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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】コモンモードノイズフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20241011BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20241011BHJP
   H03H 7/09 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F17/00 D
H01F27/00 160
H03H7/09 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021533030
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2020026985
(87)【国際公開番号】W WO2021010309
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2019131531
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 吉晴
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/072078(WO,A1)
【文献】特開2013-191660(JP,A)
【文献】特開2014-107653(JP,A)
【文献】特開2017-041492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 27/00
H03H 7/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁体層と、
前記第1の絶縁体層の上面に積層された第2の絶縁体層と、
前記第2の絶縁体層の上面に積層された第3の絶縁体層と、
前記第3の絶縁体層の上面に積層された第4の絶縁体層と、
前記第1の絶縁体層の前記上面に設けられた第1の渦巻き状導体と、
前記第2の絶縁体層の前記上面に設けられて、前記第1の渦巻き状導体に接続された第2の渦巻き状導体と、
を有する第1のコイルと、
前記第1の絶縁体層の下面に設けられて前記第1の絶縁体層を介して前記第1の渦巻き状導体に対向する第3の渦巻き状導体と、
前記第3の絶縁体層の前記上面に設けられて前記第3の絶縁体層を介して前記第2の渦巻き状導体に対向し、前記第3の渦巻き状導体に接続された第4の渦巻き状導体と、
を有する第2のコイルと、
前記第4の絶縁体層の上面に設けられて前記第4の絶縁体層を介して前記第4の渦巻き状導体に対向しており、前記第2のコイルに接続された一端と、開放された他端とを有する第1の導体層と、
前記第1の絶縁体層の前記下面に積層された第5の絶縁体層と、
前記第5の絶縁体層の下面に設けられて前記第5の絶縁体層を介して前記第3の渦巻き状導体に対向している第2の導体層であって、前記第2のコイルに接続された一端と、開放された他端とを有する第2の導体層と、
を備えたコモンモードノイズフィルタ。
【請求項2】
前記第1導体層はオープンコイルである、請求項1に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項3】
前記オープンコイルの外周から巻く方向は、前記第4の渦巻き状導体の外周から巻く方向と同じである、請求項2に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項4】
前記オープンコイルの外周から巻く方向は、前記第4の渦巻き状導体の外周から巻く方向と異なる、請求項2に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項5】
前記第2の渦巻き状導体は、前記第2の絶縁体層を介して前記第1の渦巻き状導体に対向する、請求項1から4のいずれか一項に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用される小形で薄型のコモンモードノイズフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
図13は従来のコモンモードノイズフィルタ500の分解斜視図である。コモンモードノイズフィルタ500は、積層された複数の絶縁体層1a~1fに形成されたコイル2、3を有する。コイル2は渦巻状のコイル導体4a、4bを接続して構成され、コイル3は渦巻状のコイル導体5a、5bを接続して構成されている。コイル2を構成するコイル導体4a、4bは、コイル3を構成するコイル導体5a、5bと交互に配置されている。
【0003】
特許文献1はコモンモードノイズフィルタ500に類似の従来のコモンモードノイズフィルタを開示している。
【0004】
デジタルデータラインからのノイズが、近傍の全地球測位システム(GPS)などの全地球航法衛星システム(GNSS)アンテナに入ると受信感度が劣化してしまう。GNSS信号は、他の無線通信機能とは違い、衛星からの微弱な信号を受信するので、ノイズの影響を受けやすい。したがって、コモンモードノイズフィルタでは、GNSS周波数帯において、コモンモードノイズフィルタに入力された差動モード信号(デジタル信号)がコモンモードノイズに変換されえるモード変換を低減することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-138146号公報
【発明の概要】
【0006】
コモンモードノイズフィルタは、第1の絶縁体層と、第2の絶縁体層と、第3の絶縁体層と、第4の絶縁体層と、第1のコイルと、第2のコイルと、第1の導体層と、第5の絶縁体層と、第2の導体層と、を備える。前記第2の絶縁体層は、前記第1の絶縁体層の上面に積層されている。前記第3の絶縁体層は、前記第2の絶縁体層の上面に積層されている。前記第4の絶縁体層は、前記第3の絶縁体層の上面に積層されている。前記第1のコイルは、前記第1の絶縁体層の前記上面に設けられた第1の渦巻き状導体と、前記第2の絶縁体層の前記上面に設けられて、前記第1の渦巻き状導体に接続された第2の渦巻き状導体と、を有する。前記第2のコイルは、前記第1の絶縁体層の下面に設けられて前記第1の絶縁体層を介して前記第1の渦巻き状導体に対向する第3の渦巻き状導体と、前記第3の絶縁体層の前記上面に設けられて前記第3の絶縁体層を介して前記第2の渦巻き状導体に対向し、前記第3の渦巻き状導体に接続された第4の渦巻き状導体と、を有する。前記第1の導体層は、前記第4の絶縁体層の上面に設けられて前記第4の絶縁体層を介して前記第4の渦巻き状導体に対向しており、前記第2のコイルに接続された一端と、開放された他端とを有する。前記第5の絶縁体層は、前記第1の絶縁体層の前記下面に積層されている。前記第2の導体層は、前記第5の絶縁体層の下面に設けられて前記第5の絶縁体層を介して前記第3の渦巻き状導体に対向している第2の導体層であって、前記第2のコイルに接続された一端と、開放された他端とを有する。
【0007】
このコモンモードノイズフィルタはモード変換の発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図である。
図2A図2Aは実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの斜視図である。
図2B図2B図2Aに示すコモンモードノイズフィルタの線IIB-IIBにおける断面図である。
図3図3は実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの回路模式図である。
図4図4は実施の形態1における他のコモンモードノイズフィルタの分解斜視図である。
図5図5は比較例のコモンモードノイズフィルタの回路模式図である。
図6図6は実施の形態1におけるさらに他のコモンモードノイズフィルタの分解斜視図である。
図7図7図6に示すコモンモードノイズフィルタの回路模式図である。
図8図8は実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図である。
図9図9は実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタの回路模式図である。
図10図10は実施の形態1、2におけるコモンモードノイズフィルタのモード変換の周波数特性を示す図である。
図11図11は実施の形態2における他のコモンモードノイズフィルタの分解斜視図である。
図12図12図11に示すコモンモードノイズフィルタの回路模式図である。
図13図13は従来のコモンモードノイズフィルタの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタ1001の分解斜視図である。図2Aはコモンモードノイズフィルタ1001の斜視図である。図2B図2Aに示すコモンモードノイズフィルタ1001の線IIB-IIBにおける断面図である。図3はコモンモードノイズフィルタ1001の回路模式図である。
【0010】
コモンモードノイズフィルタ1001は、絶縁体層11a~11fと、絶縁体層11aに形成された渦巻き状導体12と、絶縁体層11cに形成された渦巻き状導体13と、絶縁体層11bに形成された渦巻き状導体15と、絶縁体層11dに形成された渦巻き状導体16と、絶縁体層11eに形成された導体層18aとを備えている。絶縁体層11a~11fはこの順で上方向である積層方向Duに積層されている。絶縁体層11bは絶縁体層11aの上面に設けられている。すなわち、絶縁体層11aは絶縁体層11bの下面に設けられている。絶縁体層11cは絶縁体層11bの上面に設けられている。絶縁体層11dは絶縁体層11cの上面に設けられている。絶縁体層11eは絶縁体層11dの上面に設けられている。絶縁体層11fは絶縁体層11eの上面に設けられている。渦巻き状導体12、13は互いに直列に接続されてコイル14を構成する。渦巻き状導体15、16は互いに直列に接続されてコイル17を構成する。
【0011】
渦巻き状導体12は絶縁体層11bの下面に設けられている。渦巻き状導体15は絶縁体層11bの上面に設けられている。渦巻き状導体13は絶縁体層11cの上面に設けられている。渦巻き状導体16は絶縁体層11dの上面に設けられている。渦巻き状導体15は絶縁体層11bを介して渦巻き状導体12に対向する。渦巻き状導体13は絶縁体層11cを介して渦巻き状導体15に対向する。渦巻き状導体16は絶縁体層11cを介して渦巻き状導体13に対向する。
【0012】
導体層18aの一端はコイル14に接続されており、他端は開放されている。導体層18aは、渦巻き状導体12、13、15、16のうち積層方向Duで最上部に位置する渦巻き状導体16に積層方向Duで隣接し、かつ対向している。導体層18aは、絶縁体層11eの上面に設けられて絶縁体層11eを介して渦巻き状導体16に対向する。
【0013】
絶縁体層11a~11fは、磁性体ではない、例えばCu-Znフェライト、ガラスセラミック等の絶縁性の非磁性材料よりなりシート形状を有する。
【0014】
絶縁体層11a~11fの枚数は、図1に示した枚数に限定されない。絶縁体層11aの下方と、絶縁体層11fの上方には、Cu-Ni-Znフェライト等の絶縁性の磁性材料よりなるシート形状を有する磁性体層が配置されていてもよい。また、絶縁体層11a~11fは、Cu-Ni-Znフェライト等の磁性材料で構成されていてもよい。
【0015】
積層方向Duに積層された絶縁体層11a~11fは積層体19を構成する。積層体19の表面には外部電極20a~20dが設けられている。
【0016】
コイル14は、1つの信号線として積層体19の内部に配置され、渦巻き状導体12、13で構成されている。コイル17は、他方の1つの信号線として積層体19の内部に配置され、渦巻き状導体15、16で構成されている。
【0017】
渦巻き状導体12は渦巻き状導体13とビア電極21aを介して接続されており、渦巻き状導体15は渦巻き状導体16とビア電極21bを介して接続されている。
【0018】
そして、渦巻き状導体12、13、15、16は、銀等の導電材料を渦巻状にめっきまたは印刷することにより形成されている。
【0019】
渦巻き状導体12は絶縁体層11aの上面に設けられ、渦巻き状導体13は絶縁体層11cの上面に設けられ、渦巻き状導体15は絶縁体層11bの上面に設けられ、渦巻き状導体16は絶縁体層11dの上面に設けられている。
【0020】
すなわち、コイル14を構成する渦巻き状導体12、13は、コイル17を構成する渦巻き状導体15、16と交互に積層されている。渦巻き状導体12、13、15、16のうち、上方向である積層方向Duで渦巻き状導体16が最上部に位置し、渦巻き状導体12が最下部に位置している。
【0021】
コイル14の両端は外部電極20a、20bにそれぞれ接続されている、すなわち渦巻き状導体12の一端は外部電極20aに接続されており、渦巻き状導体13の一端は外部電極20bに接続されている。コイル17の両端は外部電極20c、20dにそれぞれ接続されている。すなわち渦巻き状導体15の一端は外部電極20cに接続されており、渦巻き状導体16の一端は外部電極20dに接続されている。
【0022】
ここで、上面視すなわち積層方向Duに見て、渦巻き状導体12、15のそれぞれの一部は略同じ位置に配置され、同一の巻き方向に巻かれていることによって互いに磁気結合してコモンモードフィルタ部22を構成する。
【0023】
同様に、上面視にて渦巻き状導体13、16のそれぞれの一部は略同じ位置に配置され、同一の巻き方向に巻かれることによって互いに磁気結合してコモンモードフィルタ部23を構成する。これにより、コイル14、17は積層方向Duで互いに対向して、互いに磁気結合している。
【0024】
導体層18aは、絶縁体層11eの上面に位置する。導体層18aの一端はコイル14と接続され、他端は開放すなわち電気的に何にも接続されておらず浮いている。導体層18aは積層方向Duで最上部に位置する渦巻き状導体16と積層方向Duで隣接し、かつ対向している。
【0025】
すなわち、導体層18aと渦巻き状導体16の部分では、コイル14の一部がコイル17の一部と対向する。この結果、導体層18aと渦巻き状導体16の間、すなわちコイル14、17の間に浮遊容量C2aが発生する。渦巻き状導体16と導体層18aとの間の距離すなわち絶縁体層11eの厚みを調整することによって、浮遊容量C2aを調整できる。
【0026】
導体層18aの一端は外部電極20aに接続され、外部電極20aを介してコイル14の渦巻き状導体12に接続されている。
【0027】
図1に示す導体層18aは、渦巻き状導体よりなるオープンコイルである。積層方向Duに見て、導体層18aの渦巻き形状の外周から内周に向かって巻く方向は、渦巻き状導体16の渦巻き形状の外周から内周に向かって巻く方向と同じである。電流の流れないオープンコイルである導体層18aは渦巻き状導体16とほとんど磁気結合しないので、渦巻き状導体16に流れる差動信号への影響が小さく、差動信号の損失を抑えることができる。
【0028】
図4は実施の形態1における他のコモンモードノイズフィルタ1002の分解斜視図である。図4において、図1に記載のコモンモードノイズフィルタ1001と同じ部分には同じ参照番号を付す。図4に示すコモンモードノイズフィルタ1002では、積層方向Duに見て、導体層18aの外周から巻く方向が、渦巻き状導体16の外周から巻く方向の逆である。この構成により、導体層18aと渦巻き状導体16との磁気結合によって、差動モードでも減衰特性が得られ、差動モード信号による近隣周辺へのノイズ漏洩を低減させることができる。
【0029】
なお、導体層18aは、オープンコイルではなく、他端が一端に接続された閉ループ(クローズコイル)であってもよい。また、導体層18aは渦巻き形状に限定されず板形状、メッシュ系状、ミアンダ形状を有していてもよい。ただし、閉ループ、導体層18aが板形状を有する場合は磁界を遮蔽してコモンモードインピーダンスが低下する可能性があるので、渦巻き形状のオープンコイルを有することがより好ましい。さらに、導体層18aの巻き数は、渦巻き状導体12、13、15、16の巻き数と同じまたは少なくしてもよい。
【0030】
実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタ1001、1002では、コイル14の渦巻き状導体13と、コイル17の渦巻き状導体15との間に発生する浮遊容量C1以外に、渦巻き状導体16と導体層18aとの間にも浮遊容量C2aが発生する。
【0031】
導体層18aは渦巻き状導体12と接続されているので、浮遊容量C2aは、渦巻き状導体12、16の間に発生することになる。
【0032】
すなわち、積層方向Duで互いに隣接する渦巻き状導体13、15の間で発生する浮遊容量C1だけでなく、積層方向Duで互いに隣接しない渦巻き状導体12、16との間にも浮遊容量C2aが発生する。これにより、コイル14、17との2つの信号線の対称性が保持され、2つの信号線のバランスが良化し、モード変換が生じる可能性を低減できる。
【0033】
図5は比較例のコモンモードノイズフィルタの回路模式図である。図5に示すコモンモードノイズフィルタは図13に示す従来のコモンモードノイズフィルタ500である。コモンモードノイズフィルタ500においては、図5に示すように、積層方向Duで互いに隣接するコイル導体4b、5aの間に浮遊容量C0が発生するが、互いに隣接しないコイル導体4a、5bの間には浮遊容量が発生しない。したがって、コイル2、3の2つの信号線の対称性が崩れ、これにより、2つの信号線のバランスが悪くなり、モード変換が生じる可能性がある。
【0034】
対して、実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタ1001では、前述のように、モード変換が生じる可能性を低減できる。
【0035】
図6は実施の形態1におけるさらに他のコモンモードノイズフィルタ1003の分解斜視図である。図7はコモンモードノイズフィルタ1003の回路模式図である。図6図7において、図1から図4に示すコモンモードノイズフィルタ1001と同じ部分には同じ参照番号を付す。コモンモードノイズフィルタ1003は、積層方向Duで最下部に位置する渦巻き状導体12の下方に配置され、コイル17と接続された一端と、開放された他端を有する導体層18bをさらに備える。コモンモードノイズフィルタ1003は、絶縁体層11aの下面に設けられた絶縁体層11gをさらに備える。絶縁体層11aは絶縁体層11gの上面に設けられている。導体層18bは絶縁体層11gの上面すなわち絶縁体層11gの上面に設けられている。
【0036】
導体層18bは外部電極20dを介してコイル17の渦巻き状導体16に接続されている。渦巻き状導体12は導体層18に積層方向Duで隣接し、かつ対向している。導体層18bは絶縁体層11aを介して渦巻き状導体12に対向している。
【0037】
すなわち、この部分でも、コイル14の一部がコイル17の一部と対向する。この結果、コイル14、17の間に浮遊容量C2bが発生する。導体層18aにおいても、コイル14の一部とコイル17の一部とが対向し、コイル14、17の間に浮遊容量C2aが発生するので、コモンモードノイズフィルタ1003の、実装、特性において方向性を無くすことができる。
【0038】
図6に示す導体層18bは、導体層18a同様、渦巻き状導体よりなるオープンコイルである。積層方向Duに見て、導体層18bの渦巻き形状の外周から内周に向かって巻く方向は、渦巻き状導体12の渦巻き形状の外周から内周に向かって巻く方向と同じである。電流の流れないオープンコイルである導体層18bは渦巻き状導体12とほとんど磁気結合しないので、渦巻き状導体12に流れる差動信号への影響が小さく、差動信号の損失を抑えることができる。
【0039】
図6に示すコモンモードノイズフィルタ1003において、図4に示すコモンモードノイズフィルタ1002の導体層18aと同様に、積層方向Duに見て、導体層18bの外周から巻く方向が、渦巻き状導体12の外周から巻く方向の逆であってもよい。この構成により、導体層18bと渦巻き状導体12との磁気結合によって、差動モードでも減衰特性が得られ、差動モード信号による近隣周辺へのノイズ漏洩を低減させることができる。
【0040】
図4に示すコモンモードノイズフィルタ1003は、図6に示すコモンモードノイズフィルタ1003の導体層18bをさらに備えていてもよい。これにより、コモンモードノイズフィルタ1003と同様の効果が得られる。このコモンモードノイズフィルタでは、積層方向Duに見て、導体層18bの外周から巻く方向が、渦巻き状導体12の外周から巻く方向の逆であってもよい。この構成により、導体層18bと渦巻き状導体12との磁気結合によって、差動モードでも減衰特性が得られ、差動モード信号による近隣周辺へのノイズ漏洩を低減させることができる。
【0041】
(実施の形態2)
図8は実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタ1004の分解斜視図である。図9はコモンモードノイズフィルタ1004の回路模式図である。図8図9において、図1から図4に示す実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタ1001と同じ部分には同じ参照番号を付す。
【0042】
実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタ1004は、実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタ1001と異なり、図8図9に示すように、積層方向Duにおいてコイル17を構成する渦巻き状導体15、16の間に、コイル14を構成する渦巻き状導体12、13が積層方向Duにおいて配置されている。
【0043】
渦巻き状導体15は絶縁体層11bの下面に設けられている。渦巻き状導体12は絶縁体層11bの上面に設けられている。渦巻き状導体13は絶縁体層11cの上面に設けられている。渦巻き状導体16は絶縁体層11dの上面に設けられている。渦巻き状導体12は絶縁体層11bを介して渦巻き状導体15に対向する。渦巻き状導体13は絶縁体層11cを介して渦巻き状導体12に対向する。渦巻き状導体16は絶縁体層11dを介して渦巻き状導体13に対向する。
【0044】
導体層18aの一端は外部電極20cを介してコイル17の渦巻き状導体15に接続され、その他端は開放されている。
【0045】
なお、実施の形態1と同様に、渦巻き状導体16は積層方向Duで最上部に位置し、導体層18aと積層方向Duで隣接し、かつ対向している。
【0046】
この構成によって、コイル14における渦巻き状導体12、13の間に発生する浮遊容量C3以外に、コイル17の渦巻き状導体16、18aの間にも浮遊容量C4aが発生する。
【0047】
導体層18aはコイル17の渦巻き状導体15に接続されているので、浮遊容量C4aは渦巻き状導体15、16の間に発生する。
【0048】
すなわち、コイル14を構成し積層方向Duで互いに隣接する渦巻き状導体12、13だけでなく、コイル17を構成し積層方向Duで互いに隣接しない渦巻き状導体15、16の間にも浮遊容量C4aが発生する。これにより、コイル14、17である2つの信号線の対称性が保持され、2つの信号線のバランスが良化し、モード変換が生じる可能性を低減できる。
【0049】
さらに、浮遊容量C3が渦巻き状導体15、16に並列に発生し、浮遊容量C4aが渦巻き状導体12、13と並列に発生するので、実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタ1001で2つの信号線すなわちコイル14、17を互いに結合する浮遊容量C1が発生せず、モード変換を極小化することが可能となる。
【0050】
導体層18aと渦巻き状導体16との間の距離すなわち絶縁体層11eの厚さを変えて浮遊容量C4aを調整することにより、モード変換を極小化できる周波数f1を調整することができる。
【0051】
図10は、実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタ1004の差動モードからコモンモードへのモード変換の周波数特性P1004と、実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタ1001のモード変換の周波数特性P1001と、従来例のコモンモードノイズフィルタ500のモード変換の周波数特性P500とを示す。図10において横軸は周波数を示し、縦軸はコモンモードノイズフィルタ500、1001、1004に入力されたコモンモード信号のうちのノーマルモードに変換された成分の大きさのコモンモード信号の大きさに対する割合であるモード変換量をデシベルで示す。
【0052】
図10に示すように、実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタ1001は、従来のコモンモードノイズフィルタ500に比べてモード変換量が小さく良化されており、実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタ1004ではモード変換量がより小さくなりより良化されている。コモンモードノイズフィルタ1004では、導体層18aと渦巻き状導体16との間の距離すなわち絶縁体層11eの厚さを変えて浮遊容量C4aを調整することによりモード変換量を極小化する周波数を調整できる。例えば、図10においては、GPS帯1600MHz近傍の周波数f1においてモード変換量は極小値Lminとなり極小化している。
【0053】
図8に示す導体層18aは、渦巻き状導体よりなるオープンコイルである。積層方向Duに見て、導体層18aの渦巻き形状の外周から内周に向かって巻く方向は、渦巻き状導体16の渦巻き形状の外周から内周に向かって巻く方向と同じである。電流の流れないオープンコイルである導体層18aは渦巻き状導体16とほとんど磁気結合しないので、渦巻き状導体16に流れる差動信号への影響が小さく、差動信号の損失を抑えることができる。
【0054】
なお、コモンモードノイズフィルタ1004において、図4に示す実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタ1002と同様に、積層方向Duに見て、導体層18aの外周から巻く方向が、渦巻き状導体16の外周から巻く方向の逆であってもよい。これにより、コモンモードノイズフィルタ1002と同様の効果が得られる。
【0055】
図11は実施の形態2における他のコモンモードノイズフィルタ1005の分解斜視図である。図12はコモンモードノイズフィルタ1005の回路模式図である。図11図12において、図8に示すコモンモードノイズフィルタ1004と同じ部分には同じ参照番号を付す。コモンモードノイズフィルタ1005は、積層方向Duで最下部に位置する渦巻き状導体15の下方に配置された導体層18bをさらに備える。導体層18bの一端はコイル17と接続され、他端は開放されている。
【0056】
導体層18bは外部電極20dを介してコイル17の渦巻き状導体16に接続している。渦巻き状導体15は導体層18bに積層方向Du隣接し、かつ対向している。
【0057】
すなわち、この部分でも、コイル17を構成し積層方向Duで互いに隣接する渦巻き状導体15、16が互いに対向し、これらの間に浮遊容量C4bが発生する。導体層18aにおいても、コイル17を構成する渦巻き状導体15、が互いに対向し、これらの間に浮遊容量C4aが発生するので、コモンモードノイズフィルタ1005の、実装、特性において方向性を無くすことができる。
【0058】
図11に示す導体層18bは、渦巻き状導体よりなるオープンコイルである。積層方向Duに見て、導体層18bの渦巻き形状の外周から内周に向かって巻く方向は、渦巻き状導体15の渦巻き形状の外周から内周に向かって巻く方向と同じである。電流の流れないオープンコイルである導体層18bは渦巻き状導体15とほとんど磁気結合しないので、渦巻き状導体15に流れる差動信号への影響が小さく、差動信号の損失を抑えることができる。
【0059】
なお、コモンモードノイズフィルタ1005において、図4に示す実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタ1002と同様に、積層方向Duに見て、導体層18aの外周から巻く方向が、渦巻き状導体16の外周から巻く方向の逆であってもよく、積層方向Duに見て、導体層18bの外周から巻く方向が、渦巻き状導体15の外周から巻く方向の逆であっても。これにより、コモンモードノイズフィルタ1002と同様の効果が得られる。
【0060】
なお、実施の形態1、2におけるコモンモードノイズフィルタ1001~1005では、コイル14、17、導体層18aの数はそれぞれ1つである。コモンモードノイズフィルタ1001~1005のそれぞれは、複数のコイル14と、複数のコイル17と、複数の導体層18aとを有するアレイタイプのコモンモードノイズフィルタであってもよい。
【0061】
実施の形態1、2において、「上面」「下面」「上方向」等の方向を示す用語は、絶縁体層や渦巻き導体等のコモンモードノイズフィルタの構成部材の位置関係でのみ決まる相対的な方向を示し、鉛直方向等の絶対的な方向を示すものではない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示に係るコモンモードノイズフィルタは、モード変換が生じる可能性を低減できるという効果を有するものであり、特にデジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器のノイズ対策として使用される小形で薄型のコモンモードノイズフィルタ等において有用である。
【符号の説明】
【0063】
11a 絶縁体層(第5の絶縁体層)
11b 絶縁体層(第1の絶縁体層)
11c 絶縁体層(第2の絶縁体層)
11d 絶縁体層(第3の絶縁体層)
11e 絶縁体層(第4の絶縁体層)
11f,11g 絶縁体層
12 渦巻き状導体(第1の渦巻き状導体)
13 渦巻き状導体(第2の渦巻き状導体)
14 コイル(第1のコイル)
15 渦巻き状導体(第3の渦巻き状導体)
16 渦巻き状導体(第4の渦巻き状導体)
17 コイル(第2のコイル)
18a 導体層(第1の導体層)
18b 導体層(第2の導体層)
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13