(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】トリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法
(51)【国際特許分類】
A45D 26/00 20060101AFI20241010BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20241010BHJP
A61N 1/30 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A45D26/00 Z
A45D34/04 540
A61N1/30
(21)【出願番号】P 2024078252
(22)【出願日】2024-05-13
【審査請求日】2024-05-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000105707
【氏名又は名称】TBCグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】根岸 海
(72)【発明者】
【氏名】大川 哲司
(72)【発明者】
【氏名】丸山 要
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0245619(US,A1)
【文献】特許第5841254(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/230529(WO,A1)
【文献】特開2006-149616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 26/00,34/04,40/26
A61H 15/00
A61N 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電ローラと、
前記通電ローラにローションを塗布する塗布具と、
前記通電ローラの進行方向の前後に送風する送風部と、
ローション容器を固定する容器固定部と、を備え、
前記塗布具は、ローション供給用ロッド及び着脱可能なローション容器を含み、
前記容器固定部は、前記ローション容器の容器本体底部を嵌合する嵌合部を備え、
前記嵌合部を備える前記容器固定部の構造体に、前記ローション容器の側面を沿うように送風を行う送風口と、前記送風部における送風機構からの風を前記送風口に送るように連通させた送風路を形成し、
前記送風部による風の流れは、前記ローション容器に沿って前記通電ローラ側に向かうことを特徴とする、トリートメント用ローション塗布装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のトリートメント用ローション塗布装置を用いることを特徴とする、ローション塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法に関する。特に、本発明は、皮膚のトリートメントを行うためのトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定箇所に対して所定のローションを塗布する技術は、様々な分野で利用されるものである。このような技術としては、例えば、工業的な材料表面に対し、表面処理用のローションを塗布する技術のほか、人体における皮膚表面に対し、皮膚を健康的に維持する(肌を美しく保つ)ためのローションを塗布する技術が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、脱毛処理後の被施術者の皮膚の回復処理として、棒状の外径形状を有する把持部と、把持部から突出するアーム部に取り付けられるとともに被施術者の皮膚に転接しながらアフタートリートメント用の電流を流すアフタートリートメント用ローラ部と、被施術者の皮膚にアフタートリートメント用エアー及びローションを吹き付けるアフタートリートメント用エアー吹き付け部と、を備えるアフタートリートメント用ローラが記載されている。併せて、特許文献1には、このアフタートリートメント用ローラにより、脱毛処理によって生じた皮膚表面の発熱状態を鎮静し、皮膚の回復を図ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、脱毛処理により発熱した皮膚表面に対し、送風とローションの噴霧を行う場合、送風により塗布したローションの気化が促進し、皮膚の冷却を可能にする一方で、噴霧したローション自体が所定箇所(皮膚)外に飛散するという問題が生じる。
ここで、噴霧したローションの飛散を抑制するために、送風における風量抑制やローションの噴霧ノズル径の短径化等を行った場合、皮膚の発熱状態を十分に鎮静化させることが困難となる。
すなわち、従来においては、所定箇所に対してローション塗布と送風とを略同時に行う装置及び方法に関し、ローションのロスを抑制することと十分な風量を維持することを両立させることが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、所定箇所に対してローション塗布と送風とを略同時に行う装置及び方法として、特に皮膚へのトリートメントに適用され、ローションのロスを抑制することと十分な風量を維持することを両立させることのできるトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、トリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法として、所定箇所に対するローションの塗布を噴霧により行うのではなく、ローションが供給される状態にあるローラの回転により行う、いわゆるロールオンタイプとすることで、ローションのロスの抑制及び十分な風量維持の両立が可能になることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下を特徴とするトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法である。
【0008】
上記課題を解決するための本発明のトリートメント用ローション塗布装置は、ローラと、ローラにローションを塗布する塗布具と、送風部と、を備え、前記塗布具は、ロールオンタイプであることを特徴とする。
本発明によれば、所定箇所に対してローション塗布と送風とを略同時に行う装置及び方法として、特に皮膚へのトリートメントに適用され、ローションのロスを抑制することと十分な風量を維持することを両立させることのできるトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法を提供することができる。
【0009】
また、本発明のトリートメント用ローション塗布装置の一実施態様としては、通電ローラと、通電ローラにローションを塗布する塗布具と、通電ローラの進行方向の前後に送風する送風部と、を備え、塗布具は、ローション供給用ロッド及び着脱可能なローション容器を含み、送風部による風の流れは、ローション容器に沿って通電ローラ側に向かうことを特徴とする。
本発明によれば、所定箇所に対してローション塗布と送風とを略同時に行うローション塗布装置として、ローション容器とローション供給用ロッドを介して通電ローラにローションを塗布(供給)し、この状態で所定箇所(例えば、皮膚等)に対するローション塗布と送風を行うことが可能となる。これにより、ローションの噴霧と送風を同時に行うことに比べ、所定箇所外にローションが飛散することを抑制し、ローションのロスの抑制が可能になる。また、ローション容器に沿って通電ローラの進行方向前後に送風を行うことで、装置構造に起因する風量低下が抑制され、風量の維持・増加が容易となる。
また、本発明のトリートメント用ローション塗布装置は、特に皮膚へのトリートメントに好適に使用されるものであり、より具体的には脱毛処理等により局所的に熱を有することになる皮膚への事前処置・事後処置に好適に用いられる。
【0010】
また、本発明のトリートメント用ローション塗布装置の一実施態様としては、ローション容器を固定する容器固定部を備え、容器固定部と送風部が一体であることを特徴とする。
本発明によれば、ローション容器の着脱と併せ、ローション容器の固定を容易に行うことができるとともに、送風部による風の流れをローション容器に沿わせることが容易になる。
【0011】
上記課題を解決するための本発明のローション塗布方法は、上記トリートメント用ローション塗布装置を用いるという特徴を有する。
本発明によれば、上記トリートメント用ローション塗布装置を用いてローション塗布を行うことで、ローションのロスを抑制することと十分な風量を維持することを両立させた状態でのローション塗布を行うことが可能となる。
また、本発明のローション塗布方法は、特に皮膚へのトリートメントに好適に使用されるものであり、より具体的には脱毛処理等により局所的に熱を有することになる皮膚への事前処置・事後処置に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定箇所に対してローション塗布と送風とを略同時に行う装置及び方法として、特に皮膚へのトリートメントに適用され、ローションのロスを抑制することと十分な風量を維持することを両立させることのできるトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施態様に係るトリートメント用ローション塗布装置の概略説明図(正面図)である。
【
図2】本発明の実施態様に係るトリートメント用ローション塗布装置において、ローラ及びローション容器を取り外した状態でローラ側から見たときの概略説明図である(
図1の上面図)。
【
図3】本発明の実施態様における送風部及び容器固定部の構造の一例を示す概略説明図(断面図)である。
【
図4】本発明の実施態様に係るトリートメント用ローション塗布装置を、所定箇所(皮膚)に対して適用した場合の操作に係る概略説明図である。
【
図5】本発明の実施態様に係るトリートメント用ローション塗布装置を使用した場合(実施例)とローション噴霧によるローション塗布装置を使用した場合(比較例)において、使用開始から約3分後における温度を示すサーモグラフィ画像である。
【
図6】本発明の実施態様に係るトリートメント用ローション塗布装置を使用した場合(実施例)とローション噴霧によるローション塗布装置を使用した場合(比較例)において、被施術者の腕における表面温度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法の実施態様について、詳細に説明する。
なお、実施態様として記載するトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法については、本発明に係るトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0015】
本発明に係るトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法は、所定箇所に対してローション塗布と送風とを略同時に行う装置及び方法に関するものである。
また、本発明に係るトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法は、特に皮膚へのトリートメントに好適に使用されるものであり、より具体的には脱毛処理等により局所的に熱を有することになる皮膚への事前処置・事後処置に好適に使用されるものである。換言すれば、本発明に係るトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法は、所定の処理が施されることに起因してトリートメントが必要となる皮膚に対し、好適に使用される。
【0016】
ここで、皮膚に対して施される処理の一つである脱毛処理について説明する。
体毛を除去する脱毛処理は、近年の美容に対する意識の広がりなどから、性別を問わず、また高年層においても需要が高まっている。また、脱毛処理を行う箇所についても、腕、脚、脇といった箇所から、顔やデリケートゾーンといった箇所にまで広がっている。したがって、皮膚が薄い(あるいは肌の弱い)箇所や硬質な体毛に対応する必要性が高まっている。
【0017】
脱毛処理としては、剃刀、シェーバー、除毛剤、ワックスなどを用い、皮膚表面の体毛を除去する一時的な脱毛(除毛)のほか、毛根組織の破壊による永久脱毛と呼ばれるものが知られている。
【0018】
特に、永久脱毛の一つである電気脱毛処理(美容電気脱毛処理)については、例えば、毛穴に電極となるプローブを差し込み、高周波電流及び又は直流電流をプローブを通じて毛穴内に通電することにより、毛根部の加熱及び/又はアルカリ変性させることによる脱毛処理を行うものが知られている。電気脱毛処理は、脱毛部位を細かく設定することが可能であり、被施術者にとっては、所定回数の処理を行った後はそれ以降の処理を不要とする「終わりがある脱毛」であるという利点がある。
【0019】
ここで、この種の電気脱毛処理においては、処理後に毛穴の内部において高周波発熱による熱傷又はアルカリ変性によるアルカリによって、一時的にいわゆる火傷に似た状態が生じて皮膚の赤身や腫れとなって残ることがある。このときの皮膚の状態は、皮膚全体が損傷するような一般的な火傷とは異なり、皮膚表面、すなわち表皮部に点在する毛穴内及び皮膚表面に生じた部分的な発熱状態であり、当該発熱状態を鎮静することで、皮膚の回復に係る事後処置(トリートメント)を行うことが望ましい。
【0020】
また、上述のとおり、脱毛処理全般において、処理を施す対象(肌質、体毛の質など)が広範となっているため、脱毛処理後だけではなく、脱毛処理前においても脱毛効率向上や皮膚の保護を目的とした事前処置(トリートメント)を行うことが望ましい。
【0021】
すなわち、本発明に係るトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法は、局所的発熱を伴う処理である電気脱毛処理が行われる皮膚に対する事前処置及び/又は事後処置に対して特に好適に利用されるものである。
【0022】
以下、本発明に係るトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法の実施態様については、主に、脱毛処理の被施術者に対する脱毛処理前後のトリートメントに適用されるものとして説明を行うが、これに限定されるものではない。
【0023】
[トリートメント用ローション塗布装置]
本発明の実施態様に係るトリートメント用ローション塗布装置1(以下、単に「ローション塗布装置1」とも呼ぶ)は、所定箇所である皮膚に対して、ローション塗布と送風とを略同時に行い、脱毛処理前後における皮膚のトリートメントを行うための装置である。
【0024】
図1は、本実施態様におけるローション塗布装置1の構造例を示す概略説明図(正面図)である。
本実施態様におけるローション塗布装置1としては、
図1に示すように、ローラ10と、ローラ10にローションSを塗布する塗布具20と、送風部30と、を備え、塗布具20としては、ローション供給用ロッド21とローション容器22からなるものが挙げられる。また、ローション塗布装置1としては、塗布具20のうち、ローション容器22を固定する容器固定部40と、把持部50と、アーム部60とを備えるものが挙げられる。
【0025】
本実施態様におけるローション塗布装置1の具体的構造としては、
図1に示すように、筒状の把持部50に、ローション容器22の底部を固定する容器固定部40(容器固定部40A)とアーム部60とを設け、アーム部60の先端に軸Rを介してローラ10を設けるものが挙げられる。また、塗布具20のうち、ローション容器22は、容器固定部40を介し、把持部50の中心軸Cの軸線上に着脱可能となるように固定され、さらに、ローション容器22に挿入されたローション供給用ロッド21と、アーム部60先端側に取り付けられたローラ10との位置関係は、ローション容器22内に収容されたローションSがローション供給用ロッド21を介してローラ10に対して塗布(供給)可能となるように配置されるものが挙げられる。そして、送風部30は、ローラ10の進行方向の前後に送風を行うものであり、ローション容器22に沿ってローラ10側に風の流れを形成するように設けられる。
これにより、本実施態様におけるローション塗布装置1は、施術者(被施術者と同一の場合も含む)が把持部50を持ち、ローラ10を被施術者の皮膚に接触させた状態で往復移動させることで、皮膚に対するローション塗布と送風とを略同時に行い、皮膚のトリートメントを可能とするものとなる。
以下、ローション塗布装置1の各構成について詳細に説明する。
【0026】
<ローラ>
ローラ10は、所定箇所(本実施態様では被施術者の皮膚)と接触し、往復操作に応じ回転駆動するものである。また、ローラ10には、後述する塗布具20からのローションSが塗布され、このローションSはローラ10の回転駆動に伴い、所定箇所における所定領域(所定面積)内に塗布される。
【0027】
ローラ10の形状としては、
図1に示すように、円筒状に成型されたものに限定されず、楕円体状や球体状に成型されたものとしてもよい。なお、ローラ10の形状が円筒状や楕円体状の場合、直線的な往復操作によりローション塗布を簡便に行うことができる。一方、ローラ10の形状を球体状とした場合、ローラ10の移動方向の自由度を増すことができるという効果を奏する。
このとき、ローラ10の回転駆動のための構造については特に限定されないが、例えば、
図1に示すように、後述するアーム部60(アーム部60A)に設けられた軸Rを回転軸とし、この軸Rを挿入ないしは貫通させる孔をローラ10に設けることが挙げられる。また、別の例としては、アーム部60及びローラ10の接触面に互いを嵌合させる嵌合部を設け、この嵌合部をアーム部60及びローラ10の嵌合後に回転駆動が可能となる形状に設計することや、ローラ10が球体状の場合に、ローラ10自体の回転方向が制限されないような機構を用いることなどが挙げられる。
【0028】
また、ローラ10の材質としては、一定の耐久性を有し、またローションSの過度な吸収が生じないものが好ましい。これにより、ローション塗布装置1としての繰り返し使用が可能になるとともに、所定箇所(皮膚など)へのローションSの塗布において、ローラ10を介したローションSの塗布、すなわちロールオンによるローションSの塗布を円滑に行うことが可能となる。
さらに、ローラ10の材質としては、導電性を有することが好ましい。すなわち、本実施態様におけるローラ10は、通電ローラとすることが特に好ましい。これにより、ローラ10を介してローションSを塗布するとともに、皮膚に対して電流を流すことも可能となる。なお、皮膚に対して電流を流すことによる効果に係る詳細については、後述する。
【0029】
本実施態様におけるローラ10の材質の好適な例としては、例えば、導電性高分子樹脂や金属からなるものが挙げられる。特に、本実施態様におけるローラ10の材質として金属を用いる場合、チタンを用いることが好ましい。これにより、ローション塗布装置1の使用に際し、皮膚に対する金属アレルギーの発生を抑制させた状態とすることが可能になる。
【0030】
<塗布具>
塗布具20は、ローラ10にローションSを塗布(供給)するものであり、
図1に示すように、ローション供給用ロッド21とローション容器22とを含むことが挙げられる。
本実施態様におけるローション塗布装置1では、塗布具20を設けることで、所定箇所に対するローションSの塗布に際し、ローションSの噴霧ではなく、ローラ10を介した塗布、いわゆるロールオンによるものとすることができる。これにより、後述する送風部30からの送風によってローションSが所定箇所(あるいはローション塗布を必要とする所定領域)の外に飛散することが抑制され、ローションのロスの抑制が可能となる。
また、本実施態様における塗布具20により、ローション容器22内に収容されたローションSをローラ10の回転駆動に合わせて供給し、そのローションSがそのまま所定箇所に塗布されるものとなるため、ローションSを含浸させたローラ10を用いることに比べ、ローラ10にローションSが保持される時間が短く、ローションSが所定箇所に塗布される前に蒸散・劣化することが少ないという効果も奏する。
【0031】
ローション供給用ロッド21は、ローション容器22に挿入され、ローション容器22内のローションSをローラ10に塗布(供給)するための部材である。
本実施態様におけるローション供給用ロッド21としては、ローション容器22内のローションSを吸い上げ、このローションSをローラ10側に塗布することができるものであればよく、例えば、多孔性材料や繊維材料からなる棒状部材とすることが挙げられる。特に、ローション供給用ロッド21の材質としては、毛細管現象を起こす繊維材料であることが好ましい。これにより、ローションSの吸い上げとローラ10側への塗布において、ローションSの移動方向が一定程度規定される(ローション供給用ロッド21の外周面からローションSの漏出が生じにくい)ため、ローションSの液だれを抑制することができ、より一層ローションのロスの抑制を図ることが可能となる。
【0032】
また、ローション供給用ロッド21の構造としては、ローション容器22に挿入され、ローラ10と接触することのできる形状及び長さを有するものであればよい。なお、本実施態様におけるローション塗布装置1を使用する際、後述するローション容器22は容器本体の底部側よりも開口部側が下となる形で傾斜する。したがって、ローション供給用ロッド21の長さについては、ローション容器22の容器本体底部まで延伸させる必要はなく、少なくともローション容器22内部に進入可能な長さであればよい。
そして、ローション供給用ロッド21の形状としては、棒状(円柱状)部材とすることに限らず、棒状部材の表面に溝を設けるものとしてもよい。この溝が空気孔の役割を果たすことで、ローション供給用ロッド21を介したローションSの移動(ローション容器22からローラ10へのローション供給)を均一化、円滑化することが可能となる。
【0033】
また、ローション供給用ロッド21としては、ローション容器22への挿入を容易とする一方、使用時におけるローション供給用ロッド21の脱落を防ぐことができる形状・材質を選択するものとしてもよい。例えば、ローションSの吸い上げ(吸収)により膨潤する材質を選択することで、ローション供給用ロッド21とローション容器22の開口部との密着性を高めることや、ローション供給用ロッド21の外周を半円や多角形が連なった形(凹凸を有する形)とすることで、ローション容器22への挿入時における抵抗を減らし、かつ脱落しにくいものとすることなどが挙げられる。
【0034】
ローション容器22は、ローションSを収容し、ローション塗布装置1に対して着脱可能に取り付けられる容器である。
本実施態様におけるローション容器22の構造としては、ローションSの収容及びローション供給用ロッド21の挿入が可能なものであれば特に限定されないが、後述する容器固定部40を用いた固定及び着脱を構造的・操作的に簡便にする観点からは、
図1に示すように、直径の異なる円筒を2つ重ね合わせた構造からなるものが好ましい例として挙げられる。なお、本実施態様のローション容器22に係る説明においては、直径の大きい円筒を容器本体、直径の小さい円筒を首部と呼称し、首部側に開口部を設けるものとする。
この場合、ローション容器22の開口部(内周・外周)及び容器本体外周が円状となるため、この円状形状(円周)に合わせてローション供給用ロッド21及び容器固定部40の形状を設計あるいは設定することが挙げられる。
なお、ローション容器22の構造としては、円筒に限らず、首部(開口部)及び容器本体(底部)が多角形からなる筒状部材や、容器本体が球面からなる球体としてもよい。
【0035】
本実施態様におけるローション容器22は、後述する容器固定部40によって固定され、ローション塗布装置1に対する着脱を可能とするものであるが、容器固定部40側の構造・構成による固定のみならず、ローション容器22自体の構造として、ローション塗布装置1に対する固定かつ着脱可能とする機構(部材)を設けるものとしてもよい。例えば、ローション容器22側面に対し、ローション塗布装置1(アーム部60)との嵌合を可能とする嵌合部ないしは係止部を設けるものなどが挙げられる。
【0036】
また、ローション容器22の開口部は、ローション供給用ロッド21の挿入を容易とする一方、使用時におけるローション供給用ロッド21の脱落を防ぐための形状としてもよい。あるいは、ローション容器22の開口部内に、ローション供給用ロッド21の挿入を容易にするとともに、脱落を防ぐための構造体を設けるものとしてもよい。
具体的には、例えば、ローション容器22の開口部内周を半円や多角形が連なった形(凹凸を有する形)とすることや、ローション容器22の開口部内周上に、ローション供給用ロッド21の挿入方向への移動は阻害せず、ローション供給用ロッド21の脱落方向への移動を阻害するための構造体を設けることで、ローション供給用ロッド21をローション容器22へ挿入する際の抵抗を減らし、かつローション容器22からの脱落が生じにくいものとすることが挙げられる。
【0037】
ローション容器22の材質は特に限定されないが、ローションSを収容し、かつローション塗布装置1からの着脱を可能とするために、耐薬品性(耐水性)及び所定の強度を有し、かつ軽量であることが好ましい。より具体的には、高分子樹脂(PE、PP、PETなど)や軽量金属(アルミニウムなど)のほか、金属-樹脂、樹脂-樹脂等の複合材料からなるものとしてもよい。
なお、本実施態様におけるローション容器22は、収容したローションSを使い切った後は、新たなローション容器22に交換するものとしてもよく、取り外した使用済みローション容器22にローションSを供給し、ローション容器22自体は再利用するものとしてもよい。したがって、使用済みローション容器22を廃棄する場合は、安価な材質を用いることが好ましく、使用済みローション容器22の再利用を図る場合は、繰り返し使用に耐えるよう、高い耐薬品性(耐水性)を備え、かつ強度に優れる材質を用いることが好ましい。
【0038】
ローション容器22内に収容されるローションSは、液体であれば、特に制限されず、水のみでもよい。また、ローションSは、所定の成分を含み、所定箇所に対して塗布することで有益な効果を発揮するものとしてもよい。成分は、所望する効果に応じて適宜選択される。
例えば、ローション塗布装置1を適用する所定箇所が皮膚であり、所望する効果が脱毛処理前後における被施術者の負荷軽減及び局所的に熱を有した皮膚の冷却(回復)である場合、ローションSに含有し得る成分例としては、例えば、抗炎症、鎮痛、鎮静作用を有する成分や、抗菌、静菌、除菌、殺菌、消毒作用を有する成分や、麻酔作用を有する成分や、美白作用を有する成分などが挙げられる。
【0039】
その他、ローション塗布装置1を適用する所定箇所が工業的材料であり、所望する効果が工業的材料への機能付加であれば、ローションSの一例としては、表面処理剤、塗装剤(塗料)などが挙げられる。
【0040】
<送風部>
送風部30は、ローラ10の進行方向の前後に送風を行うものである。また、送風部30は、ローション容器22に沿ってローラ10側に風の流れを形成するように設けられるものである。
これにより、所定箇所に対する送風において、ローション塗布装置1の構造に起因する風量低下要因(風の遮断や乱流発生等)の発生を抑止し、十分な風量を維持することが容易になる。
【0041】
送風部30としては、上述した送風要件(送風方向及び形成される風の流れ)を満たすものであれば、具体的な構成については特に限定されない。
例えば、送風部30の一例としては、把持部50やアーム部60に複数の噴射ノズルを取り付け、この噴射ノズルを介し、上述した送風要件を満たすようにファンやエアーチューブのような送風機構からの送風を行うものとすることが挙げられる。
また、送風部30の他の例としては、容器固定部40と一体化し、容器固定部40としての構造体を介し、送風機構からの送風を可能とするものが挙げられる。このとき、
図1に示すように、ローション容器22の容器本体底部側を固定する容器固定部40Aと送風部30の一体化を行うことが特に好ましい。これにより、ローション容器22に沿うような風の流れを容易に形成することが可能となる。
なお、送風部30の具体例については、容器固定部40に係る具体例と併せて説明する。
【0042】
<容器固定部>
容器固定部40は、ローション容器22の固定を行うものであり、併せてローション塗布装置1からのローション容器22の着脱を可能とする機能を備えるものである。
容器固定部40としては、ローション容器22の固定及び着脱が可能な構造を有するものであればよく、例えば、
図1に示すように、ローション容器22の容器本体底部を固定する容器固定部40Aと、ローション容器22の開口部近傍(ローション容器22の首部あるいは容器本体の上部)を固定する容器固定部40Bを備えるものが挙げられる。このとき、容器固定部40Aは、把持部50先端と接合するように配置され、容器固定部40Bは、アーム部60と接合するように配置される。
【0043】
ここで、容器固定部40A及び容器固定部40Bの構造については限定されないが、ローション容器22の安定した固定を可能にするとともに、着脱に係る操作を簡便に行うことができるものが好ましい。
例えば、容器固定部40A及び容器固定部40Bについて、いずれか一方をローション容器22における固定対象箇所(容器本体の底部あるいは首部)の外周全体を覆うように嵌め込む構造体とし、もう一方をローション容器22における固定対象箇所の外周の一部を係止ないしは嵌合させる構造体とすることが挙げられる。特に、ローション容器22の固定に係る安定性の観点からは、容器固定部40Aをローション容器22の容器本体の底部全体を覆うように嵌め込む構造体とし、容器固定部40Bをローション容器22の首部の一部を係止ないしは嵌合する構造体とすることが好ましい。
【0044】
以下、
図2及び
図3に基づき、本実施態様における送風部30及び容器固定部40の構造に係る具体例について説明する。
図2は、本実施態様におけるローション塗布装置1に関し、ローラ10及びローション容器22を取り外した状態でローラ10側から見たときの概略説明図であり、
図1に示したローション塗布装置1の上面図に相当する。
また、
図3は、本実施態様における送風部30及び容器固定部40(容器固定部40A)の構造の一例を示す概略説明図(断面図)である。
【0045】
図2に示すように、本実施態様における送風部30の一例としては、容器固定部40(容器固定部40A)上に設けられた2か所の孔からなる送風口31を備え、この送風口31は、ローラ10の回転軸(軸R)を対称軸とした線対称となるように配置されるものが挙げられる。これにより、送風口31から噴出される風は、ローラ10の上下(ローラ10の進行方向の前後)方向に送られるものとなる。
なお、送風口31を設ける箇所の数は、少なくとも噴出する風をローラ10の上下(ローラ10の進行方向の前後)方向に送ることができるものであればよく、3か所以上設けるものとしてもよい。例えば、ローラ10の形状が円筒状ではなく、球体状である場合、
図2に示した2か所の送風口31に対し、さらに等間隔で2か所追加し、計4か所の送風口31を設けることが挙げられる。これにより、ローラ10の移動方向が直線的でない場合においても、ローラ10の進行方向の前後に対し、送風を行うことが可能となる。
また、送風口31の形状についても、
図2に示すような円状の孔に限定するものではなく、スリット状や楕円状の孔としてもよい。さらに、送風口31としてノズル状の構造体を設け、噴出される風の性状(風圧、風向など)に係る緻密な制御を可能とするものとしてもよい。
【0046】
また、本実施態様における容器固定部40の一例としては、
図2に示すように、ローション容器22の容器本体底部を嵌合する嵌合部41Aを備える容器固定部40Aと、ローション容器22の首部外周の一部を嵌合する嵌合部41Bを備える容器固定部40Bからなるものが挙げられる。なお、嵌合部41A及び嵌合部41Bの具体的構造については特に限定されないが、例えば、嵌合部41Aとしては、ローション容器22の容器本体底部全体が嵌め込まれる凹部構造とすることが挙げられ、嵌合部41Bとしては、ローション容器22の首部外周の一部を挟み込む半円状(Ω状)形状を有する構造とすることが挙げられる。
これにより、容器固定部40Aによるローション容器22の容器本体底部の固定を強固にすることができる。一方、容器固定部40Bにおいては、嵌合部41Bにローション容器22の首部を嵌め込むことで固定されるとともに、ローション容器22を嵌め込む方向とは逆方向に力を加えることで、嵌合部41Bからのローション容器22の取り外しを行うことができるものとなる。すなわち、ローション容器22の安定した固定を可能にするとともに、着脱に係る操作を簡便に行うことが可能となる。
【0047】
そして、容器固定部40Aについては、送風部30と一体化することが好ましい。
図3に示すように、容器固定部40と送風部30を一体化する具体例としては、嵌合部41Aを備える容器固定部40Aの構造体に、ローション容器22の側面を沿うように送風を行う送風口31と、ファンやエアーチューブのような送風機構(以下、「送風機構33」と呼ぶ)からの風を送風口31に送るように連通させた送風路32を形成することが挙げられる。なお、
図3における矢印は風の流れを表すものである。
これにより、ローション塗布装置1全体としての部品点数を削減することができるとともに、送風部30としてローション容器22に沿った風の流れを形成することが容易となる。
【0048】
<把持部>
把持部50は、ローション塗布装置1の使用時において、施術者が把持する箇所となるものである。また、本実施態様における把持部50は、ローション塗布装置1としての使用に当たって必要となる装置・機構を、直接的ないしは間接的に収容するものである。より具体的には、本実施態様における把持部50は、ローラ10(通電ローラ)に対して電流を流す装置や送風部30における送風機構33が、直接的ないしは間接的に収容されるものである。
【0049】
把持部50の形状としては、把持する施術者の負荷が少ない形状であればよく、円筒状が好ましい例として挙げられる。また、把持部50内には、ローション塗布装置1としての使用に当たって必要となる装置・機構(ローラ10(通電ローラ)に対して電流を流す装置や送風部30における送風機構33など)を収容する空間が形成されているものとし、把持部50には、必要に応じて当該空間内の状態確認や収容された装置・機構の部品交換を可能とするための構造(蓋体、窓部など)を備えることが好ましい。
【0050】
把持部50に対し、ローション塗布装置1としての使用に当たって必要となる各種装置・機構を収容する手段については、特に限定されない。
例えば、把持部50内に、電流発生装置を内蔵し、この電流発生装置とローラ10とを導線を介して接続することにより、通電ローラとしての使用を可能にすることが挙げられる。また、ローション塗布装置1外に設けられた電流発生装置と接続された導線を、把持部50を通し、ローラ10と接続することが挙げられる。
なお、把持部50から引き出され、ローラ10と接続される導線は、被覆状態でアーム部60内側に沿わせるように配置するか、アーム部60内部に収容することが好ましい。これにより、ローション塗布装置1を使用する施術者が、誤って導線に触れることを防止することが可能となる。
【0051】
別の例としては、例えば、把持部50内に、送風機構33としてファンのような送風機及び送風機の駆動装置を内蔵し、把持部50内で発生した風を、送風路32及び送風口31を介して送風することが挙げられる。また、送風機構33としてエアーチューブを介した送風を行う装置をローション塗布装置1外に設け、このエアーチューブを把持部50に通し、送風部30(送風路32及び送風口31)を介して送風を行うことが挙げられる。
【0052】
把持部50内に電流発生装置や送風機構33を直接収容する場合、ローション塗布装置1としての小型化が可能であり、持ち運びも容易となるという利点を有する。
一方、把持部50外に設けた電流発生装置や送風機構33の一部について、把持部50を通す場合(間接的な収容を行う場合)、それぞれの装置・機構からの出力を高めることが容易であり、かつ連続的な使用に好適であるという利点を有する。
【0053】
<アーム部>
アーム部60は、把持部50から延伸し、ローラ10を支持するためのものである。より具体的には、アーム部60は、ローラ10の安定した回転駆動が可能となるように支持するためのものである。
また、本実施態様におけるアーム部60は、容器固定部40Bを支持するものである。
【0054】
本実施態様におけるアーム部60としては、
図1に示すように、ローラ10の回転軸となる軸Rを設けたアーム部60Aと、ローラ10の脱落を防ぐとともに、軸Rからのローラ10の着脱を可能とする構造を有するアーム部60Bからなるものが挙げられる。これにより、ローラ10の安定した回転駆動と併せ、ローラ10自体の着脱が可能となり、ローラ10の洗浄・消毒といった作業を容易に行うことができ、複数の被施術者に対するローション塗布に係る作業効率を高めることが可能となる。
【0055】
なお、アーム部60としては、少なくともローラ10の支持が可能であればよいため、軸R自体にローラ10の脱落防止及び着脱が可能となる機構を設け、アーム部60Bに相当する構造を省略するものとしてもよい。このとき、容器固定部40Bは、1つのアーム部60(アーム部60A)のみで支持できる構造として設計するものとする。
【0056】
<その他の構成>
本実施態様におけるローション塗布装置1には、上述した各構成に加え、ローション塗布装置1の使用時において、ローラ10とローション供給用ロッド21の接触状態を適度に維持し、ローラ10に対するローションSの適切な塗布(供給)を容易に継続する機構(以下、「接触状態維持機構」と呼ぶ)を設けることが好ましい。これにより、ローション塗布装置1の使用時において、ローションSの連続塗布を円滑に行うことが可能となり、ローション塗布に係る操作性向上を図ることが可能となる。
【0057】
接触状態維持機構の一例としては、ローション供給用ロッド21が挿入されたローション容器22をローラ10側に押圧するための機構を設けることが挙げられる。より具体的には、容器固定部40Aに弾性体を設け、取り付けられたローション容器22をローラ10側に押圧することや、容器固定部40Aと送風部30とを一体化した構造体において、容器固定部40Aの嵌合部41Aの一部に送風路32と連通する孔を設け、送風機構33からの送風によって生じる風圧を利用し、ローション容器22をローラ10側に押圧すること等が挙げられる。
【0058】
また、接触状態維持機構の別の例としては、新たな構成を設けるのではなく、上述した各構成に係る設計により、ローラ10とローション供給用ロッド21の接触状態を適度に維持することが挙げられる。
より具体的には、ローラ10と回転軸である軸Rとの間に隙間を設ける(遊びを持たせる)ことや、軸Rとアーム部60(アーム部60A)との取付け部において軸Rの移動を可能とする(遊びを持たせる)こと等が挙げられる。これにより、所定箇所に対してローラ10を押し当てたときに、所定箇所からローラ10側に掛かる力によって、ローラ10がローション供給用ロッド21側に押圧されることとなり、ローラ10とローション供給用ロッド21の接触状態を適度に維持することが可能となる。
また、容器固定部40Bによるローション容器22の固定において、容器固定部40Bとしての構造体は、ローション容器22を完全に固定するのではなく、寸法的な余裕(遊び)を設けるように設計することが挙げられる。これにより、ローション塗布装置1の使用に際し、ローション容器22が傾斜することによって、ローション容器22がローラ10側に寸法的な余裕分(遊びの分)だけ移動することとなり、ローラ10とローション供給用ロッド21の接触状態を適度に維持することが可能となる。
【0059】
[トリートメント用ローション塗布装置の使用方法(ローション塗布方法)]
次に、本実施態様に係るローション塗布装置1の使用方法(ローション塗布方法)について、
図4に基づき説明する。
図4は、本実施態様におけるローション塗布装置1を、所定箇所(皮膚)に対して適用した場合の操作に係る概略説明図である。なお、
図4Aは、ローション塗布装置1の使用開始時(往路)における概略説明図であり、
図4Bは、ローション塗布装置1の使用過程(復路)における概略説明図である。
また、以下、所定箇所である皮膚が電気脱毛処理後の部分的な発熱状態にあるものとして説明を行うが、ローション塗布装置1の使用方法の一例を説明するものであり、これに限定するものではない。
【0060】
まず、
図4Aに示すように、所定箇所である被施術者の皮膚(皮膚表面)に対し、把持部50を持った施術者によってローラ10を接触させ、引く方向(
図4の左から右)に向かってローション塗布装置1を移動させる。このとき、ローション容器22内のローションSは、ローション供給用ロッド21を介してローラ10に塗布される。ここで、ローションSはローラ10の回転方向に沿って塗布されることになる。すなわち、
図4Aにおいては、ローラ10は時計回りに回転するため、ローションSはローラ10の右側に塗布されることになり、さらに、このローションSがローション塗布装置1の進行方向の後ろ側における所定箇所に塗布されていくことになる。
そして、送風部30により、ローション塗布装置1の進行方向の前後に送風するため、ローション塗布装置1の進行方向近傍では、送風による冷却が可能となる。特に、ローションSが塗布された領域においては、ローションSの気化が促進されることで、より一層の冷却効果を得ることができる。これにより、所定箇所である皮膚の発熱状態を効果的に鎮静化するとともに、拡張した毛穴を収縮させることが可能となる。
【0061】
また、このとき、ローラ10を介して、所定箇所である皮膚表面に電流を流すことが好ましい。
電気脱毛処理において、被施術者の皮膚表面には陰極性の直流電流が流され、皮膚表面がアルカリ性になることが知られている。したがって、ローラ10(通電ローラ)を介し、皮膚表面に陽極性の直流電流を流すことで、皮膚表面での中和が生じ、電気脱毛処理を受けた際に当該部位に生じた発赤及び発熱などの炎症や、毛穴の拡張を効果的に抑制することができる。
併せて、皮膚表面に直流電流を流すことにより、いわゆるイオン浸透療法(イオン導入)に係る作用を利用し、ローションS中の成分を皮膚深部まで浸透させることが可能となる。特に、ローションS中の成分として局所麻酔剤を含有する場合、経皮投与による薬剤投与効果を高め、被施術者の負荷軽減を速やかに図ることが可能となる。
【0062】
そして、施術者によって、ローション塗布装置1は引く方向に向かって移動を続け、所定箇所においてローション塗布が必要となる所定範囲(所定領域)の端部まで移動する(往路移動)。
【0063】
次に、
図4Bに示すように、把持部50を持った施術者によってローラ10を接触させた状態のまま、押す方向(
図4の右から左)に向かってローション塗布装置1を移動させる(復路移動)。
このとき、
図4Bにおいては、ローラ10は反時計回りに回転するため、ローションSはローラ10の左側に塗布されることになり、さらに、このローションSがローション塗布装置1の進行方向の後ろ側における所定箇所に塗布されていくことになる。すなわち、
図4Bに示す復路移動においては、
図4Aに示す往路移動において塗布されたローションSに対して、さらにローションSを重ねて塗布することになる。
【0064】
そして、往路移動と同様に、復路移動においても、送風部30によりローション塗布装置1の進行方向の前後に送風するため、ローション塗布装置1の進行方向近傍では、送風による冷却が可能となる。特に、ローション塗布装置1の進行方向の後ろ側(ローションSが新たに塗布された領域)においては、ローションSの気化が促進されることで、より一層の冷却効果を得ることができる。
よって、ローション塗布装置1の往復移動を繰り返すことにより、所定箇所である皮膚の発熱状態を効果的に鎮静化するとともに、拡張した毛穴を収縮させることが可能となる。
【0065】
また、往路移動と同様に、復路移動においても、ローラ10を介して所定箇所である皮膚表面に電流を流すことが好ましい。
これにより、ローションS中の成分を繰り返し皮膚深部まで浸透させることが可能となり、皮膚深部に投与されるローションS中の成分濃度を高め、各成分の有する有益な効果を十分に発揮させることが容易となる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例として、被施術者の腕を所定箇所とし、上述したローション塗布装置1を使用して被施術者の腕に対するローション塗布及び送風を行った。なお、ローションSとしては、鎮静作用を呈する成分を含有する水溶液を用いている。
また、比較例として、上述したローション塗布装置1における塗布具20に代えて、ローションSを噴霧する手段を設け、また送風部30における送風口31を1か所とし、ロール10の進行方向の後ろ側に送風を行うものを用い、同様に被施術者の腕に対してローション塗布及び送風を行った。
そして、このときの所定箇所の温度変化(被施術者の腕の表面温度の変化)について測定を行った。結果を
図5及び
図6に示す。
【0067】
図5は、被施術者の腕に対し、ローション塗布装置1を使用した場合(実施例)とローション噴霧によるローション塗布装置を使用した場合(比較例)において、使用開始から約3分後における温度を示すサーモグラフィ画像である。
【0068】
図5に示すように、実施例においては、ローション塗布及び送風を行った箇所については周辺と比べて温度が低下し、効果的に冷却されていることが分かる。一方、比較例においては、実施例と比べ、温度低下の効果が小さく、かつローションの一部が所定箇所外(被施術者の腕の外側)に散っていることが分かる。したがって、実施例においては、効果的な冷却に加え、ローションのロスの抑制が可能となることが示された。
【0069】
また、
図6は、被施術者の腕に対し、ローション塗布装置1を使用した場合(実施例)とローション噴霧によるローション塗布装置を使用した場合(比較例)において、被施術者の腕における表面温度の経時変化を示すグラフである。
【0070】
図6に示すように、実施例においては、比較例と比べ、短時間で表面温度が低下することが分かる。また、低下した表面温度の絶対値としても、実施例の方が比較例よりも小さくなることが分かる。したがって、
図5の結果と併せ、実施例では所定箇所に対する十分な冷却効果を発揮することが示された。
【0071】
なお、上述した実施態様はあくまで一例を示すものである。本発明に係るトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係るトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法を変形してもよい。
【0072】
上述した実施態様では、トリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法を、主に皮膚に対するトリートメントに適用することに係るものとして説明を行ったが、例えば、ローションとして、塗料等の工業用薬液とし、ローションの塗布を行う所定箇所を工業的材料とし、ロールオンによる工業用薬液の塗布工程と、送風による乾燥工程とを略同時に進行させる薬液塗布装置及び薬液塗布方法として適用するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法は、所定箇所に対してローション塗布と送風とを略同時に行う装置及び方法として好適に利用可能である。
また、本発明のトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法は、皮膚へのトリートメントを行う装置及び方法として適用することが好ましく、脱毛処理等により局所的に熱を有することになる皮膚への事前処置・事後処置に係る装置及び方法として適用することが特に好ましい。
【0074】
また、本発明のトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法は、工業的材料へ工業用薬液を塗布するための薬液塗布装置及び薬液塗布方法にも好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 トリートメント用ローション塗布装置、10 ローラ、20 塗布具、21 ローション供給用ロッド、22 ローション容器、30 送風部、31 送風口、32 送風路、33 送風機構、40,40A,40B 容器固定部、41A,41B 嵌合部、50 把持部、60,60A,60B アーム部、C 中心軸、R 軸、S ローション
【要約】
【課題】本発明は、所定箇所に対してローション塗布と送風とを略同時に行う装置及び方法として、特に皮膚へのトリートメントに適用され、ローションのロスを抑制することと十分な風量を維持することを両立させることのできるトリートメント用ローション塗布装置及びローション塗布方法の提供を目的とする。
【解決手段】上記の課題を解決するために、通電ローラと、通電ローラにローションを塗布する塗布具と、通電ローラの進行方向の前後に送風する送風部と、を備え、塗布具は、ローション供給用ロッド及び着脱可能なローション容器を含み、送風部による風の流れは、ローション容器に沿って通電ローラ側に向かうことを特徴とするトリートメント用ローション塗布装置及びこの装置を用いたローション塗布方法を提供する。
【選択図】
図1