、発色前後での耐スクラッチ性、耐ヘッド性、耐摩擦性、耐油性を有する積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、プラスチックフィルム基材の一方の面に、ロイコ染料と、特定の化合物のうち少なくとも一つの顕色剤と、水性樹脂と、アルコールと、水とを含む感熱発色剤からなる感熱発色層と、前記感熱発色層上に、水溶性樹脂と水とを含む水性コート剤からなる水性コート層と、前記水性コート層上に、熱可塑性樹脂と、ポリイソシアネートと、有機溶剤とを含むオーバーコート剤からなるオーバーコート層とを有する感熱記録積層体とすることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下に示す感熱記録積層体、感熱記録積層体に用いるオーバーコートセット、および感熱記録積層体の製造方法が提供される。
(1)プラスチックフィルム基材の一方の面に、ロイコ染料と、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物のうち少なくとも一つの顕色剤と、水性樹脂と、アルコールと、水とを含む感熱発色剤からなる感熱発色層と、前記感熱発色層上に、水溶性樹脂と水とを含む水性コート剤からなる水性コート層と、
前記水性コート層上に、熱可塑性樹脂と、ポリイソシアネートと、有機溶剤とを含むオーバーコート剤からなるオーバーコート層とを有することを特徴とする感熱記録積層体、
【0011】
【化1】
(R
1は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、R
2は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、Z
1は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基である。)
【0012】
【化2】
(R
3は、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のアルキルオキシアルキル基、炭素数3~12のポリオキシアルキレンアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数1~12のアルキルスルファニル基、炭素数7~12のアラルキルスルファニル基、炭素数6~14のアリールスルファニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、炭素数7~12のアラルキルスルホニル基、炭素数6~15のアリールスルホニル基、炭素数7~12のアラルキルスルホニルアミノ基、炭素数6~15のアリールスルホニルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数2~10のアシルアミノ基、(炭素数2~10のアシル)オキシカルボニルアミノ基、(炭素数1~12のアルキル)オキシカルボニルアミノ基、アラルキルオキシカルボニルアミノ基、(炭素数7~12のアラルキル)オキシカルボニルアミノ基、または、(炭素数6~15のアリール)オキシカルボニルアミノ基であり、隣接する2つのR
3は互いに結合してそれぞれが結合している炭素原子とともに芳香環または非芳香環を形成してもよく、R
4、R
5は、水素原子またはメチル基であり、a、b、cは、独立して、0~4の整数であり、a+cは、0~5の整数であり、nは0または1であり、Yは、2価の有機基であり、Z
2は、スルホニルオキシ基またはスルホニル基である。)
【0013】
【化3】
(R
6は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、R
7は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、lおよびmは0または1であり、Z
3は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基である。)
【0014】
【化4】
(R
8は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、R
9は、メチル基であり、dは、0~4の整数であり、Z
4およびZ
5は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【0015】
(2)プラスチックフィルム基材の一方の面に、ロイコ染料と、下記一般式(5)で表される化合物と、水性樹脂と、アルコールと、水とを含む感熱発色剤からなる感熱発色層と、前記感熱発色層上に、水溶性樹脂と水とを含む水性コート剤からなる水性コート層と、
前記水性コート層上に、熱可塑性樹脂と、ポリイソシアネートと、有機溶剤とを含むオーバーコート剤からなるオーバーコート層とを有することを特徴とする感熱記録積層体、
【0016】
【化5】
(R
10は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【0017】
(3)前記水性樹脂が、水溶性樹脂または水性エマルジョン樹脂であることを特徴とする(1)または(2)に記載の感熱記録積層体、
(4)前記熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩酢ビ共重合体、繊維系樹脂であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の感熱記録積層体、
(5)(1)~(3)のいずれかに記載の感熱記録積層体に用いるオーバーコートセットであって、
熱可塑性樹脂と有機溶剤とを含むコート剤Aと、
ポリイソシアネートと有機溶剤とを含む硬化剤Bと、を含むことを特徴とするオーバーコートセット、
(6)プラスチックフィルム基材を準備する工程と、
前記プラスチックフィルム基材の一方に、ロイコ染料と、顕色剤と、水性樹脂と、アルコールと、水とを含む感熱発色剤により設けられた感熱発色層を形成するグラビア印刷工程と、
前記感熱発色層上に、水溶性樹脂と水とを含む水性コート剤により設けられた水性コート層を形成する塗布工程と、
前記水性コート層上に、熱可塑性樹脂と、ポリイソシアネートと、有機溶剤とを含むオーバーコート剤により設けられたオーバーコート層を形成する塗布工程とを備える感熱記録積層体の製造方法において、
前記顕色剤が、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物のうち少なくとも一つであることを特徴とする感熱記録積層体の製造方法、
【0018】
【化6】
(R
1は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、R
2は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、Z
1は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基である。)
【0019】
【化7】
(R
3は、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のアルキルオキシアルキル基、炭素数3~12のポリオキシアルキレンアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数1~12のアルキルスルファニル基、炭素数7~12のアラルキルスルファニル基、炭素数6~14のアリールスルファニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、炭素数7~12のアラルキルスルホニル基、炭素数6~15のアリールスルホニル基、炭素数7~12のアラルキルスルホニルアミノ基、炭素数6~15のアリールスルホニルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数2~10のアシルアミノ基、(炭素数2~10のアシル)オキシカルボニルアミノ基、(炭素数1~12のアルキル)オキシカルボニルアミノ基、アラルキルオキシカルボニルアミノ基、(炭素数7~12のアラルキル)オキシカルボニルアミノ基、または、(炭素数6~15のアリール)オキシカルボニルアミノ基であり、隣接する2つのR
3は互いに結合してそれぞれが結合している炭素原子とともに芳香環または非芳香環を形成してもよく、R
4、R
5は、水素原子またはメチル基であり、a、b、cは、独立して、0~4の整数であり、a+cは、0~5の整数であり、nは0または1であり、Yは、2価の有機基であり、Z
2は、スルホニルオキシ基またはスルホニル基である。)
【0020】
【化8】
(R
6は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、R
7は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、lおよびmは0または1であり、Z
3は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基である。)
【0021】
【化9】
(R
8は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、R
9は、メチル基であり、dは、0~4の整数であり、Z
4およびZ
5は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【0022】
(7)プラスチックフィルム基材を準備する工程と、
前記プラスチックフィルム基材の一方に、ロイコ染料と、顕色剤と、水性樹脂と、アルコールと、水とを含む感熱発色剤により設けられた感熱発色層を形成するグラビア印刷工程と、
前記感熱発色層上に、水溶性樹脂と水とを含む水性コート剤により設けられた水性コート層を形成する塗布工程と、
前記水性コート層上に、熱可塑性樹脂と、ポリイソシアネートと、有機溶剤とを含むオーバーコート剤により設けられたオーバーコート層を形成する塗布工程とを備える感熱記録積層体の製造方法において、
前記顕色剤が、下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする感熱記録積層体の製造方法、
【0023】
【化10】
(R
10は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【0024】
(8)前記水性樹脂が、水溶性樹脂または水性エマルジョン樹脂であることを特徴とする(6)または(7)に記載の感熱記録積層体の製造方法、
(9)前記熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩酢ビ共重合体、繊維系樹脂であることを特徴とする(6)~(8)のいずれかに記載の感熱記録積層体の製造方法、
(10)前記プラスチックフィルム基材と、前記感熱発色層との間に、アンカーコート剤により設けられたアンカーコート層を形成する塗布工程を備えることを特徴とする(6)~(9)のいずれかに記載の感熱記録積層体の製造方法、
(11)前記感熱発色層と反対面の前記プラスチックフィルム基材上に、シール層を形成するラミネート工程または塗布工程を備えることを特徴とする(6)~(10)のいずれかに記載の感熱記録積層体の製造方法、
(12)前記プラスチックフィルム基材上または前記感熱発色層と反対面の前記プラスチックフィルム基材上に、絵柄層を形成するグラビア印刷工程を備えることを特徴とする(6)~(11)のいずれかに記載の感熱記録積層体の製造方法、
(13)さらに、有色インキ層を形成するグラビア印刷工程を備えることを特徴とする(6)~(12)のいずれかに記載の感熱記録積層体の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、耐水性はもちろん、残留溶剤が少なく、ブロッキングしにくく、耐地汚れ性、透明性、発色濃度、密着性、耐アルコール性、発色前後での耐スクラッチ性、耐ヘッド性、耐摩擦性、耐油性を有する積層体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0027】
本発明の感熱記録積層体は、プラスチックフィルム基材の一方の面に、ロイコ染料と、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物のうち少なくとも一つの顕色剤と、水性樹脂と、アルコールと、水とを含む感熱発色剤からなる感熱発色層と、前記感熱発色層上に、水溶性樹脂と水とを含む水性コート剤からなる水性コート層と、前記水性コート層上に、熱可塑性樹脂と、ポリイソシアネートと、有機溶剤とを含むオーバーコート剤からなるオーバーコート層とを有することが好ましい。
【0028】
本発明の感熱発色剤中に、一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。前記一般式(1)で表される化合物としては、以下のものである。
【0029】
【0030】
R1は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0031】
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-エチルへキシル基、ラウリル基などが挙げられる。
【0032】
前記アラルキル基としては、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、p-メチルベンジル基、m-メチルベンジル基、m-エチルベンジル基、p-エチルベンジル基、p-イソプロピルベンジル基、p-t-ブチルベンジル基、p-メトキシベンジル基、m-メトキシベンジル基、o-メトキシベンジル基、m,p-ジ-メトキシベンジル基、p-エトキシ-m-メトキシベンジル基、p-フェニルメチルベンジル基、p-クミルベンジル基、p-フェニルベンジル基、o-フェニルベンジル基、m-フェニルベンジル基、p-トリルベンジル基、m-トリルベンジル基、o-トリルベンジル基、p-クロロベンジル基などの無置換またはアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基もしくはハロゲン原子で置換されたアラルキル基などが挙げられる。
【0033】
前記アリール基としては、フェニル基、p-トリル基、m-トリル基、o-トリル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、メシチレン基、p-エチルフェニル基、p-イソプロピルフェニル基、p-t-ブチルフェニル基、p-メトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、p-エトキシフェニル基、p-クロロフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、t-ブチル化ナフチル基などの無置換またはアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基もしくはハロゲン原子で置換されたアリール基などが挙げられる。
【0034】
R2は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、一般式(1)のベンゼン環中のR2の位置は、同じであっても異なっていてもよく、3位、4位または5位である。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基などが挙げられる。
なかでも、水素原子がより好ましい。
【0035】
Z1は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基が挙げられ、なかでも、下記一般式(5)で表されるスルホニルオキシ基を含む化合物がより好ましく、一般式(5)のベンゼン環中のR10-SO2-O-の位置は、同じであっても異なっていてもよく、3位、4位または5位であり、より好ましくは3位である。
【0036】
本発明の感熱発色剤中に、一般式(5)で表される化合物を含むことがより好ましい。前記一般式(5)で表される化合物としては、以下のものである。
【0037】
【0038】
R10は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0039】
前記R10としては、前記R1と同様のものが挙げられ、なかでも、フェニル基、p-トリル基、m-トリル基、o-トリル基、メシチレン基、2-ナフチル基、メチル基、エチル基、ベンジル基、p-エチルベンジル基、p-メトキシベンジル基などがより好ましい。
【0040】
より詳しくは、N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(o-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、
N,N’-ジ-[3-(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[(3-ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(メシチレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(4-エチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(p-メトキシベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(ベンジルスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(エタンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)-4-メチル-フェニル]尿素、N,N’-ジ-[4-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[4-(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[4-(エタンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[2-(p-トルエンスルホニルオキシ)]フェニル尿素などが挙げられる。
【0041】
本発明の感熱発色剤中に、一般式(2)で表される化合物を含むことが好ましい。一般式(2)で表される化合物としては、以下のものである。
【0042】
【0043】
R3は、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のアルキルオキシアルキル基、炭素数3~12のポリオキシアルキレンアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数1~12のアルキルスルファニル基、炭素数7~12のアラルキルスルファニル基、炭素数6~14のアリールスルファニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、炭素数7~12のアラルキルスルホニル基、炭素数6~15のアリールスルホニル基、炭素数7~12のアラルキルスルホニルアミノ基、炭素数6~15のアリールスルホニルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数2~10のアシルアミノ基、(炭素数2~10のアシル)オキシカルボニルアミノ基、(炭素数1~12のアルキル)オキシカルボニルアミノ基、アラルキルオキシカルボニルアミノ基、(炭素数7~12のアラルキル)オキシカルボニルアミノ基、または、(炭素数6~15のアリール)オキシカルボニルアミノ基である。
【0044】
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ラウリル基などが挙げられる。
【0045】
前記アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基などが挙げられる。
【0046】
前記アルキルオキシアルキル基としては、C2H5O-C2H4-、C3H7O-C3H6-などが挙げられる。
【0047】
前記ポリオキシアルキレンアルキル基としては、O-(C2H4O)n-C2H4-(n=1~3)、HO-(C3H6O)n-C3H6-(n=1~3)などが挙げられる。
【0048】
前記アラルキル基としては、ベンジル基、p-メチルベンジル基、p-イソプロピルベンジル基、p-t-ブチルベンジル基、p-クロロベンジル基、p-メトキシベンジル基、m-メトキシベンジル基、m, p-ジメトキシベンジル基、フェネチル基、α-フェネチル基、フェニルプロピル基などが挙げられる。
【0049】
前記アリール基としては、フェニル基、トリル基、p-エチルフェニル基、p-キシリル基、m-キシリル基、1,2,3-トリメチルフェニル基、メシチレン基、1,2,4-トリメチルフェニル基(プソイドクメン基)、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ビフェニル基、ジメチルビフェニル基などが挙げられる。
【0050】
前記アルキルスルファニル基としては、メチルスルファニル基、ブチルスルファニル基などが挙げられる。
【0051】
前記アラルキルスルファニル基としては、ベンジルスルファニル基、1-フェニルエチルスルファニル基、2-フェニルエチルスルファニル基、1-フェニルプロピルスルファニル基、2-フェニルプロピルスルファニル基、1-フェニルブチルスルファニル基、2-フェニルブチルスルファニル基、1-ナフチルメチルスルファニル基、2-ナフチルメチルスルファニル基、(1-ナフチル)エチルスルファニル基、(2-ナフチル)エチルスルファニル基などが挙げられる。
【0052】
前記アリールスルファニル基としては、フェニルスルファニル基などが挙げられる。
【0053】
前記アルキルスルホニル基としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、プロパンスルホニル基、ブタンスルホニル基などが挙げられる。
【0054】
前記アラルキルスルホニル基としては、ベンジルスルホニル基などが挙げられる。
【0055】
前記アリールスルホニル基としては、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基、2-p-キシレンスルホニル基、メシチレンスルホニル基、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニル基、1-ナフタレンスルホニル基、2-ナフタレンスルホニル基、4-ビフェニルスルホニル基などが挙げられる。
【0056】
前記アラルキルスルホニルアミノ基としては、ベンジルスルホニルアミノ基などが挙げられる。
【0057】
前記アリールスルホニルアミノ基としては、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基などが挙げられる。
【0058】
前記アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、トルオイル基、2-ナフトイル基などが挙げられる。
【0059】
前記アシルアミノ基としては、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、トルオイルアミノ基などが挙げられる。
【0060】
前記(炭素数2~10のアシル)オキシカルボニルアミノ基としては、アセチルオキシカルボニルアミノ基、プロピオニルオキシカルボニルアミノ基、ベンゾイルオキシカルボニルアミノ基、トルオイルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0061】
前記(炭素数1~12のアルキル)オキシカルボニルアミノ基としては、メトキシカルボニルアミノ基、ブトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0062】
前記アラルキルオキシカルボニルアミノ基としては、ベンジルオキシカルボニルアミノ基、p-メトキシベンジルオキシカルボニルアミノ基、p-ニトロベンジルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0063】
前記(炭素数7~12のアラルキル)アラルキルオキシカルボニルアミノ基としては、フェネチルオキシカルボニルアミノ基、3-フェニルプロピルオキシカルボニルアミノ基、4-フェニルブチルオキシカルボニルアミノコ基、(1-ナフチル)メチルオキシカルボニルアミノ基、(2-ナフチル)メチルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0064】
前記(炭素数6~15のアリール)オキシカルボニルアミノ基としては、フェノキシカルボニルアミノ基、トリルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0065】
一般式(2)中の隣接する2つのR3は互いに結合してそれぞれが結合している炭素原子とともに芳香環または非芳香環を形成してもよく、好ましくは芳香環、たとえば、R3が結合している芳香環とともにナフタレン環を形成してもよい。
【0066】
なかでも、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
【0067】
R4、R5は、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0068】
a、b、cは、独立して、0~4の整数であり、a+cは、0~5の整数である。a、bは、0であることがより好ましく、cは、0または1であることが好ましい。
【0069】
nは、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0070】
Yは、2価の有機基であることが好ましく、飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素または脂環式炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、ヘテロ元素を含む連結基で連結された脂肪族炭化水素もしくは脂環式炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、単環芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、多環芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、単結合で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる連結基で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、ヘテロ元素を含む連結基で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる連結基で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、などが挙げられる。
【0071】
前記飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素または脂環式炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、イソプロピリデン基、シクロヘキサンジイル基、ビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基などが挙げられる。
【0072】
前記-O-、-S-、-SO2-、-C(=O)-などのヘテロ元素を含む連結基で連結された脂肪族炭化水素もしくは脂環式炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基としては、-C2H4OC2H4-、-C2H4OC2H4OC2H4-、-C2H4SC2H4-、-C2H4-SO2-C2H4-、-C2H4COC2H4-などが挙げられる。
【0073】
単環芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンジル、エチルベンゼンなどが挙げられる。
【0074】
前記ナフタレン、置換ナフタレンなどの多環芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基としては、ナフタレンジイル基、2,6-ナフタレンジイル基、1,8-ナフタレンジイル基、2,3-ナフタレンジイル基などが挙げられる。
【0075】
前記ビフェニル、置換ビフェニルなどの単結合で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基としては、ビフェニルジイル基などが挙げられる。
【0076】
前記飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる連結基で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基としては、ジフェニルメタン、2,2-ジフェニルプロパンなどが挙げられる。
【0077】
前記ヘテロ元素を含む連結基で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基としては、ジフェニルエ-テル、ジフェノキシエタン、ジ(フェノキシエチル)エ-テル、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホンなどが挙げられる。
【0078】
より好ましいYとしては、フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,2-フェニレン基、ビフェニル基、4,4’-ビフェニル基、3,4’-ビフェニル基、3,3’-ビフェニル基、オキシジフェニル基、4,4’-オキシジフェニル基、3,4’-オキシジフェニル基、3,3’-オキシジフェニル基などの単環もしくは多環の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、単結合で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、およびヘテロ元素を含む連結基で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基などである。
【0079】
Z2は、スルホニルオキシ基またはスルホニル基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。なかでも、スルホニルオキシ基であることがより好ましく、それぞれ同じであることがさらに好ましい。
【0080】
より詳しくは、1,3-ビス-(3-[3-フェニルウレイド]フェニルオキシスルホニル)ベンゼン、1,3-ビス-(3-[3-{m-トリル}ウレイド]フェニルオキシスルホニル)ベンゼン、1,3-ビス-(4-[3-{m-トリル}ウレイド]フェニルオキシスルホニル)ベンゼン、4,4’-ビス-(3-[3-{m-トリル}ウレイド]フェニルオキシスルホニル)ビフェニル、4,4’-ビス-(3-[3-{m-トリル}ウレイド]フェニルオキシスルホニル)ジフェニルエ-テル、4,4’-ビス-(3-[3-フェニルウレイド]フェニルオキシスルホニル)ジフェニルエ-テル、4,4’-ビス-(3-[3-フェニルウレイド]フェニルオキシスルホニル)ビフェニル、1,3-ビス-(3-[3-{p-トリル}ウレイド]フェニルオキシスルホニル)ベンゼン、1,3-ビス-(3-[3-{1-ナフチル}ウレイド]フェニルオキシスルホニル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0081】
本発明の感熱発色剤中に、一般式(3)で表される化合物を含むことが好ましい。一般式(3)で表される化合物としては、以下のものである。
【0082】
【0083】
R6は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基である。
【0084】
R6としては、前記R1と同様のものが挙げられ、なかでも、炭素数1~12の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されたフェニル基、ベンジル基などがより好ましい。
【0085】
R7は、水素原子または炭素数1~4の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基である。たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基などが挙げられ、なかでも、メチル基がより好ましい。
【0086】
lおよびmは、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0087】
Z3は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基であることが好ましく、スルホニルオキシ基またはスルホンアミド基であることがより好ましい。
【0088】
より詳しくは、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、N-ベンジル-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素、3-[(4-メチルベンゼンスルホニル)メチル]-1-フェニル尿素、3-[4-(オクタン-1-スルホニル)フェニル]-1-フェニル尿素、1-(ベンゼンスルホニル)-3-フェニル尿素、1-(4-メチルフェニルスルホニル)-3-フェニル尿素などが挙げられる。
【0089】
本発明の感熱発色剤中に、一般式(4)で表される化合物を含むことが好ましい。一般式(4)で表される化合物としては、以下のものである。
【0090】
【0091】
R8は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0092】
R8としては、前記R1と同様のものが挙げられ、なかでも、フェニル基、p-トリル基、m-トリル基、o-トリル基、メシチレン基、2-ナフチル基、メチル基、エチル基、ベンジル基、p-エチルベンジル基、p-メトキシベンジル基などがより好ましい。
【0093】
R9は、メチル基であることが好ましく、一般式(4)のベンゼン環中のR9の位置は、3位、4位または5位である。
【0094】
dは、0~4の整数であり、0であることがより好ましい。
【0095】
Z4およびZ5は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基であることが好ましく、スルホニルオキシ基またはスルホニル基であることがより好ましく、一般式(4)のベンゼン環中の-Z5-の位置は、3位、4位または5位であり、より好ましくは3位である。
【0096】
より詳しくは、N-p-トルエンスルホニル-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル尿素、N-ベンジル-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル尿素などが挙げられる。
【0097】
前記一般式(1)~(5)で表される化合物のうち少なくとも一つの顕色剤は、感熱発色剤中に、1~70質量%含有することが好ましく、5~50質量%含有することがより好ましく、10~40質量%含有することがさらに好ましい。前記一般式(1)~(5)で表される化合物のうち少なくとも一つの量が、1質量%未満では、発色効果が発現しにくく、70質量%を超えると、感熱発色剤自体の分散安定性が劣ったり、印字時の耐熱性低下や耐溶剤性低下などを起こすおそれがある。
【0098】
本発明の感熱発色剤中に、ロイコ染料を含むことが好ましい。前記ロイコ染料としては、従来の感圧あるいは感熱記録材料分野で公知のものはすべて使用可能であり、特に制限されるものではないが、トリアリールメタン系化合物、フルオラン系化合物、フルオレン系化合物、ジビニル系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、スピロ系化合物などが好ましい。また、これらのロイコ染料は一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0099】
前記トリアリールメタン系化合物としては、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリドなどが挙げられる。
【0100】
前記フルオラン系化合物としては、3-ジエチルアミノ-6-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-メチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-n-オクチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-n-オクチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-ベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-ジベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(3-メチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-p-メチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-エトキシエチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-オクチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ブロモフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-フェノキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-フェニルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(4-ニトロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3,4-ジクロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-ベンゾ〔a〕フルオラン、3-ジエチルアミノ-ベンゾ〔c〕フルオラン、3-ジエチルアミノ-7,8-ジベンゾフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-エトキシエチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-p-メチルアニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-プロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-イソアミルアミノ)-7-フェノキシフルオラン、3-(N-エチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-ヘキシルアミノ)-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-トリル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-エトキシプロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-トリル)アミノ-6-メチル-7-フェネチルアミノフルオラン、3-(N-エチル-N-n-ヘキシルアミノ)-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)-7-(N-フェニル-N-メチルアミノ)フルオラン、3-(N-メチル-N-イソアミルアミノ)-7,8-ベンゾフルオラン、3-シクロヘキシルアミノ-6-クロロフルオラン、3-ピロリジノ-6-クロロフルオラン、3-ピロリジノ-7-ジベンジルアミノフルオラン、2-(4-オキサヘキシル)-3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-(4-オキサヘキシル)-3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-(4-オキサヘキシル)-3-ジプロピルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-メチル-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-メトキシ-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-クロロ-3-メチル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-クロロ-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ニトロ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-アミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-フェニル-6-メチル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ベンジル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ヒドロキシ-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3-メチル-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジブチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2,4-ジメチル-6-〔(4-ジメチルアミノ)アニリノ〕-フルオラン、3,6-ジメトキシフルオランなどが挙げられる。
【0101】
前記フルオレン系化合物としては、3,6,6'-トリス(ジメチルアミノ)スピロ〔フルオレン-9,3'-フタリド〕、3,6,6'-トリス(ジエチルアミノ)スピロ〔フルオレン-9,3'-フタリド〕などが挙げられる。
【0102】
前記ジビニル系化合物としては、3,3-ビス-〔2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-(p-メトキシフェニル)エテニル〕-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス-〔2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-(p-メトキシフェニル)エテニル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス-〔1,1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス-〔1-(4-メトキシフェニル)-1-(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリドなどが挙げられる。
【0103】
前記ジフェニルメタン系化合物としては、4,4’-ビスジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N-ハロフェニルロイコオーラミン、N-2,4,5-トリクロロフェニルロイコオーラミンなどが挙げられる。
【0104】
前記チアジン系化合物としては、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p-ニトロベンゾイルロイコメチレンブルーなどが挙げられる。
【0105】
前記スピロ系化合物としては、3-メチル-スピロ-ジナフトピラン、3-エチル-スピロ-ジナフトピラン、3,3’-ジクロロ-スピロ-ジナフトピラン、3-ベンジル-スピロ-ジナフトピラン、3-メチルナフト-(3-メトキシベンゾ)-スピロピラン、3-プロピル-スピロ-ジベンゾピランなどが挙げられる。
【0106】
その他としては、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(4-シクロヘキシルエチルアミノ-2-メトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-n-ヘキシルオキシフェニル)-4-アザフタリド、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル-4-アザフタリド、3-(2-メチル-1-n-オクチルインドール-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(9-エチルカルバゾール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(2-フェニルインドール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(1,2-ジメチルインドール-3-イル)フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-フェニルインドール-3-イル)フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-メチルピロール-2-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(p-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-(3'-ニトロ)アニリノラクタム、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-(4'-ニトロ)アニリノラクタム、1,1-ビス-〔2',2',2'',2''-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-2,2-ジニトリルエタン、1,1-ビス-〔2',2',2'',2''-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-2-β-ナフトイルエタン、1,1-ビス-〔2',2',2'',2''-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-2,2-ジアセチルエタン、ビス-〔2,2,2',2'-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-メチルマロン酸ジメチルエステル、2,2-ビス{4-[6’-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-3’-メチルスピロ[フタリド-3,9’-キサンテン]-2’-イルアミノ]フェニル}プロパンなどが挙げられる。
【0107】
前記ロイコ染料は、感熱発色剤中に、1~20質量%含有することが好ましく、3~15質量%含有することがより好ましく、5~10質量%含有することがさらに好ましい。前記ロイコ染料の量が、1質量%未満では、発色効果が発現しにくく、20質量%を超えると、感熱発色剤自体の分散性が劣るため、感熱発色層皮膜の凝集力が得られなかったり、プラスチックフィルム基材への密着性不良を起こすおそれがある。
前記感熱発色剤中に含まれる前記顕色剤と前記ロイコ染料の含有割合は、顕色剤/ロイコ染料=7/1~0.5/1であることが好ましく、5/1~1/1であることがより好ましく、4/1~2/1であることがさらに好ましい。含有割合が、前記範囲内において、感熱発色性に優れる。
【0108】
本発明の感熱発色剤中に、水性樹脂を含むことが好ましい。前記水性樹脂としては、水性媒体に可溶あるいは分散することができる樹脂であれば、従来公知の樹脂を使用できる。なお、水性媒体とは、水または親水性溶剤を成分として含むものを指す。なかでも、水溶性樹脂または水性エマルジョン樹脂であることがより好ましい。
【0109】
前記水溶性樹脂とは、分子内にスルホニル基、カルボキシル基などのイオン性基、水酸基などの水溶性置換基を有しており、水に溶解する。例えば、水溶性ポリアクリルアミド、水溶性アクリル系樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール系樹脂、水溶性ナイロン樹脂、水溶性アルキッド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリブタジエン樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリル/スチレン樹脂、水溶性酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、水溶性スチレン/マレイン酸共重合樹脂、水溶性フッ素樹脂、水溶性ポリイソシアネート樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリ酢酸ビニル、カルボキシメチルセルロース、水溶性ポリエーテル樹脂およびこれらの共重合体や、デンプン、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム、キトサン、デキストランおよびグアーガムなどの天然高分子化合物などが挙げられる。なかでも、水溶性アクリル系樹脂、水溶性ポリエステル樹脂がより好ましい。特に、水溶性ポリエステル樹脂がさらに好ましい。
【0110】
前記水性エマルジョン樹脂とは、樹脂粒子が水性媒体などに分散している状態を指し、樹脂粒子が固体であるか、液体であるかは問わない。
樹脂粒子としては、例えば、ポリアミド類、ポリイミド類、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレンおよびその誘導体などのポリスチレン類、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂類、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリイソシアネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂およびこれらの共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレンおよびその誘導体などのポリスチレン類がより好ましい。特に、ポリスチレン類がさらに好ましく、アクリル酸単位、メタクリル酸単位などの酸性単量体単位を含有することが好ましい。
【0111】
前記水性樹脂は、感熱発色剤中に、1~50質量%含有することが好ましく、5~40質量%含有することがより好ましく、10~30質量%含有することがさらに好ましい。前記水性樹脂の量が、1質量%未満では、感熱発色剤自体の分散性が劣るため、感熱発色層皮膜の凝集力が得られなかったり、プラスチックフィルム基材への密着性不良を起こすおそれがあり、50質量%を超えると、印字濃度の低下や流動性不良となるおそれがある。
【0112】
本発明の感熱発色剤中に、アルコールを含むことが好ましい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、1-メチル-1,3-ブチレングリコール、2-メチル-1,3-ブチレングリコール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、トリプロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどが好ましく、なかでもメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
【0113】
前記アルコールは、感熱発色剤中に、1~50質量%含有することが好ましく、2~40質量%含有することがより好ましく、5~20質量%含有することがさらに好ましい。前記アルコールの量が、1質量%未満では、乾燥しにくく、高速印刷適性が劣るおそれがあり、50質量%を超えると、印字濃度の低下や流動性不良となるおそれがある。
【0114】
本発明の感熱発色剤中に、必要に応じ、増感剤を用いることができ、従来公知の増感剤が使用できる。
例えば、ステアリン酸アミド、ビスステアリン酸アミド、N-ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどの脂肪酸アミド、p-トルエンスルホンアミド、ステアリン酸、ベヘン酸やパルミチン酸などのカルシウム、亜鉛あるいはアルミニウムなどの脂肪酸金属塩、N-ステアリル尿素、ベンジル-2-ナフチルエーテル、4-ベンジルビフェニル、2,2’-ビス(4-メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、α,α’-ジフェノキシキシレン、ビス(4-メトキシフェニル)エーテル、p-ベンジルビフェニル、ジフェニルスルホン、ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、2-ベンジルオキシナフタレン、1,2-ビス(m-トリルオキシ)エタン、1,2-ビス(p-トリルオキシ)エタン、1,2-ビス(フェノキシ)エタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、1,3-ビス(フェノキシ)プロパン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸p-メチルベンジル、蓚酸ビス(4-メチルベンジル)エステル、蓚酸ビス(4-クロロベンジル)エステル、アジピン酸ジフェニル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジベンジル、ベンゼンスルホン酸フェニルエステル、ビス(4-アリルオキシフェニル)スルホン、1,2-ジフェノキシエタン、4-アセチルアセトフェノン、m-ターフェニル、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、アセト酢酸アニリド類、脂肪酸アニリド類などが挙げられ、なかでも、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ビス(m-トリルオキシ)エタン、1,2-ビス(p-トリルオキシ)エタン、1,2-ビス(フェノキシ)エタンがより好ましい。
【0115】
本発明の感熱発色剤中に、水を含むことが好ましい。前記水は、特に制限はなく、水道水、井水、蒸留水、イオン交換水、純水などを用いることができる。なかでも、蒸留水、イオン交換水、純水を使用することがより好ましい。
【0116】
前記水の含有量は、前記した各成分の残余である。
【0117】
本発明の感熱発色剤中に、必要に応じて、色材、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤、硬化剤、シランカップリング剤、ワックスなどを含有することもできる。公知慣用のものであればいかなるものも、感熱発色剤としての特性を損なわない範囲で、適宜選択できる。
【0118】
前記色材としては、非晶性シリカ、非晶性珪酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、二酸化チタン、酸化亜鉛 水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ、ポリスチレンパウダー、ナイロンパウダー、尿素- ホルマリン樹脂フィラー、スチレン- メタクリル酸共重合体、スチレン- ブタジエン共重合体や中空プラスチックピグメント等の無機あるいは有機顔料等などが挙げられる。
【0119】
本発明の感熱発色剤は、グラビア印刷で使用されることが好ましく、そのまま塗工することもできるが、塗工条件、塗工効果に応じ、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、希釈溶剤で希釈することにより所望の粘度に調整して使用できる。この場合の粘度は、25℃において10~40秒であることが好ましい。10秒より小さいと、泳ぎやすく、40秒より大きいと印刷時の転移性が悪くなる。
【0120】
前記希釈溶剤は、前記インキ組成物の粘度を調整して使用できるものであれば、いずれでもよく、有機溶剤、水などが挙げられ、市販のものも使用でき、特に制限はない。市販品としては、WA734溶剤(アルコール水系溶剤)、WA735溶剤(アルコール水系溶剤)、WA736溶剤(アルコール水系溶剤)、TA50溶剤(アルコール系溶剤)、TA52溶剤(アルコール系溶剤)(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0121】
本発明の感熱記録積層体は、前記感熱発色剤からなる感熱発色層を有することが好ましい。
【0122】
前記感熱発色層の厚みとしては、0.1~5μmであることが好ましく、0.2~3μmであることがより好ましい。感熱発色層の厚みが、0.1μmより小さいと、印字後の発色濃度が不足するおそれがあり、5μmを超えると、ブロッキングのおそれがある。
【0123】
本発明の感熱記録積層体は、前記感熱発色層上に、水性コート剤からなる水性コート層を有することが好ましい。
【0124】
前記水性コート剤は、水溶性樹脂と水とを含むことが好ましい。
【0125】
前記水性コート剤に用いられる水溶性樹脂は、前記感熱発色剤と同様の水溶性樹脂を用いることができる。なかでも、ポリビニルアルコール類がより好ましい。これらの水溶性樹脂は、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0126】
前記水溶性樹脂は、水性コート剤中に、1~50質量%含有することが好ましく、2~30質量%含有することがより好ましい。前記水溶性樹脂の量が、1質量%未満では、水性コート層の皮膜形成性が劣り、50質量%を超えると、インキの流動性が劣り、製造適性が劣る。
【0127】
前記水としては、特に制限はなく、水道水、井水、蒸留水、イオン交換水、純水などを用いることができる。また、通常グラビアインキに使用される溶剤を含んでもよい。例えばトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤およびこれらのエステル化物が挙げられ、エステル化物としては主にアセテート化したものが選ばれ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。なかでも、印刷適性や汎用性の観点から、トルエン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンなどがより好ましい。これらは、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0128】
水性コート剤中に、水は1~50質量%の範囲内であることが好ましい。1質量%より少ないと、印刷時の濡れが悪くなり、50質量%を超えると、粘度が上昇して、製造適性が劣る。
【0129】
本発明の水性コート剤中に、必要に応じて、色材、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤、硬化剤、シランカップリング剤、ワックスなどを含有することもできる。公知慣用のものであればいかなるものも、水性コート剤としての特性を損なわない範囲で、適宜選択できる。
【0130】
本発明の水性コート剤は、グラビア印刷で使用されることが好ましく、そのまま塗工することもできるが、塗工条件、塗工効果に応じ、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、希釈溶剤で希釈することにより所望の粘度に調整して使用できる。この場合の粘度は、25℃において10~40秒であることが好ましい。10秒より小さいと、泳ぎやすく、40秒より大きいと印刷時の転移性が悪くなる。
【0131】
前記希釈溶剤は、前記水性コート剤の粘度を調整して使用できるものであれば、いずれでもよく、有機溶剤、水などが挙げられ、市販のものも使用でき、特に制限はない。市販品としては、WA734溶剤(アルコール水系溶剤)、WA735溶剤(アルコール水系溶剤)、WA736溶剤(アルコール水系溶剤)、TA50溶剤(アルコール系溶剤)、TA52溶剤(アルコール系溶剤)(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0132】
前記水性コート層の厚みとしては、0.01~2μmであることが好ましく、0.05~1.4μmであることがより好ましく、0.1~1.2μmであることがさらに好ましい。水性コート層の厚みが、0.01μmより小さいと、水性コート層の皮膜形成性が劣り、2μmを超えると、乾燥しにくく、高速印刷適性が劣るおそれがある。
【0133】
本発明の感熱記録積層体は、前記水性コート層上に、さらにオーバーコート剤からなるオーバーコート層を有することが好ましい。
【0134】
前記オーバーコート剤は、熱可塑性樹脂と、ポリイソシアネートと、有機溶剤とを含むことが好ましい。
【0135】
前記熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩酢ビ共重合体、繊維系樹脂であることが好ましい。なかでも、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩酢ビ共重合体がより好ましい。これらは、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0136】
前記熱可塑性樹脂は、オーバーコート剤中に、1~50質量%含有することが好ましく、2~45質量%含有することがより好ましい。前記熱可塑性樹脂の量が、1質量%未満では、オーバーコート層の皮膜形成性が劣り、感熱発色層の保護効果が発現しにくく、50質量%を超えると、ブロッキングのおそれがある。
【0137】
前記ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキシレンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサエチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマージイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ペンタン-1,5-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの脂肪族ジイソシアネートおよびこれらのトリメチロールプロパン三量体、トリレンジイソシアネート(TDI)、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートおよびこれらの変性体などが挙げられる。なかでも、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートおよび芳香脂肪族ジイソシアネートがより好ましい。これらは、一種類または二種類以上混合して使用できる。
【0138】
前記ポリイソシアネートは、オーバーコート剤中に、1~50質量%含有することが好ましく、2~45質量%含有することがより好ましい。前記ポリイソシアネートの量が、1質量%未満では、架橋効果が得られにくく、50質量%を超えると、ブロッキングのおそれがある。
【0139】
オーバーコートコート剤中に含まれる前記熱可塑性樹脂と前記ポリイソシアネートの含有割合は、オーバーコート剤中に含まれる熱可塑性樹脂の固形分100に対し、ポリイソシアネートの固形分、熱可塑性樹脂/ポリイソシアネート=100/1~100/50であることが好ましく、100/5~100/40であることがより好ましく、100/15~100/35であることがさらに好ましい。含有割合が、前記範囲内において、耐アルコール性、耐スクラッチ性、耐水性、耐油性に優れる。
【0140】
前記有機溶剤としては、通常グラビアインキに使用される溶剤を使用することができる。例えばトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤およびこれらのエステル化物が挙げられ、エステル化物としては主にアセテート化したものが選ばれ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。なかでも、印刷適性や汎用性の観点から、トルエン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンなどがより好ましい。これらは、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0141】
オーバーコート剤中に、有機溶剤は45~90質量%の範囲内であることが好ましく、60~80質量%の範囲内であることがより好ましい。45質量%より少ないと固形分が多くなり、流動性が悪くなり、オーバーコート剤の製造適性が劣り、90質量%を超えると、粘度が低くなり、綺麗な印刷効果が得られないおそれがある。
【0142】
本発明のオーバーコート剤中に、必要に応じて、色材、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤、シランカップリング剤などを含有することもできる。公知慣用のものであればいかなるものも、オーバーコート剤としての特性を損なわない範囲で、適宜選択できる。
【0143】
本発明のオーバーコート剤は、グラビア印刷で使用されることが好ましく、そのまま塗工することもできるが、塗工条件、塗工効果に応じ、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、希釈溶剤で希釈することにより所望の粘度に調整して使用できる。この場合の粘度は、25℃において10~40秒であることが好ましい。10秒より小さいと、泳ぎやすく、40秒より大きいと印刷時の転移性が悪くなる。
【0144】
前記希釈溶剤は、前記オーバーコート剤の粘度を調整して使用できるものであれば、いずれでもよく、有機溶剤が挙げられ、市販のものも使用でき、特に制限はない。市販品としては、TS32溶剤(エステル系溶剤)、PU533溶剤(含トルエン系溶剤)、PU515溶剤(ノントルエン系溶剤)、SL9155溶剤(ノントルエン系溶剤)、CN104溶剤(ノントルエン系溶剤)、AC372溶剤(ノントルエン系溶剤)、PP575溶剤(含トルエン系溶剤)、SL9164溶剤(ノンケトン系溶剤)、SL9170溶剤(ノンケトン系溶剤)(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0145】
前記オーバーコート層の厚みとしては、0.05~5μmであることが好ましく、0.1~3μmであることがより好ましい。オーバーコート層の厚みが、0.05μmより小さいと、前記水性コート層の保護効果が十分でなく、5μmを超えると、ブロッキングのおそれがある。
【0146】
本発明の感熱記録積層体は、サーマルプリンター(例えば、TH-M2/PP、オオクラエンジニアリング(株)製)などを用いて、感熱発色層を発色させることによって、印字物を作製することができる。
発色濃度については、ヒートシーラー(テスター産業(株)製)などを用いて、感熱記録積層体を発色させて、L*a*b*表色系(CIE1976)で規定される方法で測定されるL値により評価できる。L値が低いものほど、より黒色度が高く、良好と判断できる。発色濃度を測定する機器としては、反射濃度計、分光濃度計、分光光度計などを用いることができる。例えば、ポータブル分光濃度・測色計 eXact 2(X-Rite社製)などが挙げられる。
【0147】
本発明の感熱記録積層体は、前記プラスチックフィルム基材と、前記感熱発色層との間に、アンカーコート層を有してもよい。
【0148】
アンカーコート層は、アンカーコート剤からなり、アンカーコート剤には、樹脂を用いることができる。樹脂としては、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉などの澱粉類、メチルセルロース、カルボキシセルロース、メトキシセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース樹脂、カゼイン、ゼラチン、完全(または部分)鹸化ポリビニアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アミド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、スチレン-無水マレイン酸共重合体系ラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体系ラテックス、酢酸ビニル樹脂系ラテックス、ウレタン樹脂系ラテックス及びアクリル樹脂系ラテックスなどが挙げられる。これらは、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0149】
前記アンカーコート剤は、前記水性コート剤やオーバーコート剤と同様の有機溶剤を用いることができる。なかでも、印刷適性や汎用性の観点から、トルエン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンなどが挙げられる。これらは、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0150】
本発明のアンカーコート剤中に、必要に応じて、色材、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤、系硬化剤、シランカップリング剤、ワックスなどを含有することもできる。公知慣用のものであればいかなるものも、アンカーコート剤としての特性を損なわない範囲で、適宜選択できる。市販のものも使用でき、特に制限はない。市販品としては、LG-OX アンカー剤D(東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0151】
本発明のアンカーコート剤は、グラビア印刷で使用されることが好ましく、そのまま塗工することもできるが、塗工条件、塗工効果に応じ、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、希釈溶剤で希釈することにより所望の粘度に調整して使用できる。この場合の粘度は、25℃において10~40秒であることが好ましい。10秒より小さいと、泳ぎやすく、40秒より大きいと印刷時の転移性が悪くなる。
【0152】
前記希釈溶剤は、前記アンカーコート剤の粘度を調整して使用できるものであれば、いずれでもよく、有機溶剤が挙げられ、市販のものも使用でき、特に制限はない。市販品としては、TS32溶剤(エステル系溶剤)、PU533溶剤(含トルエン系溶剤)、PU515溶剤(ノントルエン系溶剤)、SL9155溶剤(ノントルエン系溶剤)、CN104溶剤(ノントルエン系溶剤)、AC372溶剤(ノントルエン系溶剤)、PP575溶剤(含トルエン系溶剤)、SL9164溶剤(ノンケトン系溶剤)、SL9170溶剤(ノンケトン系溶剤)(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0153】
前記アンカーコート層の厚みとしては、0.05~3μmであることが好ましく、0.1~2μmであることがより好ましい。アンカーコート層の厚みが、0.05μmより小さいと、塗布量が少なく、プラスチックフィルム基材を覆えないおそれがあり、3μmを超えると、ブロッキングのおそれがある。
【0154】
前記プラスチックフィルム基材としては、プラスチックフィルムまたはシートならびにこれらの積層体から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテートなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン-ビニルアルコール、ポリビニルアルコールなどのアルコール系フィルム、ポリアミドフィルムまたはバリア層を中間に配したバリア性ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、PETフィルムまたはポリアミドフィルムにアルミナやシリカなどの蒸着層を設けた透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂などをコートした各種コーティングフィルム、PETとナイロンの共押出フィルム、ポリ乳酸フィルムなどが挙げられる。これらは延伸、未延伸のどちらでもよく、一種類または二種類以上を積層していてもよい。機械的強度や寸法安定性などを考慮して、適切なものが選択できる。また、表面にはアンカーコート層やラミネート層の密着性を向上させるため、コロナ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などを施すか、あらかじめ施されたものが選択できる。なかでも、PETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、コーティングフィルム、透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、共押出フィルムなどが好ましい。プラスチックフィルム基材の厚さは、印刷適性、巻き取り適性などに支障のない範囲内であれば、特に制限はないが、5~300μmが好ましく、6~250μmがより好ましい。また、前記アンカーコート剤をあらかじめ前記プラスチックフィルム基材に印刷したものをプラスチックフィルム基材としてもよい。
【0155】
前記感熱発色層、水性コート層、オーバーコート層およびアンカーコート層は、前記プラスチックフィルム基材の一方の面に、グラビア印刷により作成することが好ましい。特に、多色グラビア印刷機を用いたグラビア印刷により作成することがより好ましい。グラビア印刷により作成できるため、全面に各層を形成することもできるが、容易に部分的に各層を形成することもできる。
【0156】
本発明の感熱記録積層体は、感熱発色層と反対面の前記プラスチックフィルム基材上に、シール層を有してもよい。
【0157】
前記シール層は、ヒートシール性を付与した積層体や公知のシーラントフィルムの貼り合わせ(ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、ウェットラミネート法)、押出ラミネート法による樹脂コーティング(押出ラミネート法、共押出ラミネート法、PEサンドイッチラミネート法)、熱による貼り合わせ(熱ラミネート法)などによる層や、ヒートシール剤やホットメルト剤の塗工などにより形成される層が挙げられる。また、接着剤や粘着剤の塗工などにより形成される層が挙げられる。
【0158】
シール層の厚みは、特に制限はないが、シーラントフィルムでは2~200μm、押出ラミネート法による樹脂コーティングでは1~100μm、ヒートシール剤の塗工では0.01~30μm、ホットメルト接着剤の塗工では1~50μmの厚みであることが好ましい。
【0159】
前記シーラントフィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート、これらの共重合体などのポリオレフィンフィルムやその共押フィルムおよび着色フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン-ビニルアルコール樹脂フィルムなどが挙げられ、延伸していても、未延伸のどちらでもよく、一種類または二種類以上を積層していてもよい。
【0160】
前記ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、ウェットラミネート法、押出ラミネート法などに接着剤を使用する場合は市販のものでよく、例えば、2液型もしくは1液型ウレタン系樹脂接着剤、アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、水系ウレタン系、イソシアネート系、有機チタン系、デンプン系の水溶性接着剤や酢酸ビニルエマルジョンのような水性接着剤などが挙げられる。シーラント層を形成するための接着剤の塗布方法としては、公知の塗布法を用いることができ、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアオフセットコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターなどを用いることができる。接着剤の厚みは特に制限はないが、0.001~10μm程度の範囲が好ましく、0.01~5μmの範囲が特に好ましい。
【0161】
前記押出ラミネート法による樹脂コーティングに使用できる樹脂としては、LDPE、LLDPE、HDPEなどのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンをマレイン酸やフマル酸などで変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの樹脂は、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0162】
ヒートシール剤の樹脂の例としては、例えば、塩化ビニリデン、セラック類、ロジン類、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、硝化綿、酢酸セルロース、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、塩化ゴム、環化ゴム、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ケトン樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化エチレンビニルアセテート樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、カゼイン、アルキッド樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられ、これらは一種類または二種類以上組み合わせて使用してもよい。これらの樹脂を溶剤に溶解したタイプ、あるいはアクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、エチレン-ビニルアルコール系エマルジョン、ポリエチレン系エマルジョン、ポリプロピレン系エマルジョン、エチレンビニルアセテート系エマルジョンなど水中に分散させたものが挙げられる。
【0163】
本発明の感熱記録積層体は、前記プラスチックフィルム基材上または前記感熱発色層と反対面の前記プラスチックフィルム基材上に、絵柄層を有してもよい。さらに、有色インキ層を有してもよい。前記絵柄層と有色インキ層の形成順は問わない。また、全面でも一部分に有してもよく、網点であってもよい。
前記絵柄層は、通常、グラビア印刷に用いられるカラー印刷インキ組成物を用いて形成される層で、絵柄や文字などが印刷された層である。また、前記有色インキ層は、通常、グラビア印刷に用いられる白色インキ組成物などを用いて形成される層で、ベタや網点で前記絵柄層などとのコントラストを付けて、見えやすくする際などに用いられる層である。
【0164】
本発明の感熱記録積層体は、包装用途、食品保存用途、レトルト用途、電子レンジ用途、農業用途、土木用途、漁業用途、自動車内外装用途、船舶用途、日用品用途、建材内外装用途、住設機器用途、医療・医療機器用途、医薬用途、家電品用途、家具類用途、文具類・事務用品用途、販売促進用途、商業用途、電機電子産業用途および産業資材用途などに供されることが好ましい。なかでも、包装用途、レトルト用途、電子レンジ用途に供されることがより好ましい。
【0165】
本発明のオーバーコートセットは、感熱記録積層体に用いるオーバーコートセットであって、熱可塑性樹脂と有機溶剤とを含むコート剤Aと、ポリイソシアネートと有機溶剤とを含む硬化剤Bと、を含むことが好ましい。
【0166】
なかでも、オーバーコートセットは、感熱記録積層体を構成するプラスチックフィルム基材の一方の面に、感熱発色層と、前記感熱発色層上に設けた水性コート層上に、オーバーコート層を設けるために用いることがより好ましい。
【0167】
前記コート剤Aに含まれる熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩酢ビ共重合体、繊維系樹脂であることが好ましい。なかでも、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩酢ビ共重合体がより好ましい。これらは、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0168】
前記熱可塑性樹脂は、コート剤A中に、1~50質量%含有することが好ましく、2~45質量%含有することがより好ましい。前記熱可塑性樹脂の量が、1質量%未満では、オーバーコート層の皮膜形成性が劣り、感熱発色層の保護効果が発現しにくく、50質量%を超えると、ブロッキングのおそれがある。
【0169】
前記有機溶剤としては、通常グラビアインキに使用される溶剤を使用することができる。例えばトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤およびこれらのエステル化物が挙げられ、エステル化物としては主にアセテート化したものが選ばれ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。なかでも、印刷適性や汎用性の観点から、トルエン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンなどがより好ましい。これらは、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0170】
コート剤A中に、有機溶剤は45~90質量%の範囲内であることが好ましく、60~80質量%の範囲内であることがより好ましい。45質量%より少ないと固形分が多くなり、流動性が悪くなり、コート剤Aの製造適性が劣り、90質量%を超えると、粘度が低くなり、綺麗な印刷効果が得られないおそれがある。
【0171】
本発明のコート剤A中に、必要に応じて、色材、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤、シランカップリング剤などを含有することもできる。公知慣用のものであればいかなるものも、コート剤としての特性を損なわない範囲で、適宜選択できる。
【0172】
前記硬化剤Bに含まれるポリイソシアネートは、ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキシレンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサエチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマージイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ペンタン-1,5-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの脂肪族ジイソシアネートおよびこれらのトリメチロールプロパン三量体、トリレンジイソシアネート(TDI)、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートおよびこれらの変性体などが挙げられる。なかでも、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートおよび芳香脂肪族ジイソシアネートがより好ましい。これらは、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0173】
前記ポリイソシアネートは、硬化剤B中に、1~50質量%含有することが好ましく、2~45質量%含有することがより好ましい。前記ポリイソシアネートの量が、1質量%未満では、架橋効果が得られにくく、50質量%を超えると、ブロッキングのおそれがある。
【0174】
前記硬化剤Bに含まれる有機溶剤としては、前記コート剤Aと同様の有機溶剤を使用することができる。
【0175】
硬化剤中に、有機溶剤は45~90質量%の範囲内であることが好ましく、60~80質量%の範囲内であることがより好ましい。45質量%より少ないと固形分が多くなり、流動性が悪くなり、オーバーコート剤の製造適性が劣り、90質量%を超えると、粘度が低くなり、綺麗な印刷効果が得られないおそれがある。
【0176】
本発明の硬化剤B中に、必要に応じて、色材、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤、シランカップリング剤などを含有することもできる。公知慣用のものであればいかなるものも、硬化剤としての特性を損なわない範囲で、適宜選択できる。
【0177】
本発明のオーバーコートセットは、前記コート剤Aと硬化剤Bを共に用いる。すなわち、2液混合物として使用されるものである。
前記2液混合物中に含まれる前記熱可塑性樹脂と前記ポリイソシアネートの含有割合は、2液混合物中に含まれる熱可塑性樹脂の固形分100に対し、ポリイソシアネートの固形分、熱可塑性樹脂/ポリイソシアネート=100/1~100/50であることが好ましく、100/5~100/40であることがより好ましく、100/15~100/35であることがさらに好ましい。含有割合が、前記範囲内において、耐アルコール性、耐スクラッチ性、耐油性、耐水性、耐溶剤性に優れる。
前記コート剤Aと前記硬化剤Bの含有割合は、前記熱可塑性樹脂と前記ポリイソシアネートの含有割合となるように混合することが好ましく、コート剤A/硬化剤B=100/1~100/30であることが好ましく、100/5~100/15であることがより好ましい。前記コート剤Aと硬化剤Bとを前記範囲内において、2液で用いることで、耐アルコール性、耐スクラッチ性、耐油性、耐水性、耐溶剤性に優れる。
【0178】
前記2液混合物は、前記コート剤Aと硬化剤Bを公知の方法により、混合または分散して製造できる。特に、印刷工場などで混合または分散させることがより好ましい。混合または分散は、手動による攪拌でも容易に混合できるが、ディゾルバー、ペイントシェーカー、ホモミキサーなどの各種撹拌機または分散機を使用できる。これらの装置は一種類または二種類以上組み合せて使用してもよい。
【0179】
前記2液混合物は、グラビア印刷で使用されることが好ましく、そのまま塗工することもできるが、塗工条件、塗工効果に応じ、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、希釈溶剤で希釈することにより所望の粘度に調整して使用できる。この場合の粘度は、25℃において10~40秒であることが好ましい。10秒より小さいと、泳ぎやすく、40秒より大きいと印刷時の転移性が悪くなる。
【0180】
前記希釈溶剤は、前記2液混合物の粘度を調整して使用できるものであれば、いずれでもよく、有機溶剤が挙げられ、市販のものも使用でき、特に制限はない。市販品としては、TS32溶剤(エステル系溶剤)、PU533溶剤(含トルエン系溶剤)、PU515溶剤(ノントルエン系溶剤)、SL9155溶剤(ノントルエン系溶剤)、CN104溶剤(ノントルエン系溶剤)、AC372溶剤(ノントルエン系溶剤)、PP575溶剤(含トルエン系溶剤)、SL9164溶剤(ノンケトン系溶剤)、SL9170溶剤(ノンケトン系溶剤)(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0181】
前記コート剤Aは、熱可塑性樹脂と、各種添加剤などを前記した有機溶剤中に均一に溶解または分散することにより公知の方法で製造できる。溶解または分散は、ディゾルバー、ロールミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、ペイントシェーカー、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、パールミル、超音波ホモジナイザー、湿式ジェットミル、ニーダー、ホモミキサーなどの各種撹拌機または分散機を使用できる。これらの装置は一種類または二種類以上組み合せて使用してもよい。インキ組成物中に気泡や粗大粒子が含まれる場合、印刷適性や印刷物品質を低下させるため、公知のろ過機や遠心分離機などを用いて、取り除くことが好ましい。
【0182】
前記コート剤Aの粘度は、印刷に支障のない範囲であれば、特に制限はない。グラビア印刷で使用されるコート剤の製造適性、取扱いなどを考慮すれば、25℃において10~1,000mPa・sであることが好ましい。10mPa・sより小さいと、粘度が低すぎて、顔料が沈降しやすい傾向になり、1,000mPa・sより大きいと、流動性が悪く、インキ製造時に支障が出たり、容器への充填が困難となる。この場合、ブルックフィールド型粘度計やコーンプレート型粘度計、B型粘度計などの市販の粘度計を用いて測定することができる。
【0183】
前記コート剤Aは、グラビア印刷で使用されることが好ましく、そのまま塗工することもできるが、塗工条件、塗工効果に応じ、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、希釈溶剤で希釈することにより所望の粘度に調整して使用できる。この場合の粘度は、25℃において10~40秒であることが好ましい。10秒より小さいと、泳ぎやすく、40秒より大きいと印刷時の転移性が悪くなる。
【0184】
前記硬化剤Bは、ポリイソシアネート、各種添加剤などを前記した有機溶剤中に均一に溶解または分散することにより公知の方法で製造できる。溶解または分散は、ディゾルバー、ロールミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、ペイントシェーカー、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、パールミル、超音波ホモジナイザー、湿式ジェットミル、ニーダー、ホモミキサーなどの各種撹拌機または分散機を使用できる。これらの装置は一種類または二種類以上組み合せて使用してもよい。硬化剤中に気泡や粗大粒子が含まれる場合、印刷適性や印刷物品質を低下させるため、公知のろ過機や遠心分離機などを用いて、取り除くことが好ましい。
【0185】
感熱記録積層体の製造方法は、プラスチックフィルム基材を準備する工程と、前記プラスチックフィルム基材の一方に、ロイコ染料と、顕色剤と、水性樹脂と、アルコールと、水とを含む感熱発色剤により設けられた感熱発色層を形成するグラビア印刷工程と、前記感熱発色層上に、水溶性樹脂と水とを含む水性コート剤により設けられた水性コート層を形成する塗布工程と、前記水性コート層上に、熱可塑性樹脂と、ポリイソシアネートと、有機溶剤とを含むオーバーコート剤により設けられたオーバーコート層を形成する塗布工程とを備える感熱記録積層体の製造方法において、前記顕色剤が、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物のうち少なくとも一つであることが好ましい。なかでも、前記顕色剤が、下記一般式(5)で表される化合物であることがより好ましい。
【0186】
本発明の感熱発色剤中に、一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。前記一般式(1)で表される化合物としては、以下のものである。
【0187】
【0188】
R1は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0189】
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-エチルへキシル基、ラウリル基などが挙げられる。
【0190】
前記アラルキル基としては、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、p-メチルベンジル基、m-メチルベンジル基、m-エチルベンジル基、p-エチルベンジル基、p-イソプロピルベンジル基、p-t-ブチルベンジル基、p-メトキシベンジル基、m-メトキシベンジル基、o-メトキシベンジル基、m,p-ジ-メトキシベンジル基、p-エトキシ-m-メトキシベンジル基、p-フェニルメチルベンジル基、p-クミルベンジル基、p-フェニルベンジル基、o-フェニルベンジル基、m-フェニルベンジル基、p-トリルベンジル基、m-トリルベンジル基、o-トリルベンジル基、p-クロロベンジル基などの無置換またはアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基もしくはハロゲン原子で置換されたアラルキル基などが挙げられる。
【0191】
前記アリール基としては、フェニル基、p-トリル基、m-トリル基、o-トリル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、メシチレン基、p-エチルフェニル基、p-イソプロピルフェニル基、p-t-ブチルフェニル基、p-メトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、p-エトキシフェニル基、p-クロロフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、t-ブチル化ナフチル基などの無置換またはアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基もしくはハロゲン原子で置換されたアリール基などが挙げられる。
【0192】
R2は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、一般式(1)のベンゼン環中のR2の位置は、同じであっても異なっていてもよく、3位、4位または5位である。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基などが挙げられる。
なかでも、水素原子がより好ましい。
【0193】
Z1は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基が挙げられ、なかでも、下記一般式(5)で表されるスルホニルオキシ基を含む化合物がより好ましく、一般式(5)のベンゼン環中のR10-SO2-O-の位置は、同じであっても異なっていてもよく、3位、4位または5位であり、より好ましくは3位である。
【0194】
本発明の感熱発色剤中に、一般式(5)で表される化合物を含むことがより好ましい。前記一般式(5)で表される化合物としては、以下のものである。
【0195】
【0196】
R10は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0197】
前記R10としては、前記R1と同様のものが挙げられ、なかでも、フェニル基、p-トリル基、m-トリル基、o-トリル基、メシチレン基、2-ナフチル基、メチル基、エチル基、ベンジル基、p-エチルベンジル基、p-メトキシベンジル基などがより好ましい。
【0198】
より詳しくは、N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(o-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[(3-ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(メシチレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(4-エチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(p-メトキシベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(ベンジルスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(エタンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)-4-メチル-フェニル]尿素、N,N’-ジ-[4-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[4-(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[4-(エタンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[2-(p-トルエンスルホニルオキシ)]フェニル尿素などが挙げられる。
【0199】
本発明の感熱発色剤中に、一般式(2)で表される化合物を含むことが好ましい。一般式(2)で表される化合物としては、以下のものである。
【0200】
【0201】
R3は、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のアルキルオキシアルキル基、炭素数3~12のポリオキシアルキレンアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数1~12のアルキルスルファニル基、炭素数7~12のアラルキルスルファニル基、炭素数6~14のアリールスルファニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、炭素数7~12のアラルキルスルホニル基、炭素数6~15のアリールスルホニル基、炭素数7~12のアラルキルスルホニルアミノ基、炭素数6~15のアリールスルホニルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数2~10のアシルアミノ基、(炭素数2~10のアシル)オキシカルボニルアミノ基、(炭素数1~12のアルキル)オキシカルボニルアミノ基、アラルキルオキシカルボニルアミノ基、(炭素数7~12のアラルキル)オキシカルボニルアミノ基、または、(炭素数6~15のアリール)オキシカルボニルアミノ基である。
【0202】
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ラウリル基などが挙げられる。
【0203】
前記アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基などが挙げられる。
【0204】
前記アルキルオキシアルキル基としては、C2H5O-C2H4-、C3H7O-C3H6-などが挙げられる。
【0205】
前記ポリオキシアルキレンアルキル基としては、O-(C2H4O)n-C2H4-(n=1~3)、HO-(C3H6O)n-C3H6-(n=1~3)などが挙げられる。
【0206】
前記アラルキル基としては、ベンジル基、p-メチルベンジル基、p-イソプロピルベンジル基、p-t-ブチルベンジル基、p-クロロベンジル基、p-メトキシベンジル基、m-メトキシベンジル基、m, p-ジメトキシベンジル基、フェネチル基、α-フェネチル基、フェニルプロピル基などが挙げられる。
【0207】
前記アリール基としては、フェニル基、トリル基、p-エチルフェニル基、p-キシリル基、m-キシリル基、1,2,3-トリメチルフェニル基、メシチレン基、1,2,4-トリメチルフェニル基(プソイドクメン基)、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ビフェニル基、ジメチルビフェニル基などが挙げられる。
【0208】
前記アルキルスルファニル基としては、メチルスルファニル基、ブチルスルファニル基などが挙げられる。
【0209】
前記アラルキルスルファニル基としては、ベンジルスルファニル基、1-フェニルエチルスルファニル基、2-フェニルエチルスルファニル基、1-フェニルプロピルスルファニル基、2-フェニルプロピルスルファニル基、1-フェニルブチルスルファニル基、2-フェニルブチルスルファニル基、1-ナフチルメチルスルファニル基、2-ナフチルメチルスルファニル基、(1-ナフチル)エチルスルファニル基、(2-ナフチル)エチルスルファニル基などが挙げられる。
【0210】
前記アリールスルファニル基としては、フェニルスルファニル基などが挙げられる。
【0211】
前記アルキルスルホニル基としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、プロパンスルホニル基、ブタンスルホニル基などが挙げられる。
【0212】
前記アラルキルスルホニル基としては、ベンジルスルホニル基などが挙げられる。
【0213】
前記アリールスルホニル基としては、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基、2-p-キシレンスルホニル基、メシチレンスルホニル基、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニル基、1-ナフタレンスルホニル基、2-ナフタレンスルホニル基、4-ビフェニルスルホニル基などが挙げられる。
【0214】
前記アラルキルスルホニルアミノ基としては、ベンジルスルホニルアミノ基などが挙げられる。
【0215】
前記アリールスルホニルアミノ基としては、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基などが挙げられる。
【0216】
前記アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、トルオイル基、2-ナフトイル基などが挙げられる。
【0217】
前記アシルアミノ基としては、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、トルオイルアミノ基などが挙げられる。
【0218】
前記(炭素数2~10のアシル)オキシカルボニルアミノ基としては、アセチルオキシカルボニルアミノ基、プロピオニルオキシカルボニルアミノ基、ベンゾイルオキシカルボニルアミノ基、トルオイルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0219】
前記(炭素数1~12のアルキル)オキシカルボニルアミノ基としては、メトキシカルボニルアミノ基、ブトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0220】
前記アラルキルオキシカルボニルアミノ基としては、ベンジルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0221】
前記(炭素数7~12のアラルキル)アラルキルオキシカルボニルアミノ基としては、フェネチルオキシカルボニルアミノ基、3-フェニルプロピルオキシカルボニルアミノ基、4-フェニルブチルオキシカルボニルアミノコ基、(1-ナフチル)メチルオキシカルボニルアミノ基、(2-ナフチル)メチルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0222】
前記(炭素数6~15のアリール)オキシカルボニルアミノ基としては、フェノキシカルボニルアミノ基、トリルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0223】
一般式(2)中の隣接する2つのR3は互いに結合してそれぞれが結合している炭素原子とともに芳香環または非芳香環を形成してもよく、好ましくは芳香環、たとえば、R3が結合している芳香環とともにナフタレン環を形成してもよい。
【0224】
なかでも、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
【0225】
R4、R5は、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0226】
a、b、cは、独立して、0~4の整数であり、a+cは、0~5の整数である。a、bは、0であることがより好ましく、cは、0または1であることが好ましい。
【0227】
nは、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0228】
Yは、2価の有機基であることが好ましく、飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素または脂環式炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、ヘテロ元素を含む連結基で連結された脂肪族炭化水素もしくは脂環式炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、単環芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、多環芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、単結合で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる連結基で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、ヘテロ元素を含む連結基で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる連結基で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、などが挙げられる。
【0229】
前記飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素または脂環式炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、イソプロピリデン基、シクロヘキサンジイル基、ビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基などが挙げられる。
【0230】
前記-O-、-S-、-SO2-、-C(=O)-などのヘテロ元素を含む連結基で連結された脂肪族炭化水素もしくは脂環式炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基としては、-C2H4OC2H4-、-C2H4OC2H4OC2H4-、-C2H4SC2H4-、-C2H4-SO2-C2H4-、-C2H4COC2H4-などが挙げられる。
【0231】
単環芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンジル、エチルベンゼンなどが挙げられる。
【0232】
前記ナフタレン、置換ナフタレンなどの多環芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基としては、ナフタレンジイル基、2,6-ナフタレンジイル基、1,8-ナフタレンジイル基、2,3-ナフタレンジイル基などが挙げられる。
【0233】
前記ビフェニル、置換ビフェニルなどの単結合で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基としては、ビフェニルジイル基などが挙げられる。
【0234】
前記飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる連結基で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基としては、ジフェニルメタン、2,2-ジフェニルプロパンなどが挙げられる。
【0235】
前記ヘテロ元素を含む連結基で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基としては、ジフェニルエ-テル、ジフェノキシエタン、ジ(フェノキシエチル)エ-テル、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホンなどが挙げられる。
【0236】
より好ましいYとしては、フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,2-フェニレン基、ビフェニル基、4,4’-ビフェニル基、3,4’-ビフェニル基、3,3’-ビフェニル基、オキシジフェニル基、4,4’-オキシジフェニル基、3,4’-オキシジフェニル基、3,3’-オキシジフェニル基などの単環もしくは多環の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、単結合で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基、およびヘテロ元素を含む連結基で連結された複数の芳香族炭化水素から2個の水素原子を取り除いてできる2価の有機基などである。
【0237】
Z2は、スルホニルオキシ基またはスルホニル基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。なかでも、スルホニルオキシ基であることがより好ましく、それぞれ同じであることがさらに好ましい。
【0238】
より詳しくは、1,3-ビス-(3-[3-フェニルウレイド]フェニルオキシスルホニル)ベンゼン、1,3-ビス-(3-[3-{m-トリル}ウレイド]フェニルオキシスルホニル)ベンゼン、1,3-ビス-(4-[3-{m-トリル}ウレイド]フェニルオキシスルホニル)ベンゼン、4,4’-ビス-(3-[3-{m-トリル}ウレイド]フェニルオキシスルホニル)ビフェニル、4,4’-ビス-(3-[3-{m-トリル}ウレイド]フェニルオキシスルホニル)ジフェニルエ-テル、4,4’-ビス-(3-[3-フェニルウレイド]フェニルオキシスルホニル)ジフェニルエ-テル、4,4’-ビス-(3-[3-フェニルウレイド]フェニルオキシスルホニル)ビフェニル、1,3-ビス-(3-[3-{p-トリル}ウレイド]フェニルオキシスルホニル)ベンゼン、1,3-ビス-(3-[3-{1-ナフチル}ウレイド]フェニルオキシスルホニル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0239】
本発明の感熱発色剤中に、一般式(3)で表される化合物を含むことが好ましい。一般式(3)で表される化合物としては、以下のものである。
【0240】
【0241】
R6は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基である。
【0242】
R6としては、前記R1と同様のものが挙げられ、なかでも、炭素数1~12の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されたフェニル基、ベンジル基などがより好ましい。
【0243】
R7は、水素原子または炭素数1~4の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基である。たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基などが挙げられ、なかでも、メチル基がより好ましい。
【0244】
lおよびmは、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0245】
Z3は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基であることが好ましく、スルホニルオキシ基またはスルホンアミド基であることがより好ましい。
【0246】
より詳しくは、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、N-ベンジル-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素、3-[(4-メチルベンゼンスルホニル)メチル]-1-フェニル尿素、3-[4-(オクタン-1-スルホニル)フェニル]-1-フェニル尿素、1-(ベンゼンスルホニル)-3-フェニル尿素、1-(4-メチルフェニルスルホニル)-3-フェニル尿素などが挙げられる。
【0247】
本発明の感熱発色剤中に、一般式(4)で表される化合物を含むことが好ましい。一般式(4)で表される化合物としては、以下のものである。
【0248】
【0249】
R8は、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基、無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数7~12のアラルキル基、または無置換または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン原子で置換された炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、
【0250】
R8としては、前記R1と同様のものが挙げられ、なかでも、フェニル基、p-トリル基、m-トリル基、o-トリル基、メシチレン基、2-ナフチル基、メチル基、エチル基、ベンジル基、p-エチルベンジル基、p-メトキシベンジル基などがより好ましい。
【0251】
R9は、メチル基であることが好ましく、一般式(4)のベンゼン環中のR9の位置は、3位、4位または5位である。
【0252】
dは、0~4の整数であり、0であることがより好ましい。
【0253】
Z4およびZ5は、スルホニルオキシ基、スルホニル基またはスルホンアミド基であることが好ましく、スルホニルオキシ基またはスルホニル基であることがより好ましく、一般式(4)のベンゼン環中の-Z5-の位置は、3位、4位または5位であり、より好ましくは3位である。
【0254】
より詳しくは、N-p-トルエンスルホニル-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル尿素、N-ベンジル-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル尿素などが挙げられる。
【0255】
前記一般式(1)~(5)で表される化合物のうち少なくとも一つの顕色剤は、感熱発色剤中に、1~70質量%含有することが好ましく、5~50質量%含有することがより好ましく、10~40質量%含有することがさらに好ましい。前記一般式(1)~(5)で表される化合物のうち少なくとも一つの量が、1質量%未満では、発色効果が発現しにくく、70質量%を超えると、感熱発色剤自体の分散安定性が劣ったり、印字時の耐熱性低下や耐溶剤性低下などを起こすおそれがある。
【0256】
本発明の感熱発色剤中に、ロイコ染料を含むことが好ましい。前記ロイコ染料としては、従来の感圧あるいは感熱記録材料分野で公知のものはすべて使用可能であり、特に制限されるものではないが、トリアリールメタン系化合物、フルオラン系化合物、フルオレン系化合物、ジビニル系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、スピロ系化合物などが好ましい。また、これらのロイコ染料は一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0257】
前記トリアリールメタン系化合物としては、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリドなどが挙げられる。
【0258】
前記フルオラン系化合物としては、3-ジエチルアミノ-6-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-メチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-n-オクチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-n-オクチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-ベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-ジベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(3-メチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-p-メチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-エトキシエチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-オクチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ブロモフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-フェノキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-フェニルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(4-ニトロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3,4-ジクロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-ベンゾ〔a〕フルオラン、3-ジエチルアミノ-ベンゾ〔c〕フルオラン、3-ジエチルアミノ-7,8-ジベンゾフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-エトキシエチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-p-メチルアニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-プロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-イソアミルアミノ)-7-フェノキシフルオラン、3-(N-エチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-ヘキシルアミノ)-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-トリル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-エトキシプロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-トリル)アミノ-6-メチル-7-フェネチルアミノフルオラン、3-(N-エチル-N-n-ヘキシルアミノ)-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)-7-(N-フェニル-N-メチルアミノ)フルオラン、3-(N-メチル-N-イソアミルアミノ)-7,8-ベンゾフルオラン、3-シクロヘキシルアミノ-6-クロロフルオラン、3-ピロリジノ-6-クロロフルオラン、3-ピロリジノ-7-ジベンジルアミノフルオラン、2-(4-オキサヘキシル)-3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-(4-オキサヘキシル)-3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-(4-オキサヘキシル)-3-ジプロピルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-メチル-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-メトキシ-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-クロロ-3-メチル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-クロロ-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ニトロ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-アミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-フェニル-6-メチル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ベンジル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ヒドロキシ-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3-メチル-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジブチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2,4-ジメチル-6-〔(4-ジメチルアミノ)アニリノ〕-フルオラン、3,6-ジメトキシフルオランなどが挙げられる。
【0259】
前記フルオレン系化合物としては、3,6,6'-トリス(ジメチルアミノ)スピロ〔フルオレン-9,3'-フタリド〕、3,6,6'-トリス(ジエチルアミノ)スピロ〔フルオレン-9,3'-フタリド〕などが挙げられる。
【0260】
前記ジビニル系化合物としては、3,3-ビス-〔2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-(p-メトキシフェニル)エテニル〕-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス-〔2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-(p-メトキシフェニル)エテニル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス-〔1,1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス-〔1-(4-メトキシフェニル)-1-(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリドなどが挙げられる。
【0261】
前記ジフェニルメタン系化合物としては、4,4’-ビスジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N-ハロフェニルロイコオーラミン、N-2,4,5-トリクロロフェニルロイコオーラミンなどが挙げられる。
【0262】
前記チアジン系化合物としては、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p-ニトロベンゾイルロイコメチレンブルーなどが挙げられる。
【0263】
前記スピロ系化合物としては、3-メチル-スピロ-ジナフトピラン、3-エチル-スピロ-ジナフトピラン、3,3’-ジクロロ-スピロ-ジナフトピラン、3-ベンジル-スピロ-ジナフトピラン、3-メチルナフト-(3-メトキシベンゾ)-スピロピラン、3-プロピル-スピロ-ジベンゾピランなどが挙げられる。
【0264】
その他としては、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(4-シクロヘキシルエチルアミノ-2-メトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-n-ヘキシルオキシフェニル)-4-アザフタリド、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル-4-アザフタリド、3-(2-メチル-1-n-オクチルインドール-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(9-エチルカルバゾール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(2-フェニルインドール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(1,2-ジメチルインドール-3-イル)フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-フェニルインドール-3-イル)フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-メチルピロール-2-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(p-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-(3'-ニトロ)アニリノラクタム、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-(4'-ニトロ)アニリノラクタム、1,1-ビス-〔2',2',2'',2''-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-2,2-ジニトリルエタン、1,1-ビス-〔2',2',2'',2''-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-2-β-ナフトイルエタン、1,1-ビス-〔2',2',2'',2''-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-2,2-ジアセチルエタン、ビス-〔2,2,2',2'-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-メチルマロン酸ジメチルエステル、2,2-ビス{4-[6’-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-3’-メチルスピロ[フタリド-3,9’-キサンテン]-2’-イルアミノ]フェニル}プロパンなどが挙げられる。
【0265】
前記ロイコ染料は、感熱発色剤中に、1~20質量%含有することが好ましく、3~15質量%含有することがより好ましく、5~10質量%含有することがさらに好ましい。前記ロイコ染料の量が、1質量%未満では、発色効果が発現しにくく、20質量%を超えると、感熱発色剤自体の分散性が劣るため、感熱発色層皮膜の凝集力が得られなかったり、プラスチックフィルム基材への密着性不良を起こすおそれがある。
前記感熱発色剤中に含まれる前記顕色剤と前記ロイコ染料の含有割合は、顕色剤/ロイコ染料=7/1~0.5/1であることが好ましく、5/1~1/1であることがより好ましく、4/1~2/1であることがさらに好ましい。含有割合が、前記範囲内において、感熱発色性に優れる。
【0266】
本発明の感熱発色剤中に、水性樹脂を含むことが好ましい。前記水性樹脂としては、水性媒体に可溶あるいは分散することができる樹脂であれば、従来公知の樹脂を使用できる。なお、水性媒体とは、水または親水性溶剤を成分として含むものを指す。なかでも、水溶性樹脂または水性エマルジョン樹脂であることがより好ましい。
【0267】
前記水溶性樹脂とは、分子内にスルホニル基、カルボキシル基などのイオン性基、水酸基などの水溶性置換基を有しており、水に溶解する。例えば、水溶性ポリアクリルアミド、水溶性アクリル系樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール系樹脂、水溶性ナイロン樹脂、水溶性アルキッド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリブタジエン樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリル/スチレン樹脂、水溶性酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、水溶性スチレン/マレイン酸共重合樹脂、水溶性フッ素樹脂、水溶性ポリイソシアネート樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリ酢酸ビニル、カルボキシメチルセルロース、水溶性ポリエーテル樹脂およびこれらの共重合体や、デンプン、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム、キトサン、デキストランおよびグアーガムなどの天然高分子化合物などが挙げられる。なかでも、水溶性アクリル系樹脂、水溶性ポリエステル樹脂がより好ましい。特に、水溶性ポリエステル樹脂がさらに好ましい。
【0268】
前記水性エマルジョン樹脂とは、樹脂粒子が水性媒体などに分散している状態を指し、樹脂粒子が固体であるか、液体であるかは問わない。
樹脂粒子としては、例えば、ポリアミド類、ポリイミド類、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレンおよびその誘導体などのポリスチレン類、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂類、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリイソシアネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂およびこれらの共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレンおよびその誘導体などのポリスチレン類がより好ましい。特に、ポリスチレン類がさらに好ましく、アクリル酸単位、メタクリル酸単位などの酸性単量体単位を含有することが好ましい。
【0269】
前記水性樹脂は、感熱発色剤中に、1~50質量%含有することが好ましく、5~40質量%含有することがより好ましく、10~30質量%含有することがさらに好ましい。前記水性樹脂の量が、1質量%未満では、感熱発色剤自体の分散性が劣るため、感熱発色層皮膜の凝集力が得られなかったり、プラスチックフィルム基材への密着性不良を起こすおそれがあり、50質量%を超えると、印字濃度の低下や流動性不良となるおそれがある。
【0270】
本発明の感熱発色剤中に、アルコールを含むことが好ましい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、1-メチル-1,3-ブチレングリコール、2-メチル-1,3-ブチレングリコール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、トリプロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどが好ましく、なかでもメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
【0271】
前記アルコールは、感熱発色剤中に、1~50質量%含有することが好ましく、2~40質量%含有することがより好ましく、5~20質量%含有することがさらに好ましい。前記アルコールの量が、1質量%未満では、乾燥しにくく、高速印刷適性が劣るおそれがあり、50質量%を超えると、印字濃度の低下や流動性不良となるおそれがある。
【0272】
本発明の感熱発色剤中に、必要に応じ、増感剤を用いることができ、従来公知の増感剤が使用できる。
例えば、ステアリン酸アミド、ビスステアリン酸アミド、N-ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどの脂肪酸アミド、p-トルエンスルホンアミド、ステアリン酸、ベヘン酸やパルミチン酸などのカルシウム、亜鉛あるいはアルミニウムなどの脂肪酸金属塩、N-ステアリル尿素、ベンジル-2-ナフチルエーテル、4-ベンジルビフェニル、2,2’-ビス(4-メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、α,α’-ジフェノキシキシレン、ビス(4-メトキシフェニル)エーテル、p-ベンジルビフェニル、ジフェニルスルホン、ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、2-ベンジルオキシナフタレン、1,2-ビス(p-トリルオキシ)エタン、1,2-ビス(フェノキシ)エタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、1,3-ビス(フェノキシ)プロパン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸p-メチルベンジル、蓚酸ビス(4-メチルベンジル)エステル、蓚酸ビス(4-クロロベンジル)エステル、アジピン酸ジフェニル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジベンジル、ベンゼンスルホン酸フェニルエステル、ビス(4-アリルオキシフェニル)スルホン、1,2-ジフェノキシエタン、4-アセチルアセトフェノン、m-ターフェニル、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、アセト酢酸アニリド類、脂肪酸アニリド類などが挙げられ、なかでも、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ビス(p-トリルオキシ)エタン、1,2-ビス(フェノキシ)エタンがより好ましい。
【0273】
本発明の感熱発色剤中に、水を含むことが好ましい。前記水は、特に制限はなく、水道水、井水、蒸留水、イオン交換水、純水などを用いることができる。なかでも、蒸留水、イオン交換水、純水を使用することがより好ましい。
【0274】
前記水の含有量は、前記した各成分の残余である。
【0275】
本発明の感熱発色剤中に、必要に応じて、色材、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤、硬化剤、シランカップリング剤、ワックスなどを含有することもできる。公知慣用のものであればいかなるものも、感熱発色剤としての特性を損なわない範囲で、適宜選択できる。
【0276】
前記色材としては、非晶性シリカ、非晶性珪酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、二酸化チタン、酸化亜鉛 水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ、ポリスチレンパウダー、ナイロンパウダー、尿素- ホルマリン樹脂フィラー、スチレン- メタクリル酸共重合体、スチレン- ブタジエン共重合体や中空プラスチックピグメント等の無機あるいは有機顔料等などが挙げられる。
【0277】
本発明の感熱記録積層体の製造方法は、前記感熱発色剤により設けられた感熱発色層を形成するグラビア印刷工程を備えることが好ましい。前記感熱発色剤を、そのままグラビア印刷工程で使用することもできるが、塗工条件、塗工効果に応じ、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、希釈溶剤で希釈する工程を含んでもよく、所望の粘度に調整して使用できる。この場合の粘度は、25℃において10~40秒であることが好ましい。10秒より小さいと、泳ぎやすく、40秒より大きいと印刷時の転移性が悪くなる。
【0278】
前記希釈溶剤は、前記インキ組成物の粘度を調整して使用できるものであれば、いずれでもよく、有機溶剤、水などが挙げられ、市販のものも使用でき、特に制限はない。市販品としては、WA734溶剤(アルコール水系溶剤)、WA735溶剤(アルコール水系溶剤)、WA736溶剤(アルコール水系溶剤)、TA50溶剤(アルコール系溶剤)、TA52溶剤(アルコール系溶剤)(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0279】
前記感熱発色層の厚みとしては、0.1~5μmであることが好ましく、0.2~3μmであることがより好ましい。感熱発色層の厚みが、0.1μmより小さいと、印字後の発色濃度が不足するおそれがあり、5μmを超えると、ブロッキングのおそれがある。
【0280】
本発明の感熱記録積層体の製造方法は、前記感熱発色層上に、水性コート剤により設けられた水性コート層を形成する塗布工程を備えることが好ましい。
【0281】
前記水性コート剤は、水溶性樹脂と水とを含むことが好ましい。
【0282】
前記水性コート剤に用いられる水溶性樹脂は、前記感熱発色剤と同様の水溶性樹脂を用いることができる。なかでも、ポリビニルアルコール類がより好ましい。これらの水溶性樹脂は、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0283】
前記水溶性樹脂は、水性コート剤中に、1~50質量%含有することが好ましく、2~30質量%含有することがより好ましい。前記水溶性樹脂の量が、1質量%未満では、水性コート層の皮膜形成性が劣り、50質量%を超えると、インキの流動性が劣り、製造適性が劣る。
【0284】
前記水としては、特に制限はなく、水道水、井水、蒸留水、イオン交換水、純水などを用いることができる。また、通常グラビアインキに使用される溶剤を含んでもよい。例えばトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤およびこれらのエステル化物が挙げられ、エステル化物としては主にアセテート化したものが選ばれ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。なかでも、印刷適性や汎用性の観点から、トルエン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンなどがより好ましい。これらは、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0285】
水性コート剤中に、水は1~50質量%の範囲内であることが好ましい。1質量%より少ないと、印刷時の濡れが悪くなり、50質量%を超えると、粘度が上昇して、製造適性が劣る。
【0286】
本発明の水性コート剤中に、必要に応じて、色材、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤、硬化剤、シランカップリング剤、ワックスなどを含有することもできる。公知慣用のものであればいかなるものも、水性コート剤としての特性を損なわない範囲で、適宜選択できる。
【0287】
本発明の水性コート剤は、そのままグラビア印刷工程で使用することもできるが、塗工条件、塗工効果に応じ、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、希釈溶剤で希釈する工程を含んでもよく、所望の粘度に調整して使用できる。この場合の粘度は、25℃において10~40秒であることが好ましい。10秒より小さいと、泳ぎやすく、40秒より大きいと印刷時の転移性が悪くなる。
【0288】
前記希釈溶剤は、前記水性コート剤の粘度を調整して使用できるものであれば、いずれでもよく、有機溶剤、水などが挙げられ、市販のものも使用でき、特に制限はない。市販品としては、WA734溶剤(アルコール水系溶剤)、WA735溶剤(アルコール水系溶剤)、WA736溶剤(アルコール水系溶剤)、TA50溶剤(アルコール系溶剤)、TA52溶剤(アルコール系溶剤)(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0289】
前記水性コート層の厚みとしては、0.01~2μmであることが好ましく、0.05~1.4μmであることがより好ましく、0.1~1.2μmであることがさらに好ましい。水性コート層の厚みが、0.01μmより小さいと、水性コート層の皮膜形成性が劣り、2μmを超えると、乾燥しにくく、高速印刷適性が劣るおそれがある。
【0290】
本発明の感熱記録積層体の製造方法は、前記水性コート層上に、さらにオーバーコート剤により設けられたオーバーコート層を形成する塗布工程を備えることが好ましい。
【0291】
前記オーバーコート剤は、熱可塑性樹脂と、ポリイソシアネートと、有機溶剤とを含むことが好ましい。
【0292】
前記熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩酢ビ共重合体、繊維系樹脂であることが好ましい。なかでも、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩酢ビ共重合体がより好ましい。これらは、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0293】
前記熱可塑性樹脂は、オーバーコート剤中に、1~50質量%含有することが好ましく、2~45質量%含有することがより好ましい。前記熱可塑性樹脂の量が、1質量%未満では、オーバーコート層の皮膜形成性が劣り、感熱発色層の保護効果が発現しにくく、50質量%を超えると、ブロッキングのおそれがある。
【0294】
前記ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキシレンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサエチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマージイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ペンタン-1,5-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの脂肪族ジイソシアネートおよびこれらのトリメチロールプロパン三量体、トリレンジイソシアネート(TDI)、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートおよびこれらの変性体などが挙げられる。なかでも、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートおよび芳香脂肪族ジイソシアネートがより好ましい。これらは、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0295】
前記ポリイソシアネートは、オーバーコート剤中に、1~50質量%含有することが好ましく、2~45質量%含有することがより好ましい。前記ポリイソシアネートの量が、1質量%未満では、架橋効果が得られにくく、50質量%を超えると、ブロッキングのおそれがある。
【0296】
オーバーコートコート剤中に含まれる前記熱可塑性樹脂と前記ポリイソシアネートの含有割合は、オーバーコート剤中に含まれる熱可塑性樹脂の固形分100に対し、ポリイソシアネートの固形分、熱可塑性樹脂/ポリイソシアネート=100/1~100/50であることが好ましく、100/5~100/40であることがより好ましく、100/15~100/35であることがさらに好ましい。含有割合が、前記範囲内において、耐アルコール性、耐スクラッチ性、耐水性、耐油性に優れる。
【0297】
前記有機溶剤としては、通常グラビアインキに使用される溶剤を使用することができる。例えばトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤およびこれらのエステル化物が挙げられ、エステル化物としては主にアセテート化したものが選ばれ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。なかでも、印刷適性や汎用性の観点から、トルエン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンなどがより好ましい。これらは、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0298】
オーバーコート剤中に、有機溶剤は45~90質量%の範囲内であることが好ましく、60~80質量%の範囲内であることがより好ましい。45質量%より少ないと固形分が多くなり、流動性が悪くなり、オーバーコート剤の製造適性が劣り、90質量%を超えると、粘度が低くなり、綺麗な印刷効果が得られないおそれがある。
【0299】
本発明のオーバーコート剤中に、必要に応じて、色材、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤、シランカップリング剤などを含有することもできる。公知慣用のものであればいかなるものも、オーバーコート剤としての特性を損なわない範囲で、適宜選択できる。
【0300】
本発明のオーバーコート剤は、そのままグラビア印刷工程で使用することもできるが、塗工条件、塗工効果に応じ、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、希釈溶剤で希釈する工程を含んでもよく、所望の粘度に調整して使用できる。この場合の粘度は、25℃において10~40秒であることが好ましい。10秒より小さいと、泳ぎやすく、40秒より大きいと印刷時の転移性が悪くなる。
【0301】
前記希釈溶剤は、前記インキ組成物の粘度を調整して使用できるものであれば、いずれでもよく、有機溶剤が挙げられ、市販のものも使用でき、特に制限はない。市販品としては、TS32溶剤(エステル系溶剤)、PU533溶剤(含トルエン系溶剤)、PU515溶剤(ノントルエン系溶剤)、SL9155溶剤(ノントルエン系溶剤)、CN104溶剤(ノントルエン系溶剤)、AC372溶剤(ノントルエン系溶剤)、PP575溶剤(含トルエン系溶剤)、SL9164溶剤(ノンケトン系溶剤)、SL9170溶剤(ノンケトン系溶剤)(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0302】
前記オーバーコート層の厚みとしては、0.05~5μmであることが好ましく、0.1~3μmであることがより好ましい。オーバーコート層の厚みが、0.05μmより小さいと、前記水性コート層の保護効果が十分でなく、5μmを超えると、ブロッキングのおそれがある。
【0303】
本発明の感熱記録積層体の製造方法により作製される感熱記録積層体は、サーマルプリンター(例えば、TH-M2/PP、オオクラエンジニアリング(株)製)などを用いて、感熱発色層を発色させることによって、印字物を作製することができる。
発色濃度については、ヒートシーラー(テスター産業(株)製)などを用いて、感熱記録積層体を発色させて、L*a*b*表色系(CIE1976)で規定される方法で測定されるL値により評価できる。L値が低いものほど、より黒色度が高く、良好と判断できる。発色濃度を測定する機器としては、反射濃度計、分光濃度計、分光光度計などを用いることができる。例えば、ポータブル分光濃度・測色計 eXact 2(X-Rite社製)などが挙げられる。
【0304】
本発明の感熱記録積層体の製造方法は、前記プラスチックフィルム基材と、前記感熱発色層との間に、アンカーコート剤により設けられたアンカーコート層を形成する塗布工程を備えてもよい。
【0305】
前記アンカーコート剤には、樹脂を用いることができる。樹脂としては、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉などの澱粉類、メチルセルロース、カルボキシセルロース、メトキシセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース樹脂、カゼイン、ゼラチン、完全(または部分)鹸化ポリビニアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アミド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、スチレン-無水マレイン酸共重合体系ラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体系ラテックス、酢酸ビニル樹脂系ラテックス、ウレタン樹脂系ラテックス及びアクリル樹脂系ラテックスなどが挙げられる。これらは、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0306】
前記アンカーコート剤は、前記水性コート剤やオーバーコート剤と同様の有機溶剤を用いることができる。なかでも、印刷適性や汎用性の観点から、トルエン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンなどが挙げられる。これらは、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0307】
本発明のアンカーコート剤中に、必要に応じて、色材、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤、系硬化剤、シランカップリング剤、ワックスなどを含有することもできる。公知慣用のものであればいかなるものも、アンカーコート剤としての特性を損なわない範囲で、適宜選択できる。市販のものも使用でき、特に制限はない。市販品としては、LG-OX アンカー剤D(東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0308】
本発明のアンカーコート剤は、そのままグラビア印刷工程で使用することもできるが、塗工条件、塗工効果に応じ、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、希釈溶剤で希釈する工程を含んでもよく、所望の粘度に調整して使用できる。この場合の粘度は、25℃において10~40秒であることが好ましい。10秒より小さいと、泳ぎやすく、40秒より大きいと印刷時の転移性が悪くなる。
【0309】
前記希釈溶剤は、前記アンカーコート剤の粘度を調整して使用できるものであれば、いずれでもよく、有機溶剤が挙げられ、市販のものも使用でき、特に制限はない。市販品としては、TS32溶剤(エステル系溶剤)、PU533溶剤(含トルエン系溶剤)、PU515溶剤(ノントルエン系溶剤)、SL9155溶剤(ノントルエン系溶剤)、CN104溶剤(ノントルエン系溶剤)、AC372溶剤(ノントルエン系溶剤)、PP575溶剤(含トルエン系溶剤)、SL9164溶剤(ノンケトン系溶剤)、SL9170溶剤(ノンケトン系溶剤)(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0310】
前記アンカーコート層の厚みとしては、0.05~3μmであることが好ましく、0.1~2μmであることがより好ましい。アンカーコート層の厚みが、0.05μmより小さいと、塗布量が少なく、プラスチックフィルム基材を覆えないおそれがあり、3μmを超えると、ブロッキングのおそれがある。
【0311】
前記プラスチックフィルム基材を準備する工程としては、プラスチックフィルムまたはシートならびにこれらの積層体から選ばれる少なくとも1つを準備する工程であることが好ましい。例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテートなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン-ビニルアルコール、ポリビニルアルコールなどのアルコール系フィルム、ポリアミドフィルムまたはバリア層を中間に配したバリア性ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、PETフィルムまたはポリアミドフィルムにアルミナやシリカなどの蒸着層を設けた透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂などをコートした各種コーティングフィルム、PETとナイロンの共押出フィルム、ポリ乳酸フィルムなどが挙げられる。これらは延伸、未延伸のどちらでもよく、一種類または二種類以上を積層しているものを準備する工程でもよい。機械的強度や寸法安定性などを考慮して、適切なものが選択できる。また、表面にはアンカーコート層やラミネート層の密着性を向上させるため、コロナ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などを施すか、あらかじめ施されたものが選択して準備することができる。なかでも、PETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、コーティングフィルム、透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、共押出フィルムなどを準備することが好ましい。プラスチックフィルム基材の厚さは、印刷適性、巻き取り適性などに支障のない範囲内であれば、特に制限はないが、5~300μmが好ましく、6~250μmがより好ましい。
【0312】
前記プラスチックフィルム基材の一方に、前記感熱発色剤により設けられた感熱発色層を形成するグラビア印刷工程であることが好ましく、前記感熱発色層上に、前記水性コート剤により設けられた水性コート層を形成する塗布工程と、前記水性コート層上に、前記オーバーコート剤により設けられたオーバーコート層を形成する塗布工程は、特に制限はないが、グラビア印刷工程であることがより好ましい。さらに、アンカーコート剤により設けられたアンカーコート層を形成する塗布工程も、グラビア印刷工程であることがより好ましい。このことにより、多色グラビア印刷機を用いたグラビア印刷工程により作成することができる。グラビア印刷工程により作成できるため、全面に各層を形成することもできるが、容易に部分的に各層を形成することもできる。
【0313】
本発明の感熱記録積層体の製造方法は、前記感熱発色層と反対面の前記プラスチックフィルム基材上に、シール層を形成するラミネート工程または塗布工程を備えてもよい。
【0314】
前記シール層の形成工程は、ヒートシール性を付与した積層体や公知のシーラントフィルムの貼り合わせ(ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、ウェットラミネート法)、押出ラミネート法による樹脂コーティング(押出ラミネート法、共押出ラミネート法、PEサンドイッチラミネート法)、熱による貼り合わせ(熱ラミネート法)などによるラミネート工程や、ヒートシール剤やホットメルト剤の塗布工程が挙げられる。また、接着剤や粘着剤の塗布工程なども挙げられる。
【0315】
シール層の厚みは、特に制限はないが、シーラントフィルムでは2~200μm、押出ラミネート法による樹脂コーティングでは1~100μm、ヒートシール剤の塗工では0.01~30μm、ホットメルト接着剤の塗工では1~50μmの厚みであることが好ましい。
【0316】
前記シーラントフィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート、これらの共重合体などのポリオレフィンフィルムやその共押フィルムおよび着色フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン-ビニルアルコール樹脂フィルムなどが挙げられ、延伸していても、未延伸のどちらでもよく、一種類または二種類以上を積層していてもよい。
【0317】
前記ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、ウェットラミネート法、押出ラミネート法などのラミネート工程に接着剤を使用する場合は市販のものでよく、例えば、2液型もしくは1液型ウレタン系樹脂接着剤、アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、水系ウレタン系、イソシアネート系、有機チタン系、デンプン系の水溶性接着剤や酢酸ビニルエマルジョンのような水性接着剤などが挙げられる。シーラント層を形成するための接着剤の塗布工程としては、公知の塗布工程を用いることができ、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアオフセットコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターなどを用いることができる。接着剤の厚みは特に制限はないが、0.001~10μm程度の範囲が好ましく、0.01~5μmの範囲が特に好ましい。
【0318】
前記押出ラミネート工程による樹脂コーティングに使用できる樹脂としては、LDPE、LLDPE、HDPEなどのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンをマレイン酸やフマル酸などで変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの樹脂は、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
【0319】
ヒートシール剤の樹脂の例としては、例えば、塩化ビニリデン、セラック類、ロジン類、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、硝化綿、酢酸セルロース、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、塩化ゴム、環化ゴム、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ケトン樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化エチレンビニルアセテート樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、カゼイン、アルキッド樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられ、これらは一種類または二種類以上混合して用いることができる。これらの樹脂を溶剤に溶解したタイプ、あるいはアクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、エチレン-ビニルアルコール系エマルジョン、ポリエチレン系エマルジョン、ポリプロピレン系エマルジョン、エチレンビニルアセテート系エマルジョンなど水中に分散させたものが挙げられる。
【0320】
本発明の感熱記録積層体の製造方法は、前記プラスチックフィルム基材上または前記感熱発色層と反対面の前記プラスチックフィルム基材上に、絵柄層を形成するグラビア印刷工程を備えてもよい。さらに、有色インキ層を形成するグラビア印刷工程を備えてもよい。前記絵柄層と有色インキ層の形成工程の順序は問わない。また、全面でも一部分に形成してもよく、網点により形成してもよい。
前記絵柄層は、通常、グラビア印刷に用いられるカラー印刷インキ組成物を用いて形成される層で、絵柄や文字などが印刷された層である。また、前記有色インキ層は、通常、グラビア印刷に用いられる白色インキ組成物などを用いて形成される層で、ベタや網点で前記絵柄層などとのコントラストを付けて、見えやすくする際などに用いられる層である。
【0321】
本発明の実施形態に係る包装体は、前記積層体を用いてなることが好ましく、包装袋、ラベルおよび蓋材(これらを合わせて、「包装体」という)としてもよい。
【0322】
前記包装袋となる積層体の構成としては、プラスチックフィルム基材/感熱発色層/水性コート層/オーバーコート層、プラスチックフィルム基材/アンカーコート層/感熱発色層/水性コート層/オーバーコート層、シール層/DL/プラスチックフィルム基材/感熱発色層/水性コート層/オーバーコート層、シール層/DL/絵柄層/有色インキ層/プラスチックフィルム基材/感熱発色層/水性コート層/オーバーコート層、シール層/DL/絵柄層/プラスチックフィルム基材/有色インキ層/感熱発色層/水性コート層/オーバーコート層、シール層/DL/絵柄層/プラスチックフィルム基材/アンカーコート層/感熱発色層/水性コート層/オーバーコート層などとしてもよい。該包装袋としては、二方シール、三方シール、四方シール、ピローシール、スタンディングパウチ、封筒貼り、ガゼット、溶断シールなどの周知の形態のいずれでもよい。
【0323】
前記ラベルとしては、感熱発色層を形成した他方の面のプラスチックフィルム基材上に粘着層や接着層を形成し、さらに離型層を形成することによりラベルとすることもできる。粘着層や接着層はゴム系粘着材料やアクリル樹脂系接着材料などプラスチックフィルム基材と離型層に密着し、かつ離型層が容易に剥離することができるものであればいずれでもよい。離型層はポリエチレンフィルムやポリエステルフィルムあるいは紙(離型紙)などいずれでもよい。
該ラベルとなる積層体の構成としては、粘着剤層/プラスチックフィルム基材/感熱発色層/水性コート層/オーバーコート層、ホットメルト層/プラスチックフィルム基材/感熱発色層/水性コート層/オーバーコート層、粘着剤層/絵柄層/有色インキ層/プラスチックフィルム基材/感熱発色層/水性コート層/オーバーコート層、粘着剤層/絵柄層/プラスチックフィルム基材/有色インキ層/感熱発色層/水性コート層/オーバーコート層、粘着剤層/絵柄層/プラスチックフィルム基材/アンカーコート層/感熱発色層/水性コート層/オーバーコート層などとしてもよい。
【0324】
前記蓋材としては、カバー、蓋、キャップなど周知の形態のいずれでもよい。
該蓋材となる積層体の構成としては、シール層/DL/プラスチックフィルム基材/感熱発色層/水性コート層/オーバーコート層、シール層/DL/絵柄層/有色インキ層/プラスチックフィルム基材/感熱発色層/水性コート層/オーバーコート層、シール層/DL/絵柄層/プラスチックフィルム基材/有色インキ層/感熱発色層/水性コート層/オーバーコート層、シール層/DL/絵柄層/プラスチックフィルム基材/アンカーコート層/感熱発色層/水性コート層/オーバーコート層などとしてもよい。
【0325】
さらに、容器と密着することにより密閉容器となることが好ましい。容器との密着は、人の手を介して実施してもよいが、自動密封装置などの機械を用いてもよい。これらは、食品の種類、形態や大きさ、数量、密閉する容器、設備、環境などによって、適宜選択すればよく、ヒートシール(熱圧シール)、面シール、粘着剤などでの貼り付けあるいは接着などを使用した方法により行えばよい。
前記容器は、有底筒状の容器であることがさらに好ましい。この場合、蓋材が有底筒状の容器の開口部を覆い、密閉されていることが好ましく、ヒートシールによる密閉であることがさらに好ましい。
前記容器に用いられる樹脂は、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【実施例】
【0326】
以下に実施例および比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部は質量部を、%は重量%を表す。
【0327】
[感熱発色剤の作製]
製造例1(顕色剤分散液の調製)
N,N’-ジ「3-(p-トルエンスルホニル)オキシ)フェニル尿素を30部、水性樹脂(ハイロスM-141、水性アクリルエマルジョン樹脂、星光PMC(株)製)を30部、メタノールを20部、水を20添加し、混合・分散して、A剤1を作製した。同様に、表1の配合に従い、A剤1と同様に、A剤2~A剤10を作製した。
【0328】
【0329】
製造例21(ロイコ染料分散液)
ロイコ染料(3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、山本化成(株)製)を30部、水性樹脂(プラスコートRZ-570、水溶性ポリエステル樹脂、互応化学工業(株)製)を40部、イソプロピルアルコールを15部、水を15部添加し、攪拌して、B剤1を作製した。同様に、表2の配合に従い、B剤1と同様に、B剤2~B剤5を作製した。
【0330】
【0331】
なお、使用した材料は以下のものとした。
JONCRYL PDX7741、水性アクリルエマルジョン樹脂、BASF社製
JONCRYL PDX7779、水性アクリルエマルジョン樹脂、BASF社製
JONCRYL PDX7326、水性アクリルエマルジョン樹脂、BASF社製
JONCRYL HPD-96J、水溶性アクリル樹脂、BASF社製
JONCRYL HPD-196、水溶性アクリル樹脂、BASF社製
JONCRYL PDX7356、水性アクリルエマルジョン樹脂、BASF社製
1,3-ビス-(3-[3-フェニルウレイド]フェニルオキシスルホニル)ベンゼン、顕色剤
N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、顕色剤
N-p-トルエンスルホニル-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル尿素、顕色剤
【0332】
製造例31(感熱発色剤の調製)
次に、A剤1を70部、B剤1を30部を攪拌して、感熱発色剤1を作製した。同様に、表3~表4の配合に従い、感熱発色剤1と同様に、感熱発色剤2~14を作製した。
【0333】
【0334】
【0335】
製造例51(水性コート剤の調製)
10%ポリビニルアルコール水溶液(日本酢ビ・ポバール(株)製)を30部、イソプロピルアルコールを20部、水を50部添加し、攪拌して、水性コート剤1を作製した。
【0336】
【0337】
[オーバーコート剤の作製]
製造例81
アクリル樹脂溶液(LG-OX アンカー剤A、固形分18%、東京インキ(株)社製)を40部、酢酸n-プロピルを10部を攪拌して、製造例61のコート剤1を作製した。
さらに、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン3量体を25部、酢酸エチルを25部を攪拌して、製造例71の硬化剤1を作製した。
前記コート剤1と前記硬化剤1を後記するグラビア印刷をする直前にコート剤1:硬化剤1=100:8の割合で混合し、製造例81のオーバーコート剤1を作製した。
同様に、表6の配合に従い、コート剤1と同様に、コート剤2~8を作製した。
同様に、表7の配合に従い、硬化剤1と同様に、硬化剤2を作製した。
同様に、表8の配合に従い、オーバーコート剤1と同様に、オーバーコート剤2~9を作製した。
なお、オーバーコート剤7は、特許文献1の比較例4の保護液1に類似する。オーバーコート剤8は、特許文献2の実施例6の保護液に類似する。オーバーコート剤9は、特許文献3の実施例21の保護液1に類似する。
【0338】
【0339】
【0340】
【0341】
なお、使用した材料は以下のものとした。
LG-FK RメジウムA:塩酢ビ共重合体溶液、固形分18%、東京インキ(株)製
LAMREK Rメジウム:ウレタン樹脂溶液、固形分15%、東京インキ(株)製
ASN1004K:アクリル樹脂エマルジョン、固形分18%、三井化学(株)製
NeoCryl A-1125:アクリル樹脂エマルジョン、固形分19.5%、DSM Coating Resin社製
ヘキサメチレンジイソシアネートTMP3量体:ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン3量体
硬化剤3:オキサゾリン基含有ポリマー、エポクロスWS-300、(株)日本触媒製
【0342】
[積層体の作製]
<実施例1>
5色機グラビア印刷機を用いて、厚み12μmの両処理PETフィルム(E-5202、略称:両処理PET、東洋紡(株)製)の一方の面に、第一ユニットで感熱発色剤1を膜厚2μm、第二ユニットで水性コート剤1を膜厚1μm、第三ユニットでオーバーコート剤1を膜厚1μmとなるように印刷して、巻き取り、積層体1を作製した。このとき、感熱発色剤1はWA734(ノントルエン系溶剤、東京インキ(株)製)、水性コート剤1は水、オーバーコート剤1はSL9170(ノントルエン系溶剤、東京インキ(株)製)にて、希釈し、ザーンカップNo.3で粘度17秒に調整した。
これにより、両処理PET/感熱発色剤1/水性コート剤1/オーバーコート剤1の積層体1を得た。
【0343】
同様に、表9~表10の通り、積層体2~27(実施例2~27)を得た。
【0344】
使用したプラスチックフィルム基材は以下のものとした。
AL蒸着PETフィルム、テトライトPC、厚み12μm、尾池工業(株)製、略称:AL蒸着PET(蒸着面に印刷)
透明蒸着PETフィルム、バリアロックス 1011HG-CR、厚み12μm、東レフィルム加工(株)製、略称:透明蒸着PET(蒸着面に印刷)
OPPフィルム、OP U-2、厚み20μm、三井化学東セロ(株)製、略称:OPP
両処理ナイロンフィルム、ONMB、厚み15μm、ユニチカ(株)製、略称:両処理NY
【0345】
<実施例28>
また、グラビア印刷機を用いて、厚み12μmの両処理PETフィルム(E-5202、東洋紡(株)製)の一方の面に、第一ユニットでLG-OX アンカー剤D(東京インキ(株)製)を膜厚1μmとなるように印刷して、巻き取り、プラスチックフィルム基材とした(略称:PETアンカー)。このとき、LG-OX アンカー剤DはSL9170(ノントルエン系溶剤、東京インキ(株)製)にて、希釈し、ザーンカップNo.3で粘度17秒に調整した。このプラスチックフィルム基材(PETアンカー)のアンカー剤印刷面に、実施例1と同様にして、感熱発色剤1、水性コート剤1、オーバーコート剤1を印刷して、巻き取り、積層体28を得た。
【0346】
【0347】
【0348】
<比較例1~5>
水性コート剤を印刷しない以外、実施例1と同様にして、積層体31を得た(比較例1)。また、オーバーコート剤を印刷しない以外、実施例1と同様にして、積層体32を得た(比較例2)。
オーバーコート剤をオーバーコート剤7~9に代えて、比較例1と同様にして、積層体33~35を得た(比較例3~5)。ただし、希釈溶剤として水を使用した。なお、積層体33は、特許文献1の比較例4に類似する。積層体34は、特許文献2の実施例6に類似する。積層体35は、特許文献3の実施例21に類似する。
【0349】
【0350】
積層体について、耐地汚れ性、ブロッキング、透明性、残留溶剤、発色濃度、密着性、耐アルコール性、耐スクラッチ性(印字前)、耐ヘッド性、耐摩擦性、耐スクラッチ性(印字後)、耐水性、耐油性を評価し、表9~11に示した。
【0351】
<耐地汚れ性>
積層体について、作製した直後の塗工層(感熱発色層、水性コート層、オーバーコート層、以下併せて「塗工層」という)面の黒くすみ具合を評価した。観察者5名による目視評価とした。塗工層が黒く発色していない(黒くすみが少ない)ものを良好と判断した。耐地汚れ性について、◎:5名全員が黒くすみがないと判断、〇:3名が黒くすみがないと判断、△:3名以上がわずかに黒くくすんでいると判断(実用上問題ない)、×:5名全員が黒く発色していると判断、の4段階で評価した。
【0352】
<ブロッキング>
積層体について、作製した直後に3cm×3cmの大きさに切断した2枚を用意し、これらを塗工層面とプラスチックフィルム基材面とを合わせて、重ね、50℃で24時間、5N/cm2の荷重を掛けた後、塗工層面とプラスチックフィルム基材面の重ね合わせ部を剥離した時の層剥離状態と剥離抵抗を評価した。抵抗なく剥離し、層剥離がないものを良好と判断した。ブロッキングについて、〇:抵抗なく剥離し、層剥離がない、×:剥離時に抵抗が大きく、層剥離が認められる、の2段階で評価した。
【0353】
<透明性>
積層体について、作製した直後に2cm×3cmの大きさに切断した3枚を用意し、HAZE GARD II((株)東洋精機製作所製)を使用し、塗工層面のヘイズ値を測定し、その平均値を透明性として評価した。ヘイズ値が低いものを良好と判断した。透明性について、○:ヘイズ値が45未満、△:ヘイズ値が45以上70未満、×:ヘイズ値が70以上、の3段階で評価した。
【0354】
<残留溶剤>
積層体について、作製後室温で24時間経過後に、0.1m2の試験片に切断し、バイアル瓶に入れ、80℃で30分予備加熱し、ヘッドスペースをガスクロマトグラフ質量分析計(HS-20、検出器:TCD型、(株)島津製作所製)によって解析し、残留溶剤を定量した。残留溶剤が少ないものを良好とした。残留溶剤について、○:5mg/m2未満、△=5~10mg/m2未満、×=10mg/m2以上、の3段階で評価した。
【0355】
<発色濃度>
積層体について、作製後40℃恒温槽で、24時間保管後、ヒートシーラー(テスター産業(株)製)にて、150℃、印圧2kgf/cm2、印圧時間0.5秒の条件で発色させた時のL値をポータブル分光濃度・測色計 eXact 2(X-Rite社製)で測定し、発色濃度とした。L値が低い(より黒色度が高い)ものを良好と判断した。発色濃度について、○:L値が20未満、△:L値が20以上40未満、×:L値が40以上、の3段階で評価した。
【0356】
<密着性>
積層体について、作製後40℃恒温槽で、24時間保管後、塗工層面に粘着テープ(18mm、ニチバン(株)製)を貼り付け、90度の角度で急速に剥離し、塗工層面の剥離状態について、目視で観察し、密着性を評価した。塗工層面が剥離しないものを密着性が良好と判断した。密着性について、○:まったく剥がれない、×:少しでも剥がれる、の2段階で評価した。
【0357】
<耐アルコール性>
積層体について、作製後40℃恒温槽で、24時間保管後、塗工層面上を、消毒用エタノール(80%エタノール水溶液)を含んだ綿棒で擦過して、塗工層面の剥離状態について、目視で観察し、耐アルコール性を評価した。塗工層面が剥離しないものを耐アルコール性が良好と判断した。耐アルコール性について、○:まったく剥がれない、×:少しでも剥がれる、の2段階で評価した。
【0358】
<耐スクラッチ性(印字前)>
積層体について、作製後40℃恒温槽で、24時間保管後、塗工層面上を、金属ヘラで10回擦り、塗工層の剥離状態を評価した。観察者5名による目視評価とした。塗工層が剥離していないものを良好と判断した。耐スクラッチ性について、◎:5名全員が剥離なしと判断、〇:3名が剥離なしと判断、△:3名以上がわずかに剥離ありと判断(実用上問題ない)、×:5名全員が剥離ありと判断、の4段階で評価した。
【0359】
<耐ヘッド性>
積層体について、作製後40℃恒温槽で、24時間保管後、サーマルプリンター(TH-M2/PP、オオクラエンジニアリング(株)製)を用いて、パルス幅1.4m秒で発色させて印字物を作製し、加熱部(ヘッド部)での擦れ具合を、印字部の目視による観察を行って、評価した。印字部における擦れ具合が少ないものを良好と判断した。○:印字部の擦れがない、△:わずかに擦れが見られる、×:はっきり擦れが見える、の3段階で評価した。
【0360】
<耐摩擦性>
前記<耐ヘッド性>評価と同じ条件で、積層体を印字させた印字物の印字部上を、乾いた綿布(カナキン3号)で400gの加重をかけて擦過し、印字部の変化について、目視で観察し、耐摩擦性を評価した。印字部の変化がないものを良好と判断した。耐摩擦性について、○:50回以上擦っても印字部の変化がない、△:50回擦った印字部の状態でわずかに傷がある(実用上問題ない)、×:20回以上50回未満擦る間に印字部がなくなる、××:20回未満で印字部がなくなる、の4段階で評価した。
【0361】
<耐スクラッチ性(印字後)>
前記<耐ヘッド性>評価と同じ条件で、積層体を印字させた印字物の印字部上を、金属ヘラで10回擦り、印字部上の塗工層の剥離状態を評価した。観察者5名による目視評価とした。印字部上の塗工層が剥離していないものを良好と判断した。耐スクラッチ性について、◎:5名全員が剥離なしと判断、〇:3名が剥離なしと判断、△:3名以上がわずかに剥離ありと判断(実用上問題ない)、×:5名全員が剥離ありと判断、の4段階で評価した。
【0362】
<耐水性>
前記<耐ヘッド性>評価と同じ条件で、積層体を印字させた印字物の印字部を、水を含んだ綿棒で擦過して、消色の有無を目視による観察を行って、評価した。印字部における消色具合が少ないものを良好と判断した。耐水性について、○:印字部の消色がない、△:わずかに消色する(実用上問題ない)、×:完全に消色する、の3段階で評価した。
【0363】
<耐油性>
前記<耐ヘッド性>評価と同じ条件で、積層体を印字させた印字物の印字部を、潤滑油(ニューハイネス-G、日世(株))を含んだ綿棒で擦過して、消色の有無を目視による観察を行って、評価した。印字部における消色具合が少ないものを良好と判断した。耐油性について、○:印字部の消色がない、△:わずかに消色する(実用上問題ない)、×:完全に消色する、の3段階で評価した。
【0364】
表9~11より、実施例1~28の積層体は、耐地汚れ性、ブロッキング、透明性、残留溶剤、発色濃度、密着性、耐アルコール性、耐スクラッチ性(印字前)、耐ヘッド性、耐摩擦性、耐スクラッチ性(印字後)、耐水性、耐油性が良好であることが明確である。
一方、水性コート層がない比較例1の積層体は、耐地汚れ性、発色濃度、耐アルコール性が劣ることが明確である。オーバーコート層がない比較例2の積層体は、耐スクラッチ性、耐ヘッド性、耐摩擦性、耐水性が劣ることが明確である。
引用文献1に類似の比較例3の積層体は、透明性、耐アルコール性、耐水性、耐油性に劣ることが明確である。引用文献2に類似した比較例4の積層体は、耐アルコール性に劣ることが明確である。引用文献3に類似の比較例5の積層体は、耐アルコール性、耐油性に劣ることが明確である。
【要約】
【課題】本発明は、耐水性はもちろん、残留溶剤が少なく、ブロッキングしにくく、耐地汚れ性、透明性、発色濃度、密着性、耐アルコール性、発色前後での耐スクラッチ性、耐ヘッド性、耐摩擦性、耐油性を有する積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】プラスチックフィルム基材の一方の面に、ロイコ染料と、一般式(1)~(4)で表される化合物のうち少なくとも一つの顕色剤と、水性樹脂と、アルコールと、水とを含む感熱発色剤からなる感熱発色層と、前記感熱発色層上に、水溶性樹脂と水とを含む水性コート剤からなる水性コート層と、前記水性コート層上に、熱可塑性樹脂と、ポリイソシアネートと、有機溶剤とを含むオーバーコート剤からなるオーバーコート層とを有する感熱記録積層体。
【選択図】なし