(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】SVCT発現促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/455 20060101AFI20241011BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
A61K31/455
A61P43/00 105
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2020075403
(22)【出願日】2020-04-21
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2019086156
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横江 友貴
(72)【発明者】
【氏名】橋本 理恵
(72)【発明者】
【氏名】山越 大槻
(72)【発明者】
【氏名】畑 友紀
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-107531(JP,A)
【文献】特表2015-533170(JP,A)
【文献】特表2018-505130(JP,A)
【文献】特表2003-502435(JP,A)
【文献】Bissett, D.L., et al.,International Journal of Cosmetic Science,2004年,Vol. 26,No. 5,pp.231-238.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチン酸アミドのみからなる、SVCT発現促進剤。
【請求項2】
ケラチノサイト、メラノサイトおよび線維芽細胞からなる群から選択される少なくとも1種におけるSVCT発現促進剤である、請求項1に記載のSVCT発現促進剤。
【請求項3】
SVCT1発現促進剤および/またはSVCT2発現促進剤である、請求項1または2に記載のSVCT発現促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SVCT発現促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンCは強い還元作用を有する水溶性抗酸化ビタミンであり、生体内ではホルモンの代謝やコレステロール・脂肪酸の代謝をはじめとして様々な生理現象に関連する重要な因子である。ビタミンCが欠乏することで様々な疾患がおこる。特に皮膚においては、疾患の予防や治療のみでなく、外見の美しさを保つ目的でも、ビタミンCが必要であることが知られている。
表皮においては、ビタミンCにより、表皮角化細胞(ケラチノサイト)の分化促進、ケラチノサイトでのフィラグリン産生促進、メラノサイトでのメラニン生成抑制などの効果が報告されており、また、真皮においては、真皮線維芽細胞(ファイブロブラスト)でのコラーゲン産生促進効果が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
このように、多くの効果を有するビタミンCであるが、モルモットやヒトを含む霊長類は、ビタミンC生合成系の最終段階に必要な、L-グロノーγ―ラクトンオキシダーゼを持たないため、ビタミンCを体内で合成することはできない。そのため、体外からビタミンCを取り込む必要がある。さらに、ビタミンCは水溶性であり、他のビタミンに比べて不安定であるため、体内で安定に保持することが難しい。
そのため、体外から取り込んだビタミンCを、効率的に細胞に供給することが重要である。
【0003】
ビタミンCの細胞内への取り込みに関しては、ナトリウム依存性ビタミンCトランスポーター(SVCT)によって、能動輸送されることが知られている。SVCTにはSVCT1とSVCT2の2つのタイプが存在し、表皮のケラチノサイトとメラノサイトにはSVCT1とSVCT2、真皮のファイブロブラストにはSVCT2の発現が報告されている。
SVCTのビタミンC取り込み機構に関してはまだ未解明な部分が多いが、SVCTを欠損させたマウスで腎臓のビタミンC吸収率が低下することから、その重要性が示唆されている(例えば、非特許文献2参照)。さらに、細胞におけるSVCT1の発現量を増加させることで、細胞中のビタミンC量が増加したという報告からも、ビタミンCの取り込みにはSVCTが重要であると考えられている(例えば、特許文献1参照)。
また、加齢やUVの影響によってSVCT1の発現が減少することが知られており、自然老化や光老化によって皮膚細胞中におけるビタミンC量が減少すると考えられている。
これらの知見から、加齢に伴う皮膚細胞内へのビタミンCの取り込み改善には、SVCTの発現を増加させることが有効であると考えられる。
これまで、ビタミンCトランスポーターの発現を高める薬剤に関して、ポリフェノールや各種植物抽出物など、様々な検討がされてきている(例えば、特許文献1,2参照)。
一方ニコチン酸アミドは、ニコチンアミド、ナイアシンアミドともよばれる、ニコチン酸の誘導体であり、ニコチン酸欠乏症の予防及び治療等に利用されている。また、肌あれ改善、美白効果、抗老化効果などが知られているが、ビタミンCトランスポーターの発現に関わる効果は知られていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Nutrients. 2017 Aug;9(8):866.doi:10.3390/nu9080866
【文献】ビタミン 2014年 88巻 11号 p.555-559
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-138525号公報
【文献】WO2007/094312
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ビタミンCを効率的に細胞内に取り込む手段の提供を課題とする。
【0007】
そこで、本発明は、SVCTの発現促進剤を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ニコチン酸アミドがSVCT発現促進効果を有することを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、ニコチン酸アミドを有効成分とするSVCT発現促進剤を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、SVCTの発現を促進させる新規な物質を提供することができる。なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ケラチノサイトにニコチン酸アミド添加時のSVCT1発現量比較を示す図
【
図2】メラノサイトにニコチン酸アミド添加時のSVCT1発現量比較を示す図
【
図3】線維芽細胞にニコチン酸アミド添加時のSVCT2発現量比較を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。なお、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量に基づく百分率である。また、本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0013】
本発明に係るSVCT発現促進剤は、ニコチン酸アミドを有効成分とする。本発明は、ニコチン酸アミドがヒト由来の皮膚細胞において、SVCT発現促進効果を有することを初めて明らかにしたものである。
【0014】
<ニコチン酸アミド>
本発明のニコチン酸アミドは、ニコチン酸(ビタミンB3/ナイアシン)のアミド化合物である。ニコチン酸アミドは水溶性ビタミンで、ビタミンB群の一つである公知の物質であり、天然物(米ぬかなど)から抽出されたり、あるいは公知の方法によって合成することができる。具体的には、第15改正日本薬局方2008に収載されているものを用いることが出来る。
【0015】
一般的に、ニコチン酸アミドは、脂質・糖質・タンパク質の代謝に利用されるものである。ニコチン酸アミドが欠乏すると皮膚炎、口内炎、神経炎、下痢等の症状が生じるとされている。また、ニコチン酸アミドは、水溶性であること;熱、酸、アルカリ又は光に対して安定であること;過剰摂取しても安定性が高いこと;エネルギー代謝中の酸化還元酵素の補酵素の構成成分として重要であることが知られている。
【0016】
<ニコチン酸アミドの含有量>
本発明に係るSVCT発現促進剤へのニコチン酸アミドの含有量は、特に限定されないが、最終製品中にニコチン酸アミド量(固形分)換算で、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上、特に好ましくは0.01質量%以上、最も好ましくは0.02質量%以上の濃度を採用することができる。また、含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下の濃度を採用することができる。この範囲であれば、SVCT発現促進効果をより高めることができる。
なお、本明細書において「最終製品」とは、ユーザが使用するときの製品であり、例えば、化粧品、皮膚外用品、医薬品等が挙げられる。
【0017】
<SVCT>
本明細書における「SVCT1」はナトリウム依存性ビタミンCトランスポーター1型、または、SLC23A1として表される遺伝子によりコードされるタンパク質であり、「SVCT2」とはナトリウム依存性ビタミンCトランスポーター2型、または、SLC23A2として表される遺伝子によりコードされるタンパク質のことを指す。
【0018】
後記実施例に示すように、ケラチノサイト、メラノサイトおよび線維芽細胞内のSVCT発現促進モデル試験において、ニコチン酸アミドが、SVCT発現促進効果を有することが認められた。ニコチン酸アミドは、ケラチノサイト、メラノサイトおよび線維芽細胞内に存在するSVCTの発現を促進することができる。ビタミンCの取り込みを促進させることで、ケラチノサイトの分化促進、ケラチノサイトでのフィラグリン産生促進、メラノサイトでのメラニン生成抑制、線維芽細胞でのコラーゲン産生などの効果を高めることができる。
【0019】
本発明におけるニコチン酸アミドは、そのまま使用するか、あるいは各種製剤又は各種組成物の有効成分として含有させて使用することができる。本発明のニコチン酸アミドの使用、又はこれを含有する各種製剤若しくは各種組成物は、化粧料、皮膚外用剤、医薬品、飲食品等に配合することができ、また化粧料、皮膚外用剤等としても使用することができる。
【0020】
本技術の適用対象であるヒト若しくはヒト以外の動物(例えば、ペット、家畜等)に使用してもよく、また治療を目的とする使用であっても、非治療目的であってもよい。「非治療目的」とは、医療行為、すなわち、治療による人体への処置行為を含まない概念である。また、「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転;悪化の防止又は遅延;進行の逆転、防止又は遅延をいう。「予防」とは、適用対象における疾患若しくは症状の発症の防止や遅延、又は適用対象の疾患若しくは症状の発症の危険性の低下をいう。
【0021】
本発明において、ニコチン酸アミドの他に、必要に応じて任意の成分を組み合わせて使用してもよい。任意成分として、化粧品、皮膚外用剤、医薬品、食品等において許容される成分を適宜使用することができる。
【0022】
<SVCT発現促進剤の剤形>
本発明に係るSVCT発現促進剤は、化粧料、医薬部外品、医薬品、飲食品等幅広い分野での利用が可能であり、その剤形は特に限定されない。具体的には、例えば、クリーム状、ゲル状、液状、懸濁状、粉末状、フォーム状、シート状、固形のもの等が挙げられる。
【0023】
<SVCT発現促進剤の化粧料(薬用化粧料)への適用>
本発明に係るSVCT発現促進剤を化粧料・薬用化粧料に適用する場合、特に限定されないが、例えば、皮膚化粧料、口唇化粧料に配合されることが好ましい。具体的には、ハンドクリーム、化粧水、乳液、美容液、フェイスクリーム、クレンジングクリーム、洗顔石鹸、パック、日焼けクリーム、日焼けローション、日焼け止めクリーム、化粧下地、ファンデーション、おしろい、パウダー、口紅、リップグロス、リップクリーム、アイクリーム、アイシャドウ、シャンプー、リンス、コンディショナー、ボディシャンプー、ボディローション、育毛剤等の製品にすることができる。
【0024】
本発明に係るSVCT発現促進剤は、上述した目的(SVCT発現促進等)のための有効成分であるニコチン酸アミドの他に、化粧料等に用いられる他の各種成分、例えば、基剤、保湿剤、美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、血行促進剤、細胞賦活剤、紫外線吸収剤等を適宜配合することができる。
【0025】
また、本発明に係るSVCT発現促進剤には、賦形剤、崩壊剤、結合剤、可塑剤、乳化剤、滑沢剤、増粘剤、糖類、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、キレート剤、色素、香料、清涼剤、収斂剤、増泡剤等を含めてもよい。
【0026】
<SVCT発現促進剤の皮膚外用剤(医薬品・医薬部外品)への適用>
本発明に係るSVCT発現促進剤を皮膚外用剤(医薬品・医薬部外品)に適用する場合、例えば、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、スプレー剤、点鼻液剤、リニメント剤、ローション剤、パップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤等の剤形にすることができる。
【0027】
本発明に係るSVCT発現促進剤の適用方法は、肌や口唇に適量を塗布、噴霧、散布、浸潤、湿布等で適用することが好ましいが、特に限定されない。なお、本技術の化粧料、薬用化粧料又は医薬部外品のいずれにおいても皮膚外用剤と同様に適用できる。
【0028】
また、本発明に係るSVCT発現促進剤には、上述した目的(SVCT発現促進等)のための有効成分であるニコチン酸アミドの他に、化粧料、医薬品等に通常用いられる各種成分を適宜配合することができる。例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、可塑剤、乳化剤、滑沢剤、増粘剤、糖類、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、キレート剤、色素、角質溶解剤、創傷治療剤、抗菌剤、抗アレルギー剤等を含めてもよい。薬理学的に許容される添加剤及び医薬製剤の分野で通常使用し得る添加剤を、1種以上又は2種以上組みあわせて適宜含有させることができる。
【0029】
皮膚外用剤、医薬品、医薬部外品等は、医薬品等の製造技術分野において慣用の方法(例えば、医薬品であれば日本薬局方に記載の方法或いはそれに準じる方法)に従って、目的に応じて、製造することができまた使用することができる。
【0030】
<SVCT発現促進剤の飲食品への適用>
本発明に係るSVCT発現促進剤を飲食品に適用する場合、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等の他、例えば、小麦粉製品、即席食品、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料、これら以外の市販食品等にすることができる。また、上述した効果(SVCT発現促進等)から想定される用途が表示された飲食品とすることも可能であり、これを機能性食品(例えば、特定保健用食品、機能性表示食品、サプリメント等)として提供することもできる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0032】
〔実験方法1〕ケラチノサイトにおけるSVCTタンパク質の発現
ヒトケラチノサイトをニコチン酸アミド含有培地で72時間培養し、細胞中のSVCT1タンパク量を測定した。具体的には、新生児表皮角化細胞NHEK(クラボウ社製)を、6穴プレートに2×105cells/wellとなるよう播種し、正常ヒト角化細胞増殖用無血清培地(Humedia-Kg2、クラボウ社製)2mLを用いて1日培養後、ニコチン酸アミド1mM存在下で、37℃、5%CO2存在下で3日間培養した。また、対照としては精製水のみを添加して同様に培養した。
72時間培養後に、細胞からタンパク質を回収し、ウエスタンブロット法を用いてタンパク質量の解析を行った。一次抗体として、SVCT1抗体(sc-376090、Santa Cruz社より購入)を、二次抗体としてはAnti-Mouse secondary Antibody((protein simple社製キット)を使用した。得られたSVCT1タンパク質量を定量した。
【0033】
図1に示されるように、ニコチン酸アミドによって対照との対比において統計学上有意に高いSVCT1タンパク質の発現効果が発揮され、ケラチノサイトにおけるSVCT1の発現促進作用が確認できた。
【0034】
〔実験方法2〕メラノサイトにおけるSVCTタンパク質の発現
ヒトメラノサイトをニコチン酸アミド含有培地で4日間培養後、免疫染色による蛍光強度を測定した。具体的には、24穴プレートにHMGS増殖添加剤(Thermofisher社製)入りのヒト表皮メラノサイト用培地(Medium 254培地、Thermofisher社製)を適量添加し、正常ヒト表皮メラノサイト(Human Epidermal Melanocytes、シグマ社製)を1×104個播種し、37℃、5%CO2存在下で2日間培養した。2日後にα-MSH(シグマ社製)の最終濃度が10-8mol/Lになるように添加培養し、その1日後に培地中のニコチン酸アミド濃度が1mMとなるよう添加し、さらに4日培養した後、細胞を免疫染色した。対照としては、精製水のみを添加して同様に培養した。
4日間培養後、一次抗体として、SVCT1抗体(sc-376090、Santa Cruz社より購入)、二次抗体としては、Mouse IgG (H+L) Highly Cross-Adsorbed Secondary Antibody (A-11029、サーモフィッシャー社より購入)を用いて免疫染色を行い、蛍光顕微鏡IX83(オリンパス社製)により撮影した像を、CellSensDimensionにより解析した。
【0035】
図2に示されるように、ニコチン酸アミドによって対照との対比においてSVCT1タンパク質の発現効果が発揮され、メラノサイトにおけるSVCT1の発現促進作用が確認できた。
【0036】
〔実験方法3〕線維芽細胞におけるSVCTタンパク質の発現
ヒト線維芽細胞をニコチン酸アミド含有培地で24時間培養し、細胞中のSVCT2遺伝子のmRNA発現量を測定した。具体的には、ヒト新生児由来線維芽細胞NB1RGBを、6穴プレートに4×105cells/wellとなるよう播種し、培地(10%FBS含有)2mLを用いて1日培養後、ニコチン酸アミド1、2mM存在下で、37℃、5%CO2存在下で24時間培養した。また、対照としては精製水のみ、ヒドロキシプロリン1mM、2mMを各添加して同様に培養した。
24時間培養後に細胞を回収し、RNeasy Plus Mini Kit(QIAGEN社製)を用いてmRNAを抽出した。その後、iScrip Advanced cDNA Synthesis Kit for RT-qPCR(BioRad社製)を用いて作製したcDNAを用いて、定量的リアルタイムPCRによりヒトSVCT2のmRNA発現量を測定した。定量的リアルタイムPCRにはSVCT2Forwardプライマー;cagacaacgtttggatgcag、SVCT2Reverse プライマー;ttccattggcaactgaaacaを使用した。SVCT2のmRNA測定量はβアクチンのmRNA量に対して標準化し、対照のmRNA量に対する比として示した。
【0037】
図3に示されるように、ニコチン酸アミドによって対照との対比において統計学上有意に高いSVCT2タンパク質の発現効果が発揮され、線維芽細胞におけるSVCT2の発現促進作用が確認できた。
【0038】
以上より、本発明のニコチン酸アミドを有効成分とするSVCT発現促進剤は、優れたSVCT発現促進効果を有する。
【0039】
[化粧料組成物の調製例]
〔処方例1:美容液(水中油乳化型)〕
(成分) (質量%)
1.精製水 残量
2.1,3ブチレングリコール 10
3.グリセリン 10
4.グリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合溶液 3
5.ニコチン酸アミド 3
6.トリ-2エチルヘキサン酸グリセリル 3
7.水素添加大豆リン脂質 3
8.N-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム(注1) 2
9.オレイン酸オレイル 3
10.スクワラン 3
11.メドウフォーム油 3
12.セトステアリルアルコール 3
13.水添ポリイソブテン(注2) 3
14.N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ
(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)(注3) 2
15.メチルパラベン 0.3
16.天然ビタミンE 0.01
17.コメ発酵液 0.01
18.精製水 10
19.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(注4) 0.2
20.水酸化ナトリウム 0.1
21.エタノール 3
22.香料 0.3
(注1):NIKKOL SMT(日光ケミカルズ株式会社製)
(注2):パールリーム18(日油株式会社製)
(注3):エルデュウCL-301(味の素株式会社製)
(注4):CARBOPOL 1382(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)
【0040】
<製造方法>
(A):成分1~5を80℃で均一溶解する
(B):成分6~16を80℃で均一溶解した。
(C):80℃にて撹拌しながら(A)に(B)を添加して乳化した。
(D):(C)を40℃まで冷却し、成分17~22を添加して美容液を得た。
〔処方例2:可溶化型化粧水〕
(成分) (質量%)
1.ポリオキシエチレン(40モル)硬化ヒマシ油(注5) 0.8
2.香料 0.2
3.エタノール 10
4.1,3-ブチレングリコール 2
5.グリセリン 2
6.ニコチン酸アミド 10
7.水溶性コラーゲン 0.001
8.ヒアルロン酸ナトリウム 0.002
9.乳酸ナトリウム 0.2
10.フェノキシエタノール 0.5
11.精製水 残量
(注5)NIKKOL HCO40(日光ケミカルズ株式会社製)
【0041】
(製造方法)
(A):成分1~3を混合溶解する。
(B):成分4~11を混合溶解する。
(C):撹拌しながらBにAを加え、化粧水を得た。
【0042】
〔処方例3:乳化化粧水(水中油乳化型)〕
(成分) (質量%)
1.大豆由来水素添加リン脂質 0.5
2.セトステアリルアルコール 0.1
3.ポリオキシエチレン(10モル)コレステロールエーテル 0.2
4.酢酸-dl-α-トコフェロール 0.1
5.スクワラン 0.1
6.ヒドロキシエチルセルロース 0.03
7.精製水 残量
8.グリチルレチン酸ステアリル 0.25
9.ニコチン酸アミド 0.001
10.ダイズ種子エキス 0.0005
11.リン酸一水素二ナトリウム 0.1
12.リン酸二水素一ナトリウム 0.1
13.グリセリン 3.0
14.ジプロピレングリコール 2.0
15.エタノール 7.0
16.香料 0.1
(製造方法)
A.成分1~5を75℃に加熱し、均一に混合溶解する。
B.成分6、7を75℃に加熱し、均一に混合溶解する
C.AにBを添加し、75℃で乳化する。
D.Cを室温に冷却し、成分8~16を添加し、乳化型化粧水を得た。
【0043】
〔処方例4:乳液(水中油乳化型)〕
(成分) (質量%)
1.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 1.0
2.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
3.トリオクタン酸グリセリル 0.5
4.ホホバ油 0.5
5.スクワラン 0.5
6.精製水 残量
7.エデト酸二ナトリウム 0.1
8.メチルパラベン 0.2
9.フェノキシエタノール 0.5
10.グリセリン 5.0
11.プロパンジオール 1.0
12.プロピレングリコール 2.0
13.乳酸ナトリウム 0.5
14.2-O-α-D-グルコシル
-L-アスコルビン酸 1.0
15.ニコチン酸アミド 0.1
16.キサンタンガム 0.05
17.精製水 10.0
18.エタノール 3.0
19.香料 0.1
(製造方法)
A:成分16を70℃に加熱した成分17で膨潤する。
B:成分1~5を70℃で加熱混合する。
C:成分6~13を70℃で加熱溶解後、Bに添加し、70℃で乳化する。
D:Cを室温まで冷却後、成分14、15、18、19とAを添加し、乳液を得た。
【0044】
〔処方例5:日焼け止め化粧料(水中油乳化型)〕
(成分) (質量%)
1.ステアリン酸 1.0
2.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタン 0.5
3.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
4.ベヘニルアルコール 0.5
5.2-エチルヘキサン酸グリセリル 2.0
6.パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 10.0
7.スクワラン 2.0
8.酢酸トコフェロール 1.0
9.マカデミアンナッツ油 1.0
10.ジプロピレングリコール 10.0
11.トリエタノールアミン 1.0
12.精製水 残 量
13.グリセリン 5.0
14.1,2-ペンタンジオール 5.0
15.アクリル酸/メタクリル酸アルキル共重合体(注4) 0.2
16.クエン酸 0.1
17.コハク酸二ナトリウム 0.1
18.エタノール 10.0
19.ニコチン酸アミド 0.1
20.香料 0.02
【0045】
(製造方法)
A:成分1~9を80℃にて均一に溶解する。
B:成分10~14を80℃にて均一に溶解する。
C:BにAを添加し、乳化する。
D:Cを攪拌冷却し、成分15~20を添加し、水中油乳化型日焼け止めを得た。
【0046】
〔処方例6:リキッドファンデーション〕
(成分) (質量%)
1.ポリオキシエチレンメチルシロキサン・ポリオキプロピレンオレイル
メチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(注6) 2.0
2.PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(注7)1.0
3.ジメチルポリシロキサン 5.0
4.ジメチルポリシロキサン処理赤色酸化鉄 1.0
5.ジメチルポリシロキサン処理黄色酸化鉄 1.5
6.ジメチルポリシロキサン処理黒色酸化鉄 0.5
7.ジメチルポリシロキサン処理二酸化チタン
(平均粒子径400nm) 10.0
8.ジメチルポリシロキサン処理タルク
(板状、平均粒子径12μm) 5.0
9.パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 5.0
10.グリチルレチン酸ステアリル 0.5
11.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
12.精製水 残量
13.1,3-ブチレングリコール 15.0
14.ニコチン酸アミド 0.0005
15.クエン酸ナトリウム 0.1
16.リン酸二水素一ナトリウム 0.1
17.フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 0.3
18.トリエタノールアミン 1.7
19.カプリリルグリコール 0.1
20.香料 0.1
(注6) KF-6026(信越化学工業社製)
(注7) KF-6028(信越化学工業社製)
(製造方法)
A:成分1~3を均一に混合する。
B:成分4~11をローラーにて均一に分散する。
C:AにBを添加し、均一混合する。
D:成分12~20を混合溶解する。
E:CにDを添加して、乳化し、ファンデーションを得た。
【0047】
〔処方例7:不織布含浸タイプパック料〕
(成分) (質量%)
1.ポリオキシエチレン(10モル)フィトステロール 1.0
2.ステアリルアルコール 0.2
3.セタノール 0.2
4.水添大豆リン脂質 1.0
5.プロピレングリコール 10.0
6.ジグリセリン 8.0
7.流動パラフィン 1.0
8.メドウフォーム油 0.5
9.精製水 1.0
10.エタノール 3.0
11.精製水 残 量
12.ニコチン酸アミド 6.0
【0048】
(製造方法)
A:成分1~6を80℃で溶解混合する。
B:成分7~8を80℃に加熱し、Aに添加したのち、75℃に加熱した成分9を加えて乳化した。
C:これを撹拌冷却し、成分10~12を加えて混合して水中油型乳液を得た。これを不織布に含浸させ、不織布含浸タイプパック料を得た。