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特許7570069滞在場所提案システム、滞在場所提案方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】滞在場所提案システム、滞在場所提案方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241011BHJP
【FI】
G06Q50/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023502120
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2021048620
(87)【国際公開番号】W WO2022181043
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2021030826
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 貴丈
(72)【発明者】
【氏名】村上 昌史
【審査官】塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-022716(JP,A)
【文献】特開2011-197904(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0161646(US,A1)
【文献】特開2011-187030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が滞在可能な複数の滞在場所にそれぞれ設置されている1つ以上のセンサ装置のそれぞれが計測する複数種類の環境要因の計測値を含む環境情報を取得する第1取得部と、
前記利用者の位置情報を取得する第2取得部と、
前記複数種類の環境要因に対する前記利用者の嗜好情報を記憶する記憶部と、
前記環境情報と前記嗜好情報の類似度を求め、前記類似度に基づいて前記複数の滞在場所の中から1つ以上の滞在場所を選択する選択部と、
前記選択部が選択した前記1つ以上の滞在場所を前記利用者に提案する提案部と、
1日の時間帯ごと及び前記滞在場所ごとの前記計測値を蓄積する環境情報データベースと、
を備え
前記選択部は、前記環境情報データベースに蓄積された前記環境情報を用いて、直近数日間における前記時間帯ごとの前記環境要因の計測値の平均値から当日の環境要因の計測値の時間変化を予測し、前記時間帯ごとの前記嗜好情報と予測した前記計測値を含む前記環境情報との類似度を算出する、
滞在場所提案システム。
【請求項2】
前記選択部は、前記環境情報に含まれる前記複数種類の環境要因の計測値と、前記嗜好情報に含まれる前記複数種類の環境要因の好適値との、ユークリッド距離によって前記類似度を求める、
請求項1記載の滞在場所提案システム。
【請求項3】
前記複数種類の環境要因の好適値は、前記利用者が滞在した前記滞在場所における、前記利用者の滞在中の前記環境情報に含まれる前記複数種類の環境要因のそれぞれの測定値を平均することによって求められる、
請求項2記載の滞在場所提案システム。
【請求項4】
前記提案部は、前記選択部が選択した前記1つ以上の滞在場所における前記環境情報を前記利用者に提示する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の滞在場所提案システム。
【請求項5】
前記複数種類の環境要因は、前記滞在場所の温度と、前記滞在場所の湿度、照度、騒音レベル及び二酸化炭素濃度のうちの少なくとも1つと、を含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の滞在場所提案システム。
【請求項6】
利用者が滞在可能な複数の滞在場所にそれぞれ設置されている1つ以上のセンサ装置のそれぞれが計測する複数種類の環境要因の計測値を含む環境情報を取得する第1取得部と、
前記利用者の位置情報を取得する第2取得部と、
前記複数種類の環境要因に対する前記利用者の嗜好情報を記憶する記憶部と、
前記環境情報と前記嗜好情報の類似度を求め、前記類似度に基づいて前記複数の滞在場所の中から1つ以上の滞在場所を選択する選択部と、
前記選択部が選択した前記1つ以上の滞在場所を前記利用者に提案する提案部と、
1日の時間帯ごと及び前記滞在場所ごとの前記計測値を蓄積する環境情報データベースと、を備える滞在場所提案システムにおける滞在場所提案方法であって、
前記センサ装置が計測する前記複数種類の環境要因の計測値を含む前記環境情報を前記第1取得部が取得するステップと、
前記位置情報を前記第2取得部が取得するステップと、
前記嗜好情報を前記記憶部が記憶するステップと、
1日の前記時間帯ごと及び前記滞在場所ごとの前記計測値を前記環境情報データベースが蓄積するステップと、
前記環境情報データベースに蓄積された前記環境情報を用いて、直近数日間における前記時間帯ごとの前記環境要因の計測値の平均値から当日の環境要因の計測値の時間変化を前記選択部が予測し、前記時間帯ごとの前記嗜好情報と予測した前記計測値を含む前記環境情報との類似度を前記選択部が算出するステップと、
前記類似度に基づいて前記複数の滞在場所の中から1つ以上の前記滞在場所を前記選択部が選択するステップと、
選択した前記1つ以上の滞在場所を前記提案部が前記利用者に提案するステップと、
を含む、
滞在場所提案方法
【請求項7】
1以上のプロセッサに、
請求項6記載の滞在場所提案方法を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、滞在場所提案システム、滞在場所提案方法、及びプログラムに関し、より詳細には、利用者に対して利用者の滞在場所を提案する滞在場所提案システム、滞在場所提案方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として特許文献1記載の座席提案システムを例示する。特許文献1記載の座席提案システム(以下、従来例という。)は、フリーアドレスオフィス環境において、各ユーザの温度感度に適した座席位置を提案する。
【0003】
従来例は、席ごと又は席エリアごとの室温を計測する温度センサ、演算処理手段、席別の空席情報を記憶する席情報DB、計測された室温データを記憶する室温DB、及び、ユーザ別の快適温度帯データを記憶するユーザDBを備える。演算処理手段は、座席位置提案の要求を受け付け、当該要求時の入力データをユーザDBのユーザ情報と照合して当該ユーザの特定を行う。また、演算処理手段は、快適温度帯DBから当該ユーザの快適温度帯データを取得する。演算処理手段は、席情報DBから空席を抽出し、室温DBから空席ごとの室温データを取得する。演算処理手段は、当該ユーザの快適温度帯データと空席ごとの室温データに基づいて、抽出した空席の中から当該ユーザが快適と感じる温度範囲内又は近傍の候補席を1以上選択し、当該候補席の中から当該ユーザの選択した席を空席から除外して空席情報を更新する。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の従来例のように、席(滞在場所)ごとの室温のみで各ユーザ(利用者)に適した座席位置を提案しても、室温(温度)以外の環境要因によってユーザが快適と感じられない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-185798号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示の目的は、より利用者の嗜好に適した滞在場所を提案することができる滞在場所提案システム、滞在場所提案方法、及びプログラムを提供することである。
本開示の一態様に係る滞在場所提案システムは、第1取得部と、第2取得部と、記憶部と、選択部と、提案部と、環境情報データベースと、を備える。前記第1取得部は、利用者が滞在可能な複数の滞在場所にそれぞれ設置されている1つ以上のセンサ装置のそれぞれが計測する複数種類の環境要因の計測値を含む環境情報を取得する。前記第2取得部は、前記利用者の位置情報を取得する。前記記憶部は、前記複数種類の環境要因に対する前記利用者の嗜好情報を記憶する。前記選択部は、前記環境情報と前記嗜好情報の類似度を求め、前記類似度に基づいて前記複数の滞在場所の中から1つ以上の滞在場所を選択する。前記提案部は、前記選択部が選択した前記1つ以上の滞在場所を前記利用者に提案する。前記環境情報データベースは、1日の時間帯ごと及び前記滞在場所ごとの前記計測値を蓄積する。前記選択部は、前記環境情報データベースに蓄積された前記環境情報を用いて、直近数日間における前記時間帯ごとの前記環境要因の計測値の平均値から当日の環境要因の計測値の時間変化を予測し、前記時間帯ごとの前記嗜好情報と予測した前記計測値を含む前記環境情報との類似度を算出する。
【0007】
本開示の一態様に係る滞在場所提案方法は、利用者が滞在可能な複数の滞在場所にそれぞれ設置されている1つ以上のセンサ装置のそれぞれが計測する複数種類の環境要因の計測値を含む環境情報を取得する第1取得部と、前記利用者の位置情報を取得する第2取得部と、前記複数種類の環境要因に対する前記利用者の嗜好情報を記憶する記憶部と、前記環境情報と前記嗜好情報の類似度を求め、前記類似度に基づいて前記複数の滞在場所の中から1つ以上の滞在場所を選択する選択部と、前記選択部が選択した前記1つ以上の滞在場所を前記利用者に提案する提案部と、1日の時間帯ごと及び前記滞在場所ごとの前記計測値を蓄積する環境情報データベースと、を備える滞在場所提案システムにおける滞在場所提案方法である。前記センサ装置が計測する前記複数種類の環境要因の計測値を含む前記環境情報を前記第1取得部が取得するステップを含む。前記滞在場所提案方法は、前記位置情報を前記第2取得部が取得するステップと、前記嗜好情報を前記記憶部が記憶するステップと、1日の時間帯ごと及び前記滞在場所ごとの前記計測値を蓄積する環境情報データベースと、を備える滞在場所提案システムにおける滞在場所提案方法であって、前記センサ装置が計測する前記複数種類の環境要因の計測値を含む前記環境情報を前記第1取得部が取得するステップと、前記位置情報を前記第2取得部が取得するステップと、1日の前記時間帯ごと及び前記滞在場所ごとの前記計測値を前記環境情報データベースが蓄積するステップと、前記環境情報データベースに蓄積された前記環境情報を用いて、直近数日間における前記時間帯ごとの前記環境要因の計測値の平均値から当日の環境要因の計測値の時間変化を前記選択部が予測し、前記時間帯ごとの前記嗜好情報と予測した前記計測値を含む前記環境情報との類似度を前記選択部が算出するステップと、前記類似度に基づいて前記複数の滞在場所の中から1つ以上の前記滞在場所を前記選択部が選択するステップと、を含む。前記滞在場所提案方法は、選択した前記1つ以上の滞在場所を前記提案部が前記利用者に提案するステップを含む。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、前記滞在場所提案方法を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施形態に係る滞在場所提案システムのシステム構成図である。
図2図2は、同上の滞在場所提案システムで使用されるセンサ装置のブロック図である。
図3図3は、同上の滞在場所提案システムの処理ユニットのブロック図である。
図4図4は、同上の滞在場所提案システムが運用されるフリーアドレスオフィスの見取図である。
図5図5は、同上の滞在場所提案システムによって利用者の提案される画面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態に係る滞在場所提案システム、滞在場所提案方法及びプログラムについて、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する構成は本開示の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0011】
(1)実施形態に係る滞在場所提案システムの概略
実施形態に係る滞在場所提案システム1(以下、滞在場所提案システム1と略す。)は、利用者に対して、利用者の嗜好情報に適した1つ以上の滞在場所を提案する。
【0012】
実施形態における「滞在場所」は、利用者が勤務するフリーアドレスのオフィスにおいて、業務及び休息などを目的として利用者が滞在可能な場所、例えば、利用者(従業員)が自由に使用できる座席及び作業スペースなどを含む。
【0013】
実施形態における「環境要因」は、滞在場所の温度(室温)と、滞在場所の湿度、照度、騒音レベル及び二酸化炭素濃度のうちの少なくとも1つと、を含む。ゆえに、実施形態における「滞在場所の環境情報」とは、滞在場所の温度の測定値と、湿度の測定値、照度の測定値、騒音レベルの測定値、及び二酸化炭素濃度の測定値のうちの少なくとも1つと、を含む。
【0014】
実施形態における「嗜好情報」は、利用者の環境要因に対する嗜好、例えば、暑がり、寒がり、にぎやかな場所を好む、静かな場所を好む、明るめの場所を好む、暗めの場所を好む、というような嗜好を表す情報を含む。具体的には、利用者が快適と感じていると推測される環境要因の測定値(以下、環境要因の好適値と呼ぶ。)が「嗜好情報」に含まれる。
【0015】
(2)実施形態に係る滞在場所提案システムの構成
滞在場所提案システム1は、図1に示すように、処理ユニット10と、記憶部13と、を備える。また、滞在場所提案システム1は、複数のセンサ装置2、複数のスキャナ3、及び複数の発信器4を備えてもよい。さらに、滞在場所提案システム1は、情報収集サーバ5、環境情報データベース6、及び位置情報データベース7を備えてもよい。
【0016】
(2-1)センサ装置
センサ装置2は、複数の滞在場所のそれぞれに少なくとも1つずつ設置される。センサ装置2は、滞在場所の環境要因、具体的には、滞在場所の温度と、湿度、照度、騒音レベル及び二酸化炭素濃度のうちの少なくとも1つと、を測定する。センサ装置2は、測定した値(測定値)を無線信号によって送信する。ただし、以下に説明する実施形態において、複数のセンサ装置2はそれぞれ、温度、湿度、照度、騒音レベル及び二酸化炭素濃度のすべてを測定する。また、センサ装置2は、湿度、照度、騒音レベル及び二酸化炭素濃度以外の環境要因を測定するように構成されても構わない。
【0017】
センサ装置2は、図2に示すように、複数種類のセンシングデバイス20と、処理回路21と、通信回路22と、を有する。ただし、センサ装置2は、電池を含む電源回路(不図示)を有し、電源回路から各センシングデバイス20、処理回路21及び通信回路22に動作電源を供給するように構成される。
【0018】
複数種類(実施形態では5種類)のセンシングデバイス20は、温度(室温)を測定する温度センサ、相対湿度を測定する湿度センサ、照度を測定する照度センサ、騒音レベルを測定する騒音計、二酸化炭素濃度を測定するガスセンサである。
【0019】
ガスセンサは、例えば、NDIR(Non-dispersive Infrared:非分散型赤外線)方式のガスセンサである。ただし、ガスセンサは、NDIR方式以外のガスセンサであっても構わない。しかして、滞在場所の二酸化炭素濃度は、滞在場所に滞在する人数が増えるにつれて高くなると考えられる。また、滞在場所の二酸化炭素濃度は、滞在場所の換気の頻度が低いほど高くなると考えられる。つまり、二酸化炭素濃度は、滞在場所における感染症の感染リスクを推測するための指標となり得る。
【0020】
処理回路21は、各センシングデバイス20で測定された測定値(温度、湿度、照度、騒音レベル、二酸化炭素濃度の各測定値)をアナログ・ディジタル(A/D)変換する。処理回路21は、A/D変換後の各測定値のデータ(測定値データ)を通信回路22に出力する。
【0021】
通信回路22は、例えば、Bluetooth(登録商標)Low Energyの通信方式で無線通信を行う。ただし、通信回路22の通信方式は、Bluetooth(登録商標)Low Energyに限らず、例えば、Wi-Fi(登録商標)でもよい。
【0022】
通信回路22は、各センシングデバイス20から出力される測定値データを含む送信フレームを作成し、作成した送信フレームを無線信号によって送信する。送信フレームの送信元アドレスにはセンサ装置2に割り当てられた固有の識別符号(Bluetooth(登録商標)Address)が設定され、送信先アドレスにはブロードキャストアドレスが設定されている。なお、通信回路22は、アドバタイズメントパケットと呼ばれる無線信号(ビーコン信号)を所定の時間間隔及び所定の送信電力で送信する。通信回路22は、ビーコン信号によって複数の測定値を送信することもでき、ビーコン信号と異なる無線信号によって複数の測定値を送信することもできる。
【0023】
(2-2)発信器
複数の発信器4はそれぞれ、複数の利用者に1つずつ携帯される。各発信器4は、Bluetooth(登録商標)Low Energyの通信方式によってビーコン信号(アドバタイズメントパケット)を定期的に送信する。このビーコン信号の送信元アドレスには、各発信器4に割り当てられた固有の識別符号(Bluetooth(登録商標)Address)が設定される。ただし、各発信器4は、Bluetooth(登録商標)Low Energyの通信方式による無線通信の機能を搭載したモバイル通信端末(例えば、スマートフォン)であっても構わない。
【0024】
(2-3)スキャナ
複数のスキャナ3はそれぞれ、複数の滞在場所に少なくとも1つずつ設置される。各スキャナ3は、複数のセンサ装置2及び複数の発信器4のそれぞれから送信される無線信号を受信する。各スキャナ3は、受信した無線信号から送信フレームを復調し、復調した送信フレームと、受信した無線信号の信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)と、各スキャナ3に割り当てられた識別符号と、を情報収集サーバ5に送信する。なお、各スキャナ3と情報収集サーバ5の間の通信は、有線LANによって行われる。ただし、各スキャナ3と情報収集サーバ5の間の通信は、無線LANによって行われても構わない。
【0025】
(2-4)情報収集サーバ
情報収集サーバ5は、例えば、コンピュータシステムと、コンピュータシステムによって実行されるプログラムと、によって実現される。
【0026】
情報収集サーバ5は、各スキャナ3と通信し、発信器4の送信フレームと、センサ装置2の送信フレームと、無線信号の信号強度と、各スキャナ3の識別符号と、を各スキャナ3から受信してメモリに格納する。
【0027】
情報収集サーバ5は、発信器4の送信フレームにおける送信元アドレス、スキャナ3の識別符号、及び無線信号の信号強度に基づいて、各発信器4の位置(発信器4を携帯する利用者の位置)を推定する。そして、情報収集サーバ5は、推定した各発信器4の位置を、各発信器4の識別符号及び無線信号を受信した時刻と対応付けて、位置情報データベース7に登録する。
【0028】
また、各センサ装置2が机などの什器の上に移動可能に設置されている場合、情報収集サーバ5は、センサ装置2の送信フレームにおける送信元アドレス、スキャナ3の識別符号、及び無線信号の信号強度に基づいて、各センサ装置2の位置を推定する。そして、情報収集サーバ5は、推定した各センサ装置2の位置を、各センサ装置2の識別符号及び無線信号を受信した時刻と対応付けて、位置情報データベース7に登録する。ただし、各センサ装置2が天井及び壁などに移動不可能に設置されている場合、事前に位置情報データベース7に各センサ装置2の位置が登録される。
【0029】
さらに、情報収集サーバ5は、各センサ装置2の送信フレームから複数種類の環境要因の測定値を取り出し、それらの環境要因の測定値を、各センサ装置2の識別符号及び無線信号を受信した時刻と対応付けて、環境情報データベース6に登録する。
【0030】
(2-5)環境情報データベース
環境情報データベース6は、1台以上の補助記憶装置(ハードディスク装置、SSD装置など)と、補助記憶装置に対するデータの書き込み及び補助記憶装置からのデータの読み出し、などの処理を行う制御装置と、を有する。
【0031】
制御装置は、情報収集サーバ5の指令に基づき、各センサ装置2から送られてくる複数種類の環境要因の測定値を、複数種類ごとに、測定された時刻(実際は無線信号の受信時刻)と対応付けて補助記憶装置に書き込む。
【0032】
(2-6)位置情報データベース
位置情報データベース7は、1台以上の補助記憶装置(ハードディスク装置、SSD装置など)と、補助記憶装置に対するデータの書き込み及び補助記憶装置からのデータの読み出し、などの処理を行う制御装置と、を有する。
【0033】
制御装置は、情報収集サーバ5の指令に基づき、各発信器4又は各発信器4と各センサ装置2から送られてくる位置情報を、それぞれの位置情報が推定された時刻(実際は無線信号の受信時刻)と対応付けて補助記憶装置に書き込む。
【0034】
(2-7)記憶部
記憶部13は、1台以上の補助記憶装置(ハードディスク装置、SSD装置など)と、補助記憶装置に対するデータの書き込み及び補助記憶装置からのデータの読み出し、などの処理を行う制御装置と、を有する。
【0035】
記憶部13は、複数種類の環境要因に対する利用者の嗜好情報を記憶する。記憶部13の制御装置は、後述するように処理ユニット10の指令に基づき、複数の利用者に割り当てられた固有の利用者IDに対応付けて、各利用者の嗜好情報を補助記憶装置に記憶し、かつ、補助記憶装置から読み出す。ただし、各利用者の利用者IDは、各利用者が携帯する発信器4に割り当てられた固有の識別符号(Bluetooth(登録商標)Address)で代用される。
【0036】
(2-8)処理ユニット
処理ユニット10は、図3に示すように、第1取得部11、第2取得部12、選択部14及び提案部15を有する。処理ユニット10は、例えば、1つ以上のプロセッサを有するコンピュータシステムと、コンピュータシステムによって実行されるプログラムと、によって実現される。ただし、処理ユニット10は、第1取得部11、第2取得部12、選択部14及び提案部15のそれぞれの機能だけでなく、それらの機能とは別の機能(後述するように嗜好情報を作成する機能、環境要素の測定値を予測する機能など)を有する。プログラムは、コンピュータシステムのメモリにあらかじめ記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0037】
第1取得部11は、環境情報データベース6にアクセスし、環境情報データベース6に登録されている各センサ装置2の複数種類の環境要因の測定値を取得する。具体的には、第1取得部11は、環境情報データベース6の制御装置に指令を与え、制御装置を通じて、環境情報データベース6の補助記憶装置に記憶されている複数種類の環境要因の測定値を読み出す(取得する)。
【0038】
第2取得部12は、位置情報データベース7にアクセスし、位置情報データベース7に登録されている各発信器4の位置情報を取得する。具体的には、第2取得部12は、位置情報データベース7の制御装置に指令を与え、制御装置を通じて、位置情報データベース7の補助記憶装置に記憶されている各発信器4の位置情報を読み出す(取得する)。
【0039】
選択部14は、滞在場所の提案の対象とする利用者について、当該利用者の嗜好情報と各滞在場所の環境情報の類似度を求める。なお、類似度を求める具体的な方法については、後述する。選択部14は、類似度に基づいて、複数の滞在場所の中から、利用者の嗜好に適していると推定される1つ以上の滞在場所を選択する。
【0040】
提案部15は、選択部14が選択した1つ以上の滞在場所を利用者に提案する。例えば、提案部15は、選択部14が選択した1つ以上の滞在場所を示す情報(該当する滞在場所の地図上の位置、あるいは、滞在場所ごとに付けられた固有の符号など)を、各利用者が視認可能な場所に設置された表示装置に表示させる。表示装置は、例えば、通信機能を搭載したタブレット端末などである。
【0041】
また、提案部15は、提案する滞在場所を示す情報とともに、提案する滞在場所の環境情報(例えば、各環境要因の直近の測定値)を表示装置に表示させても構わない。あるいは、提案部15は、提案する滞在場所を示す情報を、各利用者が携帯するスマートフォンの画面に表示させても構わない。しかして、提案部15は、有線LAN又は無線LANを利用して表示装置又は利用者のスマートフォンとデータ通信を行うことにより、提案する滞在場所を示す情報などを表示装置又はスマートフォンに表示させる。
【0042】
(3)実施形態に係る滞在場所提案システムの動作
次に、滞在場所提案システム1の具体的な動作を説明する。
【0043】
(3-1)滞在場所の説明
図4は、複数の滞在場所の見取図である。複数の滞在場所は、オフィスビルの1フロアを16分割して形成されている。ただし、個々の滞在場所の間に壁又は間仕切りなどが設置されていてもよいし、設置されていなくてもよい。
【0044】
ここで、それぞれの滞在場所を特定するため、図4における縦4列をA列、B列、C列、D列と表し、横4行を1行、2行、3行、4行と表す。したがって、各滞在場所は、A1~A4、B1~B4、C1~C4、D1~D4と表記することができる。
【0045】
図4に示すように、すべての滞在場所にセンサ装置2とスキャナ3が1つずつ設置されている。ただし、1以上の滞在場所に複数のセンサ装置2及びスキャナ3が設置されても構わない。
【0046】
滞在場所A1、A2、B1、B2の境界点、滞在場所A3、A4、B3、B4の境界点、滞在場所C1、C2、D1、D2の境界点、及び滞在場所C3、C4、D3、D4の境界点のそれぞれの天井に照明器具81が1台ずつ設置されている。また、滞在場所A1、A4、D1、D4には、冷暖房、除湿、換気などを行うための空調設備80が1台ずつ設置されている。さらに、滞在場所A2、B3、C2、D3には、タブレット端末からなる表示装置82が1台ずつ設置されている。なお、滞在場所A1、B1、C1、D1の外向き(図4における上向き)の壁と、滞在場所A4、B4、C4、D4の外向き(図4における下向き)の壁に、それぞれ窓が設けられている。つまり、これらの滞在場所には、時間帯によって窓を通して外光(日光)が差し込む場合がある。そのため、16の滞在場所における環境要因は一律ではなく、日時及び天候によって変化する。
【0047】
(3-2)利用者の嗜好情報を取得する動作
まず、滞在場所提案システム1において、複数の利用者のそれぞれの嗜好情報を取得して記憶部13に記憶する動作を説明する。
【0048】
複数の利用者は、図4に示すフリーアドレスのオフィスで働く従業員である。各利用者は、1日の勤務時間(例えば、9時から17時までの時間)内において、自由に滞在場所を変更することができる。
【0049】
処理ユニット10は、一定期間(数週間から数か月間)に環境情報データベース6に蓄積された各環境要因の測定値と位置情報データベース7に蓄積された各利用者の位置情報とに基づいて、利用者ごとの嗜好情報を取得する。
【0050】
例えば、処理ユニット10は、勤務時間を1時間ごとに複数の時間帯に区切り、各時間帯において利用者が滞在したすべての滞在場所の環境要因の計測値の平均値を環境要因の種類ごとに算出する。そして、処理ユニット10は、各環境要因について複数の時間帯及び複数の利用者ごとに算出した測定値の平均値を、それぞれの時間帯における各利用者の嗜好情報として記憶部13に記憶させる。つまり、記憶部13は、複数の利用者のそれぞれの利用者IDに対応付けて、温度、湿度、照度、騒音レベル及び二酸化炭素濃度のそれぞれの測定値の時間帯ごとの平均値を、各々の利用者の嗜好情報として記憶する。
【0051】
なお、処理ユニット10は、各環境要因の測定値のうちの最頻値を、それぞれの環境要因の好適値に採用してもよい。あるいは、処理ユニット10は、各環境要因の測定値の中から頻度の少ない測定値を除いた残りの測定値の相加平均を求め、その平均値をそれぞれの環境要因の好適値に採用してもよい。
【0052】
(3-3)利用者の滞在場所を提案する動作
次に、滞在場所提案システム1が利用者に対して滞在場所を提案する動作を説明する。
【0053】
滞在場所提案システム1は、表示装置82が設置されている滞在場所A2、A4、B3及びC3のいずれかにおいて、新たに利用者(発信器4)が検出されたときに当該利用者に対して滞在場所を提案するための動作を開始する。
【0054】
まず、処理ユニット10の第2取得部12が、提案対象である利用者の利用者IDを位置情報データベース7から取得し、取得した利用者IDを選択部14に渡す。選択部14は、第2取得部12から受け取った利用者IDに対応付けられた嗜好情報のうち、利用者に対する滞在場所の提案の動作を開始した時刻(以下、開始時刻と略す。)が属する時間帯の嗜好情報を記憶部13から取得する。さらに、選択部14は、第1取得部11を通じて、開始時刻が属する時間帯における各滞在場所の環境情報を環境情報データベース6から取得する。
【0055】
続いて、選択部14は、利用者の嗜好情報と各滞在場所の環境情報の類似度を求める。本実施形態において、選択部14は、嗜好情報に含まれる複数種類の環境要因のそれぞれの好適値と、環境情報に含まれる複数種類の環境要因のそれぞれの測定値とのユークリッド距離D(x,y)を算出する。ユークリッド距離D(x,y)は、下記の式によって算出される。
【0056】
【数1】
【0057】
ただし、x(i=1、2、3、4、5)は、任意の時刻における各環境要因(温度、湿度、照度、騒音レベル、二酸化炭素濃度)の好適値である。y(i=1、2、3、4、5)は、任意の時刻における各環境要因(温度、湿度、照度、騒音レベル、二酸化炭素濃度)の測定値である。w(i=1、2、3、4、5)は、任意の時刻における各環境要因(温度、湿度、照度、騒音レベル、二酸化炭素濃度)の重みであり、0から1までの値である。なお、環境要因ごとの重みwは、測定値の時間帯ごとの平均値のばらつき(標準偏差)が小さいほど大きくされる。例えば、騒音レベルは日による変化量が大きいために重みwが小さくされ、温度は日による変動が比較的に小さいために重みwが大きくされる。このように類似度(ユークリッド距離)を算出する際に、各環境要因の測定値の平均値のばらつきに応じた重み付けを行うことにより、各環境要因の変動の影響を低減することができる。
【0058】
しかして、嗜好情報に含まれる複数種類の環境要因のそれぞれの好適値と、環境情報に含まれる複数種類の環境要因のそれぞれの測定値との類似度は、前記式で算出するユークリッド距離が小さいほど、高くなる。選択部14は、16の滞在場所A1、…、D4のうち、利用者の嗜好情報と環境情報の類似度が最も高い滞在場所(例えば、滞在場所B1)を選択する。そして、選択部14は、選択した滞在場所の位置情報を提案部15に渡す。
【0059】
提案部15は、選択部14が選択した滞在場所B1の位置をピンP1で示したレイアウト図G1と、利用者の嗜好情報の概略を表した表T1とを含む提案用の画面を作成する(図5参照)。そして、提案部15は、作成した提案用の画面を表示するためのデータを、開始時刻に利用者が滞在していた滞在場所に設置されている表示装置82に送信する。
【0060】
表示装置82は、提案部15から受信するデータに基づいて、レイアウト図G1と表T1を含む提案用の画面を、液晶ディスプレイなどの表示デバイスに表示させる。利用者は、表示装置82が表示する提案用の画面を見て、滞在場所提案システム1から提案された滞在場所B1を知ることができる。なお、提案部15は、選択部14が選択した滞在場所における環境情報(温度、湿度、照度、騒音レベル、二酸化炭素濃度)を利用者に提示しても構わない。
【0061】
上述のように滞在場所提案システム1は、複数種類の環境要因に対する利用者の嗜好情報に基づいて、利用者の嗜好に適した滞在場所を提案する。そのため、滞在場所提案システム1は、1種類の環境要因(温度)のみに基づいて利用者に座席を提案する従来例に比べて、より利用者の嗜好に適した滞在場所を提案することができる。
【0062】
ここで、滞在場所提案システム1は、滞在場所を有する建物(オフィスビル)に存在してもよいし、建物から離れた場所に存在してもよい。一方、情報収集サーバ5、環境情報データベース6、及び位置情報データベース7は、建物に存在することが好ましい。滞在場所提案システム1が建物から離れた場所に存在する場合、滞在場所提案システム1は、インターネットなどの広域ネットワーク(WAN)を介して環境情報データベース6及び位置情報データベース7と通信するように構成される。なお、滞在場所提案システム1は、情報収集サーバ5、環境情報データベース6、及び位置情報データベース7を構成要素に含んでもよい。滞在場所提案システム1は、センサ装置2、スキャナ3、発信器4の少なくともいずれかを更に構成要素に含んでもよい。
【0063】
(4)滞在場所提案システムの変形例
以下、滞在場所提案システム1の幾つかの変形例を説明する。ただし、以下に説明する各変形例の滞在場所提案システム1の構成は、実施形態の滞在場所提案システム1の構成と共通である。したがって、各変形例の滞在場所提案システム1の構成の図示は省略する。
【0064】
(4-1)変形例1
変形例1の滞在場所提案システム1(以下、変形例1と略す。)は、利用者に対して滞在場所を提案する動作が実施形態と異なる。変形例1では、環境情報データベース6に蓄積された環境情報を用いて、直近数日間における時間帯ごとの環境要因の平均値から当日の環境要因の時間変化を予測し、時刻帯ごとの嗜好情報と予測した環境情報の類似度を算出する。
【0065】
変形例1における処理ユニット10は、1日の時間帯ごと及び滞在場所ごとに、それぞれの環境要因の予測値を算出し、算出した予測値を記憶部13に記憶させる。ここで、処理ユニット10は、定期的(例えば、毎日の始業前)に、直近の数日間(例えば、前日を含む過去5日間)の環境情報を環境情報データベース6から取得し、取得した過去の環境情報から各環境要因の予測値を算出することが好ましい。
【0066】
例えば、処理ユニット10は、直近の数日間における滞在場所ごとの温度、湿度、照度、騒音レベル、二酸化炭素濃度のそれぞれの測定値について、9時から17時までの1時間ごとの各時間帯における平均値(相加平均の平均値)を求める。そして、処理ユニット10は、各滞在場所及び各時間帯における、温度、湿度、照度、騒音レベル、二酸化炭素濃度のそれぞれの平均値を、各環境要素の予測値として環境情報データベース6に登録する。
【0067】
しかして、処理ユニット10の選択部14は、利用者の嗜好情報と、環境情報データベース6に登録されている各滞在場所及び各時間帯における環境要因の予測値との類似度(ユークリッド距離)を求める。選択部14は、16の滞在場所A1、…、D4のうち、利用者の嗜好情報と環境情報(予測値)の類似度が最も高い滞在場所を選択する。そして、選択部14が選択した滞在場所の位置情報が提案部15に渡され、提案部15を通じて利用者に提案される。
【0068】
上述のように変形例1の滞在場所提案システム1によれば、滞在場所の環境情報を予測しておくことにより、利用者の嗜好情報に適した滞在場所を選択するまでの時間の短縮化を図ることができる。
【0069】
(4-2)変形例2
変形例2の滞在場所提案システム1(以下、変形例2と略す。)は、時間帯ごとの各環境要素の予測値を求める方法が変形例1と異なる。変形例2における処理ユニット10は、学習済みモデルを用いて時間帯ごとの各環境要素の予測値を求める。学習済みモデルは、機械学習によって生成される。機械学習のアルゴリズムは、例えば、ニューラルネットワーク(Neural Network)である。
【0070】
変形例2における処理ユニット10は、例えば、環境情報データベース6に蓄積された数週間分の環境要因の測定値を入力とし、誤差逆伝播法(backpropagation)によって、ニューラルネットワークを構成する関数が持つパラメータについての目的関数の勾配を求める。ただし、処理ユニット10は、入力として、曜日情報及び気象情報(最高気温、最低気温、天候等)を追加しても構わない。なお、機械学習のアルゴリズムは、ニューラルネットワークに限らず、XGB(eXtreme Gradient Boosting)回帰、ランダムフォレスト(Randam Forest)、決定木(decision tree)、ロジスティック回帰(Logistic Regression)、サポートベクトルマシン(SVM:Support vector machine)、単純ベイズ(Naive Bayes)分類器、又はk近傍法(k-nearest neighbors)等であってもよい。さらに、機械学習のアルゴリズムは、混合ガウスモデル(GMM:Gaussian Mixture Model)、又はk平均法(k-means clustering)等であってもよい。また、処理ユニット10で利用する機械学習の学習方法は、教師あり学習及び教師なし学習及び強化学習のいずれであってもよい。
【0071】
変形例2における選択部14は、開始時刻における環境情報を入力とし、上述のようにして求めた学習済みモデルを用いて、各滞在場所及び時間帯の各環境要素の予測値を求める。そして、選択部14は、利用者の嗜好情報と、各滞在場所及び各時間帯における環境要因の予測値との類似度(ユークリッド距離)を求める。選択部14は、16の滞在場所A1、…、D4のうち、利用者の嗜好情報と環境情報(予測値)の類似度が最も高い滞在場所を選択する。そして、選択部14が選択した滞在場所の位置情報が提案部15に渡され、提案部15を通じて利用者に提案される。
【0072】
上述のように変形例2の滞在場所提案システム1によれば、学習済みモデルを用いて滞在場所の環境情報の予測値を求めることにより、利用者の嗜好情報に適した滞在場所を選択するまでの時間の更なる短縮化を図ることができる。
【0073】
(4-3)変形例3
変形例3の滞在場所提案システム1(以下、変形例3と略す。)は、複数の利用者のそれぞれの嗜好情報(環境要因の好適値)を求める方法が実施形態と異なる。
【0074】
変形例3における処理ユニット10は、すべての滞在場所における時間帯ごとの各環境要因の測定値の平均値と、利用者の滞在場所における時間帯ごとの各環境要因の測定値の差分を取得する。処理ユニット10は、利用者の滞在場所における時間帯ごとの各環境要因の測定値の差分を平均(相加平均)し、それぞれの平均値を嗜好情報の好適値との差分として記憶部13に記憶させる。さらに、処理ユニット10は、利用者の嗜好情報の好適値との差分を記憶部13から取得し、環境情報データベース6から取得した滞在場所の各環境要因の測定値に、利用者の嗜好情報の好適値との差分を加算することによって各環境要因の好適値を算出する。
【0075】
しかして、変形例3の滞在場所提案システム1によれば、季節ごとの気候の変化による嗜好情報への影響の低減を図ることができる。
【0076】
(5)滞在場所提案方法及びプログラム
実施形態に係る滞在場所提案方法は、利用者が滞在可能な複数の滞在場所A1、…、D4にそれぞれ設置されている1つ以上のセンサ装置2が計測する複数種類の環境要因の計測値を含む環境情報を取得するステップを含む。実施形態に係る滞在場所提案方法は、利用者の位置情報を取得するステップと、複数種類の環境要因に対する利用者の嗜好情報と環境情報の類似度を求め、類似度に基づいて複数の滞在場所の中から1つ以上の滞在場所を選択するステップと、を含む。実施形態に係る滞在場所提案方法は、選択した1つ以上の滞在場所を利用者に提案するステップを含む。
【0077】
実施形態に係る滞在場所提案方法は、上述した滞在場所提案システム1によって実行されてもよいし、実施形態に係るプログラム(コンピュータプログラム)を1つ以上のプロセッサに実行させることで実現しても構わない。
【0078】
実施形態に係る滞在場所提案方法及びプログラムによれば、より利用者の嗜好に適した滞在場所を提案することができる。
【0079】
(6)まとめ
本開示の第1の態様に係る滞在場所提案システム(1)は、第1取得部(11)と、第2取得部(12)と、記憶部(13)と、選択部(14)と、提案部(15)と、を備える。第1取得部(11)は、利用者が滞在可能な複数の滞在場所にそれぞれ設置されている1つ以上のセンサ装置(2)のそれぞれが計測する複数種類の環境要因の計測値を含む環境情報を取得する。第2取得部(12)は、利用者の位置情報を取得する。記憶部(13)は、複数種類の環境要因に対する利用者の嗜好情報を記憶する。選択部(14)は、環境情報と嗜好情報の類似度を求める。選択部(14)は、類似度に基づいて複数の滞在場所の中から1つ以上の滞在場所を選択する。提案部(15)は、選択部(14)が選択した1つ以上の滞在場所を利用者に提案する。
【0080】
第1の態様に係る滞在場所提案システム(1)は、1種類の環境要因(温度)のみに基づいて利用者に座席を提案する従来例に比べて、より利用者の嗜好に適した滞在場所を提案することができる。
【0081】
本開示の第2の態様に係る滞在場所提案システム(1)は、第1の態様との組合せにより実現され得る。第2の態様に係る滞在場所提案システム(1)において、選択部(14)は、環境情報に含まれる複数種類の環境要因の計測値と、嗜好情報に含まれる複数種類の環境要因の好適値との、ユークリッド距離によって類似度を求めることが好ましい。
【0082】
第2の態様に係る滞在場所提案システム(1)は、類似度を容易に求めることができる。
【0083】
本開示の第3の態様に係る滞在場所提案システム(1)は、第2の態様との組合せにより実現され得る。第3の態様に係る滞在場所提案システム(1)において、複数種類の環境要因の好適値は、利用者が滞在した滞在場所における、利用者の滞在中の環境情報に含まれる複数種類の環境要因のそれぞれの測定値を平均することによって求められることが好ましい。
【0084】
第3の態様に係る滞在場所提案システム(1)は、複数種類の環境要因の好適値を容易に求めることができる。
【0085】
本開示の第4の態様に係る滞在場所提案システム(1)は、第1~第3のいずれかの態様との組合せにより実現され得る。第4の態様に係る滞在場所提案システム(1)において、提案部(15)は、選択部(14)が選択した1つ以上の滞在場所における環境情報を利用者に提示することが好ましい。
【0086】
第4の態様に係る滞在場所提案システム(1)は、利用者に対して、提案された滞在場所の環境情報を知らせることができる。
【0087】
本開示の第5の態様に係る滞在場所提案システム(1)は、第1~第4のいずれかの態様との組合せにより実現され得る。第5の態様に係る滞在場所提案システム(1)において、複数種類の環境要因は、滞在場所の温度と、滞在場所の湿度、照度、騒音レベル及び二酸化炭素濃度のうちの少なくとも1つと、を含むことが好ましい。
【0088】
第5の態様に係る滞在場所提案システム(1)は、利用者の嗜好に細かく対応した滞在場所を提案することができる。
【0089】
本開示の第6の態様に係る滞在場所提案システム(1)は、第1~第5のいずれかの態様との組合せにより実現され得る。第6の態様に係る滞在場所提案システム(1)において、選択部(14)は、複数種類の環境要因のうちの少なくとも1種類の環境要因の計測値を予測することが好ましい。選択部(14)は、予測した計測値を含む環境情報と嗜好情報の類似度を求めることが好ましい。
【0090】
第6の態様に係る滞在場所提案システム(1)は、選択部(14)が予測した計測値(予測値)を含む環境情報と嗜好情報の類似度を求めることにより、利用者の嗜好情報に適した滞在場所を選択するまでの時間の更なる短縮化を図ることができる。
【0091】
本開示の第7の態様に係る滞在場所提案方法は、利用者が滞在可能な複数の滞在場所にそれぞれ設置されている1つ以上のセンサ装置(2)が計測する複数種類の環境要因の計測値を含む環境情報を取得するステップを含む。第7の態様に係る滞在場所提案方法は、利用者の位置情報を取得するステップと、複数種類の環境要因に対する利用者の嗜好情報と環境情報の類似度を求め、類似度に基づいて複数の滞在場所の中から1つ以上の滞在場所を選択するステップと、を含む。第8の態様に係る滞在場所提案方法は、選択した前記1つ以上の滞在場所を前記利用者に提案するステップを含む。
【0092】
第7の態様に係る滞在場所提案方法は、1種類の環境要因(温度)のみに基づいて利用者に座席を提案する従来例に比べて、より利用者の嗜好に適した滞在場所を提案することができる。
【0093】
本開示の第8の態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、第7の態様に係る滞在場所提案方法を実行させる。
【0094】
第8の態様に係るプログラムは、1種類の環境要因(温度)のみに基づいて利用者に座席を提案する従来例に比べて、より利用者の嗜好に適した滞在場所を提案することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 滞在場所提案システム
2 センサ装置
11 第1取得部
12 第2取得部
13 記憶部
14 選択部
15 提案部
図1
図2
図3
図4
図5