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  • 特許-バスバーおよび電池積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】バスバーおよび電池積層体
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/503 20210101AFI20241011BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20241011BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20241011BHJP
【FI】
H01M50/503
H01M50/505
H01M50/209
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023131892
(22)【出願日】2023-08-14
(62)【分割の表示】P 2020509833の分割
【原出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2023145802
(43)【公開日】2023-10-11
【審査請求日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2018062002
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】小村 哲司
(72)【発明者】
【氏名】粂 信吾
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-018904(JP,A)
【文献】特開2012-243689(JP,A)
【文献】特開2014-186803(JP,A)
【文献】特開2014-075179(JP,A)
【文献】特開2015-015082(JP,A)
【文献】特開平06-140020(JP,A)
【文献】国際公開第2010/052788(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50 -50/598
H01M 50/209
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電池および第2電池を電気的に接続するバスバーであって、
前記第1電池の出力端子に接合される第1接合部と、
前記第2電池の出力端子に接合される第2接合部と、
前記第1接合部および前記第2接合部の間に配置されて、電池とバスバーとの積層方向に突出する突出部と、を備え、
前記突出部は、前記第1接合部から電池に接近または離間する方向に延在する第1傾斜部と、前記第2接合部から電池に接近または離間する方向に延在する第2傾斜部とを有し、
前記第1傾斜部および前記第2傾斜部は、前記第1接合部および前記第2接合部が並ぶ第1方向に所定の間隔をあけて、且つ前記積層方向から見て、前記第1方向と直交する第2方向の一端側から他端側に向かって当該間隔が徐々に広がるように並ぶことを特徴とするバスバー。
【請求項2】
前記第1傾斜部と前記第1接合部との接続角度および前記第2傾斜部と前記第2接合部との接続角度は、前記一端側から前記他端側にかけて同一である請求項1に記載のバスバー。
【請求項3】
前記突出部は、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との間に平坦部を有する請求項1または2に記載のバスバー。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバスバーと、
前記バスバーにより互いに電気的に接続された複数の電池と、を備えることを特徴とする電池積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバーおよび電池積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用等の、高い出力電圧が要求される電源に用いられる電池として、複数個の電池が電気的に接続されてなる電池積層体が知られている。従来、このような電池積層体では、隣り合う電池の出力端子同士がバスバーで接続されていた。
【0003】
バスバーとしては、複数のプレートが積層された構造を有するバスバーが知られている(例えば、特許文献1参照)。積層構造をとることで、バスバーの剛性を抑えることができる。これにより、電池の振動等に起因してバスバーと電池との接続部にかかる力をバスバーが吸収することができる。この結果、バスバーと電池との間の接続信頼性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-18904号公報
【発明の概要】
【0005】
近年、電池の高容量化が進んでおり、電池の膨張量が増大する傾向にある。電池が膨張すると、特に電池の積層方向において電池の寸法変化量が大きくなる。したがって、バスバーと電池との接続部にかかる負荷も増大する傾向にある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、バスバーの柔軟性を高める技術を提供することにある。
【0007】
本発明のある態様は、バスバーである。当該バスバーは、複数のプレートが積層された構造を有し、第1電池および第2電池を電気的に接続するバスバーであって、第1電池の出力端子に接合される第1接合部と、第2電池の出力端子に接合される第2接合部と、第1接合部および第2接合部の間に配置されて、電池とバスバーとの積層方向に突出する突出部とを備える。突出部は、第1接合部から電池に接近または離間する方向に延在する第1傾斜部と、第2接合部から電池に接近または離間する方向に延在する第2傾斜部とを有する。第1傾斜部および第2傾斜部は、第1接合部および第2接合部が並ぶ第1方向に所定の間隔をあけて、且つ積層方向から見て、第1方向と交わる第2方向の一端側から他端側に向かって当該間隔が徐々に広がるように並ぶ。
【0008】
本発明の他の態様は、電池積層体である。当該電池積層体は、上記態様のバスバーと、バスバーにより互いに電気的に接続された複数の電池とを備える。
【0009】
本発明によれば、バスバーの柔軟性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る電池積層体の概略構造を示す斜視図である。
図2】バスバーの概略構造を示す斜視図である。
図3】バスバーの概略構造を示す平面図である。
図4図4(A)は、バスバーの製造過程で形成されるプレート積層体の概略構造を示す斜視図である。図4(B)は、プレート積層体の概略構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、同一の部材であっても、各図面間で縮尺等が若干相違する場合もあり得る。
【0013】
また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合、特に言及がない限りいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0014】
図1は、実施の形態に係る電池積層体の概略構造を示す斜視図である。電池積層体1は、複数のバスバー2と、バスバー2により互いに電気的に接続された複数の電池4とを備える。
【0015】
各電池4は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池等の充電可能な二次電池である。電池4は、いわゆる角形電池であり、扁平な直方体形状の外装缶を有する。外装缶の一面には略長方形状の開口が設けられ、この開口を介して外装缶に電極体や電解液等が収容される。外装缶の開口には、外装缶を封止する封口板6が設けられる。
【0016】
封口板6には、長手方向の一端寄りに正極の出力端子8が設けられ、他端寄りに負極の出力端子8が設けられる。以下では適宜、正極の出力端子8を正極端子8aと称し、負極の出力端子8を負極端子8bと称する。また、出力端子8の極性を区別する必要がない場合、正極端子8aと負極端子8bとをまとめて出力端子8と称する。外装缶、封口板6および出力端子8は導電体であり、例えば金属製である。また、封口板6には、一対の出力端子8の間に安全弁(図示せず)が設けられる。安全弁は、外装缶の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出できるように構成される。
【0017】
本実施の形態では、出力端子8が設けられる側を電池4の上面、反対側を電池4の底面とする。また、電池4は、上面及び底面をつなぐ2つの主表面を有する。この主表面は、電池4が有する6つの面のうち面積の最も大きい面である。上面、底面および2つの主表面を除いた残り2つの面は、電池4の側面とする。また、電池4の上面側を電池積層体1の上面とし、電池4の底面側を電池積層体1の底面とし、電池4の側面側を電池積層体1の側面とする。また便宜上、電池積層体1の上面側を鉛直方向上方とし、電池積層体1の底面側を鉛直方向下方とする。
【0018】
複数の電池4は、隣り合う電池4の主表面同士が対向するにして所定の間隔で積層される。なお、「積層」は、任意の1方向に複数の部材を並べることを意味する。したがって、電池4の積層には、複数の電池4を水平に並べることも含まれる。また、各電池4は、出力端子8が同じ方向を向くように配置される。ここでは便宜上、出力端子8は鉛直方向上方を向く。隣接する2つの電池4は、一方の正極端子8aと他方の負極端子8bとが隣り合うように積層される。正極端子8aと負極端子8bとは、バスバー2を介して電気的に接続される。なお、隣接する2つの電池4の同極性の出力端子同士をバスバーで接続する場合もあり得る。
【0019】
バスバー2は、おおよそ帯状の金属部材である。バスバー2は、各電池4の出力端子8に例えば溶接によって電気的に接続される。バスバー2の構造は、後に詳細に説明する。
【0020】
電池積層体1は、複数のセパレータ(図示せず)を有する。セパレータは、絶縁スペーサとも呼ばれ、例えば絶縁性を有する樹脂からなる。セパレータは、各電池4の間、および電池4と後述するエンドプレート10との間に配置される。これにより、隣り合う電池4の外装缶同士が絶縁される。また、電池4の外装缶とエンドプレート10とが絶縁される。
【0021】
また、電池積層体1は、一対のエンドプレート10を有する。エンドプレート10は、例えば金属板からなる。積層された複数の電池4および複数のセパレータは、一対のエンドプレート10で挟まれる。一対のエンドプレート10は、電池4の積層方向(以下では電池積層方向Xという)に配列され、最外側の電池4とセパレータを挟んで隣り合う。なお、電池積層方向Xで最も外側のバスバー2は、外部接続端子としても機能する。
【0022】
また、電池積層体1は、一対の拘束部材12を有する。積層された電池4、セパレータおよびエンドプレート10は、一対の拘束部材12によって拘束される。一対の拘束部材12は、バインドバーとも呼ばれる。一対の拘束部材12は、電池積層方向Xに対して直交する水平方向Y(図1において矢印Yで示す方向)に配列される。水平方向Yは、各電池4において出力端子8が並ぶ方向である。各拘束部材12は、電池4の側面に平行な矩形状の平面部12aと、平面部12aの各辺の端部から電池4側に突出する庇部12bとを有する。拘束部材12は、例えば矩形状の金属板の各辺に折り曲げ加工を施すことで形成することができる。
【0023】
電池積層方向Xにおいて対向する2つの庇部12bと一対のエンドプレート10とが、ねじ止め等により固定される。これにより、複数の電池4と複数のセパレータとが一対のエンドプレート10および一対の拘束部材12によって締結される。複数の電池4は、拘束部材12によって電池積層方向Xに締め付けられて、電池積層方向Xの位置決めがなされる。また、複数の電池4は、底面が絶縁体を介して拘束部材12の下側の庇部12bに当接し、上面が絶縁体を介して拘束部材12の上側の庇部12bに当接することで、上下方向の位置決めがなされる。なお、セパレータの一部を、底面および/または上面と庇部12bとの間に介在する絶縁体として用いることができる。この状態で、各電池4の出力端子8にバスバー2が電気的に接続されて、電池積層体1が得られる。
【0024】
続いて、本実施の形態に係るバスバー2について詳細に説明する。図2は、バスバーの概略構造を示す斜視図である。図3は、バスバーの概略構造を示す平面図である。バスバー2は、複数のプレート14が積層された構造を有する。各プレート14は、帯状であり、電池積層方向Xに延在する。各プレート14は、銅やアルミニウム等の金属からなり、厚さは例えば0.1~0.5mmである。
【0025】
バスバー2は、第1接合部16と、第2接合部18と、突出部20とを備える。各プレート14は、第1接合部16、第2接合部18および突出部20の一部を構成する領域を有し、複数のプレート14が積層されることで第1接合部16、第2接合部18および突出部20が構成される。したがって、第1接合部16、第2接合部18および突出部20は、おおよそ同一の厚さを有する。
【0026】
第1接合部16は、第1電池4aの出力端子8に接合される(図1参照)。第2接合部18は、第2電池4bの出力端子8に接合される(図1参照)。これにより、第1電池4aおよび第2電池4bが電気的に接続される。第1接合部16はバスバー2の一方の端部に位置し、第2接合部18はバスバー2の他方の端部に位置する。第1接合部16および第2接合部18は、平板状である。
【0027】
突出部20は、第1接合部16および第2接合部18の間に配置されて、電池4とバスバー2との積層方向(以下ではバスバー積層方向Zという)に突出する。本実施の形態では、便宜的にバスバー積層方向Zを鉛直方向とする。言い換えれば、突出部20は、プレート14の積層方向に突出する。
【0028】
突出部20は、第1傾斜部22と、第2傾斜部24とを有する。第1傾斜部22は、第1接合部16から電池4に接近または離間する方向に延在する。つまり、第1傾斜部22は、第1接合部16に平行な面方向(XY平面方向)と交わる方向に延在する。第1傾斜部22は、第1接合部16に対して所定の角度で傾斜する面である。第2傾斜部24は、第2接合部18から電池4に接近または離間する方向に延在する。つまり、第2傾斜部24は、第2接合部18に平行な面方向(XY平面方向)と交わる方向に延在する。第2傾斜部24は、第2接合部18に対して所定の角度で傾斜する面である。
【0029】
第1傾斜部22および第2傾斜部24は、一方が電池4に接近するように延在する場合には他方も電池4に接近するように延在し、一方が電池4から離間するように延在する場合には他方も電池4から離間するように延在する。本実施の形態では、第1傾斜部22および第2傾斜部24は、電池4から離間するように延在している。したがって、突出部20は、電池積層方向Xとバスバー積層方向Zとを含む平面方向(XZ平面方向)の断面形状が略U字状である。
【0030】
また、第1傾斜部22および第2傾斜部24は、第1接合部16および第2接合部18が並ぶ第1方向に所定の間隔Wをあけて並ぶ。また、第1傾斜部22および第2傾斜部24は、バスバー積層方向Zから見て、間隔Wが第1方向と交わる第2方向の一端側から他端側に向かって徐々に広がるように並ぶ。本実施の形態では、第1方向は電池積層方向Xであり、第2方向は水平方向Yである。つまり、第1傾斜部22は、水平方向Yにおける一端22aが他端22bよりも第2接合部18側に位置し、他端22bが一端22aよりも第1接合部16側に位置する。同様に、第2傾斜部24は、水平方向Yにおける一端24aが他端24bよりも第1接合部16側に位置し、他端24bが一端24aよりも第2接合部18側に位置する。
【0031】
第1傾斜部22と第1接合部16との接続角度θ1は、一端22a側から他端22b側にかけて同一である。同様に、第2傾斜部24と第2接合部18との接続角度θ2は、一端24a側から他端24b側にかけて同一である。つまり、第1接合部16および第1傾斜部22の接続部と、第2接合部18および第2傾斜部24の接続部とは、第1接合部16側から第2接合部18側に向かう際の角度変化が、全ての第2方向位置で同一である。
【0032】
また、突出部20は、第1傾斜部22と第2傾斜部24との間に平坦部26を有する。平坦部26は、第1接合部16および第2接合部18と平行に延在する。平坦部26と第1接合部16は第1傾斜部22で接続され、平坦部26と第2接合部18とは第2傾斜部24で接続される。したがって、平坦部26は、第1傾斜部22および第2傾斜部24の高さ(バスバー積層方向Zの長さ)分だけ、第1接合部16および第2接合部18とバスバー積層方向Zにずれている。また、平坦部26は台形状である。より具体的には、平坦部26は、第1傾斜部22と接する辺を一方の脚とし、第2傾斜部24と接する辺を他方の脚とする等脚台形状である。
【0033】
バスバー2は、例えば以下のようにして製造される。図4(A)は、バスバーの製造過程で形成されるプレート積層体の概略構造を示す斜視図である。図4(B)は、プレート積層体の概略構造を示す側面図である。
【0034】
まず、第1接合部16、第2接合部18および突出部20を有するプレート14を複数枚作製する。例えば、プレス加工等によって帯状の平板を折り曲げて、長手方向に間隔Wをあけて2つの段差を形成することで、プレート14を得ることができる。一方の段差は第1傾斜部22を構成し、他方の段差は第2傾斜部24を構成する。また、2つ段差で挟まれた部分が平坦部26を構成する。そして、残りの部分が第1接合部16および第2接合部18を構成する。各プレート14は、同じ金型で成形され、したがって同一形状である。
【0035】
続いて、得られたプレート14を積層して、プレート積層体28を形成する。図4(A)および図4(B)に示すように、プレート積層体28において、各プレート14は水平方向Yにずれて重ね合わせられる。これにより、隣接する2つのプレート14は、第1傾斜部22と第2傾斜部24との間隔Wが狭い部分と広い部分とが重なり合う。具体的には、突出部20の突出方向において先端側に位置する外側プレートと、根元側に位置する内側プレートとは、外側プレートにおける間隔Wの広い部分と、内側プレートにおける間隔Wの狭い部分とが重なり合う。
【0036】
第1傾斜部22と第2傾斜部24との間隔Wには、外面同士の間隔(以下では適宜、外面間隔WOという)と内面同士の間隔(以下では適宜、内面間隔WIという)とが含まれる。第1傾斜部22において、外面は第1接合部16側を向く表面であり、内面は第2傾斜部24側を向く表面である。第2傾斜部24において、外面は第2接合部18側を向く表面であり、内面は第1傾斜部22側を向く面である。各プレート14において、外面間隔WOと内面間隔WIとには、プレート14の厚みに応じた差がある。
【0037】
これに対し、隣接する外側プレートと内側プレートとは、外面間隔WOと内面間隔WIとの間隔差に応じて、水平方向Yにずれて積層される。これにより、外側プレートの突出部20と内側プレートの突出部20とは、外側プレートにおける内面間隔WIと内側プレートにおける外面間隔WOとがほぼ一致する部分同士が重ね合わされる。外面間隔WO同士あるいは内面間隔WI同士を比べると、外側プレートにおける間隔Wの広い部分と、内側プレートにおける間隔Wの狭い部分とが重なり合うことになる。
【0038】
この結果、少なくとも、第1接合部16、第1傾斜部22、平坦部26、第2接合部18および第2傾斜部24の各平面領域において、内側プレートの外面と外側プレートの内面とを隙間なく当接させることができる。平面領域とは、第1接合部16と第1傾斜部22、第1傾斜部22と平坦部26、第2接合部18と第2傾斜部24、および第2傾斜部24と平坦部26がそれぞれ接続される屈曲形状の領域を除く領域である。
【0039】
続いて、溶接などによって複数のプレート14を接合する。複数のプレート14の接合は、第1接合部16および第2接合部18の各平面領域のみで行われることが好ましい。すなわち、バスバー2の突出部20に複数のプレート14の接合部を設けないことが好ましい。これにより、突出部20のフレキシブル性をより確実に確保することができる。その後、プレート積層体28のうち、全てのプレート14が重なった領域のみを残すように、水平方向Yの両端部を切断する。これにより、図1~3に示すバスバー2が得られる。なお、プレート積層体28の水平方向Yの両端部を切断する場合、プレート14の幅方向(水平方向Y)の中央部において、複数のプレート14が接合される。この場合、複数のプレート14の接合には、例えば貫通溶接が用いられる。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態に係るバスバー2は、複数のプレート14が積層された構造を有し、第1電池4aおよび第2電池4bを電気的に接続するバスバーである。バスバー2は、第1電池4aの出力端子8に接合される第1接合部16と、第2電池4bの出力端子8に接合される第2接合部18と、第1接合部16および第2接合部18の間に配置される突出部20とを有する。突出部20は、バスバー積層方向Zに突出する。
【0041】
突出部20は、第1接合部16から電池4に接近または離間する方向に延在する第1傾斜部22と、第2接合部18から電池4に接近または離間する方向に延在する第2傾斜部24とを有する。第1傾斜部22および第2傾斜部24は、第1接合部16および第2接合部18が並ぶ第1方向に所定の間隔Wをあけて配列される。また、第1傾斜部22および第2傾斜部24は、バスバー積層方向Zから見て、第1方向と交わる第2方向の一端側から他端側に向かって間隔Wが徐々に広がるように、互いの姿勢が定められる。言い換えれば、間隔Wは、バスバー2の幅方向における一端側から他端側に向かって徐々に変化する。
【0042】
これにより、積層される上下のプレート14を第2方向にずらして、一方のプレート14の突出部20における間隔Wが狭い部分と、他方のプレート14の突出部20における間隔Wが広い部分とを重ね合わせることができる。この結果、各プレート14が同一形状の突出部20を有する場合であっても、プレート14間に隙間が生じることを回避することができる。このため、同じ金型で複数のプレート14を作製することができる。
【0043】
よって、本実施の形態によれば、プレート14間の隙間の発生とバスバー2の製造コストの増加とを抑制しながら、プレート積層タイプのバスバー2に突出部20を設けることができる。そして、突出部20を設けることで、電池積層方向Xにおけるバスバー2の柔軟性を高めることができる。そして、突出部20の変形により電池4の変位を吸収することができるため、バスバー2と出力端子8との接続部にかかる負荷をより確実に軽減することができる。したがって、バスバー2を介した電池4間の安定的な電気的接続を実現することができる。また、本実施の形態のバスバー2を電池積層体1に設けることで、電池積層体1の性能を向上させることができる。
【0044】
また、第1傾斜部22と第1接合部16との接続角度θ1および第2傾斜部24と第2接合部18との接続角度θ2は、第2方向の一端側から他端側にかけて同一である。言い換えれば、接続角度θ1,θ2は、バスバー2の幅方向における一端側から他端側にかけて同一である。これにより、積層されるプレート14同士が電池積層方向Xにずれることを抑制することができる。この電池積層方向Xのずれを許容できる場合は、接続角度θ1,θ2は、バスバー2の幅方向における一端側から他端側にかけて同一でなくてもよい。
【0045】
また、突出部20は、第1傾斜部22と第2傾斜部24との間に平坦部26を有する。これにより、突出部20の突出高さを小さくすることができる。したがって、突出部20を設けることによるバスバー2の寸法増大を抑制することができる。また、第1接合部16側から第2接合部18側にかけて全体が湾曲する形状の突出部20を設ける場合に比べて、バスバー2の寸法管理を容易にすることができる。さらに、平坦部26を電圧検出線の接続部として利用することもできる。
【0046】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることが可能であり、変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態への変形の追加によって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0047】
上述した実施の形態では、電池4は角形電池であるが、電池4の形状は特に限定されず、円筒状等であってもよい。また、電池積層体1が備える電池4の総数も特に限定されない。また、電池4の外装缶は、シュリンクチューブ等の絶縁シートで被覆されてもよい。また、バスバー2を構成するプレート14の枚数も特に限定されない。プレート14の枚数は、バスバー2に必要な厚さ等に応じて、適宜設定することができる。
【0048】
実施の形態では、第1傾斜部22および第2傾斜部24の間隔Wが水平方向Yの一端側から他端側に向かって連続的に広がっているが、段階的に広がってもよい。また、突出部20は、電池4から離間する方向に突出しているが、電池4に接近する方向に突出してもよい。また、突出部20は、平坦部26を有しなくてもよく、例えば、第1接合部16側から第2接合部18側にかけて全体が湾曲する形状であってもよい。
【0049】
実施の形態では、プレート積層体28のうち、全てのプレート14が重なった領域のみを残すように、水平方向Yの両端部を切断する構成を示したが、特にこの構成に限定されない。例えば、水平方向Yにおける片側の端部のみを切断してもよいし、両端部を切断しなくてもよい。また、プレート積層体28の端部の一部のみを切断してもよい。
【0050】
プレート14の段差部をバスバー2に残存させる場合、この段差部にろう付けやめっき処理等を施すことにより、各プレート14同士を接合させることができる。これにより、各プレート14間を確実に接合することができる。また、第1接合部16および第2接合部18に対応する領域に段差部を残存させる場合、段差部を利用して第1接合部16および第2接合部18と出力端子8とを接合することができる。例えば、段差部と出力端子8とをろう付け等で接合する。これにより、バスバー2と出力端子8とをより確実に接合することができる。
【0051】
なお、参考として以下のような状況がある。すなわち、バスバーと電池との接続部にかかる負荷が増大する傾向に対し、電池に対し接近または離間する方向に湾曲する突出部をバスバーに設け、これにより引っ張り方向におけるバスバーの柔軟性を高めることで、接続部にかかる負荷の増大に対処することが考えられる。プレート積層タイプのバスバーに突出部を設ける場合において、同一形状の突出部を有するプレートを積層すると、プレート間に隙間が生じてしまうおそれがあった。プレート間の隙間はプレートの溶接プロセスの障害となり得る。障害により溶接が不安定になると、バスバーの電気抵抗が増大して電池積層体の出力特性低下につながり得る。また、プレートの隙間によって、プレート積層方向におけるバスバーの寸法が増大し得る。各プレートを隙間なく積層するためには、突出部における湾曲の外側を構成するプレートと、湾曲の内側を構成するプレートとで、異なる大きさの突出部を設ける必要がある。しかしながら、この場合には、各形状のプレートに対応する複数の金型を用意する必要があり、バスバーの製造コストの増加につながり得る。
【0052】
以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【符号の説明】
【0053】
1 電池積層体
2 バスバー
4 電池
4a 第1電池
4b 第2電池
8 出力端子
14 プレート
16 第1接合部
18 第2接合部
20 突出部
22 第1傾斜部
24 第2傾斜部
26 平坦部
図1
図2
図3
図4