(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】箱体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/46 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
B65D1/46
(21)【出願番号】P 2024077431
(22)【出願日】2024-05-10
【審査請求日】2024-05-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513045127
【氏名又は名称】株式会社大北製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大北 幸史
(72)【発明者】
【氏名】濱本 匡也
(72)【発明者】
【氏名】大北 浩司
【審査官】二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-265966(JP,A)
【文献】特許第4256979(JP,B2)
【文献】特開平11-219688(JP,A)
【文献】特開2014-10936(JP,A)
【文献】国際公開第2014/002600(WO,A1)
【文献】特開2005-310579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00 - 1/48
H01M 50/10
B21D 51/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形状の底部と、該底部の外周縁から立設されるとともに立設方向の端部に開口を形成する4つの側壁部とを備える有底角型の本体と、前記開口を閉塞可能に構成された蓋とを備え
、
前記本体の開口側端部には、前記蓋が嵌まり込む蓋嵌入部が形成されており、
前記本体の内部の前記蓋嵌入部よりも立設方向下方には、収容物を収容する収容部が形成されており、
前記蓋嵌入部の四隅を形成する4つの隅部において隣り合う隅部の間の4つの平面部の内側面及び外側面はそれぞれ、前記収容部の四隅を形成する4つの隅部において隣り合う隅部の間の4つの平面部の内側面及び外側面と面一に形成されており、
前記立設方向に垂直な断面において、前記収容部の隅部は円弧状をなしているとともに、前記蓋嵌入部の隅部は前記収容部の隅部よりも曲率半径の小さい円弧状をなしており、
前記開口側から見たとき、前記蓋嵌入部の隅部の外側面は、前記収容部の隅部の外側面よりも前記本体の外側に位置しているとともに、前記収容部の隅部の外側面と前記収容部の4つの前記平面部に沿った4つの仮想直線とで囲まれる領域内に位置しており、
前記収容部の隅部と前記蓋嵌入部の隅部との間には、前記蓋嵌入部に嵌まり込んだ前記蓋を支持する支持面を有する段差部が形成されている、箱体
の製造方法であって、
前記本体の収容部の形状を前記立設方向の上端まで延長した形状を有する素体を用意する素体用意工程と、
前記本体の外側面の形状が転写された形状の壁面を有する凹部を含む外側治具の前記凹部に、前記素体を嵌め込む素体嵌め込み工程と、
前記本体の内側面の形状が転写された形状を有するとともに少なくとも前記立設方向に直交する幅方向又は奥行き方向における中央領域が取り除かれて分割された第1内側治具と第2内側治具とを含む内側治具を、前記第1内側治具と前記第2内側治具との間に隙間が形成されるように前記素体の内側に嵌め込む内側治具嵌め込み工程と、
前記取り除かれた中央領域の少なくとも一部の形状を有する差込治具を前記隙間に挿入して、前記第1内側治具及び前記第2内側治具により前記素体を前記外側治具の前記凹部の壁面に押し付けることにより、前記素体の立設方向上方の隅部に前記蓋嵌入部の隅部及び前記段差部を形成する差込治具挿入工程と、を含む箱体の製造方法。
【請求項2】
前記第1内側治具の内側平面である第1内側平面は前記素体の立設方向下方に向かうほど前記第2内側治具に近づくテーパ面となっており、前記第2内側治具の内側平面である第2内側平面は前記素体の立設方向下方に向かうほど前記第1内側治具に近づくテーパ面となっており、
前記差込治具は、前記第1内側平面に平行な第1外側平面と、前記第2内側平面に平行な第2外側平面とを有し、
前記差込治具挿入工程において、前記差込治具は、前記第1外側平面を前記第1内側平面に摺接させるとともに、前記第2外側平面を前記第2内側平面に摺接させて、前記差込治具を前記隙間に挿入する、請求項1に記載の箱体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱体に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の物品を収容可能な箱体として、有底筒状の本体の開口に蓋を取り付けたものが広く用いられている。特許文献1には、本体の隅部を肉厚な円弧状にしつつ、開口端の隅部の内側面を切り欠いて段差部を形成した構成が開示されている。当該構成では、本体の隅部を肉厚とすることで機械的強度を向上させるとともに、段差部により蓋が本体の内部に入り込みすぎることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成において、開口端の隅部の内側面を切り欠く加工は加工コストが高く、加工の難易度も高い。また、特許文献1に開示の構成では、隅部を肉厚とすることで重量が増加するため、軽量化の要請に反する。また、肉厚な隅部の外側面は曲率半径の小さい曲面となっているため、高い成形精度を維持するには手間がかかる。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、低コストで成形できて軽量化の要請に応えることができるとともに、成形精度の向上が図られる箱体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
略矩形状の底部と、該底部の外周縁から立設されるとともに立設方向の端部に開口を形成する4つの側壁部とを備える有底角型の本体と、前記開口を閉塞可能に構成された蓋とを備え、
前記本体の開口側端部には、前記蓋が嵌まり込む蓋嵌入部が形成されており、
前記本体の内部の前記蓋嵌入部よりも立設方向下方には、収容物を収容する収容部が形成されており、
前記蓋嵌入部の四隅を形成する4つの隅部において隣り合う隅部の間の4つの平面部の内側面及び外側面はそれぞれ、前記収容部の四隅を形成する4つの隅部において隣り合う隅部の間の4つの平面部の内側面及び外側面と面一に形成されており、
前記立設方向に垂直な断面において、前記収容部の隅部は円弧状をなしているとともに、前記蓋嵌入部の隅部は前記収容部の隅部よりも曲率半径の小さい円弧状をなしており、
前記開口側から見たとき、前記蓋嵌入部の隅部の外側面は、前記収容部の隅部の外側面よりも前記本体の外側に位置しているとともに、前記収容部の隅部の外側面と前記収容部の4つの前記平面部に沿った4つの仮想直線とで囲まれる領域内に位置しており、
前記収容部の隅部と前記蓋嵌入部の隅部との間には、前記蓋嵌入部に嵌まり込んだ前記蓋を支持する支持面を有する段差部が形成されている、箱体の製造方法であって、
前記本体の収容部の形状を前記立設方向の上端まで延長した形状を有する素体を用意する素体用意工程と、
前記本体の外側面の形状が転写された形状の壁面を有する凹部を含む外側治具の前記凹部に、前記素体を嵌め込む素体嵌め込み工程と、
前記本体の内側面の形状が転写された形状を有するとともに少なくとも前記立設方向に直交する幅方向又は奥行き方向における中央領域が取り除かれて分割された第1内側治具と第2内側治具とを含む内側治具を、前記第1内側治具と前記第2内側治具との間に隙間が形成されるように前記素体の内側に嵌め込む内側治具嵌め込み工程と、
前記取り除かれた中央領域の少なくとも一部の形状を有する差込治具を前記隙間に挿入して、前記第1内側治具及び前記第2内側治具により前記素体を前記外側治具の前記凹部の壁面に押し付けることにより、前記素体の立設方向上方の隅部に前記蓋嵌入部の隅部及び前記段差部を形成する差込治具挿入工程と、を含む箱体の製造方法にある。
【発明の効果】
【0007】
上記箱体においては、本体における蓋嵌入部の平面部は収容部の平面部と面一であるが、蓋嵌入部の円弧状の隅部の曲率半径が、収容部の円弧状の隅部の曲率半径よりも小さくなっている。そして、蓋嵌入部の隅部の外側面は、収容部の隅部の外側面よりも外側であって、収容部の平面部に沿った4つの仮想直線で囲まれる領域内に位置している。そして、蓋嵌入部の隅部と収容部の隅部との間に段差部を形成している。これにより、当該箱体の設置スペースを拡大することなく、蓋が本体内に入り込みすぎないようにする支持面を形成することができる。その結果、収容部の隅部は肉厚にする必要がないため、軽量化を図ることができるとともに、収容部の隅部の外側面の曲率半径を大きくできるため、高精度に成形することが容易となる。
【0008】
さらに、段差部を形成する際に切り欠き加工が不要となるため、加工コストを低減できる。また、収容部の隅部は蓋嵌入部の隅部に対して、本体内側に位置するため、当該箱体を密に配置したり、壁際に配置したりすると、収容部の隅部の外方に隙間が生じることとなるため、当該隙間に当該箱体を固定したり位置決めする部品を配置することができ、全体としての設置スペースが大きくなることを抑制できる。なお、収容部の内部において円弧状の隅部の近傍領域は収容に利用されにくいため、収容部の隅部の曲率半径が大きくなっても収容物への実質的な影響は限定的である。
【0009】
以上のごとく、本発明によれば、軽量化の要請に応えることができるとともに、成形精度の向上が図られる箱体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1における、本体に蓋を取り付ける前の状態の箱体の斜視図である。
【
図2】実施形態1における、箱体の本体の上面図である。
【
図3】実施形態1における、箱体の本体の第1の側面図である。
【
図4】実施形態1における、箱体の本体の第2の側面図である。
【
図8】
図3及び
図4のVIII-VIII線位置断面図である。
【
図10】
図2の本体の角部の一つを拡大した図である。
【
図11】実施形態1における、箱体の設置状態の一例を表す底面図である。
【
図12】実施形態1における、箱体の製造方法を説明する第1の斜視図である。
【
図13】実施形態1における、箱体の製造方法を説明する第2の斜視図である。
【
図15】
図14における、差込治具を挿入した状態のXIV-XIV線位置断面図である。
【
図17】
図16における、差込治具を挿入した状態のXVI-XVI線位置断面図である。
【
図18】変形形態1における、箱体の製造方法に使用する内側治具及び差込治具の斜視図である。
【
図19】変形形態2における、箱体の製造方法に使用する内側治具及び差込治具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前記立設方向における前記蓋嵌入部の高さは、前記蓋の厚さと一致していることが好ましい。この場合には、蓋嵌入部の上端面と蓋の上面とを面一にすることができる。
【0012】
(実施形態1)
1.箱体100の構成
上記箱体の実施形態について、
図1~
図11を用いて説明する。
本実施形態の箱体100は、
図1に示すように、略矩形状の底部10と、底部10の外周縁11から立設した側壁部20とを有する本体1と、蓋2とからなる。本体1の外形形状は、
図2に示すように、底部10は略矩形状の角型であって矩形の角部に丸みをつけた形状である。側壁部20の立設方向Zの端部には開口30が形成されており、開口30は蓋2により閉塞可能に構成されている。
【0013】
本実施形態では、底部10の面方向のうち底部10の一辺に平行な方向を幅方向Xとし、底部10の面方向のうち幅方向Xに直交する方向を奥行き方向Yとする。そして、側壁部20の立設する方向を立設方向Zとする。Zは幅方向Xと奥行き方向Yとに直交する方向である。
【0014】
本実施形態の箱体100を形成する材料は金属材料であって、箱体100に収容する収容物の性質、箱体100の使用環境、形成材料の成形性などを考慮して適宜選択することができる。例えば、電池のケースとして使用する場合は、耐腐食性や溶接性などを考慮してステンレス鋼、鉄鋼、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、インコネル(登録商標)などのニッケル基合金などとすることができる。
【0015】
図6に示すように、本体1の開口30側の端部(立設方向Z上方の端部)には、蓋2が嵌まり込む蓋嵌入部41が形成されており、本体1の内部の蓋嵌入部41よりも立設方向Z下方には、収容物を収容する収容部42が形成されている。収容物は限定されないが、例えば、リチウムイオン電池などの二次電池やキャパシタなどの電気部品とすることができる。
【0016】
図1、
図3、
図4及び
図8に示すように、本体1の蓋嵌入部41は四隅を形成する4つの隅部411と、隣り合う隅部411を繋ぐ平面部412とを有し、隅部411はそれぞれ円弧状に形成されている。また、
図1、
図3、
図4及び
図9に示すように、本体1の収容部42は四隅を形成する4つの隅部421と、隣り合う隅部421を繋ぐ平面部422とを有し、隅部421はそれぞれ円弧状に形成されている。そして、蓋嵌入部41の4つの平面部412の内側面412aは、本体1の4つの平面部422の内側面422aと面一となっており、蓋嵌入部41の4つの平面部412の外側面は、本体1の4つの平面部422の内側面422aと面一となっている。
【0017】
一方、
図8に示すように、立設方向Zに垂直な断面において、収容部42の隅部421は所定の曲率半径の円弧状をなしているとともに、蓋嵌入部41の隅部411は収容部42の隅部421よりも曲率半径の小さい円弧状をなしている。より詳細には、蓋嵌入部41の隅部411の内側面411aの曲率半径は、収容部42の隅部421の内側面421aの曲率半径よりも小さくなっているとともに、蓋嵌入部41の隅部411の外側面411bの曲率半径は、収容部42の隅部421の外側面421bの曲率半径よりも小さくなっている。
【0018】
このように、蓋嵌入部41の隅部411の曲率半径を、収容部42の隅部421の曲率半径よりも小さくすることで、蓋嵌入部41及び収容部42の各隅部の中央位置を幅方向Xに対して45°傾斜したCL方向で切断した断面を表す
図5に示すように、蓋嵌入部41の隅部411の内側面411aが収容部42の隅部421の内側面421aよりも本体1の外側の位置に位置することとなる。その結果、蓋嵌入部41の隅部411と収容部42の隅部421との間に段差部43が形成される。そして、開口30側から見たとき、
図2及び
図10に示すように、段差部43の上面431は開口30内に位置している。これにより、
図7に示すように、段差部43の上面431は、蓋嵌入部41に入り込んだ蓋2に当接して支持する支持面431となる。蓋2は当該支持面431により支持されることにより、蓋2は支持面431よりも下方の収容部42に落ち込むことが防止される。
【0019】
上述のように、蓋嵌入部41の隅部411の曲率半径が、収容部42の隅部421の曲率半径よりも小さければよく、それぞれの曲率半径は特定の数値範囲に限定されない。本実施形態では、蓋嵌入部41における隅部411の内側面411aの曲率半径を2.0mmとし、収容部42における隅部421の内側面421aの曲率半径を2.2mmとしている。収容部42における隅部421の内側面421aの曲率半径が、蓋嵌入部41における隅部411の内側面411aの曲率半径の1.1倍あれば、段差部43における支持面431による蓋2を支持する作用を発揮することができる。なお、本実施形態では、本体1を形成する金属板の厚さは約1.0mmとしている。
【0020】
そして、開口30側から見たとき、
図10に示すように、蓋嵌入部41の隅部411の外側面411bは、収容部42の隅部421の外側面421bよりも本体1の外側に位置しているとともに、外側面421bと収容部42の平面部422に沿った4つの仮想直線422cとで囲まれる領域S内に位置している。そのため、蓋嵌入部41の隅部411は幅方向X及び奥行き方向Yにおいて、収容部42の平面部422よりも外側に突出することがない。これにより、
図11に示すように、複数の箱体100を互いの平面部422が接するように密に配置したとき、隣り合う4つの箱体100における収容部42の隅部421の外側面421bに囲まれた隙間Qが形成されることとなる。当該隙間Qに箱体100(本体1)を固定する固定治具などを配置することができる。これにより、設置スペースを有効活用することができる。
【0021】
図5に示すように、立設方向Zにおける蓋嵌入部41の高さは、蓋2の厚さTと一致している。これにより、
図1及び
図5において矢印Aで示すように蓋2を蓋嵌入部41に嵌め込んだときに、
図6及び
図7に示すように、蓋2の上面が蓋嵌入部41の上面と面一となる。なお、蓋2の平面視外形は、
図2に示す蓋嵌入部41全体の内側面の形状(平面部412の内側面412aと蓋嵌入部41の隅部411の内側面411aとをつないだ形状)と略同一である。
【0022】
2.箱体100の製造方法
本実施形態の箱体100の製造方法について、
図12~
図17を参照して説明する。まず、
図12に示すように、箱体100における本体1の素体1pを用意する。素体1pは金属製の有底筒状をなしており、本体1の収容部42の形状を上端まで延長した形状を有する。したがって、素体1pの各隅部の曲率半径は、本体1の収容部42の各隅部421の曲率半径と同等となっている。素体1pの成形方法は限定されず、絞り加工、インパクト成形、折曲・溶接などにより成形できるが、本実施形態では、素体1pは金属板の絞り加工により成形したものを用いている。なお、箱体100における蓋2は、金属板を
図1に示す蓋2の形状に切り出すことにより成形することができる。
【0023】
次に、
図13に示す外側治具210を用意する。外側治具201は、素体1pが嵌め込まれる凹部211を有しており、凹部211の壁面212は、
図1に示す本体1の外側面の形状が転写された形状をなしている。そして、
図12の矢印Aで示すように、素体1pを外側治具210の凹部211に嵌め込む。
【0024】
その後、
図13に示すように、内側治具220と差込治具230を用意する。内側治具220は、内側治具220の外形は、
図1に示す本体1の内側面の形状が転写された形状を有するとともに、幅方向Xにおける中央領域が取り除かれており、第1内側治具221と第2内側治具222とに二分割されている。第1内側治具221と第2内側治具222との間には隙間220aが形成されている。第1内側治具221の内側平面221aは下方に向かうほど第2内側治具222に近づくテーパ面となっており、第2内側治具222の内側平面222aは内側平面221aとは逆に下方に向かうほど第1内側治具221に近づくテーパ面となっている。差込治具230は、内側治具220において取り除かれた中央領域を有する。差込治具230は、内側治具220の内側平面221a、222aと平行な外側平面231、232を有する。
【0025】
そして、
図13に示すように、外側治具210の凹部211に嵌め込まれた素体1pの内側に内側治具220を嵌め込む。
図14に示すように、幅方向Xに垂直な断面では、外側治具210の凹部211に嵌め込まれた素体1pと凹部202の壁面212との間には実質的に隙間がない状態となっている。
【0026】
一方、
図16に示すように、素体1pの隅部において、幅方向Xに対して45°傾斜したCL方向での断面では、外側治具210の凹部211に嵌め込まれた素体1pと外側治具210の壁面212との間には、
図5に示す蓋嵌入部41の隅部411の外形が転写された部分212a及び段差部43の外形が転写された部分212bとの間に隙間213が形成されており、
図5に示す収容部42の隅部421の外形が転写された部分212cとの間には実質的に隙間がない状態となっている。
【0027】
次に、内側治具220の隙間220aに差込治具230を挿入する。これにより、
図15に示すように、差込治具230の外側平面231、232が内側治具220の内側平面221a、222aと摺接して、第1内側治具221及び第2内側治具222を奥行き方向Yの外側に付勢する。これにより、
図15に示す幅方向Xに垂直な断面では、第1内側治具221及び第2内側治具222が素体1pを外側治具210の凹部211の壁面212に押し付ける。
【0028】
一方、
図16に示す素体1pの隅部におけるCL方向での断面では、
図17に示すように、第1内側治具221が素体1pを外側治具210の壁面212(212a、212b、212c)に押し付ける。また、図示しないが第2内側治具222も同様に、素体1pを外側治具210の壁面212(212a、212b、212c)に押し付ける。これにより、
図16に示す隙間213が喪失して、
図17に示すように、素体1pの立設方向Z上方の隅部に蓋嵌入部41の隅部411及び段差部43が形成され、
図1に示す本体1が形成される。
【0029】
本実施形態では、内側治具220として、
図13に示すように、幅方向Xにおける中央領域が取り除いて分割した第1内側治具221と第2内側治具222とを用いたが、これに替えて、
図18に示す変形形態1のように、奥行き方向Yにおける中央領域が取り除いて分割した第3内側治具223と第4内側治具224とを用いてもよい。第3内側治具223の内側平面223aと第4内側治具224の内側平面224aはそれぞれ下方に向かうほど互いに近づくテーパ面となっている。そして、差込治具230の外側平面231、232は内側治具220の内側平面223a、224aに沿ったテーパ面となっている。当該変形形態1においても、上述の実施形態1の場合と同様に、内側治具220の隙間220aに差込治具230を挿入することにより、素体1pが外側治具210の壁面212に押し付けられて壁面212に沿った形状に成形されて、
図1に示す本体1が形成される。
【0030】
また、
図18に示す変形形態1に替えて、
図19に示す変形形態2のように、内側治具220として、幅方向X及び奥行き方向Yにおける中央領域を取り除いて、十字形状の隙間220aを形成することにより、第5内側治具225、第6内側治具226、第7内側治具227、第8内側治具228の四分割したものを用いるとともに、差込治具230として、ピン形状ものと用いてもよい。当該変形形態2においても、上述の実施形態1及び変形形態1の場合と同様に、内側治具220の隙間220aに差込治具230を挿入することにより、
図1に示す本体1が形成される。
【0031】
3.作用効果
次に、本実施形態の箱体100における作用効果について、詳述する。
本実施形態の箱体100では、本体1における蓋嵌入部41の平面部412は収容部42の平面部422と面一であるが、蓋嵌入部41の円弧状の隅部411の曲率半径が、収容部42の円弧状の隅部421の曲率半径よりも小さくなっている。そして、蓋嵌入部41の隅部411の外側面411bは、収容部42の隅部411の外側面411bよりも本体1の外側であって、収容部42の平面部422に沿った4つの仮想直線422cで囲まれる領域S内に位置している。そして、蓋嵌入部41の隅部411と収容部42の隅部421との間に段差部43を形成している。これにより、当該箱体100の設置スペースを拡大することなく、蓋2が本体1内に入り込みすぎないようにする支持面431を形成することができる。その結果、収容部42の隅部421は肉厚にする必要がないため、軽量化を図ることができるとともに、収容部42の隅部421の外側面421bの曲率半径を大きくできるため、高精度に成形することが容易となる。
【0032】
さらに、段差部43を形成する際に切り欠き加工が不要となるため、加工コストを低減できる。また、収容部42の隅部421は蓋嵌入部41の隅部411に対して、本体1内側に位置するため、当該箱体100を密に配置したり、壁際に配置したりすると、収容部42の隅部421の外方に隙間Qが生じることとなるため、当該隙間Qに当該箱体100を固定したり位置決めする部品を配置することができ、全体としての設置スペースが大きくなることを抑制できる。なお、収容部42の内部において円弧状の隅部421の近傍領域は収容に利用されにくいため、収容部42の隅部421の曲率半径が大きくなっても収容物への実質的な影響は限定的である。
【0033】
また、本実施形態では、立設方向Zにおける蓋嵌入部41の高さHは、蓋2の厚さTと一致している。これにより、蓋嵌入部41の上端面と蓋2の上面とを面一にすることができる。
【0034】
以上のごとく、本発明によれば、低コストで成形できて軽量化の要請に応えることができるとともに、成形精度の向上が図られる箱体を提供することができる。
【0035】
本発明は上記各実施例及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
100 箱体
1 本体
2 蓋
10 底部
11 外周縁
20 側壁部
30 開口
41 蓋嵌入部
411 蓋嵌入部の隅部
411a 蓋嵌入部の隅部の内側面
411b 蓋嵌入部の隅部の外側面
412 蓋嵌入部の平面部
412a 蓋嵌入部の平面部の内側面
412b 蓋嵌入部の平面部の外側面
42 収容部
421 収容部の隅部
421a 収容部の隅部の内側面
421b 収容部の隅部の外側面
422 収容部の平面部
422a 収容部の平面部の内側面
422b 収容部の平面部の外側面
422c 仮想直線
43 段差部
431 支持面
210 外側治具
220 内側治具
230 差込治具
【要約】
【課題】低コストで成形できて軽量化の要請に応えることができるとともに、成形精度の向上が図られる箱体を提供する。
【解決手段】箱体100は、有底角型の本体1の開口30側端部に蓋嵌入部41を有し、蓋嵌入部41の下方に収容部42を有する。蓋嵌入部41の平面部412の内側面412a及び外側面412bは収容部42の平面部422の内側面422a及び外側面422bと面一である。蓋嵌入部41の隅部411は収容部42の隅部421よりも曲率半径の小さい円弧状をなす。開口30側から見て、蓋嵌入部41の隅部411の外側面411bは収容部42の隅部421の外側面421bよりも本体1の外側に位置し、外側面421bと収容部42の平面部422に沿った4つの仮想直線422cとで囲まれる領域S内に位置する。収容部42の隅部421と蓋嵌入部41の隅部411との間には蓋を支持する支持面431を有する段差部43が形成されている。
【選択図】
図10