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特許7570008ジェルネイル装置及びジェルネイル除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】ジェルネイル装置及びジェルネイル除去方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/00 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
A45D29/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021016943
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119662
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2023-06-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.電気通信回線を通じた公開(ウェブサイトへの掲載) 掲載日:(a)令和2年3月4日、(b)令和2年3月18日、(c)令和2年3月25日、(d)令和2年3月27日、掲載アドレス:(a)https://gccatapult.panasonic.com/ideas/nafeee.php (b)https://gccatapult.panasonic.com/stories/story71.php (c)https://www.j-cast.com/2020/03/25382446.html?p=all (d)https://r25.jp/article/791890679178227667 2.ラジオ放送による公開 放送日:令和2年4月3日、放送番組:文化放送~寺ちゃんのビジネス探訪記~
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】甘利 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】川口 慎介
(72)【発明者】
【氏名】梅本 大輝
(72)【発明者】
【氏名】川島 知子
(72)【発明者】
【氏名】谷池 優子
(72)【発明者】
【氏名】楠亀 晴香
(72)【発明者】
【氏名】小松 俊之
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06035858(US,A)
【文献】国際公開第2020/255579(WO,A1)
【文献】特開2018-114177(JP,A)
【文献】特開2020-023662(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0119926(KR,A)
【文献】特表2020-506787(JP,A)
【文献】特表2017-500983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェルネイルと爪との接着強度を低下させるための外部刺激を前記ジェルネイル及び前記爪の少なくとも一方に付与する刺激発生器と、
前記ジェルネイルの位置、前記ジェルネイルの状態、前記爪の位置、及び、前記爪の状態からなる群より選ばれる少なくとも1つを検知するセンサと、
前記センサの検知結果に基づいて前記刺激発生器を制御する制御回路と、
を備え、
前記刺激発生器は、前記外部刺激として光を発生させ、
前記センサが温度センサを含み、
前記温度センサは、前記ジェルネイルの状態としての前記ジェルネイルの温度、及び、前記爪の状態としての前記爪の温度からなる群より選ばれる少なくとも1つの温度を検知し、
前記制御回路は、前記少なくとも1つの温度及び/又は前記少なくとも1つの温度の時間変化を参照して前記外部刺激としての前記光の付与条件を調節する、
ジェルネイル装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記刺激発生器を制御することによって、前記外部刺激の付与条件を調節する、
請求項1に記載のジェルネイル装置。
【請求項3】
前記外部刺激の付与条件は、前記外部刺激を付与すべき目標領域、前記外部刺激を付与すべき時間、及び前記外部刺激の強度からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、
請求項1に記載のジェルネイル装置。
【請求項4】
前記センサがイメージセンサをさらに含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載のジェルネイル装置。
【請求項5】
前記イメージセンサは、前記ジェルネイル及び前記爪からなる群より選ばれる少なくとも1つの画像を作成し、
前記制御回路は、前記画像を参照して前記外部刺激の付与条件を調節する、
請求項4に記載のジェルネイル装置。
【請求項6】
前記刺激発生器が少なくとも1つの光源を含む、
請求項1からのいずれか1項に記載のジェルネイル装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの光源が紫外光を発する紫外光源を含む、
請求項に記載のジェルネイル装置。
【請求項8】
前記紫外光のピーク波長が280nm以上350nm以下の範囲にある、
請求項に記載のジェルネイル装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの光源が複数の光源を含み、
前記制御回路は、前記複数の光源のそれぞれのオンオフによって前記外部刺激としての前記光の照射範囲を定める、
請求項からのいずれか1項に記載のジェルネイル装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの光源と前記ジェルネイルが施された前記爪との間に配置されたマスクをさらに備え、
前記マスクによって前記外部刺激としての前記光の照射範囲が定められる、
請求項からのいずれか1項に記載のジェルネイル装置。
【請求項11】
前記マスクが電子マスクである、
請求項10に記載のジェルネイル装置。
【請求項12】
顧客の爪に関するデータを記憶するメモリをさらに備え、
前記制御回路は、前記センサの検知結果及び前記メモリに記憶された前記データに基づいて前記刺激発生器を制御する、
請求項1から11のいずれか1項に記載のジェルネイル装置。
【請求項13】
前記外部刺激の付与条件を特定することを学習する機械学習モジュールをさらに備えた、
請求項1から12のいずれか1項に記載のジェルネイル装置。
【請求項14】
前記機械学習モジュールに与えられる教師データが前記ジェルネイルの画像データを含む、
請求項13に記載のジェルネイル装置。
【請求項15】
追加又は代替のコンポーネントを有する拡張カートリッジをさらに備え、
前記拡張カートリッジが交換可能である、
請求項1から14のいずれか1項に記載のジェルネイル装置。
【請求項16】
外部へのデータの送信及び前記外部からのデータの受信を行う送受信部をさらに備えた、
請求項1から15のいずれか1項に記載のジェルネイル装置。
【請求項17】
前記ジェルネイル装置は、光の照射によって熱の発生を伴う分解反応を起こす刺激応答性材料を含む前記ジェルネイルを除去するために使用される、
請求項1から16のいずれか1項に記載のジェルネイル装置。
【請求項18】
ジェルネイルを爪から除去するための方法であって、
前記ジェルネイルの位置、前記ジェルネイルの状態、前記爪の位置、及び、前記爪の状態からなる群より選ばれる少なくとも1つに関するネイルデータを取得することと、
前記ネイルデータを参照して、前記ジェルネイルと前記爪との接着強度を低下させるための外部刺激を前記ジェルネイル及び前記爪の少なくとも一方に付与することと、
前記ジェルネイルを前記爪から除去することと、
をこの順で含
前記ジェルネイル及び前記爪の少なくとも一方に前記外部刺激として光を付与し、
前記ネイルデータは、前記ジェルネイルの状態としての前記ジェルネイルの温度、及び、前記爪の状態としての前記爪の温度からなる群より選ばれる少なくとも1つの温度に関するデータを含み、
前記少なくとも1つの温度及び/又は前記少なくとも1つの温度の時間変化を参照して前記外部刺激としての前記光の付与条件を調節する、
ジェルネイル除去方法。
【請求項19】
前記ジェルネイルは、光の照射によって熱の発生を伴う分解反応を起こす刺激応答性材料を含む、
請求項18に記載のジェルネイル除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ジェルネイル装置及びジェルネイル除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェルネイルは、高い耐久性、優れたデザイン性などの特徴を有しており、昨今のネイルアートの主流になっている。特許文献1に記載されているように、ジェルネイルの施術においては、まず、ベースコート剤が顧客の爪に塗布される。ベースコート剤に紫外光が照射され、ベースコート剤が硬化する。その後、ベースコート剤の上に所望のデザインでカラージェルが塗布されるとともに、ストーンなどの様々な装飾が施される。最後にトップコート剤が塗布され、ジェルネイルが完成する。
【0003】
ジェルネイルを爪から除去する方法としては、研磨器を用いて物理的に除去する方法、有機溶剤を用いて除去する方法、それらを組み合わせた方法などが挙げられる。特許文献2には、研磨によってジェルネイルを効率的に除去するためのネイルマシンが記載されている。特許文献3には、除去時間を短縮でき、かつ、爪及び皮膚への影響が小さい除去液を含むネイルアートキットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-248034号公報
【文献】実用新案登録第3186710号
【文献】特開2017-1187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ジェルネイルの施術、特に、ジェルネイルを爪から除去する工程には、多大な時間及び労力が費やされる。
【0006】
本開示は、ジェルネイルの除去に有用な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
ジェルネイルと爪との接着強度を低下させるための外部刺激を前記ジェルネイル及び前記爪の少なくとも一方に付与する刺激発生器と、
前記ジェルネイルの位置、前記ジェルネイルの状態、前記爪の位置、及び、前記爪の状態からなる群より選ばれる少なくとも1つを検知するセンサと、
前記センサの検知結果に基づいて前記刺激発生器を制御する制御回路と、
を備えた、ジェルネイル装置を提供する。
【0008】
別の側面において、本開示は、
ジェルネイルを爪から除去するための方法であって、
前記ジェルネイルの位置、前記ジェルネイルの状態、前記爪の位置、及び、前記爪の状態からなる群より選ばれる少なくとも1つに関するネイルデータを取得することと、
前記ネイルデータを参照して、前記ジェルネイルと前記爪との接着強度を低下させるための外部刺激を前記ジェルネイル及び前記爪の少なくとも一方に付与することと、
前記ジェルネイルを前記爪から除去することと、
をこの順で含む、ジェルネイル除去方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術は、ジェルネイルの除去に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態におけるジェルネイル装置の構成図
図2】ジェルネイルと爪との接着強度の低下の原理を説明する概略断面図
図3】マスクの制御に使用されるマスク画像の生成方法を示す図
図4】マスクを用いた光の照射を示す図
図5】刺激発生器としての光源の構成図
図6A】ジェルネイル装置の筐体の斜視図
図6B】筐体下部及びカートリッジの斜視図
図7】ジェルネイル装置を用いた施術の様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見等)
研磨器具を用いてジェルネイルを除去する方法は、ジェルネイルを物理的に研磨することを含む。そのため、この方法は、30分間以上の時間を必要とする、顧客の爪に大きい負荷が加わる、ジェルネイルだけでなく爪そのものが削られることがある、飛散した粉塵が室内の空気環境を悪化させるといった課題を有する。
【0012】
ジェルネイルを除去するための除去液は有機溶剤を含む。そのため、除去液を用いてジェルネイルを除去する方法は、悪臭を発生させる、室内の空気環境を悪化させる、体質によってはアレルギーを引き起こすといった課題を有する。
【0013】
これらの課題は、ネイルサロン及び顧客の双方にとって、心理的、物理的及び時間的負担となっている。このような知見に基づき、本発明者らは、本開示の主題を構成するに至った。そこで、本開示は、ジェルネイルの除去に有用な技術を提供する。
【0014】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0015】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0016】
(実施の形態)
以下、図1から図7を用いて、実施の形態を説明する。
【0017】
[1-1.構成]
図1は、実施の形態におけるジェルネイル装置100の構成図である。ジェルネイル装置100は、刺激発生器12、センサ14及び制御回路16を備えている。刺激発生器12、センサ14及び制御回路16は、筐体10に収められている。筐体10は、顧客の手又は足を受け入れるための内部空間10hを有する。ジェルネイル装置100は、ジェルネイル50を顧客の爪60から除去する工程を補助する装置である。
【0018】
顧客の爪60は、手の爪であってもよく、足の爪であってもよい。顧客の爪60は、樹脂などの材料でコーティングされた爪であってもよい。本明細書において、「爪」の用語は、爪そのもの、及び、樹脂などの材料でコーティングされた爪の両方を含む。
【0019】
ジェルネイル50と爪60との接着強度の測定方法は特に限定されない。接着強度は、引っ張り試験、引っかき試験などの既知の方法で測定された強度でありうる。
【0020】
刺激発生器12は、ジェルネイル50と爪60との接着強度を低下させるための外部刺激をジェルネイル50及び爪60の少なくとも一方に付与する。センサ14は、ジェルネイル50の位置、ジェルネイル50の状態、爪60の位置、及び、爪60の状態からなる群より選ばれる少なくとも1つを検知する。制御回路16は、センサ14の検知結果に基づいて刺激発生器12を制御する。本実施の形態のジェルネイル装置100を使用すれば、外部刺激によってジェルネイル50と爪60との接着強度が低下する。これにより、ジェルネイル50を爪60から除去する工程に費やされる時間を短縮できる。結果として、顧客満足度が向上するとともに、ネイルサロンの収益も向上する。
【0021】
ジェルネイル装置100によれば、研磨器具及び/又は有機溶剤を使用することなく、ジェルネイル50を爪60から除去できる可能性がある。研磨器具及び/又は有機溶剤を使用しない場合、爪60に加わる負荷を軽減できる、爪60が削られることを回避できる、室内の空気環境を良好に維持できるといった効果も得られる。研磨器具及び/又は有機溶剤を使用する場合にも、爪60への負荷を最小限に抑えることが可能になったり、有機溶剤の使用量を最小限に抑えることが可能になったりする。
【0022】
刺激発生器12は、光、熱、磁力及び電気からなる群より選ばれる少なくとも1つを発生させる。つまり、外部刺激は、光、熱、磁力及び電気からなる群より選ばれる少なくとも1つである。これらの外部刺激によれば、顧客の爪60に直接的なダメージが及びにくい。外部刺激は、典型的には、ジェルネイル50にのみ付与される。この場合、爪60、皮膚などの生体組織への外部刺激の影響を最小限に抑えることができる。顧客の指は、爪60の部分のみが露出するように遮蔽板28で覆われていてもよい。
【0023】
外部刺激が光であるとき、刺激発生器12は光源を含む。外部刺激が熱であるとき、刺激発生器12は、ヒータ又は赤外光照射装置を含む。外部刺激が磁力であるとき、刺激発生器12は磁場発生装置を含む。外部刺激が電気であるとき、刺激発生器12は微弱な電流を供給可能な電流源又は微弱な電圧を供給可能な電圧源を含む。
【0024】
図2は、ジェルネイル50と爪60との接着強度の低下の原理を説明する概略断面図である。図2(a)に示すように、ジェルネイル50は、ベースコート51及びジェルネイル本体52を有する。ベースコート51は、顧客の爪60に接する層である。ジェルネイル本体52は、ベースコート51の上に形成された層であり、カラージェルを用いて所望のデザインで形成されている。ジェルネイル本体52は、トップコートによって被覆されていてもよい。ジェルネイル50は、単一の層によって構成されていてもよい。
【0025】
外部刺激の種類は、ジェルネイル50に含まれた材料、詳細には、ベースコート51に含まれた材料に依存する。外部刺激に応答してジェルネイル50と爪60との接着強度を低下させる材料がベースコート51に含まれているとき、ジェルネイル装置100を用いてジェルネイル50と爪60との接着強度を低下させることができる。以下、「接着強度を低下させる材料」を「刺激応答性材料」とも称する。
【0026】
刺激応答性材料は、外部刺激によって体積変化を起こす材料でありうる。刺激応答性材料は、外部刺激によって物性変化及び化学反応からなる群より選ばれる少なくとも1つを起こす材料であってもよい。物性変化としては、気化、昇華、密度の変化、液化、弾性率の変化、粘弾性の変化などが挙げられる。化学反応としては、分子構造の変化を伴う反応(環化、置換、付加など)、分解反応などが挙げられる。刺激応答性材料は、外部刺激によって引き起こされる化学反応又は昇華などに起因して気体を発生させる材料であってもよい。気体が発生して体積変化が起こる。刺激応答性材料は、外部刺激に応答してジェルネイル50と爪60との接触面積を減少させる材料であってもよい。例えば、刺激応答性材料として、外部刺激に応答して気泡53を発生させる材料が使用されうる。図2(b)に示すように、気泡53は、ベースコート51と爪60との界面55においても発生し、ベースコート51と爪60との実質的な接触面積を減少させる。これにより、図2(c)に示すように、ジェルネイル50と爪60との接着強度が低下し、爪60からジェルネイル50を除去することが容易になる。
【0027】
外部刺激は、典型的には、特定の波長を有する光である。この場合、刺激発生器12は、少なくとも1つの光源を含む。外部刺激としての光は、ジェルネイル50及び爪60の少なくとも一方にピンポイントで照射されうる。そのため、皮膚などの他の生体組織への光の影響を最小限に抑えることができる。光源としては、レーザー光源、LED光源、キセノンフラッシュランプ、紫外線ランプ、赤外光ランプ、近赤外光ランプなどが挙げられる。以下、本明細書において、ジェルネイル50及び爪60の少なくとも一方を「対象物」とも称する。光の波長は特に限定されない。光の波長はジェルネイル50の材料に応じて選択される。外部刺激としての光は可視光、赤外光、紫外光以外の波長を有していてもよい。外部刺激としての光は、マイクロ波の波長を持つ電磁波であってもよい。この場合、刺激発生器12は、光源として、マイクロ波発生器などの電磁波発生器を含む。赤外光ランプ又は近赤外光ランプは、外部刺激が熱であるときにも使用されうる。
【0028】
ベースコート51は、例えば、光硬化性樹脂、光重合開始剤、及び、刺激応答性材料を含む。光硬化性樹脂は、ベースコート51の主成分である。光硬化性樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。「主成分」は、質量比で最も多く含まれた成分を意味する。光重合開始剤は、光硬化性樹脂の原料モノマー又は原料オリゴマーに光を照射したときに、重合反応を開始させるための材料である。光重合開始剤は、典型的には、ラジカル重合開始剤である。刺激応答性材料としては、グリシジルアジドポリマーのようなアジド化合物、アゾ化合物などが挙げられる。アジド化合物は、アジド基を有する有機又は無機化合物であり、分解して窒素ガスを発生させる。この場合、気泡53は、窒素ガスに由来する。アゾ化合物は、アゾ基を有する有機又は無機化合物であり、分解して窒素ガスを発生させる。
【0029】
少なくとも1つの光源は、紫外光を発する紫外光源を含む。アジド化合物及び/又はアゾ化合物に紫外光を照射すると、窒素ガスが発生する。刺激発生器12が紫外光源を含むとき、ジェルネイル50(特に、ベースコート51)に含まれたアジド化合物及び/又はアゾ化合物に紫外光を照射して気泡53を効率的に発生させることができる。これにより、ジェルネイル50と爪60との接着強度が低下する。
【0030】
紫外光のピーク波長は、例えば、280nm以上350nm以下の範囲にある。アジド化合物及び/又はアゾ化合物は、比較的短い波長の紫外光に応答して窒素ガスを発生させる。280nm以上350nm以下の範囲にピーク波長を有する光を外部刺激として用いることによって、気泡53を効率的に発生させることができる。これにより、ジェルネイル50と爪60との接着強度が低下する。
【0031】
外部刺激は、熱であってもよい。熱が付与されることによって体積変化を起こす刺激応答性材料としては、例えば、
(I)石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、脂肪酸炭化水素、メチルシラン、ハロゲン炭化水素などの低沸点材料、及び
(II)アゾ化合物、ヒトラジン誘導体、ニトロソ化合物、アジド化合物、テトラゾール化合物、セミカルバジド化合物、炭酸塩、重炭酸塩などの熱分解タイプの発泡性材料など
が挙げられる。刺激応答性材料の室温での揮発を防ぎ、安定にベースコート51に分散させるために、例えば、発泡性材料が、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、及び塩化ビニリデンなどの熱可塑性樹脂でカプセル化されていてもよい。また、体積変化を起こす刺激応答性材料として、ガラス転移点の上下で体積が異なる特性を有する形状記憶ポリマーを用いてもよい。例えば、ガラス転移点以上の加熱により体積が膨張するポリウレタン系形状記憶ポリマーなどが挙げられる。
【0032】
刺激応答性材料は、外部刺激として近赤外光及び/又は赤外光が用いられて、これらの光が付与されることによって体積変化を起こしてもよい。近赤外光及び/又は赤外光を用いてジェルネイル50(特に、ベースコート51)の温度を上昇させることで、その熱により刺激応答性材料が体積変化を起こしてもよい。近赤外光及び/又は赤外光を吸収しやすい材料がジェルネイル50の材料(ベースコート剤)に添加されてもよい。これにより、近赤外光及び/又は赤外光の付与によって、よりジェルネイル50の温度を上げる効果が得られる場合がある。
【0033】
近赤外光及び/又は赤外光を吸収して温度を上げる材料としては、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン系化合物、ポルフィリン誘導体、ナフトキノン化合物、アントラキノン系化合物、スクアリリウム系化合物、インモニウム化合物、ジインモニウム化合物、トリアリルメタン系化合物、アゾ化合物、ジチオール金属錯体、カーボン、金などが挙げられる。これらの材料は、ナノ粒子の形態を有していてもよい。
【0034】
ベースコート51における刺激応答性材料の含有割合は、例えば、0.5体積%以上であり、0.9体積%以上であってもよい。刺激応答性材料の含有割合が0.5体積%以上であるとき、例えば、ジェルネイル50と爪60との接着部分の0.5%以上の面積において刺激応答性材料が存在することができる。これにより、外部刺激が付与された際、ジェルネイル50と爪60との接着部分の0.5%以上の面積において、ジェルネイル50(ベースコート51)が体積変化を起こしうる。したがって、外部刺激が付与された際にジェルネイル50と爪60との接着強度を効果的に低下させることができ、ジェルネイル50を爪60からより容易に剥離することができる。ベースコート51における刺激応答性材料の含有割合の上限は特に限定されず、100体積%以下であってもよく、50体積%以下であってもよい。ベースコート51における刺激応答性材料の含有割合は、核磁気共鳴法(NMR)、赤外分光法(IR)、質量分析法(MS)、二次イオン質量分析法(SIMS)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)、走査型電子顕微鏡分析法(SEM)、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析法(SEM-EDX)、液体クロマトグラフィー法、分光光度計法などの化学分析によって特定されうる。
【0035】
アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などの光硬化性樹脂を硬化させるための紫外光の波長は、例えば、365nm又は405nmである。アジド化合物及び/又はアゾ化合物の分解反応を促進するための紫外光のピーク波長は、280nm以上350nm以下の範囲にある。ジェルネイル50の主成分の光硬化性樹脂として、350nmよりも長波長の範囲にピーク波長を有する紫外光で硬化する樹脂を用いることによって、ジェルネイル50を形成するときにアジド化合物及び/又はアゾ化合物が分解することを回避できる。
【0036】
すなわち、刺激発生器12は、互いに異なるピーク波長を有する複数の種類の光を放射可能に構成されていてもよい。例えば、第1の光のピーク波長が360nm以上410nm以下の範囲にあり、第2の光のピーク波長が280nm以上360nm未満の範囲にある。例えば、刺激発生器12は、互いに異なるピーク波長を有する複数の光源を有する。ジェルネイル装置100が動作するとき、第1の光及び第2の光のいずれかが刺激発生器12から放射される。この場合、ジェルネイル50で爪60を装飾するときに第1の光を用いてジェルネイル50の原料モノマー又は原料オリゴマーの光重合反応を生じさせる。ジェルネイル50を除去するときに第2の光を用いてアジド化合物及び/又はアゾ化合物を分解させる。このような構成によれば、ジェルネイル50を除去するときだけでなく、ジェルネイル50で爪60を装飾するときにもジェルネイル装置100を使用することが可能である。第2の光のピーク波長は、350nm以下であってもよい。
【0037】
制御回路16は、プロセッサ、メモリ、入出力インターフェイス、通信モジュールなどを含むコンピュータユニットである。このようなコンピュータユニットとしては、Raspberry Pi(登録商標)、Arduino(登録商標)、それらをベースとしてカスタマイズされたシステムなどが挙げられる。メモリには、ジェルネイル装置100を動作させるためのプログラムが格納されている。メモリは、プロセッサによって実行されるプログラムのワークエリアを含んでいてもよい。入出力インターフェイスとしては、RS-232Cなどのシリアルインターフェイス、USB、HDMIなどが挙げられる。
【0038】
ジェルネイル装置100は、外部へのデータの送信及び外部からのデータの受信を行う送受信部16aを備えていてもよい。そのような送受信部16aは、上記した入出力インターフェイスであってもよく、無線LANモジュールであってもよく、Wi-Fi(登録商標)モジュールであってもよく、Bluetooth(登録商標)のような近距離無線通信モジュールであってもよい。送受信部16aを介して、ジェルネイル装置100がインターネットに接続可能であってもよい。送受信部16aは、制御回路16に搭載されていてもよく、制御回路16に通信可能に接続された他の回路モジュールであってもよい。制御回路16は、送受信部16aを介して、外部の通信端末から発信された情報を受信し、受信した情報に従って刺激発生器12などの機器の動作を制御しうる。つまり、ジェルネイル装置100は、外部からの命令を受けて動作するように構成されていてもよい。この場合、ジェルネイル装置100にタッチパネルなどの入力部を設けることが不要になる。
【0039】
制御回路16は、センサ14の検知結果に基づいて刺激発生器12を制御する。詳細には、制御回路16は、刺激発生器12を制御することによって、外部刺激の付与条件を調節する。これにより、爪60、皮膚などの生体組織への外部刺激の影響を最小限に抑えつつ、ジェルネイル50と爪60との接着強度が確実に低下するように外部刺激をジェルネイル50及び/又は爪60に付与することができる。
【0040】
外部刺激の付与条件は、外部刺激を付与すべき目標領域、外部刺激を付与すべき時間(時間の長さ)、及び外部刺激の強度からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。例えば、外部刺激が光であるとき、制御回路16は、光を照射するべき目標領域、光を照射するべき時間、及び、光の強度の少なくとも1つを調節する。外部刺激が熱であるとき、制御回路16は、熱を付与するべき目標領域、熱を付与するべき時間、及び、熱の強度(温度)の少なくとも1つを調節する。これにより、爪60、皮膚などの生体組織への光の影響を最小限に抑えつつ、ジェルネイル50と爪60との接着強度が確実に低下するように外部刺激をジェルネイル50及び/又は爪60に付与することができる。
【0041】
センサ14は、例えば、少なくとも1つのイメージセンサを含む。イメージセンサは、ジェルネイル50及び爪60からなる群より選ばれる少なくとも1つの画像を作成する。画像は、ジェルネイル50の位置及び/又は爪60の位置を表す。画像は、2次元画像でありうる。制御回路16は、センサ14から画像を取得し、取得した画像を参照して外部刺激の付与条件を調節する。例えば、取得した画像を既知の画像認識技術によって解析すれば、対象物の領域を正確に特定することができる。特定された領域は、外部刺激を付与すべき目標領域として認識される。目標領域に外部刺激が付与されるように、制御回路16が刺激発生器12を制御する。その結果、対象物以外の部位に外部刺激が付与されることを回避できる。対象物の領域は、2次元座標上の領域であってもよく、3次元座標上の領域であってもよい。複数(例えば3つ)のイメージセンサを使用すれば、3次元座標上の領域を特定することが可能である。
【0042】
図1に示すように、ジェルネイル装置100は、マスク18をさらに備えている。マスク18は、刺激発生器12としての光源とジェルネイル50が施された爪60との間に配置されている。マスク18によって外部刺激としての光の照射範囲が定められる。このような構成によれば、対象物以外の部位に光が照射されることを確実に防ぐことができる。
【0043】
本実施の形態において、マスク18は、電子マスクである。マスク18は、例えば、透明ディスプレイを含む。透明ディスプレイに所定のマスク画像が表示される。マスク画像は、光の透過を許容すべき領域と光の透過を禁止すべき領域とを透明及び黒色で区別した二値化画像でありうる。制御回路16は、目標領域にのみ光が照射されるようにマスク18を制御する。このような構成によれば、対象物以外の部位に光が照射されることをより確実に防ぐことができる。
【0044】
図3は、マスク18の制御に使用されるマスク画像の生成方法を示す図である。図4は、マスク18を用いた光の照射を示す図である。図3(a)に示すように、外部刺激を付与すべき対象物の画像14e、すなわち、ジェルネイル50及び/又は爪60の画像がセンサ14から制御回路16に送られる。次に、図3(b)に示すように、制御回路16において、対象物の輪郭14fが画像処理によって画像14eから抽出される。次に、図3(c)に示すように、対象物の輪郭14fを参照して、マスク18の制御に使用されるマスク画像14gが生成される。制御回路16は、マスク画像14gを用いてマスク18を制御する。その結果、図4に示すように、目標領域に対応する領域のみを光が透過するようにマスク18が制御され、対象物に適切に光が照射される。このような構成によれば、対象物以外の部位に光が照射されることを確実に防ぐことができる。
【0045】
画像14eの取得を定期的に行って目標領域をリアルタイムで、例えば、秒単位の短い時間周期でアップデートしてもよい。一例において、画像14eの取得、マスク画像14gの生成、及び、マスク18の更新を定期的に行ってもよい。このようにすれば、筐体10の内部で手又は足が多少動いたとしても、目標領域の座標の変化をリアルタイムで捉えることができる。その結果、外部刺激を目標領域に確実に付与することが可能となる。
【0046】
ジェルネイル装置100は、外部刺激の付与条件を特定することを学習する機械学習モジュールをさらに備えていてもよい。このような構成によれば、外部刺激の付与条件が適切に特定されうる。具体的には、ジェルネイル50の輪郭14fを正確に特定するために、ジェルネイル装置100は、ジェルネイル50の画像14eを学習する機械学習モジュールを備えていてもよい。機械学習モジュールは、制御回路16に実装されていてもよく、後述する拡張カートリッジに実装されていてもよい。さらに、機械学習モジュールは、インターネットなどの通信網を介してジェルネイル装置100と通信可能に接続されたサーバに実装されていてもよい。
【0047】
ジェルネイル50のデザイン、寸法及び形状は豊富であり、画像認識によってジェルネイル50の輪郭14fを特定することが難しい場合がある。様々な種類の既知のジェルネイル50の画像を教師データとして機械学習モジュールに与え、ジェルネイル50の輪郭14fを特定することを学習させる。つまり、光の照射領域(外部刺激の付与条件)を特定すること機械学習モジュールに学習させる。機械学習モジュールは、センサ14から取得された画像14eが対象物(ジェルネイル50)であるかどうかを判断し、その輪郭14fを特定する。輪郭14fは、例えば、2次元座標上の点の集合の形式で作成される。このような構成によれば、ジェルネイル50の輪郭14fを高い精度で特定することが可能である。一例において、CNN(Convolution Neural Network)の手法は、本実施の形態に適している。センサ14によって取得された画像14eを教師データとして用いてもよい。
【0048】
図5は、刺激発生器12としての光源の構成図である。刺激発生器12は、複数の光源12aを有する。複数の光源12aは、例えば、面状かつマトリクス状に配置されている。光源12aのそれぞれは点光源であってもよい。制御回路16は、複数の光源12aのそれぞれのオンオフによって外部刺激としての光の照射範囲を定める。つまり、目標領域のみに光が照射されるように複数の光源12aのそれぞれが点灯又は消灯する。このような構成によっても、対象物以外の部位に光が照射されることを防ぐことができる。
【0049】
複数の光源12aを用いる場合、マスク18は省略されてもよい。複数の光源12aとマスク18との組み合わせも好適に採用されうる。図3(c)を参照して説明したマスク画像14gは、複数の光源12aの点灯及び消灯を制御する際にも使用されうる。
【0050】
複数の光源12a及びマスク18に代えて、刺激発生器12がレーザー光源及びガルバノスキャナを有していてもよい。制御回路16は、目標領域にのみレーザー光が照射されるようにガルバノスキャナを制御する。この場合にも、対象物以外の部位に光が照射されることを確実に防ぐことができる。
【0051】
その他にも、モータなどのアクチュエータで物理的に駆動されるシャッタをマスク18の代わりに使用してもよい。物理的に駆動されるシャッタは、顧客の手の爪又は足の爪以外の部分を遮蔽するように構成されている。
【0052】
センサ14がイメージセンサを含むとき、イメージセンサは、ラインセンサであってもよい。この場合、ジェルネイル50の先端の位置、爪60の先端の位置などをラインセンサによって特定することができる。
【0053】
センサ14は、温度センサを含んでいてもよい。温度センサは、ジェルネイル50及び爪60からなる群より選ばれる少なくとも1つの温度を検知する。検知された温度は、ジェルネイル50の状態及び/又は爪60の状態を表す。制御回路16は、検知された温度及び温度の時間変化を参照して外部刺激の付与条件を調節する。例えば、ベースコート51に含まれた刺激応答性材料の分解反応が進行すると熱が発生する。そのため、検知された温度及び/又は温度の時間変化から刺激応答性材料の分解反応の進行の度合いを推測することができる。分解反応が十分に進行したと判断した場合、制御回路16は、紫外光の照射を停止するように刺激発生器12を制御する。分解反応が進行していない場合、制御回路16は、紫外光の照射を継続するように刺激発生器12を制御する。分解反応が十分に進行していない場合、制御回路16は、紫外光の強度(単位:mW/cm2)を増加するように刺激発生器12を制御してもよい。このようにすれば、密着強度を低下させるための工程に費やされる時間を有意に短縮できるだけでなく、外部刺激としての紫外光が過剰に付与されることを回避できる。
【0054】
以上のように、制御回路16は、対象物に関する情報をセンサ14から取得し、取得した情報を保存及び解析する。制御回路16は、解析結果に基づき、刺激発生器12などの機器を制御する。例えば、センサ14がイメージセンサを含むとき、制御回路16はセンサ14から画像を受信し、ジェルネイル50の領域及び/又は爪60の領域を特定する。特定された領域(目標領域)に光が照射されるように、刺激発生器12としての光源及びマスク18を制御する。
【0055】
図1に示すように、ジェルネイル装置100は、拡張カートリッジ20をさらに備えていてもよい。拡張カートリッジ20は、別のセンサ、別の制御回路などの追加又は代替のコンポーネントを有しており、ジェルネイル装置100の動作を変化させるために使用される。拡張カートリッジ20は交換可能である。拡張カートリッジ20を使用すれば、ジェルネイル装置100の制御プログラムをアップデートしたり、ジェルネイル装置100に新たな機能を追加したりすることができる。本実施の形態では、拡張カートリッジ20が筐体10の一部を構成している。詳細には、筐体10の底部が拡張カートリッジ20で構成されている。
【0056】
図6Aは、ジェルネイル装置100の斜視図である。図6Bは、筐体下部の斜視図である。図6Aに示すように、筐体10は、顧客の手又は足を挿入するための開口部10dを正面に有する。図6Bに示すように、拡張カートリッジ20は、筐体下部10aに嵌め合わされ、手又は足を配置するためのステージとして機能する。拡張カートリッジ20の裏面又は内部には、機能拡張用のコンポーネント24として、集積回路及び/又は拡張機器が搭載されている。筐体下部10aは、接続端子22を有する。筐体下部10aの接続端子22と拡張カートリッジ20の接続端子26とが互いに接続される。これにより、拡張カートリッジ20が筐体10に取り付けられるとともに、制御回路16に電気的に接続される。
【0057】
筐体10は、筐体下部10a及び拡張カートリッジ20に加えて、筐体上部、筐体側部、インナーシャーシなどの複数の部品の組み合わせによって構成されていてもよい。
【0058】
[1-2.動作]
以上のように構成されたジェルネイル装置100について、その動作を以下説明する。
【0059】
図7は、ジェルネイル装置100を用いた施術の様子を示す図である。ジェルネイル50を爪60から除去しやすくするために、顧客210の手がジェルネイル装置100に挿入される。ネイリストなどの施術者200は、ジェルネイル装置100を直接操作して、又は、スマートフォン、タブレットなどの通信端末220を用いて間接的にジェルネイル装置100を操作して、ジェルネイル装置100による施術を開始する。施術は、ジェルネイル50と爪60との接着強度を低下させるための工程を含む。
【0060】
ジェルネイル装置100においては、まず、ジェルネイル50の位置等に関するネイルデータがセンサ14によって取得される。制御回路16は、ネイルデータを参照して、ジェルネイル50と爪60との接着強度を低下させるための外部刺激をジェルネイル50及び爪60の少なくとも一方に付与する。外部刺激を付与することによってジェルネイル50が爪60から剥がれやすくなる。制御回路16は、外部刺激の付与を自動的に停止し、施術が終了したことを報知する。施術者200は、剥離器具を用いて、ジェルネイル50を爪60から実際に除去する。これにより、ジェルネイル50を爪から除去する工程が終了する。
【0061】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、ジェルネイル装置100は、ジェルネイル50と爪60との接着強度を低下させるための外部刺激をジェルネイル及び爪の少なくとも一方に付与する刺激発生器12と、ジェルネイル50の位置、ジェルネイル50の状態、爪60の位置、及び、爪60の状態からなる群より選ばれる少なくとも1つを検知するセンサ14と、センサ14の検知結果に基づいて刺激発生器12を制御する制御回路16とを備えている。
【0062】
このような構成によれば、外部刺激によってジェルネイル50と爪60との接着強度が低下する。これにより、ジェルネイル50を爪60から除去する工程に費やされる時間を短縮できる。結果として、顧客満足度が向上するとともに、ネイルサロンの収益も向上する。
【0063】
本実施の形態において、制御回路16は、刺激発生器12を制御することによって、外部刺激の付与条件を調節してもよい。このような構成によれば、爪60、皮膚などの生体組織への外部刺激の影響を最小限に抑えつつ、ジェルネイル50と爪60との接着強度が確実に低下するように外部刺激をジェルネイル50及び/又は爪60に付与することができる。
【0064】
本実施の形態において、外部刺激の付与条件は、外部刺激を付与すべき目標領域、外部刺激を付与すべき時間、及び外部刺激の強度からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。このような構成によれば、爪60、皮膚などの生体組織への外部刺激の影響を最小限に抑えつつ、ジェルネイル50と爪60との接着強度が確実に低下するように外部刺激をジェルネイル50及び/又は爪60に付与することができる。
【0065】
本実施の形態において、センサ14がイメージセンサを含んでいてもよい。このような構成によれば、ジェルネイル50及び爪60からなる群より選ばれる少なくとも1つの画像を取得できる。
【0066】
本実施の形態において、イメージセンサは、ジェルネイル50及び爪60からなる群より選ばれる少なくとも1つの画像を作成してもよい。制御回路16は、画像を参照して外部刺激の付与条件を調節してもよい。このような構成によれば、対象物以外の部位に外部刺激が付与されることを回避できる。
【0067】
本実施の形態において、センサ14が温度センサを含んでいてもよい。このような構成によれば、ジェルネイル50及び爪60からなる群より選ばれる少なくとも1つの温度を検知できる。
【0068】
本実施の形態において、温度センサは、ジェルネイル50及び爪60からなる群より選ばれる少なくとも1つの温度を検知してもよい。制御回路16は、温度及び温度の時間変化を参照して外部刺激の付与条件を調節してもよい。このような構成によれば、密着強度を低下させるための工程に費やされる時間を有意に短縮できるだけでなく、外部刺激が過剰に付与されることを回避できる。
【0069】
本実施の形態において、刺激発生器12は、外部刺激として、光、熱、磁力及び電気からなる群より選ばれる少なくとも1つを発生させてもよい。これらの外部刺激によれば、顧客の爪60に直接的なダメージが及びにくい。
【0070】
本実施の形態において、刺激発生器12が少なくとも1つの光源を含んでいてもよい。このような構成によれば、皮膚などの他の生体組織への光の影響を最小限に抑えることができる。
【0071】
本実施の形態において、少なくとも1つの光源が紫外光を発する紫外光源を含んでいてもよい。このような構成によれば、ジェルネイル50に含まれた刺激応答性材料に紫外光を照射して気泡53を効率的に発生させることができる。
【0072】
本実施の形態において、紫外光のピーク波長が280nm以上350nm以下の範囲にあってもよい。このような構成によれば、気泡53を効率的に発生させることができる。
【0073】
本実施の形態において、少なくとも1つの光源が複数の光源を含んでいてもよい。制御回路16は、複数の光源のそれぞれのオンオフによって外部刺激としての光の照射範囲を定めてもよい。このような構成によれば、対象物以外の部位に光が照射されることを防ぐことができる。
【0074】
本実施の形態において、少なくとも1つの光源とジェルネイル50が施された爪60との間に位置するマスク18をジェルネイル装置100がさらに備えていてもよい。マスク18によって外部刺激としての光の照射範囲が定められてもよい。このような構成によれば、対象物以外の部位に光が照射されることを確実に防ぐことができる。
【0075】
本実施の形態において、顧客の爪60に関するデータを記憶するメモリをジェルネイル装置100がさらに備えていてもよい。制御回路16は、センサ14の検知結果及びメモリに記憶されたデータに基づいて刺激発生器12を制御してもよい。このような構成によれば、複雑な画像処理を避けることができる。
【0076】
本実施の形態において、外部刺激の付与条件を特定することを学習する機械学習モジュールをジェルネイル装置100がさらに備えていてもよい。このような構成によれば、外部刺激の付与条件が適切に特定されうる。
【0077】
本実施の形態において、機械学習モジュールに与えられる教師データがジェルネイル50の画像データを含んでいてもよい。このような構成によれば、ジェルネイル50の輪郭14fを高い精度で特定することが可能である。
【0078】
本実施の形態において、追加又は代替のコンポーネントを有する拡張カートリッジ20をジェルネイル装置100がさらに備えていてもよい。拡張カートリッジ20は交換可能であってもよい。このような構成によれば、ジェルネイル装置100の制御プログラムをアップデートしたり、ジェルネイル装置100に新たな機能を追加したりすることができる。
【0079】
本実施の形態において、外部へのデータの送信及び外部からのデータの受信を行う送受信部16aをジェルネイル装置100がさらに備えていてもよい。このような構成によれば、ジェルネイル装置100にタッチパネルなどの入力デバイスを設けることが不要になる。
【0080】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0081】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0082】
ジェルネイル装置100は、顧客の爪をジェルネイル50で装飾する工程にも使用可能である。詳細には、ジェルネイル装置100は、ベースコート剤を爪に塗布する工程で使用されてもよく、塗布されたベースコート剤を硬化させる工程で使用されてもよく、両工程で使用されてもよい。
【0083】
センサ14として、イメージセンサ、温度センサなどの複数のセンサが設けられていてもよい。センサ14は、イメージセンサ及び温度センサの他にも、湿度センサ、光センサ、抵抗率計、超音波センサ、圧力センサ、及び近接センサの少なくとも1つを含んでいてもよい。これらのセンサによれば、画像、温度、湿度、電気抵抗、音波、光(反射光及び/又は透過光の強度)、力の強さなどの様々な特徴量を計測できる。イメージセンサとこれらのセンサとを組み合わせることによって、顧客の爪及び皮膚に関する様々なデータを取得できる。取得されたデータは、制御回路16に送られ、刺激発生器12などの機器の制御に使用される。
【0084】
制御回路16のメモリには、顧客の爪60に関するデータが記憶されていてもよい。爪60に関するデータは、例えば、顧客の爪60の2次元又は3次元画像データであり、顧客のIDとともに予めメモリに記憶されている。この場合、制御回路16は、センサ14の検知結果及びメモリに記憶された爪60の画像データに基づいて刺激発生器12を制御しうる。例えば、顧客の爪60の画像データを用いて光の照射領域を決定し、センサ14としての温度センサの検知結果を用いて光の照射時間を決定する。このようにすれば、複雑な画像処理を避けることができる。顧客のIDとしては、顧客の氏名、顧客に割り当てられた識別番号などが挙げられる。
【0085】
プロジェクタモジュールを用い、モアレ、ランダムパターン、格子模様など特定のパターン画像を爪に投影し、投影像をセンサ14によって撮像する。得られた画像の歪みを解析することによって、爪60の3次元形状データが得られる。この3次元形状データは、顧客の爪60の形状に最適化されたネイルチップの3Dプリンティングに使用可能である。あるいは、肌の凹凸の診断データとして顧客に3次元形状データをフィードバックしてもよい。
【0086】
拡張カートリッジ20を使用すれば、ジェルネイル装置100に予め搭載されていないセンサなどを拡張機能として搭載することが可能である。さらに、拡張カートリッジ20は、手の指又は足の指の基準位置を定めた基準構造を有していてもよい。基準構造としては、手の指又は足の指を固定するための治具、手の指又は足の指を収めることができる凹部、手で掴むことができるハンドル、手で掴むことができる握り棒などが挙げられる。手の施術に専用の拡張カートリッジ、及び、足の施術に専用の拡張カートリッジなどの複数の種類の拡張カートリッジが準備されていてもよい。この場合、施術内容に応じて、拡張カートリッジを交換して利用できる。
【0087】
制御回路16は、顧客のIDと顧客から検知した特徴量とを紐づけて、内臓のメモリ又は通信先のサーバに保存及び管理するように構成されていてもよい。これにより、顧客の画像、顧客が持つ特徴量、顧客の施術履歴などのデータを蓄積及び管理することができる。これらのデータは、顧客が自らの施術履歴として閲覧できるだけでなく、施術者200が共有できるようにしてもよい。このことは、顧客が望むジェルネイル50のデザインを施術者200に伝えるのに役立つ。さらに、顧客の肌状態に適した光の照射が行われるように、ジェルネイル装置100を動作させることが可能となる。顧客の肌状態としては、肌の明度、肌の凹凸、肌の色味などが挙げられる。
【0088】
制御回路16は、ジェルネイル50と爪60との接着強度を低下させるための工程に費やされた所要時間をメモリ又は外部のサーバに記録するように構成されていてもよい。所要時間は、ジェルネイル50と爪60との接着強度を低下させるための工程の開始時点からサービス料金の電子決済の完了までの所要時間であってもよい。所要時間に関する情報は、ネイルサロンにとって有用な情報である。
【0089】
送受信部16aを介して、外部とジェルネイル装置100との間で外部刺激の付与条件に関するデータの送受信が行われてもよい。このような構成によれば、外部刺激の付与条件を速やかに決定できる可能性がある。
【0090】
送受信部16aを介して、外部とジェルネイル装置100との間で施術の状況又は施術される対象の状況に関するデータの送受信が行われてもよい。このような構成によれば、外部刺激が過剰に付与されることを回避できる可能性がある。「施術」には、ジェルネイル50と爪60との接着強度を低下させるための工程が含まれる。
【0091】
ジェルネイル装置100は、外部から動作を制御できるように構成されていてもよい。送受信部16aを介して、動作の制御に必要な制御データの送受信が行われてもよい。このような構成によれば、操作性及び拡張性に優れたジェルネイル装置100を提供できる。ジェルネイル装置100にタッチパネルなどの入力部を設けることが必須でないので、シンプルかつ洗練されたデザインのジェルネイル装置100を提供できる。
【0092】
施術する対象は、爪60に加えて、爪60の周辺の皮膚を含んでいてもよい。
【0093】
ジェルネイル装置100は、外部刺激の付与条件から適切な刺激応答性材料を特定する材料特定部を備えていてもよい。このような構成によれば、顧客のそれぞれに適したジェルネイル50を提供できる。材料特定部は、制御回路16において実行されるソフトウェアによって構成されうる。
【0094】
ジェルネイル装置100は、施術する対象の状態から、顧客の健康状態を判断する健康判断部を有していてもよい。例えば、爪60の色、爪60の温度などから顧客の健康状態を判断することが可能である。健康判断部は、制御回路16において実行されるソフトウェアによって構成されうる。健康判断部は、非接触で顧客の体温を測定する体温計、顧客の顔を撮影するカメラ、及び、顧客の血圧を測定する血圧計の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0095】
ジェルネイル装置100は、上記の健康判断部で判断された顧客の健康状態から、顧客に適した刺激応答性材料を特定する材料特定部を有していてもよい。このような構成によれば、顧客のそれぞれに適したジェルネイル50を提供できる。材料特定部は、制御回路16において実行されるソフトウェアによって構成されうる。
【0096】
ジェルネイル装置100は、顧客の顔を撮影するカメラ(イメージセンサ)をさらに備えていてもよい。ジェルネイル装置100は、得られた顔の画像からその顧客に適した刺激応答性材料を選択する材料選択部を有していてもよい。このような構成によれば、顧客のそれぞれに適したジェルネイル50を提供できる。材料選択部は、制御回路16において実行されるソフトウェアによって構成されうる。
【0097】
筐体10の内部には、1又は複数の握り棒が設けられていてもよい。
【0098】
本実施の形態のジェルネイル装置100は、ネイルサロンでの使用に適している。ただし、ジェルネイル装置100を家庭で使用することも可能である。
【0099】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示の技術は、ジェルネイルの施術に有用である。
【符号の説明】
【0101】
10 筐体
10a 筐体下部
10d 開口部
10h 内部空間
12 刺激発生器
12a 光源
14 センサ
14e 画像
14f 輪郭
14g マスク画像
16 制御回路
16a 送受信部
18 マスク
20 拡張カートリッジ
22,26 接続端子
24 コンポーネント
28 遮蔽板
50 ジェルネイル
51 ベースコート
52 ジェルネイル本体
53 気泡
55 界面
60 爪
100 ジェルネイル装置
200 施術者
210 顧客
220 通信端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7