(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】生産システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20241011BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20241011BHJP
G06Q 10/06 20230101ALI20241011BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2020094705
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】前田 岳志
(72)【発明者】
【氏名】森 啓輔
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-176025(JP,A)
【文献】特開2010-097463(JP,A)
【文献】特開平08-025191(JP,A)
【文献】特開2003-037032(JP,A)
【文献】特開平09-201747(JP,A)
【文献】特開2019-149108(JP,A)
【文献】特開2012-168873(JP,A)
【文献】特開2011-238003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
G06Q 10/06
B23Q 41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の製造に使用する複数の設備の予定稼働時間を記憶した記憶装置と、
前記製品の製造に使用する設備の稼働時間を計測する計測装置と、
前記製品の製造の進捗を表示するディスプレイと、
前記ディスプレイへの表示を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記記憶装置から、前記複数の設備の予定稼働時間を取得し、
前記計測装置から、前記複数の設備の実稼働時間を取得し、
取得した予定稼働時間および実稼働時間に基づいて、予定稼働時間および実稼働時間を前記ディスプレイに表示させ、
さらに、
前記制御装置は、
前記記憶装置に
、同一工程の処理を行う前記複数の設備それぞれの予定稼働時間と実稼働時間との時間差を記憶させるとともに、
前記複数の設備の前記時間差の平均値が、所定の閾値を超えた場合に、前記記憶装置の
前記複数の設備の予定稼働時間を変更させる、生産システム。
【請求項2】
請求項1に記載の生産システムであって、
前記制御装置は、予定稼働時間および実稼働時間に基づいて、前記設備における製造の進捗率を前記ディスプレイに表示させる、生産システム。
【請求項3】
請求項2に記載の生産システムであって、
前記制御装置は、
前記ディスプレイに、前記進捗率を、前記進捗率の推移に合わせて変化する表示形態で表現させる、生産システム。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の生産システムであって、
前記制御装置は、
前記ディスプレイに、実稼働時間が予定稼働時間を超えた場合に、その事実を知らせるように強調表示する、生産システム。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の生産システムであって、
使用者に報知を行なう報知装置を、さらに備え
前記制御装置は、
前記報知装置に、実稼働時間が予定稼働時間を超え、且つ実稼働時間が所定の時間を超えた場合に、その事実を使用者に報知させる、生産システム。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の生産システムであって、
製品の製造のスケジュールを管理するスケジューリング装置を、さらに備え、
前記制御装置は、前記スケジューリング装置に、変更後の予定稼働時間に基づいて、スケジュールを管理させる、生産システム。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の生産システムであって、
前記記憶装置は、前記設備に関連した設備コードを記憶しており、
前記制御装置は、
前記ディスプレイに、設備コードと、予定稼働時間および実稼働時間とを関連付けて表示させる、生産システム。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の生産システムであって、
前記記憶装置は、同一工程を処理可能な複数の設備を管理している場合に、前記複数の設備に共通の共通コードと、前記複数の設備それぞれに固有の個別コードとを有する設備コードを記憶している、生産システム。
【請求項9】
請求項7または8に記載の生産システムであって、
設備コードは、前記設備の所有者を示す所有者コードを有している、生産システム。
【請求項10】
請求項8または9に記載の生産システムであって、
前記制御装置は、
前記複数の設備ごとの実稼働時間を比較した時に、一定の時間差がある場合には、使用者に報知する、生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の製造工程に係る生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品の製造において、生産効率を落とさない生産システムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような生産システムでは、生産設備の能力を把握することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の生産システムは、製品の製造に使用する複数の設備の予定稼働時間を記憶した記憶装置と、製品の製造に使用する設備の稼働時間を計測する計測装置と、製品の製造の進捗を表示するディスプレイと、ディスプレイへの表示を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、記憶装置から、複数の設備の予定稼働時間を取得し、計測装置から、複数の設備の実稼働時間を取得し、予定稼働時間および実稼働時間を、前記ディスプレイに表示させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、生産設備の能力を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔全体構成〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0009】
本発明に係る生産システム1は、
図1に示すように、生産システム1は、生産システム1の各全体の動作を統括的に制御する制御装置2と、生産システム1の制御に必要なデータを記憶する記憶装置3と、を備えている。
【0010】
制御装置2は、生産システム1の各構成要素と通信可能に接続されており、所定のプログラムに従って、生産システム1を制御することができる。制御装置2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)または専用プロセッサなどの演算処理部などにより構成されるコンピュータ装置から成る。
【0011】
記憶装置3は、例えば、生産システム1の制御に必要な各設備の各種データまたはプログラムなどを記憶することができる。記憶装置3は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを含む。本実施形態では、例えば、記憶装置3には、生産システム1に関連する各種データが不揮発的に記憶されている。なお、制御装置2は、記憶装置3に記憶されているプログラムを読み出して実行することで、製造計画の作成などを行なうことができる。なお、記憶装置3には、制御装置2が、生産システム1の情報を、後述するディスプレイ6に表示させるときに必要になるデータも記憶されている。
【0012】
生産システム1は、製造スケジュールを管理するスケジューリング装置4と、各製造設備の稼働時間を計測する計測装置5と、生産システム1の稼働状況を表示するディスプレイ6と、をさらに備えている。
【0013】
スケジューリング装置4は、製品の製造のスケジュールを管理することができる。スケジューリング装置4は、製品の製造に使用する各設備の所要時間(予定稼働時間ともいう)から、効率的な製造計画を作成することができる。その結果、生産システム1の使用者に対して、製品の着工予定時刻や完工予定時刻などを知らせることができる。また、現在どの設備で、何を製造しているかを、使用者に知らせることができる。
【0014】
また、スケジューリング装置4は、過去の製造の実績などから、作成した製造計画を修正することができる。なお、スケジューリング装置4は、生産システム1の使用者の希望を反映させて、製造計画を変更することが可能である。
【0015】
スケジューリング装置4は、個別制御装置41および個別記憶装置42を有している。個別制御装置41は、スケジューリング装置4の動作を統括的に制御することができる。具体的には、個別制御装置41は、例えば、所定のプログラムに従って、各製造設備の処理に要する所要時間などに基づいて、製造計画の作成または修正などを行なうことができる。
【0016】
個別記憶装置42は、例えば、各製造設備の加工の所要時間および製造計画を作成する際のプログラム等が記憶されている。個別記憶装置42には、例えば、各製造設備の各製造品の処理の所要時間や、各製造設備を特定するための設備コードなどが、不揮発的に記憶されている。なお、個別制御装置41は、個別記憶装置42に記憶されているプログラムを読み出して実行することで、製造計画の作成などを行なうことができる。
【0017】
なお、本開示では、制御装置2と記憶装置3の他に、スケジューリング装置4が、個別制御装置41と個別記憶装置42を有しているが、制御装置2および記憶装置3が個別制御装置41および個別記憶装置42の機能を担ってもよい。
【0018】
計測装置5は、設備の稼働時間を計測することができる。計測装置5は、製品の製造に使用される各設備に設置されていればよい。具体的には、計測装置5は、各設備のシーケンサーなどのON/OFFなどを検知する電流センサやPLC(Programmable Logic Controller)などであればよい。なお、計測装置5は、これらに限られず、設備の稼働時間を計測することができる装置であればよい。
【0019】
計測装置5は、生産システム1の記憶装置3と通信可能に接続されており、計測装置5での稼働時間の計測結果は、実稼働時間として、記憶装置3に記憶される。言い換えれば、記憶装置3には、各生産設備の過去の実稼働時間が記憶されている。
【0020】
ディスプレイ6は、例えば、生産システム1での各製造設備の稼働状況を表示することができる。ディスプレイ6は、情報を表示する表示装置であり、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。ディスプレイ6への表示は、制御装置2によって制御されている。
【0021】
制御装置2は、上述した通り、各製造設備の稼働状況を表示させるようにディスプレイ6を制御することができる。制御装置2は、スケジューリング装置4の個別記憶装置442から設備の予定稼働時間を取得し、記憶装置3から設備の実稼働時間を取得し、予定稼働時間と実稼働時間を合わせて、ディスプレイ6に表示させることができる。その結果、設備の処理能力を使用者が把握することが可能である。
【0022】
なお、具体的には、本開示では、
図2に示すように、ディスプレイ6上には、設備の存在を示す印Iが表示されており、印Iの周囲に、予定稼働時間と実稼働時間が表示されている。なお、設備の存在を示す印Iは、例えばアイコンであってもよい。
【0023】
制御装置2は、ディスプレイ6に、複数の設備の情報を同時に表示させてもよい。その結果、使用者は、設備ごとの処理能力を、一瞥して比較することができる。また、このとき、生産システム1では、同様の処理が実行可能な同種の複数の設備を管理している場合には、ディスプレイ6に同種の複数の設備を表示させることによって、同種の設備間の能力差を把握することができる。
【0024】
制御装置2は、ディスプレイ6に、予定稼働時間および実稼働時間と併せて、製造中の製品を示す情報を表示させてもよい。その結果、使用者は、設備の処理能力とともに、処理中の製品を知ることができる。なお、製品を示す情報は、記憶装置3に記憶されていればよい。また、製品を示す情報は、例えば、製品名でもよいし、製品コードでもよい。本開示おいては、
図2に示すように、製品コードを示している。なお、本開示では、
図2中の「XYZ」が製品コードである。
【0025】
制御装置2は、ディスプレイ6に、予定稼働時間及び実稼働時間に基づいて、設備における製造の進捗率を、表示させてもよい。その結果、使用者は、製造の進捗を容易に把握することができる。具体的には、例えば、制御装置2が置かれた事務所、生産設備が置かれた工場現場などに複数のディスプレイ6を配置することで、直接、生産設備を確認しに行かくなくても、生産状況を把握可能であり、また、事務所でも工場現場でもディスプレイ6によって、製造の進捗を把握することができる。
【0026】
なお、進捗率は、進捗率の推移に合わせて変化する表示形態で表示されていればよい。進捗率は、例えば、百分率で示された数値で合ってもよいし、進捗を示すゲージであってもよい。本開示においては、
図2に示すように、ゲージの一種として、棒状グラフを採用している。
【0027】
制御装置2は、ディスプレイ6に、実稼働時間が、予定稼働時間を超えた場合に、その事実を知らせるように、特定領域を強調表示させてもよい。その結果、使用者は、製造が予定より遅れていることを容易に把握することができる。なお、強調表示は、実稼働時間が予定稼働時間を超えている事実情報が、他の情報よりも目立つように表示されていれば、どのように表示されても構わない。例えば、実稼働時間の色を変更したり、印Iを点滅させたり、ゲージの輝度を変更したりしてもよい。本開示において、棒状グラフの色を変更するように制御している。
【0028】
生産システム1は、生産システム1の使用者に、設備の状況を報知する報知装置7を有していてもよい。そして、制御装置2は、報知装置7に、実稼働時間が、予定稼働時間を超えて、さらに実稼働時間が所定の時間を超えた場合には、その事実を使用者に報知させてもよい。その結果、使用者は、製造が予定より遅れすぎていることを容易に把握することができ、場合によっては、設備の異常にいち早く気付くことができる。なお、所定の時間とは、使用者が任意に設定することができ、例えば、進捗率が70%~80%の時間に、設定されてもよい。
【0029】
なお、報知装置7の報知手段は、使用者に報知可能であれば、特に限定されない。例えば、報知装置7は、音または光などの手段によって、使用者に報知してもよい。この場合、報知装置7は、例えば、警報器や信号表示灯などであればよい。また、報知装置7は、通信装置を介して、使用者が所有するPC(Personal computer)または携帯電話などに連絡してもよい。
【0030】
また、制御装置2は、上述の通り、実稼働時間が、予定稼働時間を超えて、実稼働時間が所定の時間を超えた場合には、当該設備は使用不可能であるとして、スケジューリング装置4に、スケジュールの変更をさせてもよい。その結果、スケジュールの遅れを低減することができる。
【0031】
また、制御装置2は、実稼働時間が予定稼働時間に近づいたときに、報知装置7にその事実を報知させてもよい。その結果、使用者は、次工程の準備にとりかかることができる。
【0032】
制御装置2は、予定稼働時間と実稼働時間との時間差(以下、単に「時間差」ともいう)を計算して、計算結果を記憶装置3に記憶してもよい。その結果、設備の処理能力をログとして保管することができる。なお、この計算結果は、百分率で表されていてもよいし、引き算の結果として算出される相対値であってもよい。この計算結果の表示形式は、使用者によって、任意に選択される。
【0033】
また、制御装置2は、時間差に基づいて、記憶装置3(個別記憶装置42)に記憶されている予定稼働時間を変更してもよい。そして、スケジューリング装置4は、変更後の予定稼働時間に基づいて、製造計画(スケジュール)を管理してもよい。その結果、スケジューリング装置4が、設備の真の処理能力に応じて製造計画を最適化することができる。なお、制御装置2は、予定稼働時間を増やして設備の稼働率を下げるように、スケジューリング装置4を制御してもよいし、予定稼働時間を短くして設備の稼働率を上げるように、スケジューリング装置4を制御してもよい。
【0034】
また、制御装置2、記憶装置3に記憶された過去から現在にわたる複数の時間差のデータを記憶させるとともに、複数の時間差の平均値が、所定の閾値を超えた場合には、記憶装置3の予定稼働時間を変更してもよい。その結果、突発的な事態によって、一時的に時間差が大きくなる場合などに、スケジューリング装置4が製造計画を変更してしまうことを低減することができる。すなわち、不要な製造計画の変更を低減することができる。なお、所定の閾値は、使用者によって任意に設定されていればよい。本開示においては、例えば、30分に設定されている。
【0035】
制御装置2は、記憶装置3に製造設備に関連した設備コードを記憶させて、ディスプレイ6に、予定稼働時間および実稼働時間とともに、設備コードを表示させてもよい。その結果、無数の製造設備がある工場などにおいて、使用者は、設備ごとの稼働状況を容易に把握することができる。なお、設備コードは、使用者によって任意に設定されていればよいが、例えば、設備名でもよいし、設備名に関連して記憶されている記号であってもよい。本開示では、
図2に示すように、設備コードは、アルファベットと数字から構成されている。
【0036】
制御装置2は、同一工程を処理可能な複数の設備を管理している場合に、複数の設備の共通の共通コードと、複数の設備それぞれに固有の個別コードとを有する設備コードを、記憶装置に記憶させてもよい。そして、制御装置2は、ディスプレイ6に共通コードおよび個別コードを表示させてもよい。その結果、使用者は、同種の設備をディスプレイ6上で比較することができる。なお、共通コードおよび個別コードは、使用者によって任意に設定されていればよい。本開示では、
図2に示すように、共通コードはアルファベットで示されており、個別コードは数字で示されている。
【0037】
記憶装置3が、記憶している設備コードには、設備の所有者を示す所有者コードが含まれていてもよい。そして、制御装置2は、ディスプレイ6に所有者コードを表示させてもよい。その結果、使用者は、トラブルなどによって自分の設備が使用できないときに、他の使用者に設備を貸してもらうことができる。なお、所有者コードは、使用者によって任意に設定されていればよい。本開示では、
図2に示すように、所有者コードは、ギリシャ文字でしめされている。
【0038】
制御装置2は、複数の設備ごとの実稼働時間を比較した時に、一定の時間差がある場合には、報知装置7を介して、使用者にその事実を通知してもよい。その結果、例えば、同一製品の同一加工を行なっている設備の処理能力を把握することができる。
【0039】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【0040】
例えば、生産システム1は、使用者が新たな情報を入力可能な入力装置を有していてもよい。入力装置、例えば、キーボード、マウス等である。なお、タッチパネル等により、ディスプレイ6と入力装置とが一体となったものであってもよい。
【0041】
また、入力装置では、例えば、製造製品の優先度の変更、納期の変更等のスケジューリングに関する指示も受け付け、その内容をスケジューリング装置に通知してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 生産システム
2 制御装置
3 記憶装置
4 スケジューリング装置
41 個別制御装置
42 個別記憶装置
5 計測装置
6 ディスプレイ
7 報知装置