(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】レーザ効率および眼の安全性を向上させたニアアイディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G09G 3/02 20060101AFI20241011BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20241011BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20241011BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
G09G3/02 A
G09G3/20 611A
G09G3/20 612J
G02B27/02 Z
H04N5/74 Z
(21)【出願番号】P 2022560996
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 IL2021050319
(87)【国際公開番号】W WO2021214745
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2024-03-11
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518105275
【氏名又は名称】ルーマス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Lumus Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヨチェイ・ダンジガー
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0106493(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0038892(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0157839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 ー 5/42
G02B 27/02
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視聴者に画像を表示するためのニアアイディスプレイであって、
レーザモジュールを制御するレーザドライバであって、
前記レーザモジュールが、少なくとも3つのレーザスポットを生成する、レーザドライバと、
前記レーザスポットを画像フィールド内で移動させるスキャンモジュールと通信するスキャンドライバと、を備え、
前記レーザドライバが、ベースライン出力レベル、閾値近傍出力レベル、およびレーザ発振出力レベルによって特徴付けられる出力変調を提供し、
前記出力変調のタイミングが、前記スキャンドライバと同期され、前記レーザスポットの位置不確定性を特徴付ける1つ以上
の楕円との
、前記レーザモジュールのための走査領域を示す画像パターンの畳み込みによって決定される、ニアアイディスプレイ。
【請求項2】
前記出力変調の前記タイミングが、前記ニアアイディスプレイの電気エネルギー消費量を最小限に抑えるように設定される、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
画像生成器と、少なくとも2つの照明コントローラと、を備えるコントローラをさらに備える、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記少なくとも2つの照明コントローラが、前記出力変調の前記タイミングを前記スキャンドライバおよび前記画像生成器と同期させるように構成される、請求項3に記載のディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、以下の一般的に所有されている米国仮特許出願に関するものであり、これらの優先権を主張しており、これらのすべては、本出願と同じ発明者によるものである。2020年4月20日に出願され、「Near-eye Display with Reduced Eye Intensity」と題された米国仮特許出願第63/012,283号、および2020年4月27日に出願され、「Laser Driver Modulation for a Laser Projector」と題された米国仮特許出願第63/015726号。上記仮出願の開示は、参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ニアアイディスプレイ、特に、レーザ効率および眼の安全性を向上させたニアアイディスプレイに関する。
【背景技術】
【0003】
レーザ照明は、屋外の風景に匹敵する輝度の仮想画像を提供するために、ニアアイディスプレイで使用されることが多い。カラーディスプレイでは、画像は、赤、緑、および青のレーザによって生成される輝点によって形成される。このスポットは、アクチュエータによって制御される1つまたは2つのミラーによって視野(FOV)にわたって走査される。
【0004】
このようなニアアイディスプレイの設計には、2つの対立する輝度要件が存在する。一方では、走査されたスポットの輝度は、実世界の風景を背景に画像が見えるように十分に高い必要がある。他方、観察者の眼に入る合成された光強度が眼の安全限度内にあるように、輝度は十分に低い必要がある。この対立は、特に、人間の眼が特に敏感な青色光の波長について当てはまる。
【0005】
バッテリ駆動ニアアイディスプレイに関してさらに考慮することは、十分なレーザ照明を提供するために必要な電力を低減することである。レーザ光パルスは、レーザ共振空洞が、レーザドライバによって空洞内の内部電力損失を超えるレーザ発振閾値レベルまで励起またはポンピングされる場合に照射される。レーザ光パルスの持続時間は、典型的には、パルスを励起するためにドライバが必要とする合計時間よりもはるかに短い。この時間は、達成可能なパルス/秒の単位のパルス繰り返し率を制限する。
【0006】
高いパルス繰り返し率を達成する1つの方法は、共振空洞をレーザ発振閾値のすぐ下の連続励起状態に維持することである。しかしながら、この方法は、レーザドライバの連続的な動作および大量の電気エネルギーの消費を必要とする。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、眼の安全性を確保し、電気エネルギーを節約しながら、明るい仮想画像を提供するニアアイディスプレイを提供する。
【0008】
本開示の主題の一態様によれば、画像を視聴者に表示するためのニアアイディスプレイが提供される。本ディスプレイは、少なくとも3つのレーザスポットを生成するレーザモジュールを制御するレーザドライバと、画像フィールド内でレーザスポットを移動させるスキャンモジュールと通信するスキャンドライバと、を含む。レーザドライバは、ベースライン出力レベル、閾値近傍出力レベル、およびレーザ発振出力レベルによって特徴付けられる出力変調を提供する。出力変調のタイミングは、スキャンドライバと同期され、レーザスポットの位置不確定性を特徴付ける1つ以上の不確定性楕円との画像パターンの畳み込みによって決定される。
【0009】
いくつかの態様によれば、出力変調のタイミングは、ニアアイディスプレイの電気エネルギー消費量を最小限に抑えるように設定される。
【0010】
いくつかの態様によれば、ディスプレイは、画像生成器と、少なくとも2つの照明コントローラと、を有するコントローラを含む。
【0011】
いくつかの態様によれば、少なくとも2つの照明コントローラは、出力変調のタイミングをスキャンドライバおよび画像生成器と同期させるように構成される。
【0012】
本開示の主題の別の態様によれば、画像を視聴者に表示するためのニアアイディスプレイが提供される。本ディスプレイは、少なくとも3つの重複していないレーザスポットを生成するレーザモジュールであって、少なくとも3つの重複していないレーザスポットのそれぞれが、視聴者の眼に入射する見かけ上の光強度を生成する、レーザモジュールと、少なくとも2つの独立した走査方向に画像フィールド内でレーザスポットを移動させるスキャンモジュールと通信するスキャンドライバと、を含む。さらに、レーザスポットは、スキャンモジュールが正常に機能中および/またはレーザスポットが走査方向のうちのいずれか一方向または全方向に移動できないスキャンモジュールの不具合中に、重複しない線を横断する。
【0013】
いくつかの態様によれば、レーザスポットの少なくとも2つは、異なる光波長を有する。
【0014】
いくつかの態様によれば、レーザスポットは、走査方向のうちの1つに対して実質的に平行または斜めの角度である1つ以上の線に配置される。
【0015】
いくつかの態様によれば、スキャンモジュールが正常に機能中および/またはレーザスポットが走査方向のうちのいずれか一方向または全方向に移動できないスキャンモジュールの不具合中に、レーザスポットの見かけ上の光強度のどのような組み合わせも、所定の眼の安全レベルを超えることはない。
【0016】
いくつかの態様によれば、スキャンモジュールは、共振スキャナと、リニアスキャナと、を含む。
【0017】
いくつかの態様によれば、ディスプレイは、共振スキャナの位置を測定するセンサを含む。
【0018】
いくつかの態様によれば、スキャンモジュールは、2軸ミラーおよび2軸アクチュエータを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明は、添付の図面を参照しながら単なる例として本明細書に記載される。
【
図1】本発明の一実施形態による、ニアアイディスプレイの例示的な光学レイアウトである。
【
図2A】本発明の一実施形態による、例示的なレーザ出力変調を示すグラフである。
【
図2B】本発明の一実施形態による、例示的なレーザ出力変調を示すグラフである。
【
図2C】本発明の一実施形態による、例示的なレーザ出力変調を示すグラフである。
【
図3A】本発明による、例示的な画像フィールドを走査する場合のレーザ出力変調のタイミングを示す図である。
【
図3B】本発明による、例示的な画像フィールドを走査する場合のレーザ出力変調のタイミングを示す図である。
【
図3C】本発明による、例示的な画像フィールドを走査する場合のレーザ出力変調のタイミングを示す図である。
【
図3D】本発明による、例示的な画像フィールドを走査する場合のレーザ出力変調のタイミングを示す図である。
【
図4A】本発明の一実施形態による、第1の3スポット走査方法を示す図である。
【
図4B】本発明の一実施形態による、第1の3スポット走査方法を示す図である。
【
図4C】本発明の一実施形態による、第1の3スポット走査方法を示す図である。
【
図4D】本発明の一実施形態による、第1の3スポット走査方法を示す図である。
【
図5A】本発明の一実施形態による、第2の3スポット走査方法を示す図である。
【
図5B】本発明の一実施形態による、第2の3スポット走査方法を示す図である。
【
図5C】本発明の一実施形態による、第2の3スポット走査方法を示す図である。
【
図5D】本発明の一実施形態による、第2の3スポット走査方法を示す図である。
【
図6A】本発明の一実施形態による、例示的な6スポット走査方法を示す図である。
【
図6B】本発明の一実施形態による、例示的な6スポット走査方法を示す図である。
【
図6C】本発明の一実施形態による、例示的な6スポット走査方法を示す図である。
【
図7】本発明のレーザ出力変調および6スポット走査方法を使用する、ニアアイレーザディスプレイ用コントローラの例示的なブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、複数の異なる態様を含み、各態様は、レーザ照明を使用するニアアイディスプレイの実施に関連する課題に対処し、顕著な利点を提供するために個別にまたは協働するように組み合わされて効果的に使用することができる。本発明によるニアアイレーザディスプレイの原理および動作は、図面および付随する説明を参照することにより、より良く理解され得る。
【0021】
図1は、本発明によるニアアイディスプレイ100の例示的な光学レイアウトを示す。照明光学モジュール104は、レーザドライバ108によって強度が制御される、赤(R)、緑(G)、および青(B)とラベル付けされた3つのレーザ光源を有するレーザモジュール109を含む。レーザ光源は、3つの発散レーザ光線を発生させ、これらのレーザ光線はミラー121によって反射され、レンズ122によって屈折されながら、異なる経路に沿って伝播し、幾何学的に合成される。合成された光線は、スキャンドライバ112によってリアルタイムに制御されるスキャンモジュール123によって2つの直交方向に走査される。スキャンモジュール123は、
図1に示されるように、共振スキャナ124およびリニアスキャナ125からなってもよく、または代替的に、2軸ミラーおよび2軸アクチュエータからなってもよい。共振スキャナ124は、一般に、走査中のレーザスポット位置の正確な測定を可能にする位置センサを含む。撮像レンズ126は、走査された光線を導波路瞳孔127内に結合するために、瞳孔撮像を提供する。レーザドライバ108およびスキャンドライバ112は、投影光学モジュール128によって視聴者の眼129に投影される画像を生成するために、コントローラ(
図7に示される)によって同期される。
【0022】
レーザ効率を向上させるためのレーザ出力変調
図2A、
図2Bおよび
図2Cは、本発明による例示的なレーザ出力変調を示すグラフを示す。
図2Aは、(a)レーザ発振を発生させる閾値電流がゼロであり、(b)レーザドライバのタイミング精度がぴったりである、すなわち、レーザディスプレイ画像フィールド内の可視画像パターンを生成することが必要とされる時点でレーザパルスが正確にトリガされる、「理想的な」状況をこの場合仮定して、縦軸がレーザ出力で横軸が時間のグラフを示す。この理想的な状況において、レーザドライバは、時間2DSから時間2DEまで動作すればよいであろう。
【0023】
図2Bは、タイミングの不正確さを考慮した時間的余裕を含む、レーザ出力をゼロでないレーザ発振閾値レベルまたはそのすぐ下に維持するための例示的なレーザ出力変調のグラフを示す。閾値を維持するためのレーザ出力は、時間1TS(「閾値開始」)で開始され、時間1TLで安定する。時間1TLEは、閾値のポンピングの終了に対応する。ポンピングなしでは、レーザ出力は衰えることになり、1TEの時点でその開始レベルに至る。簡潔にするために、立ち上がり時間(1TL-1TS)は、減衰時間(1TE-1TLE)とほぼ等しいように示される。閾値時間間隔(1TLE-1TL)の大きさは、レーザドライバ108によるレーザ出力変調パラメータの計算時におけるレーザスポットの予測位置の推定精度に依存する。(共振スキャナ124に搭載された位置センサによって提供されるレーザスポットの正確な位置測定は、一般に、レーザドライバ変調計算の終わりの方にのみ利用可能であるため、予測が必要である。)さらに、隣接するレーザパルスは、パルス間に実質的な時間間隔がある場合にのみ減衰する一定の連続した閾値駆動を生成する。
【0024】
図2Cは、本発明の原理による、レーザパルスを生成するための例示的なレーザ出力変調のグラフを示す。最適出力変調207は、実線の曲線によって表され、この曲線は、本質的に、
図2Aおよび
図2Bのグラフの重ね合わせである。2Bにおける平坦域は、最適な出力変調207を達成することなく、破線プロファイル205によって示されるように、2Aにおけるピークに対してずれてもよい。変調207は、ベースライン出力レベル207A、閾値近傍出力レベル207B、およびレーザ発振出力レベル207Cの3つのレーザ出力レベルによって特徴付けられる。閾値近傍レベル出力レベル207Bは、一点鎖線で示される閾値レベルをわずかに下回っている。
【0025】
レーザドライバによって供給される総電気エネルギーは、網掛け領域203を含まない
図2Cの実線の曲線の下の面積に比例する。従来技術のレーザ出力変調方式によって消費されるエネルギーは、レーザ発振閾値をちょうど下回る連続励起状態で共振空洞を維持するため、これらの網掛け領域も含む。本発明のレーザ出力変調は、従来技術よりもタイミングの点でやや複雑であるが、はるかにエネルギー効率は高い。この特徴は、バッテリ式ニアアイディスプレイにとってかなり重要である。
【0026】
図3A、
図3B、
図3Cおよび
図3Dは、本発明による、例示的な画像フィールドを走査する場合のレーザ出力変調のタイミングを説明する図を示す。
図3Aでは、画像フィールド346が、レーザスポット342によって走査され、その動きは、スキャンドライバ112によって制御されている。スポットは、矢印345の方向に移動し、画像フィールド346全体を含むスキャンパターンを形成する。
【0027】
図3Bは、画像フィールド346内の黒い三角形によって表される例示的な画像パターン347の走査を示す。レーザドライバ108は、レーザ光線が画像パターン347の内部にわたって走査する間、レーザ発振閾値レベルを超えてレーザ出力を上昇させる。先行技術のレーザ出力変調方式では、レーザドライバ108は、レーザ出力の閾値レベルを維持する一方、レーザスポットは、画像フィールド346の白い領域にわたっても走査するため、結果として、電力の無駄になる上に、レーザモジュールの過度な加熱を招く恐れもある。
【0028】
図3Cは、本発明に従ってレーザ出力変調のタイミングを決定するための不確定性楕円300Aおよび300Bを示す。楕円は、画像フィールド346内のスポット走査線344として、それぞれ、閾値時間1TSおよびレーザ開始時間2DSにおけるレーザスポット位置の不確定性を表す。楕円は、共振スキャナ124の走査方向とほぼ一致するX方向に細長い。この方向の走査運動は、リニアスキャナ125の走査運動と比較して非常に急速である。楕円の寸法は、レーザ出力変調の立ち上がり時間(1TL-1TS)および減衰時間(1TE-1TLE)の要因ともなる。
【0029】
図3Dは、例示的な画像パターン347を走査する場合の本発明のレーザ出力変調のタイミングを示す。線345は、レーザスポットによって走査される線を示す。形状302Aおよび302Bは、それぞれ、不確定性楕円300Aおよび300Bを有する例示的な画像パターン347の畳み込みを表す。レーザスポットの位置は、対応するレーザ出力変調時間-1TS、2DS、2DE、1TLEおよび1TE-で示される。これらの変調時間は、レーザモジュールが走査と合わせて画像パターン347を確実に照射しながら、ニアアイディスプレイによる電気エネルギー消費量を最小限に抑える。
【0030】
眼の安全性を向上させた走査方法
ニアアイディスプレイにおいて、レーザ生成画像の輝度は、一般に、屋外昼間輝度とほぼ同じ輝度、典型的には約5000NITを有し、1NITは、1平方メートル当たり1カンデラの白色光強度に等しい。
【0031】
以下の説明では、以下の3つのケースのそれぞれについて、スキャンモジュール123の不具合の眼の安全性に対する影響を提示する。
(a)共振スキャナ124およびリニアスキャナ125が動作しない。
(b)リニアスキャナのみが動作しない。
(c)共振スキャナのみが動作しない。
【0032】
ケース(a)の場合、レーザスポットは単一の画像画素上の位置に固定されたままであり、その画素における見かけ上の光強度は5000NIT×Nに上昇し、Nは画像画素数である。例えば、N=800×600=480000の場合、強度は2.4×109NITに上昇する。この強度は、太陽を直接見つめたときに網膜に入射する輝度よりほぼ1.5倍大きい。このような高い強度は、明らかに視聴者の眼に有害である。少なくとも、視聴者は、まばたきを行い、最終的にはニアアイディスプレイを完全に取り除くことによって対応するであろう。
【0033】
ケース(b)の場合、リニアスキャナ125は動作不能であり、共振スキャナ124は正常に動作し続ける。この場合の見かけ上の光強度の計算は、表1に与えられる例示的な画像フィールド走査パラメータについて、以下に提示される。提示された計算は近似であり、説明のために簡略化されていることに留意されたい。眼の安全規制を確実に遵守するためには、一般的により多くの関連する計算が必要である。
【表1】
【0034】
共振スキャンミラーの周波数fMは、双方向照明およびスキャンオーバーヘッドなしの仮定のもとで計算される。共振スキャナ124は、27マイクロ秒に等しい時間TL内で線上を走査するが、ラインスキャナ125が動作しないため、同じ線が連続して何度も走査される。1画素当たりの見かけ上の強度は、2.4×109NIT/NP=3×106NITに等しい。この見かけ上の強度は、太陽の強度よりもはるかに低く、眼に損傷を与えることはなく、数マイクロ秒の時間にわたって熱エネルギーを散逸させるが、依然として高めであり、視聴者にとっては不快である。
【0035】
ケース(c)の場合、共振スキャナ124は動作不能であり、リニアスキャナ125は、正常に動作し続ける。この場合、レーザスポットは、ある線から次の線へとゆっくりと移動するが、各線の同じ水平位置に16ミリ秒のTFに等しい相対的に長い時間留まる。スポットが非常にゆっくりと動いているため、眼に入射する見かけ上の強度は、ケース(a)の場合とほぼ同じであり、すなわち、2.4×109NITである。したがって、ケース(a)および(c)の場合、スキャナの不具合は、ニアアイディスプレイ視聴者の眼の安全性を脅かし、ケース(b)の場合、不具合は、眼の不快感を引き起こす可能性があるが、損傷を引き起こす恐れはない。
【0036】
図4A~
図4D、
図5A~
図5D、および
図6A~
図6Dは、スキャナ不具合の上記のケースによって生じる眼の安全性に対する脅威を、本発明のスキャン方法の様々な例示的な実施形態がどのように克服したかを示す。
【0037】
図4A、
図4B、
図4Cおよび
図4Dは、本発明の一実施形態による第1の3スポット走査方法を示す図を示す。
図4Aでは、画像平面410上の3つのレーザスポット480A、481A、および482Aは、3つの異なるレーザ光源からの照明に対応する。矢印で示されるX軸およびY軸は、それぞれ、スキャナ124および125の走査軸を表す。
図4Aでは、レーザスポットは、X軸に実質的に平行な線上に配置される。
図4Bは、それぞれ、レーザスポット480A、481A、および482Aの走査によって形成された画像フィールド480B、481B、および481Cを示す。なお、3つの画像フィールドが互いに水平方向にずれていることに留意されたい。3つのスポットのスキャンパターンは、
図4Bに破線、実線、点線で示されている。従来技術の合成されたスポットと比較して3つのレーザスポットの利点は、光強度が分散され、各スポットが全強度のほぼ1/3を有するようになることである。したがって、上記のケース(a)の場合のように、スキャナ124および125が両方とも動作しない場合、スポット当たりの強度は、合成されたスポットの約1/3、すなわち(1/3)(2.4×10
9)=8×10
8NITである。
【0038】
図4Cは、上記ケース(b)の場合のように、リニアスキャナ125のみが作動しない場合の、3つのスポット480A、481A、および482Aの動きを示す図である。この場合、3つのスポットは、同じ線496上を何度も連続して走査する。スキャンパターンがほぼ重複している限り、視聴者の眼の同じ部分が短い時間間隔で照射される。例えば、眼の熱積分時間に匹敵する数マイクロ秒の期間において、3つのスポットは、3つの重複する線分480C、481C、および482C上を走査する。重複するため、視聴者に対する見かけ上の光強度は、3つのスポットすべてを合成したものとほぼ同じであり、すなわち2.4×10
9NIT/N
P=3×10
6NITである。
【0039】
図4Dは、上記のケース(c)の場合のように、共振スキャナ124のみが動作しない場合の3つのスポット480A、481A、および482Aの動きを示す図である。この場合、3つのスポット480A、481A、および482Aは、それぞれ3つの別個の(重複しない)線480D、481D、および482D上を走査する。したがって、この場合の見かけ上の光強度は、合成されたスポットの約1/3に過ぎず、すなわち(1/3)(2.4×10
9)=8×10
8NITである。
【0040】
したがって、スキャナに不具合がある3つのケースすべてにおいて、
図4A~
図4Dに示される3スポット走査方法について、視聴者の眼に対する見かけ上の光強度は、眼の安全限度内にある。
【0041】
図5A、
図5B、
図5C、および
図5Dは、本発明の別の実施形態による、第2の3スポット走査方法を示す図を示す。
図5Aは、3つの異なるレーザ光源に対応する3つのレーザスポット590A、591A、および592Aが画像平面510上に現れる場合のそれぞれの位置を示す。矢印で示されるX軸およびY軸は、それぞれ、スキャナ124および125の走査軸を表す。
図5Aにおいて、レーザスポットは、X軸と斜めの角度を形成する線上に配置される。
図5Bは、それぞれ、レーザスポット590A、591A、および592Aの走査によって形成された画像フィールド590B、591B、および591Cを示す。なお、3つの画像フィールドは、互いに水平および垂直にずれていることに留意されたい。3つのスポットのスキャンパターンは、
図5Bに破線、実線、および点線で示されている。さらに、走査パターンは完全に重複しないため、見かけ上の光強度は、先行技術の合成されたスポットと比較して、通常の動作中のすべての画素において約1/3倍に低減される。さらに、上記のケース(a)の場合のように、スキャナ124および125が両方とも動作しない場合、スポット当たりの強度は、合成されたスポットの約1/3に過ぎず、すなわち(1/3)(2.4×10
9)=8×10
8NITである。
【0042】
図5Cおよび
図5Dは、2つのスキャナのうちの1つが不具合のために動作しない場合の、3つのスポット590A、591A、および592Aの動きを示す。
図5Cにおいて、上記ケース(b)の場合のように、共振スキャナ524は、動作しており、リニアスキャナ525は、動作していない。この場合、3つのスポットは、別個の(重複していない)線590C、591C、および592C上を走査し、視聴者の見かけ上の光強度は、
図4Cの合成されたスポットの1/3に過ぎず、すなわち(1/3)(3×10
6)=1×10
6NITである。
図5Dでは、上記ケース(c)の場合のように、スキャナ25は動作しており、共振スキャナ24は動作していない。この場合、3つのスポット580A、581A、および582Aは、それぞれ3つの別個の(重複しない)線590D、591D、および592D上を走査する。したがって、この場合の見かけ上の光強度は、合成スポットの約1/3、すなわち、(1/3)(2.4×10
9)=8×10
8NITである。
【0043】
したがって、スキャナに不具合がある3つのケースのすべてにおいて、
図5A~
図5Dに示される3スポット走査方法について、視聴者の眼における見かけ上の光強度は、眼の安全限度内にある。
【0044】
図6A、
図6B、および
図6Cは、本発明の別の実施形態による、6スポット走査方法の図を示す。
図6Aは、画像平面610上の6つの異なるレーザ光源に対応する6つのレーザスポット600A~605Aの配向を示す。前述のように、矢印で示されるX軸およびY軸は、それぞれ、スキャナ124および125の走査軸を表す。
図6Aにおいて、6つのレーザスポットは、X軸と斜めの角度を形成する2つの線上に配置される。6つのレーザスポットによって走査された画像フィールドは、互いに対して水平方向および垂直方向の両方にずれている。さらに、走査パターンは完全に重複しないため、見かけ上の光強度は、先行技術の合成されたスポットと比較して、通常の動作中のすべての画素において約1/6倍に低減される。さらに、上記のケース(a)の場合のように、スキャナ124および125が両方とも動作しない場合、スポット当たりの強度は、合成されたスポットの約1/6に過ぎず、すなわち(1/6)(2.4×10
9)=4×10
8NITである。
【0045】
図6Bおよび
図6CDは、2つのスキャナのうちの1つが不具合により作動しない場合の6つのスポット600A~605Aの動きを示す。
図6Bにおいて、上記ケース(b)の場合のように、共振スキャナ124は、動作しており、リニアスキャナ125は、動作していない。この場合、6つのスポットは、別個の(重複していない)線600B~605B上を走査し、視聴者にとって見かけ上の光強度は、
図4Cの合成されたスポットの1/6に過ぎず、すなわち(1/6)(3×10
6)=×10
5NITである。
図6Cにおいて、上記ケース(c)の場合のように、リニアスキャナ125は、動作しており、共振スキャナ124は、動作していない。この場合、6つのスポットは、6つの別個の(重複しない)線600C~605C上を走査し、視聴者にとって見かけ上の光強度は、結合スポットの約1/6であり、すなわち、(1/6)(2.4×10
9)=4×10
8NITである。
【0046】
したがって、スキャナに不具合がある3つのケースのすべてにおいて、
図6A~
図6Cに示される6スポット走査方法について、視聴者の眼における見かけ上の光強度は、眼の安全限度内にある。
【0047】
コントローラのブロック図
図7は、本発明のレーザ出力変調および6スポット走査方法を使用する、ニアアイレーザディスプレイのためのコントローラ700の例示的なブロック図を示す。画像生成器702は、重ね合わせられて視聴者に投影された2つのカラー画像を生成する2つの3レーザ照明コントローラ203Aおよび203Bに画像データを提供する。照明コントローラ203Aによって制御される3つのレーザスポットの位置と、照明コントローラ203Bによって制御される3つのレーザスポットの位置との間には、本質的に相関関係がないため、6つのレーザスポットのそれぞれは、一般に、走査された画像内の異なる画素を照射する。スポットが重複して強度が上がることもあれば、重複しないで解像度が上がることもある。統計的に、2つの重ね合わせ画像を使用することにより、2の平方根にほぼ等しい倍数だけ、走査された画像の画素スループットが増加する。
【0048】
2つの照明コントローラ703A(またはB)のそれぞれは、光学的歪みとカラー/ホワイトバランスのために画像を補正する前処理部704A(またはB)と、画像生成器702から受信した画像パターンで
図3Cに示される不確定性楕円を畳み込む畳み込み部705A(またはB)と、合計(または重ね合わせ)部707A(またはB)と、スキャンドライバ112から入力信号を受信し、レーザモジュール109A(またはB)内の3つのレーザの強度を制御するレーザドライバ108A(またはB)に補間およびトリガ信号を提供する調整部710A(またはB)と、からなる。
【0049】
スキャンモジュール123は、
図1にも模式的に示される、リニアスキャナ125と、共振スキャナ124と、を含む。共振スキャナの瞬時位置は、センサ(図示せず)によって測定され、それぞれのレーザドライバ108Aおよび108Bと通信している調整モジュール710Aおよび710Bに送信される。
【0050】
図7における個別のユニットの提示は、明確化を目的としており、特定の実施では、個別のユニットの機能を単一のモジュールに統合することが望ましいことがある。さらに、
図7のブロック図は、3つ以上の照明コントローラ703Aおよび703Bを含み、画像フィールド内に7つ以上のレーザスポットを生成するように拡張されてもよい。この拡張は、視聴者の眼における見かけ上の光強度をさらに低減することにより眼の安全性のさらなる向上を可能にし、画素スループットのさらなる増加も可能にする。
【0051】
上記の説明は例として役立つことのみを意図すること、および他の多くの実施形態が可能であり、上記の本発明の範囲内に含まれ、添付の特許請求の範囲に定義されることが理解されるであろう。