(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】トランス-スプライシングRNA(tsRNA)
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20241011BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20241011BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20241011BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20241011BHJP
C12N 15/863 20060101ALI20241011BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20241011BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20241011BHJP
C12N 15/869 20060101ALI20241011BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241011BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241011BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241011BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241011BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241011BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20241011BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241011BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20241011BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20241011BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20241011BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20241011BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241011BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241011BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20241011BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20241011BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20241011BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241011BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20241011BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20241011BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20241011BHJP
A61K 31/396 20060101ALI20241011BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20241011BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20241011BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20241011BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/85 Z
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12N15/863 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N5/10
A61P35/00
A61P35/02
A61K48/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/16
A61P31/18
A61P31/20
A61P31/22
A61P17/00
A61P25/00
A61P3/00
A61P7/04
A61K31/7105
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K31/513
A61K31/396
A61K31/522
A61K31/675
A61K9/48
A61K9/51
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023011523
(22)【出願日】2023-01-30
(62)【分割の表示】P 2018551404の分割
【原出願日】2017-03-31
【審査請求日】2023-02-28
(32)【優先日】2016-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509034605
【氏名又は名称】ナショナル ユニバーシティ オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】パツェル・フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ポダー・スシュミタ
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-534811(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0036996(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0202448(US,A1)
【文献】SUSHMITA PODDAR,Chapter4 Results Trans-splicing RNA molecules for 3’and 5’exon labelling (EL) targeting alpha-fetoprotein (AFP), Chapter5 Results Selective killing of AFP positive cells triggered by trans-splicing,RNA trans-splicing for selective killing of virus-transduced or cancer cells,2016年01月,p.67-141
【文献】BMC Cancer,2013年,Vol.13, article No.137,p.1-10
【文献】SUSHMITA PODDAR,Chapter4 Results Trans-splicing RNA molecules for 3’and 5’exon labelling (EL) targeting alpha-fetoprotein (AFP),RNA trans-splicing for selective killing of virus-transduced or cancer cells,2016年01月,p.67-110
【文献】Molecular Oncology,2013年,Vol.7,p.1056-1068
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
Pubmed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療すべき疾患に関連するかまたは治療すべき疾患のためのバイオマーカーである遺伝子の少なくとも一部分に特異的な少なくとも1つの結合ドメイン;
少なくとも1つの発現可能な自殺タンパク質または自殺系の成分であるタンパク質をコードする核酸、
少なくとも1つのスプライスシグナル、
結合ドメインの外側に、少なくとも1つのシス結合もしくは自己結合ドメイン、
を含むトランス-スプライシングRNA(tsRNA)分子であって、
前記結合ドメインは、内部結合および/または自己相補的配列を有しない少なくとも25個の連続的な非構造化されたヌクレオチド(nt)を含む結合部位を含み、そして前記結合部位内にまたは当該部位の外に、前記結合ドメインは、44ntまたはそれより長い場合、少なくとも1つのまたは複数の、前記遺伝子に対するミスマッチヌクレオチドを有する、
トランス-スプライシングRNA(tsRNA)分子。
【請求項2】
前記結合部位が、次の個数のヌクレオチドを含むかまたは次の個数のヌクレオチドからなるリストから選択されるヌクレオチドの配列を含む、請求項1に記載のトランス-スプライシングRNA分子:25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、69,70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300個またはそれを超えるヌクレオチド。
【請求項3】
前記結合ドメインが、治療すべき疾患に関連するかまたは治療すべき疾患のためのバイオマーカーである遺伝子の前記一部分に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%相補的であるヌクレオチドの配列を含む、請求項1または2に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項4】
前記結合ドメインにおけるミスマッチが、前記結合部位を含めるかまたは当該結合部位を除いて、標的に対して完全に相補的な45ntのまたはそれより長い区間を回避するように位置する、請求項1~3のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項5】
前記ミスマッチが、5’または3’末端から少なくとも5ヌクレオチドである、請求項4に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項6】
前記の少なくとも1つの発現可能な自殺タンパク質が単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVtk)である、請求項1~5のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項7】
前記核酸が複数の発現可能な自殺タンパク質または自殺系の成分である複数のタンパク質をコードする、請求項1~6のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項8】
前記tsRNAが3’ERを誘発する、請求項7に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項9】
前記tsRNAが前記結合ドメインに隣接するスペーサー配列も含む、請求項1~8のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項10】
前記結合ドメインが、治療すべき疾患に関連するかまたは治療すべき疾患のためのバイオマーカーである遺伝子の同一のもしくは異なる部分に対して相補的である、請求項1~8のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項11】
前記結合ドメインを複数含み、各々の結合ドメインが、治療すべき疾患に関連するかまたは治療すべき疾患のためのバイオマーカーである遺伝子であって、互いに異なる遺伝子に相補的である、請求項1~9のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項12】
前記tsRNAが、前記結合ドメインの外側かつ前記分子の3’末端に、自己相補的な配列の存在のために折りたたまれるかまたは自身と対を形成するRNAの高度に構造化された配列を含む、請求項1~11のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項13】
高度に構造化されたRNAが、それとポリA部位の間に位置したスペーサーに隣接する、請求項12に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項14】
高度に構造化されたRNAが、活性もしくは不活性リボザイムである、請求項12に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項15】
前記tsRNAが5’ERを誘発する、請求項13または14に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項16】
前記tsRNAが5’または3’ERを誘発する、請求項1~7または9~15のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項17】
前記疾患が、癌またはウイルス感染または細菌感染または転位因子、放射線、化学物質もしくは未知の誘因により誘発された突然変異により引き起こされる後天性遺伝疾患である、請求項1~16のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項18】
前記癌が、肝細胞がん(HCC)、子宮頸がん、膣癌、外陰癌、陰茎癌、皮膚癌、悪性黒色腫を含む黒色腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、メルケル細胞癌、肺癌、細胞膀胱癌(cell bladder cancer)、乳癌、結腸または直腸癌、肛門癌、子宮内膜癌、腎癌、白血病、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CML)、慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞白血病(HCL)、T細胞前リンパ球性白血病(P-TLL)、大顆粒リンパ球性白血病、成人T細胞白血病、リンパ腫、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、鼻咽頭癌、口腔または咽頭癌、口腔咽頭癌、胃癌、脳腫瘍、骨の癌または幹細胞の癌である、請求項17に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項19】
前記ウイルス感染が、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)を含むレトロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型および2型(HIV-1およびHIV-2)を含むレンチウイルス、16型および18型(HPV-16およびHPV-18)を含むヒトパピローマウイルス、HAV、HBV、HCV、HDVおよびHEVを含む肝炎ウイルス、単純ヘルペス(HSV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)を含むヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、インフルエンザウイルスまたは他の任意の組み込みウイルスによる感染である、請求項17に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項20】
前記細菌感染が、細菌、例えばバントネラ・ヘンセラ(Bartonella henselae)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、サルモネラ種、サルモネラ・チフス(Salmonella typhi)、ブルセラ種、レジオネラ種、マイコバクテリア種、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tunberculosis)、ノカルジア種、ロドコッカス種、エルシニア種またはナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitides)による感染である、請求項17に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項21】
前記の後天性遺伝疾患が、神経線維腫症1型および2型、マッキューン・オルブライト、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、表皮水疱症、ファンコニAおよびC、フィラデルフィア染色体、血友病AおよびB、嚢胞性線維症、マックル・ウェルズ症候群、リポタンパク質リパーゼ欠損症、B-サラセミアまたはピルビン酸脱水素酵素複合体欠損症である、請求項17に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1つに記載の前記tsRNAを含む細胞。
【請求項23】
請求項1~21のいずれか1つに記載の前記tsRNAを含むベクター。
【請求項24】
前記ベクターが、裸の核酸をベースとするベクター、非ウイルスベクターまたはウイルスベクターである、請求項23に記載のベクター。
【請求項25】
前記の裸の核酸をベースとするベクターが、RNA分子、プラスミド、DNAミニサークルまたはダンベル型DNA最小ベクターを含む、請求項24に記載のベクター。
【請求項26】
前記の非ウイルスベクターが、リポソーム小胞、ナノ粒子、ポリマーコンジュゲート、抗体コンジュゲート、細胞貫通ペプチドまたはポリマーカプセルを含む、請求項24に記載のベクター。
【請求項27】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、キメラウイルスベクター、シンドビス・ウイルスベクターまたはアルファウイルスベクター、セムリキ森林ウイルスベクターおよびベネズエラウマ脳炎ウイルスベクターである、請求項24に記載のベクター。
【請求項28】
異常細胞を標的化する方法に使用するための請求項1~21のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子であって、前記方法が、当該トランス-スプライシングRNA分子での、in vivoにおける、腫瘍中への、局所適用;経鼻適用;肺胞適用;全身適用;経口適用;静脈内適用;筋肉適用;皮下適用;皮膚適用;腹腔内適用または注射、および、任意選択的に、前記細胞を、前記細胞を殺すために有効な前記自殺系の他の成分(単数または複数)に曝露することを含む、前記トランス-スプライシングRNA分子。
【請求項29】
異常細胞を標的化する方法に使用するための請求項1~21のいずれか1つに記載のtsRNAを含むベクターであって、前記方法が、当該ベクターでの、in vivoにおける、腫瘍中への、局所適用;経鼻適用;肺胞適用;全身適用;経口適用;静脈内適用;筋肉適用;皮下適用;皮膚適用;腹腔内適用または注射、および、任意選択的に、前記細胞を、前記細胞を殺すために有効な前記自殺系の他の成分(単数または複数)に曝露することを含む、前記ベクター。
【請求項30】
細胞を殺す方法であって、前記細胞を、請求項1~20のいずれか1つに記載のtsRNAまたは前記tsRNAを含むベクターで、ex vivoにおいて、トランスフェクション、リポフェクション、形質導入、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクションまたは形質転換すること、および任意選択的に、前記細胞を殺すために有効な前記自殺系の他の成分(単数または複数)に前記細胞をex vivoにおいて曝露することを含む方法。
【請求項31】
疾患を治療する方法に使用するための請求項1~20のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子であって、前記方法が、異常細胞を、当該トランス-スプライシングRNA分子で、ex vivoまたはin vivoにおいて、トランスフェクション、リポフェクション、形質導入、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクションまたは形質転換すること、および任意選択的に、前記細胞を殺すために有効な前記自殺系の他の成分(単数または複数)に前記細胞を曝露することを含む、前記トランス-スプライシングRNA分子。
【請求項32】
疾患を治療する方法に使用するための請求項1~20のいずれか1つに記載のtsRNAを含むベクターであって、前記方法が、異常細胞を、当該ベクターで、ex vivoまたはin vivoにおいて、トランスフェクション、リポフェクション、形質導入、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクションまたは形質転換すること、および任意選択的に、前記細胞を殺すために有効な前記自殺系の他の成分(単数または複数)に前記細胞を曝露することを含む、前記ベクター。
【請求項33】
前記自殺系の前記成分(単数または複数)が、ガンシクロビル、シトシンデアミナーゼ-5-フルオロシトシン、シトクロムP450-イホスファミド、シトクロムP450-シクロホスファミドおよびニトロレダクダーゼ-5-[アジリジン-1-イル]-2,4-ジニトロベンズアミドを含むかまたはこれらからなる群から選択される、請求項28または31に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項34】
前記自殺系の前記成分(単数または複数)が、ガンシクロビル、シトシンデアミナーゼ-5-フルオロシトシン、シトクロムP450-イホスファミド、シトクロムP450-シクロホスファミドおよびニトロレダクダーゼ-5-[アジリジン-1-イル]-2,4-ジニトロベンズアミドを含むかまたはこれらからなる群から選択される、請求項29または32に記載のベクター。
【請求項35】
前記自殺系の前記成分(単数または複数)が、ガンシクロビル、シトシンデアミナーゼ-5-フルオロシトシン、シトクロムP450-イホスファミド、シトクロムP450-シクロホスファミドおよびニトロレダクダーゼ-5-[アジリジン-1-イル]-2,4-ジニトロベンズアミドを含むかまたはこれらからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞が哺乳類
細胞である、請求項
28および31のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項37】
前記細胞が哺乳類
細胞である、請求項22に記載の細胞。
【請求項38】
前記細胞が哺乳類
細胞である、請求項29または32に記載のベクター。
【請求項39】
前記細胞が哺乳類
細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞がヒト
細胞である、請求項
28および31のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
【請求項41】
前記細胞がヒト
細胞である、請求項22に記載の細胞。
【請求項42】
前記細胞がヒト
細胞である、請求項29または32に記載のベクター。
【請求項43】
前記細胞がヒト
細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項44】
請求項1~21のいずれか1つに記載の前記tsRNAまたは請求項23~27のいずれか1つに記載のベクターおよび、任意選択的に、前記トランス-スプライスされたRNAを発現する細胞の死を誘発するために有効な前記自殺系の少なくとも1つのさらに別の成分を含む薬剤。
【請求項45】
請求項1~20のいずれか1つに記載の前記tsRNAまたは請求項23~27のいずれか1つに記載のベクター;任意選択的に、前記トランス-スプライスされたRNAを発現する細胞の死を誘発するために有効な前記自殺系の少なくとも1つのさらに別の成分;およびヒトまたは獣医学的用途に適したキャリアーを含む医薬組成物。
【請求項46】
前記自殺系の前記1つのさらに別の成分が、ガンシクロビル、シトシンデアミナーゼ-5-フルオロシトシン、シトクロムP450-イホスファミド、シトクロムP450-シクロホスファミドおよびニトロレダクダーゼ-5-[アジリジン-1-イル]-2,4-ジニトロベンズアミドを含むかまたはこれらからなる群から選択される、請求項45に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたは複数の非構造化結合ドメインを含むトランス-スプライシングRNA(tsRNA)分子;前記tsRNAを含む細胞またはベクター;および前記tsRNAを使用する細胞を殺すためのまたは疾患を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スプライソソームが介在するRNAトランス-スプライシング(SMaRT)は、それによって2つの別個の前駆体メッセンジャーRNA(pre-mRNA)または他のスプライシング可能なRNAがトランスで連結して核においてキメラRNAを生成するプロセスであり、該キメラRNAは核輸出後に、細胞質においてキメラタンパク質の形成を誘発する。この技術は、例えば突然変異を有するものを、無傷のエキソンで置き換えることにより欠損のあるRNAを修復するために、または内因性のメッセージを機能性配列で標識するために、使用することができる。
【0003】
しかしながら、トランス-スプライシングをベースとする修復は達成するのが困難であり、なぜならば、永続的な修復のためにはトランス-スプライシングRNAが継続的に送達されるか、またはゲノムへの組み込み後に内因的に発現される必要があり、また、標的内の意図されるスプライス部位への正確なスプライシングが必要であり、そして、それは通常のシス-スプライシングとの激しい競争にもかかわらずに治療的な表現型を誘発するのに十分に効率的でなければならないからである。
【0004】
トランス-スプライシングをベースとする機能性配列での標識は、例えば、生細胞における遺伝子の発現、または自殺遺伝子治療アプローチにおける異常転写物を発現する細胞の死を選択的に誘発するための死シグナルをモニターするための蛍光タンパク質をコードするRNAに関する。異常転写物、異常細胞のためのバイオマーカーであり得、例えば癌に特異的ながん遺伝子の転写物またはウイルス転写物である。上記の死シグナルは、a)毒素のような直接的なシグナル、例えばジフテリアまたはコレラ毒素、b)アポトーシス遺伝子、例えばカスパーゼ、またはc)酵素、例えばガンシクロビル(GCV)のような薬物の共送達において死シグナルを誘発する単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVtk)、によって誘発され得る。直接的な毒素a)またはアポトーシスシグナルb)は、即座に細胞死を誘発することができるが、残念ながらこれらは、非特異的なターゲッティングまたはオフターゲッティングに伴うリスクを増加させる。これは、上記の技術の規制承認を問題のあるものにしてしまう。対照的に、それら自体は細胞に対して毒性でない2つの成分c)の組み合わせの使用は、はるかに安全なアプローチを示す。
【0005】
治療として、トランス-スプライシング誘発性の細胞死は、トランス-スプライシングをベースとする修復よりも達成するのが容易であり、なぜならばトランス-スプライシングコンストラクトを、一度だけ標的細胞中に送達する必要があり、従って長期の発現は不要だからである。さらに、選択的オンターゲット・トランス-スプライシング、すなわち正確な標的に向けられ、そのような標的のいずれのスプライス部位にも関与しないトランス-スプライシングは不利ではなく、むしろ標的特異的な死シグナルに寄与し、トランス-スプライシングは、標的細胞を殺すために十分に強力なシグナルを誘発するために高度に効率的である必要はない。
【0006】
HSVtk/GCV系に基づいて、我々は、有効なトランス-スプライシングをベースとする自殺遺伝子治療アプローチを開発した。我々は、5’および3’エキソン置換(ER)両方のための、すなわち、自殺遺伝子または自殺遺伝子系の構成要素、例えばHSVtkを、標的メッセージの5’または3’末端のいずれかに加えるための、新規のトランス-スプライシングRNAを設計した。トランス-スプライシングRNA(tsRNA)のオンターゲット活性および特異性の両方を改善するために、RNA構造設計を研究した。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様によると、以下を含むトランス-スプライシングRNAが提供される:
治療すべき疾患に関連するかまたは治療すべき疾患のためのバイオマーカーである遺伝子の少なくとも一部分に特異的な少なくとも1つの結合ドメイン;
少なくとも1つの自殺タンパク質または自殺系の成分であるタンパク質をコードする核酸;および
少なくとも1つのスプライスシグナル;
ここで、前記結合ドメインは、内部結合および/または自己相補的配列を有しない少なくとも25個、より好ましくは35個、より一層好ましくは45個、最も好ましくは55個またはそれ以上の連続的な非構造化ヌクレオチド(nt)を含む結合部位を含み、そして;前記結合ドメインが44ntまたはそれより長い場合、前記結合ドメインは、前記結合部位内にまたは当該部位の外に、少なくとも1つの、または複数の、前記遺伝子に対するミスマッチヌクレオチド(単数または複数)を有する。
【0008】
治療すべき疾患に関連するかまたは治療すべき疾患のためのバイオマーカーである遺伝子に対する本明細書における言及は、前記疾患の特徴であり、したがって前記疾患が生じた場合に専らまたは優先的に存在するかまたは発現される遺伝子に対する言及である。
【0009】
自殺系の成分であるタンパク質に対する本明細書における言及は、少なくとも1つの他の分子と相互作用するタンパク質であって、当該相互作用により前記タンパク質を発現する細胞の死を誘発するかまたはもたらすタンパク質に対する言及である。
【0010】
当業者には、tsRNAが、tsRNAが結合すべき遺伝子と相補的なヌクレオチドを有すること、およびtsRNAはRNAなので、ヌクレオチド、すなわちアデノシン、グアノシン、シチジンまたはウリジンおよび各塩基、すなわちアデニン、グアニン、シトシンおよびウラシル、またはこれらの公知の化学修飾を含むことが理解されるであろう。
【0011】
当業者に知られているように、RNAはヌクレオチドの鎖であるがDNAとは異なっており、それは多くの場合に天然において、自己相補配列(これによりRNAの一部分を折りたたむことができ、それ自身と対をなして高度に構造化された分子を形成することができる)の存在のために自身上で折り畳まれた一本鎖として見られる。従って、非構造化状態に対する本明細書における言及は、RNAヌクレオチドの配列が折り畳まれていない鎖で存在する前記結合部位内の状態に対する言及である。この鎖は、曲がっているかまたは湾曲していてもよいが、折り畳まれていない;従って、内部結合または自己相補性配列は存在しない。
【0012】
代替として、非構造化状態を説明する別の方法は、前記結合部位が、安定な最小自由エネルギー二次構造に折りたたまれないと予測された配列を含むか(RNA二次構造形成のGibbsの自由エネルギー ΔG≧0kcal/mol)、または少なくとも、可能性のある結合ドメインの平均より構造化されていない(ΔG>ΔG平均)、ということである。RNAfoldは、そのような構造を白丸として示す一方で、mfoldは、ΔG≧0kcal/molの構造に関しては結果を与えないであろう。
【0013】
好ましい実施態様において、前記結合ドメインは、標的遺伝子またはpre-mRNAに対して完全に相補性ではなく、従って、前記結合ドメインは、標的遺伝子と完全な二重構造を形成せず、通常は、200bp以下、最も通常は100bp以下である。
【0014】
本発明の特定の実施態様において、前記結合ドメインは、前記結合部位を含めて、以下を含むかまたは以下からなるリストから選択されるヌクレオチドの配列を含む:25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300個またはそれを超えるヌクレオチド。
【0015】
本発明のさらに別の特定の実施態様において、前記結合ドメインは、治療すべき疾患に関連するかまたは治療すべき疾患のためのバイオマーカーである前記遺伝子の前記一部分に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%相補的であるヌクレオチドの配列を含む。理想的には、前記結合ドメインにおけるミスマッチは、標的に対して完全に相補的な45ntまたはそれ以上の区間(前記結合部位を含めるか、または当該部位を除く)を回避するように位置しており、理想的には、5’または3’末端から少なくとも5ヌクレオチドである。我々は、これらの特徴は、核中での長い二本鎖RNAの形成から得られるかもしれないA-to-I編集を含むアンチセンス効果を抑制することにより作用する可能性が最も高いと考える。これらの特徴は、3’ERにおいて特に有益であると考えられる。
【0016】
特定の実施態様において、結合ドメインは、特にそれが短い場合、すなわち結合部位を含めて100ヌクレオチド未満である場合、結合ドメインの非構造化された性質を維持するのを助けるスペーサー配列に隣接して位置し、従って、tsRNAも当業者に公知のスペーサー配列を、前記結合ドメインに隣接して含む。
【0017】
前記の結合ドメインを、任意の疾患の任意のバイオマーカーに結合するように設計でき、それが上記の特徴を有するならば、効果的なトランスースプライシングが起こることを当業者は理解するであろう。従って、本明細書に記載される自殺遺伝子治療コンストラクトまたは配列は、容易に再プログラム化して、単純に標的結合ドメインを交換することにより代わりの疾患または罹患組織を標的にすることができる。
【0018】
本発明のさらに別の特定の実施態様において、前記のトランス-スプライシングRNA分子は、治療すべき疾患に関連するかまたは治療すべき疾患のためのバイオマーカーである遺伝子の同一のもしくは異なる部分に対して相補的である前記結合ドメインを複数含む。さらに別の結合ドメインが、遺伝子の同一部分のためのものである場合、我々は、それが特異的なオンターゲットトランス-スプライシングを改善することを見出した。さらに別の結合ドメインが、遺伝子の異なる部分のためのものまたはさらには異なる遺伝子のためのものである場合、我々は、それがトランス-スプライシング活性を増強し、トランス-スプライシング表現型を改善することを見出した。
【0019】
まさに我々は、マルチプルターゲット結合ドメインを含むトランス-スプライシングRNA(tsRNA)を設計することにより、意図した標的スプライス部位でのトランス-スプライシングの特異性が6倍改善することを見出した。さらに、または上記の代替として、我々は、tsRNAにおいて、結合ドメインの外側に、少なくとも1つのシス結合もしくは自己結合ドメインを包含することが、標的DNA非存在下でトランス-スプライス部位を保護することも見出した。マルチプルターゲット結合ドメインおよび少なくとも1つの前記シス結合ドメインの両者を包含することは、トランス-スプライシングの特異性を10倍改善し、トランス-スプライシング活性を2倍を超えて改善した。従って、特定の実施態様において、前記tsRNAは、前記結合ドメインの外側に位置する少なくとも1つのシス-結合ドメインをさらに含む。
【0020】
特定のさらなる実施態様において、前記tsRNAは5’または3’tsRNAのいずれかである。
【0021】
非構造化されミスマッチ化された標的結合ドメインが5’または3’エキソン置換の両方を改善する一方で、tsRNA 3’末端の熱力学的安定性を増加させることにより、3’ERまたは5’ERのいずれかが改善された。これは、高度に構造化された3’末端を、自己相補的な配列の存在によって折りたたまれるかまたは、それ自身と対になるヌクレオチドのRNA鎖をそこに挿入することにより作製して、高度に構造化された分子を形成することによって行われる。tsRNA中への挿入のための高度に構造化されたRNA鎖の例は、ハンマーヘッド型リボザイム配列、ヘアピンループ形成配列またはy型構造形成配列であるが、しかしながら、そのような他の構造が当業者に知られており、従ってこの目的に使用することができる。従って、他の特定の実施態様は、3’が高度に構造化されたRNA配列を少なくとも1つ含む。我々は、この特徴が、トランス-スプライシングRNAを安定化し、それをリボ核酸分解的分解から保護することにより作用する可能性が最も高いと考えている。この特徴は、5’ERにおいて特に有益であると考えられる。活性リボザイム、ヘアピンループまたはY型構造のさらなる形成は、リボザイムとポリA部位の間にスペーサーを挿入することにより支持された。
【0022】
シス切断三次構造安定化(第二世代)ハンマーヘッド型リボザイムを、結合ドメインとポリアデニル化部位の間に、または他の高度に安定なRNA鎖を使用した場合には、これらの安定なRNA鎖とポリアデニル化部位との間に挿入することにより、5’ERを改善した。この特徴は、トランス-スプライシングRNAのポリA尾部を除去し、これはその後もう、細胞質中に輸出することができず、その核濃度およびトランス-スプライシング活性が増加する。この特徴はまた、5’ER用のトランス-スプライシングRNAが、トランス-スプライシングの非存在下で輸出され得、翻訳され得、表現型を誘発し得ることを回避する。
【0023】
我々の研究は、これらの最適化したtsRNAが効果的にHPV-16またはAFP-陽性細胞の死を誘発したことを示す。従って、スプライソソームが介在するRNAトランス-スプライシングは、自殺遺伝子治療アプローチにおける細胞死を誘発するための有望な治療ストラテジーを示す。
【0024】
他の実施態様において、前記疾患は、癌またはウイルス感染または細菌感染または転位因子、放射線、化学物質または未知の誘因により誘発された突然変異により引き起こされる後天性遺伝疾患である。
【0025】
第1の例において、前記の癌は以下を含む群から選択される:肝細胞がん(HCC)、子宮頸がん、膣癌、外陰癌、陰茎癌、皮膚癌、悪性黒色腫を含む黒色腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、メルケル細胞癌、肺癌、細胞膀胱癌(cell bladder cancer)、乳癌、結腸または直腸癌、肛門癌、子宮内膜癌、腎癌、白血病、急性骨髄性白血病(acute myelogenous or myeloid leukemia:AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CML)、慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous or myeloid leukemia:CML)、有毛細胞白血病(HCL)、T細胞前リンパ球性白血病(P-TLL)、大顆粒リンパ球性白血病、成人T細胞白血病、リンパ腫、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、鼻咽頭癌、口腔または咽頭癌、口腔咽頭癌、胃癌、脳腫瘍、骨の癌および幹細胞の癌、ならびに本明細書に開示される治療から利益を享受するであろう他の癌。
【0026】
第2の例において、前記のウイルス感染は以下を含む群から選択される:パピローマウイルス、ヒトパピローマウイルス16型、ヒトパピローマウイルス18型、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、インフルエンザウイルス、肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)およびヒト免疫不全ウイルス2型(HIV-2)等。
【0027】
第3の例において、前記の細菌感染は以下を含む群から選択される:バントネラ・ヘンセラ(Bartonella henselae)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、サルモネラ種、サルモネラ・チフス(Salmonella typhi)、ブルセラ種、レジオネラ種。マイコバクテリア種、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tunberculosis)、ノカルジア種、ロドコッカス種、エルシニア種、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitides)等。
【0028】
最後の例において、前記の後天性遺伝疾患は以下を含む群から選択される:神経線維腫症1型および2型、マッキューン・オルブライト、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、表皮水疱症、ファンコニAおよびC、フィラデルフィア染色体、血友病AおよびB、嚢胞性線維症、マックル・ウェルズ症候群、リポタンパク質リパーゼ欠損症、B-サラセミア、ピルビン酸脱水素酵素複合体欠損症等。
【0029】
代替の態様において、本発明による上記tsRNAおよび任意選択的に、上記トランス-スプライスされたRNAを発現する細胞の死を誘発するために有効な上記自殺系の少なくとも1つのさらに別の成分を含む薬剤が提供される。
【0030】
代替の態様において、本発明による上記tsRNA;任意選択的に、上記トランス-スプライスされたRNAを発現する細胞の死を誘発するために有効な上記自殺系の少なくとも1つのさらに別の成分;およびヒトまたは獣医学的用途に適したキャリアーを含む医薬組成物が提供される。
【0031】
上記の任意の例において、上記のさらに別の成分は、例えばガンシクロビルであることができるが、他の公知の細胞死のための共成分自殺系を使用してもよい。例としては、シトシンデアミナーゼ-5-フルオロシトシン、シトクロムP450-イホスファミド、シトクロムP450-シクロホスファミド、およびニトロレダクターゼ-5-[アジリジン-1-イル]-2,4-ジニトロベンズアミドが挙げられる。
【0032】
代替的な態様において、前記tsRNAを含有する細胞または前記tsRNAを含有するベクターが提供される。
【0033】
さらなる態様において、細胞を殺す方法であって、上記細胞を、tsRNA、または本発明による上記tsRNAを含むベクターでトランスフェクション、リポフェクション、形質導入、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクションまたは形質転換すること、および任意選択的に、上記細胞を、上記トランス-スプライスされたRNAを発現する細胞の死を誘発するために有効な上記自殺系の少なくとも1つの他の成分に曝露することを含む方法が提供される。
【0034】
この実施態様において、本発明は、通常in vitroで実施される。
【0035】
さらなる態様において、疾患を治療する方法であって、異常細胞を、tsRNA、または本発明による上記tsRNAを含むベクターで、ex vivoまたはin vivoにおいて、トランスフェクション、リポフェクション、形質導入、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクションまたは形質転換すること、および任意選択的に、上記細胞を、上記トランス-スプライスされたRNAを発現する細胞の死を誘発するために有効な上記自殺系の少なくとも1つの他の成分に曝露することを含む方法が提供される。
【0036】
さらなる態様において、異常細胞を標的化する方法であって、tsRNA、または本発明による上記tsRNAを含むベクターでの、in vivoにおける、腫瘍中への、局所適用(クリーム、ゲル、フォーム、ローション、軟膏またはエアロゾル)、経鼻適用、肺胞適用(alveolar application)、全身適用、経口適用、静脈内適用、筋肉適用、皮下適用、皮膚適用、腹腔内適用または注射、および、任意選択的に、上記細胞を、上記細胞を殺すために有効な上記自殺系の他の成分に曝露することを含む方法が提供される。
【0037】
本発明の特定の方法において、前記細胞は、ウイルスで形質転換された細胞である。典型的には、細胞は以下を含む群から選択されるウイルスで形質転換される:パピローマウイルス、ヒトパピローマウイルス16型、ヒトパピローマウイルス18型、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、インフルエンザウイルス、肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)およびヒト免疫不全ウイルス2型(HIV-2)。
【0038】
本発明のさらに別の方法において、上記細胞は、癌細胞、例えば肝細胞がん(HCC)細胞、子宮頸がん細胞、膣癌細胞、外陰癌細胞、陰茎癌細胞、皮膚癌細胞、悪性黒色腫細胞を含む黒色腫細胞、扁平上皮癌細胞、基底細胞癌細胞、メルケル細胞癌細胞、肺癌細胞、細胞膀胱癌(cell bladder cancer)細胞、乳癌細胞、結腸または直腸癌細胞、肛門癌細胞、子宮内膜癌細胞、腎癌細胞、白血病細胞、急性骨髄性白血病(AML)細胞、急性リンパ性白血病(ALL)細胞、慢性リンパ性白血病(CML)細胞、慢性骨髄性白血病(CML)細胞、有毛細胞白血病(HCL)細胞、T細胞前リンパ球性白血病(P-TLL)細胞、大顆粒リンパ球性白血病細胞、成人T細胞白血病細胞、リンパ腫細胞、骨髄腫細胞、非ホジキンリンパ腫細胞、膵臓癌細胞、前立腺癌細胞、甲状腺癌細胞、鼻咽頭癌細胞、口腔または咽頭癌細胞、口腔咽頭癌細胞、胃癌細胞、脳腫瘍細胞、骨の癌細胞および幹細胞の癌細胞。理想的には、前記細胞は哺乳類であり、最も典型的にはヒトである。
【0039】
後に続く特許請求の範囲において、および本発明の前述の説明において、特定の言葉または必要な意味合いのために文脈が別段必要とする場合を除いて、語句「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」等のバリエーションは、包含的な意味で、すなわち示された特徴の存在を特定するために使用されるが、本発明の種々の実施態様においけるさらなる特徴の存在または付加を排除するためではなく使用される。
【0040】
本明細書で引用される特許または特許出願を含む全ての参考文献は、引用により本明細書に組み込まれる。任意の参考文献が先行技術を構成するとは認められない。さらに、先行技術のいずれかが当技術分野の技術常識の一部を構成するとは認められない。
【0041】
本発明の各態様の好ましい特徴は、他の態様のいずれかと関連して記載されるとおりであってもよい。
【0042】
本発明の他の特徴は、以下の例から明らかとなるであろう。概して、本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲および図を含む)に開示される特徴の任意の新規なもの、または任意の新規な組み合わせに拡張される。従って、本発明の特定の態様、実施態様または例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物または化学的部分は、本明細書で記載されるいずれの態様、実施態様または例にも、相容性がない場合を除き、適用可能であると理解されるべきである。
【0043】
さらに、別段の記載がない限り、本明細書に開示される特徴はいずれも、同一または類似の目的にかなう代替的な特徴と置き換えてもよい。
【0044】
この明細書の記載および特許請求の範囲を通して、別段文脈が必要としない限り、単数は複数を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、別段文脈が必要としない限り、明細書は複数ならびに単一を考慮していると理解されるべきである。
【0045】
ここで、以下を参照しながら、本発明の実施態様を例示だけを目的として説明する:
図1 HepG2組織培養細胞における標的AFPへの5’ERおよび3’ERによる細胞死シグナルのトランス-スプライシングの検出。(a)5’エキソン置換(5’ER)または3’エキソン置換(3’ER)のいずれかによる、アルファフェトプロテイン(AFP)へのHSVtk死シグナルでのエキソン置換のために設計された2種のトランス-スプライシング分子を示す図。5’ERコンストラクトは、コーディングドメインHSVtk遺伝子、それに続く5’ドナースプライス部位を有する5’スプライシングドメイン、およびAFP遺伝子のイントロン3を認識する50塩基対の結合ドメインを含む。自己切断HH Rzが、ポリAシグナルからBDを切り離すために取り付けられる。3’ERコンストラクトは、AFPイントロン5を標的にする50塩基対のBD、それに続く3’スプライスシグナル、P2AおよびHSVtkコーディング領域を含む。タンパク質分解的切断部位P2Aが、トランス-スプライシングの成功後にAFP-HSVtk融合タンパク質からのHSVtkの切断のために取り付けられる。HSVtk,単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ;ISE,イントロニック・スプライス・エンハンサー;BD,結合ドメイン;HH Rz,ハンマーヘッド型リボザイム;BP,分岐点;Ppy,ポリピリミジントラクト。(b)5’ER(上のパネル)および3’ER(下のパネル)を用いた、過剰発現されたAFP_E3-E6ミニ遺伝子の状況においてトランス-スプライシングコンストラクトを導入した際のシス-スプライシングおよびトランス-スプライシングの生の閾値サイクル(Ct)を示す定量的リアルタイムRT-PCR。AFP(5’ERに関してはエキソン4、3’ERに関してはエキソン6に結合、左のパネル)およびHSVtk(5’ERに関しては遠位部で、3’ERについては近位部で結合、右のパネル)の2セットのTaqManプローブを検出のために使用した。ベータ-アクチンを内部コントロールとして使用した。n=3、平均±SEM。(c)慣用の30+30サイクルの2ステップPCRを実施して、過剰発現させたAFPとの5’(上)および3’(下)スプライシング事象を1%アガロースゲル上で観察し、スプライスジャンクションを配列決定により確認した。C,シス; T,トランス。(b)および(c)Mock_HepG2は、AFPシス-スプライシング検出の内因性レベルを示す(b,左のパネル、およびc,上および下の最後のレーン)。(d)および(e)は、活性な5’(d)および3’(e)トランス-スプライシングコンストラクトをAFPミニ遺伝子とともに導入した場合の、シス-スプライシングレベルの低下を示す。シスおよびトランス-スプライシングの生Ct値は、スプライシング事象の二分子反応の結果を表す。n=3、平均±SEM。(f)Ct値として表された内因性標的AFPにおけるスプライシング事象。n=3、平均±SEM。(g)活性3’ER(上のパネル)および5’ER(下)における内因性CおよびTのレベルを示す、35+35サイクルの慣用のPCR。
【0046】
図2 スプライス部位活性、BD配列選択および二次構造の観点から有効なトランスースプライシング分子。(a)3’ER(一番上の左パネル)および(b)5’ER(一番上の右パネル)用に設計したBDは、標的に対して完全な相補性を有する現行の配列設計BD(緑色でハイライト)と比較して、2つの標的(青色)ミスマッチΔBD(赤色でハイライト)を有する50塩基長であった。3’ER(左パネル)に関して、スプライス部位に、Δss1においては、BPモチーフおよび3’アクセプターを変えることにより突然変異を導入し、Δss2においてはBP配列にさらに突然変異を導入し、5’ER(右パネル)に関して、Δss1において5’ドナーssを隣接領域を変えることによりそのまま維持し、Δss2においてドナー部位を変えることによりさらに突然変異を導入した。3’ΔBDおよび5’ΔBD活性コンストラクトの相対的なトランス-スプライシング活性を、活性なミスマッチなしBDコンストラクト、ならびにΔBDおよびBD配列設計の両方を有するss突然変異体に対して試験した。コンピューターにより選択された2つの標的ミスマッチを有する構造化BD設計(赤色でハイライト)ならびにΔBDおよびBD設計両方を有する3’ER_BD-opt-inv、5’ER_BD-opt-inv_HHと比較した、標的ミスマッチを有するか、または有しない、(c)3’ER(左上のパネル)および(d)5’ER(右上のパネル)活性BDのRNA二次構造予測(mfold)。下のパネルは、配列および構造の観点からのコンピューターによる解析を伴わない技術水準の既存のBD設計と比較した、p3ER_ΔBD-opt(左)およびp5ER_ΔBD-opt_HH(右)の改善されたBD設計の間の相対的なトランス-スプライシング活性を示す。n=3、平均±SEM、使用した有意検定は一元であった。
【0047】
図3 RNAの3’末端の改善された安定性は、ハンマーヘッド型リボザイムの切断との相関において5’トランス-スプライシングを改善する。(a)特異的なステムループプライマー、フォワードプライマーおよびユニバーサルTaqManプローブおよびリバースプライマーを用いる、不活性ACCモチーフと比較した、活性GUCモチーフを有するHH Rzの切断効率の検出。n=3、平均±SEM。(b)5’トランス-スプライシングコンストラクトの5’末端でΔBDおよび3’末端でポリAに付いた三次モチーフトランス切断HH RzのRNA二次構造予測(mfold)。ステムIa、IbおよびIIの保存されたモチーフをボックスでハイライトし、ステムIIIをΔBDの3’末端への完全な相補物として設計して、HH Rz構造を作製した。切断モチーフGUCをはさみの図で示す。(c)3’末端においてBDの後に活性な切断性HH Rzかまたは不活性な非切断性HH Rzモチーフが続くかまたはHH Rz構造が続かないかのいずれかである、種々の程度のRNA二次構造を有するトランス-スプライシングRNAの修飾された3’末端を有する設計された5’トランス-スプライシングコンストラクトの概略図。(d)修飾した3’末端RNAトランス-スプライシングコンストラクトと比較した、活性なHH Rzを有する親p5ER_ΔBD_HH(黒)の相対的なトランス-スプライス活性。n=3、平均±SEM、有意検定はTukey post-hocを伴う一元ANOVAであった。(e)自己切断およびポリA切断が可能な/可能でない、活性HH RZを有する/不活性HH RZを有する/HH RZを有しない5’コンストラクトのトランス-スプライシング活性と全折りたたみエネルギー(ΔG)との間の相関。R2、相関係数。n=3、直線回帰分析。
【0048】
図4 AFP遺伝子へのHSV-tkの特異的および選択的オンターゲットトランス-スプライシングの研究。(a)5’ERおよび3’ER事象とともに、AFP標的(AFP_E3-E6ミニ遺伝子)を示す概念図。実線矢印は、特異的なオン・ターゲットトランス-スプライシングを示し、破線の矢印は、選択的オン・ターゲットトランス-スプライシング事象を示す。これらの両方の事象を、HSVtkプローブを用いるTaqMan定量化を用いて実証した。赤色のフォントの数は、Splice Site Predictionアルゴリズムを用いたドナーおよびアクセプタースプライス部位の強さを表す。(b)そのHH突然変異体を有し(p5ERに関してのみ)、それらのBDコンストラクトを有しない親p5ERコンストラクト(左)およびp3ERコンストラクト(右)の相対的な特異的および選択的オン・ターゲットトランス-スプライシング活性。n=3、平均±SEM、使用した有意検定はBonferroni post-hocを伴う二元ANOVAであった。(c)3’ERコンストラクトにおける選択的オン・ターゲットトランス-スプライシングの発生を減少させるための、オリジナルの3’ERΔBD(明るい青色)とともに追加的なBDの設計を示す概念図。BD E(ダークブルー)はエキソン5の5’ssの46塩基下流に結合し、BD F(ピンク)はエキソン3の5’ssに結合し、BD D(グリーン)はp3ERトランス-スプライシング分子のPpyトラクトに結合する。(d)オリジナルのΔBDを補完するために設計された追加的なBDと比較した、単一のΔBDを有する親p3ERの相対的な特異的および選択的オンターゲットトランス-スプライシング活性。各コンストラクトの特異性係数を、(特異的ts/選択的ts)x100%として決定した。n=3、平均±SEM、使用した有意検定はTukey post-hocを伴う二元ANOVAであった。(e)結合ドメインの特異性なしのトランス-スプライシングを防ぐためにBDを持たず追加的なBD Dを有するコンストラクトを示す概念図。
【0049】
図5 過剰発現されたAFP標的または内因性APF標的のいずれかでのトランス-スプライシングの成功におけるHSVtk陽性細胞の選択的殺害。過剰発現AFP(左)および内因性AFP(右)で100μM用量のGCVを6日間用いて、選択した(a)3’ERコンストラクトおよび(b)5’ERコンストラクトにおいて行われたAlamar Blue細胞生存性アッセイ。(c)トランスースプライシング遺伝子およびフローサイトメトリーでのアポトーシスの解析のために使用されるGFP遺伝子の両方を有するpVAX1におけるコントロールおよびトランス-スプライシング単一プラスミド系のクローニング設計。(d)トランス-スプライシング後のアネキシンV陽性初期および後期アポトーシス細胞を検出するためのゲーティングストラテジーを示す代表的なフローサイトメトリーデータ画像。示したサンプルは、100μM GCVで処理するかまたは薬物で処理していないポジティブHSVtk_GFPコントロールである。(e)100μM GCV処理の48時間後に過剰発現および内因性AFP標的レベルの両方で、選択した3’ERおよび5’ERコンストラクトにおいて検出されたアポトーシス。n=3、平均±SEM、使用した有意検定はTukey post-hocを伴う二元ANOVAであった。図において示した有意性の他に、過剰発現させた標的セットにおいて、ネガティブコントロールAFP_E3-E6_GFPと比較して、p3ER_ΔBD_Δss1_GFPを除く全てのサンプルが有意であった(p= 0.0008~<0.0001)。内因性標的セットにおいて、全てのサンプルがポジティブHSVtk_GFPコントロールと比較して有意であった(p= 0.04~<0.0001)。(f)100μM GCV処理の24時間後の個々のHepG2細胞におけるDNA損傷を検出するために行った単細胞ゲル電気泳動。選択したコンストラクトを、GCV投与あり/なしで150個のコメットに関して分析し、テイルモーメントとして記録した。右のパネルは、10X倍率で撮った代表的なコメット像を示す。Q3+1.5(IQR)超に該当するコメットをドット(アウトライアー)として示す。n=3、平均±SEM、使用した有意検定はTukey post-hocを伴う一元ANOVAであった。(g)AFPに加えてHCCA2、CD24およびVEGFを含む2以上のHCCマーカーを標的とするために2つのBDを用いる3’ERにおける多重トランス-スプライシング技術。当該概略図は、AFP標的のイントロン5および追加的な標的のイントロン1を同時に標的とするためのBD1およびBD2の配置を示す。(h)Alamar Blue細胞生存性アッセイは、標的の内因性状況下でより低い用量である10μM GCVで処理した場合の、単一のBD系と比較した、2つのBDを有するコンストラクトにおけるトランス-スプライシングが誘発する細胞死の効果を示す。(a)(b)(h)n=3、平均±SEM、使用した有意検定は、mock_HepG2と比較した、Bonferroni post-hocを伴う二元ANOVAであった。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001および
****p<0.0001。
【0050】
図6 3’ERおよび5’ERを用いるHPV16陽性細胞へのトランス-スプライシングによるHSVtk死シグナルの標識。(a)ウイルス細胞が選択的スプライシングのために利用する利用可能なスプライスアクセプター(A)およびスプライスドナー(D)を示す、6つの初期(E)および2つの後期(L)遺伝子を含むHPV16ゲノムの概略マップ。全部で6つのトランス-スプライシングRNAを設計した(5’ERに関して5’E6および5’E1b)および(3’ERに関して3’E6、3’E1a、3’E2および3’E5)。赤の矢印はマルチプルトランス-スプライシング事象の検出のために使用したRP(5’ER)およびFP(3’ER)の位置を示し、青の矢印はトランス-スプライシングコンストラクトのHSVtk領域におけるプライマーの位置を示す。(b)リアルタイムRT-PCRを使用し、3’ER(左パネル)および5’ER(右パネル)の両方に関してHPV16陽性マウス細胞株C3(上のパネル)およびヒト細胞株SiHa(下のパネル)におけるベータ-アクチンで標準化したΔCt値として示した、内因性HPV16標的を用いたトランス-スプライシング事象の定量化。一部のSDおよびSAに関するグラフ中のバーの不在は、トランス-スプライシングを測定していないことを示す。n=3、平均±SEM。(c)100μM GCVで6日間処理した場合の、内因性HPV16陽性細胞株SiHa(左上)、C3(右上)およびHPV18陽性ヒト細胞株HeLa(左下)およびHPV16/18陰性細胞株HepG2(右下)において、選択したトランス-スプライシングコンストラクトについて行ったAlamar Blue細胞生存性アッセイ。n=3、平均±SEM、使用した有意検定はmockと比較した、Bonferroni post-hocを伴う二元ANOVAであった。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001および
****p<0.0001。
【0051】
図S1 3’ERコンストラクトのBDを示すRNA二次構造。(a)BDの上流または下流いずれかへの、それを構造化させるためのスペーサー配列の導入。(b)親3’ER最適化および非構造化結合ドメイン(青色でハイライトされた「オープン」)を、AFP標的に対する2つのミスマッチを用いて設計し(ΔBD)、現行のBD設計(標的ミスマッチを有さない)と比較した。ボックスは2つのコンストラクト間の変化領域を示し、RNA折りたたみは同一を維持する。(c)(d)選択した3’ER_ΔBD struc1(非構造化3’ER_ΔBD-optと3塩基重複)および3’ER_ΔBD struc2 (3’ER_ΔBD-optの67塩基上流および3’ER_ΔBD struc1の27塩基上流)は、標的結合のためにあまり最適でない閉じたRNA二次構造を示す。(e)ΔBDまたはBDのいずれかを有するp3ER_opt-invコンストラクトを、それぞれオリジナルΔBDまたはBDを保持し、スペーサーをいくつかのミスマッチを有する逆方向反復中に変えて設計することにより、トランス-スプライシング活性の低い完全に構造化された長いステム構造を得た。
【0052】
図S2 5’ERコンストラクトのBDを示すRNA二次構造。(a)標的に2つのミスマッチを有するように設計した最適化および非構造化BD(赤色のボックスでハイライト)を有する親5’ERコンストラクト。(b)標的にミスマッチを有しないように設計した最適化および非構造化BD(緑色のボックスでハイライト)を有する親5’ERコンストラクト。(c)p5ER_ΔBD-struc1_HH (非構造化5’ER_ ΔBD-opt_HHと9塩基重複)は、最適な結合にあまり適切でない閉じたBDを示す。(d)(e)減少したトランス-スプライシングを有するステムループ構造形成のために親BDに逆相補体としてのスペーサーを有する(d)ΔBDまたは(e)BDのいずれかを有するp5ER_opt-inv_HHコンストラクト。
【0053】
図S3 過剰発現AFP標的または内因性APF標的のいずれかでのトランス-スプライシングの成功におけるHSVtk陽性細胞の選択的殺害。過剰発現AFP(左上)および内因性AFP(右上)で10μM用量のGCVを6日間用いて、選択した(a)3’ERコンストラクトおよび(b)5’ERコンストラクトにおいて行われたAlamar Blue細胞生存性アッセイ。過剰発現(左下)および内因性(右下)AFPレベルの両方に関して、全てのコンストラクトにおいて薬物なしコントロールをした。mock_HepG2に対して算出された有意性。
【0054】
図S4 トランス-スプライシング誘発アポトーシスを示すフローサイトメトリー解析 (a)FACSにおいて細胞死を解析するためのHepG2細胞におけるコトランスフェクションのための、AFPミニ遺伝子、tsRNAコンストラクトをpVAX1プラスミド中に有するベクター、およびGFP遺伝子をpEGFP.C2プラスミド中に有するベクターの概略図。トランス-スプライシングは、選択した(b)3’ERおよび(c)5’ERコンストラクトにおいて、100μM用量のGCVの48時間後にアポトーシスを誘発した。ネガティブAFPミニ遺伝子、ネガティブGFPコントロールおよびポジティブHSVtkコントロールを、活性のtsプラスミドの代わりに等量のpSUPER空プラスミドとコトランスフェクトした。(b)p3ER_ΔBD-optおよび(c)p5ER_ΔBD-opt_HH親コンストラクトに対して算出された有意性。(d)トランス-スプライシング後のアネキシンV陽性アポトーシス細胞とGFP陽性細胞を区別するためのゲーティングストラテジーを示す代表的なフローサイトメトリーデータ画像。示したサンプルは、100μM GCVで処理するかまたは薬物で処理していないポジティブHSVtkコントロールである。tsRNAおよびeGFPプラスミドのコトランスフェクトは、単一の陽性細胞の示差的なポピュレーションを示し、従って、コトランスフェクションは、トランス-スプライシング誘発細胞死を受けるトランスフェクション陽性細胞を選択するための最適でない選択肢であると結論付けられる。
【0055】
図S5 内因性レベルで2つの標的を有するトランス-スプライシング。(a)形質転換された細胞HCC陽性および陰性細胞株、末梢血単核細胞(PBMCs)およびHCCに関して陰性の初代脂肪細胞を含む種々の細胞タイプにおけるHCCマーカー遺伝子のpre-mRNAおよびmRNA発現レベルを示すヒートマップ。(b)100μM用量のGCVを伴う(左)およびGCVを伴わない(右)、内因性遺伝子レベルで2つのターゲットを有するトランス-スプライシングを示すためのAlamarアッセイ。
【0056】
図S6 10μM、100μM GCVで処理した場合またはGCVで処理しなかった場合の、HPV16陽性および陰性細胞株におけるHSVtk誘発細胞死を示す、Alamar blueアッセイ。通常の補充用量の薬物を用いた6日間のGCV誘導細胞死に関して、E1bおよびE6を標的とする2つの5’ER tsRNAコンストラクトならびにE1a、E2、E5およびE6を標的とする4つの3’ER tsRNAコンストラクトを次の細胞株:(a)HPV16陽性ヒト細胞株SiHa、(b)HPV16陽性マウス細胞株C3、(c)HPV18陽性ヒト細胞株HeLa、(d)HPV16および18陰性ヒト細胞株HepG2において試験した。
【0057】
図S7 ダンベル型DNA最小ベクターを用いたRNAトランス-スプライシングの送達。(a)ELAN法によるtsRNAプラスミドからのダンベルの合成。記載のサイズを有するプラスミドおよびダンベルベクターの両方の概略図。AFP TaqMan rtRT-PCR検出系を用いたプラスミドtsRNAコンストラクトに対する等質量および等モルの両方で試験した(b)3’ERおよび(c)5’ERダンベルの効率。全てのデータは、3つの独立した実験からの平均±SEMを表す。使用した有意検定はTukey post-hocを伴う二元ANOVAであった。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1a】HepG2組織培養細胞における標的AFPへの5’ERおよび3’ERによる細胞死シグナルのトランス-スプライシングの検出。(a)5’エキソン置換(5’ER)または3’エキソン置換(3’ER)のいずれかによる、アルファフェトプロテイン(AFP)へのHSVtk死シグナルでのエキソン置換のために設計された2種のトランス-スプライシング分子を示す図。
【
図1b】HepG2組織培養細胞における標的AFPへの5’ERおよび3’ERによる細胞死シグナルのトランス-スプライシングの検出。(b)5’ER(上のパネル)および3’ER(下のパネル)を用いた、過剰発現されたAFP_E3-E6ミニ遺伝子の状況においてトランス-スプライシングコンストラクトを導入した際のシス-スプライシングおよびトランス-スプライシングの生の閾値サイクル(Ct)を示す定量的リアルタイムRT-PCR。
【
図1c】HepG2組織培養細胞における標的AFPへの5’ERおよび3’ERによる細胞死シグナルのトランス-スプライシングの検出。(c)慣用の30+30サイクルの2ステップPCRを実施して、過剰発現させたAFPとの5’(上)および3’(下)スプライシング事象を1%アガロースゲル上で観察し、スプライスジャンクションを配列決定により確認した。
【
図1d】HepG2組織培養細胞における標的AFPへの5’ERおよび3’ERによる細胞死シグナルのトランス-スプライシングの検出。活性な5’トランス-スプライシングコンストラクトをAFPミニ遺伝子とともに導入した場合の、シス-スプライシングレベルの低下を示す。
【
図1e】HepG2組織培養細胞における標的AFPへの5’ERおよび3’ERによる細胞死シグナルのトランス-スプライシングの検出。活性な3’トランス-スプライシングコンストラクトをAFPミニ遺伝子とともに導入した場合の、シス-スプライシングレベルの低下を示す。
【
図1f】HepG2組織培養細胞における標的AFPへの5’ERおよび3’ERによる細胞死シグナルのトランス-スプライシングの検出。(f)Ct値として表された内因性標的AFPにおけるスプライシング事象。
【
図1g】HepG2組織培養細胞における標的AFPへの5’ERおよび3’ERによる細胞死シグナルのトランス-スプライシングの検出。(g)活性3’ER(上のパネル)および5’ER(下)における内因性CおよびTのレベルを示す、35+35サイクルの慣用のPCR。
【
図2a】スプライス部位活性、BD配列選択および二次構造の観点から有効なトランスースプライシング分子。(a)3’ER(一番上の左パネル)用に設計したBDは、標的に対して完全な相補性を有する現行の配列設計BD(緑色でハイライト)と比較して、2つの標的(青色)ミスマッチΔBD(赤色でハイライト)を有する50塩基長であった。
【
図2b】スプライス部位活性、BD配列選択および二次構造の観点から有効なトランスースプライシング分子。(b)5’ER(一番上の右パネル)用に設計したBDは、標的に対して完全な相補性を有する現行の配列設計BD(緑色でハイライト)と比較して、2つの標的(青色)ミスマッチΔBD(赤色でハイライト)を有する50塩基長であった。
【
図2c】スプライス部位活性、BD配列選択および二次構造の観点から有効なトランスースプライシング分子。(c)3’ER(左上のパネル)活性BDのRNA二次構造予測(mfold)。下のパネルは、配列および構造の観点からのコンピューターによる解析を伴わない技術水準の既存のBD設計と比較した、p3ER_ΔBD-opt(左)の改善されたBD設計の間の相対的なトランス-スプライシング活性を示す。
【
図2d】スプライス部位活性、BD配列選択および二次構造の観点から有効なトランスースプライシング分子。((d)5’ER(右上のパネル)活性BDのRNA二次構造予測(mfold)。下のパネルは、配列および構造の観点からのコンピューターによる解析を伴わない技術水準の既存のBD設計と比較した、p5ER_ΔBD-opt_HH(右)の改善されたBD設計の間の相対的なトランス-スプライシング活性を示す。
【
図3a】RNAの3’末端の改善された安定性は、ハンマーヘッド型リボザイムの切断との相関において5’トランス-スプライシングを改善する。(a)特異的なステムループプライマー、フォワードプライマーおよびユニバーサルTaqManプローブおよびリバースプライマーを用いる、不活性ACCモチーフと比較した、活性GUCモチーフを有するHH Rzの切断効率の検出。
【
図3b】RNAの3’末端の改善された安定性は、ハンマーヘッド型リボザイムの切断との相関において5’トランス-スプライシングを改善する。(b)5’トランス-スプライシングコンストラクトの5’末端でΔBDおよび3’末端でポリAに付いた三次モチーフトランス切断HH RzのRNA二次構造予測(mfold)。
【
図3c】RNAの3’末端の改善された安定性は、ハンマーヘッド型リボザイムの切断との相関において5’トランス-スプライシングを改善する。(c)3’末端においてBDの後に活性な切断性HH Rzかまたは不活性な非切断性HH Rzモチーフが続くかまたはHH Rz構造が続かないかのいずれかである、種々の程度のRNA二次構造を有するトランス-スプライシングRNAの修飾された3’末端を有する設計された5’トランス-スプライシングコンストラクトの概略図。
【
図3d】RNAの3’末端の改善された安定性は、ハンマーヘッド型リボザイムの切断との相関において5’トランス-スプライシングを改善する。(d)修飾した3’末端RNAトランス-スプライシングコンストラクトと比較した、活性なHH Rzを有する親p5ER_ΔBD_HH(黒)の相対的なトランス-スプライス活性。
【
図3e】RNAの3’末端の改善された安定性は、ハンマーヘッド型リボザイムの切断との相関において5’トランス-スプライシングを改善する。(e)自己切断およびポリA切断が可能な/可能でない、活性HH RZを有する/不活性HH RZを有する/HH RZを有しない5’コンストラクトのトランス-スプライシング活性と全折りたたみエネルギー(ΔG)との間の相関。
【
図4a】AFP遺伝子へのHSV-tkの特異的および選択的オンターゲットトランス-スプライシングの研究。(a)5’ERおよび3’ER事象とともに、AFP標的(AFP_E3-E6ミニ遺伝子)を示す概念図。
【
図4b】AFP遺伝子へのHSV-tkの特異的および選択的オンターゲットトランス-スプライシングの研究。(b)そのHH突然変異体を有し(p5ERに関してのみ)、それらのBDコンストラクトを有しない親p5ERコンストラクト(左)およびp3ERコンストラクト(右)の相対的な特異的および選択的オン・ターゲットトランス-スプライシング活性。
【
図4c】AFP遺伝子へのHSV-tkの特異的および選択的オンターゲットトランス-スプライシングの研究。(c)3’ERコンストラクトにおける選択的オン・ターゲットトランス-スプライシングの発生を減少させるための、オリジナルの3’ERΔBD(明るい青色)とともに追加的なBDの設計を示す概念図。
【
図4d】AFP遺伝子へのHSV-tkの特異的および選択的オンターゲットトランス-スプライシングの研究。(d)オリジナルのΔBDを補完するために設計された追加的なBDと比較した、単一のΔBDを有する親p3ERの相対的な特異的および選択的オンターゲットトランス-スプライシング活性。
【
図4e】AFP遺伝子へのHSV-tkの特異的および選択的オンターゲットトランス-スプライシングの研究。(e)結合ドメインの特異性なしのトランス-スプライシングを防ぐためにBDを持たず追加的なBD Dを有するコンストラクトを示す概念図。
【
図5a】過剰発現されたAFP標的または内因性APF標的のいずれかでのトランス-スプライシングの成功におけるHSVtk陽性細胞の選択的殺害。過剰発現AFP(左)および内因性AFP(右)で100μM用量のGCVを6日間用いて、選択した(a)3’ERコンストラクトにおいて行われたAlamar Blue細胞生存性アッセイ。
【
図5b】過剰発現されたAFP標的または内因性APF標的のいずれかでのトランス-スプライシングの成功におけるHSVtk陽性細胞の選択的殺害。過剰発現AFP(左)および内因性AFP(右)で100μM用量のGCVを6日間用いて、選択した(b)5’ERコンストラクトにおいて行われたAlamar Blue細胞生存性アッセイ。
【
図5c】過剰発現されたAFP標的または内因性APF標的のいずれかでのトランス-スプライシングの成功におけるHSVtk陽性細胞の選択的殺害。(c)トランスースプライシング遺伝子およびフローサイトメトリーでのアポトーシスの解析のために使用されるGFP遺伝子の両方を有するpVAX1におけるコントロールおよびトランス-スプライシング単一プラスミド系のクローニング設計。
【
図5d】過剰発現されたAFP標的または内因性APF標的のいずれかでのトランス-スプライシングの成功におけるHSVtk陽性細胞の選択的殺害。(d)トランス-スプライシング後のアネキシンV陽性初期および後期アポトーシス細胞を検出するためのゲーティングストラテジーを示す代表的なフローサイトメトリーデータ画像。
【
図5e】過剰発現されたAFP標的または内因性APF標的のいずれかでのトランス-スプライシングの成功におけるHSVtk陽性細胞の選択的殺害。(e)100μM GCV処理の48時間後に過剰発現および内因性AFP標的レベルの両方で、選択した3’ERおよび5’ERコンストラクトにおいて検出されたアポトーシス。
【
図5f】過剰発現されたAFP標的または内因性APF標的のいずれかでのトランス-スプライシングの成功におけるHSVtk陽性細胞の選択的殺害。(f)100μM GCV処理の24時間後の個々のHepG2細胞におけるDNA損傷を検出するために行った単細胞ゲル電気泳動。
【
図5g】過剰発現されたAFP標的または内因性APF標的のいずれかでのトランス-スプライシングの成功におけるHSVtk陽性細胞の選択的殺害。(g)AFPに加えてHCCA2、CD24およびVEGFを含む2以上のHCCマーカーを標的とするために2つのBDを用いる3’ERにおける多重トランス-スプライシング技術。
【
図5h】過剰発現されたAFP標的または内因性APF標的のいずれかでのトランス-スプライシングの成功におけるHSVtk陽性細胞の選択的殺害。(h)Alamar Blue細胞生存性アッセイは、標的の内因性状況下でより低い用量である10μM GCVで処理した場合の、単一のBD系と比較した、2つのBDを有するコンストラクトにおけるトランス-スプライシングが誘発する細胞死の効果を示す。
【
図6a】3’ERおよび5’ERを用いるHPV16陽性細胞へのトランス-スプライシングによるHSVtk死シグナルの標識。(a)ウイルス細胞が選択的スプライシングのために利用する利用可能なスプライスアクセプター(A)およびスプライスドナー(D)を示す、6つの初期(E)および2つの後期(L)遺伝子を含むHPV16ゲノムの概略マップ。
【
図6b】3’ERおよび5’ERを用いるHPV16陽性細胞へのトランス-スプライシングによるHSVtk死シグナルの標識。(b)リアルタイムRT-PCRを使用し、3’ER(左パネル)および5’ER(右パネル)の両方に関してHPV16陽性マウス細胞株C3(上のパネル)およびヒト細胞株SiHa(下のパネル)におけるベータ-アクチンで標準化したΔCt値として示した、内因性HPV16標的を用いたトランス-スプライシング事象の定量化。
【
図6c】3’ERおよび5’ERを用いるHPV16陽性細胞へのトランス-スプライシングによるHSVtk死シグナルの標識。(c)100μM GCVで6日間処理した場合の、内因性HPV16陽性細胞株SiHa(左上)、C3(右上)およびHPV18陽性ヒト細胞株HeLa(左下)およびHPV16/18陰性細胞株HepG2(右下)において、選択したトランス-スプライシングコンストラクトについて行ったAlamar Blue細胞生存性アッセイ。
【
図S1a】3’ERコンストラクトのBDを示すRNA二次構造。(a)BDの上流または下流いずれかへの、それを構造化させるためのスペーサー配列の導入。
【
図S1b】3’ERコンストラクトのBDを示すRNA二次構造。(b)親3’ER最適化および非構造化結合ドメイン(青色でハイライトされた「オープン」)を、AFP標的に対する2つのミスマッチを用いて設計し(ΔBD)、現行のBD設計(標的ミスマッチを有さない)と比較した。
【
図S1c】3’ERコンストラクトのBDを示すRNA二次構造。(c)選択した3’ER_ΔBD struc1(非構造化3’ER_ΔBD-optと3塩基重複)は、標的結合のためにあまり最適でない閉じたRNA二次構造を示す。
【
図S1d】3’ERコンストラクトのBDを示すRNA二次構造。(d)選択した3’ER_ΔBD struc2 (3’ER_ΔBD-optの67塩基上流および3’ER_ΔBD struc1の27塩基上流)は、標的結合のためにあまり最適でない閉じたRNA二次構造を示す。
【
図S1e】3’ERコンストラクトのBDを示すRNA二次構造。(e)ΔBDまたはBDのいずれかを有するp3ER_opt-invコンストラクトを、それぞれオリジナルΔBDまたはBDを保持し、スペーサーをいくつかのミスマッチを有する逆方向反復中に変えて設計することにより、トランス-スプライシング活性の低い完全に構造化された長いステム構造を得た。
【
図S2a】5’ERコンストラクトのBDを示すRNA二次構造。(a)標的に2つのミスマッチを有するように設計した最適化および非構造化BD(赤色のボックスでハイライト)を有する親5’ERコンストラクト。
【
図S2b】5’ERコンストラクトのBDを示すRNA二次構造。(b)標的にミスマッチを有しないように設計した最適化および非構造化BD(緑色のボックスでハイライト)を有する親5’ERコンストラクト。
【
図S2c】5’ERコンストラクトのBDを示すRNA二次構造。(c)p5ER_ΔBD-struc1_HH (非構造化5’ER_ ΔBD-opt_HHと9塩基重複)は、最適な結合にあまり適切でない閉じたBDを示す。
【
図S2d】5’ERコンストラクトのBDを示すRNA二次構造。(d)減少したトランス-スプライシングを有するステムループ構造形成のために親BDに逆相補体としてのスペーサーを有する(d)ΔBDを有するp5ER_opt-inv_HHコンストラクト。
【
図S2e】5’ERコンストラクトのBDを示すRNA二次構造。(e)減少したトランス-スプライシングを有するステムループ構造形成のために親BDに逆相補体としてのスペーサーを有する(e)BDを有するp5ER_opt-inv_HHコンストラクト。
【
図S3a】過剰発現AFP標的または内因性APF標的のいずれかでのトランス-スプライシングの成功におけるHSVtk陽性細胞の選択的殺害。過剰発現AFP(左上)および内因性AFP(右上)で10μM用量のGCVを6日間用いて、選択した(a)3’ERコンストラクトにおいて行われたAlamar Blue細胞生存性アッセイ。
【
図S3b】過剰発現AFP標的または内因性APF標的のいずれかでのトランス-スプライシングの成功におけるHSVtk陽性細胞の選択的殺害。過剰発現AFP(左上)および内因性AFP(右上)で10μM用量のGCVを6日間用いて、選択した(b)5’ERコンストラクトにおいて行われたAlamar Blue細胞生存性アッセイ。
【
図S4a】トランス-スプライシング誘発アポトーシスを示すフローサイトメトリー解析。(a)FACSにおいて細胞死を解析するためのHepG2細胞におけるコトランスフェクションのための、AFPミニ遺伝子、tsRNAコンストラクトをpVAX1プラスミド中に有するベクター、およびGFP遺伝子をpEGFP.C2プラスミド中に有するベクターの概略図。
【
図S4b】トランス-スプライシング誘発アポトーシスを示すフローサイトメトリー解析。トランス-スプライシングは、選択した(b)3’ERコンストラクトにおいて、100μM用量のGCVの48時間後にアポトーシスを誘発した。
【
図S4c】トランス-スプライシング誘発アポトーシスを示すフローサイトメトリー解析。トランス-スプライシングは、選択した(c)5’ERコンストラクトにおいて、100μM用量のGCVの48時間後にアポトーシスを誘発した。
【
図S4d】トランス-スプライシング誘発アポトーシスを示すフローサイトメトリー解析。(d)トランス-スプライシング後のアネキシンV陽性アポトーシス細胞とGFP陽性細胞を区別するためのゲーティングストラテジーを示す代表的なフローサイトメトリーデータ画像。
【
図S5a】内因性レベルで2つの標的を有するトランス-スプライシング。(a)形質転換された細胞HCC陽性および陰性細胞株、末梢血単核細胞(PBMCs)およびHCCに関して陰性の初代脂肪細胞を含む種々の細胞タイプにおけるHCCマーカー遺伝子のpre-mRNAおよびmRNA発現レベルを示すヒートマップ。
【
図S5b】内因性レベルで2つの標的を有するトランス-スプライシング。(b)100μM用量のGCVを伴う(左)およびGCVを伴わない(右)、内因性遺伝子レベルで2つのターゲットを有するトランス-スプライシングを示すためのAlamarアッセイ。
【
図S6a】10μM、100μM GCVで処理した場合またはGCVで処理しなかった場合の、HPV16陽性および陰性細胞株におけるHSVtk誘発細胞死を示す、Alamar blueアッセイ。通常の補充用量の薬物を用いた6日間のGCV誘導細胞死に関して、E1bおよびE6を標的とする2つの5’ER tsRNAコンストラクトならびにE1a、E2、E5およびE6を標的とする4つの3’ER tsRNAコンストラクトを次の細胞株:(a)HPV16陽性ヒト細胞株SiHaにおいて試験した。
【
図S6b】10μM、100μM GCVで処理した場合またはGCVで処理しなかった場合の、HPV16陽性および陰性細胞株におけるHSVtk誘発細胞死を示す、Alamar blueアッセイ。通常の補充用量の薬物を用いた6日間のGCV誘導細胞死に関して、E1bおよびE6を標的とする2つの5’ER tsRNAコンストラクトならびにE1a、E2、E5およびE6を標的とする4つの3’ER tsRNAコンストラクトを次の細胞株:(b)HPV16陽性マウス細胞株C3において試験した。
【
図S6c】10μM、100μM GCVで処理した場合またはGCVで処理しなかった場合の、HPV16陽性および陰性細胞株におけるHSVtk誘発細胞死を示す、Alamar blueアッセイ。通常の補充用量の薬物を用いた6日間のGCV誘導細胞死に関して、E1bおよびE6を標的とする2つの5’ER tsRNAコンストラクトならびにE1a、E2、E5およびE6を標的とする4つの3’ER tsRNAコンストラクトを次の細胞株:(c)HPV18陽性ヒト細胞株HeLaにおいて試験した。
【
図S6d】10μM、100μM GCVで処理した場合またはGCVで処理しなかった場合の、HPV16陽性および陰性細胞株におけるHSVtk誘発細胞死を示す、Alamar blueアッセイ。通常の補充用量の薬物を用いた6日間のGCV誘導細胞死に関して、E1bおよびE6を標的とする2つの5’ER tsRNAコンストラクトならびにE1a、E2、E5およびE6を標的とする4つの3’ER tsRNAコンストラクトを次の細胞株:(d)HPV16および18陰性ヒト細胞株HepG2において試験した。
【
図S7a】ダンベル型DNA最小ベクターを用いたRNAトランス-スプライシングの送達。(a)ELAN法によるtsRNAプラスミドからのダンベルの合成。記載のサイズを有するプラスミドおよびダンベルベクターの両方の概略図。
【
図S7b】ダンベル型DNA最小ベクターを用いたRNAトランス-スプライシングの送達。AFP TaqMan rtRT-PCR検出系を用いたプラスミドtsRNAコンストラクトに対する等質量および等モルの両方で試験した(b)3’ERダンベルの効率。
【
図S7c】ダンベル型DNA最小ベクターを用いたRNAトランス-スプライシングの送達。AFP TaqMan rtRT-PCR検出系を用いたプラスミドtsRNAコンストラクトに対する等質量および等モルの両方で試験した(c)5’ERダンベルの効率。
【実施例】
【0059】
方法および材料
RNA設計:活性および標的特異性を改善するために種々の報告されたおよび新規の分子の特徴を組み合わせて、トランス-スプライシングコンストラクトを設計した。3’ER tsコンストラクトは、CMVプロモーター(pEGFP-N1,Clontech acc no.U55762)、それに続く標的AFPイントロン5に相補的な50塩基の結合ドメイン(BD)からなっていた。前記BDは、細胞の核内においてより長いdsRNAによって誘発され得る潜在的なアンチセンス(as)効果を抑制するために、18番目および19番目に2つのミスマッチを含んでいた。AFPイントロン5に指向され得る完全なアンチセンスRNA構造スペース内の短い非構造化BDを選択するために、ソフトウェア「foldanalyze」(HUSAR,DKFZ)を使用した。選択したBDの構造を、ソフトウェアツールmfoldおよびRNAfoldを用いるRNA 2°構造(最小自由エネルギーおよびセントロイド)予測により確認した。そのような選択されたBDをその後、トランス-スプライシングRNAの残部と融合し、BDが融合時に非構造化されたままであってトランスースプライシングまたはコーディングドメインの塩基対形成に関与しないことを確実にし、これは適切なスペーサーを付与することにより達成された。選択された3’スプライスシグナル(3’ss)は、機能的に細胞のシス-スプライス部位と競合するように設計され、イントロニック・スプライス・エンハンサー(intronic splice enhancer:ISE)(McCarthy, et al., 1998; Konczak, et al., 2000; Yeo et al., 2004)、分岐点(BP)(Eul, 2006)およびポリピリミジントラクト(Ppt)(Nobel, et al., 1998; Taggart, et al, 2012)によって支持された。トランス-スプライシングプロセスから最初に得られるAFP-HSVtk融合タンパク質からの天然のHSV-tkの内因性の切り離しを保証するために、タンパク質分解的切断部位P2A(Kim, et al, 2011)をコードする配列をHSVtk cdsの前に置いた。前記HSVtk遺伝子は開始コドンを欠いており、トランス-スプライシング後にのみ、標的メッセージの翻訳開始を用いて翻訳され得る。HSV-tk遺伝子は、HSV-tkアミノ酸配列を変化させない縮重した選択的コドンを使用することにより生成したA/Gリッチ・エキソニック・スプライス・エンハンサー(ESE)を備えていた(Fairbrother, et al, 2002; Jin et al., 2003) (補助
図1a)。133塩基のベータ-グロビン・ミニイントロン((pCMVTNT
TM, acc num. AF477200.1)をHSVtk遺伝子に、スプライス部位コンセンサスモチーフ(3’ss CAG/Gおよび5’ss MAG)で導入した。転写終結のために、SV40ポリA配列(pcDNA3.1,Life Technologies)を使用した。
【0060】
5’ER tsコンストラクトを、p3ERと同一の分子特徴を有するが、CMVプロモーターとともに転写シグナルモチーフを含む方向が異なるように設計した。真核mRNAの翻訳に重要な全ての構造要素が含まれていた:AFPのオリジナルキャップ部位(Gibbs, et al. 1987)、それに続くコンセンサスKozak配列GCCRGCCAUGG(Kozak, 1995, 1999, 2005)。翻訳直後、開始シグナルは ESEおよびミニイントロン、それに続く5’ssシグナルを含めたコーティングドメインHSVtkであった(Freund, et al. 2005)。5’ BDは、as効果を避けるために、24および25番目にミスマッチを有する同様の方法で設計した。BDに続いて、ハンマーヘッド型リボザイム(HHRz)(Saksmerprome, et al. 2004)を、核中への送達後のBDの切断増強のために導入した。SV40ポリAが続くリボザイムからSV40ポリAを単離するために、HH RZの後に長いスペーサーを続けた。
【0061】
突然変異設計:2つの点突然変異を有する完全長不活性化HSVtkタンパク質を産生するために、3’/5’ΔHSVtkを設計した:115番目のAからGへの突然変異(グリシンからグルタミン酸へ)、649番目のGからAへの突然変異(ヒスチジンからアルギニンへ)(Sasadeusz, et al. 1997)。3/5’Δssを活性なスプライスシグナルを有することの重要性をチェックするために設計した。ssにおける突然変異は、tsの減少をもたらすはずである。3’Δss1は、AからCへ変化させた保存されたBPを有しており、3’Δss2は、BPを含む変化させた6/8ヌクレオチドを有し、両ssは、AGからTCへ突然変異させたアクセプターssを有している。5’Δss1は、完全なコンセンサスドナーssGTに対して変化させた7/11塩基を有し、5’Δss2は、変化させた10/11塩基を有しており、GTからACへのドナーssの突然変異を含んでいた。5’ΔHH Rzは、リボザイムの切断効率を除去するかまたは大きく低下させるために保存された切断モチーフGUCがACAに変えられた。
【0062】
プラスミドコンストラクション:それぞれp3ER_ΔBD-optおよびp5ER_ΔBD-opt_HHと名付けた3’および5’親エキソン置換(ER)コンストラクトを、遺伝子合成し(GeneArt, Regensburg)、マスターベクターとして使用すべきpVAX1(AddGene)にSpeIおよびBbsIを用いてクローニングし、トランス-スプライシングコンストラクトの残部をサブクローニングした。NCBI(acc num M16110)に由来するエキソン3-6およびイントロン3および5からなるAFPミニ遺伝子(AFP_E3-E6)を遺伝子合成し(GeneArt, Regensburg)、NheIおよびKpnIを用いてpVAX1にクローニングした。HSVtkポジティブコントロールを、SacIおよびBamHIを用いてp3ELおよびp5EL発現プラスミドからサブクローニングした。HSVtk遺伝子(NCBI acc num AF057310)の完全1136塩基cdsを、トランス-スプライシングコンストラクトの一部として遺伝子合成した。
【0063】
全部で80個のコンストラクトを設計し、変化の領域は遺伝子合成するかまたはPCR増幅し、p3ER_ΔBD-optおよびp5ER_ΔBD-opt_HH親またはマスターベクターにサブクローニングした。p3ER_ΔBD-opt_Δss1およびp3ER_ΔBD-opt_Δss2は、野生型ssを置き換えるためにそれぞれBbvCIおよびSacI、NheIおよびPvuIを用いてp3ER_ΔBD-opt内にサブクローニングした3’スプライス部位突然変異である。同様に、p5ER_ΔBD-opt_HH_Δss1を、p5ER_ΔBD-opt_HH内にBssHIIおよびBbsIを用いてクローニングした。p5ER_ΔBD-opt_HH_Δss2をnested PCR法を用いて合成して所望の5’ss突然変異を生成し、マスターベクター中にBssHIIおよびKpnIを用いてクローニングした。より弱いHSVtkタンパク質を生成するための3’および5’置換突然変異、すなわちp3ER_ΔBD-opt_ΔHSVtkおよびp5ER_ΔBD-opt_HH_ΔHSVtkを、それぞれPvuIおよびPstI、PstIおよびNheIを用いてそれらの親ベクターにクローニングした。5’HH Rz突然変異、すなわちp5ER_ΔBD-opt_ΔHHをnested PCR法を用いて生成し、親ベクター中にKpnIおよびBbvCIを用いてクローニングした。NheIおよびBbvCIを用いてp3ER_BD-optを、KpnIおよびBbvCIを用いてp5ER_BD-opt_HHをサブクローニングし、標的に対してミスマッチを持たないBD(技術水準のBD)を生成した。p3ER_ΔBD-optからBDをNheIおよびBbvCIを用いて除去し、小さいオリゴを同一REのオーバーハングを用いて置き換えることにより、p3ER_BD(-)を生成した。ただし、p5ER_BD(-)_HHおよびp5ER_BD(-)_ΔHHは、5’BDをHH RzのステムIIIと結合するためにランダムな8merと置き換えることにより生成し、親ベクター中にKpnIおよびBbvCIを用いてサブクローニングした。HHを有しないp5ER_ΔBD-opt_HH(-)をKpnIおよびBbvCIを用いてサブクローニングした。3’構造化BD、すなわちp3ER_ΔBD-struc1、p3ER_ΔBD-struc2およびp3ER_BD-opt-invを、NheIおよびBbvCIを用いてサブクローニングした。5’構造化BD、すなわち5ER_ΔBD-struc1_HHおよびp5ER _ΔBD-opt-inv_HHを、KpnIおよびBbsIを用いてサブクローニングした。さらに、RNAの3’末端の安定性を見るための5’ERコンストラクト(p5ER_ΔBD-opt_hp_HHおよびp5ER_ΔBD-opt_Y_HHのような)を、KpnIおよびBbsIを用いて親の中にクローニングした。3’ERにおけるオンターゲットおよび選択的トランス-スプライシングの特異性を研究するための追加的なBD、すなわちp3ER_ΔBD-opt_D、p3ER_ΔBD-opt_E、p3ER_ΔBD-opt_F、p3ER_ΔBD-opt_EF、p3ER_ΔBD-opt_DEFおよびp3ER_BD(-)_Dを、NheIおよびBbvCIを用いて親の中にクローニングした。スプライス突然変異体の状況においてこれらの準最適なトランス-スプライシングコンストラクトの効果をさらに研究するために、これらを3’セットに関してはp3ER_ΔBD-opt_Δss1およびp3ER_ΔBD-opt_Δss2に、5’セットに関してはp5ER_ΔBD-opt_HH_Δss1およびp5ER_ΔBD-opt_HH_Δss2中にクローニングした。3’構造化BD(6個の異なるコンストラクト:p3ER_ΔBD-struc1/2/opt-inv_Δss1/2)、3’ミスマッチなしBD(2個のコンストラクト:p3ER_BD-opt_Δss1/2)および3’BDなし(2個のコンストラクト:p3ER_BD(-)_Δss1/2)をNheIおよびBbvCIを用いてクローニングした。5’構造化BD(4個の異なるコンストラクト:p5ER_ΔBD-struc1/opt-inv_HH_Δss1/2)、5’ミスマッチなしBD(2個のコンストラクト:p5ER_BD-opt_HH_Δss1/2)、5’BDなし_wt HH(2個のコンストラクト:p5ER_BD(-)_HH_Δss1/2)および5’no BD_mut HH (2個のコンストラクト:p5ER_BD(-)_ΔHH_Δss1/2)をKpnIおよびBbvCIを用いてクローニングした。ミスマッチなしまたは技術水準BDの状況において準最適なトランス-スプライシングコンストラクトの効果を研究するために、構造化BDを標的に対して完全に相補性にし、NheIおよびBbvCIを用いてp3ER_ΔBD-opt中にクローニングし(全部で3個のコンストラクト:p3ER_BD-struc1/2/opt-inv)、KpnIおよびBbsIを用いてp5ER_ΔBD-opt_HH中にクローニングした(全部で2個のコンストラクト:p5ER_BD-struc1/opt-inv_HH)。
【0064】
全体のトランス-スプライシングを改善するために、3’ERコンテキストにおいて同時に2つのpre-mRNAを標的とするためのコンストラクトを設計し(一方はAFPに対し、他方はHCCA2、CD24またはVEGFの何れかに対する)、p3ER_ΔBD-opt_AFP+HCCA2およびp3ER_ΔBD-opt_HCCA2+AFPをNheIおよびBbvCIを用いてp3ER親ベクター中にサブクローニングした。他の標的、すなわちp3ER_ΔBD-opt_AFP+CD24およびp3ER_ΔBD-opt_AFP+VEGFを、EcoRIおよびBbvCIを用いて、第2のBDとしての役割を果たすHCCA2を置き換えることにより、3ER_ΔBD-opt_AFP+HCCA2ベクター中にさらにサブクローニングした。同様にp3ER_ΔBD-opt_CD24+AFPおよびp3ER_ΔBD-opt_EGF+AFPをEcoRIおよびNheIを用いて第1のBDとして役割を果たすHCCA2 BDを置き換えることによりp3ER_ΔBD-opt_HCCA2+AFPベクター中にサブクローニングした。フローサイトメトリー分析のために、GFP遺伝子(pEGFP.C2から増幅)をHindIIIおよびXbaIを用いてpGL3-コントロール中にクローニングし、pGL3プラスミドからのSV40プロモーター-GFP-SV40 polyA-SV40エンハンサーカセットを、pVAX1-トランス-スプライシングベクターにおける自己生成MCS部位にBglIIおよびSalIを用いてクローニングした。pVAX1-AFPネガティブコントロールベクターにおけるGFPカセットを、KpnIおよびBamHIを用いて直接クローニングした。HPV16遺伝子を標的とするトランス-スプライシングコンストラクトを生成するために、親ベクターp3ER_ΔBD-optからBam HIおよびXhoI用いて上記BDを切断し、BD E1aおよびE5で置き換えることにより、それぞれp3ER_ΔBD-opt_E1aおよびp3ER_ΔBD-opt_E5を生成した。同様にBD E2およびE6をXhoIおよびXbaIを用いてAFP BDを置き換えることによりp3ER_ΔBD-opt中にクローニングして、p3ER_ΔBD-opt_E2およびp3ER_ΔBD-opt_E6を生成した。5’ERに関して、AFP BDを含む親ベクターp5ER_ΔBD-opt_HHを、酵素HindIIIおよびBamHIを用いてHPV16 BD E1bで置き換え、p5ER_ΔBD-opt_E1b_HHを生成し、p5ER_ΔBD-opt_HH(-)ベクターのAFP BDをHindIIIおよびBamHIを用いてE6 BDで置き換えて、p5ER_ΔBD-opt_E6_HH(-)を形成した。
【0065】
ダンベル(db)構造:プラスミドベクターからのトランス-スプライシング用ダンベルの生成は、db製造のELAN法を用いて行った。Enzymatic Ligation Assisted by Nucleases(ELAN)は、プラスミドからの転写カセットの切断、いずれかの側での閉ループのライゲーション、それに続く閉じていないdbプラスミドを除去するためのエキソヌクレアーゼ処理を含む3ステッププロセスである。
(a)ステムループプライマーのリン酸化
個別のRE部位からなるステムループはAIT Biotech(シンガポール)によって合成し、それを表1に示す以下の反応を用いてリン酸化した:
【0066】
【0067】
ステムループプライマーは、Stem loop-SpeIおよびStem-loop-BamHIであった。
(b) ELAN法
ELANループ-ライゲーション法において、遺伝子発現カセットを、親プラスミドから直接切り出した。遺伝子発現カセットの大部分がキャップされることを確実にするために、50倍のさらなるステムループをライゲーション反応に添加した。ループダイマーのような副生成物を制限酵素により切断し、エクソヌクレアーゼ処理の間に破壊した。反応の詳細なセットアップを表2に示す。
【0068】
【0069】
表2:ELANループ-ライゲーションストラテジーを用いる、トランス-スプライシングダンベルの生成のための反応のセットアップ
生成したダンベルを、それらの完全性を確認するために1%アガロースゲルで泳動した。
【0070】
細胞培養:ヒト肝細胞(HepG2)、ヒト子宮頸癌細胞株(Siha,HeLa)およびマウス子宮頸癌細胞株(C3)を5%CO2を有する加湿したインキュベーターにおいて37℃で、10%ウシ胎仔血清(HyClone)および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(HyClone,Thermo Scientific)において維持した。細胞を所望の密度で3~4日毎に継代した。
【0071】
プラスミドDNAのトランスフェクション:HepG2細胞のトランスフェクションを、約70~90%コンフルエントで、ウエスタンブロッティング用には6ウェルプレートにおいて、FACS分析のためには12ウェルプレートにおいて、および他の全ての分析のためには24ウェルプレートにおいて、Lipofectamine3000(FACS研究用のみ)またはLipofectamine2000(Life Technologies)のいずれかを用いて、製造業者のプロトコールに従って行った。過剰発現研究では、全体で1μgのDNAで、24ウェルプレートのフォーマットにおいて(500ng:500ngのtsコンストラクト:AFP_E3_E6ミニ遺伝子)、そして内因性研究においてのみ1μgのtsコンストラクトで、コトランスフェクションまたはトランスフェクションを行った。12ウェルおよび6ウェルのフォーマットに関しては、全DNAの量をそれぞれ2μgおよび4μgに増やした。FACS実験のために、500ngのpEGFP-C2プラスミドを、tsおよびAFPミニ遺伝子ベクターとともにコトランスフェクトし、いくつかの3’ERおよび5’ERプラスミドおよびダンベルを用いて実験を行うか、またはGFP融合tsベクターをAFPミニ遺伝子とともに/AFPミニ遺伝子なしで、それぞれ過剰発現および内因性試験のために使用した。トータルRNAの単離:トランスフェクションの24時間後に、RNeasy plusキット(Qiagen)を用いて製造業者のプロトコールに従ってRNAを単離した。RNA濃度をNanoDrop 2000を用いて測定した。
【0072】
cDNA変換およびリアルタイムRT-PCR:全サンプルからの500ng RNAを、200ngのランダムヘキサマーおよび10uMのdNTPsとともにFirst Strand SuperScript RTIII(Invitrogen)キットを用いて、cDNAに変換した。反応条件は、25℃で5分間、続いて50℃で2時間、および70℃で15分間の熱失活であった。20ngのcDNAをリアルタイムRT-PCRのための鋳型として使用した。cDNAのTaqMan定量化をABI 7900HTにおいて、各シス-およびトランス-スプライシング検出用の特異的プローブおよびプライマーセットを設計することにより行った。1セットのプローブをAFP領域において設計した;すなわち、それぞれ3’ERおよび5’ER シスおよびトランス-スプライシングを検出するためのAFP probe exon 5およびAFP probe exon 4。AFPプローブとともに3’ERシス-スプライシングを検出するためのプライマーはFP afp exon 5(set1)およびRP afp exon 6であり、3’ERトランス-スプライシングについてはFP afp exon 5(set1)およびRP HSVtkであった。AFPプローブとともに5’ERシス-スプライシングを検出するためのプライマーはFP afp exon 3およびRP afp exon 4(set1)であり、5’ERトランス-スプライシングについてはFP HSVtk(set1)およびRP afp exon 4(set1)であった。3’ERを検出するための遠位HSVtk領域におけるプローブの別のセット(HSVtk probe for 3’ERと名付けた)および5’ERを検出するための近位HSVtk領域における別のセット(HSVtk probe for 5’ER trans-splicing alone)を設計した。HSVtkプローブとともに3’ERトランス-スプライシングを検出するためのプライマーはFP afp exon 5(set2)およびRP HSVtkであった。HSVtkプローブとともに5’ERトランス-スプライシングを検出するためのプライマーはFP HSVtk(set2)およびRP afp exon 4(set2)であった。過剰発現試験および内因性試験におけるサイクル数は、それぞれ40および50であった。RT-PCR:3’および5’シスおよびトランス-スプライシングを検出するために、Taq DNAポリメラーゼ(Fermentas)を用いて60サイクルの2ステップPCR(30+30サイクルまたは35+35サイクル)でcDNAサンプルについて逆転写PCRを実施し、バンドを1%アガロースゲル上で可視化した。3’ERシスースプライシングおよびmockを検出するために使用したプライマーは、FP afp exon 5(set1)およびRP afp exon 6であり、3’ERトランス-スプライシングを検出するためのプライマーは、FP afp exon 5(set1)およびRP HSVtkであった。5’ERシス-スプライシングおよびmockを検出するためには、プライマーFP afp exon 3およびRP afp exon 4(set1)、5’ERトランス-スプライシングを検出するためには、プライマーFP HSVtk(set1)およびRP afp exon 4(set1)であった。特異的対選択的オンターゲットトランス-スプライシングを可視化するために、p3ER_ΔBDおよびp3ER_BD(-) cDNAを、特異的tsのためにプライマーFP afp exon 5(set2)およびRP HSVtkを用いて、選択的オンターゲットtsのためにプライマーFP afp exon 3およびRP HSVtkを用いて増幅した。p5ER_ΔBD_HHおよびp5ER_BD(-)_HH cDNAを、特異的tsのためにプライマーFP HSVtk(set2)およびRP afp exon 4(set2)を用いて、選択的オンターゲットtsのためにプライマーFP HSVtk(set2)およびRP afp exon 6を用いて増幅した。
【0073】
Alamarアッセイ:トランス-スプライシングの機能的活性を調べるために、トランスフェクションの24時間後に薬剤ガンシクロビル(GCV)(Sigma)を細胞に10μM、100μMの濃度で添加し、およびGCVを添加せず(内部ネガティブコントロール)、引き続き薬剤の24時間後にalamarBlue(登録商標) cell viability reagent(Thermo Scientific)を添加し、6日間、それぞれalamarの記録後に、毎日フレッシュな培地および薬剤で置き換えた。37℃でのインキュベーションの90分後に230/290nmで蛍光を測定した。当該アッセイ用のポジティブおよびネガティブコントロールを、製造者のプロトコールに記載されるように設計した。
【0074】
単細胞ゲル電気泳動:コメットアッセイとしても知られ、それは、トランスフェクションの24時間後に10μM GCVを投与し、アルカリ溶解法(Olive,et al.,2006)を用いて薬物処理の24時間後に回収した細胞での二本鎖DNA破壊を調べるために実施した。コメットをヨウ化プロピジウム10μg/ml(Life Technologies)で染色し、蛍光顕微鏡で10Xおよび20X倍率で解析した。サンプルあたり約150~200個のコメットをスコア化した。
【0075】
フローサイトメトリー:アポトーシスを調べるために、100μM GCV処理の48時間後に回収し、製造者のプロトコールに従ってアネキシン-結合バッファーにおいてヨウ化プロピジウムおよびAlexa Fluor 647 Annexin V (Life Technologies)を用いて染色した。GFP陽性である単一の生細胞ポピュレーションに基づいてサンプルをゲーティングした。最終のアポトーシスの値%を、(初期および後期アポトーシス+GCV)-(初期および後期アポトーシス-GCV)として示す。
【0076】
ウエスタンブロッティング:AFPおよびHSVtkタンパク質の両方を検出するために、細胞をトランスフェクションの24時間後に回収し、全体で50μgのタンパク質を10%SDS-PAGEでローディングし、PVDF膜に転写し、5%ミルク(w/v)でブロッキングを行った。各々の一次抗体(HSV-tk vL-20ヤギポリクローナル Santa Cruz cat no. sc-28038、AFPヤギポリクローナル Santa Cruz cat no. sc-8108およびベータアクチン(内部コントロール)ウサギポリクローナル Santa Cruz cat no.sc-130656)を5%ミルク中で一晩4℃でインキュベートし、続いて二次抗体(HSVtkおよびAFP抗ヤギ Santa Cruz cat no. sc-2020およびベータアクチン抗ウサギ Santa Cruz cat no. sc-2357)と2時間インキュベートした。ブロットをPierce ECL Western Blotting substrate (Thermo Scientific)を用いる化学発光に付し、撮像装置(BioRad)において現像した。
【0077】
スプライス部位の予測:スプライス部位の強さおよび性質は、ソフトウェアAlternative Splice Site Predictor (ASSP) (Wang, 2006) http://wangcomputing.com/assp/overview.htmlおよびBerkeley Drosophila Genome Project Splice Site Prediction (BDGP SSP) (Reese, et al., 1997) http://www.fruitfly.org/seqtools/splice.htmlを用いて予測し、スプライス部位予測のためのデフォルトのカットオフ値を用いた。HPV16ゲノムにおけるスプライス部位の性質を予測するために、ASSPを使用して、ソフトウェアによって生成される全体スコアおよび信頼度に基づいて、構成的なまたは微弱なスプライスアクセプターおよびドナーを示した。信頼度>0.89およびスコア>5.5を有する選択的スプライス部位、および信頼度>0.1およびスコア>7.7を有する構成的スプライス部位を、文献に記載されたスプライス部位(Johansson, 2013およびSchmitt, et al, 2011)の他にトランス-スプライシング解析のために選択した。
【0078】
結果および議論
5’および3’エキソン置換(ER)のために新規に設計したトランス-スプライシングRNAは、過剰発現されたまたは内因性pre-mRNA標的に対して標的化されたトランス-スプライシングを誘発する
この発明は、より高いトランス-スプライシング活性および特異性を達成するために設計された新規の最適化されたRNA配列および構造に向けられている。我々は、下記の分子的特徴を含む、5’ERまたは3’ER両方のための親トランス-スプライシングRNA(tsRNA)分子を設計した(
図1a):第1に、AFPのpre-mRNAのイントロン3または5に相補的なコンピューターにより選択された約50ntの長さの非構造化結合ドメイン(BD)およびtsRNA分子の状況下で選択されたBD構造を保存するスペーサー;第2に、5’ERに関して、イントロニック・スプライス・エンハンサー(ISE)およびコンセンサス・スプライスドナー(SD)部位(CAG/GT)から、または3’ERに関して、ISE、コンセンサスYNYURAC (R プリン, Y ピリミジン, N 任意のヌクレオチド)分岐点(BP)配列、広範囲のポリピリミジントラクト(PPT)およびコンセンサススプライスアクセプター(SA)部位(AG/G)から構成されるスプライシングドメイン;および第3に、新規の強化されたエキソニック・スプライス・エンハンサー(ESE)ならびにα-グロビンミニイントロンを有する、最適化HSVtk遺伝子を含むコーディングドメイン。
【0079】
さらに我々は、核RNA保持を誘発するためおよびトランス-スプライシング非依拠HSVtk発現を避けるために、5’ERのための前記tsRNAに、BDの下流に位置する三次構造安定化ハンマーヘッド型リボザイム(HHRz)(Saksmerprome, et al.2004)を、それ自身をSV40ポリA部位と一緒に切り取るために取り付けた。活性リボザイム構造の形成は、リボザイムとポリA部位の間にスペーサーを挿入することにより支持された。一方、3’ERのためのtsRNAは、トランス-スプライシング反応から得られるキメラ融合タンパク質からのHSVtkのタンパク質分解的切り離しを誘発するために、スプライスアクセプターSA部位のすぐ下流に位置するP2Aタンパク質分解的切断部位(Kim JH, et al. 2011)を備えていた。これらのコンストラクトは、活性の最大化のために設計した。
【0080】
標的結合が、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)によるA-to-I編集を含むアンチセンス効果を誘発するかもしれない(これはトランス-スプライス・ストラテジーを損ない得る)長い二本鎖核RNAを生成するのを避けるために、中央の2nt標的ミスマッチが結合ドメイン中に含まれた(ΔBD)。3’または5’ERのためにこのような方法で最適化されたBDを、p3ER_ΔBD-optまたはp5ER_ΔBD-opt_HHと呼ぶ。コントロールとして、我々は、5’および3’ERのために各々、2つのスプライス部位突然変異(Δss1およびΔss2)、部分的に不活性なHSVtk突然変異(HSVtk遺伝子の115番目のAからGへの突然変異、および649番目のGからAへの突然変異)、ならびに5’ERのために、不活性HHRz切断部位を有するコントロール(
図3a)を設計した。tsRNAを試験するために、我々は、イントロン3(I3)および5(I5)を含むがイントロン4(I4)を欠くエキソン3~エキソン6(E3~E6)の配列を包含するAFPミニ遺伝子の過剰発現のためのベクターを設計した(
図1a)。内因性のAFP mRNAおよびタンパク質の発現を、肝癌細胞株HepG2、PLC/PRF5、SNU495およびCL48、および非肝臓細胞株HEK293Tを含むいくつかの癌細胞株で検出した。HepG2細胞を500ng tsRNA + 500ng AFPミニ遺伝子でトランスフェクトし、細胞のトータルRNAをトランスフェクションの24時間後に単離し、トランス-スプライスおよびシス-スプライスされたRNAの両方をAFP特異的TaqManプローブを用いるリアルタイム逆転写酵素PCR(rtRT-PCR)により定量化した。HSVtk特異的プローブを用いてトランス-スプライシングを追加的に検出した(
図1b)。シス-スプライシングが、トランス-スプライシングより高頻度に見られ、スプライス部位突然変異により、親コンストラクトおよびHSVtkまたはHHRz切断部位突然変異体と比較して減少したトランス-スプライス活性が明らかとなった。PCR増幅したcDNA内のスプライスジャンクションの配列決定により、親コンストラクトにより誘発されたトランス-スプライシングならびにAFPミニ遺伝子および内因性転写物の両方のシス-スプライシングの正確性を確認した(
図1c)。AFPミニ遺伝子転写物または内因性AFP pre-mRNA内またはこれらに向けたシス-およびトランス-スプライシングの競合により、シス-スプライシングをトランス-スプライシングにより阻害できることが示された(
図1d,e)。我々は、内因性AFP pre-mRNAに向けられたトランス-スプライシングの成功も検出でき(
図1f)、その正確性をcDNA配列決定により確認した(
図1g)。トランス-スプライシングで誘発されたHSVtkタンパク質発現をウエスタンブロット解析によってモニタリングし、トランス-スプライスRNAのレベルとよく相関することが見出された(補助
図1d,e)。キメラAFP-HSVtk融合タンパク質は3’ERコンストラクトで検出できず、これは効率的なP2A-タンパク質分解的切断を示していた。5’ERの場合、スプライス部位突然変異体は、親コンストラクトと比較して明確に減少したレベルのHSVtk発現を誘発し、これは大部分のHSVtkタンパク質がトランス-スプライシングに由来し、リークしたスプライシング非依拠性の発現からではないことを示していた。3’ERの後には、42 kDa HSVtkアイソフォームのみが形成されたが、一方で5’ERおよびポジティブコントロールは2つの42kDaおよび44kDa HSVtkアイソフォームの発現をもたらす。
【0081】
結合ドメイン配列および構造の設計は、3’エキソン置換を大幅に改善するが5’エキソン置換は改善しない
我々は、RNAトランス-スプライシングにおけるBD RNA二次の役割を調べた。我々の以前に記載したソフトウェアツール(Senger, et al. 1995)を用いて、我々は、AFP pre-mRNAに対して標的化できる約50ntの長さの最も構造化されていないBDを同定した:それぞれイントロン5またはイントロン3に結合する3’または5’ERのための3ER_BD-optまたは5ER_BD-opt(
図2、補助
図1b,2a)。コントロールとして、我々は同等の長さの高度に構造化したドメイン(3ER_BD-struc1、3ER_BD-struc2および5ER_BD-struc1)(これらの各々は非構造化ドメインと重複していた)を同定した(補助
図1,2)。最後に我々は、有利なBD、すなわち3ER_BD-optおよび5ER_BD-optを完全に包含する内部逆方向反復を使用し、それらを構造化された不利なBDに変えるが、標的スプライス部位への距離を維持することにより、別の2つのBD、すなわち3ER_BD-opt-invおよび5ER_BD-opt-invを設計した。選択された結合ドメインを、リンカーまたはスペーサー配列を介してtsRNAの他のドメインと融合し、これにより選択されたBD構造が融合の際に変化しないことが確保された(補助
図1a)。RNA編集を抑制するために、これらの全てのBDは、中央に2ntの標的ミスマッチを有する不完全な標的結合ドメイン(ΔBD)として生成した。これらのミスマッチによって生じる効果を調べるために、我々はまた、それぞれ非構造化BDもしくは最も構造化されたBDの完全に相補的なアナログ、3ER_BD-optおよび5ER_BD-opt、または3ER_BD-opt-invおよび5ER_BD-opt-invを生成した(
図2a,2b)。全てのBDおよびΔBDを、親のトランス-スプライシングベクター中にクローニングした。HepG2細胞を、トランス-スプライシングプラスミドおよびAFPミニ遺伝子ベクターでコトランスフェクトし、トランス-スプライシング活性をトランスフェクションの24時間後にモニタリングした。3’ERの場合、3ER_ΔBD-optを有するtsRNAは、3ER_BD-opt、3ER_ΔBD-opt-invまたは3ER_BD-opt-invを有するそのアナログと比較して、4倍(p=0,04)、3倍または30倍(p=0.04)強いトランス-スプライシングを誘発した(
図2c)。さらに、3ER_ΔBD-optは、4倍または6倍(p=0.04)、3ER_BD-struc1または3ER_BD-struc2より強力であった。これらのデータは、(i)ミスマッチΔBDが相補的なBDよりも強力であること、および(ii)非構造化BDまたはΔBDが構造化されたものより効果的であることを示す。反対に、結合ドメイン内のRNA二次構造形成および標的相補性の程度は、5’ER活性に影響を与えなかった(
図2d)。しかしながら、スプライス部位突然変異は、全てのコンストラクトの3’および5’ER活性を低下させた(
図2a,b)。5’エキソン置換は、tsRNA 3’末端の熱力学的安定性と相関する。
【0082】
図1bにより、不活性なHHRz切断モチーフを有するコンストラクトp5ER_ΔBD-opt_ΔHHが、その切断可能アナログp5ER_ΔBD-opt_HHと比較して強力なトランス-スプライス活性を誘発したことが示された。切断されていないRNAは、ポリA尾部を有し、細胞質に輸出され、その結果その核濃度およびトランス-スプライシングの率を低下させると考えられるので、このことは驚くべきことであった。我々は、ステムループ・プライマーをベースとするrt-RT-PCRを用いて、切断されたRNA3’末端を定量化することにより、HHRz切断を調べた(
図3a)。この方法は、完全なプライマーマッチングと伸長RNA 3’末端を効果的に区別することが証明された。観察された6.2サイクルの差により、非構造化3’末端BDを有するトランス-スプライシングRNAを産生する90%超のリボザイム切断率が示された(
図3a)。アンチセンスRNAの非構造化末端は、速い標的結合と分解の両方と関連することが報告されている。リボザイム切断後に5’ERのためのトランス-スプライシングRNAの3’末端を安定化するために、我々は、BDの下流であるがHHRz切断部位の上流にステムループ(p5ER_ΔBD-opt_hp_HH)またはY字型(p5ER_ΔBD-opt_Y_HH)構造を有するコンストラクト、ならびにBDにポリA部位が続くが、リボザイムおよびスペーサーを欠いているコントロール(p5ER_ΔBD-opt_HH(-))を設計した(
図3c)。リボザイム切断の前後のRNA二次構造をmfoldを用いて予測した。全ての5’ERコンストラクトの実験的研究により、RNA3’末端の熱力学的安定性、すなわち二次構造形成のGibbsの自由エネルギーΔGと、トランス-スプライシング活性との間の正の相関が明らかとなった(
図3d,e)。最も強力なトランス-スプライシングは、突然変異を有するHHRz切断部位を有しスペーサーおよびSV40ポリA部位によって形成される安定な二次構造を有するコンストラクトにおいて観察され、末端にY字型およびステムループ構造を有するコンストラクト、および3’末端BDを有する親コンストラクトが続く。しかしながら、群を抜いて最も低いトランス-スプライス活性は、ポリA部位を含むが3’末端に安定な構造を欠いているコンストラクトにおいて測定された。
【0083】
マルチプル結合ドメインは、標的化されたトランス-スプライシングを増強し、選択的オンターゲットトランス-スプライシングを抑制し、従って3’ERの特異性を増加させる
選択的オンターゲットトランス-スプライシングを抑制するため、およびトランス-スプライシング特異性を改善するために、我々は、複数の標的および/または自己結合ドメインを有する3’ERのための新規RNAを設計した(
図4c)。迅速な標的への結合のために最適化されたBD-optを補足して、我々は、 (i)BD-Eに、意図するトランス-スプライス部位D2およびAを互いにより近接させ、(ii)BD-Fを結合させ、機能的に選択的ドナースプライス部位D1をブロックし、(iii)BD-optのすぐ上流に位置していた自己結合ドメインBD-Dに、標的結合不在下でトランス-スプライシングRNAのアクセプタースプライス部位AのPPTを保護させた。さらに我々は、BD-opに加えそれぞれBD EおよびFまたはBD D、EおよびFを有する、マルチプルBD、すなわちp3ER_ΔBD-opt_EFまたはp3ER_ΔBD-opt_DEFを生成した。全てのコンストラクトに関して、我々は、特異的(TSspec)および選択的オンターゲットトランス-スプライシング(TSalt)の相対活性を測定し、式(1)を用いて特異性係数Sを計算した(
図4d):
S = TSspec/TSalt*100% (1)
全ての二次BDは、特異性係数の増加に反映されるように、トランス-スプライシングの特異性を増加させた。BD-Fおよびより顕著なBD-Dは、特異的および選択的オンターゲットトランス-スプライシングの両方を抑制した一方で、BD-EならびにBD-Eおよび-Fの組み合わせは、特異的なトランス-スプライシングは増加させたが、選択的オンターゲットトランス-スプライシングは抑制した。しかしながら、最も成功したのは3つ全ての追加的なBD、すなわちD、EおよびFの組み合わせであり、これは、特異的なトランス-スプライシングを約2倍増加させ、選択的スプライシングを約5倍減少させ、従って、親コンストラクトと比較して、10倍高いトランス-スプライシングの特異性を示した。標的結合ドメインのないコンストラクトにおいて、内部BD-Dは 強力なスプライスドナーD1またはやや強力なドナーD2に向けたトランス-スプライシングを20倍または130倍抑制し、他の細胞のオフターゲットに対するトランス-スプライシングが同程度抑制されたと考えられる。特に、トランス-スプライシングの同等の減少が、突然変異誘発により弱められたスプライス部位を有するBD(-)コンストラクトで観察された。
【0084】
過剰発現させたまたは内因性AFP pre-mRNAに向けたトランス-スプライシングは、ヒト肝がん細胞株において死を誘発する
自殺遺伝子系として、我々は単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVtk)およびプロドラッグのガンシクロビル(GCV)を選択した。トランス-スプライシングは、標的RNAに依存する様式でHSVtk発現を誘発し、これはその後 GCVのそのモノホスフェートへのリン酸化に触媒作用を及ぼし、それは引き続きそのジ-およびトリ-ホスフェート誘導体に細胞キナーゼにより変換される。毒性のGCV-トリホスフェートはその後、デオキシグアノシントリホスフェート(dGTP)アナログとして作用し、従って、複製の間にDNA鎖上に留まり、鎖の終結および細胞死を引き起こす。我々は、過剰発現させたまたは内因性AFP pre-mRNAに向けられた5’または3’ERによって誘発されたヒト肝がん細胞HepG2の死を3つの異なるアッセイを用いて調べた。第1に、alamar blue細胞生存性アッセイ。細胞をトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後に10もしくは100μM GCVを培地に添加し、薬剤処理の24時間後にalamar色素を添加し、90分のインキュベーション時間後に蛍光を測定した。alamar測定後に、培地および薬剤を補充し、6日間連続でプロセスを繰り返した。ポジティブコントロールのレベルに達する、最も高いレベルの細胞死、すなわち、100μM GCVで最大80%(
図5a,b)または10μM GCVで60~70%(補助
図3)が、過剰発現AFPメッセージに対する親コンストラクトのトランス-スプライシングにより処理の6日目に誘発された。同様に、高レベルの細胞死が、4つ全てのBDを含む3’ERコンストラクトで、および突然変異を有するHHRz切断モチーフを有する5’ERに関して観察された。内因性AFP RNAでの3’ERは、わずかに効果が低かった。予測されたように、より低いレベルの細胞死が、部分的に不活性なHSVtk突然変異体、スプライス部位突然変異体およびAFP特異的BDを欠くRNAにより誘発された。GCVの非存在下においてAFPミニ遺伝子またはトランス-スプライシングコンストラクトにより細胞毒性は誘発されなかった。第2に、我々の系によって誘発される細胞死の特定の様式をモニターするために、我々は、アネキシンV/ヨウ化プロピジウム(PI)アポトーシスアッセイを利用した。従って、HepG2細胞をトランスフェクトし、100μM GCVで48時間処理し、フローサイトメトリーを用いて解析した。トランスフェクトした細胞のみを分析するために、我々は最初にトランス-スプライシングベクターおよびAFPミニ遺伝子と一緒にEGFP発現ベクターをコトランスフェクトした(補助
図4)。活性なトランス-スプライシングコンストラクトが、部分的に不活性なコンストラクトまたはコントロールと比較して高いレベルのアポトーシス(最大50%)を誘発することが見出されたが、相当の割合(30%)のアポトーシス細胞がEGFP陽性であった(補助
図8d)。複数のプラスミドのコトランスフェクトに伴う欠点を回避するために、我々は、SV40プロモーター駆動性のEGFP遺伝子を、トランス-スプライシングベクター、AFPミニ遺伝子ベクターおよびHSVtkベクターに挿入し、その結果、細胞を1つのプラスミドだけ(内因性標的)または2つのプラスミド(過剰発現標的)でトランスフェクトすることができた(
図5c,d,e)。最適化されたBDまたはマルチプルBDを有する最も活性な3’ERコンストラクト、および活性もしくは不活性切断モチーフを有するHHRzを持つ最良の5’ERコンストラクトは、AFP過剰発現細胞の40%超でアポトーシスを誘発した。半分のアポトーシス細胞は、内因性AFPのみを発現する細胞で検出された。例外は、突然変異を有するHHRz切断部位を有する5’ERコンストラクトであり、これは、内因性および過剰発現AFPの両方と同等の高レベルのアポトーシスを誘発した。このtsRNAは、標的に対するトランス-スプライシングを受けなくとも、5’キャップおよび3’ポリA尾部を有する完全に損傷されていない安定なmRNAを示す。従って、このtsRNAの高い細胞死活性は、トランス-スプライシングの非存在下での核輸出およびHSVtk翻訳のどちらかによるものであるか、および/または代替として高い内因性の安定性および後続の高率のトランス-スプライシング(これらはまさにこのRNAに関して測定された)によるものであるかもしれない(
図3d)。HSVtk/GCV誘発細胞死の様式は、主に、DNA二本鎖破壊を伴うアポトーシスとして報告されてきた。大部分の割合の細胞がアポトーシスにより殺されたことを確認するために、我々は第3に、単細胞ゲル電気泳動後に部分的に分解したDNAを可視化できるコメットアッセイを実施した。従って、HepG2細胞を、トランス-スプライシングコンストラクトおよびAFPミニ遺伝子でコトランスフェクトし、100μM GCVでインキュベートし、24時間後にDNA破壊をテイルモーメントとして記録した。結果は、alamar blueおよびアネキシンV/PIアッセイで得られたものと一致し:大部分のDNAの破壊が、マルチプルBDまたは親3’ER RNAにより、5’ERの場合は突然変異を有するHHRz切断部位および親配列を持つRNAにより誘発された(
図5f)。
【0085】
2つの内因性肝がんマーカーを同時に標的とするトランス-スプライシングRNAは、10倍低いガンシクロビル用量で細胞死の増加を誘発した
他の多くのヒト疾患のように、肝細胞がん(HCC)の発がんは、多因子性の、多段階の複雑なプロセスであり、単一のバイオマーカーは疾患およびそのステージを正確に示さない。我々のアプローチのHCC特異性および感受性の両方を増加させるために、我々は、別個のBDを用いて2つのHCCバイオマーカーを同時に標的化する二重特異性(二重標的化)tsRNAを調べた。マルチプルHCCバイオマーカーは文献に報告されており、我々は、10種の異なる細胞株または細胞において12個の対応するpre-mRNAおよびmRNAの量を測定した(補助
図5a)。我々の試験細胞株における量、HCC特異性および臨床的意義に基づいて、我々は3つの遺伝子を選択した:第1にHCCA2(YY1AP1)であり、肝がん患者においてアップレギュレートされているHCC関連タンパク質;第2にCD24であり、表面マーカー糖タンパク質であって、末期HCCにおける細胞の高い侵襲性および転移可能性に関するマーカー;および第3にVEGFであって、腫瘍の血管新生に重要な役割を果たすサイトカインであり、HCCにおけるリンパ節転移のバイオマーカーである。我々は、AFPおよびBDをスペーサー配列で分離する1つの二次標的BDの6つ全ての組み合わせを考慮して二重標的化トランス-スプライシングRNAを設計し、alamar blue細胞生存性アッセイを用いて、内因性のpre-mRNAのみを標的とするHepG2細胞のトランス-スプライシング介在性死を調べた(
図5g,h)。10μM GCVで、全ての二重標的化コンストラクトは、AFPのみを標的とするコンストラクトと比較して有意に高いレベルの細胞死を誘発したが(
図5h);100μM GCVでは、単一および二重標的化コンストラクトは同等の効果を示した(補助
図5b)。
【0086】
HPV-16-標的化自殺RNAは、特異的にHPV-16-形質転換組織培養細胞を殺した
我々のtsRNAの普遍的な設計は、関心のある任意のpre-mRNAを標的とするための、スペーサーと一緒のBDの置換を促進する。第2の臨床的に関連する標的として、我々はヒトパピローマウイルス16型(HPV-16)を選択した。HPVは、皮膚および粘膜のケラチノサイトにおいて増殖的に感染し、良性の乳頭腫、前がん病変および癌を引き起こす。HPV感染は、世界中で最も高頻度な性感染疾患であり、2つの高リスク型HPV-16およびHPV-18は、子宮頸がん全症例の約70%を引き起こす。細胞形質転換の前に、HPV-16ゲノムが宿主細胞ゲノムに組み込まれ、ウイルスDNAを感染した個体から排除する方法はない。しかしながら、自殺遺伝子治療による感染細胞の選択的な破壊は、この問題を解決するためのアプローチを提示し得る。HPV感染において、選択的スプライシングは、ウイルスmRNAの多様なアイソフォームを生成する。我々は、コンピューターにより5つの最も有利な非構造化アンチセンスBD(opt_E6、_E1a、_E1b、_E2および_E5)を選択し、これらは初期ウイルス遺伝子E6、E1、E2およびE5を標的としてHPV-16転写物に対して向けられることができる(
図6a)。46~82ntの長さの選択したBDを適切な構造保存スペーサーと一緒に親トランス-スプライシングベクターにクローニングして、3’ERのために4つのコンストラクトおよび5’ERに関して2つのコンストラクトを生成した。得られた5’ERまたは3’ER tsRNAの各々は、多様な選択的ウイルススプライスアクセプターまたはドナー部位を採用することができ、これらは、発表されているか、またはスプライス部位予測者アルゴリズムASSPを用いて我々により予測された。我々は、HPV-16形質転換細胞株SiHa(ヒト、2つのウイルスゲノムコピー)およびC3(マウス、多重切断および完全ウイルスゲノムコピー)におけるトランス-スプライシング用のこれらのスプライス部位の使用を、rtRT-PCRを用いてモニターした(
図6b)。両細胞株において、HPV-16転写物は非常に多量であった。5’ERベクターおよび2つの最も活性な3’ERコンストラクトE1およびE6をその後、alamar blue細胞生存性アッセイおよび100μMのGCV濃度を用いて、HSVtk発現ベクター(ポジティブコントロール)と比較して、細胞死を誘発するためのそれらの可能性に関して試験した。HPV-16形質転換細胞株SiHaおよびC3において細胞死が選択的に誘発されたが、HPV-18形質転換HeLa細胞においてまたはHPV陰性細胞株HepG2においては誘発されなかった(
図6c、補助
図6)。SiHa細胞では、全てのtsRNAはポジティブコントロールと同程度に細胞死を誘発し;C3細胞では3’ERが5’ERより効率的であった。
【0087】
トランス-スプライシング分子の細胞送達のための最小限のダンベル型DNAベクター ダンベル型DNA最小ベクター、またはダンベルベクターは、従来のプラスミドベクターまたはウイルスベクターに対していくつかの利点を有する。多くのウイルスベクターは安全リスクを伴うが、より大きなプラスミドは、免疫毒性を含む副作用を誘発し得、初代細胞における導入遺伝子サイレンシングを患い得る。ダンベル類はこれらの欠点を有さず、プラスミドと比較して、細胞送達、核拡散および遺伝子発現の観点からより有効である。我々が初めて、RNAトランス-スプライシングを送達するためのダンベルベクターを生成した。それは、トランス-スプライシングカセットをプラスミドから切り出し、続いてヘアピンループ構造のライゲーションにより末端を閉じることによって達成された(
図S7a)。この方法は、ELAN法として知られている。HepG2細胞をAFPミニ遺伝子プラスミドでコトランスフェクトし、等モルまたは等質量のいずれかのダンベルを投与した。3’ERの場合、等モルまたは等質量のダンベルは、プラスミドと比較して、より高いレベルのトランス-スプライシングを誘発した(
図S7b)。5’ERの場合、等質量のダンベルDNAは、より高いレベルのトランス-スプライシングを示した(
図S7c)。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.治療すべき疾患に関連するかまたは治療すべき疾患のためのバイオマーカーである遺伝子の少なくとも一部分に特異的な少なくとも1つの結合ドメイン;
少なくとも1つの発現可能な自殺タンパク質または自殺系の成分であるタンパク質をコードする核酸;および
少なくとも1つのスプライスシグナル、
を含むトランス-スプライシングRNA(tsRNA)分子であって、
前記結合ドメインは、内部結合および/または自己相補的配列を有しない少なくとも25個の連続的な非構造化されたヌクレオチド(nt)を含む結合部位を含み、そして前記結合部位内にまたは当該部位の外に、前記結合ドメインは、44ntまたはそれより長い場合、少なくとも1つのまたは複数の、前記遺伝子に対するミスマッチヌクレオチドを有する、
トランス-スプライシングRNA(tsRNA)分子。
2.前記結合部位が、次の個数のヌクレオチドを含むかまたは次の個数のヌクレオチドからなるリストから選択されるヌクレオチドの配列を含む、上記1に記載のトランス-スプライシングRNA分子:25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、69,70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300個またはそれを超えるヌクレオチド。
3.前記結合ドメインが、治療すべき疾患に関連するかまたは治療すべき疾患のためのバイオマーカーである遺伝子の前記一部分に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91、92、93、94、95、96、97、98、99%または100%相補的であるヌクレオチドの配列を含む、上記1または2に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
4.前記結合ドメインにおけるミスマッチが、前記結合部位を含めるかまたは当該結合部位を除いて、標的に対して完全に相補的な45ntのまたはそれより長い区間を回避するように位置する、上記1~3のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
5.前記ミスマッチが、5’または3’末端から少なくとも5ヌクレオチドである、上記4に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
6.前記の少なくとも1つの発現可能な自殺タンパク質が単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVtk)である、上記1~5のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
7.前記核酸が複数の発現可能な自殺タンパク質または自殺系の成分である複数のタンパク質をコードする、上記1~6のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
8.前記tsRNAが3’ERを誘発する、上記7に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
9.前記tsRNAが前記結合ドメインに隣接するスペーサー配列も含む、上記1~8のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
10.前記のトランス-スプライシングRNA分子が、治療すべき疾患に関連するかまたは治療すべき疾患のためのバイオマーカーである遺伝子の同一のもしくは異なる部分に対して相補的である前記結合ドメインを複数含む、上記1~9のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
11.前記結合ドメインが、治療すべき疾患に関連するかまたは治療すべき疾患のためのバイオマーカーである異なる遺伝子に相補的である、上記1~9のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
12.前記tsRNAが、結合ドメインの外側に、少なくとも1つのシス結合もしくは自己結合ドメインを含む、上記1~11のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
13.前記tsRNAが、結合ドメインの外側かつ前記分子の3’に、自己相補的な配列の存在のために折りたたまれるかまたは自身と対を形成するRNAの高度に構造化された配列を含む、上記1~12のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
14.高度に構造化されたRNAが、それとポリA部位の間に位置したスペーサーに隣接する、上記13に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
15.高度に構造化されたRNAが、活性もしくは不活性リボザイムである、上記14に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
16.前記tsRNAが5’ERを誘発する、上記14または15に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
17.前記tsRNAが5’または3’ERを誘発する、上記1~7または9~15のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
18.前記疾患が、癌またはウイルス感染または細菌感染または転位因子、放射線、化学物質もしくは未知の誘因により誘発された突然変異により引き起こされる後天性遺伝疾患である、上記1~17のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子。
19.前記癌が、肝細胞がん(HCC)、子宮頸がん、膣癌、外陰癌、陰茎癌、皮膚癌、悪性黒色腫を含む黒色腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、メルケル細胞癌、肺癌、細胞膀胱癌(cell bladder cancer)、乳癌、結腸または直腸癌、肛門癌、子宮内膜癌、腎癌、白血病、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CML)、慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞白血病(HCL)、T細胞前リンパ球性白血病(P-TLL)、大顆粒リンパ球性白血病、成人T細胞白血病、リンパ腫、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、鼻咽頭癌、口腔または咽頭癌、口腔咽頭癌、胃癌、脳腫瘍、骨の癌および幹細胞の癌である、上記18に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
20.前記ウイルス感染が、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)を含むレトロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型および2型(HIV-1およびHIV-2)を含むレンチウイルス、16型および18型(HPV-16およびHPV-18)を含むヒトパピローマウイルス、HAV、HBV、HCV、HDVおよびHEVを含む肝炎ウイルス、単純ヘルペス(HSV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)を含むヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、インフルエンザウイルスまたは他の任意の組み込みウイルスによる感染である、上記18に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
21.前記細菌感染が、細菌、例えばバントネラ・ヘンセラ(Bartonella henselae)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、サルモネラ種、サルモネラ・チフス(Salmonella typhi)、ブルセラ種、レジオネラ種、マイコバクテリア種、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tunberculosis)、ノカルジア種、ロドコッカス種、エルシニア種、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitides)等による感染である、上記18に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
22.前記の後天性遺伝疾患が、神経線維腫症1型および2型、マッキューン・オルブライト、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、表皮水疱症、ファンコニAおよびC、フィラデルフィア染色体、血友病AおよびB、嚢胞性線維症、マックル・ウェルズ症候群、リポタンパク質リパーゼ欠損症、B-サラセミア、ピルビン酸脱水素酵素複合体欠損症等である、上記18に記載のトランス-スプライシングRNA分子。
23.上記1~22のいずれか1つに記載の前記tsRNAを含む細胞。
24.上記1~22のいずれか1つに記載の前記tsRNAを含むベクター。
25.前記ベクターが、裸の核酸をベースとするベクター、非ウイルスベクターまたはウイルスベクターである、上記24に記載のベクター。
26.前記の裸の核酸をベースとするベクターが、RNA分子、プラスミド、DNAミニサークルまたはダンベル型DNA最小ベクターを含む、上記25に記載のベクター。
27.前記の非ウイルスベクターが、リポソーム小胞、ナノ粒子、ポリマーコンジュゲート、抗体コンジュゲート、細胞貫通ペプチドまたはポリマーカプセルを含む、上記25に記載のベクター。
28.前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、キメラウイルスベクター、シンドビス・ウイルスベクターまたはアルファウイルスベクター、セムリキ森林ウイルスベクターおよびベネズエラウマ脳炎ウイルスベクターである、上記25に記載のベクター。
29.異常細胞を標的化する方法であって、上記1~22のいずれか1つに記載のtsRNAまたは前記tsRNAを含むベクターでの、in vivoにおける、腫瘍中への、局所適用;経鼻適用;肺胞適用;全身適用;経口適用;静脈内適用;筋肉適用;皮下適用;皮膚適用;腹腔内適用または注射、および、任意選択的に、前記細胞を、前記細胞を殺すために有効な前記自殺系の他の成分(単数または複数)に曝露することを含む方法。
30.細胞を殺す方法であって、前記細胞を、上記1~22のいずれか1つに記載のtsRNAまたは前記tsRNAを含むベクターで、ex vivoまたはin vivoにおいて、トランスフェクション、リポフェクション、形質導入、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクションまたは形質転換すること、および任意選択的に、前記細胞を殺すために有効な前記自殺系の他の成分(単数または複数)に前記細胞を曝露することを含む方法。
31.疾患を治療する方法であって、異常細胞を、上記1~22のいずれか1つに記載のtsRNAまたは前記tsRNAを含むベクターで、ex vivoまたはin vivoにおいて、トランスフェクション、リポフェクション、形質導入、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクションまたは形質転換すること、および任意選択的に、前記細胞を殺すために有効な前記自殺系の他の成分(単数または複数)に前記細胞を曝露することを含む方法。
32.前記自殺系の前記成分(単数または複数)が、ガンシクロビル、シトシンデアミナーゼ-5-フルオロシトシン、シトクロムP450-イホスファミド、シトクロムP450-シクロホスファミドおよびニトロレダクダーゼ-5-[アジリジン-1-イル]-2,4-ジニトロベンズアミドを含むかまたはこれらからなる群から選択される、上記29~31のいずれか1つに記載の方法。
33.前記細胞が哺乳類である、上記19~22のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子または上記23に記載の細胞または上記29~32のいずれか1つに記載の方法。
34.前記細胞がヒトである、上記19~22のいずれか1つに記載のトランス-スプライシングRNA分子または上記23に記載の細胞または上記29~32のいずれか1つに記載の方法。
35.上記1~22のいずれか1つに記載の前記tsRNAまたは上記24~28のいずれか1つに記載のベクターおよび、任意選択的に、前記トランス-スプライスされたRNAを発現する細胞の死を誘発するために有効な前記自殺系の少なくとも1つのさらに別の成分を含む薬剤。
36.上記1~22のいずれか1つに記載の前記tsRNAまたは上記24~28のいずれか1つに記載のベクター;任意選択的に、前記トランス-スプライスされたRNAを発現する細胞の死を誘発するために有効な前記自殺系の少なくとも1つのさらに別の成分;およびヒトまたは獣医学的用途に適したキャリアーを含む医薬組成物。
37.前記自殺系の前記1つのさらに別の成分が、ガンシクロビル、シトシンデアミナーゼ-5-フルオロシトシン、シトクロムP450-イホスファミド、シトクロムP450-シクロホスファミドおよびニトロレダクダーゼ-5-[アジリジン-1-イル]-2,4-ジニトロベンズアミドを含むかまたはこれらからなる群から選択される、上記36に記載の医薬組成物。
【0088】
オリゴヌクレオチド、プローブおよびプライマーのリスト
【0089】
【配列表】