IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人九州大学の特許一覧

特許7570140電極材料及びその製造方法、並びにこれを使用した電極、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】電極材料及びその製造方法、並びにこれを使用した電極、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20241011BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20241011BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20241011BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20241011BHJP
   C25B 11/032 20210101ALI20241011BHJP
   C25B 11/051 20210101ALI20241011BHJP
   C25B 11/069 20210101ALI20241011BHJP
   C25B 11/081 20210101ALI20241011BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241011BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20241011BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20241011BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/92
H01M4/90 M
H01M4/88 K
C25B11/032
C25B11/051
C25B11/069
C25B11/081
C25B9/00 A
C25B9/19
H01M8/10 101
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023175261
(22)【出願日】2023-10-10
【審査請求日】2024-06-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/水素利用等高度化先端技術開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100229389
【弁理士】
【氏名又は名称】香田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】西泉 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】野田 志云
(72)【発明者】
【氏名】松田 潤子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一成
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-161273(JP,A)
【文献】特開2015-195193(JP,A)
【文献】特開2019-207789(JP,A)
【文献】特開2020-064852(JP,A)
【文献】特開2020-126816(JP,A)
【文献】特開2021-082578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 4/92
H01M 4/90
H01M 4/88
C25B 11/032
C25B 11/051
C25B 11/069
C25B 11/081
C25B 9/00
C25B 9/19
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質炭素からなる担体骨格と、前記多孔質炭素の細孔内表面及び細孔外表面のうち少なくとも細孔内表面に固着したTa酸化物担体とからなる多孔質複合担体と、前記多孔質複合担体に担持された電極触媒粒子と、を含み、
前記電極触媒粒子の一部又は全部が、前記多孔質炭素の細孔内に、前記Ta酸化物担体を介して担持されてなることを特徴とする電極材料。
【請求項2】
前記Ta酸化物担体が、結晶性Ta酸化物を含む請求項1に記載の電極材料。
【請求項3】
前記Ta酸化物担体が、酸素欠損Ta酸化物を含むTa酸化物担体である請求項2に記載の電極材料。
【請求項4】
前記Ta酸化物担体が、TaOを含むTa酸化物担体である請求項3に記載の電極材料。
【請求項5】
前記多孔質炭素が、メソポーラスカーボンである請求項1に記載の電極材料。
【請求項6】
前記メソポーラスカーボンの細孔径が3nm以上40nm以下である請求項5に記載の電極材料。
【請求項7】
前記電極触媒粒子が、PtまたはPtを含む合金からなる粒子である請求項1に記載の電極材料。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の電極材料とプロトン伝導性電解質材料とを含むことを特徴とする電極。
【請求項9】
固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体であって、前記アノードまたはカソードのいずれか一方又は両方が、請求項8に記載の電極である膜電極接合体。
【請求項10】
請求項9に記載の膜電極接合体を備えてなる固体高分子形燃料電池。
【請求項11】
請求項1に記載の電極材料の製造方法であって、以下の工程(1)~(3)を含む電極材料の製造方法。
工程(1):多孔質炭素とタンタルアルコキシドとを非水有機溶媒中で混合した後に、溶媒を留去して、多孔質炭素の細孔内表面及び細孔外表面にタンタルアルコキシドが固着した乾燥物を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた乾燥物を、水蒸気処理することによって、タンタルアルコキシドを加水分解し、次いで熱処理を行うことで前記多孔質炭素の細孔内表面及び細孔外表面にTa酸化物担体が固着した多孔質複合担体を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた前記多孔質複合担体と電極触媒前駆体を含む溶液を混合した後に、溶媒を留去して得られた乾燥物を熱処理し、電極触媒粒子を生成する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子形燃料電池の電極に好適な電極材料及びこれを使用した電極、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池(PEFC)は、これを動力源とする燃料電池自動車(FCV)が既に市販され、今後トラックやバス、船舶などへの用途拡大と普及展開が期待されている。PEFCは、一般的に、固体高分子電解質膜の両面に一対の電極を配置させた膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly(MEA)を、ガス流路が形成されたセパレータで挟持した構造を有する。燃料電池用電極(特にはPEFC用電極)は、一般に、電極触媒活性を有する電極材料及び高分子電解質からなる電極触媒層と、ガス通気性と電子伝導性を兼ね備えたガス拡散層とから構成される。
【0003】
現在普及しているPEFC用電極材料として、炭素系担体に電極触媒微粒子(典型的にはPt又はPt合金微粒子)を分散させて担持した電極材料が用いられている。また、近年、メソポーラスカーボンを触媒担体の骨格にし、メソポーラスカーボンの細孔(メソ孔)内に、Pt微粒子を担持した電極材料が注目されている(例えば、特許文献1、2)。メソポーラスカーボンは、導電性に優れ、ガス拡散もしやすく、且つ高表面積を有するため、これを固体高分子形燃料電池の電極触媒の担体として使用すると、優れた発電性能を有する電極を得ることができる。
【0004】
また、特許文献3には、メソポーラスカーボンと酸化スズ前駆体化合物と溶液中で接触させた後に溶媒を留去して得られた乾燥物を、窒素雰囲気下、350℃以上700℃以下で熱処理して得られた多孔質複合担体に、Pt粒子を担持して電極材料を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6969996号公報
【文献】特許第6931808号公報
【文献】特開2023-101475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、PEFCの電解質膜は酸性(pH=0~3)であるため、PEFCの電極材料は酸性雰囲気下で使用されることになる。また、通常運転しているときのセル電圧は0.4~1.0Vであるが、起動停止時にはセル電圧が1.5Vまで上昇することが知られている。このようなPEFCの運転条件でのカソード及びアノードの状態は、カソードにおいては担体である炭素系材料が酸化されて二酸化炭素(CO2)が安定に存在する領域である。そのため、カソードでは、炭素系担体が電気化学的に酸化されてCO2が生成する反応が起こり、結果として炭素系担体が腐食されて(カーボン腐食)、触媒活性成分であるPt粒子の凝集・脱落等を引き起し、燃料電池の性能低下の原因となる。また、カソードだけでなく、アノードにおいても運転初期などに燃料ガスが不足すると、その部分での電圧低下、あるいは濃度分極が生じて局部的に通常と反対の電位となり、炭素の電気化学的酸化分解反応が起こることがある。
【0007】
特許文献1,2で開示されているメソポーラスカーボンの細孔(メソ孔)内にPt微粒子を担持した電極材料は、Pt微粒子の凝集が起こりづらいとされているが、Pt微粒子が直接メソポーラスカーボンの細孔壁面に接触して担持されるため、カーボン腐食を避けることができず、長期間発電すると、カーボン腐食に起因するPt粒子の凝集・脱落等を防止することはできないという課題があった。
【0008】
また、特許文献3で開示された電極材料は、メソポーラスカーボンの細孔内表面及び細孔外表面に酸化スズが固着し、固着した酸化スズの上にPt粒子が担持された構造である。このような電極構造であると、メソポーラスカーボンの表面に直接に接触するPt粒子が少なくなるため、上述したカーボン腐食が生じづらいという利点がある。一方、電極材料製造時や燃料電池の運転時にPtとSnが合金を形成し性能が低下するという課題があった。
【0009】
かかる状況下、本発明の目的は、優れた電極性能及び耐久性を有する燃料電池用電極を与える電極材料及びその製造方法、並びにこれを使用した電極、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 多孔質炭素からなる担体骨格と、前記多孔質炭素の細孔内表面及び細孔外表面のうち少なくとも細孔内表面に固着したTa酸化物担体とからなる多孔質複合担体と、前記多孔質複合担体に担持された電極触媒粒子と、を含み、
前記電極触媒粒子の一部又は全部が、前記多孔質炭素の細孔内に、前記Ta酸化物担体を介して担持されてなる電極材料。
<2> 前記Ta酸化物担体が、結晶性Ta酸化物を含む<1>に記載の電極材料。
<3> 前記Ta酸化物担体が、酸素欠損Ta酸化物を含むTa酸化物担体である<2>に記載の電極材料。
<4> 前記Ta酸化物担体が、TaOを含むTa酸化物担体である<2>に記載の電極材料。
<5> 前記多孔質炭素が、メソポーラスカーボンである<1>から<4>のいずれかに記載の電極材料。
<6> 前記メソポーラスカーボンの細孔径が3nm以上40nm以下である<5>に記載の電極材料。
<7> 前記電極触媒粒子が、PtまたはPtを含む合金からなる粒子である<1>から<6>のいずれかに記載の電極材料。
<8> <1>から<7>のいずれかに記載の電極材料とプロトン伝導性電解質材料とを含む電極。
<9> 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体であって、前記アノードまたはカソードのいずれか一方又は両方が、<8>に記載の電極である膜電極接合体。
<10> <9>に記載の膜電極接合体を備えてなる固体高分子形燃料電池。
【0012】
<1a> <1>から<7>のいずれかに記載の電極材料の製造方法であって、以下の工程(1)~(3)を含む電極材料の製造方法。
工程(1):多孔質炭素とタンタルアルコキシドとを非水有機溶媒中で混合した後に、溶媒を留去して、多孔質炭素の細孔内表面及び細孔外表面にタンタルアルコキシドが固着した乾燥物を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた乾燥物を、水蒸気処理することによって、タンタルアルコキシドを加水分解し、次いで熱処理を行うことで前記多孔質炭素の細孔内表面及び細孔外表面にTa酸化物担体が固着した多孔質複合担体を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた前記多孔質複合担体と電極触媒前駆体を含む溶液を混合した後に、溶媒を留去して得られた乾燥物を熱処理し、電極触媒粒子を生成する工程
<2a> 工程(1)において、タンタルアルコキシドがタンタルエトキシドである<1a>に記載の電極材料の製造方法。
<3a> 工程(2)において、熱処理を水素雰囲気下で行う<1a>または<2a>に記載の電極材料の製造方法。
<4a> 水素雰囲気下での熱処理温度が650℃以上である<3a>に記載の電極材料の製造方法。
<5a> 工程(2)において、熱処理を不活性ガス雰囲気下で行う<1a>または<2a>に記載の電極材料の製造方法。
<6a> 不活性ガス雰囲気下での熱処理温度が1100℃以上である<5a>に記載の電極材料の製造方法。
<7a> 不活性ガスが、Arである<5a>または<6a>に記載の電極材料の製造方法。
<8a> 工程(3)において、前記電極触媒前駆体が、貴金属アセチルアセトナートである<1a>から<7a>のいずれかに記載の電極材料の製造方法。
<9a> 工程(3)において、電極触媒前駆体を担持する方法がコロイド法である<1a>から<7a>のいずれかに記載の電極材料の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた電極性能及び耐久性を有する燃料電池用電極を与える電極材料及びその製造方法、並びにこれを使用した電極、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は本発明の電極材料の一例の概念模式図であり、(b)は細孔近傍の拡大模式図である。
図2】本発明の膜電極接合体の断面模式図である。
図3】本発明の固体高分子形燃料電池の代表的な構成を示す概念図である。
図4】実験例の電極材料(TaOx/MC,電極触媒未担持)の作製手順のフローチャートである。
図5】実験例の電極材料(Pt/TaOx/MC)の作製手順のフローチャートである。
図6】実験例1~4の電極材料(電極触媒未担持,H処理)のX線回折(XRD)測定結果である。
図7】実験例1の電極材料(電極触媒未担持,H処理500℃)の電界放出形走査電子顕微鏡(FESEM)像である。
図8】実験例2の電極材料(電極触媒未担持,H処理600℃)のFESEM像である。
図9】実験例3の電極材料(電極触媒未担持,H処理700℃)のFESEM像である。
図10】実験例4の電極材料(電極触媒未担持,H処理800℃)のFESEM像である。
図11】実験例3の電極材料(電極触媒未担持、H処理700℃)の走査透過電子顕微鏡(STEM)像である。
図12】実験例3の電極材料(電極触媒未担持,H処理700℃)のエネルギー分散型X線分析(EDS)マッピング及び制限視野電子線回折パターン(SAEDP)である。
図13】実験例5~11の電極材料(電極触媒未担持,Ar処理)のXRD測定結果である。
図14】実験例6の電極材料(電極触媒未担持,Ar処理900℃)のFESEM像である。
図15】実験例8の電極材料(電極触媒未担持,Ar処理1100℃)のFESEM像である。
図16】実験例10の電極材料(電極触媒未担持,Ar処理1300℃)のFESEM像である。
図17】実験例10の電極材料(電極触媒未担持,Ar処理1300℃)のEDSマッピング及びSAEDPである。
図18】実験例10の電極材料(電極触媒未担持,Ar処理1300℃)のEDS線分析の結果である。
図19】実験例1~4(Pt/TaOx/MC,H処理)、比較例(Pt/MC)及び参考例の電極材料(Pt/C)の電気化学的有効表面積(ECSA)を示す図である。
図20】実験例5~11(Pt/TaOx/MC、Ar処理)、比較例(Pt/MC)及び参考例の電極材料(Pt/C)のECSAを示す図である。
図21】実験例1~4(Pt/TaOx/MC,H処理)、比較例(Pt/MC)及び参考例の電極材料(Pt/C)のMass Activity(0.9VRHE)を示す図である。
図22】実験例5~11(Pt/TaOx/MC、Ar処理)、比較例(Pt/MC)及び参考例の電極材料(Pt/C)のMass Activity(0.9VRHE)を示す図である。
図23】起動停止サイクル試験の条件を示す図である。
図24】実験例3(H処理,700℃)、実験例10(Ar処理,1300℃)及び比較例(Pt/MC)の電極材料における起動停止サイクル試験回数とECSAの関係を示す図である。
図25】負荷変動サイクル試験の条件を示す図である。
図26】実験例3(H処理,700℃)、実験例10(Ar処理,1300℃)及び参考例(Pt/C)の電極材料における負荷変動サイクル試験回数とECSAの関係を示す図である。
図27】負荷変動サイクル試験後(10サイクル)後の実験例3(H処理,700℃)の電極材料の透過型電子顕微鏡(TEM)像である。
図28】負荷変動サイクル試験後(10サイクル)後の実験例10(Ar処理,1300℃)の電極材料の透過型電子顕微鏡(TEM)像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、「~」とはその前後の数値又は物理量を含む表現として用いるものとする。
【0016】
(用語の定義等)
本明細書において、「多孔質炭素」は、電極材料の骨格(土台)となる「複数の細孔を有する炭素材料」を意味する。
本明細書において、「細孔」とは、例えば径が150nm以下の孔(特に径が100nm以下の孔)を包含するものとする。「メソ孔領域の細孔」とは径が2nm~50nmの細孔を意味するものとする。また、本明細書において「マイクロ孔領域の細孔」とは径が2nm未満の細孔を意味し、「マクロ孔領域の細孔」とは径が50nm超150nm以下の細孔を意味するものとする。
【0017】
また、本明細書において、「Ta酸化物」は、タンタル(Ta)の酸化物を意味し、Ta酸化物の形態は、結晶に限定されず、結晶、非晶質、結晶と非晶質の混合体のいずれも含まれるものとする。また、Ta酸化物を結晶と非結晶で区別して表記する場合には、それぞれ「結晶性Ta酸化物」、「非晶質性Ta酸化物」と表記するものとする。
なお、本明細書において、「結晶性Ta酸化物」は、最も安定な酸化物であるTa(TaOx、x=2.5)の結晶のみならず、酸素欠損状態の酸化物(TaOx、0.1<x<2.5)の結晶を含む概念である。
【0018】
また、本明細書において、固体高分子形燃料電池(PEFC)のカソード条件とは、PEFCの通常運転時のカソードにおける条件であり、温度が室温~150℃程度、空気等の酸素を含むガスが供給される条件(酸化雰囲気)を意味し、アノード条件とは、PEFCの通常運転時のアノードにおける条件であり、温度が室温~150℃程度、水素を含む燃料ガスが供給される条件(還元性雰囲気)を意味する。
【0019】
<1.電極材料>
本発明は、多孔質炭素からなる担体骨格と、前記多孔質炭素の細孔内表面及び細孔外表面のうち少なくとも細孔内表面に固着したTa酸化物担体とからなる多孔質複合担体と、前記多孔質複合担体に担持された電極触媒粒子と、を含み、
前記電極触媒粒子の一部又は全部が、前記多孔質炭素の細孔内に、前記Ta酸化物担体を介して担持されてなる電極材料(以下、「本発明の電極材料」と称す。)に関する。
【0020】
なお、本明細書において、「固着」は、担体骨格である多孔質炭素の細孔内表面及び細孔外表面に、Ta酸化物担体が、容易に脱離(剥離)しない程度に固定されていることを意味する。
【0021】
本発明の電極材料において、Ta酸化物担体は多孔質炭素における細孔内表面の一部または全部を被覆するように固着され、電極触媒粒子は当該Ta酸化物担体に担持されている。すなわち、電極触媒粒子は、多孔質炭素の細孔内に、前記Ta酸化物担体を介して担持されている。なお、本発明の電極材料において、電極触媒粒子は、細孔の内部のみならず、細孔外表面にも担持されていてもよい。
【0022】
多孔質炭素の表面に固着したTa酸化物担体の形態は、本発明の目的を損なわない限り、粒子状、島状、薄膜状等のいずれの形態であってもよい。「島状」とは数個の粒子状のTa酸化物担体が固まりになり、それぞれが分離した状態であり、「膜状」とはTa酸化物担体が連続してつながって薄膜を形成した状態を意味する。
【0023】
本発明の電極材料は、固体高分子形燃料電池用電極に用いる電極材料として好適であるが、これ以外の用途(例えば、固体高分子形水電解用電極)に使用することも可能である。
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下において、本発明の電極材料を固体高分子形燃料電池(PEFC)用電極に使用することを想定して説明する。
【0025】
図1(a)は本発明の電極材料の代表的な構成を示す模式図であり、図1(b)は細孔近傍の拡大模式図である。
【0026】
図1(a),(b)に示すように、本発明に係る電極材料1は、担体骨格である多孔質炭素2と、多孔質炭素2(細孔内表面2a及び外表面2b)に固着された粒子状のTa酸化物担体3aと、からなる多孔質複合担体と、Ta酸化物担体3aに担持された電極触媒粒子3bによって構成される。
【0027】
なお、図1(a),(b)に示す電極材料1は、外表面2bにもTa酸化物担体3a及びこれに分散担持された電極触媒粒子3bを有しているが、Ta酸化物担体3a及び電極触媒粒子3bは、細孔内表面2aのみに存在していてもよい。
【0028】
電極材料1の担体骨格である多孔質炭素2(以下、「本発明に係る多孔質炭素」と称す場合がある。)は、多数の細孔を有する多孔質炭素である。
【0029】
多孔質炭素としては、三次元網目構造を形成する複数の細孔を有している多孔質炭素が好ましい。ここで、「三次元網目構造を形成する複数の細孔を有している」とは、多孔質炭素の表面及び内部に複数の細孔を有し、隣接する細孔同士が互いにつながることで、複数の細孔が三次元的に連結し、かつ表面に開孔部を有する連通孔が形成されている状態を意味する。
【0030】
多孔質炭素の細孔の構造(細孔径、形状等)は、電子顕微鏡で観察することにより確認できる。電子顕微鏡としては、例えば、電界放出形走査電子顕微鏡(FESEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過電子顕微鏡(STEM)が挙げられる。
【0031】
電極材料1の大きさや形状は、その骨格材料である多孔質炭素の大きさや形状に依存する。多孔質炭素の大きさや形状は、燃料電池用電極を形成したときに電極材料が連続的に接触でき、かつ燃料電池用電極内の水素や酸素などのガス拡散及び水(蒸気)の排出がスムーズに行える程度の空間を形成できる範囲で決定される。
【0032】
多孔質炭素2として、燃料電池の電極材料として使用可能な粒状、繊維状等の任意の形状、大きさの炭素材料が使用できる。炭素材料は、例えば、カーボンブラック、活性炭などの粒子状炭素(鎖状連結炭素粒子も含む)、メソポーラスカーボンなどが挙げられる。
【0033】
本発明で使用される多孔質炭素は、1種類でもよいし、または大きさ(粒径、繊維径及び繊維長さ)や結晶性等の異なる2種以上の炭素材料を任意の割合で使用してもよい。
【0034】
多孔質炭素の好適例のひとつは、メソポーラスカーボンである。
本発明に係るメソポーラスカーボンは、メソ孔領域(2nm~50nm)の細孔以外の領域(マイクロ孔領域、マクロ細孔)を含んでいてもよいが、メソ孔領域の細孔の割合が多い方が好ましい。
【0035】
メソポーラスカーボンにおけるメソ孔領域の細孔は、他の細孔とは独立した単独孔の他、メソ孔領域の細孔の一部又は全部が隣接するメソ孔領域の細孔と相互に連通している連通孔を有しており、三次元的な網目構造を有することが好ましい。連通孔の存在により、メソポーラスカーボンの細孔内部の物質の拡散が促進される。
【0036】
本発明に係るメソポーラスカーボンは、細孔径2nm~50nm(好適には細孔径3nm~40nm)の細孔を有する。細孔径がこの範囲であれば、細孔の内壁に、Ta酸化物担体や電極触媒を固着(担持)した場合でも細孔内部への物質拡散が著しく阻害されることなく、スムーズに行われる。
【0037】
また、後述するように燃料電池用電極を作製するにあたり、本発明の電極材料と、プロトン伝導性電解質材料(イオノマー)とを混合するが、プロトン伝導性電解質材料(イオノマー)は径の小さい細孔内には浸入できないため、多孔質炭素の細孔内に、前記Ta酸化物担体を介して担持された電極触媒粒子に対するイオノマー由来の被毒を抑制することができる。
【0038】
本発明の電極材料に使用されるメソポーラスカーボンは、適宜合成して使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、MgOを鋳型とするメソポーラスカーボンである東洋炭素株式会社製のCNovelシリーズ(設計メソ孔径:5~30nm)が挙げられる。
【0039】
多孔質炭素の他の好適例は、粒子状の中実カーボンである。中実カーボンとして、カーボンブラック(Carbon Black, CB)や、これを黒鉛化(結晶化)した高結晶性カーボンブラック(Graphitized Carbon Black, GCB)を好適に使用できる。粒子状の中実カーボンは、二次粒子の粒径で0.03~500μm(一次粒子径10nm~100nm程度)であることが好ましい。
【0040】
中実カーボンは自作品、市販品のいずれでも使用できる。例えば、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社の「ケッチェンブラック」シリーズ(品番:EC600JD等)、キャボット社の「Vulcan」シリーズ(品番:XC-72等)、キャボット社の「GCB」シリーズ(品番:GCB200等)や、東海カーボン社製の「トーカブラック」シリーズ(品番:トーカブラック#3800等)、デンカ社製の「デンカブラック」シリーズ(品番:OSAB,Li-435等)などが挙げられる。
【0041】
(Ta酸化物担体)
図1に示すように、本実施形態の電極材料1では、Ta酸化物担体3aは、多孔質炭素2における細孔の内表面2aに固着している。また、本実施形態の電極材料1では、Ta酸化物担体3aは、多孔質炭素2の外表面2bにも固着されているが、外表面2bのTa酸化物担体3aは必ずしも必須ではない。
【0042】
Ta酸化物担体を構成するTa酸化物は、タンタル(Ta)の酸化物である。Ta酸化物担体は、炭素材料と異なり酸化分解しないため、電極触媒粒子をTa酸化物担体に担持して直接多孔質炭素と接触させないようにすることによって耐久性が向上する。
【0043】
Ta酸化物担体を構成するTa酸化物としては、PEFCのアノード条件、カソード条件の少なくともいずれか一方で十分な耐久性と電子伝導性を併せ持つものであればよい。
【0044】
Ta酸化物担体は、結晶性Ta酸化物のみであってもよく、非晶質性Ta酸化物のみであってもよく、結晶性Ta酸化物と非晶質性Ta酸化物との混合物であってもよい。
【0045】
Ta酸化物担体の結晶性は、例えば、X線回折法(XRD)や透過型電子顕微鏡(TEM)で評価することができる。
【0046】
Ta酸化物担体は、酸素欠損状態の結晶性Ta酸化物を含むことが好ましい。酸素欠損Ta酸化物は、最も安定な酸化物であるTa(TaOx(x=2.5))から、酸素が欠損したTa酸化物であり、TaOx(0.1<x<2.5)と表現することができる。酸素欠損Ta酸化物は、Taより電子伝導性に優れるため、Ta酸化物担体として使用することによって電極性能が向上する傾向にある。
【0047】
酸素欠損Ta酸化物(TaOx)におけるxの範囲は、0.1<x<2.5の範囲であればよく本発明の目的を損なわない限り制限はないが、例えば、0.5<x<1.5(TaOx(x=1)であるTaOが含まれる)、1.5<x<2.4(TaOx(x=2)であるTaO2が含まれる)等が挙げられる。
【0048】
Ta酸化物担体の好適例は、TaOを含むTa酸化物担体である。現段階では詳細なメカニズムは不明な点もあるが、Ta酸化物担体がTaOの結晶を含む場合、実施例で示すように、Mass activity(電極触媒粒子単位質量当たりの電流値)が向上し、燃料電池の起動停止時や負荷変動時おける耐久性が向上する。
なお、TaOを含むTa酸化物担体は、例えば、後述するように不活性ガス雰囲気で熱処理(1100℃以上)することで形成することができる。
【0049】
多孔質炭素に対するTa酸化物担体の固着量は、Ta酸化物担体の結晶性(結晶、非晶質)、酸素欠損度及び形態(粒子状、膜状等)等、多孔質炭素の物性(細孔分布、比表面積等)等を考慮して適宜決定される。
Ta酸化物担体の固着量は、多孔質炭素とTa酸化物担体の合計を100重量%としたときに、例えば、5~95重量%であり、20~60重量%である。Ta酸化物担体が少なすぎると、これに担持される電極触媒の担持量が少なくなり、電極性能が不十分となり、多すぎると多孔質炭素の細孔外に多く固着し、凝集して性能が低下する場合がある。
なお、Ta酸化物担体の固着量は、例えば、誘導結合プラズマ発光分析(ICP)によって調べることができる。
【0050】
Ta酸化物担体の固着量は、粒径(薄膜状の場合は膜厚)や表面積等のTa酸化物担体の物性、Ta酸化物担体の製造方法によっても最適値が変わるため、十分な量の電極触媒粒子が担持できる範囲で適宜決定される。
【0051】
細孔内のTa酸化物担体の大きさは、多孔質炭素2の細孔を閉塞せず、ガスなどの物質移動を阻害しない範囲で決定される。多孔質炭素2の細孔径にもよるが、細孔の内表面に固着されるTa酸化物担体の大きさは、好適には平均粒径0.5nm以上7nm以下である。
【0052】
外表面のTa酸化物担体は、細孔の閉塞に実質的に関与しないため、細孔内のTa酸化物担体より大きくてもよいが、電気抵抗を小さくするため、電極触媒粒子が分散担持することができる範囲内で粒径が小さい方が好ましい。外表面のTa酸化物担体を有する場合、その大きさは、好適には平均粒径0.5nm以上10nm以下である。
【0053】
「Ta酸化物担体の平均粒径」は、電子顕微鏡像より調べられる任意の粒子状のTa酸化物担体(20個)の粒子径の平均値により得ることができる。
【0054】
なお、図1では、Ta酸化物担体3aは、多孔質炭素2に分散固着された粒子状のTa酸化物担体であるがこれに限定されず、Ta酸化物担体3aは多孔質炭素2に固着されていればよい。例えば、粒子状のTa酸化物担体3aが分散せずに、連続して多孔質炭素2の表面(特には細孔内表面)を薄膜状に被覆するように固着していてもよい。
【0055】
(電極触媒粒子)
図1に示すように、電極触媒粒子3bは、Ta酸化物担体3aに分散担持されている。Ta酸化物担体に担持された電極触媒粒子の割合は、評価対象となる電極材料を電子顕微鏡で観察した任意の電極触媒粒子(100個以上)を選出し、そのうち、Ta酸化物担体に担持された個数と、多孔質炭素に担持された個数とをカウントすることにより、評価することができる。
【0056】
電極触媒粒子は、酸素の還元(及び水素の酸化)に対する電気化学的触媒活性を有するものであれば、貴金属系触媒、非貴金属系触媒のいずれでもよいが、好適には、Pt,Ru,Ir,Pd,Rh,Os,Au,Ag等の貴金属、及びこれらの貴金属を含む合金から選択される。なお、「貴金属を含む合金」とは「上記の貴金属のみからなる合金」と、「上記の貴金属とそれ以外の金属からなる合金で上記の貴金属を10質量%以上含む合金」を含む。貴金属と合金化させる上記「それ以外の金属」は、特に限定されないが、Co,Ni,Taを好適な例として挙げることができ、これらを1種類あるいは2種類以上を使用してもよい。また、分相した状態で2種類以上の上記貴金属及び貴金属を含む合金を使用してもよい。なお、本明細書において、上記貴金属、及びこれらの貴金属を含む合金を以下、「電極触媒金属」と呼ぶ場合がある。
【0057】
電極触媒金属の中でも、Pt及びPtを含む合金(Pt合金)は、固体高分子形燃料電池の作動温度である80℃付近の温度域において、酸素の還元(及び水素の酸化)に対する電気化学的触媒活性が高いため、特に好適に使用することができる。
Pt合金におけるPt以外の金属種は、合金を形成できる限り特に制限されないが、コバルト(Co)であることが好ましい。
【0058】
電極触媒粒子の形状は、特に制限されず公知の電極触媒粒子と同様の形状のものが使用できる。具体的な形状として球形、楕円形、多面体、コアシェル構造等が挙げられる。また、電極触媒粒子の構造は、結晶に限定されず、非晶質であってもよく、結晶と非晶質の混合体であってもよい。
【0059】
電極触媒粒子の大きさは、小さいほど電気化学反応が進行する有効表面積が増加するため、電気化学的触媒活性が高くなる傾向がある。しかし、その大きさが小さすぎると、電気化学的反応活性が低下する。従って、電極触媒粒子の大きさは、平均粒径として0.5~4nmであることが好ましい。
【0060】
なお、本発明における「電極触媒粒子の平均粒径」は、電子顕微鏡像より調べられる電極触媒粒子(20個)の粒子径の平均値により得ることができる。電子顕微鏡像による平均粒径算出時は、微粒子の形状が、球形以外の場合は、粒子における最大長を示す方向の長さをその粒径とする。
【0061】
電極触媒粒子の担持量は、触媒の種類、Ta酸化物担体の大きさ(厚み)等の条件を考慮して適宜決定される。電極触媒粒子の担持量は、電極材料の全重量に対して、例えば、0.1~60質量%、0.5~20質量%である。このような範囲であれば、単位質量あたりの触媒活性に優れ、担持量に応じた所望の電極反応活性を得ることができる。
触媒担持量が少なすぎると電極性能が不十分となり、多すぎると電極触媒粒子が凝集して性能が低下する場合がある。なお、電極触媒粒子の担持量は、例えば、誘導結合プラズマ発光分析(ICP)によって調べることができる。
【0062】
また、電極触媒粒子の担持量は、Ta酸化物担体に対して、通常、3~40質量%である。このような範囲であれば、単位質量あたりの触媒活性に優れ、担持量に応じた所望の電気化学的触媒活性を得ることができる。
なお、電極触媒粒子の担持量は、例えば、誘導結合プラズマ発光分析(ICP)によって調べることができる。
【0063】
<2.電極材料の製造方法>
上述した本発明の電極材料の製造方法は特に限定されず、本発明の電極材料を構成する多孔質炭素、Ta酸化物担体、電極触媒粒子の種類に応じて適宜好適な方法を選択すればよく、通常、多孔質炭素にTa酸化物担体を担持した後に、Ta酸化物担体に電極触媒粒子を担持する方法が採用される。
【0064】
本発明の電極材料の製造方法の好適例は、以下に説明する工程(1)~(3)を含む製造方法(以下、「本発明の電極材料の製造方法」又は単に「本発明の製造方法」と称す場合がある。)である。
本発明の電極材料の製造方法であれば、担体骨格である多孔質炭素の細孔内に、Ta酸化物担体を確実に固着させ、その上に電極触媒粒子を担持することができる。
【0065】
工程(1):多孔質炭素とタンタルアルコキシドとを非水有機溶媒中で混合した後に、溶媒を留去して、多孔質炭素の細孔内表面及び細孔外表面にタンタルアルコキシドが固着した乾燥物を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた乾燥物を、水蒸気処理することによって、タンタルアルコキシドを加水分解し、次いで熱処理を行うことで前記多孔質炭素の細孔内表面及び細孔外表面にTa酸化物担体が固着した多孔質複合担体を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた前記多孔質複合担体と電極触媒前駆体を含む溶液を混合した後に、溶媒を留去して得られた乾燥物を熱処理し、電極触媒粒子を生成する工程
【0066】
以下、本発明の電極材料の製造方法について詳述する。
【0067】
工程(1)は、多孔質炭素とタンタルアルコキシドとを非水有機溶媒中で混合した後に、溶媒を留去して、多孔質炭素の細孔内表面及び細孔外表面にタンタルアルコキシドが固着した乾燥物を得る工程である。
【0068】
多孔質炭素は、上述のように多数の細孔を有し、この細孔内には水系溶媒は侵入しがたいが、非水系有機溶媒を使用することによりアルコキシド化合物を細孔内に侵入させることができる。そのため、原料としてアルコキシド化合物を使用し、これを多孔質炭素と共に非水有機溶媒に溶解させて混合し、非水系有機溶媒を留去することのよってアルコキシド化合物を多孔質炭素の表面(特には細孔内表面)に吸着させた状態で乾燥させることができる。
【0069】
タンタルアルコキシドとして、タンタルメトキシド、タンタルエトキシド、タンタルプロポキシド、タンタルブトキシド、タンタルメトキシエトキシドおよびタンタルエトキシエトキシドを使用することができる。この中でも、タンタルエトキシドが好適である。
【0070】
非水系有機溶媒は、アルコキシド化合物が反応しないものであればよく、例えば、アセトン、アセチルアセトン、トルエン、キシレン、ケロシン等が挙げられる。
非水系有機溶媒は、実質的に水を含有しないことが好ましい。ここで、「実質的に水を含有しない」とは、親水性の溶媒などに含有される不純物としての微量の水の存在までも除外するものではなく、当業者が工業上行う通常の努力によって溶媒中の水分割合を可及的に少なくした場合を包含する。
【0071】
多孔質炭素及びタンタルアルコキシドの濃度は、本発明の電極材料が製造できる範囲で適宜決定すればよい。
【0072】
溶媒を留去する方法は、本発明の目的を損なわない限り任意であるが、減圧による溶媒の留去が好ましい。
【0073】
工程(2)は、工程(1)で得られた乾燥物を、水蒸気処理することによって、タンタルアルコキシドを加水分解し、次いで熱処理を行うことで前記多孔質炭素の細孔内表面及び細孔外表面にTa酸化物担体が固着した多孔質複合担体を得る工程である。
【0074】
工程(2)では、まず、工程(1)で得られた乾燥物を、水蒸気処理することによって、多孔質炭素の表面(細孔内表面、細孔外表面)に吸着したアルコキシド化合物を加水分解する。ここで、「水蒸気処理」とは、水蒸気を含むガスを接触させて反応させることを意味する。水蒸気処理に使用されるガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスであり、通常、窒素である。
【0075】
水蒸気処理に使用されるガスには、0.5~90%(好適には1~20%)の水蒸気が含まれることが好ましい。
【0076】
水蒸気処理による加水分解を行った後に、熱処理を行うことでアルコキシド化合物の加水分解物(主に水酸化物)を目的とするTa酸化物担体に変換させる。
【0077】
本発明の電極材料の製造方法の特徴のひとつは、アルコキシド化合物の加水分解物の熱処理方法にある。
好適な熱処理方法の一例は、工程(2)における熱処理を水素雰囲気下で行う方法(H処理)である。工程(2)における熱処理を水素雰囲気下で行う場合、熱処理温度は400℃以上であり、好適には650℃以上、より好適には700℃以上である。
水素雰囲気下での熱処理(H処理)を650℃以上で行うことによって、結晶性Ta酸化物であるTaを含むTa酸化物担体を得ることができる。
実施例で示す通り、H処理によって生成したTaを含むTa酸化物担体であると性能(特にはMass activity)に優れた電極を与えることができる電極材料を得ることができる。
【0078】
水素雰囲気下では高温になりすぎると多孔質炭素が分解し機械的強度が低下し、細孔構造を保てなくなる場合がある。そのため、熱処理(H処理)の上限温度は、多孔質炭素の分解が実質的に生じず、細孔構造を保てる範囲で適宜決定される。多孔質炭素がメソポーラスカーボンである場合は、熱処理(H処理)の上限温度は800℃以下、好適には750℃以下である。
【0079】
好適な熱処理方法の他の例は、工程(2)における熱処理を不活性ガス雰囲気下で行う処理である。
不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等が使用でき、アルゴンが好ましく使用される。
【0080】
不活性ガス雰囲気下での熱処理温度は、好適には1100℃以上、1150℃、1200℃以上、1250℃以上である。実施例で後述するように、不活性ガス(Ar)雰囲気下で熱処理温度900℃までは結晶性のTaが多いのに対し、熱処理温度を1000℃まで温度を上げるとTaが減少し、1100℃まで上げると酸素が欠乏したTaOが生成する。現段階では詳細な理由は明らかでないが、TaOを含むTa酸化物担体であると、性能(特にはMass activity)に優れた電極を与えることができる電極材料を得ることができる。
【0081】
また、不活性ガス雰囲気下では高温になりすぎると性能が低下するため、熱処理(不活性ガス処理)の上限温度は、1400℃以下であり、好適には1350℃以下である。
【0082】
工程(3)は、工程(2)で得られた多孔質複合担体(細孔内表面及び細孔外表面にTa酸化物担体が固着した多孔質炭素)と電極触媒前駆体を含む溶液を混合した後に、溶媒を留去して得られた乾燥物を熱処理し、電極触媒粒子を生成する工程である。
【0083】
工程(3)では、まず、多孔質複合担体におけるTa酸化物担体の上に電極触媒粒子前駆体が担持した乾燥物を得る。得られた乾燥物に含まれる多孔質複合担体に担持された電極触媒粒子は、不定比の金属酸化物を含むことがあり、そのままでは活性が低いため、窒素やアルゴン等の不活性雰囲気、あるいは水素を含有する還元性雰囲気中で熱処理することで電極触媒となる金属の有する電気化学触媒作用を活性化する。
【0084】
工程(3)における電極触媒前駆体は、本発明の目的を損なわない限り制限はないが、電極触媒前駆体によっては、電極金属粒子の粒径や分散性の点で、本発明の目的を達成することができない場合がある。
【0085】
高分散で粒径の小さい電極触媒粒子を得ることが可能な好適な方法として、以下に説明する貴金属アセチルアセトナートを使用する貴金属アセチルアセトナート法と、貴金属コロイドを使用するコロイド法が挙げられる。
【0086】
電極触媒前駆体に貴金属アセチルアセトナートを使用する方法(貴金属アセチルアセトナート法)は、Ta酸化物を固着した多孔質炭素へ電極触媒前駆体である貴金属アセチルアセトナートを担持した後に、電極触媒前駆体を電極触媒粒子へ直接的に変換する方法である。この方法では、貴金属前駆体に残留不純物を含まないため、触媒活性の向上が見込まれる。
【0087】
電極触媒前駆体であるアセチルアセトナート化合物は多孔質複合担体へ担持された後に、電極触媒粒子へ直接的に変換される。この方法では、電極触媒前駆体に残留不純物を含まないため、触媒活性の向上が見込まれる。アセチルアセトナート法では、電極触媒のアセチルアセトナート化合物をジクロロメタンなどの適当な溶媒に溶解させた溶液に多孔質複合担体を分散し、それを撹拌及び溶媒の留去を行うことにより、電極触媒前駆体の担持が行うことができる、この方法では、ナノサイズの粒径分布の揃った電極触媒粒子を高分散に担持することができる。また、溶液中に強い酸化剤や還元剤を用いることがないため、多孔質複合担体を構成するTa酸化物担体や多孔質炭素が劣化することを回避できるという利点がある。
【0088】
電極触媒のアセチルアセトナート化合物としては、Pt,Ru,Ir,Pd,Rh,Os,Au,Ag等の貴金属アセチルアセトナートが挙げられ、これらを1種又は2種以上を使用することができる。溶媒は、貴金属アセチルアセトナートを分散できる有機溶媒であればよく、代表例としては、ジクロロメタン、アセチルアセトンが挙げられる。
【0089】
アセチルアセトナート法による電極触媒微粒子の担持方法を提示すると、Ta酸化物担体が担持された多孔質炭素と貴金属アセチルアセトナートとを所定の容器に入れ、氷冷しながら、超音波攪拌装置にて、溶媒がすべて揮発するまで攪拌する方法が挙げられる。
【0090】
熱処理条件は、Ta酸化物担体や、電極触媒となる金属や前駆体の種類にもよって、適宜選択される。例えば、熱処理温度は、180~400℃、好適には200~250℃である。温度が低すぎると電極触媒となる金属の活性化が不十分となり、温度が高すぎると電極触媒粒子が凝集し、有効反応表面積が小さくなりすぎる問題がある。雰囲気には必要に応じて水蒸気を加えてもよい。
【0091】
なお、貴金属アセチルアセトナート法は有機溶媒を使用するため、後述する水溶媒を使用するコロイド法と比較して、Ta酸化物への電極触媒粒子の担持選択性が若干劣るが、高分散な電極触媒粒子を容易に担持できる点で有用である。
【0092】
一方、コロイド法は、貴金属アセチルアセトナート法では必須の有機溶媒を使用せずに、水溶媒を使用して、粒径分布が小さい電極触媒粒子を得ることができる方法である。コロイド法は溶媒に水を使用できる点で有機溶媒を必須とする担持方法と比較して有利である。コロイド法では、溶媒に水を使用しているため、生成する電極触媒粒子が、疎水性である多孔質炭素へは特に担持されづらいため、Ta酸化物の表面に選択的に担持されやすい。例えば、マイクロ波加熱均一沈殿法によって高表面積のTa酸化物の形成した場合において、コロイド法を採用することにより、Ta酸化物の表面に高分散な電極触媒に選択的に担持できる。
【0093】
コロイド法について以下に説明する。コロイド法は、電極触媒前駆体のコロイド(特に貴金属コロイド)を含む溶液にTa酸化物を固着した多孔質炭素を分散し、電極触媒の前駆体コロイドを還元して前記Ta酸化物に電極触媒粒子として担持する方法である。コロイド法では界面活性剤、有機溶媒を用いることなく、ナノサイズの粒径分布の揃った電極金属粒子を生成できる。
【0094】
コロイド法の具体的方法をあげると、Ta酸化物を固着した多孔質炭素に、貴金属コロイドを含む溶液に分散し、貴金属コロイドを還元してTa酸化物に貴金属微粒子として担持する。なお、貴金属コロイドを含む溶液の作製する条件は特に制限されるものではなく、選択した貴金属前駆体、および還元剤に応じた適宜の条件とすればよい。
【0095】
溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられる。溶媒として水を使用できることはコロイド法の利点の一つである。
【0096】
還元剤としては、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素ナトリウム、過酸化水素、ヒドラジンなどが挙げられる。これらは、単独でも2種類以上混合して使用してもよい。さらに、ある還元剤で還元を行った後に、別の還元剤によって還元を行ってもよい。このように液相での多段階の還元処理を行うことで、高分散な貴金属微粒子を担体上に担持することができ、その好適な具体例として、還元剤をNaHSO3、過酸化水素の順番で使用する方法が挙げられる。
【0097】
溶液のpHはpH4~6が特に好適である。このpH域で作製すると、貴金属コロイドが凝集することなく均一に分散したコロイド溶液を作製できる。好適な温度域は20~100℃(特に好適には50~70℃)である。また、長時間の還元剤と接触させると、形成される貴金属粒子の粒子径が増大することから、接触時間は通常、10分間~2時間程度である。
【0098】
以上、本発明の電極材料の製造方法について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。
【0099】
<3.電極>
本発明の電極は、上述の本発明の電極材料とプロトン伝導性電解質材料を含む。本発明の電極において、本発明の電極材料が互いに接触して導電パスを形成している。
【0100】
以下に、本発明の電極材料を用いて形成した燃料電池用電極について説明する。具体的には、上述の電極材料をPEFCにおける電極として用いたケースについて説明する。
【0101】
この燃料電池用電極は、上述の電極材料のみから構成されていてもよいが、通常、燃料電池の電解質に使用されるプロトン伝導性電解質材料(以下、「プロトン伝導性電解質材料」、または単に「電解質材料」と記載する場合がある。)を含む。電極材料と共に燃料電池の電極に含まれる電解質材料は、燃料電池用電解質膜に使用される電解質材料と同じであってもよく、異なってもよい。燃料電池用電極と電解質膜の密着性を向上させる観点から、同じものを用いることが好ましい。
【0102】
PEFCの電極と電解質膜とに使用される電解質材料としては、プロトン伝導性電解質材料が挙げられる。このプロトン伝導性電解質材料は、ポリマー骨格の全部または一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質材料と、ポリマー骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質材料に大別され、この両者を電解質材料として使用することができる。
【0103】
フッ素系電解質材料としては、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などが好適な一例として挙げられる。
【0104】
炭化水素系電解質材料としては、具体的には、ポリスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールスルホン酸、ポリベンズイミダゾールホスホン酸、ポリイミドスルホン酸等のポリマーや、これらにアルキル基等の側鎖を有するポリマーが好適な一例として挙げられる。
【0105】
上記電極材料と電極材料と混合する電解質材料との質量比は、これらの材料を用いて形成される電極内の良好なプロトン伝導性を付与し、かつ電極内のガス拡散及び水蒸気の排出をスムーズに行えるように適宜決定すればよい。ただし、電極材料に混合する電解質材料の量が多すぎるとプロトン伝導性はよくなるが、ガスの拡散性は低下する。逆に混合する電解質材料の量が少なすぎるとガス拡散性はよくなるが、プロトン伝導性は低下する。そのため、上記電極材料に対する電解質材料の質量比率は、10~50質量%が好適な範囲である。この質量比率が10質量%より小さい場合は、プロトン伝導性を有する電解質材料の連続性が悪くなり、燃料電池用電極として十分なプロトン伝導性が確保できない。逆に50質量%より大きい場合は電極材料の連続性が悪くなり、燃料電池用電極として十分な電子伝導性を有することができなくなる場合がある。さらには電極内部でのガス(酸素、水素、水蒸気)の拡散性が低下する場合がある。
【0106】
本発明の電極は、本発明の目的を損なわない範囲で、上述の電極材料やプロトン伝導性材料以外の成分を含んでいてもよい。
例えば、上述の本発明の電極材料に含まれる多孔質炭素以外の導電材(以下、「他の導電材」と記載する。)を含んでいてもよい。他の導電材を含むことにより、電極材料をつなぐ導電パスが増加し、電極全体としての導電性が向上する場合がある。
【0107】
他の導電材としては、燃料電池用電極に使用される公知の導電材を使用することができる。典型的には炭素系の導電材であり、本発明の目的を損なわない範囲で任意の炭素材料を使用することができる。
【0108】
なお、本発明の電極材料を含む電極として、PEFC用電極について説明したが、PEFC以外にもアルカリ形燃料電池、リン酸形燃料電池などの各種燃料電池における電極として用いることができる。また、PEFCと同様な高分子電解質膜を使用した水の電解装置用の電極としても好適に使用することができる。
なお、本発明の電極材料を含む燃料電池用電極は、酸素の還元、水素の酸化に対する優れた電気化学的触媒活性を有するため、カソード及びアノードとして使用することができる。特に酸素還元の電気化学的触媒活性に優れ、燃料電池の運転条件で担体である導電性材料の電気化学的酸化分解が起こらないことから、特にカソードとして好適に使用することができる。
【0109】
<4.膜電極接合体(MEA)>
本発明の膜電極接合体は、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体であって、前記カソードとアノードのいずれか一方又は両方が、上記本発明の電極であることを特徴とする。
【0110】
本発明の好適な実施形態として、本発明の電極材料を含む燃料電池用電極をカソードに使用した膜電極接合体について説明する。
図2は本発明の実施形態に係る膜電極接合体の断面構造を模式的に示したものである。図2に示すように膜電極接合体10は、カソード4及びアノード5が固体高分子電解質膜6に対面して配置された構造を有する。
【0111】
カソード4は、電極触媒層4aとガス拡散層4bで構成される。
電極触媒層4aは、上述した本発明の電極材料を使用した本発明の電極を使用することができる。電極触媒層4aの厚みは特に制限はないが、例えば、1μm以上100μm以下である。
【0112】
ガス拡散層4bとしては従来公知のガス拡散層を使用することができる。例えば、従来PEFCのガス拡散層として使用されている、100nm~90μm程度の細孔径分布を有する導電性の炭素系シート状部材が挙げられ、好適には撥水処理が施されたカーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布等を用いることができる。また、ステンレススチール等の炭素系材料以外のシート状部材でもよい。このようなガス拡散層4bの厚みは特に制限はないが、通常、50μm~1mm程度である。また、ガス拡散層4bは、その片面に平均粒径10~100nm程度の炭素微粒子の集合体及び撥水材からなるマイクロポーラス層を有していてもよい。
【0113】
アノード5は、電極触媒層5aとガス拡散層5bで構成される。アノード5としては、本発明の電極のほか、その他の公知のアノードも同様に使用できる。例えば、グラファイト、カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、グラッシーカーボンなどの炭素系材料からなる導電性担体の表面上に、触媒である貴金属粒子を担持した電極材料と、燃料電池の電解質材料との分散液を塗布・乾燥して製造された電極触媒層5aを、ガス拡散層5b上に形成した電極が挙げられる。アノード5のガス拡散層5bは、カソード4で説明したガス拡散層4bと同様のものが使用できる。
【0114】
固体高分子電解質膜6としては、プロトン伝導性を有し、化学的安定性及び熱的安定性を有するものであれば公知のPEFC用電解質膜を用いればよい。なお、図2では厚みを強調して図示しているが、電気抵抗を小さくするため固体高分子電解質膜6の厚みは通常0.007~0.05mm程度である。
【0115】
固体高分子電解質膜6を構成する電解質材料としては、フッ素系電解質材料、炭化水素系電解質材料が挙げられる。特にフッ素系電解質材料で形成されている電解質膜が、耐熱性、化学的安定性などに優れているため好ましい。具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などが好適例として挙げられる。
【0116】
以上、図面を参照して本発明のMEAの実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0117】
<5.固体高分子形燃料電池>
本発明の固体高分子形燃料電池(単セル)は、本発明の膜電極接合体を備え、通常、膜電極接合体をガス流路が形成されたセパレータで挟持した構造を有する。
【0118】
図3は本発明の固体高分子形燃料電池の代表的な構成を示す概念図である。図3に示すように、固体高分子形燃料電池20においてアノード5には水素が1供給され、(反応1)2H2 → 4H++4e-によって、生成したプロトン(H+)は固体高分子電解質膜6を介してカソード4に供給され、また、生成した電子は外部回路21を介してカソードへ供給され、(反応2)O2+4H++4e-→2H2Oによって、酸素と反応して水を生成する。このアノードとカソードの電気化学反応によって両電極間に電位差を発生させる。本発明の固体高分子形燃料電池において、本発明の膜電極接合体以外の構成要素は、公知の固体高分子形燃料電池と同様であるため、詳細な説明を省略する。
実際には、本発明の固体高分子形燃料電池(単セル)が発電性能に応じた基数だけ積層された燃料電池スタックが形成され、ガス供給装置、冷却装置などその他付随する装置を組み立てることにより使用される。
【実施例
【0119】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下における電極材料の表記において、白金を「Pt」、Ta酸化物担体を「TaOx」、メソポーラスカーボンを「MC」と表記する場合がある。
【0120】
使用した多孔質炭素、Ta原料化合物、貴金属前駆体化合物は以下の通りである。
<多孔質炭素>
多孔質炭素として、下記メソポーラスカーボン(MC)(東洋炭素(株)製、「多孔質炭素CNovel MJ(4)010(グレード名)」)を使用した。
設計細孔径:10nm
比表面積:1100m2/g
全細孔容積:2.0mL/g
ミクロ孔容積:0.4mL/g
粒径:100mesh pass(粉砕して使用)
<Ta原料化合物>
Ta原料化合物として、タンタルエトキシド(Ta(OC254,(株)高純度化学研究所)を使用した。
<貴金属前駆体化合物>
貴金属前駆体化合物として、Ptアセチルアセトナート(Pt(C5722、Platinum(II) acetylacetonate,97%,Sigma Aldrich)を使用した。なお、Ptアセチルアセトナートを、以下、Pt前駆体(Pt(acac)2)と記載する場合がある。
【0121】
1.電極材料の作製
以下の実験例の電極材料を製造した。
【0122】
1-1.電極材料(電極触媒未担持)の作製
図4に示すフローチャートの通り、水蒸気加水分解法によって実験例1~11の電極材料(電極触媒未担持)を作製した。
まず、担体骨格である上記メソポーラスカーボン(MC)50mgを、ボールミルで、1μm程度の粒径になるまで粉砕した後、有機溶媒(容積比2:1のアセチルアセトンとトルエンの混合液)に分散させて、MCを含む分散液を得た。次いで、タンタルエトキシド試薬を有機溶媒(エタノール)に溶解し、Taが35wt%となるよう調製した金属エトキシド溶液を準備し、この金属エトキシド溶液を、MCを含む分散液に加え、溶媒総量50mLになるよう調製してから、超音波撹拌をしながら減圧し、有機溶媒を蒸発させることで、MC表面(細孔内表面及び外表面)に金属エトキシド試薬を均一に吸着させた乾燥粉末を得た。
【0123】
(H処理)
得られた乾燥粉末を粉砕後、30℃の水蒸気窒素雰囲気(3%加湿N雰囲気)中で1時間保持することで金属エトキシド試薬の水蒸気加水分解を進行させた後、窒素雰囲気中で400℃に昇温して2時間保持し、更に窒素雰囲気中で800℃まで昇温して30分間保持した。その後、水素雰囲気中において所定温度で所定時間保持し熱処理(H処理)することで、実験例1~4の電極材料(TaOx/MC、H処理)を作製した。
表1に実験例1~4の電極材料(TaOx/MC、H処理)の作製時の熱処理の条件をまとめて示す。
【0124】
(Ar処理)
得られた乾燥粉末を粉砕後、30℃の水蒸気Ar雰囲気(3%加湿Ar雰囲気)中で1時間保持することで金属エトキシド試薬の水蒸気加水分解を進行させた後、Ar雰囲気中で400℃に昇温して2時間保持し、更にAr雰囲気中で800℃まで昇温して30分間保持した。その後、Ar雰囲気中において所定温度で所定時間保持し熱処理(Ar処理)することで、実験例5~11の電極材料(TaOx/MC、Ar処理)を作製した。
表4に実験例5~11の電極材料(TaOx/MC、Ar処理)の作製時の熱処理の条件をまとめて示す。
【0125】
【表1】
【0126】
1-2.電極材料(電極触媒担持あり)の作製
次いで、図5に示すフローチャートの通り、実験例の電極材料(電極触媒担持あり)を作製した。
実験例1~11の電極材料(電極触媒未担持)に、白金アセチルアセトナート法により、電極触媒粒子であるPt触媒粒子を担持した。Pt前駆体(Pt(acac)2)の量は、Ptが32wt%になるようにした。
ナスフラスコに、Ta酸化物担体が固着したMCからなる実験例1~11の電極材料(電極触媒未担持)およびPt前駆体を加え、さらにアセトンを加え溶解させた。次いで、ナスフラスコを氷冷しながら、超音波撹拌装置にて、溶媒がすべて揮発するまで撹拌して、乾燥粉末を得た。次いで、得られた乾燥粉末をN2雰囲気下で、210℃で3時間、240℃で3時間還元処理を施すことで、実験例1~11の電極材料(Pt/TaOx/MC)を得た。
【0127】
<比較例>
比較例として、Ta酸化物担体が固着されていないMCを使用した以外は、実験例と同様にして、MCに直接Ptが担持された比較例の電極材料(Pt/MC)を得た。
【0128】
<参考例>
参考例として、市販の白金担持カーボンブラック触媒(Pt/C、(田中貴金属工業社製、TEC10E50E)を使用した。
【0129】
2.物性評価
<実験例1~4の電極材料(電極触媒未担持、H処理)>
実験例1~4の電極材料(電極触媒未担持、H処理)におけるX線回折測定を行った。図6に実験例1~4のXRDプロファイルを示す。
図6に示す通り、実験例1(500℃)では結晶性のシグナルは認められなかったが、実験例2(600℃)ではTa25のシグナルが認められ、実験例3(700℃),実験例4(800℃)と処理温度の上昇に伴い、Ta25の結晶化度が上昇することが確認された。一方、金属Taのシグナルは確認されなかった。
【0130】
実験例1~4の電極材料(電極触媒未担持)の微細構造観察を行った。
図7~10に実験例1~4のFESEM像、図11に実験例3(電極触媒未担持)のSTEM像、図12に実験例2のエネルギー分散型X線分析(EDS)マッピング及び制限視野電子回折パターン(SAEDP)をそれぞれ示す。
【0131】
図7~10に示す通り、実験例1~3では2~3nmのTaOx粒子が高分散に担持(固着)していることが確認された。実験例4(H処理800℃)では炭素の表面が平滑であることから、炭素担体であるMCの構造が破壊されていることが確認された。
また、STEMによる評価から実験例の電極材料(TaOx/MC)の細孔の中にTaOxが存在していることが確認された。実験例3(H処理700℃)のSTEM像を代表例として図11に示す。また、図12に示す実験例3(H処理700℃)のSAEDPにおいて明確なTaピークは観測されなかったことから、Taはアモルファス状態で存在することが示唆された。
【0132】
<実験例5~11の電極材料(電極触媒未担持、Ar処理)>
実験例5~11の電極材料(電極触媒未担持、Ar処理)におけるX線回折測定を行った。図13に実験例5~11のXRDプロファイルを示す。
図13に示す通り、Ar処理800℃(実験例5)では結晶性Taに由来するピークが認められ、Ar処理900℃(実験例6)まではそのピークの増大が確認されたことから、Ar処理900℃まではTaの結晶性が向上することが確認された。
一方、Ar処理1000℃(実験例7)になるとTaに由来するピークが減少し、1100℃(実験例8)まで温度を上げるとTaに由来するピークほとんど確認されなくなった。
さらにAr処理1200℃(実験例9)では、結晶性TaOの生成が確認され、Ar処理1300℃(実験例10)では、TaOに由来するピークの増大が確認されたことから、TaOの結晶性が向上することが確認された。
このことから、Ar処理1100℃以上になると、多孔質炭素(MC)を構成する炭素が還元剤として働き、Ta25を還元し、酸素が欠乏したTaOが生成し、さらに温度を上げるとTaOの結晶性が向上すると判断した。
【0133】
実験例5~11の電極材料(電極触媒未担持)の微細構造観察を行った。代表例としてAr処理900℃(実験例6)、Ar処理1100℃(実験例8)及びAr処理1300℃(実験例10)のFESEM像を図14~16に示す。
図14~16に示す通り、FESEM像から、温度が高くなるにつれてTaOx粒子の粒径が大きくなっていることがわかる。また、図16に示す通り、実験例10の電極材料は、1300℃の熱処理であるにもかかわらず、多孔質炭素(MC)の構造が破壊されていないことが確認された。
【0134】
また、Ar処理1300℃(実験例10)について、図17にEDSマッピング及びSAEDP、図18にEDS線分析の結果を示す。
図17から、粒径2~10nm程度の結晶性TaO粒子が分散して存在していることが確認された。図18に示すTaO粒子をEDS線分析の結果、中心部のTaOxはxが1未満であり、表面のTaOxはxが1より大きいことがわかった
【0135】
3.電気化学的評価(ハーフセル)
3-1.初期活性評価
3-1-1.サイクリックボルタンメトリー(CV)の評価
実験例1~11(Pt/TaOx/MC)、比較例(Pt/MC)及び参考例(Pt/C)の電極材料について、サイクリックボルタンメトリー(CV)による評価を行った。CVから求めた水素吸着量から電気化学的表面積(ECSA)を算出した。なお、ECSAは、電極材料に含まれるPtの有効表面積に相当する。
【0136】
評価用の燃料電池電極は、以下の手順で作製した。
まず、超純水19mLと2-プロパノール6mLの混合溶液を、電極材料粉末の入ったサンプル瓶に加え、続けて5%Nafion分散液100μLを加えた後、氷水にサンプル瓶を浸した状態で超音波撹拌を30分間行って電極材料分散液とした。なお、電極材料粉末の量は、電極上に電極材料の分散液10μLを滴下した際に、電極上の単位面積当たりのPt質量が17.3μg-Pt/cm2となるようにした。調製した電極材料分散液10μLを、マイクロピペットを用いてAuディスク電極上に滴下し、恒温器に入れて60℃で約15分間乾燥を行うことで、Nafion膜を形成させて電極材料をAu電極上に固定し、評価用の燃料電池電極(作用極)を得た。
【0137】
CVの測定条件は以下の通りである。なお、1原子のPtに付き1原子のHが吸着すると仮定すると210μC/cm2の電気量となる。

測定:三電極式セル(作用極:評価用の燃料電池電極、対極:Pt、参照極:Ag/AgCl)
電解液:0.1M HClO4(pH:約1)
測定電位範囲:0.05~1.2V(可逆水素電極基準)
走査速度 :50 mV/s
水素吸着量:0.05~0.4Vの水素吸着を示すピーク面積から算出
電気化学的表面積(ECSA):下記式より算出

ECSA=(水素吸着量)[μC] / 210[μC/cm2]
【0138】
実験例1~11の電極材料を使用した電極のサイクリックボルタモグラム(図示せず)において、いずれもPtに由来する水素の吸脱着に由来するピーク(0.05~0.4V)が観察され、燃料電池用電極として機能することが確認された。
【0139】
図19に実験例1~4の電極材料(H処理)、図20に実験例5~11の電極材料(Ar処理)を使用した電極の電気化学的表面積(ECSA)を示す。また、表2に各電極材料を使用した電極のECSAの値をまとめて示す。
図19図20及び表2に示す通り、実験例1~11(Pt/TaOx/MC)の電極材料のECSAは、比較例の電極材料(Pt/MC)よりも大きく、参考例の電極材料(Pt/C,TEC10E50E)と同等以上であることが確認された。
【0140】
【表2】
【0141】
3-1-2.酸素還元反応(ORR)活性の評価
実験例1~11、比較例及び参考例の電極材料について、ORR活性を評価した。
ORR活性は、回転ディスク電極法(RDE法)でリニアスイープボルタンメトリー(LSV)を行い、得られる活性化支配電流(ik)を基に算出するMass activity(単位Pt重量当たりの活性)を指標とした。

Mass activity = i / 電極上のPt質量

活性化支配電流(ik)は、回転電極測定によって得られた電流-電位曲線について、任意の電位においてi-1とω-1/2でプロットして得られるKoutecky-Levichプロットを作成し、得られた直線を外挿することによって切片から求めた。
具体的な手順として、まず、O2を50mL/分で30分間バブリングした後、0.2VRHEから貴な方向に向けて10mV/sで1.20VRHEまで電位を走査し、測定を行った。なお、測定中は常にO2を50mL/分でパージした。なお、VRHEは可逆水素電極(RHE)基準の電位である。
【0142】
図21に実験例1~4の電極材料(H処理)、図22に実験例5~11の電極材料(Ar処理)を使用した電極のMass Activity(0.9VRHE)を示す。また、表3に各電極材料を使用した電極をMass Activityの値をまとめて示す。
図21に示す通り、実験例1~4の電極材料(H処理)において、H処理温度を、500℃から上げるにつれて活性が向上し、700℃(実験例4)が最も高い活性を示した。一方で800℃まで温度を上げると活性の低下が確認された。多孔質炭素(MC)の骨格が崩壊したことが活性低下に寄与したと判断した。
図22に示す通り、実験例5~11の電極材料(Ar処理)において、Ar処理温度を、800℃から上げるにつれて活性が向上し、1300℃(実験例10)が最も高い活性を示した。1400℃(実験例11)で活性が低下しているのは高温処理によりMC構造の変化したためと判断した。
【0143】
【表3】
【0144】
3-2.起動停止サイクル試験
実験例3(H処理、700℃)、実験例10(Ar処理、1300℃)及び比較例(Pt/MC)の電極材料について燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)が推奨する方法(固体高分子形燃料電池の目標・研究開発課題と評価方法の提案、平成23年1月発行)で起動停止サイクル試験を行った。起動停止サイクル試験は、カーボン腐食を促進させるサイクル試験であり、具体的には図23に示す1.0~1.5VRHEの矩形波を、1サイクル当たり2秒印加することを繰り返し、サイクル試験後の電極触媒の劣化挙動をECSA保持率として評価する。
【0145】
図24に起動停止サイクル試験(6万サイクル迄)における実験例3、実験例10及び比較例の電極材料を使用した電極のECSA保持率を示す。
図24に示す通り、比較例(Pt/MC)では起動停止サイクルに伴いECSA保持率が著しく減少し、5000サイクルでほぼ0%になったのに対し、実験例3(H処理、700℃)及び実験例10(Ar処理、1300℃)は高いECSA保持率を維持した。
30000サイクルまでは実験例10(Ar処理、1300℃)より実験例3(H処理、700℃)のECSA保持率が大きかったが、30000サイクルを超えると逆転し、60000サイクルでは実験例10の方が大きくなった(ECSA保持率 実験例3:8%、実験例10:17%)。
このように、実験例の電極材料(Pt/TaOx/MC)は、比較例(Pt/MC)に比べて耐久性が大幅に向上することが確認された。このことから、多孔質炭素であるMCに固着したTaOx粒子の存在により、Pt粒子とMCとが直接接触することを阻害してカーボン腐食を効果的に防止し、Pt粒子の凝集や脱離を抑制していると判断した。
【0146】
2-3.負荷変動サイクル試験
実験例3(H処理、700℃)、実験例10(Ar処理、1300℃)、及び参考例(Pt/C)の電極材料について、負荷変動サイクル耐久性試験を行った。負荷変動サイクル試験は、燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)が推奨する方法(固体高分子形燃料電池の目標・研究開発課題と評価方法の提案、2023年5月発行)にて、負荷変動を模擬した電位サイクルを印加することによって行った。図25に示す負荷変動サイクルは,触媒自体の溶解・再析出などを伴う劣化を促進させるサイクルであり、0.6~0.95 VRHEの矩形波を用いて1サイクル当たり3秒ずつの6秒印加することで実験を行い、負荷変動サイクル試験前後のECSA変化、LSV変化を測定した。
【0147】
図26に負荷変動サイクル試験(10万サイクル迄)における実験例3、実験例10及び参考例(Pt/C、TEC10E50E)の電極材料を使用した電極のECSA保持率を示す。
負荷変動サイクル試験後(10万サイクル)のECSA保持率は、実験例3(H処理、700℃)が74%、実験例10(Ar処理、1300℃)が58%であり、標準触媒である参考例(Pt/C)44%より大きな値を示した。このように負荷変動サイクル試験において、実験例3及び実験例10の電極材料は、燃料電池の標準触媒である参考例の電極材料に比べて耐久性が飛躍的に向上することが確認された。
また、負荷変動サイクル試験前後(10万サイクル)における実験例3,実験例10の電極材料のLSV変化を評価したところ(図示せず)、LSV曲線のネガティブシフトがある程度抑えられており、10万サイクル後も活性を維持できることが確認された。
【0148】
負荷変動サイクル試験後(10万サイクル)の実験例3、実験例10の電極材料の透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を行ったところ、図27図28に示す通り、実験例3及び実験例10のいずれもPt微粒子が凝集せずに残っていることが確認されたことから、メソ孔がPtの凝集を抑制していると判断した。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の電極材料によれば、優れた電極触媒活性、電子伝導性、ガス拡散性、及び優れた耐久性を有する燃料電池用電極を供することができ、自動車、電力、ガス、家電業界で使用される固体高分子形燃料電池の電極構成部材として有望である。特に、負荷変動が激しい燃料電池自動車(乗用車及び商用車)向けに使用されることが期待される。
【符号の説明】
【0150】
1 電極材料
2 多孔質炭素
2a 細孔内表面
2b 外表面
3 電極触媒複合体
3a Ta酸化物担体
3b 電極触媒粒子
4 燃料電池用電極(カソード)
4a 電極触媒層(カソード)
4b ガス拡散層
5 燃料電池用電極(アノード)
5a 電極触媒層(アノード)
5b ガス拡散層
6 固体高分子電解質膜
10 膜電極接合体(MEA)
20 固体高分子形燃料電池
21 外部回路
P 細孔
【要約】
【課題】優れた電極性能及び耐久性を有する燃料電池用電極を与える電極材料を提供する。
【解決手段】多孔質炭素からなる担体骨格と、前記多孔質炭素の細孔内表面及び細孔外表面のうち少なくとも細孔内表面に固着したTa酸化物担体とからなる多孔質複合担体と、前記多孔質複合担体に担持された電極触媒粒子と、を含み、
前記電極触媒粒子の一部又は全部が、前記多孔質炭素の細孔内に、前記Ta酸化物担体を介して担持されてなる電極材料。Ta酸化物担体は、酸素欠損Ta酸化物を含むことが好ましい。
【選択図】図24
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28