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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/048 20060101AFI20241011BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H01G9/048 F
H01G9/00 290E
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020177467
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068665
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 透
(72)【発明者】
【氏名】島崎 幸博
(72)【発明者】
【氏名】栗田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】松島 真也
(72)【発明者】
【氏名】木村 拡
(72)【発明者】
【氏名】平田 信治
【審査官】上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-155696(JP,A)
【文献】特開2010-062406(JP,A)
【文献】実開平02-101525(JP,U)
【文献】特開2003-243267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/048
H01G 9/00
H01G 9/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、
前記ベース基板上に設けられた複数の素子ユニットの積層体と、
を備え、
各前記素子ユニットは、互いに重ねられた陰極箔およびコンデンサ素子を有し、
前記陰極箔は、第1主面、前記第1主面とは反対側の第2主面、および前記第1主面と前記第2主面とを接続する第1側壁を有し、
前記コンデンサ素子は、第3主面、前記第3主面とは反対側の第4主面、および前記第3主面と前記第4主面とを接続する第2側壁を有し、
前記陰極箔の前記第1側壁の一部に電気的に接続された第1電極と、
前記コンデンサ素子の前記第2側壁の一部に電気的に接続された第2電極と、
をさらに備え、
各前記素子ユニットは、前記陰極箔の前記第1側壁の残部、前記陰極箔の前記第1主面と前記第2主面のうち前記コンデンサ素子と重ならない部分、前記コンデンサ素子の前記第2側壁の残部、および前記コンデンサ素子の前記第3主面と前記第4主面のうち前記陰極箔と重ならない部分を覆う絶縁性部材をさらに有し、
互いに隣接する前記素子ユニットの前記絶縁性部材間に設けられ、離型剤で構成された層状体をさらに備える、固体電解コンデンサ。
【請求項2】
天面板をさらに備え、
前記ベース基板、前記絶縁性部材、および前記天面板は、同じ材料で構成される、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記ベース基板は、ガラスエポキシ基板である、請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記積層体を覆う外装樹脂をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記絶縁性部材は、
前記積層体の積層方向において前記陰極箔の前記第1側壁の前記一部に隣接する第1部分が、第1絶縁材料で構成され、
前記積層方向において前記コンデンサ素子の前記第2側壁の前記一部に隣接する第2部分が、第2絶縁材料で構成され、かつ
前記第1部分および前記第2部分を除く第3部分が、前記第1絶縁材料および前記第2絶縁材料とは異なる第3絶縁材料で構成される、請求項1~のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
互いに対向する第1側面および第2側面をさらに備え、
前記第1電極は、前記第1側面に設けられ、
前記第2電極は、前記第2側面に設けられている、請求項1~のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
互いに対向する第1側面および第2側面と、
互いに対向する第3側面および第4側面と、
をさらに備え、
前記第1電極は、前記第1側面および前記第2側面に設けられ、
前記第2電極は、前記第3側面および前記第4側面に設けられ、
前記陰極箔は、前記第1側面および前記第2側面の前記第1電極に電気的に接続され、
前記コンデンサ素子は、前記積層体の積層方向において、前記第3側面の前記第2電極と、前記第4側面の前記第2電極とに交互に電気的に接続されている、請求項1~のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサを製造する方法であって、
前記ベース基板を準備する準備工程と、
前記ベース基板上に、前記陰極箔と、前記コンデンサ素子と、前記陰極箔の前記残部と前記重ならない部分、および前記コンデンサ素子の前記残部と前記重ならない部分を覆う絶縁性の樹脂枠とを前記素子ユニット毎に順次積層する積層工程と、
前記樹脂枠を硬化させて前記絶縁性部材を形成し、前記積層体を得る硬化工程と、
前記第1電極および前記第2電極を形成する電極形成工程と、
を備える、固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項9】
ベース基板と、
前記ベース基板上に設けられた複数の素子ユニットの積層体と、
を備え、
各前記素子ユニットは、互いに重ねられた陰極箔およびコンデンサ素子を有し、
前記陰極箔は、第1主面、前記第1主面とは反対側の第2主面、および前記第1主面と前記第2主面とを接続する第1側壁を有し、
前記コンデンサ素子は、第3主面、前記第3主面とは反対側の第4主面、および前記第3主面と前記第4主面とを接続する第2側壁を有し、
前記陰極箔の前記第1側壁の一部に電気的に接続された第1電極と、
前記コンデンサ素子の前記第2側壁の一部に電気的に接続された第2電極と、
をさらに備え、
各前記素子ユニットは、前記陰極箔の前記第1側壁の残部、前記陰極箔の前記第1主面と前記第2主面のうち前記コンデンサ素子と重ならない部分、前記コンデンサ素子の前記第2側壁の残部、および前記コンデンサ素子の前記第3主面と前記第4主面のうち前記陰極箔と重ならない部分を覆う絶縁性部材をさらに有する、固体電解コンデンサを製造する方法であって、
前記ベース基板を準備する準備工程と、
前記ベース基板上に、前記陰極箔と、前記コンデンサ素子と、前記陰極箔の前記残部と前記重ならない部分、および前記コンデンサ素子の前記残部と前記重ならない部分を覆う絶縁性の樹脂枠とを前記素子ユニット毎に順次積層する積層工程と、
前記樹脂枠を硬化させて前記絶縁性部材を形成し、前記積層体を得る硬化工程と、
前記第1電極および前記第2電極を形成する電極形成工程と、
を備え、
前記積層工程で、複数の前記ベース基板を含む基板シート上に、複数の前記陰極箔を含む箔シートと、複数の前記コンデンサ素子を含む素子シートと、複数の前記樹脂枠を含む樹脂シートとを積層し、
前記積層工程よりも後に、前記基板シート、前記箔シート、前記素子シート、および前記樹脂シートを、複数の前記固体電解コンデンサに分割する分割工程をさらに備える、固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項10】
ベース基板と、
前記ベース基板上に設けられた複数の素子ユニットの積層体と、
を備え、
各前記素子ユニットは、互いに重ねられた陰極箔およびコンデンサ素子を有し、
前記陰極箔は、第1主面、前記第1主面とは反対側の第2主面、および前記第1主面と前記第2主面とを接続する第1側壁を有し、
前記コンデンサ素子は、第3主面、前記第3主面とは反対側の第4主面、および前記第3主面と前記第4主面とを接続する第2側壁を有し、
前記陰極箔の前記第1側壁の一部に電気的に接続された第1電極と、
前記コンデンサ素子の前記第2側壁の一部に電気的に接続された第2電極と、
をさらに備え、
各前記素子ユニットは、前記陰極箔の前記第1側壁の残部、前記陰極箔の前記第1主面と前記第2主面のうち前記コンデンサ素子と重ならない部分、前記コンデンサ素子の前記第2側壁の残部、および前記コンデンサ素子の前記第3主面と前記第4主面のうち前記陰極箔と重ならない部分を覆う絶縁性部材をさらに有する、固体電解コンデンサを製造する方法であって、
前記ベース基板を準備する準備工程と、
前記ベース基板上に、前記陰極箔と、前記コンデンサ素子と、前記陰極箔の前記残部と前記重ならない部分、および前記コンデンサ素子の前記残部と前記重ならない部分を覆う絶縁性の樹脂枠とを前記素子ユニット毎に順次積層する積層工程と、
前記樹脂枠を硬化させて前記絶縁性部材を形成し、前記積層体を得る硬化工程と、
前記第1電極および前記第2電極を形成する電極形成工程と、
を備え、
前記積層工程は、前記陰極箔および前記コンデンサ素子の少なくとも一方と、前記樹脂枠とを予め積層しておく予備積層工程を含む、固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項11】
ベース基板と、
前記ベース基板上に設けられた複数の素子ユニットの積層体と、
を備え、
各前記素子ユニットは、互いに重ねられた陰極箔およびコンデンサ素子を有し、
前記陰極箔は、第1主面、前記第1主面とは反対側の第2主面、および前記第1主面と前記第2主面とを接続する第1側壁を有し、
前記コンデンサ素子は、第3主面、前記第3主面とは反対側の第4主面、および前記第3主面と前記第4主面とを接続する第2側壁を有し、
前記陰極箔の前記第1側壁の一部に電気的に接続された第1電極と、
前記コンデンサ素子の前記第2側壁の一部に電気的に接続された第2電極と、
をさらに備え、
各前記素子ユニットは、前記陰極箔の前記第1側壁の残部、前記陰極箔の前記第1主面と前記第2主面のうち前記コンデンサ素子と重ならない部分、前記コンデンサ素子の前記第2側壁の残部、および前記コンデンサ素子の前記第3主面と前記第4主面のうち前記陰極箔と重ならない部分を覆う絶縁性部材をさらに有する、固体電解コンデンサを製造する方法であって、
前記ベース基板を準備する準備工程と、
前記ベース基板上に、前記陰極箔と、前記コンデンサ素子と、前記陰極箔の前記残部と前記重ならない部分、および前記コンデンサ素子の前記残部と前記重ならない部分を覆う絶縁性の樹脂枠とを前記素子ユニット毎に順次積層する積層工程と、
前記樹脂枠を硬化させて前記絶縁性部材を形成し、前記積層体を得る硬化工程と、
前記第1電極および前記第2電極を形成する電極形成工程と、
を備え、
前記積層工程は、ベースフィルム上に貼着された前記樹脂枠を積層する第1工程と、積層された前記樹脂枠から前記ベースフィルムを剥がす第2工程と、を含む、固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項12】
前記ベースフィルムは、前記樹脂枠が貼着される離型層を有する、請求項11に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項13】
前記積層工程で、前記樹脂枠が流動性を有する状態で、前記陰極箔、前記コンデンサ素子、および前記樹脂枠を積層する、請求項12のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項14】
ベース基板と、
前記ベース基板上に設けられた複数の素子ユニットの積層体と、
を備え、
各前記素子ユニットは、互いに重ねられた陰極箔およびコンデンサ素子を有し、
前記陰極箔は、第1主面、前記第1主面とは反対側の第2主面、および前記第1主面と前記第2主面とを接続する第1側壁を有し、
前記コンデンサ素子は、第3主面、前記第3主面とは反対側の第4主面、および前記第3主面と前記第4主面とを接続する第2側壁を有し、
前記陰極箔の前記第1側壁の一部に電気的に接続された第1電極と、
前記コンデンサ素子の前記第2側壁の一部に電気的に接続された第2電極と、
をさらに備え、
各前記素子ユニットは、前記陰極箔の前記第1側壁の残部、前記陰極箔の前記第1主面と前記第2主面のうち前記コンデンサ素子と重ならない部分、前記コンデンサ素子の前記第2側壁の残部、および前記コンデンサ素子の前記第3主面と前記第4主面のうち前記陰極箔と重ならない部分を覆う絶縁性部材をさらに有する、固体電解コンデンサを製造する方法であって、
前記ベース基板を準備する準備工程と、
前記ベース基板上に、前記陰極箔と、前記コンデンサ素子と、前記陰極箔の前記残部と前記重ならない部分、および前記コンデンサ素子の前記残部と前記重ならない部分を覆う絶縁性の樹脂枠とを前記素子ユニット毎に順次積層する積層工程と、
前記樹脂枠を硬化させて前記絶縁性部材を形成し、前記積層体を得る硬化工程と、
前記第1電極および前記第2電極を形成する電極形成工程と、
を備え、
前記樹脂枠は、厚みが一定であり、
前記樹脂枠が流動性を有する状態で、前記樹脂枠のうち、前記積層体の積層方向において前記陰極箔の前記第1側壁の前記一部に隣接する部分と、前記積層方向において前記コンデンサ素子の前記第2側壁の前記一部に隣接する部分とを加圧により薄くする加圧工程をさらに備える、固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項15】
前記加圧工程は、前記積層工程に含まれ、
前記加圧工程で、前記陰極箔および前記コンデンサ素子の少なくとも一方により前記加圧を行う、請求項14に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項16】
ベース基板と、
前記ベース基板上に設けられた複数の素子ユニットの積層体と、
を備え、
各前記素子ユニットは、互いに重ねられた陰極箔およびコンデンサ素子を有し、
前記陰極箔は、第1主面、前記第1主面とは反対側の第2主面、および前記第1主面と前記第2主面とを接続する第1側壁を有し、
前記コンデンサ素子は、第3主面、前記第3主面とは反対側の第4主面、および前記第3主面と前記第4主面とを接続する第2側壁を有し、
前記陰極箔の前記第1側壁の一部に電気的に接続された第1電極と、
前記コンデンサ素子の前記第2側壁の一部に電気的に接続された第2電極と、
をさらに備え、
各前記素子ユニットは、前記陰極箔の前記第1側壁の残部、前記陰極箔の前記第1主面と前記第2主面のうち前記コンデンサ素子と重ならない部分、前記コンデンサ素子の前記第2側壁の残部、および前記コンデンサ素子の前記第3主面と前記第4主面のうち前記陰極箔と重ならない部分を覆う絶縁性部材をさらに有する、固体電解コンデンサを製造する方法であって、
前記ベース基板を準備する準備工程と、
前記ベース基板上に、前記陰極箔と、前記コンデンサ素子と、前記陰極箔の前記残部と前記重ならない部分、および前記コンデンサ素子の前記残部と前記重ならない部分を覆う絶縁性の樹脂枠とを前記素子ユニット毎に順次積層する積層工程と、
前記樹脂枠を硬化させて前記絶縁性部材を形成し、前記積層体を得る硬化工程と、
前記第1電極および前記第2電極を形成する電極形成工程と、
を備え、
前記樹脂枠は、互いに厚みが異なる複数の樹脂体を有し、
前記積層工程で、前記樹脂枠を積層することは、複数の前記樹脂体を積層することを含む、固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項17】
前記積層工程よりも前に、複数の前記樹脂体を互いに接合する接合工程をさらに備える、請求項16に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項18】
前記積層工程で、前記樹脂枠を積層することは、絶縁性の樹脂材料を、前記陰極箔の前記残部と前記重ならない部分、および前記コンデンサ素子の前記残部と前記重ならない部分に塗布することである、請求項8または10に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層された第1層と第2層とを有する素子積層体を備え、第1層は、弁作用金属基体および固体電解質層を含み、第2層は、金属箔からなる、固体電解コンデンサが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、そのような固体電解コンデンサの製造方法が開示されている。製造方法では、第1層に対応しかつ貫通孔が形成された第1シートと、第2層に対応しかつ貫通孔が形成された第2シートとが積層された後、両シートの貫通孔を介して封止材が充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-079866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の固体電解コンデンサの製造方法では、封止材が十分に充填されないおそれがある。第1シートと第2シートが積層されてなる積層体において封止材の充填対象となる領域に、ミクロンオーダーの非常に狭い隙間が含まれるためである。そのような狭い隙間に封止材が十分に充填されない場合、固体電解コンデンサの信頼性が低くなる。このような状況において、本開示は、信頼性の高い固体電解コンデンサを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る一局面は、固体電解コンデンサに関する。当該固体電解コンデンサは、ベース基板と、前記ベース基板上に設けられた複数の素子ユニットの積層体と、を備え、各前記素子ユニットは、互いに重ねられた陰極箔およびコンデンサ素子を有し、前記陰極箔は、第1主面、前記第1主面とは反対側の第2主面、および前記第1主面と前記第2主面とを接続する第1側壁を有し、前記コンデンサ素子は、第3主面、前記第3主面とは反対側の第4主面、および前記第3主面と前記第4主面とを接続する第2側壁を有し、前記陰極箔の前記第1側壁の一部に電気的に接続された第1電極と、前記コンデンサ素子の前記第2側壁の一部に電気的に接続された第2電極と、をさらに備え、各前記素子ユニットは、前記陰極箔の前記第1側壁の残部、前記陰極箔の前記第1主面と前記第2主面のうち前記コンデンサ素子と重ならない部分、前記コンデンサ素子の前記第2側壁の残部、および前記コンデンサ素子の前記第3主面と前記第4主面のうち前記陰極箔と重ならない部分を覆う絶縁性部材をさらに有する。
【0006】
本開示に係る別の一局面は、上述の固体電解コンデンサの製造方法に関する。当該製造方法は、前記ベース基板を準備する準備工程と、前記ベース基板上に、前記陰極箔と、前記コンデンサ素子と、前記陰極箔の前記残部と前記重ならない部分、および前記コンデンサ素子の前記残部と前記重ならない部分を覆う絶縁性の樹脂枠とを前記素子ユニット毎に順次積層する積層工程と、前記樹脂枠を硬化させて前記絶縁性部材を形成し、前記積層体を得る硬化工程と、前記第1電極および前記第2電極を形成する電極形成工程と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、信頼性の高い固体電解コンデンサが得られる。また、本開示によれば、そのような固体電解コンデンサを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1の固体電解コンデンサの製造方法を概略的に示す斜視図である。
図2】積層工程に含まれる第1工程および第2工程を示す斜視図である。
図3】固体電解コンデンサを模式的に示す正面断面図である。
図4】素子ユニットの積層体を示す斜視図であって、1つの素子ユニットを分解して示してある。
図5】実施形態1の変形例1の加圧工程を説明するための斜視図であって、加圧工程前後の樹脂枠をそれぞれ示してある。
図6】実施形態1の変形例2の接合工程および積層工程を説明するための斜視図である。
図7】実施形態2の固体電解コンデンサを模式的に示す正面断面図である。
図8】実施形態2の固体電解コンデンサを模式的に示す側面断面図であって、図7のVIII-VIII線に沿った断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る固体電解コンデンサおよびその製造方法の実施形態について例を挙げて以下に説明する。しかしながら、本開示は以下に説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0010】
(固体電解コンデンサ)
本開示に係る固体電解コンデンサは、ベース基板と、素子ユニットの積層体と、第1電極と、第2電極とを備える。以下では、それらについて説明する。
【0011】
(ベース基板)
ベース基板は、プレート状の部材である。ベース基板は、固体電解コンデンサの実装面側に配置される。ベース基板は、絶縁性樹脂(例えば、エポキシガラス)で構成されてもよい。
【0012】
(素子ユニットの積層体)
積層体は、ベース基板上に設けられた複数の素子ユニットを積層したものである。各素子ユニットは、互いに重ねられた陰極箔およびコンデンサ素子を有する。
【0013】
陰極箔は、第1主面と、第1主面とは反対側の第2主面と、第1主面と第2主面とを接続する第1側壁とを有する。陰極箔は、第2主面がベース基板側を向くように重ねられていてもよい。陰極箔は、金属で構成されてもよい。例えば、陰極箔は、銅箔、アルミニウムプレーン箔、エッチングされたアルミニウム箔、表面にチタンおよびその窒化物、炭化物、炭窒化物、もしくは酸化物のうちの少なくとも一種からなる層が形成されたアルミニウム箔、または表面にニッケルが蒸着されたアルミニウム箔であってもよい。
【0014】
コンデンサ素子は、第3主面と、第3主面とは反対側の第4主面と、第3主面と第4主面とを接続する第2側壁とを有する。コンデンサ素子は、第4主面がベース基板側を向くように重ねられていてもよい。コンデンサ素子は、表面に多孔質部を有する陽極体と、陽極体の少なくとも一部を覆う誘電体層と、誘電体層上に設けられた固体電解質層とを備えてもよい。固体電解質層のうち陰極箔と重なる部分には、陰極層が形成されていてもよい。なお、陽極体の一部(例えば、陰極箔と重ならない部分)には、固体電解質層が形成されていない。陽極体の同部分には、誘電体層が形成されてなくてもよい。
【0015】
各素子ユニットは、所定の部分を覆う絶縁性部材をさらに有する。具体的に、絶縁性部材は、陰極箔の第1側壁のうち第1電極が電気的に接続されていない部分(以下、第1側壁の残部ともいう。)を覆う。絶縁性部材は、陰極箔の第1主面と第2主面のうちコンデンサ素子と重ならない部分(以下、第1主面と第2主面の非重なり部ともいう。)を覆う。絶縁性部材は、コンデンサ素子の第2側壁のうち第2電極が電気的に接続されていない部分(以下、第2側壁の残部ともいう。)を覆う。絶縁性部材は、コンデンサ素子の第3主面と第4主面のうち陰極箔と重ならない部分(以下、第3主面と第4主面の非重なり部ともいう。)を覆う。このような絶縁性部材により、積層体の積層方向において隣り合う陰極箔の間の隙間や、当該積層方向において隣り合うコンデンサ素子の間の隙間が十分に満たされる。よって、固体電解コンデンサの信頼性を向上させることができる。
【0016】
なお、絶縁性部材は、陰極箔の第1主面と第2主面のうちコンデンサ素子と重なる部分の一部も覆ってもよい。同様に、絶縁性部材は、コンデンサ素子の第3主面と第4主面のうち陰極箔と重なる部分の一部も覆ってもよい。
【0017】
(第1電極)
第1電極は、陰極箔の第1側壁の一部(以下、第1接続部ともいう。)に電気的に接続される。第1電極は、少なくとも一部が固体電解コンデンサの外部に露出していてもよい。第1電極は、任意の導電性材料、例えば金属で構成されてもよい。
【0018】
(第2電極)
第2電極は、コンデンサ素子の第2側壁の一部(以下、第2接続部ともいう。)に電気的に接続される。第2電極は、少なくとも一部が固体電解コンデンサの外部に露出していてもよい。第2電極は、任意の導電性材料、例えば金属で構成されてもよい。
【0019】
(固体電解コンデンサの製造方法)
本開示に係る固体電解コンデンサの製造方法は、準備工程と、積層工程と、硬化工程と、電極形成工程とを備える。以下では、それらについて説明する。
【0020】
(準備工程)
準備工程では、上述のベース基板を準備する。準備工程では、上述の陰極箔と、上述のコンデンサ素子と、絶縁性の樹脂枠とをさらに準備してもよい。
【0021】
(積層工程)
積層工程では、ベース基板上に、上述の陰極箔と、上述のコンデンサ素子と、絶縁性の樹脂枠とを、素子ユニット毎に順次積層する。樹脂枠は、陰極箔の第1側壁の残部と、陰極箔の第1主面と第2主面の非重なり部と、コンデンサ素子の第2側壁の残部と、コンデンサ素子の第3主面と第4主面の非重なり部とを覆う。
【0022】
樹脂枠は、任意の絶縁性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、もしくはポリアミド樹脂、またはその2種以上を組み合わせたもので構成されてもよい。好ましくは、樹脂枠は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を含む組成物で構成される。組成物は、無機粉体(フィラー)を含んでもよい。組成物は、半硬化状態(Bステージ)であってもよい。樹脂枠の厚み(積層体の積層方向における長さ)は、特に限定されないが、例えば5μm以上200μm以下であってもよい。
【0023】
積層工程では、任意の単位で各部材をベース基板上に積層してもよい。例えば、陰極箔と、コンデンサ素子と、樹脂枠とを1つずつ順次積層することや、1つの素子ユニットに対応する陰極箔、コンデンサ素子、および樹脂枠のうち少なくとも一部を予めユニット化しておいて当該ユニットを順次積層することなどが考えられる。積層工程は、樹脂枠が流動性を有する温度まで当該樹脂枠を加熱しながら行ってもよい。
【0024】
(硬化工程)
硬化工程では、樹脂枠を硬化させて上述の絶縁性部材を形成し、上述の積層体を得る。例えば、樹脂枠が熱硬化性樹脂で構成される場合、樹脂枠を所定の温度まで加熱して硬化させてもよい。この他にも、樹脂枠の構成材料に応じて、様々な硬化方法が採用され得る。
【0025】
(電極形成工程)
電極形成工程では、上述の第1電極および第2電極を形成する。第1電極および第2電極は、例えば、めっき、スパッタ、浸漬塗布、または印刷により形成されてもよい。
【0026】
以上のように、本開示によれば、絶縁性部材が素子ユニット毎に封止された信頼性の高い固体電解コンデンサが得られる。さらに、本開示によれば、そのような固体電解コンデンサを容易に製造することが可能である。
【0027】
固体電解コンデンサは、天面板をさらに備えてもよく、ベース基板、絶縁性部材、および天面板は、同じ材料で構成されてもよい。これにより、ベース基板と、絶縁性部材と、天面板との間の密着性が向上し、固体電解コンデンサの耐高温性や耐湿性が高まる。さらに、製造上の利点として、ベース基板と、素子ユニットの積層体と、天面板とを一体的に硬化させるだけで製品外装を完成させることが可能となり、外装形成の別工程を省略することができる。
【0028】
ただし、固体電解コンデンサは、外装を有してもよく、積層体を覆う外装樹脂をさらに備えてもよい。これにより、固体電解コンデンサの耐高温性および耐湿性をさらに高めることができる。なお、固体電解コンデンサが外装樹脂を備える場合、上述の天面板を省略することが可能である。
【0029】
ベース基板は、ガラスエポキシ基板であってもよい。ガラスエポキシ基板は剛性が高いので、それを土台として機能させることで、積層される各部材の位置精度を高めることができる。
【0030】
固体電解コンデンサは、互いに隣接する素子ユニットの絶縁性部材間に設けられ、離型剤で構成された層状体をさらに備えてもよい。そのような層状体は、例えば、固体電解コンデンサの製造工程において後述の離型層を有するベースフィルムを用いた場合に形成され得る。
【0031】
絶縁性部材は、積層体の積層方向において陰極箔の第1側壁の第1接続部に隣接する第1部分が、第1絶縁材料で構成されてもよく、積層方向においてコンデンサ素子の第2側壁の第2接続部に隣接する第2部分が、第2絶縁材料で構成されてもよく、第1部分および第2部分を除く第3部分が、第1絶縁材料および第2絶縁材料とは異なる第3絶縁材料で構成されてもよい。これにより、第1~第3部分に必要とされる寸法に応じて、各部分を対応する絶縁材料で構成することが可能となり、製品設計における寸法上の制約を少なくすることができる。なお、第1絶縁材料と第2絶縁材料は、互いに同じ材料であってもよいし、互いに異なる材料であってもよい。
【0032】
固体電解コンデンサは、互いに対向する第1側面および第2側面をさらに備えてもよく、第1電極は、第1側面に設けられてもよく、第2電極は、第2側面に設けられていてもよい。この場合、各陰極箔は、第1側面の第1電極に電気的に接続される一方、各コンデンサ素子は、第2側面の第2電極に電気的に接続される。
【0033】
固体電解コンデンサは、互いに対向する第1側面および第2側面と、互いに対向する第3側面および第4側面と、をさらに備えてもよく、第1電極は、第1側面および第2側面に設けられてもよく、第2電極は、第3側面および第4側面に設けられてもよく、陰極箔は、第1側面および第2側面の第1電極に電気的に接続されてもよく、コンデンサ素子は、積層体の積層方向において、第3側面の第2電極と、第4側面の第2電極とに交互に電気的に接続されていてもよい。この場合、積層体の積層方向において隣り合うコンデンサ素子を流れる電流の向きが互いに実質的に逆になる。電流が生じる磁界が打ち消し合うことで、固体電解コンデンサの等価直列インダクタンス(ESL)を低減することができる。
【0034】
積層工程で、複数のベース基板を含む基板シート上に、複数の陰極箔を含む箔シートと、複数のコンデンサ素子を含む素子シートと、複数の樹脂枠を含む樹脂シートとを積層してもよく、固体電解コンデンサの製造方法は、積層工程よりも後に、基板シート、箔シート、素子シート、および樹脂シートを、複数の固体電解コンデンサに分割する分割工程をさらに備えてもよい。これにより、複数の固体電解コンデンサを一括して製造することが可能となり、ラインタクトを短縮することができる。なお、固体電解コンデンサは、1つずつ個別に製造されてもよい。
【0035】
積層工程は、陰極箔およびコンデンサ素子の少なくとも一方と、樹脂枠とを予め積層しておく予備積層工程を含んでもよい。すなわち、素子ユニットに対応する積層物を予め形成しておいてもよい。これにより、相対的に長い時間を要する積層工程を簡略化でき、製造プロセス全体としてラインタクトを短縮することができる。
【0036】
積層工程は、ベースフィルム上に貼着された樹脂枠を積層する第1工程と、積層された樹脂枠からベースフィルムを剥がす第2工程と、を含んでもよい。これにより、樹脂枠の形状を維持したまま積層することが容易になる。さらに、樹脂枠を保管したりする場合に、ベースフィルムを合紙として機能させることができる。
【0037】
ベースフィルムは、樹脂枠が貼着される離型層を有してもよい。これにより、第2工程を、樹脂枠を欠損させることなく円滑に実行することができる。
【0038】
積層工程で、樹脂枠が流動性を有する状態で、陰極箔、コンデンサ素子、および樹脂枠を積層してもよい。これにより、陰極箔やコンデンサ素子が設計通りの配置から多少位置ずれしても、その位置ずれを吸収するように樹脂枠が変形し得る。よって、そのような位置ずれが生じても、陰極箔やコンデンサ素子と樹脂枠との密着性を高いレベルで維持して、固体電解コンデンサの信頼性を高めることができる。
【0039】
樹脂枠は、厚みが一定であってもよく、固体電解コンデンサの製造方法は、樹脂枠が流動性を有する状態で、樹脂枠のうち、積層体の積層方向において陰極箔の第1側壁の第1接続部に隣接する部分と、積層方向においてコンデンサ素子の第2側壁の第2接続部に隣接する部分とを加圧により薄くする加圧工程をさらに備えてもよい。この場合、樹脂枠のうち相対的に薄い必要がある部分が、厚みが一定の樹脂枠の一部を加圧することで形成される。厚みが一定の樹脂枠は単一の樹脂部材から容易に製造可能であるので、固体電解コンデンサをより容易に製造することができる。なお、加圧工程では、樹脂枠のうち、上述した部分以外の部分も加圧により薄くなってもよい。
【0040】
加圧工程は、積層工程に含まれてもよく、加圧工程で、陰極箔およびコンデンサ素子の少なくとも一方により加圧を行ってもよい。この場合、樹脂枠のうち加圧される部分は、陰極箔やコンデンサ素子の形状に追従するように変形する。このとき、樹脂枠の変形を促すために加熱を行ってもよい。よって、固体電解コンデンサの完成品において、陰極箔やコンデンサ素子と樹脂枠との高いレベルの密着性を実現することができる。なお、加圧工程では、陰極箔およびコンデンサ素子以外の別部材によって加圧を行ってもよい。
【0041】
樹脂枠は、互いに厚みが異なる複数の樹脂体を有してもよく、積層工程で、樹脂枠を積層することは、複数の樹脂体を積層することを含んでもよい。この場合、樹脂枠のうち相対的に分厚い部分を、相対的に分厚い樹脂体で構成する共に、樹脂枠のうち相対的に薄い部分を、相対的に薄い樹脂体で構成することが考えられる。これにより、樹脂枠の厚み分布に起因する寸法的な制約をなくすことが可能となる。
【0042】
固体電解コンデンサの製造方法は、積層工程よりも前に、複数の樹脂体を互いに接合する接合工程をさらに備えてもよい。これにより、相対的に長い時間を要する積層工程を簡略化でき、製造プロセス全体としてラインタクトを短縮することができる。
【0043】
積層工程で、樹脂枠を積層することは、絶縁性の樹脂材料を、陰極箔の第1側壁の残部、および陰極箔の第1主面と第2主面の非重なり部、コンデンサ素子の第2側壁の残部、およびコンデンサ素子の第3主面と第4主面の非重なり部に塗布することであってもよい。この場合、樹脂材料は、スクリーン印刷機およびディスペンサの少なくとも一方を用いて塗布されてもよいが、これに限られるものではない。
【0044】
以下では、本開示に係る固体電解コンデンサおよびその製造方法の例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する例の固体電解コンデンサの構成要素およびその製造方法の工程には、上述した構成要素および工程を適用できる。以下で説明する例の固体電解コンデンサの構成要素およびその製造方法の工程は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。以下で説明する例の固体電解コンデンサの構成要素およびその製造方法の工程のうち、本開示に係る固体電解コンデンサおよびその製造方法に必須ではない構成要素および工程は省略してもよい。なお、以下で示す図は模式的なものであり、実際の部材の形状や数を正確に反映するものではない。
【0045】
《実施形態1》
実施形態1に係る固体電解コンデンサの製造方法(以下、単に製造方法ともいう。)について、図1図4を適宜参照して説明する。ここで、図1図4は、複数の固体電解コンデンサ10を一括して製造する様子を示すものであり、その中の図2図4では、1つの固体電解コンデンサ10に注目して図示していることに留意されたい。
【0046】
本実施形態の製造方法は、準備工程と、積層工程と、硬化工程と、分割工程と、電極形成工程とを備える。
【0047】
(準備工程)
準備工程では、それぞれ図1に示される、複数のベース基板11を含む基板シート41と、複数の陰極箔14を含む箔シート42と、複数のコンデンサ素子15を含む素子シート43と、複数の樹脂枠17を含む樹脂シート44と、天面板シート45とを準備する。
【0048】
基板シート41は、矩形板状の部材であるが、これに限定されない。例えば、基板シート41は、円形または楕円形の板状部材であってもよい。基板シート41には、複数(この例では、50個)のベース基板11が形成されている。複数のベース基板11は、一体的に連結されている。本実施形態のベース基板11は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂で構成されるが、これに限定されない。例えば、ベース基板11は、ガラスエポキシ基板であってもよい。
【0049】
箔シート42は、全体として矩形状の薄い部材である。箔シート42には、複数(この例では、50個)の陰極箔14が形成されている。複数の陰極箔14は、箔シート42が備える箔連結部42aによって互いに連結されている。本実施形態の陰極箔14は、表面がカーボンでコーティングされたアルミニウムで構成されるが、これに限定されない。
【0050】
素子シート43は、全体として矩形状の薄い部材である。素子シート43には、複数(この例では、50個)のコンデンサ素子15が形成されている。複数のコンデンサ素子15は、素子シート43が備える素子連結部43aによって互いに連結されている。本実施形態のコンデンサ素子15は、表面に多孔質部を有する陽極体と、陽極体の少なくとも一部を覆う誘電体層(図示せず)と、誘電体層上に設けられた固体電解質層とを備える。固体電解質層のうち陰極箔14と重なる部分には、陰極層が形成されていてもよい。なお、陽極体の一部(例えば、陰極箔14と重ならない部分)には、固体電解質層が形成されていない。陽極体の同部分には、誘電体層が形成されてなくてもよい。
【0051】
樹脂シート44は、全体として矩形状の薄い部材である。樹脂シート44には、複数(この例では、50個)の樹脂枠17が形成されている。複数の樹脂枠17は、樹脂シート44が備える樹脂連結部44aによって互いに連結されている。本実施形態の樹脂枠17は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂で構成されるが、これに限定されない。つまり、本実施形態の樹脂枠17は、ベース基板11と同じ材料で構成されるが、これに限定されない。
【0052】
天面板シート45は、矩形板状の部材であるが、これに限定されない。例えば、天面板シート45は、円形または楕円形の板状部材であってもよい。天面板シート45には、複数(この例では、50個)の天面板26が形成されている。複数の天面板26は、一体的に連結されている。本実施形態の天面板26は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂で構成されるが、これに限定されない。つまり、本実施形態の天面板26は、ベース基板11および樹脂枠17と同じ材料で構成されるが、これに限定されない。
【0053】
(積層工程)
積層工程では、基板シート41上に、箔シート42と、素子シート43と、樹脂シート44とを素子ユニット13毎に順次積層する。ここで、素子ユニット毎に順次積層するとは、各シート41~44を1枚ずつ順次積層する場合のみでなく、複数枚ずつ順次積層する場合や、両者を組み合わせた場合も含むものとする。また、積層工程では、各シート41~44の積層が完了した後、天面板シート45を積層する。なお、天面板シート45の直下に箔シート42がくるように、素子ユニット13上に箔シート42を重ねてから天面板シート45を積層してもよい。積層工程は、予備積層工程と、本積層工程とを含む。
【0054】
-予備積層工程-
予備積層工程では、図示を省略するが、箔シート42、素子シート、および樹脂シート44を積層して予めユニット化し、これにより素子ユニット13を構成しておく。なお、箔シート42と樹脂シート44を予めユニット化しておいてもよいし、素子シート43と樹脂シート44を予めユニット化しておいてもよいし、基板シート41と最下層の箔シート42を予めユニット化しておいてもよい。
【0055】
図2に示すように、予備積層工程は、第1工程(図2における左側から1番目と2番目)と、第2工程(図2における左から3番目)とを含む。
【0056】
第1工程では、ベースフィルム46上に貼着された樹脂枠17(実際には樹脂シート44であるが、以下、樹脂枠17ともいう。)を、コンデンサ素子15(実際には素子シート43であるが、以下、コンデンサ素子15ともいう。)上に積層する。ここで、ベースフィルム46は、樹脂枠17が貼着される離型層(図示せず)を有する。離型層は、任意の離型剤で構成されてもよい。離型剤としては、例えば、シリコーン樹脂やフッ素樹脂などを用いることができる。
【0057】
第1工程では、樹脂枠17が流動性を有する状態で、樹脂枠17をコンデンサ素子15上に積層してもよい。樹脂枠17は、適当な温度に加熱されることで流動性を有し得る。
【0058】
第2工程では、コンデンサ素子15上に積層されたベースフィルム46を剥がす。第1工程で樹脂枠17を加熱している場合には、樹脂枠17を適当な温度まで冷却(例えば、自然冷却または空冷など)することで、樹脂枠17の流動性を消失または減少させ、ベースフィルム46を剥がしやすくすることができる。
【0059】
-本積層工程-
本積層工程では、予備積層工程でユニット化された陰極箔14(実際には箔シート42であるが、以下、陰極箔14ともいう。)、コンデンサ素子15、および樹脂枠17を、ベース基板11(実際には基板シート41であるが、以下、ベース基板11といもう。)上に順次積層していく。
【0060】
本積層工程では、樹脂枠17が流動性を有する状態で、ユニット化された陰極箔14、コンデンサ素子15、および樹脂枠17を積層してもよい。この場合、陰極箔14やコンデンサ素子15の位置が設計と多少ずれていても、陰極箔14やコンデンサ素子15の形状に追従するように樹脂枠17を変形させながら積層することで、固体電解コンデンサ10の内部に隙間が発生するのを抑止できる。
【0061】
本積層工程では、陰極箔14、コンデンサ素子15、および樹脂枠17の積層が完了した後に、天面板26(実際には天面板シート45であるが、以下、天面板26ともいう。)を積層する。
【0062】
(硬化工程)
硬化工程では、樹脂枠17を硬化させて絶縁性部材16(図3を参照)を形成し、積層体12(図3を参照)を得る。樹脂枠17を硬化させる方法は、特に限定されない。本実施形態では、樹脂枠17、ベース基板11、および天面板26がエポキシ樹脂で構成されているので、これらを加熱して一体的に架橋硬化させることが好ましい。
【0063】
(分割工程)
分割工程では、基板シート41、箔シート42、素子シート43、樹脂シート44、および天面板シート45を、複数(この例では、50個)の固体電解コンデンサ10に分割する。各シート41~45を分割する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0064】
(電極形成工程)
電極形成工程では、第1電極31および第2電極(それぞれ、図3を参照)を形成する。第1電極31および第2電極32を形成する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0065】
以上の各工程ならびに説明を省略した付加的な工程を経て、図3に示す固体電解コンデンサ10が得られる。以下、この固体電解コンデンサ10について説明する。
【0066】
図3に示すように、本実施形態の固体電解コンデンサ10は、ベース基板11と、複数の素子ユニット13の積層体12(図4も参照)と、天面板26と、第1電極31と、第2電極32とを備える。また、固体電解コンデンサ10は、互いに対向する第1側面S1および第2側面S2と、互いに対向する第3側面および第4側面(図示せず)とをさらに備える。
【0067】
(ベース基板)
ベース基板11は、矩形板状の部材である。ベース基板11は、固体電解コンデンサ10の実装面側に配置される。本実施形態のベース基板11は、エポキシ樹脂で構成されていて、積層体12の絶縁性部材16と一体になっている。
【0068】
(素子ユニットの積層体)
積層体12は、図4に示すように、ベース基板11上に設けられた複数の素子ユニット13を積層したものである。各素子ユニット13は、互いに重ねられた陰極箔14およびコンデンサ素子15を有する。各素子ユニット13は、絶縁性部材16(硬化後の樹脂枠17)をさらに有する。
【0069】
陰極箔14は、第1主面14a、第1主面14aとは反対側の第2主面14b、および第1主面14aと第2主面14bとを接続する第1側壁14cを有する。この例では、第1主面14aは、ベース基板11とは反対側(図4における上側)を向いており、第2主面14bは、ベース基板11側を向いている。陰極箔14の第1側壁14cの第1接続部は、固体電解コンデンサ10の第1側面S1側において積層体12から露出している。
【0070】
コンデンサ素子15は、第3主面15a、第3主面15aとは反対側の第4主面15b、および第3主面15aと第4主面15bとを接続する第2側壁15cを有する。この例では、第3主面15aは、ベース基板11とは反対側(図4における上側)を向いており、第4主面15bは、ベース基板11側を向いている。コンデンサ素子15は、それぞれ図示を省略するが、表面に多孔質部を有する陽極体と、陽極体の少なくとも一部を覆う誘電体層と、誘電体層上に設けられた固体電解質層とを備える。コンデンサ素子15の(陽極体の)第2側壁15cの第2接続部は、固体電解コンデンサ10の第2側面S2側において積層体12から露出している。
【0071】
陰極箔14とコンデンサ素子15とは、陰極箔14の第2主面14bとコンデンサ素子15の第3主面15aとが対向するように、かつ陰極箔14の第1主面14aとコンデンサ素子15の第4主面15bとが対向するように、互いに重ねられる。
【0072】
陰極箔14の第1主面14aおよび第2主面14bの一部(固体電解コンデンサ10の第1側面S1側の一部)は、コンデンサ素子15と重ならない非重なり部になっている。コンデンサ素子15の第3主面15aおよび第4主面15bの一部(固体電解コンデンサ10の第2側面S2側の一部)は、陰極箔14と重ならない非重なり部になっている。
【0073】
絶縁性部材16は、陰極箔14の第1側壁14cの残部を覆う。絶縁性部材16は、陰極箔14の第1主面14aと第2主面14bの非重なり部を覆う。絶縁性部材16は、コンデンサ素子15の第2側壁15cの残部を覆う。絶縁性部材16は、コンデンサ素子15の第3主面15aと第4主面15bの非重なり部を覆う。各絶縁性部材16は、上述の硬化工程を経て互いに一体となっている。
【0074】
(天面板)
天面板26は、矩形板状の部材である。天面板26は、固体電解コンデンサ10の実装面とは反対側に配置される。本実施形態の天面板26は、エポキシ樹脂で構成されていて、積層体12の絶縁性部材16と一体になっている。
【0075】
(第1電極)
第1電極31は、第1側面S1に設けられる。第1電極31は、陰極箔14の第1側壁14cの第1接続部に電気的に接続される。本実施形態の第1電極31は、第1側面S1の全体を覆うように設けられる。
【0076】
(第2電極)
第2電極32は、第2側面S2に設けられる。第2電極32は、コンデンサ素子15の第2側壁15cの第2接続部に電気的に接続される。本実施形態の第2電極32は、第2側面S2の全体を覆うように設けられる。
【0077】
《実施形態1の変形例1》
実施形態1の変形例1について説明する。本変形例の製造方法は、加圧工程を備える点で上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0078】
図5の左側に示すように、本変形例の製造方法では、厚みが一定の樹脂枠17を用いる。この樹脂枠17は、一体成形品であることが好ましい。そして、製造方法は、樹脂枠17が流動性を有する状態で、樹脂枠17の所定の部分を加圧により薄くする加圧工程をさらに備える。
【0079】
樹脂枠17の所定の部分とは、樹脂枠17のうち、積層体12の積層方向において陰極箔14の第1側壁14cの一部に隣接する部分(図5で符号17aを付す部分)と、当該積層方向においてコンデンサ素子15の第2側壁15cの一部に隣接する部分(図5で符号17bを付す部分)のことである。これらの部分は、図5の右側に示すように、加圧工程を経て、初期状態よりも薄くなると共に幅広になる。本変形例の樹脂枠17は、この加圧工程後の状態で陰極箔14やコンデンサ素子15と隙間なく積層されるように設計される。
【0080】
ここで、加圧工程は、積層工程に含まれることが好ましい。その場合、加圧工程では、陰極箔14およびコンデンサ素子15の少なくとも一方により樹脂枠17の加圧を行うことが考えられる。
【0081】
《実施形態1の変形例2》
実施形態1の変形例2について説明する。本変形例の製造方法は、樹脂枠17が複数の樹脂体21~24を有する点で上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0082】
図6の左側に示すように、本変形例の樹脂枠17は、複数(この例では、4つ)の樹脂体21~24(以下、第1~第4樹脂体21~24)で構成される。第1樹脂体21は、相対的に長いバー状になっており、第2樹脂体22は、相対的に短いバー状になっている。第3樹脂体23および第4樹脂体24は、略L字状になっている。
【0083】
第1樹脂体21の厚みと、第2樹脂体22の厚みと、第3樹脂体23の厚みとは、互いに異なる。第3樹脂体23の厚みと、第4樹脂体24の厚みとは、実質的に等しい。第1樹脂体21の厚みは、コンデンサ素子15の厚みに実質的に等しい。第2樹脂体22の厚みは、陰極箔14の厚みに実質的に等しい。第3樹脂体23および第4樹脂体24の厚みは、陰極箔14の厚みとコンデンサ素子15の厚みとの和に実質的に等しい。
【0084】
第1樹脂体21は、第1絶縁材料で構成される。第2樹脂体22は、第2絶縁材料で構成される。第3樹脂体23および第4樹脂体24は、第3絶縁材料で構成される。第1絶縁材料と第2絶縁材料とは、互いに同じであっても異なってもよい。第3絶縁材料は、第1絶縁材料および第2絶縁材料と異なる。第1樹脂体21は、絶縁性部材16の第1部分の一例である。第2樹脂体22は、絶縁性部材16の第2部分の一例である。第3樹脂体23および第4樹脂体24は、絶縁性部材16の第3部分の一例である。
【0085】
第1絶縁材料および第2絶縁材料は、第3絶縁材料よりも軟らかいことが好ましい。ここで、第1樹脂体21や第2樹脂体22は、陰極箔14間やコンデンサ素子15間のミクロンオーダーの狭い隙間に対応する部材である。そのような第1樹脂体21および第2樹脂体22を軟らかい材料で構成することにより、当該狭い隙間を充填することが容易になる。一方、相対的には狭くない隙間に対応する第3樹脂体23および第4樹脂体24を硬い材料で構成することにより、積層時の位置決めが安定し、よって積層体12の寸法精度を高めることができる。
【0086】
本変形例の製造方法は、図6の中央に示すように、積層工程よりも前に、第1~第4樹脂体21~24を互いに接合する接合工程をさらに備える。第1~第4樹脂体21~24を接合する方法には、任意の方法を採用することができる。
【0087】
図6の右側に示すように、本変形例の積層工程では、接合工程でユニット化された第1~第4樹脂体21~24を、陰極箔14およびコンデンサ素子15と共にそれぞれ積層する。このとき、第1樹脂体21は、積層方向において陰極箔14の第1側壁14cの一部に隣接するように積層される。第2樹脂体22は、積層方向においてコンデンサ素子15の第2側壁15cの一部に隣接するように積層される。第3樹脂体23および第4樹脂体24は、積層方向と直交する方向において第1側壁14cの残部および第2側壁15cの残部と隣接するように積層される。
【0088】
なお、固体電解コンデンサの製造方法は、接合工程を備えなくてもよい。例えば、積層工程において、互いに別個の第1~第4樹脂体21~24を、陰極箔14およびコンデンサ素子15と共にそれぞれ積層してもよい。
【0089】
《実施形態1の変形例3》
実施形態1の変形例3について説明する。本変形例の製造方法は、樹脂材料の塗布によって樹脂枠17を形成する点で上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0090】
図示を省略するが、本変形例の積層工程では、絶縁性の樹脂材料を、陰極箔14およびコンデンサ素子15の各々の所定の部分に塗布することで、樹脂枠17を形成する。ここで、陰極箔14の所定の部分とは、第1側壁14cの残部と、第1主面14aおよび第2主面14bの非重なり部とである。コンデンサ素子15の所定の部分とは、第2側壁15cの残部と、第3主面15aおよび第4主面15bの非重なり部とである。
【0091】
樹脂材料を塗布する方法としては、任意の方法を採用することができる。例えば、相対的に薄く塗布すべき領域にスクリーン印刷機を用いる一方、相対的に分厚く塗布すべき領域にディスペンサを用いることが考えられるが、これに限定されるものではない。
【0092】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態の固体電解コンデンサ10は、第1電極31および第2電極32の配置などが上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0093】
図7および図8に示すように、本実施形態の固体電解コンデンサ10は、互いに対向する第1側面S1および第2側面S2と、互いに対向する第3側面S3および第4側面S4とを備える。
【0094】
陰極箔14の第1側壁14cの第1接続部は、固体電解コンデンサ10の第1側面S1側および第2側面S2側において積層体12から露出している。コンデンサ素子15の第2側壁15cの第2接続部は、積層体12の積層方向において第3側面S3側と第4側面S4側とが交互になるように、積層体12から露出している。換言すると、積層方向において隣り合う一対のコンデンサ素子15に注目すると、一方のコンデンサ素子15の第2側壁15cの一部は、第3側面S3側において積層体12から露出する一方、他方のコンデンサ素子15の第2側壁15cの一部は、第4側面S4側において積層体12から露出する。
【0095】
第1電極31は、第1側面S1および第2側面S2に設けられる。第1電極31は、陰極箔14の第1側壁14cの第1接続部に電気的に接続される。本実施形態の第1電極31は、第1側面S1および第2側面S2の各々の一部を覆うように設けられる。
【0096】
第2電極32は、第3側面S3および第4側面S4に設けられる。第2電極32は、コンデンサ素子15の第2側壁15cの第2接続部に電気的に接続される。すなわち、コンデンサ素子15は、積層体12の積層方向において、第2側面S2の第2電極32と、第4側面S4の第2電極32とに交互に電気的に接続されている。本実施形態の第2電極32は、第3側面S3および第4側面S4の各々の一部を覆うように設けられる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本開示は、固体電解コンデンサおよびその製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0098】
10:固体電解コンデンサ
11:ベース基板
12:積層体
13:素子ユニット
14:陰極箔
14a:第1主面
14b:第2主面
14c:第1側壁
15:コンデンサ素子
15a:第3主面
15b:第4主面
15c:第2側壁
16:絶縁性部材
17:樹脂枠
17a:所定の部分
17b:所定の部分
21:第1樹脂体
22:第2樹脂体
23:第3樹脂体
24:第4樹脂体
26:天面板
31:第1電極
32:第2電極
41:基板シート
42:箔シート
42a:箔連結部
43:素子シート
43a:素子連結部
44:樹脂シート
44a:樹脂連結部
45:天面板シート
46:ベースフィルム
S1:第1側面
S2:第2側面
S3:第3側面
S4:第4側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8