IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニットウ・アドヴァンスト・フィルム・グローナウ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許7570170弾性フィルム並びに弾性層状材料の製造法
<>
  • 特許-弾性フィルム並びに弾性層状材料の製造法 図1
  • 特許-弾性フィルム並びに弾性層状材料の製造法 図2
  • 特許-弾性フィルム並びに弾性層状材料の製造法 図3
  • 特許-弾性フィルム並びに弾性層状材料の製造法 図4A
  • 特許-弾性フィルム並びに弾性層状材料の製造法 図4B
  • 特許-弾性フィルム並びに弾性層状材料の製造法 図5A
  • 特許-弾性フィルム並びに弾性層状材料の製造法 図5B
  • 特許-弾性フィルム並びに弾性層状材料の製造法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】弾性フィルム並びに弾性層状材料の製造法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20241011BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20241011BHJP
   B29D 7/01 20060101ALI20241011BHJP
   B29C 65/08 20060101ALI20241011BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241011BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20241011BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20241011BHJP
【FI】
C08J9/00 Z CER
A61F13/51
B29D7/01
B29C65/08
C08J5/18 CEZ
B32B27/12
B23K26/382
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019187467
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2020090658
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10 2018 125 746.5
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522484607
【氏名又は名称】ニットウ・アドヴァンスト・フィルム・グローナウ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヘンナー・ゾルマン
(72)【発明者】
【氏名】ペーア・ブロールント
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・シュヴェアリング
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/139655(WO,A1)
【文献】特開平11-222257(JP,A)
【文献】特開2018-079985(JP,A)
【文献】特表2017-512869(JP,A)
【文献】特開2015-061657(JP,A)
【文献】韓国特許第10-0839298(KR,B1)
【文献】特開2016-187385(JP,A)
【文献】特表2015-510951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00
A61F 13/51
B29D 7/01
B29C 65/08
C08J 5/18
B32B 27/12
B23K 26/382
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔(2)から形成されたミシン目を有する弾性フィルム(1)であって、前記穿孔(2)は未伸張の状態で主伸張方向に沿って細長くなっており、ここで、主伸張方向に沿って決定された穿孔(2)の長さと、それに対して垂直方向で決定された穿孔(2)の幅との比率が少なくとも3:2であること、及び主伸長方向での破断伸びが、それに対して垂直方向に穿孔(2)の幅に沿って決定された破断伸びよりも少なくとも二倍大きいことを特徴とする、前記弾性フィルム(1)。
【請求項2】
穿孔(2)のそれぞれが、0.05mmと1mmとの間の面積を有することを特徴とする、請求項1に記載の弾性フィルム(1)。
【請求項3】
厚さ(d)が15μmと70μmとの間であることを特徴とする、請求項1または2に記載の弾性フィルム(1)。
【請求項4】
穿孔(2)の周りを、それぞれ、増加した厚み(d’)を有するビードが囲んでいることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つに記載の弾性フィルム(1)。
【請求項5】
主伸張方向に沿った破断伸びが、少なくとも600%であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載の弾性フィルム(1)。
【請求項6】
主伸張方向に対して垂直方向の破断伸びが、110%と300%との間であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一つに記載の弾性フィルム(1)。
【請求項7】
主伸張方向に沿ってまたは主伸張方向に対して垂直方向に、穿孔(2)を備えた少なくとも一つのストリップ(4a)と無穿孔ストリップ(4b)とが交互していることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一つに記載の弾性フィルム(1)。
【請求項8】
主伸張方向が、製造-及び加工方向に対し垂直方向を向いていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一つに記載の弾性フィルム(1)。
【請求項9】
少なくとも一つの弾性フィルム層がスチレンブロックコポリマーから形成されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一つに記載の弾性フィルム(1)。
【請求項10】
穿孔の孔面積割合が0.5%と10%との間であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一つに記載の弾性フィルム(1)。
【請求項11】
使い捨て衛生物品の製造用の弾性フィルムであることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一つに記載の弾性フィルム(1)。
【請求項12】
弾性層状材料の製造方法であって、
弾性フィルム(1)が製造方向に沿って供給され、そして
それぞれの穿孔(2)の形成のために、割り当てられたレーザービームが少なくとも200μmの長さにわたって、相対的運動で、弾性フィルム(1)の主伸張方向に沿って弾性フィルム(1)上を動かされそしてそれによって穿孔(2)が主伸長方向に沿って細長い形態を得るように、レーザービームを用いて複数の穿孔(2)が形成される、
前記方法。
【請求項13】
穿孔の生成後の弾性フィルム(1)において、主伸長方向での破断伸びが、それに対して垂直方向に穿孔(2)の幅に沿って決定された破断伸びよりも少なくとも二倍大きいことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
主伸長方向が、製造方向とは垂直に、横断方向(CD)に沿って延びており、そして弾性フィルム(1)が、横断方向(CD)では、穿孔の生成時に引張力がかけられていないことを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
穿孔が設けられた弾性フィルム(1)が、不織布でできた少なくとも一つのカバー層(6)と積層される、請求項12~14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
弾性フィルム(1)と不織布でできた少なくとも一つのカバー層(6)とが、超音波溶接によって、接合面または接合点(7)で互いに接合される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
弾性フィルム(1)が、穿孔の生成後に、主伸張方向に沿って伸張され、そして伸張した状態で、不織布でできた少なくとも一つのカバー層(6)と接合される、請求項15または16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔から形成されたミシン目を有する弾性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
この弾性フィルムは、特に、乳児用おむつまたは成人用失禁物品のような使い捨て衛生物品の製造用に意図される。この際、弾性復元特性を有する積層体を形成するために、この弾性フィルムには、通常は、適当な方法により、不織布でできた少なくとも一つのカバー層が積層される。
【0003】
乳児用おむつまたは成人用失禁物品は、通常は、液密の裏壁と、液体透過性の内壁と、これらの間に配置された吸収パッドとを有する基体を有する。使用者の腰部領域に基体を保持できるようにするために、基体の後側及び前側は、着用した状態で側部で互いに接合され、この際、この側部接合の下には、通常は、使用者のための脚開口部が設けられる。
【0004】
弾性フィルムと、不織布でできた少なくとも一つのカバー層からなるこの積層体は、特に、このような衛生用物品の側部接合のために企図され得、この際、該積層体は、パンツおむつを形成するために、基体と持続的にかつ剥離不能に接合することができる。代替的に、該積層体は、適当な方法で、基体の前面または好ましくは裏面のみに固定することもでき、そして特に然るべき対向面(ランディングゾーン)と共に面ファスナーを形成するために、その反対側のフリーの末端に止着手段、例えばフック材料を有することができる。弾性回復特性を有する積層体を有する対応する要素は、プラクチスではおむつ耳とも呼ばれる。
【0005】
記載された衛生製品では、様々な特定の要件がある。これらは使い捨て商品であるので、可能な限り低い生産費が望ましく、その結果、個々の構成要素は、可能な限り少ない材料使用量で、可能な限り簡単な方法で形成されるべきである。他方で、優れた使用し易さと着用快適性も要求される。特に、記載された衛生物品は、異なる身体形状に適応可能でなければならず、また、使用者の動きに追従しなければならない。この際、記載された衛生物品が滑って位置ずれしたり、漏れを起こしたりすることも避けなければならない。この目的のために、望ましくない締め付けが生じることなく所望の保持力を生じさせることができるように、通常、高い弾性を有する弾性フィルムが使用される。
【0006】
このために、該弾性フィルムは、例えば、通常の添加剤及び助剤を含むスチレン-ブロックコポリマーでできた少なくとも一つの弾性フィルム層を有することができる。
【0007】
しかしながら、原則として、本発明の枠内において、他の材料及びブレンドも考慮され、この際、弾性フィルムという用語は、本発明の枠内では、初期長さから出発して少なくとも一つの方向に引き裂かされることなく少なくとも100%伸張可能であり、この際、引っ張り力を除去した後に、残留変形が初期長さの25%未満であるフィルムを指す。しかし、本発明の枠内でも適した通常の熱可塑性エラストマーは、プラクチスでは、明らかにより大きな伸張性及びより小さな残留変形度を有する。
【0008】
本発明は、具体的には、穿孔から形成されたミシン目を有する弾性フィルムを出発点とし、その結果、このミシン目は、良好な通気性も保証することができる。特に、衛生物品の止着テープの構成要素として先に例示的に記載した用途では、このような通気性は、着用の快適さを向上し並びに、特に連続的な運動中に皮膚刺激または創傷箇所を生じさせる虞がある汗及び湿気から使用者の皮膚を保護するために特に有利である。
【0009】
原則的に、このようなミシン目は、様々な方法で形成できる。当技術分野における弾性フィルムの一つは、US5,336,554(特許文献1)から知られており、ここで、ミシン目は、レーザービームによって形成される。
【0010】
また本発明は、特に、レーザーミシン目とも称することができるこうして形成されたミシン目にも関する。レーザーミシン目は、特別な特徴を特色とし、そしてプラクチスでも、完成した製品上に明確に確認することできる。
【0011】
レーザーの使用によって、弾性フィルムは溶融され、この際、通常は、増加した厚さを有するビードによって囲まれた円形開口部を与える。このビーズは、レーザーによって溶融されそしてその後に固化したポリマー材料によって形成する。一方では、最初に溶融されそしてその後に固化したポリマー材料からなるこのビーズは非常に均一であり、その結果、機械的に生成されたミシン目の場合とは異なり、引き裂きを容易にする顕著な局所的な弱化点が存在しないかまたはそれ程ひどく存在しない。むしろ、ビーズ上の材料の蓄積によって特に有利に安定化が生じる場合さえある。それ故、ミシン目の生成自体によって導入される弱化は、特にレーザーミシン目の場合には、僅かな程度まで低減することができる。
【0012】
US5,336,554(特許文献1)では、記載されたミシン目によって、ミシン目を設けていないフィルムと比べて引き裂き伝播に関して改善が達成されることが強調されている。
【0013】
更に、当技術分野における弾性フィルムの一つは、EP1598172A1(特許文献2)からも既知である。
【0014】
特にレーザーミシン目において比較的良好な機械的特性を達成できる場合でも、ミシン目は、特に最大破断伸びに関して、ミシン目を設けていないフィルムと比べて劣化をまねく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】US5,336,554
【文献】EP1598172A1
【文献】EP1355604B3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この背景に対して、本発明は、弾性フィルムの機械的特性を改善し及びより広範囲の用途または使用者にとってより良好な快適さを可能にするという課題に基づくものである。
【0017】
更に、少なくとも前記弾性フィルムを備えた対応する弾性層状材料の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の対象及び上記課題の解決策は、請求項1に記載の弾性フィルム並びに請求項11に記載の弾性層状材料の製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
穿孔から形成されたミシン目、特にレーザーミシン目を有する弾性フィルムから出発して、本発明によれば、穿孔は、非伸張状態で、主伸張方向に沿って細長くなっており、この際、主伸長方向に沿って決定された穿孔の長さと、それに対して垂直方向に決定された穿孔の幅との比率が少なくとも3:2であること、及び主伸張方向に沿った破断伸びが、それに対して垂直方向に穿孔の幅に沿って決定された破断伸びの少なくとも二倍であることが企図される。
【0020】
従来技術では、レーザーを用いて本質的に円形の穿孔が形成される。これはまた、レーザービームが当たると、弾性フィルムのポリマー材料が溶融し、衝突点から後退し、この際、レーザー穿孔の場合には特に、典型的な及び機械的特性に関して有利なビードが形成されるという事実による。
【0021】
しかしながら、この背景に対して、本発明によれば、少なくとも3:2のアスペクト比を有する穿孔の細長い形状が提供される。このような細長い形状は、各々の穿孔を生成するために、割り当てられたレーザービームを、例えば少なくとも200μmの長さにわたって相対運動において弾性フィルム上で動かすことによって、達成できる。
【0022】
本発明によれば、穿孔は、主伸張方向に沿って上記方法で細長くなっている。弾性フィルムでは、特に冒頭に述べた用途では、後でどの方法に伸張を行うべきかは予め知られている。本発明によれば、穿孔の主伸張方向に沿った破断伸びが、それに対して垂直方向に穿孔の幅に沿って決定された破断伸びの少なくとも二倍であることも企図される。この際、破断伸び(elongation at break)は、初期の長さに対して百分率で表示される。破断伸び(elongation at break)は、フィルム、特に弾性フィルムの通常の特徴的なパラメータである。本発明は、破断伸びの決定については規格ASTM882-12に関する。この際、破断伸びは、通常の専門語に従い、対応するフィルムサンプルの全長に関連し、伸張時の長さの増分のみに関連するものではないことを考慮すべきである。
【0023】
これに関連して、本発明は、主伸張方向に沿って細長い穿孔によって、弾性フィルムが、主伸張方向に対して垂直方向よりも弱化の程度が低いという知見に基づいている。上記の細長い形状によって、弾性フィルムが、主伸張方向に関して弱化の程度が比較的弱いということは、既に幾何学的考察に基づいて明らかである。例えば、伸張方向に延びる弾性フィルムの幅広ストリップは、複数のより狭いストリップで置き換えることができ、この場合、同様の弾性挙動が期待され得ると考えられる。この時、このようなストリップが、主伸張方向に対して垂直方向で、狭い枠のみによって互いに接合される場合、その結果、主伸張方向に対して垂直方法でも、低い強度、それ故小さな破断伸びしか生じないであろう。
【0024】
穿孔の長さと幅との間の比率は、フィルムの非伸張状態で少なくとも3:2であり、典型的には3:2と4:1との間であることができる。レーザービームを用いて溶融することによって、個々の穿孔は、通常は、二つの対称軸を有する一様な長円形、特にほぼ楕円形を有する。穿孔の面積は、本発明の好ましい実施形態の一つでは、0.5mmと1mmとの間であり、ここで穿孔の孔面積割合は0.5%と10%との間であることができる。
【0025】
該弾性フィルムは、原則的には、穿孔の生成の後にも、伸張によって活性化できるか、または加工時に他の方法で伸張でき、この際、3:2の比率は、特に、そのような活性化の前の弾性フィルムの特性または他の延伸中の弾性フィルムの特性に関連する。
【0026】
穿孔は、該弾性フィルムでは、一様にまたはパターンで設けることができる。
【0027】
特に、主伸長方向に沿ってまたはこの主伸長方向に対し垂直に、穿孔が設けられた少なくとも一つのストリップと、無穿孔のストリップが交互することができる。
【0028】
該弾性フィルムの厚さは、典型的には15μmと70μmとの間であり、この際、該弾性フィルムは、熱可塑性エラストマーでできた少なくとも一つの弾性フィルム層を有する。このような弾性フィルム層には、例えば弾性ポリオレフィンまたはスチレンブロックコポリマー、例えばスチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)及びスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)が適している。
【0029】
レーザービームの源としては、特にCO2レーザーがまたはNd:YAGレーザーも考慮される。複数の穿孔を同時に生成するためには、適当な方法で、ビーム分割を適切な光学デバイスによって行うことができる。本発明による細長い形状を有する個々の穿孔を形成するためには、対応するレーザービームは、原則的に、本質的に点状ではなく、線状にフィルムに当たるように扇状に展開することができる。しかし、好ましくは、個々の穿孔を生成するためには、割り当てられるレーザービームを、本質的に点または円でフィルムに当て、次いで、細長い形態を形成するために、フィル上で動かすことが企図され、これは、圧電または他のモーター駆動ミラーによって簡単に可能である。
【0030】
レーザーを用いた穿孔の生成を容易にするためには、弾性フィルムは、レーザー添加剤とも称される吸収性添加剤を含むこともできる。対応する添加剤は、特にオレフィンベースの熱可塑性エラストマー(TPE-O)では、レーザービームの十分な吸収を保証するために、有利であり得る。
【0031】
原則的には、該弾性フィルムは、単層フィルムとして設計でき、この際、これは、上記の弾性フィルム層のみからなる。代替的に、多層状の設計も可能であり、この際、このようなフィルムは、特に共押出によって形成することができる。
【0032】
多層状の設計の場合には、特に非弾性または弱弾性のカバー層を設けることもでき、しかし、この際、前記少なくとも一つの弾性フィルム層は、伸張の後に所望の弾性回復をもたらす。非弾性のカバー層は、従来技術から既知であり、そして例えばポリオレフィンから形成されていることができる。これは、そのような弾性フィルムが最初により容易に加工され得、この際、巻き上げられた状態で、フィルムのブロッキングも回避されるという利点を有する。
【0033】
主伸長方向に沿った破断伸びは、好ましくは少なくとも600%、例えば700%と1,000%との間である。
【0034】
主伸張方向に対し垂直方向の破断伸びは、典型的には110%と300%との間である。この際、信頼できる加工を可能にするためには特に、弾性フィルムは、主伸張方向に対して垂直方向にもある程度負荷が可能である必要がある点を考慮するべきである。これは、特に、本発明の一つの好ましい実施形態によれば、主伸張方向は、製造-及び加工方向に対し垂直方向を向いている場合に当てはまる。
【0035】
フィルムの加工では、加工方向に沿ってフィルムを搬送するためだけに引っ張り力を及ぼす必要があり、この際、過度の伸張並びにそれに伴う伸びを回避する必要があり、また引き裂きも防止する必要がある。この際、無負荷状態での初期長に対して5%の加工方向に沿ったフィルムの典型的な伸張において、引っ張り力が少なくとも1.5N/インチ(2.54cmフィルム幅当たりのニュートン)、好ましくは少なくとも2.5N/インチ、例えば2.5N/インチと3N/インチの間である場合に特に、十分な引っ張り強さが存在する。
【0036】
製造-及び加工方向は、機械方向MDとも称され、応じて、主伸張方向は横断方向CDに相当する。
【0037】
穿孔の周りに存在するビードは増加した厚さを有し、この際、この厚さは、例えば、本体のフィルム厚さよりも2~4倍厚くあり得る。その結果、15μmと70μmとの間の弾性フィルムの上記の厚さは、レーザーを用いた穿孔の形成によって弾性フィルムが殆ど影響を受けないままで残る穿孔からの距離で決定するべきである。ビードの厚さは、個々の穿孔の周りで、好ましくは一定であるかまたはほぼ一定である。
【0038】
本発明の更なる対象は、弾性層状材料を製造するための方法であって、弾性フィルムを製造方向に沿って供給し、及び各々の穿孔の生成のために、割り当てられるレーザービームを少なくとも200μm、好ましくは少なくとも300μmの長さにわたって、相対運動においてフィルムの主伸張方向に沿って弾性フィルム上を動かし、それによって穿孔が主伸張方向に沿って細長い形態で得られるように、レーザービームを用いて複数の穿孔を形成する、上記方法である。
【0039】
本発明の好ましい発展形態の一つでは、製造方向に対して垂直方向の主伸張方向は、横断方向に沿って延びており、この際、弾性フィルムは、横断方向では、穿孔の生成時には引張力はかけられない。更に、長手方向に沿っても、通常は、弾性フィルムが典型的には20%未満しか伸張しないような僅かな引っ張り力が企図される。
【0040】
本発明の一変形形態において、弾性フィルムが少なくとも一つの非弾性カバー層を有する場合には、製造時にも、長手方向の望ましくない伸張を、通常のウェブのテンションによって排除することができる。
【0041】
該弾性層状材料の製造の際には、穿孔が設けられた弾性フィルムには、不織布でできた少なくとも一つのカバー層も積層され、この際、特に好ましくは、該弾性フィルムの両面に、不織布でできたカバー層がそれぞれ付与される。
【0042】
応じて、該弾性フィルムは、少なくとも一つのカバー層との接合の前に上記の穿孔が供されることが好ましく企図される。しかし、原則的には、フィルムと少なくとも一つのカバー層との接合の後の穿孔の生成も考慮される。このような手順は、フィルムが、使用した材料に基づいて及び/またはレーザー吸収性添加剤によって、レーザー入射によって好ましくは変性されないかまたは本質的に変性されない不織布でできたカバー層と比べて、衝突したレーザービームを強く吸収する時に特に有利である。フィルムの一面のみにカバー層を設ける場合には、フィルム中に穿孔を生成するためのレーザーの照射は、反対側の面からも行うことができる。
【0043】
原則的には、弾性フィルム及び不織布でできた少なくとも一つのカバー層から構成されるこのような積層体の形成は様々な方法で行うことができる。
【0044】
特に好ましくは、弾性フィルムと、不織布でできた少なくとも一つのカバー層とは、超音波溶接によって、接合面または接合点で互いに接合される。
【0045】
対応する積層体は、例えばEP1355604B3(特許文献3)から既知であり、この場合、従来技術では、通気性を生じさせるために、接合面または接合点に直接、孔が形成される。しかし、対応する孔は、積層体の耐裂性に関して弱化箇所となり、そのため、この積層体は、伸張時に比較的に迅速に引き裂かれ、それ故、破断伸びについては比較的小さい値しか達成できない。
【0046】
本発明の枠内において、このような背景に対して、超音波溶接は、接合面または接合点には追加的な孔が生成しないように行われる。特に、超音波溶接にもかかわらず、接合面または接合点においても、弾性フィルムが連続した材料層として維持されることを企図することができる。
【0047】
すなわち、このような発明の枠内において、EP1355604B3(特許文献3)に対して、孔の生成は、接合面または接合点の形成とは好ましくは機能的に切り離され、そうして、総じて、非常に良好な伸張特性、及び特に主伸長方向に沿って伸張した時の破断伸びについての高い値を達成することができる。
【0048】
このような設計の範囲内において、不織布でできた前記少なくとも一つのカバー層が本質的に面で弾性フィルムと接合される場合に、穿孔が接合面または接合点と部分的に重なるまたはオーバーラップする時には機械的特性に関して甘受することができる。
【0049】
本発明の更なる発展形態の一つでは、弾性フィルムが、穿孔の生成の後に主伸張方向に沿って伸張され、そして伸張された状態で不織布でできた少なくとも一つのカバー層と接合されることが企図される。それにより、不織布材料自体は非弾性である場合でも引っ張り応力を除去した後に簡単に伸張できる、積層体が形成される。
【0050】
以下では、本発明を、単に一実施例を示しているに過ぎない図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】穿孔によって形成されたミシン目を有する弾性フィルムの部分を示す。
図2】単一の穿孔の詳細図を上面図で示す。
図3】穿孔の横断面を示す。
図4A】弾性フィルムのストリップを備えた層状材料を横断面で示す。
図4B図4Aの層状材料を上面図で示す。
図5A】伸張した状態の図4Aの材料を示す。
図5B】伸張した状態の図4Bの材料を示す。
図6図4Aの層状材料の断片の詳細図を示す。
【実施例
【0052】
図1は、穿孔2から形成されたミシン目を有する、未伸張状態の弾性フィルム1を示す。弾性フィルム1は、機械方向MDとも称する製造-及び加工方向、並びにそれに対して垂直に横断方向CDを有する。
【0053】
以下に説明する図面からも分かるように、穿孔2はレーザービームによって生成されている。図1によれば、穿孔2が、弾性フィルム1の図に示した未伸張の状態では、横断方向CDに沿って細長くなっており、この際、横断方向CDは、弾性フィルム1の主伸張方向にも相当していることが既に確認できる。ASTM 882-12に従って決定した破断延び(elongation at break)は、主伸張方向としての横断方向CDに沿って、それに対して垂直に機械方向MDに沿って決定した破断伸びと比べて少なくとも二倍大きい。
【0054】
横断方向CDに沿って決定した破断伸びは、好ましくは少なくとも600%、例えば750%と1,000%との間、特に約800%である。
【0055】
機械方向MDに沿って決定した破断伸びは、典型的には110%と300%との間である。
【0056】
この強い異方性挙動は、穿孔2の細長い形状もその原因とし得るか、またはそれによって助長される。図1から既に確認できるように、横方向CDに沿って細長くなっている穿孔2は、この主伸長方向に関して、比較的僅かにしか弱くなっていない。
【0057】
個々の穿孔2の横断方向CDに沿って細長い形態を達成するためには、図2のように個々の穿孔2が、ポリマー材料の溶融によって、長円形、特に横断方向CDに沿った長軸aと、機械方向MDに沿った短軸bを有するほぼ楕円形の形状を有するように、割り当てられたレーザービームを、各々の穿孔2の生成のために、規定の長さ、好ましくは少なくとも200μmの規定の長さにわたって、相対的運動でフィルム1の主伸張方向としての横断方向CDに沿って動かす。
【0058】
長軸aに沿って決定した穿孔2の長さと、短軸bに沿って決定した穿孔2の幅との比率は、少なくとも3:2、特に好ましくは約2:1である。特に、前記の比率は3:2と4:1との間であることができる。
【0059】
個々の穿孔2の面積は典型的には0.05mmと1mmとの間、好ましくは0.1mmと0.5mmとの間、特に好ましくは0.15mmと0.3mmとの間である。
【0060】
弾性フィルム1の総面積に対する穿孔の総孔面積割合は、特に0.5%と10%との間であることができる。
【0061】
穿孔2から形成されるミシン目によって、弾性フィルム1は十分な通気性を有し、この際、本発明によれば、横断方向CDに沿った弾性伸張特性はわずかにしか影響を受けない。特に、無穿孔フィルムの特性と同等の高い破断伸びを達成でき、他方で、機械方向MDに沿った破断伸びの明らかな減少は甘受することができる。
【0062】
図3によれば、レーザーを用いた穿孔2の生成の際に、溶融したポリマー材料が、実際の穿孔2の周りにビード3が形成することにも本質的に寄与する。典型的には15μmと70μmとの間の弾性フィルム1の厚さdから出発して、ビード3は、少なくとも2倍増加した厚さd’を有する。図示した実施例では、穿孔2及びビード3の外側での弾性フィルム1の厚さdは例えば50μmであることができ、他方、その際のビード3の厚さd’は例えば150μmである。
【0063】
それ故、ビード3は、本質的な強化及び安定化に寄与し、その際、裂け目の形成に耐え得る特に均一で平滑な縁も生じる。
【0064】
穿孔2から形成されるミシン目は、弾性フィルム1全体にわたって均一に配置されていることができる。図1は、それぞれ機械方向MDに沿って延びる穿孔2が設けられたストリップ4aと無穿孔ストリップ4bとが、主伸長方向としての横断方向CDに沿って交互に並んでいる形態を示している。以下に更に説明するように、機械方向MDに沿って延びる個々の部分5は、弾性フィルム1を無穿孔のストリップ4bの中央で切断することによって形成することができ、この際、これらの個々の部分5は、弾性層状材料を形成するために使用することができる。
【0065】
これに関連して、図4Aは、不織布でできたカバー層6と、その間のフィルム1の部分5とを有する積層体を示す。先に説明したように、部分5は、穿孔2から形成されたミシン目を有し、しかし、それぞれの場合、部分5の縁は穿孔されておらず、そのため簡単に加工することができる。
【0066】
弾性フィルム1は、制限なく、単層フィルムとして、または共押出フィルムとして多層状に形成されていることができ、この際、弾性フィルム1は、伸張された時に所望の弾性復元を起こす少なくとも1つの弾性フィルム層を有する。
【0067】
図4Aに示す実施例によれば、弾性フィルム1の部分5上で、不織布でできたカバー層6が、横断方向CDに沿って波状に折り畳まれていることがわかる。これは、弾性フィルム1の部分5が、横断方向CDに沿ってカバー層6と接合される時ときに伸張され(伸張結合)、この際、引っ張り応力下に接合された弾性フィルム1の部分が、引っ張り応力を取り除いた後に弾性回復することによって、接合の際に依存として平坦な状態のカバー層6の不織布が横断方向CDに沿って圧縮されるという事実による。
【0068】
図示された積層体からは、個々のファフナーテープを、弾性フィルム1の領域において個々のファスナーテープ上に、弾性中間部分が形成し、他方で、それに隣接する裁断物の端部は互いに接合された両カバー層6のみから形成されそして非弾性であるように、切り出すことができる。
【0069】
カバー層6及び弾性フィルム1は、図示した実施例では、超音波溶接により、接合点7からなるパターンによって部分的にのみ互いに接合されている。接着剤による積層と比較して、超音波溶接では、他の材料を積層体中に導入する必要がないという利点を与え、これはまた、積層体のリサイクルまたは臭気発生に関連しても有利であり得る。
【0070】
カバー層6と弾性フィルム1との接合は、部分5の形で提供される弾性フィルム1の伸張した状態で行われるので、弾性フィルム1の領域内の接合点7も、両カバー層6が、接合点7によって直接接合されている残りの領域内よりも互いに狭く並んで存在している。
【0071】
伸張した状態での弾性フィルム1とカバー層6との接合によって、そうして形成された積層体は、接合プロセス中のフィルム1の伸張度まで、後で簡単に伸張でき、この際、機械的特性は、本質的に、弾性フィルム1の弾性によってのみ決定される。
【0072】
図5A及び5Bは、図4A及び4Bの表示に対応して伸張した状態の積層体を示し、この際、元は未伸張状態で弾性フィルム1の領域で波状に折り畳まれていたカバー層6が再び平坦に延びている。
【0073】
弾性フィルムの領域でも積層体の通気性を達成するために、弾性フィルム1には、先に記載したように、穿孔2が設けられている。より見やすくするためには、図6では、穿孔2は、接合点7から間隔を開けて示されているが、接合点7は、穿孔2と重なっていることもできる。
【0074】
しかし、図示した実施例の枠内では、弾性フィルム1が、接合点7で連続した層として維持され、そこで、追加的な孔または開口部が生成されないことが本質である。応じて、本質的な材料弱化はそこでも生じず、ここで、レーザーを用いて形成された穿孔2だけが、望ましい通気性を供する。
【0075】
先に既に記載したように、穿孔2の形によって、非常に良好な伸張性を、主伸張方向としての横断方向CDに沿って達成でき、ここで、図6の通り、接合点7も、材料の望ましくない弱化を招かない。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1. 穿孔(2)から形成されたミシン目を有する弾性フィルム(1)であって、前記穿孔(2)は未伸張の状態で主伸張方向に沿って細長くなっており、ここで、主伸張方向に沿って決定された穿孔(2)の長さと、それに対して垂直方向で決定された穿孔(2)の幅との比率が少なくとも3:2であること、及び主伸長方向での破断伸びが、それに対して垂直方向に穿孔(2)の幅に沿って決定された破断伸びよりも少なくとも二倍大きいことを特徴とする、前記弾性フィルム(1)。
2. 穿孔(2)のそれぞれが、0.05mm と1mm との間の面積を有することを特徴とする、前記1.に記載の弾性フィルム(1)。
3. 厚さ(d)が15μmと70μmとの間であることを特徴とする、前記1.または2.に記載の弾性フィルム(1)。
4. 穿孔(2)の周りを、それぞれ、増加した厚み(d’)を有するビードが囲んでいることを特徴とする、前記1.~3.のいずれか一つに記載の弾性フィルム(1)。
5. 主伸張方向に沿った破断伸びが、少なくとも600%であることを特徴とする、前記1.~4.のいずれか一つに記載の弾性フィルム(1)。
6. 主伸張方向に対して垂直方向の破断伸びが、110%と300%との間であることを特徴とする、前記1.~5.のいずれか一つに記載の弾性フィルム(1)。
7. 主伸張方向に沿ってまたは主伸張方向に対して垂直方向に、穿孔(2)を備えた少なくとも一つのストリップ(4a)と無穿孔ストリップ(4b)とが交互していることを特徴とする、前記1.~6.のいずれか一つに記載の弾性フィルム(1)。
8. 主伸張方向が、製造-及び加工方向に対し垂直方向を向いていることを特徴とする、前記1.~7.のいずれか一つに記載の弾性フィルム(1)。
9. 少なくとも一つの弾性フィルム層がスチレンブロックコポリマーから形成されていることを特徴とする、前記1.~8.のいずれか一つに記載の弾性フィルム(1)。
10. 穿孔の孔面積割合が0.5%と10%との間であることを特徴とする、前記1.~9.のいずれか一つに記載の弾性フィルム(1)。
11. 弾性層状材料の製造方法であって、
弾性フィルム(1)が製造方向に沿って供給され、そして
それぞれの穿孔(2)の形成のために、割り当てられたレーザービームが少なくとも200μmの長さにわたって、相対的運動で、弾性フィルム(1)の主伸張方向に沿って弾性フィルム(1)上を動かされそしてそれによって穿孔(2)が主伸長方向に沿って細長い形態を得るように、レーザービームを用いて複数の穿孔(2)が形成される、
前記方法。
12. 主伸長方向が、製造方向とは垂直に、横断方向(CD)に沿って延びており、そして弾性フィルム(1)が、横断方向(CD)では、穿孔の生成時に引張力がかけられていないことを特徴とする、前記11.に記載の方法。
13. 穿孔が設けられた弾性フィルム(1)が、不織布でできた少なくとも一つのカバー層(6)と積層される、前記11.または12.に記載の方法。
14. 弾性フィルム(1)と不織布でできた少なくとも一つのカバー層(6)とが、超音波溶接によって、接合面または接合点(7)で互いに接合される、前記13.に記載の方法。
15. 弾性フィルム(1)が、穿孔の生成後に、主伸張方向に沿って伸張され、そして伸張した状態で、不織布でできた少なくとも一つのカバー層(6)と接合される、前記13.または14.に記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6