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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20241011BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20241011BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20241011BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
G02B5/22
C08F2/44 Z
C08F2/50
C08F290/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019167949
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2021047216
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-12-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】畠山 耕治
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】宮澤 浩
【審判官】本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-180167(JP,A)
【文献】特開2017-8219(JP,A)
【文献】特開2015-163671(JP,A)
【文献】特開2010-15025(JP,A)
【文献】特開2018-156093(JP,A)
【文献】特開2016-38569(JP,A)
【文献】国際公開第2015/137278(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/186489(WO,A1)
【文献】特開2016-56290(JP,A)
【文献】国際公開第2019/013240(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/121602(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G02B5/22
C08F290/12
C08F2/44
C08F2/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される第1化合物、
下記式(2)で表される第2化合物、
重合性基を有する化合物を含むバインダー、
溶媒、
650nm以上900nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する第1色素、及び
900nm超2,000nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する第2色素
を含有し、
上記第1色素が下記式(3)で表される化合物を含み、
上記バインダーが(C-1)重合性化合物及び(C-2)重合体を含み、
上記(C-1)重合性化合物が、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物及び2個以上のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の単量体であり、
上記(C-2)重合体が、1種の重合性基及び主鎖に環構造の少なくとも一方を有する重合体である硬化性組成物。
【化1】
(式(1)中、R は、置換基を有する又は非置換の炭素数1~30のアリール基である。及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~30の1価の有機基である。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~30の1価の有機基又はハロゲン原子である。a及びbは、それぞれ独立して、0~3の整数である。aが2以上の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよい。bが2以上の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよい。)
【化2】
(式(2)中、Aは、1又は複数の五員環又は六員環から構成される環構造である。Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基又は炭素数1~40の1価の有機基である。Rは、*-CO-、*-COO-、*-SCO-、*-COS-、*-S-COO-、*-CONH-、*-NHCO-、又は*-NHCOO-(*は、酸素原子との結合位置を示す。)である。Rは、炭素数1~8のアルキル基である。cは、0~4の整数である。dは、1~3の整数である。eは、1~10の整数である。eが1の場合、Xは1価の有機基であり、eが2以上の場合、Xはe価の連結基である。R、R又はRが複数である場合、複数のR、複数のR又は複数のRは、同一でも異なっていてもよい。)
【化3】
(式(3)中、複数のRは、それぞれ独立して、置換基を有するアリール基である。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基である。複数のRは、互いに結合してこれらが結合する炭素鎖と共に芳香環を形成していてもよい。Mは、2つの水素原子、2価の金属原子、又は3若しくは4価の金属原子の誘導体である。複数のnは、それぞれ独立して、3~6の整数である。)
【請求項2】
光学フィルター用である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
上記式(3)中のRにおける上記置換基がヘテロ原子を有する基である請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
上記ヘテロ原子を有する基がハロゲン原子、アルコキシ基又はアルキルチオ基である請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
上記第2化合物における式(2)中のRが、*-COO-、*-COS-、又は*-CONH-(*は、酸素原子との結合位置を示す。)である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
上記溶媒が環状構造を有する化合物を含む請求項1から請求項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
フェニルチオ骨格及びオキシムエステル構造を有する化合物
をさらに含有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
下記式(4)で表される化合物
をさらに含有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【化4】
(式(4)中、A’は、1又は複数の五員環又は六員環から構成される環構造である。R’は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基又は炭素数1~40の1価の有機基である。c’は、0~4の整数である。d’は、1~3の整数である。e’は、1~10の整数である。e’が1の場合、X’は1価の有機基であり、e’が2以上の場合、X’はe’価の連結基である。R’が複数である場合、複数のR’は、同一でも異なっていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルカメラ、カメラ機能付き携帯電話等には、光学センサーである固体撮像素子が搭載されている。固体撮像素子としては、具体的にはCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサーやCMOS(Complementary MOS)イメージセンサー等が普及している。これらの固体撮像素子に備わるフォトダイオードの感度は、可視光に近い紫外線領域から赤外線領域にわたる。このため、固体撮像素子においては、可視光領域に近い紫外線及び赤外線を遮断するための光学フィルターが設けられている。この光学フィルターにより、固体撮像素子の感度を人間の視感度に近づくように補正することができる。固体撮像素子以外にも、紫外線等を遮断する光学フィルターが各種用途に用いられる。
【0003】
光学フィルターの形成には、例えば、所定波長の光線を遮蔽するための色素、重合性化合物、重合開始剤等の各成分を含む組成物が用いられる(特許文献1参照)。このような組成物を塗工し、硬化させることで光学フィルターが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-228433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線領域の光線を遮蔽するための光学フィルターにおいては、紫外線遮蔽性がより高い光学フィルターが望まれる。一方、従来の光学フィルターにおいては、異物等の欠陥が生じることがある。光学フィルター中の欠陥は、可視光透過性、遮蔽性等に影響を与える場合がある。さらに、光学フィルターは、例えば高温下で使用されてもその透過性や遮蔽性が低下し難いなど、耐熱性も要求される場合がある。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、可視光領域に近い紫外線の遮蔽性、可視光の透過性及び耐熱性が良好であり、異物等の欠陥が少ない光学フィルターを形成することができる硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、下記式(1)で表される第1化合物、下記式(2)で表される第2化合物、重合性基を有する化合物を含むバインダー、及び溶媒を含有する硬化性組成物である。
【化1】
(式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~30の1価の有機基である。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~30の1価の有機基又はハロゲン原子である。a及びbは、それぞれ独立して、0~3の整数である。aが2以上の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよい。bが2以上の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよい。)
【化2】
(式(2)中、Aは、1又は複数の五員環又は六員環から構成される環構造である。Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基又は炭素数1~40の1価の有機基である。Rは、*-CO-、*-COO-、*-SCO-、*-COS-、*-S-COO-、*-CONH-、*-NHCO-、又は*-NHCOO-(*は、酸素原子との結合位置を示す。)である。Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。cは、0~4の整数である。dは、1~3の整数である。eは、1~10の整数である。eが1の場合、Xは1価の有機基であり、eが2以上の場合、Xはe価の連結基である。R、R又はRが複数である場合、複数のR、複数のR又は複数のRは、同一でも異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可視光領域に近い紫外線の遮蔽性、可視光の透過性及び耐熱性が良好であり、異物等の欠陥が少ない光学フィルターを形成することができる硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[硬化性組成物]
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、(A)式(1)で表される第1化合物(以下、「(A)化合物」とも称する。)、(B)式(2)で表される第2化合物(以下、「(B)化合物」とも称する。)、(C)バインダー、及び(D)溶媒を含有する。(C)バインダーは、重合性基を有する化合物を含む。
【0010】
当該硬化性組成物は、可視光領域に近い紫外線の遮蔽性、可視光の透過性及び耐熱性が良好であり、異物等の欠陥が少ない光学フィルターを形成することができる。なお、当該硬化性組成物から形成されるものは、硬化物、硬化膜、遮蔽膜等であってよい。当該硬化性組成物において上記効果が生じる理由は定かではないが、以下の理由が推測される。(A)化合物は、カルバゾール骨格にニトロ基が結合した、オキシム系重合開始剤である。(A)化合物においては、重合開始剤として機能した後、残物として、ニトロ基が結合したカルバゾール骨格を有する化合物が硬化物(光学フィルター)中に残りやすいと推測される。この残物は、ニトロ基が結合したカルバゾール骨格を有することにより、硬化物中において、可視光に対しては十分な透過性を有しつつ、可視光領域に近い紫外線(例えば、波長350~395nmの紫外線)を十分に吸収することができる。一方、上記残物は欠陥の発生原因となりやすく、具体的には、硬化物中で上記残物由来のラジカルが発生することにより、異物等の欠陥が生じることが推測される。これに対し、(B)化合物は、高温下で保護基(-R-R)が脱離する構造を有し、脱離後に初めてラジカルを捕捉する機能が発現される。従って、(B)化合物は、硬化のための加熱時には、重合開始剤である(A)化合物から発生するラジカルを捕捉せず、硬化後、硬化物(光学フィルター)中で発生する残物由来のラジカル等については、十分に捕捉することができる。このようなことから、(A)化合物と(B)化合物とを含む当該硬化性組成物によれば、可視光領域に近い紫外線の遮蔽性及び可視光の透過性が良好であり、異物等の欠陥が少ない光学フィルターを形成することができると推測される。また、重合開始剤として(A)化合物を用いることなどにより、形成される光学フィルターの耐熱性も向上する。
【0011】
[(A)化合物]
(A)化合物は、下記式(1)で表される化合物である。上述のように、(A)化合物は、重合開始剤として良好に機能する一方、得られた光学フィルター中に残存し、可視光領域に近い紫外線を吸収する。
【0012】
【化3】
【0013】
式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~30の1価の有機基である。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~30の1価の有機基又はハロゲン原子である。a及びbは、それぞれ独立して、0~3の整数である。aが2以上の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよい。bが2以上の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよい。
【0014】
ここで、「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【0015】
~Rで表される炭素数1~30の1価の有機基としては、例えば1価の炭化水素基、上記炭化水素基の炭素-炭素間又は結合手側の末端に2価のヘテロ原子含有基を含む基、上記炭化水素基及び上記ヘテロ原子含有基を含む基が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基等が挙げられる。
【0016】
1価の炭化水素基としては、例えば、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0017】
鎖状炭化水素基としては、例えば
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0018】
脂環式炭化水素基としては、例えば
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環のシクロアルキル基;
シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環のシクロアルケニル基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の多環のシクロアルケニル基などが挙げられる。
脂環式炭化水素基は、2-シクロペンチルエチル基、2-シクロヘキシルエチル基等のシクロアルキルアルキル基等、鎖状構造と脂環構造とが組み合わされた炭化水素基であってもよい。
【0019】
芳香族炭化水素基としては、例えば
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0020】
1価又は2価のヘテロ原子含有基が有するヘテロ原子としては、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子、リン原子等が挙げられる。これらの中で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。
【0021】
2価のヘテロ原子含有基としては、例えば-O-、-CO-、-CS-、-NR’-、これらを組み合わせた基等が挙げられる。R’は、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。
【0022】
1価のヘテロ原子含有基としては、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、スルファニル基(-SH)、アミノ基、シアノ基等が挙げられる。
【0023】
~Rで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0024】
としては、置換基を有する又は非置換の炭化水素基が好ましく、置換基を有する炭化水素基がより好ましい。上記炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基及びアリール基が好ましい。Rが置換基を有する又は非置換のアリール基である場合、得られる光学フィルターにおける可視光領域に近い紫外線の遮蔽性がより高まる傾向にある。一方、Rが置換基を有する又は非置換のアルキル基、シクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基である場合、得られる光学フィルターにおける可視光透過性が高まる傾向にある。
【0025】
で表される炭化水素基が有していてもよい置換基としては、置換基を有する又は非置換のアルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、炭化水素基が酸素原子に結合した基をいう。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェニロキシ基等が挙げられる。アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、複素環基等を挙げることができる。複素環基としては、ピリジル基、ピリミジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフリル基、ジオキソラニル基、ベンゾオキサゾール-2-イル基、テトラヒドロピラニル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、ピラゾリジル基、チアゾリジル基、イソチアゾリジル基、オキサゾリジル基、イソオキサゾリジル基、ピペリジル基、ピペラジル基、モルホリニル基等の5~7員複素環等が挙げられる。これらの複素環基は、アルキル基等の置換基をさらに有していてもよい。複素環基は、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成されている基が好ましい。Rで表される炭化水素基が有していてもよい置換基は、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成されている基が好ましい。
【0026】
また、Rは、炭化水素基、又は炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成されている基も好ましく、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成されている基がより好ましい。Rが酸素原子を含む場合、この酸素原子は、エーテル結合を形成する酸素原子であることが好ましい。すなわち、Rは、炭化水素基、又は炭化水素基の炭素-炭素間に酸素原子を含む基であることが好ましい。
【0027】
の炭素数の上限としては、20が好ましく、15がより好ましく、10がさらに好ましい場合がある。Rの炭素数が上記上限以下の場合、得られる光学フィルターにおける可視光透過性が高まる傾向にある。Rの炭素数の下限は、3、5又は9が好ましい場合がある。Rの炭素数が上記下限以上の場合、得られる光学フィルターにおける可視光領域に近い紫外線の遮蔽性がより高まる傾向にある。
【0028】
としては、炭化水素基が好ましく、アルキル基及びアリール基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。Rの炭素数の上限としては、10が好ましく、6がより好ましく、3がさらに好ましい。Rとしては、メチル基及びエチル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0029】
としては、炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。Rの炭素数の上限としては、10が好ましく、6がより好ましく、3がさらに好ましい。Rとしては、メチル基、エチル基及びプロピル基が特に好ましく、エチル基が最も好ましい。
【0030】
及びRとしては、それぞれ、炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。R及びRの炭素数の上限としては、それぞれ、10が好ましく、6がより好ましく、3がさらに好ましい。
【0031】
aは0が好ましい。bは0が好ましい。
【0032】
(A)化合物において、ニトロ基(-NO)は、カルバゾール骨格の3位に結合していることが好ましい。
【0033】
(A)化合物の具体例としては、例えば国際公開第2017/010575号の段落[0037]に記載の化合物等が挙げられる。(A)化合物は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0034】
当該硬化性組成物における全固形分((D)溶媒以外の成分)に占める(A)化合物の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.3質量%がより好ましい。(A)化合物の含有量が上記下限以上であることで、得られる光学フィルターにおける可視光領域に近い紫外線の遮蔽性がより高まり、また、良好な硬化性、耐熱性等も発現することができる。一方、この含有量の上限としては、30質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、5質量%又は2質量%がさらに好ましい場合もある。(A)化合物の含有量が上記上限以下であることで、得られる光学フィルターの異物等の欠陥がより低減し、可視光透過性も向上する。
【0035】
[(A’)化合物]
当該硬化性組成物は、(A)化合物以外の重合開始剤である(A’)化合物をさらに含んでいてよい。(A’)化合物としては、従来公知の重合開始剤を用いることができる。(A’)化合物としては、例えば(A)化合物以外のO-アシルオキシム系化合物、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物、オニウム塩系化合物等を挙げることができる。これらの中でも、O-アシルオキシム系化合物が好ましい。
【0036】
(A’)化合物としては、フェニルチオ骨格及びオキシムエステル構造を有する化合物がより好ましい。このような化合物を(A’)化合物と併用することで、得られる光学フィルターの可視光透過性が向上する傾向にある。
【0037】
フェニルチオ骨格及びオキシムエステル構造を有する化合物としては、下記式(5)で表される化合物が好ましい。
【0038】
【化4】
【0039】
式(5)中、R及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1~30の1価の有機基である。R11は、水素原子、ベンゾイル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1~10の1価の炭化水素基、又は置換基を有する若しくは非置換の炭素数1~10のアルコキシ基である。R12及びR13は、それぞれ独立して、炭素数1~30の1価の有機基又はハロゲン原子である。f及びgは、それぞれ独立して、0~4の整数である。fが2以上の場合、複数のR12は、同一でも異なっていてもよい。gが2以上の場合、複数のR13は、同一でも異なっていてもよい。
【0040】
、R10、R12及びR13で表される炭素数1~30の1価の有機基は、R等で表される炭素数1~30の1価の有機基と同様である。
【0041】
としては、置換基を有する又は非置換の炭化水素基が好ましく、非置換の炭化水素基がより好ましい。上記炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基及びアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましい。Rで表される炭化水素基が有していてもよい置換基としては、Rで表される炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の基を挙げることができる。
【0042】
の炭素数の上限としては、20が好ましく、10がより好ましく、6がより好ましい。Rの炭素数の下限は1である。
【0043】
10としては、炭化水素基が好ましく、アルキル基及びアリール基がより好ましい。R10の炭素数の上限としては、10が好ましく、6がより好ましい。R10としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びフェニル基が特に好ましい。
【0044】
11で表されるアルコキシ基が有していてもよい置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基等を挙げることができ、ヒドロキシ基が好ましい。
【0045】
11としては、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、及び置換基を有する又は非置換の炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、水素原子、及び置換基を有する又は非置換の炭素数1~10のアルコキシ基がより好ましい。置換基を有する又は非置換の炭素数1~10のアルコキシ基の中では、置換基としてヒドロキシ基を有する炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、置換基としてヒドロキシ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基がより好ましい。
【0046】
12及びR13としては、それぞれ、炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。R12及びR13の炭素数の上限としては、それぞれ、10が好ましく、6がより好ましく、3がさらに好ましい。
【0047】
gは0が好ましい。fは0が好ましい。
【0048】
(A’)化合物は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0049】
当該硬化性組成物が(A’)化合物を含有する場合、当該硬化性組成物における全固形分に占める(A’)化合物の含有量の下限としては、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましい。一方、この含有量の上限としては、20質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。
【0050】
当該硬化性組成物における全固形分に占める(A)化合物及び(A’)化合物の合計含有量の下限としては、1質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。上記合計含有量が上記下限以上であることで、得られる光学フィルターにおける可視光領域に近い紫外線の遮蔽性がより高まり、また、耐熱性も高めることができる。一方、この含有量の上限としては、30質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。上記合計含有量が上記上限以下であることで、得られる光学フィルターの異物等の欠陥がより低減し、可視光透過性も向上する。
【0051】
当該硬化性組成物において(A)化合物と、フェニルチオ骨格及びオキシムエステル構造を有する化合物とを併用する場合、これらの含有量比(質量比)としては、1:20~20:1が好ましく、1:15~15:1がさらに好ましい。このような比で、(A)化合物と、フェニルチオ骨格及びオキシムエステル構造を有する化合物とを併用することで、得られる光学フィルターの可視光領域に近い紫外線の遮蔽性、可視光透過性等がより向上する。
【0052】
[(B)化合物]
(B)化合物は、下記式(2)で表される化合物である。上述のように、(B)化合物は、加熱後に初めてラジカル捕捉能が発現される潜在的なラジカル捕捉剤である。当該硬化性組成物が(B)化合物を含有することにより、得られる光学フィルターにおける欠陥が低減され、その結果、良好な可視光透過性が発揮される。
【0053】
【化5】
【0054】
式(2)中、Aは、1又は複数の五員環又は六員環から構成される環構造である。Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基又は炭素数1~40の1価の有機基である。Rは、*-CO-、*-COO-、*-SCO-、*-COS-、*-S-COO-、*-CONH-、*-NHCO-、又は*-NHCOO-(*は、酸素原子との結合位置を示す。)である。Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。cは、0~4の整数である。dは、1~3の整数である。eは、1~10の整数である。eが1の場合、Xは1価の有機基であり、eが2以上の場合、Xはe価の連結基である。R、R又はRが複数である場合、複数のR、複数のR又は複数のRは、同一でも異なっていてもよい。
【0055】
Aで表される環構造としては、炭素環、複素環等が挙げられる。炭素環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等の脂環、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環が挙げられる。複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリジン環、ピラゾリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、イミダゾリジン環、オキサゾール環、イソキサゾール環、イソオキサゾリジン環、チアゾール環、イソチアゾール環、イソチアゾリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルフォリン環、チオモルフォリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環等が挙げられる。複素環は、芳香環であっても、非芳香環であってもよい。
【0056】
Aで表される環構造の炭素数としては、5以上12以下が好ましく、5又は6がより好ましく、6がさらに好ましい。Aで表される環構造は、炭素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0057】
で表される炭素数1~40の1価の有機基としては、R等で表される炭素数1~30の1価の有機基として例示したもの等が挙げられる。
【0058】
としては、炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、t-ブチル基等の3級アルキル基がさらに好ましい。Rの炭素数の上限としては、10が好ましく、6がより好ましい。Rの炭素数の下限としては、2が好ましく、4がより好ましい。
【0059】
としては、*-COO-、*-COS-、又は*-CONH-が好ましく、*-COO-がより好ましい。Rがこのような連結基である場合、硬化の際の加熱に伴う解離がより効果的に生じ、得られる光学フィルターにおける欠陥がより十分に低減される。
【0060】
で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、R等で表される炭素数1~30の1価の有機基として例示したもののうちの炭素数1~20のもの等が挙げられる。
【0061】
としては、炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、t-ブチル基等の3級アルキル基がさらに好ましい。Rの炭素数の上限としては、16が好ましく、8がより好ましく、2がさらに好ましい。Rがこのような基である場合、得られる光学フィルターの欠陥がより十分に低減される傾向にある。
【0062】
cは、2以上が好ましく、2がより好ましい。
【0063】
dは、1が好ましい。
【0064】
eの下限は、2が好ましく、3がより好ましく、4がさらに好ましい。eが上記下限以上である場合、得られる光学フィルターの欠陥がより十分に低減される傾向にある。eの上限は、8であってよく、6であってもよく、4であってもよい。
【0065】
cが2であり、dが1である場合、-O-R-Rで表される基が結合している環構造Aの原子の両隣の原子にそれぞれRで表される基が結合していることが好ましい。このような(B)化合物としては、具体的に下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0066】
【化6】
【0067】
式(6)中、R~R、X及びeは、式(2)中のR~R、X及びeと同義である。
【0068】
eが1の場合のXで表される1価の有機基としては、R等で表される炭素数1~30の1価の有機基として例示したもの等が挙げられる。
【0069】
eが2以上の場合のXで表されるe価の連結基としては、e価の有機基の他、-O-、-NR’-(R’は、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。)等が挙げられる。e価の有機基としては、上述した1価の有機基から、(e-1)個の水素原子をさらに除いた基が挙げられる。
【0070】
Xとしては、e価の有機基が好ましい。この有機基としては、炭化水素基、及び炭化水素基の炭素-炭素間に-O-、-CO-又は-COO-を含む基が好ましく、炭化水素基、及び炭化水素基の炭素-炭素間に-COO-を含む基がより好ましい。Xで表される有機基中には、-O-、-CO-及び-COO-のうちの複数種が含まれていてもよいし、複数の-O-、複数の-CO-又は複数の-COO-が含まれていてもよい。
【0071】
Xの炭素数の上限としては、40が好ましく、30がより好ましく、24がさらに好ましい。この炭素数の下限としては、1が好ましく、4がより好ましく、8がさらに好ましく、12がよりさらに好ましい。
【0072】
Aがベンゼン環である場合、Xは、-O-R-Rで表される基に対して、パラ位に結合していることが好ましい。
【0073】
(B)化合物の具体例としては、例えば国際公開第2014/021023号の段落[0061]~[0082]に記載の化合物等が挙げられる。(B)化合物は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。(B)化合物は、例えばフェノール系化合物と、酸無水物、酸塩化物、Boc化試薬、アルキルハライド化合物、シリルクロライド化合物、アリルエーテル化合物等とを反応させて得ることができる。
【0074】
当該硬化性組成物における全固形分に占める(B)化合物の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.2質量%がより好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。(B)化合物の含有量が上記下限以上であることで、得られる光学フィルター中において十分なラジカル捕捉能が発揮され、欠陥をより低減することができる。一方、この含有量の上限としては、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、2質量%がさらに好ましい。
【0075】
[(B’)化合物]
当該硬化性組成物は、保護基で保護されていない酸化防止剤である(B’)化合物をさらに含むことが好ましい。当該硬化性組成物が(B’)化合物をさらに含むことで、硬化前の硬化性組成物中で発生し得るラジカルを十分に捕捉できるため、保存安定性が高まり、例えば長期保存後の当該硬化性組成物を用いて得られる光学フィルターの欠陥も低減される。
【0076】
(B’)化合物としては、従来公知の酸化防止剤として、2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス[2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサ-スピロ[5.5]ウンデカン、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
【0077】
(B’)化合物としては、下記式(4)で表される化合物が好ましい。
【0078】
【化7】
【0079】
式(4)中、A’は、1又は複数の五員環又は六員環から構成される環構造である。R’は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基又は炭素数1~40の1価の有機基である。c’は、0~4の整数である。d’は、1~3の整数である。e’は、1~10の整数である。e’が1の場合、X’は1価の有機基であり、e’が2以上の場合、X’はe’価の連結基である。R’が複数である場合、複数のR’は、同一でも異なっていてもよい。
【0080】
A’で表される1又は複数の五員環又は六員環から構成される環構造としては、Aで表される1又は複数の五員環又は六員環から構成される環構造として例示したもの等が挙げられる。
【0081】
A’で表される環構造の炭素数としては、5以上12以下が好ましく、5又は6がより好ましく、6がさらに好ましい。A’で表される環構造は、炭素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0082】
’で表される炭素数1~40の1価の有機基としては、R等で表される炭素数1~30の1価の有機基として例示したもの等が挙げられる。
【0083】
’としては、炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、t-ブチル基等の3級アルキル基がさらに好ましい。R’の炭素数の上限としては、10が好ましく、6がより好ましい。R’の炭素数の下限としては、2が好ましく、4がより好ましい。
【0084】
c’は、2以上が好ましく、2がより好ましい。
【0085】
d’は、1が好ましい。
【0086】
e’の下限は、2が好ましく、3がより好ましく、4がさらに好ましい。e’が上記下限以上である場合、得られる光学フィルターの欠陥がより十分に低減される傾向にある。e’の上限は、8であってよく、6であってもよく、4であってもよい。
【0087】
c’が2であり、d’が1である場合、ヒドロキシ基(-OH)が結合している環構造(A’)の原子の両隣の原子にそれぞれR’で表される基が結合していることが好ましい。
【0088】
X’で表される1価の有機基及びe’価の連結基としては、Xで表される1価の有機基及びe価の連結基として例示したもの等が挙げられる。
【0089】
X’としては、e’価の有機基が好ましい。この有機基としては、炭化水素基、及び炭化水素基の炭素-炭素間に-O-、-CO-又は-COO-を含む基が好ましく、炭化水素基、及び炭化水素基の炭素-炭素間に-COO-を含む基がより好ましい。X’で表される有機基中には、-O-、-CO-及び-COO-のうちの複数種が含まれていてもよいし、複数の-O-、複数の-CO-又は複数の-COO-が含まれていてもよい。
【0090】
X’の炭素数の上限としては、40が好ましく、30がより好ましく、24がさらに好ましい。この炭素数の下限としては、1が好ましく、4がより好ましく、8がさらに好ましく、12がよりさらに好ましい。
【0091】
A’がベンゼン環である場合、X’は、ヒドロキシ基(-OH)に対して、パラ位に結合していることが好ましい。
【0092】
(B’)化合物は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0093】
当該硬化性組成物が(B’)化合物を含有する場合、当該硬化性組成物における全固形分に占める(B’)化合物の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.2質量%がより好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。(B’)化合物の含有量が上記下限以上であることで、保存安定性が十分に向上し、欠陥をより低減することができる。一方、この含有量の上限としては、5質量%が好ましく、2質量%がより好ましい。
【0094】
当該硬化性組成物における全固形分に占める(B)化合物及び(B’)化合物の合計含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.3質量%がより好ましく、0.5質量%がさらに好ましい。上記合計含有量が上記下限以上であることで、得られる光学フィルターにおける欠陥をより低減することができる。一方、この含有量の上限としては、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、2質量%がさらに好ましい。上記合計含有量が上記上限以下であることで、可視光透過性等が向上する傾向にある。
【0095】
当該硬化性組成物において(B)化合物と(B’)化合物とを併用する場合、これらの含有量比(質量比)としては、1:9~9:1が好ましく、3:7~7:3がより好ましく、4:6~6:4がさらに好ましい。このような比で、(B)化合物と(B’)化合物とを併用することで、硬化前及び硬化後に生じ得る好ましくないラジカルを効果的に捕捉することができ、得られる光学フィルターの欠陥がより低減される。
【0096】
[(C)バインダー]
(C)バインダーは、通常、得られる光学フィルター、遮蔽膜等の硬化物における基材となる成分である。(C)バインダーは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0097】
(C)バインダーは、重合性基を有する化合物を含む。当該硬化性組成物が重合性基を有する化合物を含有することにより、良好な硬化性や得られる光学フィルターの良好な耐熱性等を発揮することができる。重合性基を有する化合物は、1以上の重合性基を有していればよいが、2以上の重合性基を有する化合物であることが好ましい。重合性基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、オキシラニル基、オキセタニル基、N-アルコキシメチルアミノ基、アルコキシシリル基等を挙げることができる。重合性基を有する化合物は、単量体(非重合体)であってもよく、重合体であってもよい。
【0098】
[(C-1)重合性化合物]
(C)バインダーは、重合性基を有する化合物として、単量体である(C-1)重合性化合物を含むことが好ましい。(C-1)重合性化合物としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、及び2個以上のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物が好ましく、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。(C-1)重合性化合物は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0099】
2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物等である多官能(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレートと多官能イソシアネートとの反応物等である多官能ウレタン(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物等であるカルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0100】
ここで、上記脂肪族ポリヒドロキシ化合物としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の2価の脂肪族ポリヒドロキシ化合物や、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3価以上の脂肪族ポリヒドロキシ化合物を挙げることができる。上記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールジメタクリレート等を挙げることができる。上記多官能イソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。上記酸無水物としては、例えば無水こはく酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の二塩基酸の無水物や、無水ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の四塩基酸二無水物を挙げることができる。
【0101】
2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の具体例としては、例えばω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2-(2’-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、こはく酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。
【0102】
2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の中でも、多官能(メタ)アクリレートが好ましく、3個以上10個以下の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
【0103】
2個以上のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物としては、例えばメラミン構造、ベンゾグアナミン構造、ウレア構造を有する化合物等を挙げることができる。2個以上のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物の具体例としては、N,N,N’,N’,N’’,N’’-ヘキサ(アルコキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’-テトラ(アルコキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N’,N’-テトラ(アルコキシメチル)グリコールウリル等を挙げることができる。
【0104】
当該硬化性組成物における全固形分に占める(C-1)重合性化合物の含有量の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限としては、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40%がさらに好ましい。
【0105】
[(C-2)重合体]
(C)バインダーは、(C-2)重合体を含むことが好ましい。(C-2)重合体の一部又は全部は、分散剤として用いられている重合体等であってもよい。(C-2)重合体は、強度、感度、耐熱性等の向上のため、重合性基を有することが好ましく、重合性基を含む構造単位を有していることがより好ましい。重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、オキシラニル基、オキセタニル基、アルコキシシリル基又はこれらの組み合わせが好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0106】
重合性基を含む構造単位を与える単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、3-(メタ)アクリロイルオキシメチル-3-エチルオキセタン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02.6]デシル(メタ)アクリレート、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0107】
また、例えば、カルボキシ基を有する構造単位を有する樹脂に、カルボキシ基と反応する基(オキシラニル基、オキセタニル基等)と、(メタ)アクリロイル基等の重合性基とを有する化合物を反応させることによっても、重合性基を含む構造単位を導入することができる。
【0108】
(C-2)重合体における重合性基を有する構造単位の含有量の下限としては、(C-2)重合体100質量%に対して、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましく、30質量%、50質量%又は75質量%がよりさらに好ましいこともある。一方、この含有量の上限としては、95質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、85質量%がさらに好ましい。
【0109】
(C-2)重合体は、耐熱性向上のため、主鎖に環構造を有することが好ましい。この環構造の環員数としては、例えば3~12であってもよいが、5~8が好ましい。
【0110】
主鎖に環構造を含む構造単位を与える単量体としては、N置換マレイミド系単量体、シクロオレフィン等を挙げることができる。
【0111】
N置換マレイミド系単量体とは、マレイミドにおける窒素原子に結合する水素原子が置換基により置換された化合物である。上記置換基としては、炭化水素基が好ましく、環構造を有する炭化水素基がより好ましく、芳香族炭化水素基がより好ましい。N置換マレイミド系単量体としては、N-フェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-シクロオクチルマレイミド、N-メチルマレイミド等を挙げることができる。
【0112】
シクロオレフィンとしては、ノルボルネン系オレフィン、テトラシクロドデセン系オレフィン、ジシクロペンタジエン系オレフィン等を挙げることができる。
【0113】
その他、主鎖に環構造を有する(C-2)重合体として、フェノール樹脂等を用いることもできる。
【0114】
(C-2)重合体における主鎖に環構造を含む構造単位の含有量としては、(C-2)重合体100質量%に対して、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~30質量%である。
【0115】
(C-2)重合体は、酸性基を有することが好ましい。酸性基としては、例えばカルボキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、スルホ基等が挙げられる。上記の中でも、酸性基としては、カルボキシ基が好ましい。(C-2)重合体は、1個以上の酸性基を有する構造単位を含む樹脂であることが好ましい。(C-2)重合体が、酸性基を有する場合、良好なアルカリ可溶性を示すことができる。(C-2)重合体がアルカリ可溶性を有する場合、アルカリ現像を可能とし、所望のパターン形状を有する光学フィルターを形成することができる。
【0116】
酸性基を含む構造単位を与える単量体としては、カルボキシ基を有する単量体として、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α-クロルアクリル酸、桂皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物;こはく酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕、フタル酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕等の2価以上の多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイロキシアルキル〕エステル;ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0117】
フェノール性水酸基を有する単量体としては、4-ビニルフェノール、4-イソプロペニルフェノール、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0118】
(C-2)重合体における酸性基を含む構造単位の含有量としては、(C-2)重合体100質量%に対して、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは3質量%~30質量%である。
【0119】
(C-2)重合体は、さらにその他の構造単位を含むことができる。その他の構造単位を与える単量体としては、例えば
スチレン、α-メチルスチレン、p-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、アセナフチレン等の芳香族ビニル化合物;
メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度2~10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度2~10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度2~10)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度2~10)モノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールのエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3-〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕オキセタン、3-〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕-3-エチルオキセタン等の(メタ)アクリル酸エステル;
シクロヘキシルビニルエーテル、イソボルニルビニルエーテル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカニルビニルエーテル、3-(ビニルオキシメチル)-3-エチルオキセタン等のビニルエーテル;
ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ-n-ブチル(メタ)アクリレート、ポリシロキサン等の重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー等を挙げることができる。
【0120】
(C-2)重合体は、上述した各単量体等を用いて公知の方法により重合することで得ることができる。(C-2)重合体は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0121】
(C-2)重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値において、好ましくは2,000~500,000、より好ましくは3,000~100,000、さらに好ましくは4,000~30,000である。Mwが上記範囲にあると、溶媒や現像液に対する溶解性に優れ、十分な機械的特性を有する(C-2)重合体を得ることができる。
【0122】
当該硬化性組成物における全固形分に占める(C-2)重合体の含有量の下限としては、10質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限としては、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、45質量%がさらに好ましい。(C-2)重合体の含有量を上記範囲とすることで、得られる光学フィルターの紫外線遮蔽性、可視光透過性、耐熱性等に関する特性がより十分に発揮される。
【0123】
当該硬化性組成物における全固形分に占める(C)バインダーの含有量の下限としては、30質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限としては、90質量%が好ましく、80質量%がより好ましい。(C)バインダーの含有量を上記範囲とすることで、得られる光学フィルターの紫外線遮蔽性、可視光透過性、耐熱性等に関する特性がより十分に発揮される。
【0124】
当該硬化性組成物における(C)バインダーの平均重合性二重結合当量は、600以下が好ましく、400以下がより好ましく、200以下がよりさらに好ましい。ここで、平均重合性二重結合当量とは、(A)成分から発生するラジカルと反応し得る(メタ)アクリロイル基、アルケニル基等の重合性二重結合基が、(C)バインダー中にどれだけ存在するかを表す指標である。平均重合性二重結合当量を上記範囲とすることで、得られる光学フィルターの溶剤耐久性がより十分に発揮される。なお、上記平均重合性二重結合当量の下限は、例えば30であり、50であってよく、80であってもよい。
【0125】
上記平均重合性二重結合当量は、(C)バインダーに含まれる重合性二重結合1molあたりの(C)バインダーの質量(g)であり、以下計算式にて求められる。
平均重合性二重結合当量(g/mol)
=(C)バインダーの総質量(g)/(C)バインダーに含まれる全ての重合性二重結合の物質量(mol)
換言すれば、(C)バインダーの平均重合性二重結合当量とは、(C)バインダーに含まれる重合性二重結合1あたりの(C)バインダーの分子量である。
【0126】
[(D)溶媒]
(D)溶媒は、他の各成分を溶解又は分散させる成分である。(D)溶媒としては、他の成分を分散又は溶解し、かつこれらの成分と反応せず、適度の揮発性を有するものである限り、適宜に選択して使用することができる。(D)溶媒は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0127】
(D)溶媒としては、例えば(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、乳酸アルキルエステル類、(シクロ)アルキルアルコール類、ケトアルコール類、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エーテル類、ケトン類、ジアセテート類、アルコキシカルボン酸エステル類、エステル類、芳香族炭化水素類、アミド類、ラクタム類等を挙げることができる。
【0128】
(D)溶媒は、環状構造を有する化合物を含むことが好ましい。環状構造を有する化合物を溶媒として用いることで、溶解性や分散性がより良好なものとなる。上記環状構造は、炭素環であってもよく、複素環であってもよい。また、上記環状構造は、多環であってもよく、単環であってもよい。また、上記環状構造は、芳香環であってもよく、脂肪環であってもよい。
【0129】
環状構造を有する化合物である溶媒としては、環状ケトン、環状エーテル、ラクトン(γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン等)、ラクタム、芳香族炭化水素(トルエン等)及びこれらの組み合わせが好ましい。これらの中でも、環状ケトン、ラクトン及び芳香族炭化水素が好ましく、環状ケトン及びラクトンがより好ましく、環状ケトンがさらに好ましい。
【0130】
環状ケトンとしては、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン等を挙げることができる。これらの中でも、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びシクロヘプタノンが好ましく、シクロペンタノン及びシクロヘキサノンがより好ましい。
【0131】
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等を挙げることができる。
【0132】
ラクトンとしては、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン等を挙げることができ、γ-ブチロラクトンが好ましい。
【0133】
ラクタムとしては、ペンタノ-4-ラクタム、5-メチル-2-ピロリジノン、ヘキサノ-6-ラクタム、6-ヘキサンラクタム等を挙げることができる。
【0134】
(D)溶媒中の環状構造を有する化合物の含有量の下限としては、30質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましく、75質量%がよりさらに好ましい。(D)溶媒は、実質的に環状構造を有する化合物のみから構成されていてよい。(D)溶媒中の環状構造を有する化合物の含有量を上記下限以上とすることで、他の成分の分散性や溶解性が高まり、本発明の効果がより十分に奏される。
【0135】
当該硬化性組成物における固形分濃度((D)溶媒を除いた各成分の合計濃度)の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。一方、この固形分濃度の上限としては、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。固形分濃度を上記範囲とすることにより、分散性、保存安定性、塗布性等がより良好なものとなる。
【0136】
[(E)色素]
当該硬化性組成物は、650nm以上2,000nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する色素を含むことが好ましい。当該硬化性組成物がこのような(E)色素をさらに含むことで、得られる光学フィルターにおける可視光領域に近い赤外線の遮蔽性を発揮させることができる。すなわち、当該硬化性組成物が(E)色素をさらに含む場合、得られる光学フィルターは可視光領域に近い紫外線及び赤外線を効果的に遮断することができ、固体撮像素子の光学フィルター等として好適なものとなる。(E)色素は、染料であっても顔料であってもよい。また、(E)色素は、有機物であっても無機物であってもよい。(E)色素は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0137】
(E)色素としては、650nm以上900nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する第1色素(以下、「(E-1)色素」とも称する。)及び900nm超2,000nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する第2色素(以下、「(E-2)色素」とも称する。)の少なくとも一方を含むことが好ましく、双方を含むことがより好ましい。このような色素を用いることで、可視光領域に近い赤外線の遮蔽性がより高まり、得られる光学フィルターが固体撮像素子用途などにおいてより有用なものとなる。
【0138】
[(E-1)色素]
(E-1)色素は、フタロシアニン系色素、シアニン系色素、ピロロピロール系色素、ナフタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素、アゾ系色素、スクアリリウム系色素又はこれらの組み合わせを含むことが好ましく、フタロシアニン系色素を含むことが好ましい。また、(E-1)色素として、2種以上を組み合わせて用いることも好ましい。これらの色素は従来公知のものを用いることができる。
【0139】
(E-1)色素の極大吸収波長の下限は、680nmが好ましく、700nmがより好ましく、720nmがさらに好ましい。一方、この極大吸収波長の上限は、1,000nmが好ましく、900nmがより好ましく、800nmがさらに好ましく、750nmがよりさらに好ましい。
【0140】
(E-1)色素は、フタロシアニン系色素である下記式(3)で表される化合物を含むことが好ましい。このフタロシアニン化合物は、可視光領域(例えば430nm以上580nm以下の波長領域)の透過性が高く、一方、近赤外線領域(例えば700nm以上800nm以下の波長領域)の遮蔽性が高い。また、このフタロシアニン化合物は、他の成分との相溶性に優れる。従って、当該硬化性組成物がは、このようなフタロシアニン化合物を含有する場合、異物等の欠陥がより少なく、可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する特性がより良好な光学フィルターを形成することができる。
【0141】
【化8】
【0142】
式(3)中、複数のRは、それぞれ独立して、置換基を有する若しくは非置換のアルキル基、又は置換基を有する若しくは非置換のアリール基である。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基である。複数のRは、互いに結合してこれらが結合する炭素鎖と共に芳香環を形成していてもよい。Mは、2つの水素原子、2価の金属原子、又は3若しくは4価の金属原子の誘導体である。複数のnは、それぞれ独立して、3~6の整数である。
【0143】
で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、2-メチルプロピル基、1-メチルプロピル基、t-ブチル基等の炭素数1~30の直鎖状又は分岐状のアルキル基を挙げることができる。このアルキル基の炭素数の上限としては、12が好ましく、8がより好ましく、4がさらに好ましい。
【0144】
で表されるアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基等を挙げることができる。このアリール基としては、芳香環のみから構成される基が好ましく、フェニル基及びナフチル基がより好ましい。
【0145】
としては、得られる光学フィルターの耐熱性等の点から、置換基を有する又は非置換のアリール基であることが好ましい。
【0146】
複数のRでそれぞれ表されるアルキル基及びアリール基は、置換基を有していても、有していなくてもよいが、置換基を有していることが好ましい。すなわち、複数のRは、それぞれ独立して、置換基を有するアルキル基、又は置換基を有するアリール基であることが好ましい。このように、複数のRが置換基を有することで、フタロシアニン化合物の相溶性がより高まり、得られる光学フィルターの異物等の欠陥がより抑制され、可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する特性もより良好になる。さらに、複数のRが置換基を有することで、得られる光学フィルターの耐熱性も向上する。
【0147】
複数のRでそれぞれ表されるアルキル基及びアリール基が有することができる置換基としては、アルケニル基、アルキニル基等の炭化水素基であってもよいが、ヘテロ原子を有する基であることが好ましい。ヘテロ原子とは、水素原子及び炭素原子以外の原子をいう。複数のRでそれぞれ表されるアルキル基及びアリール基が、ヘテロ原子を有する置換基を有することで、相溶性等がより高まり、得られる光学フィルターの異物等の欠陥がより抑制され、可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する特性もより良好になる。さらに、複数のRが、ヘテロ原子を有する置換基を有することで、得られる光学フィルターの耐熱性も向上する。上記ヘテロ原子としては、ハロゲン原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、ハロゲン原子及び酸素原子がより好ましい。
【0148】
ヘテロ原子を有する置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基等を挙げることができる。
【0149】
ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基及びエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0150】
アルキルチオ基としては、メチルチオ基(CH-S-)、エチルチオ基(C-S-)、プロピルチオ基(C-S-)等を挙げることができ、メチルチオ基及びエチルチオ基がより好ましい。
【0151】
ヘテロ原子を有する置換基の中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基及びアルキルチオ基が好ましく、ハロゲン原子及びアルコキシ基がより好ましい。また、ハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基又はこれらの組み合わせであることも好ましい。ヘテロ原子を有する置換基の炭素数は0~10であってよく、1~4が好ましい。
【0152】
複数のRは、同一でも異なってもよいが、同一であることが好ましい。
【0153】
複数のRは、互いに結合していてよい。通常、複数のRのうち、同一のベンゼン環に結合している2つのRが互いに結合し、これらが結合する炭素鎖と共に芳香環を形成する。形成される芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等を挙げることができる。これらの芳香環の水素原子は、炭化水素基やその他の置換基で置換されていてもよい。
【0154】
としては、水素原子が好ましい。また、複数のRは、同一でも異なってもよいが、同一であることが好ましい。
【0155】
Mで表される2価の金属原子としては、Pd、Cu、Zn、Pt、Ni、Co、Fe、Mn、Sn、In、Ru、Rh、Pb等を挙げることができる。なお、2価の金属原子とは、2価のカチオンになることができる金属原子をいう。
【0156】
ここで、金属原子の誘導体とは、金属原子を含む原子群をいう。3価の金属原子とは、3価のカチオンになることができる金属原子をいう。3価の金属原子としては、Al、In等が挙げられる。4価の金属原子とは、4価のカチオンになることができる金属原子をいう。4価の金属原子としては、Si、Ge、Sn等を挙げることができる。なお、金属原子には、半金属原子も含まれる。上記Mで表される3又は4価の金属原子の誘導体としては、AlCl、AlBr、AlI、AlOH、InCl、InBr、InI、InOH、SiCl、SiBr、SiI、Si(OH)、GeCl、GeBr、GeI、SnCl、SnBr、SnI、Sn(OH)、VO、TiO等を挙げることができる。
【0157】
Mとしては、H(2つの水素原子)、Pd、Cu、Zn、Pt、Ni、Co、Fe、Mn、Sn、In、SnCl、AlCl、VO及びTiOが好ましく、VOがより好ましい。
【0158】
nの下限としては、4が好ましい。nの上限としては、5が好ましく、4がより好ましい。複数のnは、同一でも異なってもよいが、同一であることが好ましい。
【0159】
式(3)で表されるフタロシアニン化合物の極大吸収波長の下限は、680nmが好ましく、700nmがより好ましく、720nmがさらに好ましい。一方、この極大吸収波長の上限は、1,000nmが好ましく、900nmがより好ましく、800nmがさらに好ましく、750nmがよりさらに好ましい。式(3)で表されるフタロシアニン化合物の極大吸収波長が上記範囲であることにより、可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関するより良好な特性を有する光学フィルターを形成することができる。
【0160】
式(3)で表されるフタロシアニン化合物の合成方法は特に限定されず、公知の方法を組み合わせて合成することができる。例えば、下記式(i)で表されるフタロニトリル系化合物又は式(ii)で表される1,3-ジイミノイソインドリン系化合物と、金属又は金属誘導体とを反応させることにより合成することができる。
【0161】
【化9】
【0162】
式(i)及び(ii)中、R、R及びnは式(3)におけるものと同義である。
【0163】
金属又は金属誘導体としてはAl、Si、Ti,V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ru、Rh、Pd、In、Sn、Pt、Pb及びこれらのハロゲン化物、カルボン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、カルボニル化合物、酸化物、錯体等が挙げられる。これらの中でも、特に金属のハロゲン化物及びカルボン酸塩が好ましく用いられる。これらの例としては塩化銅、臭化銅、沃化銅、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酢酸ニッケル、塩化コバルト、塩化鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、沃化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化バナジウム、オキシ塩化バナジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、塩化アルミニウム、塩化マンガン、塩化鉛、酢酸鉛、塩化インジウム、塩化チタン、塩化スズ等が挙げられる。
【0164】
反応温度は、例えば60~300℃であり、好ましくは100~220℃である。反応時間は、例えば30分~72時間であり、好ましくは1時間~48時間である。反応においては、溶媒を使用することが好ましい。反応に使用される溶媒としては、沸点60℃以上の有機溶媒が好ましく、80℃以上の有機溶媒がより好ましい。
【0165】
用いる有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、1-ドデカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、ジメチルエタノール、ジエチルエタノール等のアルコール溶媒、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、スルフォラン、ニトロベンゼン、キノリン、DMI(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、尿素等の高沸点溶媒が挙げられる。
【0166】
反応は、触媒の存在下又は非存在下に行われるが、触媒存在下の方が好ましい。触媒としては、モリブデン酸アンモニウム等の無機触媒、又はDBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン)等の塩基性有機触媒が使用できる。
【0167】
式(3)中のMが2つの水素原子であるフタロシアニン化合物の場合は、式(i)で表されるフタロニトリル系化合物又は式(ii)で表される1,3-ジイミノイソンインドリン系化合物と、金属ナトリウム又は金属カリウムとを上記反応条件にて反応させた後、中心金属であるナトリウム又はカリウムを塩酸、硫酸等で脱離処理することにより製造できる。
【0168】
反応終了後、溶媒を留去するか、又は反応液をフタロシアニン化合物に対する貧溶媒に排出して目的物を析出させ、析出物をろ過することにより、式(3)で表されるフタロシアニン化合物を得ることができる。必要に応じて、更に再結晶又はカラムクロマトグラフィー等公知の精製方法で精製することにより、より高純度の目的物を得ることができる。
【0169】
なお、式(i)で表されるフタロニトリル系化合物及び式(ii)で表される1,3-ジイミノイソンインドリン系化合物は、公知の方法を参考にして合成することができる。例えば、特表2003-516421号に記載の方法を参考にして合成することができる。
【0170】
(E-1)色素としては、式(3)で表されるフタロシアニン化合物と、他のフタロシアニン化合物とを併用することが好ましい。他のフタロシアニン化合物の極大吸収波長の下限としては、600nmが好ましく、650nmがより好ましい。一方、他のフタロシアニン化合物の極大吸収波長の上限としては、900nmが好ましく、850nmがより好ましく、800nmがさらに好ましいこともあり、750nmがさらに好ましいこともある。式(3)で表されるフタロシアニン化合物の極大吸収波長と他のフタロシアニン化合物の極大吸収波長の差の下限としては、10nmが好ましく、30nmがより好ましい。一方、この差の上限としては、100nmが好ましく、80nmがより好ましく、60nmがさらに好ましい。他のフタロシアニン化合物は、従来公知の各種フタロシアニン化合物を挙げることができる。
【0171】
(E-1)色素に占める式(3)で表されるフタロシアニン化合物の含有量の下限としては、50質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましく、80質量%がよりさらに好ましいこともある。一方、上記含有量の上限は、100質量%であってよく、99質量%であってもよく、90質量%であってもよく、80質量%であってもよい。
【0172】
(E-1)色素に占める他のフタロシアニン化合物の含有量の下限としては、1質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。一方、上記含有量の上限は、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。
【0173】
当該硬化性組成物における全固形分に占める(E-1)色素の含有量の下限としては、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましく、4質量%がよりさらに好ましい。一方、この含有量の上限としては、20質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましく、8質量%がよりさらに好ましい。(E-1)色素の含有量を上記範囲とすることで、得られる光学フィルターの可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する特性がより良好になる。
【0174】
[(E-2)色素]
(E-2)色素は、無機顔料を好適に用いることができる。無機顔料である(E-2)色素は、通常、粒子状であり、当該硬化性組成物中に分散して存在する。
【0175】
(E-2)色素としては、金属又は半金属(ケイ素等)の酸化物であることが好ましい。(E-2)色素としては、具体的には、セシウム酸化タングステン、石英、磁鉄鉱、アルミナ、チタニア、ジルコニア、スピネル、錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これらの無機化合物は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0176】
(E-2)色素としては、これらの中でも、セシウム酸化タングステンが好ましい。セシウム酸化タングステンは、赤外線(特に波長が900nm超2,000nm以下の赤外線)に対しては吸収が高く(すなわち、赤外線に対する遮蔽性が高く)、可視光に対しては吸収が低い赤外線遮蔽剤である。よって、セシウム酸化タングステンを用いることで、得られる光学フィルターの良好な可視光透過性を維持しつつ、赤外線遮蔽性を高めることができる。
【0177】
セシウム酸化タングステンは、例えば下記式(a)で表すことができる。
CsWO ・・・(a)
式(a)中、0.001≦x≦1.1である。2.2≦y≦3.0である。
【0178】
上記式(a)中のxが0.001以上であることにより、赤外線を十分に遮蔽することができる。xの下限は、0.01が好ましく、0.1がより好ましい。一方、xが1.1以下であることにより、セシウム酸化タングステン中に不純物相が生成されることをより確実に回避することできる。xの上限は、1が好ましく、0.5がより好ましい。
【0179】
上記式(a)中のyが2.2以上であることにより、材料としての化学的安定性をより向上させることができる。yの下限は、2.5が好ましい。一方、yが3.0以下であることにより赤外線を十分に遮蔽することができる。
【0180】
上記式(a)で表されるセシウム酸化タングステンの具体例としては、Cs0.33WO等を挙げることができる。
【0181】
(E-2)色素は微粒子であることが好ましい。(E-2)色素の平均粒子径(D50)の上限としては、500nmが好ましく、200nmがより好ましく、50nmがさらに好ましく、30nmがよりさらに好ましく、20nmがよりさらに好ましい。平均粒子径が上記上限以下であることによって、凝集異物の発生を抑え、また、可視光透過性をより高めることができる。一方、製造時における取り扱い容易性などの理由から、(E-2)色素の平均粒子径は、通常、1nm以上であり、10nm以上であってもよい。なお、この平均粒子径(D50)は、当該硬化性組成物中の二次粒子径である。
【0182】
(E-2)色素は、公知の方法によって合成することもできるが、市販品として入手可能である。例えば、セシウム酸化タングステンは、住友金属鉱山社の「YMF-02」等のセシウム酸化タングステン微粒子の分散物としても入手可能である。
【0183】
当該硬化性組成物における全固形分に占める(E-2)色素の含有量の下限としては、1質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましく、20質量%がよりさらに好ましい。(E-2)色素の含有量を上記範囲とすることで、得られる光学フィルターの可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する特性がより良好になる。
【0184】
(E-1)色素の含有量に対する(E-2)色素の含有量の質量比([E-2]/[E-1])の下限としては、1が好ましく、2が好ましい。一方、この質量比([E-2]/[E-1])の上限としては、40が好ましく、20がより好ましく、10がさらに好ましい。(E-1)色素と(E-2)色素との含有量比を上記範囲とすることで、得られる光学フィルターの可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する特性がより良好になる。
【0185】
[添加剤]
当該硬化性組成物は、上述した(A)~(E)成分以外に、必要に応じて種々の添加剤を含有することもできる。
【0186】
添加剤としては、例えば界面活性剤、密着促進剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、残渣改善剤、現像性改善剤、反応調整剤等を挙げることができる。
【0187】
界面活性剤としては、フッ素界面活性剤、シリコーン界面活性剤等を挙げることができる。
【0188】
密着促進剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0189】
紫外線吸収剤としては、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン類等を挙げることができる。
【0190】
凝集防止剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0191】
残渣改善剤としては、マロン酸、アジピン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、メサコン酸、2-アミノエタノール、3-アミノ-1-プロパノール、5-アミノ-1-ペンタノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、4-アミノ-1,2-ブタンジオール等を挙げることができる。
【0192】
現像性改善剤としては、こはく酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕、フタル酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等剤等を挙げることができる。
【0193】
反応調整剤としては、多官能チオール等を挙げることができる。
【0194】
当該硬化性組成物における全固形分に占める、上述した(A)~(E)成分以外の成分剤の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、1質量%がより好ましい。一方、この含有量の上限としては、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。
【0195】
[調製方法]
当該硬化性組成物の調製方法としては、特に限定されず、各成分を混合することによって調製することができる。例えば、当該硬化性組成物が、(E-2)色素を含むものである場合、まず、(E-2)色素を含有する分散液を調製し、この分散液にその他の成分を添加し、混合する方法を採用することができる。分散液又は当該硬化性組成物は、必要に応じろ過処理を施し、凝集物を除去することができる。
【0196】
[光学フィルター]
当該硬化性組成物は、光学フィルター用として好適である。すなわち、当該硬化性組成物は、光学フィルター又は光学フィルターに備わる遮蔽膜の形成材料として好適に用いることができる。当該硬化性組成物によれば、光学フィルターにおける遮蔽膜を好適に形成することができる。当該硬化性組成物を用いて得られる光学フィルターは、可視光領域に近い紫外線の遮蔽性、可視光の透過性及び耐熱性が良好であり、異物等の欠陥が少ない。さらに、当該硬化性組成物が(E)色素を含む場合、得られる光学フィルターは、良好な赤外線遮蔽性を発揮することができる。
【0197】
当該光学フィルターは、例えば以下の方法によって形成することができる。まず、支持体上に、当該硬化性組成物を塗布した後、プレベークを行って溶媒を蒸発させ、塗膜を形成する。次いで、この塗膜を露光したのち、現像液を用いて現像して、塗膜の非露光部を溶解除去する。その後、ポストベークすることにより、所定形状にパターニングされた遮蔽膜が形成された光学フィルターが得られる。なお、現像処理は行わなくてもよく、この場合、パターニングされていない遮蔽膜を形成することができる。
【0198】
当該硬化性組成物を塗布する上記支持体としては、上記透明基板、マイクロレンズ、カラーフィルター等が相当する。上記塗布は、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法(スリット塗布法)、バー塗布法等の適宜の塗布法を採用することができる。
【0199】
プレベークにおける加熱乾燥の条件としては、例えば70℃以上110℃以下、1分以上10分以下程度である。
【0200】
塗膜の露光に用いる放射線の光源としては、例えばキセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯等のランプ光源やアルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、XeClエキシマーレーザー、窒素レーザー等のレーザー光源等を挙げることができる。露光光源として、紫外線LEDを使用することもできる。波長は、190nm以上450nm以下の範囲にある放射線が好ましい。放射線の露光量は、一般的には10J/m以上50,000J/m以下程度である。
【0201】
現像液としては、アルカリ現像液が一般的である。アルカリ現像液としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等の水溶液が好ましい。アルカリ現像液には、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、現像後は、通常、水洗する。
【0202】
現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。現像条件は、常温で5秒以上300秒以下程度である。
【0203】
ポストベークにおける加熱温度としては、例えば120℃以上280℃以下であり、180℃以上250℃以下が好ましい。このようなポストベーク(加熱処理)を行うことで、硬化が進行すると共に、(B)化合物の保護基(-R-R)が脱離する。従って、得られた遮蔽膜中において、(B)化合物が良好なラジカル捕捉能を発現することができる。また、ポストベークにおける加熱時間としては、例えば1分以上60分以下程度である。
【0204】
このようにして形成された遮蔽膜の平均膜厚の下限としては、通常0.5μmであり、1μmが好ましい。一方、この平均膜厚の上限としては、通常10μmであり、5μmが好ましい。遮蔽膜の平均膜厚が上記範囲であることによって、紫外線及び赤外線の遮蔽性と可視光透過性とのバランスが良好なものとなる。
【0205】
当該光学フィルターは、上記遮蔽膜のみからなるものであってもよいし、上記遮蔽膜と他の構成部材とからなるものであってもよい。例えば、当該光学フィルターは、上記遮蔽膜と他の層とを有する積層体であってもよい。
【0206】
上記遮蔽膜は、一構成部材として、固体撮像素子等の光学センサーに組み込まれているものであることが好ましい。この場合、当該遮蔽膜が、単体で光学フィルターとして機能する。光学センサーに当該遮蔽膜が組み込まれていることで、大きなプロセスマージンを獲得することなどができ好ましい。当該遮蔽膜が固体撮像素子に組み込まれている場合、当該遮蔽膜は、例えば固体撮像素子のマイクロレンズの外面側、マイクロレンズとカラーフィルターとの間、カラーフィルターとフォトダイオードとの間などに配することができる。当該遮蔽膜は、マイクロレンズとカラーフィルターとの間又はカラーフィルターとフォトダイオードとの間に積層されることが好ましい。
【0207】
上記光学フィルターとしては、透明基板の表面に当該赤外線遮蔽膜が積層されてなるものであってもよい。上記透明基板としては、ガラスや透明樹脂等が採用される。上記透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等を挙げることができる。このような光学フィルターも、固体撮像素子における赤外線カットフィルターなどとして好適に用いられる。
【0208】
上記光学フィルターを備える固体撮像素子等の光学センサーは、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム、医療機器等に有用である。
【0209】
[光学センサー]
上記光学フィルターは、固体撮像素子等の光学センサーに用いられる。上記光学フィルターは異物等の欠陥が少なく、可視光透過性、紫外線遮蔽性及び赤外線遮蔽性に関する良好な特性を有するため、当該光学フィルターを有する固体撮像素子等の光学センサーは、感度、色再現性等が高く、実用性に優れる。
【0210】
以下、光学センサーの一例として固体撮像素子について説明する。当該固体撮像素子は、一般的に、複数のフォトダイオードが配置される層、カラーフィルター、及びマイクロレンズがこの順に積層されてなる構造を有する。また、これらの層間には、平坦化層が設けられていてもよい。当該固体撮像素子においては、マイクロレンズ側から光が入射する。入射光は、マイクロレンズ及びカラーフィルターを透過し、フォトダイオードに到達する。なお、カラーフィルターについては、例えばR(赤)、G(緑)及びB(青)のフィルターのそれぞれにおいて、特定の波長範囲の光のみが透過するよう構成されている。
【0211】
当該固体撮像素子において、上記光学フィルター(遮蔽膜)は、上記マイクロレンズの外面側、上記マイクロレンズと上記カラーフィルターとの間、上記カラーフィルターと上記複数のフォトダイオードが配置される層との間などに設けられることができる。当該光学フィルターは、マイクロレンズとカラーフィルターとの間又はカラーフィルターとフォトダイオードとの間に積層されることが好ましい。なお、当該光学フィルターと、マイクロレンズ、カラーフィルター、フォトダイオード等との間には、さらに別の層(平坦化層等)が設けられていてもよい。
【0212】
当該固体撮像素子の具体例としては、カメラモジュールとしてのCCDやCMOSなどが挙げられる。当該固体撮像素子は、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム、医療機器等に有用である。
【実施例
【0213】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0214】
<合成例1>色素(E-1-1)の合成
4,7-ビス(4-(2,6-ジメトキシフェノキシ)ブチル)-1,3-ジイミノベンゾイソインドリン32.9g、三塩化バナジウム4.76g、及びDBU13.74gを1-ペンタノール100mL中、内温125℃にて24時間撹拌した。その後、メタノール600mLを添加し、析出物をろ取し、乾燥した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル/トルエン)で精製して緑色粉末11.2gを得た。得られた化合物は、下記の分析結果より目的の下記式(E-1-1)で表されるフタロシアニン系化合物であることを確認した。
・MS:(EI)m/z 2245M+
・元素分析値:実測値(C:68.44%、H:6.44%、N:4.99%);
理論値(C:68.47%、H:6.46%、N:4.99%)
このようにして得られた化合物のトルエン溶液は734.5nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は6.75×10mL/g・cmであった。
【0215】
【化10】
なお、上記式中、「*」は、結合手を示す(以下の化学式においても同様)。
【0216】
<合成例2>色素(E-1-2)の合成
合成例1における4,7-ビス(4-(2,6-ジメトキシフェノキシ)ブチル)-1,3-ジイミノベンゾイソインドリン32.9gの代わりに4,7-ビス(4-メトキシブチル)-1,3-ジイミノベンゾイソインドリン18.6gを使用した以外は合成例1と同様にして緑色粉末14.5gを得た。得られた化合物は、下記の分析結果より目的の下記式(E-1-2)で表されるフタロシアニン系化合物であることを確認した。
・MS:(EI)m/z 1267M+
・元素分析値:実測値(C:68.20%、H:7.66%、N:8.82%);
理論値(C:68.17%、H:7.63%、N:8.83%)
このようにして得られた化合物のトルエン溶液は734.0nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は1.21×10mL/g・cmであった。
【0217】
【化11】
【0218】
<合成例3>セシウム酸化タングステン(E-2-1)粉末の合成
特許第4096205号公報の段落[0113]に記載の方法を用いて、セシウム酸化タングステン(Cs0.33WO)粉末を合成した。
【0219】
<合成例4>重合体(C-2-1)の合成
反応容器に、ベンジルメタクリレート14質量部、スチレン10質量部、N-フェニルマレイミド12質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート15質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート29質量部及びメタクリル酸20質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部に溶解し、更に2,2’-アゾイソブチロニトリル3質量部及びα-メチルスチレンダイマー5質量部を投入した。反応容器内を窒素パージ後、攪拌及び窒素バブリングしながら80℃で5時間加熱し、重合体(C-2-1)を含む溶液(重合体溶液[C-2-1]:固形分濃度35質量%)を得た。得られた重合体(C-2-1)について、昭和電工社ゲルパーミエ-ションクロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-104型、カラム:昭和電工社製LF-604を3本とKF-602を結合したもの、展開溶剤:テトラヒドロフラン)を用いて、ポリスチレン換算の分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)が9,700、数平均分子量(Mn)が5,700であり、Mw/Mnが1.70であった。なお、本合成例において、各単量体の仕込比(質量比)と、得られたバインダーとしての重合体における各単量体に由来する構造単位の含有量比(質量比)とは、実質的に同じとみなすことができる(以下の合成例においても同様である)。
【0220】
<合成例5>重合体(C-2-2)の合成
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル200質量部を仕込み、温度を80℃に上昇した。同温度で、プロピレングリコールモノメチルエーテル100質量部、メタクリル酸100質量部、及び2,2’-アゾイソブチロニトリル5質量部の混合溶液を3時間かけて滴下し、滴下後に温度を保持して3時間重合した。その後、反応溶液の温度を100~120℃に昇温させ、さらに2時間反応を行った。冷却後、プロピレングリコールモノメチルエーテル25質量部、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート116質量部、及び触媒量のジメチルベンジルアミンを投入し、110℃に昇温させて9時間反応することで、重合体(C-2-2)を含む溶液(重合体溶液[C-2-2]:固形分濃度40質量%)を得た。得られた重合体(C-2-2)について合成例4と同様に分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)が15,100、数平均分子量(Mn)が7,000であり、Mw/Mnが2.16であった。
【0221】
<合成例6>重合体(C-2-3)の合成
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル200質量部を仕込み、温度を80℃に上昇した。同温度で、プロピレングリコールモノメチルエーテル200質量部、メタクリル酸67質量部、N-シクロヘキシルマレイミド33質量部、及び2,2’-アゾイソブチロニトリル5質量部の混合溶液を3時間かけて滴下し、滴下後に温度を保持して3時間重合した。その後、反応溶液の温度を100~120℃に昇温させ、さらに3時間反応を行った。冷却後、プロピレングリコールモノメチルエーテル28質量部、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート119質量部、及び触媒量のジメチルベンジルアミンを投入し、110℃に昇温させて30時間反応することで、重合体(C-2-3)を含む溶液(重合体溶液[C-2-3]:固形分濃度40質量%)を得た。得られた重合体(C-2-3)について合成例4と同様に分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)が17,000、数平均分子量(Mn)が7,700であり、Mw/Mnが2.21であった。
【0222】
<合成例7>重合体(C-2-4)の合成
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、2,2-アゾビスイソブチロニトリル5質量部、3-メトキシプロピオン酸メチル140質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル60質量部を仕込み、さらにメタクリル酸グリシジル32質量部、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン40質量部、ベンジルメタクリレート11質量部、n-ブチルメタクリレート3質量部及びメタクリル酸14質量部を仕込んで窒素置換した後、緩やかに撹拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇した。この温度で5時間保持して重合することにより、重合体(C-2-4)を含む溶液(重合体溶液[C-2-4]固形分濃度35質量%)を得た。得られたバインダーとしての重合体について、合成例4と同様に分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)が9,500、数平均分子量(Mn)が5,800であり、Mw/Mnが1.64であった。
【0223】
<合成例8>重合体(C-2-5)の合成
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル600質量部、プロピレングリコールメチルエチルアセテート20質量部を仕込み、温度を80℃に上昇した。同温度で、プロピレングリコールモノメチルエーテル100質量部、プロピレングリコールメチルエチルアセテート60質量部、メタクリル酸41質量部、ベンジルメタクリレート8質量部、スチレン8質量部、N-フェニルマレイミド21質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート17質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート4質量部、及び2,2’-アゾイソブチロニトリル8質量部の混合溶液を3時間かけて滴下し、滴下後に温度を保持して3時間重合した。その後、反応溶液の温度を100~120℃に昇温させ、さらに1時間反応を行った。冷却後、プロピレングリコールモノメチルエーテル20質量部、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート41質量部、及び触媒量のジメチルベンジルアミンを投入し、110℃に昇温させて12時間反応することで、重合体(C-2-5)を含む溶液(重合体溶液[C-2-5]:固形分濃度35質量%)を得た。得られた重合体(C-2-5)について合成例4と同様に分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)が16,000、数平均分子量(Mn)が5,800であり、Mw/Mnが2.76であった。
【0224】
<合成例9>分散剤(β)の合成
文献(Macromolecules 1992,25,p5907-5913)に記載の方法に沿って、ジメチルアミノエチルメタクリレート45質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート20質量部、n-ブチルメタクリレート5質量部、PME-200(メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、及びCH=C(CH)COO(CO)-CH(n≒4)で表される化合物)30質量部を一括で重合し、ランダム共重合体を含む反応溶液を得た。続いて、反応溶液をメタノールを用いてクエンチを行い、得られた反応溶液を7質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで水にて洗浄した。この後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶媒置換を行うことで、分散剤(β)を含む分散剤溶液[β]を収率80質量%で得た。得られた分散剤(β)のアミン価は160mgKOH/g、Mwは9500、Mw/Mnは1.21、分散剤溶液[β]の固形分量は39.6質量%であった
【0225】
以下、使用した各成分を示す。
・化合物(A-1)
国際公開第2017/169819号段落[0037]に化合物No.1として記載の下記式で表される化合物
【0226】
【化12】
【0227】
・化合物(A-2)
国際公開第2017/169819号段落[0037]に化合物No.2として記載の下記式で表される化合物
【0228】
【化13】
【0229】
・化合物(A-3)
国際公開第2017/169819号段落[0037]に化合物No.8として記載の下記式で表される化合物
【0230】
【化14】
【0231】
・化合物(A’-1)
特許第4818458号段落[0035]に化合物No.26として記載の下記式で表される化合物
【0232】
【化15】
【0233】
・化合物(A’-2)
下記式で表される化合物「Irgacure OXE01」(BASF社製)
【0234】
【化16】
【0235】
・化合物(A’-3)
特開2014-227533号段落[0017]に化合物No.5として記載の下記式で表される化合物
【0236】
【化17】
【0237】
・化合物(B-1)
国際公開第2014/021023号段落[0076]の左側最下段に記載の下記式で表される化合物
【0238】
【化18】
【0239】
・化合物(B-2)
国際公開第2014/021023号段落[0076]の右側最下段に記載の下記式で表される化合物
【0240】
【化19】
【0241】
・化合物(B-3)
国際公開第2014/021023号段落[0077]の最上段に記載の下記式で表される化合物
【0242】
【化20】
【0243】
・化合物(B’-1)
下記式で表される化合物「Irganox 1010」(BASF社製)
【0244】
【化21】
【0245】
・重合性化合物(C-1-1)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(C-1-1)「KAYARAD DPHA」(日本化薬社製)
【0246】
・重合体(C-2-1)~(C-2-5)
上記合成例4~8で得られた重合体(C-2-1)~(C-2-5)
【0247】
・溶媒(D-1)
シクロペンタノン(CPN)
【0248】
・溶媒(D-2)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0249】
・色素(E-1-1)~(E-1-2)
上記合成例1~2で得られたフタロシアニン系色素(E-1-1)~(E-1-2)
【0250】
・色素(E-1-3)
特開平05-25177号の実施例1に記載のフタロシアニン系色素(E-1-3)(極大吸収波長692nm)
【0251】
・色素(E-2-1)
上記合成例3で得られたセシウム酸化タングステン(E-2-1)
【0252】
・分散剤溶液[α]
ビックケミー社製の「BYK-LPN6919」(固形分濃度60質量%、アミン価120mgKOH/g)
【0253】
・分散剤溶液[β]
上記合成例9で得られた分散剤溶液[β]
【0254】
・添加剤(F-1)
フッ素系界面活性剤「FTX-218D」(ネオス社製)
【0255】
・添加剤(F-2)
反応調整剤である多官能チオール「カレンズMT PEI」(昭和電工社製)
【0256】
上記合成例に記載していない成分及び商品名を記載していない成分のいずれも、市販品又は公知の方法で合成した化合物を用いた。
【0257】
[調製例1]顔料分散液(分散液[E-2-1])の調製
セシウム酸化タングステン(E-2-1)25.00質量部、分散剤溶液[α]13.30質量部、及び溶媒(分散媒)としてのCPN61.70質量部を用意した。これらを0.1mm径のジルコニアビーズ2,000質量部と共に容器に充填し、ペイントシェーカーで分散を行うことで、平均粒子径(D50)が19nmの分散液[E-2-1]を得た。なお、平均粒子径は、光散乱測定装置(ドイツALV社の「ALV-5000」)を用いて、DLS法により測定した。
【0258】
[調製例2]顔料分散液(分散液[E-2-2])の調製
分散剤溶液を分散剤溶液[β]20.20質量部、溶媒をCPN54.80質量部に変更した以外は調製例1と同様にして、平均粒子径が19nmの分散液[E-2-2]を得た。
【0259】
[調製例3]色素溶液(溶液[E-1-1]等)の調製
色素(E-1-1)7.00質量部、及び溶媒としてCPN93.00質量部を容器に量り取り、攪拌機で混合した。得られた溶液を0.2μmのPTFE製フィルターを用いて0.05MPaの一定加圧条件で加圧ろ過することで、色素(E-1-1)を含む溶液[E-1-1]を得た。
また、色素(E-1-1)の代わりに色素(E-1-2)又は色素(E-1-3)を用いたこと以外は同様の方法で、溶液[E-1-2]及び溶液[E-1-3]を得た。
【0260】
[調製例4]界面活性剤溶液(溶液[F-1])の調製
界面活性剤である添加剤(F-1)5.00質量部、及び溶媒としてCPN95.00質量部を容器に量り取り、攪拌機で混合することで、界面活性剤を含む溶液[F-1]を得た。
【0261】
[調製例5]反応調整剤溶液(溶液[F-2])の調製
反応調整剤である添加剤(F-2)5.00質量部、及び溶媒としてCPN95.00質量部を容器に量り取り、攪拌機で混合することで、反応調整剤を含む溶液[F-2]を得た。
【0262】
[調製例6]酸化防止剤溶液(溶液[B-1]等)の調製
化合物(B-1)5.00質量部、及び溶媒としてCPN95.00質量部を容器に量り取り、攪拌機で混合することで、化合物(B-1)を含む溶液[B-1]を得た。
また、化合物(B-1)の代わりに化合物(B-2)、化合物(B-3)又は化合物(B’-1)を用いたこと以外は同様の方法で、溶液[B-2]、溶液[B-3]及び溶液[B’-1]を得た。
【0263】
[実施例1]
化合物(A-1)1.6質量部、
溶液[B-1]4.3質量部、
重合性化合物(C-1-1)8質量部、
溶液[C-2-1]22.9質量部、
溶媒(D-1)17.5質量部
溶液[E-1-1]21.1質量部、
分散液[E-2-1]16.6質量部、
溶液[F-1]1.6質量部、及び
溶液[F-2]6.4質量部
を容器に量り取り、攪拌機で混合した。この混合物約100mLを0.5μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製フィルターを用いて0.05MPaの一定加圧条件で加圧ろ過することにより、実施例1の硬化性組成物を得た。
【0264】
[実施例2~17、比較例1~4]
配合した各成分の種類及び配合量を表1、2に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~17及び比較例1~4の各硬化性組成物を得た。(A)、(A’)、(C-1)及び(D)成分以外は溶液又は分散液の状態で配合させており、表1、2には、溶液又は分散液の配合量を示す。表1、2において、溶液又は分散液として配合させた成分は大括弧[]で示している。また、実施例1、11、14、15、20及び比較例1の硬化性組成物においては、バインダーの平均重合性二重結合当量もあわせて示す。
【0265】
[評価]
得られた各硬化性組成物を用い、以下の評価を行った。評価結果を表1、2に示す。
【0266】
各硬化性組成物をガラス基板上に所定の膜厚になるようにスピンコート法にて塗布した。その後、塗膜を100℃で120秒間加熱し、i線ステッパにて500mJ/cmとなるように露光を行った。次いで220℃で300秒間加熱することで、ガラス基板上に平均膜厚3.0μmの遮蔽膜を作製した。なお、膜厚は触針式段差計(ヤマト科学社の「アルファステップIQ」)にて測定した。次に、上記ガラス基板上に作製した遮蔽膜の各波長領域における透過率を、分光光度計(日本分光社の「V-7300」)を用いて、ガラス基板対比で測定した。得られたスペクトルより、以下のような評価基準により評価を行った。
【0267】
(紫外光遮蔽性)
350-395nmの平均透過率を算出した。平均透過率が30%未満の場合は光学フィルターとして使用した際に、高いノイズ遮蔽機能を有するため実用性が高いと推定される。また上記平均透過率について、以下の基準で評価した。
A:25%未満
B:25%以上30%未満
C:30%以上
【0268】
(可視光透過性)
430-600nmの平均透過率を算出した。平均透過率が80%未満の場合は光学フィルターとして使用した際の感度が低下する。また、上記平均透過率について、以下の基準で評価した。
A:85%以上
B:80%以上85%未満
C:80%未満
【0269】
(赤外線遮蔽性1)
700-900nmの範囲における透過率が、連続で20%以下となる範囲を求めた。連続で20%以下となる範囲が40nm以上の場合は光学フィルターとして使用した際に、高いノイズ遮蔽機能を有するため実用性が高いと推定される。また、上記赤外線遮蔽範囲について、以下の基準で評価した。
A:55nm以上
B:40nm以上55nm未満
C:40nm未満
【0270】
(赤外線遮蔽性2)
900-1200nmの平均透過率を算出した。平均透過率が45%未満の場合は光学フィルターとして使用した際に、高いノイズ遮蔽機能を有するため実用性が高いと推定される。また、上記平均透過率について、以下の基準で評価した。
A:32%未満
B:32%以上45%未満
C:45%以上
【0271】
(260℃耐熱性)
上記ガラス基板上に作製した遮蔽膜について、ホットプレートを用いて260℃で300秒間加熱し、加熱前後の各波長領域における透過率を、分光光度計(日本分光社の「V-7300」)を用いて、ガラス基板対比で測定した。この時、作製した赤外線遮蔽膜の700-800nmの範囲で透過率が最も低くなる波長での吸光度を(α1)、同波長における260℃の加熱後の吸光度を(α2)、吸光度保持率=100×(α1)/(α2)として、以下の基準で260℃の耐熱性を評価した。保持率が80%以上の場合は、遮蔽膜として使用した際に、保護膜等と併用することで高い耐熱性を維持することが可能となり、実用性が高いと推定される。
A:保持率が90%以上
B:保持率が80%以上90%未満
C:保持率が80%未満
【0272】
(欠陥抑制性1)
各硬化性組成物をシリコン基板にスピンコート法により塗布し、この塗膜を硬化させ、膜厚が約1μmの硬化膜(遮蔽膜)を形成した。欠陥/異物検査装置(KLA-Tencor社の「KLA 2351」)を用いて、硬化膜の欠陥密度(Defect density)を測定した。この欠陥密度の値が小さいほど、欠陥抑制性が高いと判断できる。なお、欠陥とは、サイズが1μm以上となる検出点をさす。上記欠陥密度に基づき、以下の基準で欠陥抑制性を評価した。
A:10/cm以下
B:10/cm超50/cm以下
C:50/cm
【0273】
(欠陥抑制性2)
各硬化性組成物を5℃で1か月保管した後に、シリコン基板にスピンコート法により塗布し、この塗膜を硬化させ、膜厚が約1μmの硬化膜(遮蔽膜)を形成した。欠陥/異物検査装置(KLA-Tencor社の「KLA 2351」)を用いて、硬化膜の欠陥密度(Defect density)を測定した。この欠陥密度の値が小さいほど、欠陥抑制性が高いと判断できる。なお、欠陥とは、サイズが1μm以上となる検出点をさす。上記欠陥密度に基づき、以下の基準で欠陥抑制性を評価した。
A:10/cm以下
B:10/cm超50/cm以下
C:50/cm
【0274】
(耐溶剤性)
実施例1、11、14、15、20及び比較例1の各硬化性組成物を用いて上記ガラス基板上に作製した遮蔽膜のアセトン溶液中に浸漬させる前後の各波長領域における透過率を、分光光度計(日本分光社の「V-7300」)を用いて、ガラス基板対比で測定した。この時、作製した遮蔽膜の700-800nmの範囲で透過率が最も低くなる波長での透過率を(T1)、同波長におけるアセトン浸漬後の吸光度を(T2)、透過率変化=|(T1)―(T2)|として、以下の基準で耐溶剤性を評価した。透過率変化が小さいほど、遮蔽膜として使用した際に、実用性が高いと推定される。
A:透過率変化が1%以下
B:透過率変化が1%超5%以下
C:透過率変化が5%超
【0275】
【表1】
【0276】
【表2】
【0277】
表1、2に示されるように、実施例1~17の硬化性組成物からは、可視光領域に近い紫外線の遮蔽性、可視光透過性及び耐熱性が良好であり、異物等の欠陥が少ない光学フィルターを形成することができることがわかる。また、実施例1~17の硬化性組成物から形成された光学フィルターは、赤外線遮蔽性も良好であることがわかる。
【0278】
一方、比較例1~4の硬化性組成物から形成された光学フィルターは、紫外線遮蔽性、耐熱性及び欠陥抑制性の少なくとも一つが劣る結果となった。具体的には、式(1)で表される化合物である(A)成分にかえてニトロ基が結合したカルバゾール骨格を有さない化合物(A’-1)を用いた比較例1~2においては紫外線遮蔽性等が低い結果となった。式(1)で表される化合物である(A)成分にかえて化合物(A’-3)を用いた比較例3においては耐熱性が低い結果となった。化合物(A’-3)はニトロ基が結合したカルバゾール骨格を有するが、オキシムエステル構造を有さない。式(1)で表される化合物を用いることで、形成される光学フィルターの紫外線遮蔽性及び耐熱性が発揮されると考えられる。また、(A)成分を含むものの式(2)で表される化合物である(B)成分を含まない比較例4においては、欠陥抑制性が低い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0279】
本発明の硬化性組成物は、固体撮像素子等の光学センサーの光学フィルターの形成材料等として好適に用いることができる。