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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】空間温度推定システム
(51)【国際特許分類】
   G01K 13/02 20210101AFI20241011BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20241011BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20241011BHJP
【FI】
G01K13/02
G01B11/24 K
G01B11/24 B
G01J5/48 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021563767
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2020039188
(87)【国際公開番号】W WO2021117343
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2019223242
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島本 延亮
(72)【発明者】
【氏名】南 那由多
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-028006(JP,A)
【文献】特開2010-091253(JP,A)
【文献】特開2008-261567(JP,A)
【文献】特開平04-000142(JP,A)
【文献】特開平03-291445(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167222(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/122201(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0153032(US,A1)
【文献】永野秀明,外3名,“車室内標準モデルを用いた車室内環境予測に関する研究 -室内温熱環境形成寄与率を用いた乗員等価温度予測手法の構築-”,自動車技術会論文集,2018年,Vol.49, No.1,82-88頁
【文献】吉冨透悟,外6名,“業務用ビルを対象とする液冷空調システムの開発(第15報)CRIを用いたフロア全体のPMV分布の期間計算”,空気調和・衛生工学会平成26年度大会(秋田)学術講演論文集,2014年,第3巻 空調システム編,137-140頁
【文献】笹本太郎,外3名,“室内温熱環境形成寄与率(CRI)を利用した室内温熱環境制御に関する研究 第1報 温度センサーと制御対象点の関係を記述するための数学的定式化”,日本建築学会環境系論文集,2004年,No. 586,Pages 33-38
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
G01B 11/00 - 11/30
G01J 5/48
G01K 1/00 - 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室の天井、床及び複数の壁の少なくとも1面の温度を検出する温度検出手段と、
前記少なくとも1面に関するCRI係数、及び前記温度検出手段で検出された前記温度を用いて、前記室の室内空間の空気の温度を推定する空間温度推定手段と、
前記室の間取りを推定する間取り推定手段と、を備え、
前記空間温度推定手段は、
間取りが異なる複数の前記室と一対一に対応する複数の前記CRI係数を記憶し、
前記間取り推定手段の推定結果に応じて前記CRI係数を変更し、
前記間取り推定手段は、
前記室の間取りを含む熱画像を取得する熱画像取得手段を複数含み、
前記複数の熱画像取得手段の各々で取得された熱画像を画像合成し、画像合成した熱画像に基づいて前記室の間取りを推定する、
空間温度推定システム。
【請求項2】
前記温度検出手段は、前記天井、前記床及び前記複数の壁のうち、互いに異なる向きを向いた2つ以上の面の温度をそれぞれ検出する、
請求項1に記載の空間温度推定システム。
【請求項3】
前記温度検出手段は、前記天井、前記床及び前記複数の壁のうち、互いに異なる向きを向いた3つ以上の面の温度をそれぞれ検出する、
請求項1に記載の空間温度推定システム。
【請求項4】
前記温度検出手段は、赤外線アレイセンサである、
請求項1~3の何れか1項に記載の空間温度推定システム。
【請求項5】
前記温度検出手段の検出方向を走査する走査装置を更に備える、
請求項4に記載の空間温度推定システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間温度推定システムに関する。より詳細には、本開示は、CRI(Contribution Ratio of Indoor Climate:温熱環境形成寄与率)係数を用いる空間温度推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の空気調和機は、熱画像取得部(サーモグラフィ)、演算部、及び制御部を備える。熱画像取得部は、空間の温度分布を表す熱画像を取得する。演算部は、熱画像取得部が取得した熱画像内における人に該当する領域を特定する。そして、演算部は、熱画像内における人に該当する領域の温度分布に基づいて空間に居る人の温度である人体温度を定め、人体温度と、人に該当する領域以外の領域の温度から得られる周囲温度との差分値に基づいて空間に居る人の温冷感を推定する。制御部は、演算部が推定した温冷感に基づいて、空気調和機の風量、風温、風向のうち少なくとも1つを制御する。
【0003】
特許文献1記載の空気調和機では、熱画像取得部(サーモグラフィ)によって取得された熱画像において、人に該当する領域以外の領域から得られる温度を、人の周囲の空間の温度とする。しかし、熱画像は、熱画像に映った熱的要因(壁、天井及び床など)の温度を表し、熱画像に映った空間の空気の温度を必ずしも表していない。このため、特許文献1に記載の空気調和機では、人の周囲の空間の空気の温度を適切に求められていない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/122201号
【発明の概要】
【0005】
本開示は、簡単な計算で、室内空間の空気の温度を推定できる空間温度推定システムを提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様の空間温度推定システムは、温度検出手段と、空間温度推定手段と、間取り推定手段と、を備える。前記温度検出手段は、室の天井、床及び複数の壁の少なくとも1面の温度を検出する。前記空間温度推定手段は、前記少なくとも1面に関するCRI係数、及び前記温度検出手段で検出された前記温度を用いて、前記室の室内空間の空気の温度を推定する。前記間取り推定手段は、前記室の間取りを推定する。前記空間温度推定手段は、間取りが異なる複数の前記室と一対一に対応する複数の前記CRI係数を記憶し、前記間取り推定手段の推定結果に応じて前記CRI係数を変更する。前記間取り推定手段は、前記室の間取りを含む熱画像を取得する熱画像取得手段を複数含み、前記複数の熱画像取得手段の各々で取得された熱画像を画像合成し、画像合成した熱画像に基づいて前記室の間取りを推定する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る温冷感推定システムのブロック図である。
図2図2は、同上の温冷感推定システムに備えられた空間温度推定システムの空間温度推定方法を説明するための説明図である。
図3図3は、室内での空調装置の設置位置を説明する説明図である。
図4図4A図4Cはそれぞれ、同上の空調装置の設置位置が「中央」「左端」「右端」である場合の熱画像の構図を説明する説明図である。
図5図5は、同上の温冷感推定システムの動作を説明するフローチャートである。
図6図6は、変形例1に係る温冷感推定システムのブロック図である。
図7図7A図7Cはそれぞれ、変形例1に係る温冷感推定システムのブロック図である。
図8図8は、変形例2に係る温冷感推定システムのブロック図である。
図9図9Aは、熱画像の一例を説明する説明図である。図9Bは、復元画像の一例を説明する説明図である。
図10図10は、変形例3に係る温冷感推定システムのブロック図である。
図11図11は、変形例4に係る温冷感推定システムのブロック図である。
図12図12は、変形例5に係る温冷感推定システムのブロック図である。
図13図13は、変形例6に係る温冷感推定システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
図1図5を参照して、本実施形態に係る空間温度推定システム1及び温冷感推定システム100について説明する。
【0014】
空間温度推定システム1(図1参照)は、対象となる室の室内空間の温度分布を推定可能なシステムである。室内空間の温度分布とは、室内空間の各位置での空気の温度分布である。温冷感推定システム100(図1参照)は、空間温度推定システム1によって推定された室内空間の温度分布を用いて、対象となる室内に居る人の温冷感を推定可能なシステムである。本実施形態では、温冷感推定システム100は、推定した温冷感に基づいて、対象となる室内の温度を制御する空調装置を制御する。これにより、対象となる室内の温度が、室内に居る人が快適に感じる温度に自動的に制御される。
【0015】
なお、本実施形態では、空間温度推定システム1及び温冷感推定システム100は、空調装置7の外部に配置されるが、空調装置7の内部に配置されてもよい。対象となる室は、建物内の室でもよいし、自動車(例えばバス)などの移動体内の室でもよい。
【0016】
空間温度推定システム1は、上述のように、対象となる室の室内空間の温度分布を推定可能である。より詳細には、空間温度推定システム1は、CRI(Contribution Ratio of Indoor Climate:温熱環境形成寄与率)係数を用いて室内空間の各位置の空気の温度(気温)を推定可能である。
【0017】
ここで、本実施形態での室内空間の空気の温度(気温)の推定の考え方を説明する。室の間取りと室内の空気の流れとが決まると、吹出口(例えば空調装置)から吹き出された空気の流れが室内の或る位置に居る人に及ぼす影響は一定であると見なせる。このため、室内空間の或る位置の気温は、決められた室の間取り及び空気の流れの下での室の壁床温度といった熱的要因からの熱的影響度を足し合わせることで計算可能である。このような熱的影響度をCRI係数を用いて算出することで、室内空間の或る位置の気温を簡易に算出可能(推定可能)である。なお、熱的要因とは、熱源となる要因であり、例えば室の天井、床及び壁などである。
【0018】
すなわち、最初にCFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)解析を用いて室内の気流分布を決定し、その気流分布に基づいて各熱的要因から室内の或る位置に寄与する熱的影響度を算出する。これにより、各熱的要因の温度が変化した場合でも、各熱的要因の温度変化による熱的影響度を足し合わせるだけで、或る位置での気温を算出可能である。
【0019】
具体的には、図2に示すように、空調装置7が設置された室R10を想定する。この場合、室R10内の或る位置Xでの気温θは、式1及び式2で計算可能である。なお、図2の例では、室R10の天井R1、床R2及び周囲(例えば4つ)の壁R3~R6の計6つの面が熱的要因である。
【0020】
θ=θ+Δθ ・・・式1
Δθ=Cx,1・θ0,1+Cx,2・θ0,2+・・・+Cx,6・θ0,6 ・・・式2
ここで、θは、位置Xでの基準温度であり、本実施形態では例えば0(ゼロ)度に設定されている。Δθは、位置Xでの変化温度Δθである。すなわち、位置Xでの空気の温度θは、位置Xでの基準温度θと、位置Xでの変化温度Δθとの和で算出される。
【0021】
位置Xでの変化温度Δθは、各熱的要因からの熱的影響による温度である。位置Xでの変化温度Δθは、式2で与えられる。θ0,1~θ0,6はそれぞれ、各熱的要因(室R10の天井R1、床R2及び4つの壁R3~R6)の変化温度である。Cx,1~Cx,6はそれぞれ、位置Xに対する各熱的要因に関するCRI係数であり、各熱的要因から位置Xへの変化温度の熱的寄与率を表す。なお、各熱的要因に関するCRI係数は、室R10の間取りと室R10内の気流分布が決まると、決まる値である。熱的要因の変化温度と、熱的要因に関するCRI係数との積によって、熱的要因から位置Xに寄与する熱的影響度が算出される。すなわち、位置Xでの変化温度Δθは、各熱的要因から位置Xに寄与する熱的影響度の和で算出される。そして、各熱的要因から位置Xに寄与する熱的影響度はそれぞれ、熱的要因の変化温度θ0,1~θ0,6と、熱的要因に関するCRI係数Cx,1~Cx,6との積で算出される。
【0022】
室R10の間取りと空調装置7の設置位置とから、室R10内の気流分布が決まる。そして、室R10の間取りと室R10内の気流分布(空調装置7の送風の気流分布)とから、各熱的要因に関するCRI係数が決まる。よって、各熱的要因の変化温度θ0,1~θ0,6を測定することで、測定した各熱的要因の変化温度θ0,1~θ0,6と、各熱的要因に関するCRI係数とから、或る位置Xでの変化温度Δθが決まる。この変化温度Δθと基準温度θとから、室内の或る位置Xでの温度が求まる。
【0023】
次に図1を参照して、空間温度推定システム1を含む温冷感推定システム100の構成について詳しく説明する。以下の説明では、図2に示す室R10の室内空間の温度を推定する場合を想定する。
【0024】
温冷感推定システム100は、空間温度推定システム1と、人位置検出部2と、平均放射温度算出部3と、温冷感指標算出部4(温冷感指標算出手段)と、温度目標値算出部5と、空調制御部6と、空調装置7とを備えている。空間温度推定システム1は、設定入力部21と、熱画像取得部22(温度検出手段、熱画像取得手段)と、CRI係数決定部23と、空間温度推定部24(空間温度推定手段)とを備えている。なお、本実施形態では、空調装置7は、温冷感推定システム100の構成に含まれるが、温冷感推定システム100の構成に含まれなくてもよい。
【0025】
設定入力部21は、操作者の操作入力によって、各種の設定情報(間取り情報及び設置位置情報)の入力を受け付ける。間取り情報は、対象となる室R10の間取りに関する情報である。間取り情報は、例えば室R10の床面形状(例えば縦長矩形、横長矩形又は正方形)及び床面積に関する情報である。なお、空調装置7の能力は、室R10の床面積に応じて決めるため、本実施形態では、空調装置7の空調能力に関する情報(定格消費電力など)を空調装置7から取得して自動的に設定される。設定入力部21は、室R10の壁に設置されていてもよく、リモコン装置として構成されていてもよい。また、空調装置7のリモコン装置と兼用されていてもよい。
【0026】
設置位置情報は、室R10内での空調装置7の設置位置に関する情報である。設置位置情報は、空調装置7の設置位置の高さ(床R2からの高さ)、及び空調装置7が設置された壁R3の左右方向の位置(左端、中央又は右端)に関する情報である。空調装置7の設置位置の高さは、室R10の高さとおおよそ同じであり、本実施形態では、固定値(例えば2.2m)に予め設定されている。以下、室R10の間取り、空調装置7の設置位置、及び空調装置7の送風の速度及び風向を、まとめて「間取り条件」と記載する。
【0027】
なお、操作者が設定入力部21から間取り情報及び設置情報を設定入力する代わりに、空間温度推定システム1が、例えば、熱画像取得部22で取得された熱画像を用いて自動的に間取り情報及び設置情報を推定してもよい。この変形例については、後述する。
【0028】
CRI係数決定部23は、設定入力部21に入力された間取り情報及び設置位置情報と、空調装置7の送風の速度及び風向の情報とに基づいて、室R10の間取り条件を特定し、特定した間取り条件に対応したCRI係数を決定する。
【0029】
より詳細には、室R10の間取り条件は、設定入力部21に入力された間取り情報及び設置位置情報と、空調装置7の送風の速度及び風向とで特定される。間取り情報には、室R10の床面形状(縦長矩形、横長矩形又は正方形)の情報が含まれ、設置位置情報には、空調装置7の設置位置(中央、左端又は右端)の情報が含まれている。空調装置7の送風の速度及び風向の情報は、空調装置7から取得可能である。本実施形態では、空調装置7の送風の速度及び風向の情報は、代表的な風速及び風向をCRI係数決定部23に予め設定されており、その設定値が用いられる。室R10の取り得る間取りの数は、例えば、横長矩形、縦長矩形及び正方形の計3つであり、空調装置7の取り得る設置位置の数は、例えば、左端、右端及び中央の計3つである。空調装置7の送風の取り得る速度は、例えば予め設定された設置値の1つであり、空調装置7の送風の取り得る風向は、例えば予め設定された設定値の1つである。よって、本実施形態では、室R10の取り得る間取り条件の数は、例えば9個(=3×3×1×1)である。CRI係数は、間取り条件ごとに決まるため、本実施形態では、例えば9組のCRI係数が存在する。
【0030】
CRI係数決定部23は、複数組(本実施形態では9組)のCRI係数を所定の記憶部に保存している。複数組のCRI係数は、室R10の取り得る複数の間取り条件に1対1に対応している。そして、CRI係数決定部23は、設定入力部21に入力された間取り情報及び設置位置情報と、空調装置7の送風の速度及び風向の情報とに基づいて室R10の間取り条件を特定する。そして、CRI係数決定部23は、複数組のCRI係数の中から、特定した間取り条件に対応したCRI係数の組を選択(決定)する。
【0031】
すなわち、本実施形態では、特定された間取り条件に基づいてCRI係数が算出される代わりに、予め用意された複数組のCRI係数の中から、特定された間取り条件に対応したCRI係数の組が選択(決定)される。これにより、室R10の空間温度推定の処理負担を軽減できると共にCRI係数をより速く決定できる。また、間取り条件に応じてCRI係数が変更されるため、より精度よく、室R10の室内空間の空気の温度を推定できる。
【0032】
熱画像取得部22は、室R10の各面(天井R1、床R2及び壁R3~R6)の何れか1面以上の面を含む熱画像を取得(すなわち撮像)する。熱画像取得部22は、例えば、空調装置7に設置されるか、又は空調装置7の周囲に設置されている。熱画像は、例えば、画像に映る被写体(熱的要因)の温度を画素毎に測定して、各画素を温度に応じて色分けして表した温度分布画像である。この熱画像から、各熱的要因(室R10の天井R1、床R2及び壁R3~R6)の変化温度を測定可能である。本実施形態では、例えば、4面(床R2と、空調装置7が設置された壁R3以外の3つの壁R4~R6)を含む画像を取得する。熱画像取得部22は、例えば、赤外線アレイセンサであってもよい。赤外線アレイセンサは、複数の赤外線受光素子を縦横に配置させたセンサである。熱画像取得部22は、室R10の各面(天井R1、床R2及び壁R3~R6)の何れか1面以上の面の温度を検出する温度検出手段である。
【0033】
なお、室R10の各面(天井R1、床R2及び壁R3~R6)は、互いに異なる向きを向いている。本実施形態では、熱画像取得部22、互いに異なる向きを向いた4面を含む熱画像を取得するが、互いに異なる向きを向いた3面以上、又は2面以上を含む熱画像を取得してもよい。なお、熱画像が含む面が多いほど室R10の室内空間の温度分布の推定精度をより向上させることができる。
【0034】
人位置検出部2は、熱画像取得部22で取得された熱画像に基づいて、室R10内に居る人の位置Xを検出する。より詳細には、人位置検出部2は、人に該当する温度及びその温度分布の形状などに基づいて、熱画像において人に該当する領域を特定し、特定した領域に基づいて、室R10に居る人の位置Xを検出する。例えば、特定した領域内の所定位置が人の位置Xとして用いられる。
【0035】
空間温度推定部24は、室R10の室内空間の空気の温度(気温)を推定する。より詳細には、空間温度推定部24は、室R10の各熱的要因(天井R1、床及R2び4つの壁R3~R6)の変化温度と、人位置検出部2の検出結果(すなわち室R10に居る人の位置)と、CRI係数決定部23で決定されたCRI係数とを用いて、室R10の室内空間の或る位置Xの気温として、室R10に居る人の位置での気温を推定する。
【0036】
更に詳細には、空間温度推定部24は、熱画像取得部22で取得された熱画像を用いて、室R10の各熱的要因の変化温度を検出する。具体的には、空間温度推定部24は、間取り情報に基づいて室R10の間取り(床面積及び床面形状)を特定する。そして、空間温度推定部24は、特定した間取りに基づいて、室R10の天井R1、床R2及び各壁R3~R6と熱画像の各領域との対応関係(すなわち天井R1、床R2及び壁R3~R6が熱画像のどの領域に映っているか)を特定する。すなわち、熱画像の撮像方向は特定されているため、室R10の間取りが特定されれば、熱画像の構図(天井R1、床R2及び壁R3~R6の熱画像上の映込領域)が特定可能である。
【0037】
本実施形態では、熱画像には、室R10の床R2及び各壁R4~R6が映り、天井R1及び壁R3は映らない。このため、熱画像からは、床R2及び各壁R4~R6の4面の変化温度が検出され、天井R1及び壁R3の変化温度は検出されない。この場合は、天井R1及び壁R3からの熱的寄与量は無いと見なされる。なお、演算処理上は、天井R1及び壁R3の変化温度はゼロと見なされてもよい。
【0038】
そして、空間温度推定部24は、検出した室R10の各熱的要因の変化温度と、人位置検出部2で検出された人の位置と、CRI係数決定部23で決定されたCRI係数(上記人の位置Xにおける室R10の各熱的要因に関するCRI係数)とから、室R10に居る人の位置Xの気温を算出(推定)する。具体的には、空間温度推定部24は、室R10の各熱的要因の変化温度と、上記の人の位置Xにおける各熱的要因に関するCRI係数とを掛け合わせて各熱的要因からの熱的影響度を算出し、算出した各熱的影響度を足し合わせる。この結果、上記の人の位置Xでの変化温度が算出される。そして、空間温度推定部24は、人の位置Xでの基準温度と人の位置Xでの変化温度とを足し合わせて、人の位置Xでの気温を算出(推定)する。
【0039】
平均放射温度算出部3は、室R10に居る人の位置(すなわち人位置検出部2で検出された人の位置)Xでの平均放射温度(MRT:Mean Radiant Temperature)を算出する。平均放射温度とは、室R10の各熱的要因(天井R1、床R2及び各壁R3~R6)から放射される熱(放射熱)の平均値を温度表示で表した値である。より詳細には、平均放射温度算出部3は、設定入力部21に入力された間取り情報及び設置位置情報と、熱画像取得部22で取得された熱画像とに基づいて、空間温度推定部24の場合と同様に、室R10の各熱的要因の変化温度を検出する。そして、平均放射温度算出部3は、検出した各熱的要因の変化温度に基づいて、各熱的要因からの放射熱による室10に居る人の位置Xでの平均放射温度を算出する。
【0040】
温冷感指標算出部4は、室R10に居る人(人位置検出部2で検出された人)の温冷感を表す指標を算出する。本実施形態では、温冷感指標算出部4は、上記の指標として、例えばPMV(予測平均温冷感指標)を算出する。PMVは、上記の人に対する温熱6要素(気温、放射温度、相対湿度、風速、着衣量、活動量)から所定の演算式を用いて算出される。なお、PMVを算出するための所定の演算式は、周知の演算式であるため、その説明は省略する。
【0041】
なお、PMVは、例えば-3≦PMV≦+3の範囲の値である。このPMVを用いた場合、算出されたPMVが所定範囲(例えば-0.5以上且つ+0.5以下)のとき、上記の人の温冷感は快適であると推定可能である。また、算出されたPMVが上記所定範囲の下限値(例えば-0.5)よりも小さいとき、上記の人の温冷感は寒いと推定可能である。このとき、算出されたPMVが上記所定範囲の下限値から小さいほど、寒さのレベルはより寒いと推定可能である。また、算出されたPMVが上記所定範囲の上限値(+0.5)よりも大きいとき、上記の人の温冷感は暑いと推定可能である。このとき、算出されたPMVが上記所定範囲の上限値(+0.5)から大きいほど、暑さのレベルはより暑く推定可能である。
【0042】
上記の温熱6要素のうち、気温は、上記の人の位置Xでの気温であり、この気温として空間温度推定部24の推定結果が用いられる。放射温度は、上記の人の位置Xでの室R10の各熱的要因からの放射温度であり、この放射温度として平均放射温度算出部3の算出結果が用いられる。相対湿度は、室R10内の相対湿度であり、この相対湿度として、室R10に設置された湿度センサの測定結果が用いられる。この湿度センサは、例えば空調装置7に備えられた湿度センサであってもよい。風速は、上記の人の位置Xでの風速であり、この風速として、空調装置7の送風の風速が用いられてもよい。空調装置7の送風の風速の情報は、空調装置7から取得可能である。空調装置7の送風の風速は、空調装置7の風速の代表的な風速を用いてもよい。着衣量は、上記の人の着衣量であり、この着衣量として、温冷感指標算出部4に予め設定された着衣量の代表値が用いられる。活動量(すなわち代謝量)は、上記の人の活動量であり、この活動量として、温冷感指標算出部4に予め設定された活動量の代表値が用いられる。
【0043】
温度目標値算出部5は、温冷感指標算出部4の算出結果に基づいて、空調装置7の空調の温度目標値を算出する。より詳細には、温度目標値算出部5は、温冷感指標算出部4で算出されたPMVが上記所定範囲(例えば-0.5以上且つ+0.5以下)内である場合は、空調装置7の空調の温度目標値を現在の温度目標値に維持(再設定)する。温度目標値算出部5は、温冷感指標算出部4で算出されたPMVが上記所定範囲の上限値(例えば+0.5)よりも大きい場合は、空調装置7の空調の温度目標値を、現在の温度目標値と比べてPMVが大きいほど小さい値に変更(設定)する。温度目標値算出部5は、温冷感指標算出部4で算出されたPMVが上記所定範囲の下限値(-0.5)よりも小さい場合は、空調装置7の空調の温度目標値を、現在の温度目標値と比べてPMVが小さいほど大きい値に変更(設定)する。
【0044】
空調制御部6は、温度目標値算出部5で設定された温度目標値に基づいて、空調装置7を制御する。より詳細には、空調装置7は、室R10内の気温が空調装置7に設定された設定温度に近づくように、空調装置7から送風される風の温度を制御する。空調制御部6は、上記の設定温度を、温度目標値算出部5で設定された温度目標値に設定することで、室R10内の気温を、室R10に居る人が快適に感じる温度に制御する。
【0045】
空調装置7は、上述のように、室R10内の気温を、空調装置7に設定された設定温度に近づくように、空調装置7から送風される風の温度を制御する。より詳細には、空調装置7は、室R10内の気温を検出する温度センサを有し、その温度センサの検出温度が設定温度に近づくように、空調装置7から送風される風の温度を制御する。また、空調装置7は、室R10内の湿度を、空調装置7に設定された設定湿度に近づくように、空調装置7から送風される風の湿度を制御する。より詳細には、空調装置7は、室R10内の湿度を検出する湿度センサを有し、その湿度センサの検出温度が設定湿度に近づくように、空調装置7から送風される風の湿度を制御する。
【0046】
次に図3及び図4を参照して、空間温度推定部24による熱画像の構図の特定の仕方について説明を補足する。
【0047】
本実施形態では、空間温度推定部24は、設定入力部21に入力された設置位置情報(空調装置7の設置位置の情報)に基づいて、熱画像取得部22で取得された熱画像の構図(天井R1、床R2及び壁R3~R6の映込領域)を特定する。具体的には、図3に示すように、空調装置の設置位置P1が「中央」(壁R3の上部の中央)PS1である場合は、図4Aに示すように、熱画像G1の構図は、床R2及び壁R5が熱画像G1における左右方向の中央に配置するように特定される。そして、この特定された構図に基づいて、空間温度推定部24は、各熱的要因(床R2及び各壁R4~R6)の変化温度を検出する。
【0048】
また、図3に示すように、空調装置7の設置位置P1が「右端」(壁R3の上部の右端)RR1である場合は、図4Bに示すように、熱画像G1の構図は、床R2及び壁R5が熱画像G1における左右方向の中央よりも左寄りに配置するように特定される。そして、この特定された構図に基づいて、空間温度推定部24は、各熱的要因(床R2及び各壁R4~R6)の変化温度を検出する。
【0049】
また、図3に示すように、空調装置7の設置位置P1が「左端」(壁R3の上部の左端)RL1である場合は、図4Cに示すように、熱画像G1の構図は、床R2及び壁R5が熱画像G1の中央よりも右寄りに配置するように特定される。そして、この特定された構図に基づいて、空間温度推定部24は、各熱的要因(床R2及び各壁R4~R6)の変化温度を検出する。
【0050】
次に図5を参照して、温冷感推定システム100の動作を説明する。
【0051】
まず、設定入力部21に間取り情報及び設定位置情報が入力される(S1)。そして、CRI係数決定部23が、設定入力部21に入力された間取り情報及び設置位置情報と、空調装置7から取得された空調装置7の送風の速度及び風向の情報とに基づいて、室R10の間取り条件を特定する。そして、CRI係数決定部23は、予め設定された複数組のCRI係数の内から、特定した間取り条件に対応したCRI係数の組を決定する(S2)。
【0052】
そして、熱画像取得部22が、室R10の各面(天井R1、床R2及び壁R3~R6)の何れか1面以上の面(例えば床R2及び壁R4~R6の4面)を含む熱画像を取得する(S3)。そして、人位置検出部2が、熱画像取得部22で取得された熱画像に基づいて、室R10内に居る人の位置Xを検出する(S4)。
【0053】
そして、空間温度推定部24が、室R10の各熱的要因(天井R1、床及R2び4つの壁R3~R4)の変化温度と、人位置検出部2の検出結果(すなわち室R10に居る人の位置X)と、CRI係数決定部23で決定されたCRI係数とを用いて、室R10に居る人の位置Xでの気温を推定する(S5)。
【0054】
なお、上記の「室R10の各熱的要因の変化温度」は、空間温度推定部24が、設定入力部21に入力された上記の間取り情報及び設置位置情報に基づいて熱画像取得部22で取得された熱画像の構図(天井R1、床R2、壁R3~R6の映込領域)を特定し、その構図が特定された熱画像から検出する。そして、平均放射温度算出部3が、構図の特定された熱画像に基づいて、室R10に居る人の位置(人位置検出部2で検出された位置)Xでの平均放射温度(MRT)を算出する(S6)。
【0055】
そして、温冷感指標算出部4が、空間温度推定部24で推定された上記の人の居る位置Xの気温と、平均放射温度算出部3で算出された上記の人の居る位置Xの平均放射温度と、空調装置7から送風される風の風速と、室R10の湿度と、上記の人の着衣量及び活動量とに基づいて、上記の人の温冷感を表す温冷感指標としてPMVを算出する(S7)。そして、温度目標値算出部5が、温冷感指標算出部4の算出結果に基づいて、空調装置7の空調の温度目標値を算出し(S8)、空調制御部6が、温度目標値算出部5で算出された温度目標値に基づいて、空調装置7を制御する(S9)。
【0056】
以上のように、本実施形態に空間温度推定システム1によれば、室R10の天井R1、床R2及び各壁R3~R6の少なくとも1面の温度と、上記の天井R1、床R2及び各壁R3~R6の少なくとも1面に関するCRI係数とを用いて、室R10の室内空間の空気の温度を推定する。このため、各熱的要因(天井R1、床R2及び各壁R3~R6)の温度が変化した場合でも、各熱的要因の温度変化による影響(熱的寄与量)を足し合わせるだけで(すなわち簡単な計算で)、室R10の室内空間の空気の温度を推定できる。
【0057】
また、本実施形態に係る温冷感推定システム100によれば、上記の空間温度推定システム1を用いて、室R10に居る人の温冷感をより精度よく推定することができる。
【0058】
(変形例)
以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。また、空間温度推定システム1と同様の機能は、空間温度推定方法又はコンピュータプログラムで具現化されてもよい。また、温冷感推定システム100と同様の機能は、温冷感推定方法又はコンピュータプログラムで具現化されてもよい。
【0059】
一態様に係る空間温度推定方法は、検出工程と、空間温度推定工程と、を備える。検出工程は、室R10の天井、床R2及び各壁R3~R6の少なくとも1面の温度を検出する。空間温度推定工程は、上記の少なくとも1面に関するCRI係数を有し、検出工程で検出された温度と上記のCRI係数とを用いて、室R10の室内空間の空気の温度を推定する。
【0060】
一態様に係る温冷感推定方法は、上記の空間温度推定方法を用いた温冷感推定方法である。温冷感推定方法は、人位置検出工程と、温冷感推定工程と、を備える。人位置検出工程は、室R10内に居る人の位置Xを検出する。温冷感推定工程は、上記の空間温度推定方法で推定された人の位置Xでの空気の温度を用いて、人の温冷感を表す指標を算出する。
【0061】
一態様に係るコンピュータプログラムは、上記の空間温度推定方法をコンピュータシステムに実行させるためのプログラムである。
【0062】
一態様に係るコンピュータプログラムは、上記の温冷感推定方法をコンピュータシステムに実行させるためのプログラムである。
【0063】
以下に説明する変形例では、上記の実施形態と異なる点を中心に説明する。また、以下の変形例では、上記の実施形態と同じ部分については、同じ符号を付して説明を省略する場合がある。
【0064】
(変形例1)
本変形例は、図6に示すように、上記の実施形態において、設定入力部21の代わりに、間取り推定部25を備えている。間取り推定部25は、熱画像取得部22で取得された熱画像を用いて、室R10の間取り及び空調装置7の設置位置を推定する。すなわち、本変形例では、室R10の間取り及び空調装置7の設置位置は、使用者が設定入力部21に入力するのではなく、間取り推定部25によって上記の熱画像から推定される。なお、熱画像取得部22(温度検出手段)と間取り推定部25は、間取り推定手段40を構成している。本変形例では、熱画像取得部22は、室R10の間取りを含む熱画像を取得する。本変形例では、熱画像取得部22は、赤外線アレイセンサであってもよい。
【0065】
間取り推定部25は、熱画像に映る人の位置の履歴(人位置履歴)を用いて、室R10の間取り及び空調装置7の設置位置を推定する。なお、人位置履歴とは、一定期間にわたっての熱画像上にプロットした人の位置の集合である。熱画像における人の位置は、熱画像における床R2に該当する領域上に主に分布し、熱画像における壁R3~R6に該当する領域上には殆ど分布しない。この特性を利用すれば、熱画像から、室R10の間取り及び空調装置7の設置位置を推定可能である。
【0066】
より詳細には、間取り推定部25は、熱画像から人に該当する領域(すなわち人)を検出し、一定期間にわたって、熱画像において人の位置の履歴(人位置履歴)を蓄積する。そして、間取り推定部25は、蓄積した人位置履歴に基づいて、室R10の間取り及び空調装置7の設置位置を推定する。
【0067】
具体的には、空調装置7の設置位置の推定は、下記のように行われる。すなわち、空調装置7の設置位置が「右端」(壁R3の上部の右端)PR1である場合(図3参照)は、人位置履歴が熱画像G1に重ねられると、図7Aに示すように、熱画像G1の右側に人が全く存在しない人不在領域F1が発生する。したがって、間取り推定部25は、熱画像G1の右側に人不在領域F1が発生している場合は、この領域F1を壁R6と推定し、熱画像G1での壁R6の映込位置から、空調装置7の設置位置を「右端」と推定する。また、空調装置7の設置位置が「中央」(壁R3の上部の中央)PS1である場合(図3参照)は、人位置履歴が熱画像G1に重ねられると、図7Bに示すように、熱画像G1の左右両側に人不在領域F2,F3が発生する。したがって、間取り推定部25は、熱画像G1の左右両側にそれぞれ領域F2及び領域F3が発生している場合は、これら領域F2,F3を壁R4,R6と推定し、熱画像G1での壁R4,R6の映込位置から、空調装置7の設置位置は、「中央」と推定する。また、空調装置7の設置位置が「左端」(壁R3の上部の左端)PL1である場合(図3参照)は、人位置履歴が熱画像G1に重ねられると、図7Cに示すように、熱画像G1の左側に人不在領域F4が発生する。したがって、間取り推定部25は、熱画像G1の左側に人不在領域F4が発生している場合は、この領域F4を壁R4と推定し、熱画像G1での壁R4の映込位置から、空調装置7の設置位置を「左端」と推定する。
【0068】
また、室R10の間取りの推定は、下記のように行われる。すなわち、間取り推定部25は、人位置履歴が重ねられた熱画像G1において、熱画像G1の下辺から上方向に最も離れた人の位置XP1と熱画像G1の下辺との間隔H1が床R2の奥行きW1(図3参照)であると推定する(図7A図7C参照)。室R10の床面積は、上記の実施形態で述べた通り、空調装置7の空調能力から推定される。間取り推定部25は、推定された床面積と奥行きW1とから、室R10の横幅W2(図3参照)を推定し、推定した横幅W2と奥行きW1とから室R10の床R2の床形状(横長矩形、縦長矩形又は正方形)を推定する。
【0069】
この変形例によれば、間取り推定部25によって室R10の間取り及び空調装置7の設置位置が熱画像から推定されるため、使用者が室R10の間取り情報及び空調装置7の設置位置情報を設定入力する必要がない。
【0070】
本変形例では、空間温度推定部24は、間取り推定部25で推定された室R10の間取り及び空調装置7の設置位置に応じて、空間温度推定で用いるCRI係数を変更する。
【0071】
(変形例2)
変形例1では、室R10の間取り及び空調装置7の設置位置の推定の処理は全て、間取り推定部25内(すなわち空間温度推定システム1内)で行われる。ただし、図8に示すように、熱画像G1を間取り推定部25から通信回線網CR1(クラウド)を介して外部装置27に送信し、外部装置27で熱画像G1(図9A)を復元(高解像度化)して復元画像G2(図9B)を生成してもよい。そして、その復元画像G2を外部装置27から間取り推定部25に返送し、間取り推定部25でその復元画像G2に基づいて室R10の間取り及び空調装置7の設置位置を推定してもよい。
【0072】
この場合、復元画像G2では、復元によって例えば床R2の輪郭が明確に可視化される。間取り推定部25は、例えば、復元画像G2の床R2の輪郭に基づいて、床R2と各壁R4~R6の境界線を推定して、復元画像G2の構図(床R2及び各壁R4~R6の映込領域)を特定する。そして、間取り推定部25は、特定した構図から、空調装置7の設置位置(右端、中央又は左端)及び室R10の間取り(縦長矩形、横長矩形又は正方形)を推定する。
【0073】
より詳細には、室R10の間取り(床形状)は下記のように推定可能である。すなわち、間取り推定部25は、特定した構図から室R10の奥行きW1(図3参照)を求め、床R2の床面積と奥行きW1とから床R2の横幅W2(図3参照)を求め、求めた奥行きW1及び横幅W2から、床R2の床形状を求める。また、空調装置7の設置位置は下記のように推定可能である。すなわち、間取り推定部25は、例えば、特定した構図における壁R5(すなわち空調装置7の正面の壁)の左右方向の位置に応じて、空調装置7の設置位置を推定する。
【0074】
この構成によれば、外部装置27を用いて熱画像G1を復元し、間取り推定部25は、復元画像G2を用いて室R10の間取り及び空調装置7の設置位置を推定することができる。このため、より精度よく、室R10の間取り及び空調装置7の設置位置を推定できる。
【0075】
(変形例3)
本変形例に係る空間温度推定システム1は、図10に示すように、上記の実施形態において、熱画像取得部22(温度検出手段)の撮像方向(検出方向)を走査する走査装置28を更に備える。走査装置28は、回転軸部と、回転駆動源(例えば電動機)とを有する。回転軸部は、回転駆動源によって回転可能である。回転軸部には、熱画像取得部22が固定されている。回転軸部の回転に伴って熱画像取得部22が回転軸部の回りに回転し、熱画像取得部22の撮像方向(検出方向)が例えば室R10の左右方向に走査される。回転駆動源は、回転軸部を正転方向及び逆転方向に交互に回転させることで、熱画像取得部22の撮像方向を左右方向に走査する。これにより、熱画像取得部22の撮像範囲(検出範囲)をより広範囲に広げることができる。
【0076】
(変形例4)
本変形例は、図11に示すように、変形例1において、複数の熱画像取得部22(熱画像取得手段)と、画像合成部31とを備えている。複数の熱画像取得部22は、室R10内の異なる領域(より詳細には室R10の間取りの異なる領域)を撮像する。画像合成部31は、複数の熱画像取得部22の各々で取得された熱画像を画像合成して単一の合成熱画像を生成する。本変形例の間取り推定部25は、画像合成部31で生成された合成熱画像を用いて、室R10の間取り及び空調装置7の設置位置を推定する。本変形例では、複数の熱画像取得部22、画像合成部31、及び間取り推定部25は、間取り推定手段40を構成している。
【0077】
本変形例では、人位置検出部2は、画像合成部31で生成された合成熱画像を用いて、室R10に居る人の位置Xを検出する。空間温度推定部24は、画像合成部31で生成された合成熱画像を用いて、室R10の各熱的要因の変化温度を検出する。平均放射温度算出部3は、画像合成部31で生成された合成熱画像を用いて、室R10に居る人の位置(すなわち人位置検出部2で検出された人の位置)Xでの平均放射温度を算出する。
【0078】
(変形例5)
本変形例は、図12に示すように、変形例1において、室R10の間取りを含む撮像画像を取得する撮像装置32を更に備えている。撮像装置32は、空調装置7に設置されるか、空調装置7の周囲に設置されている。本変形例の間取り推定部25は、熱画像取得部22で取得された熱画像の代わりに、撮像装置32で撮像された撮像画像を用いて、室R10の間取り及び空調装置7の設置位置を推定する。本変形例では、間取り推定手段40は、間取り推定部25と、撮像装置32とで構成される。
【0079】
撮像装置32は、例えばCCDなどの撮像素子と撮像レンズとを備えている。本変形例では、間取り推定部25は、撮像装置32の撮像画像を二値化処理して室R10の天井R1、床R2及び各壁R3~R6の境界線を抽出する。そして、間取り推定部25は、抽出した境界線に基づいて、撮像画像の構図(天井R1、床R2及び各壁R3~R6の映込領域)を特定し、特定した構図に基づいて室R10の間取り及び空調装置7の設置位置を推定する。
【0080】
(変形例6)
本変形例は、図13に示すように、変形例4において、撮像装置32の代わりに、室R10の間取りを含む距離分布画像を取得するTOF(Time Of Flight)カメラ33を備えている。TODカメラ33は、空調装置7に設置されるか、空調装置7の周囲に設置されている。FOTカメラ33は、パルス発光された光(例えば近赤外光)の被写体からの反射時間によって被写体までの距離を画素毎に計測し、各画素を距離に応じて色分けして表した画像(離分布画像)を生成するカメラである。本変形例では、間取り推定手段40は、TOFカメラ33と、間取り推定部25とで構成される。
【0081】
本変形例では、間取り推定部25は、TOFカメラ33の撮像画像(距離分布画像)から室R10の天井R1、床R2及び各壁R3~R6の境界線を抽出する。そして、間取り推定部25は、抽出した境界線に基づいて、撮像画像の構図(天井R1、床R2及び各壁R3~R6の映込領域)を特定し、特定した構図に基づいて室R10の間取り及び空調装置7の設置位置を推定する。
【0082】
(まとめ)
第1の態様に係る空間温度推定システム(1)は、温度検出手段(22)と、空間温度推定手段(24)と、を備える。温度検出手段(22)は、室(R10)の天井(R1)、床(R2)及び複数の壁(R3~R6)の少なくとも1面の温度を検出する。空間温度推定手段(24)は、上記の少なくとも1面に関するCRI係数、及び温度検出手段(22)で検出された温度を用いて、室(R10)の室内空間の空気の温度を推定する。
【0083】
この構成によれば、室(R10)の天井(R1)、床(R2)及び各壁(R3~R6)の少なくとも1面の温度と、上記の少なくとも1面に関するCRI係数とを用いて、室(R10)の室内空間の空気の温度を推定する。このため、各熱的要因(天井(R1)、床(R2)及び各壁(R3~R6))の温度が変化した場合でも、各熱的要因の温度変化による影響を足し合わせるだけで(すなわち簡単な計算で)、室(R10)の室内空間の空気の温度を推定できる。
【0084】
第2の態様に係る空間温度推定システム(1)では、第1の態様において、温度検出手段(22)は、天井(R1)、床(R2)及び複数の壁(R4~R6)のうち、互いに異なる向きを向いた2つ以上の面の温度をそれぞれ検出する。
【0085】
この構成によれば、室(R10)の室内空間の空気の温度の推定精度を向上できる。
【0086】
第3の態様に係る空間温度推定システム(1)では、第1の態様において、温度検出手段(22)は、天井(R1)、床(R2)及び複数の壁(R4~R6)のうち、互いに異なる向きを向いた2つ以上の面の温度をそれぞれ検出する。
【0087】
この構成によれば、室(R10)の室内空間の空気の温度の推定精度を更に向上できる。
【0088】
第4の態様に係る空間温度推定システム(1)では、第1~第3の態様の何れか1つの態様において、空間温度推定手段(24)は、間取りが異なる複数の室(R10)と1対1に対応する複数のCRI係数を記憶する。
【0089】
この構成によれば、室(R10)の間取りに応じて最適なCRI係数を用いることができる。この結果、室(R10)の室内空間の空気の温度の推定精度を更に向上できる。
【0090】
第5の態様に係る空間温度推定システム(1)では、第1~第4の態様の何れか1つの態様において、温度検出手段(22)は、赤外線アレイセンサである。
【0091】
この構成によれば、温度検出手段(22)として赤外線アレイセンサを用いることができる。
【0092】
第6の態様に係る空間温度推定システム(1)は、第5の態様において、温度検出手段(22)の検出方向を走査する走査装置(28)を備える。
【0093】
この構成によれば、温度検出手段(22)の検出方向を走査することができる。この結果、温度検出手段(22)の検出範囲をより広範囲に広げることができる。
【0094】
第7の態様に係る空間温度推定システム(1)では、第4の態様において、室(R10)の間取りを推定する間取り推定手段(40)を更に備える。空間温度推定手段(24)は、間取り推定手段(40)の推定結果に応じてCRI係数を変更する。
【0095】
この構成によれば、室(R10)の間取りに応じてCRI係数が変更されるため、より精度よく、室(R10)の室内空間の空気の温度を推定できる。また、室(R10)の間取り情報を手動で設定入力する手間が省ける。
【0096】
第8の態様に係る空間温度推定システム(1)では、第7の態様において、間取り推定手段(40)は、室(R10)の間取りを含む撮像画像を取得する撮像装置(32)を含む。
【0097】
この構成によれば、撮像装置(32)の撮像画像を用いて室(R10)の間取りを推定できる。
【0098】
第9の態様に係る空間温度推定システム(1)では、第7の態様において、間取り推定手段(40)は、室(R10)の間取りを含む距離分布画像を取得するTOFカメラ(33)を含む。
【0099】
この構成によれば、TOFカメラ(33)の距離分布画像を用いて室(R10)の間取りを推定できる。
【0100】
第10の態様に係る空間温度推定システム(1)では、第7の態様において、間取り推定手段(40)は、室(R10)の間取りを含む熱画像を取得する熱画像取得手段(22)を含む。
【0101】
この構成によれば、熱画像を用いて室(R10)の間取りを推定できる。
【0102】
第11の態様に係る空間温度推定システム(1)では、第10の態様において、間取り推定手段(40)は、熱画像取得手段(22)を複数含む。間取り推定手段(40)は、複数の熱画像取得手段(22)の各々で取得された熱画像を画像合成し、画像合成した熱画像に基づいて室(R10)の間取りを推定する。
【0103】
この構成によれば、複数の熱画像取得手段(22)を用いて広範囲の熱画像を取得することができる。
【0104】
第12の態様に係る温冷感推定システム(100)では、第1~第11の態様の何れか1つの態様に係る空間温度推定システム(1)と、人位置検出手段(2)と、温冷感指標算出手段(4)と、を備える。人位置検出手段(2)は、室(R10)に居る人の位置(X)を検出する。温冷感指標算出手段(4)は、空間温度推定システム(1)で推定された人の位置(X)での空気の温度を用いて、人の温冷感を表す指標(例えばPMV)を算出する。
【0105】
この構成によれば、上記の空間温度推定システム(1)を用いて、室(R10)に居る人の温冷感を推定することができる。
【0106】
第13の態様に係る温冷感推定システムは、第12の態様において、室(R10)に居る人の位置(X)での平均放射温度を算出する平均放射温度算出手段(3)を更に備える。温冷感指標算出手段(4)は、平均放射温度算出手段(3)によって取得された平均放射温度を更に用いて、人の温冷感を表す指標(例えばPMV)を算出する。
【0107】
この構成によれば、室(R10)に居る人の位置での平均放射温度を更に用いて、室(R10)に居る人の温冷感を表す指標を算出するため、室(R10)に居る人の温冷感をより精度よく推定できる。
【0108】
第14の態様に係る空間温度推定方法は、温度検出工程と、空間温度推定工程と、を備える。温度検出工程は、室(R10)の天井(R1)、床(R2)及び複数の壁(R3~R6)の少なくとも1面の温度を検出する。空間温度推定工程は、少なくとも1面に関するCRI係数、及び温度検出手段(22)で検出された温度を用いて、室(R10)の室内空間の空気の温度を推定する。
【0109】
この構成によれば、室(R10)の天井(R1)、床(R2)及び各壁(R3~R6)の少なくとも1面の温度と、上記の少なくとも1面に関するCRI係数とを用いて、室(R10)の室内空間の空気の温度を推定する。このため、各熱的要因(天井(R1)、床(R2)及び各壁(R3~R6))の温度が変化した場合でも、各熱的要因の温度変化による影響を足し合わせるだけで(すなわち簡単な計算で)、室(R10)の室内空間の空気の温度を推定できる。
【0110】
第15の態様に係る温冷感推定方法は、第14の態様に係る空間温度推定方法を用いた温冷感推定方法である。温冷感推定方法は、人位置検出工程と、温冷感指標算出工程と、を備える。人位置検出工程は、室(R10)内に居る人の位置(X)を検出する。温冷感指標算出工程は、空間温度推定方法によって推定された人の位置(X)での空気の温度を用いて、人の温冷感を表す指標を算出する。
【0111】
この構成によれば、上記の空間温度推定方法を用いて、室(R10)内に居る人の温冷感を表す指標を算出することができる。
【0112】
第16の態様に係るプログラムは、第14の態様に係る空間温度推定方法をコンピュータシステムに実行させるためのプログラムである。
【0113】
この構成によれば、上記の空間温度推定方法をコンピュータシステムに実行させるためのプログラムを提供できる。
【0114】
第17の態様に係るプログラムは、第15の態様に係る温冷感推定方法をコンピュータシステムに実行させるためのプログラムである。
【0115】
この構成によれば、上記の温冷感推定方法をコンピュータシステムに実行させるためのプログラムを提供できる。
【符号の説明】
【0116】
1 空間温度推定システム
3 平均放射温度算出部(平均放射温度算出手段)
4 温冷感指標算出部(温冷感指標算出手段)
22 熱画像取得部(温度検出手段、熱画像取得手段)
24 空間温度推定部(空間温度推定手段)
29 走査装置
32 撮像装置
33 TOFカメラ
40 間取り推定手段
100 温冷感推定システム
R1 天井
R2 床
R3~R6 壁
R10 室
X 人の位置
図1
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