(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】排水汚泥の処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/02 20060101AFI20241011BHJP
C02F 11/12 20190101ALI20241011BHJP
【FI】
C02F11/02
C02F11/12 ZAB
(21)【出願番号】P 2022010421
(22)【出願日】2022-01-26
【審査請求日】2024-03-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510154741
【氏名又は名称】株式会社テイト微研
(74)【代理人】
【識別番号】100211719
【氏名又は名称】伊藤 和真
(72)【発明者】
【氏名】首藤 隆利
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-070400(JP,A)
【文献】特開2004-358429(JP,A)
【文献】特開2008-006351(JP,A)
【文献】特開平06-087000(JP,A)
【文献】特開平11-169892(JP,A)
【文献】特開2021-003699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の排水処理設備で生じる汚泥である排水汚泥を処理するための排水汚泥の処理装置であって、
前記排水汚泥を収容する収容部と、
前記収容部に収容された前記排水汚泥に対して、所定の有用微生物群を含んだ微生物製剤を液滴状態で供給する供給部と、
前記排水汚泥を脱水する脱水機
と、を備え、
前記収容部は、沈殿した前記排水汚泥である余剰汚泥を収容する第1収容部、及び該第1収容部に収容された前記余剰汚泥が前記脱水機によって脱水されることで生成される脱水ケーキを収容する第2収容部を含み、
前記供給部は、
前記第1収容部に収容された前記余剰汚泥に対して、光合成菌を含んだ前記微生物製剤を滴下するとともに、
前記第2収容部に収容される前記脱水ケーキに対して、放線菌を含んだ前記微生物製剤を噴霧する、
排水汚泥の処理装置。
【請求項2】
所定の排水処理設備で生じる汚泥である排水汚泥を処理するための排水汚泥の処理装置であって、
前記排水汚泥を収容する収容部と、
前記収容部に収容された前記排水汚泥に対して、所定の有用微生物群を含んだ微生物製剤を液滴状態で供給する供給部と、
沈殿した前記排水汚泥である余剰汚泥を収容する第1収容部、及び該第1収容部に収容された該余剰汚泥を連続的に脱水する脱水部を含んで構成される脱水機
と、を備え、
前記収容部は、前記第1収容部、及び該第1収容部に収容された前記余剰汚泥が前記脱水部によって脱水されることで生成される脱水ケーキを収容する第2収容部を含み、
前記脱水機は、
前記第1収容部において、前記余剰汚泥と凝集剤とが混合されることで該余剰汚泥を含んだ混合物が生成され、
前記脱水部において、前記第1収容部に収容された前記混合物が連続的に脱水されることで前記脱水ケーキが生成され、
前記供給部は、
前記第1収容部に光合成菌を含んだ前記微生物製剤を滴下するとともに、
前記第2収容部に収容される前記脱水ケーキに対して、放線菌を含んだ前記微生物製剤を噴霧する、
排水汚泥の処理装置。
【請求項3】
前記脱水機は、前記脱水ケーキを排出する排出部から前記第2収容部に向かって延在するガイド部を有し、
前記供給部は、
放線菌を含んだ前記微生物製剤を噴霧するノズル部を有するとともに、
前記ノズル部が、前記ガイド部を通過する前記脱水ケーキに対して、放線菌を含んだ前記微生物製剤を噴霧可能に配置される、
請求項1又は請求項2に記載の排水汚泥の処理装置。
【請求項4】
所定の排水処理設備で生じる汚泥である排水汚泥を処理するための排水汚泥の処理装置であって、
前記排水汚泥を収容する収容部と、
前記収容部に収容された前記排水汚泥に対して、所定の有用微生物群を含んだ微生物製剤を液滴状態で供給する供給部と、
排水に夾雑した前記排水汚泥である夾雑物を濾過するスクリーン
と、を備え、
前記収容部は、前記スクリーンによって濾過された前記夾雑物を収容する第3収容部を含み、
前記供給部は、前記第3収容部に収容される前記夾雑物に対して、放線菌を含んだ前記微生物製剤を噴霧する、
排水汚泥の処理装置。
【請求項5】
所定の排水処理設備で生じる汚泥である排水汚泥を処理するための排水汚泥の処理方法であって、
前記排水汚泥を収容する収容ステップと、
前記収容ステップによって収容された前記排水汚泥に対して、所定の有用微生物群を含んだ微生物製剤を液滴状態で供給する供給ステップと、
前記排水汚泥を脱水する脱水ステップ
と、を有し、
前記収容ステップは、沈殿した前記排水汚泥である余剰汚泥を収容する第1収容ステップ、及び該第1収容ステップによって収容された前記余剰汚泥が前記脱水ステップによって脱水されることで生成される脱水ケーキを収容する第2収容ステップを含み、
前記供給ステップでは、
前記第1収容ステップによって収容された前記余剰汚泥に対して、光合成菌を含んだ前記微生物製剤を滴下するとともに、
前記第2収容ステップによって収容される前記脱水ケーキに対して、放線菌を含んだ前記微生物製剤を噴霧する、
排水汚泥の処理方法。
【請求項6】
所定の排水処理設備で生じる汚泥である排水汚泥を処理するための排水汚泥の処理方法であって、
前記排水汚泥を収容する収容ステップと、
前記収容ステップによって収容された前記排水汚泥に対して、所定の有用微生物群を含んだ微生物製剤を液滴状態で供給する供給ステップと、
排水に夾雑した前記排水汚泥である夾雑物を濾過する濾過ステップ
と、を有し、
前記収容ステップは、前記濾過ステップによって濾過された前記夾雑物を収容する第3収容ステップを含み、
前記供給ステップでは、前記第3収容ステップによって収容される前記夾雑物に対して、放線菌を含んだ前記微生物製剤を噴霧する、
排水汚泥の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の排水処理設備で生じる汚泥である排水汚泥を処理するための排水汚泥の処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下水処理場等においては、活性汚泥法による余剰汚泥などの排水汚泥が発生している。そして、このような排水汚泥は、堆積させておくと直ちに嫌気状態となり悪臭が発生する。そのため、排水汚泥に含まれる有機物を撹拌曝気によって分解させたり、排水汚泥に含まれる硫化水素等を無機物や化学物質などで分解除去させたりすることが知られている。
【0003】
ここで、無機物や化学物質などが投与された排水汚泥は、堆肥や建築資材としてリサイクルし難く、このような排水汚泥は、最終的に脱水ケーキや焼却灰の形で埋立処分されていた。しかしながら、近年の環境問題等から埋立処分が困難になりつつあり、排水汚泥を減容化する種々の技術が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、有機性排水を活性汚泥を用いて生物処理する方法において、余剰汚泥の生成を抑制する有機性排水の処理方法が開示されている。この技術では、活性汚泥が、嫌気状態と好気状態に繰り返し曝されることでバチルス属の菌が優占種である汚泥とされることで、余剰汚泥の生成が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
下水処理場等の排水処理設備で生じる汚泥である排水汚泥を無機物や化学物質などで処理する従来手法では、例えば、該汚泥を脱水することで生じる脱水液に硫化鉄が含まれ得るために放流水に影響を与えてしまう虞があり、また、脱水ケーキに無機物や化学物質などが含まれ得るために該脱水ケーキを堆肥や建築資材としてリサイクルし難くなっていた。更に、無機物や化学物質では、排水汚泥に含まれる主な悪臭物質である硫化水素、メチルメルカプタン、低級脂肪酸のうち、硫化水素やメチルメルカプタンをある程度分解除去できても、低級脂肪酸を分解除去できなかった。そのため、脱水ケーキを堆積させておくと、悪臭が発生してしまうという問題があった。
【0007】
一方で、排水汚泥を減容化する種々の技術も開発されており、特許文献1に記載の技術によれば、余剰汚泥の生成を抑制できるようにも思われる。しかしながら、この技術では、余剰汚泥を完全に無くすことができないため、やはり、余剰汚泥から悪臭が発生してしまう事態や、余剰汚泥の他用途へのリサイクル性が困難となってしまう事態が生じ得る。このように、悪臭の発生を抑制しながら優れたリサイクル性を実現する技術については、未だ改良の余地を残すものである。
【0008】
本開示の目的は、悪臭の発生を好適に抑制しながら優れたリサイクル性を実現可能な排水汚泥の処理技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の排水汚泥の処理装置は、所定の排水処理設備で生じる汚泥である排水汚泥を処理するための排水汚泥の処理装置である。この排水汚泥の処理装置は、前記排水汚泥を収容する収容部と、前記収容部に収容された前記排水汚泥に対して、所定の有用微生物群を含んだ微生物製剤を液滴状態で供給する供給部と、を備える。
【0010】
そして、上記の排水汚泥の処理装置は、前記排水汚泥を脱水する脱水機を更に備えてもよい。この場合、前記収容部は、沈殿した前記排水汚泥である余剰汚泥を収容する第1収容部、及び該第1収容部に収容された前記余剰汚泥が前記脱水機によって脱水されることで生成される脱水ケーキを収容する第2収容部を含み、前記供給部は、前記第1収容部に収容された前記余剰汚泥に対して、光合成菌を含んだ前記微生物製剤を滴下するとともに、前記第2収容部に収容される前記脱水ケーキに対して、放線菌を含んだ前記微生物製剤を噴霧してもよい。このような排水汚泥の処理装置では、脱水前の余剰汚泥に光合成菌を含んだ微生物製剤が供給されることで、第1収容部から発生する悪臭物質である硫化水素やメチルメルカプタンを分解除去することができる。更に、光合成菌を含んだ微生物製剤は、活性汚泥法における沈殿槽で糸状菌を異常増殖させることがない、即ち、沈殿槽でバルキング現象を生じさせないため、このような微生物製剤によって処理された余剰汚泥を脱水した余剰脱水液を活性汚泥の反応槽に返送しても、その後の処理においてバルキング現象が生じてしまう事態を抑制することができる。また、脱水ケーキに対して、放線菌を含んだ微生物製剤が噴霧されることで、無機物や化学物質などを投入することなく、余剰汚泥に対する光合成菌を含んだ微生物製剤の滴下では分解除去できない低級脂肪酸の分解除去が可能となる。更に、微量に残存した硫化水素、メチルメルカプタンを分解除去することもできる。その結果、脱水ケーキを堆肥や建築資材として好適にリサイクルすることができる。以上により、悪臭の発生を好適に抑制しながら優れたリサイクル性を実現することができる。
【0011】
また、上記の排水汚泥の処理装置は、沈殿した前記排水汚泥である余剰汚泥を収容する第1収容部、及び該第1収容部に収容された該余剰汚泥を連続的に脱水する脱水部を含んで構成される脱水機を更に備えてもよい。この場合、前記収容部は、前記第1収容部、及び該第1収容部に収容された前記余剰汚泥が前記脱水部によって脱水されることで生成される脱水ケーキを収容する第2収容部を含み、前記脱水機は、前記第1収容部において、前記余剰汚泥と凝集剤とが混合されることで該余剰汚泥を含んだ混合物が生成され、前記脱水部において、前記第1収容部に収容された前記混合物が連続的に脱水されることで前記脱水ケーキが生成されてもよい。そして、前記供給部は、前記第1収容部に光合成菌を含んだ前記微生物製剤を滴下するとともに、前記第2収容部に収容される前記脱水ケーキに対して、放線菌を含んだ前記微生物製剤を噴霧してもよい。これによれば、より均一に余剰汚泥に光合成菌を含んだ微生物製剤を投入することができ、以て、硫化水素やメチルメルカプタンを好適に分解除去することが可能になる。
【0012】
そして、以上に述べた排水汚泥の処理装置において、前記脱水機は、前記脱水ケーキを排出する排出部から前記第2収容部に向かって延在するガイド部を有し、前記供給部は、放線菌を含んだ前記微生物製剤を噴霧するノズル部を有するとともに、前記ノズル部が、前記ガイド部を通過する前記脱水ケーキに対して、放線菌を含んだ前記微生物製剤を噴霧可能に配置されてもよい。これによれば、第2収容部に収容される脱水ケーキに均一に上記の微生物製剤を噴霧することができ、以て、脱水ケーキに含まれる低級脂肪酸や脱水ケーキに微量に残存した硫化水素、メチルメルカプタンを好適に分解除去することが可能になる。
【0013】
一方で、本開示の排水汚泥の処理装置では、上記の構成において、排水に夾雑した前記排水汚泥である夾雑物を濾過するスクリーンを更に備え、前記収容部は、前記スクリーンによって濾過された前記夾雑物を収容する第3収容部を含み、前記供給部は、前記第3収容部に収容される前記夾雑物に対して、放線菌を含んだ前記微生物製剤を噴霧してもよい。これによれば、無機物や化学物質などを投入することなく、夾雑物から悪臭物質である硫化水素、メチルメルカプタン、低級脂肪酸を分解除去することができる。
【0014】
また、本開示は、排水汚泥の処理方法の側面から捉えることができる。すなわち、本開示の排水汚泥の処理方法は、所定の排水処理設備で生じる汚泥である排水汚泥を処理するための排水汚泥の処理方法であって、前記排水汚泥を収容する収容ステップと、前記収容ステップによって収容された前記排水汚泥に対して、所定の有用微生物群を含んだ微生物製剤を液滴状態で供給する供給ステップと、を有する。
【0015】
そして、この場合、前記排水汚泥を脱水する脱水ステップを更に有し、前記収容ステップは、沈殿した前記排水汚泥である余剰汚泥を収容する第1収容ステップ、及び該第1収容ステップによって収容された前記余剰汚泥が前記脱水ステップによって脱水されることで生成される脱水ケーキを収容する第2収容ステップを含み、前記供給ステップでは、前記第1収容ステップによって収容された前記余剰汚泥に対して、光合成菌を含んだ前記微生物製剤を滴下するとともに、前記第2収容ステップによって収容される前記脱水ケーキに対して、放線菌を含んだ前記微生物製剤を噴霧してもよい。また、排水に夾雑した前記排水汚泥である夾雑物を濾過する濾過ステップを更に有し、前記収容ステップは、前記濾過ステップによって濾過された前記夾雑物を収容する第3収容ステップを含み、前記供給ステップでは、前記第3収容ステップによって収容される前記夾雑物に対して、放線菌を含んだ前記微生物製剤を噴霧してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、悪臭の発生を好適に抑制しながら優れたリサイクル性を実現可能な排水汚泥の処理技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態における排水汚泥の処理装置の概略構成を示す図である。
【
図2】ガイド部を通過する脱水ケーキに対して、放線菌を含んだ微生物製剤を噴霧する態様を例示する図である。
【
図3】第1実施形態の変形例1における排水汚泥の処理方法の処理フローを示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態の変形例2における排水汚泥の処理装置の概略構成を示す図である。
【
図5】第2実施形態における排水汚泥の処理装置の概略構成を示す図である。
【
図6】第2実施形態における排水汚泥の処理方法の処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0019】
<第1実施形態>
第1実施形態における排水汚泥の処理装置の概要について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態における排水汚泥の処理装置の概略構成を示す図である。本実施形態に係る処理装置1は、所定の排水処理設備で生じる汚泥である排水汚泥を処理するための装置である。この処理装置1は、排水汚泥を収容する収容部10と、排水汚泥を脱水する脱水機20と、収容部10に収容された排水汚泥に微生物製剤を供給する供給部30と、を備える。なお、本実施形態では、上記の排水処理設備が、下水処理場に設けられる場合を例にして、以下に説明する。
【0020】
ここで、収容部10は、詳しくは、排水を貯留する沈殿槽に沈殿したものが抜き取られた排水汚泥である余剰汚泥を収容する余剰汚泥槽11(本開示の第1収容部)、および余剰汚泥槽11に収容された余剰汚泥が脱水機20によって脱水されることで生成される脱水ケーキを収容する貯留ピット12(本開示の第2収容部)を含んで構成される。
【0021】
本実施形態では、このように、余剰汚泥が脱水機20によって脱水されて脱水ケーキが生成されることで、排水汚泥が処理される。なお、このとき脱水機20から排水される余剰脱水液は、活性汚泥の反応槽に返送される。ここで、従来技術によれば、余剰汚泥槽11から発生する悪臭(該悪臭には、硫化水素、メチルメルカプタン、低級脂肪酸等の物質が含まれる。)を抑制するために、該余剰汚泥槽11に無機物や化学物質などが投入される。しかしながら、この場合、余剰汚泥を脱水した余剰脱水液に硫化鉄が含まれ得ることになるため、該余剰脱水液が活性汚泥の反応槽に返送され更に処理水として放流されると、環境に影響を与えてしまう虞がある。また、この場合、脱水ケーキに無機物や化学物質などが含まれ得ることにため、該脱水ケーキを堆肥や建築資材としてリサイクルし難くなってしまう。
【0022】
そこで、本開示人は、鋭意検討を行った結果、悪臭の発生を好適に抑制しながら優れたリサイクル性を実現可能な排水汚泥の処理技術を見出した。本実施形態では、供給部30が、余剰汚泥槽11に収容された余剰汚泥に対して、光合成菌を含んだ微生物製剤を滴下するとともに、貯留ピット12に収容される脱水ケーキに対して、放線菌を含んだ微生物製剤を噴霧する。なお、上記の光合成菌を含んだ微生物製剤は、例えば、商品名「光コート」(株式会社テイト微研)であって、上記の放線菌を含んだ微生物製剤は、例えば、商品名「バイオコート・リキッド」(株式会社テイト微研)である。
【0023】
ここで、光コートは、液体滴下装置32によって、余剰汚泥槽11に収容された余剰汚泥に滴下される。詳しくは、供給部30は、光コートが充填されたタンク31と、光コートを余剰汚泥槽11に滴下する液体滴下装置32と、を有していて、タンク31に充填された光コートが、液体滴下装置32によって、余剰汚泥槽11に収容された余剰汚泥に滴下される。なお、光コートは、液体滴下装置32によって、定量を定期時間帯で滴下される。また、余剰汚泥槽11が曝気される場合には、光コートは、酸素の供給によりその微生物の分解能力を発揮することができ、余剰汚泥槽11が曝気されない場合には、光コートは、例えば、光源ライトからの光の供給によりその微生物の分解能力を発揮することができる。
【0024】
また、バイオコート・リキッドは、ノズル36によって、貯留ピット12に収容される脱水ケーキに噴霧される。詳しくは、供給部30は、バイオコート・リキッドが充填されたタンク33、バイオコート・リキッドを貯留ピット12に供給する液体供給装置34、液体供給装置34に圧縮空気を送るコンプレッサー35、およびコンプレッサー35からの圧縮空気を介して液体供給装置34によって供給されたバイオコート・リキッドを脱水ケーキに噴霧するノズル36を有している。
【0025】
そして、以上に述べたように微生物製剤が供給される態様によれば、脱水前の余剰汚泥に光コートが供給されることで、余剰汚泥槽11から発生する悪臭物質である硫化水素やメチルメルカプタンを分解除去することができる。更に、光合成菌を含んだ微生物製剤である光コートは、活性汚泥法における沈殿槽で糸状菌を異常増殖させることがない、即ち、沈殿槽でバルキング現象を生じさせないため、光コートによって処理された余剰汚泥を脱水した余剰脱水液を活性汚泥の反応槽に返送しても、その後の処理においてバルキング現象が生じてしまう事態を抑制することができる。そして、反応槽に返送される余剰脱水液には光コートが含まれることになるため、反応槽における有機物の分解を促進することができる。また、光コートによって処理された余剰汚泥を脱水することで生成された脱水ケーキには、光コートでは分解除去できない低級脂肪酸や、微量に残存する硫化水素、メチルメルカプタンが含まれ得るため、堆肥や建築資材としてそのままリサイクルしようとすると、やはり悪臭が問題となり得る。これに対して、以上に述べた態様によれば、脱水ケーキにバイオコート・リキッドが噴霧されることで、無機物や化学物質などを投入することなく、余剰汚泥に対する光コートの滴下では分解除去できない低級脂肪酸の分解除去が可能となり、脱水ケーキから悪臭物質である硫化水素、メチルメルカプタン、低級脂肪酸を分解除去することができる。その結果、脱水ケーキを堆肥や建築資材として好適にリサイクルすることができる。以上によれば、悪臭の発生を好適に抑制しながら優れたリサイクル性を実現することができる。
【0026】
なお、脱水機20は、脱水ケーキを排出する排出部から貯留ピット12に向かって延在するガイド部を有してもよい。この場合、供給部30は、放線菌を含んだ微生物製剤を噴霧するノズル部を有するとともに、該ノズル部が、ガイド部を通過する脱水ケーキに対して、放線菌を含んだ微生物製剤を噴霧可能に配置され得る。これについて、
図2に基づいて説明する。
【0027】
図2は、ガイド部を通過する脱水ケーキに対して、放線菌を含んだ微生物製剤を噴霧する態様を例示する図である。
図2に示す例では、脱水機20の排出部201から貯留ピット12に向かってガイド部202が延在している。そして、ノズル36が、ガイド部202の側方から排出部201に向かって、且つ排出部201から貯留ピット12に向かう方向に、上述したバイオコート・リキッドを噴霧できるように配置されている。これにより、ガイド部202を通過する脱水ケーキに対してバイオコート・リキッドを噴霧することができる。
【0028】
ここで、脱水機20の排出部201から排出される脱水ケーキは、貯留ピット12に堆積していくため、貯留ピット12に既に収容された脱水ケーキにバイオコート・リキッドを噴霧する手法では、該脱水ケーキに均一にバイオコート・リキッドを噴霧できない事態が生じ得る。これに対して、上記の
図2に例示した態様によれば、ガイド部202を通過する脱水ケーキに対してバイオコート・リキッドを噴霧することで、貯留ピット12に収容される脱水ケーキに均一にバイオコート・リキッドを噴霧することができる。これにより、脱水ケーキに含まれる低級脂肪酸や脱水ケーキに微量に残存した硫化水素、メチルメルカプタンを好適に分解除去することが可能になる。
【0029】
また、貯留ピット12に収容される脱水ケーキへのバイオコート・リキッドの噴霧は、脱水機20の作動スケジュールに応じて調整されてもよい。この場合、脱水機20の作動に連動して脱水ケーキへのバイオコート・リキッドの噴霧を実行することができる。また、バイオコート・リキッドの噴霧は、貯留ピット12内の硫化水素の濃度に基づいてフィードバック制御されてもよい。この場合、貯留ピット12内の硫化水素の濃度が所望の濃度となるように、液体供給装置34からのバイオコート・リキッドの供給量や供給タイミングを制御することができる。
【0030】
以上に述べた処理装置1によれば、悪臭の発生を好適に抑制しながら優れたリサイクル性を実現することができる。
【0031】
<第1実施形態の変形例1>
第1実施形態の変形例1について、
図3に基づいて説明する。本変形例は、所定の排水処理設備で生じる汚泥である排水汚泥を処理するための排水汚泥の処理方法である。
【0032】
そして、
図3は、本変形例における排水汚泥の処理方法の処理フローを示すフローチャートである。
【0033】
本フローでは、先ず、S101において、第1収容ステップが実行される。S101の処理では、余剰汚泥を余剰汚泥槽11に収容する。
【0034】
次に、S102において、第1供給ステップが実行される。S102の処理では、第1収容ステップによって収容された余剰汚泥に対して、光合成菌を含んだ微生物製剤を滴下する。なお、この第1供給ステップの詳細は、上記の第1実施形態の説明で述べたとおりである。
【0035】
次に、S103において、脱水ステップが実行される。S103の処理では、余剰汚泥槽11に収容され第1供給ステップによって上記の微生物製剤が投入された余剰汚泥を脱水する。
【0036】
次に、S104において、第2収容ステップが実行される。S104の処理では、第1収容ステップによって収容された余剰汚泥が脱水ステップによって脱水されることで生成される脱水ケーキを貯留ピット12に収容する。
【0037】
次に、S105において、第2供給ステップが実行される。S105の処理では、第2収容ステップによって収容される脱水ケーキに対して、放線菌を含んだ微生物製剤を噴霧する。なお、この第2供給ステップの詳細は、上記の第1実施形態の説明で述べたとおりである。そして、S105の処理の後、本フローの実行が終了され、余剰汚泥が脱水ケーキとして処理されることになる。
【0038】
そして、以上に述べた排水汚泥の処理方法によれば、悪臭の発生を好適に抑制しながら優れたリサイクル性を実現することができる。
【0039】
<第1実施形態の変形例2>
第1実施形態の変形例2について、
図4に基づいて説明する。
図4は、本変形例における排水汚泥の処理装置の概略構成を示す図である。本変形例に係る処理装置1は、上記の第1実施形態と同様に、排水汚泥を収容する収容部10と、排水汚泥を脱水する脱水機20と、収容部10に収容された排水汚泥に微生物製剤を供給する供給部30と、を備えるが、本変形例では、脱水機20が、余剰汚泥を収容・混合する混合槽22(本開示の第1収容部)、及び該混合槽22に収容された該余剰汚泥を連続的に脱水する脱水部21を含んで構成される。
【0040】
ここで、脱水機20では、混合槽22において、余剰汚泥と、凝集剤(凝集剤は、注入装置37から供給される。)と、が混合されることで該余剰汚泥を含んだ混合物が生成され、脱水部21において、混合槽22に収容された混合物が連続的に脱水されることで脱水ケーキが生成される。このとき、供給部30は、混合槽22に光合成菌を含んだ微生物製剤を滴下する。詳しくは、タンク31に充填された光コートが、液体滴下装置32によって、混合槽22に収容された混合物に滴下される。そうすると、脱水機20の混合槽22から発生する悪臭物質である硫化水素やメチルメルカプタンを分解除去することができるとともに、脱水部21で脱水された余剰脱水液を活性汚泥の反応槽に返送しても、その後の処理においてバルキング現象が生じてしまう事態を抑制することができる。そして、本変形例のように混合槽22に光コートが滴下される態様によれば、より均一に余剰汚泥に光コートを投入することができ、以て、硫化水素やメチルメルカプタンを好適に分解除去することが可能になる。
【0041】
なお、脱水機20の混合槽22に収容された混合物が脱水部21によって連続的に脱水されることで生成される脱水ケーキは、貯留ピット12に収容されることになるが、供給部30は、上記の第1実施形態と同様にして、貯留ピット12に収容される脱水ケーキに対して、放線菌を含んだ微生物製剤を噴霧する。
【0042】
以上に述べた処理装置1によっても、悪臭の発生を好適に抑制しながら優れたリサイクル性を実現することができる。
【0043】
<第2実施形態>
第2実施形態について、
図5に基づいて説明する。
図5は、本実施形態における排水汚泥の処理装置の概略構成を示す図である。本実施形態に係る処理装置1は、排水汚泥を収容する収容部10と、収容部10に収容された排水汚泥に微生物製剤を供給する供給部30と、を備えるが、本実施形態では、排水に夾雑した排水汚泥である夾雑物を濾過するスクリーン40を更に備える。
【0044】
ここで、スクリーン40は、排水(汚水、雑排水)の流出口の下流側に下方に向かって設置され、該スクリーン40に排水が流されると、メッシュ41によって夾雑物が濾過される。そして、排水から濾過された夾雑物は、スクリーン40に沿って下方に落下し、貯留ピット13(本開示の第3収容部)に収容される。また、濾過水は、例えば、活性汚泥の反応槽に送られる。
【0045】
そして、供給部30は、貯留ピット13に収容される夾雑物に対して、放線菌を含んだ前記微生物製剤を噴霧する。詳しくは、バイオコート・リキッドが、タンク33から液体供給装置34を介してノズル36に導かれ、該ノズル36によって、貯留ピット13に収容される夾雑物に噴霧される。これによれば、無機物や化学物質などを投入することなく、夾雑物から悪臭物質である硫化水素、メチルメルカプタン、低級脂肪酸を分解除去することができる。
【0046】
以上に述べた処理装置1によっても、悪臭の発生を好適に抑制しながら優れたリサイクル性を実現することができる。
【0047】
<第2実施形態の変形例>
第2実施形態の変形例について、
図6に基づいて説明する。本変形例は、所定の排水処理設備で生じる汚泥である排水汚泥を処理するための排水汚泥の処理方法である。
【0048】
そして、
図6は、本変形例における排水汚泥の処理方法の処理フローを示すフローチャートである。
【0049】
本フローでは、先ず、S201において、濾過ステップが実行される。S201の処理では、排水(汚水、雑排水)から夾雑物を濾過する。なお、この濾過ステップの詳細は、上記の第2実施形態の説明で述べたとおりである。
【0050】
次に、S202において、第3収容ステップが実行される。S202の処理では、濾過ステップによって濾過された夾雑物を収容する。
【0051】
次に、S203において、供給ステップが実行される。S203の処理では、第3収容ステップによって収容される夾雑物に対して、放線菌を含んだ微生物製剤を噴霧する。なお、この供給ステップの詳細は、上記の第2実施形態の説明で述べたとおりである。そして、S203の処理の後、本フローの実行が終了され、排水汚泥が処理されることになる。
【0052】
そして、以上に述べた排水汚泥の処理方法によっても、悪臭の発生を好適に抑制しながら優れたリサイクル性を実現することができる。
【0053】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。上記の実施形態では、排水汚泥の処理装置が下水処理場に設けられる例について説明したが、本開示の排水汚泥の処理装置は、例えば、食品工場や畜産場に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1・・・・・処理装置
10・・・・収容部
11・・・・余剰汚泥槽
12・・・・貯留ピット
20・・・・脱水機
30・・・・供給部
32・・・・液体滴下装置
36・・・・ノズル