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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】ツツジ科植物用培養土壌
(51)【国際特許分類】
   A01G 24/23 20180101AFI20241011BHJP
   A01G 17/00 20060101ALI20241011BHJP
   A01G 18/20 20180101ALI20241011BHJP
【FI】
A01G24/23
A01G17/00
A01G18/20
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023213836
(22)【出願日】2023-12-19
【審査請求日】2023-12-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522091254
【氏名又は名称】合同会社天神サービス
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】大神 驍人
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特許第5542232(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 24/00
A01G 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツツジ科植物を栽培するとともに、キノコ類を収穫することができる、ツツジ科植物用培養土壌であって、
バークチップと、
前記キノコ類の腐生菌を含む菌床ブロック又は菌床パウダーと、からなる、
ツツジ科植物用培養土壌。
【請求項2】
前記腐生菌は、ハタケシメジ、ムラサキシメジ、サケツバタケ、オオイチョウタケのうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする、
請求項1に記載のツツジ科植物用培養土壌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルーベリー等のツツジ科の植物を栽培する際に用いるツツジ科植物用培養土壌に関する。
【背景技術】
【0002】
ブルーベリーは寒冷地から温暖地まで広い気候に適応しており、日本においても多くの地域で栽培されている。
ブルーベリーはツツジ科の植物であるが、ツツジ科の植物は一般的に酸性の土壌を好む。このため、ブルーベリーの栽培における土壌改良材として、引用文献1のように、酸性を示すピートモスが用いられている。
また、ブルーベリーは排水性、通気性の高い土壌を好むことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-65942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピートモスを用いたブルーベリーの栽培には、以下のような問題が生じるおそれがある。
(1)ブルーベリーの害虫として、コガネムシが知られている。コガネムシは土壌に産卵し、その幼虫がブルーベリーの根を食い荒らしてしまう。ピートモスはコガネムシの産卵場所となったり、幼虫の栄養となったりするため、コガネムシ対策を行う必要がある。
(2)ピートモスは保水性が高く、排水性、通気性を好むブルーベリーに使用する際にはそれを補う資材と合わせる必要がある。
(3)ピートモスは限られた地域で採集されるため、需要が増加するにつれて環境への影響が懸念されるており、その代替資材が求められている。
【0005】
本発明は、ピートモスを使用せずに酸性土壌とすることができるとともに、キノコ類も収穫することができる、ツツジ科植物用培養土壌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ツツジ科植物を栽培するとともに、キノコ類を収穫することができる、ツツジ科植物用培養土壌であって、バークチップと、前記キノコ類の腐生菌を含む菌床ブロック又は菌床パウダーと、からなることを特徴とする。
前記腐生菌は、ハタケシメジ、ムラサキシメジ、サケツバタケ、オオイチョウタケのうちの少なくとも一つを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)コガネムシの産卵場所となったり、幼虫の栄養となったりするピートモスを使用しないため、コガネムシの被害を抑えることができる。
(2)バークチップは排水性、通気性が高いため、ブルーベリーが好む土壌となる。
(3)バークチップは近隣の山林で発生する間伐材や廃材を材料とするため、環境負荷が低い。
(4)ブルーベリーの収穫時期以外にも、腐生菌として用いるハタケシメジや、ムラサキシメジ、サケツバタケ、オオイチョウタケ等のキノコ類が収穫でき、農業経営にも効果的である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施例1]
(1)ツツジ科植物用培養土壌の構成
本発明のツツジ科植物用培養土壌は、ブルーベリー等のツツジ科の植物を栽培する際に用いるものである(図1)。
本発明のツツジ科植物用培養土壌は、バークチップと、腐生菌を含む菌床ブロック又は菌床パウダーを混合したものである。
【0009】
(2)バークチップ
バークチップは、スギやマツ等のバーク(樹皮)をチップ状に砕いたものである。
従来、バークはその加工方法や使用方法が限られており、産業廃棄物とされることが多いが、本発明はバークをチップ状に砕いて利用するため、環境にやさしい培養土壌となる。また、バークチップは近隣の山林で発生する間伐材や廃材を材料とするため、環境負荷が低い。
バークチップは排水性、通気性が高いため、ブルーベリー等のツツジ科植物が好む土壌となる。ただし、バークチップ単体では保水性や土壌フローラの健全な形成の点で問題があるため、本発明では腐生菌を追加することで、腐生菌による有機物分解を行い、保水性や土壌フローラを形成する。
【0010】
(3)菌床ブロック/菌床パウダー
本発明はバークチップを分解する腐生菌を含むツツジ科植物用培養土壌であり、腐生菌は菌床ブロック又は菌床パウダーに含ませて、バークチップと混合する。
腐生菌としては、バークを好むハタケシメジや、ムラサキシメジ、サケツバタケ、オオイチョウタケ等のキノコ類が好適である。
なお、直射日光が当たると腐生菌が死滅するおそれがあるため、本発明のツツジ科植物用培養土壌を使用する際には、上層にあらためてバーク等によりマルチングすることが好ましい。
【0011】
(4)ツツジ科植物への適用
ブルーベリー等のツツジ科の植物は、以下のような土壌を好むことが知られている。
・酸性であること
・排水性が高いこと
・通気性が高いこと
本発明のツツジ科植物用培養土壌は、腐生菌がバークを分解して酸性化することで、ピートモスを使用せずに酸性土壌とすることができる。コガネムシの産卵場所となったり、幼虫の栄養となったりするピートモスを使用しないため、コガネムシの被害を抑えることができる。
また、バークチップにより、排水性、通気性が高い土壌とするとともに、腐生菌による有機物分解を行い、保水性や土壌フローラを形成する。
【0012】
(5)輪作
例えば、ブルーベリー(ハイブッシュ系、ラビットアイ系)は、10月に植え付けと土壌改良を行うことが一般的である。そして本発明のツツジ科植物用培養土壌はこれらの作業時にすき込む。
そして、ブルーベリーの主な収穫時期は、ハイブッシュ系が6月~7月、ラビットアイ系が7月~9月となるが、その他の時期には腐生菌として用いるハタケシメジや、ムラサキシメジ、サケツバタケ、オオイチョウタケ等のキノコ類が収穫され、農業経営にも効果的である。
【要約】
【課題】ピートモスを使用せずに酸性土壌とすることができるとともに、キノコ類も収穫することができる、ツツジ科植物用培養土壌を提供する。
【解決手段】バークチップと、腐生菌を含む菌床ブロック又は菌床パウダーと、からなる、ツツジ科植物用培養土壌。
【選択図】なし