(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】ワイセラ・コンフューザ、培養方法及びその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20241011BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20241011BHJP
A61K 35/741 20150101ALI20241011BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20241011BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20241011BHJP
A23K 10/18 20160101ALI20241011BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12N15/11 Z
C12N1/20 E
A61K35/741
A61P1/14
A61P1/12
A23K10/18
(21)【出願番号】P 2023552588
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 CN2022078752
(87)【国際公開番号】W WO2023050716
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】202111145446.X
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CGMCC CGMCC NO. 22697
(73)【特許権者】
【識別番号】523327293
【氏名又は名称】上海信元寵物食品有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】施柔安
(72)【発明者】
【氏名】施軍輝
(72)【発明者】
【氏名】施并輝
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111363703(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110317743(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113416674(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109370951(CN,A)
【文献】特表2021-512855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイセラ・コンフューザであって、
前記ワイセラ・コンフューザは、ワイセラ・コンフューザ Weissella confusa WSG1であり、2021年6月11日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物中心に寄託され、受託番号はCGMCC NO.22697であることを特徴とするワイセラ・コンフューザ。
【請求項2】
前記ワイセラ・コンフューザの16S rRNAのヌクレオチド配列は、SEQ:NO.1で示されることを特徴とする請求項1に記載のワイセラ・コンフューザ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のワイセラ・コンフューザの培養方法であって、
前記ワイセラ・コンフューザ Weissella confusa WSG1を培地に接種して培養し、前記培養の初期pHは5.0~6.5、前記培養の温度は35~38℃、前記培養の時間は15~17hであり、
前記培地は炭素源及び窒素源を含み、前記培地の炭素源及び窒素源の含有量は、各々1.0~3.0%であることを特徴とする方法。
【請求項4】
前記炭素源は、グルコース、サッカロース、デンプンのうちの1種類又は複数種類であることを特徴とする請求項3に記載のワイセラ・コンフューザの培養方法。
【請求項5】
前記窒素源は、ペプトン、牛肉エキス、酵母粉末のうちの1種類又は複数種類であることを特徴とする請求項4に記載のワイセラ・コンフューザの培養方法。
【請求項6】
消化を補助する薬物の製造における請求項1又は2に記載のワイセラ・コンフューザの応用。
【請求項7】
前記薬物は動物用医薬品であることを特徴とする請求項6に記載のワイセラ・コンフューザの応用。
【請求項8】
前記動物用医薬品はイヌ類専用薬であることを特徴とする請求項7に記載のワイセラ・コンフューザの応用。
【請求項9】
飼料の製造における請求項1又は2に記載のワイセラ・コンフューザの応用。
【請求項10】
下痢を治療する薬物の製造における請求項1又は2に記載のワイセラ・コンフューザの応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の技術分野に関し、特に、ワイセラ・コンフューザ、培養方法及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
イヌ類は、人間に飼いならされるまでは自然環境の中で各種の生の餌を摂取し、生の餌から自身の体内のプロバイオティクスを補充していた。しかし、愛玩犬は、遥か以前に自然環境から離れ、家の中で飼育されている。そのため、長期的にドッグフードや缶詰といった加工食品を食することになるが、これらの食品からは適切な量のプロバイオティクスを補充できない恐れがある。また、ひいては、これらの食品中の余分な添加剤が愛玩犬体内のコロニーバランスを破壊する結果、愛玩犬に下痢や嘔吐等の問題を生じさせることがある。イヌの種類によっては、消化器系が未発達であり、消化能力が弱いため、下痢や嘔吐等の現象がより頻繁となる。また、従来技術では、一般的に抗生物質等の薬物を使用して治療するため、病原菌に薬剤耐性が発生し、ひいては病状を繰り返してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、イヌ類の消化能力を向上可能とし、下痢を引き起こす一般的な病原菌を抑制するプロバイオティクス菌株を提供すること、及び、イヌ類の身体における腸の健康能力を維持するプロバイオティクスの開発のために新たな選択可能な菌株を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の発明の目的を実現するために、本発明は以下の技術方案を提供する。
【0005】
本発明は、ワイセラ・コンフューザを提供する。前記ワイセラ・コンフューザは、ワイセラ・コンフューザ Weissella confusa WSG1であり、2021年6月11日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物中心に寄託した。受託番号はCGMCC NO.22697である。
【0006】
好ましくは、前記ワイセラ・コンフューザの16S rRNAのヌクレオチド配列は、SEQ:NO.1で示される。
【0007】
本発明は、更に、前記ワイセラ・コンフューザ Weissella confusa WSG1を培地に接種して培養するワイセラ・コンフューザの培養方法を提供する。前記培養の初期pHは5.0~6.5、前記培養の温度は35~38℃、前記培養の時間は15~17hである。
【0008】
前記培地は炭素源及び窒素源を含み、前記培地の炭素源及び窒素源の含有量は、各々1.0~3.0%である。
【0009】
好ましくは、前記炭素源は、グルコース、サッカロース、デンプンのうちの1種類又は複数種類である。
【0010】
好ましくは、前記窒素源は、ペプトン、牛肉エキス、酵母粉末のうちの1種類又は複数種類である。
【0011】
本発明は、更に、消化を補助する薬物の製造におけるワイセラ・コンフューザの応用を提供する。
【0012】
好ましくは、前記薬物は動物用医薬品である。
【0013】
好ましくは、前記動物用医薬品はイヌ類専用薬である。
【0014】
本発明は、更に、飼料の製造におけるワイセラ・コンフューザの応用を提供する。
【0015】
本発明は、更に、下痢を治療する薬物の製造におけるワイセラ・コンフューザの応用を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の技術的効果及び利点:本発明は、消化補助能力を有するワイセラ・コンフューザ Weissella confusa WSG1を提供する。WSG1は、溶血性評価及び薬剤耐性評価の結果、菌株の安全性が実証された。また、消化管環境で生存可能であるとともに、抗生物質に対する薬剤耐性が良好であった。且つ、下痢を引き起こす一般的な病原菌に対し顕著な抑制効果を有するとともに、消化を補助する能力を有し、且つ経口毒性を有さなかった。従って、イヌ類の身体における腸の健康能力を維持するプロバイオティクスの開発のために新たな選択可能な菌株が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、中国科学院微生物研究所による鑑定リポートの表紙である。
【
図2】
図2は、中国科学院微生物研究所による鑑定リポートの内容1である。
【
図3】
図3は、中国科学院微生物研究所による鑑定リポートの内容2である。
【
図4】
図4は、菌株WSG1に発生したタンパク質溶解円である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
寄託についての説明
ワイセラ・コンフューザ Weissella confusa WSG1は、中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物中心(CGMCC)に寄託した。寄託先所在地は、北京市朝陽区北辰西路1号院3号、寄託日は2021年6月11日、受託番号はCGMCC NO.22697である。
【0019】
本発明は、ワイセラ・コンフューザを提供する。前記ワイセラ・コンフューザは、ワイセラ・コンフューザ Weissella confusa WSG1であり、2021年6月11日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物中心に寄託した。受託番号はCGMCC NO.22697である。本発明において、ワイセラ・コンフューザの16S rRNAのヌクレオチド配列は、好ましくはSEQ:NO.1で示す通りである。
【0020】
本発明は、更に、前記ワイセラ・コンフューザ Weissella confusa WSG1を培地に接種して培養するワイセラ・コンフューザの培養方法を提供する。
【0021】
本発明において、前記培養の初期pHは、5.0~6.5であることが好ましく、より好ましくは、5.5~6.2であり、更に好ましくは、5.8~6.0である。本発明において、前記培養の温度は35~38℃であることが好ましく、より好ましくは、36~37℃である。本発明において、前記培養の時間は15~17hであることが好ましく、より好ましくは、15.5~16.5hであり、更に好ましくは、15.8~16.2hである。
【0022】
本発明において、前記培地は炭素源及び窒素源を含むことが好ましい。本発明において、前記炭素源は、グルコース、サッカロース、デンプンのうちの1種類又は複数種類であることが好ましい。また、前記炭素源の含有量は、1.0~3.0%であることが好ましく、より好ましくは、1.5~2.5%であり、更に好ましくは、1.7~2.0%である。本発明において、前記窒素源は、ペプトン、牛肉エキス、酵母粉末のうちの1種類又は複数種類であることが好ましい。また、前記ペプトンはカゼインペプトンであることが好ましい。前記窒素源の含有量は、1.0~3.0%とすることが好ましく、より好ましくは、1.4~2.8%であり、更に好ましくは、1.9~2.5%である。
【0023】
本発明は、更に、消化を補助する薬物の製造におけるワイセラ・コンフューザの応用を提供する。前記薬物は動物用医薬品であることが好ましく、より好ましくは、イヌ類専用薬である。本発明において、前記薬物におけるワイセラ・コンフューザの生菌濃度は1×108~6×108CFU/kgであり、より好ましくは、2×108~5×108CFU/kgであり、更に好ましくは、3×108~4×108CFU/kgである。前記薬物は、ワイセラ・コンフューザを唯一の活性成分とすることが好ましく、より好ましくは、前記薬物は、消化を補助するその他の活性成分を更に含む。また、前記薬物は添加物を含む。本発明では前記添加物の種類を特に限定せず、当該分野において一般的な医薬品添加物を採用すればよい。
【0024】
本発明は、更に、飼料の製造におけるワイセラ・コンフューザの応用を提供する。前記飼料は、イヌ類用飼料であることが好ましく、より好ましくは、イヌ類専用飼料である。本発明において、前記飼料におけるワイセラ・コンフューザの生菌濃度は1×108~6×108CFU/kgであり、より好ましくは、2×108~5×108CFU/kgであり、更に好ましくは、3×108~4×108CFU/kgである。前記飼料は、ワイセラ・コンフューザを唯一の消化を補助する活性成分とすることが好ましく、より好ましくは、前記飼料は、消化を補助するその他の活性成分を更に含む。また、前記飼料は栄養成分を含む。本発明では前記栄養成分の種類を特に限定せず、当該分野において一般的な栄養剤成分を採用すればよい。
【0025】
本発明は、更に、下痢を治療する薬物の製造におけるワイセラ・コンフューザの応用を提供する。前記薬物は動物用医薬品であることが好ましく、より好ましくは、イヌ類専用薬である。本発明において、前記薬物におけるワイセラ・コンフューザの生菌濃度は1×108~6×108CFU/kgであり、より好ましくは、2×108~5×108CFU/kgであり、更に好ましくは、3×108~4×108CFU/kgである。前記薬物は、ワイセラ・コンフューザを唯一の活性成分とすることが好ましく、より好ましくは、前記薬物は、下痢を治療するその他の活性成分を更に含む。また、前記薬物は添加物を含む。本発明では前記添加物の種類を特に限定せず、当該分野において一般的な医薬品添加物を採用すればよい。
【0026】
以下に、実施例を組み合わせて、本発明で提供する技術方案について詳細に説明するが、これらを本発明の保護の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例1】
【0027】
幼犬の便からワイセラ・コンフューザ Weissella confusa WSG1を分離し、2021年6月11日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物中心に寄託した。受託番号はCGMCC NO.22697である。前記ワイセラ・コンフューザの核酸配列はSEQ:NO.1で示す通りである。
【0028】
MRS培地を使用して培養し、関連の性能測定を行った。
【実施例2】
【0029】
活性化した菌株 WSG1(受託番号 CGMCC NO.22697)を接種量2%で培地に接種して、37℃で16h培養した。
【0030】
培地の初期pHは6.0とした。
【0031】
培地の具体的配合は下記の通りであった。
【0032】
MRS培地:
カゼインペプトン 10.0g
牛肉抽出物(牛肉エキス) 10.0g
酵母抽出液(酵母エキス) 5.0g
グルコース(C6H12O6・H2O) 20.0g
酢酸ナトリウム(CH3COONa・3H2O) 5.0g
クエン酸二アンモニウム[(NH4)2HC6H5O7] 2.0g
Tween80 1.0g
リン酸水素二カリウム(K2HPO4・3H2O) 2.0g
硫酸マグネシウム(MgSO4・7H2O) 0.58g
硫酸マンガン(MnSO4・H2O) 0.25g
炭酸カルシウム 20.0g
寒天 18.0g
蒸留水 1000ml
【0033】
平板法で生菌をカウントしたところ、算出された濃度は5.52×1011CFU/mLであった。
【0034】
実験例1 安全性評価-溶血性評価
実験過程:5%の羊血を含む固形培地に菌株WSG1の新鮮培養物を画線接種した。そして、溶血現象の発生有無を観察し、溶血現象が発生しなかった場合に安全な菌株であると判断した。
【0035】
実験結果:溶血現象は発生しなかった。
【0036】
実験例2 安全性評価-薬剤耐性評価
実験過程:K-B法及びMIC法により、バンコマイシン、クロラムフェニコール、セファロチン、アモキシシリン、クリンダマイシン、エンロフロキサシン、ペニシリン、セファレキシン、セフラジン、アジスロマイシン、オキサシリン、セファゾリン、テトラサイクリン、シプロフロキサシン、マルボフロキサシン(MIC法)を含む一般的な抗生物質に対する菌株WSG1の薬剤耐性を研究した。
【0037】
実験結果:阻止円の直径(mm)及びMIC値は表1、表2に示す通りとなった。
【0038】
【0039】
【0040】
上記から明らかなように、抗生物質に対するWSG1の薬剤耐性は良好であった。
【0041】
実験例3 菌株の鑑定
サンプルを中国科学院微生物研究所に送付し、鑑定を行った。鑑定リポートは
図1~3に示す通りであった。
【0042】
実験例4 耐酸性及び耐胆汁酸塩性評価
実験過程:消化管環境を模倣し、異なるpH及び胆汁酸塩濃度の培地に菌株WSG1を接種して、菌含有量の変化を研究することで、酸及びアルカリに対する菌株の耐性を特定した(pH2.0、pH3.0、pH4.0、pH5.0、及び、胆汁酸塩濃度0.1%、0.3%、0.5%)。
【0043】
実験結果:異なる条件における菌株WSG1の生存率は表3に示す通りであった。
【0044】
【0045】
上記から明らかなように、WSG1は消化管環境での生存能力を有していた。
【0046】
実験例5 下痢を引き起こす一般的な病原菌に対する抑制作用
実験過程:指標菌:大腸菌 ATCC 25922、サルモネラ・ティフィムリウム ATCC 14028、ウェルシュ菌 ATCC 13124。菌株WSG1を24時間培養し、遠心分離にかけて上清液を取得するとともに、0.22μmの濾過膜で濾過した。そして、穿孔法により、3種類の指標菌に対する上清液の抑制作用を研究した。
【0047】
実験結果:3種類の指標菌に対する菌株WSG1の上清液による阻止円(mm)は表4に示す通りであり、顕著な菌抑制効果を有していた。
【0048】
【0049】
実験例6 消化補助能力-プロテアーゼ産生能力の研究
実験過程:菌株WSG1を一晩培養したあと、遠心分離にかけて濾過し、細胞を含まない上清液を取得した。そして、穿孔法により1%スキムミルク平板に接種し、タンパク質溶解円の発生有無を観察することで、プロテアーゼ産生能力を判断した。タンパク質溶解現象が見られた場合には、タンパク質分解能力を有するものとした。
【0050】
実験結果:
図4に示すように、タンパク質溶解円を発生可能であった。
【0051】
実験例7 マウスに対する経口毒性試験
菌液の調製:菌株WSG1をMRS培地に接種し、24時間培養したあと、平板算定したところ、菌含有量は4.75×1011CFU/mLに達した。
【0052】
7週齢のICRマウス20匹を適切に1週間飼育したあと、ランダムに2群に分けた。実験群のマウスには、滅菌生理食塩水で希釈した菌懸濁液を2.5×109CFU/Kg体重/日の分量で経口投与した。また、対照群のマウスについては、生理食塩水を経口投与処理した。投与量は1mLとし、1回経口投与した。そして、10日間連続で、マウスの活動状態、毒性の兆候及び死亡状況を観察した。
【0053】
実験結果:菌株WSG1の急性経口毒性試験の期間にマウスの死亡は見られなかった。また、マウスの皮膚及び被毛、飲水、身体活動及び行動パターンはいずれも正常であり、急性中毒の兆候や関連の毒性反応は見られなかった。
【0054】
実験群のマウスの体重増加は対照群と比べてやや少なかったが、明らかな差は見られなかった。
【0055】
実験例8 イヌに対する経口毒性試験
【0056】
菌液の調製:アルコールランプの近傍で操作を行った。100μLのピペットを用いて90μLのWSG1菌液を取り、50mLの遠沈管に抽入した。その後、遠沈管に30mLの10%グルコース溶液を加え、均一に混合した。
【0057】
20匹の実験犬(4匹の幼年期ビーグル、4匹の成年期ビーグル、4匹の成年期フレンチブルドッグ、4匹の成年期プードル、4匹の成年期中華田園犬(Chinese Rural Dog))を均等に2群(対照群及び実験群)に分けた。対照群のイヌには毎日通常通り給餌し、飲水は制限しなかった。また、実験群のイヌには毎日通常通り給餌し、飲水は制限しなかった。且つ、ステップ1で配合したWSG1菌液を毎日0.5mL/kgの投与量で(最終的には、1日あたり1.5μLのプロバイオティクス原液を7×108CFU/Kg体重/日で各イヌに投与したに等しい)、2回に分けて各イヌに投与した。投与を10日間続け、毎日各イヌの便の状況を観察するとともに、ウォルサム糞便スコアシステムに従って各イヌの便を評価した。また、投与前後に各イヌの体重を測定した。
【0058】
実験結果:
実験群:
(1)幼年期ビーグル:1匹については、プロバイオティクスを投与したあと、1日目の便は成形されず、3日目、4日目の便は粘稠性であった。また、別の1匹については、2~3日は便が粘稠性で成形されなかったが、残りの期間の便は良好であった。
【0059】
(2)成年期ビーグル:1匹については、7日目の便が柔らかかったが、基本的には成形されており、残りの期間の便は良好であった。
【0060】
(3)成年期中華田園犬:全期間にわたって明らかな便の異常は見られなかった。
【0061】
(4)成年期プードル:1匹については、6日目の便が粘稠性で成形されなかったが、残りの期間の便は良好であった。
【0062】
(5)成年期フレンチブルドッグ:1匹については、3日目の便が柔らかかったが、基本的には成形されており、残りの期間の便は良好であった。
【0063】
対照群:
(1)幼年期ビーグル:1匹については、1日目と4日目の便が粘稠性で成形されなかった。また、3日目は便が柔らかかったが、基本的には成形されていた。残りの期間の便は良好であった。別の1匹については、1日目と3日目の便が粘稠性で成形されなかったが、残りの期間の便は良好であった。
【0064】
(2)成年期ビーグル:1匹については、1日目の便が粘稠性であり、基本的に成形されなかったが、残りの期間の便は良好であった。
【0065】
(3)成年期中華田園犬:全期間にわたって明らかな便の異常は見られなかった。
【0066】
(4)成年期プードル:全期間にわたって明らかな便の異常は見られなかった。
【0067】
(5)成年期フレンチブルドッグ:全期間にわたって明らかな便の異常は見られなかった。
【0068】
マン・ホイットニー検定により、再び9日目のデータを分析したところ、差は明らかでなかった。また、表5に示すように、10日間において両群の糞便スコアに顕著な差は見られなかった。
【0069】
【0070】
【0071】
体重については、実験期間中、実験群及び対照群にある程度の増加がみられたが、表6に示すように、群間に差はなかった。
【0072】
【0073】
従って、WSG1はイヌに対し毒性がなかった。以上の実施例から明らかなように、本発明では、消化を促進可能とし、下痢を引き起こす一般的な病原菌を抑制するワイセラ・コンフューザ Weissella confusa WSG1を提供する。WSG1は、溶血性評価及び薬剤耐性評価の結果、菌株の安全性が実証された。また、消化管環境で生存可能であるとともに、抗生物質に対する薬剤耐性が良好であった。且つ、下痢を引き起こす一般的な病原菌に対し顕著な抑制効果を有するとともに、消化を補助する能力を有し、且つ経口毒性を有さなかった。従って、イヌ類の身体における腸の健康能力を維持するプロバイオティクスの開発のために新たな選択可能な菌株が提供される。
【0074】
以上は本発明の好ましい実施形態にすぎない。指摘すべき点として、当業者であれば、本発明の原理を逸脱しないことを前提に、若干の改良及び補足が可能であり、これらの改良及び補足もまた本発明の保護の範囲とみなすべきである。
【受託番号】
【0075】
CGMCC NO.22697
【配列表】