(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】レーザー照射装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/36 20140101AFI20241011BHJP
B23K 26/16 20060101ALI20241011BHJP
B23K 26/142 20140101ALI20241011BHJP
【FI】
B23K26/36
B23K26/16
B23K26/142
(21)【出願番号】P 2024065840
(22)【出願日】2024-04-16
【審査請求日】2024-06-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519130694
【氏名又は名称】クリーンレーザージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】本村 孔作
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3206981(JP,U)
【文献】特許第6059182(JP,B2)
【文献】特開2021-030271(JP,A)
【文献】特開2018-065186(JP,A)
【文献】特開2023-071400(JP,A)
【文献】国際公開第2011/042938(WO,A1)
【文献】特開2023-103841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー発振器を備えた装置本体からレーザー光を照射して対象物表面の除去物を除去するレーザー照射装置において、
前記装置本体の先端側にエアー供給口を設けてレーザー照射方向に圧縮エアーを噴射するように構成し、
前記装置本体の先端部に吸引ノズルを着脱自在に配置すると共に、エアー供給口に着脱自在に連結する連結噴射具を吸引ノズルに設け、
前記レーザー光を照射する位置の周囲を囲むように開口して前記除去物を吸引する吸引口と、吸引ノズルの側面に開口して吸引した前記除去物を外部に排出する排出口とを形成し、
前記連結噴射具は、前記エアー供給口に嵌合する連結管と、連結管の左右両端から延長され前記吸引ノズルの内部に向けて前記圧縮エアーを噴射する噴射パイプとを備え、吸引口から吸引した前記除去物を、連結噴射具からの圧縮エアーで撹拌しながら排出口から排出することを特徴とするレーザー照射装置。
【請求項2】
前記排出口は、前記吸引ノズルの左右側面又は上面に形成され、吸引装置に連結された排出ホースを介して前記吸引ノズル内の前記除去物を外部に排出するように構成した請求項1記載のレーザー照射装置。
【請求項3】
前記吸引ノズルの先端側に、前記吸引口と前記対象物表面との距離を一定に保つローラーを装着した請求項1記載のレーザー照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーにより構造物表面の錆や塗膜等を除去しながら除去物を吸引回収するレーザー照射装置に係り、特に、除去物を確実に吸引すると共に、使用後のメンテナンスを容易にするレーザー照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
錆や塗料などの構造物表面の塗膜を除去しながら除去物を吸引回収するレーザー照射装置が特許文献1に記載されている。この装置は、パルスレーザーを照射するスキャナーヘッド201と、このスキャナーヘッド201に装着された集塵吸引口202とを備えたものである。
【0003】
この集塵吸引口202は、パルスレーザーが照射される位置の近傍に設置されている。すなわち、構造物表面の塗膜や錆などを除去する位置の近傍に設置される。そして構造物表面にパルスレーザーでプラズマを発生させ、構造物表面から剥離した除去物を集塵吸引口202から吸引するというものである。
【0004】
一方、レーザー照射装置と別体に形成されたレーザー処理用回収装置が特許文献2に記載されている。この回収装置は、レーザー照射面を囲む回収用ケース21を形成したもので、この回収用ケース21の透明パネル12を通じて処理対象面5にレーザー光を照射する構成である。そして、回収用ケース21内の空気を吸引することで、回収用ケース21内で発生した除去物を吸引する構成である。
【0005】
更に、レーザーヘッド3の本体内部に吸引手段31を設け、アタッチメント5内でレーザーを照射するレーザー照射装置が特許文献3に記載されている。このレーザー照射装置は、構造物の表面20を囲むアタッチメント5を設け、このアタッチメント5内でレーザーを照射すると共に、表面から剥離したアタッチメント5内の除去物を吸引手段31で吸引する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-131258号公報
【文献】特許第7450241号公報
【文献】特許第6059182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のレーザー照射装置では、レーザーを照射する焦点用のレンズ5を構造物表面から離れた位置で保持すると共に、構造物表面の近くに集塵吸引口202を配置して使用する。そのため、構造物表面から剥離した塗膜や錆などの除去物を集塵吸引口202で確実に吸引することは困難な構成であった。
【0008】
すなわち、構造物の表面は開放された状態にあるので、レーザーで剥離した塗膜や錆などの除去物は表面周囲に広く飛散する。
【0009】
ところが、集塵吸引口202は、レーザーを照射する領域の傍の一部に配置するので、この位置の集塵吸引口202では、周囲に飛散する塗膜や錆などの除去物を確実に吸引することは困難になる。
【0010】
一方、特許文献2に記載のレーザー処理用回収装置は、レーザー照射部の操作と共に、回収装置を操作する必要がある。すなわち、レーザーにより構造物の表面の塗膜等を除去する作業とは別に、回収装置を所定の位置に移動し固定する操作が必要になる。このためレーザー照射で塗膜等を除去する作業に多くの手間を要する。
【0011】
更に、特許文献3のレーザー照射装置によると、レーザーを照射するアタッチメント5内で除去物が発生し、この除去物を本体の内部に設けた吸引手段31で吸引する構成である。そのため、レーザー照射装置にアタッチメント5や吸引手段31を予め組み込んだ構成になることから、装置の構造が極めて複雑化する不都合があった。
【0012】
しかも、吸引手段31は装置の内部を通過する構成なので、吸引した除去物が装置の内部やレンズ等に付着するおそれがある。この結果、装置を使用した後のメンテナンスに多くの手間をする。
【0013】
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく案出されたもので、レーザー照射装置において、除去物を確実に吸引することが可能で、使用後のメンテナンスも容易なレーザー照射装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、レーザー発振器を備えた装置本体1からレーザー光を照射して対象物表面の除去物Qを除去するレーザー照射装置において、前記装置本体1の先端側にエアー供給口1Bを設けてレーザー照射方向に圧縮エアーを噴射するように構成し、前記装置本体1の先端部に吸引ノズル2を着脱自在に配置すると共に、エアー供給口1Bに着脱自在に連結する連結噴射具3を吸引ノズル2に設け、前記レーザー光を照射する位置の周囲を囲むように開口して前記除去物Qを吸引する吸引口2Aと、吸引ノズル2の側面に開口して吸引した除去物を外部に排出する排出口2Bとを形成し、前記連結噴射具3は、前記エアー供給口1Bに嵌合する連結管3Aと、連結管3Aの左右両端から延長され前記吸引ノズル2の内部に向けて前記圧縮エアーを噴射する噴射パイプ3Bとを備え、吸引口2Aから吸引した前記除去物Qを、連結噴射具3からの圧縮エアーで撹拌しながら排出口2Bから排出することにある。
【0016】
第2の手段の前記排出口2Bは、前記吸引ノズル2の左右側面又は上面に形成され、吸引装置に連結された排出ホース4を介して前記吸引ノズル2内の除去物Qを外部に排出するように構成した。
【0017】
第3の手段は、前記吸引ノズル2の先端側に、前記吸引口2Aと前記対象物表面との距離を一定に保つローラー5を装着したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のごとく、吸引口2Aから吸引した除去物Qを、連結噴射具3の圧縮エアーで撹拌しながら外部に排出することにより、対象物表面から剥離した塗料や錆び等の粒子の異なる除去物Qでも効率的に排出することが可能になる。
【0019】
しかも、レーザー光を照射して高温になった除去物Qの温度を連結噴射具3の圧縮エアーで急激に下げることができるので、粒子状の除去物Qが周囲に付着するのを防止する。この結果、使用後のメンテナンスも容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施例の使用状態を示す側面図である。
【
図3】本発明の装置本体の先端部を示す要部斜視図である。
【
図4】本発明の吸引ノズルの一実施例を示す斜視図である。
【
図5】本発明の吸引ノズルの一実施例を示す背面図である。
【
図6】本発明の他の実施例の使用状態を示す側面図である。
【
図8】本発明の吸引ノズルの他の実施例を示す斜視図である。
【
図9】本発明の吸引ノズルの他の実施例を示す背面図である。
【
図10】本発明の除去物の除去原理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明装置は、レーザー光を集束させて対象物表面の錆や塗膜を除去する装置である(
図1参照)。この装置本体1の先端側には吸引ノズル2を着脱自在に装着している。更に、装置本体1の先端部にレーザー光の照射方向に向けて圧縮エアーを噴射供給するエアー供給口1Bを設けている(
図3参照)。
【0022】
図示のエアー供給口1Bは、装置本体1の後端部に設けたエアー供給ホース10から供給された圧縮エアーを、装置本体1先端部のエアー供給口1Bに供給するように設けている(
図1乃至
図3参照)。
【0023】
また、これらエアー供給ホース10やエアー供給口1Bを装置本体1と別体に設けても良い(図示せず)。更に、この装置本体1にはレーザー発振器や焦点レンズを内蔵すると共に、焦点レンズを保護するカバーガラス1Aを先端部に備えている(
図3参照)。
【0024】
一方、エアー供給口1Bは、レーザー照射方向に圧縮エアーを噴射する部位である(
図3参照)。図示のエアー供給口1Bはカバーガラス1Aの下方で開口し、エアー供給ホース10から供給された圧縮エアーをレーザー光の照射方向に向けて噴射する。
【0025】
更に、装置本体1の先端側に吸引ノズル2を着脱自在に装着している(
図1、2参照)。図示例では装置本体1の先端両側に設けた一対の連結具1Dで吸引ノズル2を着脱する(
図3参照)。この吸引ノズル2には、吸引口2Aと排出口2Bとが形成されており、排出口2Bに連結した排出ホース4と吸引装置とで吸引ノズル2内の除去物Qを吸引する構成である(
図4参照)。
【0026】
吸引ノズル2の吸引口2Aは、吸引ノズル2の先端側に開口した部位で、レーザー光を照射する位置の周囲を囲むように形成している(
図5参照)。
【0027】
排出口2Bは、吸引ノズル2の側面に開口した部位で、この排出口2Bの外部に排出ホース4を連結する。
図3を除く
図1~
図5に示す排出口2Bは、吸引ノズル2の左右側面に一対形成されている。また、
図6~
図8に示すように、吸引ノズル2の上面に排出口2Bを形成することも可能である。そして、これらの排出口2Bに排出ホース4を連結し、吸引装置で吸引ノズル2内の除去物Qを外部に排出する。
【0028】
更に、吸引ノズル2に連結噴射具3を設けている(
図4参照)。この連結噴射具3は、エアー供給口1Bに着脱自在に連結するもので、エアー供給口1Bからの圧縮エアーを吸引ノズル2の内部に噴射する。図示の連結噴射具3は、吸引ノズル2の内部に設けられ、連結管3Aと噴射パイプ3Bとを連結腕3Cで連通したものである。
【0029】
また、エアー供給口1Bを装置本体1の外側に設けた場合、連結噴射具3を吸引ノズル2の外部に連結管3Aと連結腕3Cとを設け、噴射パイプ3Bの先端を吸引ノズル2の内部に挿入することも可能である(図示せず)。
【0030】
この連結管3Aは、エアー供給口1Bに連結する部位で、エアー供給口1Bの内部に嵌合する径を有する筒状を成している(
図4参照)。一方、噴射パイプ3Bは、連結管3Aに固定した連結腕3Cを介して左右に分岐した一対のパイプ部材である。
【0031】
左右の噴射パイプ3B先端は、それぞれ吸引ノズル2の内部に向けてあり、装置本体1先端のカバーガラス1Aの前面側で左右からエアーが交差するように設置している(
図5参照)。この状態で、吸引ノズル2の内部に圧縮エアーを噴射すると、圧縮エアーは、吸引ノズル2内の除去物Qを撹拌しながら排出口2Bから排出される。このとき、圧縮エアーの圧力を3bar~4barに高めて供給するのが望ましい。
【0032】
すなわち、装置本体1の先端側で除去物Qを撹拌しながら排出口2Bから排出することで、装置本体1の先端側に除去物Qが接触し難くなる。また、高温で微粒子状になった塗料等は、温度を下げることで付着力を低下させることが期待できる。
【0033】
更に、吸引ノズル2の吸引口2Aの先端側に一対のローラー5を装着している(
図4参照)。このローラー5は、吸引口2Aを移動する際に、吸引口2Aと対象物表面との距離を一定に保つものである。図示のローラー5は、吸引ノズル2の先端側上部に載置する帯状の固定具5Aに連結され、この固定具5Aは固定ネジ5Bで吸引ノズル2の上面にネジ止めする構成である。
【0034】
このローラー5によって、吸引口2Aの位置を定位置に保つことができるので、最も効率的な吸引を可能にしている。レーザー光Pを照射して対象物の表面から錆や塗膜を除去する場合、錆や塗膜が気化又は微粒子化して除去物Qとなる(
図10参照)。そのため、レーザー光Pを照射する周辺に開口した吸引口2Aと対象物表面との距離を一定にすることで、レーザー光Pの焦点距離を一定にすると共に、吸引口2Aから吸い込む空気の量も一定になり、除去物Qを効率良く吸引する。
【0035】
更に、図示の装置本体1は、先端部に吸引口1Cを設けたものである(
図3参照)。この吸引口1Cで除去物Qを吸引し装置本体1を通して外部に排出することができる構成になっている。ところが、本発明装置は、装置本体1内部への付着を防止するため、この吸引口1Cを使用せず、吸引ノズル2に形成した排出口2Bから除去物Qを外部に排出するものである(
図4参照)。
【0036】
そこで、図示の吸引ノズル2には、装着時に装置本体1の先端部に設けた吸引口1Cを塞ぐカバー部材2Cを設けている。そして、吸引ノズル2を装着することでこのカバー部材2Cが吸引口1Cを閉塞する。また、予め吸引口1Cやエアー供給口1Bを設けていない装置本体1を使用することも可能である。
【0037】
尚、本発明の構成は図示例に限られるものではなく、吸引手段や噴射手段の構成など本発明の要旨を変更しない範囲での設計変更は自由に行えるものである。
【符号の説明】
【0038】
P レーザー光
Q 除去物
1 装置本体
1A レンズカバー
1B エアー供給口
1C 吸引口
1D 連結具
2 吸引ノズル
2A 吸引口
2B 排出口
2C カバー部材
3 連結噴射具
3A 連結管
3B 噴射パイプ
3C 連結腕
4 排出ホース
5 ローラー
5A 固定具
5B 固定ネジ
10 エアー供給ホース
【要約】
【課題】除去物を確実に吸引することが可能で、使用後のメンテナンスも容易なレーザー照射装置を提供する。
【解決手段】装置本体の先端部にエアー供給口を設ける。装置本体の先端部に吸引ノズル2を着脱自在に配置する。エアー供給口に連結する連結噴射具3を吸引ノズル2の内部に設ける。吸引ノズル2の先端部に吸引口2Aを形成する。吸引ノズル2の側面に排出口2Bを形成する。吸引ノズル2内部の除去物を連結噴射具3からの圧縮エアーで撹拌する。撹拌した除去物Qを排出口2Bから排出する。
【選択図】
図4