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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】電池および電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/533 20210101AFI20241011BHJP
   H01M 50/545 20210101ALI20241011BHJP
   H01M 50/566 20210101ALI20241011BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20241011BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20241011BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20241011BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20241011BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20241011BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20241011BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241011BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M50/545
H01M50/566
H01M50/184 D
H01M50/186
H01M50/107
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M10/0566
H01M10/052
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023506853
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2022004534
(87)【国際公開番号】W WO2022196172
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2021042584
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】児玉 康伸
(72)【発明者】
【氏名】植田 英之
【審査官】吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/202744(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/017930(WO,A1)
【文献】実開平03-022356(JP,U)
【文献】米国特許第5935731(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50 - 50/598
H01M 50/00 - 50/198
H01M 10/04
H01M 10/052 - 10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状側面部を具備し、一端に開口部を有しかつ他端に底部を有するケースと、
前記ケースに電解液と共に収容され、第1電極および前記第1電極と極性が異なる第2電極を有する電極群と、
前記第1電極に電気的に接続された第1端部および前記第1端部と反対側の第2端部を有し、前記筒状側面部に溶接された第1リードと、
前記開口部を封口するキャップと、
前記開口部と前記キャップとの間に設けられるガスケットと、
を備え、
前記筒状側面部の一部に、ケース内方に突出して前記ガスケットの一部を圧縮する環状の溝部が形成されており、
前記ガスケットは、前記圧縮された部分である圧縮部に連続して前記底部側に延びる筒状部を有し、
前記第1リードは、前記筒状側面部と前記圧縮部との間に挟まれておらず、かつ前記筒状部に接触しており、
前記第1リードの前記第2端部は、前記電極群の前記開口部側の端部よりも前記開口部寄りに位置する、電池。
【請求項2】
前記ケースの軸方向において、前記底部と前記溝部の最深部との間の距離をD1[mm]とし、かつ前記底部と前記電極群の前記端部との間の距離をD2[mm]として、
0.91≦D2/D1≦0.96が成り立つ、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記第1リードは、前記筒状側面部のうち前記溝部が形成された領域に溶接されている、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記ケースの外径は、6mm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記第1リードは、前記溶接された部分よりも前記第2端部側で前記開口部に向かって凸となるように曲がっている、請求項1~4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
前記第1リードは、前記曲がった部分よりも前記第2端部側の部分で前記筒状部に接触している、請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記第1リードの前記第2端部が、前記筒状部に接触している、請求項1~4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項8】
請求項5または6に記載の電池を製造するための方法であって、
前記ケースに、前記第1リードの前記第1端部が前記第1電極に電気的に接続された前記電極群を収容する第1工程と、
前記第1リードを、前記筒状側面部に溶接する第2工程と、
前記筒状側面部の一部に、前記溝部を形成する第3工程と、
前記ケースに、前記ガスケットを圧入する第4工程と、
を備え、
前記第4工程において、前記第1リードの前記第2端部が前記底部側に変位するように、前記第1リードを前記ガスケットで押し曲げる、電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池および電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有底筒状のケースと、ケースに電解液と共に収容された電極群と、電極群の一方の電極およびケースに電気的に接続されるリードと、ケースの開口部を封口するキャップと、開口部とキャップとの間に設けられるガスケットとを備える電池が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の電池では、ケース側面部に、ケース内方に突出する環状の溝部が形成されており、ケース側面部のうち溝部が形成された部分とガスケットとの間にリードが挟持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-278195号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、ケースに収容された電解液が外部に漏れやすくなるおそれがある(すなわち、耐漏液性が低くなるおそれがある)。なぜなら、ケース側面部のうち溝部が形成された部分とガスケットとが互いに密着していることが耐漏液性を高める上で重要であるところ、上述のとおり、当該部位にリードが挟持されて密着性が損なわれるためである。このような状況において、本開示は、電池の耐漏液性を高めることを目的の1つとする。
【0005】
本開示に係る一局面は、電池に関する。当該電池は、筒状側面部を具備し、一端に開口部を有しかつ他端に底部を有するケースと、前記ケースに電解液と共に収容され、第1電極および前記第1電極と極性が異なる第2電極を有する電極群と、前記第1電極に電気的に接続された第1端部および前記第1端部と反対側の第2端部を有し、前記筒状側面部に溶接された第1リードと、前記開口部を封口するキャップと、前記開口部と前記キャップとの間に設けられるガスケットと、を備え、前記筒状側面部の一部に、ケース内方に突出して前記ガスケットの一部を圧縮する環状の溝部が形成されており、前記ガスケットは、前記圧縮された部分である圧縮部に連続して前記底部側に延びる筒状部を有し、前記第1リードは、前記筒状側面部と前記圧縮部との間に挟まれておらず、かつ前記筒状部に接触しており、前記第1リードの前記第2端部は、前記電極群の前記開口部側の端部よりも前記開口部寄りに位置する。
【0006】
本開示に係る別の一局面は、電池の製造方法に関する。当該製造方法は、上述の電池において、前記第1リードは、前記溶接された部分よりも前記第2端部側で前記開口部に向かって凸となるように曲がっている、電池を製造するための方法であって、前記ケースに、前記第1リードの前記第1端部が前記第1電極に電気的に接続された前記電極群を収容する第1工程と、前記第1リードを、前記筒状側面部に溶接する第2工程と、前記筒状側面部の一部に、前記溝部を形成する第3工程と、前記ケースに、前記ガスケットを圧入する第4工程と、を備え、前記第4工程において、前記第1リードの前記第2端部が前記底部側に変位するように、前記第1リードを前記ガスケットで押し曲げる。
【0007】
本開示によれば、電池の耐漏液性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1の電池を模式的に示す断面図である。
図2】実施形態2の電池を模式的に示す断面図である。
図3】電池における各寸法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る電池および電池の製造方法の実施形態について例を挙げて以下に説明する。しかしながら、本開示は以下に説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0010】
(電池)
本開示に係る電池は、ケースと、電極群と、第1リードと、キャップと、ガスケットとを備える。
【0011】
ケースは、有底筒状であって、筒状側面部を具備し、一端に開口部を有しかつ他端に底部を有する。ケースは、有底円筒状、有底楕円筒状、または有底角筒状であってもよい。筒状側面部の一部には、ケース内方(すなわち、ケースの径方向内側)に突出してガスケットの一部を圧縮する環状の溝部が形成されている。環状の溝部は、開口部の近傍に形成されていてもよい。ケースは、導電性材料で構成される。例えば、ケースは、0.05mm~0.2mmの厚さを有するステンレス鋼で構成されるが、これに限定されるものではない。
【0012】
電極群は、ケースに電解液と共に収容される。電極群は、第1電極と、第1電極と極性が異なる第2電極とを有する。電極群は、第1電極および第2電極を、セパレータを介して捲回して柱状体として構成されてもよい。第1電極は、第1集電シートと、その両面に形成された第1活物質層とを有してもよい。第2電極は、第2集電シートと、その両面に形成された第2活物質層とを有してもよい。
【0013】
第1電極は、第1リードを介して、導電性を有するケースの内周面に接続される。第2電極は、第2リードを介して、導電性を有するキャップと接続されてもよい。ここで、ケースは、電池の第1端子(例えば、負極端子)として、キャップは、電池の第2端子(例えば、正極端子)として機能してもよい。
【0014】
第1電極および第2電極がそれぞれ負極および正極である場合について、さらに詳しく説明する。
【0015】
負極は、負極集電体シートと、その両面に形成された負極活物質層とを有する。負極集電体シートには公知の負極集電体シートを用いることができるが、電池がリチウムイオン二次電池である場合には、例えばステンレス鋼、ニッケル、銅、銅合金などの金属箔が用いられる。その厚さは、例えば5μm~20μmであるが、これに限定されるものではない。
【0016】
負極活物質層は、必須成分として負極活物質を含み、任意成分として結着剤、導電剤などを含む。負極活物質としては公知の負極活物質を用いることができるが、電池がリチウムイオン二次電池である場合には、例えば金属リチウム、珪素合金、錫合金などの合金、黒鉛、ハードカーボンなどの炭素材料、珪素化合物、錫化合物、チタン酸リチウムなどが用いられる。特に金属リチウムの場合はそれ自体が高い導電性と柔軟性を示すため、負極集電体シートの使用が任意となる。負極活物質の厚さは、例えば70μm~150μmであるが、これに限定されるものではない。
【0017】
リチウムイオン二次電池の負極集電リード(第1リード)には、例えばニッケル、ニッケル合金、鉄、ステンレス鋼、銅、銅合金などの材料を用いることができる。その厚さは、例えば10μm~120μmであるが、これに限定されるものではない。負極集電リードは、ケースの開口部近傍の、筒状側面部の内面に接続されてもよい。
【0018】
正極は、正極集電体シートと、その両面に形成された正極活物質層とを有する。正極集電体シートには公知の正極集電体シートを用いることができるが、電池がリチウムイオン二次電池である場合には、例えばアルミニウム、アルミニウム合金などの金属箔が用いられる。その厚さは、例えば5μm~20μmであるが、これに限定されるものではない。
【0019】
正極活物質層は、必須成分として正極活物質を含み、任意成分として結着剤、導電剤などを含む。正極活物質としては公知の正極活物質を用いることができるが、リチウムイオン二次電池の正極活物質としてはリチウム含有複合酸化物が好ましく、例えばLiCoO、LiNiO、LiMnなどが用いられる。また、リチウム一次電池の正極活物質としては、二酸化マンガン、フッ化黒鉛などが用いられる。正極活物質層の厚さは、例えば20μm~130μmであるが、これに限定されるものではない。
【0020】
リチウムイオン二次電池の正極集電リード(第2リード)には、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、ステンレス鋼などの材料を用いることができる。その厚さは、例えば10μm~120μmであるが、これに限定されるものではない。正極集電リードは、ガスケットの筒状部(後述)の内部空間を通って、正極端子を兼ねるキャップの底面に接続されてもよい。
【0021】
負極と正極の間に配されるセパレータには公知のセパレータを用いることができ、例えば、絶縁性の微多孔薄膜、織布、または不織布を用いて形成される。リチウムイオン二次電池のセパレータには、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンを用いることができる。その厚さは、10μm~50μmであってもよく、好適には10μm~30μmである。
【0022】
電解液には公知の電解液を用いることができる。電池がリチウムイオン二次電池である場合には、電解液は、公知のリチウム塩と公知の非水溶媒とで構成される。例えば、非水溶媒としては、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステルなどが用いられる。また、例えば、リチウム塩としては、LiPF、LiBFなどが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
第1リードは、第1電極に電気的に接続された第1端部と、第1端部と反対側の第2端部とを有する。第1リードは、ケースの筒状側面部に溶接されている。第1リードは、上述の負極集電リードであってもよい。
【0024】
キャップは、ケースの開口部を封口する。キャップは、導電性材料で構成されてもよい。
【0025】
ガスケットは、ケースの開口部とキャップとの間に設けられる。ガスケットは、環状の溝部により圧縮された部分である圧縮部を有する。この圧縮部において、ガスケットは、ケースの溝部が形成された部分と密着する。圧縮部は、ガスケットの全周にわたって(あるいは、ケースの全周にわたって)圧縮されていてもよい。ガスケットは、圧縮部に連続してケースの底部側に延びる筒状部を有する。
【0026】
ガスケットは、絶縁性材料で構成されていて、ケースとキャップとを電気的に絶縁する。ガスケットは、電解質に対する耐性を有する材料で構成されることが好ましく、例えばフッ素樹脂、ポリオレフィン、ポリアミドなどを用いることができる。その中でもフッ素樹脂を用いることが好ましく、例えばテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシビニルエーテルとの共重合体(PFA)を用いることができる。
【0027】
本開示の特徴部として、第1リードは、ケースの筒状側面部とガスケットの圧縮部との間に挟まれておらず、かつガスケットの筒状部に接触している。また、第1リードの第2端部は、電極群の開口部側の端部よりも当該開口部寄りに位置する。このように、第1リードは、ケースに溶接される部分を含んで十分な長さを有する一方で、電極群には接触していない。このため、第1リードの長さに公差が存在しても、第1リードをケース(具体的には、筒状側面部)に溶接することが可能となると共に、電池の内部短絡を回避することができる。さらに、第1リードは、そのように十分な長さを有する一方で、ケースとガスケットとの間に挟まれていない。したがって、ケースとガスケットとの間の密着性が損なわれず、電池の耐漏液性を高めることができる。
【0028】
ケースの軸方向において、ケースの底部と溝部の最深部との間の距離をD1[mm]とし、かつケースの底部と電極群の開口部側の端部との間の距離をD2[mm]として、0.91≦D2/D1≦0.96が成り立ってもよい。この構成によると、ケース内における電極群の占有体積を大きくすることで、電池の放電容量を高めることができる。なお、0.91≦D2/D1の場合、溝部の最深部と溶接部位との間の距離は非常に短くなる。この場合、第1リードの溶接部位よりも第2端部側の部分の長さを短くして筒状側面部と圧縮部との間に第1リードが挟まれるのを防止しようとするよりも、第1リードの溶接部位よりも第2端部側の部分の長さを十分に長くすることがより有効になる。
【0029】
第1リードは、ケースの筒状側面部のうち溝部が形成された領域に溶接されていてもよい。溝部は通常、ケースの開口部近傍に形成されるため、この構成によると、電極群と溶接部位との間の距離を確保しやすい。電極群の開口部側の端部を開口部に近づけることが容易になり、ケース内における電極群の占有体積を大きくすることができる。したがって、電池の放電容量を高めることができる。なお、筒状側面部のうち溝部が形成された領域とは、溝部の最深部のみでなく、最深部に向かって外径が徐々に小さくなる領域全体のことをいう。溶接部位は、溝部の最深部よりもケースの底部寄りに設けられる。
【0030】
ケースの外径は、6mm以下であってもよい。本開示の構成は、外径が6mm以下のケースを備える電池において特に有効である。ケースの外径は、4.5mm以下であってもよい。ケースの外径は、製造上の現実性を考慮して3mm以上であってもよい。
【0031】
第1リードは、溶接された部分よりも第2端部側でケースの開口部に向かって凸となるように曲がっていてもよい。この構成によると、第1リードの第2端部はケースの底部の方を向いて延びる。例えば、第1リードは、ケースの開口部に向かって凸となるようにU字状に曲がっていてもよい。そのように曲がった第1リードは、ケースとガスケットとの間により一層挟まれにくい。よって、電池の耐漏液性が損なわれることを回避しやすい。
【0032】
第1リードは、上述のように曲がった部分よりも第2端部側の部分でガスケットの筒状部に接触していてもよい。そのような接触は、点接触、線接触、または面接触のいずれであってもよい。
【0033】
第1リードの第2端部が、ガスケットの筒状部に接触していてもよい。この構成では、第1リードは、ケースの開口部に向かって凸となるように曲がってはいない。ただし、第1リードは、第2端部がガスケットの筒状部に接触するほどの十分な長さを有する。換言すると、第1リードの長さは、許容される公差が生じた場合でも、少なくとも第2端部がガスケットの筒状部に接触し、かつ筒状側面部とガスケットの圧縮部との間に挟まれない十分な長さに設計される。このような設計で相当数の電池を製造すると、多くの電池では、第1リードが、上述のように曲がった部分よりも第2端部側の部分でガスケットの筒状部に接触し、残りの電池では、少なくとも第2端部がガスケットの筒状部に接触する。すなわち、筒状側面部とガスケットの圧縮部との間に第2端部が挟まれる電池は原則として生じない。
【0034】
(電池の製造方法)
本開示に係る電池の製造方法は、第1リードが、ケースの開口部に向かって凸となるように曲がっている、電池を製造するための方法であって、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程とを備える。
【0035】
第1工程では、ケースに、第1リードの第1端部が第1電極に電気的に接続された電極群を収容する。電極群の第2電極には、第2リードの一端が電気的に接続されていてもよい。
【0036】
第2工程では、第1リードを、ケースの筒状側面部に溶接する。溶接の種類としては、レーザ溶接、スポット溶接、または抵抗溶接などが挙げられる。
【0037】
第3工程では、ケースの筒状側面部の一部に、環状の溝部を形成する。環状の溝部は、例えば、筒状側面部の一部を縮径する溝入れ加工により形成されてもよい。
【0038】
第4工程では、ケースに、ガスケットを圧入する。これにより、ガスケットの一部が溝部によって圧縮される。ここで、ケースにガスケットを圧入する際、第1リードの第2端部がケースの底部側に変位するように、第1リードをガスケットで押し曲げる。この押曲げは、第1リードが、第2端部がガスケットの筒状部に接触するほどの十分な長さを有する場合において、ケースにガスケットを圧入する際、第1リードの第2端部もしくはその近傍箇所がガスケットと接触もしくは係合してガスケットから圧力を受けることによる。これにより、第1リードが、ケースの開口部に向かって凸となるように曲がった状態となる。
【0039】
以上のように、本開示によれば、第1リードの長さの公差によらず第1リードをケースに適切に溶接できると共に、電池の耐漏液性を高めることができる。さらに、本開示によれば、そのような電池を容易に製造することが可能である。
【0040】
以下では、本開示に係る電池および電池の製造方法の一例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する一例の電池および電池の製造方法の構成要素および工程には、上述した構成要素および工程を適用できる。以下で説明する一例の電池および電池の製造方法の構成要素および工程は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。以下で説明する一例の電池および電池の製造方法の構成要素および工程のうち、本開示に係る電池および電池の製造方法に必須ではない構成要素および工程は省略してもよい。なお、以下で示す図は模式的なものであり、実際の部材の形状や数を正確に反映するものではない。
【0041】
《実施形態1》
本開示の実施形態1について説明する。図1に示すように、本実施形態の電池10は、ケース20と、電極群30と、第1リード40と、第2リード50と、キャップ60と、ガスケット70とを備える。
【0042】
ケース20は、有底円筒状に構成される。ケース20は、筒状側面部21を具備し、一端(図1における上端)に開口部22を有しかつ他端(図1における下端)に底部23を有する。筒状側面部21の開口部22近傍の部分には、ケース内方に突出する環状の溝部24が形成されている。この溝部24は、ガスケット70の一部を圧縮している。なお、ガスケット70の溝部24により圧縮された部分を、以下では圧縮部72ともいう。ケース20は、0.05mm~0.2mmの厚さを有するステンレス鋼で構成される。ケース20の外径は、3mm以上、6mm以下であってもよく、3mm以上、4.5mm以下であってもよい。
【0043】
電極群30は、ケース20に電解液(図示せず)と共に収容される。電極群30は、第1電極31と、第1電極31と極性が異なる第2電極32とを有する。本実施形態では、第1電極31が負極を構成し、かつ第2電極32が正極を構成するが、これに限られるものではない。電極群30は、第1電極31および第2電極32を、セパレータ33を介して捲回することで構成される。第1電極31は、第1集電シートと、その両面に形成された第1活物質層(この例では、負極活物質層)とを有する(共に図示せず)。第2電極32は、第2集電シートと、その両面に形成された第2活物質層(この例では、正極活物質層)とを有する(共に図示せず)。
【0044】
第1電極31は、第1リード40を介して、ケース20の内周面に接続される。第2電極32は、第2リード50を介して、キャップ60に接続される。本実施形態では、ケース20が電池10の負極端子として機能すると共に、キャップ60が電池10の正極端子として機能するが、これに限られるものではない。
【0045】
第1リード40は、第1電極31に電気的に接続された第1端部41と、第1端部41と反対側の第2端部42とを有する。第1リード40は、ケース20の筒状側面部21に溶接されている。より詳細には、第1リード40は、筒状側面部21のうち溝部24よりも底部23寄りの部分に溶接されている。ただし、第1リード40は、図示を省略するが、筒状側面部21のうち溝部24が形成された領域に溶接されていてもよい。本実施形態の第1リード40は、負極集電リードである。
【0046】
第2リード50は、第2電極32に電気的に接続された第3端部51と、キャップ60に電気的に接続された第4端部52とを有する。第2リード50は、ガスケット70の後述する筒状部73の内部空間を通っている。第2リード50の第4端部52は、キャップ60の底面に溶接されている。本実施形態の第2リード50は、正極集電リードである。
【0047】
キャップ60は、ケース20の開口部22を封口する。キャップ60は、導電性材料で構成される。キャップ60は、上述のように電池10の正極端子として機能する。キャップ60は、電池10の軸方向に延びる端子部61と、電池10の径方向外側に延びるフランジ62とを有する。端子部61およびフランジ62は、一体に構成されている。フランジ62は、ガスケット70の後述するシール部71によって保持される。
【0048】
ガスケット70は、ケース20の開口部22とキャップ60との間に設けられる。ガスケット70は、絶縁性材料で構成されていて、ケース20とキャップ60とを電気的に絶縁する。ガスケット70は、キャップ60を収容するシール部71と、シール部71に連続する圧縮部72と、圧縮部72に連続してケース20の底部23側に延びる筒状部73とを有する。シール部71は、キャップ60のフランジ62の下面を支持する平坦な支持部と、フランジ62の上面を保持する保持部とを具備する。圧縮部72は、ガスケット70の全周にわたって溝部24によって圧縮されている。圧縮前の状態において、圧縮部72の外径と筒状部73の外径は、互いに実質的に等しく、かつ溝部24の最小内径(すなわち、溝部24の最深部24aの内径)よりも大きい。
【0049】
ここで、第1リード40は、ケース20の筒状側面部21とガスケット70の圧縮部72との間に挟まれておらず、かつガスケット70の筒状部73に接触している。また、第1リード40の第2端部42は、電極群30の開口部22側の端部(図1における上端部)よりも開口部22寄り(図1における上寄り)に位置する。換言すると、第1リード40の第2端部42は、電極群30と接触していない。電極群30の開口部22側の端部(上端部)とは、例えば、電極群30の端面において最も突出する絶縁性部材(例えば、セパレータ)の端部であってもよい。
【0050】
第1リード40は、筒状側面部21に溶接された部分よりも第2端部42側で、ケース20の開口部22に向かって凸となるように曲がっている。第1リード40は、そのように曲がった部分よりも第2端部42側の部分でガスケット70の筒状部73に接触している。第1リード40の第2端部42は、電池10の軸方向において電極群30と所定の間隔をおいて対向している。第1リード40は、図1の断面視において、概ね逆U字状または逆J字状になっている。
【0051】
また、ケース20の軸方向において、ケース20の底部23(具体的には、底部23の外面)と溝部24の最深部24aとの間の距離をD1[mm]とし、かつケース20の底部23(具体的には、底部23の外面)と電極群30の上端部との間の距離をD2[mm]とする(図3を参照)。その場合において、本実施形態の電池10では、0.91≦D2/D1≦0.96が成り立つ。その条件下において、例えば、D1は、18mm~19mmであってもよく、D2は、16.5mm~17.5mmであってもよい。ただし、そのような条件が成り立っていなくてもよい。
【0052】
-電池の製造方法-
次に、本実施形態に係る電池の製造方法について説明する。当該製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程と、第5工程と、第6工程と、第7工程とを備える。
【0053】
第1工程では、ケース20に、第1リード40の第1端部41が第1電極31に電気的に接続され、かつ第2リード50の第3端部51が第2電極32に電気的に接続された電極群30を収容する。ケース20に電極群30を収容する際には、第1リード40および第2リード50がケース20の開口部22に向かって(図1における上方に向かって)延びるように、電極群30を開口部22からケース20に挿入する。
【0054】
第2工程では、第1リード40を、ケース20の筒状側面部21に溶接する。本実施形態では、抵抗溶接により、第1リード40を筒状側面部21に溶接する。
【0055】
第3工程では、ケース20の筒状側面部21の一部(この例では、開口部22近傍の部分)に、環状の溝部24を形成する。より具体的に、環状の溝部24は、第1リード40が延在する領域において形成される。このため、溝部24が形成された状態において、第1リード40の一部(すなわち、第2端部42を含む部分)は、溝部24の形成時にケース内方に押され、溝部24の最深部24aよりもケース内方に突出する。本実施形態の溝部24は、筒状側面部21の一部を縮径する溝入れ加工により形成される。
【0056】
第4工程では、ケース20に、ガスケット70を圧入(挿入)する。このとき、第1リード40のうち溝部24よりもケース内方に突出している部分(すなわち、第2端部42を含む部分)を、ガスケット70で押し下げる。換言すると、ケース20にガスケット70を圧入する際、第1リード40の第2端部42がケース20の底部23側に変位するように、第1リード40をガスケット70で押し曲げる。これにより、第1リード40が、ケース20の開口部22に向かって凸となるように曲がった状態となる。
【0057】
第5工程では、第2リード50を、ガスケット70の筒状部73の内部から引き出し、キャップ60と溶接する。本実施形態では、超音波溶接により、第2リード50キャップ60の底面に溶接する。
【0058】
第6工程では、真空注液方式により、ケース20の内部に電解液を注液する。このとき、環状の溝部24とガスケット70とが密着しているため、環状の溝部24よりも上方に電解液が浸入することが抑止され得る。
【0059】
第7工程では、キャップ60を、ガスケット70のシール部71に収容する。そして、ケース20の開口部22を、ガスケット70を介してキャップ60とかしめることにより、本実施形態の電池10が得られる。
【0060】
《実施形態2》
本開示の実施形態2について説明する。本実施形態は、第1リード40の構成が上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0061】
図2に示すように、本実施形態の第1リード40は、第2端部42がガスケット70の筒状部73に接触している。第1リード40は、上方に向かって凸となるように曲がってはいない。それ以外の構成は、上記実施形態1と同じである。
【実施例
【0062】
以下に示す実施例1~3および比較例1~3の電池10について、図3に示す各部寸法D1~D5を含む各種条件と、耐漏液性、内部ショートの有無、および放電容量との関係を評価した。
【0063】
ここで、寸法D1は、ケース20の底部23と溝部24の最深部24aとの間の軸方向の距離である。寸法D2は、ケース20の底部23と電極群30の開口部22側の端部(上端部)との間の軸方向の距離である。電極群30の開口部22側の端部(上端部)は、例えば、電極群30の端面において最も突出するセパレータ33の端部であってもよい。寸法D3は、ガスケット70の筒状部73の下端と溝部24の最深部24aとの間の軸方向の距離である。寸法D4は、第1リード40において、電極群30の上端部と同じ高さ位置を基準点として、この基準点から第2端部42までの第1リード40に沿った長さである。そして、寸法D5は、電極群30の上端部と第1リード40の第2端部42との間の軸方向の距離である。
【0064】
耐漏液性の評価方法として、電池10を初期充電後、高温エージングおよび充放電を行ってSOC(State Of Charge)100%に調整した後、温度60℃、湿度90%の恒温恒湿環境下で20日間保管して、ケース20の開口部22とガスケット70との間からの漏液の有無を評価した。このときのサンプル数は各実施例および各比較例につき20個とし、20個のサンプル全てで漏液が発生しない場合を「なし」と評価し、その他の場合(例えば、顕微鏡観察レベルで漏液の発生が認められた場合や、目視レベルで漏液の発生が認められた場合)を「あり」と評価した。
【0065】
放電容量の評価方法として、電池10を初期充電後、高温エージングおよび充放電を行ってSOC100%に調整した。その後、2Cで容量の90%を放電して1分の休止期間を設けた後、1Cで容量の7%を放電して1分間の休止期間を設け、最後に0.2Cで残容量(3%)を放電し、この一連の放電時における放電容量を評価した。なお、以下において、比較例1の放電容量を基準値(100)とし、実施例1~3および比較例2,3の放電容量は当該基準値に対する比率で表す。
【0066】
《実施例1》
電池10の外径を3.51mmとし、電池10の軸方向長さを19.75mmとした。溝部24の最深部24aの内径を2.78mmとし、ガスケット70の筒状部73の外径を2.88mmとした。このため、ガスケット70は、ケース20に圧入される状態となった。第1リード40を、電極群30の上端部よりも0.5mm上の位置でケース20の筒状側面部21に溶接した。第1リード40は、ケース20とガスケット70との間に挟まれない状態とした。第1リード40の第2端部42と電極群30の上端部とは、互いに接触しない状態とした。そして、D1を18.59mm、D2を16.999mm、D3を1.271mm、D4を1.39mm、D5を1.331mmとした。これらの条件で上述の評価を行い、漏液なし、内部ショートなし、放電容量102.7との結果を得た。
【0067】
《実施例2》
電池10の外径を3.51mmとし、電池10の軸方向長さを19.75mmとした。溝部24の最深部24aの内径を2.78mmとし、ガスケット70の筒状部73の外径を2.88mmとした。このため、ガスケット70は、ケース20に圧入される状態となった。第1リード40を、電極群30の上端部よりも0.5mm上の位置でケース20の筒状側面部21に溶接した。第1リード40は、ケース20とガスケット70との間に挟まれない状態とした。第1リード40の第2端部42と電極群30の上端部とは、互いに接触しない状態とした。そして、D1を18.59mm、D2を17.449mm、D3を0.821mm、D4を1.39mm、D5を1.016mmとした。これらの条件で上述の評価を行い、漏液なし、内部ショートなし、放電容量105.5との結果を得た。
【0068】
《実施例3》
電池10の外径を3.51mmとし、電池10の軸方向長さを19.75mmとした。溝部24の最深部24aの内径を2.78mmとし、ガスケット70の筒状部73の外径を2.88mmとした。このため、ガスケット70は、ケース20に圧入される状態となった。第1リード40を、電極群30の上端部よりも0.5mm上の位置でケース20の筒状側面部21に溶接した。第1リード40は、ケース20とガスケット70との間に挟まれない状態とした。第1リード40の第2端部42と電極群30の上端部とは、互いに接触しない状態とした。そして、D1を18.59mm、D2を17.762mm、D3を0.508mm、D4を1.39mm、D5を0.39mmとした。これらの条件で上述の評価を行い、漏液なし、内部ショートなし、放電容量107.4との結果を得た。
【0069】
《比較例1》
電池10の外径を3.51mmとし、電池10の軸方向長さを19.75mmとした。溝部24の最深部24aの内径を2.78mmとし、ガスケット70の筒状部73の外径を2.68mmとした。このため、ガスケット70は、ケース20に圧入されない状態となった。第1リード40を、電極群30の上端部よりも0.5mm上の位置でケース20の筒状側面部21に溶接した。第1リード40は、ケース20とガスケット70との間に挟まれない状態とした。第1リード40の第2端部42と電極群30の上端部とは、互いに接触しない状態とした。そして、D1を18.59mm、D2を16.6mm、D3を1.67mm、D4を1.39mmとした。これらの条件で上述の評価を行い、漏液なし、内部ショートなし、放電容量100との結果を得た。
【0070】
《比較例2》
電池10の外径を3.51mmとし、電池10の軸方向長さを19.75mmとした。溝部24の最深部24aの内径を2.78mmとし、ガスケット70の筒状部73の外径を2.68mmとした。このため、ガスケット70は、ケース20に圧入されない状態となった。第1リード40を、電極群30の上端部よりも0.5mm上の位置でケース20の筒状側面部21に溶接した。第1リード40は、ケース20とガスケット70との間に挟まれた状態(特許文献1と同様の状態)とした。第1リード40の第2端部42と電極群30の上端部とは、互いに接触しない状態とした。そして、D1を18.59mm、D2を17.762mm、D3を0.508mm、D4を1.39mm、D5を0.39mmとした。これらの条件で上述の評価を行い、漏液あり、内部ショートなし、放電容量107.4との結果を得た。
【0071】
《比較例3》
電池10の外径を3.51mmとし、電池10の軸方向長さを19.75mmとした。溝部24の最深部24aの内径を2.78mmとし、ガスケット70の筒状部73の外径を2.88mmとした。このため、ガスケット70は、ケース20に圧入されたる状態となった。第1リード40を、電極群30の上端部よりも0.5mm上の位置でケース20の筒状側面部21に溶接した。第1リード40は、ケース20とガスケット70との間に挟まれない状態とした。第1リード40の第2端部42と電極群30の上端部とは、互いに接触する状態とした。そして、D1を18.59mm、D2を18.212mm、D3を0.058mm、D4を1.39mm、D5を-0.06mm(ここで、D5が負の値であることは、第1リード40の第2端部42と電極群30の上端部とが接触していることを意味する。)とした。これらの条件で上述の評価を行い、漏液なし、内部ショートあり、放電容量110.1との結果を得た。
【0072】
なお、実施例1~3および比較例1~3の各寸法D1~D5および評価結果の一覧を、表1に示す。表1において、D1~D5の単位はmmである。
【0073】
【表1】
【0074】
以上のように、実施例1~3の電池10では、漏液も内部ショートも発生せず、高い放電容量が得られた。一方、比較例1の電池10では、漏液も内部ショートも発生しないが、放電容量が低かった。また、比較例2,3の電池10では、放電容量は高いものの、漏液または内部ショートが発生した。これらより、各比較例に対する各実施例の優位性が示されたと言える。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示は、電池および電池の製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0076】
10:電池
20:ケース
21:筒状側面部
22:開口部
23:底部
24:溝部
24a:最深部
30:電極群
31:第1電極
32:第2電極
33:セパレータ
40:第1リード
41:第1端部
42:第2端部
50:第2リード
51:第3端部
52:第4端部
60:キャップ
61:端子部
62:フランジ
70:ガスケット
71:シール部
72:圧縮部
73:筒状部
図1
図2
図3