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特許7570074予備含浸繊維強化複合材料、ならびに前記予備含浸繊維強化複合材料の成形および完全硬化によって得られる製品
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  • 特許-予備含浸繊維強化複合材料、ならびに前記予備含浸繊維強化複合材料の成形および完全硬化によって得られる製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】予備含浸繊維強化複合材料、ならびに前記予備含浸繊維強化複合材料の成形および完全硬化によって得られる製品
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20241011BHJP
   B29C 70/34 20060101ALI20241011BHJP
   B29C 70/44 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
C08J5/04 CFH
B29C70/34
B29C70/44
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2020528534
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 IB2018055844
(87)【国際公開番号】W WO2019026036
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】102017000089430
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520040810
【氏名又は名称】ペトロセラミクス・エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】PETROCERAMICS S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Viale Europa,2,24040 Stezzano,Bergamo,Italy
(73)【特許権者】
【識別番号】520040821
【氏名又は名称】ナノ-テク・エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】NANO-TECH S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Zona Industriale Campolungo,105,63100 Ascoli Piceno,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】カバッリ、ロレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンネッリ、アンドレア
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-506283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/04- 5/10;5/24
B29C 41/00-41/36;41/46-41/52
B29C 70/00-70/88
C08L 83/00-83/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維質塊に高分子結合剤組成物を含浸することによって得られ、繊維強化複合材料を得るために後続の成形および完全硬化操作にかけられることが意図される、層状の予備含浸繊維強化複合材料であって、前記高分子結合剤組成物が、シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂をベースとし、任意に、1種以上の有機樹脂を含んでもよく、前記シロキサン樹脂が、ポリシロキサンを含み、前記シルセスキオキサン樹脂がポリシルセスキオキサンを含み、およびポリシロキサンおよびポリシルセスキオキサンを可溶化することができる化合物から選択される少なくとも1種の溶媒および/または少なくとも1種の安定剤を単独でまたは一緒に混合して、前記予備含浸繊維強化複合材料の1重量%未満含むことならびに前記高分子結合剤組成物が、50℃~70℃の温度で55000~10000mPasの粘度を有する液体として現れることを特徴とし、前記高分子結合剤組成物が、繊維質塊の隙間を満たす、架橋していないまたは部分的にのみ架橋した高分子結合剤マトリックスを形成する、予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項2】
前記高分子結合剤組成物が、60℃の温度以下では擬塑性液体として現れ、この温度を超えるとニュートン挙動を示し、50℃で1秒-1の剪断速度を適用して55000mPasから剪断速度に関わらず70℃で10000mPasの粘度を有する、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記高分子結合剤組成物が、シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される樹脂のみを含み、有機樹脂を含まない、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
前記高分子結合剤組成物が、前記予備含浸繊維強化複合材料の25重量%~60重量%を構成し、前記繊維質塊が、前記予備含浸繊維強化複合材料の40重量%~75重量%を構成する、請求項1または2または3に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項5】
前記高分子結合剤組成物が、
- シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される、40℃~90℃の融点範囲を有する、室温で固体の少なくとも1種の樹脂;ならびに
- シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される、室温で1mPas~5000mPasの粘度を有する、室温で液体の少なくとも1種の樹脂;の混合物を含み、
室温で固体の樹脂と室温で液体の樹脂との重量比が、100/30~100/50である、請求項1、2、3または4に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項6】
前記室温で固体の樹脂が、フェニルシロキサン、メチルシロキサン、フェニルメチルシルセスキオキサン、メチルシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択され、前記室温で液体の樹脂が、メチルメトキシシロキサンおよびメチルフェニルビニルシロキサン樹脂からなる群から選択される、請求項5に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項7】
前記高分子結合剤組成物が、
- シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される、室温で1mPas~5000mPasの粘度を有する、室温で液体の単一の樹脂;ならびに
- 粉末の不活性フィラー
の混合物を含み、
不活性フィラーと室温で液体のポリマーとの体積比が10/100~40/100である、請求項1、2、3または4に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項8】
前記溶媒が、ジビニルベンゼンから選択される、請求項7に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項9】
前記高分子結合剤組成物が、アセトフェノン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルスチレン、2-tert-ブチルフェノール、2-6-ジ-tert-ブチルフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノールからなる群から選択される少なくとも1種の前記安定剤を含む、請求項1~8の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項10】
前記少なくとも1種の溶媒および/または少なくとも1種の安定剤が、単独でまたは一緒に混合して、前記予備含浸繊維強化複合材料の0.2重量%~1重量%未満を構成する、請求項7~9の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項11】
前記高分子結合剤組成物が、100℃よりも高い温度で前記高分子結合剤組成物のポリマーの架橋を促進するのに好適な少なくとも1種の触媒をさらに含む、請求項1~10の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項12】
前記触媒が、チタネート、金属オクトエートおよびアミンからなる群から選択される、請求項11に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項13】
前記触媒が、チタンテトラブタノレート、亜鉛オクトエートおよびN-3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミンからなる群から選択される、請求項11に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項14】
前記触媒が、前記予備含浸繊維強化複合材料の高分子マトリックスの1重量%未満を構成する、請求項11に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項15】
前記高分子結合剤組成物が、断熱性不活性フィラーをさらに含む、請求項1~14の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項16】
前記断熱性不活性フィラーが、酸化物、シリケートおよびホスフェートまたはそれらの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項17】
前記断熱性不活性フィラーが、前記予備含浸繊維強化複合材料の1体積%~30体積%を構成する、請求項16に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項18】
前記繊維質塊が、カーボンファイバー、ガラスファイバー、セラミックファイバーまたはそれらの混合物からなる群から選択される繊維からなりなる、請求項1~17の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項19】
前記カーボンファイバーがポリアクリロニトリル(PAN)由来のカーボンファイバーおよび/またはピッチ由来のカーボンファイバーである、請求項18に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項20】
前記ガラスファイバーまたはセラミックファイバーが、シリカ、アルミナ、ジルコニアまたは炭化ケイ素からなる、請求項18に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項21】
前記繊維質塊が、織物または不織布の1つ以上の層を形成する連続繊維からなる、請求項1~20の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項22】
前記繊維質塊が、前記高分子結合剤組成物によって形成されたマトリックス中に分散したチョップドファイバーからなる、請求項1~21の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
【請求項23】
繊維強化複合材料を作製するために後続の成形および完全硬化操作にかけられることが意図される予備含浸繊維強化複合材料を作製するための方法であって、以下の操作工程: - 繊維質塊を層状に配置する工程;
- 高分子結合剤組成物を配置する工程;
- 前記繊維質塊に前記高分子結合剤組成物を含浸して予備含浸繊維強化複合材料を得る含浸工程
を含み、
前記高分子結合剤組成物が、シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂をベースとし、任意に、1種以上の有機樹脂を含んでもよく、前記シロキサン樹脂が、ポリシロキサンを含み、前記シルセスキオキサン樹脂がポリシルセスキオキサンを含み、およびポリシロキサンおよびポリシルセスキオキサンを可溶化することができる化合物から選択される少なくとも1種の溶媒および/または少なくとも1種の安定剤を単独でまたは一緒に混合して、前記予備含浸繊維強化複合材料の1重量%未満含むこと、ならびに前記高分子結合剤組成物が、50℃~70℃の温度で55000~10000mPasの粘度を有する液体として現れることを特徴とし、前記含浸工程後に、前記高分子結合剤組成物が、前記繊維質塊の隙間を満たす、架橋していないまたは部分的にのみ架橋した高分子結合剤マトリックスを形成する、方法。
【請求項24】
前記高分子結合剤組成物が、60℃の温度以下では擬塑性液体として現れ、この温度を超えるとニュートン挙動を示し、50℃で1秒-1の剪断速度を適用して55000mPasから剪断速度に関わらず70℃で10000mPasの粘度を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記溶媒が、ジビニルベンゼンである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記高分子結合剤組成物が、アセトフェノン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルスチレン、2-tert-ブチルフェノール、2-6-ジ-tert-ブチルフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノールからなる群から選択される少なくとも1種の前記安定剤を含む、請求項23~25の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1種の溶媒および/または少なくとも1種の安定剤が、単独でまたは一緒に混合して、前記予備含浸繊維強化複合材料の0.2重量%~1重量%未満を構成する、請求項24~26の何れか1項に記載の方法。
【請求項28】
請求項1~22の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料の熱間成形および完全硬化によって得られた製品を作製するための方法であって、以下の操作工程:
- 請求項1~22の何れか1項に記載の高分子結合剤組成物を含む予備含浸繊維強化複合材料を配置する工程;および
- 前記予備含浸繊維強化複合材料を成形して、前記高分子結合剤組成物を硬化させて、前記製品を得る成形工程
を含み、
前記成形工程が、前記高分子結合剤組成物の前記1種以上の樹脂の硬化、したがって、前記予備含浸繊維強化複合材料の繊維質塊の隙間を満たし、前記高分子結合剤組成物の前記1種以上の樹脂の完全硬化によって誘導される架橋に起因して互いに架橋したポリシロキサンおよび/またはポリシルセスキオキサンをベースとする固体高分子結合剤マトリックスの形成につながることを特徴とする、方法。
【請求項29】
前記成形工程が、熱間で実施される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記成形工程が、40bar以上の圧力および200℃以上の温度で60~150分の時間にわたって実施される圧縮成形技術によって熱間で実施される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記成形工程が、真空バギングおよび後続の硬化の熱処理によって実施される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記真空バギングが、2~14barの圧力および180℃~300℃の温度で1~6時間の時間にわたって実施される、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、予備含浸繊維強化複合材料、ならびに前記予備含浸(プリプレグ)材料の成形および完全硬化によって得られる製品に関する。
【0002】
[0002]本発明による予備含浸繊維強化複合材料(以下、より簡潔に、「プリプレグ」とも呼ぶ)は、繊維強化複合材料を得るために連続する成形操作(特に、熱間成形)および完全硬化にかけられることが意図され、中温(400℃以下)で操作することが意図される構成成分、たとえば、400℃以下の温度で操作することが意図される熱もしくは耐炎性バリアまたは構造部分を、連続する処理および加工プロセスによって製造するための基本材料としての用途が見出される。
[技術水準]
[0003]公知の通り、機械を使用して高分子組成物が含浸された繊維または強化織物は、「プリプレグ」または予備含浸材料と呼ばれる。繊維または織物は、プリプレグの強化材を形成し、一方、高分子組成物は、そのマトリックスを形成する。高分子組成物(予備含浸材料のマトリックスを形成する)は、特定の較正機器によって繊維に適用されたため、マトリックスと強化材との重量比(または体積比)は、正確に決定され、強化材の全表面で一定である。
【0003】
[0004]したがって、プリプレグは、高分子結合剤組成物を含む予備含浸繊維強化複合材料である。
【0004】
[0005]手動による含浸技術は、適切な用具で補助される場合でも、「湿式レイアップ」という名称を有する。この技術は、熱硬化性組成物(マトリックス)を硬化剤と混合する工程、および続いて含浸する工程を含む。この技術を用いて含浸された強化織物は、強化材とマトリックスとの比の変動を必然的に有する。手動による含浸織物は、直ちに使用する、または使用前に短期間保管することができる。
【0005】
[0006]プリプレグは、織物または不織布を形成するように配置され、熱硬化性または熱可塑性高分子組成物を含浸された繊維、一般的には、カーボンファイバーおよび/またはガラスファイバーおよび/またはセラミックファイバーからなる。
【0006】
[0007]熱可塑性マトリックスは、材料の典型的なガラス転移温度よりも高い温度に加熱することによって加工される。これにより、可逆プロセスにおいて温度が再度ガラス転移温度(Tg)未満になるまで、ポリマー鎖は互いに滑動することが可能になる。
【0007】
[0008]熱硬化性マトリックスの場合、加工プロセスは、隣接する鎖の相対運動が妨げるような量の化学結合が隣接する鎖間でつくられて(架橋または硬化)、ポリマーが不可逆プロセスにおいて硬化される前に、行われる。硬化後、繊維に含浸する高分子組成物は、繊維を互いに固定する結合マトリックスを形成する。
【0008】
[0009]プリプレグの製造において、使用される熱可塑性高分子結合剤組成物は、たとえば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)およびポリパラフェニレンスルフィド(PPS)である。
【0009】
[0010]プリプレグ製造において、使用される熱硬化性高分子組成物は、有機樹脂、一般的には、エポキシドもしくはフェノール、またはビニルエステルもしくはシアネートエステルをベースとする樹脂をベースとする。これらの目的のために、これらの樹脂ファミリーのうち、
- 含浸工程の間の繊維と樹脂の間の所望の度合いの融合/含浸;
- 樹脂が滴り落ちるのを防止すると同時に、取り扱いおよび成形工程の間のプリプレグの適当な可撓性;
- 型の形状を最良に模倣するために繊維層が互いに有利に滑動することを可能にする、硬化温度に近い温度での樹脂の適当な流動性
を得ることを可能にするようなレオロジー特性(特に、粘度および擬塑性)を有する樹脂が使用される。
【0010】
[0011]プリプレグの製造のために使用される熱硬化性マトリックスは、その架橋を可能にするために必要なすべての構成成分を既に含有しており、専門用語で「単成分樹脂」として公知である。
【0011】
[0012]プリプレグの製造の間、熱硬化性高分子マトリックスは、架橋しないか、または部分的にのみ架橋して、プリプレグを操作可能にするが、それでも加工可能である。このために、プリプレグは、低温で保存して、架橋が完了するのを防ぐ。
【0012】
[0013]効果を発揮するために、プリプレグを製造するための方法は、繊維を平坦面に置き、この構成において繊維に高分子組成物を含浸する、含浸工程を含む。この工程の間、従来技術では、使用される高分子組成物に従って様々な温度で、熱硬化性高分子組成物の部分架橋が起こり得る。次いで、材料は、周囲温度に冷却される。次いで、プリプレグは、加工可能な平箔の形態で利用可能であり、次いでこれは、たとえば、積層または圧延および後続の成形操作によって加工されてさらにより複雑な形状を有する構成成分を得てもよい。
【0013】
[0014]有機樹脂は、部分架橋後に既に良好な機械抵抗特性を有するプリプレグをもたらす。
【0014】
[0015]プリプレグは、それらに含浸される有機樹脂の完全架橋後に、優れた機械特性を獲得する。この操作は、プリプレグの成形(好ましくは、熱間成形)工程の間に行われ、これは、後続の熱処理工程(後硬化)で完了してもよい。樹脂の架橋は、成形工程の間に完全に得られる場合があり、または成形工程が比較的低温でもしくは不十分な長さの時間実施される場合、樹脂の架橋は、後続の後硬化工程で完了する場合がある。
【0015】
[0016]熱間成形および場合により後硬化後、プリプレグから得られた構成成分は、そのまま、すなわち、さらなる処理なしに、すなわち、「硬化されたまま」、既に使用することができる。
【0016】
[0017]伝統的な「硬化されたまま」のプリプレグでは、架橋有機樹脂は、良好な機械抵抗特性を有する得られた複合材料をもたらす。
【0017】
[0018]しかしながら、有機樹脂によって定義される有機マトリックスにより、伝統的な「硬化されたまま」のプリプレグは、高分子マトリックスの軟化(より良好にはTgとして公知のガラス転移温度を超える)および熱分解のために、酸化雰囲気中では250℃を超える温度で操作できない。これにより、熱もしくは耐炎性バリアまたは高温で操作する構造構成成分としてのその使用が制限される。
【0018】
[0019]有機樹脂をベースとする伝統的なプリプレグには、たとえば、以下の制限:
- 樹脂の完全架橋後に得られる組成物の低い操作温度;これらの組成物は、優れた機械抵抗特性を有するが、それらは、酸化雰囲気中では250℃を超えて操作するのが困難である;
- 得られる組成物中に存在する有機マトリックスのまさに性質に起因した、機械摩耗による摩損への低い抵抗
が存在し得る。
【0019】
[0020]したがって、高分子結合剤組成物の完全架橋後、酸化雰囲気中と不活性雰囲気中の両方でかなり高い熱安定性を有し、有機樹脂で可能であるよりもより高温で操作することが可能な複合材料をもたらすことができるプリプレグを製造する必要性が存在する。
【0020】
[0021]今日まで、この必要性は満たされていないが、これは、前述の技術要件を潜在的に満たすことができる代替樹脂、たとえば、シリコーン-有機プレセラミック樹脂(シロキサン樹脂、シラザン系樹脂など)は、それらを、最も一般的な熱硬化性マトリックスを含浸されたプリプレグと同様の加工性特性を有するが、周囲温度で数週間にわたって、または低温で数カ月にわたって保管することができるプリプレグの製造に適さないものにするような特徴を有するためである。
【0021】
[0022]複合材料、より具体的にはプリプレグの作製におけるシリコーン-有機樹脂の使用の、現在観察できる主な問題を以下にまとめる。
【0022】
[0023]シラザンおよびポリシラザン(polysalazane)は、低分子量のオリゴマーまたはポリマーの混合物によって形成された低粘度の液体として現れる。それらは、周囲温度において比較的短時間(数時間~数日)で硬化することができ、それらは、水、放射性またはプロトン性溶媒、たとえば、アルコールまたは酸の存在によって促進される加水分解反応を非常に受けやすい。これらの反応は、熱力学的に促進され、それらは、シリカ(SiO2)およびアンモニアもしくはアミンの形成につながる。Si-N結合は、Si-O結合に比べてエネルギー的に好ましくなく、湿気の存在下では、酸化ケイ素の形成につながる加水分解反応が同時に起こる。これらの不安定性の問題により、その分解を防ぐために不活性雰囲気の存在が常に必要であるため、ポリシラザン(polysazane)の合成と使用の両方が困難になる。したがって、大気湿度および光放射へのそれらの感受性は、異なる化学反応を加速する傾向が強い。加熱による架橋もまた、多くの場合溶液中に存在する溶媒の蒸発に加えて、アンモニア、水およびアミンの放出により、深刻な重量損失(これは、50%を超えることさえある)にいたる。これらの特徴により、シラザン(ポリシラザンも含む)は、それらが十分長い期間にわたって保存可能ではないことから、商用価値を有するプリプレグを得るのに適さない。さらに、シラザンおよびポリシラザンは、一般に、プリプレグの製造に一般的に使用される有機樹脂とシロキサン樹脂の両方よりもはるかに費用が高い。この側面により、シラザンおよびポリシラザンは、特に、市場に提案することができる構成成分の製造に不利である。さらに、シラザンマトリックスを有する複合材料は、硬化後に、構造用途に関連する機械特性を得ることが可能ではない。最後に、これらの化合物による、無視できない量のアンモニア、水および気体形態のアミンの放出により、得られるプリプレグの樹脂マトリックスは、一般に、多孔質であり、これは、とりわけ機械抵抗および剛性に関して最終製品では望ましくない特徴であり、同様に美観にも負の影響を及ぼす。また、特定の寸法を超えると、何れの細孔も割れの発生し得る箇所になり得ることに注意すべきである。
【0023】
[0024]逆に、シロキサンおよびポリシロキサンは、周囲温度で低粘度の液体または固体として現れ得る。これらの複合体は、高温に耐えることができるコーティングの配合物に主に使用されるが、それらの高温安定性の理由から、それらは、複合材料およびセラミック化可能複合材料の分野においても次第に注目が高まっている。それらの構造は、主鎖中のSi-O結合の存在によって決定され、したがって、それらは、シラザン中に存在するSi-N結合よりも安定である。様々なラジカル、たとえば、ビニル、メチル、メトキシル基などが主鎖に結合し得る。非硬化ポリシロキサンの安定性はシラザンの安定性よりも高いが、これらの化合物もまた空気中に存在する湿気に感受性であり、これは、加水分解および縮合反応を引き起こすことができ、数時間または数日でそれらの特性の低下につながる。それらの加工性を改善し、使用時間を延長するための溶媒の使用は、ポリマーの重量と比較して莫大な量の溶媒の使用を必要とする。最後に、使用前に溶媒を蒸発させると、空気中に存在する湿気が高分子マトリックスに直ちに進入し、また、組成によっては、高分子マトリックスが部分的に硬化し、これにより、マトリックスが極度にもろく、割れやすくなる傾向がある。一方、硬化の間に溶媒を除去すると、硬化後シロキサンが自然に示す重量損失に加えて、樹脂のかなり大幅な重量損失となり、その多孔性が増加すると同時に、複合材料が有するべき機械特性が減退する。
【0024】
[0025]ケイ素含有高分子複合体をベースとする組成物が、従来技術において記載されている。
【0025】
[0026]特許出願US2015/099078A1は、ポリシラザン、ポリシロキサンおよび1μm未満のd50値を有する粉末の形態の固体ホウ素化合物を含む組成物を記載している。この文献の組成物は、上で指摘したシラザンの不利点を有し、それらは、制御された粒度を有するホウ素組成物の粉末を使用する必要があることに加えて、関連費用を伴い製造を困難にする条件を付与する。
【0026】
[0027]特許US5552466は、ポリシルセスキオキサンおよび少なくともポリジオルガノシロキサンを含む組成物であって、周囲温度で2種の構成成分が、前者は500,000mPas超、後者は10~1000mPasの粘度を有する、組成物を記載している。加水分解および縮合、より一般には硬化の反応を阻害するように、ならびに長期間にわたってその化学-物理および加工性特性が変化しないままであるプリプレグを得ることが可能になるように適合された化学構成成分が存在しないので、この特許の組成物もまた、上で指摘した不利点を有する。さらに、硬化ポリマーの機械特性は、市販されている最も一般的なポリマーと何ら比較になり得ない。
【0027】
[0028]最後に、特許出願EP0936250A2は、繊維(たとえば、ガラスまたはセラミック)に単一固体または液体メチルシルセスキオキサンを含浸して調製された繊維強化材料を記載している。単一のシリコーン樹脂の使用は、そのレオロジー特性を制御することができない、つまり、当該文献の段落[0030]に記載されている通り、含浸は、複雑な方法論による溶媒なしに;あるいは、樹脂のための溶媒を用い、その40重量%~70重量%を含有する溶液を形成して(当該出願の段落[0031])、達成することができるが、この場合、製造された部分の寸法制御が不完全である問題があり(無視できない量の溶媒の蒸発による)、大量の溶媒の蒸発により高度に多孔性の高分子マトリックス、および最終樹脂の不十分な機械強度となるリスクがあることから、プリプレグ製造プロセスにおいて繊維の含浸に困難を伴う。
[発明の提示]
[0029]したがって、本発明の目的は、従来技術に関する前述の問題を排除または少なくとも低減して、有機樹脂、たとえば、エポキシドもしくはフェノール樹脂、またはビニルエステルもしくはシアネートエステルをベースとする樹脂を含有しないまたは少なくともそれらのみを含有することはない高分子結合剤組成物を含む予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)を利用可能にすることである。
【0028】
[0030]特に、本発明の目的は、有機樹脂、たとえば、エポキシドもしくはフェノール樹脂、またはビニルエステルもしくはシアネートエステルをベースとする樹脂を含有しないまたは少なくともそれらのみを含有するとは限らず、高分子結合剤組成物の完全架橋後に、酸化雰囲気中および不活性雰囲気中の両方で、伝統的なプリプレグと比較してかなり高い熱安定性を有し、400℃の温度以下で作用することが可能な複合材料をもたらし得る高分子結合剤組成物を含む予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)を利用可能にすることである。
【0029】
[0031]本発明の別の目的は、長期間にわたって可撓性かつ加工可能なままであり、周囲温度で数日間、および低温で保存された場合12カ月を超える保存寿命を保証するシリコーンポリマー、たとえば、シロキサンおよびシルセスキオキサンをベースとする高分子結合剤組成物を含む予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)を利用可能にすることである。
【0030】
[0032]本発明の別の目的は、硬化すると、技術水準に従うシリコーン樹脂およびその混合物により得られる複合体よりもはるかに高い機械特性を有する予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)を提供することである。
【0031】
[0033]本発明の追加の目的は、硬化すると、エポキシドマトリックス、ビニルエステルまたはシアネートエステルを含む複合材料の機械特性に匹敵する機械特性を有するが、それらとは異なり、高温への曝露で顕著に低下する機械特性を有さない予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)を提供することである。
【0032】
[0034]本発明のさらなる目的は、BMI(ビスマレイミド)またはポリイミド樹脂をベースとするプリプレグよりも容易に加工可能であり、成形操作を、エポキシドマトリックスを有するより一般的なプリプレグで起こるものとまったく同様のものにする予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)を得ることである。
【0033】
[0035]本発明の技術的特徴は、1つ以上の純粋に例示であり非限定である態様を提示する添付の図面を参照することにより、以下の特許請求の範囲の内容から明らかに理解することができ、その利点は、以下の詳細な説明においてより容易に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】10℃/分に加熱された本発明による予備含浸繊維強化複合材料の完全架橋によって得られた「硬化されたまま」の複合体に対して実施した、不活性雰囲気中の熱重量分析(TGA)に関するグラフを示す;
図2】本発明による予備含浸繊維強化複合材料の完全架橋によって得られた「硬化されたまま」の複合体に対して実施した動的機械分析(DMA)測定に関するグラフを示す;
図3】成形圧力の関数としての、圧縮成形による本発明による予備含浸繊維強化複合材料の完全架橋によって得られた「硬化されたまま」の複合体の密度のパターンのグラフを示す。[詳細な説明] [0036]本発明の対象は、以下、簡潔に「プリプレグ」とも呼ばれる、繊維質塊に高分子結合剤組成物を含浸して得られた予備含浸繊維強化複合材料である。
【0035】
[0037]前記予備含浸繊維強化複合材料は、繊維強化複合材料を得るために連続する後続の成形および完全硬化操作にかけられることが意図される。
【0036】
[0038]本発明によると、もっぱら有機樹脂(フェノールもしくはエポキシド樹脂またはビニルエステルもしくはシアネートエステルをベースとする樹脂)を含浸された伝統的なプリプレグとは異なり、高分子結合剤組成物は、シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂をベースとする。
【0037】
[0039]「~をベースとする」という表現は、シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される樹脂が、高分子結合剤組成物の少なくとも70重量%を構成することを意味する。
【0038】
[0040]任意に、前述の高分子結合剤組成物は、有機樹脂、好ましくはエポキシド樹脂、フェノール樹脂および/またはビニルエステルもしくはシアネートエステルをベースとする樹脂を含み得る。しかしながら、有機樹脂は、存在する場合、高分子結合剤組成物の30重量%超を構成することはない。
【0039】
[0041]好ましくは、前述の高分子結合剤組成物は、シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される樹脂のみを含み、有機樹脂を含まない。
【0040】
[0042]シルセスキオキサン樹脂は、ポリシロキサンを含む高分子樹脂であるかまたはポリシロキサンをベースとし、一方、シルセスキオキサン樹脂は、ポリシルセスキオキサンを含む高分子樹脂であるかまたはポリシルセスキオキサンをベースとする。
【0041】
[0043]ポリシロキサンおよびポリシルセスキオキサンは、主鎖中にケイ素-酸素結合が存在することを特徴とする化合物である。
【0042】
[0044]ポリシロキサンは、以下の基本構造
【0043】
【化1】
【0044】
を有し、一方、ポリシルセスキオキサンは、以下の基本構造
【0045】
【化2】
【0046】
を有する。
【0047】
[0045]本発明の別の側面によると、前述の高分子結合剤組成物は、周囲温度で半固体であり、50℃~70℃の温度で55000~10000mPasの粘度を有する液体として現れる。
【0048】
[0046]特に、粘度は、文中で他に示されない限り、Brookfield粘度計を用いて、1秒-1の剪断速度で測定されると理解される。
【0049】
[0047]特に、前述の高分子結合剤組成物は、50℃で1秒-1の剪断速度を適用しておよそ55000mPas~剪断速度に関わらず70℃でおよそ10000mPasの範囲の粘度を有する液体として現れる。
【0050】
[0048]特に、高分子組成物はまた、温度が低下するにつれて増加する擬塑性挙動(剪断速度が増加するにつれて粘度が低下する)を有する。より詳細には、高分子組成物は、およそ60℃の温度までは擬塑性液体として現れ、この温度を超えるとニュートン挙動を示す傾向がある。
【0051】
[0049]この特徴により、高分子組成物が周囲温度において弾性で可撓性の固体様の挙動を示し、したがって、それが滴り落ち、繊維から分離することを防ぐことが可能になる。昇温では、これとは対照的に、高分子組成物は、ほぼニュートンになるまで、次第により液体様の挙動を示すようになる傾向がある。50℃での粘度は、1秒-1の剪断速度を適用しておよそ55000mPas、3秒-1の剪断速度を適用して25000mPasと等しい。60℃では、粘度は、3秒-1でおよそ18000mPasであり、8.5秒-1で16000mPasを測定し、したがって、ニュートン流体の典型的挙動を示す傾向がある。
【0052】
[0050]これらのレオロジー特性により、高分子結合剤組成物はプリプレグ製造プロセスにおいて繊維質塊に含浸するのに特に好適なものになる。
【0053】
[0051]好ましくは、組成物は、ポリシロキサンおよびポリシルセスキオキサンを可溶化することが可能な化合物の中から選択される少なくとも1種の溶媒をさらに含む。
【0054】
[0052]溶媒の機能は、樹脂のレオロジー特性を経時的に維持し、したがって、プリプレグがより容易に加工され、より長い時間にわたって保存され得るように、より長い時間にわたってプリプレグを操作可能にすることである。
【0055】
[0053]好ましくは、前述の溶媒はジビニルベンゼンであり、これは、低蒸気圧を有し、非可燃性であるという利点を有する。
【0056】
[0054]次いで、この溶媒は、安定剤(または反応阻害剤)としての機能を有する。
【0057】
[0055]有利には、溶媒は、ビニル化合物のクラスから選択することができる。
【0058】
[0056]好ましくは、溶媒は、予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)の1重量%未満を構成する。なおより好ましくは、溶媒は、予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)の少なくとも0.2重量%を構成する。
【0059】
[0057]好ましくは、溶媒は、1重量%未満かつ特に0.2重量%以上の百分率で予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)中に存在するジビニルベンゼンからなる。
【0060】
[0058]有利には、前述の溶媒(好ましくはジビニルベンゼンからなる)に代えて、またはこれと組み合わせて、アセトフェノン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルスチレン、2-tert-ブチルフェノール、2-6-ジ-tert-ブチルフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、2,4-ジメチル(Dymethyl)-6-tert-ブチルフェノールからなる群から特に選択される、安定剤としての機能を有する他の化合物を使用することが可能である。
【0061】
[0059]好ましくは、上で列挙されている化合物は、周囲温度においてさえ高分子組成物へのその溶解を促進するために、溶媒(特にジビニルベンゼン)と混合して使用される。
【0062】
[0060]有利には、安定化機能は、上で列挙されている化合物のうちの2種以上の混合物によって発揮され得る。
【0063】
[0061]好ましくは、溶媒および/または安定剤(溶媒に代えてまたは加えて)は、単独または混合で、1重量%未満かつ特に0.2重量%以上の百分率で予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)中に存在する。
【0064】
[0062]有利には、上で示されている重量百分率の、上で列挙されている化合物のクラスから選択される溶媒(安定剤として役立つ)および/または安定剤(溶媒に代えてまたは加えて)の存在により、シロキサンおよびシルセスキオキサンの分解の公知の問題が解決する。
【0065】
[0063]より詳細には、溶媒(および/または任意の代替もしくは追加の安定剤)は、硬化、加水分解および縮合の反応を可能な限り、たとえ部分的にであっても減速させる機能を有し、したがって、樹脂の化学およびレオロジー特性を経時的に維持し、プリプレグをより長い時間にわたって操作可能にし、含浸工程および製品を形成するためにプリプレグを利用する工程の間、材料を操作するために必要な接着特性を樹脂自体に付与する。
【0066】
[0064]次いで、使用される溶媒および/または安定剤の沸点、ならびに上で示されている量に応じて、所与の閾値温度を超える場合のみ、好適な速度で本発明の高分子組成物の硬化が起こる。
【0067】
[0065]例として、それぞれ192℃および184℃の沸点を有するエチルスチレンもしくはジエチルベンゼンが使用される場合、または195℃の沸点を有するジビニルベンゼンが使用される場合、前記閾値温度は、125~150℃である。
【0068】
[0066]本発明による層状の予備含浸繊維強化複合材料では、高分子結合剤組成物は、架橋していないまたは部分的にのみ架橋した結合マトリックスを形成し、これは、繊維質塊の隙間を満たす。このように、層状の繊維強化複合材料は、一方では操作可能であり、他方ではなお可撓性である。
【0069】
[0067]有利には、本発明による層状の予備含浸繊維強化複合材料は、プリプレグの製造のための伝統的な製造方法:
- 繊維質塊を層状に配置する工程;
- その間に繊維質塊に高分子結合剤組成物を含浸する、60~100℃の温度での含浸工程;および
- 周囲温度に冷却し、こうして複合材料を得る工程
により得ることができる。
【0070】
[0068]好ましくは、プリプレグを製造するための製造プロセスは、ホットメルト技術に基づく。
【0071】
[0069]特に、繊維質塊への高分子結合剤組成物の適用は、事前に高分子組成物を移動支持体(たとえば、紙製の)に堆積して得ることができる。移動支持体の存在により、繊維質塊への高分子結合剤組成物の堆積が促進される。移動支持体への高分子組成物の堆積は、いわゆる、高分子結合剤組成物の薄膜化工程において達成される。
【0072】
[0070]あるいは、高分子結合剤組成物は、繊維質塊に直接適用することができる。
【0073】
[0071]特に、本発明による予備含浸繊維強化複合材料は、一般的には、巻かれてそのまま使用または利用まで保管されるロールに形成された高分子またはシリコーン放出ペーパーフィルムによって支持されたリボンの形態で得ることができる。
【0074】
[0072]特に、次いで、前記リボンは、続いて加工されて、たとえば層化または圧延および後続の成形操作によって、さらにより複雑な形状を有する構成成分を得てもよい。次いで、これらの構成成分は、特定の特徴を有する最終製品を得るために完全架橋にかけられてもよい。
【0075】
[0073]シロキサンおよびシルセスキオキサン樹脂は、カーボンファイバーまたはガラスファイバーまたはセラミックファイバーをベースとするプリプレグを製造するために通常使用される有機(主にエポキシド)樹脂とは異なる特徴を有する。
【0076】
[0074]シロキサンおよびシルセスキオキサン樹脂は、硬化後、その重量損失が低いおかげで、酸化雰囲気中および不活性雰囲気中の両方でかなり高い温度安定性を示す。
【0077】
[0075]有機樹脂は、理論的には、「硬化されたまま」、低温で使用されるプリプレグの製造により好適であるが、これは、それらが複合体に優れた機械特性をもたらすからである。しかしながら、既に指摘した通り、これらの伝統的な「硬化されたまま」のプリプレグは、およそ250℃を超える作用温度を保証しない。
【0078】
[0076]本発明のシロキサンまたはシルセスキオキサン樹脂を含む予備含浸繊維強化複合材料は、有機ベースの化合物が作用できない条件において高温での適用に特に適する。
【0079】
[0077]本発明による予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)から開始して得られる材料は、「硬化されたまま」適用される複合体を得るために使用することができる。
【0080】
[0078]「硬化されたまま」という用語は、本発明による予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)が、高分子結合剤マトリックスの完全架橋後直ちに使用されることを意味する。こうして、シロキサンまたはシルセスキオキサン樹脂は、その高分子構造を保持し、有機ポリマーの特徴により類似する特徴を有する。
【0081】
[0079]以下に記載される通り、本発明によるプリプレグの成形および完全硬化から得られる製品の特徴は、
- 高い機械特性(550MPaを超える極限引っ張り応力、特に、110GPaに近い弾性率、ただし、これらの値は、使用される繊維および織物に密接に関連する)、
- 低い熱伝導率(<2W/(m・K));
- 400℃以下の操作温度
である。
【0082】
[0080]このようにして得られた組成物が目的とし得る用途は、たとえば、熱もしくは耐炎性バリアまたは高温で動作する必要のある構造機能を有する構成成分である。
【0083】
* * *
[0081]本発明の好ましい態様によると、前述の高分子結合剤組成物は、前記予備含浸繊維強化複合材料の25重量%~60重量%を構成し、一方、繊維質塊は、前記予備含浸繊維強化複合材料の40重量%~75重量%を構成する。
【0084】
[0082]繊維および高分子結合剤組成物の含有量は、本発明によるプリプレグから開始して製造される最終材料において得られる特徴に応じて変化し得る。
【0085】
[0083]繊維含有量の高いプリプレグは、高い機械特性が必要とされる用途により適する。逆に、高分子結合剤組成物の百分率がより高いと、より高い作用温度、耐炎性保護または耐機械摩耗が必要とされる用途により適し得る。
【0086】
[0084]本発明の好ましい態様によると、前述の高分子結合剤組成物は、
- ポリシロキサンおよびポリシルセスキオキサンからなる群から選択される、40℃~90℃の融点範囲を有する、室温で固体の少なくとも1種の樹脂;ならびに
- シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される、周囲温度で1mPas~5000mPasの粘度を有する、室温で液体の少なくとも1種の樹脂
の混合物からなる。
【0087】
[0085]一般に、周囲温度で固体の樹脂と周囲温度で液体の樹脂との重量比は、2種の樹脂の混合物から得られる高分子結合剤組成物が、50℃~70℃の温度で55000~10000mPasの粘度を有する液体として現れるように選択される。
【0088】
[0086]好ましくは、周囲温度で固体の樹脂と周囲温度で液体の樹脂との重量比は、2種の樹脂の混合物から得られる高分子結合剤組成物が、50℃で55000mPas~70℃でおよそ10000mPasの粘度を有し、周囲温度~およそ50℃で顕著に擬塑性挙動を示す液体として現れるように選択される。
【0089】
[0087]好ましくは、室温で固体の樹脂と室温で液体の樹脂との重量比は、100/30~100/50である。
【0090】
[0088]好ましくは、周囲温度で固体の樹脂は、フェニルシロキサン樹脂(たとえば、市販製品である、Wacker Chemie AGによって製造販売されているSilres(登録商標)601、またはDow Corning Corp.によって製造販売されているRSN-0217)、メチルシロキサン樹脂、メチルフェニルシルセスキオキサン樹脂(たとえば、市販製品Silres(登録商標)H44、Wacker Chemie AG)、またはメチルシルセスキオキサン樹脂(たとえば、市販製品Silres(登録商標)MK、Wacker Chemie AG)からなる群から選択される。
【0091】
[0089]好ましくは、周囲温度で液体の樹脂は、メチルメトキシシロキサン樹脂(たとえば、市販製品Silres(登録商標)MSE 100、Wacker Chemie AG)およびメチルフェニルビニルシロキサン樹脂(たとえば、市販製品Silres(登録商標)H62 C、Wacker Chemie AG)からなる群から選択される。
【0092】
[0090]有利には、液体樹脂は、溶媒を含まないまたは溶媒含有量2%未満の液体シロキサン樹脂の中から選択することができる。
【0093】
[0091]本発明の好ましい態様によると、固体樹脂は、フェニルシロキサン樹脂であり、一方、液体樹脂は、メチルメトキシシロキサン樹脂である。
【0094】
[0092]有利には、既に述べられている通り、前述の高分子結合剤組成物は、ポリシロキサンおよびポリシルセスキオキサンを可溶化することができる化合物の中から選択される少なくとも1種の溶媒をさらに含み得る。
【0095】
[0093]既に明示されている通り、溶媒の機能は、樹脂のレオロジー特性を経時的に維持し、したがって、プリプレグがより容易に加工され、より長い時間にわたって保存され得るように、より長い時間にわたってプリプレグを操作可能にすることである。
【0096】
[0094]好ましくは、前述の溶媒はジビニルベンゼンであり、これは、低蒸気圧を有し、非可燃性であるという利点を有する。
【0097】
[0095]有利には、溶媒は、ビニル化合物のクラスから選択することができる。
【0098】
[0096]好ましくは、溶媒(存在する場合)は、予備含浸繊維強化複合材料の1重量%未満かつ特に0.2重量%以上を構成する。好ましくは、溶媒(存在する場合)は、予備含浸繊維強化複合材料の0.2重量%~1重量%を構成する。
【0099】
[0097]有利には、前述の溶媒(好ましくはジビニルベンゼンからなる)に代えて、またはこれと組み合わせて、アセトフェノン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルスチレン、2-tert-ブチルフェノール、2-6-ジ-tert-ブチルフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノールからなる群から特に選択される、安定剤としての機能を有する他の化合物を使用することが可能である。
【0100】
[0098]好ましくは、上で列挙されている化合物は、周囲温度においてさえ高分子組成物へのその溶解を促進するために、溶媒(特にジビニルベンゼン)と混合して使用される。
【0101】
[0099]有利には、安定化機能は、上で列挙されている化合物のうちの2種以上の混合物によって発揮され得る。
【0102】
[00100]好ましくは、溶媒および/または安定剤(溶媒に代えてまたは加えて)は、単独または混合で、1重量%未満かつ特に0.2重量%以上の百分率で予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)中に存在する。
【0103】
[00101]有利には、上で示されている重量百分率の、上で列挙されている化合物のクラスから選択される溶媒(安定剤として役立つ)および/または安定剤(溶媒に代えてまたは加えて)の存在により、シロキサンおよびシルセスキオキサンの分解の公知の問題が解決する。
【0104】
[00102]より詳細には、上で明示されている通り、溶媒(および/または任意の代替もしくは追加の安定剤)の機能は、硬化、加水分解および縮合の反応を可能な限り、たとえ部分的にであっても減速させ、したがって、樹脂の化学およびレオロジー特性を経時的に維持し、プリプレグをより長い時間にわたって操作可能にし、含浸工程および製品を形成するためにプリプレグを利用する工程の間、材料を操作するために必要な接着特性を樹脂自体に付与することである。
【0105】
[00103]次いで、使用される溶媒および/または安定剤の沸点、ならびに上で示されている量に応じて、所与の閾値温度を超える場合のみ、好適な速度で本発明の高分子組成物の硬化が起こる。
【0106】
[00104]例として、それぞれ192℃および184℃の沸点を有するエチルスチレンもしくはジエチルベンゼンが使用される場合、または195℃の沸点を有するジビニルベンゼンが使用される場合、前記閾値温度は、125~150℃である。
【0107】
[00105]有利には、前述の高分子結合剤組成物は、100℃を超える温度で高分子結合剤組成物のポリマー(ポリシロキサンおよび/またはポリシルセスキオキサン)の架橋を促進するように適合された少なくとも1種の触媒を含み得る。
【0108】
[00106]触媒は、断片を形成するのに必要な時間および温度を低減することから、触媒の存在により、方法がより工業生産に好適なものになる。
【0109】
[00107]特に、触媒は、好ましくは100℃未満の温度で、高分子組成物に直接挿入することができ、または触媒は、プリプレグの調製の間に高分子結合剤組成物に添加することができ、その結果、これらの工程の間、触媒は、休止状態のままであり、高分子結合剤組成物の架橋反応を開始させない。次いで、触媒は、続いて組成物が形成される温度(たとえば、150~180℃)でその機能を発揮しなくてはならない。
【0110】
[00108]好ましくは、触媒は、チタネート、金属オクトエートおよびアミンまたはそれらの組合せからなる群から選択される。
【0111】
[00109]なおより好ましくは、触媒は、チタンテトラブタノレート(たとえば、Wacker Chemie AGによって製品名「Catalyst TC 44」で供給されているもの);亜鉛オクトエート;およびN-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(たとえば、Wacker Chemie AGによって商品名「Geniosil(登録商標)GF 91」で供給されているもの)からなる群から選択される。
【0112】
[00110]触媒(存在する場合)は、予備含浸繊維強化複合材料の高分子マトリックスの1重量%未満を構成する。
【0113】
[00111]本発明の好ましい態様によると、前述の高分子結合剤組成物は、
- シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される、周囲温度で1mPas~5000mPa秒の粘度を有する、周囲温度で液体の単一の樹脂;ならびに
- 繊維質塊の含浸を可能にするのに必要なレオロジー特性を高分子結合剤組成物にもたらすことができる粉末形態の不活性フィラー
の混合物からなり得る。
【0114】
[00112]特に、粉末形態の不活性フィラーは、周囲温度で液体の樹脂の粘度を増加させるために導入される。
【0115】
[00113]一般に、周囲温度での液体の樹脂と粉末形態の不活性フィラーとの重量比は、それらの混合物から得られる高分子結合剤組成物が50℃~70℃の温度で55000~10000mPasの粘度を有する液体として現れるように選択される。
【0116】
[00114]好ましくは、周囲温度で液体の樹脂と粉末形態の不活性フィラーとの体積比は、10/100~40/100である。
【0117】
[00115]有利には、前述の高分子結合剤組成物(それが複数の樹脂の混合物で定義される場合であっても)は、好ましくは、酸化物、シリケート、ホスフェートまたはそれらの組合せからなる群から選択される断熱性不活性フィラーを含み得る。
【0118】
[00116]「不活性」という用語は、硬化反応に関与しない物質を意味する。
【0119】
[00117]好ましくは、断熱性不活性フィラーは、予備含浸繊維強化複合材料の1体積%~30体積%を構成する。
【0120】
[00118]高分子結合剤組成物への断熱性不活性フィラーの導入は、予備含浸繊維強化複合材料が熱バリアとして使用される材料を作製するために使用される場合、好ましい。
【0121】
[00119]有利には、前述の繊維質塊は、カーボンファイバー;ガラスファイバー;セラミックファイバー;またはそれらの混合物からなる群から選択される繊維からなり得る。
【0122】
[00120]特に、カーボンファイバーは、ポリアクリロニトリル(PAN)由来のカーボンファイバーおよび/またはピッチ由来のカーボンファイバーである。
【0123】
[00121]特に、ガラスまたはセラミックファイバーは、シリカ、アルミナ、ジルコニアまたは炭化ケイ素からなる。
【0124】
[00122]好ましい態様によると、前述の繊維質塊は、カーボンファイバー(PANまたはピッチ)のみからなる。
【0125】
[00123]好ましくは、繊維質塊は、織物または不織布の1つ以上の層を形成する連続繊維からなる。
【0126】
[00124]あるいは、繊維質塊は、前述の高分子結合剤組成物によって形成されたマトリックス中に分散したチョップ繊維からなり得る。
【0127】
* * *
[00125]述べられている通り、繊維および高分子結合剤組成物の含有量は、本発明によるプリプレグから開始して製造される最終材料において得られる特徴に応じて変化し得る。繊維含有量の高いプリプレグは、高い機械特性が必要とされる用途により適する。逆に、樹脂の百分率がより高いと、より高い作用温度、耐炎性保護または耐機械摩耗が必要とされる用途により適し得る。
【0128】
[00126]本発明による予備含浸繊維強化複合材料の一部の一般的な配合物が、以下の2つの表に提示される。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
[00127]少なくとも1種の有機樹脂も含む、本発明による予備含浸繊維強化複合材料の一部の一般的な配合物が、以下の表3に提示される。
【0132】
【表3】
【0133】
[00128]1重量%未満の、上で列挙されている複合体の中から選択される溶媒(安定化機能を有する)、好ましくは、ジビニルベンゼンを混合物中に含む、シリコーンポリマー、たとえば、シロキサンおよびシルセスキオキサンをベースとする高分子結合剤組成物を含む予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)が、長期間にわたって可撓性かつ加工可能なままであり、周囲温度で数日間(20~30日間)、低温で保存した場合12カ月の保存寿命が保証されることを実験により証明することが可能であった。
【0134】
[00129]これとは異なり、前述の溶媒(安定化機能を有する)を含まない、高分子結合剤組成物を含む同じ予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)は、長期間にわたって可撓性かつ加工可能なままではなく、周囲温度で24~36時間の保存寿命を示す。さらに、繊維を薄膜化し、前述の溶媒を含まない高分子結合剤組成物を含む予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)を繊維に含浸する工程は、より困難であることが見出された。
【0135】
保存寿命およびタックの評価の比較例
[00130]好ましい溶媒(安定剤)の効果を評価するために、いくつかの試験を実施して、高分子組成物の初期特性が経時的に維持されるかを評価した。特に、経時的な非硬化高分子組成物の接着性(タック)およびプリプレグの加工性特性を評価した。
【0136】
[00131]安定剤(溶媒)を含まない高分子組成物は、空気中で静置した場合、時間が経過するにつれて透明から白色に変化して、急速に接着性を失い、最終的に弾性を完全に失う傾向があり、白色で固体の極度にもろい化合物になり、最も弱い応力下であってさえも壊れる傾向があることが観察された。
【0137】
[00132]このために、本発明の組成物を用いて2つの試料を調製した。試料1は、組成物中にDBVを有さず、試料2は、固体樹脂の1重量部のDVBを有する。同様に、1つは、DVBを含有せず(プリプレグ1)、もう1つは、試料2と同様に1重量部のDVBを含有する2つのプリプレグを調製した。
【0138】
[00133]各試料について同量の樹脂を、およそ0.5mmの厚さに達するようにシリコーン開放型にキャストし、50×150mmの表面積の2つの金属板に塗布した。試料を、26℃の平均温度および47%~60%の相対湿度で、空気および大気湿度に曝露した。所定の間隔をおいて、シリコーン型にキャストした試料の色およびまとまりを観察し、金属支持体に塗布した樹脂の試料の接着性を測定した。考案した測定方法は、既知重量(3kgアルミニウム板)を使用して空気と接触する面に高分子フィルムを接着させることを含む。フィルムを剥離するのに必要な最小の力を測定するために、フィルム付きのプレートを地面に対して位置決めし、最小部分をプレートから剥離し、次いで、既知重量が取り付けられるグリッパーを50mmの全幅でこれに嵌める。
【0139】
[00134]プリプレグは、周囲温度で保存し、2種の高分子フィルムによって保護した。以下の表3aおよび3bは、試験の結果を示している。
【0140】
【表4】
【0141】
【表5】
【0142】
* * *
[00135]本発明の対象はまた、特に本発明による、上でなおより詳細に記載されている通りの、予備含浸繊維強化複合材料(後続の熱間成形および完全硬化操作にかけられて、繊維強化複合材料を作製することが意図される)を作製するための方法である。
【0143】
[00136]一般的な態様によると、前記方法は、以下の操作工程:
- 繊維質塊を層状に配置する工程;
- 高分子結合剤組成物を配置する工程;
- 前記繊維質塊に前記高分子結合剤組成物を含浸して予備含浸繊維強化複合材料を得る工程
を含む。
【0144】
[00137]好ましくは、含浸工程は、プリプレグ産業において使用される伝統的な機械を使用して実施される。
【0145】
[00138]本発明により、前述の高分子結合剤組成物は、シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる。
【0146】
[00139]上で述べられている通り、「~をベースとする」という表現は、シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される樹脂が、高分子結合剤組成物の少なくとも70重量%を構成することを意味する。
【0147】
[00140]任意に、前述の高分子結合剤組成物は、有機樹脂、好ましくはエポキシド樹脂、フェノール樹脂および/またはビニルエステルもしくはシアネートエステルをベースとする樹脂を含み得る。しかしながら、有機樹脂は、存在する場合、高分子結合剤組成物の30重量%超を構成することはない。
【0148】
[00141]好ましくは、前述の高分子結合剤組成物は、シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される樹脂のみを含み、有機樹脂を含まない。
【0149】
[00142]上で述べられている通り、シルセスキオキサン樹脂は、ポリシロキサンを含み、一方、シルセスキオキサン樹脂は、ポリシルセスキオキサンを含む。
【0150】
[00143]本発明によると、前述の高分子結合剤組成物は、50℃~70℃の温度で55000~10000mPasの粘度を有する液体として現れる。
【0151】
[00144]特に、粘度は、文中で他に示されない限り、Brookfield粘度計を用いて、1秒-1の剪断速度で測定されると理解される。
【0152】
[00145]特に、前述の高分子結合剤組成物は、50℃で1秒-1の剪断速度を適用しておよそ55000mPas~剪断速度に関わらず70℃でおよそ10000mPasの範囲の粘度を有する液体として現れる。
【0153】
[00146]特に、高分子組成物はまた、温度が低下するにつれて増加する擬塑性挙動(剪断速度が増加するにつれて粘度が低下する)を有する。より詳細には、高分子組成物は、およそ60℃の温度までは擬塑性液体として現れ、この温度を超えるとニュートン挙動を示す傾向がある。
【0154】
[00147]この特徴により、高分子組成物が周囲温度において弾性で可撓性の固体様の挙動を示し、したがって、それが滴り落ち、繊維から分離することを防ぐことが可能になる。昇温では、これとは対照的に、高分子組成物は、ほぼニュートンになるまで、次第により液体様の挙動を示すようになる傾向がある。50℃での粘度は、1秒-1の剪断速度を適用しておよそ55000mPas、3秒-1の剪断速度を適用しておよそ25000mPasと等しい。60℃では、粘度は、3秒-1でおよそ18000mPasであり、8.5秒-1で16000mPasと測定され、したがって、ニュートン流体の典型的挙動を示す傾向がある。
【0155】
[00148]これらのレオロジー特性により、高分子結合剤組成物はプリプレグ製造プロセスにおいて繊維質塊に含浸するのに特に好適なものになる。
【0156】
[00149]含浸工程後、高分子結合剤組成物は、架橋していないまたは部分的にのみ架橋した結合剤高分子マトリックスを形成し、これは、繊維質塊の隙間を満たす。
【0157】
[00150]本発明による予備含浸繊維強化複合材料と関連して上で記載されていることは、本発明による前記予備含浸材料を作製するための方法にも当てはまる。簡潔さのために、この記載は繰り返さないが、これは同様に製造方法にも拡張されることを理解されたい。
【0158】
* * *
[00151]本発明の対象は、本発明による、特に上で記載されている通りの予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)の熱間成形および完全硬化によって得られる製品である。
【0159】
[00152]明細書の残部において、高分子結合剤組成物の成形および完全硬化後にプリプレグと想定される状態もまた、「硬化されたまま」と定義するものとする。
【0160】
[00153]本発明によると、熱間成形および完全硬化によって前述の製品が得られるプリプレグは、既に上で記載されている特徴を有し、簡潔さのために、再度示すことはしない、シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる高分子結合剤組成物を含浸された繊維質塊を含む。
【0161】
[00154]前述のプリプレグの熱間成形および完全硬化によって得られる製品は、予備含浸繊維強化複合材料の繊維質塊の隙間を満たす固体結合高分子マトリックスを含む繊維強化複合材料からなり、それは、予備含浸繊維強化複合材料の高分子結合剤組成物の前述の1種以上の樹脂の完全架橋によって誘導された架橋後、互いに架橋したポリシロキサンおよび/またはポリシルセスキオキサンからなる。
【0162】
[00155]好ましくは、前記製品は、熱もしくは耐炎性バリアまたは400℃以下の高温で作用する必要がある構造機能を有する構成成分であり得る。
【0163】
[00156]好ましい態様によると、固体結合高分子マトリックスは、製品が作製された繊維強化複合材料の25重量%~60重量%を構成し、一方、繊維質塊は、製品が作製された繊維強化複合材料の40重量%~75重量%を構成する。
【0164】
[00157]繊維および結合高分子マトリックスの含有量は、本発明による製品において得られる特徴に応じて変化し得る。
【0165】
[00158]繊維含有量の高い材料は、高い機械特性が必要とされる用途により適する。逆に、樹脂の百分率がより高いと、より高い作用温度、耐炎性保護または耐機械摩耗が必要とされる用途により適し得る。
【0166】
[00159]特に、繊維質塊は、カーボンファイバー、ガラスファイバー、セラミックファイバーまたはそれらの混合物からなる群から選択される繊維からなり得る。特に、カーボンファイバーは、ポリアクリロニトリル(PAN)由来のカーボンファイバーおよび/またはピッチ由来のカーボンファイバーであり、一方、ガラスまたはセラミックファイバーは、アルミナ、ジルコニアまたは炭化ケイ素からなる。
【0167】
[00160]好ましい態様によると、繊維質塊は、カーボンファイバー、PANまたはピッチのみからなる。
【0168】
[00161]好ましくは、繊維質塊は、織物または不織布の1つ以上の層を形成する連続繊維からなる。
【0169】
[00162]あるいは、繊維質塊は、前述の高分子結合剤組成物によって形成されたマトリックス中に分散したチョップ繊維からなり得る。
【0170】
[00163]有利には、製品が作製された繊維強化複合材料の固体結合高分子マトリックスは、粉末の形態の断熱性不活性フィラー含み得る。このフィラーの存在は、材料の熱伝導率を低減するように機能し、その断熱性を向上させる。
【0171】
[00164]製品が作製された繊維強化複合材料中の断熱性フィラーの存在は、製品が、熱もしくは耐炎性バリアまたは高温で作用する必要がある構造機能を有する構成成分である場合、好ましい。
【0172】
[00165]好ましくは、粉末の形態の不活性断熱性フィラーは、酸化物、シリケートおよびホスフェートまたはそれらの組合せからなる群から選択される。
【0173】
[00166]有利には、熱間成形は、好ましくは、40bar以上の圧力および300℃以上の温度で150分以上の時間にわたって実施される圧縮成形によって達成される。
【0174】
* * *
[00167]本発明の別の対象は、前述の製品を作製するための方法である。
【0175】
[00168]一般的な態様によると、前記方法は、以下の操作工程:
- 本発明による、特に上で記載されている通りの高分子結合剤組成物を含む含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)を配置する工程;および
- 前記予備含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)を成形して、高分子結合剤組成物を硬化させて、前記製品を得る工程
を含む。
【0176】
[00169]成形は、高分子結合剤組成物の前記1種以上の樹脂の硬化、したがって、含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)の繊維質塊の隙間を満たす固体結合高分子マトリックスの形成につながり、これは、含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)の高分子結合剤組成物の前述の1種以上の樹脂の完全硬化によって誘導された架橋後、互いに架橋したポリシロキサンおよび/またはポリシルセスキオキサンをベースとする。
【0177】
[00170]好ましくは、高分子結合剤組成物は、含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)の25重量%~60重量%を構成し、一方、繊維質塊は、含浸繊維強化複合材料(プリプレグ)の40重量%~75重量%を構成する。
【0178】
[00171]有利には、成形は、好ましくは、40bar以上の圧力および200℃以上の温度で60~150分の時間にわたって実施される圧縮成形によって熱間で達成される。
【0179】
[00172]あるいは、成形は、真空バギングおよび後続の硬化熱処理によって達成される。
【0180】
[00173]好ましくは、前述の真空バギングは、2~14barの圧力および150~300℃の温度で1~6時間の時間にわたって実施され、その後、250℃~300℃の温度で1~3時間の時間にわたる後硬化サイクルが続いてもよい。なおより好ましくは、真空バギングによる成形は250℃~300℃の温度で1~10時間の時間にわたって実施される。
【0181】
[00174]本発明に使用される高分子結合剤組成物は、本発明による予備含浸繊維強化複合材料と関連して上で既に記載されている。記載を簡潔にするために、これらの特徴を再度繰り返すことはしないが、それらは、製品を作製するための方法も指すことが理解される。
【0182】
適用例
[00175]上で述べられている通り、本発明による予備含浸繊維強化複合材料は、中温(400℃以下)で作用することが意図される高分子結合剤組成物、たとえば、熱バリアまたは耐炎性バリアまたは400℃以下の温度で作用することが意図された構造部分の成形および完全硬化による製造のための基本材料としての特定の用途が見出される。
【0183】
[00176]有機樹脂(たとえば、エポキシド樹脂、フェノール樹脂またはビニルエステルもしくはシアネートエステルをベースとする樹脂)を含有しない、または少なくともそれらのみを含有することはない本発明による予備含浸繊維強化複合材料は、高分子結合剤組成物の完全架橋後に、酸化雰囲気中と不活性雰囲気中の両方で、有機樹脂を含浸された伝統的なプリプレグから得られた材料と比較してかなり高い熱安定性を有し、400℃の温度以下で4時間以上の時間にわたって作用できる複合材料をもたらし得ることを、実験により証明することが可能であった。本発明によるプリプレグを用いて得られた複合材料は、400℃の温度以下で24時間以上の時間にわたって作用できることを証明することが可能であった。
【0184】
[00177]有機樹脂を含まない、高分子結合剤組成物の2種の異なる配合物を含浸されたプリプレグ(本発明による)から開始して、本発明による繊維強化複合材料を試験した。2種の配合物は、一方の配合物がピッチ由来のカーボンファイバーで作製されており、もう一方の配合物がポリアクリロニトリル(PAN)由来のカーボンファイバーで作製されている点で本質的に異なる。
【0185】
[00178]両方の配合物において、同じ樹脂を使用し、樹脂と繊維との体積比を一定に維持するように重量比を変化させた。異なる種類の繊維は異なる密度を有することから、これが必要になる。
【0186】
[00179]2種の配合物は、上の表2に示される2種の配合物に対応する。
【0187】
[00180]高分子結合剤組成物として、2種のシロキサン樹脂の混合物を使用したが、そのうち1種は周囲温度で固体のものであり、1種は周囲温度で液体のものである。固体樹脂と液体樹脂との重量比は、100/30~100/50である。
【0188】
[00181]使用した固体樹脂は、樹脂RSN-0217(Dow Corningにより販売されている)であった;これは、およそ80℃の融点を有する、周囲温度で固体のフェニルシロキサン樹脂である。
【0189】
[00182]使用した液体樹脂は、樹脂Silres(登録商標)MSE100(Wacker Chemieによって販売されている)であった;これは、周囲温度でおよそ25~40mPasの低粘度を特徴とする、周囲温度で液体のメチルメトキシシロキサン樹脂である。
【0190】
[00183]固体樹脂は液体樹脂に可溶であり、それぞれ100/30および100/50の固体と液体との重量比を有する溶液が、プリプレグの製造のために最適な特性を有する。特に、混合物は、周囲温度で半固体および粘着性の外見を有する一方、50~70℃の範囲では、織物に含浸するのに理想的な特徴である非常に粘性の液体として(Brookfield粘度計を用いて測定して55000~10000mPas)現れる。
【0191】
[00184]一方向ラミネートの形態、すなわち、一方向に沿ってのみ配向された繊維からなるカーボンファイバーを使用した。
【0192】
[00185]繊維(ピッチまたはPAN繊維)のラミネートに、70~75℃の温度で高分子結合剤組成物を含浸した。
【0193】
[00186]次いで、こうして得られた含浸ラミネート(プリプレグ)を、成形にかけ、樹脂の硬化(架橋)を誘導し、後続の処理は行わず(「硬化されたまま」の複合体)、本発明による繊維強化複合材料を得た。
【0194】
[00187]特に、圧縮成形によって熱間成形を実施した。2つの異なる圧力:51barおよび26barで試験を行った。300℃で150分の最短時間にわたって成形を実施して、高分子結合剤組成物の完全架橋を得、以下で「硬化されたまま」の複合体として示される、高分子マトリックスを有する完全架橋繊維強化複合材料を得た。後硬化工程は実施しなかった。
【0195】
* * *
[00188]後続の処理を行わず(「硬化されたまま」の複合体)、樹脂の成形および完全架橋後に得られた繊維強化複合材料のいくつかの試料を、ASTM C-1341規格に従って3点曲げ試験を行って特徴付けた。
【0196】
[00189]表4は、51barの圧力での圧縮成形によって得られた完全架橋されたPAN繊維の一方向ラミネートを用いて得られた繊維強化複合材料の試料のいくつかの機械特性の値を示している。0°の配向、すなわち、試験片の長手方向に平行な繊維を有する試料を試験して、ASTM C-1341規格に従う3点曲げ試験により特徴付けを行った。
【0197】
【表6】
【0198】
[00190]表5は、26barの圧力での圧縮成形によって得られた完全架橋されたピッチ繊維の一方向ラミネートを用いて得られた繊維強化複合材料の試料のいくつかの機械特性の値を示している。0°配向の繊維を有する試料を試験して、ASTM C-1341規格に従う3点曲げ試験により特徴付けを行った。400℃の酸化雰囲気中に1時間にわたって曝露した後の複合体についても試験を行った。
【0199】
【表7】
【0200】
[00191]データは、400℃での曝露では、機械特性がわずかに減退するだけであることを示しており、これは、多くの用途で十分許容可能であり得る。試料はまた、この熱処理後、およそ1%の重量損失を示した。
【0201】
[00192]「硬化されたまま」の複合体をまた、ASTM E-1131規格に従って行われる、不活性雰囲気中での熱重量分析(TGA)にかけた。試料は、熱処理後、およそ1%の重量損失を示した。測定により、複合体の優れた熱安定性が強調され、これは、図1に示される通り、不活性雰囲気中で、400℃まで実質的に重量損失を示さなかった。
【0202】
[00193]「硬化されたままの複合体」をまた、動的機械分析(DMA)測定にかけた;この技術により、温度の関数として材料の弾性率の傾向を予測することが可能になる。図2に示されるグラフは、0°で配向された一方向PAN繊維を用いて得られた複合体に対して行った測定を例示している。グラフは、複合体が、周囲温度で中~高弾性率E’(およそ50GPa)を示し、100℃~180℃ではおよそ40GPaにわずかに下降することを示している。180℃~400℃の温度範囲では、複合体は、およそ40GPaの安定した弾性率を有する。この試験は、「硬化されたまま」の複合体が、400℃まで優れた剛性を保持することを実証している。
【0203】
[00194]試験により、成形および完全硬化後(「硬化されたまま」の複合体)の本発明による予備含浸繊維強化複合材料が、400℃の温度以下で作用することが意図された構成成分の製造につながり得ることが確認された。典型的な用途は、熱もしくは耐炎性バリア用構成成分または高温で作用する必要のある構造機能を有する構成成分の製造である。
【0204】
[00195]表4に示される特性を有するプリプレグから得たが、真空バギングによる成形およびオートクレーブ中6barの圧力および180℃の温度で4時間の時間にわたって温度を2℃/分の勾配で増加させる後続の処理にかけた、「硬化されたまま」の繊維強化複合材料もまた試験した。次いで、後硬化サイクルを、300℃で1時間の時間にわたって、2℃/分の昇温勾配で実施した。
【0205】
[00196]こうして得られた本発明による「硬化されたまま」の繊維強化複合材料を、(ASTM-D790規格に従う)温度で実施される3点曲げ試験により特徴付けた。
【0206】
[00197]285℃の温度で、「硬化されたまま」の繊維強化複合材料は、(134.6+/-20.1)MPaの極限引っ張り応力および(20.5+/-8.8)GPaの弾性率を有した。
【0207】
[00198]試験によりまた、真空バギングによる成形およびオートクレーブ中での後続処理により、得られた「硬化されたまま」の繊維強化複合材料は、圧縮成形による熱間成形により得られた機械特性には劣るものの、良好な機械特性を有することが確認された。材料は、良好な熱安定性も示した。
【0208】
* * *
[00199]有機樹脂も含む、高分子結合剤組成物の配合物を含浸されたプリプレグ(本発明による)から開始して得られた本発明による繊維強化複合材料もまた試験した。特に、配合物は、ポリアクリロニトリル(PAN)由来のカーボンファイバーで作製されたものであった。配合物は、上の表3に示されるものに対応する。
【0209】
[00200]使用した高分子結合剤組成物は、上で記載されている例で使用した2種のシロキサン樹脂の混合物と同じであるが、Bakelite Companyによって製造販売されているNorsophen(登録商標)1203フェノール樹脂を添加した。
【0210】
[00201]操作性の観点から、先行する例の通りの手順に従った。特に、一方向ラミネートの形態、すなわち、一方向に沿ってのみ配向された繊維からなるカーボンファイバーを使用した。
【0211】
[00202]次いで、こうして得られた含浸ラミネート(プリプレグ)を、成形にかけ、樹脂の硬化(架橋)を誘導し、後続の処理は行わず(「硬化されたまま」の複合体)、本発明による繊維強化複合材料を得た。
【0212】
[00203]特に、先行する例と同様に、圧縮成形によって熱間成形を実施し、以下で「硬化されたまま」として示される、高分子マトリックスを有する完全架橋繊維強化複合材料を得た。後硬化工程は実施しなかった。
【0213】
[00204]後続の処理を行わず(「硬化されたまま」の複合体)、樹脂の成形および完全架橋後に得られた繊維強化複合材料のいくつかの試料を、ASTM C-1341規格に従って3点曲げ試験を行って特徴付けた。
【0214】
[00205]表6は、51barの圧力での圧縮成形によって得られた完全架橋されたPAN繊維の一方向ラミネートを用いて得られた繊維強化複合材料の試料のいくつかの機械特性の値を示している。0°の配向、すなわち、試験片の長手方向に平行な繊維を有する試料を試験して、ASTM C-1341規格に従う3点曲げ試験により特徴付けを行った。
【0215】
【表8】
【0216】
[00206]有機樹脂も含有する、本発明によるプリプレグから開始して得られた材料は、本発明によるが、有機樹脂を含まないプリプレグから開始して得られた材料に匹敵する機械特性を示した。
【0217】
* * *
[00207]本発明によるプリプレグから開始して得られた複合体の特徴に著しく影響を及ぼす側面は、特に、樹脂/ポリマーの完全架橋をもたらす成形技術である。
【0218】
[00208]2つの成形技術:
- 圧縮成形
- 真空バギング後、オートクレーブ中で硬化
を評価した。
【0219】
[00209]異なる成形技術は、典型的には、異なる圧力で働く。より圧力が高いほど、より高い密度の複合体、したがって、優れた機械特性を得ることが可能になる。
【0220】
[00210]圧縮成形の場合、20~およそ80~100barの圧力;真空バギング(オートクレーブでの硬化が続く)の場合、2~14barのオーダーの圧力を適用することができる。
【0221】
[00211]本発明による「硬化されたまま」のプリプレグを使用する場合、成形手順が特に重要であるが、これは、成形手順が、こうして得られた複合体の最終密度に影響を及ぼすからである。圧縮成形による成形の場合、「硬化されたまま」の最終複合体の密度は、成形圧力が増加するにつれて増加する。
【0222】
[00212]図3のグラフは、「硬化されたまま」の複合体の密度を、圧縮成形によって形成されたPAN繊維をベースとするプリプレグの場合の成形圧力の関数として示している。およそ50barを超えると、複合体の最高密度化、したがって、最適な機械特性が得られる。
【0223】
[00213]圧縮成形は、
- 優れた機械特性を有する複合体を形成すること;
- 平坦で単純な形状を有する断片を作製すること;
- より迅速なプロセス時間
に適すると言うことができる。
【0224】
[00214]逆に真空バギングは、複雑な形状を有する断片を形成するのにより適する。
【0225】
[00215]本発明によるプリプレグが「硬化されたまま」適用される必要がある場合、成形密度を最大にすることが重要である。
【0226】
* * *
[00216]したがって、こうして想到した本発明は、事前に設定した目的を達成する。
【0227】
[00217]明らかに、その実際の態様において、本発明はまた、本発明の保護の範囲から逸脱することなく、上で例示したものとは異なる形状および構成を想定してもよい。
【0228】
[00218]さらに、必要に応じて、すべての詳細は、技術的に等価な要素で置きかえられてもよく、使用される寸法、形状および材料は任意のものであってもよい。
以下に、本発明の実施態様を付記する。

1. 繊維塊に高分子結合剤組成物を含浸することによって得られ、繊維強化複合材料を得るために後続の成形および完全硬化操作にかけられることが意図される、層状の予備含浸繊維強化複合材料であって、前記高分子結合剤組成物が、シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂をベースとし、任意に、1種以上の有機樹脂を含んでもよく、前記シロキサン樹脂が、ポリシロキサンを含み、前記シルセスキオキサン樹脂がポリシルセスキオキサンを含むこと、ならびに前記高分子結合剤組成物が、50℃~70℃の温度で55000~10000mPasの粘度を有する液体として現れることを特徴とし、前記高分子結合剤組成物が、前記繊維質塊の隙間を満たす、架橋していないまたは部分的にのみ架橋した高分子結合剤マトリックスを形成する、予備含浸繊維強化複合材料。
2. 前記高分子結合剤組成物が、およそ60℃の温度以下では擬塑性液体として現れ、この温度を超えるとニュートン挙動を示す傾向があり、50℃で1秒 -1 の剪断速度を適用しておよそ55000mPas~剪断速度に関わらず70℃でおよそ10000mPasの粘度を有する、1に記載の材料。
3. 前記高分子結合剤組成物が、シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される樹脂のみを含み、有機樹脂を含まない、1または2に記載の材料。
4. 前記高分子結合剤組成物が、前記予備含浸繊維強化複合材料の25重量%~60重量%を構成し、前記繊維質塊が、前記予備含浸繊維強化複合材料の40重量%~75重量%を構成する、1または2または3に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
5. 前記高分子結合剤組成物が、
- シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される、40℃~90℃の融点範囲を有する、室温で固体の少なくとも1種の樹脂;ならびに
- シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される、室温で1mPas~5000mPasの粘度を有する、室温で液体の少なくとも1種の樹脂;の混合物を含み、
室温で固体の樹脂と室温で液体の樹脂との重量比が、100/30~100/50である、1、2、3または4に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
6. 前記室温で固体の樹脂が、フェニルシロキサン、メチルシロキサン、フェニルメチルシルセスキオキサン、メチルシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択され、前記室温で液体の樹脂が、メチルメトキシシロキサンおよびメチルフェニルビニルシロキサン樹脂からなる群から選択される、4に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
7. 前記高分子結合剤組成物が、
- シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される、室温で1mPas~5000mPasの粘度を有する、室温で液体の単一の樹脂;ならびに
- 粉末の不活性フィラー
の混合物を含み、
不活性フィラーと室温で液体のポリマーとの体積比が10/100~40/100である、1、2、3または4に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
8. 前記高分子結合剤組成物が、ポリシロキサンおよびポリシルセスキオキサンを可溶化することができる化合物から選択される少なくとも1種の溶媒をさらに含み、好ましくは、前記溶媒がジビニルベンゼンである、1~7の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
9. 前記溶媒が、ビニル化合物のクラスから選択される、8に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
10. 前記高分子結合剤組成物が、アセトフェノン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルスチレン、2-tert-ブチルフェノール、2-6-ジ-tert-ブチルフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノールからなる群から選択される少なくとも1種の安定剤をさらに含む、1~9の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
11. 前記少なくとも1種の溶媒および/または少なくとも1種の安定剤が、単独でまたは一緒に混合して、前記予備含浸繊維強化複合材料の1重量%未満、好ましくは前記予備含浸繊維強化複合材料の0.2重量%~1重量%を構成する、8~10の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
12. 前記高分子結合剤組成物が、100℃よりも高い温度で前記高分子組成物のポリマーの架橋を促進するのに好適な少なくとも1種の触媒をさらに含み、好ましくは、前記触媒が、チタネート、金属オクトエートおよびアミンからなる群から選択され、さらにより好ましくは、前記触媒が、チタンテトラブタノレート、亜鉛オクトエートおよびN-3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミンからなる群から選択され、好ましくは、前記触媒が、前記予備含浸繊維強化複合材料の高分子マトリックスの1重量%未満を構成する、1~11の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
13. 前記高分子結合剤組成物が、好ましくは、酸化物、シリケートおよびホスフェートまたはそれらの組合せからなる群から選択される断熱性不活性フィラーをさらに含み、好ましくは、前記断熱性不活性フィラーが、前記予備含浸繊維強化複合材料の1体積%~30体積%を構成する、1~12の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
14. 前記繊維質塊が、カーボンファイバー、ガラスファイバー、セラミックファイバーまたはそれらの混合物からなる群から選択される繊維からなり、好ましくは、前記カーボンファイバーがポリアクリロニトリル(PAN)由来のカーボンファイバーおよび/またはピッチ由来のカーボンファイバーであり、前記ガラスまたはセラミックファイバーが、好ましくはシリカ、アルミナ、ジルコニアまたは炭化ケイ素からなる、1~13の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
15. 前記繊維質塊が、織物または不織布の1つ以上の層を形成する連続繊維からなる、1~14の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
16. 前記繊維質塊が、前記高分子結合剤組成物によって形成されたマトリックス中に分散したチョップドファイバーからなる、1~14の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料。
17. 繊維強化複合材料を作製するために後続の成形および完全硬化操作にかけられることが意図される予備含浸繊維強化複合材料を作製するための方法であって、以下の操作工程: - 繊維質塊を層状に配置する工程;
- 高分子結合剤組成物を配置する工程;
- 前記繊維質塊に前記高分子結合剤組成物を含浸して予備含浸繊維強化複合材料を得る工程
を含み、
前記高分子結合剤組成物が、シロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂をベースとし、任意に、1種以上の有機樹脂を含んでもよく、前記シロキサン樹脂が、ポリシロキサンを含み、前記シルセスキオキサン樹脂がポリシルセスキオキサンを含むこと、ならびに前記高分子結合剤組成物が、50℃~70℃の温度で55000~10000mPasの粘度を有する液体として現れることを特徴とし、前記含浸工程後に、前記高分子結合剤組成物が、前記繊維質塊の隙間を満たす、架橋していないまたは部分的にのみ架橋した高分子結合剤マトリックスを形成する、方法。
18. 前記高分子結合剤組成物が、およそ60℃の温度以下では擬塑性液体として現れ、この温度を超えるとニュートン挙動を示す傾向があり、50℃で1秒-1の剪断速度を適用しておよそ55000mPas~剪断速度に関わらず70℃でおよそ10000mPasの粘度を有する、17に記載の方法。
19. 前記高分子結合剤組成物が、ポリシロキサンおよびポリシルセスキオキサンを可溶化することができる化合物の中から選択される少なくとも1種の溶媒をさらに含み、前記溶媒が、好ましくは、ジビニルベンゼンである、17または18に記載の方法。
20. 前記溶媒が、ビニル化合物のキャストから選択される、19に記載の方法。
21. 前記高分子結合剤組成物が、アセトフェノン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルスチレン、2-tert-ブチルフェノール、2-6-ジ-tert-ブチルフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノールからなる群から選択される少なくとも1種の安定剤をさらに含む、17~20の何れか1項に記載の方法。
22. 前記少なくとも1種の溶媒および/または少なくとも1種の安定剤が、単独でまたは一緒に混合して、前記予備含浸繊維強化複合材料の1重量%未満、好ましくは前記予備含浸繊維強化複合材料の0.2重量%~1重量%を構成する、19~21の何れか1項に記載の方法。
23. 1~16の何れか1項に記載の予備含浸繊維強化複合材料の熱間成形および完全硬化によって得られた製品であって、前記製品が前記予備含浸繊維強化複合材料の繊維質塊の隙間を満たす固体高分子結合剤マトリックスを含み、前記予備含浸繊維強化複合材料の高分子結合剤組成物の前記1種以上の樹脂の完全硬化によって誘導される架橋に起因して互いに架橋したポリシロキサンおよび/またはポリシルセスキオキサンをベースとする繊維強化複合材料からなる、製品。
24. 前記固体高分子結合剤マトリックスが、前記繊維強化複合材料の25重量%~60重量%を構成し、前記繊維質塊が、前記繊維強化複合材料の40重量%~75重量%を構成する、23に記載の製品。
25. 前記固体高分子結合剤マトリックスが、好ましくは、酸化物、シリケートおよびホスフェートまたはそれらの組合せからなる群から選択される、粉末形態の断熱性不活性フィラーを含む、23または24に記載の製品。
26. 前記成形が、好ましくは、40bar以上の圧力および200℃以上の温度で60~150分の時間にわたって実施される、圧縮成形技術によって熱間で得られる、23~25の何れか1項に記載の製品。
27. 前記成形が、真空バギングおよび後続の硬化の熱処理によって実施され、好ましくは、前記真空バギングが、2~14barの圧力および180℃~300℃の温度で1~6時間の時間にわたって実施される、23~25の何れか1項に記載の製品。
28. 熱もしくは炎バリアである、または400℃以下の温度で作用することが意図される構造構成成分であることを特徴とする、23~27の何れか1項に記載の製品。
29. 23~28の何れか1項に記載の製品を作製するための方法であって、以下の操作工程:
- 1~16の何れか1項に記載の高分子結合剤組成物を含む予備含浸繊維強化複合材料を配置する工程;および
- 前記予備含浸繊維強化複合材料を成形して、前記高分子結合剤組成物を硬化させて、前記製品を得る工程
を含み、
前記成形工程が、前記高分子結合剤組成物の前記1種以上の樹脂の硬化、したがって、前記予備含浸繊維強化複合材料の繊維質塊の隙間を満たし、前記高分子結合剤組成物の前記1種以上の樹脂の完全硬化によって誘導される架橋に起因して互いに架橋したポリシロキサンおよび/またはポリシルセスキオキサンをベースとする固体高分子結合剤マトリックスの形成につながることを特徴とする、方法。
30. 前記成形工程が、好ましくは、40bar以上の圧力および200℃以上の温度で60~150分の時間にわたって実施される圧縮成形技術によって熱間で実施される、29に記載の方法。
31. 前記成形工程が、真空バギングおよび後続の硬化の熱処理によって実施され、好ましくは、前記真空バギングが、2~14barの圧力および180℃~300℃の温度で1~6時間の時間にわたって実施される、29に記載の方法。
図1
図2
図3