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特許7569976電源システム及び電源システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】電源システム及び電源システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20241011BHJP
   H02H 3/06 20060101ALI20241011BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H02J9/06 110
H02H3/06 C
H02J3/38 180
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022202669
(22)【出願日】2022-12-19
(65)【公開番号】P2024087724
(43)【公開日】2024-07-01
【審査請求日】2024-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】柏原 弘典
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 吉則
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-229664(JP,A)
【文献】特開2006-246609(JP,A)
【文献】特許第6973037(JP,B2)
【文献】特開平11-178336(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0128177(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
H02H 3/06
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源系統から負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、
前記機械式スイッチと並列に前記電力線に接続される並列回路と、
前記並列回路に設けられ、直流電力を交流電力に変換して前記負荷に給電する電力変換器と、
前記機械式スイッチ及び前記電力変換器を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記電源系統の異常が発生した場合に、前記機械式スイッチを開放し、前記電力変換器が前記負荷を補償する補償制御を行い、
前記電源系統が復電した後に、前記機械式スイッチを投入するとともに、前記機械式スイッチが投入された状態における前記並列回路の電圧を0とするように前記電力変換器を制御する、電源システム。
【請求項2】
前記電源系統の電圧である系統電圧を測定する系統電圧測定部をさらに備え、
前記制御部は、
前記電源系統が復電した後に、定格電圧である電圧指令値と前記系統電圧との差に関わらず、前記電力変換器が前記機械式スイッチに対して補償する電圧を0とする、請求項1記載の電源システム。
【請求項3】
前記並列回路に設けられるインピーダンス素子をさらに備え、
前記電力変換器は、前記インピーダンス素子を介して前記並列回路に設けられ、
前記制御部は、
前記補償制御において、前記負荷の電圧を補償するとともに、前記インピーダンス素子を介して低下する電圧を前記電力変換器が補償する制御を行い、
前記電源系統が復電した後に、前記電力変換器が出力する電圧を0とする、請求項2記載の電源システム。
【請求項4】
前記機械式スイッチに流れる電流であるスイッチ電流を測定するスイッチ電流測定部をさらに備え、
前記制御部は、前記スイッチ電流が所定値以上である場合に、前記電力変換器から前記電力線への給電を停止する停止制御を行う、請求項1記載の電源システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記スイッチ電流が所定値以上である場合に、前記機械式スイッチが投入された状態における前記並列回路の電圧を0とするように前記電力変換器を制御する、請求項4記載の電源システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記スイッチ電流が所定値以上であり、かつ、前記機械式スイッチの投入開始から所定の時間を経過した後に前記停止制御を行う、請求項4又は5記載の電源システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記電源系統が復電して所定の時間が経過した後に、前記電力変換器から前記電力線への給電を停止する停止制御を行う、請求項1記載の電源システム。
【請求項8】
電源系統の正常時に当該電源系統から負荷に給電し、前記電源系統の異常時に前記電源系統から前記負荷への給電を遮断して前記負荷の電圧を補償し、その後前記電源系統の復電を行う電源システムの制御方法であって、
前記電源システムは、
電源系統から負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、
前記機械式スイッチと並列に前記電力線に接続される並列回路と、
前記並列回路に設けられ、直流電力を交流電力に変換して前記負荷に給電する電力変換器とを備えるものであり、
前記電源系統の異常が発生した場合に、前記機械式スイッチを開放するとともに、前記電力変換器が前記負荷を補償する補償制御を行い、
前記電源系統が復電した後に、前記機械式スイッチを投入するとともに、前記機械式スイッチが投入された状態における前記並列回路の電圧を0とするように前記電力変換器を制御する、電源システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システム及び電源システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電源システムでは、例えば特許文献1に示すように、正常時において、電源系統から負荷へと電力線を介して給電している。また異常時において、電力線に設けられた遮断器が開放されることによって、電源系統から負荷への給電が遮断されるとともに、インバータが負荷へと給電することによって、負荷の電圧を補償している。その後、電源系統の電圧である系統電圧が復電されると、遮断器を投入して、再び電源系統から負荷へと給電を行う。
【0003】
また、上記の電源システムにおいて、インバータは、負荷の電圧が定格電圧となるように負荷に給電している。すなわち、インバータは、系統電圧の低下分を補償している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-140781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記の電源システムでは、負荷への電圧供給を継続させるために、系統電圧が復電されて遮断器の投入が完了する前には、インバータが負荷の電圧を補償している。そして、遮断器の投入が完了した場合、インバータを停止して、電源系統から負荷へと給電を行う。したがって、遮断器の投入を開始してから完了するまでに系統電圧が再度低下した場合、インバータはその系統電圧の低下分を補償するので、遮断器に電位差が生じてしまう。その結果、遮断器が設けられた電力線において、インバータからの短絡電流が発生するので、インバータの破損を生じる恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、遮断器が投入されてからインバータが停止するまでに系統電圧が変化した場合、インバータからの短絡電流が発生することによってインバータが破損するのを防ぐことを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る電源システムは、電源系統から負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、前記機械式スイッチと並列に前記電力線に接続される並列回路と、前記並列回路に設けられ、直流電力を交流電力に変換して前記負荷に給電する電力変換器と、前記機械式スイッチ及び前記電力変換器を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記電源系統の異常が発生した場合に、前記機械式スイッチを開放し、前記電力変換器が前記負荷を補償する補償制御を行い、前記電源系統が復電した後に、前記機械式スイッチを投入するとともに、前記機械式スイッチが投入された状態における前記並列回路の電圧を0とするように前記電力変換器を制御することを特徴とする。
また、本発明に係る電源システムの制御方法は、電源系統の正常時に当該電源系統から負荷に給電し、前記電源系統の異常時に前記電源系統から前記負荷への給電を遮断して前記負荷の電圧を補償し、その後前記電源系統の復電を行う電源システムの制御方法であって、前記電源システムは、電源系統から負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、前記機械式スイッチと並列に前記電力線に接続される並列回路と、前記並列回路に設けられ、直流電力を交流電力に変換して前記負荷に給電する電力変換器とを備えるものであり、前記電源系統の異常が発生した場合に、前記機械式スイッチを開放するとともに、前記電力変換器が前記負荷を補償する補償制御を行い、前記電源系統が復電した後に、前記機械式スイッチを投入するとともに、前記機械式スイッチが投入された状態における前記並列回路の電圧を0とするように前記電力変換器を制御することを特徴とする。
【0008】
このような構成であれば、電源系統が復電した後に、制御部は機械式スイッチを投入するとともに、機械式スイッチが投入された状態における並列回路の電圧を0とするように電力変換器を制御するので、機械式スイッチが投入された状態では、並列回路及び機械式スイッチの電圧は0となる。したがって、系統電圧が変化して例えば定格電圧といった電圧指令値と系統電圧との間に電位差が発生した場合であっても、電力変換器がその電位差を補償しないので、電力変換器及び機械式スイッチにより構成される回路において、電力変換器からの短絡電流が発生することなく、電力変換器の破損を防ぐことができる。
【0009】
前記電源システムは、前記電源系統の電圧である系統電圧を測定する系統電圧測定部をさらに備え、前記制御部は、前記電源系統が復電した後に、定格電圧である電圧指令値と前記系統電圧との差に関わらず、前記電力変換器が前記機械式スイッチに対して補償する電圧を0とすることが好ましい。
【0010】
このような構成であれば、電源系統が復電した後において、制御部は、電圧指令値と系統電圧との差に関わらず、電力変換器が機械式スイッチに対して補償する電圧を0とする。その結果、例えば電力変換器と電力線との間にインピーダンス素子が接続されている場合、電源系統からはインピーダンス素子の出力側において短絡が発生しているように見える。これにより、機械式スイッチの投入が完了するまでの間において、電源系統からの電流は、並列回路を経由して負荷に流れ、負荷の電圧と系統電圧とが等しくなる。また、機械式スイッチの投入が完了した場合においても、電力変換器の出力端の電圧は0であるので、並列回路の電圧は0となり、電源系統からの電流は、機械式スイッチを通って負荷へと流れる。したがって、機械式スイッチの投入が完了する前後において、系統電圧が変化しても電源系統と負荷との間に電位差は発生しないので、電力変換器と機械式スイッチとの間で短絡電流が発生することを防ぐことができ、電力変換器の破損を防ぐことができる。
【0011】
前記電源システムは、前記並列回路に設けられるインピーダンス素子をさらに備え、前記電力変換器は、前記インピーダンス素子を介して前記並列回路に設けられ、前記制御部は、前記補償制御において、前記負荷の電圧を補償するとともに、前記インピーダンス素子を介して低下する電圧を前記電力変換器が補償する制御を行い、前記電源系統が復電した後に、前記電力変換器が出力する電圧を0とするものであることが好ましい。
【0012】
このような構成であれば、電源系統が復電した後に、電力変換器が出力する電圧は0となるので、電力変換器の出力端の電圧が0になる。すなわち、電源系統が復電した後において、電源系統からは電力変換器の出力端において短絡が発生しているように見える。したがって、機械式スイッチの投入が完了するまでの間において、電源系統からの電流は、並列回路を経由して負荷に流れ、負荷の電圧には、系統電圧からインピーンダンス素子を介して低下した電圧を差し引いた電圧が印加される。また、機械式スイッチの投入が完了した場合においても電力変換器の出力端の電圧は0であるので、並列回路の電圧は0となり、電源系統からの電流は機械式スイッチを通って負荷へと流れる。その結果、機械式スイッチの投入が完了する前後において、系統電圧が変化しても電源系統と負荷との間に電位差は発生しないので、電力変換器及び機械式スイッチの間で短絡電流は発生せず、短絡電流による電力変換器の破損を防ぐことができる。
【0013】
前記電源システムは、前記機械式スイッチに流れる電流であるスイッチ電流を測定するスイッチ電流測定部をさらに備え、前記制御部は、前記スイッチ電流が所定値以上である場合に、前記電力変換器から前記電力線への給電を停止する停止制御を行うことが挙げられる。
【0014】
このような構成であれば、スイッチ電流が所定値以上である場合に、機械式スイッチの投入が完了したと判定される。したがって、電力変換器は、機械式スイッチの投入が完了した後に停止されるので、機械式スイッチの投入が開始されてから完了するまでの間、電力変換器を制御することにより負荷への給電を行い、機械式スイッチの投入が完了した後、電源系統から負荷への給電を行うこととなる。その結果、本発明に係る電源システムは、負荷への電圧供給を継続して行うことができる。
【0015】
前記制御部は、前記スイッチ電流が所定値以上である場合に、前記機械式スイッチが投入された状態における前記並列回路の電圧を0とするように前記電力変換器を制御するものが挙げられる。
【0016】
このような構成であれば、スイッチ電流が所定値以上である場合に、機械式スイッチの投入が完了したと判定される。電力変換器は、機械式スイッチの投入が完了した後に並列回路の電圧を0にするので、機械式スイッチの投入が完了して系統電圧が変動しても電力変換器からの短絡電流は流れず、電力変換器の破損を防ぐことができる。
【0017】
前記制御部は、前記スイッチ電流が所定値以上であり、かつ、前記機械式スイッチの投入開始から所定の時間を経過した後に前記停止制御を行うものが好ましい。
【0018】
機械式スイッチの投入後ただちに電力変換器を停止すると、例えば電力変換器にコンデンサが接続されている場合、コンデンサから電力変換器を介して放電電流が発生してしまう。したがって、機械式スイッチの投入開始から所定の時間を要してコンデンサの電位を0にした後に電力変換器を停止することによって、放電電流の発生を抑制することができる。
【0019】
制御部が停止制御を行うタイミングとして、前記制御部は、前記電源系統が復電して所定の時間が経過した後に前記停止制御を行うことも考えられる。
【0020】
このような構成であれば、系統電圧の復電が判定されてから所定の時間が経過した後に電力変換器に停止信号を出力するので、スイッチ電流によらず電力変換器を停止させることができ、停止制御を簡易にすることができる。なお、電源系統が復電してから所定の時間とは、機械式スイッチの投入が完了している時間を言う。
【発明の効果】
【0021】
このように構成した本発明によれば、機械式スイッチが投入されてから電力変換器が停止するまでに系統電圧が変化した場合、電力変換器からの短絡電流が発生することによって電力変換器が破損するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態における電源システムの構成を示す模式図である。
図2】本実施形態における電源システムの制御部のブロック図である。
図3】本実施形態における電源システムのシミュレーション結果を示す実験例である。
図4】従来例における電源システムのシミュレーション結果を示す実験例である。
図5】他の実施形態における電源システムの制御部のブロック図である。
図6】他の実施形態における電源システムの制御部のブロック図である。
図7】他の実施形態における電源システムの制御部のブロック図である。
図8】他の実施形態における電源システムのシミュレーション結果を示す実験例である。
図9】他の実施形態における電源システムの制御部のブロック図である。
図10】他の実施形態における電源システムの制御部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る電源システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し、又は、誇張して模式的に描かれている場合がある。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0024】
<1.装置構成>
本実施形態における電源システム100は、図1に示すように、電源系統10と負荷20との間に設けられる。この電源システム100は、電源系統10の正常時に電源系統10から負荷20に給電する。また、電源系統10の短絡事故等により生じる電源系統10の異常時において、電源システム100は、電源系統10から負荷20への給電を遮断して、蓄電部30から負荷20に給電する。その後、電源系統10が復帰すると、電源システム100は電源系統10から負荷20への給電を再開する。なお、本実施形態における電源システム100は、一相であるが、三相であってもよく、相の数は特に限定されない。
【0025】
具体的に電源システム100は、電源系統10から負荷20への給電を開閉によって切り替える機械式スイッチ3と、電源系統10の電圧である系統電圧Vを測定する系統電圧測定部4と、機械式スイッチ3に流れる電流であるスイッチ電流ISWを測定するスイッチ電流測定部5と、機械式スイッチ3と並列に電力線L1に接続される並列回路6と、直流電力を交流電力に変換して電力線L1に給電する電力変換器7と、機械式スイッチ3及び電力変換器7を制御する制御部9とを備える。
【0026】
機械式スイッチ3は、電源系統10から負荷20に給電するための電力線L1に設けられ、機械的な動作で電力線L1の開閉を切り替えるものである。本実施形態において、機械式スイッチ3は、駆動回路(不図示)によって開閉される。機械式スイッチ3は、電源系統10の異常が発生した場合に、電源系統10から負荷20への給電をより速く遮断するために、電源系統10よりも負荷20側に設けられることが好ましいが、これに限定されない。
【0027】
系統電圧測定部4は、系統電圧Vを測定し、その測定された系統電圧Vを制御部9に出力するものである。具体的に系統電圧測定部4は、図1に示すように、系統変圧器を介して電力線L1に接続されており、機械式スイッチ3よりも電源系統10側の電圧を測定している。なお、系統電圧測定部4は、測定した系統電圧Vを測定値として制御部9に出力してもよく、信号として制御部9に出力してもよい。
【0028】
スイッチ電流測定部5は、スイッチ電流ISWを測定し、その測定されたスイッチ電流ISWを制御部9に出力するものである。具体的にスイッチ電流測定部5は、図1に示すように、並列回路6と電力線L1との接続点A及びBの間の電力線L1に設けられる。なお、スイッチ電流測定部5は、測定したスイッチ電流ISWを測定値として制御部9に出力してもよく、信号として制御部9に出力してもよい。
【0029】
蓄電部30は、例えば、二次電池(蓄電池)などの電力貯蔵装置(蓄電デバイス)である。この蓄電部30は、直流電力を貯蔵しており、電源系統10の異常が検出された場合、蓄電部30に貯蔵された直流電力は、電力変換器7へと給電される。
【0030】
電力変換器7は、機械式スイッチ3と並列に電力線L1に接続された並列回路6に設けられている。具体的に電力変換器7は、注入トランスTを介して電力線L1に接続されており、蓄電部30の直流電力を交流電力に変換して電力線L1に給電する。
【0031】
また、電力変換器7と電力線L1との間には、電力変換器7の出力を安定させるインピーダンス素子8が設けられる。具体的にインピーダンス素子8は、電力変換器7に接続され、交流電流を安定にするリアクトル素子81と、リアクトル素子81に接続され、電圧を安定にするコンデンサ82と、インピーダンス素子8に流入する電流を測定するインピーダンス電流測定部83を備える。
【0032】
そして、制御部9は、電源系統10の異常が発生した場合に、機械式スイッチ3及び電力変換器7を制御するものである。制御部9は、系統電圧Vが所定範囲外である場合に、電源系統10の異常と判断して、機械式スイッチ3及び電力変換器7の制御を開始する。ここで言う系統電圧Vの所定範囲外とは、系統電圧Vが例えば定格電圧の93%以下又は107%以上の場合を言う。なお、本実施形態において、制御部9は、電力変換器7のオンとオフを繰り返してスイッチングを行い、電力変換器7から出力される電圧を制御するPWM制御を行うものであるが、制御部9が電力変換器7に対して行う制御方法はPWM制御に限られない。以下、電源系統10の異常が発生した場合における制御部9の制御動作について、図2を参照しつつ説明する。
【0033】
電源系統10の異常が発生した場合、制御部9は、機械式スイッチ3を開放し、電力変換器7が負荷20を補償する補償制御を行う。具体的に制御部9は、機械式スイッチ3を開放するスイッチ開放指令を駆動回路に出力して機械式スイッチ3を制御する。また、制御部9は、負荷電圧が定格電圧である負荷電圧の電圧指令値Vrefと系統電圧Vとの差に基づいて、負荷電圧を補償する補償電圧VSWを出力して電力変換器7を制御し、電力変換器7は、補償電圧VSWを機械式スイッチ3に供給する。
【0034】
しかして、系統電圧Vが復電した後に、制御部9は、機械式スイッチ3を投入し、並列回路6を短絡させるように電力変換器7を制御する。具体的に制御部9は、系統電圧測定部4が測定した系統電圧Vに基づいて、電源系統10の復電を判定する。なお、ここで言う系統電圧Vの復電とは、系統電圧Vが定格電圧と同等である状態が一定時間継続することを言う。
【0035】
制御部9が電源系統10の復電と判定した場合、制御部9は、機械式スイッチ3を投入するスイッチ投入信号を駆動回路に出力して、駆動回路は機械式スイッチ3を投入する。
【0036】
また、制御部9が電源系統10の復電と判定した場合、制御部9は、機械式スイッチ3が投入された状態における並列回路6の電圧を0とするように電力変換器7を制御する。本実施形態において、制御部9は、電源系統10が復電した後に、電圧指令値Vrefと系統電圧Vとの差に関わらず、補償電圧VSWを0とする電圧ゼロ信号Cを出力して、電力変換器7を制御する。
【0037】
さらに、制御部9は、インピーダンス素子8を介して低下する電圧を補償するように電力変換器7を制御する。具体的に制御部9は、インピーダンス電流測定部83が測定したインピーダンス素子8に流入するインピーダンス電流Iinvを取得し、インピーダンス電流Iinv及びインピーダンス素子8のリアクタンスLに基づいて、インピーダンス素子8を介して低下する電圧である低下電圧Vを算出して電力変換器7を制御する。
【0038】
制御部9は、電圧ゼロ信号C及び低下電圧Vにより構成される電圧指令信号を電力変換器7に出力する。この電圧指令信号に基づいて、電力変換器7は、インピーダンス素子8の電圧低下分を補償する電圧を電力線L1に供給するとともに、機械式スイッチ3に対して電圧を補償しない。その結果、電源系統10から見て、並列回路6は、あたかも注入トランスTの一次側で短絡しているかのように見える。
【0039】
すなわち、系統電圧Vが変化しても、制御部9は、電力変換器7からの補償電圧VSWを0に制御するので、系統電圧Vと負荷電圧が等しくなる。その結果、機械式スイッチの投入が完了する前において、電源系統10からの電流は並列回路6を通って負荷20へと流れるので、電力変換器7と機械式スイッチ3との間で短絡電流が発生することはない。また、機械式スイッチ3の投入が完了した場合、電力変換器7からの補償電圧VSWは0であり、機械式スイッチ3が設けられる回路の方が、並列回路6よりもインピーダンスが小さいので、電源系統10からの電流は、機械式スイッチ3から負荷20へと流れ、並列回路6に流れるのを抑制する。
【0040】
系統電圧Vが復電し、かつ、機械式スイッチ3の投入が完了した場合、制御部9は、電力変換器7から電力線L1への給電を停止する停止制御を行う。具体的に制御部9は、スイッチ電流測定部5が測定したスイッチ電流ISWを取得して、スイッチ電流ISWの絶対値が所定値以上であるかどうかを判定する。スイッチ電流ISWが所定値以上である場合、制御部9は、機械式スイッチ3の投入が完了したと判定する。そして、機械式スイッチ3の投入が完了したと判定し、かつ、系統電圧Vが復電された場合をトリガーとして、制御部9は、電力変換器7を停止させる電力変換器停止信号を出力する。電力変換器7は、電力変換器停止信号の出力を受けて停止される。
【0041】
<2.実験例>
上述した制御を行う制御部9のシミュレーション結果を示す実験例、及び、従来の制御によるシミュレーション結果を示す実験例をそれぞれ図3及び図4に示す。なお、図3、4において、横軸は時間、縦軸は、系統電圧、スイッチ電流、負荷電圧、負荷電流、スイッチ電圧、電力変換器電流である。
【0042】
図3に示すように、例えば瞬低が50ms発生するといった、電源系統10の異常が発生すると、機械式スイッチ3が開放されて、スイッチ電流は0となり、制御部9が電力変換器7に対し負荷20の電圧を補償する補償制御を行う。
【0043】
系統電圧が復電されると、制御部9は機械式スイッチ3を投入し、電圧ゼロ信号Cを電力変換器7に出力して、電力変換器7を制御する(時間t1)。電圧ゼロ信号Cにより、補償電圧VSWは出力されなくなるので、系統電圧が低下した場合(時間t2)であっても、系統電圧V及び負荷電圧は等しくなり、電力変換器7から短絡電流が流れることはない。
【0044】
これに対し、従来の制御では、系統電圧が低下すると(時間t2)、電力変換器が系統電圧の低下を補償するように制御されるので、機械式スイッチ3に電位差が生じる。その結果、図4に示すように、機械式スイッチ3及び電力変換器7に過電流が流れ、機械式スイッチ3及び電力変換器7が破損してしまう。
【0045】
<3.本実施形態の効果>
本実施形態によれば、電源系統10が復電した後に、制御部9は機械式スイッチ3を投入するとともに、機械式スイッチ3が投入された状態における並列回路6の電圧を0とするように電力変換器7を制御するので、機械式スイッチ3が投入された状態では、並列回路6及び機械式スイッチ3の電圧は0となる。したがって、系統電圧Vが変化して電圧指令値Vrefと系統電圧Vとの間に電位差が発生した場合であっても、電力変換器7がその電位差を補償しないので、電力変換器7及び機械式スイッチ3により構成される回路において短絡電流が発生することなく、短絡電流による電力変換器7の破損を防ぐことができる。
【0046】
特に本実施形態によれば、電源系統10が復電した後において、制御部9は、電圧指令値Vrefと系統電圧Vとの差に関わらず、電力変換器7が機械式スイッチ3に対して補償する補償電圧VSWを0とする。その結果、電源系統10からはインピーダンス素子8の出力側において短絡が発生しているように見える。これにより、機械式スイッチ3の投入が完了するまでの間において、電源系統10からの電流は、並列回路6を経由して負荷20に流れ、負荷電圧と系統電圧Vとが等しくなる。また、機械式スイッチ3の投入が完了した場合においても、電力変換器7の出力端の電圧は0であるので、並列回路6の電圧は0となり、電源系統10からの電流は、よりインピーダンスの小さい機械式スイッチ3を通って負荷20へと流れる。したがって、機械式スイッチ3の投入が完了する前後において、系統電圧Vが変化しても電源系統10と負荷20との間に電位差は発生しないので、電力変換器7と機械式スイッチ3との間で短絡電流が発生することを防ぐことができ、電力変換器7の破損を防ぐことができる。
【0047】
<4.その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0048】
本実施形態において、制御部9は、系統電圧Vが復電した後、電圧指令値Vrefと系統電圧Vとの差に関わらず、補償電圧VSWを0とするものであったが、制御部9の構成はこれに限られない。具体的には、図5に示すように、系統電圧Vが復電した後、制御部9は、電力変換器7が出力する電圧を0とする電圧ゼロ信号Cを出力して電力変換器7を制御してもよい。これにより、電源系統10が復電した後に、電力変換器7が出力する電圧は0となるので、電力変換器7の出力端の電圧が0になる。すなわち、電源系統が復電した後において、電源系統からは電力変換器の出力端において短絡が発生しているように見える。
【0049】
この場合、機械式スイッチの投入が完了するまでの間において、電源系統10からの電流は、並列回路6を経由して負荷20に流れ、負荷電圧には、系統電圧Vからインピーンダンス素子8を介して低下した電圧Vを差し引いた電圧が印加される。また、機械式スイッチ3の投入が完了した場合においても、電力変換器7の出力端の電圧は0であるので、並列回路6の電圧は0となり、電源系統10からの電流は、機械式スイッチ3を通って負荷へと流れる。その結果、機械式スイッチ3の投入が完了する前後において、系統電圧Vが変化しても電源系統10と負荷20との間に電位差は発生しないので、電力変換器7及び機械式スイッチ3の間で短絡電流は発生せず、短絡電流による電力変換器7の破損を防ぐことができる。
【0050】
本実施形態において、制御部9は、系統電圧Vの復電と判定した後に電圧ゼロ信号Cを出力するものであったが、図6に示すように、制御部9は、系統電圧Vの復電と判定し、かつ、スイッチ電流ISWが所定のしきい値以上の場合に電圧ゼロ信号Cを出力するものとしてもよい。この場合、制御部9は、機械式スイッチ3の投入が完了した後に補償電圧VSWを0とするので、系統電圧Vが変動しても電力変換器7から短絡電流は流れず、電力変換器7の破損を防ぐことができる。
【0051】
本実施形態において、制御部9は、系統電圧Vが復電され、かつ、機械式スイッチ3の投入が完了した場合に、電力変換器停止信号を出力するものであったが、電力変換器停止信号を出力するタイミングはこれに限られない。具体的には、図7に示すように、制御部9は、スイッチ電流ISWが所定のしきい値を超えた場合において、スイッチ投入開始から所定の時間経過後に電力変換器停止信号を出力する遅延回路を設けてもよい。これにより、図8に示すように、スイッチ投入開始の時間t1から経過した所定の時間t3に電力変換器7を停止することで、コンデンサ82からの放電電流を抑制することができる。なお、ここで言うスイッチ投入開始とは、スイッチ投入信号が出力された時点を言う。
【0052】
また、図9に示すように、制御部9は、系統電圧Vの復電と判定してから所定の時間経過後に電力変換器停止信号を出力する遅延回路を設けてもよい。これにより、制御部9は、スイッチ電流ISWを測定せずとも電力変換器7の停止制御を行うことができ、停止制御を簡易にすることができる。なお、電源系統10が復電してから所定の時間とは、機械式スイッチ3の投入が完了している時間を言う。
【0053】
本実施形態において、制御部9は、補償電圧VSWを0とするものであったが、制御部9は、補償電圧VSWを0としなくてもよい。例えば図10に示すように、系統電圧Vが復電した後、制御部9は、補償電圧VSWを所定の値に制限するリミッタ部を設けてもよい。補償電圧VSWを所定の値に制限する制限値は、インピーダンス素子8の合成インピーダンス及び機械式スイッチ3と電力変換器7とに流れる電流の許容値により算出される。
【0054】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
100・・・電源システム
10 ・・・電源系統
20 ・・・負荷
3 ・・・機械式スイッチ
4 ・・・系統電圧測定部
5 ・・・スイッチ電流測定部
6 ・・・並列回路
7 ・・・電力変換器
8 ・・・インピーダンス素子
9 ・・・制御部
L1 ・・・電力線
C ・・・電圧ゼロ信号

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10