IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アプリコットの特許一覧

<>
  • 特許-フレアガス燃焼処理システム 図1
  • 特許-フレアガス燃焼処理システム 図2
  • 特許-フレアガス燃焼処理システム 図3
  • 特許-フレアガス燃焼処理システム 図4
  • 特許-フレアガス燃焼処理システム 図5
  • 特許-フレアガス燃焼処理システム 図6
  • 特許-フレアガス燃焼処理システム 図7
  • 特許-フレアガス燃焼処理システム 図8
  • 特許-フレアガス燃焼処理システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】フレアガス燃焼処理システム
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/08 20060101AFI20241011BHJP
   F23G 5/02 20060101ALI20241011BHJP
   B01D 53/58 20060101ALI20241011BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20241011BHJP
   B01D 53/72 20060101ALI20241011BHJP
   B01D 53/76 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
F23G7/08 Z
F23G5/02 A
B01D53/58 ZAB
B01D53/78
B01D53/72
B01D53/76
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022204396
(22)【出願日】2022-12-21
(65)【公開番号】P2024089190
(43)【公開日】2024-07-03
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】521284750
【氏名又は名称】株式会社アプリコット
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 侑
(72)【発明者】
【氏名】福島 寛
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0314755(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0220850(US,A1)
【文献】特開2012-245448(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101564624(CN,A)
【文献】特公昭51-027891(JP,B2)
【文献】実公昭53-004052(JP,Y2)
【文献】中国特許出願公開第101634454(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0203933(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 7/08
F23G 5/02
B01D 53/58
B01D 53/78
B01D 53/72
B01D 53/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレアガスを燃焼処理するフレアガス燃焼処理システムであって、
当該システムは、水封の構成を有し、当該水封の構成を用いて前記フレアガス中の水溶性ガスを除去するガス吸収塔、VDU及びEGFと、当該システムの全体を制御する情報処理装置を備え、
前記ガス吸収塔は、フレアガスを供給するフレアガスラインの途中に設けられ、
前記VDU及び前記EGFには、前記フレアガスラインの一端が夫々接続され、
前記VDUに向かうフレアガスラインの途中及び前記EGFに向かうフレアガスラインの途中には、フレアガスの流れを開放、遮断、及び流量を制御する供給遮断装置が夫々設けられ、
前記ガス吸収塔は、前記フレアガスラインから供給されたフレアガス中の水溶性ガスを除去処理し、除去処理後のフレアガスを前記VDU又は前記EGFに向けて排出し、
フレアガス中の可燃分濃度が低く、自燃できない前記処理後のフレアガスについては、前記VDUで燃焼処理し、
前記VDUで前記除去処理後のフレアガスの燃焼処理を行う際には、前記情報処理装置は、前記EGFに係る前記供給遮断装置を操作し、前記EGFに向かう前記フレアガスラインを閉鎖させ、
前記EGFで前記除去処理後のフレアガスの燃焼処理を行う際には、前記情報処理装置は、前記VDUに係る前記供給遮断装置を操作し、前記VDUに向かう前記フレアガスラインを閉鎖または流量を制御させることを特徴とする、フレアガス燃焼処理システム。
【請求項2】
フレアガスを燃焼処理するフレアガス燃焼処理システムであって、
当該システムは、水封の構成を有し、当該水封の構成を用いて前記フレアガス中の水溶性ガスを除去するガス吸収塔、VDU及びEGFと、当該システムの全体を制御する情報処理装置を備え、
前記ガス吸収塔は、フレアガスを供給するフレアガスラインの途中に設けられ、
前記VDU及び前記EGFには、前記フレアガスラインの一端が夫々接続され、
前記VDUに向かうフレアガスラインの途中及び前記EGFに向かうフレアガスラインの途中には、フレアガスの流れを開放、遮断、及び流量を制御する供給遮断装置が夫々設けられ、
前記ガス吸収塔は、前記フレアガスラインから供給されたフレアガス中の水溶性ガスを除去処理し、除去処理後のフレアガスを前記VDU又は前記EGFに向けて排出し、
前記VDUで前記除去処理後のフレアガスの燃焼処理を行う際には、前記情報処理装置は、前記EGFに係る前記供給遮断装置を操作し、前記EGFに向かう前記フレアガスラインを閉鎖させ、
前記EGFで前記除去処理後のフレアガスの燃焼処理を行う際には、前記情報処理装置は、前記VDUに係る前記供給遮断装置を操作し、前記VDUに向かう前記フレアガスラインを閉鎖または流量を制御させ、
前記情報処理装置は、VDU内の温度が予め設定された温度以上の際には、前記VDUに係る前記供給遮断装置を操作し、前記VDUに向かう前記フレアガスラインを閉鎖または流量を制御させると共に、前記EGFに係る前記供給遮断装置を操作して、前記EGFに向かうフレアガスラインを開放させることを特徴とする、フレアガス燃焼処理システム。
【請求項3】
フレアガスを燃焼処理するフレアガス燃焼処理システムであって、
当該システムは、水封の構成を有し、当該水封の構成を用いて前記フレアガス中の水溶性ガスを除去するガス吸収塔、VDU及びEGFと、当該システムの全体を制御する情報処理装置を備え、
前記ガス吸収塔は、フレアガスを供給するフレアガスラインの途中に設けられ、
前記VDU及び前記EGFには、前記フレアガスラインの一端が夫々接続され、
前記VDUに向かうフレアガスラインの途中及び前記EGFに向かうフレアガスラインの途中には、フレアガスの流れを開放、遮断、及び流量を制御する供給遮断装置が夫々設けられ、
前記ガス吸収塔は、前記フレアガスラインから供給されたフレアガス中の水溶性ガスを除去処理し、除去処理後のフレアガスを前記VDU又は前記EGFに向けて排出し、
前記VDUで前記除去処理後のフレアガスの燃焼処理を行う際には、前記情報処理装置は、前記EGFに係る前記供給遮断装置を操作し、前記EGFに向かう前記フレアガスラインを閉鎖させ、
前記EGFで前記除去処理後のフレアガスの燃焼処理を行う際には、前記情報処理装置は、前記VDUに係る前記供給遮断装置を操作し、前記VDUに向かう前記フレアガスラインを閉鎖または流量を制御させ、
フレアガスの流量低下に伴い、予め設定されたフレアガス圧力の値以下になった際には、前記情報処理装置は、前記EGFに係る前記供給遮断装置を操作し、前記EGFに向かう前記フレアガスラインを閉鎖させると共に、前記VDUに係る前記供給遮断装置を操作して、前記VDUに向かうフレアガスラインを開放または流量を制御させることを特徴とする、フレアガス燃焼処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製油所・製鉄プラント・化学プラント・ガス貯蔵施設から発生する、フレアガス(「炭化水素ガス」、「ハイドロカーボン」とも言う)を燃焼処理するフレアガス燃焼処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製油所・製鉄プラント・化学プラント・ガス貯蔵施設では、メタン等のフレアガスが発生する。フレアガスは、可燃性で毒性があり、臭気もあるため、そのまま大気中に排出するのではなく、燃焼させ、ある程度無害化された状態で排出する必要がある。
【0003】
ところで、近年、環境汚染を防止するという風潮のもと、水溶性ガス(例えば、NH3ガス)を大気に放出する際には、厳しい基準(ppmオーダ)が設けられており、その基準に合致しない水溶性ガスを大気に放出することができない。
【0004】
この厳しい排出基準に合致させるため、排気ガスを大気に放出する際にも、排気ガスに含まれる数%以下の水溶性ガスを除去するガス吸収塔の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-326246号公報
【0006】
例えば、特許文献1では、水銀、酸化セレン、酸化砒素が含まれている排ガスを洗浄塔に導いて水洗し、吸収塔でこれらの水溶性ガスを水に吸収させて分離する水スクラバ工程が開示されている。
【0007】
このようなガス吸収塔では、水溶性ガスを吸収する吸収液として、HO液のみならず、酸性の吸収液も使用することができる。水溶性ガスを吸収済みの吸収液は、排出基準に合わせた排水として、河川あるいは海に排水処理される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、製油所等から発生するフレアガスにも、水溶性ガスが含まれているため、水溶性ガスを除去する必要がある。しかしながら、フレアガス中に含まれる水溶性ガスを除去した上で、フレアガスを燃焼処理する技術は存在しなかった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点に対処するため、フレアガス中の水溶性ガスを除去することができ、水溶性ガスの含有割合が0~100%のフレアガスに対応可能なフレアガス燃焼処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
フレアガスを燃焼処理するフレアガス燃焼処理システムであって、
当該システムは、水封の構成を有し、当該水封の構成を用いて前記フレアガス中の水溶性ガスを除去するガス吸収塔、VDU及びEGFと、当該システムの全体を制御する情報処理装置を備え、
前記ガス吸収塔は、フレアガスを供給するフレアガスラインの途中に設けられ、
前記VDU及び前記EGFには、前記フレアガスラインの一端が夫々接続され、
前記VDUに向かうフレアガスラインの途中及び前記EGFに向かうフレアガスラインの途中には、フレアガスの流れを開放、遮断、及び流量を制御する供給遮断装置が夫々設けられ、
前記ガス吸収塔は、前記フレアガスラインから供給されたフレアガス中の水溶性ガスを除去処理し、除去処理後のフレアガスを前記VDU又は前記EGFに向けて排出し、
フレアガス中の可燃分濃度が低く、自燃できない前記処理後のフレアガスについては、前記VDUで燃焼処理し、
前記VDUで前記除去処理後のフレアガスの燃焼処理を行う際には、前記情報処理装置は、前記EGFに係る前記供給遮断装置を操作し、前記EGFに向かう前記フレアガスラインを閉鎖させ、
前記EGFで前記除去処理後のフレアガスの燃焼処理を行う際には、前記情報処理装置は、前記VDUに係る前記供給遮断装置を操作し、前記VDUに向かう前記フレアガスラインを閉鎖または流量を制御させる、フレアガス燃焼処理システムとした。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、
フレアガスを燃焼処理するフレアガス燃焼処理システムであって、
当該システムは、水封の構成を有し、当該水封の構成を用いて前記フレアガス中の水溶性ガスを除去するガス吸収塔、VDU及びEGFと、当該システムの全体を制御する情報処理装置を備え、
前記ガス吸収塔は、フレアガスを供給するフレアガスラインの途中に設けられ、
前記VDU及び前記EGFには、前記フレアガスラインの一端が夫々接続され、
前記VDUに向かうフレアガスラインの途中及び前記EGFに向かうフレアガスラインの途中には、フレアガスの流れを開放、遮断、及び流量を制御する供給遮断装置が夫々設けられ、
前記ガス吸収塔は、前記フレアガスラインから供給されたフレアガス中の水溶性ガスを除去処理し、除去処理後のフレアガスを前記VDU又は前記EGFに向けて排出し、
前記VDUで前記除去処理後のフレアガスの燃焼処理を行う際には、前記情報処理装置は、前記EGFに係る前記供給遮断装置を操作し、前記EGFに向かう前記フレアガスラインを閉鎖させ、
前記EGFで前記除去処理後のフレアガスの燃焼処理を行う際には、前記情報処理装置は、前記VDUに係る前記供給遮断装置を操作し、前記VDUに向かう前記フレアガスラインを閉鎖または流量を制御させ、
前記情報処理装置は、VDU内の温度が予め設定された温度以上の際には、前記VDUに係る前記供給遮断装置を操作し、前記VDUに向かう前記フレアガスラインを閉鎖または流量を制御させると共に、前記EGFに係る前記供給遮断装置を操作して、前記EGFに向かうフレアガスラインを開放させる、フレアガス燃焼処理システムとした。
【0012】
また、請求項3に係る発明は、
フレアガスを燃焼処理するフレアガス燃焼処理システムであって、
当該システムは、水封の構成を有し、当該水封の構成を用いて前記フレアガス中の水溶性ガスを除去するガス吸収塔、VDU及びEGFと、当該システムの全体を制御する情報処理装置を備え、
前記ガス吸収塔は、フレアガスを供給するフレアガスラインの途中に設けられ、
前記VDU及び前記EGFには、前記フレアガスラインの一端が夫々接続され、
前記VDUに向かうフレアガスラインの途中及び前記EGFに向かうフレアガスラインの途中には、フレアガスの流れを開放、遮断、及び流量を制御する供給遮断装置が夫々設けられ、
前記ガス吸収塔は、前記フレアガスラインから供給されたフレアガス中の水溶性ガスを除去処理し、除去処理後のフレアガスを前記VDU又は前記EGFに向けて排出し、
前記VDUで前記除去処理後のフレアガスの燃焼処理を行う際には、前記情報処理装置は、前記EGFに係る前記供給遮断装置を操作し、前記EGFに向かう前記フレアガスラインを閉鎖させ、
前記EGFで前記除去処理後のフレアガスの燃焼処理を行う際には、前記情報処理装置は、前記VDUに係る前記供給遮断装置を操作し、前記VDUに向かう前記フレアガスラインを閉鎖または流量を制御させ、
フレアガスの流量低下に伴い、予め設定されたフレアガス圧力の値以下になった際には、前記情報処理装置は、前記EGFに係る前記供給遮断装置を操作し、前記EGFに向かう前記フレアガスラインを閉鎖させると共に、前記VDUに係る前記供給遮断装置を操作して、前記VDUに向かうフレアガスラインを開放または流量を制御させる、フレアガス燃焼処理システムとした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、フレアガスの燃焼処理を行う前に、フレアガス中の水溶性ガス分を除去することにより、VDU等を用いて行うフレアガスの燃焼量を削減することができる。また、水溶性ガスを燃焼した際に生成される。環境汚染物質を削減することができる。
【0017】
更に、本発明のように、VDU等を用いてフレアガスの燃焼処理を行う前に、フレアガスから水溶性ガスを除去するようにガス吸収塔が設けられている構成の場合、運転操作、あるいは保守作業ミス等により、フレアガスラインの配管中に火災が発生した際に、火災がプラント側へ遡上しようとしても、水封されているガス吸収塔によって、プラントまで遡上することができず、火災を遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態例1のフレアガス燃焼処理システムの概略構成図である。
図2】本発明の実施の形態例1のフレアガス燃焼処理システムに用いるガス吸収塔の説明図である。
図3】本発明の実施の形態例1のフレアガス燃焼処理システムに用いるガス吸収塔の概略構成図である。
図4】本発明の実施の形態例1のフレアガス燃焼処理システムに用いるガス吸収塔の概略構成図である。
図5】本発明の実施の形態例1のフレアガス燃焼処理システムにおいて、VDUを使用した場合の燃料の流れ及びフレアガスの流れを示す説明図である。
図6】本発明の実施の形態例1のフレアガス燃焼処理システムにおいてEGFを使用した場合であって、第2段階の状態のフレアガスの流れならびに燃料の流れを示す説明図である。
図7】本発明の実施の形態例1のフレアガス燃焼処理システムにおいてEGFを使用した場合であって、第3段階の状態のフレアガスの流れならびに燃料の流れを示す説明図である。
図8】本発明の実施の形態例1のフレアガス燃焼処理システムのフレアガス増加時の処理の流れを示す流れ図である。
図9】本発明の実施の形態例1のフレアガス燃焼処理システムのフレアガス減少時の処理の流れを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態例1)
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態例1を詳細に説明する。ただし、本実施の形態例に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
<フレアガス燃焼処理システムの構成>
図1は、本実施の形態例1に係るフレアガス燃焼処理システムの概略構成図である。フレアガス燃焼処理システムは、ガス吸収塔9とVDU1とEGF3を有している。ガス吸収塔9は、筒体90を有しており、円柱形状である。また、VDU1は、筒体20を有しており、円柱形状である。また、EGF3は、筒体30を有しており、円柱形状である。なお、本実施の形態例1では、ガス吸収塔9、VDU1及びEGF3について円柱形状の構成を示したが、これは例示であり、例えば、角柱形状でも良く、形状が限定されるわけではない。VDU1及びEGF3は、供給されたフレアガスを燃焼させる炉(≒燃焼室)の役割を果たす。そのため、以下では、「VDU1」は、燃焼処理方法としてVDUを実行する炉を指し、「EGF3」は、燃焼処理方法としてEGFを実行する炉を指す。なお、VDU1及びEGF3は、フレアスタックとも呼ばれる。
【0021】
<ガス吸収塔9の構成>
フレアガスライン40は、可燃ガス貯留装置80から伸びて、ガス吸収塔9を経由し、VDU1、あるいはEGF3に到達する構成となっている。ガス吸収塔9は、水封ドラムの構成を有し、この水封ドラムの構成を用いて、フレアガス中の水溶性ガス分を吸収し除去する。そして、水溶性ガス分が除去されたフレアガスを、VDU1、あるいはEGF3に向けて、排出する。即ち、ガス吸収塔9は、VDU1、あるいはEGF3でフレアガスを燃焼させる前に、当該フレアガス中から水溶性ガス分を吸収し除去するという燃焼処理前の処理を行う役割を果たす。なお、ガス吸収塔9は、水溶性ガスの含有割合が0~100%のフレアガスに対応可能である。
【0022】
このように、フレアガスの燃焼処理を行う前に、フレアガス中の水溶性ガス分を除去することにより、VDU1等でフレアガスを燃焼する量を削減することができる。また、水溶性ガスを燃焼した際に生成される。環境汚染物質を削減することができる。
【0023】
更に、VDU1等を用いてフレアガスの燃焼処理を行う前に、フレアガスから水溶性ガス分を除去するようにガス吸収塔9が設けられている構成の場合、運転操作、あるいは保守作業ミス等により、フレアガスラインの配管中に火災が発生した際に、火災がプラント側へ遡上しようとしても、水封されているガス吸収塔9によって、プラントまで遡上することができず、火災を遮断することができる。
【0024】
次に、ガス吸収塔9について、図2を用いて、詳しく説明する。ガス吸収塔9の構成は、水封の構成を有するものであれば良いが、具体的な方式は、例えば、棚段式、あるいはラシヒリング充填式である。そして、処理ガス(=フレアガス)の流入方式は、水溶性ガスを吸収する吸収液の流れに対し、対抗する形で流入させる方式、あるいは、吸収液の流れに対し、クロスフローを構成する(=横切る)形で流入させる方式である。吸収液の流れは、全量をガス吸収塔9から排出する非循環流の方式か、あるいは、一部を連続して排出すると共に、排出量と同量を連続して給水する循環流の方式である。また、吸収液と処理ガスの比(=液ガス比)は、「2~10kg吸収液(HO)/kg水溶性ガス」である。更に、フレアガス中に含まれる水溶性ガスの除去効率は、50~90%である。なお、吸収液は、例えば、HO液、あるいは酸性の吸収液である。
【0025】
以上の各方式、液ガス比の組み合わせは、フレアガスの個々の処理計画に合わせて随意に選択、組み合わせ可能である。
【0026】
<棚段式のガス吸収塔9の構成>
次に、棚段式のガス吸収塔9の構成について、図3を用いて説明する。円柱形のガス吸収塔9内に略水平に設置された複数の棚段91が設けられている。各棚段91は、ガス吸収塔9の上部側面に設けられた吸収液の入口92から流入した吸収液の流路となる。棚段91は、流れる吸収液の深さを一定に(25mm~100mm)保ち、かつ、一定量の吸収液しか保持できない。そのため、保持できる吸収液の量を超えると、吸収液は当該棚段91から溢れて、下段の棚段91に流下する。ガス吸収塔9の底部93には、棚段91から流下した一定量の吸収液が溜まっている。そして、溜まっている吸収液が一定量を超えると、吸収液の出口94から排出される。
【0027】
また、各棚段91の底部には、吸収液は流下しないが(少しは、吸収液は流下しても良い)、ガスは通過できる大きさの孔が多数設けられている(図示省略)。即ち、各棚段91の底部は、気体であるフレアガスを、液体である吸収液に吸収させるバブリングエリアになっている。そのため、ガス吸収塔9の下部側面に設けられたフレアガスの入口95から流入し、ガス吸収塔9を上昇するフレアガスは、各棚段91の孔から棚段91を通り抜ける。上述したように、各棚段91には、吸収液が流れているため、フレアガスが各棚段91を通り抜ける際に、吸収液を通り抜けることとなる。そして、吸収液を通り抜ける際には、フレアガス中の水溶性ガスは、吸収液に吸収されて、分離・除去される。その結果、ガス吸収塔9の天井に設けられたフレアガスの出口96から排出されるフレアガスからは、当該フレアガスに含まれていた水溶性ガスの一部、あるいは全部が除去されている。なお、上述したように、各棚段91には、吸収液が連続的に流れ、一定の深さの水の膜がはられていることになるため、万が一、フレアガスの火炎が下方から上昇した場合であっても、各棚段91にはられている水の膜によって、火炎は遮断(消炎)される。
【0028】
また、棚段式のガス吸収塔9の場合は、フレアガスの個々の処理計画に合わせて、棚段の断面積、棚段数、棚段の間隔、吸収液流路の断面積が決定される。
【0029】
<ラシヒリング式のガス吸収塔9の構成>
次に、ラシヒリング充填式のガス吸収塔9の構成について、図4を用いて説明する。円柱形のガス吸収塔9内の略中心の位置で垂直に、ラシヒリング(充填物)97が設けられている。ラシヒリング97は、上昇する気体と降下する液体との接触を大きくするために設けられ、充填物が密に充填され構成されているため、降下する液体がラシヒリング97で、一定時間保持され、降下する液体で構成された「水柱」のようになる。ガス吸収塔9の上部側面には、吸収液の入口98が設けられており、その先端部は、ラシヒリング97の真上に配置されている。そのため、吸収液の入口98から流入された吸収液は、吸収液の入口98内を通って、ラシヒリング97の真上に注がれる。ラシヒリング97は、上昇する気体であるフレアガスと降下する液体である吸収液との接触を大きくするため、注がれた吸収液を一定時間保持しながら、下降させる。ラシヒリング97を通過した吸収液は、ガス吸収塔9の底部93に溜まる。そして、溜まっている吸収液が一定量を超えると、吸収液の出口94から排出される。
【0030】
また、円柱形のガス吸収塔9内の一側面の内周と、当該内周に対応するラシヒリング97の一側面の間には、バッフル(仕切り板、邪魔板)99が段違いに設けられている。なお、図4では、ラシヒリング97の上部の一側面にバッフル991、下部の一側面にバッフル992、中部の他側面にバッフル993及び上部の他側面に994と、合計4枚のバッフル99が設けられている。これらのバッフル99が設けられていることにより、ガス吸収塔9内は複数の部屋100~105に区分けされ、上昇する気体の流路や上昇する気体の反転回数が決定される。即ち、ガス吸収塔9の下部側面に設けられたフレアガスの入口95から流入し、ガス吸収塔9内の部屋101に入ったガフレアガスは、バッフル992に阻まれて反転し、ラシヒリング97の吸収液を横切る(クロスする)形で接触し、通過し、部屋102に入る。部屋102に入ったフレアガスは、バッフル993に阻まれて反転し、ラシヒリング97の吸収液を横切る(クロスする)形で接触し、通過し、部屋103に入る。部屋103に入ったフレアガスは、バッフル991に阻まれて反転し、ラシヒリング97の吸収液を横切る(クロスする)形で接触し、通過し、部屋104に入る。部屋104に入ったフレアガスは、バッフル994に阻まれて反転し、ラシヒリング97の吸収液を横切る(クロスする)形で接触し、通過し、部屋105に入る。部屋105に入ったフレアガスは、ガス吸収塔9の天井に設けられたフレアガスの出口96から排出される。なお、フレアガスが吸収液を横切る形で通過する際には、フレアガス中の水溶性ガスは、吸収液に吸収されて、分離・除去される。その結果、ガス吸収塔9の天井に設けられたフレアガスの出口96から排出されるフレアガスからは、当該フレアガスに含まれていた水溶性ガスの一部、あるいは全部が除去されている。
【0031】
また、ラシヒリング充填式のガス吸収塔9の場合は、フレアガスの個々の処理計画に合わせて、ラシヒリング97の断面積と高さが決定される。また、本実施例で示したように、処理ガス(=フレアガス)の流入方式が、吸収液の流れに対し、クロスフローを構成する(=横切る)形で流入させる方式の場合には、フレアガスの個々の処理計画に合わせて、バッフル99数とバッフル99の間隔が決定される。
【0032】
<VDU1の構成>
VDU1には、下方部に空気取入れ孔(図示省略)が複数設けられており、各孔を、空気取入れダンパー21が覆っている。なお、本実施の形態例1では、空気取入れ孔を複数設け、それらの孔を覆うため複数の空気取入れダンパー21を設ける構成を示したが、この構成に限定されるものではない。単数の外気取入れ孔を設け、その孔を空気取入れダンパー21で覆う構成としても良い。
【0033】
また、VDU1には、炉内を高温雰囲気に保つための助燃バーナー23、炉内に供給されたフレアガスを燃焼させるフレアバーナーA-1及びパイロットバーナー14が設けられている。更に、VDU1の上部には、VDU1内の温度を検出する熱電対等の温度検出装置50が設けられている。
【0034】
<EGF3の構成>
EGF3は、筒体30を複数の柱脚32で支える構造である。そのため、柱脚32間の空間を通って、筒体30の下側の空気取入れゾーン31から外気(空気)が、EGF3内に流入する。なお、本実施の形態例1では筒体30を柱脚32によって支持する構造を示したが、筒体30を支持する構造は、この構成に限定されるものではない。筒体30に空気取入れゾーン31が設けられており、当該空気取入れゾーン31から外気(空気)を、EGF3内に流入可能な構成であれば良い。そのため例えば、筒体30は、自身を支える脚部を含めて一体成型されており、筒体30に空気取入れゾーン31として、孔が複数設けられている構成としても良い。
【0035】
また、EGF3には、炉内に供給されたフレアガスを燃焼させるフレアバーナーB-1、C-1、D-1、・・・、N-1及びパイロットバーナー15が設けられている。なお、VDU1に係るパイロットバーナー14及びEGF3に係るパイロットバーナー15は、供給されたフレアガスを瞬時に着火させるため、常時燃料が供給され、燃焼している。
【0036】
VDU1には、燃料を供給するために、燃料ライン10の一端が接続されている。詳しくは、EGF3のパイロットバーナー15に燃料を供給する燃料ライン11から分岐した、VDU1のパイロットバーナー14に燃料を供給する燃料ライン12と、助燃バーナー23に助燃料を供給するVDU用助燃バーナー用燃料ライン13の2つの燃料ラインがVDU1に接続されている。VDU用助燃バーナー用燃料ライン13の途中には、燃料ライン13を流れる助燃料の量を、調節可能な助燃料流量調節装置22が設けられている。
【0037】
また、EGF3にも、燃料を供給するために、燃料ライン10の一端が接続されている。詳しくは、フレアバーナーB-1、C-1、D-1・・・、N-1といった各フレアバーナーに対応して設置された各EGF用パイロットバーナー15にそれぞれ燃料を供給するため、分岐された燃料ライン11がEGF3に接続されている。
【0038】
また、VDU1及びEGF3には、フレアガスの供給を受けるために、フレアガスライン40の一端が夫々接続されている。詳しくは、フレアガスライン40は途中で、VDU1に向かうVDU向フレアガスライン42と、EGF3に向かう複数本のEGF向フレアガスライン43、44、45・・・4×に分岐して、VDU1、あるいはEGF3に接続されている。VDU1に向うフレアガスライン42の途中には、VDU1に向かうフレアガスの流れを開放/遮断、流量を調整(制御)できるVDU/EGFフレアガス切替装置Aが設けられている。なお、VDU/EGFフレアガス切替装置Aは、例えば、供給/遮断弁である。
【0039】
なお、フレアガスライン40の他端は、可燃ガス貯留装置80に接続されている。この可燃ガス貯留装置80には、燃焼処理対象のフレアガスが貯留されており、燃焼処理を行う際に、貯留されているフレアガスを流出させる。また、可燃ガス貯留装置80は、安全確保のため、VDU1及びEGF3等のフレアガス処理設備から、十分離間した位置に設けられている。従って、フレアガスライン40の一端と他端は、例えば、100m以上である。そのため、可燃ガス貯留装置80から流出したフレアガスがVDU1、あるいはEGF3に到達するには、数秒(≒2、3秒)以上かかる。
【0040】
上述したように、EGF3内には、複数のフレアバーナーB-1~N―1が設けられている。そのため、各フレアバーナーに対し、フレアガスを供給するため、フレアガスライン40は、EGF向フレアガスライン43、44、45・・・4×と、EGF3内に設けられた、フレアバーナーのライン数に合わせて、分岐している。分岐した各フレアガスラインの途中には、EGF3に向かうフレアガスの流れを開放/遮断、流量を調整(制御)できるEGFフレアガス供給/遮断装置B、C、D・・・、Nが夫々設けられている。なお、EGFフレアガス供給/遮断装置B~Nは、EGF3に向かうフレアガスの流れを開放/遮断、流量を調整(制御)できる構成であれば良く、例えば、供給/遮断弁である。
【0041】
また、分岐前のフレアガスライン40には、流れるフレアガスの圧力を検出するフレアガス圧力検出装置60が設けられている。フレアガス圧力検出装置60によって検出されたフレアガスの圧力値が、設定値を超えていると、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61が認識した場合は、EGFフレアガス供給/遮断装置B等を操作して、フレアガスライン43等を開放し、EGF3にフレアガスを供給する。同時に、総合情報処理装置(図示省略、後述)は、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61のEGFフレアガス供給/遮断装置B等に対する操作を認識すると、VDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71を通じて、VDU/EGFフレアガス切替装置Aを操作し、VDU1に向かうフレアガスライン42を遮断する。
【0042】
また、分岐前のフレアガスライン40の途中には、安全弁検知装置70が設けられている。安全弁検知装置70は、可燃ガス貯留装置80内圧力が過圧状態になり安全弁が作動する(開く)と、当該作動を検知し、その旨の信号をVDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71に出力する。VDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71は、当該信号を受信すると、VDU/EGFフレアガス切替装置Aを操作して、VDU1に向かうフレアガスライン42を閉鎖し、フレアガスの流れを遮断する。また同時に、総合情報処理装置は、VDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71のVDU/EGFフレアガス切替装置Aに対する操作を認識すると、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61を通じて、EGFフレアガス供給/遮断装置B等を操作して、フレアガスライン43等を開放し、EGF3にフレアガスを供給する。
【0043】
なお、安全弁検知装置70が設けられているフレアガスライン40上の位置は、分岐前で、可燃ガス貯留装置80近傍(通常、安全確保のため、フレアガス処理設備と十分離れている)である為、安全弁が作動すると、可燃ガス貯留装置80から流出したフレアガスが、フレアガスラインヘッダー41に到達した時点で(あるいは、到達する前に)、VDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71を介してVDU/EGFフレアガス切替装置Aを操作し、VDU1に向かうフレアガスライン42を閉鎖できる。同時に、総合情報処理装置及びB~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61を介してEGFフレアガス供給/遮断装置B等を操作してフレアガスライン43等を開放しEGF3にフレアガスを供給できる。以上により、安全弁検知装置70によって安全弁が開いたことを検知した場合等の非常時に、フレアガスがVDU1に到達する前に、フレアガスの供給先を切り替えて、EGF3に流すことができ、便宜である。
【0044】
本フレアガス燃焼処理システムは、サーバ等の情報処理装置を用いて、全体制御される。以下、詳しく説明する。
【0045】
VDU1には、情報処理装置として、助燃料調節演算装置51及び空気取入れダンパー開度調節装置52が設けられている。助燃料調節演算装置51、空気取入れダンパー開度調節装置52及び温度検出装置50は、相互に通信可能に接続されている。また、助燃料調節演算装置51は、助燃料流量調節装置22と相互に通信可能に接続されている。更に、空気取入れダンパー開度調節装置52は、各空気取入れダンパー21と相互に通信可能に接続されている。
【0046】
助燃料調節演算装置51は、温度検出装置50を通じて、VDU1内の温度を検出させ、当該温度に基づき、助燃料流量調節装置22を操作して、助燃バーナー23に供給する助燃料の量を調節する。また、空気取入れダンパー開度調節装置52は、温度検出装置50を通じて、VDU1内の温度を検出させ、当該温度に基づき、各空気取入れダンパー21の開度を調節する。
【0047】
EGF3には、情報処理装置として、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61及びVDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71が設けられている。また、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61は、EGFフレアガス供給/遮断装置B、C、D・・・、Nと、相互に通信可能に接続されている。更に、VDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71は、VDU/EGFフレアガス切替装置Aと、相互に通信可能に接続されている。
【0048】
B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61は、フレアガス圧力検出装置60を通じて、フレアガスラインヘッダー41に流入する前の(=分岐前の)フレアガスライン40を流れるフレアガスの圧力を検出させ、当該圧力に基づき、EGFフレアガス供給/遮断装置B、C、D・・・、Nを操作し、フレアガスライン43等を開放、あるいは遮断、フレアガスライン43等を流れるフレアガスの流量を調整(制御)する。また、VDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71は、総合情報処理装置からの命令に応じて、VDU/EGFフレアガス切替装置Aを操作し、フレアガスライン42を開放、遮断、フレアガスライン42を流れるフレアガスの流量を制御する。
【0049】
助燃料調節演算装置51、空気取入れダンパー開度調節装置52、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61及びVDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71は夫々、総合情報処理装置(図示省略)と、相互に通信可能に接続されている。総合情報処理装置は、助燃料調節演算装置51、空気取入れダンパー開度調節装置52、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61及びVDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71より上位で、本実施の形態例1に係るフレアガス燃焼処理システムを統括して制御する役割を果たすものである。そのため、総合情報処理装置は、助燃料調節演算装置51、空気取入れダンパー開度調節装置52、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61及びVDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71から情報や命令を受信し、また、助燃料調節演算装置51、空気取入れダンパー開度調節装置52、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61及びVDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71に対し、情報や命令を出力する。
【0050】
<フレアガス燃焼処理システムの処理の流れ>
次に、図5図9を用いて、本実施の形態例1に係るフレアガス燃焼処理システムの処理の流れについて説明する。まずは、フレアガス増加時の処理の流れを示す。図5及び図8に示すように、助燃料調節演算装置51は、助燃料流量調節装置22を操作し、燃料ライン10及び13を通じて、VDU1に設けられている助燃バーナー23に助燃料を供給させて、点火・燃焼させる。また、助燃料調節演算装置51は、温度検出装置50を通じて、VDU1内の温度を継続的に検出させて、VDU1を常温から設定温度1まで昇温させるように、助燃料を供給させる(ステップS801)。なお、ここで、「設定温度1」とは、フレアガス中の可燃分が着火する温度(例えば、約400~600℃)を指している。総合情報処理装置は、助燃料調節演算装置51から受信した情報によって、VDU1が設定温度1に達したことを認識すると、VDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71を介して、図5に示すように、フレアガスライン40、フレアガスラインヘッダー41及びフレアガスライン42を通じて、VDU1内にフレアガスを供給させ、フレアバーナーA-1に流入したフレアガスをVDU1用のパイロットバーナー14で点火・燃焼させる。これが第1段階(≒1st stage)である。なお、可燃ガス貯留装置80から供給されるフレアガスは、VDU1、あるいはEGF3に到達する前に、ガス吸収塔9を経由し、水溶性ガスの除去処理がなされる。そのため、VDU1、あるいはEGF3に供給されるフレアガスは、水溶性ガスの除去処理がなされたものである。
【0051】
助燃料調節演算装置51は、フレアガスの供給・燃焼を継続させながら、助燃料流量調節装置22を操作し、フレアバーナーA-1に供給する燃料の量を調節させると共に、温度検出装置50を通じて、VDU1内の温度を継続的に検出させて、VDU1の温度を設定温度1以上に維持する(ステップS802)。例えば、600~800℃に維持する。これを、「設定温度2」とする。この「設定温度2」は、フレアガスが分解燃焼する温度(=未燃分の発生を極小にでき、燃焼筒である筒体20の劣化が生じない最適な燃焼条件となる温度)である。
【0052】
供給されるフレアガス中の可燃分の濃度(=フレアガス中の可燃ガスの量)が増加し、温度検出装置50を通じて、VDU1の温度が設定温度2から上昇したことを認識すると、助燃料調節演算装置51は、助燃料流量調節装置22を操作し、助燃バーナー23に供給する助燃料の量を削減させ、VDU1内の温度を、設定温度2まで低下させる(ステップS803)。
【0053】
助燃料を、助燃バーナー23が燃焼可能な最低限の量まで削減させた状態(=最少流量)で、VDU1の温度が設定温度2から上昇したことを認識すると、空気取入れダンパー開度調節装置52は、各空気取入れダンパー21の開度を調節させ、外部からVDU1内に空気を取り入れ、VDU1内の温度を、設定温度2まで低下させる(ステップS804)。なお、バーナーの特性として、最大流量(最大燃焼量)に対して、何%が最少流量であるというように、通常は、各バーナーによって決まっている。
【0054】
供給されるフレアガス中の可燃分の濃度(=フレアガス中の可燃ガスの量)が増加し、総合情報処理装置は、助燃料調節演算装置51から受信した情報によって、VDU1の温度が設定温度3まで上昇したことを認識すると(例えば、1000℃)、VDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71を通じて、VDU/EGFフレアガス切替装置Aを操作し、完全にフレアガスライン42を閉鎖させ、フレアガスの流れをEGF3へ切り替える(ステップS805)。また、助燃料調節演算装置51は、温度検出装置50を介して、VDU1の温度が設定温度3まで上昇したことを認識すると、VDU用助燃バーナー用燃料ライン13を通じて、助燃バーナー23に供給される助燃料の量を、VDU1の温度上昇に対応して調節する。設定温度3のときには助燃料が最少流量になるように調節し、設定温度1まで低下させる。なお、「設定温度3」は、長期間の運転で燃焼筒である筒体20の劣化が生じない最高温度である。
【0055】
このように、本実施の形態例1に係るフレアガス燃料処理システムは、フレアガス中の可燃分の濃度が低く、自燃できないフレアガスの燃焼処理は、VDU1で行い、助燃料を使用して、VDU1内に高温雰囲気を形成する構成である。それにより、フレアガス中の可燃分濃度の変動を、VDU1内の温度変化として把握することができる。そのため、VDU1内の温度上昇を、フレアガス中の可燃分濃度の上昇とみなして、供給する助燃料の量を減少させることで対応することができる。その結果、VDU1内の温度が過剰に高くなることを防止すると同時に、供給する助燃料の量を常に必要最低限に抑えることができる。
【0056】
そして、供給されるフレアガス中の可燃分の濃度(=フレアガス中の可燃ガスの量)が増加し、助燃料を助燃バーナー23が燃焼可能な最低限の量まで削減させた状態(=最少流量)で、VDU1内の温度が予め設定されている設定温度2まで上昇すると、空気取入れダンパー21を開かせ、VDU1内に外部から空気を取り入れる構成である。このように、VDU1が、炉内の冷却に自然通風(=外部から空気を取り込む、「自然吸引」ともいう)を活用する構成であることも、助燃料の量を必要最低限に抑えることができる要因である。
【0057】
また、本実施の形態例1に係るフレアガス燃焼処理システムにおけるVDU1の主要な役割は、不燃分が100%のフレアガスを含む、自燃できない可燃分濃度のフレアガスの燃焼処理であり、そのために、VDU1は、助燃料を使用して、炉内に高温雰囲気を形成し、フレアガス中の可燃分濃度の変動を、炉内の温度変化として把握できる構成となっており、炉内の冷却は自然通風で行うシステムとなっている。従って、VDU1の大きさは、上述した主要な役割を果たすことができる容量であれば良く、最大フレアガス流量に対応する必要がない。仮に、EGFが設けられていないVDUのみからなるフレアガス燃焼処理システムの場合、「フレアガスの最大流量×最大発熱量」に対応するため、VDU1は、VDU+EGFの大きさが必要となる。
【0058】
ここで、フレアガス燃焼処理システムの処理の流れに話を戻す。総合情報処理装置は、助燃料調節演算装置51から受信した情報によって、VDU1の温度が設定温度3まで上昇したことを認識すると(例えば、1000℃)、VDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71を通じて、VDU/EGFフレアガス切替装置Aを操作して、完全にフレアガスライン42を閉鎖させる(ステップS805)。同時に、総合情報処理装置は、図6に示すように、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61を通じて、EGF3に向かうフレアガスライン43の途中に設けられているEGFフレアガス供給/遮断装置Bを操作してフレアガスライン43を開放し(ステップS806)、フレアガスライン43を通じて、フレアガスをフレアバーナーB-1へ流し、燃焼処理させる。これが第2段階(≒2nd stage)である。このように、ステップS805及びステップS806を、同時に行うことで、VDU1からEGF3への切替時間が短縮する。
【0059】
次に、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61は、フレアガス圧力検出装置60を通じて、フレアガス中の可燃分の増加と、フレアガスの流量増加に伴うフレアガス圧力の上昇(=予め設定されたフレアガス圧力の値以上になった)を認識すると、図7に示すように、フレアガスライン43だけでなく、EGFフレアガス供給/遮断装置Cを操作してフレアガスライン44も開放し(ステップS807)、フレアガスライン44を通じて、フレアガスをフレアバーナーC-1へ流し、燃焼処理する。これが第3段階(≒3rd stage)である。
【0060】
同様に、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61は、フレアガス圧力検出装置60を通じて、フレアガス中の可燃分の更なる増加と、更なるフレアガスの流量増加に伴うフレアガス圧力の更なる上昇を認識すると、フレアガスライン43及び44だけでなく、順次、EGFフレアガス供給/遮断装置Dを操作してフレアガスライン45(第4段階、4th stage、ステップS808)、EGFフレアガス供給/遮断装置Nを操作してフレアガスライン4×も開放していく(第N段階、Nth stage、ステップS809)。
【0061】
次に、フレアガス減少時の処理の流れを示す。B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61は、フレアガス圧力検出装置60を通じて、フレアガスの流量低下に伴うフレアガス圧力の低下(=予め設定されたフレアガス圧力の値以下になった)を認識すると、図9に示すように、EGFフレアガス供給/遮断装置N(第N段階、Nth stage)から順次処理段階(ステージ数)を下げる。つまり、順次、EGFフレアガス供給/遮断装置Nを操作してフレアガスライン4×を閉鎖して、フレアガスの流れを遮断し(第N段階、Nth stage、ステップS901)、EGFフレアガス供給/遮断装置Dを操作してフレアガスライン45を閉鎖して、フレアガスの流れを遮断し(第4段階、4th stage、ステップS902)、EGFフレアガス供給/遮断装置Cを操作してフレアガスライン44を閉鎖して、フレアガスの流れを遮断していく(第3段階、3rd stage、ステップS903)。
【0062】
B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61は、フレアガス圧力検出装置60を通じて、更なるフレアガスの流量低下に伴うフレアガス圧力が更に低下したこと(=予め設定されたフレアガス圧力の値以下になった)を認識すると、EGFフレアガス供給/遮断装置Bを操作しフレアガスライン43を閉鎖して、フレアガスの流れを遮断し(第2段階、2nd stage、ステップS904)、EGF3へのフレアガスの供給を中止させる。
【0063】
同時に、総合情報処理装置は、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61から受信した情報によって、EGF3へのフレアガスの供給が中止されたことを認識すると、VDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71を通じて、VDU/EGFフレアガス切替装置Aを操作してフレアガスライン42を開放し(ステップS905)、フレアガスをVDU1に供給する。このように、ステップS904及びステップS905を、同時に行うことで、EGF3からVDU1への切替時間が短縮する。
【0064】
VDU1には、所定量の助燃料が助燃バーナー23に常時供給され、VDU1内の温度は、上記設定温度1に維持されているため、フレアガスがフレアバーナーA-1に供給されると、燃焼処理される(ステップS906)。
【0065】
このように、本実施の形態例1に係るフレアガス燃焼処理システムでは、VDU1とEGF3を組み合わせることにより、フレアガス中の可燃分濃度が低い場合には、当該フレアガスをVDU1により燃焼処理し、フレアガス中の可燃分濃度が高い場合には、当該フレアガスをEGF3により燃焼処理するため、可燃分濃度に関わらず、フレアガスを経済効率的に燃焼処理することができる。また、VDU1とEGF3間の切り替えは、VDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71等の情報処理装置の命令に基づき、瞬時に行われる。詳しくは、VDU/EGFフレアガス切替装置A及びEGFフレアガス供給/遮断装置B等のフレアガスラインの開放/遮断にかかる時間は、数秒であり、かつ、VDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71等は各装置の動作を同時に開始させる。そのため、異常発生時等に、多量の可燃分を含むフレアガスが突然供給された場合でも、瞬時に、EGF3に切り替えて、安全に燃焼処理を行うことができる。一方、フレアガス中の可燃分濃度が低く、自燃できない場合等には、VDU1に切り替えて、燃焼処理を行うことで、常に必要最低限の助燃料の量で、燃焼処理を行うことができ、便宜である。一般的に、EGF3のみで、フレアガスを燃焼処理した場合、助燃料の費用が年間数億円かかることもあるが、VDU1とEGF3を組み合わせることで、年間数百万円と1割以下の費用に圧縮することができる。
【0066】
また、本実施の形態例1に係るフレアガス燃焼処理システムでは、フレアガスの燃焼処理を行う前に、ガス吸収塔9を経由させ、フレアガス中の水溶性ガス分を除去することにより、VDU1等を用いて行うフレアガスの燃焼量を削減することができる。また、水溶性ガスを燃焼した際に生成される。環境汚染物質を削減することができる。
【0067】
更に、本実施の形態例1のように、VDU1等を用いてフレアガスの燃焼処理を行う前に、フレアガスから水溶性ガスを除去する処理を行うガス吸収塔9が設けられている構成の場合、運転操作、あるいは保守作業ミス等により、フレアガスラインの配管中に火災が発生した際に、火災がプラント側(可燃ガス貯留装置80側)へ遡上しようとしても、水封されているガス吸収塔9によって、プラントまで遡上することができず、火災を遮断することができる。
【0068】
なお、本実施の形態例1に係るフレアガス燃焼処理システムでは、フレアガスライン43、44、45・・・4×と、EGF3に向かうフレアガスラインが複数本設けられている構成を示したが、EGF3に向かうフレアガスラインの数は、EGF3の有する処理段階(ステージ数)と合っていれば良い。同様に、EGF3内に設けられているフレアバーナーの数及びEGFフレアガス供給/遮断装置の数も、EGF3の有する処理段階(ステージ数)と合っていれば、良い。
【0069】
なお、本実施の形態例1に係るフレアガス燃焼システムでは、総合情報処理装置、助燃料調節演算装置51、空気取入れダンパー開度調節装置52、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61及びVDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71といった5つの情報処理装置を夫々独立して設ける構成を示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、助燃料調節演算装置51及び空気取入れダンパー開度調節装置52の機能を有する単一の情報処理装置を用いる構成としても良いし、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61及びVDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71の機能を有する単一の情報処理装置を用いる構成としても良い。または、総合情報処理装置、助燃料調節演算装置51、空気取入れダンパー開度調節装置52、B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置61及びVDU/EGFフレアガス切替操作演算装置71の機能を有する単一の情報処理装置を用いる構成としても良い。
【符号の説明】
【0070】
A:VDU/EGFフレアガス切替装置、A-1:VDUフレアバーナー、B:EGFフレアガス供給遮断装置、C:EGFフレアガス供給遮断装置、D:EGFフレアガス供給遮断装置、N:EGFフレアガス供給遮断装置、
1:VDU、10:燃料ライン、11:EGF用パイロットバーナー用燃料ライン、12:VDU用パイロットバーナー燃料ライン、13:VDU用助燃バーナー用燃料ライン、14:パイロットバーナー、15:パイロットバーナー、20:VDU筒体、21:空気取入れダンパー、22:助燃料流量調節装置、23:助燃バーナー、
3:EGF、30:EGF筒体、31:EGF空気取入れゾーン、
40:フレアガスライン、41:フレアガスラインヘッダー、42:VDU向フレアガスライン、43:EGF向フレアガスライン、44:EGF向フレアガスライン、45:EGF向フレアガスライン、4×:EGF向フレアガスライン、
50:温度検出装置、51:助燃料調節演算装置、52:空気取入れダンパー開度調節装置、60:フレアガス圧力検出装置、61:B~Nフレアガス供給/切替操作演算装置、70:安全弁作動検知装置、71:VDU/EGFフレアガス切替操作演算装置、80:可燃ガス貯留装置 、
9:ガス吸収塔、91:棚段、92:吸収液の入口、93:底部、94:吸収液の出口、95:フレアガスの入口、96:フレアガスの出口、97:ラシヒリング、98:吸収液の入口、99(991~994):バッフル、101~105:部屋

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9