(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】歯列画像撮影システムおよび歯列画像撮影方法
(51)【国際特許分類】
H04N 23/60 20230101AFI20241011BHJP
H04N 23/56 20230101ALI20241011BHJP
H04N 23/51 20230101ALI20241011BHJP
A61B 1/24 20060101ALI20241011BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20241011BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20241011BHJP
G03B 15/02 20210101ALI20241011BHJP
G03B 15/03 20210101ALI20241011BHJP
G03B 15/05 20210101ALI20241011BHJP
G03B 7/093 20210101ALI20241011BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H04N23/60 500
H04N23/56
H04N23/51
A61B1/24
A61B1/045 618
A61B1/045 632
G03B15/00 T
G03B15/02 G
G03B15/03 K
G03B15/03 W
G03B15/03 X
G03B15/05
G03B7/093
A61C19/04 Z
(21)【出願番号】P 2022565368
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2021042961
(87)【国際公開番号】W WO2022113995
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2020197574
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】大塚 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 正人
(72)【発明者】
【氏名】小川 智輝
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】粟飯原 雅之
(72)【発明者】
【氏名】船本 和宏
(72)【発明者】
【氏名】三木 匡
【審査官】高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-013740(JP,A)
【文献】特開2010-124043(JP,A)
【文献】特開2008-160519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0375787(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
H04N 23/56
H04N 23/51
A61B 1/24
A61B 1/045
G03B 15/00
G03B 15/02
G03B 15/03
G03B 15/05
G03B 7/093
A61C 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象の歯牙に対してそれぞれ異なる方向から光を照射する複数の照明デバイスと、
前記複数の照明デバイスの照明条件が異なり且つ所定の露光時間で前記歯牙が写る第1および第2の歯列画像を撮影する撮影デバイスと、
前記第1および第2の歯列画像それぞれについて輝度が所定の輝度しきい値を超えている高輝度領域を抽出する高輝度領域抽出部と、
前記第1および第2の歯列画像の高輝度領域間の類似の程度を示す類似度を算出する高輝度領域比較部と、
前記類似度が所定の類似度しきい値に比べて小さい場合、
前記高輝度領域抽出部によって抽出された前記第1の歯列画像の高輝度領域をハレーション領域として特定するハレーション領域特定部と、
前記第1の歯列画像のハレーション領域に対応する前記第2の歯列画像におけるトリミング領域を抽出し、前記ハレーション領域を前記トリミング領域に差し換える画像合成処理を実行する画像合成処理部と、
画像合成処理された前記第1の歯列画像を出力する歯列画像出力部と、を含む歯列画像撮影システム。
【請求項2】
前記第1および第2の歯列画像に高輝度領域が含まれない場合、前記歯列画像出力部が前記第1の歯列画像を出力する、請求項1に記載の歯列画像撮影システム。
【請求項3】
前記撮影デバイスが、異なる照明条件の下で且つ互いに異なる露光時間で第3および第4の歯列画像を撮影し、
前記高輝度領域抽出部が、前記第3および第4の歯列画像の高輝度領域を抽出し、
前記高輝度領域比較部が、前記第3および第4の歯列画像の高輝度領域の類似度を算出し、
前記第3および第4の歯列画像の高輝度領域間の類似度が前記所定の類似
度しきい値に比べて大きい場合、前記撮影デバイスが、前記所定の露光時間を短縮して前記第1および第2の歯列画像を撮影する、請求項1または2に記載の歯列画像撮影システム。
【請求項4】
前記第3および第4の歯列画像の高輝度領域の輝度値が同一である場合、前記撮影デバイスに異常が生じていると判定する撮影デバイス異常判定部を、さらに含む、請求項3に記載の歯列画像撮影システム。
【請求項5】
類似度が前記所定の類似
度しきい値に比べて大きい高輝度領域をインレーが存在する領域と特定し、前記高輝度領域の色情報と予め用意された複数の種類のインレーの色情報とに基づいて、インレーの種類を特定するインレー種類特定部を、さらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の歯列画像撮影システム。
【請求項6】
前記照明デバイスと前記撮影デバイスが、歯ブラシ状の筺体に組み込まれている、請求項1から5のいずれか一項に記載の歯列画像撮影システム。
【請求項7】
前記歯列画像出力部が、歯列画像を表示可能なスクリーンを備える携帯端末である、請求項6に記載の歯列画像撮影システム。
【請求項8】
撮影対象の歯牙を含む歯列画像を撮影する歯列画像撮影方法であって、
複数の照明デバイスによって撮影対象の歯牙に対してそれぞれ異なる方向から光を照射し、
撮影デバイスによって前記複数の照明デバイスの照明条件が異なり且つ所定の露光時間で前記歯牙が写る第1および第2の歯列画像を撮影し、
前記第1および第2の歯列画像それぞれについて輝度が所定の輝度しきい値を超えている高輝度領域を抽出し、
前記第1および第2の歯列画像の高輝度領域間の類似の程度を示す類似度を算出し、
前記類似度が所定の類似度しきい値に比べて小さい場合、
抽出した前記第1の歯列画像の高輝度領域をハレーション領域として特定し、
前記ハレーション領域に対応する前記第2の歯列画像におけるトリミング領域を抽出し、
前記ハレーション領域を前記トリミング領域に差し換える画像合成処理を実行し、
画像合成処理された前記第1の歯列画像を出力する、歯列画像撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯列画像撮影システムおよび歯列画像撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内を観察する手段として、口腔内に光を照射する機能を備えた口腔内カメラ(特許文献1、特許文献2)が、特許文献1および2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-237081号公報
【文献】特開2007-236707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、口腔内に光を照射し、歯牙の撮影を行うとき、歯牙が白く光沢があることに加えて、歯牙が唾液や血液で濡れていたり、治療痕に使用された金属製のインレーにより、歯牙の表面で正反射が発生してハレーション(いわゆる「ホワイトアウト」)が発生する場合がある。ハレーションが発生するとの歯牙の画像が不鮮明となり、歯牙の状態を正しく確認できない可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、歯牙を鮮明に撮影することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本開示の一態様によれば、
撮影対象の歯牙に対してそれぞれ異なる方向から光を照射する複数の照明デバイスと、
前記複数の照明デバイスの照明条件が異なり且つ所定の露光時間で前記歯牙が写る第1および第2の歯列画像を撮影する撮影デバイスと、
前記第1および第2の歯列画像それぞれについて輝度が所定の輝度しきい値を超えている高輝度領域を抽出する高輝度領域抽出部と、
前記第1および第2の歯列画像の高輝度領域間の類似の程度を示す類似度を算出する高輝度領域比較部と、
前記類似度が所定の類似度しきい値に比べて小さい場合、前記第1の歯列画像の高輝度領域をハレーション領域として特定するハレーション領域特定部と、
前記第1の歯列画像のハレーション領域に対応する前記第2の歯列画像におけるトリミング領域を抽出し、前記ハレーション領域を前記トリミング領域に差し換える画像合成処理を実行する画像合成処理部と、
画像合成処理された前記第1の歯列画像を出力する歯列画像出力部と、を含む歯列画像撮影システムが提供される。
【0007】
また、本開示の別の態様によれば、
撮影対象の歯牙を含む歯列画像を撮影する歯列画像撮影方法であって、
複数の照明デバイスによって撮影対象の歯牙に対してそれぞれ異なる方向から光を照射し、
撮影デバイスによって前記複数の照明デバイスの照明条件が異なり且つ所定の露光時間で前記歯牙が写る第1および第2の歯列画像を撮影し、
前記第1および第2の歯列画像それぞれについて輝度が所定の輝度しきい値を超えている高輝度領域を抽出し、
前記第1および第2の歯列画像の高輝度領域間の類似の程度を示す類似度を算出し、
前記類似度が所定の類似度しきい値に比べて小さい場合、前記第1の歯列画像の高輝度領域をハレーション領域として特定し、
前記ハレーション領域に対応する前記第2の歯列画像におけるトリミング領域を抽出し、
前記ハレーション領域を前記トリミング領域に差し換える画像合成処理を実行し、
画像合成処理された前記第1の歯列画像を出力する、歯列画像撮影方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、歯牙を鮮明に撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る歯列画像撮影システムにおける口腔内カメラの斜視図
【
図2】口腔内カメラに組み込まれた撮影光学系を概略的に示す断面図
【
図3】本開示の実施の形態1に係る歯列画像撮影システムの概略的構成図
【
図4】歯牙の表面にハレーションが生じた状態の歯列画像の一例を示す図
【
図5】ハレーションを取り除いた歯列画像の作成に必要な複数枚の歯列画像の撮影動作のタイミングチャート
【
図6】
図5に示す撮影動作によって得られた複数の歯列画像を示す図
【
図7】ハレーション除去処理の流れを示す一例のフローチャート
【
図8】抽出された高輝度領域を示す複数の輝度分布画像を示す図
【
図9】類似度が所定の類似
度しきい値に比べて小さい高輝度領域を示す輝度分布画像を示す図
【
図11】ハレーションが除去された歯列画像を示す図
【
図12】インレーを備える歯牙を含む歯列画像とその輝度分布とを示す図
【
図13】キャリブレーション処理の流れを示すフローチャート
【
図14】別の実施の形態の歯列画像撮影システムにおける口腔内カメラの一部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するものであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1に係る歯列画像撮影システムにおける口腔内カメラの斜視図である。
図2は、口腔内カメラに組み込まれた撮影光学系を概略的に示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態1の場合、口腔内カメラ10は、片手で取り扱うことが可能な歯ブラシ状の筺体を備え、その筺体は、歯列撮影時にユーザの口腔内に配置されるヘッド部10aと、ユーザが把持するハンドル部10bと、ヘッド部10aとハンドル部10bとを接続するネック部10cとを含んでいる。
【0015】
図2に示すように、本実施の形態1の場合、口腔内カメラ10の撮影光学系12は、ヘッド部10aとネック部10cとに組み込まれている。撮影光学系12は、その光軸LA上に配置された撮像素子14とレンズ16とを含んでいる。
【0016】
撮像素子14は、例えばC-MOSセンサまたはCCD素子などの撮影デバイスであって、レンズ16によって歯牙Dの像が結像される。その結像した像に対応する信号(画像データ)を、撮像素子14は外部に出力する。
【0017】
レンズ16は、例えば集光レンズであって、入射した歯牙Dの像を撮像素子14に結像する。なお、レンズ16は、1つのレンズであってもよいし、複数のレンズから構成されるレンズ群であってもよい。
【0018】
本実施の形態1の場合、撮影光学系12はさらに、歯牙Dの像をレンズ16に向かって反射するミラー18、ミラー18とレンズ16との間に配置された赤外線カットフィルタ20と補色フィルタ22、レンズ16と撮像素子14との間に配置された絞り24とを含んでいる。
【0019】
ミラー18は、撮影光学系12の入射口12aを通過した歯牙Dの像をレンズ16に向かって反射するように、撮影光学系12の光軸LA上に配置されている。
【0020】
赤外線カットフィルタ20は、撮像素子14に入射する光に含まれる赤外線をカットするフィルタである。CCD素子やC-MOSセンサなどの撮像素子14の各色画素(RGB)のフィルタが全透過性を備える場合、赤外線が白色光と認識される。この対処として、赤外線カットフィルタ20が撮像素子14に入射する前の光から赤外線をカットする。
【0021】
補色フィルタ22は、所定の波長の光が選択的に透過するフィルタである。補色フィルタ22は、例えば430nm~460nmの波長の光を選択的に透過し、それ以外の波長の光をカットする。
【0022】
絞り24は、撮影光学系12の光軸LA上に貫通穴を備える板状部材であって、深い焦点深度を実現する。これにより、口腔内の奥行方向についてピントを合わせることができ、輪郭が明瞭な歯列画像を得ることができる。なお、本実施の形態1の場合、撮影光学系12に補色フィルタ22が含まれているので、絞り24によって蛍光線が効果的に処理される。
【0023】
また、口腔内カメラ10は、撮影時に撮影対象の歯牙Dに対して光を照射する照明デバイスとして、複数の第1~第2のLED26A~26Dを搭載している。第1~第4のLED26A~26Dは、例えば白色LEDである。また、
図1に示すように、本実施の形態1の場合、第1~第4のLED26A~26Dが、入射口12aを囲むように配置されている。なお、歯茎Gなどが第1~第4のLED26A~26Dに当接して照明光が不足しないように、第1~第4のLED26A~26Dと入射口12aとを覆う透光性のカバー28がヘッド部10aに設けられている。
【0024】
さらに、本実施の形態の場合、口腔内カメラ10は、
図2に示すように、構図調節機構30と焦点調節機構32とを有する。
【0025】
構図調節機構30は、撮像素子14とレンズ16とを保持する筺体34と、筺体34を光軸LAの延在方向に移動させるアクチュエータ36とから構成される。アクチュエータ36が筺体34の位置を調節することにより、画角が調節される、すなわち撮像素子14に結像する歯列の大きさが調節される。なお、構図調節機構30は、例えば1つの歯牙全体が撮影画像に写るように筺体34の位置を自動的に調節する。また、構図調節機構30は、ユーザの操作に基づいて、ユーザが所望する画角になるように筺体34の位置を調節する。
【0026】
焦点調節機構32は、構図調節機構30の筺体34内に保持され、レンズ16を保持するレンズホルダ38と、レンズホルダ38を光軸LAの延在方向に移動させるアクチュエータ40とから構成される。アクチュエータ40が撮像素子14に対するレンズホルダ38の相対位置を調節することにより、焦点が調節される、すなわちピントが調節される。なお、焦点調節機構32は、例えば撮影画像の中央に位置する歯牙にピントが合うようにレンズホルダ38の位置を自動的に調節する。また、焦点調節機構32は、ユーザの操作に基づいて、レンズホルダ38の位置を調節する。
【0027】
なお、ミラー18を除く撮影光学系12の構成要素は、口腔内カメラ10のハンドル部10bcに設けられてもよい。
【0028】
ここまでは、歯列画像撮影システムにおける口腔内カメラ10の撮影光学系について説明してきた。ここからは、歯列画像撮影システムの構成について説明する。
【0029】
図3は、本開示の一施の形態1に係る歯列画像撮影システムの概略的構成図である。
【0030】
図3に示すように、本実施の形態1に係る歯列画像撮影システム100は、概略的には、口腔内カメラ10を用いて歯列を撮影し、その撮影画像に対して画像処理を実行するように構成されている。
【0031】
図3に示すように、本実施の形態1の場合、歯列画像撮影システム100は、口腔内カメラ10と、携帯端末70と、クラウドサーバー80とを含んでいる。携帯端末70は、例えば、入力デバイスおよび出力デバイスとして、例えば歯列画像を表示可能なタッチスクリーン72を備えている無線通信可能な携帯電話である。携帯端末70は、歯列画像撮影システム100のユーザインターフェースとして機能する。クラウドサーバー80は、携帯端末70に対してインターネットなどを介して通信可能なサーバーであって、携帯端末70に口腔内カメラ10を使用するためのアプリケーションを提供する。例えば、ユーザがアプリケーションをクラウドサーバー80からダウンロードして携帯端末70にインストールする。また、クラウドサーバー80は、口腔内カメラ10によって撮影された歯列画像を携帯端末70を介して取得する。
【0032】
歯列画像撮影システム100は、システムの制御を行う主要部分として中央制御部50と、撮像素子14からの歯列画像を画像処理する画像処理部52と、複数のLED26A~26Dを制御するLED制御部54と、構図調節機構30のアクチュエータ36と焦点調節機構32のアクチュエータ40を制御するレンズドライバー56と、を含んでいる。
【0033】
また、歯列画像撮影システム100は、携帯端末70と無線通信を行う無線通信モジュール58と、中央制御部50などに電力供給を行う電源制御部60とを有する。
【0034】
歯列画像撮影システム100の中央制御部50は、本実施の形態1の場合、口腔内カメラ10のハンドル部10bに搭載されている。例えば、また、中央制御部50は、後述する様々な処理を実行するCPUやMPUなどのコントローラ62と、コントローラ62に様々な処理を実行させるためのプログラムを記憶するRAMやROMなどのメモリ64とを含んでいる。なお、メモリ64には、プログラム以外に、撮像素子14によって撮影された歯列画像(データ)や種々の設定データなどが記憶される。
【0035】
画像処理部52は、本実施の形態1の場合、口腔内カメラ10のハンドル部10bに搭載され、中央制御部50のコントローラ62からの制御信号に基づいて、撮像素子14が撮影した歯列画像(データ)を取得し、その取得した歯列画像に対して画像処理を実行し、その画像処理後の歯列画像を中央制御部50に出力する。画像処理部52は、例えば回路で構成され、例えば歯列画像に対してノイズ除去、AWB(Auomatic White Balance)処理などの画像処理を実行する。画像処理部52から出力された歯列画像を、コントローラ62は、無線通信モジュール58を介して携帯端末70に送信する。携帯端末70は、その送信された歯列画像をタッチスクリーン72に表示し、それによりユーザに歯列画像を提示する。
【0036】
LED制御部54は、本実施の形態1の場合、口腔内カメラ10のハンドル部10bに搭載され、のコントローラ62からの制御信号に基づいて、第1~第4のLED26A~26Dの点灯および消灯を実行する。LED制御部54は、例えば回路で構成される。例えば、ユーザが携帯端末70のタッチスクリーン72に対して口腔内カメラ10を起動させる操作を実行すると、携帯端末70から対応する信号が無線通信モジュール58を介してコントローラ62に送信される。コントローラ62は、受信した信号に基づいて、第1~第4のLED26A~26Dを点灯させるようにLED制御部54に制御信号を送信する。
【0037】
レンズドライバー56は、本実施の形態の場合、口腔内カメラ10のハンドル部10bに搭載され、中央制御部50からのコントローラ62からの制御信号に基づいて、構図調節機構30のアクチュエータ36と焦点調節機構32のアクチュエータ40を制御する。レンズドライバー56は、例えば回路で構成される。例えば、ユーザが携帯端末70のタッチスクリーン72に対して構図調節やピント調節に関する操作を実行すると、携帯端末70から対応する信号が無線通信モジュール58を介して中央制御部50に送信される。中央制御部50のコントローラ62は、受信した信号に基づいて、構図調節やピント調節を実行するようにレンズドライバー56に制御信号を送信する。また例えば、コントローラ62が画像処理部52からの歯列画像に基づいて構図調節やピント調節に必要なアクチュエータ36、40の制御量を演算し、その演算された制御量に対応する制御信号がレンズドライバー56に送信される。
【0038】
無線通信モジュール58は、本実施の形態の場合、口腔内カメラ10のハンドル部10bに搭載され、コントローラ62からの制御信号に基づいて、携帯端末70と無線通信を行う。無線通信モジュール58は、例えばWiFiやBluetoothなどの既存の通信規格に準拠した無線通信を携帯端末70との間で実行する。無線通信モジュール58を介して、口腔内カメラ10から歯牙Dが写る歯列画像が携帯端末70に送信されたり、携帯端末70から口腔内カメラ10に操作信号が送信される。
【0039】
電源制御部60は、本実施の形態の場合、口腔内カメラ10のハンドル部10bに搭載され、中央制御部50、画像処理部52、LED制御部54、レンズドライバー56、および無線通信モジュール58に、電池66の電力を分配する。電源制御部60は、例えば回路で構成される。なお、本実施の形態の場合、電池66は、充電可能な二次電池であって、口腔内カメラ10に搭載されたコイル68を介して、商用電源に接続された外部の充電器69によってワイヤレス充電される。
【0040】
ここまでは、歯列画像撮影システム100の構成について説明してきた。ここからは、歯列画像撮影システム100が実行する歯列画像撮影について説明する。
【0041】
図4は、歯牙の表面にハレーションが生じた状態の歯列画像の一例である。
【0042】
図4の一例の歯列画像に示すように、歯牙Dの表面が唾液や濡れているなどして、第1~第4のLED26A~26Dからの照明光によって歯牙Dの表面でハレーションHが生じうる。そのハレーションHが生じた歯牙Dの表面部分は不鮮明でその状態を確認することができない。そこで、本実施の形態1に係る歯列画像撮影システム100は、そのハレーションHを取り除いた歯列画像を作成することができるように構成されている。
【0043】
ハレーションHを取り除いた歯列画像を作成するために、歯列画像撮影システム100は、必要な複数枚の歯列画像を撮影するように構成されている。
【0044】
図5は、ハレーションを取り除いた歯列画像の作成に必要な複数枚の歯列画像の撮影動作のタイミングチャートである。また、
図6は、
図5に示す撮影動作によって得られた複数の歯列画像を示している。
【0045】
図5および
図6に示すように、複数枚の歯列画像P
1~P
4それぞれは、異なる照明条件の下で撮影される。また、所定の露光時間T
EXで、複数枚の歯列画像P
1~P
4は撮影される。
【0046】
例えば、ユーザが、まず一方の手で口腔内カメラ10を持ち、他方の手で携帯端末70を持つ。次に、ユーザが、第1~第4のLED26A~26Dを点灯した状態で、撮影対象の歯牙Dが携帯端末70のタッチスクリーン72に映るように口腔内カメラ10のヘッド部10aの位置を調節する。例えば、
図2に示すように、口腔内カメラ10のヘッド部10aを撮影対象の歯牙D近傍の歯茎Gに当接させることにより、口腔内カメラ10を口腔内で固定する。その位置調節後、ユーザが、撮影開始に関する操作をタッチスクリーン72に対して実行する。その操作に基づいて、撮影開始信号が、携帯端末70から口腔内カメラ10の中央制御部50に送信される。
【0047】
本実施の形態1の場合、中央制御部50のコントローラ62は、LED制御部54を制御して第1~第4のLED26A~26Dを1つずつ順番に点灯させる。
図5に示すように、一枚目の歯列画像P
1を撮影するときは、第1のLED26Aが点灯(ON)し、残りのLEDが消灯(OFF)する。一枚目の歯列画像P
1を中央制御部50が取得すると(メモリ64に保存されると)、二枚目の歯列画像P
2を撮影するために、第2のLED26Bが点灯し、残りのLEDを消灯する。二枚目の歯列画像P
2の取得後、第3のLED26Cが点灯し、残りのLEDが消灯し、三枚目の歯列画像P
3が撮影される。そして、三枚目の歯列画像P
3の取得後、第4のLED26Dが点灯し、残りのLEDが消灯し、四枚目の歯列画像P
4が撮影される。これにより、照明条件が異なる、具体的には照明方向が異なり、所定の露光時間T
EXで、構図が実質的に同一の複数の歯列画像P
1~P
4が撮影される(保存される)。その後、コントローラ62は、LED制御部54を介して第1~第4のLED26A~26Dを撮影開始前の状態に戻し、携帯端末70を介してユーザに対して撮影終了の通知を実行する。
【0048】
図6に示すように、構図は実質的に同一であって、照明方向が異なり、所定の露光時間T
EXで撮影された複数枚(本実施の形態の場合は4枚)の歯列画像P
1~P
4を取得すると、中央制御部50のコントローラ62は、歯列画像P
1のハレーションHを除去する処理を実行する。その処理について、
図7を参照しながら説明する。
【0049】
図7は、ハレーション除去処理の流れを示す一例のフローチャートである。
【0050】
まず、ステップS100において、コントローラ62は、複数の歯列画像P1~Pn(本実施の形態1の場合、n=4)それぞれにおいて、輝度が所定の輝度しきい値を超えている高輝度領域ABを抽出する。すなわち、コントローラ62が、メモリ64に記憶されているプログラムにしたがって動作することによって歯列画像撮影システム100の高輝度領域抽出部として機能する。なお、所定の輝度しきい値は、例えば予め実験的にまたは理論的に求められ、正反射が生じた歯牙の表面部分の輝度近傍の値である。
【0051】
図8は、抽出された高輝度領域を示す複数の輝度分布画像を示す図である。
【0052】
図8に示すように、複数の輝度分布画像BP
1~BP
4それぞれは、抽出された高輝度領域A
B(クロスハッチング)を示している。なお、輝度分布画像BP
1は歯列画像P
1に対応し、BP
2はP
2、BP
3はP
3、そしてBP
4はP
4に対応する。
【0053】
なお、ステップS100に続くステップS110において、複数の歯列画像全てにおいて高輝度領域ABが存在するか否かが判定される。歯列画像の少なくとも1つに高輝度領域ABが存在する場合、ステップS120に進む。そうでない場合、すなわち歯列画像全てにおいて高輝度領域ABが存在しない場合、ステップS200に進む。
【0054】
ステップS120において、コントローラ62により、パラメータkが1に設定される。
【0055】
ステップS130において、コントローラ62は、歯列画像P1の高輝度領域ABと歯列画像Pk+1の高輝度領域ABとの間の類似の程度を示す数字である類似度を算出する。すなわち、コントローラ62が、メモリ64に記憶されているプログラムにしたがって動作することによって歯列画像撮影システム100の高輝度領域比較部として機能する。
【0056】
高輝度領域ABの類似度は、例えばテンプレートマッチングを用いて算出される。テンプレートマッチングとして、例えば、SSD(Sum of Squared Difference)、SAD(Sum of Abusolute Difference)、NCC(Normalized Cross-Correlation)などがある。
【0057】
SSDを用いる場合は、下記の数式1を用いて歯列画像P1と、Pk+1それぞれに対応する輝度分布画像BP1、BPk+1の画素の輝度値の差分の二乗和を算出する。その算出した値RSSDの逆数を高輝度領域間の類似度とする。
【0058】
【0059】
数1において、T(i,j)は歯列画像P1に対応する輝度分布画像BP1の画素の輝度値であって、I(i,j)は歯列画像Pk+1に対応する輝度分布画像BPk+1の画素の輝度値である。
【0060】
SADを用いる場合は、下記の数式2を用いて歯列画像P1と、Pk+1それぞれに対応する輝度分布画像BP1、BPk+1の画素の輝度値の差分の絶対値の和を算出する。その算出した値RSADの逆数を高輝度領域間の類似度とする。
【0061】
【0062】
数2において、T(i,j)は歯列画像P1に対応する輝度分布画像BP1の画素の輝度値であって、I(i,j)は歯列画像Pk+1に対応する輝度分布画像BPk+1の画素の輝度値である。
【0063】
NCCCを用いる場合は、下記の数式3を用いて歯列画像P1と、Pk+1それぞれに対応する輝度分布画像BP1、BPk+1の画素の輝度値の正規化相互相関を評価する。数式3を用いて算出される評価値RNCCは、-1.0~+1.0の範囲の数値であって、+1.0に近いほど、類似度が高いことを示す。
【0064】
【0065】
数3において、T(i,j)は歯列画像P1に対応する輝度分布画像BP1の画素の輝度値であって、I(i,j)は歯列画像Pk+1に対応する輝度分布画像BPk+1の画素の輝度値である。
【0066】
ステップS130で歯列画像P1の高輝度領域ABと歯列画像Pk+1の高輝度領域ABの間の類似度が算出されると、ステップS140において、コントローラ62は、歯列画像P1に類似度が所定の類似度しきい値に比べて小さい高輝度領域ABが存在するか否かを判定する。存在する場合には、ステップS150に進む。そうでない場合にはステップS170に進む。
【0067】
図9は、類似度が所定の類似
度しきい値に比べて小さい高輝度領域を示す輝度分布画像を示している。
【0068】
図9に示すように、歯列画像P
1に対応する輝度分布画像BP
1において、類似度が所定の類似
度しきい値に比べて小さい高輝度領域(斜線ハッチング)が存在する場合、ステップS150において、コントローラ62は、当該領域を歯列画像P
1においてハレーションが生じている領域AH(ハレーション領域)として特定する。すなわち、コントローラ62が、メモリ64に記憶されているプログラムにしたがって動作することによって歯列画像撮影システム100のハレーション領域特定部として機能する。
【0069】
図10は、トリミング処理および合成処理を示す図である。また、
図11は、トリミング処理および合成処理によってハレーションが部分的に除去された歯列画像を示している。
【0070】
ステップS160において、コントローラ62は、
図10に示すように、歯列画像P
1のハレーション領域A
Hに対応する歯列画像P
k+1の領域A
tri(トリミング領域)を抽出する。そして、続くステップS170において、歯列画像P
1のハレーション領域A
Hを歯列画像P
k+1のトリミング領域A
triに差し換える画像合成処理を実行する。すなわち、コントローラ62が、メモリ64に記憶されているプログラムにしたがって動作することによって歯列画像撮影システム100の合成処理部として機能する。これらのステップS160およびS170の処理により、
図11に示すように、ハレーションHの一部が除去された歯列画像P
1が得られる(
図6参照)。
【0071】
ステップS180において、コントローラ62により、パラメータkが+1だけインクリメントされる。続くステップS190において、コントローラ62により、パラメータkがn-1であるか否かが判定される。パラメータnは歯列画像の枚数である。パラメータkがn-1である場合(本実施の形態1の場合にはk=3)には、ステップS200に進む。そうでないステップS130に戻る。
【0072】
ステップS130~S190の処理が繰り返されることにより、歯列画像P1と他の歯列画像P2~P4それぞれとの間で、高輝度領域AHの類似度算出や画像合成処理(類似度算出結果によっては画像合成処理が実行されない歯列画像もありうる)が実行される。
【0073】
歯列画像P1と他の歯列画像P2~P4それぞれとの間で高輝度領域AHの類似度算出や画像合成処理が実行されると、ステップS200において、コントローラ62は、歯列画像P1を、携帯端末70のタッチスクリーン72を介して出力する(表示する)。すなわち、携帯端末70のタッチスクリーン72が、歯列画像撮影システム100の歯列画像出力部として機能する。ステップS200の処理が終了すると、ハレーション除去処理が完了する。
【0074】
図11は、ハレーションが除去された歯列画像を示している。
【0075】
図11に示すように、歯列画像P
1において、一部を除いてハレーションHが除去されている(
図6参照)。残るハレーションH
Rは、照明方向を変えても生じるハレーションである。このハレーションH
Rは、歯牙Dに詰められたインレーが多重反射することによって生じていると推定できる。したがって、ハレーションH
Rにはハレーション除去処理が実行されず、歯列画像P
1にはインレーが写る。
【0076】
言い換えると、他の歯列画像P2~P4の高輝度領域ABそれぞれとの間の類似度が所定の類似度しきい値に比べて大きい歯列画像P1の高輝度領域ABは、インレーが存在しうる領域として推定され、その領域は画像合成処理されることなくそのまま残される。その結果、インレーを備える歯牙Dが写る歯列画像において、インレーが写らないという不自然な状況が起こることが抑制されている。
【0077】
したがって、
図11に示すようにインレーを除く歯牙の部分のハレーションが除去された歯列画像を得ることができる。
【0078】
以上のような本実施の形態1によれば、歯牙を鮮明に撮影することができる。
【0079】
(実施の形態2)
本実施の形態2に係る歯列画像撮影システムは、上述の実施の形態1に係る歯列画像撮影システムの改良形態であって、特にインレーを備える歯牙を含む歯列画像の撮影に適した形態である。したがって、異なる点を中心にして、本実施の形態2について説明する。
【0080】
インレー備える歯牙を含む歯列、特に金属製のインレーを備える歯牙を含む歯列を撮影すると、インレーの一部分が鏡面反射する場合がある。鏡面反射したインレーの部分は、対応する撮像素子の画素が飽和してホワイトアウトが発生しうるので、その状態を確認することができない。
【0081】
図12は、インレーを備える歯牙を含む歯列画像とその輝度分布とを示している。
【0082】
図12示す輝度分布は、歯牙画像P
5において、歯肉、歯牙、インレー、歯牙、歯肉と順番に通過する直線X-X上の輝度分布を示している。歯肉の輝度が最も低く、インレーの輝度が最も高い。インレー内においても他の部分に比べて輝度が高い部分が存在し、このインレーの部分は、鏡面反射が発生していると推定される。したがって、歯肉や歯牙に比べて輝度が高いインレーの輝度を低下させれば、インレーを含む歯牙においてホワイトアウトの発生を抑制でき、歯牙全体が鮮明に映る歯列画像を得ることができる。
【0083】
インレーの輝度を低下させるために、本実施の形態2の場合、
図6に示すような、ハレーション除去処理に必要な複数枚の歯列画像の露光時間を所定の露光時間T
EXから短縮させる。具体的には、ハレーション除去処理に必要な複数枚の歯列画像を撮影する前に、以下のキャリブレーション処理を、本実施の形態2に係る歯列画像撮影システムは実行する。
【0084】
図13は、キャリブレーション処理の流れを示すフローチャートである。
【0085】
図13に示すように、ステップS300において、コントローラ62は、キャリブレーション処理用の2枚の歯列画像を撮像素子14から取得する。このとき、2枚の歯列画像は、異なる照明条件の下で、互いに異なる露光時間で撮影される。なお、これらの露光時間は、両方が所定の露光時間
EXと異なってもよいし、一方が同じであってもよい。一方の歯列画像は、例えば第1のLED26Aのみが点灯した状態で撮影される。他方の歯列画像は、例えば第3のLED26Cのみが点灯した状態で撮影される。
【0086】
ステップS310において、コントローラ62は、2枚の歯列画像それぞれにおいて、所定の輝度しきい値を超える高輝度領域ABを抽出する。
【0087】
ステップS320において、コントローラ62は、2枚の歯列画像に高輝度領域ABが存在するか否かを判定する。存在する場合にはステップS330に進む。そうでない場合には、ハレーション除去処理に必要な複数枚の歯列画像を撮影したときに歯牙においてホワイトアウトが発生する確率が低いので、キャリブレーション処理を終了する。
【0088】
ステップS330において、コントローラ62は、2枚の歯列画像の高輝度領域AB間の類似度を算出する。
【0089】
ステップS340において、コントローラ62は、類似度が所定の類似度しきい値に比べて大きい高輝度領域ABが存在するか否かを判定する。存在する場合、ステップS350に進む。そうでない場合、インレーが存在しない可能性が高いので、キャリブレーション処理を終了する。
【0090】
ステップS350において、コントローラ62は、2枚の歯列画像の高輝度領域ABの輝度値が異なるか否かを判定する。異なる場合、ステップS360に進む。そうでない場合、ステップS400に進み、コントローラ62は、撮像素子14に異常が発生していると判定する。すなわち、コントローラ62が、歯列画像撮影システムの撮影デバイス異常判定部として機能する。このような異常判定が実行できる理由は、2枚の歯列画像が異なる露光時間で撮影されているにもかかわらず、それらの高輝度領域ABの輝度値が異なっておらずに同一だからである。なお、この撮像素子の異常判定を高精度に行うためには、2枚の歯列画像の露光時間の差は大きい方が好ましい。
【0091】
ステップS360において、コントローラ62は、ハレーション除去処理に必要な複数枚の歯列画像を撮影するときの所定の露光時間TEXを短縮する。すなわち、類似度が大きく且つ輝度値が異なる高輝度領域ABは、鏡面反射が起こりやすいインレーが存在する可能性が高い領域である。そこで、ハレーション除去処理に必要な複数枚の歯列画像に含まれるインレーでのホワイトアウトを抑制するために、所定の露光時間TEXを短縮する。
【0092】
ステップS370において、コントローラ62は、類似度が大きく且つ輝度値が異なる高輝度領域ABをインレーが存在する領域と特定する。続くステップS380において、コントロ-ラ62は、インレーが存在する領域として特定された高輝度領域ABの色情報(色や光沢などの歯列画像から取得できる情報)に基づいてインレーの種類を特定する。そのために、メモリ64には、予め用意された様々な種類のインレーの色や光沢などの色情報が記憶されている。メモリ64内の情報を参照することにより、コント―ラ62は、高輝度領域AB内のインレーの種類を特定する。
【0093】
ステップS390において、コントローラ62は、特定したインレーの種類の情報をメモリ64に保存する。このインレーの種類の情報は、
図11に示すようにハレーションが除去された歯列画像にインレーが写るときに、その歯列画像とともに出力される。
【0094】
このような本実施の形態2によれば、上述の実施の形態1と同様に、歯牙を鮮明に撮影することができる。特に、インレーを備える歯牙を鮮明に撮影することができる。
【0095】
以上、上述の実施の形態1および2を挙げて本開示を説明したが、本開示の実施の形態は上述の実施の形態に限らない。
【0096】
例えば、上述の実施の形態の場合、1本の歯牙に対してハレーション除去処理が実行されているが、本開示の実施の形態はこれに限らない。複数本の歯牙に対して同時にハレーション除去処理することも可能である。そのために、口腔内カメラを、例えば360度カメラで構成してもよい。また例えば、
図1に示す口腔内カメラ10のヘッド部10aをネック部10cに対して360度回転可能に構成し、パノラマ画像状の歯列画像を取得してもよい。
【0097】
また、上述の実施の形態1の場合、撮影対象の歯牙に対してそれぞれ異なる方向から光を照射する照明デバイスである第1~第4のLED26A~26Dは、
図5に示すように、1枚の歯列画像を撮影するときは1つのLEDのみ点灯するが、本開示の実施の形態はこれに限らない。例えば、1枚の歯列画像を撮影するときの照明条件として、2つ以上の照明デバイスが点灯する照明条件があってもよい。また、全ての照明デバイスが光を照射する照明条件や全ての照明デバイスが消灯する照明条件があってもよい。これにより、歯牙を撮影するときの照明条件を増加させることができ、ハレーション除去処理に必要な照明条件が異なる複数の歯列画像を増加させることができる。多数の歯列画像を使用することにより、ハレーション除去処理の精度が向上する。
【0098】
照明デバイスに関して、
図5に示すように第1~第4のLED26A~26DはON/OFF制御されるが、本開示の実施の形態はこれに限らない。照明デバイスは、例えば光量が調節可能な照明デバイスであってもよい。光量が調節可能な照明デバイスを用いれば、歯牙を撮影するときの照明条件をさらに増加させることができ、ハレーション除去処理に必要な照明条件が異なる複数の歯列画像を増加させることができる。多数の歯列画像を使用することにより、ハレーション除去精度が向上する。
【0099】
照明デバイスの光量調節に関して、ハレーション除去処理に必要な照明条件が異なる複数の歯列画像を撮影する前に、照明デバイスの光量が自動的または手動で調節されてもよい。例えば、照度センサを用いて口腔内カメラの入射口周辺の明るさを測定し、その測定結果に基づいて照明デバイスの光量を調節してもよい。また例えば、測距センサを用いて口腔内カメラから撮影対象の歯牙までの距離を測定し、その測定結果に基づいて照明デバイスの光量を調節してもよい。さらに例えば、ユーザが、携帯端末70のタッチスクリーン72を介して歯列画像を確認しながら、そのタッチスクリーン72を介して照明デバイスの光量を調節できるようにしてもよい。ハレーション除去処理に必要な照明条件が異なる複数の歯列画像を撮影する前に、照明デバイスの光量を適当に調節することにより、ある程度ハレーションの発生が抑制された複数枚の歯列画像を取得することができる。そのある程度ハレーションの発生が抑制された複数枚の歯列画像を使用することにより、ハレーション除去精度が向上する。
【0100】
複数の照明デバイスそれぞれの照射光に関して、上述の実施の形態1の場合、第1~第4のLED26A~26Dの全てが白色光を出力する。これに代わって、一部の照明デバイスが紫外線光を照射してもよい。紫外線光を照射すると、歯列画像において歯垢が鮮明に写る。これにより、歯列画像を用いて歯垢チェックが可能になる。
【0101】
照明デバイスが紫外線光を照射する場合、その紫外線光によって口腔内カメラ10のヘッド部10aを紫外線殺菌してもよい。この場合、ヘッド部10a全体を覆うヘッドカバーを用意する。そのヘッドカバーの内面は鏡面加工されている。ヘッドカバーに覆われた状態のヘッド部10aに設けられた照明デバイスが紫外線光を照射すると、その紫外線が鏡面加工されたヘッドカバーの内面で反射し、ヘッド部10aに照射される。その結果、ヘッド部10aが紫外線光によって殺菌される。
【0102】
照明デバイスの照射光に関して、口腔内カメラ10、特に口腔内に入るヘッド部10aおよびネック部10cの一部は、光の反射を抑制するように、光の吸収性が高い膜(例えば黒色の塗料)で覆われているのが好ましい。これにより、口腔内カメラ10で反射した光が歯牙に投射されることが抑制される、すなわちハレーションの発生が抑制される。
【0103】
ハレーション除去処理に必要な照明条件が異なる複数の歯列画像をより良好な状態で取得するために、ユーザが歯列画像のホワイトバランスを調節できるようにしてもよい。例えば、ユーザが、携帯端末70のタッチスクリーン72を介して歯列画像を確認しながら、そのタッチスクリーン72を介してホワイトバランスを調節できるようにしてもよい。
【0104】
ハレーション除去処理に必要な照明条件が異なる複数の歯列画像をより良好な状態で取得するために、口腔内カメラに曇り止め処置を施してもよい。口腔内は湿度が高いため、撮像素子14やレンズ16などの撮影光学系12の構成要素が湿気によって濡れる可能性がある。その対処として、例えば、レンズ16の透過面やミラー18の反射面を撥水加工してもよい。また例えば、撮像素子14、レンズ16などが濡れないように(結露が生じないように)、その周囲の空気を温めてもよい。その空気を温める熱源として、ヒータを使用してもよい。あるいは、電池66から供給されて駆動する電子部品からの排熱によって空気を温めてもよい。代わりとして、歯列画像に部分的に不鮮明な部分が発生している場合にはレンズ16やカバー28が濡れていると判定し、そのことをユーザに通知してもよい。
【0105】
ハレーション除去処理に必要な照明条件が異なる複数の歯列画像をより良好な状態で取得するために、上述の実施の形態1の場合、
図2に示すように、口腔内カメラ10のヘッド部10aが歯茎Gに当接される。口腔内カメラ10のヘッド部10aの口腔内での位置固定は、これに限らない。例えば、ネック部10cに上唇または下唇が着座する平面や凹面などの着座面を設けてもよい。
【0106】
ハレーション除去処理に必要な照明条件が異なる複数の歯列画像をより良好な状態で取得するために、特に奥歯または奥歯に近い外側面を撮影しやすくするために、口腔内カメラ10にスペーサを設けてもよい。
【0107】
図14は、別の実施の形態の歯列画像撮影システムにおける口腔内カメラの一部の斜視図である。
【0108】
図14に示すように、口腔内カメラ210のヘッド部210aには、撮影光学系の光軸LAの延在方向に延在して両端が丸いスペーサ210dが設けられている。このスペーサ210dが奥歯近傍の歯茎と対向する頬の内側部分との間に配置されることにより、頬と奥歯の外側面との間にスペースが形成される。その結果、撮影光学系の入射口212aと奥歯の外側面との間に、撮影に適切な距離が確保される。なお、スペーサ210dは、奥歯以外の歯を撮影するときを考慮すると、ヘッド部210aに対して着脱可能であることが好ましい。
【0109】
また、複数の歯牙を撮影する場合、歯列画像撮影システムは、その撮影手順などのユーザに教示してもよい。例えば、携帯端末70のタッチスクリーン72に全ての歯牙を含む口腔内画像(例えばイラスト)を表示し、その口腔内画像を用いて次にユーザが撮影すべき対象の歯牙の位置を教示する。ユーザが教示された歯牙に口腔内カメラ10のヘッド部10aを位置合わせすると、その歯列画像に基づいて歯牙の種類、撮影方向、画角などを判定し、適切な撮影方向や画角などをユーザに教示する。ユーザによって撮影方向や画角などが適切に調節されると、口腔内カメラ10がその歯牙を撮影する。なお、ヘッド部10aをネック部10cに対して回転可能に構成し、そのヘッド部10aを回転させるモータを口腔内カメラ10に搭載することにより、ユーザを介することなく、撮影方向を調節することができる。歯牙の種類は、歯列画像に写る歯牙の像に対して画像認識を実行することにより、特定することができる。これにより、ユーザが次に撮影すべき歯牙と異なる歯牙に対してヘッド部10aを位置合わせした場合、その間違いをユーザに指摘することができる。
【0110】
最後に、上述の実施の形態1の場合、歯列画像撮影システム100は、
図1および
図3に示すように、歯ブラシ状の口腔内カメラ10と携帯端末70とで構成されている。また、口腔内カメラ10に、照明デバイスであるLED26A~26D、撮像デバイスである撮像素子14、ハレーション除去処理を実行するコントローラ62などが搭載されている。そして、携帯端末70が、歯列画像を出力する。しかしながら、本開示の実施の形態はこれに限らない。
【0111】
例えば、ハレーション除去処理を実行するコント―ラは、携帯端末にあってもよい。すなわち、携帯端末に搭載されたCPUやMPUなどが歯列画像のハレーション除去処理を実行する。また例えば、携帯端末の代わりにパーソナルコンピュータを使用し、口腔内カメラをUSBなどでそのパーソナルコンピュータに接続してもよい。
【0112】
また、照明デバイスと撮影デバイスが搭載され、少なくとも一部が口腔内に進入するカメラは、歯ブラシ状の口腔内カメラに限らない。照明デバイスや撮影光学系の入射口が設けられた部分が口腔内で自由に移動可能であれば、カメラの形態は問わない。例えば、撮影デバイスを含む撮影光学系と照明デバイスとを、電動歯ブラシのヘッド部に搭載してもよい。
【0113】
すなわち、本開示の実施の形態に係る歯列画像撮影システムは、広義には、撮影対象の歯牙に対してそれぞれ異なる方向から光を照射する複数の照明デバイスと、前記複数の照明デバイスの照明条件が異なり且つ所定の露光時間で前記歯牙が写る第1および第2の歯列画像を撮影する撮影デバイスと、前記第1および第2の歯列画像それぞれについて輝度が所定の輝度しきい値を超えている高輝度領域を抽出する高輝度領域抽出部と、前記第1および第2の歯列画像の高輝度領域間の類似の程度を示す類似度を算出する高輝度領域比較部と、前記類似度が所定の類似度しきい値に比べて小さい場合、前記第1の歯列画像の高輝度領域をハレーション領域として特定するハレーション領域特定部と、前記第1の歯列画像のハレーション領域に対応する前記第2の歯列画像におけるトリミング領域を抽出し、前記ハレーション領域を前記トリミング領域に差し換える画像合成処理を実行する画像合成処理部と、画像合成処理された前記第1の歯列画像を出力する歯列画像出力部と、を含んでいる。
【0114】
また、本開示の実施の形態に係る歯列画像撮影方法は、広義には、撮影対象の歯牙を含む歯列画像を撮影する歯列画像撮影方法であって、複数の照明デバイスによって撮影対象の歯牙に対してそれぞれ異なる方向から光を照射し、撮影デバイスによって前記複数の照明デバイスの照明条件が異なり且つ所定の露光時間で前記歯牙が写る第1および第2の歯列画像を撮影し、前記第1および第2の歯列画像それぞれについて輝度が所定の輝度しきい値を超えている高輝度領域を抽出し、前記第1および第2の歯列画像の高輝度領域間の類似の程度を示す類似度を算出し、前記類似度が所定の類似度しきい値に比べて小さい場合、前記第1の歯列画像の高輝度領域をハレーション領域として特定し、前記ハレーション領域に対応する前記第2の歯列画像におけるトリミング領域を抽出し、前記ハレーション領域を前記トリミング領域に差し換える画像合成処理を実行し、画像合成処理された前記第1の歯列画像を出力する。
【0115】
以上のように、本開示における技術の例示として、上述の実施の形態を説明してきた。そのために、図面および詳細な説明を提供している。したがって、図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上述の技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0116】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略等を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本開示は、歯列を撮影して歯列画像を出力する装置、システム、および方法に対して適用可能である。