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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】液化装置および液化製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F25J 1/00 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
F25J1/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024019249
(22)【出願日】2024-02-13
【審査請求日】2024-02-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100229851
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 亜季
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 献児
(72)【発明者】
【氏名】永田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】富田 伸二
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-118497(JP,A)
【文献】特開平07-190613(JP,A)
【文献】特開平04-076380(JP,A)
【文献】特開平11-325714(JP,A)
【文献】特開平09-029001(JP,A)
【文献】国際公開第2019/159371(WO,A1)
【文献】中国実用新案第202204240(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第112304141(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を冷媒で冷却、凝縮することのできる熱交換器と、
被処理物流路の温端部と冷端部の差圧を計測する差圧計と、
前記熱交換器の冷端部から導出される液化製品の導出ラインと、
前記熱交換器の内部の被処理物流路の液化製品の液面より下部から液化製品を導出し、熱交換器の冷端部から導出される液化製品の導出ラインに合流する液化製品バイパスラインと、
前記差圧計の指示値から熱交換器の内部の被処理物の液化製品の液位を算出し、前記液化製品の導出ライン上に設けられた液化製品制御弁を制御して液位の調整を行い伝熱面積を制御して、被処理物の凝縮を制御する液化製品制御部を備える、
液化装置。
【請求項2】
前記冷媒の温端部と冷端部の差圧を計測する差圧計を、さらに備え、
前記液化製品制御部は、
前記冷媒の液位を算出し、前記液化製品制御弁を制御して液位の調整を行い伝熱面を制御して、被処理物の凝縮を制御する、
または、前記冷媒の液位および前記被処理物の液化製品の液位に基づいて、液化製品制御弁を制御して液位の調整を行い伝熱面積を制御して、被処理物の凝縮を制御する、
請求項1に記載の液化装置。
【請求項3】
液化製品の温度が規定値になるように液化製品バイパスライン上に設けられたバイパス制御弁の開閉制御を行うバイパス制御部を備える、
請求項に記載の液化装置。
【請求項4】
熱交換器の温端から被処理物のガスが導入されて冷端から液化製品が導出され、熱交換器の冷端から冷媒が導入され温端から冷媒ガスが導出されることで、被処理物のガスから液化製品を製造する方法であって、
熱交換器内の液化製品の液位によって、液化製品の導出量を制御する導出量制御ステップ
前記熱交換器の液化製品の液面より下部から液化製品の一部が導出され、製品として取り出せる液化製品と合流させて、液化製品の温度を調整する温度調整ステップを含む、
液化製品の製造方法。
【請求項5】
冷媒の液位によって、液化製品の導出量を制御する導出量制御ステップをさらに含む、請求項に記載の液化製品の製造方法。
【請求項6】
冷却および凝縮を主に行う第一冷媒を供給するのに追加して、この第一冷媒よりも低圧の第二冷媒を熱交換器に供給し、該低圧の第二冷媒によって、液化製品をサブクールするサブクールステップを含む、
請求項またはに記載の液化製品の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、酸素ガスあるいはアルゴンガスを液化する液化装置および液化製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化酸素は、空気分離装置から直接供給する他、酸素パイプラインや水電気分解装置の副生酸素を冷却液化することで得られる。
例えば、特許文献1、2では、酸素を液化窒素または窒素の液化サイクルを利用して酸素を液化する。特許文献3では、空気分離装置から供給される液化空気を酸素の液化に利用する。
【0003】
しかしながら、常時パイプラインで供給される酸素ガス製品と異なり、液化酸素は需要と輸送状況に応じて、製造量を調製できることが望ましい。液化能力を有した空気分離装置や液化器を備えることは、間欠的な需要に応えるにしては設備投資が多大になるので、簡素な機器構成で調達が容易な冷媒、例えば外部調達の可能な液化窒素などを使用して酸素を液化することが妥当である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2961072号
【文献】中国特許公開第113375420号公報
【文献】特許第3306668号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液化酸素は貯蔵される前に、沸点より低い温度までサブクールされる。これは貯槽充填時の減圧や、貯槽の環境からの入熱によって、液化酸素が蒸発して損失することを防ぐためである。しかしながら、液化酸素を過剰に冷却すると貯槽内を減圧する可能性があり、液化酸素を適温に製造することは重要である。
しかしながら、冷媒となる液化窒素と液化酸素の物性の差により、液化酸素を液化窒素で熱交換器で冷却するだけで適温に製造することは容易ではなく、特に液化酸素を過剰に冷却してしまう可能性が高い。即ち、効率よく適温の液化酸素製品を得るための制御技術を開発する必要がある。
【0006】
また、単一の熱交換器で酸素ガスを液化する場合、その熱交換器はガスの冷却、凝縮、およびサブクールの3つの異なる冷却モードを制御する必要があるが、一方で冷媒となる窒素にも同様の温度及び相変化が生じるので、安定して酸素の液化を行うことが困難であった。特に副産物としての酸素ガスは必ずしも流量が安定しないので、調整に困難が生じる傾向があった。なお、上記の課題は、酸素と沸点が近いアルゴンにも同様に当てはまる。
【0007】
本開示は、効率的に適温の液化製品を供給することができる液化装置の提供を目的とする。
また、本開示は、液化製品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の液化装置は、被処理物(酸素ガスあるいはアルゴンガス)を冷媒(例えば、液化窒素)で冷却、凝縮(及びさらに別の液化窒素でサブクール)することのできる熱交換器(1)を備える。
熱交換器(1)は、熱交換機能として、温端から冷端にかけて、冷却領域および凝縮領域(1a)、サブクール領域(1b)の2つのセクションが存在し、領域のサイズは冷媒との被処理ガスとの関係で固定ではなく変動する。本液化装置は、サブクール領域(1b)の液面を検知することで、凝縮およびサブクールの制御をする構成である。
【0009】
前記液化装置は、被処理物流路(例えば、酸素、アルゴン)の温端部と冷端部の差圧を計測する差圧計(102)を備えていてもよい。
前記液化装置は、さらに、冷媒流路(例えば、液化窒素)の温端部と冷端部の差圧を計測する差圧計を備えていてもよい。
前記液化装置は、前記被処理物流路の差圧計(102)の指示値から熱交換器(1)の内部の被処理物(例えば、液化酸素、液化アルゴン)の液位を算出し、液化製品制御弁(V4)を制御して液位の調整を行い伝熱面積を制御して、被処理物(例えば、酸素ガス、アルゴンガス)の凝縮を制御する液化製品制御部(22)を備えていてもよい。
前記液化装置は、前記冷媒流路の差圧計の指示値から熱交換器(1)の内部の冷媒(例えば、液化窒素)の液位を算出し、液化製品制御弁(V4)を制御して液位の調整を行い伝熱面積を制御して、被処理物(例えば、酸素ガス、アルゴンガス)の凝縮を制御する液化製品制御部を備えていてもよい。
前記液化製品制御部は、前記冷媒の液位および前記被処理物の液化製品の液位に基づいて、液化製品制御弁を制御して液位の調整を行い伝熱面積を制御して、被処理物の凝縮を制御してもよい。
前記差圧計は、温端部と冷端部の各々に配置された圧力計と、それた圧力計の指示値の差によって差圧を算出する構成であってもよく、該差圧計の指示値または圧力計から差圧を計算する構成であってもよい。
【0010】
前記液化装置は、熱交換器(1)の内部の被処理物流路の液化製品の液面より下部から液化製品を導出し、熱交換器(1)の冷端部から導出される液化製品の導出ラインに合流する液化製品バイパスライン(L21)を備えていてもよい。
液化製品(例えば、液化酸素、液化アルゴン)の温度が規定値になるように液化製品バイパスライン(L21)上に設けられたバイパス制御弁(V5)の開閉制御を行うバイパス制御部(23)を備えていてもよい。
この構成によれば、単一の熱交換器であっても被処理物の凝縮およびサブクールを制御することが可能となって、低コストであっても温度が安定した液化製品(例えば、液化酸素、液化アルゴン)の製造を実現できる。
液化製品バイパスライン(L21)は、1つに限定されず、2以上のラインを有し、熱交換器(1)の内部の被処理物流路から液化製品を取り出せる構成であってもよい。
【0011】
本開示の液化製品の製造方法は、
熱交換器(1)の温端から被処理物のガスが導入されて冷端から液化製品が導出され、熱交換器(1)の冷端から冷媒(例えば、液化窒素)が導入され温端から冷媒ガスが導出されることで、被処理物のガスから液化製品を製造する方法であって、
熱交換器(1)内の液化製品の液位によって、液化製品の導出量を制御する導出量制御ステップを含んでいてもよい。
さらに、前記製造方法は、
熱交換器(1)内の冷媒の液位によって、液化製品の導出量を制御する導出量制御ステップを含んでいてもよい。
液化製品液位は、例えば、熱交換器(1)における被処理物流路の圧力差から算出されてもよい。
冷媒液位は、例えば、熱交換器(1)における冷媒流路の圧力差から算出されてもよい。
【0012】
前記液化製品の製造方法は、
前記熱交換器(1)の液化製品の液面より下部から液化製品(冷端から導出される液化製品よりも温かい液化製品)の一部が導出され、製品として取り出せる液化製品と合流させて、液化製品の温度を調整する温度調整ステップを含んでいてもよい。
サブクール領域(1b)での滞留時間が長いと冷却時間が長くなり、温度が低すぎる場合に、サブクール領域(1b)から冷却時間の短い(冷端より温端側の位置)から液化製品を取り出し、液化製品と合流させて温度調整することができる。
【0013】
前記液化製品の製造方法は、
冷却および凝縮を主に行う第一冷媒を供給するのに追加して、この第一冷媒よりも低圧の第二冷媒を熱交換器(1)に供給し、該低圧の第二冷媒によって、液化製品をサブクールするサブクールステップを含んでいてもよい。
これにより、第一冷媒は被処理物のガスの冷却と凝縮(液化)に利用され、低圧の第二冷媒は液化製品のサブクールに利用できる。
【0014】
前記液化製品の製造方法は、
第一冷媒を熱交換器(1)でガス化された第一冷媒ガスを、冷媒液化器(E2)のリサイクル圧縮機(C1)またはフィード圧縮機(C2)の吸入側へ導入する第一冷媒ガス導入ステップと、
低圧の第二冷媒を熱交換器(1)でガス化された第二冷媒ガスを、冷媒熱交換器(E2)の冷端またはリサイクル圧縮機(C1)またはフィード圧縮機(C2)の吸入側へ導入する第二冷媒ガス導入ステップとを含んでいてもよい。
【0015】
前記液化製品の製造方法は、
熱交換器(1)の冷端から導出される液化製品が流れる液化製品ライン(L2)に設けられる(制限オリフィス等の)流量制御手段(V4)を制御する制御ステップを含んでいてもよい。
これによって、熱交換器(1)内の被処理物流路の液化製品の液面より下部から導出される液化製品が流れる液化製品バイパスライン(L21)の流量調整弁(V5)の制御圧損と圧力バランスを取ることで、液化製品がサブクール領域(1b)で過剰に冷却されることを防ぐことができる。
【0016】
本開示の液化装置(A1,A2,A3,A4)は、
熱交換器(1)と、
前記熱交換器(1)の冷端から冷媒として液化窒素(LIN)を導入し、温端から窒素ガス(GAN)を導出するための窒素ライン(L1)と、
前記熱交換器(1)の温端から被処理物として酸素ガス(GOX)を導入し、冷端から液化酸素(LOX)を導出するための酸素ライン(L2)と、
前記窒素ライン(L1)の前記熱交換器(1)の冷端より下流側の窒素ガスの圧力を測定する窒素ガス圧力測定部(101)と、
前記窒素ガス圧力測定部(101)で測定された圧力値に基づいて(例えば、所定の範囲を維持する、あるいは所定の閾値未満、閾値以上の場合に)、窒素ライン(L1)に設けられた窒素制御弁(V2)を制御する窒素制御部(21)と、
前記酸素ライン(L2)の前記熱交換器(1)の温端より上流側の酸素ガスの圧力と、前記酸素ライン(L2)の前記熱交換器(1)の冷端より下流側の液化酸素の圧力との圧力差を測定する酸素差圧測定部(102)と、
前記酸素差圧測定部(102)で測定された圧力差に基づいて(例えば、所定の範囲を維持する、あるいは所定の閾値未満、閾値以上の場合に)、酸素ライン(L2)に設けられた酸素制御弁(V4)を制御する酸素制御部(22)と、
を備えていてもよい。
前記酸素液化装置(A1,A2,A3,A4)は、
前記窒素ライン(L1)の前記熱交換器(1)の冷端より上流側に設けられる弁(V1)と、
前記酸素ライン(L2)の前記熱交換器(1)の温端より上流側に設けられる弁(V3)と、
を備えていてもよい。
前記酸素差圧測定部(102)は、温端部と冷端部の各々に配置された圧力計と、それら圧力計の指示値の差によって差圧を算出する構成であってもよく、該酸素差圧測定部(102)の指示値または圧力計から差圧を計算する構成であってもよい。
【0017】
前記酸素液化装置(A2,A3,A4)は、
前記熱交換器(1)の中間部から温液化酸素(冷端から導出される液化酸素よりも温かい液化酸素)の一部が導出され、製品として取り出せる液化酸素の温度を調整するように、前記酸素ライン(L2)の前記熱交換器(1)の冷端より下流側の液化酸素へ合流するための液化酸素バイパスライン(L21)と、
前記酸素ライン(L2)の前記熱交換器(1)の冷端より下流側の液化酸素の温度を測定する液化酸素温度測定部(103)と、
前記液化酸素温度測定部(103)で測定された温度に基づいて(例えば、所定の範囲を維持する、あるいは所定の閾値未満、閾値以上の場合に)、液化酸素バイパスライン(L21)に設けられた温液化酸素制御弁(V5)を制御する温液化酸素制御部(23)と、
を備えていてもよい。
【0018】
前記酸素液化装置(A3,A4)は、
低圧液化窒素(LP LIN)を前記熱交換器(1)の冷端から導入し、前記熱交換器(1)の中間部(サブクール領域(1b)と凝縮領域(1a)との境界あるいはその近傍)から低圧窒素ガスを導出するための低圧窒素ライン(L11)と、
前記低圧窒素ライン(L11)の前記熱交換器(1)の中間部の出口より下流側の低圧窒素ガスの圧力を測定する低圧窒素ガス圧力測定部(104)と、
前記低圧窒素ガス圧力測定部(104)で測定された圧力に基づいて(例えば、所定の範囲を維持する、あるいは所定の閾値未満、閾値以上の場合に)、低圧窒素ライン(L11)に設けられた低圧窒素制御弁(V12)を制御する低圧窒素制御部(24)と、
を備えていてもよい。
【0019】
前記酸素液化装置(A4)は、
前記熱交換器(1)の温端から導出された窒素ガス(MP GAN)および供給源から送られる窒素ガス(Feed N)を液化するための窒素液化器(E2)と、
前記熱交換器(1)の温端から導出された窒素ガス(MP GAN)および供給源の窒素ガス(Feed N)を、圧縮するフィード窒素圧縮機(C2)と、
前記フィード窒素圧縮機(C2)で圧縮された窒素ガスを圧縮する、直列接続される、少なくとも1段目の第一ブースター(51)と、前記1段目の第一ブースター(51)で昇圧された窒素ガスの一部を、さらに昇圧する第二ブースター(61)と、
前記1段目の第一ブースター(51)で昇圧された窒素ガスの残部(上記一部以外)を、前記窒素液化器(E2)の温端に導入し、その中間部から導出した窒素ガスを膨張する第一膨張タービン(52)と、
前記2段目の第二ブースター(61)で昇圧された窒素ガスを、前記窒素液化器(E2)の温端に導入し、その中間部から導出した窒素ガスの一部を(ラインL13aを介して)膨張する第二膨張タービン(62)と、
前記2段目の第二ブースター(61)で昇圧された窒素ガスを、前記窒素液化器(E2)の温端に導入し、冷端から導出した窒素ガスの残部(上記一部以外)を(ラインL13を介して)膨張する第一膨張弁(V13)と、
前記第一膨張弁(V13)で膨張された第一窒素気液混合ガスを導入し、気液分離する気液分離器(7)と、
前記気液分離器(7)で分離された液化窒素(MP LIN)の一部を温端に導入して冷端から導出して冷却する第二熱交換器(E3)と、
前記第二熱交換器(E3)で冷却された液化窒素(LP LIN)を導出し、その一部を前記低圧液化窒素ライン(L11)へ送るための低圧窒素導出ライン(L11a)と、
前記低圧窒素導出ライン(L11a)から分岐された、低圧液化窒素の残部(上記一部以外の残部)を膨張する第二膨張弁(V14)と、
前記第二膨張弁(V14)で膨張させた第二窒素気液混合ガスを、前記第二熱交換器(E3)の冷端から導入し温端から導出し、低圧窒素ライン(L11)と合流した後で、前記窒素液化器(E2)の冷端から導入し温端から導出するための第一リサイクル窒素ライン(L12)と、
前記第一リサイクル窒素ライン(L12)の前記窒素液化器(E2)の温端の下流側に設けられ、低圧のリサイクル窒素を圧縮する第一リサイクル窒素圧縮機(C1)と、
前記気液分離器(7)で分離された中圧の窒素ガスを、前記窒素液化器(E2)の冷端から導入し温端から導し、前記第一リサイクル窒素ライン(L12)の前記リサイクル窒素圧縮機(C1)と前記フィード窒素圧縮機(C2)との間に合流させるための第二リサイクル窒素ライン(L13b)と、
を備えていてもよい。
前記第一膨張タービン(52)から導出された窒素ガスを(ラインL12を介して)、前記窒素液化器(E2)の中間部から導入し、前記窒素液化器(E2)内の前記第二リサイクル窒素ライン(L13b)へ合流してもよい。
前記第二膨張タービン(62)から導出された窒素ガスを(ラインL13aを介して)、前記窒素液化器(E2)の冷端より上流の前記第二リサイクル窒素ライン(L13b)へ合流してもよい。
【0020】
本開示の液化装置は、空気分離装置、窒素液化器、酸素発生装置、水電気分解装置から供給される副生成物の酸素ガス、アルゴンガスの液化を効果的に行える。
【0021】
本開示の液化装置で液化処理される被処理物は、例えば、酸素、アルゴンが例示されるが、これに限定されない。
本開示の液化装置で液化処理の冷媒は、例えば、液化窒素、液化天然ガスであってもよい。
【0022】
(効果)
本開示により、適切な温度の液化製品(液化酸素、液化アルゴン)を効率よく製造することができる。
液化製品貯槽の不要な加圧または減圧を防ぐことで、貯槽の脱圧に係る放出や再加圧のために液化製品の一部を蒸発させるといった、被処理物の分子または冷熱を浪費することを防ぐので、液化製品のサプライチェーンの効率改善に大きく貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1の酸素液化装置を示す図である。
図2】実施形態2の酸素液化装置を示す図である。
図3】実施形態3の酸素液化装置を示す図である。
図4】実施形態4の酸素液化装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本開示のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本開示の一例を説明するものである。本開示は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本開示の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本開示の必須の構成であるとは限らない。上流や下流は流体の流れ方向を基準にしている。
【0025】
(実施形態1)
実施形態1の液化装置は、酸素を液化する酸素液化装置A1であり、図1を用いて説明する。
酸素液化装置A1は、単一の熱交換器1を備える。酸素液化装置A1は、その温端から酸素ガス(GOX)を下向きに流し、冷端から液化酸素(LOX)を導出する。また、その冷端から液化窒素(LIN)を上向きに流し、温端から窒素ガス(GAN)を導出する。窒素ラインL1は、熱交換器1の冷端から液化窒素(LIN)を導入し、温端から窒素ガス(GAN)を導出するため窒素流路である。酸素ラインL2は、熱交換器1の温端から酸素ガス(GOX)を導入し、冷端から液化酸素(LOX)を導出するための酸素ラインである。
【0026】
仕切弁V1は、窒素ラインL1の熱交換器1の冷端より上流側に設けられる。
窒素ガス圧力測定部101は、窒素ラインL1の熱交換器1の冷端より下流側の窒素ガスの圧力を測定する。
窒素制御部21は、窒素ガス圧力測定部101で測定された圧力値に基づいて、例えば、所定の範囲を維持する、あるいは所定の閾値未満、閾値以上の場合に、窒素ラインL1に設けられた窒素制御弁V2の開閉(開度調整)を制御する。
【0027】
仕切弁V3は、酸素ラインL2の熱交換器1の温端より上流側に設けられる。
酸素差圧測定部102は、酸素ラインL2の熱交換器1の温端より上流側の酸素ガスの圧力と、酸素ラインL2の熱交換器1の冷端より下流側の液化酸素の圧力との圧力差を測定する。
酸素制御部22は、酸素差圧測定部102で測定された圧力差に基づいて、例えば、所定の範囲を維持する、あるいは所定の閾値未満、閾値以上の場合に、酸素ラインL2に設けられた酸素制御弁V4の開閉(開度調整)を制御する。
酸素制御部22は、酸素差圧測定部102で測定された圧力差から熱交換器1の内部の液化酸素の液位を算出し、酸素制御弁V4を制御して液位の調整を行い伝熱面積を制御し酸素の凝縮を制御する。
【0028】
熱交換器1内の液化酸素は、液化窒素との熱交換によってサブクールされる。液化酸素の冷却の過不足があった場合に、液化窒素の温度を制御しようとすると、窒素の圧力を調整する必要が出てくるが、この操作には窒素の加圧減圧に係るエネルギーが必要とされる。そこで、酸素液位を調整することで、液化酸素のサブクールに係る伝熱面積を調整する。そうすることで、窒素の運転圧力を変化させることなく、液化酸素温度を調整することができる。窒素ラインL1の圧力制御(101、21)は、酸素との熱交換によって蒸発された窒素を配管を通じて系外に放出するように構成される。
【0029】
(実施形態2)
実施形態2の酸素液化装置A2を図2を用いて説明する。実施形態2の酸素液化装置A2は、実施形態1の酸素液化装置A1の機能を有し、追加の機能を以下で説明する。同じ符号は同じ機能を有する。
【0030】
液化酸素バイパスラインL21は、熱交換器1の中間部から温液化酸素の一部が導出され、製品として取り出せる液化酸素の温度を調整するように、酸素ラインL2の熱交換器1の冷端より下流側の液化酸素へ合流するためのラインである。
液化酸素温度測定部103は、酸素ラインL2の熱交換器1の冷端より下流側の液化酸素の温度を測定する。
温液化酸素制御部23は、液化酸素温度測定部103で測定された温度に基づいて、例えば、所定の範囲を維持する、あるいは所定の閾値未満、閾値以上の場合に、液化酸素バイパスラインL21に設けられた温液化酸素制御弁V5の開閉(開度調整)を制御する。
これにより、製品液化酸素の温度を規定値に制御でき、低コストであっても温度が安定した液化酸素の製造を実現できる。
【0031】
この構成により、熱交換器1の酸素ラインL2の流路の中間部から、温液化酸素を導出して、熱交換器1の冷端から導出される液化酸素と混合させることで製品液化酸素を製造する。こうすることで、需要に適した温度の液化酸素を供給することができる。導出される温液化酸素は、減圧や環境からの入熱によって液体の一部が蒸発して二層流になることを避けるために、例えば、運転圧力下での飽和液の温度より1℃程度かそれ以上低いサブクール温度であることが望ましい。飽和液化酸素は、圧損によって部分的に蒸発して、2層流となることがあるからである。
【0032】
(実施形態3)
実施形態3の酸素液化装置A3を図3を用いて説明する。実施形態3の酸素液化装置A3は、実施形態1、2の酸素液化装置A1、A2の機能を有し、追加の機能を以下で説明する。同じ符号は同じ機能を有する。
【0033】
窒素ラインL1には、中圧の液化窒素(MP LIN)が供給される。
低圧窒素ラインL11は、低圧液化窒素(LP LIN)を熱交換器1の冷端から導入し、熱交換器1の中間部から低圧窒素ガス(LP GAN)を導出するためのラインである。
低圧窒素ガス圧力測定部104は、低圧窒素ラインL11の熱交換器1の中間部より下流側の低圧窒素ガスの圧力を測定する。
低圧窒素制御部24は、低圧窒素ガス圧力測定部104で測定された圧力に基づいて、例えば、所定の範囲を維持する、あるいは所定の閾値未満、閾値以上の場合に、低圧窒素ラインL11に設けられた低圧窒素制御弁V12の開閉(開度調整)を制御する。
これにより、液化窒素は酸素ガスの冷却と液化に利用され、低圧液化窒素は液化酸素のサブクールに利用できる。
【0034】
この構成により、低温液化窒素が液化酸素をサブクールするように構成される。中圧の液化窒素を酸素ガスの冷却液化に最適化し、低温液化窒素で液化酸素のサブクールを最適化して、熱交換の効率を高めることができる。
【0035】
(実施形態4)
実施形態4の酸素液化装置A4を図4を用いて説明する。実施形態4の酸素液化装置A4は、実施形態1、2、3の酸素液化装置A1、A2、A3の機能を有し、追加の機能を以下で説明する。同じ符号は同じ機能を有する。
【0036】
酸素液化装置A4は、供給源からラインL4を介して送られる窒素ガス(Feed N)を液化するための窒素液化器E2を備える。窒素液化器E2は、例えば、熱交換器で構成される。
リサイクル窒素圧縮機C1とフィード窒素圧縮機C2は、ラインL12を介して直列に接続される。リサイクル窒素圧縮機C1は、第一リサイクル窒素ラインL12の窒素液化器E2の温端の下流側に設けられ、低圧のリサイクル窒素を圧縮する。フィード窒素圧縮機C2は、熱交換器1の温端から導出された窒素ガス(MP GAN)および供給源の窒素ガス(Feed N)を圧縮する。また、フィード窒素圧縮機C2は、リサイクル窒素圧縮機C1で圧縮された窒素ガスを圧縮する。また、フィード窒素圧縮機C2は、後述する第一膨張タービン52で膨張され、窒素液化器E2へ導入された窒素ガスを圧縮する。また、フィード窒素圧縮機C2は、後述する気液分離器7で分離され、窒素液化器E2へ導入された窒素ガスを圧縮する。
【0037】
第一ブースター51と第二ブースター61は、ラインL12およびラインL13を介して直列に接続される。
第一ブースター51は、フィード窒素圧縮機C2で圧縮された窒素ガスを昇圧する。第二ブースター61は、第一ブースター51で昇圧された窒素ガスの一部をさらに昇圧する。
【0038】
第一膨張タービン52は、第一ブースター51で昇圧された窒素ガスの残部(第二ブースター61へ送られた一部の窒素ガスの残部)を、第一リサイクル窒素ラインL12を介して、窒素液化器E2の温端に導入し、窒素液化器E2の中間部から導出した窒素ガスを膨張する。膨張された窒素ガスは、第一リサイクル窒素ラインL12を介して窒素液化器E2の中間部から導入され、第二リサイクル窒素ラインL13bへ合流する。
第二膨張タービン62は、第二ブースター61で昇圧された窒素ガスを、窒素液化器E2の温端に導入し、窒素液化器E2の中間部から導出した窒素ガスの一部を、ラインL13aを介して膨張する。膨張された窒素ガスは、ラインL13aを介して、気液分離器7から分離された窒素ガスを、窒素液化器E2の冷端へ導入するための第二リサイクル窒素ラインL13bへ合流する。
【0039】
第一膨張弁V13は、窒素液化器E2の冷端より下流のラインL13に設けられている。第一膨張弁V13は、第二ブースター61で昇圧された窒素ガスを、窒素液化器E2の温端に導入し、冷端から導出した窒素ガスの残部(第二膨張タービン62へ送られた一部の窒素ガスの残部)を膨張する。
【0040】
気液分離器7は、第一膨張弁V13で膨張された第一窒素気液混合ガスを導入し、気液分離する。分離された窒素ガスは、第二リサイクル窒素ラインL13bを介して、窒素液化器E2の冷端へ導入され、温端から導出され、第一リサイクル窒素ラインL12へ合流する。分離された液化窒素は、その一部が、液化窒素ラインL1を介して冷熱として熱交換器1へ導入され、その残部が後述する第二熱交換器E3へ導入される。
【0041】
第二熱交換器E3は、気液分離器7で分離された液化窒素(MP LIN)の残部(熱交換器1へ導入された液化窒素の一部の残部)を温端に導入して冷端から導出して冷却する。第二熱交換器E3で冷却された液化窒素(LP LIN)の一部は、低圧液化窒素ラインL11を介してサブクールの冷熱として熱交換器1へ導入される。
第二膨張弁V14は、低圧窒素導出ラインL11aから分岐された第一リサイクル窒素ラインL12に設けられ、低圧液化窒素の残部(熱交換器1へ導入される一部の残部)を膨張する。
低圧窒素導出ラインL11aは、第二熱交換器E3で冷却された液化窒素(LP LIN)を導出し、その一部を低圧液化窒素ラインL11へ送るためのラインである。
【0042】
第一リサイクル窒素ラインL12は、第二膨張弁V14で膨張させた第二窒素気液混合ガスを、第二熱交換器E3の冷端から導入し温端から導出し、低圧窒素ラインL11と合流した後で、窒素液化器E2の冷端から導入し温端から導出するためのラインである。
第二リサイクル窒素ラインL13bは、気液分離器7で分離された中圧の窒素ガスを、窒素液化器E2の冷端から導入し温端から導し、第一リサイクル窒素ラインL12のリサイクル窒素圧縮機C1とフィード窒素圧縮機C2との間に合流させるためのラインである。
【0043】
この構成により、中圧の液化窒素と低圧の低温液化窒素がそれぞれ窒素液化サイクルから供給され、ガス化した各々が液化窒素サイクルに戻される。こうすることで、熱交換器1から排出される窒素ガスを熱およびマスバランス上効率的に回収することができる。
【0044】
上記実施形態おいて、被処理物として酸素に替わりアルゴンでも同様に液化できる。
【0045】
(実施例)
実施形態3(図3)の構成においてシミュレーションを行った。
酸素ガスが21℃、6.8barA、6500Nm/hで、熱交換器1の温端から導入され、冷端から-184℃の液化酸素として導出される。6.8barAにおける酸素の沸点は約-160℃なので、24℃のサブクールとなる中圧液化窒素が-180℃、4.81barA、7079Nm/hで導入され、中圧窒素ガスとして、9.1℃で導出される。
低圧液化窒素が-192℃、3.26barA、1622Nm/hで導入され、低圧窒素ガスとして-185℃で導出される。
低圧液化窒素の温度が圧力低下等で低下した場合、液化酸素の温度もそれに応じて温度低下する。仮に液化酸素温度が2℃設定値より下がったとすると、26℃のサブクールとなって、約8.3%過剰に冷却されていることになる。
【0046】
一例では、熱交換器1は、高さ方向に4000mmの酸素ガスの冷却および凝縮のための第一セクション(冷却・凝縮領域1a)、および900mmの液化酸素のサブクールのための第二セクション(サブクール領域1b)を持ち、設計点においては熱交換器1内の液化酸素の液面は第一セクションと第二セクションの境界上にあるとする。サブクールが8.3%過剰の場合、液化酸素の液面の液位が、900mmx(100%-8.3%)=825mmになるように制御する。液化酸素の比重は1.11なので、測定される差圧が、100mbarから92mbarになるように製品液化の酸素導出ラインL2上の弁4を制御する。
さらに、上記液面の制御時に過剰に冷却された製品液化酸素が供給されることを防ぐために、製品液化酸素を6500Nm/h導出するために、温液化酸素バイパスラインL21から-176℃の温液化酸素を1300Nm/h導出しつつ、-186℃の冷液化酸素を5200Nm/h導出し、混合することで-184℃の製品液化酸素を製造することができる。こうすることで、温度品質が安定した液化酸素製造をしながら、上記8.3%の過剰冷却に相当する液化窒素冷媒の冷熱消費を削減することができる。
【0047】
(別実施形態)
(1)特に明示していないが、各配管ラインに圧力調整装置、流量制御装置などが設置され、圧力調整または流量調整が行われていてもよい。
(2)特に明示していないが、各ラインに制御弁、仕切弁などが設置されていてもよい。
(3)酸素差圧測定部102に替わり、窒素差圧測定部を備え、その差圧値から窒素の液位を算出し、酸素制御弁V4を制御して液位の調整を行い伝熱面積を制御して、酸素の凝縮を制御してもよい。
【図面の符号の説明】
【0048】
1 熱交換器
22 酸素制御部
23 温液化酸素制御部
102 酸素差圧測定部
103 液化酸素温度測定部
A1、A2、A3、A4 酸素液化装置
V4 酸素制御弁
V5 温液化酸素制御弁
【要約】
【課題】効率的に適温の液化製品を供給することができる液化装置およびその方法の提供を目的とする。
【解決手段】酸素液化装置A1は、酸素ガスを液体窒素で冷却、凝縮することのできる熱交換器1を備える。酸素液化装置A1は、酸素流路の温端部と冷端部の差圧を計測する差圧計102と、差圧計102の指示値から熱交換器1の内部の酸素の液位を算出し、酸素制御弁V4を制御して液位の調整を行い伝熱面積を制御して、酸素の凝縮を制御する酸素制御部22を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4