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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】放電装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/057 20060101AFI20241011BHJP
   B05B 5/08 20060101ALI20241011BHJP
   A61L 9/015 20060101ALI20241011BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
B05B5/057
B05B5/08 B
A61L9/015
A61L9/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020202308
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089698
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石上 陽平
(72)【発明者】
【氏名】今井 慎
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-255003(JP,A)
【文献】特開2020-035624(JP,A)
【文献】特開2007-054808(JP,A)
【文献】特開2019-046635(JP,A)
【文献】特開2006-122819(JP,A)
【文献】特開2014-231047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 5/057
B05B 5/08
A61L 9/015
A61L 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極を備え、
前記放電電極は、
基端部と、
前記基端部に対して一の方向に延びている先端部と、を有し、
前記放電電極に電圧が印加されることにより前記放電電極に保持されている液体にて前記先端部にテイラーコーンが形成され、
前記先端部は、
前記一の方向において前記基端部側に位置する円柱状の第1部分と、
前記一の方向において前記第1部分よりも前記基端部から離れている円錐状の第2部分と、を有し、
前記第1部分と前記第2部分とは、前記一の方向において連続している、
放電装置。
【請求項2】
前記先端部の一部が前記テイラーコーン内に入り込んでいる、
請求項1に記載の放電装置。
【請求項3】
前記一の方向における前記先端部の全長は、前記先端部の最大径以上の長さである、
請求項1又は2に記載の放電装置。
【請求項4】
前記先端部の前記最大径に対する前記先端部の前記全長の比率は、1.0以上で、かつ1.6以下である、
請求項3に記載の放電装置。
【請求項5】
前記先端部における前記基端部側とは反対側の部分の形状は、R形状である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項6】
前記先端部の最大径は、0.6mm以下である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項7】
前記放電電極に対向している対向電極を更に備える、
請求項1~6のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項8】
前記放電電極と前記対向電極との間で生じる放電によって前記液体が静電霧化される、
請求項7に記載の放電装置。
【請求項9】
前記放電電極に前記液体を供給する液体供給部を更に備える、
請求項1~8のいずれか1項に記載の放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に放電装置に関し、より詳細には、放電電極を備える放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ラジカルを含む水の微粒子(帯電微粒子水)を生成する静電霧化装置(放電装置)が記載されている。特許文献1に記載の静電霧化装置は、放電極(放電電極)と、対向電極と、ペルチェユニット(液体供給部)と、を備える。対向電極は、放電極に対向して位置する。ペルチェユニットは、放電極に水を供給する。
【0003】
特許文献1に記載の静電霧化装置では、放電極と対向電極との間に高電圧を印加して放電を生じさせることにより放電極に供給された水が霧化し、ラジカルを含む帯電微粒子水が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-000826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の静電霧化装置の分野では、ラジカルの生成効率の向上を図ることが望まれている。
【0006】
本開示の目的は、ラジカルの生成効率の向上を図ることが可能な放電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る放電装置は、放電電極を備える。前記放電電極は、基端部と、先端部と、を有する。前記先端部は、前記基端部に対して一の方向に延びている。前記放電装置では、前記放電電極に電圧が印加されることにより前記放電電極に保持されている液体にて前記先端部にテイラーコーンが形成される。前記先端部は、前記一の方向において前記基端部側に位置する円柱状の第1部分と、前記一の方向において前記第1部分よりも前記基端部から離れている円錐状の第2部分と、を有する。前記第1部分と前記第2部分とは、前記一の方向において連続している。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る放電装置によれば、ラジカルの生成効率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る放電装置のブロック図である。
図2図2は、同上の放電装置が備える負荷の斜視図である。
図3図3は、同上の負荷を示し、図2のX1-X1線断面図である。
図4図4は、同上の放電装置が備える放電電極を下側から見た斜視図である。
図5図5は、同上の放電装置の一例を示す回路図である。
図6図6は、同上の放電電極の先端形状を示す模式図である。
図7図7Aは、同上の放電装置の放電形態を概略的に示すグラフである。図7Bは、比較例に係る放電装置の放電形態を概略的に示すグラフである。
図8図8は、実施形態の変形例1に係る放電装置が備える放電電極の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下、本実施形態に係る放電装置10について、図1図8を参照して説明する。
【0011】
ただし、以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、下記の実施形態及び変形例に限定されない。下記の実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
また、下記の実施形態等において説明する各図は、いずれも模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0013】
(1)概要
まず、本実施形態に係る放電装置10の概要について、図1を参照して説明する。
【0014】
本実施形態に係る放電装置10は、図1に示すように、電圧印加装置1と、負荷4と、液体供給部5と、を備えている。電圧印加装置1は、放電を生じさせるための電圧を負荷4に印加する装置であり、電圧印加回路2と、制御回路3と、を有している。負荷4は、放電電極41と、対向電極42と、を有している。つまり、放電電極10は、放電電極41を備えている。また、放電装置10は、対向電極42を更に備えている。対向電極42は、放電電極41と隙間を介して対向するように配置される電極である。負荷4は、放電電極41と対向電極42との間に電圧が印加されることにより、放電電極41と対向電極42との間で放電を生じさせる。液体供給部5は、放電電極41に液体50を供給する機能を有する。このように、本実施形態に係る放電装置10は、電圧印加回路2、制御回路3、液体供給部5、放電電極41、及び対向電極42を、構成要素に含んでいる。ただし、放電装置10は、放電電極41を最低限の構成要素として含んでいればよく、電圧印加装置1、対向電極42、及び液体供給部5の各々は、放電装置10の構成要素に含まれていなくてもよい。
【0015】
本実施形態に係る放電装置10は、例えば、放電電極41の表面に液体50が付着することで放電電極41に液体50が保持されている状態において、放電電極41と対向電極42との間に電圧印加回路2から電圧を印加する。これにより、放電電極41と対向電極42との間で放電が生じ、放電電極41に保持されている液体50が、放電によって静電霧化される。すなわち、本実施形態に係る放電装置10は、いわゆる静電霧化装置を構成する。言い換えると、放電装置10は、放電電極41と対向電極42との間で生じる放電によって放電電極41に保持されている液体50が静電霧化される。本開示において、放電電極41に保持されている液体50、つまり静電霧化の対象となる液体50を、単に「液体50」とも呼ぶ。
【0016】
電圧印加回路2は、放電電極41及び対向電極42に電気的に接続されている。具体的には、対向電極42が電圧印加回路2の正極(プラス)に電気的に接続され、放電電極41が電圧印加回路2の負極(グランド)に電気的に接続されている。電圧印加回路2は、放電電極41と対向電極42との間に電圧を印加する。これにより、負荷4では、放電電極41と対向電極42との間で放電が生じる。
【0017】
放電電極41は、基端部412(図2参照)と、先端部411(図2参照)と、を有している。先端部411は、基端部412に対して一の方向に延びている。一の方向は、例えば、放電電極41の長手方向である。また放電電極41は、例えば基端部412と連続一体となって形成されていて、先端部411に向かって延びている軸部413を更に有している。先端部411の形状は、例えば、円錐部を含む形状である。本実施形態に係る放電装置10では、放電電極41に電圧が印加されることにより、放電電極41に保持されている液体50にて先端部411にテイラーコーン501(図6参照)が形成される。テイラーコーン501の形状は、先端部411の上記円錐部に沿った円錐状である。本実施形態に係る放電装置10では、放電電極41の先端部411の一部(第2部分4112)がテイラーコーン501内に入り込んでいる。
【0018】
本実施形態に係る放電装置10では、放電電極41と対向電極42との間で放電を生じさせることによりラジカルが生成される。ラジカルは、除菌、脱臭、保湿、保鮮、ウイルスの不活性化にとどまらず、様々な場面で有用な効果を奏する基となる。ここで、放電によってラジカルが生成される際には、オゾンも生成される。放電電極41と対向電極42との間で生じる放電において、瞬時的に比較的大きな電流が流れ得る。そのため、放電電極41と対向電極42との間の放電エネルギが大きくなって放電空間が大きく広がることにより、大気中の酸素との反応が促進されてオゾンの生成量が増大する。
【0019】
また、本実施形態に係る放電装置10では、上述したように、放電電極41の先端部411の一部(第2部分4112)がテイラーコーン501内に入り込んでいる。そのため、テイラーコーン501を形成する液体50の体積を小さくすることが可能となり、その結果、液体50の共振周波数を高くすることが可能となる。これにより、放電電極41と対向電極42との間の放電エネルギを小さくすることが可能となり、その結果、放電空間が小さくなるので、大気中の酸素との反応が抑制されてオゾンの生成量を抑制することが可能となる。一方で、放電電極41と対向電極42との間で生じる放電を高周波にて発生させることにより、放電電極41と対向電極42との間の放電による放電空間は広がりにくく、放電電極41の近傍で生じることとなり、水との反応で得られるラジカルについては増大させることが可能となる。すなわち、本実施形態に係る放電装置10によれば、オゾンの生成量を抑制しつつ、ラジカルの生成量を増大させることが可能となり、ラジカルの生成効率の向上を図ることが可能となる。また、放電エネルギを小さくすることが可能となるため、オゾンだけでなく、NO(例えば、環境基本法における環境基準の対象物質であるNO)の発生量も抑制することが可能となる。
【0020】
(2)詳細
次に、本実施形態に係る放電装置10の詳細について、図1図6を参照して説明する。
【0021】
(2.1)全体構成
本実施形態に係る放電装置10は、図1に示すように、電圧印加装置1と、負荷4と、液体供給部5と、を備えている。電圧印加装置1は、電圧印加回路2と、制御回路3と、を有している。負荷4は、放電電極41と、対向電極42と、を有している。液体供給部5は、放電電極41に液体50を供給する。図1では、放電電極41、及び対向電極42の形状を模式的に表している。
【0022】
放電電極41は、棒状の電極である。放電電極41は、図2及び図3に示すように、長手方向の一端部に先端部411を有し、長手方向の他端部(先端部411とは反対側の端部)に基端部412を有している。また放電電極41は、例えば基端部412と連続一体となって形成されていて、先端部411に向かって延びている軸部413を更に有している。先端部411は、基端部412に対して一の方向(放電電極41の長手方向)に延びている。放電電極41は、少なくとも先端部411が先細り形状に形成された針電極である。ここでいう「先細り形状」とは、先端が鋭く尖っている形状に限らず、図6に示すように、先端が丸みを帯びた形状を含む。なお、先端部411の形状については、「(2.3)先端部の形状」の欄で説明する。
【0023】
対向電極42は、放電電極41の先端部411に対向するように配置されている。対向電極42は、例えば、板状であって、中央部に凹部421を有している(図3参照)。凹部421は、対向電極42の一部を放電電極41側に凹ませることにより円錐台状に形成されている。凹部421の底壁4211の中央部には、突台部423が一体に形成されている。突台部423は、凹部421の底壁4211の一部を放電電極41側とは反対側に突出させることにより円錐台状に形成されている。つまり、凹部421の凹設方向(凹部421が凹む方向)と突台部423の突出方向とが反対方向である。突台部423の底壁4231の中央部には、開口部4232が形成されている。開口部4232は、底壁4231を底壁4231の厚さ方向に貫通している。ここで、対向電極42の厚さ方向(開口部4232の貫通方向)が放電電極41の長手方向に一致し、かつ放電電極41の先端部411が対向電極42の開口部4232の中心付近に位置するように、対向電極42と放電電極41との位置関係が決められている。つまり、対向電極42と放電電極41との間には、少なくとも対向電極42の突台部423の開口部4232によって隙間(空間)が確保される。言い換えると、放電電極41は、対向電極42に対して隙間を介して対向するように配置されており、対向電極42とは電気的に絶縁されている。
【0024】
より詳しくは、放電電極41、及び対向電極42の各々は、一例として、図2及び図3に示すような形状に形成される。すなわち、対向電極42は、支持部422と、突台部423と、を備えている。放電電極41、及び対向電極42の各々は、電気絶縁性を有する合成樹脂製のハウジング40に保持されている。支持部422は、平板状であって、放電電極41側に円錐台状に凹む凹部421が形成されている。凹部421の底壁4211には、放電電極41側とは反対側に円錐台状に突出する突台部423が一体に形成されている。突台部423の底壁4231には、円形状に開口する開口部4232が形成されている。この場合、突台部423の底壁4231に形成された開口部4232の開口端縁と放電電極41の先端部411との間で放電が生じる。
【0025】
放電電極41の基端部412は、図4に示すように、円板状に形成されている。基端部412は、第1面4121及び第2面4122を有している。第1面4121は、基端部412における先端部411側の面である。軸部413は、図4に示すように、長尺の円柱状に形成されており、その第一端部(図4では下端部)は、第1面4121の略中央部に配置されている。また軸部413は、第一端部の反対側の第二端部(図4では上端部)は、後述する絞り部4113(図6参照)を介して、先端部411につながっている。第2面4122は、基端部412における先端部411側とは反対側の面である。すなわち、第1面4121と第2面4122とは、放電電極41の長手方向(一の方向)において互いに対向している。基端部412の第2面4122には、第2面4122の全域にわたって電流制限要素43が形成されている。ここで、図4では、電流制限要素43と後述の導通部材44とを区別しやすいように、電流制限要素43に対してドットハッチングを施している。電流制限要素43は、放電電極41における対向電極42側とは反対側の基端部412に対して直接的かつ電気的に接続されている。より詳しくは、電流制限要素43は、基端部412の第2面4122に対して直接的かつ電気的に接続されている。電流制限要素43の形状は、放電電極41の長手方向から見て円形状である。電流制限要素43は、例えば、酸化炭化シリコン(SiCO)からなる絶縁膜である。電流制限要素43は、基端部412の第2面4122に対して、例えば、化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)により形成される。電流制限要素43は、例えば、厚さが4μmの薄膜である。本開示において、「薄膜」とは、厚さが10μm以下の薄い膜のことをいう。電流制限要素43は、図5に示すように、抵抗素子431を含む。すなわち、本実施形態においては、絶縁膜は、2つの要素(ここでは、放電電極41と一対のペルチェ素子511)を電気的に絶縁する膜ではなく、2つの要素間において抵抗素子431としての機能を有する膜である。電流制限要素43の抵抗値は、例えば、1MΩ以上であることが好ましい。より好ましくは、電流制限要素43の抵抗値は、10MΩ以上であるのがよい。電流制限要素43の抵抗値は、一例として、300MΩである。電流制限要素43は、上述したように、抵抗素子431としての機能を有する絶縁膜を含む。
【0026】
電流制限要素43の表面(放電電極41の基端部412側とは反対側の面)には、導通部材44が形成されている(図4参照)。導通部材44の形状は、放電電極41の長手方向から見て、電流制限要素43よりも径の小さい円形状である。導通部材44は、例えば、薄膜である。導通部材44は、後述する一対のペルチェ素子511を導通させる機能を有する。本実施形態に係る放電装置10では、一対のペルチェ素子511は、導通部材44に対して、例えば、半田により機械的かつ電気的に接続される。ここにおいて、電流制限要素43は、上述したように、薄膜である。したがって、放電電極41と一対のペルチェ素子511との間に電流制限要素43が介在していても、一対のペルチェ素子511による放電電極41の冷却性能を維持することが可能となる。
【0027】
液体供給部5は、放電電極41に対して静電霧化用の液体50を供給する。液体供給部5は、一例として、放電電極41を冷却して、放電電極41に結露水を発生させる冷却装置51を用いて実現される。具体的には、冷却装置51は、一例として、図3に示すように、一対のペルチェ素子511と、一対の放熱板512と、を備えている。一対のペルチェ素子511は、一対の放熱板512に保持されている。冷却装置51は、一対のペルチェ素子511への通電によって放電電極41を冷却する。一対の放熱板512は、一対の放熱板512の各々における一部がハウジング40に埋め込まれることにより、ハウジング40に保持されている。一対の放熱板512のうち、少なくともペルチェ素子511を保持する部位は、ハウジング40から露出している(図3参照)。
【0028】
一対のペルチェ素子511は、上述したように、導通部材44に対して、例えば、半田により機械的かつ電気的に接続されている。したがって、一対のペルチェ素子511は、電流制限要素43を介して放電電極41に接している。また、一対のペルチェ素子511は、一対の放熱板512に対して、例えば、半田により機械的かつ電気的に接続されている。一対のペルチェ素子511への通電は、一対の放熱板512、導通部材44、電流制限要素43及び放電電極41を通じて行われる。したがって、液体供給部5を構成する冷却装置51は、基端部412を通じて放電電極41の全体を冷却する。これにより、空気中の水分が凝結して放電電極41の表面に結露水として付着する。結果的に、液体50が放電電極41に保持される。すなわち、液体供給部5は、放電電極41を冷却して放電電極41の表面に液体50としての結露水を生成するように構成されている。この構成では、液体供給部5は、空気中の水分を利用して、放電電極41に液体50(結露水)を供給できるため、放電装置10への液体の供給、及び補給が不要になる。
【0029】
電圧印加回路2は、図1に示すように、駆動回路21と、昇圧回路B1として機能する電圧発生回路22と、を有している。駆動回路21は、電圧発生回路22を駆動する回路である。電圧発生回路22は、入力部6からの電力供給を受けて、負荷4に印加する電圧(印加電圧)を生成する回路である。入力部6は、例えば、数V~十数V程度の直流電圧を発生する電源回路である。本実施形態では、入力部6が電圧印加装置1の構成要素に含まれないこととして説明するが、入力部6は電圧印加装置1の構成要素に含まれていてもよい。駆動回路21、及び電圧発生回路22(昇圧回路B1)の具体的な回路構成については、「(2.2)回路構成」の欄で説明する。
【0030】
電圧印加回路2は、負荷4(放電電極41及び対向電極42)に対して電気的に接続されている(図5参照)。電圧印加回路2は、負荷4に対して高電圧を印加する。ここでは、電圧印加回路2は、放電電極41を負極(グランド)、対向電極42を正極(プラス)として、放電電極41と対向電極42との間に高電圧を印加するように構成されている。言い換えると、電圧印加回路2から負荷4に高電圧が印加された状態では、放電電極41と対向電極42との間に、対向電極42側を高電位、放電電極41側を低電位とする電位差が生じることになる。ここでいう「高電圧」とは、放電電極41に放電が生じるように設定された電圧であればよく、一例として、ピークが7.0kV程度となる電圧である。ただし、電圧印加回路2から負荷4に印加される高電圧は、7.0kV程度に限らず、例えば、放電電極41及び対向電極42の形状、又は放電電極41及び対向電極42間の距離等に応じて適宜設定される。
【0031】
ここで、電圧印加回路2の動作モードには、第1モードと、第2モードと、の2つのモードが含まれている。第1モードは、印加電圧を時間経過に伴って上昇させ、絶縁破壊に至らせて放電を開始し、放電電流を生じさせるためのモードである。第2モードは、放電を終わらせるために、制御回路3等により放電電流を遮断するためのモードである。つまり、電圧印加回路2は、動作モードとして、第1モードと、第2モードとを有する。第1モードは、入力電圧Vinを時間経過に伴って上昇させ、放電電流を生じさせるためのモードである。第2モードは、放電電流を遮断するためのモードである。
【0032】
制御回路3は、電圧印加回路2の制御を行う。制御回路3は、電圧印加装置1が駆動される駆動期間において、電圧印加回路2が第1モードと第2モードとを交互に繰り返すように、電圧印加回路2を制御する。ここで、制御回路3は、電圧印加回路2から負荷4に印加される印加電圧(後述するトランス電圧)の大きさを、駆動周波数により周期的に変動させるように、駆動周波数により第1モードと第2モードとの切り替えを行う。
【0033】
これにより、放電電極41に保持されている液体50に作用する電気エネルギの大きさが駆動周波数にて周期的に変動することになり、結果的に、放電電極41に保持されている液体50が駆動周波数にて機械的に振動する。ここで、電圧発生回路22(昇圧回路B1)は、印加電圧の変動の周波数(駆動周波数)が、放電電極41に保持されている液体50の共振周波数(固有振動数)以上となるように印加電圧の大きさを変動させる。なお、駆動周波数は、液体50の共振周波数付近の値に設定されているほど、印加電圧の大きさが変動することに伴う液体50の機械的な振動の振幅は、比較的大きくなる。
【0034】
本実施形態では、制御回路3は、監視対象に基づいて電圧印加回路2を制御する。ここでいう「監視対象」は、電圧印加回路2の出力電流、及び出力電圧の少なくとも一方である。
【0035】
ここでは、制御回路3は、図1及び図5に示すように、電圧制御回路31と、電流制御回路32と、を有している。電圧制御回路31は、電圧印加回路2の出力電圧からなる監視対象に基づいて、電圧印加回路2の駆動回路21を制御する。制御回路3は、駆動回路21に対して制御信号Si1を出力しており、制御信号Si1によって駆動回路21を制御する。電流制御回路32は、電圧印加回路2の出力電流からなる監視対象に基づいて、電圧印加回路2の駆動回路21を制御する。すなわち、本実施形態では、制御回路3は、電圧印加回路2の出力電流、及び出力電圧の両方を監視対象として、電圧印加回路2の制御を行う。ただし、電圧印加回路2の出力電圧(二次側電圧)と、電圧印加回路2の一次側電圧との間には相関関係があるので、電圧制御回路31は、電圧印加回路2の一次側電圧から間接的に電圧印加回路2の出力電圧を検出してもよい。同様に、電圧印加回路2の出力電流(二次側電流)と、電圧印加回路2の入力電流(一次側電流)との間には相関関係があるので、電流制御回路32は、電圧印加回路2の入力電流から間接的に電圧印加回路2の出力電流を検出してもよい。電圧制御回路31、及び電流制御回路32の具体的な回路構成については、「(2.2)回路構成」の欄で説明する。
【0036】
制御回路3は、監視対象の大きさが閾値未満であれば電圧印加回路2を第1モードで動作させ、監視対象の大きさが閾値以上になると電圧印加回路2を第2モードで動作させるように構成されている。すなわち、監視対象の大きさが閾値に達するまでは、電圧印加回路2は第1モードで動作し、印加電圧が時間経過に伴って上昇する。このとき、放電電極41においては、絶縁破壊によりコロナ放電が開始し放電電流が生じることになる。監視対象の大きさが閾値に達すると、電圧印加回路2は第2モードで動作し、印加電圧が低下する。このとき、放電電極41と対向電極42の間の電位差が失われ、制御回路3等により放電電流が遮断されることになる。言い換えれば、制御回路3等が、電圧印加回路2を介して負荷4の放電を検知し、印加電圧を低下させることにより放電電流を消滅(立ち消え)させる。
【0037】
これにより、駆動期間において、電圧印加回路2は、第1モードと第2モードとを交互に繰り返すように動作し、印加電圧の大きさが駆動周波数にて周期的に変動する。その結果、放電電極41においては、間欠的に放電が繰り返される。
【0038】
さらに詳しく説明すると、放電装置10は、まず放電電極41の先端部411に保持された液体50で局所的なコロナ放電を生じさせるが、放電の開始後すぐに第2モードに転じ、放電電極41と対向電極42の間で放電が間欠的に生成される。
【0039】
図7Aは、本実施形態における放電装置10の放電形態(電圧波形Vx1と電流波形Ix1)を示すグラフである。図7Aにおいては、横軸を時間軸として、左側の縦軸に電圧印加回路2の出力電圧(印加電圧、すなわちトランス電圧)を示し、右側の縦軸に放電電流を示している。印加電圧が上昇し液体50の先端で絶縁破壊が発生し、コロナ放電により微小放電が生じる。印加電圧が最大値V1では、放電が形成された状態になり、その後電圧を急速に低下させることにより放電が停止する。なお、図7Bは、比較例の放電装置の放電形態を示すグラフであり、詳細は後述する。
【0040】
図7Aに示すように、印加電圧(トランス電圧)の大きさは、放電周期T1で周期的に変動しており、駆動周波数を「f1」とすると、放電周期T1は、駆動周波数f1の逆数(1/f1)で表される。なお、本実施形態では、例えば、印加電圧(トランス電圧)の大きさは、駆動期間において0Vを超える範囲で変動する。ここでは、印加電圧の最小値V0は、0Vより大きく、印加電圧の大きさは、最小値V0と最大値V1との間で変動する。印加電圧は、各放電周期T1において、時間経過に対して略線形に増加し、また略線形に減少する。
【0041】
各放電周期T1において、制御回路3は、監視対象の大きさが閾値未満であれば、つまり、印加電圧が閾値(例えば、図7Aの最大値V1)に到達し、かつ出力電流が閾値(例えば、図7Aの閾値I1)に到達するまでは、電圧印加回路2を第1モードで動作させる。そして、各放電周期T1において、制御回路3は、監視対象の大きさが閾値以上になると、つまり、出力電流が閾値以上になると、電圧印加回路2を第2モードで動作させる。
【0042】
ところで、駆動周波数f1は、上述したように、放電電極41に保持されている液体50の共振周波数fr1(固有振動数)以上となるように設定される。液体50の共振周波数fr1は、例えば、液体50の体積(量)に依存し、fr1=a×V^-0.5にて表される。「V」は、放電電極41に保持されている液体50の体積である。「a」は、放電電極41に保持されている液体50の表面張力及び粘度等に依存する比例係数である。したがって、放電電極41に保持される液体50の体積を減らすことで、液体50の共振周波数fr1を増加させることにつながる。
【0043】
本実施形態に係る放電装置10は、放電電極41に液体50(結露水)が供給(保持)されている状態で、電圧印加回路2から負荷4に電圧を印加する。これにより、負荷4においては、放電電極41及び対向電極42間の電位差によって、放電電極41と対向電極42との間に放電が生じる。このとき、放電電極41に保持されている液体50が、放電によって静電霧化される。その結果、放電装置10では、ラジカルを含有するナノメータサイズの帯電微粒子液が生成される。つまり、放電装置10は、いわゆる帯電微粒子液生成装置を構成する。生成された帯電微粒子液は、例えば、対向電極42の開口部4232を通して、放電装置10の周囲に放出される。
【0044】
(2.2)回路構成
次に、電圧印加装置1の具体的な回路構成について、図5を参照して説明する。図5は、放電装置10の回路構成の一例を概略的に示す回路図である。なお、図5では、入力部6の図示を省略している。
【0045】
電圧印加回路2は、上述したように、駆動回路21と、電圧発生回路22と、を有している。図5の例では、電圧印加回路2は、絶縁型のDC/DCコンバータである。電圧印加回路2は、入力部6からの入力電圧Vin(例えば13.8V)を昇圧し、昇圧後の電圧を出力電圧として出力する昇圧回路B1を有する。ここでは、電圧発生回路22が昇圧回路B1として機能する。昇圧回路B1の出力電圧は、印加電圧として負荷4(放電電極41、及び対向電極42)に印加される。すなわち、電圧印加回路2は、負荷4に電圧を印加することにより、放電電極41に放電を生じさせる。
【0046】
電圧発生回路22(昇圧回路B1)は、一次巻線221、二次巻線222、及び補助巻線223を具備する、絶縁トランス220(昇圧トランス)を有している。一次巻線221、及び補助巻線223は、二次巻線222に対して電気的に絶縁されており、かつ磁気的に結合されている。二次巻線222の一端には対向電極42が電気的に接続されている。つまり、昇圧回路B1は、一次側(一次巻線221側)に入力される入力電圧Vinを昇圧して、負荷4と電気的に接続された二次側(二次巻線222側)から出力電圧を印加する昇圧トランス(絶縁トランス220)を含む。
【0047】
ここで、昇圧回路B1は、液体50の共振周波数以上の周波数で出力電圧を周期的に変動させることが可能なように構成される。特に、本実施形態では、昇圧トランス(絶縁トランス220)の二次側(二次巻線222側)のインダクタンスの値は、液体50の共振周波数以上の周波数で出力電圧を変動させることが可能な大きさに設定されている。
【0048】
ここでいう「二次側のインダクタンス」は、二次側(二次巻線222側)の有効インダクタンスであり、二次巻線222側の自己インダクタンスLに、結合係数k(0~1)を掛け合わせたものある。二次側のインダクタンスの値は、コアの透磁率、二次巻線222の巻き数や、長さ、断面積等を調整することで設定され得る。
【0049】
本実施形態では、昇圧トランス(絶縁トランス220)の二次側のインダクタンスの値は、900mH以下である。具体的には、二次側のインダクタンスの値は、下限値として50mH以上であり、かつ900mH以下である。好ましくは500mH以下であり、より好ましくは100mH以下である。
【0050】
このようにインダクタンスの値を設定することで、液体50の共振周波数が比較的高い場合(例えば1.5kHz以上)であっても、昇圧回路B1は、その共振周波数に追随できるように共振周波数以上の駆動周波数で出力電圧を変動させることが可能になる。
【0051】
駆動回路21は、トランジスタQ1を有し、トランジスタQ1のスイッチング動作により、絶縁トランス220の一次巻線221に電力を供給するように構成されている。駆動回路21は、トランジスタQ1の他、トランジスタQ2、トランジスタQ3、及び抵抗R1~R5を有している。トランジスタQ1,Q2,Q3は、一例として、npn型のバイポーラトランジスタからなる。
【0052】
トランジスタQ1のコレクタは一次巻線221に接続され、トランジスタQ1のエミッタは抵抗R1を介してグランドに接続されている。一次巻線221、トランジスタQ1、及び抵抗R1の直列回路には、入力部6から入力電圧Vinが印加される。トランジスタQ1のベースは、抵抗R2を介して制御電源Vccに接続されている。制御電源Vccは、駆動回路21に対して制御電圧(例えば5.1V)を印加する。
【0053】
トランジスタQ2,Q3のコレクタは、トランジスタQ1のベースに接続されている。トランジスタQ2,Q3のエミッタは、グランドに接続されている。トランジスタQ2のベースは、抵抗R3を介してトランジスタQ1のエミッタに接続されている。トランジスタQ1のベースは、抵抗R4,R5の並列回路を介して補助巻線223の一端に接続されている。補助巻線223の他端はグランドに接続されている。トランジスタQ3のベースには、制御回路3(電圧制御回路31、及び電流制御回路32)が接続され、制御回路3から制御信号Si1が入力される。
【0054】
上記構成により、電圧印加回路2は自励式のコンバータを構成する。すなわち、トランジスタQ1がオンして、絶縁トランス220の一次巻線221に電流が流れると、抵抗R1の両端電圧が上昇してトランジスタQ2がオンする。これにより、トランジスタQ1のベースがトランジスタQ2を介してグランドに接続されるため、トランジスタQ1がオフする。トランジスタQ1がオフすると、一次巻線221を流れる電流が遮断され、抵抗R1の両端電圧が低下してトランジスタQ2がオフする。これにより、絶縁トランス220の二次巻線222に高電圧が誘起され、電圧印加回路2の出力電圧として負荷4に印加される。このとき、二次巻線222に生じた誘起電圧によって補助巻線223にも電圧が誘起され、トランジスタQ1のベース-エミッタ間電圧が上昇してトランジスタQ1がオンする。電圧印加回路2は、上記動作を繰り返すことにより、入力電圧Vinを昇圧し、負荷4に対して出力電圧を印加する。
【0055】
制御回路3は、図5に示すように、電圧制御回路31と、電流制御回路32と、を有している。
【0056】
電圧制御回路31は、ダイオードD1、抵抗R6、コンデンサC1、及びツェナダイオードZD1を有している。ダイオードD1のアノードは、補助巻線223と抵抗R4,R5との接続点に接続されている。ダイオードD1のカソードは、抵抗R6を介してコンデンサC1の一端に接続されている。コンデンサC1の他端は、グランドに接続されている。さらに、コンデンサC1の一端(抵抗R6との接続点)には、ツェナダイオードZD1のカソードが接続されている。ツェナダイオードZD1のアノードは、電圧制御回路31の出力端として、トランジスタQ3のベースに接続されている。
【0057】
上記構成により、電圧制御回路31は、補助巻線223の誘起電圧を監視することによって、監視対象となる電圧印加回路2の出力電圧(二次巻線222の誘起電圧)を間接的に監視する。つまり、電圧印加回路2の出力電圧が閾値(最大値V1)未満の間は、電圧制御回路31のツェナダイオードZD1はオフである。一方、電圧印加回路2の出力電圧が閾値(最大値V1)以上になれば、電圧制御回路31のツェナダイオードZD1がオンする。このとき、制御信号Si1が制御閾値を超え、トランジスタQ3のベース-エミッタ間に電圧が印加されてトランジスタQ3がオンする。これにより、トランジスタQ1のベース電流がトランジスタQ3を介してグランドに流れるため、トランジスタQ1のコレクタ電流が減少する。よって、電圧制御回路31は、電圧印加回路2の出力電圧が閾値(最大値V1)以上であれば、電圧印加回路2の駆動回路21のスイッチングエネルギを減少させる。
【0058】
電流制御回路32は、オペアンプOP1、基準電圧生成部321、抵抗R7~R11、及びコンデンサC2,C3を有している。コンデンサC2の一端は抵抗R7を介して制御電源Vccに接続されている。コンデンサC2の他端はグランドに接続されている。制御電源Vccは、抵抗R7、及びコンデンサC2の直列回路に対して制御電圧(例えば5.1V)を印加する。抵抗R7とコンデンサC2との接続点(コンデンサC2の一端)は、抵抗R8を介してオペアンプOP1の反転入力端子に接続されている。また、抵抗R7とコンデンサC2との接続点(コンデンサC2の一端)には、絶縁トランス220の二次巻線222における、対向電極42とは反対側の端部(他端)が接続されている。言い換えると、制御電源Vccは、抵抗R7、及び二次巻線222を介して対向電極42に接続されている。オペアンプOP1の非反転入力端子には、基準電圧生成部321が接続されており、基準電圧生成部321から基準電圧が入力される。オペアンプOP1の反転入力端子-出力端子間には、抵抗R9、及びコンデンサC3の直列回路が接続されている。オペアンプOP1の出力端子には、抵抗R10の一端が接続されている。抵抗R10の他端は、抵抗R11を介してグランドに接続されている。抵抗R10と抵抗R11との接続点(抵抗R10の他端)は、電流制御回路32の出力端として、トランジスタQ3のベースに接続されている。
【0059】
上記構成により、電流制御回路32は、二次巻線222の誘導電流を監視することによって、監視対象となる電圧印加回路2の出力電流(二次巻線222の誘導電圧)を監視する。つまり、電圧印加回路2の出力電流が閾値未満の間は、電流制御回路32のオペアンプOP1の出力はLレベル(Low Level)である。電圧印加回路2の出力電流が閾値以上になると、電流制御回路32のオペアンプOP1の出力がHレベル(High Level)になる。このとき、制御信号Si1が制御閾値を超え、トランジスタQ3のベース-エミッタ間に電圧が印加されてトランジスタQ3がオンする。これにより、トランジスタQ1のベース電流がトランジスタQ3を介してグランドに流れるため、トランジスタQ1のコレクタ電流が減少する。よって、電流制御回路32は、電圧印加回路2の出力電流が閾値以上であれば、電圧印加回路2の駆動回路21から電圧発生回路22に投入されるエネルギを減少させる。
【0060】
(2.3)先端部の形状
次に、放電電極41の先端部411の形状について、図6を参照して説明する。図6では、先端部411と先端部411に形成されているテイラーコーン501とを区別しやすいように、テイラーコーン501に対してドットハッチングを施している。
【0061】
放電電極41の先端部411の形状は、図6に示すように、例えば、円錐部を含んだ形状である。先端部411のうち対向電極42との対向部分の形状(ここでは円錐部の先端の形状)は、例えば、R形状である。すなわち、先端部411における基端部412側とは反対側の部分の形状は、R形状である。
【0062】
先端部411は、第1部分4111と、第2部分4112と、を有している。第1部分4111は、先端部411において第2部分4112よりも基端部412に近い部分であり、円柱状である。第2部分4112は、先端部411において第1部分4111よりも基端部412から遠い部分であり、円錐状である。要するに、先端部411は、円柱部に相当する第1部分4111と、円錐部に相当する第2部分4112とを有している。
【0063】
第1部分4111、及び第2部分4112は、放電電極41の長手方向において、基端部412側から第1部分4111、第2部分4112の順に並んでいる。なお、第2部分4112の形状は、図6に示すように略円錐状が好ましいが、それに限定されない。第2部分4112の形状は、対向電極42に向かって凸となるような曲面形状でもよく、具体的には、半球状、又は釣鐘状(ベル状)等としてもよい。また、本実施形態の先端部411では、第2部分4112(円錐部)と、それとは異なる形状の第1部分4111(円柱部)とを組み合わせた形状としている。先端部411は、例えば第1部分4111が省略されて、全体として単一の形状の部位(例えば円錐部)のみから構成されてもよい。
【0064】
また本実施形態では一例として、先端部411と軸部413との間には、絞り部4113が設けられている。すなわち、絞り部4113を介して先端部411と軸部413とがつながっている。絞り部4113は、先端部411の端縁4114から軸部413に近づくほど径が小さくなるテーパ状に形成されている。絞り部4113が設けられていることで、軸部413側で生じた余剰な結露水が先端部411側の結露水(テイラーコーン)と合流してしまうことが抑制され得る。なお、同様の合流抑制の効果を得るために、先端部411と軸部413との間に、絞り部4113に代えて、先端部411及び軸部413の両方よりも径方向に張り出すように大きな径を有した張り出し部が設けられてもよい。また、テーパ状の絞り部4113に代えて、先端部411と軸部413の間に段差部を設けるようにしてもよい。
【0065】
円錐部を含んだ先端部411の最大径は、第1部分4111の最大径D11に等しい(以下、先端部411の最大径を、「最大径D11」ともいう)。先端部411の最大径D11は、例えば、0.35mm以上で、かつ1.5mm以下であることが好ましい。先端部411の最大径D11は、一例として、0.710mmである。第2部分4112の頂角θ1は、一例として、47.580°である。また、先端部411の全長(放電電極41の長手方向における先端部411の長さ寸法)L1は、一例として、0.830mmである。ここでは一例として、先端部411の全長L1は、図6に示すように、第1部分4111の最大径D11を径とする略円柱部分における基端部412側の端縁4114から第2部分4112の先端までの長さとする。なお、第1部分4111が省略される場合には、先端部411の全長L1は、第2部分4112の長さとなる。
【0066】
ここで、先端部411の最大径D11が1.5mmの場合、先端部411の最大径D11に対する先端部411の全長L1の比率は、1.6である。また、先端部411の最大径D11が0.35mmの場合、先端部411の最大径D11に対する先端部411の全長L1の比率は、1.0である。すなわち、本実施形態に係る放電装置10では、先端部411の最大径D11に対する、一の方向(放電電極41の長手方向)における先端部411の全長L1の比率(以下、「第1比率」ともいう)は、1.0以上で、かつ1.6以下である。言い換えると、一の方向における先端部411の全長L1は、先端部411の最大径D11以上の長さである。例えば、先端部411の最大径D11が0.710mmで、先端部411の全長L1が0.830mmの場合、第1比率は1.169である。このように、第1比率が1.0以上で、かつ1.6以下であれば、テイラーコーン501を形成する液体50の体積を小さくすることが可能となり、その結果、液体50の共振周波数を高くすることが可能となる。これにより、放電電極41と対向電極42との間の放電エネルギを小さくすることが可能となり、その結果、放電空間が小さくなるので、大気中の酸素との反応が抑制されてオゾンの生成量を抑制することが可能となる。一方で、放電電極41と対向電極42との間で生じる放電を高周波にて発生させることにより、放電電極41と対向電極42との間の放電による放電空間は広がりにくく、放電電極41の近傍で生じることとなり、水との反応で得られるラジカルについては増大させることが可能となる。すなわち、本実施形態に係る放電装置10によれば、オゾンの生成量を抑制しつつ、ラジカルの生成量を増大させることが可能となり、ラジカルの生成効率の向上を図ることが可能となる。
【0067】
ところで、放電電極41と対向電極42との間に電圧を印加させることにより、放電電極41に保持させた液体50にて放電電極41の先端部411にテイラーコーン501が形成される。テイラーコーン501の形状は、図6に示すように、放電電極41の先端部411の円錐部に沿った円錐状である。放電電極41の先端部411のうち第2部分4112は、テイラーコーン501内に入り込んでいる。すなわち、本実施形態に係る放電装置10では、第2部分4112により、テイラーコーン501内に入り込んでいる先端部411の一部が構成されている。
【0068】
また、上述したように、テイラーコーン501を形成する液体50の共振周波数を高くするためには、テイラーコーン501の体積に対する、放電電極41の先端部411の第2部分4112の体積の比率(以下、「第2比率」ともいう)は、0.6以上で、かつ0.95であることが好ましい。一例として、テイラーコーン501の体積が0.0917mmで、第2部分4112の体積が0.0650mmの場合、第2比率は0.71である。例えば、上記形状を有さない場合、テイラーコーン501を形成する液体50の体積が0.23μLであり、このとき液体50の共振周波数が1kHzであるのに対し、上記形状を有する本実施形態の形状では、テイラーコーン501を形成する液体50の体積が0.076μLであり、このとき液体50の共振周波数は3kHzとなる。このように、テイラーコーン501を形成する液体50の体積を小さくすることにより、液体50の共振周波数を高くすることが可能となる。
【0069】
本実施形態に係る放電装置10では、上述したように、放電電極41の先端部411のうち第2部分4112がテイラーコーン501内に入り込んでいる。この場合、テイラーコーン501の外周縁502は、第1位置と第2位置との間に位置していることが好ましい。テイラーコーン501の外周縁502は、テイラーコーン501のうち、放電電極41と対向電極42とが並ぶ方向において対向電極42から最も遠い部分である。図6の例では、テイラーコーン501の外周縁502の形状は、放電電極41の長手方向から見て円環状である。第1位置は、先端部411の先端からの距離が先端部411の全長L1の0.62倍の位置である。第2位置は、先端部411の先端からの距離が先端部411の全長L1の1.00倍の位置である。例えば、上述したように、先端部411の全長L1が0.830mmの場合、テイラーコーン501の外周縁502は、先端部411の先端からの距離が0.515mmの位置(第1位置)と0.830mmの位置(第2位置)の間に位置する。
【0070】
(2.4)放電回数の改善
以下、本実施形態に係る放電装置10における放電回数の改善について、図7A、及び図7Bを参照して説明する。
【0071】
上述の通り、負荷4への印加電圧、すなわち出力電圧(トランス電圧)の大きさを駆動周波数(放電周波数)で変動させることで、放電電極41に保持されている液体50に作用する電気エネルギの大きさが、その駆動周波数にて周期的に変動する。結果的に、液体50が駆動周波数にて機械的に振動する。そして、駆動周波数が、液体50の共振周波数以上に設定されていると、印加電圧の大きさが変動することに伴う液体50の機械的な振動の振幅は、比較的大きくなる。液体50の振幅が増加すると、テイラーコーン501(図6参照)の先端部がより尖った(鋭利な)形状となり、放電しやすくなる。
【0072】
ところで、放電装置10では、放電開始後に、第2モードにて電圧を低下させることにより、コロナ放電で生じる持続放電を停止させることが可能であり、オゾンの発生しやすい持続放電を停止することが可能である。この放電を高速で繰り返すことにより、つまり駆動周波数を高くすることで、オゾンの増大を抑制しつつ、ラジカルを大量に発生させることが可能である。
【0073】
ここで、液体50の共振周波数は、上述の通り、放電電極41に保持される液体50の体積に依存する。そして、放電電極41の先端部411の形状が上述のように設定されていることで放電電極41に保持される液体50の体積を減らして、液体50の共振周波数の増加を実現している。上記形状を有さない放電電極に保持される液体の共振周波数が、例えば1kHzとすると、上記形状を有する放電電極41に保持される液体50の共振周波数は、1.5kHz以上(例えば3kHz)となる。1.5kHz以上に増加した共振周波数に追随して、駆動周波数も1.5kHz以上(例えば共振周波数が3kHzなら、3kHz~5kHz)に高くすることで、結果的に、液体50の機械的な振動の振幅が増加して、放電効率が向上する。
【0074】
一方で、1.5kHz以上に増加した共振周波数に追随できるように、駆動周波数も高くするためには、第1モードにおけるトランス電圧を、閾値(最大値V1)まで素早く昇圧させる必要がある。また、前述のコロナ放電で生じる持続放電が継続した状態であると、新たな霧化放電が形成できない可能性があり、持続放電を停止した上で、次の霧化放電を発生させることが必要である。持続放電の停止には、トランス電圧を低下させる、又はトランス電圧によって形成されるテイラーコーン501の尖りが緩和されることが必要であり、トランス電圧の降下速度を高める必要がある。
【0075】
そこで、本実施形態では、トランス電圧の昇降下の速度を高めるために、昇圧トランス(絶縁トランス220)の二次側のインダクタンスの値を、900mH以下に設定している。
【0076】
図7Bは、比較例の放電装置の放電形態(電圧波形Vx1と電流波形Ix1)を示すグラフである。図7Bにおいても、図7Aと同様に、横軸を時間軸として、左側の縦軸に電圧印加回路の出力電圧(印加電圧、すなわちトランス電圧)を示し、右側の縦軸に放電電流を示している。図7Bで示すトランス電圧の最大値V2(閾値)は、図7Aで示すトランス電圧の最大値V1(閾値)と同じであるとするが、最大値V1と異なってもよい。また、図7Bで示す放電電流の閾値I2は、図7Aで示す放電電流の閾値I1と同じであるとするが、閾値I1と異なってもよい。図7A図7Bの横軸の時間スケールは同じであるとする。
【0077】
比較例の放電装置では、昇圧トランスの二次側のインダクタンスの値を、例えば3000mHに設定しており、ただし、上述した放電電極41の先端部411の形状を採用しており、液体50の共振周波数の増加が図られている。本来であれば、増加した共振周波数に追随して駆動周波数も高めることが望まれるが、3000mHに設定された比較例では、最大値V2まで昇圧する時間が遅く、また最小値V0まで降圧する時間も遅く、駆動周波数f2は1kHz程度である。結果的に、比較例における放電周期T2は、放電周期T1に比べて長い。
【0078】
一方、900mH以下に設定にされた本実施形態の放電装置10では、比較例の放電装置に比べて、最大値V1まで昇圧する時間が早く、また最小値V0まで降圧する時間も早い。図示例では、放電周期T1は、放電周期T2の略半分である。つまり、所定期間内における放電装置10の放電回数は、比較例の放電装置の略2倍である。
【0079】
このように、二次側のインダクタンスの値が900mH以下に設定にされた本実施形態の昇圧トランス(絶縁トランス220)は、液体50の共振周波数以上の周波数で出力電圧を周期的に変動させることが可能な構成となっている。そのため、放電装置10の放電回数が増加され、結果的に、ラジカルの生成効率の向上を図ることが可能となる。
【0080】
特に、放電装置10では、放電周期T1を短くすることで、1回分の放電による放電エネルギは、比較例の放電装置に比べて小さいものの、放電回数を増やしていることで、ラジカルの発生量の向上と、オゾンの発生量の抑制とを図っている。更に、1回分の放電による放電エネルギを抑えることで、放電エネルギの増加に依存して増加するNOの発生量も抑制できる。
【0081】
(2.5)動作
図5に例示したような回路構成であれば、放電装置10は、制御回路3が以下のように動作することで、放電電極41と対向電極42との間にエネルギを抑制した放電を生じさせる。
【0082】
すなわち、制御回路3は、絶縁破壊が生じるまでの期間では、電圧印加回路2の出力電圧を監視対象とし、監視対象である出力電圧が閾値(例えば図7Aの最大値V1)上になると、電圧制御回路31にて駆動回路21のスイッチングエネルギを減少させる。一方、絶縁破壊の発生後では、制御回路3は、電圧印加回路2の出力電流を監視対象とし、監視対象である出力電流が閾値(例えば図7Aの閾値I1)以上になると、電流制御回路32にて、駆動回路21のスイッチング動作を停止させる。これにより、トランス電圧を低下させ、電圧印加回路2に対して負荷4を過負荷状態として放電電流を遮断する第2モードにて、電圧印加回路2が動作する。つまり、電圧印加回路2の動作モードが、第1モードから第2モードに切り替わることになる。
【0083】
このとき、電圧印加回路2の出力電圧、及び出力電流が共に低下するため、制御回路3は、駆動回路21のスイッチング動作を再開させる。これにより、印加電圧を時間経過に伴って上昇させて放電が起きる第1モードにて電圧印加回路2が動作する。つまり、電圧印加回路2の動作モードが、第2モードから第1モードに切り替わることになる。
【0084】
制御回路3が上述した動作を繰り返すことにより、電圧印加回路2は、第1モードと、第2モードと、を交互に繰り返すように動作する。その結果、放電電極41においては、放電のONとOFFが切り替わることとなる。そして、本実施形態の電圧印加回路2は、液体50の共振周波数以上の駆動周波数で、出力電圧の変動を実現できる。
【0085】
(3)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0086】
(3.1)変形例1
上述の実施形態では、一対のペルチェ素子511を導通させる導通部材44の形状が放電電極41の長手方向から見て円形状であるが、これに限らず、例えば、図8に示す導通部材44Bのように、放電電極41の長手方向から見て矩形状であってもよい。この場合、導通部材44Bの幅寸法(図8の上下方向の寸法)は、各ペルチェ素子511の幅寸法(図8の上下方向の寸法)と同じであることが好ましいが、各ペルチェ素子511の幅寸法よりも大きくてもよい。この場合においても、導通部材44Bは薄膜であることが好ましい。さらに、導通部材の形状は、例えば、放電電極41の長手方向から見て楕円形状であってもよい。つまり、導通部材は、一対のペルチェ素子511を導通可能な形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0087】
(3.2)変形例2
上述の実施形態では、放電電極41の先端部411の最大径D11の上限値が0.71mmであるが、これに限らない。放電電極41の先端部411の最大径D11の上限値は、例えば、0.600mmであってもよい。つまり、放電電極41の先端部411の最大径D11は、例えば、0.600mm以下であってもよい。また、放電電極41の先端部411の最大径D11は、例えば、0.500mm以上であることが好ましい。この場合、テイラーコーン501を形成する液体50の体積を更に小さくすることが可能となり、その結果、液体50の共振周波数を更に高くすることが可能となる。これにより、放電電極41と対向電極42との間の放電エネルギを更に小さくすることが可能となり、その結果、放電空間が更に小さくなるので、大気中の酸素との反応が抑制されてオゾンの生成量を更に抑制することが可能となる。一方で、放電電極41と対向電極42との間で生じる放電を更に高周波にて発生させることにより、水との反応で得られるラジカルを更に増大させることが可能となる。すなわち、本実施形態に係る放電装置10によれば、オゾンの生成量を更に抑制しつつ、ラジカルの生成量を更に増大させることが可能となり、ラジカルの生成効率の更なる向上を図ることが可能となる。この場合において、より好ましくは、放電電極41の先端部411の最大径D11は、0.550mm以下であるのがよい。すなわち、放電電極41の先端部411の最大径D11は、0.500mm以上で、かつ0.550mm以下であることがより好ましい。
【0088】
(3.3)その他の変形例
液体供給部5は、放電電極41を冷却して放電電極41に結露水を発生させる構成に限らない。液体供給部5は、例えば、毛細管現象、又はポンプ等の供給機構を用いて、タンクから放電電極41に液体50を供給する構成であってもよい。さらに、液体50は、水(結露水)に限らず、水以外の液体であってもよい。
【0089】
図5は、放電装置10の回路構成の一例に過ぎず、電圧印加装置1の具体的な回路構成は適宜変更可能である。例えば、電圧印加回路2は、自励式のコンバータに限らず、他励式のコンバータであってもよい。また、電圧印加回路2において、トランジスタQ1,Q2,Q3は、バイポーラトランジスタに限らず、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)であってもよい。さらに、電圧発生回路22は、圧電素子を有する変圧器(変圧トランス)にて実現されてもよい。
【0090】
電流制限要素43は、抵抗素子431に限らず、容量素子を含んでいてもよい。すなわち、電流制限要素43は、抵抗素子431と容量素子との少なくとも一方を含んでいればよい。
【0091】
電流制限要素43は、酸化炭化シリコンからなる絶縁膜に限らず、例えば、ニッケル(Ni)の酸化膜(NiO)であってもよい。この場合、電流制限要素43は、例えば、放電電極41の基端部412の第2面4122に対してニッケルペーストを塗布した後、塗布したニッケルペーストを焼結することにより、ニッケルの酸化膜が形成される。また、電流制限要素43は、例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC:Diamond-like Carbon)からなる絶縁膜であってもよい。さらに、電流制限要素43は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)からなる絶縁膜であってもよい。また、電流制限要素43は、例えば、チタン(Ti)の酸化膜(TiO)であってもよい。また、電流制限要素43は、例えば、アロンパウダーにより形成されていてもよい。また、電流制限要素43は、例えば、エポキシ樹脂(EP)をバインダとして2枚の銅(Cu)を接着させたバインダ品であってもよいし、酸化アルミニウム(AlO又はAl)をバインダとして2枚の銅を接着させたバインダ品であってもよい。
【0092】
監視対象及び閾値等の二値間の比較において、「以上」としているところは、二値が等しい場合、及び二値の一方が他方を超えている場合の両方を含む。ただし、これに限らず、ここでいう「以上」は、二値の一方が他方を超えている場合のみを含む「より大きい」と同義であってもよい。つまり、二値が等しい場合を含むか否かは、閾値等の設定次第で任意に変更できるので、「以上」か「より大きい」かに技術上の差異はない。同様に、「未満」においても「以下」と同義であってもよい。
【0093】
対向電極42に針形状の突起部を設け、コロナ放電から強い放電に進展して、絶縁破壊(全路破壊)を断続的に生じさせるリーダ放電を用いてもよい。この場合、複数の針状部は、開口部4232の周方向において等間隔で配置されてもよい。各針状部は、開口部4232の内周縁から、開口部4232の中心に向けて突出してもよい。各針状部は、その先端部に近づくほど、放電電極41の長手方向における放電電極41までの距離が短くなるように、開口部4232の内周縁から斜めに突出してもよい。各針状部がこのような形状に形成されることにより、各針状部の先端部で電界集中が生じやすくなる。その結果、各針状部の先端部と放電電極41の先端部411との間で、放電が安定的に生じやすくなる。
【0094】
(態様)
以上説明した実施形態及び変形例等から以下の態様が開示されている。
【0095】
第1の態様に係る放電装置(10)は、放電電極(41)を備える。放電電極(41)は、基端部(412)と、先端部(411)と、を有する。先端部(411)は、基端部(412)に対して一の方向に延びている。放電装置(10)では、放電電極(41)に電圧が印加されることにより放電電極(41)に保持されている液体(50)にて先端部(411)にテイラーコーン(501)が形成される。先端部(411)の一部(4112)は、テイラーコーン(501)内に入り込んでいる。
【0096】
この態様によれば、ラジカルの生成効率の向上を図ることが可能となる。
【0097】
第2の態様に係る放電装置(10)では、第1の態様において、テイラーコーン(501)の体積に対する、先端部(411)の一部(4112)の体積の比率は、0.6以上で、かつ0.95以下である。
【0098】
この態様によれば、ラジカルの生成効率の向上を図ることが可能となる。
【0099】
第3の態様に係る放電装置(10)では、第1又は第2の態様において、一の方向における先端部(411)の全長(L1)は、先端部(411)の最大径(D11)以上の長さである。
【0100】
第4の態様に係る放電装置(10)では、第3の態様において、先端部(411)の最大径(D11)に対する、先端部(411)の全長(L1)の比率は、1.0以上で、かつ1.6以下である。
【0101】
この態様によれば、ラジカルの生成効率の向上を図ることが可能となる。
【0102】
第5の態様に係る放電装置(10)では、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、先端部(411)における基端部(412)側とは反対側の部分の形状は、R形状である。
【0103】
第6の態様に係る放電装置(10)では、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、先端部(411)の最大径(D11)は、0.6mm以下である。
【0104】
この態様によれば、ラジカルの生成効率の向上を図ることが可能となる。
【0105】
第7の態様に係る放電装置(10)では、第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、一の方向において、先端部(411)の端縁(先端)からの距離が、先端部(411)の全長(L1)の0.62倍の位置と、先端部(411)の全長(L1)の1.00倍の位置と、の間に、テイラーコーン(501)の外周縁(502)が位置している。
【0106】
第8の態様に係る放電装置(10)は、第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、対向電極(42)を更に備える。対向電極(42)は、放電電極(41)に対向している。
【0107】
この態様によれば、放電電極(41)と対向電極(42)との間で生じる放電によってラジカルの生成効率の向上を図ることが可能となる。
【0108】
第9の態様に係る放電装置(10)は、第1~第8の態様のいずれか1つにおいて、液体供給部(5)を更に備える。液体供給部(5)は、放電電極(41)に液体(50)を供給する。
【0109】
この態様によれば、ラジカルの生成効率の向上を図りつつ、液体供給部(5)によって放電電極(41)に液体(50)を供給することが可能となる。
【0110】
第10の態様に係る放電装置(10)では、第1~第9の態様のいずれか1つにおいて、放電によって液体(50)が静電霧化される。
【0111】
この態様によれば、ラジカルの生成効率の向上を図りつつ、ラジカルを含む帯電微粒子水を生成することが可能となる。
【0112】
第2~第10の態様に係る構成については、放電装置(10)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0113】
10 放電装置
41 放電電極
42 対向電極
50 液体
411 先端部
412 基端部
501 テイラーコーン
502 外周縁
4112 第2部分(先端部の一部)
D11 最大径
L1 全長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8