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特許7570057情報通知システム、情報通知方法、及びプログラム
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  • 特許-情報通知システム、情報通知方法、及びプログラム 図1
  • 特許-情報通知システム、情報通知方法、及びプログラム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】情報通知システム、情報通知方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/80 20180101AFI20241011BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
G16H50/80
H04M11/00 302
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021030835
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131733
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 貴丈
(72)【発明者】
【氏名】尾上 圭介
(72)【発明者】
【氏名】寺山 千尋
(72)【発明者】
【氏名】浮田 陽介
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-166231(JP,A)
【文献】特表2020-527787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の利用者のそれぞれの位置情報に基づいて密接を検知する検知部と、
前記複数の利用者がそれぞれ居住する1つ以上の地域における感染症の感染状況に関する情報を取得する情報取得部と、
複数種類の情報の中から前記複数の利用者に通知する情報を選択する選択部と、
前記複数種類の情報の中から前記選択部が選択した情報を通知する通知部と、
を備え、
前記複数種類の情報は、少なくとも、前記感染症と関連する情報と、前記感染症と関連のない情報と、を含み、
前記選択部は、前記情報取得部が取得する前記感染状況に関する情報に基づいて前記感染症の流行期か否かを判定し、前記流行期であると判定した場合は前記感染症と関連する情報を選択し、前記流行期でないと判定した場合は前記感染症と関連のない情報を選択し、
前記通知部は、前記選択部が選択した前記情報を、少なくとも前記複数の利用者のうちで前記検知部が密接を検知した2人以上の前記利用者に通知する、
情報通知システム。
【請求項2】
前記感染状況に関する情報は、前記1つ以上の地域における前記感染症の感染者率、前記1つ以上の地域における前記感染症の感染者数の推移、及び前記1つ以上の地域における前記感染症の実効再生産数、を含み、
前記選択部は、前記感染者率、前記感染者数の推移、及び前記実効再生産数のそれぞれが所定の条件を満たす場合に前記流行期であると判定する、
請求項1記載の情報通知システム。
【請求項3】
前記感染症に関連する情報は、前記利用者が前記感染症に感染する感染リスクの情報を含む、
請求項1又は2記載の情報通知システム。
【請求項4】
前記感染症と関連のない情報は、前記検知部が密接を検知した2人以上の前記利用者に対して意思疎通を促す情報を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の情報通知システム。
【請求項5】
コンピュータが行う情報通知方法であって、
複数の利用者のそれぞれの位置情報に基づいて密接を検知する第1ステップと、
前記複数の利用者がそれぞれ居住する1つ以上の地域における感染症の感染状況に関する情報を取得する第2ステップと、
複数種類の情報の中から前記複数の利用者に通知する情報を選択する第3ステップと、
前記第3ステップで前記複数種類の情報の中から選択した情報を通知する第4ステップと、
を有し、
前記複数種類の情報は、少なくとも、前記感染症と関連する情報と、前記感染症と関連のない情報と、を含み、
前記第3ステップにおいて、前記感染状況に関する情報に基づいて前記感染症の流行期か否かを判定し、前記流行期であると判定した場合は前記感染症と関連する情報を選択し、前記流行期でないと判定した場合は前記感染症と関連のない情報を選択し、
前記第4ステップにおいて、前記第3ステップで選択した前記情報を、前記複数の利用者のうちで前記第1ステップで密接を検知した2人以上の前記利用者に通知する、
情報通知方法。
【請求項6】
1以上のプロセッサに、
請求項5記載の情報通知方法を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報通知システム、情報通知方法、及びプログラムに関し、より詳細には、複数種類の情報の中から選択された情報を通知する情報通知システム、情報通知方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として特許文献1記載の感染症監視システムを例示する。特許文献1記載の感染症監視システムは、感染症にかかわる検査結果を外部から収集する手段と、検査結果を保管する手段と、検査結果から病院内における感染症の検出状況又は感染症患者の分布状況を監視する手段と、を有する。さらに、特許文献1記載の感染症監視システムは、監視結果及びその根拠となる検査結果・集計結果・病棟マップなどの関連する情報を画面、帳票、外部記憶メディア、通信、電子メール等へ外部出力する手段を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-305010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、季節性インフルエンザのような感染症は、主に冬季に流行して感染者が増加するが、春季から秋季にかけては冬季に比べて感染者数が非常に少ない。したがって、従来例のように感染症の感染状況を通知する情報通知システムは、流行期(例えば、冬季)以外の期間(例えば、春季から秋季までの期間)にはほとんど機能しないと考えられる。
【0005】
本開示の目的は、社会の情勢に応じた適切な情報を通知することができる情報通知システム、情報通知方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る情報通知システムは、検知部と、情報取得部と、選択部と、通知部と、を備える。前記検知部は、複数の利用者のそれぞれの位置情報に基づいて密接を検知する。前記情報取得部は、前記複数の利用者がそれぞれ居住する1つ以上の地域における感染症の感染状況に関する情報を取得する。前記選択部は、複数種類の情報の中から前記複数の利用者に通知する情報を選択する。前記通知部は、前記複数種類の情報の中から前記選択部が選択した情報を通知する。前記複数種類の情報は、少なくとも、前記感染症と関連する情報と、前記感染症と関連のない情報と、を含む。前記選択部は、前記情報取得部が取得する前記感染状況に関する情報に基づいて前記感染症の流行期か否かを判定し、前記流行期であると判定した場合は前記感染症と関連する情報を選択し、前記流行期でないと判定した場合は前記感染症と関連のない情報を選択する。前記通知部は、前記選択部が選択した前記情報を、少なくとも前記複数の利用者のうちで前記検知部が密接を検知した2人以上の前記利用者に通知する。
【0007】
本開示の一態様に係る情報通知方法は、コンピュータが行う情報通知方法であって、第1ステップ、第2ステップ、第3ステップ、及び第4ステップを有する。前記第1ステップは、複数の利用者のそれぞれの位置情報に基づいて密接を検知する。前記第2ステップは、前記複数の利用者がそれぞれ居住する1つ以上の地域における感染症の感染状況に関する情報を取得する。前記第3ステップは、複数種類の情報の中から前記複数の利用者に通知する情報を選択する。第4ステップは、前記第3ステップで前記複数種類の情報の中から選択した情報を通知する。前記複数種類の情報は、少なくとも、前記感染症と関連する情報と、前記感染症と関連のない情報と、を含む。前記第3ステップにおいて、前記感染状況に関する情報に基づいて前記感染症の流行期か否かを判定し、前記流行期であると判定した場合は前記感染症と関連する情報を選択し、前記流行期でないと判定した場合は前記感染症と関連のない情報を選択する。前記第4ステップにおいて、前記第3ステップで選択した前記情報を、前記複数の利用者のうちで前記第1ステップで密接を検知した2人以上の前記利用者に通知する。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、前記情報通知方法を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の情報通知システム、情報通知方法、及びプログラムは、社会の情勢に応じた適切な情報を通知することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施形態に係る情報通知システムのシステム構成図である。
図2図2は、同上の情報通知システムの動作説明用のフローチャートである。
図3図3は、同上の情報通知システムの別の動作説明用のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る情報通知システム、情報通知方法及びプログラムについて、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する構成は本開示の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
(1)実施形態に係る情報通知システムの概略
実施形態に係る情報通知システムは、複数の利用者の密接を検知し、感染症の流行期の場合、密接のあった利用者に対して感染症に関連する情報を通知する。また、実施形態に係る情報通知システムは、感染症の流行期でない場合、密接のあった利用者に対して感染症と関連のない情報、例えば、密接のあった利用者との意思疎通に関する情報を通知する。なお、実施形態における「感染症」は、主な感染の態様が飛沫感染である感染症、例えば、新型コロナウイルス感染症、インフルエンザ(季節性のインフルエンザ及び新型インフルエンザ)などの呼吸器系の感染症を含む。また、実施形態における「対象者」は、後述するように専用のアプリケーション(以下、アプリと略す。)が実行可能なスマートフォン、タブレット端末などの携帯通信端末2を所持している人である。さらに、実施形態における「感染症に関連する情報」は、利用者が感染症に感染するリスク(感染リスク)を推定しうる情報、例えば、直近の1~2週間に、感染した利用者と密接したことがあるという情報などを含む。
【0013】
(2)実施形態に係る情報通知システムの構成
実施形態に係る情報通知システム1(以下、情報通知システム1と略す。)は、図1に示すように、検知部10、情報取得部11、選択部12、通知部13、及び記憶部14を備える。また、情報通知システム1は、複数のスキャナ3、位置情報サーバ4、及び複数の携帯通信端末2を備えてもよい。ただし、図1では、スキャナ3、及び携帯通信端末2をそれぞれ1つだけ図示している。
【0014】
(2-1)携帯通信端末
複数の携帯通信端末2はそれぞれ、複数の対象者に1つずつ携帯される。各携帯通信端末2は、Bluetooth(登録商標)Low Energyの通信方式によってビーコン信号(アドバタイズメントパケット)を定期的に送信する。このビーコン信号の送信元アドレスには、各携帯通信端末2に割り当てられた固有の識別符号(Bluetooth(登録商標)Address)が設定される。
【0015】
各携帯通信端末2は、制御部20、表示部21、操作入力受付部22、音入力部23、通信部24、ビーコン送信部25などを備える(図1参照)。制御部20は、CPU(Central Processing Unit)を有している。通信部24は、Wi-Fi(登録商標)用の通信回路、又はWi-Fi(登録商標)の通信回路と移動体通信用の通信回路、を有している。ビーコン送信部25は、Bluetooth(登録商標)Low Energy用の通信回路を有している。ただし、制御部20、通信部24、及びビーコン送信部25は、スマートフォン又はタブレット端末が備えるSoC(System on Chip)として一体に構成されている。
【0016】
表示部21は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示デバイスを有している。操作入力受付部22は、例えば、タッチパネルを有し、対象者のタッチ操作による操作入力を受け付ける。なお、表示部21と操作入力受付部22は、タッチパネルディスプレイとして一体に構成されてもよい。
【0017】
音入力部23は、マイクロホンと、マイクロホンから入力するアナログの音響信号をディジタルの音響信号(音響データ)に変換するA/D変換回路と、を有している。音入力部23は、A/D変換回路で変換したディジタルの音響信号(音響データ)を制御部20に出力する。
【0018】
(2-2)スキャナ
複数のスキャナ3はそれぞれ、複数の利用者が滞在する場所、例えば、複数の利用者が勤務する建物(オフィスビルなど)の内部に設置される。各スキャナ3は、複数の携帯通信端末2から送信されるビーコン信号を受信する。各スキャナ3は、受信したビーコン信号の信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)と、各スキャナ3に割り当てられた識別符号と、を位置情報サーバ4に送信する。なお、各スキャナ3と位置情報サーバ4の間の通信は、有線LANによって行われる。ただし、各スキャナ3と位置情報サーバ4の間の通信は、無線LANによって行われても構わない。
【0019】
(2-3)位置情報サーバ
位置情報サーバ4は、例えば、コンピュータシステムと、コンピュータシステムによって実行されるプログラムと、によって実現される。
【0020】
位置情報サーバ4は、各スキャナ3と通信し、各スキャナ3の識別符号、及びビーコン信号の信号強度に基づいて、各携帯通信端末2の位置(携帯通信端末2を携帯する対象者の位置)を推定する。そして、位置情報サーバ4は、推定した各携帯通信端末2の位置を、各携帯通信端末2の識別符号及びビーコン信号を受信した時刻と対応付けて記憶する。なお、以下の説明において、「位置情報」とは、携帯通信端末2の識別符号と時刻に対応付けられた携帯通信端末2(対象者)の位置を示す情報である。
【0021】
(2-4)検知部
検知部10は、位置情報サーバ4から各携帯通信端末2の位置情報を取得する。検知部10が取得した各携帯通信端末2の位置情報は、選択部12を通じて記憶部14に記憶される。なお、検知部10は、VPN(Virtual Private Network)又はWAN(Wide Area Network)を介して位置情報サーバ4とデータ通信を行うことが好ましい。
【0022】
さらに、検知部10は、位置情報に基づいて、任意の日時及び任意の場所における複数の対象者同士の密接を検知する。例えば、検知部10は、記憶部14に記憶されている各携帯通信端末2の位置情報を参照し、2つ以上の携帯通信端末2同士の距離が上限値(例えば、2m)以下である状況が所定時間(例えば、1分間)以上継続していたか否かを調べる。そして、検知部10は、2つ以上の携帯通信端末2同士の距離が上限値以下である状況が所定時間以上継続していた場合、当該2つ以上の携帯通信端末2のそれぞれが密接していたことを検知する。検知部10は、密接があったことを検知した場合、その検知結果を記憶部14に記憶させる。検知結果は、密接があったことを検知した2つ以上の携帯通信端末2のそれぞれの識別符号、密接していたときの各携帯通信端末2の位置情報、密接していた日時、及び密接していた時間(継続時間)を含む。
【0023】
(2-5)情報取得部
情報取得部11は、複数の利用者がそれぞれ居住する1つ以上の地域における感染症の感染状況に関する情報を取得する。
【0024】
感染状況に関する情報は、複数の利用者が居住する1つ以上の地域における、感染者率、感染者数の推移、及び実効再生産数、のうちの少なくとも1つを含む。また、感染状況に関する情報は、各地域における感染者の病床使用率、感染症のウィルス検査の陽性率などを含む場合もある。さらに、感染状況に関する情報は、政府による緊急事態宣言の発出の有無、都道府県知事による独自の警報発令の有無、などを含む場合もある。なお、感染状況に関する情報は、ウェブサイトにおける感染症の流行に関する記事の掲載数、SNS(social networking service)における感染症の流行に関するキーワードの検出数、などを含む場合もある。
【0025】
情報取得部11は、例えば、インターネットを通じて、感染状況に関する情報を自動的に収集して取得することも可能であるし、オペレータがコンピュータを使用して手動で入力した感染状況に関する情報を取得することも可能である。情報取得部11は、取得した感染状況に関する情報を、選択部12を通じて記憶部14に記憶させる。
【0026】
情報取得部11は、各携帯通信端末2の音入力部23の音情報を、各携帯通信端末2の通信部24とデータ通信することによって各携帯通信端末2から取得する。音情報は、音入力部23から制御部20に入力される音響データと、音響データが制御部20に入力された日時と、を含む。情報取得部11が取得した各携帯通信端末2の音情報は、選択部12を通じて記憶部14に記憶される。なお、情報取得部11は、Wi-Fi(登録商標)又は移動体通信によって通信部24とデータ通信を行う。
【0027】
(2-6)記憶部
記憶部14は、1台以上の補助記憶装置(ハードディスク装置、SSD装置など)を有している。記憶部14は、1台以上の補助記憶装置に、各携帯通信端末2の位置情報、情報取得部11が取得する感染状況に関する情報、複数の利用者に固有の情報、複数の携帯通信端末2から取得する音情報、を記憶している。また、記憶部14は、複数の利用者のそれぞれの居住地域の情報(住所など)を、各利用者が携帯する携帯通信端末2の識別符号と対応付けて記憶している。
【0028】
(2-7)選択部
選択部12は、感染状況に基づいて感染症の流行期か否かを判定する。選択部12は、流行期であると判定した場合は感染症と関連する情報を選択する。選択部12は、流行期でないと判定した場合は感染症と関連のない情報を選択する。選択部12は、選択した情報を通知部13に渡す。なお、選択部12による情報の選択に関する詳しい動作については、後述する。
【0029】
(2-8)通知部
通知部13は、選択部12が選択した情報を、対象者が携帯する携帯通信端末2に送信することによって対象者に通知する。通知部13は、Wi-Fi(登録商標)又は移動体通信によって各携帯通信端末2とデータ通信を行う。
【0030】
ここで、検知部10、情報取得部11、選択部12、通知部13、及び記憶部14は、コンピュータシステムと、コンピュータシステムで実行されるプログラムと、によって実現されてもよい。あるいは、検知部10、情報取得部11、選択部12、通知部13、及び記憶部14は、複数のコンピュータシステムに分散されて実現されても構わない。
【0031】
(3)情報通知システムの動作
次に、情報通知システム1の動作を詳細に説明する。
【0032】
各携帯通信端末2には、感染症の流行期に感染症に関連する情報を情報通知システム1から受け取って利用者に通知する動作を行うアプリ(第1のアプリ)がインストールされている。また、各携帯通信端末2には、感染症の流行期でないときに感染症と関連のない情報を情報通知システム1から受け取って利用者に通知する動作を行うアプリ(第2のアプリ)がインストールされている。なお、第1のアプリ及び第2のアプリは、音入力部23から制御部20に入力する音情報を一定の周期(例えば、1秒から数十秒ごと)で通信部24から情報通知システム1の情報取得部11に送信する動作も行う。
【0033】
(3-1)感染症の流行期における動作
情報通知システム1は、感染症の流行期においては、複数の利用者に対して感染症に関連する情報を通知する。また、情報通知システム1は、いずれかの利用者が感染症に感染していることが判明した場合、感染した利用者(以下、感染者という。)と密接があった利用者に対して、感染者との密接があったことを通知する。ただし、情報通知システム1は、感染者と密接があった利用者に対して、感染症に関連する情報として感染リスク(例えば、感染している可能性を示すパーセンテージなど)を通知しても構わない。
【0034】
各携帯通信端末2において、制御部20は、第1のアプリと第2のアプリを択一的に実行する。第1のアプリを実行中の制御部20は、情報通知システム1の通知部13から送信される情報(感染症に関連する情報)を通信部24を介して受け取ると、受け取った感染症に関連する情報を表示部21に表示させて利用者に通知する。
【0035】
また、対象者の中から感染者が発生した場合、感染者と濃厚接触した対象者の携帯通信端末2に、情報通知システム1から感染リスクが通知される。感染リスクが通知された対象者は、例えば、感染症の検査を受ける、出社せずに在宅勤務する、といった適切な行動を選択して行うことができる。その結果、情報通知システム1は、感染症の感染拡大の抑制に貢献することができる。
【0036】
(3-2)感染症の非流行期における動作
情報通知システム1は、感染症の非流行期(流行していない期間)においては、複数の利用者に対して感染症と関連のない情報を通知する。例えば、情報通知システム1は、感染症の非流行期においては、密接があった複数の利用者の携帯通信端末2から収集した音情報に基づき、複数の利用者が会話した時間(例えば、直近1週間の会話時間)を計測する。そして、情報通知システム1は、密接があった複数の利用者のそれぞれの携帯通信端末2に対して、複数の利用者の会話時間の計測値を各利用者に通知する。
【0037】
しかして、情報通知システム1は、各利用者に対して、上述のような他の利用者の会話時間の計測値(感染症と関連のない情報)を通知することにより、他の利用者との意思疎通を促すことができる。
【0038】
(3-3)感染症の非流行期から流行期に移行するときの動作
次に、感染症の非流行期から流行期に移行したときの情報通知システム1の動作を、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0039】
情報通知システム1の選択部12は、複数の利用者のそれぞれの居住している地域ごとに、直近1週間における人口10万人当たりの新規感染者数Nxをしきい値(例えば、0.5人)と比較する(図2のステップS1)。
【0040】
新規感染者数Nxがしきい値未満であれば、選択部12は、感染症が非流行期から流行期に移行していないと判断する。選択部12は、感染症が非流行期であると判断すれば、引き続いて感染症と関連のない情報を選択し、通知部13から各利用者の携帯通信端末2に通知する。
【0041】
一方、新規感染者数Nxがしきい値以上であると、選択部12は、新規感染者数の直近1週間の平均値が増加しているか否かを判断する(図2のステップS2)。
【0042】
新規感染者数の平均値が増加していなければ、選択部12は、感染症が非流行期から流行期に移行していないと判断し、感染症と関連のない情報を選択して、通知部13から各利用者の携帯通信端末2に通知する。
【0043】
一方、新規感染者数の平均値が増加していれば、選択部12は、複数の利用者のそれぞれの居住している地域ごとに、実効再生産数Rtをしきい値(例えば、1)と比較する(図2のステップS3)。
【0044】
実効再生産数が1未満であれば、選択部12は、感染症が非流行期から流行期に移行していないと判断し、感染症と関連のない情報を選択して、通知部13から各利用者の携帯通信端末2に通知する。
【0045】
一方、実効再生産数が1以上であれば、選択部12は、感染症が非流行期から流行期に移行したと判断し、利用者に対して、通知する情報を感染症に関連する情報に切り替えることに同意するか否かを確認する(図2のステップS4)。具体的には、選択部12は、利用者の意思確認を要求するコマンドを通知部13を介して携帯通信端末2に送信する。携帯通信端末2の制御部20は、選択部12から受け取ったコマンドに従って、通知する情報の切替えに同意するか否かのメッセージを表示部21に表示させる。そして、携帯通信端末2の制御部20は、利用者の同意又は不同意の操作入力を操作入力受付部22から受け取り、受け取った操作入力に対応するメッセージ(同意又は不同意)を、通信部24から情報通知システム1に送信させる。
【0046】
携帯通信端末2から受け取ったメッセージが不同意の場合、選択部12は、引き続いて感染症と関連のない情報を選択し、通知部13から各利用者の携帯通信端末2に通知する。
【0047】
一方、携帯通信端末2から受け取ったメッセージが同意の場合、選択部12は、利用者に通知する情報を、感染症に関連する情報に切り替える(図2のステップS4)。
【0048】
(3-4)感染症の流行期から非流行期に移行するときの動作
次に、感染症の流行期から非流行期に移行したときの情報通知システム1の動作を、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0049】
情報通知システム1の選択部12は、複数の利用者のそれぞれの居住している地域ごとに、直近1週間における人口10万人当たりの新規感染者数Nxをしきい値(例えば、0.5人)と比較する(図3のステップS6)。
【0050】
新規感染者数Nxがしきい値以上であれば、選択部12は、感染症が流行期から非流行期に移行していないと判断する。選択部12は、感染症が流行期であると判断すれば、引き続いて感染症と関連する情報を選択し、通知部13から各利用者の携帯通信端末2に通知する。
【0051】
一方、新規感染者数Nxがしきい値未満であると、選択部12は、新規感染者数の直近1週間の平均値が増加しているか否かを判断する(図3のステップS7)。
【0052】
新規感染者数の平均値が増加していれば、選択部12は、感染症が流行期から非流行期に移行していないと判断し、感染症と関連する情報を選択して、通知部13から各利用者の携帯通信端末2に通知する。
【0053】
一方、新規感染者数の平均値が増加していなければ、選択部12は、複数の利用者のそれぞれの居住している地域ごとに、実効再生産数Rtをしきい値(例えば、1)と比較する(図3のステップS8)。
【0054】
実効再生産数が1以上であれば、選択部12は、感染症が流行期から非流行期に移行していないと判断し、感染症と関連する情報を選択して、通知部13から各利用者の携帯通信端末2に通知する。
【0055】
一方、実効再生産数が1未満であれば、選択部12は、全国の新規感染者数が一定期間(例えば、7日間)続けてしきい値(例えば、100人)以下であるか否かを判断する(図3のステップS9)。
【0056】
全国の新規感染者数が一定期間続けてしきい値を超えていれば、選択部12は、感染症が流行期から非流行期に移行していないと判断し、感染症と関連する情報を選択して、通知部13から各利用者の携帯通信端末2に通知する。
【0057】
一方、全国の新規感染者数が一定期間続けてしきい値以下であれば、選択部12は、感染症が流行期から非流行期に移行したと判断し、利用者に対して、通知する情報を感染症と関連のない情報に切り替えることに同意するか否かを確認する(図3のステップS10)。具体的には、選択部12は、利用者の意思確認を要求するコマンドを通知部13を介して携帯通信端末2に送信する。携帯通信端末2の制御部20は、選択部12から受け取ったコマンドに従って、通知する情報の切替えに同意するか否かのメッセージを表示部21に表示させる。そして、携帯通信端末2の制御部20は、利用者の同意又は不同意の操作入力を操作入力受付部22から受け取り、受け取った操作入力に対応するメッセージ(同意又は不同意)を、通信部24から情報通知システム1に送信させる。
【0058】
携帯通信端末2から受け取ったメッセージが不同意の場合、選択部12は、引き続いて感染症と関連する情報を選択し、通知部13から各利用者の携帯通信端末2に通知する。
【0059】
一方、携帯通信端末2から受け取ったメッセージが同意の場合、選択部12は、利用者に通知する情報を、感染症と関連のない情報に切り替える(図3のステップS11)。
【0060】
(4)情報通知システムの利点
上述のように情報通知システム1は、感染症の感染状況が流行期である場合は感染症と関連する情報を選択し、流行期でない場合は感染症と関連のない情報を選択して利用者に通知する。そのため、情報通知システム1は、感染症の感染状況が流行期か否かという社会の情勢に応じた適切な情報を利用者に通知することができるという利点がある。
【0061】
また、情報通知システム1において、選択部12は、感染者率、感染者数の推移、及び実効再生産数のそれぞれが所定の条件を満たす場合に流行期であると判定する。ゆえに、情報通知システム1は、複数種類の指標に基づいて感染症の流行期か否かを判定するので、感染症の流行期の判定精度の向上を図ることができる。
【0062】
さらに、情報通知システム1は、感染症に関連する情報に、利用者の感染症に対する感染リスクの情報を含んでいるので、感染症の感染拡大の抑制に貢献することができる。
【0063】
また、情報通知システム1は、感染症と関連のない情報に、検知部10が密接を検知した2人以上の利用者に対して意思疎通を促す情報を含んでいるので、利用者同士のコミュニケーションを活発化することができる。
【0064】
(5)情報通知方法及びプログラム
実施形態に係る情報通知方法は、第1ステップ、第2ステップ、第3ステップ、及び第4ステップを有する。第1ステップは、複数の利用者のそれぞれの位置情報に基づいて密接を検知する。第2ステップは、複数の利用者がそれぞれ居住する1つ以上の地域における感染症の感染状況に関する情報を取得する。第3ステップは、複数種類の情報の中から複数の利用者に通知する情報を選択する。第4ステップは、第3ステップで複数種類の情報の中から選択した情報を通知する。複数種類の情報は、少なくとも、感染症と関連する情報と、感染症と関連のない情報と、を含む。第3ステップにおいて、感染状況に関する情報に基づいて感染症の流行期か否かを判定し、流行期であると判定した場合は感染症と関連する情報を選択し、流行期でないと判定した場合は感染症と関連のない情報を選択する。第4ステップにおいて、第3ステップで選択した情報を、複数の利用者のうちで第1ステップで密接を検知した2人以上の利用者に通知する。
【0065】
実施形態に係る情報通知方法は、上述した情報通知システム1によって実行されてもよいし、実施形態に係るプログラム(コンピュータプログラム)を1つ以上のプロセッサに実行させることで実現しても構わない。
【0066】
実施形態に係る情報通知方法及びプログラムによれば、感染症の感染状況が流行期か否かという社会の情勢に応じた適切な情報を利用者に通知することができる。
【0067】
(6)まとめ
本開示の第1の態様に係る情報通知システム(1)は、検知部(10)と、情報取得部(11)と、選択部(12)と、通知部(13)と、を備える。検知部(10)は、複数の利用者のそれぞれの位置情報に基づいて密接を検知する。情報取得部(11)は、複数の利用者がそれぞれ居住する1つ以上の地域における感染症の感染状況に関する情報を取得する。選択部(12)は、複数種類の情報の中から複数の利用者に通知する情報を選択する。通知部(13)は、複数種類の情報の中から選択部(12)が選択した情報を通知する。複数種類の情報は、少なくとも、感染症と関連する情報と、感染症と関連のない情報と、を含む。選択部(12)は、情報取得部(11)が取得する感染状況に関する情報に基づいて感染症の流行期か否かを判定する。選択部(12)は、流行期であると判定した場合は感染症と関連する情報を選択する。選択部(12)は、流行期でないと判定した場合は感染症と関連のない情報を選択する。通知部(13)は、選択部(12)が選択した情報を、少なくとも複数の利用者のうちで検知部(10)が密接を検知した2人以上の利用者に通知する。
【0068】
第1の態様に係る情報通知システム(1)は、社会の情勢に応じた適切な情報を利用者に通知することができる。
【0069】
本開示の第2の態様に係る情報通知システム(1)は、第1の態様との組合せにより実現され得る。第2の態様に係る情報通知システム(1)において、感染状況に関する情報は、1つ以上の地域における感染症の感染者率、1つ以上の地域における感染症の感染者数の推移、及び1つ以上の地域における感染症の実効再生産数、を含むことが好ましい。選択部(12)は、感染者率、感染者数の推移、及び実効再生産数のそれぞれが所定の条件を満たす場合に流行期であると判定することが好ましい。
【0070】
第2の態様に係る情報通知システム(1)は、複数種類の指標に基づいて感染症の流行期か否かを判定するので、感染症の流行期の判定精度の向上を図ることができる。
【0071】
本開示の第3の態様に係る情報通知システム(1)は、第1又は第2の態様との組合せにより実現され得る。第3の態様に係る情報通知システム(1)において、感染症に関連する情報は、利用者が感染症に感染する感染リスクの情報を含むことが好ましい。
【0072】
第3の態様に係る情報通知システム(1)は、感染症の感染拡大の抑制に貢献することができる。
【0073】
本開示の第4の態様に係る情報通知システム(1)は、第1~第3のいずれかの態様との組合せにより実現され得る。第4の態様に係る情報通知システム(1)において、感染症と関連のない情報は、検知部(10)が密接を検知した2人以上の利用者に対して意思疎通を促す情報を含むことが好ましい。
【0074】
第4の態様に係る情報通知システム(1)は、利用者同士のコミュニケーションを活発化することができる。
【0075】
本開示の第5の態様に係る情報通知方法は、第1ステップ、第2ステップ、第3ステップ、及び第4ステップを有する。第1ステップは、複数の利用者のそれぞれの位置情報に基づいて密接を検知する。第2ステップは、複数の利用者がそれぞれ居住する1つ以上の地域における感染症の感染状況に関する情報を取得する。第3ステップは、複数種類の情報の中から複数の利用者に通知する情報を選択する。第4ステップは、第3ステップで複数種類の情報の中から選択した情報を通知する。複数種類の情報は、少なくとも、感染症と関連する情報と、感染症と関連のない情報と、を含む。第3ステップにおいて、感染状況に関する情報に基づいて感染症の流行期か否かを判定し、流行期であると判定した場合は感染症と関連する情報を選択する。第3ステップにおいて、流行期でないと判定した場合は感染症と関連のない情報を選択する。第4ステップにおいて、第3ステップで選択した情報を、複数の利用者のうちで第1ステップで密接を検知した2人以上の利用者に通知する。
【0076】
第5の態様に係る情報通知方法は、社会の情勢に応じた適切な情報を利用者に通知することができる。
【0077】
本開示の第6の態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、第5の態様に係る感染リスク評価方法を実行させる。
【0078】
第6の態様に係るプログラムは、社会の情勢に応じた適切な情報を利用者に通知することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 情報通知システム
10 検知部
11 情報取得部
12 選択部
13 通知部
14 記憶部
図1
図2
図3