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特許7570007シェルアンドチューブ式熱交換器及び冷凍サイクル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】シェルアンドチューブ式熱交換器及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 39/02 20060101AFI20241011BHJP
   F25B 41/42 20210101ALI20241011BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20241011BHJP
   F28F 13/00 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
F25B39/02 N
F25B41/42
F28D1/053 A
F28F13/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020070345
(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2021167681
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】日下 道美
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-132460(JP,A)
【文献】実開昭58-107125(JP,U)
【文献】特開平09-256076(JP,A)
【文献】特開2008-286473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 39/02
F25B 41/42
F28D 1/053
F28F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルと、
前記シェルの内部に互いに平行に配置され、それぞれの入口から出口に向かって第1流体が流れる扁平形状の複数の伝熱管と、
前記シェルの内部に配置され、前記複数の伝熱管に向かって液相の第2流体を噴霧する複数のノズルと、
を備え、
前記複数の伝熱管のそれぞれは、平坦な伝熱面を有し、
前記入口から前記出口に向かう方向をZ方向と定義し、前記伝熱面に垂直な方向をY方向と定義し、前記Z方向及び前記Y方向に垂直な方向をX方向と定義したとき、
前記複数のノズルは、前記X方向における第1側から第2側に向かって前記第2流体を噴霧する複数の第1ノズルと、前記X方向における前記第2側から前記第1側に向かって前記第2流体を噴霧する複数の第2ノズルとを含み、
前記複数の第1ノズル及び前記複数の第2ノズルから噴霧された前記第2流体が円錐状に拡がり、
前記複数の第1ノズル及び前記複数の第2ノズルを前記X方向に投影することによって得られる投影像において、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルとが千鳥状の配列パターンを示し、
前記投影像において、最小面積の四角形の4つの頂点をなす4つの前記第1ノズルを選択したとき、それら4つの前記第1ノズルがなす四角形の中央部に前記第2ノズルが位置しており、最小面積の四角形の4つの頂点をなすように4つの前記第2ノズルを選択したとき、それら4つの前記第2ノズルがなす四角形の中央部に前記第1ノズルが位置している
シェルアンドチューブ式熱交換器。
【請求項2】
前記複数の第1ノズルは、前記Z方向に配列されており、
前記複数の第2ノズルは、前記Z方向に配列されており、
前記投影像において、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルとが前記Z方向に沿って前記千鳥状の配列パターンを示す、
請求項1に記載のシェルアンドチューブ式熱交換器。
【請求項3】
前記複数の第1ノズルは、前記Y方向に配列されており、
前記複数の第2ノズルは、前記Y方向に配列されており、
前記投影像において、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルとが前記Y方向に沿って前記千鳥状の配列パターンを示す、
請求項1に記載のシェルアンドチューブ式熱交換器。
【請求項4】
前記複数の第1ノズルは、前記Y方向と前記Z方向とに配列されており、
前記複数の第2ノズルは、前記Y方向と前記Z方向とに配列されており、
前記投影像において、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルとが前記Z方向及び前記Y方向に沿って前記千鳥状の配列パターンを示す、
請求項1に記載のシェルアンドチューブ式熱交換器。
【請求項5】
前記Z方向において互いに隣り合う前記第1ノズル同士の間隔は、前記Y方向において互いに隣り合う前記第1ノズル同士の間隔よりも広い、
請求項4に記載のシェルアンドチューブ式熱交換器。
【請求項6】
前記Z方向において互いに隣り合う前記第2ノズル同士の間隔は、前記Y方向において互いに隣り合う前記第2ノズル同士の間隔よりも広い、
請求項4又は5に記載のシェルアンドチューブ式熱交換器。
【請求項7】
前記Z方向において互いに隣り合う前記第1ノズル同士の間隔は、前記Z方向において互いに隣り合う前記第2ノズル同士の間隔に等しい、
請求項2、4、5及び6のいずれか1項に記載のシェルアンドチューブ式熱交換器。
【請求項8】
前記Z方向における前記第1ノズルと前記第2ノズルとの間隔が前記Z方向において互いに隣り合う前記第1ノズル同士の間隔の1/2である、
請求項7に記載のシェルアンドチューブ式熱交換器。
【請求項9】
前記Y方向において互いに隣り合う前記第1ノズル同士の間隔は、前記Y方向において互いに隣り合う前記第2ノズル同士の間隔に等しい、
請求項3から6のいずれか1項に記載のシェルアンドチューブ式熱交換器。
【請求項10】
前記Y方向における前記第1ノズルと前記第2ノズルとの間隔が前記Y方向において互いに隣り合う前記第1ノズル同士の間隔の1/2である、
請求項9に記載のシェルアンドチューブ式熱交換器。
【請求項11】
前記複数の第1ノズルは、前記Y方向に配列されており、
前記Y方向において互いに隣り合う前記第1ノズルからの前記第2流体の流れの外縁同士が前記第1側における前記伝熱管の前縁部の位置で交差する、
請求項1から10のいずれか1項に記載のシェルアンドチューブ式熱交換器。
【請求項12】
前記複数の第2ノズルは、前記Y方向に配列されており、
前記Y方向において互いに隣り合う前記第2ノズルからの前記第2流体の流れの外縁同士が前記第2側における前記伝熱管の前縁部の位置で交差する、
請求項1から11のいずれか1項に記載のシェルアンドチューブ式熱交換器。
【請求項13】
前記Z方向が鉛直方向であり、
前記Y方向及び前記X方向が水平方向である、
請求項1から12のいずれか1項に記載のシェルアンドチューブ式熱交換器。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載のシェルアンドチューブ式熱交換器と、
前記シェルアンドチューブ式熱交換器に接続された圧縮機と、
を備えた、冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シェルアンドチューブ式熱交換器及び冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒を凝縮又は蒸発させるための熱交換器として、シェルアンドチューブ式熱交換器が知られている。シェルアンドチューブ式熱交換器は、伝熱管に向けて冷媒を噴霧するように構成されていることがある。
【0003】
図12は、特許文献1(図21)に記載された従来のシェルアンドチューブ式の蒸発器2を示している。蒸発器2は、シェル11、複数のチューブ15及び複数のスプレー14を有する。冷媒液12は、シェル11の底部に設けられた液溜め17に貯留されており、冷媒ポンプ18によって汲み上げられ、スプレー14を介してチューブ15に向けて噴霧される。冷媒液12は、チューブ15の表面に付着して液膜16を形成する。冷媒液12とチューブ15を流れる冷水とが熱交換することによって、冷媒液12が蒸発し、冷水が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-230760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12に示す従来のシェルアンドチューブ式の蒸発器2には、伝熱性能の観点において改善の余地が残されている。
【0006】
本開示は、優れた伝熱性能を有するシェルアンドチューブ式熱交換器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のシェルアンドチューブ式熱交換器は、
シェルと、
前記シェルの内部に互いに平行に配置され、それぞれの入口から出口に向かって第1流体が流れる扁平形状の複数の伝熱管と、
前記シェルの内部に配置され、前記複数の伝熱管に向かって液相の第2流体を噴霧する複数のノズルと、
を備え、
前記複数の伝熱管のそれぞれは、平坦な伝熱面を有し、
前記入口から前記出口に向かう方向をZ方向と定義し、前記伝熱面に垂直な方向をY方向と定義し、前記Z方向及び前記Y方向に垂直な方向をX方向と定義したとき、
前記複数のノズルは、前記X方向における第1側から第2側に向かって前記第2流体を噴霧する複数の第1ノズルと、前記X方向における前記第2側から前記第1側に向かって前記第2流体を噴霧する複数の第2ノズルとを含み、
前記複数の第1ノズル及び前記複数の第2ノズルを前記X方向に投影することによって得られる投影像において、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルとが千鳥状の配列パターンを示す。
【0008】
本開示の冷凍サイクル装置は、
上記本開示のシェルアンドチューブ式熱交換器と、
前記シェルアンドチューブ式熱交換器に接続された圧縮機と、
を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、優れた伝熱性能を有するシェルアンドチューブ式熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態1における冷凍サイクル装置の構成図
図2】II-II線に沿った蒸発器の縦断面図
図3】III-III線に沿った蒸発器の横断面図
図4図2及び図3に示す蒸発器に使用された伝熱管の断面図
図5】複数の伝熱管、複数の第1ノズル及び複数の第2ノズルの詳細な位置関係を示すZ方向からの上面図
図6】複数の伝熱管、複数の第1ノズル及び複数の第2ノズルの詳細な位置関係を示すX方向からの側面図
図7】伝熱管、複数の第1ノズル及び複数の第2ノズルの詳細な位置関係を示すY方向からの側面図
図8図5に示す基準面H1における冷媒の存在領域を示す図
図9図8に示すIX-IX線に沿った断面における冷媒の存在領域を示す図
図10図5に示す基準面H2における冷媒の存在領域を示す図
図11図10に示すXI-XI線に沿った断面における冷媒の存在領域を示す図
図12】従来のシェルアンドチューブ式の蒸発器の断面図
図13A】扁平形状を有する伝熱管を用いた熱交換器にノズルを適用したときの問題点を示す図
図13B】扁平形状を有する伝熱管を用いた熱交換器にノズルを適用したときの問題点を示す別の図
図13C】扁平形状を有する伝熱管を用いた熱交換器にノズルを適用したときの問題点を示すさらに別の図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見等)
シェルアンドチューブ式熱交換器の性能を高めるための手段として、シェルの内部における伝熱管の実装密度を上げることが挙げられる。扁平形状を有する伝熱管(扁平管)をシェルアンドチューブ式熱交換器に使用すると、シェルの内部における伝熱管の実装密度を高めることができるので、シェルアンドチューブ式熱交換器の単位体積あたりの伝熱面積を増加させるのに有利である。つまり、扁平形状を有する伝熱管を使用することは、シェルアンドチューブ式熱交換器の高性能化に有利である。
【0012】
図13Aから図13Cは、扁平形状を有する伝熱管を用いた熱交換器に噴霧ノズルを適用したときの問題点を示す図である。図13Aに示すように、扁平形状を有する伝熱管202に向かって複数の噴霧ノズル204から液相流体を噴霧すると、互いに隣り合う噴霧ノズル204から噴霧された液相流体同士の重なり領域202tが伝熱管202の表面上に発生することがある。図13Aでは、噴霧ノズル204と噴霧ノズル204との間隔が狭すぎるので、重なり領域202tが発生する。図13Bに示すように、噴霧ノズル204から噴霧された液相流体が届かないドライアウト領域202sが伝熱管202の表面上に発生することがある。図13Bでは、噴霧ノズル204と噴霧ノズル204との間隔が広すぎるので、ドライアウト領域202sが発生する。図13Cに示すように、重なり領域202tとドライアウト領域202sとの両方が発生することもある。重なり領域202tにおいては液相流体の厚さが過度に増えて熱抵抗が増大し、伝熱性能の低下を招く。ドライアウト領域202sにおいては、熱交換が起こらず、伝熱性能の低下を招く。
【0013】
本発明者は、互いに隣り合う噴霧ノズルから噴霧された液相流体同士の重なり領域を減らすこと、及び、噴霧ノズルから噴霧された液相流体が届かない領域を減らすことが、シェルアンドチューブ式熱交換器の伝熱性能を向上させるために重要であることに気付き、本開示の主題を構成するに至った。
【0014】
そこで、本開示は、シェルアンドチューブ式熱交換器の伝熱性能を向上させるための技術を提供する。
【0015】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0016】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0017】
(実施の形態)
以下、図1から図11を用いて、実施の形態を説明する。
【0018】
[1-1.冷凍サイクル装置の構成]
図1は、シェルアンドチューブ式熱交換器を用いた冷凍サイクル装置の構成を示している。冷凍サイクル装置100は、蒸発器101、圧縮機102、凝縮器103、流量弁104及び流路110aから110dを備えている。蒸発器101の出口は流路110aによって圧縮機102の入口に接続されている。圧縮機102の出口は流路110bによって凝縮器103の入口に接続されている。凝縮器103の出口は、流路110cによって流量弁104の入口に接続されている。流量弁104の出口は流路110dによって蒸発器101の入口に接続されている。流路110a及び110bは蒸気経路である。流路110c及び流路110dは液経路である。各経路は、例えば、少なくとも1つの金属製の配管で構成されている。
【0019】
蒸発器101は、後述するように、シェルアンドチューブ式熱交換器によって構成されている。
【0020】
圧縮機102は、遠心圧縮機などの速度型圧縮機であってもよく、スクロール圧縮機などの容積型圧縮機であってもよい。
【0021】
凝縮器103の型式は特に限定されない。プレート式熱交換器、シェルアンドチューブ式熱交換器などの熱交換器が凝縮器103に使用されうる。
【0022】
冷凍サイクル装置100は、例えば、業務用又は家庭用の空気調和装置である。蒸発器101で冷却された熱媒体が回路105を通じて室内に供給され、室内の冷房に使用される。あるいは、凝縮器103で加熱された熱媒体が回路106を通じて室内に供給され、室内の暖房に利用される。熱媒体は、例えば、水である。ただし、冷凍サイクル装置100は空気調和装置に限定されず、チラー、蓄熱装置など他の装置であってもよい。
【0023】
回路105は、蒸発器101に熱媒体を循環させる回路である。回路106は、凝縮器103に熱媒体を循環させる回路である。回路105及び回路106は、外気から隔離された密閉回路であってもよい。
【0024】
熱媒体は、回路105及び回路106のそれぞれを流れる第1流体である。熱媒体は水に限定されず、オイル、ブラインなどの液体であってもよく、空気などの気体であってもよい。回路105の熱媒体の組成が回路106の熱媒体の組成と異なっていてもよい。
【0025】
[1-2.冷凍サイクル装置の動作]
圧縮機102を起動すると、蒸発器101において冷媒が加熱されて蒸発する。これにより、気相冷媒が生成される。気相冷媒は圧縮機102に吸入されて圧縮される。圧縮された気相冷媒は圧縮機102から凝縮器103に供給される。気相冷媒は凝縮器103で冷却されて凝縮及び液化する。これにより、液相冷媒が生成される。液相冷媒は、流量弁104を経由して凝縮器103から蒸発器101に戻される。
【0026】
冷媒の種類は特に限定されない。冷媒としては、フロン冷媒、低GWP(Global Warming Potential)冷媒、自然冷媒などが挙げられる。フロン冷媒としては、HCFC(hydrochlorofluorocarbon)及びHFC(hydrofluorocarbon)が挙げられる。低GWP冷媒としては、HFO-1234yf及び水が挙げられる。自然冷媒としては、二酸化炭素及び水が挙げられる。
【0027】
冷媒は、常温での飽和蒸気圧が負圧の物質を主成分として含む冷媒であってもよい。このような冷媒としては、水、アルコール又はエーテルを主成分として含む冷媒が挙げられる。「主成分」とは、質量比で最も多く含まれた成分を意味する。「負圧」は、絶対圧で大気圧よりも低い圧力を意味する。「常温」は、日本産業規格(JIS Z8703)によれば、20℃±15℃の範囲内の温度を意味する。
【0028】
冷媒は、第1流体である熱媒体と熱交換するべき第2流体の一例である。
【0029】
[1-3.蒸発器の構成]
図2は、II-II線に沿った蒸発器101の縦断面図である。図3は、III-III線に沿った蒸発器101の横断面図である。図2及び図3に示すように、蒸発器101は、シェルアンドチューブ式熱交換器で構成されている。蒸発器101は、シェル21、第1伝熱管群221、第1ノズル群241、第2ノズル群242、循環回路25及び循環ポンプ26を備えている。第1伝熱管群221、第1ノズル群241及び第2ノズル群242は、シェル21の内部に配置されている。第1ノズル群241と第2ノズル群242との間に第1伝熱管群221が配置されている。蒸発器101において冷媒を効率的に蒸発させることによって冷凍サイクルの効率(COP)が向上しうる。
【0030】
蒸発器101は、さらに、第2伝熱管群222を備えている。第2伝熱管群222も第1ノズル群241と第2ノズル群242との間に配置されている。つまり、蒸発器101は、複数の伝熱管群を備えている。複数の伝熱管群のそれぞれが第1ノズル群241と第2ノズル群242との間に配置されている。蒸発器101は、複数の第1ノズル群241と複数の第2ノズル群242とを備えている。
【0031】
第1伝熱管群221及び第2伝熱管群222は、所定方向に沿って配置されている。図2及び図3において、「所定方向」は、X軸に平行な方向である。
【0032】
第1伝熱管群221及び第2伝熱管群222のそれぞれは、複数の伝熱管22及び1対のヘッダー23を含む。第1伝熱管群221及び第2伝熱管群222のそれぞれにおいて、複数の伝熱管22は、所定間隔で互いに平行に配列されている。ヘッダー23とは別の手段によって複数の伝熱管22が束ねられていてもよい。
【0033】
伝熱管22は、多穴かつ扁平形状の伝熱管である。伝熱管22の入口から出口に向かって熱媒体(第1流体)が流れる。複数の伝熱管群のそれぞれにおいて、平坦な伝熱面が鉛直方向に平行となるように複数の伝熱管22がヘッダー23とヘッダー23との間に配列されている。図2及び図3では、Z軸に平行な方向が鉛直方向である。
【0034】
扁平形状を有する伝熱管22をシェルアンドチューブ式熱交換器に使用すると、シェル21の内部における伝熱管22の実装密度を高めることができるので、シェルアンドチューブ式熱交換器の単位体積あたりの伝熱面積を増加させるのに有利である。つまり、扁平形状を有する伝熱管22を使用することは、シェルアンドチューブ式熱交換器の小型化に有利である。
【0035】
伝熱管22の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスなどの金属材料が挙げられる。
【0036】
図4は、伝熱管22の断面を示している。伝熱管22は、1対の平坦な伝熱面22pを有するように、管状の外壁41と複数の隔壁42とによって構成されている。外壁41と隔壁42とによって囲まれた空間が熱媒体の流路43である。外壁41及び隔壁43は、それぞれ、薄板によって構成されている。薄板の厚さは、例えば、0.5mmから0.8mmの範囲にある。流路43は、例えば、四角形の断面形状を有する。伝熱管22の断面において、流路43の一辺は、例えば、0.5mmから3mmの範囲にある。流路43は、円形、三角形などの他の形状の断面を有していてもよい。流路43の内壁面に微細な溝又はフィンを形成して表面積を増大させてもよい。
【0037】
以下において、伝熱管22の入口から出口に向かう方向をZ方向と定義する。伝熱面22pに垂直な方向をY方向と定義する。Z方向及びY方向に垂直な方向をX方向と定義する。
【0038】
図2に示すように、第1伝熱管群221及び第2伝熱管群222は、熱媒体が順番に流れるように直列に接続されている。第1伝熱管群221及び第2伝熱管群222は、接続管29によって互いに接続されている。複数の伝熱管群から選ばれる第1伝熱管群221のヘッダー23に回路105の一端が接続されている。回路105の一端が接続されたヘッダー23は、複数の伝熱管群の入口をなす。第2伝熱管群222のヘッダー23に回路105の他端が接続されている。回路105の他端が接続されたヘッダー23は、複数の伝熱管群の出口をなす。熱媒体の流れ方向において、第1伝熱管群221は、第2伝熱管群222よりも上流側に位置している。
【0039】
図2及び図3に示すように、第1ノズル群241は、複数の第1ノズル24aを含む。第2ノズル群242は、複数の第2ノズル24bを含む。第1ノズル群241及び第2ノズル群242のそれぞれが複数のノズルを含む。複数の第1ノズル24a及び複数の第2ノズル24bのそれぞれから複数の伝熱管22に向かって液相冷媒(第2流体)が噴霧される。複数の第1ノズル24aは、X方向における第1側から第2側に向かって液相冷媒を噴霧する。複数の第2ノズル24bは、X方向における第2側から第1側に向かって第2流体を噴霧する。「第1側」は、例えば、伝熱管22の一方の側面が面する側である。「第2側」は、伝熱管22の他方の側面が面する側である。
【0040】
複数の第1ノズル24aは、第1側において、複数の伝熱管22の前縁部に面している。複数の第2ノズル24bは、第2側において、複数の伝熱管22の前縁部に面している。伝熱管22の前縁部は、X方向における伝熱管22の両方の端部を意味する。
【0041】
複数の第1ノズル24a及び複数の第2ノズル24bをX方向に投影することによって得られる投影像において、複数の第1ノズル24aと複数の第2ノズル24bとが千鳥状の配列パターンを示す。投影像は、詳細には、X方向に垂直な任意の投影面に複数の第1ノズル24a及び複数の第2ノズル24bを正射影することによって得られる像である。
【0042】
図2に示すように、複数の第1ノズル24aはZ方向に配列されている。複数の第2ノズル24bはZ方向に配列されている。複数の第1ノズル24a及び複数の第2ノズル24bは、Z方向に関して互い違いに配列されている。上述の投影像において、複数の第1ノズル24aと複数の第2ノズル24bとがZ方向に沿って千鳥状の配列パターンを示す。
【0043】
図3に示すように、複数の第1ノズル24aはY方向に配列されている。複数の第2ノズル24bはY方向に配列されている。複数の第1ノズル24a及び複数の第2ノズル24bは、Y方向に関して互い違いに配列されている。上述の投影像において、複数の第1ノズル24aと複数の第2ノズル24bとがY方向に沿って千鳥状の配列パターンを示す。
【0044】
つまり、複数の第1ノズル24aは、Y方向とZ方向とにマトリクス状に配列されている。複数の第2ノズル24bは、Y方向とZ方向とにマトリクス状に配列されている。上述の投影像において、複数の第1ノズル24aと複数の第2ノズル24bとがZ方向及びY方向に沿って千鳥状の配列パターンを示す。
【0045】
図5は、複数の伝熱管22、複数の第1ノズル24a及び複数の第2ノズル24bの詳細な位置関係を示すZ方向からの上面図である。破線は、第1ノズル24a又は第2ノズル24bから噴霧された冷媒の流れのY方向の外縁を示している。
【0046】
図5に示すように、複数の伝熱管22はY方向に一定の間隔で配列されている。複数の第1ノズル24aは、Y方向に所定間隔で配列されている。Y方向において互いに隣り合う第1ノズル24a同士の間隔は、間隔Wである。同様に、複数の第2ノズル24bは、Y方向に所定間隔で配列されている。Y方向において互いに隣り合う第2ノズル24b同士の間隔は、間隔Wである。つまり、Y方向において互いに隣り合う第1ノズル24a同士の間隔は、Y方向において互いに隣り合う第2ノズル24b同士の間隔に等しい。本実施の形態では、1つのノズルから噴霧された冷媒が6本(複数)の伝熱管22の伝熱面を濡らすように間隔Wが定められている。間隔Wは、ノズルの噴霧角度θと、ノズルから伝熱管22の前縁部までの距離とに応じて適切に定められている。
【0047】
図5に示すように、Y方向における第1ノズル24aと第2ノズル24bとの間隔は、Y方向において互いに隣り合う第1ノズル24a同士の間隔の1/2である。つまり、Y方向における第1ノズル24aと第2ノズル24bとの間隔は、W/2である。
【0048】
Y方向において互いに隣り合う第1ノズル24aからの冷媒の流れの外縁同士は、X方向の第1側における伝熱管22の前縁部の位置で交差している。第1ノズル24aからの冷媒の流れの外縁同士の交点K1は、伝熱管22の前縁部上に位置している。
【0049】
Y方向において互いに隣り合う第2ノズル24bからの冷媒の流れの外縁同士は、X方向の第2側における伝熱管22の前縁部の位置で交差している。第2ノズル24bからの冷媒の流れの外縁同士の交点K2は、互いに隣り合う伝熱管22の間に位置している。
【0050】
図6は、複数の伝熱管22、複数の第1ノズル24a及び複数の第2ノズル24bの詳細な位置関係を示すX方向からの側面図である。図6に示すように、複数の第1ノズル24aは、Z方向に所定間隔で配列されている。Z方向において互いに隣り合う第1ノズル24a同士の間隔は、間隔Pである。同様に、複数の第2ノズル24bは、Z方向に所定間隔で配列されている。Z方向において互いに隣り合う第2ノズル24b同士の間隔は、間隔Pである。つまり、Z方向において互いに隣り合う第1ノズル24a同士の間隔は、Z方向において互いに隣り合う第2ノズル24b同士の間隔に等しい。
【0051】
図6に示すように、Z方向における第1ノズル24aと第2ノズル24bとの間隔は、Z方向において互いに隣り合う第1ノズル24a同士の間隔の1/2である。つまり、Z方向における第1ノズル24aと第2ノズル24bとの間隔は、P/2である。
【0052】
図6に示すように、X方向から平面視したとき、複数の第1ノズル24aと複数の第2ノズル24bとがマトリクス状に配列されている。X方向から平面視し、最小面積の四角形の4つの頂点をなす4つの第1ノズル24aを選択したとき、それら4つの第1ノズル24aがなす四角形の中央部に第2ノズル24bが位置している。同様に、X方向から平面視し、最小面積の四角形の4つの頂点をなすように4つの第2ノズル24bを選択したとき、それら4つの第2ノズル24bがなす四角形の中央部に第1ノズル24aが位置している。
【0053】
Z方向において互いに隣り合う第1ノズル24a同士の間隔Pは、Y方向において互いに隣り合う第1ノズル24a同士の間隔Wよりも広い。同様に、Z方向において互いに隣り合う第2ノズル24b同士の間隔Pは、Y方向において互いに隣り合う第2ノズル24b同士の間隔Wよりも広い。
【0054】
本実施の形態において、第1ノズル24aの中心線は、伝熱管22の前縁部に重なっている。第2ノズル24bの中心線は、Y方向において互いに隣り合う伝熱管22の間に位置している。ただし、全てのノズルの中心線が前縁部に重なるようにノズルの位置が定められていてもよい。あるいは、全てのノズルの中心線が伝熱管22の間に位置していてもよい。
【0055】
第1ノズル24a及び第2ノズル24bのそれぞれには、同一の噴霧ノズルが使用されうる。「同一」の語句は、設計上の構造及び設計上の特性が同一であることを意味する。
【0056】
図2に示すように、シェル21は、その底部に液相冷媒を貯留するように構成されている。循環回路25は、シェル21の底部と第1ノズル24a及び第2ノズル24bのそれぞれとを接続している。循環回路25に循環ポンプ26が配置されている。循環ポンプ26の働きにより、シェル21の底部に貯留された液相冷媒が循環回路25を通じて第1ノズル24a及び第2ノズル24bに供給される。このような構成によれば、液相冷媒の回収が容易であるとともに、第1ノズル24a及び第2ノズル24bに液相冷媒を供給するためのエネルギー消費を抑えることができる。
【0057】
本実施の形態において、シェル21は矩形の断面形状を有しているが、円形の断面形状を有してもよい。シェル21は、耐圧容器であってもよい。
【0058】
シェル21には、流入管27及び排出管28が設けられている。流入管27は、シェル21の内部に冷媒を導く流路である。排出管28は、伝熱管22の表面で蒸発した冷媒をシェル21の外部に導く流路である。流入管27及び排出管28には、それぞれ、流路110d及び流路110aが接続されうる。
【0059】
[1-4.動作]
以上のように構成された蒸発器101について、以下その動作及び作用を説明する。
【0060】
循環ポンプ26を起動すると、液相冷媒がシェル21の底部から第1ノズル24a及び第2ノズル24bに供給される。液相冷媒は、第1ノズル24a及び第2ノズル24bのそれぞれから伝熱管22の伝熱面22pに平行に噴霧される。熱媒体は、第1伝熱管群221に流入し、第1伝熱管群221を流れたのち、接続管29を通じて第2伝熱管群222に流入する。熱媒体は、第2伝熱管群222を流れたのち、蒸発器101の外部に排出される。伝熱管22に熱媒体を流しながら伝熱管22に向けて液相冷媒を噴霧すれば、伝熱管22において熱媒体と液相冷媒との熱交換が行われ、冷媒が蒸発して気相冷媒が生成される。
【0061】
伝熱管22として扁平形状の伝熱管を用いるとともに、伝熱面22pに平行に冷媒を噴霧することによって、伝熱管22における死水域を減らすことができる。「死水域」は、伝熱管22の表面の一部であって、冷媒が接触しにくい部分を意味する。「死水域」は、図13B及び図13Cを参照して説明したドライアウト領域202sに相当する。複数の伝熱管22に向けてX方向の両側から液相冷媒を噴霧することによって、死水域を効果的に減らすことができる。
【0062】
本実施の形態では、さらに、複数の第1ノズル24aと複数の第2ノズル24bが千鳥状の配列パターンを示す。そのため、図13Aから図13Cを参照して説明した重なり領域及びドライアウト領域をさらに効果的に減らすことができる。
【0063】
第1ノズル24aから噴霧された冷媒は、例えば、円錐状に拡がりながら複数の伝熱管22の前縁部に到達する。第2ノズル24bから噴霧された冷媒は、例えば、円錐状に拡がりながら複数の伝熱管22の前縁部に到達する。
【0064】
図5に示すように、第1ノズル24aから噴霧された冷媒は、Y方向に拡がりながら、伝熱管22と伝熱管22との間の流路にX方向の第1側から流入する。第2ノズル24bから噴霧された冷媒は、Y方向に拡がりながら、伝熱管22と伝熱管22との間の流路にX方向の第2側から流入する。ただし、伝熱管22が遮蔽板の役割を果たすので、冷媒の流れが伝熱管22の前縁部に達すると、その時点でY方向への冷媒の流れの拡がりが止まる。これにより、Y方向における冷媒の流れ同士の重なりが阻止される。
【0065】
図6に示すように、第1ノズル24aから噴霧された冷媒は、Z方向にも拡がりながら、伝熱管22と伝熱管22との間の流路にX方向の第1側から流入する。第2ノズル24bから噴霧された冷媒は、Z方向にも拡がりながら、伝熱管22と伝熱管22との間の流路にX方向の第2側から流入する。Z方向には、ヘッダー23を除き、冷媒の流れを遮る物体が存在しない。そのため、冷媒の流れは、Z方向に噴霧角度θで拡がりながら、伝熱管22と伝熱管22との間の流路を通過する。
【0066】
図7は、伝熱管22、複数の第1ノズル24a及び複数の第2ノズル24bの詳細な位置関係を示すY方向からの側面図である。第1ノズル24a及び第2ノズル24bから延びる破線は、噴霧された冷媒の到達領域を示している。図7に示す噴霧角度θは、図5に示す噴霧角度θに等しい。噴霧された冷媒の到達領域は、第1ノズル24a又は第2ノズル24bを頂点とする噴霧角度θの円錐状の領域である。
【0067】
本実施の形態によれば、複数の第1ノズル24aと複数の第2ノズル24bとがZ方向においてP/2の間隔で千鳥状のパターンで配置されている。そのため、伝熱管22の両側から冷媒を噴霧したとしても、第1ノズル24aからの冷媒の流れは、第2ノズル24bからの冷媒の流れと重複せず、あるいは、殆ど重複せず伝熱管22と伝熱管22との間の流路を通過する。
【0068】
なお、図7においては、第1ノズル24aからの冷媒の流れの一部が第2ノズル24bからの冷媒の流れの一部と重複しているように見える。しかし、この重複は、第1ノズル24aと第2ノズル24bとが同一の平面上に存在せず、かつ、Y方向にW/2の間隔で配列されていることに起因するものである。
【0069】
図8から図11を参照して、冷媒の噴霧状態をさらに詳細に説明する。
【0070】
図8は、図5に示す基準面H1における冷媒の存在領域を示す図である。基準面H1は、X方向の第1側における複数の伝熱管22の前縁部に接し、かつ、X方向に垂直な平面である。円形の領域αは、第1ノズル24aから噴霧された冷媒の基準面H1での存在領域を示している。斜線の領域βは、第2ノズル24bから噴霧された冷媒の基準面H1での存在領域を示している。
【0071】
第1ノズル24aから噴霧された冷媒は、基準面H1において、円形の領域αを占有する。Y方向において互いに隣り合う第1ノズル24a同士の間隔Wは、領域α同士が重複しないように、噴霧角度θと、伝熱管22の前縁部から第1ノズル24aまでの距離とに基づいて定められている。本実施の形態では、円形の領域α同士が基準面H1において接するように、間隔Wが定められている。
【0072】
冷媒のミストは、X方向の第1側から伝熱管22と伝熱管22との間の流路に流入し、Z方向に噴霧角度θで拡がりながら進んで伝熱面22pを濡らす。
【0073】
第2ノズル24bから噴霧された冷媒は、基準面H1において斜線の領域βを占有する。基準面H1において、領域αは、領域βに重複していない。つまり、第1ノズル24aから噴霧された冷媒と第2ノズル24bから噴霧された冷媒との基準面H1における重複が回避されている。
【0074】
図9は、図8に示すIX-IX線に沿った断面における冷媒の存在領域を示す図である。領域ε1は、第1ノズル24aから噴霧された冷媒の存在領域を示している。領域κ1は、第2ノズル24bから噴霧された冷媒の存在領域を示している。
【0075】
第1ノズル24aから噴霧された冷媒は、噴霧角度θでZ方向に拡がりながら伝熱管22と伝熱管22との間の流路を通過する。この際、冷媒は、領域ε1を通過する。第2ノズル24bから噴霧された冷媒は、噴霧角度θでZ方向に拡がりながら伝熱管22と伝熱管22との間の流路を通過する。この際、冷媒は、領域κ1を通過する。
【0076】
図9は、第1ノズル24aの中心付近を通る断面における冷媒の存在領域を示している。第1ノズル24aから噴霧された冷媒は、図9の断面においてZ方向の最大幅を有する。一方、第2ノズル24bの位置は、第1ノズル24aの位置からY方向に間隔W/2だけ離れている。そのため、第1ノズル24aの中心の位置が基準位置である場合、領域κ1は、第2ノズル24bから噴霧された冷媒の流れのY方向における外縁に対応する。ただし、第2ノズル24bからの冷媒の流れの外縁は、伝熱管22と伝熱管22との間の流路に位置しているので、第2ノズル24bから噴霧された冷媒の流れのY方向における外縁は、伝熱管22の厚さの1/2だけ第2ノズル24b側に寄っている。そのため、図9に示すように、領域κ1は、第2ノズル24bが配置された第2側において、台形の領域の一部を切り取った形状を示す。第2ノズル24bから噴霧された冷媒は、曲線を描く形で伝熱管22と伝熱管22との間の流路に流入する。
【0077】
以上のことから、複数の第1ノズル24aと複数の第2ノズル24bとの両方から複数の伝熱管22に向けて冷媒を噴霧した場合でも、伝熱管22の伝熱面22pにおいて冷媒の流れが重複することを回避できる。これにより、伝熱面22pにおける冷媒の液膜の厚さを抑えることができる。その結果、熱抵抗を下げることができ、ひいては蒸発器101の伝熱性能を向上させることができる。また、冷媒が到達できない死水域(ドライアウト領域)も生じにくい。
【0078】
図10は、図5に示す基準面H2における冷媒の存在領域を示す図である。基準面H2は、X方向の第2側における複数の伝熱管22の前縁部に接し、かつ、X方向に垂直な平面である。円形の領域γは、第2ノズル24bから噴霧された冷媒の基準面H2での存在領域を示している。斜線の領域δは、第1ノズル24aから噴霧された冷媒の基準面H2での存在領域を示している。
【0079】
第2ノズル24bから噴霧された冷媒は、基準面H2において、円形の領域γを占有する。Y方向において互いに隣り合う第2ノズル24b同士の間隔Wは、領域γ同士が重複しないように、噴霧角度θと、伝熱管22の前縁部から第2ノズル24bまでの距離とに基づいて定められている。本実施の形態では、円形の領域γ同士が基準面H2において接するように、間隔Wが定められている。
【0080】
冷媒のミストは、X方向の第2側から伝熱管22と伝熱管22との間の流路に流入し、Z方向に噴霧角度θで拡がりながら進んで伝熱面22pを濡らす。
【0081】
第1ノズル24aから噴霧された冷媒は、基準面H2において領域δを占有する。基準面H2において、領域γは、領域δに重複していない。つまり、第2ノズル24bから噴霧された冷媒と第1ノズル24aから噴霧された冷媒との基準面H2における重複が回避されている。
【0082】
図11は、図10に示すXI-XI線に沿った断面における冷媒の存在領域を示す図である。領域ε2は、第1ノズル24aから噴霧された冷媒の存在領域を示している。領域κ2は、第2ノズル24bから噴霧された冷媒の存在領域を示している。
【0083】
第2ノズル24bから噴霧された冷媒は、噴霧角度θでZ方向に拡がりながら伝熱管22と伝熱管22との間の流路を通過する。この際、冷媒は、領域κ2を通過する。第1ノズル24aから噴霧された冷媒は、噴霧角度θでZ方向に拡がりながら伝熱管22と伝熱管22との間の流路を通過する。この際、冷媒は、領域ε2を通過する。
【0084】
図11は、第2ノズル24bの中心位置での断面における冷媒の存在領域を示している。第2ノズル24bから噴霧された冷媒の流れは、図11の断面においてZ方向の最大幅を有する。一方、第1ノズル24aの位置は、第2ノズル24bの位置からY方向に間隔W/2だけ離れている。そのため、第2ノズル24bの中心位置が基準位置である場合、領域ε2は、第1ノズル24aから噴霧された冷媒の流れのY方向における外縁に対応する。すなわち、領域ε2は、伝熱面22pを濡らしうる最少の面積を持つ。また、領域ε2は、第1ノズル24aが配置された第1側において、台形の領域の一部を切り取った形状を示す。第1ノズル24aから噴霧された冷媒は、曲線を描く形で伝熱管22と伝熱管22との間の流路に流入する。
【0085】
以上のことから、複数の第1ノズル24aと複数の第2ノズル24bとの両方から複数の伝熱管22に向けて冷媒を噴霧した場合でも、伝熱管22の伝熱面22pにおいて冷媒の流れが重複することを回避できる。これにより、伝熱面22pにおける冷媒の液膜の厚さを抑えることができる。その結果、熱抵抗を下げることができ、ひいては蒸発器101の伝熱性能を向上させることができる。また、冷媒が到達できない死水域(ドライアウト領域)も生じにくい。
【0086】
[1-5.効果等]
以上のように、本実施の形態において、複数の第1ノズル24a及び複数の第2ノズル24bをX方向に投影することによって得られる投影像において、複数の第1ノズル24a及び複数の第2ノズル24bが千鳥状の配列パターンを示す。
【0087】
このような構成によれば、第1ノズル24aから噴霧された冷媒が第2ノズル24bから噴霧された冷媒と重複することを回避しつつ、伝熱管22の伝熱面22pを濡らすことができる。これにより、過剰な厚さの冷媒の液膜が形成されることを回避できる。また、冷媒が届かない領域の発生を抑制できるので、蒸発器101の伝熱性能を向上させることができる。
【0088】
本実施の形態において、複数の第1ノズル24aはZ方向に配列されていてもよく、複数の第2ノズル24bはZ方向に配列されていてもよい。上述の投影像において、複数の第1ノズル24aと複数の第2ノズル24bとがZ方向に沿って千鳥状の配列パターンを示してもよい。このような構成によれば、過剰な厚さの冷媒の液膜が形成されることを回避できるとともに、冷媒が届かない領域の発生をより十分に抑制できる。
【0089】
本実施の形態において、複数の第1ノズル24aはY方向に配列されていてもよく、複数の第2ノズル24bはY方向に配列されていてもよい。上述の投影像において、複数の第1ノズル24aと複数の第2ノズル24bとがY方向に沿って千鳥状の配列パターンを示してもよい。このような構成によれば、過剰な厚さの冷媒の液膜が形成されることを回避できるとともに、冷媒が届かない領域の発生をより十分に抑制できる。
【0090】
本実施の形態において、複数の第1ノズル24aはY方向とZ方向とに配列されていてもよく、複数の第2ノズル24bはY方向とZ方向とに配列されていてもよい。上述の投影像において、複数の第1ノズル24aと複数の第2ノズル24bとがZ方向及びY方向に沿って千鳥状の配列パターンを示してもよい。このような構成によれば、過剰な厚さの冷媒の液膜が形成されることを回避できるとともに、冷媒が届かない領域の発生をより十分に抑制できる。
【0091】
本実施の形態において、Z方向において互いに隣り合う第1ノズル24a同士の間隔Pは、Y方向において互いに隣り合う第1ノズル24a同士の間隔Wよりも広くてもよい。このような構成は、Z方向において冷媒の流れが重複することを回避するのに有利である。
【0092】
本実施の形態において、Z方向において互いに隣り合う第2ノズル24b同士の間隔Pは、Y方向において互いに隣り合う第2ノズル24b同士の間隔Wよりも広くてもよい。このような構成は、Z方向において冷媒の流れが重複することを回避するのに有利である。
【0093】
本実施の形態において、Z方向において互いに隣り合う第1ノズル24a同士の間隔Pは、Z方向において互いに隣り合う第2ノズル24b同士の間隔Pに等しくてもよい。このような構成によれば、上述した効果をより十分に得ることができる。
【0094】
本実施の形態において、Z方向における第1ノズル24aと第2ノズル24bとの間隔がZ方向において互いに隣り合う第1ノズル24a同士の間隔Pの1/2であってもよい。このような構成によれば、上述した効果をより十分に得ることができる。
【0095】
本実施の形態において、Y方向において互いに隣り合う第1ノズル24a同士の間隔Wは、Y方向において互いに隣り合う第2ノズル24b同士の間隔Wに等しくてもよい。このような構成によれば、上述した効果をより十分に得ることができる。
【0096】
本実施の形態において、Y方向における第1ノズル24aと第2ノズル24bとの間隔がY方向において互いに隣り合う第1ノズル24a同士の間隔Wの1/2であってもよい。このような構成によれば、上述した効果をより十分に得ることができる。
【0097】
本実施の形態において、複数の第1ノズル24aはY方向に配列されていてもよく、Y方向において互いに隣り合う第1ノズル24aからの第2流体の流れの外縁同士が第1側における伝熱管22の前縁部の位置で交差してもよい。このような構成によれば、上述した効果をより十分に得ることができる。
【0098】
本実施の形態において、複数の第2ノズル24aはY方向に配列されていてもよく、Y方向において互いに隣り合う第2ノズル24bからの第2流体の流れの外縁同士が第2側における伝熱管22の前縁部の位置で交差してもよい。このような構成によれば、上述した効果をより十分に得ることができる。
【0099】
本実施の形態において、Z方向が鉛直方向であってもよい。Y方向及びX方向が水平方向であってもよい。重力の影響を考慮すると、このような構成において本開示の効果が最大限に得られる。
【0100】
本実施の形態の冷凍サイクル装置100は、本実施の形態のシェルアンドチューブ式熱交換器と、シェルアンドチューブ式熱交換器に接続された圧縮機102とを備えている。シェルアンドチューブ式熱交換器は、蒸発器101に使用されてもよく、凝縮器103に使用されてもよい。本実施の形態のシェルアンドチューブ式熱交換器を使用することによって、冷凍サイクル装置100の効率を向上させることができる。
【0101】
(他の実施の形態)
本開示のシェルアンドチューブ式熱交換器は、伝熱管群を1つのみ有していてもよく、3つ以上の伝熱管群を有していてもよい。複数の伝熱管群は、水平方向だけでなく、垂直方向に配列されていてもよい。
【0102】
伝熱管群において、伝熱管22は、複数列(例えば、前後2列)で設けられていてもよく、1列のみ設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本明細書に開示されたシェルアンドチューブ式熱交換器は、業務用エアコンなどの空気調和装置に特に有用である。シェルアンドチューブ式熱交換器は、蒸発器のみならず、凝縮器として使用されてもよい。本明細書に開示された冷凍サイクル装置は、空気調和装置に限定されず、吸収式冷凍機、チラー、蓄熱装置などの他の装置であってもよい。
【符号の説明】
【0104】
21 シェル
22 伝熱管
23 ヘッダー
24a 第1ノズル
24b 第2ノズル
25 循環回路
26 循環ポンプ
27 流入管
28 排出管
29 接続管
100 冷凍サイクル装置
101 蒸発器
102 圧縮機
103 凝縮器
104 流量弁
105,106 回路
110a,110b,110c,110d 流路
221 第1伝熱管群
222 第2伝熱管群
241 第1ノズル群
242 第2ノズル群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C