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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】電子回覧システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/10 20230101AFI20241011BHJP
【FI】
G06Q10/10 310
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020062430
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163034
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150430
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 元
(74)【代理人】
【識別番号】100217191
【弁理士】
【氏名又は名称】林 信吾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 旭
(72)【発明者】
【氏名】酒巻 博治
【審査官】藤原 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-129065(JP,A)
【文献】特開2019-040327(JP,A)
【文献】特開2002-132688(JP,A)
【文献】特開平08-241355(JP,A)
【文献】特開平09-191319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが使用する端末からネットワークを介して接続可能なデータ処理装置を備え、前記データ処理装置が、前記端末からの指示に基づいてユーザの印影データを回覧対象データに付加し、その回覧対象データを回覧先にネットワークを介して回覧する処理を行うように構成された電子回覧システムであって、
前記データ処理装置が、
回覧対象データの回覧先を示す回覧先情報の入力を自データ処理装置に接続された端末から受け付ける入力受付手段と、
前記入力受付手段により受け付けられた回覧先情報に基づき特定される次の回覧先に印影データが付加された回覧対象データを回覧する際、当該次の回覧先に係る回覧先情報が、自データ処理装置へのアクセス権を持つユーザに対応する情報であるか否かを判定する次回覧先判定を行う判定手段と、
前記判定手段による前記次回覧先判定の結果、前記次の回覧先に係る回覧先情報が自データ処理装置へのアクセス権を持つユーザに対応する情報であると判定された場合に、印影データが付加された回覧対象データを、自データ処理装置へのアクセス権を持つユーザ宛に送信する回覧対象データ送信手段と、
前記判定手段による前記次回覧先判定の結果、前記次の回覧先に係る回覧先情報が自データ処理装置へのアクセス権を持つユーザに対応する情報でないと判定された場合に、印影データが付加された回覧対象データを複製した複製データを生成する複製データ生成手段と、
前記複製データ生成手段により生成された複製データを、自データ処理装置へのアクセス権を持たない他のユーザが使用する端末からネットワークを介して接続可能な他のデータ処理装置に送信する複製データ送信手段と、を備える
ことを特徴とする電子回覧システム。
【請求項2】
前記データ処理装置が、自データ処理装置へのアクセス権を持つユーザの情報を管理するユーザ情報管理手段を備え、
前記判定手段は、前記ユーザ情報管理手段で管理されている情報を基に前記次回覧判定を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の電子回覧システム。
【請求項3】
ユーザが使用する端末からネットワークを介して接続可能なデータ処理装置を備え、前記データ処理装置が、前記端末からの指示に基づいてユーザの印影データを回覧対象データに付加し、その回覧対象データを回覧先にネットワークを介して回覧する処理を行うように構成された電子回覧システムに用いられるプログラムであって、
前記データ処理装置として機能するコンピュータを、請求項1又は2に記載の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印影データが付加された回覧対象データを回覧先にネットワークを介して回覧する電子回覧システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの印影イメージデータ(電子印鑑)をサーバで管理し、そのサーバにネットワークを介して接続される端末の画面上で、ユーザ(端末)からの要求に応じてそのユーザの印影イメージデータを電子文書に添付(捺印)できるように構成された電子印鑑システムが知られている(例えば特許文献1を参照)。最近では、クラウド型のシステムとして提供される電子印鑑システムも登場しており、電子印鑑を利用して電子文書の回覧、承認、決裁等(以下、単に「回覧等」という。)を行うシステムが普及しつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-169051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の電子印鑑を利用した電子文書の回覧等のシステムを複数の企業等が導入することで、企業等の間で電子文書の回覧等を行うことが考えられる。しかしながら、そうしたシステムの利用は、通常、セキュリティ等の観点から、そのシステムへのアクセス権を持つユーザに限られる。このため、例えば、自企業等のシステムへのアクセス権を持たない他企業等のユーザに対して承認や決裁等を要求しても、他企業等のユーザはそのシステム上で承認や決裁等を行うことができず、処理が滞ってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、企業等の間で電子文書等のデータの回覧等を円滑に行うことができる電子回覧システム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0007】
手段1の電子回覧システムは、
ユーザが使用する端末からネットワークを介して接続可能なデータ処理装置を備え、前記データ処理装置が、前記端末からの指示に基づいてユーザの印影データを回覧対象データに付加し、その回覧対象データを回覧先にネットワークを介して回覧する処理を行うように構成された電子回覧システムであって、
前記データ処理装置が、
回覧対象データの回覧先を示す回覧先情報の入力を自データ処理装置に接続された端末から受け付ける入力受付手段と、
前記入力受付手段により受け付けられた回覧先情報に基づき特定される次の回覧先に印影データが付加された回覧対象データを回覧する際、当該次の回覧先に係る回覧先情報が、自データ処理装置へのアクセス権を持つユーザに対応する情報であるか否かを判定する次回覧先判定を行う判定手段と、
前記判定手段による前記次回覧先判定の結果、前記次の回覧先に係る回覧先情報が自データ処理装置へのアクセス権を持つユーザに対応する情報であると判定された場合に、印影データが付加された回覧対象データを、自データ処理装置へのアクセス権を持つユーザ宛に送信する回覧対象データ送信手段と、
前記判定手段による前記次回覧先判定の結果、前記次の回覧先に係る回覧先情報が自データ処理装置へのアクセス権を持つユーザに対応する情報でないと判定された場合に、印影データが付加された回覧対象データを複製した複製データを生成する複製データ生成手段と、
前記複製データ生成手段により生成された複製データを、自データ処理装置へのアクセス権を持たない他のユーザが使用する端末からネットワークを介して接続可能な他のデータ処理装置に送信する複製データ送信手段と、を備える
ことを要旨とする。
【0008】
これによれば、本システムのデータ処理装置(自データ処理装置)を起点として、自データ処理装置で回覧対象データを保持しつつ、自データ処理装置へのアクセス権を持たない他のユーザが使用する端末(他のデータ処理装置側)で複製データ(回覧対象データ)の閲覧等を行えるようにすることができる。複製データの生成及び送信を必要に応じて行うようにして、システムの効率化を図ることができる。また、次回覧先判定の結果、次の回覧先に係る回覧先情報が自データ処理装置へのアクセス権を持つユーザに対応する情報でないと判定された場合に、印影データが付加された回覧対象データを複製した複製データを生成し、その複製データを自データ処理装置へのアクセス権を持たない他のユーザが使用する端末からネットワークを介して接続可能な他のデータ処理装置に送信することで、複製データの生成及び送信を必要に応じて行うようにして、システムの効率化を図ることができる。
【0009】
手段2の電子回覧システムは、手段1の電子回覧システムにおいて、
前記データ処理装置が、自データ処理装置へのアクセス権を持つユーザの情報を管理するユーザ情報管理手段を備え、
前記判定手段は、前記ユーザ情報管理手段で管理されている情報を基に前記次回覧判定を行う
ことを要旨とする。
【0010】
これによれば、ユーザ情報管理手段で管理されている自データ処理装置へのアクセス権を持つユーザの情報を基に次回覧先判定を行うようにすることで、システムの利便性を向上させることができる。
【0017】
また、手段のプログラムは、上記電子回覧システムに用いられるプログラムであって、前記データ処理装置として機能するコンピュータを、手段1又は2における各手段として機能させるためのプログラムである
ことを要旨とする。
【0018】
このプログラムがコンピュータにより実行されることにより、本発明の電子回覧システムが実現される。
【発明の効果】
【0019】
以上の本発明によれば、企業等の間で電子文書等のデータの回覧等を円滑に行うことができる電子回覧システム及びプログラムの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本形態に係るシステムの構成図である。
図2】サーバを構成する処理部の機能ブロック図である。
図3】ワークフロー処理のフローチャートである。
図4】回覧開始処理のフローチャートである。
図5】受信閲覧処理のフローチャートである。
図6】送信閲覧処理のフローチャートである。
図7】回覧処理のフローチャートである。
図8】他サーバ関連処理のフローチャートである。
図9】(A)はシステム画面の一例を示す図であり、(B)は一覧画面の一例を示す図であり、(C)は選択画面の一例を示す図である。
図10】(A)アップロードした回覧対象データの表示例を示す図であり、(B)は受信回覧対象データの表示例を示す図であり、(C)は送信回覧対象データの表示例を示す図である。
図11】本形態に係るシステムによる文書の回覧の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0022】
[システムの構成]
本形態のシステム10は、図1に示すように、インターネットなどのネットワーク20を介して、ユーザが使用する端末30A,30Bとサーバ40とが相互に通信可能に接続されて構成される。このシステム10は、サーバ40に接続された端末からの指示に基づいて、電子文書等のデータ(「回覧対象データ」ともいう。)に印影データを付加したりその回覧対象データを回覧したりする処理をサーバ40側で実行するものであり、「電子回覧システム」の一例である。
【0023】
本システム10(電子回覧システム)は、サーバ40へのアクセス権が付与(設定)されたユーザが利用可能とされる。すなわち、サーバ40へのアクセス権を持つユーザが端末を使用してサーバ40に接続(ログイン)することにより、本システム10を利用することができるようになっている。この点については後述する。
【0024】
また、本システム10は、サーバ40へのアクセス権を持たないユーザ(「他のユーザ」ともいう。)を回覧先として、回覧対象データを回覧することができるように構成されている。他のユーザは、回覧対象データに印影データを付加してその回覧対象データを回覧する処理を本システム10と同様にサーバ側で実行する「他のシステム」のユーザであり、当該他のシステムを構成するサーバ(「他のサーバ」ともいう。)へのアクセス権を持つユーザである。これに関連して、本形態では、他のサーバへのアクセス権(他のユーザのアクセス権)に関する情報、具体的には、他のユーザのメールアドレスやユーザID、パスワード等を示す情報を管理する外部サーバ50が設けられている。外部サーバ50は、サーバ40からネットワーク20を介して接続可能に設けられるものであり、本システム10に係るシステム提供事業者の管理下に置かれるものである。この外部サーバ50は、オンプレミス型のサーバであってもよいし、クラウド型のサーバであってもよい。また外部サーバ50は、複数存在していてもよいし、いわゆる仮想化されたサーバであってもよい。他のユーザを回覧先とした回覧対象データの回覧については後述する。
【0025】
なお、サーバ40は「データ処理装置」の一例であり、他のサーバは「他のデータ処理装置」の一例である。
【0026】
[端末の構成]
次に、ユーザが使用する端末について説明する。図1では、ユーザX1が使用する端末30Aと、ユーザX2が使用する端末30Bとの2つの端末がサーバ40に接続される例を示しているが、例えば、ユーザX3が使用する端末や、ユーザX4が使用する端末など、サーバ40に接続される端末の数は問わない。また、サーバ40に接続される端末は、サーバ40へのアクセス権が付与(設定)されたユーザが共用する端末(共用端末)であってもよい。以下では、サーバ40に接続される端末30A,30B等を総じて「ユーザ端末」ともいう。
【0027】
ユーザ端末は、パーソナルコンピュータ(PC)やスマートフォン、タブレットなどの通信端末である。図1に示すように、端末30A(ユーザ端末)は、処理部310、記憶部320、通信部330、表示部340、操作部350を備えている。この構成(ハードウェア構成)は、ユーザ端末として用いられる通信端末が備える一般的な構成であり、端末30Bについても同様である。したがって、図1では端末30Bに係る構成の図示を省略している。
【0028】
処理部310は、端末30Aの作動を制御するための各種処理を実行するものであり、CPU(Central Processing Unit)等により構成される。記憶部320は、端末30Aを作動させるOS(Operating System)や各種アプリケーションのプログラム、その他端末30Aの作動に必要なデータが記憶されるものであり、不揮発性メモリであるROM(Read Only Memory)、揮発性メモリであるRAM(Random Access Memory)、補助記憶装置であるハードディスクドライブ(HDD)等により構成される。アプリケーション(アプリケーションソフト)には、メールの送受信を行うためのメーラー(メールソフト)や、Webページを閲覧するためのWebブラウザ(Web閲覧ソフト)が含まれる。
【0029】
通信部330は、ネットワーク20を介して、サーバ40やその他外部装置とデータ通信を行う。表示部340は、各種の情報を表示するものであり、液晶ディスプレイ等により構成される。操作部350は、ユーザが各種の指示入力を行うために操作されるものであり、キーボードやマウス等により構成される。なお、表示部340は、表示機能(出力機能)と入力機能とを兼ね備えたタッチパネルであってもよい。この場合、表示部340に表示されるボタンやアイコン、キーボード等が操作部350として機能する。
【0030】
[サーバ40の構成]
次に、サーバ40について説明する。サーバ40は、クラウド型のサーバ(クラウドサーバ)により構成されるものであり、本サーバ40にネットワーク20を介して接続されるユーザ端末(本システム10のユーザ)に対し、本システム10のWebサイトや回覧対象データの回覧等に関する様々なサービスを提供する。つまり、本システム10は、ユーザ端末が備えるWebブラウザを用いてサービスを提供するものである。
【0031】
図1に示すように、サーバ40は、処理部410と記憶部420と通信部430と、を備えている。ユーザ端末と同様に、処理部410はCPU等により構成され、記憶部420はROM、RAM、HDD等により構成される。また、通信部430は、ネットワーク20を介して、当該サーバ40に接続されたユーザ端末とデータ通信を行う。
【0032】
なお、サーバ40は、オンプレミス型のサーバであってもよい。またサーバ40は、複数存在していてもよいし、いわゆる仮想化されたサーバであってもよい。
【0033】
サーバ40には、システム提供事業者によって提供される電子回覧システム用のプログラム等がインストールされ、記憶部420に記憶される。具体的には、図1に示すように、本システム10の利用対象者であるユーザの情報を管理するデータベースであるユーザ管理DB421と、ユーザの印影データを記憶する印影ファイル422と、ユーザの印影データを管理するデータベースである印影管理DB423と、ネットワーク20を介して送られたユーザ端末からの指示に基づいてユーザの印影データを回覧対象データに付加したりそれを回覧したりする処理等を行うためのプログラムであるワークフロー(WF)アプリ424と、が記憶される。WFアプリ424は、Webアプリケーションである。処理部410は、記憶部420に記憶されたWFアプリ424を、ユーザ端末からの指示に基づいて起動して実行する。記憶部420には、処理部410がWFアプリ424を実行することで生じる種々のデータが記憶される。
【0034】
[本システム10の利用]
ユーザは自身の使用する端末(ユーザ端末)からサーバ40にログイン(接続)することにより、本システム10の利用が可能となる。ログインの際には、ユーザ端末の操作部350を操作(以下、単に「ユーザ端末を操作」ともいう。)してログイン情報を入力し、認証されれば、サーバ40へのログインが許容される。
【0035】
本システム10の利用にあたっては、ユーザの印影データの作成・登録、ログイン情報(認証情報)の設定(付与)、ログイン情報と印影データとの紐づけ等の事前準備が必要になる。具体的には、例えば、本システム10を企業等が導入する場合、その企業等が利用するサーバへの本システムに係るプログラム等のインストール、その企業等におけるユーザの人数分の印影データの作成・登録、ユーザ毎のログイン情報の設定、ログイン情報と印影データとの紐づけ等が事前準備として必要になる。それらの事前準備は、システム提供事業者により行われるものとすることができる。事前準備には、外部サーバ50への情報登録も含まれる。
【0036】
ログイン情報は、ユーザを識別するための情報であり、例えば、ユーザIDとパスワードである。本形態では、ユーザIDをユーザのメールアドレスとしており、パスワードを所定文字数の英数字と記号の組み合わせとしている。パスワードは、システム提供事業者がデフォルトのパスワードを設定するものであってよいし、ユーザが任意に設定したり変更したりすることができるものであってもよい。こうしたログイン情報が、ユーザ管理DB421に登録されて管理される。ユーザIDは、本システム10によるワークフロー上の宛先を特定する情報でもある。
【0037】
ユーザがユーザ端末を操作してWebブラウザにより本システム10のWebサイト(ホームページ)にアクセスすると、ログイン情報を入力するための入力画面(図示せず)がユーザ端末の表示部40に表示される。その入力画面を通じてログイン情報を入力すると、入力したログイン情報がサーバ40に送られ、そのログイン情報がユーザ管理DB421に予め登録(管理)されていると、サーバ40へのログインが許容されて、WFアプリ424が起動(実行)される。なお、ログイン情報のパスワードは、ユーザが任意に変更することが可能である。
【0038】
印影データは、印影のイメージデータ(画像データ)のことであり、ユーザが実際に使用する印鑑の印影と同じ印影を表すデータである。各ユーザの印影データは、印影ファイル422として記憶される。
【0039】
ログイン情報と印影データとの紐づけは、印影管理DB421の中に作成される各ユーザのログイン情報と印影データとを対応付けたテーブルにより行われる。本システム10(サーバ40)へのログインの際にユーザ端末から入力されたログイン情報を基に印影管理DB421が参照され、そのログイン情報に対応する印影データが特定されると、その特定された印影データが印影ファイル422から読み出され、印影データの使用(回覧対象データへの付加)が可能となる。
【0040】
サーバ40の処理部410は、記憶部420に記憶されたWFアプリ424を実行することで、図2に示すように、捺印手段411、回覧手段412、入力受付手段413、判定手段414、複製データ生成手段415、複製データ送信手段416、回覧対象データ記憶手段417、処理済データ受信手段418及び回覧対象データ更新手段419として機能する。これらの機能により、本システム10によるワークフロー(電子回覧システム)が実現される。
【0041】
[ワークフロー処理]
次に、本システム10によるワークフロー処理について、図3を用いて説明する。前述したようにユーザがユーザ端末を操作してログイン情報を入力し、ネットワーク20を介してサーバ40にログインすると、処理部410はWFアプリ424を起動して、図3に示すワークフロー処理(S100)を実行する。なお、以下の説明で参照する図3図8のフローチャートは、処理部410が行う主要な処理を示している。
【0042】
図3に示すように、ワークフロー処理(S100)ではまず、新たに回覧を開始する旨の指示(「開始指示」ともいう。)が、サーバ40に接続されているユーザ端末から入力されたか否かを判定する(S101)。開始指示の入力は、ユーザ端末を操作して行われるものであり、例えば、WFアプリ424が起動されることでユーザ端末に表示されるシステム画面700(図9(A)を参照)の開始ボタン702を押下(クリック)することにより行われる。なお、S101では、サーバ40にログインする際に入力されたログイン情報に基づき特定されるユーザ(現在ログイン中のユーザ)が、現在行われている回覧の回覧ルートに含まれているメンバ(「回覧メンバ」ともいう。)であるか否かを判定し、回覧メンバでない場合、回覧を新たに開始する段階であると判定するものとしてもよい。
【0043】
ここで、システム画面700は、ユーザ端末が備えるWebブラウザにより表示される画面である。図9(A)に示すように、システム画面700は、画面中央を含めた大半の部分が主表示領域701とされており、その上方に、開始ボタン702、受信一覧ボタン703及び送信一覧ボタン704が表示される。図9(A)は、システム画面700の初期画面(ホーム画面)を示している。なお、本形態で示す各種画面の構成はあくまでも一例であり、これに限定されるものではない。
【0044】
S101にて開始指示が入力されたと判定した場合(S101でYES)、後述の回覧開始処理(S103)を行い、開始指示が入力されていないと判定した場合(S101でNO)、S103の処理を行うことなく、S105に進む。
【0045】
S105では、現在ログイン中のユーザ宛に送られてきた回覧対象データ又は現在ログイン中のユーザがもしくは回送した回覧対象データを確認する旨の指示(「確認指示」ともいう。)がユーザ端末から入力されたか否かを判定する。(S105)。確認指示の入力は、ユーザ端末を操作して行われるものであり、例えば、図9(A)に示すシステム画面700の受信一覧ボタン703又は送信一覧ボタン704をクリックすることにより行われる。
【0046】
S105にて確認指示が入力されていないと判定した場合(S105でNO)、S107~S115の処理を行うことなく、本処理を終える。
【0047】
一方、S105にて確認指示が入力されたと判定した場合(S105でYES)、確認可能な回覧対象データの一覧をユーザ端末に表示する(S107)。この一覧表示は、例えば、図9(B)に示す一覧画面705a又は705bを主表示領域701に表示することにより行われる。確認指示が受信一覧ボタン703による場合、現在ログイン中のユーザ宛に送られてきた回覧対象データの一覧である受信一覧画面705aが表示される。また、確認指示が送信一覧ボタン704による場合、現在ログイン中のユーザが申請又は回送した回覧対象データの一覧である送信一覧画面705bが表示される。ユーザは、ユーザ端末を操作して、確認したい回覧対象データ(回覧文書)を一覧画面705a又は705bの中から選択することができる。なお、回覧対象データの受信履歴や送信履歴がない場合、主表示領域701に一覧画面は表示されるものの、その一覧画面は空欄となる。
【0048】
次いでS109では、S107で表示されたのが受信一覧画面705aであって、その中から回覧対象データ(「受信回覧対象データ」ともいう。)が選択されたか否かを判定する(S109)。その結果、受信回覧対象データが選択されたと判定した場合(S109でYES)、後述の受信閲覧処理(S111)を行い、選択されていないと判定した場合(S109でNO)、S111の処理を行うことなく、S113に進む。
【0049】
S113では、S107で表示されたのが送信一覧画面705bであって、その中から回覧対象データ(「送信回覧対象データ」ともいう。)が選択されたか否かを判定する(S113)。その結果、送信回覧対象データが選択されたと判定した場合(S113でYES)、後述の送信閲覧処理(S115)を行い、選択されていないと判定した場合(S113でNO)、S115の処理を行うことなく、本処理を終える。
【0050】
[回覧開始処理]
次に、ワークフロー処理(S100)の中で実行される回覧開始処理(S103)について、図4を用いて説明する。同図に示すように、回覧開始処理(S103)ではまず、新たに回覧する文書等のデータ(回覧対象データ)を取得する(S201)。前述の開始指示がユーザ端末から入力されると(S101でYES)、処理部410は、回覧対象データ(例えば、文書ファイル)を選択するための選択画面706(図9(C)を参照)をユーザ端末に表示する。選択画面706には、ユーザ端末側で選択可能な文書のファイル名が表示されるようになっており、ユーザは、その選択画面706を通じて、新たに回覧する回覧対象データを選択することができる。選択画面706に表示されるのは、例えば、ユーザ端末の記憶部に記憶(保存)されている文書のファイル名である。選択画面706の中から回覧対象データが選択されると、その選択された回覧対象データがサーバ40に送られ、その回覧対象データを処理部410が取得して、システム画面700の主表示領域701に表示する(S201)。つまり、ユーザ端末からサーバ40に回覧対象データがアップロードされる。
【0051】
ここで、アップロードされた回覧対象データの表示例を図10(A)に示す。同図に示すように、回覧対象データがアップロードされると、システム画面700の主表示領域701には、回覧対象データD1と、回覧先の設定を指示する回覧先ボタン707と、現在ログイン中のユーザ(例えば、ユーザX1)の印影を示す印影アイコン709と、テキスト追加アイコン710と、が表示される。印影アイコン709が示す印影は、印影ファイル422として記憶部420に記憶されているユーザの印影データに基づくものである。
【0052】
次いでS203では、S201で取得(アップロード)した回覧対象データに対して印影データを付加する旨の指示(「捺印指示」ともいう。)が、ユーザ端末から入力されたか否かを判定する(S203)。捺印指示の入力は、ユーザ端末を操作して行われるものであり、例えば、図10(A)に示すように、主表示領域701に表示されている回覧対象データD1のうち、印影データを付加したい場所(捺印位置)に印影アイコン709をドラッグ&ドロップし、その捺印位置で印影アイコン709をクリックすることにより行われる。また、主表示領域701に表示されているテキスト追加アイコン710をクリックすることで、回覧対象データD1上の任意の場所にテキスト(コメント)を追加することもできる。
【0053】
なお、回覧対象データD1に対して、ユーザが作成した他の文書等のデータ(ファイル)を添付できるように構成することもできる。この場合、複数のデータ(例えば、最大で5つのファイル)を回覧対象データD1に添付できるようにしてもよい。また、添付したデータを回覧途中で削除したり、回覧途中で回覧対象データに添付データを追加したりすることができてもよい。また、添付するデータの閲覧可否をデータ単位で設定できるようにしてもよい。この閲覧可否は、例えば、決裁者(最終回覧先のユーザ)のみ閲覧可能としたり、回覧途中の特定の回覧者は閲覧不可としたりするものである。なお、添付するデータの形式は特に問わない。
【0054】
S203にて捺印指示が入力されたと判定した場合(S203でYES)、現在ログイン中のユーザの印影データを印影ファイル422から読み出して、回覧対象データD1の捺印位置に印影データを付加する(S205)。つまり、ユーザの印影データ(電子印鑑)を捺印する。このS205の処理は、処理部410が捺印手段411(図2を参照)として機能することによるものである。このとき、主表示領域701には、印影データが付加された回覧対象データD1が表示される。
【0055】
一方、S203にて捺印指示が入力されていないと判定した場合(S203でNO)、捺印指示が入力されるまで待機する。
【0056】
次いでS207では、印影データが付加された回覧対象データの回覧先を設定する旨の指示(「回覧先設定指示」ともいう。)が、ユーザ端末から入力されたか否かを判定する(S207)。回覧先設定指示の入力は、ユーザ端末を操作して行われるものであり、例えば、図10(A)に示す回覧先ボタン707をクリックすることにより行われる。S207にて回覧先設定指示が入力されていないと判定した場合(S207でNO)、回覧先設定指示が入力されるまで待機する。
【0057】
一方、S207にて回覧先設定指示が入力されたと判定した場合(S207でYES)、回覧先を入力するための回覧先入力画面(図示せず)を主表示領域701に表示し、その回覧先設定画面を通じてユーザ端末から入力された回覧先を設定する(S209)。回覧先の入力(設定)は、回覧先となるユーザ(「回覧先ユーザ」ともいう。)のメールアドレスを回覧先設定画面上の入力フィールドに入力することにより行われる。回覧先ユーザは少なくとも1名設定(入力)される。このとき入力される回覧先ユーザのメールアドレスは、サーバ40へのアクセス権を持つユーザのメールアドレスである。つまり、ユーザ管理DB421でログイン情報が管理されているユーザのメールアドレスであり、そのユーザのユーザIDである。また、本システム10では、サーバ40へのアクセス権を持たない他のユーザのメールアドレスを入力して、他のユーザを回覧先(回覧先ユーザ)として設定することも可能である。S209では、そのようにして入力された回覧先ユーザのメールアドレスに基づいて回覧先を設定する。また、S209では、現在ログイン中のユーザ、すなわち、回覧元(申請者)であるユーザ(「回覧元ユーザ」ともいう。)を、回覧対象データの戻り先(回覧ルートの終点)として設定する。回覧元ユーザのメールアドレスは、ユーザが入力しなくてもログイン情報を基にデフォルトで設定される。
【0058】
以上のS209の処理により、回覧対象データの回覧ルートが設定(決定)される。S209の処理は、処理部410が入力受付手段413(図2を参照)として機能することによるものであり、回覧先ユーザのメールアドレスは「回覧先情報」の一例である。
【0059】
次いでS211では、前述のS209で設定した回覧先(回覧ルート)にしたがって回覧を開始する旨の指示(「回覧指示」ともいう。)が、ユーザ端末から入力されたか否かを判定する(S211)。回覧指示の入力は、ユーザ端末を操作して行われるものであり、例えば、前述の回覧先入力画面に表示される送信ボタン(図示せず)をクリックすることにより行われる。
【0060】
S211にて回覧指示が入力されたと判定した場合(S211でYES)、後述の回覧処理(S213)を行い、回覧指示が入力されていないと判定した場合(S211でNO)、回覧指示が入力されるまで待機する。
【0061】
[受信閲覧処理]
次に、ワークフロー処理(S100)の中で実行される受信閲覧処理(S111)について、図5を用いて説明する。同図に示すように、受信閲覧処理(S111)ではまず、前述の受信一覧画面705aの中から選択された受信回覧対象データ(S109を参照)に該当する回覧対象データを記憶部420から読み出し、これをシステム画面700の主表示領域701に表示する(S301)。詳細は後述するが、前述のS209で設定した回覧ルートにしたがって回覧される回覧対象データ及びこれに付随するデータは、回覧が完了したデータを含め、サーバ40の記憶部420の所定記憶領域に記憶(保存)される。S301では、その記憶されているデータの中から受信回覧対象データに該当するデータを読み出し、これを主表示領域701に表示する。
【0062】
S301で読み出した回覧対象データ(受信回覧対象データ)の表示例を図10(B)に示す。同図に示すように、主表示領域701には、現在ログイン中のユーザ(例えば、ユーザX1)宛に送られてきた回覧対象データであってその回覧元(申請者)であるユーザ(例えば、ユーザX2)の印影データが少なくとも捺印された回覧対象データD2が表示される。また、回覧対象データD2の上方に送信ボタン711が表示され、回覧対象データD2の右方に印影アイコン709と、テキスト追加アイコン710と、捺印履歴ボタン712と、回覧ルートボタン713と、が表示される。印影アイコン709及びテキスト追加アイコン710については、図10(A)を用いて説明した回覧開始段階で表示されるものと同じである。
【0063】
送信ボタン711は、主表示領域701に表示された回覧対象データD2の次の回覧先への回覧(回送)を指示するためのボタンである。次の回覧先は、回覧対象データD2の回覧開始に際して設定された回覧ルートに基づくため、ここでは、次の回覧先の設定(入力)を行わない。
【0064】
捺印履歴ボタン712は、主表示領域701に表示された回覧対象データD2に付加された印影データに関し、その印影データの捺印者、捺印日時等を示す捺印履歴情報(捺印ログ)の表示を指示するためのボタンである。捺印履歴ボタン712がクリックされ、捺印履歴情報の表示指示がユーザ端末から入力されると、処理部410は、捺印履歴情報をユーザ端末に表示する。捺印履歴情報の表示は、例えば、ポップアップウィンドウにより行われる。
【0065】
回覧ルートボタン713は、主表示領域701に表示された回覧対象データD2の回覧ルート及び回覧状況を示す回覧ルート情報(回覧ログ)の表示を指示するためのボタンである。回覧ルートボタン713がクリックされ、回覧ルート情報の表示指示がユーザ端末から入力されると、処理部410は、回覧ルート情報をユーザ端末に表示する。回覧ルート情報の表示も、例えば、ポップアップウィンドウにより行われる。
【0066】
なお、S301で読み出した回覧対象データ(受信回覧対象データ)の表示は、システム画面700(主表示領域701)とは別に新たに出現する画面(新規タブ等)により行うこととしてもよい。
【0067】
S301に次いで、処理部410はS303~S309の処理を行う。このS303~S309は、前述の回覧開始処理(S103)におけるS203~S213(S207,S209を除く)と同様である。なお、S307の回覧指示の入力は、送信ボタン711をクリックすることにより行われる。
【0068】
[送信閲覧処理]
次に、ワークフロー処理(S100)の中で実行される送信閲覧処理(S115)について、図6を用いて説明する。同図に示すように、送信閲覧処理(S115)ではまず、前述の送信一覧画面705bの中から選択された送信回覧対象データ(S113を参照)に該当する回覧対象データを記憶部420から読み出し、これをシステム画面700の主表示領域701に表示する(S401)。
【0069】
S401で読み出した回覧対象データ(送信回覧対象データ)の表示例を図10(C)に示す。同図に示すように、主表示領域701には、回覧元ユーザ(例えば、ユーザX1)の印影データが少なくとも捺印された回覧対象データD3が表示され、回覧先での捺印(承認)が完了している場合には、その捺印者(承認者)である回覧先ユーザ(例えば、ユーザX2)の印影データも表示される。また、回覧対象データD2の右上方にステータス表示714が表示され、その下方に捺印履歴ボタン712と、回覧ルートボタン713と、が表示される。捺印履歴ボタン712及び回覧ルートボタン713については、図10(B)を用いて説明した受信回覧対象データの閲覧段階で表示されるものと同じである。
【0070】
ステータス表示714は、送信回覧対象データの現在の回覧状況を示すものであり、回覧ルートの最終回覧先での処理(印影データの付加、コメント付加、差し戻し等)が行われて回覧が完了した旨を示す「完了」や、未だ回覧が完了していない旨を示す「回覧中」などの文字が表示される。
【0071】
なお、S401で読み出した回覧対象データ(送信回覧対象データ)の表示は、システム画面700(主表示領域701)とは別に新たに出現する画面(新規タブ等)により行うこととしてもよい。
【0072】
次いでS403では、送信回覧対象データの閲覧終了の指示がユーザ端末から入力されたか否かを判定し(S403)、入力されていないと判定した場合(S403でNO)、S405の処理を行うことなく本処理を終え、入力されたと判定した場合、S405に進む。
【0073】
S405では、S401で読み出した回覧対象データ(送信回覧対象データ)の閲覧を終了するための閲覧終了処理を行う(S405)。ここでは、例えば、図10(C)に示す回覧対象データ(送信回覧対象データ)の表示を終え、図9(A)に示すシステム画面700の初期画面(ホーム画面)に戻る処理が行われる。
【0074】
[回覧処理]
次に、回覧開始処理(S103)及び受信閲覧処理(S111)の中で実行される回覧処理(S213,S309)について、図7を用いて説明する。回覧開始処理(S103)における回覧処理(S213)と、受信閲覧処理(S111)における回覧処理(S309)とは、処理内容が基本的に同じであるため、ここでは両者まとめて説明する。
【0075】
図7に示すように、回覧処理(S213,S309)ではまず、次の回覧先ユーザが、サーバ40(自サーバ)へのアクセス権を持つユーザであるか否かを判定する次回覧先判定を行う(S501)。次回覧先判定(S501)は、前述のS209による回覧先の設定に際して入力された次の回覧先ユーザのメールアドレス(回覧先情報)が、ユーザ管理DB421で管理されているログイン情報に含まれているか否かを判定することにより行う。
【0076】
次回覧先判定(S501)の結果、次の回覧先ユーザのメールアドレスがログイン情報に含まれている場合、すなわち、次の回覧先ユーザがサーバ40へのアクセス権を持つユーザ(「登録ユーザ」ともいう。)である場合(S503でYES)、現在ログイン中のユーザの印影データが付加された回覧対象データを次の回覧先ユーザ宛に送信する(S505)。ここで、前述のように、回覧先の設定はメールアドレスを入力することにより行われるが、S505による回覧対象データの送信は、メーラーによるメール送信とは異なるものである。回覧先を設定する際に入力するメールアドレスは、本システム10によるワークフロー(回覧ルート)上の回覧先となる宛先を示すアドレス(回覧先情報)だからである。
【0077】
このため、S505の処理が行われると、回覧先のメールアドレス(ユーザID)に対応して記憶部420に設けられる所定記憶領域(例えば、回覧先ユーザ対応の記憶領域)に回覧対象データが記憶される。このとき、該当の回覧ルート単位(ワークフロー単位)で回覧対象データが記憶される。また、回覧開始処理(S103)における回覧処理(S213)による記憶の場合、回覧対象データは新規に記憶(新規保存)され、受信閲覧処理(S103)における回覧処理(S309)による記憶の場合、回覧対象データは更新記憶(上書き保存)される。
【0078】
一方、次回覧先判定(S501)の結果、次の回覧先ユーザのメールアドレスがログイン情報に含まれていない場合、すなわち、次の回覧先ユーザが登録ユーザではなく、サーバ40へのアクセス権を持たないユーザ(他のユーザ)である場合(S503でNO)、現在ログイン中のユーザの印影データが付加された回覧対象データを、そのユーザのメールアドレス(ユーザID)に対応して記憶部420に設けられる所定記憶領域に記憶する(S511)。加えて、その回覧対象データをコピー(複製)したコピーデータ(複製データ)を生成し(S513)、生成したコピーデータを、次の回覧先ユーザである他のユーザがアクセス権を持つサーバ(他のサーバ)へ送信する(S515)。このとき、送信元となる現在ログイン中のユーザのメールアドレス(ユーザID)も併せて他のサーバへ送られる。コピーデータを他のサーバへ送信する際の送信先は、回覧先として入力された他のユーザのメールアドレスと、外部サーバ50で管理されている他のサーバへのアクセス権(他のユーザのアクセス権)に関する情報とを基に特定することができる。外部サーバ50で管理されている情報に含まれる他のユーザのアクセス権をもとに、他のユーザのメールアドレス宛(他のシステム上のユーザ宛)にコピーデータを送信することで、そのコピーデータは他のサーバで受信可能となり、他のサーバ(他のシステム)によるワークフロー処理の対象とされる。なお、S515によるコピーデータの送信は、メーラーによるメール送信とは異なるものである。
【0079】
このように、サーバ40(本システム10)側で回覧対象データの元データ(原本)を保持(記憶)して(S511)、回覧対象データのコピーデータを生成してこれを他のユーザがアクセス権を持つ他のサーバへ送信することで、回覧対象データ(元データ)の消失リスクを回避しつつ、元データと同じ内容のコピーデータを、他のサーバ側(他のサーバに接続された端末)で閲覧することが可能となる。
【0080】
なお、S501、S511、S513及びS515の処理は、処理部410が、判定手段414、回覧対象データ記憶手段417、複製データ生成手段415及び複製データ送信手段416(図2を参照)として機能することによるものである。また、回覧処理(S213,S309)は、処理部410が回覧手段412(図2を参照)として機能することによるものである。
【0081】
次に、S507では、S505又はS511で記憶した回覧対象データに関連する回覧履歴情報を、記憶部420の所定記憶領域に記憶する(S507)。回覧履歴情報には、前述の捺印履歴情報(捺印ログ)及び回覧ルート情報(回覧ログ)が含まれる。回覧履歴情報についても、回覧対象データと同様に、回覧ルート単位(ワークフロー単位)で記憶される。また、回覧開始処理(S103)における回覧処理(S213)による記憶の場合、回覧履歴情報は新規に記憶(新規保存)され、受信閲覧処理(S103)における回覧処理(S309)による記憶の場合、回覧履歴情報は更新記憶(上書き保存)される。
【0082】
回覧履歴情報は、次の回覧先ユーザが登録ユーザであるか否かにかかわらず記憶部420に記憶されるので、次の回覧先ユーザが他のユーザ(非登録ユーザ)であって他のサーバへコピーデータを送信したとしても、そのコピーデータに対応する回覧対象データの回覧履歴情報はサーバ40(本システム10)側で管理され、他のサーバへ送信されることはない。このため、サーバ40側の回覧履歴情報は他のサーバ側では非表示となり、他のユーザがサーバ40側の回覧履歴情報を見ることはできない。これにより、回覧履歴情報の外部への漏洩リスクを回避することができる。
【0083】
次いでS509では、次の回覧先ユーザに対して回覧通知を送信する(S509)。回覧通知は、次の回覧先ユーザに対して回覧が届いた旨を通知するものであり、次の回覧先ユーザのメールアドレス(メールサーバ)にメールを送信することにより行われる。このため、回覧処理が行われると、次の回覧先ユーザに対して回覧通知のメールが自動送信される。回覧通知のメールを受けた次の回覧先ユーザは、自身宛の回覧対象データが届いたことを知ることができ、自身がアクセス権を持つサーバにログインすることで、その回覧対象データを閲覧することができる。
【0084】
[他サーバ関連処理]
次に、本システム10による他サーバ関連処理(S1000)について、図8を用いて説明する。他サーバ関連処理(S1000)は、前述のワークフロー処理(S100)とは別に処理部410が実行する処理である。
【0085】
図8に示すように、他サーバ関連処理(S1000)ではまず、他のサーバからコピーデータを受信したか否かを判定する(S1001)。ここでのコピーデータは、前述のS513で生成してS515で他のサーバへ送信したコピーデータであって、そのコピーデータに対して、他のユーザの印影データの付加やテキストの付加などの処理が他のサーバ側で施されたデータ(「処理済データ」ともいう。)である。
【0086】
S1001にてコピーデータ(処理済データ)を受信したと判定した場合(S1001でYES)、そのコピーデータの元データとして前述のS511により記憶した回覧対象データを、今回受信した処理済データに基づいて更新する(S1003)。また、前述のS511により記憶した回覧履歴情報を今回受信した処理済データに基づいて更新する(S1005)。S1003による回覧対象データの更新は、記憶部420の所定記憶領域に元データとして記憶されている回覧対象データを、例えば、他のユーザの印影データが付加された回覧対象データに更新するなど、処理済データの内容に上書きすることにより行われる。また、S1005による回覧履歴情報の更新は、記憶部420の所定記憶領域に記憶されている元データに関連する回覧履歴情報を、例えば、他のユーザの印影データが付加されている場合の当該捺印ログを含む情報に更新するなど、他のサーバ側で施された処理を反映した内容に上書きすることにより行われる。これら更新後の回覧対象データ及び回覧履歴情報は、受信した処理済データの回覧ルートの状況に応じて、受信閲覧処理(S111)のS301又は送信閲覧処理(S115)のS401で更新後の回覧対象データを読み出すことにより、サーバ40側で閲覧することができる。
【0087】
なお、S1001の処理は、処理部410が処理済データ受信手段418(図2を参照)として機能することによるものであり、S1003及びS1005の処理は、処理部410が回覧対象データ更新手段419(図2を参照)として機能することによるものである。
【0088】
以上に説明した本形態のシステム10を、例えば、互いに異なるサーバを使用する別々の企業がそれぞれ導入した場合、その企業間における回覧等を滞りなく行うことが可能である。以下、この点について図11を用いて説明する。
【0089】
図11に示す事例のように、クラウドサーバ10X(以下、単に「サーバ10X」という。)を利用するX社と、クラウドサーバ10Y(以下、単に「サーバ10Y」という。)を利用するY社との2社があり、それぞれ自社の社員が使用する端末からしか互いのサーバに接続できないものとする。つまり、X社及びY社の社員は、それぞれ自社サーバへのアクセス権を持っており、他社サーバへのアクセス権を持たないものとする。このようなサーバ環境のもと、X社及びY社がそれぞれ本形態に係るシステムを導入したとする。システム導入にあたっては、X社のサーバ10Xへのアクセス権(X社社員のアクセス権)に関する情報と、Y社のサーバ10Yへのアクセス権(Y社社員のアクセス権)に関する情報とが、外部サーバ50に予め登録されて管理される。以下、X社が導入した本形態に係るシステムのことを「X社回覧システム」といい、Y社が導入した本形態に係るシステムのことを「Y社回覧システム」という。なお、この事例では、サーバ10Xが「データ処理装置」の一例であり、サーバ10Yが「他のデータ処理装置」の一例である。
【0090】
本事例において、X社の社員X1がX社回覧システムを利用して、回覧文書(回覧対象データ)をサーバ10Xにアップロードし、その回覧文書に自身の印影データを捺印した上で、Y社の社員Y1を最終回覧先(回覧ルート:X1→Y1→X1(戻り))として回覧を開始すると(S103を参照)、社員X1の印影データが付加された回覧文書のコピーがサーバ10Xからサーバ10Yへ送信される(S513,S515を参照)。この送信は、回覧文書の宛先である社員Y1のメールアドレス宛(社員Y1宛)に行われる。そして、サーバ10Yがサーバ10Xからの回覧文書(コピー)を受信すると、その回覧文書がサーバ10Y(Y社回覧システム)側で閲覧可能となる(S111を参照)。
【0091】
その後、Y社の社員Y1はY社回覧システムを利用して、社員X1から送られてきた回覧文書(コピー)を閲覧し、その回覧文書に自身の印影データを捺印した上で回覧を進める(S111を参照)。すると、社員Y1の印影データが追加された回覧文書のコピーがサーバ10Yからサーバ10Xへ送信される(S513,S515を参照)。この送信は、回覧開始の際にデフォルトで設定される回覧元の社員X1のメールアドレス宛(社員X1宛)に行われる。そして、サーバ10Xがサーバ10Yから捺印(承認)済の回覧文書(コピー)を受信すると、社員X1の印影データが付加された元の回覧文書が、社員Y1の印影データが追加された回覧文書に上書き(更新)され、その回覧文書がサーバ10X(X社回覧システム)側で閲覧可能となる(S115,S1000を参照)。つまり、サーバ10Y(Y社回覧システム)側での処理結果を反映した最新の回覧文書を、サーバ10X(X社回覧システム)側で閲覧できるようになる。なお、Y社回覧システム(サーバ10Y)にて社員Y1の印影データを回覧文書(コピー)に捺印(付加)する処理は「所定の処理」の一例である。
【0092】
以上に説明した本形態のシステム10によれば、同じサーバを使用する企業等における回覧等はもちろんのこと、互いに異なるサーバを使用する別々の企業等の間における回覧等も、それぞれのシステム上で円滑に行うことが可能である。相手方の異なるサーバに対して、システム外のツール(例えば電子メール)を用いて回覧対象データを送る必要がないからである。
【0093】
また、本システム10では、サーバ40(自サーバ)へのアクセス権の有無に関係なく、ユーザは回覧先ユーザのメールアドレスを入力するだけで、回覧先(回覧ルート)の設定が可能である。これにより、自サーバへのアクセス権を持たないユーザを回覧ルートに含めた回覧等を手軽に行うことができ、システムの利便性を向上させることができる。
【0094】
なお、図11に示した事例では、X社とY社とで異なるクラウドサーバを使用している場合を示したが、例えば、同じクラウドサーバ内にX社の領域とY社の領域が設けられており、それぞれ自社の社員が使用する端末からしか互いの領域に接続できない場合についても同様である。
【0095】
また、図11に示した事例では、X社及びY社がそれぞれ本形態のシステムを導入した場合を示したが、X社及びY社の一方が本形態に係るシステムを導入した場合にも、一定の効果が得られる。例えば、本形態のシステム(以下「新システム」という。)をX社が導入し、本形態のシステムのうち回覧対象データのコピーデータを生成して他のサーバへ送信する機能(S503,S511,S513,S515)を備えていないシステム(以下「旧システム」という。)をY社が導入している場合、図11を用いて説明した事例と同様に、新システム側から旧システム側へ回覧対象データ(回覧文書)のコピーを送信することができ、そのコピーを旧システム側で受信することができる。このため、X社は、システム外のツール(例えば電子メール)を用いることなく回覧対象データをY社に送ることができる。またY社は、X社からの回覧対象データをシステム上で受け取ることができる。したがって、少なくともX社からY社への回覧対象データの回覧に関しては、処理を円滑に進めることが可能となる。
【符号の説明】
【0096】
10 システム、20 ネットワーク、30A,30B 端末、40 サーバ、50 外部サーバ、310 処理部、320 記憶部、330 通信部、340 表示部、350 操作部、410 処理部、411、捺印手段、412 回覧手段、413 入力受付手段、414 判定手段、415 複製データ生成手段、416 複製データ送信手段、417 回覧対象データ記憶手段、418 処理済データ受信手段、419 回覧対象データ更新手段、420 記憶部、421 ユーザ管理DB、422 印影ファイル、423 印影管理DB、424 WFアプリ、430 通信部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11