(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】搬送装置、搬送装置の制御方法、プログラム、部品実装システム、及び作業システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20241011BHJP
H05K 13/00 20060101ALI20241011BHJP
B62D 7/14 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H05K13/02 J
H05K13/00 Z
B62D7/14 Z
(21)【出願番号】P 2021574507
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2020046132
(87)【国際公開番号】W WO2021153031
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2020015864
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】中村 徹
(72)【発明者】
【氏名】村山 直寛
(72)【発明者】
【氏名】水野 修
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-202448(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130345(WO,A1)
【文献】特開2004-210067(JP,A)
【文献】特開2012-178055(JP,A)
【文献】国際公開第2010/147100(WO,A1)
【文献】特開2013-065342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/02
H05K 13/00
B62D 1/00
B62D 5/00
B62D 6/00
B62D 7/14
B62D 101/00
B62D 103/00
B62D 105/00
B62D 111/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を搬送するための車体と、
前記車体に設けられて、前記車体を駆動するための複数の駆動輪と、
前記車体に設けられて、前記車体の移動方向を変更するための複数の操向輪と、
前記複数の操向輪のトー角
を制御する舵角制御部と、を備
え、
前記舵角制御部が前記複数の操向輪の舵角を制御する制御モードが、前記複数の操向輪のトー角が互いに等しくなるように制御する第1モードと、前記複数の操向輪のトー角を互いに異なる角度に制御する第2モードと、を含み、
前記車体が移動する所定エリアには、前記車体及び前記被搬送物の少なくとも一方が接触することによって前記車体及び前記被搬送物の移動を案内する構造物が配置され、
前記車体と前記構造物との距離が所定の判定距離以下になると、前記舵角制御部が前記制御モードを前記第2モードとする、
搬送装置。
【請求項2】
前記判定距離は第1判定距離であり、
前記舵角制御部は、
前記車体と前記構造物との距離が、前記第1判定距離以下、かつ、前記第1判定距離よりも短い第2判定距離よりも長ければ、前記複数の操向輪のトー角をトーインに制御し、
前記車体と前記構造物との距離が、前記第2判定距離以下になると、前記複数の操向輪のトー角をトーアウトに制御する、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記舵角制御部は、前記車体の存在位置に基づいて、前記複数の操向輪のトー角を制御する、
請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記舵角制御部は、前記被搬送物の搬送状況に基づいて、前記複数の操向輪のトー角を制御する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記舵角制御部が前記複数の操向輪のトー角を制御することによって、前記複数の駆動輪の滑り量を変化させる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記舵角制御部は、前記複数の操向輪のトー角をトーインに制御する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記舵角制御部は、前記複数の操向輪のトー角をトーアウトに制御する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記舵角制御部は、前記複数の操向輪のトー角を個別に制御する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記複数の操向輪の各々が前記駆動輪を兼ねている、
請求項1~8のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記駆動輪の出力トルクを制御するトルク制御部を更に備える、
請求項1~9のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記駆動輪の滑り量を評価する評価部を、更に備え、
前記舵角制御部は、前記評価部の評価結果に基づいて、前記複数の操向輪のトー角を制御する、
請求項1~10のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記車体及び前記被搬送物の少なくとも一方に、前記構造物に接触する当接部が設けられている、
請求項1~11のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項13】
前記車体の側面に、前記被搬送物を連結する連結部が設けられている、
請求項1~12のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項14】
被搬送物を搬送するための車体に設けられて前記車体を移動させるための複数の駆動輪を駆動する駆動制御工程と、
前記車体に設けられて前記車体の移動方向を変更するための複数の操向輪のトー角
を制御するトー角制御工程と、を含
み、
前記複数の操向輪の舵角を制御する制御モードが、前記複数の操向輪のトー角が互いに等しくなるように制御する第1モードと、前記複数の操向輪のトー角を互いに異なる角度に制御する第2モードと、を含み、
前記車体が移動する所定エリアには、前記車体及び前記被搬送物の少なくとも一方が接触することによって前記車体及び前記被搬送物の移動を案内する構造物が配置され、
前記トー角制御工程では、前記車体と前記構造物との距離が所定の判定距離以下になると、前記制御モードを前記第2モードとする、
搬送装置の制御方法。
【請求項15】
コンピュータシステムに、請求項14に記載の搬送装置の制御方法を実行させるためのプログラム。
【請求項16】
部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機を含み、
前記部品実装機は、
前記部品を供給するフィーダ台車と、
前記部品を前記基板に実装する実装ヘッドを含む実装本体と、を有し、
前記フィーダ台車が、請求項1~13のいずれか1項に記載の搬送装置によって前記実装本体まで搬送される前記被搬送物である、
部品実装システム。
【請求項17】
請求項16に記載の部品実装システムと、請求項1~13のいずれか1項に記載の搬送装置とを有し、
前記部品実装システムは、前記車体及び前記フィーダ台車の少なくとも一方が接触することによって前記フィーダ台車を前記実装本体に案内する
前記構造物を有し、
前記舵角制御部は、前記構造物と前記車体との相対的な位置関係に基づいて、前記複数の操向輪のトー角を制御する、
作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送装置、搬送装置の制御方法、プログラム、部品実装システム、及び作業システムに関する。より詳細には、本開示は、被搬送物を搬送する搬送装置、搬送装置の制御方法、プログラム、部品実装システム、及び作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無人搬送車(搬送装置)が開示されている。この無人搬送車は、走行モータの駆動により回転する操舵輪(操向輪)を2つ備える。無人搬送車は、ステアリングモータで2つの操舵輪を回転させることによって、所望の移動方向に移動する。
【0003】
上述の無人搬送車(搬送装置)が移動する場合、無人搬送車が移動する移動方向は、2つの操舵輪(操向輪)の向きに強く拘束されるため、無人搬送車の移動方向に応じて操向輪の向きを制御する必要がある。
【0004】
例えば、無人搬送車が2つの側壁の間の狭い空間に被搬送物を入れる場合に、無人搬送車が斜めに進入したために、被搬送物が側壁に接触すると、被搬送物と側壁との間に発生する摩擦等の走行抵抗が無人搬送車に加わる可能性がある。無人搬送車の移動方向は操向輪の向きに強く拘束されるため、操向輪の向きを変える制御を行わなければ、被搬送物が側壁に引っかかったために無人搬送車が移動できなくなる可能性がある。
【0005】
被搬送物が側壁に接触しないように被搬送物を狭い空間に入れるためには、側壁の位置を高精度に測定し、その測定結果と無人搬送車の経路情報とに基づいて操向輪の向きを制御する複雑な制御処理が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
本開示の目的は、車体又は被搬送物が物体と接触することによって走行抵抗を受けた場合でも、複雑な制御処理を行うことなく車体を移動させることができる搬送装置、搬送装置の制御方法、プログラム、部品実装システム、及び作業システムを提供することにある。
【0008】
本開示の一態様の搬送装置は、被搬送物を搬送するための車体と、複数の駆動輪と、複数の操向輪と、舵角制御部と、を備える。前記複数の駆動輪は、前記車体に設けられた、前記車体を駆動するための車輪である。前記複数の操向輪は、前記車体に設けられた、前記車体の移動方向を変更するための車輪である。前記舵角制御部は、前記複数の操向輪のトー角を制御する。前記舵角制御部が前記複数の操向輪の舵角を制御する制御モードが、前記複数の操向輪のトー角が互いに等しくなるように制御する第1モードと、前記複数の操向輪のトー角を互いに異なる角度に制御する第2モードと、を含む。前記車体が移動する所定エリアには、前記車体及び前記被搬送物の少なくとも一方が接触することによって前記車体及び前記被搬送物の移動を案内する構造物が配置される。前記車体と前記構造物との距離が所定の判定距離以下になると、前記舵角制御部が前記制御モードを前記第2モードとする。
【0009】
本開示の一態様の搬送装置の制御方法は、駆動制御工程と、トー角制御工程と、を含む。前記駆動制御工程では、複数の駆動輪を駆動する。前記複数の駆動輪は、被搬送物を搬送するための車体に設けられて前記車体を移動させるための車輪である。前記トー角制御工程では、複数の操向輪のトー角を制御する。前記複数の操向輪は、前記車体に設けられて前記車体の移動方向を変更するための車輪である。前記複数の操向輪の舵角を制御する制御モードが、前記複数の操向輪のトー角が互いに等しくなるように制御する第1モードと、前記複数の操向輪のトー角を互いに異なる角度に制御する第2モードと、を含む。前記車体が移動する所定エリアには、前記車体及び前記被搬送物の少なくとも一方が接触することによって前記車体及び前記被搬送物の移動を案内する構造物が配置される。前記トー角制御工程では、前記車体と前記構造物との距離が所定の判定距離以下になると、前記制御モードを前記第2モードとする。
【0010】
本開示の一態様のプログラムは、コンピュータシステムに、前記搬送装置の制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0011】
本開示の一態様の部品実装システムは、部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機を含む。前記部品実装機は、前記部品を供給するフィーダ台車と、前記部品を前記基板に実装する実装ヘッドを含む実装本体と、を有する。前記フィーダ台車が、前記搬送装置によって前記実装本体まで搬送される前記被搬送物である。
【0012】
本開示の一態様の作業システムは、前記部品実装システムと、前記搬送装置とを有する。前記部品実装システムは、前記車体及び前記フィーダ台車の少なくとも一方が接触することによって前記フィーダ台車を前記実装本体に案内する構造物を有する。前記舵角制御部は、前記構造物と前記車体との相対的な位置関係に基づいて、前記複数の操向輪のトー角を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る搬送装置と被搬送物とを模式的に示した平面図である。
【
図2】
図2は、同上の搬送装置がトーインで走行する状態を模式的に示した平面図である。
【
図3】
図3は、同上の搬送装置がトーアウトで走行する状態を模式的に示した平面図である。
【
図4】
図4は、同上の搬送装置のブロック図である。
【
図5】
図5は、同上の搬送装置と被搬送物であるフィーダ台車とを示した斜視図である。
【
図6】
図6は、同上の搬送装置と部品実装システムとを模式的に示した平面図である。
【
図7】
図7は、同上の搬送装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図8】
図8は、同上の搬送装置が被搬送物を移動させる動作を説明する平面図である。
【
図9】
図9は、同上の搬送装置が被搬送物を移動させる動作を説明する平面図である。
【
図10】
図10は、一実施形態の変形例に係る搬送装置が被搬送物を移動させる動作を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に説明する実施形態は、本開示の種々の実施形態の一つに過ぎない。本開示の実施形態は、下記実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外も含み得る。また、下記の実施形態は、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0015】
(実施形態)
(1)概要
本実施形態に係る搬送装置1は、
図1に示すように、被搬送物A1を搬送する。本実施形態では、被搬送物A1は車輪A11を有しており、搬送装置1と共に移動可能に構成されている。
【0016】
本実施形態では、搬送装置1は、搬送装置1の左右方向に並ぶ複数の操向輪2を有しており、移動面B1の上を移動して被搬送物A1を搬送する装置である。本開示でいう「左右方向」は、搬送装置1の長手方向である。また、搬送装置1の前後方向は、左右方向と直交する方向であり、搬送装置1の短手方向である。
【0017】
図1における矢印は、搬送装置1の前後方向を示しており、搬送装置1が前後方向において移動する場合に、搬送装置1が進んでいく方向を前方、その反対方向を後方という。搬送装置1が被搬送物A1を把持して移動させる場合、搬送装置1が先頭になって被搬送物A1をけん引する走行形態と、被搬送物A1を先頭にして搬送装置1が被搬送物A1を押していく走行形態とがある。一般的に、被搬送物A1を後側から押す走行形態に比べて、被搬送物A1をけん引する走行形態の方が、走行状態が安定するので、搬送装置1は通常は被搬送物A1をけん引して移動する。一方、被搬送物A1を
図6に示すような凹所81に入れる場合、搬送装置1は、被搬送物A1を先頭にして被搬送物A1を押して移動する。以下では、搬送装置1が、被搬送物A1を後側から押して移動する走行形態について主に説明するので、搬送装置1が被搬送物A1を把持する場合に被搬送物A1と対向する側を前側、その反対側を後側として説明する。なお、
図1~3及び8~10中の矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。また、
図1において、搬送装置1の複数の操向輪2等の車輪は、実線で描かれているが、実際には、搬送装置1の車体10(後述する)に隠れている。
【0018】
搬送装置1は、例えば工場、物流センター(配送センターを含む)、オフィス、店舗、学校、及び病院等の施設に導入される。移動面B1は、その上を搬送装置1が移動する面であり、搬送装置1が施設内を移動する場合は施設の床面等が移動面B1となり、搬送装置1が屋外を移動する場合は地面等が移動面B1となる。以下では、工場に搬送装置1を導入する場合について説明する。
【0019】
本実施形態では、複数の操向輪2は、車体10の左側に位置する左操向輪2Lと、車体10の右側に位置する右操向輪2Rと、を含む。つまり、搬送装置1は、2つの操向輪2により移動面B1の上を移動するように構成されている。なお、本実施形態では、搬送装置1は、2つの操向輪2の他に、4つの補助輪3を有しているが、これらの補助輪3は、搬送装置1の移動方向に追従して向きが変わる従動輪であって、搬送装置1が舵角を制御可能な操向輪2には含まれない。本開示でいう操向輪2の「舵角」は、搬送装置1を上方から見た平面視において、搬送装置1の前後方向と、車輪(操向輪2)の転動方向(例えば、操向輪2の車軸と直交する方向)とがなす角度をいう。以下では、左操向輪2Lの転動方向DLと前後方向D1とがなす角度をトー角θLといい、右操向輪2Rの転動方向DRと前後方向D1とがなす角度をトー角θRという。
【0020】
ここで、搬送装置1が前方に向かって移動する際に、
図2に示すように、左操向輪2Lの転動方向DL及び右操向輪2Rの転動方向DRが内側を向くように左操向輪2L及び右操向輪2Rの舵角が制御された状態がトーインである。また、搬送装置1が前方に向かって移動する際に、
図3に示すように、左操向輪2Lの転動方向DL及び右操向輪2Rの転動方向DRが外側を向くように左操向輪2L及び右操向輪2Rの舵角が制御された状態がトーアウトである。以下の説明において、左操向輪2L及び右操向輪2Rの転動方向DL,DRが進行方向に対して右側を向く場合のトー角θL,θRを正の角度とし、転動方向DL,DRが進行方向に対して左側を向く場合のトー角θL,θRを負の角度とする。
【0021】
本実施形態の搬送装置1は、被搬送物A1を搬送するための車体10と、複数の駆動輪と、複数の操向輪2と、舵角制御部13(
図4参照)と、を備えている。
【0022】
複数の駆動輪は、車体10に設けられている。複数の駆動輪は、車体10を駆動するための車輪である。
【0023】
複数の操向輪2は、車体10に設けられている。複数の操向輪2は、車体10の移動方向を変更するための車輪である。
【0024】
舵角制御部13は、複数の操向輪2のトー角θL,θRを互いに異なる角度となるように制御する。
【0025】
本実施形態では、舵角制御部13が、複数の操向輪2のトー角θL,θRを互いに異なる角度となるように制御しているので、複数の操向輪2で滑りが発生することで、搬送装置1の移動方向が複数の操向輪2の向きによって拘束されにくくなる。したがって、搬送装置1又は被搬送物A1が物体と接触することで搬送装置1に走行抵抗が加わった場合には、搬送装置1の推進力と走行抵抗との差が最も大きくなる向きに搬送装置1が移動するので、複雑な制御を行うことなく車体10を移動させることができる。
【0026】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る搬送装置1、搬送装置1を備える部品実装システムE1、及び作業システムW1について、図面を参照して詳しく説明する。
【0027】
(2.1)全体構成
本実施形態の搬送装置1は、上位システム5と互いに通信可能に構成されている。本開示における「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワークNT1若しくは中継器6等を介して間接的に、情報を授受できることを意味する。本実施形態では、上位システム5と搬送装置1とは、互いに双方向に通信可能であって、上位システム5から搬送装置1への情報の送信、及び搬送装置1から上位システム5への情報の送信の両方が可能である。
【0028】
上位システム5は、1又は複数台の搬送装置1を統括的に制御するためのシステムであって、例えばサーバ装置で実現されている。上位システム5は、複数台の搬送装置1の各々に対して指示を出すことで、複数台の搬送装置1を間接的に制御する。具体的には、上位システム5が搬送装置1に対して被搬送物A1の搬送指示を出すと、搬送装置1は、搬送指示を受けて被搬送物A1を目標位置まで移動させる作業を自律的に行う。
【0029】
本実施形態では、上位システム5は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。そのため、1以上のプロセッサがメモリに記録されているプログラムを実行することにより、上位システム5の機能が実現される。プログラムはメモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0030】
(2.2)搬送装置
搬送装置1は、
図1~
図3に示すように、被搬送物A1を搬送するための無人搬送車である。本実施形態では、上位システム5が、ネットワークNT1及び中継器6を介して搬送装置1と通信し、搬送装置1の移動を間接的に制御する。
【0031】
搬送装置1は、例えば床面等からなる平坦な移動面B1を自律走行する。搬送装置1は、被搬送物A1を連結した状態で移動面B1上を走行可能である。これにより、搬送装置1は、例えば、ある場所に置かれている被搬送物A1を、搬送装置1でけん引したり、搬送装置1で押し動かしたりすることで、別の場所(目標位置)に搬送することが可能である。
【0032】
搬送装置1は、
図1に示すように、車体10を備えている。車体10は、直方体状に形成されている。車体10の側面には、被搬送物A1を連結するための連結部18が設けられており、被搬送物A1と搬送装置1とが連結部18によって連結された状態で、被搬送物A1を搬送装置1と共に移動させることができる。本実施形態では、連結部18は、例えば電磁石等の磁力で被搬送物A1の一部を吸着することが可能である。ここでいう「車体10の側面」は、車体10の前後方向における一面であり、車体10の左右方向に沿う一面である。連結部18は、被搬送物A1が脱着可能に連結される部分である。連結部18は、車体10の前後方向における一面に位置しており、車体10における前後方向の片側にのみ設けられている。つまり、搬送装置1は、車体10における左右方向に沿った一面(側面)にて、被搬送物A1を連結する連結部18を有している。連結部18に連結された被搬送物A1は、上方から見て、搬送装置1と前後方向(一方向)において並んで配置される。本実施形態の連結部18は、例えば電磁石であり、被搬送物A1が備える強磁性体を磁力により引き付けることで、被搬送物A1に連結される。
【0033】
連結部18と被搬送物A1の強磁性体との連結及びこの連結の解除は、電磁石である連結部18に流れる電流を制御装置11が制御することで、切り換えることができる。なお、連結部18は、電磁石に限定されない。連結部18は、例えば、磁石であってもよい。また、連結部18は、引っ掛け又は嵌合等によって被搬送物A1に脱着可能に連結されてもよいし、ボルト等の固着具を用いて被搬送物A1に脱着可能に連結されてもよい。また、連結部18への被搬送物A1の連結は、搬送装置1又はその他の装置により自動で行われてもよいし、人により行われてもよい。また、連結部18の形状及び搬送装置1が備える連結部18の数は、適宜変更可能である。
【0034】
搬送装置1は、車体10の下部に複数(ここでは、6つ)の車輪を有している。6つの車輪のうち、車体10の左側に位置する車輪と、車体10の右側に位置する車輪とは、いずれも操向輪2(左操向輪2L及び右操向輪2R)である。また、6つの車輪のうち、車体10において左右方向の中央部に位置する4つの車輪は、いずれも補助輪(従動輪)3である。4つの補助輪3は、車体10の前側及び後側に2個ずつ配置されている。本実施形態では、複数の操向輪2の各々が駆動輪を兼ねているので、搬送装置1が備える車輪の数を減らすことができる。そして、舵角制御部13が複数の操向輪2のトー角を個別に制御しており、複数の操向輪2の向きが個別に制御されることによって、複数の駆動輪の滑り量を変化させることができる。本実施形態では舵角制御部13は、トーイン及びトーアウトのそれぞれで、左操向輪2Lのトー角θLの絶対値と右操向輪2Rのトー角θRの絶対値とを同じ値に設定しているが、トー角θLの絶対値とトー角θRの絶対値とを互いに異なる値に設定してもよい。
【0035】
また、本実施形態の搬送装置1は、
図4に示すように、制御装置11と、電源12と、通信部16と、検知部17と、左操向輪ユニット4Lと、右操向輪ユニット4Rと、を更に備えている。
【0036】
本実施形態では、左操向輪2L及び右操向輪2Rがそれぞれ駆動輪を兼ねている。左操向輪2Lを駆動する駆動機構と、左操向輪2Lの向きを変える操向機構とが、左操向輪ユニット4Lとして一体化されている。また、右操向輪2Rを駆動する駆動機構と、右操向輪2Rの向きを変える操向機構とが、右操向輪ユニット4Rとして一体化されている。
【0037】
左操向輪ユニット4Lは、左操向輪2Lの回転と舵角とを制御する制御ユニットであり、左操向輪2Lを回転させるドライブモータ41Lと、左操向輪2Lの向き(転動方向)を変化させるステアリングモータ42Lと、を備えている。左操向輪ユニット4Lは、制御装置11からの制御命令を受けて、ステアリングモータ42Lが左操向輪2Lを制御命令で指示された向きに変化させ、ドライブモータ41Lが左操向輪2Lを制御命令で指示された回転トルクで回転させることで、車体10を走行させる。また、左操向輪ユニット4Lは、制御装置11からの制御命令を受けて、左操向輪2Lの回転速度を、制御装置11から指示された上限値以下に制御する。
【0038】
右操向輪ユニット4Rは、右操向輪2Rの回転と舵角とを制御する制御ユニットであり、右操向輪2Rを回転させるドライブモータ41Rと、右操向輪2Rの向き(転動方向)を変化させるステアリングモータ42Rと、を備えている。右操向輪ユニット4Rは、制御装置11からの制御命令を受けて、ステアリングモータ42Rが右操向輪2Rを制御命令で指示された向きに変化させ、ドライブモータ41Rが右操向輪2Rを制御命令で指示された回転トルクで回転させることで、車体10を走行させる。また、右操向輪ユニット4Rは、制御装置11からの制御命令を受けて、右操向輪2Rの回転速度を、制御装置11から指示された上限値以下に制御する。
【0039】
検知部17は、車体10の挙動、及び車体10の周辺状況等を検知する。本開示でいう「挙動」は、動作及び様子等を意味する。つまり、車体10の挙動は、車体10が走行中/停止中を表す車体10の動作状態、車体10の移動距離及び走行時間、車体10の速度(及び速度変化)、車体10に作用する加速度、及び車体10の姿勢等を含む。
【0040】
具体的には、検知部17は、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)等のセンサを含み、センサにて検出された周辺の物体の位置情報と、所定エリアの電子的な地図情報とに基づいて、所定エリア内での搬送装置1の存在位置を検出し、存在位置の検出結果を制御装置11に出力する。なお、検知部17は、複数の発信器から電波で送信されるビーコン信号を受信する受信機を含み、複数の発信器から送信されるビーコン信号に基づいて現在位置を検知するものでもよい。複数の発信器は、搬送装置1が移動する所定エリア内の複数箇所に配置されている。位置特定部は、複数の発信器の位置と、受信機でのビーコン信号の受信電波強度とに基づいて、搬送装置1の現在位置を測定する。また、検知部17は、GPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムを用いて実現されてもよい。
【0041】
また、検知部17は、複数の操向輪2(左操向輪2L及び右操向輪2R)の各々の回転数を計測するエンコーダを含み、各操向輪2の回転数の計測結果を制御装置11に出力する。また、検知部17は、搬送装置1の走行時間をカウントするタイマを含み、タイマによる走行時間の計測結果を制御装置11に出力してもよい。
【0042】
制御装置11は、例えば1以上のプロセッサ及びメモリを有するマイクロコンピュータを有している。言い換えれば、制御装置11は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されている。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを有する。メモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御装置11の機能(例えば舵角制御部13、トルク制御部14、及び評価部15等)が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0043】
トルク制御部14は駆動輪(本実施形態では操向輪2が兼用)の出力トルクを制御する。具体的には、トルク制御部14は、左操向輪ユニット4Lに制御指令を出力し、左操向輪ユニット4Lにドライブモータ41Lを回転させることによって左操向輪2Lを回転させる。また、トルク制御部14は右操向輪ユニット4Rに制御指令を出力し、右操向輪ユニット4Rにドライブモータ41Rを回転させることによって右操向輪2Rを回転させる。ここで、トルク制御部14は、駆動輪の出力トルクが所望のトルク値となるように左操向輪2L及び右操向輪2Rの回転を制御しており、滑りが発生した場合でも出力トルクを所望のトルク値に制御しながら搬送装置1を移動させることができる。また、トルク制御部14は、左操向輪2L及び右操向輪2Rの回転速度が所定の上限値を超えないように左操向輪2L及び右操向輪2Rの回転を制御しており、滑りが発生した場合でも駆動輪(操向輪2)の回転数が上限値を超えないように制御できる。
【0044】
舵角制御部13は、少なくとも第2モードでは左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角が互いに異なる角度となるように、左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角を個別に制御する。具体的には、舵角制御部13は、左操向輪ユニット4Lに制御指令を出力し、ステアリングモータ42Lを回転させることで、左操向輪2Lの向きを所望の向きに変化させる。また、舵角制御部13は、右操向輪ユニット4Rに制御指令を出力して、ステアリングモータ42Rを回転させることで、右操向輪2Rの向きを所望の向きに変化させる。
【0045】
このように、制御装置11の舵角制御部13及びトルク制御部14が、左操向輪ユニット4L及び右操向輪ユニット4Rを制御して、左操向輪2L及び右操向輪2Rの舵角と回転トルクとを制御することによって搬送装置1を走行させている。
【0046】
ところで、本実施形態の搬送装置1では、舵角制御部13が舵角を制御する制御モードとして第1モードと第2モードの2つのモードを有している。
【0047】
第1モードは、左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角が互いに等しくなるように複数の操向輪のトー角を制御するモードである。ここで、左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角が互いに等しいとは、トー角が同一の角度であることに限定されず、数度程度ずれていてもよい。第1モードにおいては、搬送装置1は、左操向輪2L及び右操向輪2Rの向き(転動方向)と平行な方向に移動することになり、搬送装置1の移動方向が、左操向輪2L及び右操向輪2Rの向きに強く拘束される。
【0048】
第2モードは、左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角が互いに異なる角度となるように、左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角を制御するモードである。第2モードにおける左操向輪2L及び右操向輪2Rの制御状態は、左操向輪2L及び右操向輪2Rが進行方向に対して内側を向くトーイン(
図2参照)と、左操向輪2L及び右操向輪2Rが進行方向に対して外側を向くトーアウト(
図3参照)と、を少なくとも含む。
【0049】
図2に示すように左操向輪2L及び右操向輪2Rがトーインに制御されると、駆動輪である左操向輪2L及び右操向輪2Rで滑りが発生するため、搬送装置1の移動方向は左操向輪2L又は右操向輪2Rの転動方向に拘束されなくなる。左操向輪2Lの駆動力と右操向輪2Rの駆動力とを合成した駆動力のベクトルは、扇形の範囲P1内のベクトルとなり、駆動力と搬送装置1に加わる走行抵抗との差が最も大きくなる方向(つまり走行抵抗が最も小さくなる方向)に搬送装置1は移動する。すなわち、左操向輪2Lの駆動力と右操向輪2Rの駆動力とを合成した駆動力は、駆動力と搬送装置1に加わる走行抵抗の差が最も大きくなるような方向に作用し、この方向に搬送装置1が移動する。このように、舵角制御部13が、複数の操向輪2のトー角をトーインに制御すると、複数の操向輪2(駆動輪)で滑りが発生するので、駆動輪の推進力と走行抵抗との差が最も大きくなる方向に搬送装置1を移動させることができる。なお、移動中の搬送装置1には、移動面B1と操向輪2との摩擦による走行抵抗と、車体10又は被搬送物A1と所定エリアに存在する構造物との摩擦による走行抵抗と、を合算した走行抵抗が加わることになる。
【0050】
また、
図3に示すように左操向輪2L及び右操向輪2Rがトーアウトに制御されると、左操向輪2L及び右操向輪2Rで滑りが発生するため、搬送装置1の移動方向は左操向輪2L又は右操向輪2Rの転動方向に拘束されなくなる。左操向輪2Lの駆動力と右操向輪2Rの駆動力とを合成した駆動力のベクトルは、扇形の範囲P2内のベクトルとなり、駆動力と搬送装置1に加わる走行抵抗との差が最も大きくなる方向に搬送装置1は移動する。すなわち、左操向輪2Lの駆動力と右操向輪2Rの駆動力とを合成した駆動力は、駆動力と搬送装置1に加わる走行抵抗の差が最も大きくなるような方向に作用し、この方向に搬送装置1が移動する。このように、舵角制御部13が、複数の操向輪2のトー角をトーアウトに制御すると、複数の操向輪2(駆動輪)で滑りが発生するので、駆動輪の推進力と走行抵抗との差が最も大きくなる方向に搬送装置1を移動させることができる。
【0051】
上述のように、舵角制御部13が、複数の操向輪2のトー角を制御することによって、駆動輪である操向輪2の滑り量を変化させており、駆動輪で滑りが発生することで、駆動輪の推進力と走行抵抗との差が最も大きくなる方向に搬送装置1を移動させることができる。例えば、搬送装置1が2つの側壁の間の狭い空間に被搬送物A1を入れる際に、被搬送物A1が側壁に接触することによって搬送装置1に走行抵抗が加わった場合でも、搬送装置1は駆動輪の推進力と走行抵抗との差が最も大きくなる方向に向かって移動する。したがって、車体10又は被搬送物A1が所定エリア内に存在する構造物(例えば側壁等)に接触することで、搬送装置1に走行抵抗が加わった場合でも、車体10又は被搬送物A1が構造物に接触した状態で搬送装置1を移動させることができる。よって、所定エリア内に存在する構造物の位置を高精度に測定し、構造物の位置に応じて操向輪2の舵角を細かく制御する制御処理を行わなくても、複数の操向輪2をトーイン又はトーアウトに制御するのみで、車体10又は被搬送物A1が構造物に接触している状態で搬送装置1をスムーズに移動させることができる。
【0052】
評価部15は、例えば検知部17によって検知された駆動輪(操向輪2)の回転数と、搬送装置1の存在位置から求めた移動距離とに基づいて、駆動輪(操向輪2)の滑り量を評価する。ここで、舵角制御部13は、評価部15の評価結果に更に基づいて、複数の操向輪2のトー角を制御してもよく、例えば滑り量が所望の範囲に収まるようにトー角を調整してもよい。
【0053】
電源12は、例えば、二次電池である。電源12は、左操向輪ユニット4L及び右操向輪ユニット4R、制御装置11、通信部16、及び検知部17等に直接又は間接的に電力を供給する。なお、搬送装置1は、外部から電力が供給されてもよく、この場合、搬送装置1は電源12を備えなくてもよい。
【0054】
通信部16は、上位システム5と通信可能に構成されている。本実施形態では、通信部16は、搬送装置1が移動する所定エリア内に設置された複数の中継器6のいずれかと、電波を媒体とする無線通信によって通信を行う。そのため、通信部16と上位システム5とは、少なくともネットワークNT1及び中継器6を介して、間接的に通信を行うことになる。
【0055】
つまり、各中継器6は、通信部16と上位システム5との間の通信を中継する機器(アクセスポイント)である。中継器6は、ネットワークNT1を介して、上位システム5と通信する。本実施形態では一例として、中継器6と通信部16との間の通信には、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)又は免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の規格に準拠した、無線通信を採用する。また、ネットワークNT1は、インターネットに限らず、例えば、搬送装置1が移動する所定エリア内又はこの所定エリアの運営会社内のローカルな通信ネットワークが適用されてもよい。
【0056】
(2.3)部品実装システム
本実施形態の搬送装置1は、
図5及び
図6に示すように、部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機9を含む部品実装システムE1に用いられる。
【0057】
部品実装機9は、部品を供給するフィーダ台車7と、部品を基板に実装する実装ヘッドを含む実装本体8と、を有する。
【0058】
フィーダ台車7は、工場内に設置された部品実装機9の実装本体8に対して部品を供給するために用いられる。ここでいう「部品実装機」は、例えば基板等の対象物に部品を実装する機械である。実装本体8は、部品を基板に実装する実装ヘッドを含んでいる。本実施形態では、搬送装置1は、被搬送物A1としてのフィーダ台車7を、部品実装機9の実装本体8の設置場所まで搬送する。これにより、部品実装システムE1を構築することが可能である。言い換えれば、部品実装システムE1は、部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機9を含むシステムである。そして、フィーダ台車7は、搬送装置1によって実装本体8まで搬送される。本実施形態では、搬送装置1は、例えば上位システム5からの指示を受けて、所定エリア内のある場所に置かれているフィーダ台車7を、実装本体8に接続される位置まで移動させる。搬送装置1が、実装本体8の側面に設けられた凹所81内にフィーダ台車7を移動させると、実装本体8に設けられた第1コネクタに、フィーダ台車7の第2コネクタが接続されることによって、実装本体8とフィーダ台車7とが互いに接続された状態となる。そして、実装本体8とフィーダ台車7とが互いに接続された状態で、フィーダ台車7から実装本体8に対して部品を供給することが可能になる。
【0059】
搬送装置1が被搬送物A1を凹所81内に入れる場合に、被搬送物A1が凹所81の横壁82に接触すると、被搬送物A1が横壁82に接触した状態を保ちつつ搬送装置1によって凹所81の内部へと挿入される。したがって、横壁82が被搬送物A1の移動を案内することによって、被搬送物A1の第2コネクタが実装本体8の第1コネクタに接続される位置に被搬送物A1を導くことができる。
【0060】
ここで、搬送装置1は、フィーダ台車7のうち部品を実装本体8に排出する部位と反対側の部位と連結可能であるのが好ましい。この場合、フィーダ台車7を部品実装機9の実装本体8の設置場所まで搬送した際に、フィーダ台車7における部品を排出する部位が実装本体8の方を向くことになる。したがって、フィーダ台車7を部品実装機9の実装本体8の設置場所まで搬送した際に、上記の排出する部位が実装本体8に向くようにフィーダ台車7の向きを変える作業をしなくて済む。
【0061】
また、部品実装システムE1と搬送装置1とで作業システムW1が構成される。換言すれば、作業システムW1は、部品実装システムE1と、搬送装置1とを有している。部品実装システムE1は、車体10及びフィーダ台車7の少なくとも一方が接触することによって、フィーダ台車7を実装本体8に案内する構造物を有している。換言すれば、車体10が移動する所定エリアには、車体10及び被搬送物A1の少なくとも一方が接触することによって車体10及び被搬送物A1の移動を案内する構造物が配置されている。舵角制御部13は、構造物と、車体10との相対的な位置関係に基づいて、複数の操向輪2(左操向輪2L及び右操向輪2R)のトー角を制御する。ここにおいて、構造物は、実装本体8とは別に設けられた壁等の物体であってフィーダ台車7を実装本体8に対して案内する物体であってもよいし、フィーダ台車7を実装本体8の所望の位置に案内(位置決め)するために実装本体8自体に設けられた物体でもよい。本実施形態では、構造物は後者であり、フィーダ台車7を実装本体8の凹所81内の所定位置に案内するために、実装本体8自体に設けられたガイド部(例えば凹所81の横壁82及び横壁82に連続する傾斜面83等)である。
【0062】
すなわち、車体10又は被搬送物A1が構造物と当接する位置に搬送装置1が移動した状態では、舵角制御部13が、複数の操向輪2のトー角をトーイン又はトーアウトに制御している。複数の操向輪2のトー角がトーイン又はトーアウトに制御された状態では、駆動輪による駆動力と走行抵抗との差が最も小さい方向に搬送装置1が移動するので、制御装置11が搬送装置1の移動方向を直接制御しなくても、車体10又は被搬送物A1が構造物に案内されながら搬送装置1を移動させることができる。したがって、舵角制御部13が複数の操向輪2のトー角をトーイン又はトーアウトに制御するのみで、搬送装置1の移動方向を直接制御する制御処理を行わなくても、車体10又は被搬送物A1が構造物に接触した状態を保ちつつ、搬送装置1を移動させることができる。
【0063】
(3)動作
以下、本実施形態の搬送装置1の動作の一例について
図7を参照して説明する。
図7に示す動作例は、搬送装置1が、被搬送物A1であるフィーダ台車7を、所定エリア内のある場所から目標位置(例えば、実装本体8の凹所81内の位置)まで移動させる動作である。
【0064】
搬送装置1がある場所から目標位置まで移動する場合、制御装置11は、搬送装置1が第1変更位置に到達するまでは、第1モードで制御動作を行う。第1モードは、左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角を互いに等しい角度とした状態で、搬送装置1の現在位置及び目標位置に基づいて、搬送装置1の舵角及び移動速度を制御する制御モードである。第1モードでは、搬送装置1の移動方向が、左操向輪2L及び右操向輪2Rの向きに強く拘束され、左操向輪2L及び右操向輪2Rの滑りが発生しにくい状態となるので、搬送装置1は第2モードに比べて滑りによるロスが少ない状態で移動する。
【0065】
ここにおいて、制御装置11は、搬送装置1の出発位置、走行距離及び走行方向等に基づいて搬送装置1の現在位置を定期的に求めている。そして、制御装置11は、搬送装置1の現在位置に基づいて車体10と実装本体8のガイド部との距離を求めており、車体10と実装本体8のガイド部との距離が第1判定距離以下になると、制御モードを第1モードから第2モードに変更し、例えばトーインとなるように左操向輪2L及び右操向輪2Rの舵角を制御する。第1変更位置は、搬送装置1の制御モードを第1モードから第2モードに変更する位置であり、例えば、搬送装置1に連結されたフィーダ台車7の先端が実装本体8の凹所81に入る直前の位置に設定されている。そして、第1判定距離は、搬送装置1が第1変更位置に位置する状態での、車体10と実装本体8のガイド部との距離に設定されている。第1判定距離は、搬送装置1によって搬送される被搬送物A1(フィーダ台車7)が実装本体8のガイド部に初めて接触するタイミングでの搬送装置1と実装本体8のガイド部との間の距離よりも長い距離に設定されている。所定エリア内で、搬送装置1が第1変更位置に移動するまでは、搬送装置1及び被搬送物A1に接触する物体が存在しないように搬送装置1の移動経路が設定されており、制御装置11は、搬送装置1を第1モードで制御する。
【0066】
搬送装置1が第1変更位置に到達すると、制御装置11は、第2モードでの制御動作を開始し、左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角θL,θRを例えばトーインとなるように制御する。
【0067】
すなわち、制御装置11の舵角制御部13が、左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角θL,θRをトーインに切り替えるための制御指令を左操向輪ユニット4L及び右操向輪ユニット4Rに出力する。左操向輪ユニット4L及び右操向輪ユニット4Rは、舵角制御部13からの制御指令に基づいて、ステアリングモータを回転させて、左操向輪2L及び右操向輪2Rの向きをトーインとなるように制御する(S1)。ここで、トーイン制御でのトー角θL,θRの大きさは数度から十数度の大きさに設定される。また、搬送装置1のトルク制御部14は、左操向輪2L及び右操向輪2Rの回転速度の上限値と出力トルクとを指示する制御指令を左操向輪ユニット4L及び右操向輪ユニット4Rに出力する(S2)。左操向輪ユニット4L及び右操向輪ユニット4Rは、トルク制御部14からの制御指令に基づいてドライブモータ41L,41Rを制御し、左操向輪2L及び右操向輪2Rを回転させる。ここで、トルク制御部14は、左操向輪2L及び右操向輪2Rの出力トルクが制御指令で指示されたトルク値となるように、左操向輪2L及び右操向輪2Rの出力トルクを制御する。また、トルク制御部14は、左操向輪2L及び右操向輪2Rの少なくとも一方で滑りが発生した場合に、左操向輪2L及び右操向輪2Rの回転速度が制御指令で指示された上限値を超えないように、左操向輪2L及び右操向輪2Rの回転速度を制御する。
【0068】
このように、左操向輪ユニット4L及び右操向輪ユニット4Rが舵角制御部13からの制御指令を受けて、左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角θL,θRをトーインに切り替えると、搬送装置1の移動方向が左操向輪2L及び右操向輪2Rの向きに強く拘束される状態が解除される。左操向輪2L及び右操向輪2Rの向きがトーインに切り替えられた状態では、搬送装置1は、駆動輪の駆動力と走行抵抗との差が最も大きくなる方向へと移動しながら、実装本体8に接近する。搬送装置1が実装本体8に更に接近し、
図8に示すように被搬送物A1であるフィーダ台車7が実装本体8のガイド部(例えば傾斜面83)に接触すると、フィーダ台車7と実装本体8との摩擦による走行抵抗が搬送装置1に加わるため、搬送装置1は、駆動輪の駆動力と走行抵抗との差が最も大きくなる方向へと移動する。
図8に示す動作例では、扇形の範囲P1において実線の矢印F1で示す方向が、駆動力と走行抵抗との差が最も大きくなる方向となり、搬送装置1は矢印F1の方向に移動することになる。ここで、制御装置11は、左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角θL,θRをトーインに制御するのみで、実装本体8の位置を計測した結果に基づいて左操向輪2L及び右操向輪2Rの舵角を制御する複雑な制御処理を行う必要がない。したがって、制御装置11は、複雑な制御処理を行うことなく、車体10が停止する可能性を低減でき、フィーダ台車7が実装本体8の一部に接触した状態で搬送装置1をスムーズに移動させることができる。
【0069】
搬送装置1の移動中、検知部17は、搬送装置1の走行距離を定期的に検出しており、制御装置11は、搬送装置1の走行距離に基づいて、実装本体8のガイド部(横壁82及び傾斜面83)と搬送装置1(車体10)との相対的な位置関係を更新する。なお、検知部17が搬送装置1の存在位置を定期的に検出し、制御装置11が、搬送装置1の存在位置に基づいて、実装本体8のガイド部(横壁82及び傾斜面83)と搬送装置1(車体10)との相対的な位置関係を更新してもよい。
【0070】
制御装置11は検知部17の検知結果に基づいて、搬送装置1が移動中であるか否かを判断する(S3)。
【0071】
ステップS3において搬送装置1が移動中ではない、つまり障害物に接触するなどして停止していると判断されると(S3:No)、制御装置11は、搬送装置1を障害物から離脱させるためにトー角θL,θRを変更する。制御装置11はステップS1に戻り、舵角制御部13が、左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角θL,θRを変更ための制御指令を左操向輪ユニット4L及び右操向輪ユニット4Rに出力させる。また、搬送装置1のトルク制御部14は、左操向輪2L及び右操向輪2Rの回転速度の上限値と出力トルクとを指示する制御指令を左操向輪ユニット4L及び右操向輪ユニット4Rに出力する(S2)。左操向輪ユニット4L及び右操向輪ユニット4Rが舵角制御部13からの制御指令を受けて、左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角θL,θRを変更すると、左操向輪2Lの駆動力と右操向輪2Rの駆動力とを合成した駆動力のベクトルの分布が変化する。駆動力のベクトルの分布が変化すると、搬送装置1は、駆動輪による駆動力と走行抵抗との差が最大となる方向へ移動するので、搬送装置1は障害物から離脱することができ、再び移動を開始する。
【0072】
一方、ステップS3において搬送装置1が移動中であると判断されると(S3:Yes)、制御装置11は、検知部17が検知した走行距離に基づいて、搬送装置1が第2変更位置に到達したか否かを判断する(S4)。ここで、第2変更位置は、トー角θL,θRの制御をトーインからトーアウトに切り替える位置であり、例えば車体10と実装本体8のガイド部との距離が第2判定距離以下になるときの搬送装置1の位置である。第2判定距離は、第1判定距離よりも短い距離であって、搬送装置1に連結されたフィーダ台車7が、凹所81内の所定位置まで入った状態での、搬送装置1と実装本体8との間の距離に設定されている。ここで、凹所81内の所定位置(つまり第2判定位置)は、例えば、フィーダ台車7が凹所81に出入りする方向において凹所81の開口部と最奥部との間の中間位置(例えば凹所81の中央位置)に設定されている。なお、制御装置11には、第1変更位置に関する情報(例えば第1判定距離等)、及び、第2変更位置に関する情報(例えば第2判定距離等)がそれぞれ設定されている。
【0073】
ステップS4において搬送装置1が第2変更位置に到着したと判断すると(S4:Yes)、制御装置11は、左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角θL,θRをトーアウトに制御する。舵角制御部13は、ステップS1の処理に移行し、左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角θL,θRをトーアウトに切り替えるための制御指令を左操向輪ユニット4L及び右操向輪ユニット4Rに出力する。また、搬送装置1のトルク制御部14は、左操向輪2L及び右操向輪2Rの回転速度の上限値と出力トルクとを指示する制御指令を左操向輪ユニット4L及び右操向輪ユニット4Rに出力する(S2)。ここで、舵角制御部13が左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角θL,θRをトーインからトーアウトに変更する場合、左操向輪2L及び右操向輪2Rの向きが平行になる状態ができるだけ短くなるように、できるだけ短い時間でトーインからトーアウトに切り替えるのが好ましい。
【0074】
左操向輪ユニット4L及び右操向輪ユニット4Rが舵角制御部13からの制御指令を受けて、トー角θL,θRをトーアウトに切り替えると、搬送装置1の移動方向が左操向輪2L及び右操向輪2Rの向きに強く拘束される状態が解除される。トー角θL,θRがトーアウトに切り替えられた状態では、搬送装置1は、駆動輪の駆動力と走行抵抗との差が最も大きくなる方向へと移動しながら、実装本体8に接近する。搬送装置1が実装本体8に更に接近し、
図9に示すように被搬送物A1であるフィーダ台車7が凹所81の両側の横壁82(案内部材)に接触すると、フィーダ台車7と横壁82との摩擦による走行抵抗が搬送装置1に加わるため、搬送装置1は、駆動輪の駆動力と走行抵抗との差が最も大きくなる方向へと移動する。
図9に示す動作例では、扇形の範囲P2において実線の矢印F1で示す方向が、駆動輪の駆動力と走行抵抗との差が最も大きくなる方向となり、搬送装置1は矢印F1の方向へと移動することになる。ここで、制御装置11は、左操向輪2L及び右操向輪2Rのトー角θL,θRをトーアウトに制御するのみで、実装本体8の位置を計測した結果に基づいて左操向輪2L及び右操向輪2Rの舵角を制御する複雑な制御処理を行う必要がない。したがって、制御装置11は、複雑な制御処理を行うことなく、車体10が停止する可能性を低減でき、フィーダ台車7が実装本体8の一部に接触した状態で搬送装置1をスムーズに移動させることができる。
【0075】
また、ステップS4において搬送装置1が第2変更位置に到着(存在)していないと判断された場合(S4:No)、制御装置11は、検知部17が検知した搬送装置1の走行距離に基づいて、搬送装置1が目標位置に到着したか否かを判断する(S5)。
【0076】
ステップS5において搬送装置1が目標位置に到着していないと判断された場合(S5:No)、制御装置11は、ステップS3に戻り、ステップS3以後の処理を実行する。
【0077】
ステップS5において搬送装置1が目標位置に到着したと判断された場合(S5:Yes)、制御装置11は、トー角を制御する処理を終了して、搬送装置1を停止させる。
【0078】
なお、搬送装置1が、フィーダ台車7を実装本体8の凹所81に入れる場合に、搬送装置1は、実装本体8に接近するまでは複数の操向輪2の向きを平行とする。そして、搬送装置1は、実装本体8に接近すると複数の操向輪2をトーインにし、凹所81にフィーダ台車7が入ると複数の操向輪2をトーアウトに切り替えているが、トー角の制御方法はこれに限定されない。搬送装置1は、実装本体8に接近すると複数の操向輪2をトーアウトにし、凹所81にフィーダ台車7が入ると複数の操向輪2をトーインに切り替えてもよい。また、搬送装置1は、実装本体8に接近するとフィーダ台車7が凹所81内の所定位置に入るまで複数の操向輪2をトーインに制御してもよいし、トーアウトに制御してもよい。
【0079】
また、搬送装置1が、凹所81内にあるフィーダ台車7を凹所81の外へ出す場合、制御装置11は、左操向輪2L及び右操向輪2Rをトーインとして、搬送装置1を凹所81の外に移動させる。搬送装置1はトーインの状態で凹所81の外側に向かって移動するので、フィーダ台車7が凹所81の横壁82に接触することによって走行抵抗が発生したとしても、搬送装置1は、駆動輪の駆動力と走行抵抗との差が最も大きくなる方向に移動方向を変えながら、スムーズに移動することができる。なお、搬送装置1が、凹所81内にあるフィーダ台車7を凹所81の外へ出す場合、制御装置11は、左操向輪2L及び右操向輪2Rをトーアウトとして、搬送装置1を凹所81の外へと移動させてもよい。また、搬送装置1が、凹所81内にあるフィーダ台車7を凹所81の外へ出す場合、制御装置11は、左操向輪2L及び右操向輪2Rを最初はトーインとし、所定の変更位置に到達するとトーアウトに切り替えてもよいし、その逆の制御を行ってもよい。
【0080】
そして、検知部17の検知結果に基づいてフィーダ台車7の全体が凹所81の外に出たと判断すると、舵角制御部13は、左操向輪2L及び右操向輪2Rの向きを平行にする第1モードで各操向輪2の舵角を制御する。フィーダ台車7の全体が凹所81の外に出ると、フィーダ台車7が凹所81の横壁82などに接触する可能性が低下するので、制御装置11は、左操向輪2L及び右操向輪2Rの向きを平行にした状態で、搬送装置1を目標位置に向かってスムーズに移動させることができる。
【0081】
(4)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、搬送装置1と同様の機能は、搬送装置1の制御方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る搬送装置1の制御方法は、駆動制御工程と、トー角制御工程と、を含む。駆動制御工程では、複数の駆動輪を駆動する。複数の駆動輪は、被搬送物A1を搬送するための車体10に設けられて車体10を移動させるための車輪である。トー角制御工程では、複数の操向輪のトー角を互いに異なる角度となるように制御する。複数の操向輪2は、車体10に設けられて車体10の移動方向を変更するための車輪である。一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、コンピュータシステムに、上記の搬送装置の制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0082】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0083】
本開示における搬送装置1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における搬送装置1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0084】
また、搬送装置1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは搬送装置1に必須の構成ではなく、搬送装置1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、搬送装置1の少なくとも一部の機能、例えば、搬送装置1の一部の機能(例えば舵角制御部13等)がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0085】
上記の実施形態では複数の操向輪2が駆動輪を兼ねており、駆動機構と操向機構とが操向輪ユニット(左操向輪ユニット4L及び右操向輪ユニット4R)として一体化されているが、搬送装置1が、操向輪2とは別に駆動輪を備えていてもよい。搬送装置1が備える駆動輪の数は2つに限定されず、3つ以上でもよい。また、搬送装置1は操向輪2を2つ備えているが、操向輪2の数は3つ以上でもよい。より好ましくは、駆動輪の数は、操向輪の数と同数であることが望ましい。
【0086】
上記の実施形態において、
図10に示すように、被搬送物A1であるフィーダ台車7に、構造物である実装本体8の外側面及び凹所81の横壁82に接触する当接部が設けられてもよい。当接部は、フィーダ台車7と構造物との接触抵抗を低減させるための機能を有しており、例えばフィーダ台車7に回転可能な状態で保持されたローラA12である。このローラA12が構造物と接触した場合に、ローラA12が回転することによって、フィーダ台車7(被搬送物A1)を搬送する搬送装置1が停止することなく、スムーズに移動することができる。なお、当接部はローラA12に限定されず、構造物との摩擦を低減可能なように鏡面加工が施された当接面であってもよく、当接面は平面でも曲面でもよい。
【0087】
なお、
図10の変形例では、構造物と接触する当接部が被搬送物A1であるフィーダ台車7に設けられているが、構造物と接触する当接部が搬送装置1に設けられていてもよいし、搬送装置1と被搬送物A1との両方に設けられていてもよい。
【0088】
上記の実施形態では、搬送装置1が被搬送物A1を実装本体8の凹所81内に移動させているが、被搬送物A1を移動させる目標位置は実装本体8の凹所81に限定されない。目標位置は、2つの横壁の間の空間でもよいし、適宜変更が可能である。
【0089】
上記の実施形態では、舵角制御部13は、所定エリア内にある構造物と車体10との相対的な位置関係に基づいて、複数の操向輪2のトー角を制御しているが、舵角制御部13は、他の条件に基づいて、複数の操向輪2のトー角を制御してもよい。
【0090】
例えば、舵角制御部13は、車体10の存在位置に基づいて、複数の操向輪2のトー角を制御してもよい。舵角制御部13は、例えば、搬送装置1が狭い通路を走行する場合や、障害物が存在するエリアを通行する場合など、物体と接触する可能性が第1エリアよりも高い第2エリアに存在する場合には、複数の操向輪2のトー角をトーイン又はトーアウトに制御する。これにより、搬送装置1又は被搬送物A1が物体に接触した状態でも、搬送装置1は、駆動輪の駆動力と走行抵抗との差が最も大きくなる方向に移動するから、複雑な制御処理を行わなくても、搬送装置1が停止することなく移動させることができる。
【0091】
また、舵角制御部13は、被搬送物A1の搬送状態に基づいて、複数の操向輪2のトー角を制御してもよい。舵角制御部13は、例えば、被搬送物A1を連結する場合や、被搬送物A1を運ぶ目標位置に接近した場合など、被搬送物A1の搬送状態に応じて、複数の操向輪2のトー角をトーイン又はトーアウトに切り替えてもよい。
【0092】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の搬送装置(1)は、被搬送物(A1)を搬送するための車体(10)と、複数の駆動輪と、複数の操向輪(2)と、舵角制御部(13)と、を備える。複数の駆動輪は、車体(10)に設けられて、車体(10)を駆動するための車輪である。複数の操向輪(2)は、車体(10)に設けられて、車体(10)の移動方向を変更するための車輪である。舵角制御部(13)は、複数の操向輪(2)のトー角を互いに異なる角度となるように制御する。
【0093】
この態様によれば、車体(10)又は被搬送物(A1)が物体と接触することによって走行抵抗を受けた場合でも、複雑な制御処理を行うことなく車体(10)を移動させることができる。
【0094】
第2の態様の搬送装置(1)では、第1の態様において、車体(10)が移動する所定エリアには、車体(10)及び被搬送物(A1)の少なくとも一方が接触することによって車体(10)及び被搬送物(A1)の移動を案内する構造物(82)が配置される。舵角制御部(13)は、構造物(82)と車体(10)との相対的な位置関係に基づいて、複数の操向輪(2)のトー角を制御する。
【0095】
この態様によれば、構造物(82)と車体(10)との相対的な位置関係に基づいて、複数の操向輪(2)のトー角を制御することができる。
【0096】
第3の態様の搬送装置(1)では、第1又は2の態様において、舵角制御部(13)は、車体(10)の存在位置に基づいて、複数の操向輪(2)のトー角を制御する。
【0097】
この態様によれば、車体(10)の存在位置に基づいて、複数の操向輪(2)のトー角を変更することができる。
【0098】
第4の態様の搬送装置(1)では、第1~3のいずれかの態様において、舵角制御部(13)は、被搬送物(A1)の搬送状況に基づいて、複数の操向輪(2)のトー角を制御する。
【0099】
この態様によれば、被搬送物(A1)の搬送状況に基づいて、複数の操向輪(2)のトー角を変更することができる。
【0100】
第5の態様の搬送装置(1)では、第1~4のいずれかの態様において、舵角制御部(13)が複数の操向輪(2)のトー角を制御することによって、複数の駆動輪の滑り量を変化させる。
【0101】
この態様によれば、複数の操向輪(2)のトー角を制御することによって、複数の駆動輪の滑り量を変化させることができ、走行抵抗がより小さくなる向きに搬送装置(1)を移動させることができる。
【0102】
第6の態様の搬送装置(1)では、第1~5のいずれかの態様において、舵角制御部(13)は、複数の操向輪(2)のトー角をトーインに制御する。
【0103】
この態様によれば、複数の操向輪(2)のトー角をトーインに制御することによって、駆動輪の滑り量を変化させることができ、走行抵抗がより小さくなる向きに搬送装置(1)を移動させることができる。
【0104】
第7の態様の搬送装置(1)では、第1~6のいずれかの態様において、舵角制御部(13)は、複数の操向輪(2)のトー角をトーアウトに制御する。
【0105】
この態様によれば、複数の操向輪(2)のトー角をトーアウトに制御することによって、駆動輪の滑り量を変化させることができ、走行抵抗がより小さくなる向きに搬送装置(1)を移動させることができる。
【0106】
第8の態様の搬送装置(1)では、第1~7のいずれかの態様において、舵角制御部(13)は、複数の操向輪(2)のトー角を個別に制御する。
【0107】
この態様によれば、複数の操向輪(2)のトー角を個別に制御することで、駆動輪の滑り量を変化させることができる。
【0108】
第9の態様の搬送装置(1)では、第1~8のいずれかの態様において、複数の操向輪(2)の各々が駆動輪を兼ねている。
【0109】
この態様によれば、複数の操向輪(2)の各々が駆動輪を兼ねることで、車輪の数を減らすことができる。
【0110】
第10の態様の搬送装置(1)では、第1~9のいずれかの態様において、駆動輪の出力トルクを制御するトルク制御部(14)を更に備える。
【0111】
この態様によれば、出力トルクを所望の値に制御することができる。
【0112】
第11の態様の搬送装置(1)では、第1~10のいずれかの態様において、駆動輪の滑り量を評価する評価部(15)を、更に備える。舵角制御部(13)は、評価部(15)の評価結果に基づいて、複数の操向輪(2)のトー角を制御する。
【0113】
この態様によれば、駆動輪の滑り量に応じて複数の操向輪(2)のトー角を制御することができる。
【0114】
第12の態様の搬送装置(1)では、第1~11のいずれかの態様において、車体(10)が移動する所定エリアには、車体(10)及び被搬送物(A1)の少なくとも一方が接触することによって車体(10)及び被搬送物(A1)の移動を案内する構造物(82)が配置される。車体(10)及び被搬送物(A1)の少なくとも一方に、構造物(82)に接触する当接部(A12)が設けられている。
【0115】
この態様によれば、当接部(A12)が構造物(82)に接触した状態で搬送装置(1)を移動させることができる。
【0116】
第13の態様の搬送装置(1)では、第1~12のいずれかの態様において、車体(10)の側面に、被搬送物(A1)を連結する連結部(18)が設けられている。
【0117】
この態様によれば、搬送装置(1)と被搬送物(A1)とを一緒に移動させることができる。
【0118】
第14の態様の搬送装置(1)の制御方法は、駆動制御工程と、トー角制御工程と、を含む。駆動制御工程では、複数の駆動輪を駆動する。複数の駆動輪は、被搬送物(A1)を搬送するための車体(10)に設けられて車体(10)を移動させるための車輪である。トー角制御工程では、複数の操向輪(2)のトー角を互いに異なる角度となるように制御する。複数の操向輪(2)は、車体(10)に設けられて車体(10)の移動方向を変更するための車輪である。
【0119】
この態様によれば、車体(10)又は被搬送物(A1)が物体と接触することによって走行抵抗を受けた場合でも、複雑な制御処理を行うことなく車体(10)を移動させることができる。
【0120】
第15の態様のプログラムは、コンピュータシステムに、第14の態様の搬送装置の制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0121】
この態様によれば、車体(10)又は被搬送物(A1)が物体と接触することによって走行抵抗を受けた場合でも、複雑な制御処理を行うことなく車体(10)を移動させることができる。
【0122】
第16の態様の部品実装システム(E1)は、部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機(9)を含む。部品実装機(9)は、部品を供給するフィーダ台車(7)と、部品を基板に実装する実装ヘッドを含む実装本体(8)と、を有する。フィーダ台車(7)が、第1~13のいずれかの態様の搬送装置(1)によって実装本体(8)まで搬送される被搬送物(A1)である。
【0123】
この態様によれば、車体(10)又はフィーダ台車(7)が物体と接触することによって走行抵抗を受けた場合でも、複雑な制御処理を行うことなく車体(10)を移動させることができる。
【0124】
第17の態様の作業システム(W1)は、第16の態様の部品実装システム(E1)と、第1~13のいずれかの態様の搬送装置(1)とを有する。部品実装システム(E1)は、車体(10)及びフィーダ台車(7)の少なくとも一方が接触することによってフィーダ台車(7)を実装本体(8)に案内する構造物(82)を有する。舵角制御部(13)は、構造物(82)と車体(10)との相対的な位置関係に基づいて、複数の操向輪(2)のトー角を制御する。
【0125】
この態様によれば、車体(10)又はフィーダ台車(7)が物体と接触することによって走行抵抗を受けた場合でも、複雑な制御処理を行うことなく車体(10)を移動させることができる。
【0126】
上記態様に限らず、上記の実施形態に係る搬送装置(1)の種々の構成(変形例を含む)は、搬送装置(1)の制御方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0127】
第2~第13の態様に係る構成については、搬送装置(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0128】
1 搬送装置
2 操向輪
7 フィーダ台車
8 実装本体
9 部品実装機
10 車体
13 舵角制御部
14 トルク制御部
15 評価部
18 連結部
82 構造物
A1 被搬送物
A12 当接部
E1 部品実装システム
W1 作業システム