(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】浴室空調装置
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20241011BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20241011BHJP
F24F 1/0358 20190101ALI20241011BHJP
F24D 15/00 20220101ALI20241011BHJP
F24D 15/04 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
F24F7/06 B
F24F11/74
F24F1/0358
F24D15/00 B
F24D15/04
(21)【出願番号】P 2021052684
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】清本 訓央
(72)【発明者】
【氏名】本田 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】平木 雅人
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-63253(JP,A)
【文献】特開2016-90124(JP,A)
【文献】特開2005-291668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 11/74
F24F 1/0358
F24D 15/00
F24D 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井裏に設置される本体であって、浴室の空気を吸い込むための吸込口と、前記浴室に空気を吐き出すための吐出口と、前記浴室とは別の室内空間の空気を導入するための導入口と、排出部と、前記排出部を介して空気を屋外に排出する第1ファンと、前記吐出口を介して空気を前記浴室に吐き出す第2ファンと、空気を乾燥させる乾燥手段と、を有する本体と、
前記浴室の空気の湿度を検知する湿度検知部と、
予め設定された第1湿度および前記第1湿度よりも高湿の第2湿度と、前記湿度検知部の検知湿度と、に基づいて前記本体を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記検知湿度が前記第2湿度を超える場合、前記吸込口から吸い込んだ空気を前記第1ファンで屋外に排出する第1モード運転と、
前記検知湿度が前記第2湿度以下で前記第1湿度を超える場合、前記吸込口から吸い込んだ空気を前記第1ファンで屋外に排出しながら、前記導入口から吸い込んだ空気を前記乾燥手段で乾燥させて前記第2ファンで前記吐出口から吐き出す第2モード運転と、
前記検知湿度が前記第1湿度以下の場合に、前記第1ファンを停止し、前記吸込口から吸い込んだ空気を前記乾燥手段で乾燥させて前記第2ファンで前記吐出口から吐き出す第3モード運転と、
を備える浴室空調装置。
【請求項2】
前記第2モード運転において、前記別の室内空間の空気の湿度が、前記浴室の空気の湿度以上の場合、前記別の室内空間の空気に代えて前記吸込口から吸い込んだ空気を前記乾燥手段で乾燥させて前記吐出口から吐き出す請求項1に記載の浴室空調装置。
【請求項3】
前記第2モード運転にて前記第1ファンで屋外に排出する単位時間当たりの空気量は、前記第1モード運転にて前記第1ファンで屋外に排出する単位時間当たりの空気量よりも少ない請求項1または2に記載の浴室空調装置。
【請求項4】
前記第3モード運転において、前記検知湿度が前記第1湿度よりも低湿の所定湿度以下になったら、前記第3モード運転を停止する請求項1から3のいずれか1項に記載の浴室空調装置。
【請求項5】
前記本体は、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器を有する冷媒回路を備え、
前記乾燥手段は、前記蒸発器を含む除湿手段と、前記凝縮器を含み空気を加熱する加熱手段と、を備える請求項1から4のいずれか1項に記載の浴室空調装置。
【請求項6】
前記除湿手段は、デシカント式除湿器を含み、空気の温湿度に基づいて、前記蒸発器の除湿能力と前記デシカント式除湿器の除湿能力の使用割合を変化させる請求項5に記載の浴室空調装置。
【請求項7】
前記加熱手段は、電気ヒータを含み、空気の温湿度に基づいて、前記凝縮器の加熱能力と前記電気ヒータの加熱能力の使用割合を変化させる請求項6に記載の浴室空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浴室空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室内の空気について換気等の所定作用を及ぼす空調装置が知られている。例えば、特許文献1には、浴室内を加湿暖房しサウナ環境を生成する換気空調装置が記載されている。この装置は、浴室内の空気を吸引する吸込口と、吸引した空気を送風する循環送風路と、循環ファンと、換気を行う換気用ファンと、冷媒の圧縮・膨張サイクルによる熱交換器とを備える。この装置は、加湿され熱交換器により加熱された加湿空気を吹出して浴室内にサウナ環境を作り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天井裏に隠蔽される浴室空調装置に関して、浴室から湿った空気を吸い込んで、浴室に低湿の乾燥空気を供給し、浴室を乾燥させる機能を備えることが考えられる。例えば、入浴後に浴室を強制的に乾燥させることにより、カビの発生を抑えることが期待できる。また、乾燥させた浴室に濡れた衣類を吊すことにより、衣類乾燥を促進することができる。この場合、天候や時間帯を気にせず衣類を乾燥させることができる。
【0005】
浴室の乾燥には多くの電力を消費するため、消費電力を減らすという課題がある。この課題のために、単に浴室空調装置の消費電力を減らすと、乾燥時間が長くなる。特に、湿度の高い梅雨期は通常よりも乾燥時間が長くなり、気温が低い冬期は乾燥時間が一層長くなる。つまり、乾燥時間と消費電力とはトレードオフの関係にある。乾燥時間を抑制しつつ消費電力を削減するという観点で、特許文献1に記載の換気空調装置は、十分な開示がなされていない。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、乾燥時間と消費電力のバランスを改善可能な浴室空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の浴室空調装置は、天井裏に設置される本体であって、浴室の空気を吸い込むための吸込口と、浴室に空気を吐き出すための吐出口と、浴室とは別の室内空間の空気を導入するための導入口と、排出部と、排出部を介して空気を屋外に排出する第1ファンと、吐出口を介して空気を浴室に吐き出す第2ファンと、空気を乾燥させる乾燥手段と、を有する本体と、浴室の空気の湿度を検知する湿度検知部と、予め設定された第1湿度および第1湿度よりも高湿の第2湿度と、湿度検知部の検知湿度と、に基づいて本体を制御する制御部と、を備える。制御部は、検知湿度が第2湿度を超える場合、吸込口から吸い込んだ空気を第1ファンで屋外に排出する第1モード運転と、検知湿度が第2湿度以下で第1湿度を超える場合、吸込口から吸い込んだ空気を第1ファンで屋外に排出しながら、導入口から吸い込んだ空気を乾燥手段で乾燥させて第2ファンで吐出口から吐き出す第2モード運転と、検知湿度が第1湿度以下の場合に、第1ファンを停止し、吸込口から吸い込んだ空気を乾燥手段で乾燥させて第2ファンで吐出口から吐き出す第3モード運転と、を備える。
【0008】
なお、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、乾燥時間と消費電力のバランスを改善可能な浴室空調装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例の浴室空調装置を備える空調システムを示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の浴室空調装置の概略構成を示す構成図である。
【
図3】
図3は、
図1の浴室空調装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、浴室の空気の残水率の時間経過を示す図である。
【
図5】
図5は、
図1の浴室空調装置の除湿乾燥動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図1の浴室空調装置の第1モード運転の空気の流れを示す図である。
【
図7】
図7は、
図1の浴室空調装置の第1モード運転の風路構成を示す図である。
【
図8】
図8は、
図1の浴室空調装置の第2モード運転の空気の流れを示す図である。
【
図9】
図9は、
図1の浴室空調装置の第2モード運転の風路構成を示す図である。
【
図10】
図10は、
図1の浴室空調装置の第2モード運転の別の風路構成を示す図である。
【
図11】
図11は、
図1の浴室空調装置の第2モード運転の別の風路構成を示す図である。
【
図12】
図12は、
図1の浴室空調装置の第3モード運転の空気の流れを示す図である。
【
図13】
図13は、
図1の浴室空調装置の第3モード運転の風路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。実施例および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施例を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0013】
図面を参照して本開示の実施例に係る浴室空調装置10を説明する。
図1は、居住空間90に設置された浴室空調装置10を備える空調システム100を示す図である。
図1に示すように、一例として、居住空間90は、リビング92、浴室94、脱衣室98、トイレ96などに区画されている。浴室空調装置10は、浴室94の天井裏91に設置されている。
【0014】
また、リビング92には部屋の温度をコントロールするための空調機925が設置されている。また、リビング92には、リビング92内の空気の温度T2および湿度H2を検知し、その検知結果を、伝送路62を介して浴室空調装置10に送信する第2温湿度センサ60が設けられている。また、リビング92の天井には、送風ダクト84を通じてリビング92内の空気を浴室空調装置10に送るための吸気口74が設けられている。
【0015】
また、リビング92の屋外に面した壁には、給気口72が設けられている。また、各室のドアのガラリやアンダーカット部分によって各室間の通風を許容するための通風隙間が設けられている。この例では、通風隙間は、浴室94のドア等に設けられた通風隙間942と、脱衣室98のドア等に設けられた通風隙間982と、トイレ96のドア等に設けられた通風隙間962とを含む。
【0016】
浴室空調装置10は、ダクトを接続するために、第1ダクト接続部16、第2ダクト接続部18、第3ダクト接続部17および第4ダクト接続部14を有する。第1ダクト接続部16には、トイレ96の天井に開口した排気口76と浴室空調装置10とを連通する排気ダクト86が接続される。第2ダクト接続部18には、脱衣室98の天井に開口した排気口78と浴室空調装置10とを連通する排気ダクト88が接続される。第3ダクト接続部17には、浴室空調装置10と屋外排出口77を連通する屋外排気ダクト87が接続される。第4ダクト接続部14には、リビング92の天井に開口した吸気口74と浴室空調装置10とを連通する送風ダクト84が接続される。
【0017】
浴室空調装置10は、リビング92内の空気の温度および湿度の検知結果を受信するために、受信部64を有する。受信部64は、有線または無線の伝送路62を介して伝送される第2温湿度センサ60の検知結果を受信する。
【0018】
つまり、トイレ96の天井には、排気口76が設けられ、脱衣室98の天井には、排気口78が設けられ、リビング92の天井には吸気口74が設けられる。
【0019】
第1ダクト接続部16および第2ダクト接続部18は、接続されたダクトから浴室空調装置10の内部風路20に空気を受け入れるための開口部である。第3ダクト接続部17は、接続されたダクトに対して浴室空調装置10の内部風路20から空気を供給するための開口部である。第4ダクト接続部14は、接続されたダクトから浴室空調装置10の内部風路20にリビング92内の空気を受け入れるための開口部である。
【0020】
浴室空調装置10の内部風路20は、運転モードに応じた経路で空気を導くための通路である。内部風路20には、内部風路20の風路構成を可変するための複数のダンパ22が設けられており、運転モードに応じて、所定の風路構成になるように各ダンパ22を所望の開度に開閉する。
【0021】
浴室空調装置10は、浴室94の天井68から室内に開口する吸込口25と、吐出口26とを備える。吸込口25は、内部風路20に浴室94の空気を吸込むための開口である。吐出口26は、内部風路20から浴室94に空気を吹出すための開口である。吸込口25の下流側には、微細な塵や埃の内部風路20への侵入を防止するために、フィルタ(不図示)が設けられている。
【0022】
脱衣室98には、浴室空調装置10を操作するためのリモコン58が設けられている。リモコン58は、ユーザの操作に基づいて、操作信号を有線または無線を介して浴室空調装置10に送信する。
【0023】
図2を参照して、浴室空調装置10の構成を説明する。
図2に示すように、浴室空調装置10は、天井裏に設置される本体11を備える。本体11は、浴室94の空気を吸い込むための吸込口25と、浴室94に空気を吐き出すための吐出口26と、浴室94とは別の室内空間95の空気を導入するための導入部12と、排出部15と、排出部15を介して空気を屋外に排出する第1ファン41と、吐出口26を介して空気を浴室94に吐き出す第2ファン42と、空気を乾燥させる乾燥手段50と、空気の湿度を検知する湿度検知部46と、制御部48と、を有する。また、本体11の内部には、デシカント式除湿器43と、電気ヒータ44とが設けられる。
【0024】
この例では、導入部12は第4ダクト接続部14であり、排出部15は第3ダクト接続部17であり、湿度検知部46は第1温湿度センサ45である。制御部48は、所定の第1湿度および第1湿度よりも高湿の第2湿度と、湿度検知部46の検知湿度とに基づいて本体11を制御する。また、本体11は、有線または無線の伝送路62を介して第2温湿度センサ60の検知結果を受信する受信部64を有する。
【0025】
本体11は、箱状の外郭を有する。内部風路20に接続される第1ダクト接続部16、第2ダクト接続部18、第3ダクト接続部17、第4ダクト接続部14、吸込口25および吐出口26(以下、総称するときは「出入口」ということがある)は、本体11の外郭に設けられる。乾燥手段50については後述する。
図2では、各要素における主な空気の流れの方向を矢印で示す。
【0026】
内部風路20は、各動作に対応して、各出入口を出入りする空気が、冷媒回路30、第1ファン41、第2ファン42、デシカント式除湿器43、電気ヒータ44および第1温湿度センサ45を通過するための風路を構成する。
【0027】
冷媒回路30は、圧縮機31と、四方弁32と、凝縮器33と、膨張弁34と、蒸発器35と、を有する。冷媒回路30は、冷媒(不図示)を、圧縮機31から四方弁32、凝縮器33、膨張弁34および蒸発器35を介して圧縮機31に循環させることによって冷凍サイクルを構成する。
【0028】
第1ファン41は、主に第3ダクト接続部17に空気を送出するための換気用シロッコファンである。第2ファン42は、主に吐出口26に空気を送出するための循環用シロッコファンである。デシカント式除湿器43は、乾燥剤を含浸させたハニカム構造のデシカントローター(不図示)に空気を通して除湿する。電気ヒータ44は、ジュール熱を発生させて空気を加熱する。第1温湿度センサ45は、吸込口25から吸い込まれた浴室94の空気の温度および湿度を検知する。
【0029】
受信部64の構成に限定はない。この例では、受信部64は、有線または無線の伝送路62を介して第2温湿度センサ60の検知結果を受信する受信手段である。
【0030】
図3を参照して制御部48を説明する。
図3は、制御部48の一例を示すブロック図である。
図3に示す、各機能ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0031】
制御部48は、情報取得部481と、記憶部483と、演算部484と、判定部485と、ダンパ制御部486と、第1ファン制御部487と、第2ファン制御部488とを含み、情報処理部として機能する。
【0032】
情報取得部481は、受信部64の受信結果、第1温湿度センサ45の検知結果およびリモコン58からの操作信号を取得する入力ポートとして機能する。記憶部483は、情報取得部481の取得結果、演算部484の演算結果、判定部485の判定結果などを記憶する。演算部484は、第1温湿度センサ45の検知結果や受信部64の受信結果から所定の演算をする。
【0033】
判定部485は、演算部484の演算結果等に基づいて所定の判定をする。ダンパ制御部486は、判定部485の判定結果に基づいてダンパ22の動作を制御する。第1ファン制御部487および第2ファン制御部488は、第1ファン41および第2ファン42の動作を制御する。
【0034】
制御部48は、リモコン58からの操作信号、第1温湿度センサ45および第2温湿度センサ60の検知結果に基づいて、各動作に応じてダンパ22を制御することにより、内部風路20の風路構成を変更する。
【0035】
次に、浴室空調装置10の除湿乾燥動作の例を説明する。この動作は、予め設定された第1湿度J1および第1湿度J1よりも高湿の第2湿度J2と、第1温湿度センサ45の検知湿度H1とに基づいて運転モードを切り替える動作である。なお、第1湿度J1、第2湿度J2、検知湿度H1および、リビング92の空気の湿度H2は、相対湿度であってもよいが、この例では絶対湿度である。絶対湿度は、気温と相対湿度に基づいて求めることができる。
【0036】
図4は、浴室94の空気の残水率の時間経過に対する変化を示す図である。この図の横軸は、入浴後の除湿開始時からの経過時間を示し、縦軸は浴室94の空気の残水率を示す。グラフg1は、本実施例の残水率の変化を示すグラフである。グラフg2は、吸込口25から吸い込んだ空気を第1ファン41で継続的に屋外に排出した比較例の残水率の変化を示すグラフである。
【0037】
比較例のグラフg2を説明する。比較例では、浴室94の高湿な空気が排出され、通風隙間942から供給される空気に置き換わるため、除湿開始時から1時間程度まで残水率が比較的急速に低下する。しかし、その後は、残水率の低下速度が緩慢になり、カビの発生を抑制するために設定された目標残水率(この例では5%)に達するのは7時間後になる。特に、通風隙間942から供給される空気も高湿になる梅雨時期には、目標残水率に到達しない懸念もある。目標残水率に達するまでの時間が長いと、カビの発生を十分に抑制できないことがある。
【0038】
本実施例のグラフg1を説明する。本実施例では、浴室94の空気の湿度が高い場合は、第1モード運転をし、湿度がある程度低下したら第2モード運転をし、さらに湿度が低下したら第3モード運転をし、その後所定の状態に至ったら第3モード運転を停止する。換言すると、本実施例では、換気で湿度が低下する間は、低消費電力の第1モード運転で換気を行い、湿度が低下しにくい場合は、第2モード運転、または第3モード運転で積極的に除湿して乾燥時間を短縮する。このため、本実施例は、乾燥時間と消費電力のバランスを改善できる。
【0039】
図5は、除湿乾燥動作S110を示すフローチャートである。除湿乾燥動作S110は、ユーザがリモコン58で除湿乾燥動作を開始する操作を入力することで開始される。動作S110が開始されると、制御部48は、検知湿度H1が第2湿度J2を超えているかどうかを判定する(ステップS111)。
【0040】
検知湿度H1が第2湿度J2を超えている場合(ステップS111のY)、制御部48は、第1モード運転を実行する(ステップS112)。ステップS112を実行したら、制御部48は、処理をステップS111の先頭に戻して、ステップS111~S112を繰り返す。
【0041】
(第1モード運転)
図6、
図7を参照して、第1モード運転を説明する。
図6は、第1モード運転における空気の流れを示す図である。
図7は、第1モード運転における浴室空調装置10の内部風路20の第1風路構成を示す図である。第1モード運転では、
図7に示すように、第1空気流F1が生成される。第1空気流F1は、第1ファン41の吸込力によって、吸込口25から浴室94の湿った空気A1を吸い込み、屋外排出口77から排出する流れである。
【0042】
図5に戻る。検知湿度H1が第2湿度J2を超えていない場合(ステップS111のN)、制御部48は、検知湿度H1が第1湿度J1を超えているかどうかを判定する(ステップS113)。
【0043】
検知湿度H1が第1湿度J1を超えている場合(ステップS113のY)、制御部48は、第2モード運転を実行する(ステップS114)。ステップS114を実行したら、制御部48は、処理をステップS113の先頭に戻して、ステップS113~S114を繰り返す。
【0044】
(第2モード運転)
図8、
図9を参照して、第2モード運転を説明する。
図8は、第2モード運転における空気の流れを示す図である。
図9は、第2モード運転における浴室空調装置10の内部風路20の第2風路構成を示す図である。リビング92は、空調機925による冷房運転および暖房運転により、温度や湿度が一定の範囲に保たれている。このため、リビング92の空気の湿度H2が低い場合は、リビング92の空気を用いて浴室94を乾燥させる方がトータルの消費電力が低くなる。そこで、第2モード運転では、リビング92の空気を用いて浴室94を乾燥させる。
【0045】
第2モード運転では、リビング92の空気A2の湿度H2が、浴室94の空気A1の湿度H1よりも低い場合に、
図8に示すように、第2空気流F2と、第3空気流F3とが生成される。第2空気流F2は、第2ファン42の吸込力によって、リビング92の空気A2を導入部12(第4ダクト接続部14)から導入し、空気A2を乾燥手段50で乾燥させて吐出口26から吐き出す流れである。リビング92の空気A2は、吸気口74から送風ダクト84および第4ダクト接続部14を通じて内部風路20に導入される。
【0046】
第3空気流F3は、第1ファン41の吸込力によって、吸込口25から浴室94の湿った空気A1を吸い込み、屋外排出口77から排出する流れである。第2モード運転にて第1ファン41で屋外に排出する第3空気流F3の単位時間当たりの空気量は、第1モード運転にて第1ファン41で屋外に排出する第1空気流F1の単位時間当たりの空気量よりも少ない。例えば、第3空気流F3の単位時間当たりの空気量は、第1空気流F1の単位時間当たりの空気量の30%~70%であってもよく、この例では50%である。
【0047】
乾燥手段50に限定はない。この例では、乾燥手段50は、空気を除湿する除湿手段51と、除湿手段51で除湿された空気を加熱する加熱手段52と、を含む。加熱手段52で加熱された乾燥空気A3は、第2ファン42に吸い込まれて吐出口26から浴室94に供給される。
【0048】
浴室94に乾燥空気A3が供給されることによって、浴室94の空気A1が吸込口25に吸い込まれ、第3空気流F3となって屋外に排出される。空気A1が乾燥空気A3に置換されることによって浴室94の乾燥が促進される。
【0049】
除湿手段51の構成に限定はないが、本実施例では、除湿手段51は、蒸発器35とデシカント式除湿器43を含んでいる。除湿手段51として、蒸発器35およびデシカント式除湿器43の何れか一方を使用して除湿してもよいし、両方をカスケードに使用して除湿してもよい。
【0050】
この例の除湿手段51は、第1温湿度センサ45の検知結果に基づいて、蒸発器35の除湿能力とデシカント式除湿器43の除湿能力の使用割合(以下、単に「使用割合」という)を変化させるように構成されている。例えば、夏期など高温高湿の場合は、蒸発器35の除湿能力の使用割合を高め、冬期など低温低湿の場合は、デシカント式除湿器43の除湿能力の使用割合を高める。
【0051】
なお、予め、第1温湿度センサ45で検知した温度および湿度と、この温湿度に適応する使用割合との関係をテーブル化し、除湿手段51は、このテーブルを参照して使用割合を決定するようにしてもよい。
【0052】
加熱手段52の構成に限定はないが、本実施例では、加熱手段52は、凝縮器33と電気ヒータ44を含んでいる。加熱手段52として、凝縮器33および電気ヒータ44の何れか一方を使用して加熱してもよいし、両方を使用して加熱してもよい。
【0053】
この例の加熱手段52は、第1温湿度センサ45の検知結果に基づいて、凝縮器33の加熱能力と電気ヒータ44の加熱能力の使用割合を変化させるように構成されている。例えば、夏期など高温の場合は、電気ヒータ44を使用せず、冬期など低温の場合は、凝縮器33と電気ヒータ44の両方を使用して加熱する。
【0054】
図10、
図11を参照して、第2モード運転の第2例および第3例を説明する。
図10は、第2モード運転の第2例における浴室空調装置10の内部風路20の風路構成を示す図である。
図11は、第2モード運転の第3例における浴室空調装置10の内部風路20の風路構成を示す図である。
【0055】
図10に示す第2モード運転の第2例では、第1ファン41の吸込力によって吸込口25から吸い込まれた浴室94の空気A1の一部の空気Apをリビング92の空気A2に合流させ、乾燥手段50で乾燥させて吐出口26から吐き出す。第2モード運転の第2例によれば、吐出口26から吐き出される空気A3の量を増やせる。
【0056】
図11に示す第2モード運転の第3例では、リビング92の空気A2は本体11へ吸い込まず、吸込口25から吸い込まれた浴室94の空気A1の一部の空気Apを乾燥手段50で乾燥させて吐出口26から吐き出す。第2モード運転の第3例によれば、リビング92の空気A2の湿度H2が、浴室94の空気の湿度H1以上の場合、リビング92の空気A2に代えて吸込口25から吸い込んだ空気A1を乾燥手段50で乾燥させて吐出口26から吐き出す。
【0057】
図5に戻る。検知湿度H1が第1湿度J1を超えていない場合(ステップS113のN)、制御部48は、第3モード運転を実行する(ステップS115)。
【0058】
(第3モード運転)
図12、
図13を参照して第3モード運転を説明する。
図12は、第3モード運転における空気の流れを示す図である。
図13は、第3モード運転における浴室空調装置10の内部風路20の風路構成を示す図である。
図13に示すように、第3モード運転では、第3空気流F3が生成される。
【0059】
第3空気流F3は、第2ファン42の吸込力によって、吸込口25から浴室94の空気A1を吸い込み、空気A1を乾燥手段50で乾燥させて吐出口26から吐き出す流れである。乾燥手段50の構成および動作は第2モード運転と同様であり、重複する説明を省略する。乾燥手段50で乾燥させた乾燥空気A3は、第2ファン42に吸い込まれて吐出口26から浴室94に供給される。このように、第3空気流F3は、浴室94の空気を乾燥させながら循環させる流れである。例えば、乾燥空気A3によって、浴室94に吊した衣類Wを乾燥できる。
【0060】
なお、実施例の浴室空調装置10では、リビング92の空気の湿度H2および浴室94の空気の湿度H1が所定の湿度よりも高い状態など何らかの要因により、リビング92の空気および浴室94の空気A1が浴室乾燥に適さない場合は、第2モード運転および第3モード運転を実行しない。
【0061】
図5に戻る。ステップS115を実行したら、制御部48は、第3モード運転の終了条件が満たされているかどうかを判定する(ステップS116)。第3モード運転の終了条件は、任意に設定できる。この例では、検知湿度H1が第1湿度よりも低湿の所定湿度以下になった場合、または、第3モード運転の運転時間が所定時間に達した場合に第3モード運転を停止する。
【0062】
終了条件が満たされない場合(ステップS116のN)、制御部48は、処理をステップS115の先頭に戻し、ステップS115~S116を繰り返す。終了条件が満たされている場合(ステップS116のY)、制御部48は、第3モード運転を停止する(ステップS117)。
【0063】
ステップS117を実行したら、制御部48は、除湿乾燥動作S110を終了する。上記の各ステップはあくまでも一例であって、各種の変形が可能である。第3モード運転の終了後、浴室空調装置10は、自動的に後述する換気動作をしてもよい。
【0064】
(換気動作)
浴室空調装置10は、除湿乾燥動作S110とは別の各種空調動作を行うことができる。以下、
図14、
図15を参照して浴室空調装置10の換気動作を説明する。
図14は、換気動作における空気の流れを示す図である。
図15は、換気動作における浴室空調装置10の内部風路20の第4風路構成を示す図である。第4風路構成では、主に第1ファン41の吸引力および吹出力によって空気の流れを生成する。
図15に示すように、換気動作では、第4空気流F4が生成される。第4空気流F4は、脱衣室98の排気口78から吸い込んだ空気A4とトイレ96の排気口76から吸い込んだ空気A5を排気A6として屋外排出口77から排出する流れである。
【0065】
第1ファン41を運転すると、空気A4、A5が第1ファン41に吸い込まれ、排気A6として屋外排気ダクト87を通じて屋外に排出される。このとき、第1ファン41を連続運転すると居住空間90内が負圧になるため、リビング92の屋外に面した壁に開口した給気口72から新鮮な外気が給気されて居住空間90が換気されることになる。
【0066】
換気動作は、建物の気密性が高い場合は連続して行うことが望ましい。この運転は24時間換気とも呼ばれる。第1ファン41は、所定の換気量(例えば、一時間で居住空間90の約半分の容積に相当する換気量)を確保する能力を備えることが望ましい。
【0067】
上述したように、リビング92には部屋の温度をコントロールするための空調機925が設置されており、夏場は冷房運転、冬場は暖房運転を行ってリビング92の空気の温度と湿度を適正に保持している。空調されたリビング92の空気は、浴室94の通風隙間942、脱衣室98の通風隙間982およびトイレ96の通風隙間962を通じて排気口78および排気口76に吸い込まれ、浴室空調装置10を介して屋外に排出される。
【0068】
換気動作は、第3モード運転と並行して実行できる。また、換気動作では、空気A4および空気A5を蒸発器で冷媒と熱交換してもよい。この場合、熱交換により冷媒に移された熱エネルギーを凝縮器により浴室94や脱衣室98の予備暖房に利用できる。
【0069】
本実施例の浴室空調装置10によれば、第1モード運転で消費電力の少ない第1ファン41により浴室の空気A1の湿度を下げ、第2モード運転または第3モード運転で浴室を積極的に乾燥させるため乾燥時間と消費電力のバランスを改善できる。また、第2モード運転で空調機925によって空調されたリビング92の空気A2を用いて浴室94を乾燥できるので、トータルの消費電力を減らしながら乾燥時間を短くできる。また、第1~第3モード運転において、浴室94と脱衣室98の間のドアを開放することにより、乾燥空気が脱衣室98に流れて、脱衣室98で衣類乾燥できる。
【0070】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の浴室空調装置(11)は、浴室(94)の天井裏に設置される本体(11)であって、浴室(94)の空気を吸い込むための吸込口(25)と、浴室(94)に空気を吐き出すための吐出口(26)と、浴室(94)とは別の室内空間(95)の空気を導入するための導入口(12)と、排出部(15)と、排出部(15)を介して空気を屋外に排出する第1ファン(41)と、吐出口(26)を介して空気を浴室(94)に吐き出す第2ファン(42)と、空気を乾燥させる乾燥手段(50)と、を有する本体(11)と、浴室(94)の空気の湿度を検知する湿度検知部(46)と、予め設定された第1湿度および第1湿度よりも高湿の第2湿度と、湿度検知部(46)の検知湿度と、に基づいて本体(11)を制御する制御部(48)と、を備える。制御部(48)は、
検知湿度が第2湿度を超える場合、吸込口(25)から吸い込んだ空気を第1ファン(41)で屋外に排出する第1モード運転と、
検知湿度が第2湿度以下で第1湿度を超える場合、吸込口(25)から吸い込んだ空気を第1ファン(41)で屋外に排出しながら、導入口(12)から吸い込んだ空気を乾燥手段(50)で乾燥させて第2ファン(42)で吐出口(26)から吐き出す第2モード運転と、
検知湿度が第1湿度以下の場合に、第1ファン(41)を停止し、吸込口(25)から吸い込んだ空気を乾燥手段(50)で乾燥させて第2ファン(42)で吐出口(26)から吐き出す第3モード運転と、を備える。
【0071】
浴室空調装置(10)では、第2モード運転において、別の室内空間(95)の空気の湿度が、浴室(94)の空気の湿度以上の場合、別の室内空間(95)の空気に代えて吸込口(25)から吸い込んだ空気を乾燥手段(50)で乾燥させて吐出口(26)から吐き出す。
【0072】
浴室空調装置(10)では、第2モード運転にて第1ファン(41)で屋外に排出する単位時間当たりの空気量は、第1モード運転にて第1ファン(41)で屋外に排出する単位時間当たりの空気量よりも少ない。
【0073】
浴室空調装置(10)では、第3モード運転において、検知湿度が第1湿度よりも低湿の所定湿度以下になったら、第3モード運転を停止する。
【0074】
浴室空調装置(10)では、本体(11)は、圧縮機(31)、凝縮器(33)、膨張弁(34)および蒸発器(35)を有する冷媒回路(30)を備える。乾燥手段(50)は、蒸発器(35)を含む除湿手段(51)と、凝縮器(33)を含み空気を加熱する加熱手段(52)と、を備える。
【0075】
浴室空調装置(10)では、除湿手段(51)は、デシカント式除湿器(43)を含み、空気の温湿度に基づいて、蒸発器(35)の除湿能力とデシカント式除湿器(43)の除湿能力の使用割合を変化させる。
【0076】
浴室空調装置(10)では、加熱手段(52)は、電気ヒータ(44)を含み、空気の温湿度に基づいて、凝縮器(33)の加熱能力と電気ヒータ(44)の加熱能力の使用割合を変化させる。
【0077】
以上、本開示を、実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0078】
[変形例]
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施例と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施例と重複する説明を適宜省略し、実施例と相違する構成について重点的に説明する。
【0079】
実施例の説明では、第2温湿度センサ60がリビング92の空気A2の温度および湿度を検知する例を示したが、第2温湿度センサ60は、リビング92の空気A2の臭気を検知する機能を備えてもよい。リビング92の空気A2の臭気が所定のレベルよりも強い場合は、第2モード運転において、湿度にかかわらず、吸込口25から吸い込んだ空気A1を乾燥手段50で乾燥させて吐出口26から吐き出すようにしてもよい。
【0080】
実施例の説明では、第2温湿度センサ60がリビング92内に設けられる例を示したが、第2温湿度センサ60は、リビング92の空気A2の温湿度を検知可能であれば、リビング92外に設けられてもよい。例えば、第2温湿度センサ60は、本体11において、導入部12(第4ダクト接続部14)の下流側に設けられてもよい。
【0081】
実施例の説明では、除湿手段51は、蒸発器35とデシカント式除湿器43とを含む例を示したが、これらを備えることは必須ではない。除湿手段は、蒸発器35やデシカント式除湿器43とは別の原理に基づく除湿要素を含んでもよい。
【0082】
実施例の説明では、加熱手段52は、凝縮器33と電気ヒータ44とを含む例を示したが、これらを備えることは必須ではない。加熱手段は、凝縮器33や電気ヒータ44とは別の原理に基づく加熱要素を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本開示にかかる浴室空調装置は、天井に取り付けて浴室の空調に利用できる。
【符号の説明】
【0084】
10 浴室空調装置、 11 本体、 12 導入部、 15 排出部、 25 吸込口、 26 吐出口、 30 冷媒回路、 31 圧縮機、 33 凝縮器、 35 蒸発器、 43 デシカント式除湿器、 44 電気ヒータ、 45 第1温湿度センサ、 50 乾燥手段、 51 除湿手段、 52 加熱手段、 60 第2温湿度センサ、 74 吸気口、 76、78 排気口、 91 天井裏、 94 浴室、 95 室内空間。