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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】塗工装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 13/02 20060101AFI20241010BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20241010BHJP
   B05C 5/02 20060101ALN20241010BHJP
【FI】
B05C13/02
B05D1/26 Z
B05C5/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024007559
(22)【出願日】2024-01-22
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】福井 慎也
(72)【発明者】
【氏名】岩成 賢治
(72)【発明者】
【氏名】福田 恒平
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-290032(JP,A)
【文献】特開2007-052138(JP,A)
【文献】特開2001-252610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 7/00-7/32
B05B 9/00-9/08
B05B 13/00-13/06
B05B 15/00-15/80
B05B 17/00-17/08
B05C 1/00-21/00
B05D 1/26
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置される基板載置部と、前記基板の周囲を取り囲む囲み部材が載置される周囲載置部と、を有するステージと、
前記基板の表面の全部および前記囲み部材の表面の内側部に塗工液を塗布して塗工膜を形成する塗工部と、を備え、
前記基板載置部は、前記基板の裏面を吸着する基板吸着部を有し、
前記周囲載置部は、前記囲み部材の裏面を吸着する周囲吸着部を有し、
前記基板と前記囲み部材との間に形成される隙間には、大気と連通した大気連通部が配設される、塗工装置。
【請求項2】
前記囲み部材は、前記基板を収容する開口部を有する吸着板であり、
前記大気連通部は、前記開口部につながるように前記吸着板の裏面に形成された裏面凹部と、前記裏面凹部と大気との間を接続するように前記吸着板に形成された大気接続部と、を有する、請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記大気接続部は、前記吸着板を厚み方向に貫通した開口穴である、請求項2に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記裏面凹部は、前記開口部を囲むように形成された裏面溝を有する、請求項2に記載の塗工装置。
【請求項5】
前記囲み部材は、複数のダミー基板が配設されることによって構成され、
前記囲み部材は、前記大気連通部として、前記周囲載置部と前記基板載置部とを区切るように形成されたステージ凹部を有し、
前記ステージ凹部は大気と連通している、請求項1に記載の塗工装置。
【請求項6】
前記周囲載置部は、前記複数のダミー基板のそれぞれに対応するように構成される、請求項5に記載の塗工装置。
【請求項7】
前記隙間は、前記基板と前記囲み部材とが隣接するように構成される、請求項1に記載の塗工装置。
【請求項8】
前記囲み部材は、前記基板と同じ厚みを有する、請求項1に記載の塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステージに吸着保持された基板に塗工を行う塗工装置に関し、特に、基板よりも大きめサイズの塗工膜を形成する塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基板の側面にダミー基板を密着させ、基板およびダミー基板に跨がるように塗工液を塗布することによって、基板端部での膜厚変化を抑制して均一な膜厚の塗工膜を形成することを開示している。
【0003】
基板の側面とダミー基板の側面とを互いに密着させたとしても、両者の側面の間には、微小な隙間が形成されてしまう。特許文献1は、基板およびダミー基板をステージに対してどのような方法で保持するかについて具体的に開示していないが、例えば、特許文献2は、吸着によって基板を保持することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-106203号公報
【文献】特開2016-197620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸着による保持方法では、基板と、基板を取り囲む囲み部材との間に形成された微小な隙間に対して、減圧による吸着力が作用すると、塗工液が隙間に入り込んでしまう。そして、隙間に入り込んだ塗工液は、基板の裏面やステージの載置面に回り込み、基板の裏面やステージの載置面を汚してしまうという問題を有する。
【0006】
そこで、この発明の課題は、減圧による吸着力によって、基板と囲み部材との間に形成される隙間に塗工液が入り込むことを防止する塗工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の一態様に係る塗工装置は、
基板が載置される基板載置部と、前記基板の周囲を取り囲む囲み部材が載置される周囲載置部と、を有するステージと、
前記基板の表面の全部および前記囲み部材の表面の内側部に塗工液を塗布して塗工膜を形成する塗工部と、を備え、
前記基板載置部は、前記基板の裏面を吸着する基板吸着部を有し、
前記周囲載置部は、前記囲み部材の裏面を吸着する周囲吸着部を有し、
前記基板の側面と前記囲み部材の側面との間に形成される隙間には、大気と連通した大気連通部が配設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、基板と囲み部材との間に形成される隙間に対して、減圧による吸着力が作用しても、隙間が大気連通部によって大気開放されているので、塗工液が隙間に入り込むことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る塗工装置を模式的に説明する図である。
図2図1に示した塗工装置を用いた塗工を説明する平面図である。
図3図2のIII-III線で切断した断面図である。
図4図3において破線で囲まれた部分の要部拡大図である。
図5図3に示した吸着板の平面図である。
図6図3に示した吸着板の下面図である。
図7図5に示した吸着板をVII-VII線で切断した断面図である。
図8】実施の形態2に係る塗工装置を用いた塗工を説明する平面図である。
図9図8のIX-IX線で切断した断面図である。
図10】実施の形態2に係る塗工装置のステージの平面図である。
図11図10のXI-XI線で切断した断面図である。
図12】実施の形態3に係る塗工装置を用いた塗工を説明する平面図である。
図13図12のXIII-XIII線で切断した断面図である。
図14】実施の形態3に係る塗工装置のステージの平面図である。
図15図14のXV-XV線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、この発明に係る塗工装置1の実施の形態を説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向あるいは位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は、図面を参照した本開示の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本開示の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
〔塗工装置の全体構成〕
図1は、実施の形態1に係る塗工装置1を模式的に説明する図である。図1を参照しながら、塗工装置1の全体構成を説明する。
【0012】
図1に示すように、塗工装置1は、スリットダイ7と、ステージ10と、吸着板20と、を備える。ステージ10は、図示しない真空排気装置に接続される。ステージ10の載置面11には、吸着板20および基板30が配設される。囲み部材として働く吸着板20の詳細は後述する。ステージ10の上方には、スリットダイ7が離間して配設される。
【0013】
ステージ10は、ステージ10の厚み方向に貫通しているとともに基板吸着部12および周囲吸着部13を有する。基板吸着部12および周囲吸着部13は、それぞれ、ステージ10の載置面11に載置された基板30および吸着板20を吸着する吸着孔である。
【0014】
スリットダイ7には、図示しない塗工液供給装置に接続されて、塗工液供給装置に貯留された塗工液Pがスリットダイ7に供給される。塗工液Pは、水状の液体、ペースト状の高粘度液状物、高濃度のスラリー物などのような、流動性を有する液状物の総称である。スリットダイ7は、第1ダイ7aと第2ダイ7bとシム板7cとを有する。シム板7cは、第1ダイ7aおよび第2ダイ7bによって挟持されるように構成される。第1ダイ7aは、その内部空間に貯留部7dを有し、塗工液供給装置から供給された塗工液Pは、貯留部7dに貯留される。貯留部7dに貯留された塗工液Pは、シム板7cの供給路7fを通じて排出される。スリットダイ7から排出された塗工液Pは、基板30の表面の全部および吸着板20の表面の内側部に塗工される。
【0015】
〔実施の形態1〕
図5から図7を参照しながら、実施の形態1に係る、吸着板20を用いる塗工装置1について説明する。図5は、図3に示した吸着板20の平面図である。図6は、図3に示した吸着板20の下面図である。図7は、図5に示した吸着板20をVII-VII線で切断した断面図である。
【0016】
図5から図7に示すように、基板30の囲み部材として働く吸着板20は、基板30の周囲を取り囲むように構成された開口部21を有する。例えば、基板30が平面視で矩形状を有する場合、開口部21は、基板30を収容できるように基板30よりも少し大きめに構成された、平面視で矩形状の開口を有する。開口部21を画定する内側側面22と基板30の側面33(図4を参照)との間には、微小な隙間26が形成されている。微小な隙間26は、基板30の側面33と開口部21の内側側面22とが隣接するように構成される。これにより、塗工液Pが自重によって隙間26に流入することを防止できる。
【0017】
吸着板20は、平坦な板状体からなり、塗工表面21aおよび塗工裏面21bを有する。塗工表面21aは、吸着板20の上面であって塗工によって塗工膜40が形成される面である。塗工裏面21bは、吸着板20の下面であってステージ10の載置面11に当接する面である。吸着板20は、基板30と同じ厚みを有する。吸着板20の塗工表面21aは、開口部21に収容された基板30の表面31と面一であるように構成されている。これにより、塗工膜40の厚みの均一化が容易になる。
【0018】
吸着板20は、隙間26および大気を連通する大気連通部29を有する。大気連通部29は、開口穴23と、連絡溝24,裏面溝25と、を有する。開口穴23は、連絡溝24,裏面溝25と大気との間を接続するように吸着板20に形成されている。開口穴23は、吸着板20の厚み方向を貫通しており、例えば、上下左右の4箇所に離間して設けられる。
【0019】
裏面凹部として働く連絡溝24および裏面溝25が、吸着板20の塗工裏面21bに形成されており、開口部21および開口穴23をつなぐように構成されている。裏面溝25は、開口部21および連絡溝24をつなぐとともに開口部21を囲むように凹部で形成される。これにより、開口部21を介して隙間26との連通を確実に行うことができ、隙間26での圧力を大気圧と同等にできる。裏面溝25は、例えば、ロの字形状を有する。連絡溝24は、裏面溝25および開口穴23をつなぐように、平面視で上下左右の方向に延在する溝である。
【0020】
図2から図4を参照しながら、実施の形態1に係る吸着板20を用いた塗工について説明する。図2は、図1に示した塗工装置1を用いた塗工を説明する平面図である。図3は、図2のIII-III線で切断した断面図である。図4は、図3において破線で囲まれた部分の要部拡大図である。
【0021】
図2から図4に示すように、吸着板20および基板30は、ステージ10の載置面11の上に載置され、基板30は、吸着板20の開口部21に収容されるとともに吸着板20で取り囲まれるように構成されている。基板30の側面33と開口部21の内側側面22とは、微小な隙間26を介して隣接している。
【0022】
ステージ10は、基板載置部16および周囲載置部17を有する。基板載置部16には、基板30が載置され、基板載置部16に配設される基板吸着部12によって、基板30が吸着保持される。周囲載置部17には、吸着板20が載置され、周囲載置部17に配設される周囲吸着部13によって、吸着板20が吸着保持される。
【0023】
ステージ10の載置面11に吸着保持された吸着板20の塗工表面21aおよび基板30の表面31に対して、基板30よりも大きめのサイズで塗工液Pが塗工される。そして、基板30の表面31の全部および吸着板20の塗工表面21aの内側部において、塗工膜40が形成される。塗工膜40は、連続的につながっている、基板塗工部41と隙間塗工部43と周囲塗工部42とを有する。基板塗工部41は、基板30の表面31の全面の上に形成されている。周囲塗工部42は、塗工表面21aにおいて、内側側面22から開口穴23の手前まで延在するように形成されている。隙間塗工部43は、基板塗工部41および周囲塗工部42の間に位置して、隙間26の上に形成されている。
【0024】
図4に示すように、基板吸着部12および/または周囲吸着部13が、隙間26の近傍に位置しても、隙間26が大気連通部29によって大気開放されている。これにより、基板吸着部12および/または周囲吸着部13の吸着力が、隙間26に作用せず、隙間塗工部43が隙間26に入り込むことを防止できる。
【0025】
したがって、基板30と吸着板20との間に形成される隙間26に対して、減圧による吸着力が作用しても、隙間26が大気連通部29によって大気開放されているので、塗工液Pが隙間26に入り込むことを防止できる。
【0026】
〔実施の形態2〕
図8から図11を参照しながら、実施の形態2に係る、横ダミー基板61,縦ダミー基板62を用いる塗工装置1について説明する。図8は、実施の形態2に係る塗工装置1を用いた塗工を説明する平面図である。図9は、図8のIX-IX線で切断した断面図である。図10は、実施の形態2に係る塗工装置1のステージ10の平面図である。図11は、図10のXI-XI線で切断した断面図である。
【0027】
図10および図11に示すように、塗工装置1のステージ10は、大気連通部として働くステージ凹部18を有する。ステージ凹部18は、基板載置部16と周囲載置部17とを区切るように形成されるとともに大気と連通している。例えば、ステージ凹部18は、載置面11に対して下方に凹んでいる矩形状の断面を有する溝である。
【0028】
図10に示したステージ10は、中央部に位置して横方向に延在する基板載置部16と、基板載置部16を取り囲むように配設された周囲載置部17と、を有する。周囲載置部17は、複数の横ダミー基板61,縦ダミー基板62のそれぞれに対応するように構成される。例えば、周囲載置部17は、横方向に延在する2つの横長部と、縦方向に延在する2つの縦長部と、矩形である4つのコーナー部と、を有する。例えば、基板載置部16は4つの基板吸着部12を有し、周囲載置部17の2つの横長部は4つの周囲吸着部13を有し、周囲載置部17の2つの縦長部および4つのコーナー部は1つの周囲吸着部13を有する。これにより、複数のダミー基板61,62の吸着保持が容易にかつ確実になる。
【0029】
図8および図9に示すように、基板載置部16には、横長の基板30が載置され、基板載置部16に配設される基板吸着部12によって、基板30が吸着保持される。周囲載置部17には、基板30の囲み部材として働く横ダミー基板61,縦ダミー基板62が載置され、周囲載置部17に配設される周囲吸着部13によって、複数のダミー基板61,62が吸着保持される。
【0030】
基板30を取り囲むように、上部および下部の横ダミー基板61は、図8におけるステージ10の上部および下部に配設され、上部および下部の横ダミー基板61の間に2つの縦ダミー基板62が配設される。したがって、横ダミー基板61および縦ダミー基板62は、基板30の周囲を取り囲む囲み部材として働く。なお、横ダミー基板61および縦ダミー基板62は、基板30と同じ厚みを有し、横ダミー基板61および縦ダミー基板62の表面は、基板30の表面31と面一であるように構成されている。これにより、塗工膜40の厚みの均一化が容易になる。
【0031】
基板30の側面および横ダミー基板61および縦ダミー基板62の側面と、横ダミー基板61の側面および縦ダミー基板62の側面とは、それぞれ、互いに密着して挟持されるように、アライメント部51によってアライメントされている。なお、これらの側面のそれぞれの間には、極めて微小な隙間26が形成されている。アライメントされた基板30、横ダミー基板61および縦ダミー基板62は、ステージ10の載置面11の上で吸着保持される。
【0032】
実施の形態1と同様に、スリットダイ7を用いて、塗工膜40は、基板30よりも大きめのサイズで形成され、すなわち、基板30の表面の全部と、横ダミー基板61および縦ダミー基板62の表面の内側部とに形成される。
【0033】
したがって、基板30と横ダミー基板61および縦ダミー基板62との間に形成される隙間26に対して、減圧による吸着力が作用しても、隙間26が大気連通部として働くステージ凹部18によって大気開放されているので、塗工液Pが隙間26に入り込むことを防止できる。また、複数の横ダミー基板61,縦ダミー基板62の配置を適宜に変更することによって、様々な基板30の塗工に柔軟に対応できる。
【0034】
そして、塗工膜40が形成された基板30、横ダミー基板61および縦ダミー基板62は、リフター55を用いて、ステージ10から持ち上げられたあと、横方向に移動されて、図示しない乾燥装置に搬送される。
【0035】
〔実施の形態3〕
図12から図15を参照しながら、実施の形態3に係る、横ダミー基板61,縦ダミー基板62を用いる塗工装置1について説明する。図12は、実施の形態3に係る塗工装置1を用いた塗工を説明する平面図である。図13は、図12のXIII-XIII線で切断した断面図である。図14は、実施の形態3に係る塗工装置1のステージ10の平面図である。図15は、図14のXV-XV線で切断した断面図である。
【0036】
実施の形態3では、一度の塗工で、同じサイズを有する一群の複数の基板30に塗工膜40を形成することを特徴とする。上述した実施の形態2に係る塗工装置1との相違点を中心に説明する。
【0037】
図14に示したステージ10は、中央部に位置して横方向に並んで配置される複数の基板載置部16と、基板載置部16を取り囲むように配設された周囲載置部17と、を有する。例えば、4つの基板載置部16が横方向に並んで配設され、基板載置部16のそれぞれは基板吸着部12を有する。
【0038】
図12および図13に示すように、4つの基板載置部16のそれぞれには、基板30が載置され、各基板載置部16に配設される基板吸着部12によって、4つの基板30のそれぞれが吸着保持される。
【0039】
横方向に並んで配置される一群の4つの基板30を取り囲むように、上部および下部の横ダミー基板61は、図12におけるステージ10の上部および下部に配設され、上部および下部の横ダミー基板61の間および4つの基板30の左部および右部に2つの縦ダミー基板62が配設される。したがって、横ダミー基板61および縦ダミー基板62は、一群の4つの基板30の周囲を取り囲む囲み部材として働く。
【0040】
4つの基板30同士の側面と、4つの基板30の側面および横ダミー基板61の側面と、4つの基板30の側面および縦ダミー基板62の側面と、横ダミー基板61の側面および縦ダミー基板62の側面とは、それぞれ、互いに密着して挟持されるように、アライメント部51によってアライメントされている。なお、これらの側面の間には、極めて微小な隙間26が形成されている。アライメントされた基板30、横ダミー基板61および縦ダミー基板62は、ステージ10の載置面11の上で基板吸着部12、周囲吸着部13により吸着保持される。
【0041】
実施の形態1と同様に、スリットダイ7を用いて、塗工膜40は、一群の4つの基板30のサイズよりも大きめのサイズで形成され、すなわち、一群の4つの基板30の表面の全部と、横ダミー基板61および縦ダミー基板62の表面の内側部とに形成される。
【0042】
したがって、基板30同士の間に形成される隙間26、および、基板30と横ダミー基板61,縦ダミー基板62との間に形成される隙間26に対して、減圧による吸着力が作用しても、隙間26が大気連通部として働くステージ凹部18によって大気開放されているので、塗工液Pが隙間26に入り込むことを防止できる。
【0043】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0044】
上記実施の形態1では、大気連通部29が吸着板20の厚み方向に貫通する開口穴23を有する態様について説明したが、連絡溝24が吸着板20の外側側面まで延在することによって大気に連通する態様であってもよい。
【0045】
上記実施の形態2および実施の形態3では、ステージ凹部18が矩形状の断面を有する溝である態様を例示したが、ステージ凹部18は、半円状や三日月状の断面を有する溝である態様であってもよい。
【0046】
上記実施の形態では、基板30が平面視で矩形状を有する態様について説明したが、基板30が平面視で円形状や楕円形状や多角形状を有する態様であってもよい。
【0047】
この発明および実施形態をまとめると、次のようになる。
【0048】
この発明の第1態様に係る塗工装置1は、
基板30が載置される基板載置部16と、前記基板30の周囲を取り囲む囲み部材20;61,62が載置される周囲載置部17と、を有するステージ10と、
前記基板30の表面31の全部および前記囲み部材20;61,62の表面の内側部に塗工液Pを塗布して塗工膜40を形成する塗工部7と、を備え、
前記基板載置部16は、前記基板30の裏面32を吸着する基板吸着部12を有し、
前記周囲載置部17は、前記囲み部材20;61,62の裏面を吸着する周囲吸着部13を有し、
前記基板30と前記囲み部材20;61,62との間に形成される隙間26には、大気と連通した大気連通部29が配設されることを特徴とする。
【0049】
上記態様によれば、基板30と囲み部材20;61,62との間に形成される隙間26に対して、減圧による吸着力が作用しても、隙間26が大気連通部29によって大気開放されているので、塗工液Pが隙間26に入り込むことを防止できる。
【0050】
また、第2態様に係る塗工装置1は、上記第1態様において、
前記囲み部材20は、前記基板30を収容する開口部21を有する吸着板20であり、
前記大気連通部29は、前記開口部21につながるように前記吸着板20の裏面に形成された裏面凹部24,25と、前記裏面凹部24,25と大気との間を接続するように前記吸着板20に形成された大気接続部23と、を有する。
【0051】
上記態様によれば、吸着板20の開口部21の形状を適宜に変更することによって、様々な基板30の塗工に柔軟に対応できる。
【0052】
また、第3態様に係る塗工装置1は、上記第2態様において、
前記大気接続部23は、前記吸着板20を厚み方向に貫通した開口穴23である。
【0053】
上記態様によれば、大気接続部23の形成が容易になる。
【0054】
また、第4態様に係る塗工装置1は、上記第2態様において、
前記裏面凹部25は、前記開口部21を囲むように形成された裏面溝25を有する。
【0055】
上記態様によれば、開口部21を介して隙間26との連通を確実に行うことができる。
【0056】
また、第5態様に係る塗工装置1は、上記第1態様において、
前記囲み部材61,62は、複数の横ダミー基板61,縦ダミー基板62が配設されることによって構成され、
前記囲み部材61,62は、前記大気連通部29として、前記周囲載置部17と前記基板載置部16とを区切るように形成されたステージ凹部18を有し、
前記ステージ凹部18は大気と連通している。
【0057】
上記態様によれば、複数の横ダミー基板61,縦ダミー基板62の配置を適宜に変更することによって、様々な基板30の塗工に柔軟に対応できる。
【0058】
また、第6態様に係る塗工装置1は、上記第5態様において、
前記周囲載置部17は、前記複数の横ダミー基板61,縦ダミー基板62のそれぞれに対応するように構成される。
【0059】
上記態様によれば、複数の横ダミー基板61,縦ダミー基板62の吸着保持が容易にかつ確実になる。
【0060】
また、第7態様に係る塗工装置1は、上記第1態様において、
前記隙間26は、前記基板30と前記囲み部材20;61,62とが隣接するように構成される。
【0061】
上記態様によれば、塗工液Pが自重によって隙間26に流入することを防止できる。
【0062】
また、第8態様に係る塗工装置1は、上記第1態様において、
前記囲み部材20;61,62は、前記基板30と同じ厚みを有する。
【0063】
上記態様によれば、塗工膜40の厚みの均一化が容易になる。
【符号の説明】
【0064】
1…塗工装置
7…スリットダイ(塗工部)
7a…第1ダイ
7b…第2ダイ
7c…シム板
7d…貯留部
7f…供給路
10…ステージ
11…載置面
12…基板吸着部
13…周囲吸着部
16…基板載置部
17…周囲載置部
18…ステージ凹部(大気連通部)
20…吸着板(囲み部材)
21…開口部
21a…塗工表面
21b…塗工裏面
22…内側側面(側面)
23…開口穴(大気接続部)
24…連絡溝(裏面凹部)
25…裏面溝(裏面凹部)
26…隙間
29…大気連通部
30…基板
31…表面
32…裏面
33…側面
40…塗工膜
41…基板塗工部
42…周囲塗工部
43…隙間塗工部
51…アライメント部
55…リフター
61…横ダミー基板(ダミー基板、囲み部材)
62…縦ダミー基板(ダミー基板、囲み部材)
P…塗工液
【要約】
【課題】減圧による吸着力によって、基板と囲み部材との間に形成される隙間に塗工液が入り込むことを防止する塗工装置を提供する。
【解決手段】基板30が載置される基板載置部16と、基板30の周囲を取り囲む囲み部材20:61,62が載置される周囲載置部17と、を有するステージ10と、基板の表面の全部および囲み部材の表面の内側部に塗工液Pを塗布して塗工膜40を形成する塗工部7と、を備え、基板載置部は、基板の裏面を吸着する基板吸着部12を有し、周囲載置部は、囲み部材の裏面を吸着する周囲吸着部13を有し、基板と囲み部材との間に形成される隙間26には、大気と連通した大気連通部18が配設される。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
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図10
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図15