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特許7570161個別最適教育支援システム、個別最適教育支援方法、及び個別最適教育支援プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】個別最適教育支援システム、個別最適教育支援方法、及び個別最適教育支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/20 20120101AFI20241011BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
G06Q50/20
G09B19/00 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2024081358
(22)【出願日】2024-05-18
【審査請求日】2024-05-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524189579
【氏名又は名称】井上 峻之介
(74)【代理人】
【識別番号】100181490
【弁理士】
【氏名又は名称】金森 靖宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 峻之介
【審査官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-223338(JP,A)
【文献】特開2019-066698(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113704610(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G09B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の言動に関する言動情報を取得する言動情報取得手段と、
前記言動情報取得手段により取得される前記言動情報に基づいて、前記対象者の行動特性を分析する分析手段と、
前記分析手段により分析された前記対象者の行動特性に応じた学習方法を推薦する学習方法推薦手段と
を備え、
前記行動特性には、前記対象者のパーソナル特性、認知特性及びスキル特性が含まれる
個別最適教育支援システム。
【請求項2】
前記パーソナル特性にはモチベーション、判断方法、報酬特性及び無報酬時行動特性が少なくとも含まれ、前記認知特性には五感特性及び言語特性が少なくとも含まれ、前記スキル特性にはソフトスキル特性及びハードスキル特性が含まれる
請求項1に記載の個別最適教育支援システム。
【請求項3】
前記ソフトスキル特性には、運動能力、共同注意力、記憶力、及びコントロール力が少なくとも含まれる請求項2に記載の個別最適教育支援システム。
【請求項4】
前記対象者の身体情報を取得する身体情報取得手段をさらに備え、
前記分析手段は、前記身体情報取得手段により取得される前記対象者の身体情報を考慮して前記運動能力、前記共同注意力、前記記憶力及び/又は前記報酬特性を分析する
請求項3に記載の個別最適教育支援システム。
【請求項5】
前記分析手段は、所定の自然言語解析を用いて前記言動情報を解析して特定され得る前記対象者の行為内容に応じて前記認知特性、前記判断方法、前記モチベーション、前記コントロール力、及び/又は前記無報酬時行動特性を分析する
請求項3に記載の個別最適教育支援システム。
【請求項6】
前記分析手段による前記認知特性、前記判断方法及び前記モチベーションの分析において、前記自然言語解析を用いて前記言動情報を解析して得られる言語について付与される個別タグと、前記対象者の行為内容について付与される全体タグとが使用される
請求項5に記載の個別最適教育支援システム。
【請求項7】
前記学習方法推薦手段は、
前記対象者の目標を少なくとも含む基本情報を取得する基本情報取得手段と、
前記基本情報取得手段により取得された前記目標を前記対象者が達成するために必要な目標スキル特性を所定の数値で算出する目標スキル算出手段と、
前記目標に応じて学習カテゴリを選択する学習カテゴリ選択手段と、
前記選択される前記学習カテゴリに対応する教材から、前記目標スキル算出手段により算出された前記目標スキル特性に応じた教材を選択する教材選択手段と
を有する請求項4に記載の個別最適教育支援システム。
【請求項8】
前記教材選択手段は、前記分析手段により分析された前記対象者の前記認知特性に応じて前記教材を選択する
請求項7に記載の個別最適教育支援システム。
【請求項9】
前記学習方法推薦手段は、前記分析手段により分析された前記対象者の前記パーソナル特性に応じた指導方法及び/又は指導者を選択する指導形態選択手段をさらに有する
請求項7に記載の個別最適教育支援システム。
【請求項10】
前記学習方法推薦手段は、前記目標スキル算出手段により算出された前記目標スキル特性のうち、前記対象者が所望のコミュニティにおいて前記目標を達成することを選択した際に必要となる前記目標スキル特性の全てを前記対象者の現在の前記スキル特性が上回っていた場合、前記目標に代えて新たな目標を推薦する目標変更推薦手段をさらに有する
請求項7に記載の個別最適教育支援システム。
【請求項11】
前記分析手段は、前記目標スキル算出手段により算出される前記目標スキル特性を前記教材選択手段により選択された前記教材を使用した学習前と学習後とで比較し、比較された前記目標スキル特性の変化と、前記対象者と同じコミュニティで前記教材と同じ教材を使用して学習した人の目標スキル特性の変化との比較に基づいて、前記対象者の自己更新力の有無を分析する
請求項7に記載の個別最適教育支援システム。
【請求項12】
前記学習方法推薦手段により推薦された前記学習方法に基づいて学習した前記対象者の学習内容を記録する学習内容記録手段をさらに備え、
前記分析手段は、前記学習内容記録手段により記録される前記学習内容に応じて前記対象者の前記行動特性を更新する行動特性更新手段を有する
請求項7に記載の個別最適教育支援システム。
【請求項13】
前記行動特性更新手段は、前記対象者の学習時において前記身体情報取得手段により取得される前記対象者の身体情報をも考慮して前記対象者の行動特性を更新する
請求項12に記載の個別最適教育支援システム。
【請求項14】
前記行動特性には、前記対象者の自己更新力が含まれる
請求項13に記載の個別最適教育支援システム。
【請求項15】
受信手段が、通信ネットワークを介して対象者の言動に関する言動情報を受信するステップ、
分析手段が、受信した前記言動情報に基づいて、前記対象者のパーソナル特性、認知特性及びスキル特性を分析するステップ、
学習方法推薦手段が、分析された前記対象者のパーソナル特性、認知特性及びスキル特性に応じた学習方法を推薦するステップ
から構成される個別最適教育支援方法。
【請求項16】
対象者の言動に関する言動情報の入力を受け付ける処理と、
受け付けられる前記言動情報に基づいて、前記対象者のパーソナル特性、認知特性及びスキル特性を分析する処理と、
分析された前記対象者のパーソナル特性、認知特性及びスキル特性に応じた学習方法を推薦する処理と
をコンピュータに実行させる個別最適教育支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個別最適教育支援システム、個別最適教育支援方法、及び個別最適教育支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発達障害のある児童や、幼児や、小学校低学年の児童等の対象者を預かる施設側と対象者の保護者側との間において、該対象者の情報を共有するシステムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
これに関し、上記システムでは、施設側の業務効率化を図ることに重きが置かれ、対象者の育成支援という観点に課題があることが指摘されている(特許文献1参照)。そこで、該対象者の育成を支援し得る育成支援システムが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6297712号公報
【文献】実用新案登録第3228155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された育成支援システムでは、対象者側と施設側との間で該対象者の成長情報や活動情報などの共有化が図られると共に、成長情報や活動情報とに基づいて、対象者の成長に寄与した種類の活動の抽出等の分析に係る分析情報が生成され、該生成された分析情報に基づいて、分析対象の対象者に対し、今後の活動等の助言に関する助言情報が生成される。これによって、対象者の育成支援が可能になるとされている(特許文献1参照)。
【0006】
一方、例えば発達障害のある対象者やその保護者あるいは指導者などの支援者との間では、これら支援者が対象者を正しく理解し切れていないことが多く、対象者のためにどのような支援を行うのが適切なのか困惑する場面が多い。
【0007】
これは、対象者の言動や行動を支援者が主観で捉え、客観的な指標(要素)で評価することができていないことによるものであると考えられる。これは何も、発達障害のある児童と児童を預かる施設側との間のみならず、例えば会社における上司と部下との間、人事と社内における評価、自己分析など、社会のあらゆるシーンで見られるものであると考えられる。
【0008】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、対象者を客観的な要素に基づいて分析し、対象者の特性に応じた学習方法を推薦することを可能にする個別最適教育支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明に係る個別最適教育支援システムは、対象者の言動に関する言動情報を取得する言動情報取得手段と、前記言動情報取得手段により取得される前記言動情報に基づいて、前記対象者の行動特性を分析する分析手段と、前記分析手段により分析された前記対象者の行動特性に応じた学習方法を推薦する学習方法推薦手段とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る個別最適教育支援システムによれば、対象者を客観的な要素に基づいて分析し、対象者の特性に応じた学習方法を推薦することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の実施形態における個別最適教育支援システムを含む全体構成図である。
図2図2は、本開示の実施形態における個別最適教育支援システムの概略構成図である。
図3図3は、本開示の実施形態における個別最適教育支援システムにおける分析手段による行動特性の分析に際して予め用意されるタグの一例を示す模式図である。
図4図4は、本開示の実施形態における個別最適教育支援システムにおける分析手段による行動特性の分析に際して予め用意されるタグの一例を示す模式図である。
図5図5は、本開示の実施形態における個別最適教育支援システムにおいて分析される対象者の行動特性を、認知特性、パーソナル特性、及びスキル特性に分けて表したグラフ図である。
図6図6は、図5における認知特性を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。
図7図7は、図5におけるパーソナル特性を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。
図8図8は、図5におけるスキル特性を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。
図9図9は、図8におけるハードスキルに含まれる言語を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。
図10図10は、図8におけるハードスキルに含まれる数学を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。
図11図11は、図8におけるハードスキルに含まれる物理を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。
図12図12は、図8におけるハードスキルに含まれる化学を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。
図13図13は、図8におけるハードスキルに含まれる生物を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。
図14図14は、図8におけるハードスキルに含まれる地理を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。
図15図15は、図8におけるハードスキルに含まれる歴史を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。
図16図16は、図8におけるハードスキルに含まれる公民を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。
図17図17は、図8におけるハードスキルに含まれる芸術を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。
図18図18は、図8におけるハードスキルに含まれる情報を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。
図19図19は、本開示の実施形態における個別最適教育支援システムによる処理の流れを示す全体フロー図である。
図20図20は、図19における「行動特性の分析」に含まれる具体的な処理の流れを示す詳細フロー図である。
図21図21は、図20のステップ24において「NO」が選択された後の処理を示す詳細フロー図である。
図22図22は、図20のステップ22において「NO」が選択された後の処理を示す詳細フロー図である。
図23図23は、図22のステップ41において「NO」が選択された後の処理を示す詳細フロー図である。
図24図24は、図19における「学習方法の推薦」に含まれる具体的な処理の流れを示す詳細フロー図である。
図25図25は、推薦された学習方法による学習が終了したタイミングの後の処理を示す詳細フロー図である。
図26図26は、図20から図23及び図25におけるスキル特性の分析処理によって得られる対象者の分析結果の一例を示すレーダーチャートである。
図27図27は、図25における「自己更新力の分析」処理によって得られる対象者の自己更新力の変化の一例を表すグラフである。
図28図28は、図6に示される認知特性を構成する各五感要素及び言語要素の割合を視覚的に示した円グラフである。
図29図29は、図7に示されるパーソナル特性を構成する4つの要素ごとに、各要素を構成する要素の割合を視覚的に示した円グラフである。
図30図30は、本開示の実施形態における個別最適教育支援システムを構成する支援装置が行う処理を実現するハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する形態に限定されることはなく、技術思想を逸脱しない範囲において種々変形を行なって実施することが可能である。
【0013】
[本開示の個別最適教育支援システムの全体構成について]
本開示の個別最適教育支援システム10(以下、単に「本システム」という場合がある。)を含む全体構成について図1を参照して説明する。図1に示されるように、個別最適教育支援システム10と、対象者端末50と、支援者端末100とがネットワークを介して接続されている。
【0014】
個別最適教育支援システム10については後述するが、個別最適教育支援システム10による各処理は、例えばパーソナルコンピューター(以下「PC」という。)やサーバーコンピュータ、あるいはクラウドサーバーによって実現され得る。対象者端末50,及び支援者端末100はそれぞれ、例えばパーソナルコンピューター(以下「PC」という。)、ノートブックPC、タブレット型PC、スマートフォンなどの情報処置装置である。
【0015】
なお、本実施形態において、対象者端末50及び支援者端末100は、対象者および支援者がそれぞれ1台ずつ所有していても、対象者端末50又は支援者端末100を対象者あるいは支援者が共用するものであってもよい。また、場合によっては、個別最適教育支援システム10が対象者端末50及び支援者端末100の機能を備えるものであって、対象者又は支援者が個別最適教育支援システム10に対して情報を直接的に入力したり、個別最適教育支援システム10から出力される情報を直接的に受け取ったりするものであってもよい。
【0016】
[本開示の個別最適教育支援システムの構成について]
図2は、本開示の実施形態における個別最適教育支援システムの概略構成図である。本実施形態における個別最適教育支援システム10の概略構成について図2を用いて以下に説明する。
【0017】
個別最適教育支援システム10は、言動情報取得手段11と、身体情報取得手段12と、分析手段13と、学習方法推薦手段14と、学習内容記憶手段15と、行動特性更新手段16とを備える。これらの各手段について以下に説明する。
【0018】
言動情報取得手段11は、対象者の言動に関する言動情報を取得する。本実施形態において「対象者」とは、何らかの支援を必要とする者をいい、例えば発達障害を持つ者や、学習支援を要する者や、介護を必要とする者や、あるいは単に第三者による手助けを受ける者などをいう。これらの対象者に対して支援や手助けを行う者を本実施形態において「支援者」という。また「言動」とは、対象者の発言や対象者の行動を意味する。そして「言動情報」には、対象者の発言に関する情報(以下「発言情報」という。)や行動に関する情報(以下「行動情報」という。)が含まれる。なお、例えばろうあ者など何らかの理由によって自ら言葉を発することが困難な対象者の場合、発言情報は、その対象者を支援する支援者の発言に基づくものであってもよい。さらに、行動情報には、対象者自らの行動に関するものだけに限定されず、支援者が対象者の行動を観察した様子を記録した情報(以下「行動記録」という。)も含まれ得る。なお、対象者自身が自ら所有する情報端末を介して自身について入力したコメントも行動記録に含まれる。
【0019】
言動情報取得手段11は、例えば上述の対象者端末50などを介して、対象者による発言情報や行動情報を言動情報として取得する。対象者による発言情報は、対象者が対象者端末50を介して入力するテキスト情報であっても、対象者端末50に備わるマイクなどの音声入力デバイスを介して取得される音声を基に変換されるテキスト情報であってもよい。また、言動情報取得手段11は、支援者が対象者に代わってその対象者の様子を観察した記録内容などを言動情報として上述の支援者端末100などを介して取得してもよい。なお、言動情報のうち、自然言語で記載された情報を特に「言語情報」とする。
【0020】
言動情報としては、例えば日記アプリを介して対象者が入力するテキスト情報や、SNS(Social Networking Service)を介して入力したコメント情報などが好適に用いられ得る。本システムは、テキスト情報やコメント情報などのデータを例えばAPI(Application Programming Interface)連携などによって、対象者の使用する日記アプリやSNSを介して、取得することができる。また、支援者が、上述の日記アプリやSNSなどを介して対象者の行動を記録する成長記録や、対象者の発言を記録する議事録なども言動情報として好適に用いられ得る。
【0021】
なお、言動情報取得手段11は、言動情報の取得と同時に、言動情報により特定される対象者の行動に要した時間に関する情報(以下「時間情報」という。)を取得する。この時間情報は、後述する分析手段13による対象者の認知特性の分析等に用いられ得る。時間情報については後述する分析手段13の説明において詳細に記述する。
【0022】
身体情報取得手段12は、対象者の身体情報を取得する。「身体情報」は、対象者の身体から得られる情報をいい、例えば対象者の身振り・手振りなどの身体の動きや、対象者の表情や視線の動きや、あるいは、脳波・心拍数などに関する情報をいう。身体情報取得手段12としては、対象者の様子を撮影する撮影手段、対象者の身体の動き、特に全身の筋運動を検出するウェアラブル筋電計測デバイス、脳機能を計測可能な脳機能計測技術として、単一分子を検出する単分子計測に機械学習を用いた解析手法や各種の脳波計測技術などが好適に用いられ得る。
【0023】
分析手段13は、言動情報取得手段11により取得される言動情報に基づいて、対象者の行動特性を分析する。行動特性とは、対象者の取り得る行動に関する特有の性質を意味する。この行動特性には、対象者のパーソナル特性、認知特性及びスキル特性が含まれる。
【0024】
分析手段13は、対象者の言動情報を本システムに入力(インプット)される入力情報として、対象者の行動特性を、本システムから出力(アウトプット)される出力情報として分析を行う。出力情報である行動特性(分析結果)として所望の数値を採用する。具体的には、各行動特性には、行動特性毎に複数の要素が含まれ得る。例えば、認知特性であれば、後述のように「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」「言語」の6つの要素が含まれる。対象者の全体としての認知特性を100(%)に設定した場合、上記6つの各要素の合計が100(%)になるように、対象者の言動情報に基づいた分析結果に応じて、各要素の割合が決定され得る。例えば、分析対象の対象者の言動情報を分析した結果、その言動情報から「視覚」の要素が強い傾向にある場合、「視覚」の数値(割合)は他の認知特性に比べて高くなる。もちろん、人が物事を認知する上で、「視覚」のみで判断していることは健常者であれば通常はあり得ないが、各要素を割合で示すことにより、対象者の認知の傾向を把握することができる。他の行動特性においても同様に、上述の認知特性の例のように分析され得る。
【0025】
パーソナル特性は、所定の行動における対象者の思考のタイプや癖、心理的な特性、感情のタイプなど対象者の個性を示す行動特性である。パーソナル特性には対象者のモチベーション、判断方法、報酬特性及び無報酬時行動特性が少なくとも含まれる。
【0026】
判断方法は、対象者が所定の行動をとる上でどのような基準で判断(決定)するかを示す特性である。判断方法には、抽象的基準に基づく判断方法と具体的基準に基づく判断方法とがある。「抽象的基準に基づく判断方法」とは、対象者自身が持っている知識に基づいて判断する方法をいう。具体的には、例えば、対象者が教科書に書かれてある「エンターキーを押すと入力を確定します。」という記述を理解して記憶することで、入力を確定する方法を判断することができる。これに対して「具体的基準に基づく判断方法」とは、対象者自身の過去の経験に基づいて判断する方法をいう。具体的には、例えば、対象者がコンピューターゲームをしている兄のエピソードを記憶として保持していることから、エンターキーを押すと入力が確定されると判断することができる。
【0027】
報酬特性は、対象者が所定の行動をとる際又は所定の行為を受ける際に対象者が感じる感じ方を示す特性であり、対象者の脳内に分泌される神経伝達物質やホルモンの分泌量によって分析され得る。報酬特性には、刺激、愛情、幸福が含まれる。「刺激」はドーパミンの分泌状況により、「愛情」はオキシトシンの分泌状況により、また、「幸福」はセロトニンの分泌状況によってそれぞれ分析され得る。例えば単一分子を検出する単分子計測に機械学習を用いた解析手法(大阪大学研究専用ポータルサイト「Resou」 『世界初!量子計測とAIによる新手法!神経伝達物質の高速検出・識別に成功』2020.7.9 https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20200709_1)などを用いることにより、これらの神経伝達物質を検出することが可能である。
【0028】
無報酬時行動特性は、報酬が得られないときに対象者がとる行動に関する特性であり、無報酬時行動特性には攻撃的特性とうつ的特性とが含まれる。無報酬時行動特性は、支援者による対象者の行動記録から分析され得る。具体的には、対象者がとる特定の行動(例えばテレビを見る行為など)を支援者により禁止された際に、対象者がとる次の行動(例えば怒るなど)によって分析され得る。
【0029】
認知特性とは、対象者の所定の行動から分析され得る、対象者が物事を認知する際の特性をいう。認知特性には五感特性及び言語特性が少なくとも含まれ、「五感特性」には、視覚特性、聴覚特性、触覚特性、味覚特性、嗅覚特性が含まれる。これらの五感特性は、対象者の発言や行動記録に基づいて分析され得る。
【0030】
スキル特性とは、対象者に固有の能力をいう。スキル特性にはソフトスキル特性及びハードスキル特性が含まれる。このうち、ソフトスキル特性には、運動能力、共同注意力、記憶力、コントロール力及び自己更新力が少なくとも含まれる。
【0031】
運動能力は、対象者の身体の動きから捉えられる能力を示す特性であり、対象者が所定のスポーツをする際の身体の動きや、学習時にノートを取る際の手の動きなどから分析され得る。
【0032】
共同注意力は、対象者が相手にどれだけ共感できるのかの能力を示す特性であり、相手が悲しいときに対象者がそれを察知したり、相手が怒っているときに対象者がそのことを察知したりする能力をいう。共同注意力は、対象者の脳活動を測定することにより分析され得る。脳活動の測定には、所望の脳機能計測技術を用いる。
【0033】
記憶力は、対象者の学習を通して判定され得る特性であり、具体的には、所定の問題の正解率や例えば学習時における対象者のノートの取り方などから記憶力が分析され得る。
【0034】
コントロール力は、対象者自身による行動制御能力を示す特性であり、抑制力と切替力とが含まれる。コントロール力は、支援者の対象者に対する行動記録から判定される。具体的には、対象者がとる特定の行動(例えばテレビを見る行為など)を支援者により禁止された際に、対象者がとる次の行動(例えば従ってテレビを見るのを止め、その後切り替えて勉強したなど)によって判定される。
【0035】
分析手段13は、身体情報取得手段12により取得される対象者の身体情報を考慮して運動能力を分析することができる。その際に用いられる対象者の身体情報として、対象者の身体の動きや手の動きなどが好適に採用され得る。対象者の身体の動きや手の動きは、対象者の全身の筋活動を測定することにより行う。この筋活動の測定にはウェアラブル筋電計測デバイス(参考:国立研究開発法人科学技術振興機構ウェブサイト「投球時の手のひらの筋活動の計測に世界で初めて成功」、https://www.jst.go.jp/pr/announce/20191212/index.html)が好適に用いられる。運動能力の分析は以下の2つのステップによって行われる。まず初めに、対象者がある行動をしたときの手、腕、脚、足の4箇所の筋活動を測定する。次に、測定された対象者の筋活動を別の対象者の測定結果と比較することにより運動能力を算出する。より具体的には、筋活動の平均値との差分からそれぞれの箇所の筋活動が過緊張かどうか、低緊張かどうかを判定する。その結果、平均値に近ければ近いほど運動能力が高いと分析され得る。その際には、筋活動が過緊張の傾向にあるのか、低緊張の傾向にあるのかも含めて分析するのが望ましい。対象者の筋活動の値の平均値との差が0の場合は運動能力のスキルは例えば70と算出される。また、対象者の筋活動の値の平均値との差が正の場合は運動能力のスキルは例えば「{1-(対象者の筋活動の値-筋活動の平均値)÷(筋活動の最大値-筋活動の平均値)}×70」で算出され、対象者の筋活動値の平均値との差が負の場合は運動能力のスキルは例えば「{1-(対象者の筋活動の値-筋活動の平均値)÷(筋活動の最小値-筋活動の平均値)}×70」で算出される。スキルは、算出された結果が小数を含む場合は、その値を切り上げた整数で表される。
【0036】
「ノートに文字を書く」という行動をしたときの運動能力のスキルの判定の具体例を説明する。「ノートに文字を書く」ときの手の筋活動の平均値が0.3mv・最大値が3mv・最小値が0.1mv、腕の筋活動の平均値が0.6mv・最大値が6mv・最小値が0.2mv、脚の筋活動の平均値が0.2mv・最大値が2mv・最小値が0mv、足の筋活動の平均値が0.2mv・最大値が2mv・最小値が0mvであるとする。この時、対象者が「ノートに文字を書く」ときの手の筋活動が2mv、腕の筋活動が2.5mv、脚の筋活動が1mv、足の筋活動が1mvであった時、対象者の筋活動の平均値との差は手が+1.7mv、腕が+1.9mv、脚が+0.8mv、足が+0.8mvとなる。この時、運動能力[手]のスキルは「1―1.7÷(3-0.3)」×70より、26と算出され、運動能力[腕]のスキルは「1―1.9÷(6-0.6)」×70より、45と算出され、運動能力[脚]のスキルは「1―0.8÷(2-0.2)」×70より、39と算出され、運動能力[足]のスキルは「1―0.8÷(2-0.2)」×70より、39と算出される。また、既に対象者に運動能力のスキルの数値がある場合は、(既にある運動能力のスキルの数値+新たに算出した運動能力のスキルの数値)÷2を最終的な運動能力のスキルの数値とする。
【0037】
分析手段13は、身体情報取得手段12により取得される対象者の身体情報を考慮して共同注意力を分析することができる。その際に用いられる対象者の身体情報として、対象者の脳活動が好適に採用され得る。対象者の脳活動は、身体情報取得手段12としての脳波計を活用する。共同注意力の分析は、以下の3つのステップにより行う。まず初めに、対象者の視界に入り得る人がある行動をした時の対象者の目線の動きをアイトラッキングにより観測する。この時対象者の目線がその人を捉えたことが確認できなかった場合は共同注意力を0とする。一方で対象者の目線がその人を捉えたことを確認できたら、次のステップに移る。次に、対象者の目線がその人を捉えたときのミラーニューロンシステム(Mirror Neuron System(MNS))の反応を観察する。MNSの反応を観察するため、例えば脳の感覚運動野付近のμ波帯(8~13Hz)を脳波計により計測し、そのパワーの変化をMNSの活動強度の指標とする。最後に、MNSの活動の変化を別の対象者の測定結果と比較することにより共同注意力を算出する。共同注意力が高いか低いかは、MNSの活動の変化の平均値との差分から判定され、差分が大きければ大きいほど共同注意力が高いと判定され得る。
【0038】
視界に捉えた人が行動Aをしたとき、共同注意力のスキルが0以外の場合は次式のように算出される。
[式1]・・・{(Pd-Pv)÷Ps×10+50}×(Ap+0.5)
Pd:視界に捉えた人が行動Aをしたときの対象者のμ波のパワーが減少した割合
Pv:視界に捉えた人が行動Aをしたときのμ波のパワーが減少する割合の平均
Ps:視界に捉えた人が行動Aをしたときのμ波のパワーが減少する割合の標準偏差
Ap:視界に捉えた人が行動Aをしたときに対象者の共同注意力が0より大きい確率
【0039】
また、スキルは、算出された結果が小数を含む場合は、その値を切り上げた整数で表される。例えば、泣いている友達が対象者の視界に入り得る状況のときに、μ波のパワーが減少する割合の平均(Pv)が15%(0.15)で、μ波のパワーが減少する割合の標準偏差(Ps)が0.11、対象者の共同注意力が0より大きい確率(Ap)が90%(0.9)であるとする。このとき、アイトラッキングにより対象者の目線が泣いている友達を捉えたと判定された場合、まず対象者の共同注意力は0より大きいと判定される。次に、対象者のμ波のパワーが減少した割合(Pd)が20%(0.2)であると計測された場合、対象者の共同注意力のスキルは、{(0.2-0.15)÷0.11×10+50}×(0.9+0.5)より、76と算出される。また、既に対象者に共同注意力のスキルの数値がある場合は、(既にある共同注意力のスキルの数値+新たに算出した共同注意力のスキルの数値)÷2を最終的な共同注意力のスキルの数値とする。また、スキル算出の際には、対象者がどのような行動に対しての共同注意力のスキルが高くなるかも含めて分析するのが望ましい。
【0040】
分析手段13は、身体情報取得手段12により取得される対象者の身体情報を考慮して報酬特性を分析することができる。その際の用いられる対象者の身体情報として、対象者の脳内に分泌される神経伝達物質やホルモンなどが好適に採用され得る。神経伝達物質やホルモンとして、上述のドーパミンや、オキシトシンや、セロトニンが好適に用いられ得る。神経伝達物質やホルモンは対象者の脳活動を測定することにより検出され得る。対象者の脳活動の測定には、身体情報取得手段12としての各種の脳機能計測技術が用いられ得る。報酬特性分析のための脳活動の測定方法は以下の3つのステップで行われる。まず初めに、脳機能計測技術により得られた電流波形を、ドーパミン、セロトニン、オキシトシンに分類する。電流波形を計測する脳機能計測技術としては、単一分子を検出する単分子計測に機械学習を用いた解析手法(大阪大学研究専用ポータルサイト「Resou」 『世界初!量子計測とAIによる新手法!神経伝達物質の高速検出・識別に成功』2020.7.9 https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20200709_1)によって実現され得る。次に、測定時の対象者の行動を撮影手段により撮影された撮影画像より判定する。具体的には、上記の神経伝達物質の検出およびホルモンの分泌量の測定が行われた時間に対象者が行っていた行動をAIによる画像認識技術から判定する。そして、測定された行動に対して事前にアノテーションされた報酬タグと条件タグから報酬のスコアを判定する。報酬タグ及び条件タグについては後述する。例えば、「お母さんを見る」という行動を行ったときに脳機能計測技術よりオキシトシンが測定された場合を考える。このとき、対象者の行動がAIによる画像認識技術から「お母さんを見る」という行動であると判定される。そして、「見る」という動詞にあらかじめ0.4というスコアの報酬タグがアノテーションされているとすると、今回の分析結果はオキシトシンが0.4であると判定され、報酬(オキシトシン)のスコアを40増やし、報酬の全体スコアが100になるように調整を行う。
【0041】
分析手段13は、身体情報取得手段12により取得される対象者の身体情報を考慮して記憶力を分析することもできる。その際の用いられる対象者の身体情報として、学習時における対象者のノートの取り方などが好適に採用され得る。対象者のノートの取り方は、身体情報取得手段12としての撮影装置によって撮影され、画像データ(身体情報)として記録され得る。とりわけ、本実施形態においては、対象者をVR空間上で撮影装置を用いて撮影することにより、対象者のノートの取り方が画像データ(身体情報)として取得される。その上で、取得された画像データとしての対象者のノートの取り方が記憶に残りやすい取り方をしているか否かをメモリーアスリートなどの専門家により判定してもらい、その後、その判定データを教師データとしてAIにより対象者の記憶力が判定され得る。また、対象者の記憶力については、記憶力テストを対象者が解答したときの解答結果からも判定され得る。具体的には、例えば日本版ウェクスラー記憶検査などの記憶力テストを用いる。日本版ウェスクラー記憶検査は、記憶力を測定するためのテストであるため、テストには記憶のタグを付与する。また、テストのそれぞれの設問のタグからより詳細な分析項目を判定することを可能にする。例えば長期記憶を測定する設問には長期記憶のタグを、短期記憶を測定する設問には短期記憶のタグを付与することで、設問から分析できる詳細な項目を判定する。より具体的には、VR空間上に展開された記憶力テストの設問を、同空間上で対象者が解答することで記憶力の判定が行われ得る。例えば、長期記憶のタグのみが付与された6つの設問に回答する場合は、このテストにおける対象者の長期記憶のスキルは次式のように算出される。
[式2]・・・{(Ptt-Ptv)÷Pts×10+50}×Sw
Ptt:対象者の6つの設問の合計点
Ptv:6つの設問の合計点の平均
Pts:6つの設問の標準偏差
Sw:教材の学習レベルの重み値
【0042】
スキルは、算出された結果が小数を含む場合は、その値を切り上げた整数で表される。教材の学習レベルの重み値(Sw)は例えば大学教授等の教材のタグに対する分野の専門家により事前にアノテーションがされており、0~1の値を取り、教材の学習レベルが高いほど値が大きくなる。例えば、対象者の6つの設問の合計点(Ptt)が5点であり、6つの設問の合計点の平均(Ptv)が4点であり、6つの設問の標準偏差(Pts)が1.41であり、日本版ウェスクラー記憶検査の学習レベルの重み値が0.9の時、このテストにおける対象者の長期スキルは、上記の[式2]にこれらの数値をあてはめると{(5-4)÷1.41×10+50}×0.9で計算され、51となる。また、既に対象者に長期記憶のスキルの数値がある場合は、(既にある長期記憶のスキルの数値+新たに算出した長期記憶のスキルの数値)÷2を最終的な長期記憶のスキルの数値とする。例えば、既に60の長期記憶のスキルを持つ対象者が日本版ウェスクラー記憶検査で長期記憶のスキルが51と判定された場合、対象者の最終的な長期記憶のスキルは(60+51)÷2より、56となる。長期記憶のスキルに限らず、短期記憶やハードスキルも同様な方法で算出される。
【0043】
分析手段13は、所定の自然言語解析を用いて言動情報を解析して特定され得る対象者の行為内容に応じて認知特性を分析することができる。この場合に用いられる自然言語解析として、係り受け解析および述語項構造解析、談話構造解析などが好適に用いられ得る。
【0044】
分析手段13による行動特性の分析には以下に説明するタグが用いられる。「タグ」は、対象者が特定の行動をなし得るのに必要な行動特性の要素を判定するために用いられる。自然言語解析によって言動情報を解析して得られるのは、例えば述語項構造解析により「テレビを見る」という言語情報を解析する場合、名詞である「テレビ」と、述語である「見る」との格関係である。つまり、本例の場合、述語「見る」に対して名詞「テレビ」が目的語であることが述語項構造解析によって判定される。
【0045】
しかしながら、述語項構造解析のみでは、対象者が「テレビを見る(あるいは見た)」行為内容の判定はできるものの、「テレビを見る」行為(内容)における対象者の行動特性を分析することは困難である。そこで、本システムでは対象者の行動特性を分析するツールの一つとして「タグ」が用いられる。
【0046】
タグは、特定の言語ごとに個別に付与される個別タグと、対象者の行為内容について付与される全体タグとが用意される。これらのタグは、分析手段13による行動特性の分析に際し、基本的に予め用意される。
【0047】
これらのタグについて、図3及び図4に示される具体例を用いて説明する。図3及び図4は、本開示の実施形態における個別最適教育支援システムにおける分析手段による行動特性の分析に際して予め用意されるタグの一例を示す模式図である。
【0048】
個別タグには、所定の行動について付与される行動タグSTと、行動の直接的な対象について付与される直接対象タグSTと、所定の行動から判定される特性について付与される特性タグ、条件タグ、間接対象タグなどが用意される。
【0049】
図3(ア)を参照し、例えば日記等を介して支援者が「テレビを見た」と入力した場合を想定して以下に詳細に説明する。図3(ア)では、特性タグ、すなわち本例では認知特性タグとして、視覚タグST、聴覚タグST、味覚タグST、触覚タグST、嗅覚タグST、及び、言語タグSTが例示されている。
【0050】
まず、言動情報取得手段11により言動情報として「テレビを見た」が取得されると、分析手段13は、「テレビを見た」の動詞述語文について述語項構造解析を行う。これにより、分析手段13は「テレビ」が直接目的語の項であり、「見た」が述語であると判定する。その後、分析手段13は、「見た」の基本形「見る」に行動タグSTを付与し、「テレビ」に対象タグSTを付与する。
【0051】
さらに、「テレビを見た」という行為内容において使用されている五感について、既知のシソーラスに基づいて各感覚の使用割合が割り当てられるところ、分析手段13は、これらの使用割合をスコアとして、上述の特性タグとしての視覚タグST、聴覚タグST、味覚タグST、触覚タグST、嗅覚タグST、及び、言語タグSTにそれぞれ設定する。具体的には、上記シソーラスとして「Predicate Thesaurus(Takeuchi lab)」なる述語項構造シソーラス(https://pth.cl.cs.okayama-u.ac.jp/testp/pth/vths)により「テレビを見る」という行動が「視覚優位」な行動であるとして、他の視覚に対して使用割合が高くなるように設定され得る。ここでは、視覚が0.5、聴覚が0.3、言語が0.2であり、他の感覚について0とし、全体が1になるように設定されているが、これに限定されるものではなく百分率(%)表記であってもよい。なお、シソーラスとしては上記の述語項構造シソーラスに限定されるものではなく、特定の行動における五感の使用割合をアノテーション可能なシソーラスであれば他のシソーラスであっても今後登場する未知のシソーラスであってもよい。
【0052】
さらに、図3(ア)に示されるように、全体タグとして認知特性タグTTが付与されている。認知特性タグTTは、上述の行動タグST、直接対象タグST、及び各特性タグに付与される各五感の使用割合を総合的に考慮した上で、対象者の総合的な認知特性を判定するために用いられる。
【0053】
最終的な認知特性の決定においては、言動情報取得手段11により取得される時間情報が考慮される。言動情報取得手段11により取得される言動情報によって特定される対象者の行動は、上記の「テレビを見た」という行動だけにとどまらないのが一般的であり、通常はそれ以外の行動も時間を隔ててとっていると考えられる。この場合、行動ごとに使用している各時間が一定であるとは限らず、多くの場合、バラつきがあると考えられる。そのような場合に、例えば視覚的特徴のある行動を、時間を隔てて2回とり、それぞれに要した時間が1時間であり、一方で聴覚的特徴のある行動が1回でも、それに要した時間が3時間であるのに、視覚的特徴のある行動の回数が聴覚的特徴のある行動よりも多いというだけで、その行動を行った対象者の認知特性を視覚優位であると判定することは精確な判定とは言えない。そのため、各行動に要した所要時間(時間情報)を乗算することにより、より実際的な認知特性の判定に資することができる。
【0054】
次に、図3(イ)を参照し、例えば日記等を介して支援者が「おばあちゃんに手紙を贈った」と入力した場合を想定して以下に詳細に説明する。図3(イ)では、動作の対象に対して付与される客体タグSTが設定され、特性タグとして善タグST10と、条件タグST11と、喜びタグST12とが設定されている。
【0055】
まず、言動情報取得手段11により言動情報として「おばあちゃんに手紙を贈った」が取得されると、分析手段13は、「おばあちゃんに手紙を贈った」の動詞述語文について述語項構造解析を行う。これにより、分析手段13は「手紙」が直接目的語の項であり、「贈った」が述語であり、「おばあちゃん」が間接目的語の項(手紙を贈る対象)であると判定する。その後、分析手段13は、「贈った」の基本形「贈る」に行動タグSTを付与し、「手紙」に直接対象タグSTを付与し、「おばあちゃん」に間接対象タグSTを付与する。
【0056】
さらに、「おばあちゃんに手紙を贈った」の行動が善い行動であると判定されるとき、「善」タグST10を「True」と判定する。善い行動かそうでないかの判定においては、行動タグ、直接対象タグ、間接対象タグ、条件タグの組に対する事前のアノテーション、または、それらの組の入力から善・悪を判定する機械学習モデルにより出力された結果を考慮する。また、行動が悪い行動であると判定されるとき、「善」タグST10を「False」と判定する。
【0057】
また、本例では条件タグST11が間接対象≠ストーキング対象となっている。条件タグは行動タグと善タグの組に対して事前にアノテーションが行われる。本例の条件タグは間接対象が例えばストーキング対象ではない時に、「贈る」という行動が善い行動であると判定されることを表している。条件タグは、直接対象と間接対象の条件を指定する。なお、上記の条件タグST11としての『間接対象≠ストーキング対象』は一例であって、これに限定されるものではなく、特定の行動において適宜異なる条件が設定され得る。
【0058】
「報酬」タグST12は、手紙を贈られる相手(本例では「おばあちゃん」)が得られる報酬の程度を示すスコアが付与されるタグである。相手が得られる報酬の程度は、行動タグ、直接対象タグ、間接対象タグ、条件タグ、善タグの組に対するアノテーション、及び、それらの組の入力から得られる報酬の程度を0~1の間でスコアリングする機械学習モデルにより出力された結果を考慮する。なお、本例では「報酬」タグST12に付与されるスコアとして「0.3」が付与されている。
【0059】
さらに、図3(イ)に示されるように、全体タグとしてモチベーションタグTTが付与されている。モチベーションタグTTは、上述の行動タグST、直接対象タグST、間接対象タグST、善タグST10、条件タグST11、及び報酬タグST12を含め、対象者の総合的なモチベーションを判定するために用いられる。間接対象タグが自分、かつ、善タグがTrue、または、対象タグが他人、かつ、善タグがFalseの場合は、モチベーション(自分)のスコア変更を行い、間接対象タグが他人、かつ、善タグがTrue、または、対象タグが自分、かつ、善タグがFalseの場合は、モチベーション(他人)のスコアの変更を行う。スコアの変更程度は、報酬タグの数値に比例して大きくなる。
【0060】
図3(ウ)を参照し、例えばSNS等を介して対象者が「犬を散歩した」と入力した場合を想定して以下に詳細に説明する。図3(ウ)では、特性タグとして、抽象度タグST13が例示されている。
【0061】
まず、言動情報取得手段11により言動情報として「犬を散歩した」が取得されると、分析手段13は、「犬を散歩した」の動詞述語文について述語項構造解析を行う。これにより、分析手段13は「犬」が直接目的語の項であり、「散歩した」が述語であると判定する。その後、分析手段13は、「散歩した」の基本形「散歩する」に行動タグSTを付与し、「犬」に直接対象タグSTを付与する。
【0062】
さらに、「犬を散歩した」という行動が具体的であるか抽象的であるかを判定し、これをスコアリングするために、既知のシソーラスを用いる。このシソーラスとして、例えば「日本語語彙体系(https://www.iwanami.co.jp/book/b265812.html)」を用いる。日本語語彙体系の「具体」と「抽象」の分類から、名詞を具体物か抽象物か判定し、シソーラスの深さからスコアを判定する。例えば、「具体」の分類のときの抽象度のスコアは、0~0.5の間の数値を、「抽象」の分類のときの抽象度のスコアは0.5~1の間の数値を使用し、深さが深ければ深いほど、抽象度のスコアがより小さくなる。また、例えば、文章や言語に抽象度が付与(スコアリング)されて収録される「日本語抽象度辞書(AWD-J core ソーシャルコンピューティング研究室 https://sociocom.naist.jp/awd-j/)を用いる方法もある。上記のようなシソーラスを用いて、本例の「犬を散歩した」行動の抽象度として得られるスコアが抽象度タグST13に付与される。
【0063】
抽象度のスコアとしては、例えば0~0.5の範囲の数値を用いる。本例では、行動(文章)がもっとも具体的な場合に「0」、もっとも抽象的な場合に「1」の各数値が割り振られる。なお、本例では抽象度のスコアとして「0.3」が付与されている。
【0064】
さらに、図3(ウ)に示されるように、全体タグとして判断方法タグTTが付与されている。判断方法タグTTは、上述の行動タグST、直接対象タグST、及び抽象度タグST13を含め、対象者の総合的な判断方法を判定するために用いられる。
【0065】
分析手段13は、上述した各タグを用いることにより、所定の自然言語解析を用いて言動情報を解析して特定され得る対象者の行為内容に応じて、対象者の認知特性、モチベーション及び判断方法のそれぞれを分析することができる。
【0066】
分析手段13は、上述したタグを用いることにより、自然言語解析の結果を考慮して、コントロール力や無報酬時行動特性を分析することができる。分析結果としてのコントロール力や無報酬時行動特性は、ポイントの加算又は減算によって得られる数値で表される。
【0067】
分析手段13は、所定の自然言語構造解析を用いて言動情報を解析して特定され得る対象者の行為内容に応じてコントロール力を分析することができる。コントロール力は、支援者の対象者に対する行動記録に基づいて分析される。例えば日記等を使用して支援者が対象者について「テレビを見るのを禁止したら怒ったが、その後切り替えて勉強した」と入力した場合を想定し、図4(ア)を参照して説明する。この場合、分析手段13は、分析結果を行動タグと直接対象タグと特性タグと数値の組として出力する。
【0068】
本例では、「見る」について行動タグSTが、「テレビ」について直接対象タグSTが付与され、「見る,勉強する」のペアに対して行動セットタグST’が、「テレビ、null」のペアに対して直接対象セットタグST’が付与される。また、コントロール力に対応する特性タグとして、抑制力タグST14及び切り替え力タグST15が付与される。そして本例では、「抑制力」を表す特性タグについては、禁止した行動の情報(行動タグと直接対象タグ)からその行動を抑制するのに必要な抑制力を0~1のスコアαで事前にアノテーションをする。また、「切り替え力」を表す特性タグについても、禁止された行動(行動タグと直接対象タグ)を切り替えた後に行った行動の情報(行動タグと直接対象タグ)から行動の切り替えに必要な切り替え力を0~1のスコアβで事前にアノテーションをする。
【0069】
上記αは、本例における『テレビを見る』のを我慢するのに必要なスコアであり、スコア1-αは“我慢できる確率”を示す。“我慢できる確率”は、例えばヒトが行動を禁止されたときにその行動を我慢できる確率を示すものである。このスコアαは、例えば臨床心理士等の専門家により分析された分析結果に基づいて予め算出されたスコアであっても、例えば複数人のテスターに対する実験結果に基づいて予め算出されたスコアであってもよい。本例では対象者が「テレビを見る」のを禁止されたときに「怒った」ことから、抑制力タグST14について『0』がスコアリングされている。行動の禁止に対して怒ったり拗ねたりせずに従った場合はαをスコアとし、行動の禁止に対して怒ったり拗ねたりして従わなかった場合において、αが0.5以上の場合は「α-0.5」をスコアとし、αが0.5より小さい場合は0をスコアとする。
【0070】
上記βは、本例における『テレビを見るのを禁止された後に勉強する』行動に必要なスコアであり、スコア1-βは“切り替えできる確率”を示す。“切り替えできる確率”は、例えばヒトが行動を禁止されたときにその行動から別のある行動に切り替えができる確率を示すものである。このスコアβについても、上記専門家により分析された分析結果に基づいて予め算出されたスコアであっても、例えば複数人のテスターに対する実験結果に基づいて予め算出されたスコアであってもよい。本例では対象者が『テレビを見る』行動から『勉強する』行動に切り替えることができたことから、切り替え力タグST15について『β』がスコアリングされる。行動の切り替えができた場合は、βをスコアとし、切り替えができなかった場合において、βが0.5以上場合は「β-0.5」をスコアとし、βが0.5より小さい場合は0をスコアとする。
【0071】
さらに、図4(ア)に示されるように、全体タグとしてコントロール力タグTT及びコントロール力タグTT’がそれぞれ付与されている。コントロール力タグTTは、上述の行動タグST、直接対象タグST、及び抑制力タグST14を含め、対象者のコントロール力(抑制力)を判定するために用いられる。また、コントロール力タグTT’は、上述の行動セットタグST’、直接対象セットタグST’、及び切り替え力タグST15を含め、対象者の総合的なコントロール力(切り替え力)を判定するために用いられる。
【0072】
分析手段13は、所定の自然言語解析を用いて言動情報を解析して特定され得る対象者の行為内容に応じて無報酬時行動特性を分析することができる。無報酬時行動特性は、報酬が得られない時の対象者の行動について、その支援者の当該対象者に対する行動記録から分析され得る。無報酬時行動特性を分析する上での対象者の行動情報としては、例えば支援者からある行動を禁止された時の対象者の感情や態度などが好適に用いられる。対象者の感情や態度を示す行動情報(行動記録)としては、典型的には「怒った」「拗ねた」などが挙げられる。分析手段13は、分析結果を行動タグと直接対象タグと特性タグと数値の組として出力する。
【0073】
本例では、「見る」について行動タグSTが、「テレビ」について直接対象タグSTが付与され、無報酬時行動特性に対応する特性タグとして、攻撃タグST16及びうつタグST17が付与される。そして本例では、対象者が「怒った」場合には、攻撃タグST16についてγがスコアリングされ、「拗ねた」場合には、うつタグST17についてωがスコアリングされる。「攻撃」と「うつ」を表す特性タグについては、禁止した行動の情報(行動タグと直接対象タグ)からその行動に従わない確率を0~1のスコアをγ、あるいは、ωで事前にアノテーションをする。スコアγは“怒る確率”を示し、スコアωは“拗ねる確率”を示すスコアである。“怒る確率”は、例えばヒトが行動を禁止されたときに怒ってしまう確率を示すものであり、“拗ねる確率”は、例えばヒトが行動を禁止されたときに拗ねてしまう確率を示すものである。これらのスコアについても、例えば臨床心理士等の専門家により分析された分析結果に基づいて予め算出されたスコアであっても、例えば複数人のテスターに対する実験結果に基づいて予め算出されたスコアであってもよい。
【0074】
さらに、図4(イ)に示されるように、全体タグとして無報酬時行動特性タグTT及び無報酬時行動特性タグTT’が付与されている。無報酬時行動特性タグTTは、上述の行動タグST、直接対象タグST、及び攻撃タグST16を含め、対象者の総合的な無報酬時行動特性(攻撃)を判定するために用いられる。また、無報酬時行動特性タグTT’は、上述の行動タグST、直接対象タグST、及びうつタグST17を含め、対象者の総合的な無報酬時行動特性(うつ)を判定するために用いられる。
【0075】
ソフトスキル特性のうち「自己更新力」は、後述する学習方法推薦手段14により推薦された学習方法によって対象者が学習を開始し所定期間経過した後、対象者のスキル特性がどの程度変化したのか(変化率)を示す特性を意味する。自己更新力の変化率は、例えば教材単位の指標によるテスト結果から、スキル特性の数値の増減の所定のしきい値に対する差分に基づいて判定され得る。しきい値は同じコミュニティに所属する対象者のうち、同じ教材を受講した際のスキル特性の数値の増減の平均値によって決められる。
【0076】
スキル特性は、後述する学習方法推薦手段14により対象者に推薦される学習方法によって当該対象者が学習した結果として得られる学習指標であり、典型的には「言語」スキルや「数学」スキルなどの学習科目が含まれる。ハードスキルは、分析手段により事後的に分析され得る。ハードスキル特性の分析においても、上述したタグ(以下「ハードスキルタグ」という。)が使用される。ハードスキルタグは、後述する学習方法推薦手段14が有する教材選択手段144により選択される教材やテストの設問ごとに付与される。スキルは、例えば、教材を学習することで得られるスキルやテストの設問を解答するために必要なスキルと、数値との組合せからなる。スキルタグによって、教材の学習を通して得られるスキルやテストの設問の解答に必要なスキルが明確になり得る。
【0077】
学習方法推薦手段14は、分析手段13により分析された対象者の行動特性に応じた学習方法を推薦する。学習方法推薦手段14により推薦される学習方法は、対象者自身の行動を分析した結果として推薦される学習方法であるから、対象者は自身が補うべき知識やスキルを効率的に遠回りすることなく学習でき、これにより高い学習効果を上げることができる。
【0078】
学習方法推薦手段14は、さらに、基本情報取得手段141と、目標スキル算出手段142と、学習カテゴリ選択手段143と、教材選択手段144と、指導形態選択手段145と、目標変更推薦手段146とを含み、構成されている。
【0079】
基本情報取得手段141は、対象者の目標を少なくとも含む基本情報を取得する。「基本情報」とは、対象者の氏名、性別、年齢、対象者の所属するコミュニティなどの対象者の属性をいう。また、分析手段13により分析された分析結果としての対象者の行動特性(認知特性、パーソナル特性、スキル)も基本情報に含まれる。
【0080】
「コミュニティ」とは、小・中学校(小・中学生)、高等学校(高校生)、大学(大学生)などの学校や、会社などの組織体や共同体をいう。さらに、これらを細分化した組織体などもコミュニティに含まれる。具体的には、学校であれば、不登校の生徒が通うフリースクールや自宅もコミュニティに含まれるし、高等学校であれば、普通科や理数科、あるいは工業系学科や商業系学科となどの専門学科もコミュニティに含まれる。また、会社であればサラリーマン、自営業者、経営者など組織体での役割や役職などもコミュニティに含まれる。なお、本業に対する副業などもコミュニティに含まれる。さらに、対象者の目標も基本情報に含まれる。例えば「2年以内に年収1000万円を達成する」などが目標になり得る。
【0081】
目標スキル算出手段142は、基本情報取得手段141により取得された目標を達成するために必要な目標スキル特性を所定の数値で算出する。具体的には、目標の達成のための到達点となる数値(x)と対象者の現在のスキルを算出した数値(y)との差分(z)として、次式で求められるのが目標スキル特性である。

[式3]・・・目標スキル特性(z)=達成スキル特性(x)-現在スキル特性(y)
【0082】
学習カテゴリ選択手段143は、目標に応じて学習カテゴリを選択する。「学習カテゴリ」には、文系、理系などの大分類、国語、数学(算数)、理科、社会、英語などの主に小中学校における授業教科に代表される中分類、各教科に含まれる小分類に大別される。例えば、中分類としての国語に含まれる小分類の学習カテゴリとして、読み書き、読解が挙げられ、さらに、その配下の細分類として、文法・単語・熟語(読み書き)、現代文・古典(読解)が挙げられる。また、上述の授業教科に限定されるものではなく、大学等において専門的知識を学ぶ上でのカリキュラムも含まれる。さらに、社会人が学ぶカリキュラムや資格学習におけるカテゴリなども含まれる。
【0083】
教材選択手段144は、選択される学習カテゴリに対応する教材から、スキル算出手段142により算出された目標スキル特性に応じた教材を選択する。ここで、学習カテゴリに対応する教材として、例えば上記の授業教科における学習カテゴリの場合、教科ごとに用意される学習参考書や問題集などが挙げられる。この中から、目標スキル特定に応じた教材が教材選択手段144によって選択される。目標スキル算出手段142により算出された目標スキル特性のうち達成スキル特性の数値が高い場合、教材選択手段144により、上記選択される学習カテゴリに対応する教材から、例えば学習レベルの高い教材が選択される。典型的には、上級向けテキストやハイレベルテキストなどのサブタイトルのつけられたテキストが学習レベルの高い教材として挙げられる。
【0084】
教材選択手段144は、分析手段13により分析された対象者の認知特性に応じて教材を選択してもよい。例えば、分析手段13により分析された対象者の認知特性が視覚優位である場合、動画教材が選択される。これにより、例えばテキスト学習が苦手な対象者の学習効果を上げることができる。
【0085】
指導形態選択手段145は、分析手段13により分析された対象者のパーソナル特性やソフトスキル特性に応じた指導方法や指導者を選択する。パーソナル特性には、上述したように対象者のモチベーション、判断方法、報酬特性、及び無報酬時行動特性が含まれ、ソフトスキル特性には、上述したように対象者の運動能力、共同注意力、記憶力、コントロール力、自己更新力が含まれるところ、指導形態選択手段145は、分析手段13により分析されたこれらの何れか又はこれらのうち2つ以上を組み合わせ、それらに応じた指導方法や指導者を選択する。例えば、モチベーション(自分)がしきい値より高い(モチベーション(他人)がしきい値より低い)場合、対象者自身の問題への取り組み方を尊重し、問題解決への見通しが持てるように、情報を構造化して分かりやすく説明することを意識することの提案、及び、それらが適切に行える指導者の選択を行う。これにより、対象者は自分のパーソナル特性に合った指導方法や指導者による指導を受けられるため、画一的な指導方法に比べ遥かに高い学習効果を得ることができる。
【0086】
目標変更推薦手段146は、目標スキル算出手段142により算出された目標スキル特性のうち、対象者が所望のコミュニティにおいて目標を達成することを選択した際に必要となる目標スキル特性の全てを対象者の現在のスキル特性が上回っていた場合、上記目標に代えて新たな目標を推薦する。例えば、対象者の目標が「年収800万円を稼ぐ」というものである場合を想定して以下に説明する。仮にその対象者がコミュニティαに所属することを選択したとして、コミュニティαにおいては対象者の共同注意力のスコアが50あれば、上記目標を達成可能であるところ、現在の対象者の共同注意力が40の場合、上記教材選択手段144により共同注意力を10伸ばす教材を選択(推薦)すればよいことになる。その一方で、仮に対象者がコミュニティβに所属することを選択したとして、コミュニティβにおいては物理スキル(ハードスキル)が40あれば、上記目標を達成可能であるところ、現在の対象者の物理スキルが50の場合、すでに十分なスキルを獲得しているため、目標変更推薦手段146は上記目標に代えて、新たな目標を推薦する。これにより、対象者は、選択したコミュニティにおいて現在のスキルが不足していれば当該スキルを伸ばす教材による学習を行えばよい。一方で、選択したコミュニティにおいて現在のスキルが目標スキルを超えていれば、目標の変更を推薦されるため、対象者は自分の現在のスキルに見合った目標を見定めることができる。
【0087】
分析手段13は、目標スキル算出手段142により算出される目標スキル特性を教材選択手段144により選択された教材を使用した学習前と学習後とで比較し、比較された目標スキル特性の変化と、対象者と同じコミュニティで教材と同じ教材を使用して学習した人の変化との比較に基づいて、対象者の自己更新力の有無を分析する。これにより、対象者は自身の目標スキル特性の伸び率を把握することができ、所属するコミュニティ内での自身の相対的な自己更新力を把握することができる。
【0088】
さらに、本システムにおいては、学習内容記録手段15により、学習方法推薦手段14により推薦された学習方法に基づいて学習した対象者の学習内容を記録することができる。学習内容を記録することにより、推薦された学習方法による学習効果を対象者自身はもちろん、その支援者も把握することができる。そして、行動特性更新手段16により、学習内容記録手段15により記録される学習内容に応じて対象者の行動特性を更新することができる。これにより、対象者の現在の状況、すなわち、推薦された学習方法に基づいてなされた学習の成果に応じて行動特性が更新されるため、更新後の行動特性に基づいて推薦される学習方法は、対象者のレベルをより一層高めることができる。
【0089】
[本開示の個別最適教育支援システムにおいて分析される行動特性について]
図5は、本開示の実施形態における個別最適教育支援システムにおいて分析される対象者Xの行動特性を、認知特性、パーソナル特性、及びスキル特性に分けて表したグラフ図である。本グラフに示されるように、分析手段13による分析された対象者Xの認知特性N、パーソナル特性P、スキル特性Sを階層化されたデータ構造とする。さらに、認知特性Nにおいて『認知(100)』、パーソナル特性Pにおいて『パーソナル(400)』、スキル特性Sにおいて『スキル(65)』と、所定の数値による重みづけ(定量化)がなされる。これにより、学習方法推薦手段14は、対象者Xに適した学習方法を判定する上で、対象者Xの行動特性を精確に把握することができる。以下に、認知特性N、パーソナル特性P、スキル特性Sの各特性における階層構造の詳細について図6図18を参照して説明する。
【0090】
図6は、図5における認知特性Nを構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。認知特性Nを構成する要素として、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、言語が第1階層に配されている。なお、ここでの「言語」は、対象者が物事を認知する上での言語特性であり、後述するハードスキルにおける「言語」とは異なる概念である。
【0091】
上記の各要素に対して数値による重みづけがなされている。ここでは、全体としての認知特性を100とした場合の、各要素の割合に相当する数値が要素ごとに付与されている。ここでは、視覚(40)、聴覚(20)、触覚(10)、味覚(5)、嗅覚(5)、言語(20)として、各要素に数値が割り振られているが、一例であることは言うまでもない。各数値は、上述した分析手段13による認知特性の分析に基づいて判定された結果、優位な要素(例えば視覚優位)に対して付与される数値にその優位な要素の根拠となる行動をなした時間を乗算することにより算出される。具体的に、上述の例で説明すると、「テレビを見る」という行動においては、視覚が0.5、聴覚が0.3、言語が0.2という使用割合となるところ、この各割合に、「テレビを見る」行動に要した時間を乗算する。例えば、その時間が2時間である場合、視覚が0.5×2=1であり、聴覚が0.3×2=0.6であり、言語が0.2×2=0.4となる。これらを合計した2で各要素の割合を求めると、視覚は1÷2=0.5となり、聴覚は0.6÷2=0.3であり、言語は0.4÷2=0.2となる。これらを100分率で表すと視覚が50%、聴覚が30%、言語が20%となる。こうして上記各要素に重みづけされる数値が算出される。ただし、実際に対象者が1日になし得る行動において、「テレビを見る」以外の行動も想定されるところ、例えば1日に対象者がなした行動の全てについて上記計算を行うことで、1日の行動における対象者の認知特性を裏付ける数値を導き出すことができる。なお、対象者の認知特性の判定精度を高めるには、1日になした行動に関する行動情報だけでは、通常はデータとして不十分であるため、実際的には少なくとも1か月間において対象者がなした全行動から上記数値を導き出すのが望ましい。
【0092】
第2階層には、視覚、聴覚、言語のそれぞれに含まれる要素が示されている。視覚には、静止画、動画が配されており、それぞれ静止画(10)、動画(30)として、各要素に数値が割り振られている。すなわち、視覚の数値「40」が、静止画の数値と動画の数値の合計になるように各要素に配分されている。上記数値についても例示であるものの、例えば上述した「テレビを見る」という行動の場合、テレビの映像そのものは動画で構成されているところ、「テレビを見る」という行動だけを考慮すれば動画の割合が高くなり得る。上記数値の根拠を想定するとすれば、例えば、「テレビを見る」という行動において、4時間のうち3時間を使用し、残り1時間を絵画やイラストを鑑賞するという行動に使用した場合、静止画(10)、動画(30)として算出され得る。
【0093】
第3階層には、静止画、動画のそれぞれに含まれる要素が示されている。静止画には、2次元、3次元が配されており、それぞれ2次元(10)、3次元(0)として、各要素に数値が割り振られている。すなわち、静止画の数値「10」が、2次元の数値と3次元の数値の合計になるように各要素に配分されている。また、動画についても、2次元、3次元が配されており、それぞれ2次元(20)、3次元(10)として、各要素に数値が割り振られている。すなわち、動画の数値「30」が、2次元の数値と3次元の数値の合計になるように各要素に配分されている。静止画には2次元画像や3次元画像が、動画にも2次元動画や3次元動画が想定されるところ、例えば上述の「テレビを見る」という行動では、テレビは2次元の動画にあたるため、上記要素は2次元と判定される。一方で、例えば「サッカーをプレーする」という行動の場合、上記要素は3次元と判定され得る。
【0094】
次に、聴覚には、音、言語の各要素が配されており、それぞれ音(10)、言語(10)として、各要素に数値が割り振られている。例えば、「クラシック音楽を聴く」という行動においては、クラシック音楽が言語情報を含まないことから「音」優位であることが推認され得る。一方で「テレビでドラマを見る」という行動情報からは、ドラマの場合は役者(人)が話す音声を言語学的に認識することが通常であると考えられるため、「言語」優位であることが推認され得る。
【0095】
さらに、言語には、具体、抽象の各要素が配されており、それぞれ具体(10)、抽象(10)として、各要素に数値が割り振られている。例えば、「論文を読む」という行動の場合、論文には抽象的な概念が多く記載されているため「抽象」優位と推認され得る。これに対して、「漫画を読む」という行動からは言語情報と紐づいた具体的な絵も含めて記載されているため「具体」優位と推認され得る。
【0096】
図7は、図5におけるパーソナル特性を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。パーソナル特性Pを構成する要素として、モチベーション、判断方法、報酬、無報酬時行動特性が第1階層に配されている。ここでは、全体としてのパーソナル特性を400とした場合の、各要素の割合に相当する数値が要素ごとに付与されている。ここでは、モチベーション(100)、判断方法(100)、報酬(100)、無報酬時行動特性(100)として、各要素に数値が割り振られているが、一例であることは言うまでもない。
【0097】
第2階層には、モチベーション、判断方法、報酬特性、無報酬時行動特性のそれぞれに含まれる要素が示されている。モチベーションには、自分、他人が配されており、それぞれ自分(70)、他人(30)として、各要素に数値が割り振られている。また、判断方法には、抽象、具体が配されており、それぞれ抽象(40)、具体(60)として、各要素に数値が割り振られている。また、報酬特性には、愛、刺激、幸福が配されており、それぞれ愛(20)、刺激(30)、幸福(50)として、各要素に数値が割り振られている。さらに、無報酬時行動特性には、攻撃、うつが配されており、それぞれ攻撃(50)、うつ(50)として、各要素に数値が割り振られている。
【0098】
図8は、図5におけるスキル特性を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。スキル特性Sを構成する要素として、ソフトスキル特性、ハードスキル特性が第1階層に配されており、それぞれソフトスキル特性(60)、ハードスキル特性(70)として、各要素に数値が割り振られている。スキル特性については、上述の認知特性やパーソナル特性などと異なり、割り振られる数値は、標準偏差に基づいて求められる数値を採用する。
【0099】
第2階層には、ソフトスキル特性に含まれる、運動能力、共同注意力、記憶力、コントロール力、自己更新力がそれぞれ配されている。ここでは、運動能力(55)、共同注意力(70)、記憶力(70)、コントロール力(50)として、各要素に数値が割り振られているが、一例であることは言うまでもない。
【0100】
第3階層には、記憶力に含まれる、ワーキングメモリ、短期記憶、長期記憶、が配されており、それぞれワーキングメモリ(75)、短期記憶(75)、長期記憶(60)として、各数値が割り振られている。また、第3階層には、コントロール力に含まれる、抑制、切り替えが配されており、それぞれ抑制(45)、切り替え(55)として、各要素に数値が割り振られている。
【0101】
また、第2階層には、ハードスキル特性に含まれる、言語、数学、物理、化学、生物、地理、歴史、公民、芸術、情報が配されている。ここでは、言語(65)、数学(70)、物理(70)、化学(70)、生物(70)、地理(70)、歴史(70)、公民(70)、芸術(70)、情報(70)として、各要素に数値が割り振られているが、一例であることはいうまでもない。第2階層の各要素の配下である第3階層以下の各要素については、第2階層の要素ごとに用意される図9から図18を参照して説明する。
【0102】
図9は、図8におけるハードスキルに含まれる言語を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。第3階層には、言語に含まれる、国語、英語が配されており、それぞれ国語(65)、英語(65)として、各要素に数値が割り振られているが一例であることはいうまでもない。第4階層には、国語に含まれる、読み書き、読解が配されており、それぞれ読み書き(65)、読解(65)として、各要素に数値が割り振られている。さらに、第5階層には、読み書きに含まれる、文法、単語、熟語、漢字が配されており、それぞれ文法(65)、単語(65)、熟語(65)、漢字(65)として、各要素に数値が割り振られている。また、読解に含まれる、現代、古典が配されており、それぞれ現代(65)、古典(65)として、各要素に数値が割り振られている。
【0103】
また、第4階層には、英語に含まれる、文法、単語、熟語、リーディング、リスニング、ライティング、スピーキングが配されており、それぞれ文法(65)、単語(65)、熟語(65)、リーディング(65)、リスニング(65)、ライティング(65)、スピーキング(65)として、各要素に数値が割り振られている。
【0104】
図10は、図8におけるハードスキルに含まれる数学を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。第3階層には、数学に含まれる、数学基礎論、代数学、幾何学、解析学、有限・離散数学、数理科学、数学教育・数学史が配されており、それぞれ数学基礎論(70)、代数学(70)、幾何学(70)、解析学(70)、有限・離散数学(70)、数理科学(70)、数学教育・数学史(70)として、各要素に数値が割り振られているが一例であることはいうまでもない。尚、以下の各ハードスキルに割り振られている数値についても一例である。
【0105】
図11は、図8におけるハードスキルに含まれる物理を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。第3階層には、物理に含まれる、力学、熱力学、連続体力学、電磁気学が配されており、それぞれ力学(70)、熱力学(70)、連続体力学(70)、電磁気学(70)として、各要素に数値が割り振られている。
【0106】
図12は、図8におけるハードスキルに含まれる化学を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。第3階層には、化学に含まれる、物理化学、無機化学、有機化学、高分子化学、生化学、分析化学・機器分析化学・合成有機化学、応用化学、環境化学が配されており、それぞれ物理化学(70)、無機化学(70)、有機化学(70)、高分子化学(70)、生化学(70)、分析化学・機器分析化学・合成有機化学(70)、応用化学(70)、環境化学(70)として、各要素に数値が割り振られている。
【0107】
図13は、図8におけるハードスキルに含まれる生物を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。第3階層には、生物に含まれる、生理学、生態学が配されており、それぞれ生理学(70)、生態学(70)として、各要素に数値が割り振られている。
【0108】
図14は、図8におけるハードスキルに含まれる地理を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。第3階層には、地理に含まれる、日本、世界が配されており、それぞれ日本(70)、世界(70)として、各要素に数値が割り振られている。さらに、日本について、第4階層として、系統地理学、地理学が配されており、それぞれ系統地理学(70)、地理学(70)として、各要素に数値が割り振られている。系統地理学には、さらに第5階層として、自然地理学、人文地理学が配されており、それぞれ自然地理学(70)、人文地理学(70)として、各要素に数値が割り振られている。また、世界についても、日本同様に、第4階層として、系統地理学、地理学が配されており、それぞれ系統地理学(70)、地理学(70)として、各要素に数値が割り振られ、第5階層に自然地理学、人文地理学が配されており、それぞれ自然地理学(70)、人文地理学(70)として、各要素に数値が割り振られている。
【0109】
図15は、図8におけるハードスキルに含まれる歴史を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。第3階層には、歴史に含まれる、日本史、世界史が配されており、それぞれ日本史(70)、世界史(70)として、各要素に数値が割り振られている。
【0110】
図16は、図8におけるハードスキルに含まれる公民を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。第3階層には、公民に含まれる、日本、世界が配されており、それぞれ日本(70)、世界(70)として、各要素に数値が割り振られている。さらに、日本について、第4階層として、政治、経済、社会が配されており、それぞれ政治(70)、経済(70)、社会(70)として、各要素に数値が割り振られている。また、世界についても、日本同様に第4階層として、政治、経済、社会が配されており、それぞれ政治(70)、経済(70)、社会(70)として、各要素に数値が割り振られている。
【0111】
図17は、図8におけるハードスキルに含まれる芸術を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。第3階層には、芸術に含まれる、文芸、美術、音楽、総合芸術、デザイン、その他が配されており、それぞれ文芸(70)、美術(70)、音楽(70)、総合芸術(70)、デザイン(70)、その他(70)として、各要素に数値が割り振られている。
【0112】
図18は、図8におけるハードスキルに含まれる情報を構成する各要素(データ)を相互に関連付けて表したグラフである。第3階層には、情報に含まれる、原理、コンピュータ、設計、社会、システムが配されており、それぞれ原理(70)、コンピュータ(70)、設計(70)、社会(70)、システム(70)として、各要素に数値が割り振られている。さらに、システムについて、第4階層には、技術、制度、組織が配されており、それぞれ技術(70)、制度(70)、組織(70)として、各要素に数値が割り振られている。
【0113】
[本開示の個別最適教育支援システムによる全体的な処理の流れについて]
図19は、本開示の実施形態における個別最適教育支援システム(以下「本システム」という。)による処理の流れを示す全体フロー図である。本システムは、対象者の言動に関する言動情報を取得する(ステップS1)。
【0114】
言動情報の取得方法は、対象者又はその支援者の使用する情報通信端末から通信ネットワークを介して取得する方法でも、本システムに付随する操作端末に直接入力されることにより取得する方法でもよい。また、言動情報の取得タイミングについては特に限定されるものではなく、リアルタイムに取得するものであっても、所定のタイミングで定期的に取得するものであってもよい。取得される言動情報は本システムの記憶部に蓄積されるものであっても、外部のネットワークサーバに記録されたものを必要に応じて取得するものであってもよい。あるいはAPI連携によって日記アプリの記録内容やSNSに投稿されたメッセージなどを取得するものであってもよい。
【0115】
次に、本システムは、取得される言動情報に基づいて、対象者の行動特性を分析する(ステップS2)。最後に、本システムは、分析された対象者の行動特性に応じた学習方法を推薦する(ステップS3)。行動特性の分析の詳細な手順および学習方法の推薦の詳細な手順については後述する。本システムにおける上述の手順によれば、対象者を客観的な要素に基づいて分析し、対象者の特性に応じた学習方法を推薦することができる。
【0116】
[分析手段による行動特性の分析処理の流れについて]
図20は、図19における「行動特性の分析」に含まれる具体的な処理の流れを示す詳細フロー図である。本システムは、図19のステップ1において言動情報の取得を受け(ステップS21、START)、取得した言動情報が言語に関する情報か否かを判定する(ステップS22)。本システムは、取得される言動情報が言語情報であると判定した場合(ステップS22、YES)、次に自然言語解析を行う(ステップS23)。一方で、取得される言動情報が言語に関する情報でない場合(ステップS23、NO)、図22のステップS41の処理へ移行する。
【0117】
次に、本システムは、自然言語構文解析(ステップS23)により、取得された言動情報が行動情報であると判定した場合(ステップS24、YES)、モチベーションの分析を行う(ステップS25)。一方で、取得された言動情報が行動情報でないと判定した場合(ステップS24、NO)、図22のステップS31の処理へ移行する。
【0118】
次に、本システムは、モチベーションの分析(ステップS25)により、取得された行動情報に基づいて対象者の行動が禁止されたと判定した場合(ステップS26、YES)、コントロール力の分析を行う(ステップS27)。一方で、取得された行動情報に基づいて対象者の行動が禁止されていないと判定した場合(ステップS26、NO)、ステップS29へ移行する。
【0119】
本システムは、コントロール力の分析の後、無報酬時行動特性の分析を行い(ステップS28)、その後、認知特性の分析を行い(ステップS29)、処理を終了する(ステップS30)。以上、本システムによる一連の処理を経て、対象者の行動特性の分析が完了する。
【0120】
図21は、図20のステップ24において「NO」が選択された後の処理を示す詳細フロー図である。本システムは、図20のステップ24において、入力された言動情報が行動情報でないと判定した後(ステップS24、NO)、判断方法の分析を行い(ステップS31)、処理を終了する(ステップS31)。
【0121】
図22は、図20のステップ22において「NO」が選択された後の処理を示す詳細フロー図である。本システムは、図19のステップ22において、入力された情報が言語情報でないと判定した後(ステップS22、NO)、入力された情報が身体情報であるか否かを判定する(ステップS41)。本システムは、入力された情報が身体情報であると判定した場合(ステップS41、YES)、次に運動能力の分析を行う(ステップS42)。一方で、本システムは、入力された情報が身体情報でないと判定した場合(ステップS41、NO)、図23のステップS61へ移行する。
【0122】
本システムは、運動能力の分析(ステップS42)の後、報酬の分析を行い(ステップS43)、入力された身体情報が他者とのコミュニケーション時の情報か否かを判定する(ステップS44)。本システムは、ステップS44において、入力された身体情報が他者とのコミュニケーション時の情報であると判定した場合(ステップS44、YES)、次に共同注意力の分析を行い(ステップS45)、処理を終了する(ステップS46)。一方で、本システムは、ステップS44において、入力された身体情報が他者とのコミュニケーション時の情報でないと判定した場合(ステップS44、NO)、共同注意力の分析を行うことなく、処理を終了する(ステップS46)。
【0123】
図23は、図22のステップ41において「NO」が選択された後の処理を示す詳細フロー図である。本システムは、図21のステップS41において、入力された情報が身体情報でないと判定した場合(ステップS41、NO)、次に対象者のハードスキルの分析を行うと(ステップS61)、次に記憶力の分析(ステップS62)の後、処理を終了する(ステップS63)。
【0124】
[学習方法推薦手段による学習方法推薦処理の流れについて]
図24は、図19における「学習方法の推薦」に含まれる具体的な処理の流れを示す詳細フロー図である。本システムによる学習方法推薦処理の詳細な流れについて図24を参照して以下に説明する。学習方法の推薦処理にあたり、本システムは、まず対象者の基本情報を取得する(ステップS71)。基本情報には、対象者の氏名、性別、年齢、所属するコミュニティ、目標、及び当該目標を達成する期限などの情報が含まれる。目標とは、例えば「2年以内に年収1000万円を達成する」などの具体的な行動目標をいう。なお、上述の分析処理を経て、対象者の認知特性、パーソナル特性、スキル特性のそれぞれに関する情報が蓄積されている場合、これらも基本情報に含まれ得る。
【0125】
次に、本システムは、上記目標を達成するのに必要なスキルを算出可能か否かについて判定する(ステップS72)。本システムは、上記目標を達成するのに必要なスキル(数値)の算出が可能である場合(ステップS72、YES)、目標を達成するために必要なスキルの算出処理を行う(ステップS73)。一方で、本システムは、上記目標を達成するのに必要なスキルの算出が不可能である場合(ステップS72、NO)、スキル算出に要する不足情報を対象者に聞き返し(ステップS74)、不足情報の補完(ステップS75)の後、ステップS72へ処理を戻す。
【0126】
本システムは、ステップS73において目標達成に必要なスキル(目標スキル特性)を算出すると、次に、対象者又は支援者に対して、どのコミュニティで目標を達成するのかを対象者らに選択してもらう(ステップS76)。この場合、本システムは、例えば、ネットワークを介して、対象者らの使用する情報端末に対して、上記コミュニティの選択を求めるメッセージと共にコミュニティ選択のためのインタフェースなどを提供する。
【0127】
次に、本システムは、算出された目標スキル特性のうち、対象者が所望のコミュニティにおいて目標を達成することを選択した際に必要となる目標スキル特性の全てを対象者の現在のスキル特性が上回っているかどうか、すなわち、目標スキル特性と現在のスキル特性との差分があるかどうかを判定する(ステップS77)。
【0128】
本システムは、上記ステップS77で差分があると判定した場合(ステップS77、YES)、伸ばすべきスキル特性の数値を算出する(ステップS78)。一方で、上記ステップS77で差分がないと判定した場合(ステップS77、NO)、上記目標に代えて新たな目標を推薦する(ステップS79)。
【0129】
その後、本システムは、上記目標に応じて対象者が学習すべき学習カテゴリの選択処理を行い(ステップS80)、当該学習カテゴリに対応する教材から、上記算出された目標スキル特性に応じた使用教材の選択処理(ステップS81)を行う。この場合、本システムは、上記分析処理において分析された対象者の認知特性に応じて上記使用教材を選択してもよい。
【0130】
その後、本システムは、上記分析処理において分析された対象者のパーソナル特性に応じた指導形態(指導方法・指導者)の選択処理(ステップS82)を経て、処理を終了する(ステップS83)。
【0131】
[分析手段による自己更新力の分析処理の流れについて]
図25は、推薦された学習方法による学習が終了したタイミングの後の処理を示す詳細フロー図である。本システムは、上述のスキル算出処理(図24、ステップS73)において算出されるスキル特性を、上述の教材選択処理(ステップS81)において選択された教材を使用する学習前と学習後とで比較し、比較されたスキル特性の変化と、対象者と同じコミュニティで教材と同じ教材を使用して学習した人の変化を取得する(ステップS91)。その後、本システムは、その比較による上記スキル特性の変化に応じて、対象者の自己更新力の有無を分析し(ステップS92)、処理を終了する(ステップS93)。
【0132】
[レーダーチャートについて]
図26は、図20から図23及び図25におけるスキル特性の分析処理によって得られる対象者のスキル特性分析結果の一例を示すレーダーチャートである。図26に示されるレーダーチャートでは、運動能力、共同注意力、抑制力、切り替え力、自己更新力、ハードスキルのそれぞれについて、5段階評価に基づいてプロットされている。ここでは、ハードスキルが最も高く、次に自己更新力が高い様子がうかがえる。このようにレーダーチャートにより各スキル特性を示すことにより、対象者のスキル特性を視覚的に把握しやすくすることができる。本システムでは、ハードスキルの下位要素についても同様にレーダーチャートで数値を確認することができる。
【0133】
[折れ線グラフについて]
図27は、図25における「自己更新力の分析」処理によって得られる対象者の自己更新力の変化の一例を表すグラフである。このグラフでは、横軸に月をとり、縦軸に自己更新力の数値(%)をとっている。このようなグラフにより自己更新力を月ごとにプロットすることにより、対象者の自己更新力の変化率を把握することができる。本システムでは、他のソフトスキル特性やハードスキル特性の変化も同様に折れ線グラフで把握することができる。
【0134】
[円グラフ(認知特性)について]
図28は、図6に示される認知特性を構成する各五感要素及び言語要素の割合を視覚的に示した円グラフである。このような円グラフを用いて対象者の認知特性を表すことにより、五感および言語のうち、対象者がどの感覚に優位であるかを視覚的に把握することができる。ここでは、この対象者においては、視覚が最も優位であると容易に把握することができる。
【0135】
[円グラフ(パーソナル特性)について]
図29は、図7に示されるパーソナル特性を構成する4つの要素ごとに、各要素を構成する要素の割合を視覚的に示した円グラフである。図28の認知特性と同様に、(A)モチベーション、(B)判断方法、(C)報酬、(D)無報酬時行動特性のそれぞれについて、優位な要素を容易に把握することができる。(A)モチベーションでは、自分優位であることが、(B)判断方法では、具体優位であることが、(C)報酬では幸福優位であることが、(D)無報酬時行動特性では、攻撃、うつが略均等であると容易に把握することができる。
【0136】
以上、本実施形態によれば、対象者を客観的な要素に基づいて分析し、対象者の特性に応じた学習方法を推薦することができる。また、本実施形態における個別最適学習支援システムにより、従来システムに比べ格段に精度を上げることが可能になる。その指標として「個別最適レベル」が挙げられる。本システムの個別最適レベルについて以下の表1を参照して説明する。
【0137】
【表1】
【0138】
表1に示されるように、「学習者に応じて学習内容を変えない」という従来の教育方法における個別最適レベルは0である。また、「学習者のコミュニティに応じて学習内容を変える」方法における個別最適レベルは、学習者の所属するコミュニティが考慮された学習内容であるため、1である。また、「学習者のコミュニティとスキル特性に応じて学習内容を変える」方法における個別最適レベルは2である。この場合の典型的な事例としては学習塾が挙げられる。また、「学習者のコミュニティとスキル特性に応じて学習内容を、パーソナル特性に応じて指導方法を変える」方法における個別最適レベルは3である。この場合の典型的な事例としてフリースクールが挙げられる。なお、フリースクールの場合、実データからではなく主観で判定している場合が多いと考えられる。さらに、「学習者のコミュニティとスキル特性に応じて学習内容を、パーソナル特性に応じて指導方法を、認知特性に応じて使用教材を変える」方法における個別最適レベルは4である。この場合の典型的な事例として専門家が行うフリースクールが挙げられる。
【0139】
一方で、「学習者のコミュニティと目標とスキル特性に応じて学習者が選択した目標の達成を行う最適なコミュニティでの学習内容を、パーソナル特性に応じて指導方法を、認知特性に応じて使用教材を変える」方法、すなわち本実施形態における個別最適学習支援システムにおいては、対象者の行動情報の蓄積により実現されているため、個別最適レベルは5となり得る。
【0140】
また、本システムによる教育支援の自動化のレベルについて以下の表2及び表3を参照して説明する。ここでは、人が行うか、AIが行うかを自動化レベルの基準としており、レベル0~レベル5までの6段階を示している。
【0141】
【表2】
【0142】
【表3】
【0143】
レベル0(教育自動化なし)は、完全に(100%)人が教育する場合であり、教育者がカリキュラムを設計し、独自に指導するものである。いわゆる従来の教育方法であり、少なくともわが国において2024年現在でも伝統的に行われている教育方法である。
【0144】
続いて、レベル1(教育支援)は、指導者の90%が人で、AIが10%である場合であり、典型的には統計的自然言語処理が用いられる。この場合、教育者がカリキュラムを設計し、受講者がわからない問題に対する統計上最も尤度が高い回答を得られる。続いて、レベル2(教育部分自動化)では、80%が人で、AIが20%である場合であり、典型的には統計的自然言語処理が用いられる。この場合、教育者がカリキュラムを設計し、受講者自身で回答がわからない問題に対する最適な回答を得られる。
【0145】
続いて、レベル3(条件付き教育自動化)では、指導者の70%が人で、AIが30%である場合であり、典型的には統計的自然言語処理、画像処理、音声処理、動画処理が用いられる。この場合、AIに推薦されたカリキュラムに基づいて指導し、受講者自身で回答がわからない問題に対する最適な回答を得られる。
【0146】
続いて、レベル4(高度教育自動化)では、指導者の50%が人で、50%がAIである場合であり、これが本実施形態における個別最適教育支援システムがなし得る自動化レベルである。レベル3の統計的機械学習に加え、独自開発のルールベースに基づいた自動化を実現している。すなわち、AIに推薦された教育内容(カリキュラムと教育方法)に基づいて指導し、受講者自身で回答がわからない問題に対する最適な回答を得られる。
【0147】
そして、レベル5(完全教育自動化)では、指導者の100%がAIである場合であり、本発明が究極的に目標とする自動化レベルである。基本的な技術としてはレベル4と共通しているが、レベル5では、音声合成およびアバター生成技術が使用される点でレベル4と異なっている。すなわち、AIに推薦された教育内容(カリキュラムと教育方法)に基づいてAI(アバター)が指導するというものである。
【0148】
[ハードウェア構成について]
図30は、本開示の実施形態における個別最適教育支援システムを構成する支援システムが行う処理を実現するハードウェア構成図である。本実施形態に係る支援システム10は、図30に示すような構成のコンピュータによって実現される。支援システム10に係るコンピュータは、CPU310、RAM320、ROM330、HDD340、メディアインタフェース350,通信インタフェース360、入出力インタフェース370を有する(図30参照)。
【0149】
CPU310は、ROM330またはHDD340に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM330は、支援システム10に係るコンピュータの起動時にCPU310によって実行されるブートプログラムや、支援システム10に係るコンピュータのハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0150】
HDD340は、CPU310によって実行されるプログラム、および、かかるプログラムによって使用されるデータ等を格納する。メディアインタフェース350は、不図示の記録メディアに格納されたプログラムまたはデータを読み取り、RAM320を介してCPU310に提供する。CPU310は、かかるプログラムを、メディアインタフェース350を介して記録メディアからRAM320上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。なお、記録メディアは、例えばDVD(Digital Versatile Disk)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0151】
通信インタフェース360は、ネットワークを介して他の機器からデータを受信してCPU310へ送り、CPU310が生成したデータを、ネットワークを介して他の機器へ送信する。
【0152】
CPU310は、入出力インタフェース370を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、および、キーボードやマウス等の入力装置を制御する。CPU310は、入出力インタフェース370を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU310は、生成したデータを、入出力インタフェース370を介して出力装置へ出力する。
【0153】
例えば、支援システム10に係るコンピュータのCPU310は、RAM320上にロードされたプログラムを実行することにより、支援システム10が有する各処理手段(図2参照)の機能を実現する。また、HDD340には、各処理手段(図2参照)により取り扱われる各種データが格納される。上記コンピュータのCPU310は、これらのプログラムを記録メディアから読み取って実行するが、他の例として、他の装置からネットワークを介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0154】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0155】
例えば、上述の自動化レベルについて、本実施形態に係る個別最適教育支援システムはレベル4(高度教育自動化)を実現可能であるところ、レベル5(完全教育自動化)を実現可能なシステムにも適用可能である。本実施形態においては、学習方法推薦手段により推薦される学習方法を指導する指導者が指導形態選択手段により選択されるところ、かかる指導者として人間の指導者を想定している。これに代えてアバター(AI)を採用することでレベル5の自動化レベルを実現させることが可能になると考えられる。本実施形態における上記システム(指導形態選択手段)により選択された指導者であっても、対象者に相応しい指導者が選択されているものの、対象者のパーソナリティによっては人間の指導者が馴染まない場合も想定され得る。また、最終的に人間の指導者が介在する以上、完全自動化が達成されるとは言えない。そこで、対象者に最適な指導者としてアバターの登場が期待される。このアバターを生成するためには以下の処理が必要であると考えられる。まず、分析された対象者の行動特性に対して最も相性の良い人間の指導者を判定する。また対象者にとって最も良い性別(男女)、年齢(例えば10代~80代まで)、顔、声質、話すスピードをそれぞれ判定する。その結果、対象者に最適なアバターが生成され得る。なお、アバターを用いた支援システムを実装する上では、アバターの出力だけでなく、高度な音声認識技術や、人間と自然なコミュニケーションがとれる汎用的なAIに関する技術が求められる。さらに、上記の指導者に関して、アバターにより人間らしさを再現させるため、人間らしさや人間の性質を対象者に対する分析以上に細分化し、対象者の分析結果と最も相性の良いアバターの生成が求められる。この場合、人間らしさを表す性質を見た目や話し方、聞き方なども加えて細分化して分析するのが望ましい。
【符号の説明】
【0156】
10…個別最適教育支援システム
11…言動情報取得手段
12…身体情報取得手段
13…分析手段
14…学習方法推薦手段
141…基本情報取得手段
142…目標スキル算出手段
143…学習カテゴリ選択手段
144…教材選択手段
145…指導形態選択手段
146…目標変更推薦手段
15…学習内容記憶手段
16…行動特性更新手段
【要約】
【課題】対象者を客観的な要素に基づいて分析し、対象者の特性に応じた学習方法を推薦することを可能にする個別最適教育支援システムを提供する。
【解決手段】本開示の個別最適教育支援システムは、対象者の言動に関する言動情報を取得する言動情報取得手段と、言動情報取得手段により取得される言動情報に基づいて、対象者の行動特性を分析する分析手段と、分析手段により分析された対象者の行動特性に応じた学習方法を推薦する学習方法推薦手段とを備える。
【選択図】 図2
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