(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】素子チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241011BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H01L21/78 R
H01L21/78 Q
H01L21/78 S
H01L21/302 104C
(21)【出願番号】P 2020201996
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】針貝 篤史
(72)【発明者】
【氏名】置田 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】高崎 俊行
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0115771(US,A1)
【文献】特開2018-137405(JP,A)
【文献】特開2016-058710(JP,A)
【文献】特開2008-071907(JP,A)
【文献】特開2008-300870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素子領域および前記素子領域を画定する分割領域を備えると共に、第1主面および前記第1主面とは反対側の第2主面を有する基板を準備する準備工程と、
前記基板の前記第1主面側から前記分割領域に溝を形成する溝形成工程と、
前記基板を前記第2主面側から研削することにより前記基板を複数の素子チップに分割する研削工程と、
を備え、
前記溝形成工程で形成される前記溝は、第1表面粗さの側面からなる第1領域と、前記第1表面粗さよりも大きい第2表面粗さの側面からなる第2領域とを有し、
前記研削工程で、前記溝の前記第1領域に達するまで前記基板の研削を行う、素子チップの製造方法。
【請求項2】
前記溝形成工程は、
前記基板を連続的にエッチングすることで前記基板を掘り進んで前記第1領域を形成する第1プラズマ処理工程と、
前記基板をエッチングするエッチングステップと、保護膜を堆積させる堆積ステップと、前記保護膜の少なくとも一部を除去する保護膜除去ステップとを繰り返すことにより前記基板を掘り進んで前記第2領域を形成する第2プラズマ処理工程と、
を有する、請求項1に記載の素子チップの製造方法。
【請求項3】
前記溝形成工程は、前記第1プラズマ処理工程から開始する、請求項2に記載の素子チップの製造方法。
【請求項4】
前記溝形成工程で、最後に前記第1プラズマ処理工程およびその後の前記第2プラズマ処理工程を行い、
前記研削工程で、前記溝における前記最後の第1プラズマ処理工程で形成された前記第1領域に達するまで前記基板の研削を行う、請求項2または3に記載の素子チップの製造方法。
【請求項5】
前記溝形成工程で、最後に前記第1プラズマ処理工程を行い、
前記研削工程で、前記溝における前記最後の第1プラズマ処理工程で形成された前記第1領域に達するまで前記基板の研削を行う、請求項2または3に記載の素子チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、素子チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の一方面側からプラズマエッチングを行った後に、基板の他方面側から研削を行って複数の素子チップを製造する方法が知られている(例えば、特許文献1)。この方法は、DBG(Dicing Before Grinding)工法として知られ、研削ホイールを用いて基板の研削が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、DBG工法において、基板のプラズマエッチングにボッシュプロセスを適用することが考えられる。ボッシュプロセスでは、シリコンなどの半導体層が深さ方向に垂直にエッチングされる。ボッシュプロセスでは、半導体層を等方的にエッチングするエッチングステップと、保護膜堆積ステップと、堆積膜除去ステップとを順次繰り返すことにより、半導体層を深さ方向に掘り進む。しかし、ボッシュプロセスでは、溝の側面にスキャロップが形成される。そのようにスキャロップが形成された溝に対して研削を行うと、研削ホイールがスキャロップに引っかかってチップの一部が欠ける現象(以下、チップ欠け)が発生するおそれがある。このような状況において、本開示は、DBG工法でチップ欠けが発生するのを抑止することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る一局面は、素子チップの製造方法に関する。当該素子チップの製造方法は、複数の素子領域および前記素子領域を画定する分割領域を備えると共に、第1主面および前記第1主面とは反対側の第2主面を有する基板を準備する準備工程と、前記基板の前記第1主面側から前記分割領域に溝を形成する溝形成工程と、前記基板を前記第2主面側から研削することにより前記基板を複数の素子チップに分割する研削工程と、を備え、前記溝形成工程で形成される前記溝は、第1表面粗さの側面からなる第1領域と、前記第1表面粗さよりも大きい第2表面粗さの側面からなる第2領域とを有し、前記研削工程で、前記溝の前記第1領域に達するまで前記基板の研削を行う。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、DBG工法でチップ欠けが発生するのを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1の素子チップの製造方法を模式的に示す図である。
【
図2】素子チップの製造方法に用いられるプラズマ処理装置の構造を模式的に示す概略断面図である。
【
図3】実施形態2の素子チップの製造方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示に係る素子チップの製造方法の実施形態について例を挙げて以下に説明する。しかしながら、本開示は以下に説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0009】
(素子チップの製造方法)
本開示に係る素子チップの製造方法は、準備工程と、溝形成工程と、研削工程とを備える。以下では、それらについて説明する。
【0010】
(準備工程)
準備工程では、基板を準備する。基板は、複数の素子領域および素子領域を画定する分割領域を備える。基板は、第1主面および第1主面とは反対側の第2主面を有する。基板は、半導体層と、半導体層の第1主面側に積層されたデバイス層とを備えてもよい。
【0011】
(溝形成工程)
溝形成工程では、基板の第1主面側から分割領域に溝を形成する。溝は、第1領域および第2領域を有する。第1領域は、第1表面粗さの側面からなる。第2領域は、第1表面粗さよりも大きい第2表面粗さの側面からなる。第2表面粗さは、第1表面粗さの10倍以上であってもよい。溝は、半導体層の厚み方向の中途部まで形成されてもよい。
【0012】
なお、本明細書における表面粗さは、JIS B 0601における算術平均粗さRaである。すなわち、本明細書における表面粗さは、溝の表面について粗さ計で測定した粗さ曲線の一部を基準長さで抜き出し、抜き出した区間の凹凸状態を平均値で表したものである。
【0013】
(研削工程)
研削工程では、基板を第2主面側から研削することにより基板を複数の素子チップに分割する。このように、本開示の素子チップの製造方法は、DBG工法を用いる製造方法である。
【0014】
研削工程では、溝の第1領域に達するまで基板の研削を行う。つまり、研削工程では、第1領域と第2領域のうち相対的に表面粗さが小さい第1領域に達するまで基板の研削が行われる。研削に用いられる研削ホイールなどのツールは、第1領域の側面に引っかかりにくい。よって、本開示の素子チップの製造方法では、チップ欠けが発生しにくい。
【0015】
以上のように、本開示によれば、DBG工法においてチップ欠けが発生するのを抑止することができる。
【0016】
溝形成工程は、基板を連続的にエッチングすることで基板を掘り進んで第1領域を形成する第1プラズマ処理工程と、基板をエッチングするエッチングステップと、保護膜を堆積させる堆積ステップと、保護膜の少なくとも一部を除去する保護膜除去ステップとを繰り返すことにより基板を掘り進んで第2領域を形成する第2プラズマ処理工程と、を有してもよい。換言すると、非ボッシュプロセスによりスキャロップを有しない第1領域を形成すると共に、ボッシュプロセスによりスキャロップを有する第2領域を形成してもよい。
【0017】
溝形成工程は、第1プラズマ処理工程から開始してもよい。この場合、完成品の素子チップの側面において、第1主面側と第2主面側の両方の端部が比較的平滑になる。よって、素子チップの抗折強度を高めることができる。なお、溝形成工程は、第2プラズマ処理工程から開始してもよい。
【0018】
溝形成工程で、最後に第1プラズマ処理工程およびその後の第2プラズマ処理工程を行ってもよく、研削工程で、溝における最後の第1プラズマ処理工程で形成された第1領域に達するまで基板の研削を行ってもよい。この場合、最後の第2プラズマ処理工程で形成された第2領域は、研削工程における予備領域として機能する。すなわち、溝の一部において、最後の第1プラズマ処理工程で形成された第1領域に達するまで研削が行えない場合でも、当該第2領域に達するまでは研削を行うことができる。よって、基板を複数の素子チップに容易に分割することができる。
【0019】
なお、本明細書では、溝の全体において第1領域に達するまで研削が行うことができない場合であっても、溝の大部分(例えば、溝の全面積の85%以上)において第1領域に達するまで研削が行われるのであれば、溝の第1領域に達するまで研削が行われるものとして扱う。
【0020】
溝形成工程で、最後に第1プラズマ処理工程を行ってもよく、研削工程で、溝における最後の第1プラズマ処理工程で形成された第1領域に達するまで基板の研削を行ってもよい。この場合、最後の第1プラズマ処理工程よりも前の第2プラズマ処理工程により第2領域が形成される。この第2領域は、サイドエッチングが生じにくい第2プラズマ処理工程で形成されるため、溝の深さ方向に長くすることの弊害が少ない。第2領域の長さを調節することで、アスペクト比が高い溝(例えば、アスペクト比が20以上の溝)を容易に形成できる。
【0021】
なお、本明細書で、アスペクト比とは、溝形成工程で形成される溝の深さDを、当該溝の開口幅Wで除して得られる値(D/W)のことをいう。
【0022】
溝形成工程において、第1プラズマ処理工程と第2プラズマ処理工程を実行する回数は任意に設定可能である。換言すると、溝形成工程において、第1プラズマ処理工程を1回または2回以上実行してもよいし、第2プラズマ処理工程を1回または2回以上実行してもよい。
【0023】
以下では、本開示に係る素子チップの製造方法の一例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する一例の素子チップの製造方法の工程には、上述した工程を適用できる。以下で説明する一例の素子チップの製造方法の工程は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。以下で説明する一例の素子チップの製造方法の工程のうち、本開示に係る素子チップの製造方法に必須ではない工程は省略してもよい。なお、以下で示す図は模式的なものであり、実際の部材の形状や数を正確に反映するものではない。
【0024】
《実施形態1》
図1に示すように、素子チップの製造方法は、準備工程と、溝形成工程と、マスク除去工程と、貼着工程と、研削工程とを備える。
【0025】
(準備工程)
準備工程では、基板1を準備する(
図1の最も左側)。基板1は、第1主面1Xおよび第1主面1Xとは反対側の第2主面1Yを有する。基板1は、複数の素子領域EAおよび当該素子領域EAを画定する分割領域DAを備える。
【0026】
基板1は、半導体層11と、半導体層11の第1主面1X側に積層されたデバイス層12とを備える。半導体層11を構成する半導体としては、例えば、シリコン(Si)、ガリウム砒素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)などが挙げられる。デバイス層12は、各素子領域EAに形成されている。
【0027】
各素子領域EAにおいて、デバイス層12上には、マスクMが形成されている。マスクMとしては、レジスト、SiO2膜、窒化シリコン膜、金属薄膜などを用いることができる。マスクMは、その構成材料の種類に応じて公知の方法で形成される。
【0028】
(溝形成工程)
溝形成工程では、基板1の第1主面1X側から分割領域DAに溝13を形成する(
図1の左から2番目)。これらの溝13は、第1表面粗さの側面からなる第1領域13aと、第2表面粗さの側面からなる第2領域13bとを有する。ここで、第2表面粗さは、第1表面粗さよりも大きい。
【0029】
溝形成工程は、第1領域13aを形成する第1プラズマ処理工程と、第2領域13bを形成する第2プラズマ処理工程とを有する。本実施形態の溝形成工程は、第1プラズマ処理工程から開始すると共に、第1プラズマ処理工程と第2プラズマ処理工程を1度ずつ行う。これにより、第1主面1X側から順に、第1領域13aと第2領域13bを1つずつ含む溝13が基板1に形成される。
【0030】
本実施形態では、アスペクト比が比較的小さい溝13が形成される。例えば、溝13の開口幅Wは、5~6μmであり、溝13の深さDは、45~50μmであってもよい。また、例えば、溝13の深さ方向において、第1領域13aの長さは、30~35μmであってもよく、第2領域13bの長さは、10~20μmであってもよい。
【0031】
-プラズマ処理装置-
ここで、
図2を参照しながら、各プラズマ処理工程に使用されるプラズマ処理装置100を具体的に説明する。しかし、プラズマ処理装置は、これに限定されるものではない。
【0032】
プラズマ処理装置100は、ステージ111を備える。基板1は、これを支持する搬送キャリア10と共に、第1主面1Xが上方を向くように、ステージ111に載置される。ここで、搬送キャリア10は、基板1を第2主面1Y側から保持する保持シート3と、保持シート3が固定されるフレーム2とからなる。ステージ111は、搬送キャリア10の全体を載置できる程度の大きさを備える。
【0033】
ステージ111の上方には、フレーム2および保持シート3の少なくとも一部を覆うと共に、基板1の少なくとも一部を露出させる窓部124Wを有するカバー124が配置されている。カバー124には、フレーム2がステージ111に載置されている状態のとき、フレーム2を押圧するための押さえ部材107が配置されている。
【0034】
ステージ111およびカバー124は、真空チャンバ103内に配置されている。真空チャンバ103は、上部が開口した概ね円筒状である。当該上部開口は、蓋体である誘電体部材108により閉鎖されている。真空チャンバ103を構成する材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、表面をアルマイト加工したアルミニウムなどが例示できる。誘電体部材108を構成する材料としては、酸化イットリウム(Y2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al2O3)、石英(SiO2)などの誘電体材料が例示できる。誘電体部材108の上方には、上部電極としての第1電極109が配置されている。第1電極109は、第1高周波電源110Aと電気的に接続されている。ステージ111は、真空チャンバ103内の底部側に配置される。
【0035】
真空チャンバ103には、ガス導入口103aが設けられている。ガス導入口103aには、プラズマ発生用ガスの供給源であるプロセスガス源112およびアッシングガス源113が、それぞれ配管によって接続されている。また、真空チャンバ103には、排気口103bが設けられている。排気口103bには、真空チャンバ103内のガスを排気して減圧するための真空ポンプを含む減圧機構114が接続されている。真空チャンバ103内にプロセスガスが供給された状態で、第1電極109に第1高周波電源110Aから高周波電力が供給されることにより、真空チャンバ103内にプラズマが発生する。
【0036】
ステージ111は、それぞれ略円形の電極層115と、金属層116と、電極層115および金属層116を支持する基台117と、電極層115、金属層116、および基台117を取り囲む外周部118とを備える。外周部118は、導電性および耐エッチング性を有する金属により構成されていて、電極層115、金属層116、および基台117をプラズマから保護する。外周部118の上面には、円環状の外周リング129が配置されている。外周リング129は、外周部118の上面をプラズマから保護する役割をもつ。電極層115および外周リング129は、例えば、上記の誘電体材料により構成される。
【0037】
電極層115の内部には、静電吸着(Electrostatic Chuck)用電極(以下、ESC電極119という。)と、第2高周波電源110Bに電気的に接続された第2電極120とが配置されている。ESC電極119には、直流電源126が電気的に接続されている。ESC電極119および直流電源126は、静電吸着機構を構成している。静電吸着機構によって、保持シート3はステージ111に押し付けられて固定される。以下、保持シート3をステージ111に固定する固定機構として、静電吸着機構を備える場合を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。保持シート3のステージ111への固定は、図示しないクランプによって行われてもよい。
【0038】
金属層116は、例えば、表面にアルマイト被覆を形成したアルミニウムなどにより構成される。金属層116内には、冷媒流路127が形成されている。冷媒流路127を流れる冷媒により、ステージ111が冷却される。ステージ111が冷却されることにより、ステージ111に搭載された保持シート3が冷却されると共に、ステージ111にその一部が接触しているカバー124も冷却される。これにより、基板1や保持シート3が、プラズマ処理中に過熱されることによって損傷することが抑制される。冷媒流路127内の冷媒は、冷媒循環装置125により循環される。
【0039】
ステージ111の外周付近には、ステージ111を貫通する複数の支持部122が配置されている。支持部122は、搬送キャリア10のフレーム2を支持する。支持部122は、昇降機構123Aにより昇降駆動される。搬送キャリア10が真空チャンバ103内に搬送されると、所定の位置まで上昇した支持部122に受け渡される。支持部122の上端面がステージ111と同じレベル以下にまで降下することにより、搬送キャリア10は、ステージ111の所定の位置に載置される。
【0040】
カバー124の端部には、カバー124を昇降可能にする複数の昇降ロッド121が連結している。昇降ロッド121は、昇降機構123Bにより昇降駆動される。昇降機構123Bによるカバー124の昇降の動作は、昇降機構123Aとは独立して行うことができる。
【0041】
制御装置128は、第1高周波電源110A、第2高周波電源110B、プロセスガス源112、アッシングガス源113、減圧機構114、冷媒循環装置125、昇降機構123A、昇降機構123B、および静電吸着機構を含むプラズマ処理装置100の構成要素の動作を制御する。制御装置128は、演算装置と、演算装置により実行可能なプログラムが格納された記憶装置とを含む。
【0042】
-第1プラズマ処理工程-
第1プラズマ処理工程では、基板1を連続的にエッチングすることで基板1を掘り進んで第1領域13aを形成する。
【0043】
第1プラズマ処理工程は、例えば、原料ガスとしてSF6を90sccm、O2を60sccm、Heを850sccmで供給しながら、真空チャンバ103内の圧力を35Paに調整し、第1高周波電源110Aから第1電極109への印加電力を3600W、第2高周波電源110Bから第2電極120への印加電力を200Wとして、処理する条件で行われる。このときエッチングにより形成される第1領域13aは、スキャロップの無い実質的に平滑な側壁となる。
【0044】
-第2プラズマ処理工程-
第2プラズマ処理工程では、基板1をエッチングするエッチングステップと、保護膜を堆積させる堆積ステップと、保護膜の少なくとも一部(例えば、保護膜のうち溝13の底部に堆積された部分)を除去する保護膜除去ステップとを繰り返すことにより基板1を掘り進んで第2領域13bを形成する。
【0045】
エッチングステップは、基板1を比較的等方的にエッチングすることのできる条件で行われる。エッチングステップは、例えば、原料ガスとしてSF6を200~400sccmで供給しながら、真空チャンバ103内の圧力を5~25Paに調整し、第1高周波電源110Aから第1電極109への印加電力を1500~5000W、第2高周波電源110Bから第2電極120への印加電力を20~500W、エッチング時間を8~15秒として、処理する条件で行われる。
【0046】
堆積ステップは、例えば、原料ガスとしてC4F8を150~250sccmで供給しながら、真空チャンバ103内の圧力を15~25Paに調整し、第1高周波電源110Aから第1電極109への印加電力を1500~5000W、第2高周波電源110Bから第2電極120への印加電力を0~50W、堆積時間を2~10秒として、処理する条件で行われる。
【0047】
保護膜除去ステップは、第2電極120への印加電力を、エッチングステップのそれよりも大きくする。これにより、異方性エッチングが可能になる。保護膜除去ステップは、例えば、原料ガスとしてSF6を200~400sccmで供給しながら、真空チャンバ103内の圧力を5~25Paに調整し、第1高周波電源110Aから第1電極109への印加電力を1500~5000W、第2高周波電源110Bから第2電極120への印加電力を80~800W、処理時間を2~5秒として、処理する条件で行われる。
【0048】
このように、第2プラズマ処理工程では、エッチングステップと、堆積ステップと、保護膜除去ステップとを繰り返すことで、深さ方向の深掘りを行っている。エッチングステップで用いられるエッチング条件では基板1が比較的等方的にエッチングされやすいため、エッチングステップによって基板1を深さ方向に掘り進む際に、水平方向(深さ方向と直交する方向)にも基板1のエッチングが進む。したがって、エッチングステップと堆積ステップと保護膜除去ステップとを繰り返すと、溝13の側壁には、必然的に横筋状の凹凸(スキャロップ)が形成される。このように、第2プラズマ処理工程により形成される第2領域13bは、スキャロップを有する側壁となる。
【0049】
(マスク除去工程)
マスク除去工程では、公知の方法によりマスクMを除去する(
図1の左から3番目)。例えば、マスクMがレジストマスクである場合、アッシングによりマスクMを除去してもよい。
【0050】
(貼着工程)
貼着工程では、基板1の第1主面1Xに保持テープTを貼着する(
図1の左から4番目)。保持テープTの面積は、基板1の面積と同じか、それよりも大きい。保持テープTとしては、公知のものを使用することができる。
【0051】
(研削工程)
研削工程では、基板1を第2主面1Y側から研削することにより基板1を複数の素子チップ20に分割する(
図1の左から5番目)。研削工程では、溝13の第1領域13aに達するまで基板1の研削を行う。研削工程には、例えば、研削ホイールを備えた公知の研削装置を使用することができる。
【0052】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態は、溝形成工程などの構成が上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0053】
図3に示すように、本実施形態の溝形成工程(
図3の左から2番目)は、第1プラズマ処理工程から開始すると共に、第1プラズマ処理工程と第2プラズマ処理工程と第1プラズマ処理工程を、この順に計3回行う。これにより、第1主面1X側から順に、第1領域13aと第2領域13bと第1領域13aを、この順に計3つ含む溝13が基板1に形成される。
【0054】
本実施形態では、アスペクト比が比較的大きい溝13が形成される。例えば、溝13の開口幅Wは、5~6μmであり、溝13の深さDは、150μm以上であってもよい。また、例えば、溝13の深さ方向において、各第1領域13aの長さは、10~15μmであってもよく、第2領域13bの長さは、120~130μmであってもよい。
本実施形態の研削工程(
図3の左から5番目)では、2度目の第1プラズマ処理工程、すなわち最後の第1プラズマ処理工程で形成された第1領域13aに達するまで基板1の研削を行う。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示は、素子チップの製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1:基板
1X:第1主面
1Y:第2主面
11:半導体層
12:デバイス層
13:溝
13a:第1領域
13b:第2領域
10:搬送キャリア
2:フレーム
3:保持シート
20:素子チップ
100:プラズマ処理装置
103:真空チャンバ
103a:ガス導入口
103b:排気口
107:押さえ部材
108:誘電体部材
109:第1電極
110A:第1高周波電源
110B:第2高周波電源
111:ステージ
112:プロセスガス源
113:アッシングガス源
114:減圧機構
115:電極層
116:金属層
117:基台
118:外周部
119:ESC電極
120:第2電極
121:昇降ロッド
122:支持部
123A,123B:昇降機構
124:カバー
124W:窓部
125:冷媒循環装置
126:直流電源
127:冷媒流路
128:制御装置
129:外周リング
DA:分割領域
EA:素子領域
M:マスク
T:保持テープ